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7288853ゲノムネットワークを構築するための方法およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】ゲノムネットワークを構築するための方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6816 20180101AFI20230601BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230601BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230601BHJP
   G16B 5/00 20190101ALI20230601BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20230601BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z ZNA
C12Q1/02
C12N5/10
G16B5/00
C12N15/31
C12N15/12
【請求項の数】 49
(21)【出願番号】P 2019540352
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2018015331
(87)【国際公開番号】W WO2018140657
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】62/450,540
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500482810
【氏名又は名称】ホワイトヘッド・インスティテュート・フォー・バイオメディカル・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クラナ, ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】チュン, チ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リンドクイスト, スーザン
(72)【発明者】
【氏名】バーガー, ボニー エー.
(72)【発明者】
【氏名】フレンケル, アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】ペン, ジャン
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-545628(JP,A)
【文献】J. Comput. Biol., 2013, 20(2), pp.124-136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68-1/6897
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の生理学的プロセスまたは病理プロセスをin silicoでモデリングする方法であって、
(a)前記動物の前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物において同定される候補酵母遺伝子のセットを提供するステップと、
(b)ステップ(a)の候補酵母遺伝子を含む酵母遺伝子間の相互作用を提供するステップと、
(c)前記動物の遺伝子間の相互作用を提供するステップと、
(d)候補酵母遺伝子の前記セットに対して相同な、前記動物の遺伝子のセットを決定するステップと、
(e)ステップ(b)の前記相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いて、ステップ(d)において得られた前記動物における遺伝子の前記セット間の相互作用を増大することによって、前記動物の前記生理学的プロセスまたは病理プロセスのin silicoのモデルを作出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セットが、
(i)前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物である1つまたは複数の条件下で、酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾された酵母細胞を提供するステップと、
(ii)前記修飾が、前記条件に対する前記酵母細胞の応答を調節するか否かを決定するステップと、
(iii)前記酵母細胞の応答が調節される場合に、前記酵母遺伝子を候補酵母遺伝子として同定するステップと
を含む方法によって得られた、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記条件が、1種または複数の遺伝子の異常な発現を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種または複数の遺伝子が、非内因性遺伝子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)の酵母細胞の応答の前記調節が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(iii)の候補酵母遺伝子の前記同定が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化の同定を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酵母細胞の応答が、細胞生存力の変化である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セットが、酵母遺伝子のゲノムワイドスクリーンから得られた、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲノムワイドスクリーンが、酵母ゲノムの欠失または過剰発現スクリーンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)および/または(c)が、賞金収集Steiner森(Prize-Collecting Steiner Forest)(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、1つまたは複数の精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)および/または(c)が、多様なアルゴリズムパラメータを用いる前記PCSFアルゴリズムを使用して、マルチプルネットワークを生成することおよび最大全域木アルゴリズムを用いて前記マルチプルネットワークから代表的ネットワークを作出することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)の前記相互作用が、ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セット中に含まれない予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記予測された遺伝子またはタンパク質ノードが、ドラッガブルな標的を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(d)が、前記候補酵母遺伝子と前記動物遺伝子間の核酸配列、ポリペプチド配列、タンパク質構造または分子的相互作用のうち少なくとも1つを比較することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)が、
(i)前記動物遺伝子と前記候補酵母遺伝子間の配列類似性を決定することと、
(ii)前記動物遺伝子と前記候補酵母遺伝子間の進化的類似性および構造類似性を決定することと、
(iii)前記動物遺伝子および前記候補酵母遺伝子間の分子的相互作用類似性を決定することと、
(iv)拡散成分解析を使用してステップ(i)から(iii)における前記類似性を統合することによって、候補酵母遺伝子の前記セットに対して相同な、前記動物における遺伝子のセットを決定することと
を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(i)が、BLOSUM62置換マトリックスおよび/またはDIOPTを用いてNCBIタンパク質BLASTを利用することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(ii)が、PSI-BLASTを利用して、マルチプル配列アラインメントを構築し、プロファイル隠れマルコフモデルを築いて、リモート進化信号をコードし、それに続いてHHpredを行うことを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(iii)が、遺伝子の機能解析のためのマルチ-ネットワークトポロジーのコンパクト統合(Compact Integration of Multi-Network Topology for Functional Analysis of
Genes)(Mashup)を利用することを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(e)が、前記賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(e)が、多様なアルゴリズムパラメータを用いる前記PCSFアルゴリズムを使用して、マルチプルネットワークを生成するステップおよび最大全域木アルゴリズムを用いて前記マルチプルネットワークから代表的ネットワークを作出することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(e)の前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの前記モデルが、ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セット中に含まれない予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記予測された遺伝子またはタンパク質ノードが、ドラッガブルな標的を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生理学的プロセスまたは病理プロセスが、神経変性疾患である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生理学的プロセスまたは病理プロセスが、神経変性タンパク質症である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記生理学的プロセスまたは病理プロセスが、シヌクレイン症、アルツハイマー病、前頭側頭変性症、脊髄小脳失調症、ハンチントン病または筋萎縮性側索硬化症である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記動物がヒトである、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記in silicoのモデルを一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶するステップをさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
細胞を生成する方法であって、
(i)請求項1から27のいずれか一項に記載の方法に従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのin silicoのモデルを得るステップと、
(ii)ステップ(i)において得られた前記in silicoのモデルにおいて遺伝子ノードを同定するステップと、
(iii)前記遺伝子ノードの発現の変更または前記遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞を培養物中で生成するステップであって、前記細胞がヒト胚幹細胞ではない、ステップ
を含む、方法。
【請求項29】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が、人工多能性幹細胞または人工多能性幹細胞に由来する細胞である、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(iii)が、細胞のゲノムに付加、欠失、破壊または突然変異を導入するステップを含む、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
生理学的プロセスまたは病理プロセスのモジュレーターについてスクリーニングする方法であって、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法に従って生成された細胞を得るステップおよび前記細胞を使用して、前記生理学的プロセスまたは病理プロセスのモジュレーターについて化合物をスクリーニングするステップを含む、方法。
【請求項34】
生理学的プロセスまたは病理プロセスを有する動物において療法の標的を決定する方法であって、
(i)請求項1から27のいずれか一項に記載の方法に従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのin silicoのモデルを得るステップと、
(ii)ステップ(i)において得られた前記in silicoのモデルの1種または複数の遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、
(iii)前記動物が、ステップ(ii)において同定された前記遺伝子またはタンパク質ノードのいずれかにおける突然変異、発現の変更または活性の変更を有するか否かを決定するステップと
を含む、方法。
【請求項35】
動物において病理プロセスを処置するための化合物についてスクリーニングする方法であって、
(i)請求項1から27のいずれか一項に記載のin silicoの方法によって前記動物における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングするステップと、
(ii)ステップ(i)のin silicoのモデルの遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、
(iii)化合物をスクリーニングして前記同定された遺伝子またはタンパク質ノードのモジュレーターを同定するステップと
を含む、方法。
【請求項36】
生理学的プロセスまたは病理プロセスをin silicoでモデリングする方法であって、
(a)前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物において同定される酵母遺伝子のセットを提供するステップと、
(b)ステップ(a)の酵母遺伝子の前記セットを含む酵母遺伝子間の相互作用を得るステップと、
(c)酵母遺伝子の前記セットを使用して前記生理学的プロセスまたは病理プロセスのin silicoのモデルを作出するステップと
を含み、ステップ(b)の前記相互作用が、賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することによって得られ、ステップ(b)が、多様なアルゴリズムパラメータを用いる前記PCSFアルゴリズムを使用して、マルチプルネットワークを生成すること、および最大全域木アルゴリズムを用いて前記マルチプルネットワークから代表的ネットワークを作出することをさらに含む、方法。
【請求項37】
ステップ(a)の酵母遺伝子の前記セットが、
(i)前記生理学的プロセスまたは病理プロセスに対する酵母類似物の条件下で、酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾された酵母細胞を提供するステップと、
(ii)前記修飾が、前記条件に対する前記酵母細胞の応答を調節するか否かを決定するステップと、
(iii)前記酵母細胞の応答が調節される場合に、前記酵母遺伝子を候補酵母遺伝子として同定するステップと
を含む方法によって得られた、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記条件が、1種または複数の遺伝子の異常な発現を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1種または複数の遺伝子が、非内因性遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(ii)の酵母細胞の応答の前記調節が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を含む、請求項36から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(iii)の候補酵母遺伝子の前記同定が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化の同定を含む、請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記酵母細胞の応答が、細胞生存力の変化である、請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セットが、酵母遺伝子のゲノムワイドスクリーンから得られた、請求項36から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ゲノムワイドスクリーンが、酵母ゲノムの欠失または過剰発現スクリーンを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(b)の前記相互作用が、ステップ(a)の真核生物遺伝子のセット中に含まれない予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む、請求項36から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記予測された遺伝子またはタンパク質ノードが、ドラッガブルな標的を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記非内因性遺伝子が、ヒト遺伝子である、請求項36から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記in silicoのモデルを一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶するステップをさらに含む、請求項36から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
真核生物において病理プロセスを処置するために化合物についてスクリーニングする方法であって、
(i)請求項36から48のいずれか一項に記載の方法によって前記真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングするステップと、
(ii)ステップ(i)のモデルの遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、
(iii)化合物をスクリーニングして前記同定された遺伝子またはタンパク質ノードのモジュレーターを同定するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年1月25日に出願された米国仮出願番号第62/450,540号の利益を主張しており、その全体の教示は、参考として本明細書中に援用される。
【0002】
政府支援
本発明は、国立衛生研究所によって授与された認可番号AG038546、CA184898、GM089903、GM081871、HG006061、HG004233およびHG001715の下、政府支援でなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する
【背景技術】
【0003】
発明の背景
一般的な神経変性疾患は、明確なニューロン集団の喪失およびミスフォールディングされたタンパク質の異常な蓄積をもたらす。パーキンソン病(PD)、レビー小体を伴う認知症および多系統萎縮症を含むシヌクレイン症は、α-シヌクレイン(α-syn)の異常な細胞内凝集と関連している。アルツハイマー病(AD)は、アミロイド-β(Aβ)およびタウ蓄積と関連しているが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、TAR DNA結合性タンパク質43(TDP-43)の局在性および蓄積の変更などと関連している。これらの疾患の病態形成に関する仮説の豊富な供給源は、死後脳の神経病理学に由来してきた。これらの観察は、重要な洞察を提供しながら、疾患開始の数十年後に行われる。
【0004】
直近20年にわたるヒト遺伝子解析における革命により、タンパク質-ミスフォールディングを神経変性プロセスと結びつける疾患を引き起こす突然変異が明らかにされた。例えば、α-syn(SNCA)遺伝子座での点突然変異および遺伝子増大は、稀であるが早期発症の、高浸透型のPDおよび認知症につながる。遺伝子発現を増大するSNCA遺伝子座の調節領域における多型は、遅発性PDのリスクの増大を与える(Fuchsら、2008年;Nallsら、2014年)。これらの研究によって、動物および細胞疾患モデルの作出が可能となり、疾患機序の理解が深まった。しかし、これの知識をもってしても、新たな一連の課題が浮上した。
【0005】
第1に、外見上共通点のない遺伝子が、特定の臨床表現型に関係していた。例えば、パーキンソニズムは、緩慢さ(動作緩慢)、剛直性、振戦および姿勢の不安定性を特徴とする。最も一般的な形態は、α-syn病理学およびドーパミンニューロンの喪失によって規定されるPDである。しかし、別個の遺伝的シグネチャーおよび神経病理学と関係している多数の他の疾患実体が、パーキンソニズムにつながることがあり、これは、遺伝子型、神経病理学および臨床症状の間には、簡単な対応関係があるのではないということを実証する(Martinら、2011年;Shulmanら、2010年;Verstraetenら、2015年)。主な臨床表現型としてパーキンソニズムを伴うそれらのいくつかの遺伝子座は、多数の「PARK」命名(例えば、SNCA/PARK1遺伝子座自体およびLRRK2/PARK8)を与えられてきたが、同一遺伝子中の突然変異でさえ、別個の神経病理学および多様な臨床症状をもたらすことがある(Martinら、2011年;Shulmanら、2010年;Verstraetenら、2015年)。パーキンソニズムの遺伝的リスク因子と、α-syn自体との関係の間の相互関係を理解することは、患者層別化および標的とされる治療戦略にとって重要である。
【0006】
第2に、ヒト遺伝子研究は、不明瞭な、議論の余地のあるデータをもたらすこともあった。レアバリアントについては、ヒト集団のかなり最近の遺伝的多様性が、種々の集団間の交差検証の伝統的な方法を実行不可能にすることもある(Nelsonら、2012年;Tennessenら、2012年)。文献における不一致は多く存在する-例えば、「PARK5」としてUCHL1を、「PARK18」として翻訳開始因子EIF4G1を意味付ける研究は、再現できなかった。一般的な多型について、課題は、SNPと関連する複数の候補遺伝子座間を区別することである。どの遺伝的因子が必然的に疾患プロセスと関連しているかおよびその方法を十分に確立するために、生物学的検証が必要とされるであろうということは明確になってきている(CasalsおよびBertranpetit、2012年)。
【0007】
候補遺伝子バリアントを検証し、そのタンパク質症との関係を理解するための1つのアプローチは、全ゲノムを系統的にスクリーニングして、過剰発現または欠失した場合にタンパク質毒性を修飾するすべての遺伝子を同定することである。これは、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、比類なき遺伝的扱いやすさの単細胞真核生物において達成可能である。酵母は、ミスフォールディングされたタンパク質によって誘導される細胞毒性を理解するために高度に情報価値があるとわかっている(KhuranaおよびLindquist、2010年)。神経変性疾患についてのヒトの遺伝的データは、タンパク質ホメオスタシスおよび品質管理、タンパク質輸送、RNA代謝およびミトコンドリア機能を含む、真核細胞進化において最も高度に保存されているものの1つである細胞経路に深く関与しているので、これは驚くべきことではない(Brasら、2015年;Guerreiroら、2015年)。
【0008】
酵母において神経変性と関連する毒性タンパク質を発現させることによって、酵母におけるゲノムワイドの表現型スクリーニングに適した頑健な容易にスコア可能な成長/生存力欠陥が生じる。α-syn、ベータ-アミロイドおよびTDP-43の毒性は、酵母ゲノムの大部分を含む約5500ORFのものを個々に過剰発現させることによってスクリーニングされている(KhuranaおよびLindquist、2010年;H.-J. Kimら、2013年;Treuschら、2011年;Yeger-Lotemら、2009年)。これらのスクリーンは、ニューロンおよび動物モデルにおける細胞病理の発見を導き(Cooperら、2006年;Dhungelら、2014年;KhuranaおよびLindquist、2010年;H.-J. Kimら、2013年)、遺伝的修飾因子データと遺伝子発現解析の関係に重要な洞察をもたらし(Yeger-Lotemら、2009年)、新規ヒト疾患遺伝子の同定につながった(Eldenら、2010年)。最近、酵母シヌクレイン症モデルにおける表現型スクリーニングによって特定されたプロセスが、α-syn遺伝子座での突然変異による、PDを有する患者に由来する人工多能性幹細胞(iPSc)由来ニューロンにおける細胞病理の発見につながった(Chungら、2013年)。その研究では、ハイスループット遺伝子スクリーンと小分子スクリーンを統合することによって、酵母からニューロンへ病理を補正することができる遺伝子および小分子を同定した(Chungら、2013年;Tardiffら、2013年;2014年)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
