(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/06 20060101AFI20230601BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230601BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230601BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652Q
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652S
H01L29/78 652H
H01L29/78 658E
H01L29/78 652N
(21)【出願番号】P 2019163053
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敦
(72)【発明者】
【氏名】永久 克己
(72)【発明者】
【氏名】岡本 康宏
(72)【発明者】
【氏名】久田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】町田 信夫
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138026(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115253(WO,A1)
【文献】特開2015-065237(JP,A)
【文献】特開2019-087646(JP,A)
【文献】特開2008-016518(JP,A)
【文献】特開2014-041990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル領域と周辺領域とを有する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板上にドリフト層を形成する工程、
(b)前記ドリフト層上にチャネル層を形成する工程、
(c)前記チャネル層上にソース領域を形成する工程、
(d)前記チャネル層を貫通して、前記ドリフト層に達し、前記ソース領域と接するトレンチを形成する工程、
(e)前記トレンチの内壁にゲート絶縁膜を形成する工程、
(f)前記ゲート絶縁膜上に、前記トレンチを埋め込むゲート電極を形成する工程、
を有し、
前記(a)工程は、
前記セル領域の前記ドリフト層中に、平面視において前記トレンチの形成領域と重なる位置に形成された、前記ドリフト層と逆導電型の不純物を有する第1埋込み領域と、
前記周辺領域の前記ドリフト層中に、前記ドリフト層と逆導電型の不純物を有し、前記第1埋込み領域と幅が異なる
複数の第2埋込み領域と、の形成工程を有
し、
前記トレンチは、第1方向に延在し、
前記第2埋込み領域は、前記第1方向に、第1間隔をおいて配置される複数の第1領域よりなり、
平面視において、前記第1方向に直交する第2方向に、隣り合う前記第2埋込み領域は、前記第1方向に、前記第1間隔をおいて配置される複数の第2領域よりなり、
前記第1領域と、前記第2領域は、前記第1方向に前記第1領域の繰り返しピッチと、前記第2領域の繰り返しピッチが半分ずれて配置されている、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1埋込み領域の濃度と
、
前記第2埋込み領域の濃度とが等しい、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1埋込み領域と、前記第2埋込み領域とが同層で形成された、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程の前記ドリフト層は、第1のエピタキシャル成長と、第2のエピタキシャル成長との形成工程により形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程において、
(a-1)前記第1のエピタキシャル成長工程後、前記第2のエピタキシャル成長工程の前に、前記第1埋込み領域および前記第2埋込み領域を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項
1に記載の半導体装置の製造方法において、
複数の前記第2埋込み領域を有し、
複数の前記第2埋込み領域は互いに並列している、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、SiC(炭化珪素)基板を用いた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタを有する半導体装置において、SiC基板を用いた半導体装置が検討されている。例えば、パワートランジスタにおいてSiC基板を用いた場合、Si(珪素)に比べてSiCのバンドギャップが大きいため、オン抵抗と耐圧のトレードオフ関係を改善できる。
【0003】
特許文献1に記載の半導体装置は、n型ソース層、p型ベース層、n型ベース層、p型埋込み層、およびドレイン電極を有する。当該半導体装置では、オフ状態の際に、印加電圧の増加に比例して、空乏層がp型ベース層からドレイン電極側に広がる。当該空乏層がp型埋込み層に到達したとき、パンチスルー現象が起こる。これにより、p型埋込み層が当該空乏層中の電界強度を固定して、電界強度の上昇を抑止されることが開示されている。そして、このときの電界強度の最大値を越える電界強度の限界値をもつ範囲でn型ベース層のキャリア密度を増加させて単位面積あたりのオン抵抗を低下させる。これにより、高耐圧であってもオン状態での電圧降下を低下させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、MISFET(素子構造)が形成されたセル領域と、当該セル領域の外側に形成された周辺領域とを有する半導体装置が開示されている。そして、上記MISFETは、半導体基板、第1エピタキシャル膜および第2エピタキシャル膜がこの順に積層された積層膜で構成されている。上記第1エピタキシャル膜は、上記半導体基板および上記第1エピタキシャル膜の界面に形成された第1緩和領域と、上記第1エピタキシャル膜および上記第2エピタキシャル膜の界面に形成された第2緩和領域とを有する。これにより、耐圧を高めつつ、MISFETの大きさを小さくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-138026号公報
【文献】特開平9-191109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、Si(珪素)に比べてSiCのバンドギャップが大きいため、オン抵抗と耐圧のトレードオフ関係を改善できる。しかしながら、Si基板を有する半導体装置と比較して、SiC基板を用いた半導体装置では、SiC基板がSi基板よりも高い電界強度に耐え得るため、電界集中に起因する、ゲート絶縁膜の破壊が生じやすい。ゲート絶縁膜への電界集中を緩和する観点から、電界緩和用の電界緩和領域が設けられることが知られている。しかしながら、電界緩和領域の構成によっては、十分な信頼性を得られないことがある。すなわち、半導体装置の信頼性を高める観点から、向上の余地がある。
【0007】
実施の形態の課題は、半導体装置の信頼性を高めることである。
【0008】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
開示される一実施の形態に示される半導体装置は、セル領域において、ドリフト層と、チャネル層と、ソース領域と、チャネル層を貫通して、ドリフト層に達し、ソース領域と接するトレンチを有する。さらに、トレンチの内壁に形成されたゲート絶縁膜と、トレンチを埋め込むゲート電極とを有する。そして、トレンチの下方のドリフト層中に、ドリフト層と逆導電型の不純物を有する第1埋込み領域を有する。そして、周辺領域において、第1埋込み領域と表面からの距離が同じ位置に、ドリフト層と逆導電型の不純物を有し、第1埋込み領域と幅が異なる第2埋込み領域を有する。
【0011】
開示される一実施の形態に示される半導体装置の製造方法は、基板の準備工程、ドリフト層の形成工程、チャネルの形成工程、ソースの形成工程、トレンチの形成工程、ゲート絶縁膜の形成工程およびゲート電極の形成工程を含む。セル領域のドリフト層中に、ドリフト層と逆導電型の不純物を有する第1埋込み領域を有する。また、周辺領域の前記ドリフト層中に、第1埋込み領域と表面からの距離が同じ位置に、ドリフト層と逆導電型の不純物を有し、第1埋込み領域と幅が異なる第2埋込み領域との形成工程を有する。
【発明の効果】
【0012】
実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の構成の一例を示すチップ全体の平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置の構成の一例を示す要部平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る半導体装置の構成の一例を示す要部断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図13】
図13は、比較用の半導体装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図14】
図14は、比較用の半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、実施の形態1に係る半導体装置の耐圧と周辺領域のp型埋込み領域の幅との関係を示す図である。
【
図16】
図16は、実施の形態2に係る半導体装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図17】
図17は、実施の形態2に係る半導体装置の構成の一例を示す
図16に示すA-Aにおける断面図である。
【
図18】
図18は、実施の形態2に係る半導体装置の構成の一例を示す
図16に示すB-Bにおける断面図である。
【
図19】
図19は、実施の形態2に係る半導体装置の耐圧と周辺領域のp型埋込み領域の幅との関係を示す図である。
【
図20】
図20は、変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図21】
図21は、変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図22】
図22は、変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図23】
図23は、変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではない。また、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明などの関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップなども含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合などを除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素などの形状、位置関係などに言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。このことは、上記数など(個数、数値、量、範囲などを含む)についても同様である。
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し、個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0018】