多数の遺伝子および分子経路が、神経変性タンパク質症に関与しているが、その相互関係は、十分に理解されていない。本発明者らは、アルファ-シヌクレイン(α-syn)、パーキンソン病の中心となるタンパク質の毒性の根底にある分子経路を系統的にマッピングした。酵母におけるゲノムワイドスクリーンによって、α-syn毒性に影響を及ぼす332種の遺伝子を同定した。この分子ネットワークを「ヒト化」するために、本発明者らは、コンピュータによる方法、TransposeNetを開発した。これは、Steinerの賞金収集(prize-collecting)アプローチを、配列、構造および相互作用トポロジーを介した相同性割り当てと統合する。TransposeNetは、α-synを、撹乱されたタンパク質輸送/ER品質管理およびmRNA代謝/翻訳を介して、複数のパーキンソニズム遺伝子およびドラッガブルな標的と関連付けた。カルシウムシグナル伝達ハブは、これらのプロセスを、撹乱されたミトコンドリア品質管理/機能、金属イオン輸送、転写調節およびシグナル伝達と関連付けた。ネットワーク(ATP13A2/PARK9、VPS35/PARK17)中で空間的に反対のパーキンソニズム遺伝子相互作用プロファイルは、高度に別個であり、患者iPS細胞由来ニューロンにおいて特定の遺伝子(LRRK2/PARK8、ATXN2およびEIF4G1/PARK18)のネットワーク関係が確認された。この異種間プラットフォームは、多様な神経変性遺伝子を、特定の機序を介してタンパク質症に結び付け、標的化された療法のための患者層別化を容易にし得る。
【0010】
ここで、本発明者らは、コンピュータによる新しいアプローチを、実質的により広い酵母遺伝子スクリーンと組み合わせることによって、α-synおよび他のタンパク質毒性のゲノムスケールのネットワークを構築した。酵母および患者由来ニューロンにおける有意義な分子的接続を発見するために、本発明者らは、1)配列、構造および分子的相互作用を考慮することによって、酵母ヒットをそのヒト相同体にマッピングし、2)賞金収集Steiner森(prize-collecting Steiner forest)アルゴリズム(SteinerForest Ensemble)に基づいて最適化フレームワークを介して、酵母ヒットと隠れたヒト遺伝子を関連付けることによってネットワークを構築し、3)ヒトインタラクトームの相対的希薄を補うために酵母における公知の分子的相互作用の比類なき密度を利用して、酵母からヒトへ種をまたいで分子的相互作用を置き換えるTransposeNetアルゴリズムを開発した。ネットワークは、多数のパーキンソニズムおよび神経変性疾患リスク因子を、特定の分子経路、最も著しくは小胞輸送およびmRNA代謝を介してα-syn毒性と関連づけた。
【0011】
本発明の実施は、通常、特に断りのない限り、当業者の技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換え核酸(例えば、DNA)技術、免疫学およびRNA干渉(RNAi)の従来技術を使用する。これらの技術の特定のものの限定されない説明は、以下の刊行物において見られる:Ausubel, F.ら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Current Protocols in Immunology、Current Protocols in Protein ScienceおよびCurrent Protocols in Cell Biology、すべてJohn Wiley & Sons、N.Y.、2008年12月時点の版;Sambrook、RussellおよびSambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、2001年;Harlow, E.およびLane, D.、Antibodies-A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、1988年;Freshney, R.I.、「Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique」、第5版、John Wiley & Sons、Hoboken、NJ、2005年。治療薬およびヒト疾患に関する限定されない情報は、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第11版、McGraw Hill、2005年、Katzung, B.(編)Basic and Clinical Pharmacology、McGraw-Hill/Appleton & Lange;第10版(2006年)または第11版(2009年7月)に見られる。遺伝子および遺伝的障害に関する限定されない情報は、McKusick, V.A.:Mendelian Inheritance in Man. A Catalog of Human Genes and Genetic Disorders. Baltimore: Johns Hopkins University Press、1998年(第12版)またはより最近のオンラインデータベース: 2010年5月1日時点のOnline Mendelian Inheritance in Man、OMIM(商標)McKusick-Nathans Institute of Genetic Medicine、Johns Hopkins University (Baltimore, MD)およびNational Center for Biotechnology Information、National Library of Medicine (Bethesda, MD)、ncbi.nlm.nih.gov/omim/に、および遺伝子、遺伝性障害および動物種(ヒトおよびマウス以外)における形質のデータベースである、Online Mendelian Inheritance in Animals (OMIA)、omia.angis.org.au/contact.shtmlに見られる。すべての特許、特許出願および本明細書において言及されるその他の刊行物(例えば、科学論文、書籍、ウェブサイトおよびデータベース)は、参照によりその全文が組み込まれる。本明細書と、組み込まれた参考文献のいずれかの間が矛盾する場合には、本明細書(組み込まれた参考文献に基づく可能性がある、その任意の修正を含む)が支配するべきである。特に断りのない限り、用語の標準技術によって許容される意味が、本明細書において使用される。種々の用語の標準的な略語が本明細書において使用される。
【0012】
いくつかの態様では、本発明は、第1の真核生物(例えば、真菌、原生動物、昆虫、植物、脊椎動物)において生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、(a)第1の真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスの類似物を有する第2の真核生物(例えば、真菌、原生動物、昆虫、植物、脊椎動物)において同定される候補真核細胞遺伝子のセットを提供するステップと、(b)ステップ(a)の候補真核細胞遺伝子を含む第1の真核生物の真核生物遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(c)第2の真核生物における遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(d)候補真核細胞遺伝子のセットに対して相同な、第1の真核生物における遺伝子のセットを決定するステップと、(e)第2の真核生物から得られたステップ(b)の相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いて、ステップ(d)において得られた第1の真核生物における遺伝子のセット間の相互作用を増大することによって、第1の真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップとを含む方法を対象とする。いくつかの実施形態では、第1および第2の真核生物における遺伝子のセットが、互いの相同体を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、神経変性疾患である。いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、神経変性タンパク質症である。いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、シヌクレイン症、アルツハイマー病、前頭側頭変性症、脊髄小脳失調症、ハンチントン病または筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態では、シヌクレイン症は、パーキンソン病である。
【0014】
いくつかの実施形態では、両真核生物(例えば、ヒトおよび酵母)のネットワークトポロジーならびにそれらの間の配列/構造類似性を比較して、相同性を決定する。いくつかの態様では、配列および構造類似性スコアは、確率分布に変換され、希薄なベクトルを表現するものを含むすべてのノードの対の特徴ベクトルが、関連ベクトルとパラメータ化された多項分布間のカルバック・ライブラー(Kullbeck-Leibler)(KL)ダイバージェンスを最小化することによって一緒にコンピュータ処理される。「ノード」とは、遺伝子またはタンパク質を指す。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の真核生物(例えば、酵母)における遺伝子の相互作用に基づいて、第1の真核生物(例えば、ヒト)における遺伝子間の相互作用を増大するために、推測された相同性を使用してもよい。いくつかの実施形態では、相互作用が第2の真核生物における遺伝子の相同なペアの中に存在する場合には、推測された相互作用を第1の真核生物のネットワークに加えてもよい。いくつかの実施形態では、第1の真核生物における遺伝子対と、第2の真核生物における遺伝子対間の、相同性の特定の閾値のみで、推測された相互作用を加える。いくつかの実施形態では、閾値は、第1の真核生物(例えば、ヒト)における相互作用の密度が、第2の真核生物(例えば、酵母)における相互作用の密度と同様であるよう設定する。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2の真核生物からの相互作用を増大することによって、第1の真核生物(例えば、ヒト)における生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップは、賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して(Choら、2015年;Tuncbagら、2013年;2016年;Voevodskiら、2009年)、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、1つまたは複数の精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続するステップを含む。いくつかの実施形態では、PCSFアルゴリズムの目的の機能パラメータを、賞金収集Steiner木問題(PCST)および公知のメッセージ伝達アルゴリズムを用いて決定する。Bailly-Bechetら、2011年;Choら、2015年を参照のこと。
【0017】
いくつかの実施形態では、最も頑健な代表的ネットワークを見い出すために、最大全域木アルゴリズムを使用してマルチプルネットワークを組み合わせる。いくつかの実施形態では、代表的ネットワークの統計的有意性が、第1の真核生物および第2の真核生物間の遺伝子のランダム対形成から生成されたネットワークに対して検証される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、動物(例えば、ヒト、マウス)において生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、(a)動物における生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物において同定される候補酵母遺伝子のセットを提供するステップと、(b)ステップ(a)の候補酵母遺伝子を含む酵母遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(c)動物における遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(d)候補酵母遺伝子のセットに対して相同な、動物における遺伝子のセットを決定するステップと、(e)ステップ(b)の相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いて、ステップ(d)において得られた動物における遺伝子のセット間の相互作用を増大することによって、動物における生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップとを含む方法を対象とする。
【0019】
いくつかの実施形態では、(i)前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物である条件下で、酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾された酵母細胞を提供するステップと、(ii)修飾が、条件に対する酵母細胞の応答を調節するか否かを決定するステップと、(iii)酵母細胞の応答が調節される場合に、酵母遺伝子を候補酵母遺伝子として同定するステップとを含む方法によって、ステップ(a)の候補酵母遺伝子のセットを得た。いくつかの実施形態では、条件は、1種または複数の遺伝子の異常な発現(例えば、過剰発現、発現の低減、発現の消失)を含む。いくつかの実施形態では、1種または複数の遺伝子は、非内因性遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、ステップ(ii)の酵母細胞の応答の調節は、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を含む。いくつかの実施形態では、ステップ(iii)の候補酵母遺伝子の同定は、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化の同定を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書における方法によって作出された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルは、1つまたは複数の予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、モデリングされた生理学的プロセスまたは病理プロセスに関与する、1種または複数の他の遺伝子またはタンパク質(例えば、予測された遺伝子またはタンパク質)を同定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、予測された遺伝子またはタンパク質ノードは、ドラッガブルな標的を含む。
【0021】
本発明の別の態様は、細胞の生成であって、(a)本明細書において開示される方法のいずれかに従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを得るステップと、(b)ステップ(a)において得られたモデルにおいて遺伝子ノードを同定するステップと、(c)遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞を生成するステップとを含む細胞の生成を対象とする。
【0022】
いくつかの態様では、1つまたは複数の突然変異を細胞中に導入し、それが遺伝子の発現または遺伝子の遺伝子産物の活性を変更することによって、遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞を得る。1つまたは複数の突然変異は、細胞のゲノムへの挿入、欠失、破壊または置換のうち1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子の欠失を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子または遺伝子の一部の追加のコピーの挿入を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、調節配列を修飾し、遺伝子の遺伝子産物の発現を増大または減少させる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子の遺伝子産物の活性を増大または減少させる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子の遺伝子産物の細胞性分解速度を増大または減少させる。
【0023】
いくつかの態様では、本発明は、生理学的プロセスまたは病理プロセスのモジュレーターについてスクリーニングする方法であって、遺伝子ノードの発現または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞(すなわち、変更された細胞)を提供するステップと、生理学的プロセスまたは病理プロセス(例えば、本明細書において開示される方法によってモデリングされる生理学的プロセスまたは病理プロセス)のモジュレーターについて化合物をスクリーニングするために細胞を使用するステップとを含む方法を対象とする。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法によって細胞が得られる。いくつかの実施形態では、スクリーニングの方法は、変更された細胞を薬剤(例えば、小分子、核酸、抗体またはポリペプチド)と接触させるステップおよび少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を測定するステップを含む。
【0024】
いくつかの態様では、本発明は、生物(例えば、ヒト、真核生物、哺乳動物)において病理プロセスを処置するために化合物についてスクリーニングする方法であって、(a)本明細書において開示される任意の方法によって生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングするステップと、(b)ステップ(a)のモデルの遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、化合物をスクリーニングして同定された遺伝子またはタンパク質ノードのモジュレーターを同定するステップとを含む方法を対象とする。
【0025】
いくつかの態様では、本発明は、生理学的プロセスまたは病理プロセス(例えば、神経変性状態、疾患、障害)を有する生物(例えば、真核生物、ヒト)において療法のための1種または複数の標的を決定する方法であって、(a)本明細書において開示される方法のいずれかに従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを得るステップと、(b)ステップ(a)において得られたモデルの1種または複数の遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、(c)生物が、ステップ(b)において同定された遺伝子またはタンパク質ノードのいずれかにおいて突然変異、発現の変更または活性の変更を有するか否かを決定するステップとを含む方法を対象とする。
【0026】
いくつかの態様では、本発明は、第2の真核生物(例えば、酵母)において第1の真核生物(例えば、ヒト)の生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、(a)第1の真核生物の生理学的プロセスまたは病理プロセスの第2の真核生物類似物において同定された遺伝子のセットを提供するステップと、(b)同定された遺伝子間の相互作用を得るステップと、(c)生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップとを含む方法を対象とする。いくつかの実施形態では、ステップ(b)における相互作用は、賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することによって得られる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞を対象とし、細胞は、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている。
【0028】
本発明のその他の態様は、同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれかにおいて列挙される酵母遺伝子の相同体である哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾されている哺乳動物細胞(例えば、ヒト、マウス)に関する。
【0029】
本発明のいくつかの態様は、アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物を同定することを対象とし、方法は、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む。
【0030】
本発明のいくつかの態様は、シヌクレイン症の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0031】
本発明のいくつかの態様は、ヒト細胞または対象においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する方法であって、細胞または対象において表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞を対象とし、細胞は、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている。いくつかの実施形態では、発現構築物は、ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、細胞のゲノム中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0033】
本発明のその他の態様は、同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子の相同体である哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾されている哺乳動物細胞(例えば、ヒト、マウス)に関する。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物遺伝子相同体によってコードされる、または哺乳動物遺伝子相同体において欠失、破壊もしくは突然変異を有するタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む。
【0034】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43媒介毒性を阻害する化合物を同定することを対象とし、方法は、
(a)ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第2列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む。
【0035】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43媒介毒性の処置のための候補薬剤を同定する方法を対象とし、方法は、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第2列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がTDP-43媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がTDP-43媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む。
【0036】
本発明のいくつかの態様は、ヒト細胞または対象においてTDP-43媒介毒性を阻害する方法であって、細胞または対象において、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞を対象とし、細胞は、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている。いくつかの実施形態では、ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物が、細胞のゲノム中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0038】
本発明のその他の態様は、同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子の相同体である哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾されている哺乳動物細胞(例えば、ヒト、マウス)に関する。
【0039】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物を同定することを対象とし、方法は、
(a)ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第3列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む。