また、断面図および平面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではない。また、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。また、断面図と平面図が対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0019】
[実施の形態1]
(構造)
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る半導体装置について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る半導体装置のチップ全体を示す平面図である。
図2および
図3は、
図1に示すA-A部における本実施の形態に係る半導体装置の構成を示す要部平面図、およびその要部断面図である。また、
図1、
図2、および
図3に示す半導体装置は、トレンチゲート型のパワートランジスタである。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る半導体装置は、半導体装置の中央部にセル領域CELを有する。また、セル領域CELより外側に位置している周辺領域TERを有する。また、本実施の形態に係る半導体装置は、チップの表面側にソースパッドSPD(ソース電極SE)およびゲートパッドGPDを有し、チップの裏面側にドレインパッド(ドレイン電極DE)を有する(図示せず)。
【0022】
図2は、本実施の形態に係る半導体装置の構成のトレンチ(TR)とp型埋込み領域(PT1、PT2、電界緩和領域)との関係を示す平面図であり、
図3は、
図2のA-A断面部に対応する。
【0023】
本実施の形態に係る半導体装置は、SiC基板1S、n型ドリフト層DR、チャネル層CH、n型ソース領域SR、トレンチTR、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極GE、層間絶縁膜IL1、ボディコンタクト領域BC、コンタクトホールCNT、ソース電極SE、表面保護膜PAS、ドレイン電極DE、p型埋込み領域(p型電界緩和領域)PJTE、p型埋込み領域PT1およびp型埋込み領域PT2を有する。
【0024】
まず
図3に示すように、本実施の形態に係る半導体装置は、セル領域CELと、その外周部に周辺領域TERを有する。セル領域CELは、SiC基板1Sの表面(第1面)側に設けられたドリフト層(ドレイン領域)DRと、セル領域CELにn型ドリフト層DR上に設けられたチャネル層CHと、チャネル層CH上に設けられたn型ソース領域SRとを有する。n型ドリフト層DRはn型半導体領域であり、チャネル層CHはp型半導体領域であり、n型ソース領域SRはn型半導体領域である。これらの半導体領域は、SiCよりなり、p型半導体領域は、p型不純物を、n型半導体領域は、n型不純物を有する。また、これらの半導体領域は、後述するように、n型またはp型のエピタキシャル層で形成される。
【0025】
また、周辺領域TERのセル領域CEL側には、第2エピタキシャル層EP2の表面部にp型埋込み領域(p型電界緩和領域)PJTEが設けられている。p型埋込み領域(p型電界緩和領域)PJTEは、チャネル層CHよりも不純物濃度が低く、ボディコンタクト領域BCよりも不純物濃度が低いp型半導体領域からなる。p型埋込み領域(p型電界緩和領域)PJTEは、セル領域CELと周辺領域TERとの間の電界を緩和するために形成されている。
【0026】
そして、本実施の形態に係る半導体装置においては、セル領域CELにて、n型ソース領域SRとチャネル層CHとを貫通し、ドリフト層とまで達するトレンチTRがある。さらに当該半導体装置は、トレンチTR内にゲート絶縁膜GIを介して配置されたゲート電極GEを有する。
【0027】
また、トレンチTRと接するn型ソース領域SRの一端部とは反対側に他端部がある。この他端部には、チャネル層CHに達するコンタクトホールCNTが設けられている。そして、このコンタクトホールCNTの底面の一部には、ボディコンタクト領域BCが形成されている。このボディコンタクト領域BCは、チャネル層CHよりも不純物濃度の高いp型半導体領域からなり、ソース電極SEとチャネル層CHとのオーミックコンタクトを確保するために形成されている。
【0028】
また、ゲート電極GEを覆うように、層間絶縁膜IL1が設けられている。層間絶縁膜IL1は、酸化シリコン膜などの絶縁膜よりなる。そして、この層間絶縁膜IL1上およびコンタクトホールCNTの内部には、ソース電極SEが設けられている。ソース電極SEは、導電性膜、たとえばアルミニウム(Al)膜よりなる。なお、ソース電極SEのうち、コンタクトホールCNTの内部に位置する部分をプラグ(ビア)と、層間絶縁膜IL1上に延在する部分を配線とみなす場合がある。このソース電極SEは、ボディコンタクト領域BCとn型ソース領域SRに、電気的に接続されている。ソース電極SE上には、絶縁膜よりなる表面保護膜PASが形成されている。なお、SiC基板1Sの裏面(第2面)側には、ドレイン電極DEが形成されている。
【0029】
ここで、本実施の形態においては、n型ドリフト層DRが第1エピタキシャル層EP1とこの上の第2エピタキシャル層EP2との積層部で構成され、第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2との境界部に、セル領域CELにて、埋込み層であるp型埋込み領域PT1が設けられている。このp型埋込み領域PT1(電界緩和領域)は、トレンチTRの底面より深い位置であって、n型ドリフト層DRと逆導電型の不純物を有し、n型ドリフト層DRの途中に位置する。すなわち、p型埋込み領域PT1はトレンチTRの底面とドレイン電極DEとの間に位置する。このように、p型埋込み領域PT1を設けることにより、ゲート絶縁膜GIにかかる電界を緩和することができ、本実施の形態に係る半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0030】
また、周辺領域TERにて、埋込み層であるp型埋込み領域PT2が設けられている。ここで、p型埋込み領域PT2は、例えば、埋込み層であるp型埋込み領域PT1と表面からの距離が同じ位置に、n型ドリフト層DRと逆導電型の不純物を有し、PT1と同じ濃度(不純物濃度)で形成されている。言い換えれば、p型埋込み領域PT2は、第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2の間に位置しており、p型埋込み領域PT1と同層に形成されている。たとえば、PT2の不純物濃度は、5×1017cm-3~2×1019cm-3の範囲とすることが好ましく、2×1018cm-3~7×1018cm-3の範囲とすることが最も好ましい。
【0031】
また、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅は、セル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅よりも小さく形成されている。ここで、PT1の幅とは、p型埋込み領域PT1とn型ドリフト層DRとのPN境界の間の距離W1をいう。また、PT2の幅とは、p型埋込み領域PT2とn型ドリフト層DRとのPN境界の間の距離W2をいう。たとえば、p型埋込み領域PT2の幅はp型埋込み領域PT1の幅の半分程度となっている。
【0032】
より具体的には、たとえば、セル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅は1μmで、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅は0.5μmである。また、p型埋込み領域PT1の幅は0.5μm~2μm、p型埋込み領域PT2の幅は0.2μm~0.6μmの範囲とすることが好ましい。さらに、p型埋込み領域PT1の幅に対するp型埋込み領域PT2の幅の比は0.2~0.8の範囲とすることが好ましく、0.5以下が最も好ましい(
図15)。
【0033】
また言い換えれば、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2のピッチは、セル領域CELのp型埋込み領域PT1のピッチよりも小さく形成されている。ここで、PT1のピッチとは、隣り合う複数のp型埋込み領域PT1の距離P1をいう。また、PT2のピッチとは、隣り合う複数のp型埋込み領域PT2の距離P2をいう。たとえば、セル領域CELのp型埋込み領域PT1のピッチは2μmで、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2のピッチは1μmである。また、p型埋込み領域PT1のピッチは1μm~4μmでもよく、p型埋込み領域PT2のピッチは0.4μm~1.2μmでもよい。
【0034】
図2は、
図1に示すA-A部における本実施の形態に係る半導体装置の要部平面図である。また、
図3に示すp型埋込み領域PT1、p型埋込み領域PT2、およびトレンチTRとの関係を示す平面図である。
【0035】
図2に示すように、セル領域CELから周辺領域TERへの方向をX方向とした場合、ゲート電極GEの平面形状は、X方向と垂直方向であるY方向に長辺を有する矩形状である。トレンチTRの平面形状は、Y方向に沿う長辺を有する矩形状である。トレンチTRの両側には、n型ソース領域SRが配置されている。n型ソース領域SRの平面形状は、Y方向に沿う長辺を有する矩形状である。そして、n型ソース領域SRの外側にはボディコンタクト領域BCが配置されている。ボディコンタクト領域BCの平面形状は、Y方向に沿う長辺を有する矩形状である。
【0036】
ソース電極SEは、
図3に示すように、ゲート電極GEの上方に延在するように広がって配置されている。また、
図3に示す断面には表示されていないが、ゲート電極GEの奥行方向に延在したチップ端部の上には、図示しないコンタクトホール(プラグ、ビア)を介して、
図1に示すゲート線GLやゲートパッドGPDが配置されている。ゲート線GLやゲートパッドGPDは、ソース電極SEと同層の導電性膜で構成することができる。
【0037】
そして、前述したように、p型埋込み領域(PT1、PT2)は、トレンチTRやゲート電極GEと同様に、Y方向(
図3においては、図面の奥行き方向)に延在している。
【0038】
<動作>
本実施の形態に係る半導体装置(トランジスタ)において、ゲート電極GEにしきい値電圧以上のゲート電圧を印加すると、トレンチTRの側面と接するチャネル層(p型半導体領域)CHに反転層が形成される。そして、n型ソース領域SRとn型ドリフト層DRとは、反転層で電気的に接続されることになり、n型ソース領域SRとn型ドリフト層DRとの間に電位差がある場合、n型ソース領域SRから反転層を通ってn型ドリフト層DRに電子が流れる。言い換えれば、n型ドリフト層DRから反転層を通ってn型ソース領域SRに電流が流れる。このように、トランジスタを、オンさせることができる。
【0039】
一方、ゲート電極GEにしきい値電圧よりも小さな電圧を印加すると、チャネル層CHに形成されていた反転層が消失し、n型ソース領域SRとn型ドリフト層DRとが非導通となる。このように、トランジスタを、オフさせることができる。
【0040】
以上のようにして、トランジスタのゲート電極GEに印加するゲート電圧を変化させることにより、トランジスタのオン/オフ動作を行う。
【0041】
(製造方法)
次いで、
図4~
図12を参照しながら、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図4~
図12は、
図2のA-A断面部に対応し、本実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0042】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(1)第1エピタキシャル層EP1の形成、(2)p型埋込み領域PT1、PT2の形成、(3)第2エピタキシャル層EP2の形成、(4)p型チャネル層CHの形成、(5)p型埋込み領域(p型電界緩和領域)PJTEの形成、(6)n型ソース領域SRの形成、(7)ボディコンタクト領域BCの形成、(8)トレンチTRおよびゲート電極GEの形成、および(9)ソース電極SEおよび表面保護膜PASの形成を含む。