【0040】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ媒介毒性の処置のための候補薬剤を同定する方法を対象とし、方法は、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第3列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む。
【0041】
本発明のいくつかの態様は、ヒト細胞または対象においてアミロイドベータ媒介毒性を阻害する方法であって、細胞または対象において、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0042】
本発明のこれらおよび他の特徴は、次の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1枚の図面を含有する。カラー図面入りの本特許または特許出願公開のコピーは、依頼および必要料金の支払いにより、担当省庁によって提供されるであろう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
動物において生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、
(a)前記動物における前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物において同定される候補酵母遺伝子のセットを提供するステップと、
(b)ステップ(a)の候補酵母遺伝子を含む酵母遺伝子間の相互作用を提供するステップと、
(c)前記動物における遺伝子間の相互作用を提供するステップと、
(d)候補酵母遺伝子の前記セットに対して相同な、前記動物における遺伝子のセットを決定するステップと、
(e)ステップ(b)の前記相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いて、ステップ(d)において得られた前記動物における遺伝子の前記セット間の相互作用を増大することによって、前記動物における前記生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップと
を含む、方法。
(項目2)
ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セットが、
(i)前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物である条件下で、酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾された酵母細胞を提供するステップと、
(ii)前記修飾が、前記条件に対する前記酵母細胞の応答を調節するか否かを決定するステップと、
(iii)前記酵母細胞の応答が調節される場合に、前記酵母遺伝子を候補酵母遺伝子として同定するステップと
を含む方法によって得られた、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記条件が、1種または複数の遺伝子の異常な発現を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記条件が、1種または複数の遺伝子の過剰発現を含む、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
前記条件が、1種または複数の遺伝子の発現の低減または消失を含む、項目2から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記1種または複数の遺伝子が、非内因性遺伝子を含む、項目3または4に記載の方法。
(項目7)
ステップ(ii)の酵母細胞の応答の前記調節が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を含む、項目2から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
ステップ(iii)の候補酵母遺伝子の前記同定が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化の同定を含む、項目2から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記酵母細胞の応答が、細胞生存力の変化である、項目2から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セットが、酵母遺伝子のゲノムワイドスクリーンから得られた、項目2から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記ゲノムワイドスクリーンが、酵母ゲノムの欠失または過剰発現スクリーンを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
ステップ(b)および/または(c)が、賞金収集Steiner森(Prize-Collecting Steiner Forest)(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、1つまたは複数の精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することを含む、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
ステップ(b)および/または(c)が、多様なアルゴリズムパラメータを用いる前記PCSFアルゴリズムを使用して、マルチプルネットワークを生成することおよび最大全域木アルゴリズムを用いて前記マルチプルネットワークから代表的ネットワークを作出することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
ステップ(b)の前記相互作用が、ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セット中に含まれない予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記予測された遺伝子またはタンパク質ノードが、ドラッガブルな標的を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
ステップ(d)が、前記候補酵母遺伝子と前記動物遺伝子間の核酸配列、ポリペプチド配列、タンパク質構造または分子的相互作用のうち少なくとも1つを比較することを含む、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
ステップ(d)が、
(i)前記動物遺伝子と前記候補酵母遺伝子間の配列類似性を決定することと、
(ii)前記動物遺伝子と前記候補酵母遺伝子間の進化的類似性および構造類似性を決定することと、
(iii)前記動物遺伝子および前記候補酵母遺伝子間の分子的相互作用類似性を決定することと、
(iv)拡散成分解析を使用してステップ(i)から(iii)における前記類似性を統合することによって、候補酵母遺伝子の前記セットに対して相同な、前記動物における遺伝子のセットを決定することと
を含む、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
ステップ(i)が、BLOSUM62置換マトリックスおよび/またはDIOPTを用いてNCBIタンパク質BLASTを利用することを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
ステップ(ii)が、PSI-BLASTを利用して、マルチプル配列アラインメントを構築し、プロファイル隠れマルコフモデルを築いて、リモート進化信号をコードし、それに続いてHHpredを行うことを含む、項目17または18に記載の方法。
(項目20)
ステップ(iii)が、遺伝子の機能解析のためのマルチ-ネットワークトポロジーのコンパクト統合(Compact Integration of Multi-Network Topology for Functional Analysis of
Genes)(Mashup)を利用することを含む、項目17から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
ステップ(e)が、前記賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することを含む、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
ステップ(e)が、多様なアルゴリズムパラメータを用いる前記PCSFアルゴリズムを使用して、マルチプルネットワークを生成するステップおよび最大全域木アルゴリズムを用いて前記マルチプルネットワークから代表的ネットワークを作出することをさらに含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
ステップ(e)の前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの前記モデルが、ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セット中に含まれない予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記予測された遺伝子またはタンパク質ノードが、ドラッガブルな標的を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記生理学的プロセスまたは病理プロセスが、神経変性疾患である、項目1から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記生理学的プロセスまたは病理プロセスが、神経変性タンパク質症である、項目1から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記生理学的プロセスまたは病理プロセスが、シヌクレイン症、アルツハイマー病、前頭側頭変性症、脊髄小脳失調症、ハンチントン病または筋萎縮性側索硬化症である、項目1から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記シヌクレイン症が、パーキンソン病である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記動物がヒトである、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記モデルを一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶するステップをさらに含む、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
細胞を生成する方法であって、
(a)項目1から30のいずれか一項に記載の方法に従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを得るステップと、
(b)ステップ(a)において得られた前記モデルにおいて遺伝子ノードを同定するステップと、
(c)前記遺伝子ノードの発現の変更または前記遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞を生成するステップと
を含む、方法。
(項目32)
前記細胞が、哺乳動物細胞である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記細胞が、ヒト細胞である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記細胞が、人工多能性幹細胞または人工多能性幹細胞に由来する細胞である、項目31から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
ステップ(c)が、細胞のゲノムに付加、欠失、破壊または突然変異を導入するステップを含む、項目31から34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
生理学的プロセスまたは病理プロセスのモジュレーターについてスクリーニングする方法であって、項目31から35のいずれか一項に記載の方法に従って生成された細胞を得るステップおよび前記細胞を使用して、前記生理学的プロセスまたは病理プロセスのモジュレーターについて化合物をスクリーニングするステップを含む、方法。
(項目37)
生理学的プロセスまたは病理プロセスを有する動物において療法の標的を決定する方法であって、
(a)項目1から30のいずれか一項に記載の方法に従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを得るステップと、
(b)ステップ(a)において得られた前記モデルの1種または複数の遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、
(c)前記動物が、ステップ(b)において同定された前記遺伝子またはタンパク質ノードのいずれかにおける突然変異、発現の変更または活性の変更を有するか否かを決定するステップと
を含む、方法。
(項目38)
動物において病理プロセスを処置するための化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)項目1から30のいずれか一項に記載の方法によって前記動物における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングするステップと、
(b)ステップ(a)のモデルの遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、
(c)化合物をスクリーニングして前記同定された遺伝子またはタンパク質ノードのモジュレーターを同定するステップと
を含む、方法。
(項目39)
項目1から30のいずれか一項に記載の方法を容易にするように構成されたシステムであって、実行された場合に、コンピュータシステムにステップ(a)~(e)のうち少なくとも1つを実施させる1つまたは複数のコンピュータにより実行可能な命令を実行するようにプログラムされた1つまたは複数のプロセッサを含む前記コンピュータシステムを含む、システム。
(項目40)
項目1から30のいずれか一項に記載の方法を容易にするように構成されたシステムであって、実行された場合に、コンピュータシステムに、候補酵母遺伝子の前記セットに対して相同な、前記動物における遺伝子のセットを決定させる、および/またはステップ(b)の前記相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いてステップ(d)の得られた前記動物における遺伝子の前記セット間の相互作用を増大することによって前記動物における前記生理学的プロセスもしくは病理プロセスのモデルを作出させる1つまたは複数のコンピュータにより実行可能な命令を実行するようにプログラムされた1つまたは複数のプロセッサを含む前記コンピュータシステムを含む、システム。
(項目41)
前記モデルをディスプレイするためのスクリーンをさらに含む、項目39または40に記載のシステム。
(項目42)
酵母における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、
(a)前記生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物において同定される酵母遺伝子のセットを提供するステップと、
(b)ステップ(a)の酵母遺伝子の前記セットを含む酵母遺伝子間の相互作用を得るステップと、
(c)酵母遺伝子の前記セットを使用して前記生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップと
を含み、ステップ(b)の前記相互作用が、賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することによって得られる、方法。
(項目43)
ステップ(a)の酵母遺伝子の前記セットが、
(i)前記生理学的プロセスまたは病理プロセスに対する酵母類似物の条件下で、酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾された酵母細胞を提供するステップと、
(ii)前記修飾が、前記条件に対する前記酵母細胞の応答を調節するか否かを決定するステップと、
(iii)前記酵母細胞の応答が調節される場合に、前記酵母遺伝子を候補酵母遺伝子として同定するステップと
を含む方法によって得られた、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記条件が、1種または複数の遺伝子の異常な発現を含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記条件が、1種または複数の遺伝子の過剰発現を含む、項目43または44に記載の方法。
(項目46)
前記条件が、1種または複数の遺伝子の発現の低減または消失を含む、項目43または44に記載の方法。
(項目47)
前記1種または複数の遺伝子が、非内因性遺伝子を含む、項目44または45に記載の方法。
(項目48)
ステップ(ii)の酵母細胞の応答の前記調節が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を含む、項目43から47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
ステップ(iii)の候補酵母遺伝子の前記同定が、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化の同定を含む、項目43から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記酵母細胞の応答が、細胞生存力の変化である、項目43から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
ステップ(a)の候補酵母遺伝子の前記セットが、酵母遺伝子のゲノムワイドスクリーンから得られた、項目43から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記ゲノムワイドスクリーンが、酵母ゲノムの欠失または過剰発現スクリーンを含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
ステップ(b)が、多様なアルゴリズムパラメータを用いる前記PCSFアルゴリズムを使用して、マルチプルネットワークを生成することおよび最大全域木アルゴリズムを用いて前記マルチプルネットワークから代表的ネットワークを作出することをさらに含む、項目43から52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
ステップ(b)の前記相互作用が、ステップ(a)の真核生物遺伝子のセット中に含まれない予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む、項目43から53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記予測された遺伝子またはタンパク質ノードが、ドラッガブルな標的を含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記真核生物が、酵母である、項目43から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記モデルを一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶するステップをさらに含む、項目43から56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
項目43から57のいずれか一項に記載の方法を容易にするように構成されたシステムであって、実行された場合に、コンピュータシステムにステップ(a)~(e)のうち少なくとも1つを実施させる1つまたは複数のコンピュータにより実行可能な命令を実行するようにプログラムされた1つまたは複数のプロセッサを含む前記コンピュータシステムを含む、システム。
(項目59)
項目43から57のいずれか一項に記載の方法を容易にするように構成されたシステムであって、実行された場合に、コンピュータシステムに、候補酵母遺伝子の前記セットに対して相同な、前記動物における遺伝子のセットを決定させる、および/またはステップ(b)の前記相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いてステップ(d)の得られた前記動物における遺伝子の前記セット間の相互作用を増大することによって前記動物における前記生理学的プロセスもしくは病理プロセスのモデルを作出させる1つまたは複数のコンピュータにより実行可能な命令を実行するようにプログラムされた1つまたは複数のプロセッサを含む前記コンピュータシステムを含む、システム。
(項目60)
前記モデルをディスプレイするためのスクリーンをさらに含む、項目58または59に記載のシステム。
(項目61)
真核生物において病理プロセスを処置するために化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)項目43から57のいずれか一項に記載の方法によって前記真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングするステップと、
(b)ステップ(a)のモデルの遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、
(c)化合物をスクリーニングして前記同定された遺伝子またはタンパク質ノードのモジュレーターを同定するステップと
を含む、方法。
(項目62)
ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞であって、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている、細胞。
(項目63)
ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む前記発現構築物が、前記細胞のゲノム中に組み込まれる、項目62に記載の細胞。
(項目64)
ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目62に記載の細胞。
(項目65)
表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む、項目62から64のいずれかに記載の細胞。
(項目66)
表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む前記発現構築物が、前記細胞のゲノム中に組み込まれる、項目65に記載の細胞。
(項目67)
表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目66に記載の細胞。
(項目68)
酵母細胞である、項目62から67のいずれかに記載の細胞。
(項目69)
哺乳動物細胞である、項目62から67のいずれかに記載の細胞。
(項目70)
表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される遺伝子において欠失、破壊もしくは突然変異を有する酵母細胞である、またはこのような遺伝子の哺乳動物相同体において欠失、破壊もしくは突然変異を有する哺乳動物細胞である、項目62から64のいずれかに記載の細胞。
(項目71)
前記α-シヌクレインタンパク質が、突然変異体α-シヌクレインタンパク質であり、必要に応じて、前記突然変異体α-シヌクレインタンパク質が、A30P、E46K、A53T、H50Q、G51D、A18TまたはA29Sを含む、項目62から70のいずれかに記載の細胞。
(項目72)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとα-シヌクレイン媒介毒性を抑制する、項目62から71のいずれかに記載の細胞。
(項目73)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとα-シヌクレイン媒介毒性を増強する、項目62から71のいずれかに記載の細胞。
(項目74)
前記酵母遺伝子の欠失が、α-シヌクレイン媒介毒性を増強する、項目62から71のいずれかに記載の細胞。
(項目75)
前記酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体が、α-シヌクレイン毒性ネットワークにおける隠れたノードである、項目62から71のいずれかに記載の細胞。
(項目76)
同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれかにおいて列挙される酵母遺伝子の相同体である哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾されている哺乳動物細胞。
(項目77)
前記哺乳動物遺伝子が、表S9、表S10および/または表S11において列挙される、項目76に記載の細胞。
(項目78)
前記哺乳動物遺伝子によってコードされる、または前記哺乳動物遺伝子において欠失、破壊もしくは突然変異を有するタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む、項目76または77に記載の細胞。
(項目79)
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目78に記載の細胞。
(項目80)
シヌクレイン症を患う、またはシヌクレイン症と関連する遺伝的変動を有する対象に由来するヒト細胞である、項目76から79のいずれかに記載の細胞。
(項目81)