【0043】
(1)第1エピタキシャル層EP1の形成
図4に示すように、第1エピタキシャル層EP1が形成されたSiC基板(SiCからなる半導体基板、ウエハ)1Sを用意する。
【0044】
このSiC基板1S上へのエピタキシャル層の形成方法に制限はないが、次のようにして形成することができる。例えば、SiC基板1S上に、窒素(N)またはリン(P)などのn型不純物を導入しながらSiCよりなるエピタキシャル層(n型エピタキシャル層)を成長させることにより、第1エピタキシャル層EP1を形成する。
【0045】
(2)p型埋込み領域PT1、PT2の形成
次いで、
図5に示すように、セル領域CELのp型埋込み領域PT1と周辺領域TERのp型埋込み領域PT2とを形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、第1エピタキシャル層EP1上に、セル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の形成領域に開口部を有するマスク膜MK1を形成する。マスク膜MK1としては、例えば、酸化シリコン膜を用いることができる。ここで、セル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅は、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅よりも大きく開口されている。より具体的には、たとえば、セル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅は1~2μmで、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅は0.2~0.6μmである。
【0046】
次いで、上記マスク膜MK1をマスクとして、第1エピタキシャル層EP1の表面部に、アルミニウム(Al)またはボロン(B)などのp型不純物イオン注入することにより、セル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2を形成する。
【0047】
このセル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2は、
図2に示すように、Y方向に延在している。
【0048】
(3)第2エピタキシャル層EP2の形成
次いで、
図6に示すように、第2エピタキシャル層EP2を形成する。例えば、第1エピタキシャル層EP1およびセル領域CELのp型埋込み領域PT1と周辺領域TERのp型埋込み領域PT2とのそれぞれの上に、窒素(N)またはリン(P)などのn型不純物を導入しながらSiCよりなるエピタキシャル層(n型エピタキシャル層)を成長させることにより、第2エピタキシャル層EP2を形成する。これにより、第1エピタキシャル層EP1と、第2エピタキシャル層EP2との積層体よりなるn型ドリフト層DRが形成される。そして、このn型ドリフト層DRの内部には、セル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2が設けられる。具体的には、第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2との境界部近傍にセル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2が設けられる。言い換えれば、p型埋込み領域PT1とp型埋込み領域PT2は、第2エピタキシャル層EP2の表面からの距離が同じ位置に形成されている。
【0049】
(4)p型チャネル層CHの形成
次いで、
図7に示すように、マスク膜MK2をマスクとして、第2エピタキシャル層EP2の表面部に、アルミニウム(Al)またはボロン(B)などのp型不純物イオン注入することにより、チャネル層CHとなる半導体領域を形成する。
【0050】
(5)p型埋込み領域(p型電界緩和領域)PJTEの形成
次いで、
図8に示すように、マスク膜MK3をマスクとして、周辺領域TERの第2エピタキシャル層EP2の表面部に、アルミニウム(Al)またはボロン(B)などのp型不純物イオン注入することにより、p型埋込み領域(p型電界緩和領域)PJTEを形成する。
【0051】
(6)n型ソース領域SRの形成
次いで、
図9に示すように、マスク膜MK4をマスクとして、第2エピタキシャル層EP2の表面部に、窒素(N)またはリン(P)などのn型不純物イオン注入することにより、n型ソース領域SRとなる半導体領域を形成する。
【0052】
(7)ボディコンタクト領域BCの形成
次いで、
図10に示すように、マスク膜MK5をマスクとして、第2エピタキシャル層EP2の表面部に、アルミニウム(Al)またはボロン(B)などのp型不純物イオン注入することにより、ボディコンタクト領域BCに対応する半導体領域を形成する。ここで、このボディコンタクト領域BCのp型不純物の濃度は、チャネル層CHのp型不純物の濃度より高い。
【0053】
(8)トレンチTRおよびゲート電極GEの形成
次いで、
図11に示すように、セル領域CELにおいて、n型ソース領域SRおよびp型チャネル層CHを貫通し、第2エピタキシャル層EP2まで達するトレンチTR(
図2参照)を形成する。
【0054】
例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、n型ソース領域SR上に、トレンチTRの形成領域に開口部を有するハードマスク(図示せず)を形成する。次いで、このハードマスクをマスクとして、n型ソース領域SR、p型チャネル層CHおよび第2エピタキシャル層EP2の上部をエッチングすることにより、トレンチTRを形成する。次いで、ハードマスクを除去する。このトレンチTRの側面には、下から第2エピタキシャル層EP2、p型チャネル層CHおよびn型ソース領域SRが順に露出している。また、このトレンチTRの底面には、第2エピタキシャル層EP2が露出している。ここで、セル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2は、トレンチTRの底面より深い位置にある。
【0055】
次いで、トレンチTR、p型チャネル層CH、およびn型ソース領域SRのそれぞれの上に、ゲート絶縁膜GIを形成する。例えば、ゲート絶縁膜GIとして酸化シリコン膜をALD(Atomic Layer Deposition)法などにより形成する。また、トレンチTR内に露出したエピタキシャル層を熱酸化することにより、ゲート絶縁膜GIを形成してもよい。また、ゲート絶縁膜GIの材料は、例えば、酸化シリコンからなる。なお、ゲート絶縁膜GIの材料は、酸化シリコンに限られず、酸化アルミニウムでもよいし、酸化ハフニウムでもよい。酸化アルミニウムおよび酸化ハフニウムは誘電率が高く、高電流駆動力であるという利点を有する。
【0056】
さらに、ゲート絶縁膜GI上に配置され、トレンチTRを埋め込む形状のゲート電極GEを形成する。例えば、ゲート電極GE用の導電性膜として、多結晶シリコン膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより堆積する。次いで、導電性膜上に、ゲート電極GEの形成領域を覆うフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして、導電性膜をエッチングする。これにより、ゲート電極GEを形成する。このエッチングの際、ゲート電極GEの両側に露出したゲート絶縁膜GIをエッチングしてもよい。
【0057】
(9)ソース電極SEおよび表面保護膜PASの形成
次いで、
図12に示すように、ゲート電極GEを覆う層間絶縁膜IL1を形成し、コンタクトホールCNTを形成する。
【0058】
例えば、コンタクトホールCNTの底面から露出するボディコンタクト領域BC、n型ソース領域SRおよびゲート電極GEのそれぞれの上に、層間絶縁膜IL1として、酸化シリコン膜をCVD法により堆積する。次いで、層間絶縁膜IL1上に、ボディコンタクト領域BCおよびその両側のn型ソース領域SRの一部上に開口部を有するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。次いで、このフォトレジスト膜をマスクとして、層間絶縁膜IL1をエッチングすることにより、コンタクトホールCNTを形成する。このコンタクトホールCNTの下方には、ボディコンタクト領域BCおよびn型ソース領域SRの一部が露出する。なお、
図12に示す断面には示されない、ゲート電極GE上の層間絶縁膜IL1を除去し、ゲート電極GE上においてもコンタクトホール(図示せず)を形成する。
【0059】
次いで、ソース電極SEを形成する。例えば、コンタクトホールCNTの内部および層間絶縁膜IL1のそれぞれの上に、バリアメタル膜(図示せず)として、TiN膜をスパッタリング法などにより形成する。次いで、バリアメタル膜(図示せず)上に、導電性膜として、Al膜をスパッタリング法などにより形成する。次いで、バリアメタル膜(図示せず)と導電性膜(Al膜)との積層膜をパターニングすることにより、ソース電極SEを形成する。この際、
図12の断面に表れない、ゲート線GLやゲートパッドGPDが形成される(
図3参照)。なお、ボディコンタクト領域BC上(コンタクトホールCNTの内壁)に、シリサイド膜を形成した後、ソース電極SEなどを形成してもよい。
【0060】
次いで、ソース電極SE、ゲート線GL、ゲートパッドGPDを覆うように表面保護膜PASを形成する。例えば、ソース電極SEなどの上に、表面保護膜PASとして、CVD法などで酸化シリコン膜を堆積する。そして、表面保護膜PASをパターニングすることにより、ソース電極SEの一部領域と、ゲートパッドGPDの一部領域とを露出させる。この露出部が、外部接続領域(パッド)となる。
【0061】
次いで、SiC基板1Sの主面と反対側である裏面(第2面)を上面とし、SiC基板1Sの裏面を研削し、SiC基板1Sを薄膜化する。
【0062】
次いで、SiC基板1Sの裏面に、ドレイン電極DEを形成する。例えば、SiC基板1Sの裏面側を上面とし、金属膜を形成する。例えば、Ti膜、Ni膜およびAu膜を順次スパッタリング法などにより形成する。これにより、金属膜よりなるドレイン電極DEを形成することができる。なお、金属膜とSiC基板1Sとの間にシリサイド膜を形成してもよい。この後、複数のチップ領域を有するSiC基板(ウエハ)1Sをチップ領域ごとに切り出す。
【0063】
以上の工程により、本実施の形態の半導体装置を形成することができる。
【0064】
なお、上記工程においては、第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2との積層体によりn型ドリフト層DRを構成したが、n型ドリフト層DRを単層のエピタキシャル層EPとし、その内部に、深いイオン注入によりセル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2を設けてもよい。
【0065】
(効果)
このように、本実施の形態によれば、セル領域CELのp型埋込み領域PT1および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2を設け、さらに周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅をセル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅より小さく配置する。このことで、ゲート絶縁膜GIへの電界集中を緩和し、セル領域CELの耐圧を維持しつつ、周辺領域TERでの局部的な電界集中を抑え、耐圧劣化を抑制することができる。以下、実施の形態の効果について、比較例を参照しながら詳細に説明する。