同一種類の正常哺乳動物細胞と比較して、アルファ-シヌクレインの発現が増大しており、または突然変異体α-シヌクレインタンパク質を発現し、必要に応じて、前記突然変異体α-シヌクレインタンパク質が、A30P、E46K、A53T、H50Q、G51D、A18TもしくはA29Sを含む、項目76から80のいずれかに記載の細胞。
(項目82)
ヒト細胞である、項目76から81のいずれかに記載の細胞。
(項目83)
神経細胞またはグリア細胞である、項目76から82のいずれかに記載の細胞。
(項目84)
α-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)項目62から83のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を表S3:第1列、表S5、表S6または表S7に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップとを含む、方法。
(項目85)
シヌクレイン症の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、(a)項目62から83のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップとを含む、方法。
(項目86)
前記遺伝子が、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン毒性を抑制するものであるか、またはその欠失が、アルファ-シヌクレイン毒性を増強するものであり、前記薬剤が、前記タンパク質の発現または活性を増強する、項目84または85に記載の方法。
(項目87)
前記遺伝子が、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン毒性を増強するものであるか、または欠失されるとその欠失がアルファ-シヌクレイン毒性を抑制するものであり、前記薬剤が、前記タンパク質の発現または活性を阻害する、項目84または85に記載の方法。
(項目88)
アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)項目62から83のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を試験薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップとを含む、方法。
(項目89)
シヌクレイン症の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、(a)項目62から83のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップとを含む、方法。
(項目90)
アルファシヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤を同定するためにスクリーニングするステップと、前記細胞の生存力を低減するアルファシヌクレインの量を発現する細胞を提供するステップと、前記細胞を前記薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアルファシヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定される、方法。
(項目91)
前記スクリーニングが、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質を発現する細胞を提供するステップと、前記細胞を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下でのリポータータンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記リポータータンパク質の発現の減少から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を減少させる化合物として同定される、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記スクリーニングが、(i)表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1種または複数において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体のプロモーター配列および(ii)リポータータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むリポーター構築物を含む細胞を提供するステップと、前記細胞を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で前記リポータータンパク質の発現を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記リポータータンパク質の発現の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下での前記リポータータンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記リポータータンパク質の発現の減少から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を減少させる化合物として同定される、項目90に記載の方法。
(項目93)
前記スクリーニングが、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1種または複数において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質を提供するステップと、前記タンパク質を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で前記タンパク質の活性を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の活性と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の活性の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の活性を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の活性と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の活性の低下から、前記薬剤が前記タンパク質の活性を低下させる化合物として同定される、項目90に記載の方法。
(項目94)
ヒト細胞または対象においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する方法であって、前記細胞または対象において表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む、方法。
(項目95)
シヌクレイン症を処置する方法であって、シヌクレイン症の処置を必要とする対象において、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む、方法。
(項目96)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む、項目94または項目95に記載の方法。
(項目97)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のサプレッサーであるか、または欠失されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のエンハンサーであり、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む、項目94または項目95に記載の方法。
(項目98)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を阻害することを含む、項目94または項目95に記載の方法。
(項目99)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のエンハンサーであるか、または欠失されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のサプレッサーであり、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を阻害することを含む、項目94または項目95に記載の方法。
(項目100)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、細胞を、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるまたは前記薬剤を対象に投与することを含む、項目94から99のいずれかに記載の方法。
(項目101)
前記ヒトタンパク質の発現または活性が増強され、前記薬剤が、前記ヒトタンパク質をコードする核酸または前記ヒトタンパク質をコードするRNA転写物の転写を活性化する合成転写アクチベーターを含む、項目100に記載の方法。
(項目102)
前記ヒトタンパク質の発現または活性が阻害され、前記薬剤が、前記ヒトタンパク質をコードするmRNAを標的とする短鎖干渉RNA(siRNA)もしくはアンチセンス核酸、前記ヒトタンパク質をコードする遺伝子の転写を抑制する合成転写レプレッサーまたは前記ヒトタンパク質と結合するアプタマー、ポリペプチドもしくは小分子である、項目100に記載の方法。
(項目103)
ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞であって、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている、細胞。
(項目104)
ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む前記発現構築物が、前記細胞のゲノム中に組み込まれる、項目103に記載の細胞。
(項目105)
ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目103に記載の細胞。
(項目106)
表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む、項目103から105のいずれかに記載の細胞。
(項目107)
表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む前記発現構築物が、前記細胞のゲノム中に組み込まれる、項目106に記載の細胞。
(項目108)
表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目107に記載の細胞。
(項目109)
酵母細胞である、項目103から108のいずれかに記載の細胞。
(項目110)
哺乳動物細胞である、項目103から108のいずれかに記載の細胞。
(項目111)
表S3:第2列において列挙される遺伝子において欠失、破壊もしくは突然変異を有する酵母細胞である、またはこのような遺伝子の哺乳動物相同体において欠失、破壊もしくは突然変異を有する哺乳動物細胞である、項目103から105のいずれかに記載の細胞。
(項目112)
前記TDP-43タンパク質が、突然変異体TDP-43タンパク質である、項目103から111のいずれかに記載の細胞。
(項目113)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性を抑制する、項目103から111のいずれかに記載の細胞。
(項目114)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性を増強する、項目103から111のいずれかに記載の細胞。
(項目115)
前記酵母遺伝子の欠失が、TDP-43媒介毒性を増強する、項目103から111のいずれかに記載の細胞。
(項目116)
前記酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体が、TDP-43毒性ネットワークにおける隠れたノードである、項目103から111のいずれかに記載の細胞。
(項目117)
同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子の相同体である哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾されている哺乳動物細胞。
(項目118)
前記哺乳動物遺伝子によってコードされる、または前記哺乳動物遺伝子において欠失、破壊もしくは突然変異を有するタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む、項目117に記載の細胞。
(項目119)
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目118に記載の細胞。
(項目120)
TDP-43関連疾患を患う、またはTDP-43関連疾患と関連する遺伝的変動を有する対象に由来するヒト細胞である、項目117から119のいずれかに記載の細胞。
(項目121)
同一種類の正常哺乳動物細胞と比較して、TDP-43の発現が増大している、または突然変異体TDP-43タンパク質を発現する、項目117から120のいずれかに記載の細胞。
(項目122)
ヒト細胞である、項目117から121のいずれかに記載の細胞。
(項目123)
神経細胞またはグリア細胞である、項目117から122のいずれかに記載の細胞。
(項目124)
TDP-43媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)項目103から123のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を表S3:第2列に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップとを含む、方法。
(項目125)
TDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、(a)項目103から123のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を、表S3:第2列に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がTDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がTDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップとを含む、方法。
(項目126)
前記遺伝子が、過剰発現されるとTDP-43毒性を抑制するものであるか、またはその欠失が、TDP-43毒性を増強するものであり、前記薬剤が、前記タンパク質の発現または活性を増強する、項目124または項目125に記載の方法。
(項目127)
前記遺伝子が、過剰発現されるとTDP-43毒性を増強するものであるか、または欠失されるとその欠失がTDP-43毒性を抑制するものであり、前記薬剤が、前記タンパク質の発現または活性を阻害する、項目124または項目125に記載の方法。
(項目128)
TDP-43媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)項目103から123のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を試験薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップとを含む、方法。
(項目129)
TDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、(a)項目103から123のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がTDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がTDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップとを含む、方法。
(項目130)
TDP-43媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、表S3:第2列に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を増強する薬剤を同定するためにスクリーニングするステップと、前記細胞の生存力を低減するTDP-43の量を発現する細胞を提供するステップと、前記細胞を前記薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定される、方法。
(項目131)
前記スクリーニングが、表S3:第2列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質を発現する細胞を提供するステップと、前記細胞を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現の減少から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を減少させる化合物として同定される、項目130に記載の方法。
(項目132)
前記スクリーニングが、(i)表S3:第2列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体のプロモーター配列および(ii)リポータータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むリポーター構築物を含む細胞を提供するステップと、前記細胞を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で前記リポータータンパク質の発現を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記リポータータンパク質の発現の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下での前記リポータータンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記リポータータンパク質の発現の減少から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を減少させる化合物として同定される、項目130に記載の方法。
(項目133)
前記スクリーニングが、表S3:第2列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質を提供するステップと、前記タンパク質を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で前記タンパク質の活性を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の活性と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の活性の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の活性を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の活性と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の活性の低下から、前記薬剤が前記タンパク質の活性を低下させる化合物として同定される、項目130に記載の方法。
(項目134)
ヒト細胞または対象においてTDP-43媒介毒性を阻害する方法であって、前記細胞または対象において表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む、方法。
(項目135)
TDP-43関連疾患を処置する方法であって、TDP-43関連疾患の処置を必要とする対象において、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む、方法。
(項目136)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む、項目134または項目135に記載の方法。
(項目137)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性のサプレッサーであるか、または欠失されるとTDP-43媒介毒性のエンハンサーであり、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む、項目134または項目135に記載の方法。
(項目138)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を阻害することを含む、項目134または項目135に記載の方法。
(項目139)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性のエンハンサーであるか、または欠失されるとTDP-43媒介毒性のサプレッサーであり、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を阻害することを含む、項目134または項目135に記載の方法。
(項目140)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、細胞を、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるまたは前記薬剤を対象に投与することを含む、項目135から139のいずれかに記載の方法。
(項目141)
前記ヒトタンパク質の発現または活性が増強され、前記薬剤が、前記ヒトタンパク質をコードする核酸または前記ヒトタンパク質をコードするRNA転写物の転写を活性化する合成転写アクチベーターを含む、項目140に記載の方法。
(項目142)
前記ヒトタンパク質の発現または活性が阻害され、前記薬剤が、前記ヒトタンパク質をコードするmRNAを標的とする短鎖干渉RNA(siRNA)もしくはアンチセンス核酸、前記ヒトタンパク質をコードする遺伝子の転写を抑制する合成転写レプレッサーまたは前記ヒトタンパク質と結合するアプタマー、ポリペプチドもしくは小分子である、項目140に記載の方法。
(項目143)
ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞であって、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている、細胞。
(項目144)
ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む前記発現構築物が、前記細胞のゲノム中に組み込まれる、項目143に記載の細胞。
(項目145)
ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目143に記載の細胞。
(項目146)
表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む、項目143から145のいずれかに記載の細胞。
(項目147)
表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む前記発現構築物が、前記細胞のゲノム中に組み込まれる、項目146に記載の細胞。
(項目148)
表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目147に記載の細胞。
(項目149)
酵母細胞である、項目143から148のいずれかに記載の細胞。
(項目150)
哺乳動物細胞である、項目143から148のいずれかに記載の細胞。
(項目151)
表S3:第3列において列挙される遺伝子において欠失、破壊もしくは突然変異を有する酵母細胞である、またはこのような遺伝子の哺乳動物相同体において欠失、破壊もしくは突然変異を有する哺乳動物細胞である、項目143から145のいずれかに記載の細胞。
(項目152)
前記アミロイドベータタンパク質が、突然変異体アミロイドベータタンパク質である、項目143から151のいずれかに記載の細胞。
(項目153)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性を抑制する、項目143から152のいずれかに記載の細胞。
(項目154)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性を増強する、項目143から152のいずれかに記載の細胞。
(項目155)
前記酵母遺伝子の欠失が、アミロイドベータ媒介毒性を増強する、項目143から152のいずれかに記載の細胞。
(項目156)
前記酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体が、アミロイドベータ毒性ネットワークにおける隠れたノードである、項目143から152のいずれかに記載の細胞。
(項目157)
同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子の相同体である哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾されている哺乳動物細胞。
(項目158)
前記哺乳動物遺伝子によってコードされる、または前記哺乳動物遺伝子において欠失、破壊もしくは突然変異を有するタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む、項目157に記載の細胞。
(項目159)
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目158に記載の細胞。
(項目160)