【0066】
図13は、比較例のトレンチTRとp型埋込み領域PT1の関係を示す平面図である。
図14は、比較例の断面図である。比較例においては、セル領域CELのp型埋込み領域PT1が、セル領域CELと周辺領域TERとにおいて、同じ幅のp型埋込み領域PT1が配置されている。
【0067】
図15は、比較例および本実施の形態に係る半導体装置の耐圧と、p型埋込み領域PT1およびPT2の幅との関係を示したグラフである。横軸は、セル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅および周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅を示し、縦軸は耐圧(BVoff、[a.u.])を示す。なお、本実施の形態の一例として、p型埋込み領域PT1とp型埋込み領域PT2のp型不純物の濃度は、2×10
18cm
-3~7×10
18cm
-3とした。
【0068】
図15に示すように、p型埋込み領域PT1とp型埋込み領域PT2が同じ幅の場合、周辺領域TERの方がセル領域CELよりも耐圧が低いことがわかる。また、
図13および
図14に示す比較例の場合、破線部で示す目標耐圧に対して、セル領域CELでは目標耐圧を満足するが周辺領域TERでは十分な耐圧が得られない。しかしながら、本実施の形態においては、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅を小さくすることで、周辺領域TERでも目標耐圧を満足できることが分かる。
【0069】
このように、本実施の形態に係る半導体装置においては、セル領域CELの耐圧を維持しつつ、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅を小さくすることで、周辺領域TERも目標耐圧を満足することができる。
【0070】
なお、p型埋込み領域PT2の幅がp型埋込み領域PT1の幅よりも小さいことは、p型埋込み領域PT1がバイアス印加時に空乏化しないことでゲート絶縁膜GIの電界を緩和するのに対して、p型埋込み領域PT2は空乏化することで周辺領域TERの耐圧低下を防止する観点から好ましい。たとえば、p型埋込み領域PT1の幅に対するp型埋込み領域PT2の幅の比は0.2~0.8の範囲とすることが好ましく、0.5以下が最も好ましい。
【0071】
[実施の形態2]
図16は、本実施の形態2に係る半導体装置の構成の一例を示す要部平面図である。
図16に示されるように、セル領域CELの埋込みp型埋込み領域PT1は、トレンチTRの下に位置するp型埋込み領域(第1領域)PRT1と、トレンチTRからX方向に距離Lに位置するp型埋込み領域(第2領域)PRS1とからなる。また、p型埋込み領域(第1領域)PRT1、p型埋込み領域(第2領域)PRS1は、トレンチが延在するY方向にそれぞれ間引かれ、千鳥状に配置されている。
【0072】
また周辺領域TERのp型埋込み領域PT2も同様に、p型埋込み領域(第1領域)PRT2と、p型埋込み領域(第2領域)PRS2とからなる。また、p型埋込み領域(第1領域)PRT2、p型埋込み領域(第2領域)PRS2は、トレンチが延在するY方向にそれぞれ間引かれ、千鳥状に配置されている。
【0073】
言い換えると、複数のp型埋込み領域PT2を有し、トレンチはY方向に延在し、p型埋込み領域PT2は、Y方向に一定の間隔をおいて配置される複数のp型埋込み領域(第1領域)PRT2よりなり、平面視において、Y方向に直交するX方向に、隣り合うp型埋込み領域PT2は、Y方向に一定の間隔をおいて配置される複数のp型埋込み領域(第2領域)PRS2よりなり、p型埋込み領域(第1領域)PRT2と、p型埋込み領域(第2領域)PRS2は、Y方向にp型埋込み領域(第1領域)PRT2の繰り返しピッチと、p型埋込み領域(第2領域)PRS2の繰り返しピッチが半分ずれて配置されている。
【0074】
図17は、
図16に示すA-Aにおける断面図であり、
図18は、
図16に示すB-Bにおける断面図である。
図17および
図18に示されるように、n型ドリフト層DRが第1エピタキシャル層EP1とこの上の第2エピタキシャル層EP2との積層部で構成されている。第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2との境界部に、埋込み層であるp型埋込み領域(PRS1、PRT1)が設けられている。このp型埋込み領域(PRS1、PRT1、電界緩和領域)は、トレンチTRの底面より深い位置であって、n型ドリフト層DRと逆導電型の不純物を有し、n型ドリフト層DRの途中に位置する。このように、p型埋込み領域(PRS1、PRT1)を設けることにより、ゲート絶縁膜GIにかかる電界を緩和することができ、本実施の形態に係る半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0075】
図17および
図18に示すように、第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2との境界部のp型埋込み領域(PRS1、PRT1)のうち、トレンチTRの下方に位置するp型埋込み領域を“PRT1”と、ボディコンタクト領域BC(即ち、トレンチTRの横)の下方に位置するp型埋込み領域を“PRS1”とする。
【0076】
p型埋込み領域PRT1は、トレンチTRの下方のn型ドリフト層DR中に、平面視においてトレンチの形成領域と重なる位置に形成され、n型ドリフト層DRと逆導電型の不純物を有する。また、p型埋込み領域PRS1は、トレンチTRの下方のn型ドリフト層DR中に、平面においてトレンチの形成領域と距離Lだけ離間して形成され、n型ドリフト層DRと逆導電型の不純物を有する。
【0077】
そして、p型埋込み領域PRS1は、トレンチTRに沿って、所定の間隔をおいて配置される。別の言い方をすれば、p型埋込み領域PRS1は、トレンチTR(ゲート電極GE)の延在方向に配置されるもののその一部が間引かれて配置されている。p型埋込み領域PRS1が間引かれた領域が、隙間となる。