アミロイドベータ関連疾患を患う、またはアミロイドベータ関連疾患と関連する遺伝的変動を有する対象に由来するヒト細胞である、項目157から159のいずれかに記載の細胞。
(項目161)
同一種類の正常哺乳動物細胞と比較して、アミロイドベータの発現が増大している、または突然変異体アミロイドベータタンパク質を発現する、項目157から160のいずれかに記載の細胞。
(項目162)
ヒト細胞である、項目157から161のいずれかに記載の細胞。
(項目163)
神経細胞またはグリア細胞である、項目157から162のいずれかに記載の細胞。
(項目164)
アミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)項目143から163のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を表S3:第3列に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップとを含む、方法。
(項目165)
アミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、(a)項目143から163のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を、表S3:第3列に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がアミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップとを含む、方法。
(項目166)
前記遺伝子が、過剰発現されるとアミロイドベータ毒性を抑制するものであるか、またはその欠失が、アミロイドベータ毒性を増強するものであり、前記薬剤が、前記タンパク質の発現または活性を増強する、項目164または項目165に記載の方法。
(項目167)
前記遺伝子が、過剰発現されるとアミロイドベータ毒性を増強するものであるか、または欠失されるとその欠失がアミロイドベータ毒性を抑制するものであり、前記薬剤が、前記タンパク質の発現または活性を阻害する、項目164または項目165に記載の方法。
(項目168)
アミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)項目143から163のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を試験薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップとを含む、方法。
(項目169)
アミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、(a)項目143から163のいずれかに記載の細胞を提供するステップと、(b)前記細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、(c)(i)前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)前記細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、前記薬剤の不在下と比較した、前記薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、前記薬剤がアミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップとを含む、方法。
(項目170)
アミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、表S3:第3列に列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現または活性を調節する薬剤を同定するためにスクリーニングするステップと、前記細胞の生存力を低減するアミロイドベータの量を発現する細胞を提供するステップと、前記細胞を前記薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、前記薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、前記薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定される、方法。
(項目171)
前記スクリーニングが、表S3:第3列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質を発現する細胞を提供するステップと、前記細胞を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の発現の減少から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を減少させる化合物として同定される、項目170に記載の方法。
(項目172)
前記スクリーニングが、(i)表S3:第3列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体のプロモーター配列および(ii)リポータータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むリポーター構築物を含む細胞を提供するステップと、前記細胞を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で前記リポータータンパク質の発現を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の発現と比較した前記薬剤の存在下での前記リポータータンパク質の発現の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の発現を増大する化合物として同定される、項目170に記載の方法。
(項目173)
前記スクリーニングが、表S3:第3列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質を提供するステップと、前記タンパク質を薬剤と接触させるステップと、前記薬剤の存在下で前記タンパク質の活性を測定するステップとを含み、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の活性と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の活性の増大から、前記薬剤が前記タンパク質の活性を増大する化合物として同定され、前記薬剤の不在下での前記タンパク質の活性と比較した前記薬剤の存在下での前記タンパク質の活性の低下から、前記薬剤が前記タンパク質の活性を低下させる化合物として同定される、項目170に記載の方法。
(項目174)
ヒト細胞または対象においてアミロイドベータ媒介毒性を阻害する方法であって、前記細胞または対象において表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む、方法。
(項目175)
アミロイドベータ関連疾患を処置する方法であって、アミロイドベータ関連疾患の処置を必要とする対象において、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む、方法。
(項目176)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む、項目174または項目175に記載の方法。
(項目177)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性のサプレッサーであるか、または欠失されるとアミロイドベータ媒介毒性のエンハンサーであり、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む、項目174または項目175に記載の方法。
(項目178)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を阻害することを含む、項目174または項目175に記載の方法。
(項目179)
前記酵母遺伝子が、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性のエンハンサーであるか、または欠失されるとアミロイドベータ媒介毒性のサプレッサーであり、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、前記ヒトタンパク質の発現または活性を阻害することを含む、項目174または項目175に記載の方法。
(項目180)
前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップが、細胞を、前記ヒトタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるまたは前記薬剤を対象に投与することを含む、項目174から179のいずれかに記載の方法。
(項目181)
前記ヒトタンパク質の発現または活性が増強され、前記薬剤が、前記ヒトタンパク質をコードする核酸または前記ヒトタンパク質をコードするRNA転写物の転写を活性化する合成転写アクチベーターを含む、項目180に記載の方法。
(項目182)
前記ヒトタンパク質の発現または活性が阻害され、前記薬剤が、前記ヒトタンパク質をコードするmRNAを標的とする短鎖干渉RNA(siRNA)またはアンチセンス核酸、前記ヒトタンパク質をコードする遺伝子転写物の転写を抑制する合成転写レプレッサーまたは前記ヒトタンパク質と結合するアプタマー、ポリペプチドもしくは小分子である、項目180に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1-1】図1A図1Cは、SteinerForest Ensembleが、酵母のためのタンパク質毒性ネットワークを築き、ドラッガブルな標的を明らかにすることを示す。
【0044】
図1Aは、SteinerForest Ensemble方法論対従来アプローチを示す。α-syn毒性に対する以前の過剰発現スクリーン由来の77種の遺伝的修飾因子(「ヒット」)が、酵母インタラクトームにマッピングされる。従来アプローチは、30種の遺伝的ヒットを見逃し、PMR1のような「ハブ」遺伝子を過度に強調する。SteinerForest Ensembleは、全77種のヒットを含み、ドラッガブルな標的Rsp5およびカルシニューリン(Cnb1)を含む生物学的関連性の追加的なノードを予測する。
【0045】
図1-2】図1B左は、酵母におけるα-syn、AβおよびTDP-43タンパク質毒性に関する3種の発表された過剰発現スクリーン由来のヒットを示す。ベン図は、回収された遺伝的修飾因子の数を示す。図1B右は、これら3セットのスクリーンヒットのインプットから生成されたアウトプットSteinerForest Ensembleネットワークの比較を示す(1000種の同様に接続されたランダムネットワークに関する経験的p値が、トリプルワイズ比較のために示されている)。
【0046】
図1Cは、TDP-43(左)およびα-syn(右)毒性における、Rsp5を活性化する化合物、NABの効果を実証する成長曲線を示す。黄色蛍光タンパク質(YFP)、TDP-43(TDP)またはα-synのいずれかを発現する酵母を、20μM(TDP-43に対して)または10μM(α-synに対して)NABで処理した。600nmにおける光学密度(OD)によって、成長を経時的にモニターした。結果は、3回の実験の代表である。
【0047】
図2-1】図2A図2Cは、α-synタンパク質毒性ネットワークへとLRRK2を組み込む「ヒト化」TransposeNetネットワークを示す。
【0048】
図2Aは、TransposeNetによって77種のα-syn過剰発現スクリーンヒットから生成された「ヒト化」ネットワークを示す。各酵母遺伝子(赤色の三角形)は、相同性強度に比例する重みによって、そのヒト相同体(青色の丸)に連結される。エッジは、その信頼の実験レベルに基づき重みを加えられる。ある特定のノードは、強調のために拡大される。LRRK2は、NSF1およびSTUB1を介してネットワーク内で連結される。挿入図:酵母およびヒトにおける公知分子相互作用の密度(Biogrid、wiki.thebiogrid.org/doku.php/statisticsにおけるワールドワイドウェブ上で利用可)。略語:DCA(拡散成分解析);PARK(公知「パーキンソニズム」遺伝子)。完全ネットワークについては補足を参照されたい。
【0049】
図2-2】図2Bは、保留酵母エッジ増大の「ヒト化」ネットワークにおける効果を示す。
【0050】
図2Cは、突然変異補正済み対照ニューロンと比較した、LRRK2G2019S突然変異体iPSc由来ドーパミン作動性ニューロンの小胞体(ER)におけるニカストリンの蓄積を示す。エンドグリコシダーゼH(Endo H)は、ER後グリコシル化を除去し、ER型のニカストリン、ER関連分解基質を明らかにする。成熟型の脱グリコシルER型に対する比を使用して、ER後対ERの比を計算した。データは、平均±SEMとして表される(患者1に対してn=2、患者2に対してn=3、***;p<0.0001、両側t検定)。
【0051】
図3-1】図3A図3Cは、TransposeNetが、ゲノムワイド欠失および過剰発現酵母スクリーンから、α-syn毒性のためのゲノムスケールの分子ネットワークを築くことを示す。
【0052】
図3Aは、スクリーンにおいて回収された遺伝的修飾因子の概要を示す。ロースループット調査由来の16種の遺伝的修飾因子(14種が特有)も組み込んだ。PDおよび他の神経変性障害に連結された遺伝子の酵母相同体が列挙されている。ヒト遺伝子名に先行する「y」は、「酵母相同体」を示す。
【0053】
図3-2】図3Bは、「ヒト化」ネットワークが、TransposeNetによって332種のα-synスクリーンヒットから生成されることを示す。複数の神経変性関連疾患遺伝子を含む、目的の遺伝子が拡大されている(図13および表S14も参照)。ネットワークの「ステム」内の遺伝子オントロジープロセス濃縮は、色分けされて示されている(全詳細は表S12に;灰色の部分は濃縮されていなかった)。褐色の線は、Vms1(Ankzf1の酵母相同体)およびHrd1(Syvn1の酵母相同体)を介したVCP/Cdc48への、また、VCPからパーキン/PARK2およびPink1/PARK6への外挿された接続を示す。標的記号は、2種のドラッガブルなノード、カルシニューリン(Caraveoら、2014年)およびNedd4(NABの標的(Tardiffら、2013年))をマークする。挿入図:酵母エッジの転位がないネットワーク。LRRK2およびNFATは含まれていない。オントロジー的に接続されたタンパク質(例えば、Rabタンパク質)は分散されている。
【0054】
図4-1】図4A図4Eは、パーキンソニズム感受性遺伝子の遺伝的解剖が、別個の生物学を明らかにすることを示す。
【0055】
図4Aは、α-synマップ(図3B由来)内の小胞輸送サブネットワークおよびPARK9(ATP13A2)の位置を示す。緑色:輸送タンパク質;褐色:金属イオントランスポーター。
【0056】
図4Bは、輸送遺伝子とα-synとの間の合成毒性相互作用を示す(寒天プレートにおけるスポット形成アッセイ)。A-syn導入遺伝子は、ガラクトース誘導性プロモーターから発現される(ガラクトース、Galにおいて「オン」;グルコース、Glcにおいて「オフ」)。ヒト遺伝子名の前の「y」は、酵母相同体を示す。ΔGAL2株(「非特異的エンハンサー」)は、ガラクトースにおける成長が不十分であるため(α-syn発現に関係なく)、(+)対照として機能する。(-)対照、欠失(ΔYMR191W)は、α-synの存在下で有害効果がない(「ベースライン毒性」)。
【0057】
図4-2】図4Cは、α-syn発現Vps35欠失「IntTox」細胞における酵母VPS35(yVps35)、ヒトVPS35(hVps35)およびヒト突然変異体(D620N)VPS35の発現を示す(左から右に系列5×希釈を示す酵母スポット形成アッセイ;導入遺伝子は、ガラクトース誘導性プロモーターから発現される)。
【0058】
図4-3】図4D図4Eは、同様に毒性のHiTox α-syn、α-syn-ΔVPS35/PARK17、α-syn-ΔATP13A2/PARK9株と遺伝的相互作用物質との相互比較を示す。スポット形成アッセイは、これら3種の株の間の毒性の相対レベルを実証する(図4D;左から右に5×系列希釈)。図4E)において、データは、HiTox α-syn(x軸)対ΔPARK17/α-syn(y軸;D)ΔPARK9/α-syn(y軸;図4E)における、77種の公知α-syn修飾因子(図1を参照)の有効性を比較するドットプロットで示されている。緑色:小胞輸送遺伝的修飾因子、褐色:金属イオン搬送修飾因子。軸目盛は、Mig1/Mig3陽性対照(=100、黒色)と比べた成長を表す。Mig1/Mig3過剰発現は、ガラクトースプロモーター駆動α-syn発現を抑制する。本図における各スポットアッセイは、2~4回反復した。ドットプロットは、生物学的複製により別々の日に行われた2回の実験の代表である。実験毎に4連複製して形質転換体をプレーティングした。
【0059】
図5-1】図5A図5Eは、mRNA翻訳因子が、酵母から患者由来ニューロンへと、α-syn毒性に影響することを示す。
【0060】
図5Aは、ATXN2、EIF4G1(PARK18)およびPABPC1を含む、α-syn毒性(図3B由来)におけるmRNA翻訳サブネットワークを示す。
【0061】
図5Bは、α-syn毒性におけるyPABPC1、yアタキシン2およびyEIF4G1-1の効果を示す(左:定量的PCR;右:バイオスクリーン成長アッセイ)。
【0062】
図5-2】図5Cは、35S-システインおよび35S-メチオニン組み込みによって経時的に測定される(ホスフォイメージャースキャン)、同質遺伝子的突然変異補正済み対照ニューロンと比較した、突然変異体α-synA53TiPScニューロンにおけるバルクmRNA翻訳を示す。クーマシー染色は、タンパク質のローディングを示す。突然変異補正済み系統の2種のサブクローンを、α-synA53T細胞(n=4)と比較した。
【0063】
図5Dは、ATXN2またはEIF4G1遺伝子の内在性レベルを上昇させるように設計されたTALE-TFを示す。これらは、標的遺伝子の5’UTRに結合し、転写アクチベーターをリクルートする(Sanjanaら、2012年)。Q-PCRは、A53T iPSニューロンへのAAV媒介性TALE-TF送達後の転写物レベルを示す。第1および第2のアセンブルされた六量体の配列は、配列番号11である。
【0064】
図5-3】図5Eは、A53Tニューロン(n=3)におけるバルク翻訳における増加する内在性EIF4G1またはATXN2レベルの効果を示す。データは、平均±SEMとして表される。;p<0.05、**;p<0.01、両側t検定)。
【0065】
図6図6は、NAB(N-アリールベンズイミダゾール)が、20種の別個の毒性酵母株の成長を認識できるほどにはレスキューしないことを示す。x軸に示される通り、遺伝子を個々に過剰発現させることにより、20種の「毒性テスター」酵母株のパネルを生成した。NABは、これらの株のいずれにおいても、毒性を実質的にレスキューしなかった。±5%の誤差で実験を3回実施した(生物学的複製)。
【0066】
図7図7A図7Cは、拡散成分解析(DCA)アルゴリズムのためのパラメータ整調を示す。相対的重みは、本発明者らがDCAに組み込む異なる相同性方法に対して変化したため、本発明者らは、本発明者らの方法によって予測される上位5種の相同体の遺伝子オントロジー(GO)の平均精度をコンピュータ処理した。さらなる詳細については「方法」を参照されたい。図7Aは、ある範囲のBLAST重みにわたる平均DCA精度(青色)を示し、ネットワークトポロジーおよびBLAST項のみが、拡張DCA目的関数において保持されている。比較は、BLASTそれ自体の精度(赤色)に対してなされた。図7Bは、HHpredそれ自体の精度(赤色)と比較した、BLAST重みが10に固定された、ある範囲のHHpred重みにわたるDCAアルゴリズムの平均精度(青色)を示す。図7Cは、HHpredおよびBLAST重みがそれぞれ5および10に固定された、ある範囲のDiopt重みにわたるDCAアルゴリズムの平均精度を示す。
【0067】
図8-1】図8は、拡散成分解析(DCA)アルゴリズムが、BLASTおよびHHpredよりも優れていることを示す。本発明者らは、3種の測定基準を使用して相同性ツールの性能を評価した:カバレッジ、遺伝子オントロジー(GO)精度、Jaccard類似性。カバレッジは、方法が統計的に有意なヒト(または酵母)相同体を予測することができる、酵母(またはヒト)遺伝子の数として定義される。GO精度は、酵母(またはヒト)遺伝子と予測されるヒト(または酵母)相同体との間での重複されるGO標識のパーセンテージとしてコンピュータ処理される。Jaccard類似性スコアは、酵母(またはヒト)遺伝子およびそのヒト(または酵母)相同体の特有のGO標識の総数で割った、重複されるGO標識の数である。他のBLASTおよびHHpredツールと比較するために、本発明者らは、BLAST、HHpredおよび本発明者らのDCA方法によって予測される上位5種の相同体の平均GO精度およびJaccard類似性スコアをコンピュータ処理した。酵母(またはヒト)タンパク質は、2種以上の優れたヒト(または酵母)相同体を有することが多いため、本発明者らは、上位5種の相同体を選択した。(AおよびB)本発明者らは先ず、酵母タンパク質のヒト相同体に関して本発明者らの方法を評価した。本発明者らの方法は、BLAST(4023種)またはHHpred(4312種)のいずれかよりも有意に多い酵母遺伝子(4923種)の相同体を予測した(A)。本発明者らは、予測されるGO精度および予測のためのJaccard類似性を評価した(B)。本発明者らの方法は、BLASTおよびHHpredよりも多くのタンパク質の相同体を予測したため、本発明者らは、BLASTまたはHHpredが相同体を同定することができたタンパク質のみにおいて精度測定基準をコンピュータ処理した。本発明者らの方法は、両方の精度測定基準において、BLASTおよびHHpredよりも優れていた。これらの比較は全て、統計的に有意であった(対応t検定による0.001未満のp値)。本発明者らは、また、本発明者らのツールが相同体を予測することができる全4923種のタンパク質において、平均精度およびJaccard類似性をコンピュータ処理した。性能(31.6%GO精度および0.248Jaccard類似性スコア)は、HHpredまたはBLASTのものと同様であったが、はるかに多いタンパク質が網羅されていた。
図8-2】(CおよびD)本発明者らは次に、ヒトタンパク質の酵母相同体に関して本発明者らの方法を検査した。BLASTおよびHHpredを上回るカバレッジの改善は、酵母実験におけるものよりもさらにより大幅であった。本発明者らの方法は、15200種のタンパク質の相同体を予測した一方、BLASTおよびHHpredは、はるかに少ないヒト(humn)タンパク質の酵母相同体を予測した(それぞれ7248および9577種)。精度測定基準との比較は、(B)において観察されるものと同様であった。本発明者らの方法は、GO精度およびJaccard類似性スコアの両方に関して、BLASTまたはHHpredが酵母相同体を見い出すことができたタンパク質において、BLASTおよびHHpredと比較して、予測力を改善した。これらの比較は全て、統計的に有意であった(対応t検定によるp値<0.0001)。
【0068】
図9図9は、酵母インタラクトーム「エッジ」の転位/インジェクションが、シミュレートされた酵母遺伝的スクリーンにおける精密度およびリコールを実質的に改善することを示す。本発明者らのPCSF SteinerNet方法ならびに代替DAPPLEおよびPEXA方法[全詳細については方法を参照]によって回収された遺伝子および予測される経路の関連性をより良く理解するために、本発明者らは、十分に制御されたシミュレーションを設計した。撹乱された経路の遺伝的スクリーンを模倣するために、本発明者らは、周知のヒト経路データベースKEGGから個々の経路を選択し、各経路における全遺伝子を同定した。次に、本発明者らは、ストリンジェントアンサンブル1対1のマッピングにより酵母相同体を同定した。本発明者らは、明らかな酵母相同体を有するヒト遺伝子を、「撹乱された」として処理し、その相同体の遺伝的相互作用隣接遺伝子を、「バーチャル酵母遺伝的スクリーン」からのヒットとして選定した。これらのようなバーチャルスクリーンは、交絡因子として実験ノイズを最小化し、アルゴリズム性能のよりクリーンな評価を可能にする。本発明者らは、「真の」経路情報を知っているため、本来のKEGG経路における「関連性」遺伝子が、予測される(非シード(seed))遺伝子として回収される頻度を定量化することにより、本方法を使用して、アルゴリズムの感度および特異性を検査することができる。本発明者らは、明らかな酵母相同体を有する少なくとも5種のヒト遺伝子を有する50種のKEGG経路(表S15)を選択し、検査のための50種の関連する「バーチャル」スクリーンを作製した。本発明者らは、2種の性能測定基準を使用した:精密度、すなわち、本来のKEGG経路において示される予測される隠れた遺伝子のパーセンテージ、およびリコール、すなわち、予測される経路における隠れたノードとして示される本来のKEGG遺伝子のパーセンテージ。本発明者らは、これらの値が、異なるレベルの酵母インタラクトームエッジ転位(10回の試行にわたり、インジェクト/転位される遺伝的相互作用の部分をランダムに除去することによる)に伴いどのように変化するかを検査した。これは、本図に描写されている。PCSFに関して、いかなる酵母エッジもなく、平均精密度およびリコール値は、37%および54%である。DAPPLEに関して、平均精密度およびリコール値は、それぞれ8%および27%である。PCSFおよびDAPPLEの性能は、酵母エッジインジェクション/転位により著しく改善する。>40%相互作用がインジェクトされる場合、性能は合理的になる。本発明者らのシミュレートされるスクリーンの構築において使用される同じ経路である、そのアルゴリズムにおけるヒトKEGG経路情報を利用するため、PEXAの性能は相対的に未変化のままである。
【0069】
酵母相互作用のインジェクトは、PCSFの精密度およびリコールを改善し、DAPPLEのリコールを改善する。PEXAおよびDAPPLEは、酵母インジェクションに関係なく、非常に大型かつ不正確なネットワークを生成する。PEXAは常に高いリコールを有するが、それは、単純に、この方法が、KEGG経路インプットを使用してネットワークを築き、KEGG経路が、これらのシミュレートされる酵母遺伝的スクリーンの基盤として使用されるためである。
【0070】
図10図10は、LRRK2G2019Sドーパミン作動性ニューロン濃縮培養物と同質遺伝子的対照との間で比較したLRRK2レベルを示す。誘導された、2名の患者に由来する人工多能性幹細胞由来系統(1種の生物学的複製を含む、ペア1、2および4)およびG2019S突然変異が導入されたヒト胚性幹細胞由来系統(ペア3)に関するウエスタンブロットデータを示す(Reinhardtら、2013年)。
【0071】
図11-1】図11A図11Cは、酵母α-syn欠失スクリーニングの模式図を示す。図11Aは、対照またはα-syn株が、欠失株のライブラリーと交配されたことを示す。交配後に、二倍体株を胞子形成させ、毒性アッセイのために単数体株を選択した。α-syn発現株において、α-synは、毒性水準下レベルで発現された。
図11-2】図11Bは、初期スクリーニングが、α-synにおいて合成的に致死的であるが、対照株において致死的ではない、400種を超えるヒットを同定したことを示す。図11Cは、これらが、少なくとも2回のその後の交配において都合良く選定され検査され、153種のヒットが検証されたことを示す。
【0072】
図12-1】図12A図12Bは、酵母α-synプールスクリーニングの模式図を示す。図12Aは、FLEX遺伝子ライブラリーからプールされたプラスミドを、対照YFPまたはα-syn発現酵母株のいずれかにまとめて形質転換したことを示す。YFPおよびα-synの誘導後に、プラスミドを回収し、配列決定した。増加したリードを有するプラスミドは、推定サプレッサー(α-syn毒性に対する生存利益を付与)であり、減少したリードを有するプラスミドは、推定エンハンサー(α-syn毒性の選択圧下で枯渇される)であった。YFPに非特異的効果を有するプラスミドは除外した。Q-PCRおよびバイオスクリーン成長曲線アッセイによってスクリーンの検証を実施した。
図12-2】図12Bは、漆黒の線が、ベースラインα-syn毒性を表すことを示す。このベースラインを上回る修飾因子は、いわゆる毒性のサプレッサーである(すなわち、レスキューする);このベースラインを下回る修飾因子は、いわゆる毒性のエンハンサーである(すなわち、有害)。配列決定リード(195種のヒット)、バイオスクリーン(134/195種を立証)とQPCR(93/195種を立証)アッセイとの間に良好な一致が見られた。バイオスクリーンアッセイによって検証された全134種の修飾因子を、真の修飾因子と考慮した。
【0073】
図13図13は、SteinerNet Ensembleアプローチが、α-syn毒性の332種の遺伝的修飾因子に適用される場合の、α-syn毒性結果の扱い易い「ヒト化」ネットワークを示す。複数の神経変性関連疾患遺伝子を含む、目的の特異的遺伝子が拡大されている(表S14も参照)。
【0074】
図14図14A図14Bは、DAPPLEおよびPEXAネットワークツールが、本発明者らのα-syn完全スクリーニングデータセットにより、断片化または過剰接続されたネットワークのいずれかを作製し、生物学的解釈および仮説の生成を妨害することを示す。
【0075】
DAPPLE(Rossinら、2011年)およびPEXA(Tuら、2009年)は、本発明者らのPCSFに基づく方法の代替であると本発明者らが考慮したアルゴリズムを築く2種のネットワークである。両方の方法が、シード遺伝子を採用し、シード遺伝子にまたがるサブネットワークを同定し、これらの遺伝子の可能な機能的相互接続性を明らかにする。第1のアルゴリズムのDAPPLEは、ヒトインタラクトームにおける有意な直接的およびワンホップの間接的エッジを同定して、可能な限り多くのシード遺伝子を接続する(これらは、それぞれ「直接的」および「間接的」モードである)。第2のアルゴリズムのPEXAは、KEGGまたはReactome等の現存する経路アノテーションを利用して、シード遺伝子を網羅する。次に、統合および剪定が適用されて、接続された成分を連結し、ハンギング遺伝子を除去する。本発明者らは、図9および方法セクションにおいて、PCSFが、DAPPLEおよびPEXAアルゴリズムの両方よりも優れた性能を有することを示す。そこで、本発明者らは、α-syn毒性に関する本発明者らの実験的酵母スクリーンデータを使用して、これらのアルゴリズムを突き合わせて比較する(図3Cと比較)。図14Aは、直接的モードにおいて、DAPPLEが、高い信頼度の相互作用により遺伝子を接続する一方、間接的モードにおいて、DAPPLEが、単一の隠れた遺伝子を使用して、2個のシード遺伝子を接続することを示す。疎らなネットワークは、10個のサブネットワークへと分解される。本図に示される通り、LRRK2/シヌクレイン、RAB6およびEIF4G1/アタキシン-2に関するものを含む、鍵となる相互作用は失われる。図14Bは、PEXA[Reactome]およびDAPPLEに関して、間接的モードにおいて、巨大かつ扱い難い「毛玉」が産生されることを示す。これらは、このデータセットのための妥当な生物学的仮説の生成を明らかに妨害する。言うなれば、これらの膨大さにもかかわらず、LRRK2によるものを含む鍵となる相互作用は、これらの方法により失われる。
【0076】
図15図15A図15Bは、エンドサイトーシス成分における欠損が、α-syn毒性を増強することを示す。図15Aは、VTH1(ySORL1)の欠失が、α-syn毒性を増強することを示す。全スポットアッセイを2~4回実施した(生物学的複製)。図15Bは、バイオスクリーン成長曲線解析である。Ypt7(yRAB7L1)過剰発現は、α-syn毒性を抑制する。これを3回反復した(生物学的複製)。
【0077】
図16図16は、翻訳修飾因子が、異なるタンパク質毒性モデルにより、別個の遺伝的相互作用パターンを示すことを示す。スポットアッセイは、HttEx1-72QにおけるPbp1の軽度成長抑制効果を除いて、yEIF4G1-1(Tif4631)、yEIF4G1-2(Tif4632)およびyアタキシン2(Pbp1)が、酵母においてAβ、TDP-43およびポリグルタミン(ハンチンチンエクソン1-72Q)毒性を抑制しない(すなわち、これからレスキューする)ことを実証する。実際に、yアタキシン2は、Aβ毒性を増強する(すなわち、増悪する)。本図に示す各スポットアッセイは、3回の実験の代表である(生物学的複製)。
【0078】
図17-1】図17A図17Dは、バルクタンパク質翻訳欠損が、α-syn-GFP過剰発現細胞において同定されることを示す。図17Aは、GFPまたはα-syn-GFPを安定に発現するHEK細胞が、様々な持続時間で(5、15および30分間)、35Sシステインおよびメチオニンのパルス標識付けされたことを示す。α-syn-GFPを発現する細胞は、35Sシステインおよびメチオニンのよりゆっくりな組み込みを示した。クーマシー染色は、タンパク質試料の等しいローディングを示す(n=2、生物学的複製)。図17Bは、GFPまたはα-syn-GFPを発現するラット初代皮質ニューロンが、様々な持続時間において、35Sシステインおよびメチオニンでパルス標識されたことを示す。HEK細胞と同様に、α-syn-GFP過剰発現は、35Sシステインおよびメチオニン組み込みの速度低減をもたらした(n=2、生物学的複製)。
図17-2】図17Cは、GFPとα-syn-GFP発現ラット初代皮質ニューロンとの間で、遊離サイトゾル35Sシステインおよびメチオニンに差がなかったことを示す。35Sシステインおよびメチオニンの遊離サイトゾル部分は、TCA沈殿細胞内タンパク質を除外することにより得た。図17Dは、リン酸化eIF2A(p-eIF2A)が、GFPまたはα-syn GFPのいずれかを過剰発現するラット初代皮質ニューロンにおいて測定されたことを示す。条件間でp-eIF2Aのレベルに差はなかった(n=1)。
【0079】
図18図18A図18Bは、α-synA53T突然変異体ニューロンにおける正準アンフォールドタンパク質応答の非存在を示す。
【0080】
図18Aは、EIF2Aのリン酸化(pEIF2A)が、およそ6週間目に、同質遺伝子的突然変異補正済み対照と比較して、α-synA53Tニューロンにおいて未変化であることを示す。本実験において、α-synA53Tニューロンの2種のサブクローンを、同質遺伝子的突然変異補正済み対照の2種のサブクローンと比較した。
【0081】
図18Bは、XBP1転写物の長い方のIRE1スプライスアイソフォーム2が、12週間目に、α-synA53T(A53T)においても突然変異補正済み対照(CORR)ニューロンにおいても同定されないことを示す、リボソーム保護断片(RPF)のマッピングを示す。2種のクローン(A53T-1およびCORR-1)が本図に示されている。アイソフォーム2のRPFは、赤色のボックスでマークされた領域において同定されているであろう。
【0082】
図19-1】図19A図19Dは、PD iPSc由来ニューロンにおけるリボソームプロファイリングが、α-syn毒性に特異的に関連するmRNA翻訳関連転写物の撹乱された翻訳を明らかにすることを示す。
【0083】
図19Aは、4週間および12週間目に、同質遺伝子的突然変異補正済み対照と比較して、突然変異体α-synA53T患者由来ニューロンにおいて、リボソーム成分および他の翻訳因子に関連するmRNA転写物の翻訳効率における高度に有意な減衰があることを示す。この特異的な遺伝子群も、ニューロンにおけるα-synのごく近傍にあるまたはこれと直接的に相互作用するRNA結合および翻訳因子を同定する添付の原稿に提示される空間的α-synマップのみならず(Chung、Khuranaら Cell Systems 2016年)、α-syn毒性の遺伝的マップにおいて濃縮される(図3)。リボソームフットプリンティングのため、遺伝子セット濃縮解析(GSEA;software.broadinstitute.org/gsea/index.jspにおけるワールドワイドウェブ上で利用可)名目上p値および偽発見率(FDR)を表に示す。遺伝的マップのための濃縮解析は、表S12に記載されている。空間的マップのための濃縮解析は、添付の原稿に記載されている(Chung、Khuranaら Cell Systems 2016年)。
【0084】
図19Bは、全体として経路の減衰に寄与する、mRNA翻訳に関連するmRNA転写物を示す(図19Aを参照)。強調された転写物は、遺伝的(橙色青色ドット)および空間的(青色ドット)α-synマップにおいて同定された特異的遺伝子/タンパク質/タンパク質複合体と重複する。図20は、完全に標識されたプロットを示す。
【0085】
図19-2】図19C図19Dは、酵母からニューロンへの、直交性遺伝的(橙色)、空間的(青色)および翻訳的(赤色)マッピングにおいて出現する経路/複合体の例としての、翻訳開始および伸長複合体(図19Aを参照)ならびに翻訳開始複合体のeiF3足場(図19Bを参照)の模式図を示す。
【0086】
図20-1】図20は、PD α-synA53T患者由来ニューロン(突然変異補正済み対照ニューロンと比較)におけるリボソームプロファイリングが、α-syn毒性に特異的に関連するmRNA翻訳関連転写物の撹乱された翻訳を明らかにすることを示す。全体として経路の減衰に寄与する、mRNA翻訳に関連するmRNA転写物(図19Bの完全に標識されたプロットを参照)。
図20-2】図20は、PD α-synA53T患者由来ニューロン(突然変異補正済み対照ニューロンと比較)におけるリボソームプロファイリングが、α-syn毒性に特異的に関連するmRNA翻訳関連転写物の撹乱された翻訳を明らかにすることを示す。全体として経路の減衰に寄与する、mRNA翻訳に関連するmRNA転写物(図19Bの完全に標識されたプロットを参照)。
【発明を実施するための形態】
【0087】
発明の詳細な説明
生理学的プロセスまたは病理プロセスの増大されたモデリング
いくつかの態様では、本発明は、第1の真核生物(例えば、真菌、原生動物、昆虫、植物、脊椎動物)において生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、(a)第1の真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスの類似物を有する第2の真核生物(例えば、真菌、原生動物、昆虫、植物、脊椎動物)において同定される候補真核細胞遺伝子のセットを提供するステップと、(b)ステップ(a)の候補真核細胞遺伝子を含む第1の真核生物の真核生物遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(c)第2の真核生物における遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(d)候補真核細胞遺伝子のセットに対して相同な、第1の真核生物における遺伝子のセットを決定するステップと、(e)第2の真核生物から得られたステップ(b)の相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いて、ステップ(d)において得られた第1の真核生物における遺伝子のセット間の相互作用を増大することによって、第1の真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップとを含む方法を対象とする。いくつかの実施形態では、第1の真核生物は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、サル細胞)である。いくつかの実施形態では、第2の真核生物は、酵母細胞である。
【0088】
語句「生理学的プロセスまたは病理プロセス」とは、本明細書において、任意のプロセス(例えば、2種以上の遺伝子が関与する任意の細胞性プロセス)または病理プロセスを指す。生理学的プロセスまたは病理プロセスは、組み立てられた生体単位、例えば、細胞、組織、臓器および生物の機能に関係する、規定の開始および終了を有する働きまたは分子事象のセットであり得る。通常、分子機能の1つまたは複数の秩序集合体によって達成される一連の事象である。通常、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、1つまたは複数の生物学的経路を包含する、またはそれを介して実施される。「生物学的経路」は、細胞において特定の産物または変化につながる細胞中の分子による、およびそれらの間の任意の一連の作用および/または相互作用であり得る。いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、細胞性プロセスである。生理学的プロセスまたは病理プロセスとして、例えば、細胞シグナル伝達、代謝、遺伝情報プロセシング(例えば、転写、翻訳、RNA輸送、RNA分解、タンパク質フォールディング、ソーティング、分解、翻訳後修飾、DNA複製および修復)、環境情報プロセシング(例えば、膜輸送、シグナル伝達)および細胞性プロセス(例えば、細胞周期、エンドサイトーシス、小胞輸送)に関係するプロセスなどが挙げられる。種々の上記の細胞性プロセスは、複数の特定の経路を包含することが認められよう。いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、細胞周期、細胞分裂または細胞成長プロセスである。いくつかの実施形態では、プロセスは、疾患または障害と関連する。疾患または障害は、制限されない。
【0089】
いくつかの実施形態では、障害は、がんである。用語「がん」とは、本明細書において、その独特の形質-正常な制御の喪失-が、未制御の成長、分化の欠如、局所組織浸潤および転移をもたらす細胞の過剰増殖と定義される。本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、膀胱がん、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管または肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢または胸膜のがん、鼻、鼻腔または中耳のがん、口腔のがん、外陰部のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、白血病、液体腫瘍、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、悪性中皮腫、マスト細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、腹膜、網および腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、固形腫瘍、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がんおよび膀胱がんのいずれかを含む、任意のがんであり得る。本明細書において、用語「腫瘍」とは、別に明記されない限り、悪性種類の細胞または組織の異常な成長を指し、良性種類の組織を含まない。
【0090】
いくつかの実施形態では、障害は、遺伝性障害である。いくつかの実施形態では、障害は、一遺伝子性障害である。いくつかの実施形態では、障害は、複遺伝子性障害である。いくつかの実施形態では、障害は、1つまたは複数のSNPと関連する障害である。1つまたは複数のSNPと関連する例示的障害として、米国特許第7,627,436号に記載される複合疾患、PCT国際出願公開番号WO/2009/112882に記載されるようなアルツハイマー病、米国特許出願公開第2011/0039918号に記載されるような炎症性疾患、米国特許出願公開第2012/0309642号に記載されるような多嚢胞性卵巣症候群、米国特許第7,732,139号に記載されるような心血管疾患、米国特許出願公開第2012/0136039号に記載されるようなハンチントン病、欧州特許出願公開番号EP2535424に記載されるような血栓塞栓性疾患、PCT国際出願公開番号WO/2012/001613に記載されるような神経血管性疾患、米国特許出願公開第2010/0292211号に記載されるような精神病、米国特許出願公開第2011/0319288号に記載されるような多発性硬化症、PCT国際出願公開番号WO/2006/023719A2に記載されるような統合失調症、統合失調感情障害および双極性障害、米国特許出願公開第U.S.2011/0104674号に記載されるような双極性障害および他の病気、PCT国際出願公開番号WO/2006/104370A1に記載されるような結腸直腸がん、米国特許出願公開第U.S.2006/0204969号に記載されるようなAKT1遺伝子座に隣接するSNPと関連する障害、PCT国際出願公開番号WO/2003/012143A1に記載されるような摂食障害、米国特許出願公開第U.S.2007/0269827号に記載されるような自己免疫疾患、米国特許第7,790,370号に記載されるようなクローン病を有する患者における線維性狭窄性疾患および米国特許第8,187,811号に記載されるようなパーキンソン病が挙げられ、それらの各々は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、障害は、慢性感染性疾患である。「慢性感染性疾患」とは、感染が持続していた感染病原体によって引き起こされる疾患である。このような疾患として、肝炎(A型、B型またはC型)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HSV-6、HSV-II、CMVおよびEBV)およびHIV/AIDSを挙げることができる。非ウイルス性の例として、アスペルギルス症、カンジダ症、コクシジオイデス症のような慢性真菌疾患ならびにクリプトコッカス属(Cryptococcus)と関連する疾患およびヒストプラスマ症を挙げることができる。慢性細菌性感染性病原体の限定されない例は、Chlamydia pneumoniae、Listeria monocytogenesおよびMycobacterium tuberculosisであり得る。いくつかの実施形態では、障害は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染である。いくつかの実施形態では、障害は、後天性免疫不全症候群(AIDS)である。
【0092】
いくつかの実施形態では、障害は、自己免疫障害である。用語「自己免疫疾患」とは、対象が、自身の組織に対して破壊的免疫応答を開始する任意の疾患または障害を指す。自己免疫障害は、対象(例えば、ヒト)におけるほぼすべての臓器系に影響を及ぼすことがあり、限定されるものではないが、神経、胃腸および内分泌系ならびに皮膚および他の結合組織、眼、血液および血管の疾患を含む。自己免疫疾患の例として、限定されるものではないが、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、グレーブス病、強皮症、関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症および糖尿病が挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、障害は、移植片対宿主病(GVHD)である。
【0094】
いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、神経学的疾患(例えば、神経変性疾患)または障害である。いくつかの実施形態では、神経学的疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病またはALS、リソソーム蓄積症、多発性硬化症または脊髄損傷である。神経変性疾患は、神経系の罹患領域におけるニューロンの構造および/または機能の進行性喪失を含む、ニューロンの喪失を伴うことが多い種々の障害を包含する。いくつかの神経変性疾患では、ヒトタンパク質が凝集する(すなわち、タンパク質症)か、またはRNAが凝集し、および/またはこのようなタンパク質もしくはRNAにおける機能突然変異の有害な増加があるか、またはタンパク質もしくはRNAの発現の増大がある(例えば、その遺伝子の1つまたは複数の余分のコピーを有する患者による)。このようなタンパク質ならびにタンパク質が凝集する、および/または突然変異されるまたは過剰発現される神経変性疾患の例として、アルファ-シヌクレイン(パーキンソン病およびパーキンソニズムを特徴とする他の障害)、アミロイドベータ(アルツハイマー病)、ポリグルタミンが伸長された遺伝子(ハンチントン病、運動失調)が挙げられる。このような疾患の真核生物(例えば、酵母)類似物は、真核生物における関連野生型または突然変異体ヒトタンパク質の過剰発現によって生成され得る。このようなタンパク質は、過剰発現されると、毒性効果を発揮し得る。毒性は、毒性効果を軽減する化合物および過剰発現されるまたは欠失される場合に、毒性効果を軽減する遺伝子を同定するために利用できる。このような疾患の動物(例えば、ヒト)神経系細胞モデルは、疾患を患っている、もしくは疾患と関連する遺伝子型を有する患者から誘導性神経系細胞を生成することによって、または多能性細胞に由来する、もしくは非ニューロン細胞からの分化転換に由来する、もしくは神経前駆体に由来する神経系細胞における工学的に操作された誘導性過剰発現によって作製することができる。
【0095】
いくつかの神経変性疾患では、タンパク質の機能の喪失(例えば、突然変異による)がある。このような疾患の真核生物類似物は、タンパク質の相同体(例えば、突然変異を有する)の機能の喪失を誘導することによって作出することができる。このような疾患の動物(例えば、ヒト)神経系細胞モデルは、疾患を患う、もしくは疾患と関連する遺伝子型を有する患者から、誘導された動物神経系細胞を生成することによって、または遺伝子において遺伝子が標的とされる突然変異または欠失を工学的に操作すること、またはそうでなければ、多能性細胞に由来する、もしくは非ニューロン細胞からの分化転換に由来する、もしくは神経前駆体に由来する神経系細胞においてその遺伝子を無効にすることによって作製することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、神経変性疾患である。いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、神経変性タンパク質症である。いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスは、シヌクレイン症、アルツハイマー病、前頭側頭変性症、脊髄小脳失調症、ハンチントン病または筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態では、シヌクレイン症は、パーキンソン病である。
【0097】
用語「生理学的プロセスまたは病理プロセスの類似物」とは、第1の真核生物におけるプロセスといくつかの類似性を共有する第2の真核生物におけるプロセスを意味するものとする。類似性は、遺伝子型的なものである場合も、表現型的なものである場合もある。いくつかの実施形態では、類似物は、第1の真核生物において生理学的プロセスまたは病理プロセスに関与する遺伝子を、第2の真核生物中に導入することによって作出してもよい。疾患の異なる態様を調べるために、遺伝子の発現または遺伝子産物の活性を変えてもよい。いくつかの実施形態では、類似物は、第1の真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスに関与する遺伝子に対して相同である、第2の真核生物における遺伝子の発現または遺伝子産物の活性を調節することによって作出してもよい。生理学的プロセスもしくは病理プロセスまたは生理学的プロセスもしくは病理プロセスの類似物における遺伝子または遺伝子産物の関与は、制限されない。いくつかの実施形態では、遺伝子または遺伝子産物は、生理学的プロセスまたは病理プロセスと関連するネットワークの一部である。ネットワークは、セットの各遺伝子またはタンパク質が、少なくとも1種の他の遺伝子またはタンパク質と相互作用することを特徴とする、遺伝子および/またはタンパク質のセットである。相互作用は、物理的相互作用(例えば、結合)または遺伝子相互作用(例えば、発現の調節を引き起こす)であり得る。