【0078】
このように、p型埋込み領域PRS1を間引くことで、電流経路(電流パス)を確保することができ、オン抵抗を低減することができる。
【0079】
そして、
図16に示すトランジスタは、平面視において繰り返し配置されている。
【0080】
(効果)
図19に示すように、p型埋込み領域PT1とp型埋込み領域PT2が同じ幅の場合、周辺領域TERの方がセル領域CELよりも耐圧が低いことがわかる。しかしながら、本実施の形態2においては、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の配置を千鳥配置PRT2、PRS2とすることで、実施の形態1よりもさらに、周辺領域TERでもターゲットの耐圧を満足できる。
【0081】
このように、本実施の形態2の半導体装置においては、セル領域CELの耐圧を維持しつつ、周辺領域TERにおいて千鳥配置のp型埋込み領域PRT2およびPRS2を有するp型埋込み領域PT2を設けることで、周辺領域TERの耐圧劣化を抑制することができる。
【0082】
[変形例]
図20は、本実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す平面図である。
図21は、
図20に示すA-A部における本実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図21に示されるように、n型ドリフト層DRが第1エピタキシャル層EP1とこの上の第2エピタキシャル層EP2との積層部で構成され、第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2との境界部に、埋込み層であるp型埋込み領域PT1が設けられている。このp型埋込み領域PT1(電界緩和領域)は、トレンチTRの底面より深い位置であって、n型ドリフト層DRと逆導電型の不純物を有し、n型ドリフト層DRの途中に位置する。このように、p型埋込み領域PT1を設けることにより、ゲート絶縁膜GIにかかる電界を緩和することができ、本実施の形態に係る半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0083】
さらに、
図20および
図21に示されるように、セル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅に比べ、周辺領域TERにおいて、p型埋込み領域PT2の幅がセル領域CELから離れるに方向に、徐々に小さくなっている。
【0084】
図22は、本実施の形態2の変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す平面図である。
図23は、
図22に示すA-A部における本実施の形態2の変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図23に示されるように、n型ドリフト層DRが第1エピタキシャル層EP1とこの上の第2エピタキシャル層EP2との積層部で構成され、第1エピタキシャル層EP1と第2エピタキシャル層EP2との境界部に、埋込み層であるp型埋込み領域PT1が設けられている。このp型埋込み領域PT1(電界緩和層)は、トレンチTRの底面より深い位置であって、n型ドリフト層DRと逆導電型の不純物を有し、n型ドリフト層DRの途中に位置する。このように、p型埋込み領域PT1を設けることにより、ゲート絶縁膜GIにかかる電界を緩和することができ、本実施の形態に係る半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0085】
さらに、
図22および
図23に示されるように、セル領域CELのp型埋込み領域PT1の幅に比べ、周辺領域TERにおいて、p型埋込み領域PT2の幅がセル領域CELから離れるに方向に、徐々に小さくなっている。また、セル領域から周辺領域にかけて、隣り合うp型埋込み領域PT2の間隔も小さくなっている。
【0086】
(効果)
図19に示すように、p型埋込み領域PT1とp型埋込み領域PT2が同じ幅の場合、周辺領域TERの方がセル領域CELよりも耐圧が低いことがわかる。しかしながら、本変形例においては、周辺領域TERのp型埋込み領域PT2の幅を徐々に小さくすることで、急激な電界勾配を抑制し、周辺領域TERでもターゲットの耐圧を満足できることが分かる。
【0087】
このように、変形例の半導体装置においては、セル領域CELの耐圧を維持しつつ、周辺領域TERの耐圧劣化を抑制することができる。
【0088】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0089】
また、特定の数値例について記載した場合であっても、理論的に明らかにその数値に限定される場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値であってもよい。また、成分については、「Aを主要な成分として含むB」などの意味であり、他の成分を含む態様を排除するものではない。
【符号の説明】
【0090】
1S SiC基板
BC ボディコンタクト領域
CEL セル領域
CH チャネル層
CNT コンタクトホール
DE ドレイン電極
DR ドリフト層
EP1 第1ドリフトエピタキシャル層
EP2 第2ドリフトエピタキシャル層
GE ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GL ゲート線
GPD ゲートパッド
IL1 層間絶縁膜
L 距離
MK1~MK5 マスク膜
OA 開口部
PAS 表面保護膜
PJTE p型埋込み領域(p型電界緩和領域)
PRS1 p型埋込み領域
PRS2 p型埋込み領域
PRT1 p型埋込み領域
PRT2 p型埋込み領域
PT1 p型埋込み領域
PT2 p型埋込み領域
SE ソース電極
SPD ソースパッド
SR ソース領域
TER 周辺領域
TR トレンチ