【0098】
本明細書において使用されるように、真核生物(例えば、酵母)遺伝子間の相互作用は、遺伝子相互作用および/またはそれらがコードする場合には、物理的に相互作用する遺伝子産物(タンパク質またはRNA)を指す。相互作用は、相互作用する遺伝子が線(エッジ)によって結び付けられるグラフとして表すことができる。線は、相互作用の性質および/または相互作用物の性質に関する情報をコードする場合も、コードしない場合もある。このような情報は、例えば、ある遺伝子が、相互作用する遺伝子に影響を及ぼす方法(例えば、どの遺伝子がエフェクターであるか)を示す矢印の形態で、または色、幅またはパターンなどの線の特徴によってコードされ得る。「ノード」は、ネットワーク中の少なくとも2種の他の遺伝子またはタンパク質と相互作用する遺伝子またはタンパク質である。ネットワーク中の各遺伝子は、「ノード」を表す。遺伝子相互作用は、第1の遺伝子またはそのコードされる遺伝子産物(複数可)が、第2の遺伝子またはそのコードされる遺伝子産物(複数可)に影響を及ぼし得る種々の方法のいずれも包含する。遺伝子の作用は、遺伝子によってコードされる遺伝子産物、通常、タンパク質によって達成されることが多く、このような作用は、別の遺伝子(単数または複数)の1種または複数の遺伝子産物に対して発揮される。遺伝子相互作用は、第1の遺伝子の発現のレベルまたは遺伝子産物の活性が、第2の遺伝子の発現のレベルまたは遺伝子産物の活性に影響を及ぼし得る、または第2の遺伝子の遺伝子産物の表現型出現に影響を及ぼし得る(例えば、抑制し得るまたは増強し得る)種々の方法のいずれも包含する。「遺伝子の発現または活性」は、遺伝子によってコードされる遺伝子産物の発現または活性を包含すると理解されなければならない。同様に、「遺伝子の発現または活性に対する効果」とは、通常、遺伝子自体に対してではなく、遺伝子の遺伝子産物の発現または活性に対する効果を指す。例として、例えば、発現を増強または抑制すること、表現型的効果、合成成長欠陥、合成レスキュー、合成致死などを増強または抑制することが挙げられる。いくつかの実施形態では、真核生物遺伝子間の相互作用は、公的に入手可能なデータベース(例えば、精選されたデータベース)から得られる。いくつかの実施形態では、相互作用は、欠失または過剰発現スクリーニング(例えば、ゲノムワイドスクリーニング)から得られる。スクリーニングの方法は、当技術分野で公知である。例えば、US20110300533を参照のこと。いくつかの実施形態では、相互作用は、公的に入手可能なデータベースおよびスクリーニングの組合せから得ることができる。いくつかの実施形態では、相互作用は、特定のサブセットの細胞種のみから得ることができる。例えば、いくつかの実施形態では、神経学的組織(例えば、脳組織)に局在するヒト細胞において公知の相互作用のみを使用してもよい。
【0099】
第1の真核生物(例えば、ヒト)における遺伝子と、第2の真核生物(例えば、酵母)における遺伝子の間の相同性は、当技術分野で利用可能な任意の方法によってであり得る。いくつかの実施形態では、第1の真核生物遺伝子(例えば、ヒト)および第2の真核生物遺伝子(例えば、酵母)のすべての対を比較する。いくつかの態様では、配列類似性を使用してもよい。配列類似性は、例えば、ハミング距離、配列アラインメント、BLAST、FASTA、SSEARCH、GGSEARCH、GLSEARCH、FASTM/S/F、NCBI BLAST、WU-BLAST、PSI-BLASTおよびそれらの任意の組合せによって得ることができる。配列類似性は、BLASTおよびDIOPTなどの公的に入手可能なツールを用いて得ることができる。Huら、2011年を参照のこと。いくつかの実施形態では、BLOSUM62置換マトリックスを用いるNCBIタンパク質BLASTを使用してもよい。Altschulら、1990年;1997年を参照のこと。いくつかの実施形態では、E値閾値を使用して、類似性の有意性を決定してもよい。いくつかの実施形態では、E値閾値=1E-5を使用する。いくつかの実施形態では、DIOPT(GTEx Consortium、2013年;Huら、2011年;Reinhardtら、2013年;Sodingら、2005年)、統合オルソログ予測ウェブサーバーを使用して、酵母タンパク質のヒトオルソログを予測できる。
【0100】
いくつかの実施形態では、第1の真核生物(例えば、ヒト)における遺伝子と、第2の真核生物(例えば、酵母)における遺伝子の間の相同性を、進化的類似性および/または構造類似性を評価することによって評価してもよい。進化的類似性および/または構造類似性は、当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。いくつかの実施形態では、マルチプル配列アラインメントを作出し、リモート進化シグネチャーを決定する。いくつかの実施形態では、PSI-BLASTを使用して、マルチプル配列アラインメントを構築し、隠れマルコフモデルを築いて、リモート進化シグネチャーをコードする。いくつかの実施形態では、プロファイル隠れマルコフモデルおよびインプットとしての二次構造アノテーションとともに、HHpred(Kriksら、2011年;RobinsonおよびOshlack、2010年;Schondorfら、2014年;Sodingら、2005年;Voevodskiら、2009年)を使用して、第1の真核生物遺伝子(例えば、ヒト)および第2の真核生物遺伝子(例えば、酵母)の対(例えば、すべての対)を比較する。いくつかの実施形態では、E値閾値を使用して、類似性の有意性を決定できる。いくつかの実施形態では、E値閾値=1E-5を使用する。
【0101】
いくつかの実施形態では、第1の真核生物(例えば、ヒト)における遺伝子と、第2の真核生物(例えば、酵母)における遺伝子の間の相同性を、分子的相互作用類似性(例えば、ネットワークトポロジー)によって評価してもよい。ネットワークトポロジー(すなわち、拡散成分解析;DCA)アプローチは、タンパク質レベルで機能的に関連するモジュールを捕捉するよう試み、その結果、各ノードを、保存された相互作用のパターンとともに、ネットワーク中の相同タンパク質を捕捉する単一スコアの代わりに低次元ベクトルを用いて表すことができる。いくつかの実施形態では、明快なPageRank様アプローチ(Choら、2015年;Tuncbagら、2016年;Voevodskiら、2009年)を使用して、各ノードのベクトルをコンピュータ処理する。いくつかの実施形態では、洗練された機械学習技術を使用してベクトルの次元数が低減される。いくつかの実施形態では、このアプローチは、ノイズを低減することができ、機能的類似性などのトポロジーネットワーク情報を良好に抽出することができる(Bailly-Bechetら、2011年;Choら、2015年)。いくつかの実施形態では、ネットワークトポロジーは、遺伝子の機能解析のためのマルチ-ネットワークトポロジー(Multi-Network Topology for Functional Analysis of Genes)(Mashup)と呼ばれる方法によって決定される(Cho, H.ら2016年)。
【0102】
いくつかの実施形態では、両真核生物(例えば、ヒトおよび酵母)のネットワークトポロジーならびにそれらの間の配列/構造類似性を比較して、相同性を決定する。いくつかの態様では、配列および構造類似性スコアは、確率分布に変換され、希薄なベクトルを表現するものを含むすべてのノードの対の特徴ベクトルが、関連ベクトルとパラメータ化された多項分布間のカルバック・ライブラー(KL)ダイバージェンスを最小化することによって一緒にコンピュータ処理される。
【0103】
いくつかの実施形態では、第2の真核生物(例えば、酵母)における遺伝子の相互作用に基づいて、第1の真核生物(例えば、ヒト)における遺伝子間の相互作用を増大するために、推測された相同性を使用してもよい。いくつかの実施形態では、相互作用が第2の真核生物(例えば、酵母)における遺伝子の相同対中に存在する場合には、推測された相互作用を第1の真核生物(例えば、ヒト)のネットワークに加えてもよい。いくつかの実施形態では、第1の真核生物における遺伝子対と、第2の真核生物における遺伝子対間の、相同性の特定の閾値のみで、推測された相互作用を加える。いくつかの実施形態では、閾値は、第1の真核生物(例えば、ヒト)における相互作用の密度が、第2の真核生物(例えば、酵母)における相互作用の密度と同様であるよう設定する。
【0104】
いくつかの実施形態では、第2の真核生物からの相互作用を増大することによって、第1の真核生物(例えば、ヒト)における生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップは、賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して(Choら、2015年;Tuncbagら、2013年;2016年;Voevodskiら、2009年)、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、1つまたは複数の精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続するステップを含む。いくつかの実施形態では、PCSFアルゴリズムの目的の機能パラメータを、賞金収集Steiner木問題(PCST)および公知のメッセージ伝達アルゴリズムを用いて決定する。Bailly-Bechetら、2011年;Choら、2015年を参照のこと。
【0105】
いくつかの実施形態では、PCSFアルゴリズムのパラメータβ、ωおよびμを各々セット上界および下界内で変えて、遺伝子またはタンパク質ノードのマルチプルネットワークを作出する。いくつかの実施形態では、上界および下界は、十分な数の予測されたタンパク質(いくつかの実施形態では、インプット賞金遺伝子数の半量である)を含有するように設定する、および/またはネットワーク解法が、インプットネットワーク中に1000を超える隣接関係(neighbor)を有するハブノードを導入しないように設定する。いくつかの実施形態では、βの範囲は、{1,2,4,6,8,10,12}であり、ωの範囲は、{1,2,3,4,5,6,7,8}であり、μの範囲は、{0.001,0.003}である。いくつかの実施形態では、βの範囲は、{4,6,8,10,12,14,16}であり、ωの範囲は、{3,4,5,6,7,8,9,10}であり、μの範囲は、{0.003,0.005}である。次いで、マルチプルネットワークを組み合わせて、代表的ネットワークを得る。いくつかの実施形態では、最も頑健な代表的ネットワークを見い出すために、最大全域木アルゴリズムを使用してマルチプルネットワークを組み合わせる。いくつかの実施形態では、代表的ネットワークの統計的有意性が、第1の真核生物および第2の真核生物間の遺伝子のランダム対形成から生成されたネットワークに対して検証される。
【0106】
PCSTアプローチを使用してネットワークを生成することができる公的に入手可能なウェブサーバー、SteinerNetは、fraenkel.mit.edu/steinernetでワールドワイドウェブでアクセスできる(Tuncbag, N.ら、Nucl. Acids Res.(2012年)40巻(W1号):W505~W509頁)。いくつかの実施形態では、公知の疾患遺伝子および/または遺伝的修飾因子は、PCSTによって生成されたネットワークにおいて「賞金ノード(prized node)」であり得る。ネットワークの構築の問題に他のアルゴリズム的アプローチを使用してもよく、本発明は、この点において制限されない。例えば、フロー最適化ベースの方法を使用してもよい(Lan, A.ら、Nucleic Acids Res. 2011年;39巻:W424~W429頁およびその参考文献)。他のアプローチとして、線形計画法、ベイジアンネットワークおよび最尤ベースのアプローチが挙げられる(Tuncbag, N.らに引用される参考文献を参照のこと)。いくつかの実施形態では、ネットワークは、種々のソフトウェアツールのいずれかを使用して可視化できる。例えば、ネットワークは、Cytoscape(cytoscape.org/でワールドワイドウェブで入手可能;Cline, M Sら、Nature Protocols 2巻、2366~2382頁(2007年);Shannon, P.ら、Genome Research 2003年11月;13巻(11号):2498~504頁)を使用して可視化できる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明は、動物(例えば、ヒト、哺乳動物)において生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、(a)動物における生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物において同定される候補酵母遺伝子のセットを提供するステップと、(b)ステップ(a)の候補酵母遺伝子を含む酵母遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(c)動物における遺伝子間の相互作用を提供するステップと、(d)候補酵母遺伝子のセットに対して相同な、動物における遺伝子のセットを決定するステップと、(e)ステップ(b)の相互作用に基づいて予測される遺伝子相互作用を用いて、ステップ(d)において得られた動物における遺伝子のセット間の相互作用を増大することによって、動物における生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップとを含む方法を対象とする。
【0108】
いくつかの実施形態では、(i)生理学的プロセスまたは病理プロセスの酵母類似物である条件下で、酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾された酵母細胞を提供するステップと、(ii)修飾が、条件に対する酵母細胞の応答を調節するか否かを決定するステップと、(iii)酵母細胞の応答が調節される場合に、酵母遺伝子を候補酵母遺伝子として同定するステップとを含む方法によって、ステップ(a)の候補酵母遺伝子のセットを得た。いくつかの実施形態では、条件は、1種または複数の遺伝子の異常な発現(例えば、過剰発現、発現の低減、発現の消失)を含む。いくつかの実施形態では、1種または複数の遺伝子は、非内因性遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、ステップ(ii)の酵母細胞の応答の調節は、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を含む。いくつかの実施形態では、ステップ(iii)の候補酵母遺伝子の同定は、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化の同定を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、候補真核生物遺伝子(例えば、酵母遺伝子)は、ゲノムワイドスクリーンから得られる。いくつかの実施形態では、ゲノムワイドスクリーンは、真核生物ゲノムの欠失または過剰発現スクリーンを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、賞金収集Steiner森(Prize-Collecting Steiner Forest)(PCSF)アルゴリズムが、1つまたは複数の精選されたデータベースから得た遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して遺伝子またはタンパク質ノードを接続し、コストを最小にしながらネットワークを得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、多様なアルゴリズムパラメータを用いるPCSFアルゴリズムを使用して、第1の真核生物、第2の真核生物のマルチプルネットワークを生成する、ならびに/または最大全域木アルゴリズムを用いてマルチプルネットワークから増大相互作用および代表的ネットワークを作出する。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書における方法によって作出された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルは、1つまたは複数の予測された遺伝子またはタンパク質ノードを含む。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、モデリングされた生理学的プロセスまたは病理プロセスに関与する、1種または複数の他の遺伝子またはタンパク質(例えば、予測された遺伝子またはタンパク質)を同定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、予測された遺伝子またはタンパク質ノードは、ドラッガブルな標的を含む。
【0113】
「ドラッガブルな標的」とは、生体分子、例えば、そのレベルまたは活性が、小分子によって調節可能である(調節されることが可能である)タンパク質またはRNAを指す。特定の実施形態では、ドラッガブルな標的は、少なくとも1種の小分子モジュレーターが同定されている生体分子である。特定の実施形態では、このような調節は、細胞不含アッセイ、例えば、タンパク質活性アッセイにおいて検出可能である。特定の実施形態では、このような調節は、標的を発現する細胞を使用する細胞ベースのアッセイにおいて検出可能である。任意の適したアッセイを使用してもよい。当業者ならば、タンパク質活性を測定するための多数の適したアッセイを承知し、タンパク質の公知のまたは予測された活性を考慮する適当なアッセイを選択できるであろう。活性は、例えば、結合活性、触媒活性、輸送体活性または任意の他の生物活性であり得る。いくつかの実施形態では、標的の調節は、標的の過剰発現によって誘導される表現型の少なくとも部分的逆転によって、または標的をコードする遺伝子の欠失によって検出することができる。特定の実施形態では、ドラッガブルな標的は、少なくとも1種の小分子と高親和性で結合することが公知である、もしくは結合すると予測されるタンパク質またはRNAなどの生体分子である。特定の実施形態では、タンパク質は、ファミリーの他のメンバーが1種または複数の小分子によって調節されることが公知である、またはそれと結合するタンパク質ファミリーのメンバーである場合に、「ドラッガブル」であると予測される。特定の実施形態では、タンパク質は、細胞不含アッセイを使用するモジュレーターの同定に適している酵素活性を有する場合に、「ドラッガブル」であると予測される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、活性形態で産生または精製でき、その活性を測定するために使用できる少なくとも1種の公知の基質を有する。
【0114】
「小分子」とは、本明細書において、質量が約2キロダルトン(kDa)未満である有機分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、約1.5kDa未満または約1kDa未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約800ダルトン(Da)、600Da、500Da、400Da、300Da、200Daまたは100Da未満である。小分子は、少なくとも50Daの質量を有することが多い。いくつかの実施形態では、小分子は、非重合体である。いくつかの実施形態では、小分子は、アミノ酸ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、ヌクレオチドではない。いくつかの実施形態では、小分子は、糖類ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、複数の炭素-炭素結合を含有し、1個もしくは複数のヘテロ原子および/またはタンパク質との構造的相互作用(例えば、水素結合)にとって重要な1つもしくは複数の官能基、例えば、アミン、カルボニル、ヒドロキシルもしくはカルボキシル基、いくつかの実施形態では、少なくとも2つの官能基を含み得る。小分子は、必要に応じて、上記の官能基のうち1つまたは複数で置換されていてもよい、1個もしくは複数の環状炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含むことが多い。
【0115】
いくつかの実施形態では、第1の真核生物および第2の真核生物の遺伝子またはタンパク質間の相同性は、候補酵母遺伝子と動物遺伝子間の核酸配列、ポリペプチド配列、タンパク質構造または分子的相互作用のうち少なくとも1つを比較することを含む。いくつかの実施形態では、第1の真核生物および第2の真核生物の遺伝子またはタンパク質間の相同性は、(i)動物遺伝子と候補酵母遺伝子間の配列類似性を決定するステップと、(ii)動物遺伝子と候補酵母遺伝子間の進化的類似性および構造類似性を決定するステップと、(iii)動物遺伝子および候補酵母遺伝子間の分子的相互作用類似性を決定するステップと、(iv)拡散成分解析を使用してステップ(i)から(iii)における類似性を統合することによって、候補酵母遺伝子のセットに対して相同な動物における遺伝子のセットを決定するステップとを含む。いくつかの実施形態では、ステップ(i)は、BLOSUM62置換マトリックスおよび/またはDIOPTを用いてNCBIタンパク質BLASTを利用することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ(ii)は、PSI-BLASTを利用して、マルチプル配列アラインメントを構築し、プロファイル隠れマルコフモデルを築いて、リモート進化信号をコードすることとそれに続くHHpredを含む。いくつかの実施形態では、ステップ(iii)は、遺伝子の機能解析のためのマルチ-ネットワークトポロジーのコンパクト統合(Compact Integration of Multi-Network Topology for Functional Analysis of Genes)(Mashup)を利用することを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、真核生物のうち少なくとも1種は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、真核生物のうち少なくとも1種は、ヒト、マウス、ラットまたは霊長類である。いくつかの実施形態では、真核生物のうち少なくとも1種は、酵母(例えば、パン酵母)である。酵母、例えば、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeは、実験系として相当な利点を有する。酵母は、培養および維持することが容易であり、短い世代時間を有し、高度に遺伝的に扱いやすく、これは、それらが、周知の、利用可能な技術および試薬を使用して、迅速に、予想通りに、高精度で遺伝的に修飾され得ることを意味し、ハイスループット化学的および遺伝的スクリーンに適している。株内の最小の遺伝子変動およびエピジェネティック変動がスクリーン再現性に貢献する。酵母における広範な遺伝子相互作用解析およびタンパク質相互作用解析は、酵母インタラクトーム、すなわち、細胞における分子間の物理的相互作用および酵母細胞における遺伝子間の相互作用、すなわち、遺伝子相互作用のセットに関する相当な情報が利用可能であることを意味する。分子的相互作用は、異なる生化学的ファミリー(タンパク質、核酸、脂質、炭化水素など)に属する分子間で、また所与のファミリー(例えば、タンパク質-タンパク質相互作用)内で生じ得る。酵母細胞は、神経系を有する多細胞生物の複雑性を欠きながら、ヒト細胞と共有する高度に保存されたゲノムおよび真核細胞性機構が、複雑な疾患プロセスの根底にある基本的細胞自律性機序ならびに物理的および遺伝子相互作用の理解の可能性を提供する。
細胞
【0117】
本発明の別の態様は、細胞の生成であって、(a)本明細書において開示される方法のいずれかに従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを得るステップと、(b)ステップ(a)において得られたモデルにおいて遺伝子ノードを同定するステップと、(c)遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞を生成するステップとを含む細胞の生成を対象とする。細胞は、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞であり得る。真核細胞は、本明細書において開示される任意の種類であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、マウス細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞(例えば、胚幹細胞、哺乳動物胚幹細胞、ヒト胚幹細胞、マウス胚幹細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、人工多能性幹細胞である。
【0118】
本明細書において開示される方法および組成物のいくつかの実施形態では、細胞は、体細胞、幹細胞、有糸分裂細胞または分裂終了細胞、ニューロン、線維芽細胞または接合体を含む。細胞、接合体、胚または出生後哺乳動物は、脊椎動物(例えば、哺乳動物)起源のものであり得る。いくつかの態様では、脊椎動物は、哺乳動物または鳥類である。特定の例として、霊長類(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタまたは鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ダチョウ、シチメンチョウ)細胞、接合体、胚または出生後哺乳動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞、接合体、胚または出生後哺乳動物は、単離される(例えば、単離された細胞、単離された接合体、単離された胚)。いくつかの実施形態では、マウス細胞、マウス接合体、マウス胚またはマウス出生後哺乳動物が使用される。いくつかの実施形態では、ラット細胞、ラット接合体、ラット胚またはラット出生後哺乳動物が使用される。いくつかの実施形態では、ヒト細胞、ヒト接合体またはヒト胚が使用される。本明細書において記載される方法は、in vivoで哺乳動物(例えば、マウス、ヒト)において使用できる。
【0119】
幹細胞は、全能性、多能性(pluripotent)、複能性(multipotent)、寡能性(oligipotent)および単能性(unipotent)幹細胞を含み得る。幹細胞の特定の例として、胚幹細胞、胎児幹細胞、成体幹細胞および人工多能性幹細胞(iPSC)が挙げられる(例えば、すべて参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0144031号、同2011/0076678号、同2011/0088107号、同2012/0028821号を参照のこと)。
【0120】
体細胞は初代細胞(非不死化細胞)、例えば、動物から新たに単離されたものである場合も、培養で長期増殖可能な(例えば、3ヶ月より長期間)または不確定増殖可能な(不死化細胞)細胞系統に由来する場合もある。成体体細胞は、個体、例えば、ヒト対象から得、当業者に利用可能な標準細胞培養プロトコールに従って培養できる。本発明の態様において使用される体細胞として、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞またはげっ歯類(例えば、マウス、ラット)細胞などが挙げられる。それらは、種々の臓器、例えば、皮膚、肺、膵臓、肝臓、胃、腸、心臓、乳房、生殖器、筋肉、血液、膀胱、腎臓、尿道および他の泌尿器などから、一般的に、生存体細胞を含有する任意の臓器または組織から周知の方法によって得ることができる。種々の実施形態において有用な哺乳動物体細胞として、例えば、線維芽細胞、セルトリ細胞、顆粒膜細胞、ニューロン、膵臓細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、毛包細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラノサイト、軟骨細胞、リンパ球(BおよびTリンパ球)、マクロファージ、単細胞、単核細胞、心筋細胞、骨格筋細胞などが挙げられる。
【0121】
いくつかの態様では、遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞は、遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する対象から導かれる。いくつかの実施形態では、細胞は、対象に由来するiPSc細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象に由来するiPSC細胞の前駆細胞である。
【0122】
いくつかの態様では、1つまたは複数の突然変異を細胞中に導入し、それが遺伝子の発現または遺伝子の遺伝子産物の活性を変更することによって、遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞を得る。1つまたは複数の突然変異は、細胞のゲノムへの挿入、欠失、破壊または置換のうち1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子の欠失を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子または遺伝子の一部の追加のコピーの挿入を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、調節配列を修飾し、遺伝子の遺伝子産物の発現を増大または減少させる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子の遺伝子産物の活性を増大または減少させる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、遺伝子の遺伝子産物の細胞性分解速度を増大または減少させる。
【0123】
いくつかの実施形態では、遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞は、細胞の調節配列(例えば、遺伝子のプロモーター領域)を変更することによって得られる。いくつかの実施形態では、調節配列のメチル化が修飾される。
【0124】
いくつかの実施形態では、遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞は、標的化可能なヌクレアーゼ(例えば、部位特異的ヌクレアーゼ)を用いて細胞のゲノムを修飾することによって得られる。
【0125】
現在4つの主な種類の標的化可能なヌクレアーゼ(「部位特異的ヌクレアーゼ」と呼ばれることもある)が使用されている:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびCRISPR/CasII型系のCasタンパク質などのRNAによってガイドされるヌクレアーゼ(RGN)および工学的に操作されたメガヌクレアーゼ。ZFNおよびTALENは、タンパク質に選択されたDNA配列を標的とするように適宜設計されている、部位特異的DNA結合ドメイン(DBD)に融合された制限酵素FokI(またはその工学的に操作されたバリアント)のヌクレアーゼドメインを含む。ZFNの場合には、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガーDBDを含む。TALENの場合には、部位特異的DBDは、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)、キサントモナス属(Xanthomonas)の種などの植物病原菌において見られる部位特異的DNA結合タンパク質のファミリーによって使用されるDNA認識コードに基づいて設計される。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)II型系は、ゲノム工学的操作のためにRNAによってガイドされるエンドヌクレアーゼ技術として使用される細菌適応免疫系である。細菌系は、crRNAおよびtracrRNAと呼ばれる2種の内因性細菌RNAならびにCRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ、例えば、Cas9を含む。tracrRNAは、crRNAに対して部分的相補性を有し、それとの複合体を形成する。Casタンパク質は、crRNA/tracrRNA複合体によって標的配列にガイドされ、これは、crRNA配列と、標的中の相補的配列間にRNA/DNAハイブリッドを形成する。ゲノム修飾において使用するために、crRNAおよびtracrRNA構成成分は、単一キメラガイドRNA(sgRNAまたはgRNA)に組み合わされることが多く、これでは、crRNAの標的化特異性およびtracrRNAの特性が、単一転写物に組み合わされ、これは、Casタンパク質を標的配列に局在化させ、その結果、Casタンパク質がDNAを切断し得る。sgRNAは、所望の標的配列に対して相補的または相同であるおよそ20ヌクレオチドのガイド配列と、それに続く約80ntのハイブリッドcrRNA/tracrRNAを含むことが多い。当業者ならば、ガイドRNAは、標的配列に対して完全に相補的または相同でなくてもよいということは理解する。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは2つのミスマッチを有し得る。gRNAがハイブリダイズするゲノム配列は、通常、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列によって片側が隣接しているが、当業者ならば、特定のCasタンパク質はPAM配列を緩く必要とし得ることを理解する。PAM配列は、ゲノムDNA中に存在するが、sgRNA配列中には存在しない。Casタンパク質は、正しい標的配列およびPAM配列を有する任意のDNA配列に向けられる。PAM配列は、Casタンパク質が由来した細菌種に応じて変わる。Casタンパク質の具体例として、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9およびCas10が挙げられる。いくつかの実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼは、Cas9タンパク質を含む。例えば、Streptococcus pyogenes(Sp)、Neisseria meningitides、Staphylococcus aureus、Streptococcus thermophilesまたはTreponema denticola由来のCas9を使用してもよい。これらのCas9タンパク質のPAM配列は、それぞれ、NGG、NNNNGATT、NNAGAA、NAAAACである。特定の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼのいくつかの工学的に操作されたバリアントが開発され、使用されることもある。例えば、Cas9およびFok1の工学的に操作されたバリアントが当技術分野で公知である。さらに、生物学的に活性な断片またはバリアントが使用され得るということは理解されよう。他の変動として、ハイブリッド部位特異的ヌクレアーゼの使用が挙げられる。例えば、CRISPR RNAによってガイドされるFokIヌクレアーゼ(RFN)では、FokIヌクレアーゼドメインは、触媒的に不活性Cas9タンパク質(dCas9)タンパク質のアミノ末端に融合される。RFNは、二量体として作用し、2つのガイドRNAを利用する(Tsai, QSら、Nat Biotechnol. 2014年;32巻(6号):569~576頁)。一本鎖DNA切断をもたらす部位特異的ヌクレアーゼはまた、ゲノム編集にも役立つ。このようなヌクレアーゼは、「ニッカーゼ」とも呼ばれ、2つのヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ヌクレアーゼ(ZFN、TALENおよびCasタンパク質など)の2つのヌクレアーゼドメインのうち1つの中の重要な触媒残基に突然変異(例えば、アラニン置換)を導入することによって生成できる。このような突然変異の例として、SpCas9中の、または他のCas9タンパク質中の相同位置でのD10A、N863AおよびH840Aが挙げられる。ニックは、HDRを、いくつかの細胞種では低効率で刺激し得る。互いに近接し、反対の鎖にある、配列の対に標的化される2つのニッカーゼは、各鎖で一本鎖切断を作出でき(「二重ニッキング」)、DSBを効率的に生成し、これは、必要に応じて、ドナーDNA鋳型を使用してHDRによって修復され得る(Ran, F. A.ら Cell 154巻、1380~1389頁(2013年))。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、SpCas9バリアントである。いくつかの実施形態では、SpCas9バリアントは、R661A/Q695A/Q926A三重バリアントまたはN497A/R661A/Q695A/Q926A四重バリアントである。その全文が参照により本明細書に組み込まれる、Kleinstiverら、「High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects」、Nature、529巻、490~495頁(および付録資料)(2016年)を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、C2c1、クラス2V-B型CRISPR-Casタンパク質である。その全文が参照により本明細書に組み込まれる、Yangら、「PAM-Dependent Target DNA Recognition and Cleavage by C2c1 CRISPR-Cas Endonuclease」、Cell、167巻、1814~1828頁(2016年)を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、参照により本明細書に組み込まれるUS20160319260「Engineered CRISPR-Cas9 nucleases with Altered PAM Specificity」に記載されるものである。
【0126】
いくつかの実施形態では、標的化可能なヌクレアーゼ(例えば、部位特異的ヌクレアーゼ)は、天然に存在する標的化可能なヌクレアーゼに対して少なくとも90%、95%または99%のポリペプチド配列同一性を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、細胞のヌクレオチド配列は、部位特異的ヌクレアーゼ(すなわち、標的化可能なヌクレアーゼ)および1つまたは複数のガイド配列を用いて修飾される。いくつかの実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼは、Casタンパク質である。当技術分野で公知の種々のCRISPR関連(Cas)遺伝子またはタンパク質を、本発明の方法において使用でき、Casタンパク質の選択は、個々の状況に応じて変わる(例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=cas9)。特定の態様では、Cas核酸またはタンパク質は、Cas9である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質、例えば、Cas9タンパク質は、種々の原核生物種のいずれかに由来し得る。いくつかの実施形態では、特定のCasタンパク質、例えば、特定のCas9タンパク質は、特定のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を認識するように選択できる。特定の実施形態では、Casタンパク質、例えば、Cas9タンパク質は、公知の方法を使用して、細菌もしくは古細菌から得ることができる、または合成することができる。特定の実施形態では、Casタンパク質は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌に由来し得る。特定の実施形態では、Casタンパク質は、ストレプトコッカス属(Streptococcus)(例えば、S.pyogenes、S.thermophilus)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、パスツレラ属(Pasteurella)、プレボテラ属(Prevotella)、ベイロネラ属(Veillonella)またはマリノバクター属(Marinobacter)に由来し得る。いくつかの実施形態では、例えば、同一、同様または異なるPAMモチーフを含む部位の認識および修飾を可能にするために、2種もしくはそれより多い異なるCasタンパク質をコードする核酸または2種もしくはそれより多いCasタンパク質が存在し得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cpf1タンパク質またはその機能的部分である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、任意の細菌種に由来するCpf1またはその機能的部分である。特定の実施形態では、Cpf1タンパク質は、Francisella novicida U112タンパク質もしくはその機能的部分、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)の種BV3L6タンパク質もしくはその機能的部分またはLachnospiraceae bacterium ND2006タンパク質もしくはその機能的部分である。Cpf1タンパク質は、V型CRISPR系のメンバーである。Cpf1タンパク質は、約1300個のアミノ酸を含むポリペプチドである。Cpf1は、RuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有する。その全文が参照によって本明細書に組み込まれる、Zetsche Bら、「Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease of a class 2 CRISPR-Cas system」、Cell 2015年10月22日;163巻(3号):759~71頁、doi:10.1016/j.cell.2015.09.038. Epub2015年9月25日)およびUS20160208243を参照のこと。当業者ならば、Cpf1は、tracrRNAを利用せず、したがって、二次構造を保持する配列変化を許容する単一ステム-ループを含有するcrRNAのみを必要とすることを理解する。
【0129】
いくつかの実施形態では、Cas9ニッカーゼは、1つまたは複数のCas9ヌクレアーゼドメインを不活性化することによって生成できる。いくつかの実施形態では、Cas9のRuvC Iドメイン中の残基10でのアミノ酸置換は、ヌクレアーゼを、DNAニッカーゼに変換する。例えば、アミノ酸残基10のアスパラギン酸を、アラニンと置換できる(Congら、Science、339巻:819~823頁)。
【0130】
いくつかの実施形態では、標的化可能なヌクレアーゼは、触媒的に不活性な標的化可能なヌクレアーゼ(例えば、触媒的に不活性な部位特異的ヌクレアーゼ)であり得る。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な標的化可能なヌクレアーゼを、エフェクタードメインとともに利用して、調節領域のメチル化度を修飾できる、従って、遺伝子の遺伝子産物の発現を増大または減少させることができる。触媒的に不活性のCas9タンパク質を作出するアミノ酸突然変異として、残基10および/または残基840での突然変異させることが挙げられる。残基10および残基840両方での突然変異は、本明細書においてdCas9と呼ばれることもある触媒的に不活性のCas9タンパク質を作出し得る。いくつかの実施形態では、dCas9は、触媒的に不活性であるD10AおよびH840A Cas9突然変異体である。本明細書において、「エフェクタードメイン」とは、ゲノム配列(例えば、遺伝子)の発現および/または活性化を調節する分子(例えば、タンパク質)である。エフェクタードメインは、メチル化活性(例えば、DNAメチル化活性)を有し得る。いくつかの態様では、エフェクタードメインは、遺伝子の対立遺伝子の一方または両方を標的とする。エフェクタードメインは、核酸配列として、および/またはタンパク質として導入することができる。いくつかの態様では、エフェクタードメインは、構成性または誘導性エフェクタードメインであり得る。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCas)核酸配列またはそのバリアントおよびエフェクタードメイン核酸配列を、キメラ配列として細胞中に導入する。いくつかの態様では、エフェクタードメインを、Casタンパク質と会合する(例えば、結合する)分子に融合する(例えば、エフェクター分子を、Casタンパク質と結合する抗体またはその抗原結合断片に融合する)。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCas)タンパク質またはそのバリアントおよびエフェクタードメインを、融合し、または繋ぎとめてキメラタンパク質を作出し、キメラタンパク質として細胞中に導入する。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCas)タンパク質およびエフェクタードメインは、タンパク質-タンパク質相互作用として結合する。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCas)タンパク質およびエフェクタードメインは、共有結合によって連結される。いくつかの態様では、エフェクタードメインは、Cas(例えば、dCas)タンパク質と非共有結合によって会合する。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCas)核酸配列およびエフェクタードメイン核酸配列を、別個の配列および/またはタンパク質として導入する。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCas)タンパク質およびエフェクタードメインは、融合しておらず繋ぎとめられてもいない。
【0131】
部位特異的ヌクレアーゼまたはポリペプチド(例えば、部位特異的ヌクレアーゼおよびエフェクタードメインを含む融合ポリペプチド、部位特異的ヌクレアーゼおよびメチル化または脱メチル化活性を有するエフェクタードメインを含む融合ポリペプチド)は、ヌクレアーゼ、ガイドRNAまたはポリペプチドの適当な設計によって、哺乳動物細胞のゲノム中の特有の部位(例えば、ノードとして同定された遺伝子)を標的化することができる。ポリペプチド、ヌクレアーゼおよび/またはガイドRNAは、それをコードする核酸を細胞中に導入することによって細胞中に導入することができる。プラスミドDNAトランスフェクション、ウイルスベクター送達、修飾されたまたは合成mRNA(例えば、キャップド、ポリアデニル化mRNA)を用いるトランスフェクションまたはマイクロインジェクションなどの標準的な方法を使用できる。いくつかの実施形態では、修飾されたまたは合成mRNAは、mRNAを安定化する、または天然に存在するmRNAを上回る他の改善(例えば、細胞性取り込みの増大)を提供する1つまたは複数の修飾を含む。修飾されたまたは合成mRNAの例は、Warrenら(Cell Stem Cell 7巻(5号):618~30頁、2010年、Mandal PK、Rossi DJ. Nat Protoc. 2013年、8巻(3号):568~82頁、米国特許出願公開第20120046346号および/またはPCT/US2011/032679(WO/2011/130624)に記載されている。mRNAはまた、R.E. Rhoads(編)、「Synthetic mRNA: Production, Introduction Into Cells, and Physiological Consequences」Series: Methods in Molecular Biology、1428巻において論じられている。さらなる例は、Moderna Therapeuticsの多数のPCTおよびUS出願および交付済み特許、例えば、PCT/US2011/046861、PCT/US2011/054636、PCT/US2011/054617、USSN14/390,100(およびこれらにおいて言及されるさらなる特許および特許出願)に見い出される。ヌクレアーゼまたはガイドRNAをコードするDNAを導入し、コード配列は、発現のために適当な調節エレメント、例えば、プロモーターおよび終結シグナルに作動可能に連結されなければならない。いくつかの実施形態では、ガイドRNAをコードする配列を、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、例えば、U6またはtRNAプロモーターに作動可能に連結する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のガイドRNAおよびCasタンパク質コード配列は、同一核酸(例えば、プラスミド)から転写される。いくつかの実施形態では、複数のガイドRNAが、同一プラスミドから、または異なるプラスミドから転写されるか、そうでなければ細胞中に導入される。複数のガイドRNAは、Cas9をゲノム中の異なる標的配列に向かわせることができ、マルチプレックス化ゲノム編集を可能にする。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼタンパク質(例えば、Cas9)は、核局在性シグナル(例えば、SV40 NLS)を含み得る、または含むように修飾され得る。ヌクレアーゼタンパク質は、例えば、タンパク質形質導入を使用して細胞中に導入してもよい。ヌクレアーゼタンパク質、ガイドRNAまたは両方を、マイクロインジェクションを使用して導入してもよい。例えば、ゲノム編集を実施するために部位特異的ヌクレアーゼを使用する方法は、多数の刊行物、例えば、Methods in Enzymology、Doudna JA、Sontheimer EJ.(編)、The use of CRISPR/Cas9, ZFNs, and TALENs in generating site-specific genome alterations. Methods Enzymol. 2014年、546巻(Elsevier);Carroll, D.、Genome Editing with Targetable Nucleases、Annu. Rev. Biochem. 2014年、83巻:409~39頁およびこれらのいずれかにおける参考文献に記載されている。米国特許出願公開第20140068797号、同20140186919号、同20140170753号および/またはPCT/US2014/034387(WO/2014/172470)も参照のこと。
【0132】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のガイド配列は、部位特異的にDNAを認識する配列を含む。例えば、ガイド配列は、CRISPR系によって利用されるガイドリボ核酸(RNA)配列または部位特異的にDNAを認識するTALENもしくはジンクフィンガー系内の配列を含み得る。ガイド配列は、1つまたは複数のゲノム配列の各々の一部と相補的である部分を含み、触媒的に不活性の部位特異的ヌクレアーゼの結合部位を含む。いくつかの実施形態では、RNA配列は、ガイドRNA(gRNA)または単一ガイドRNA(sgRNA)と呼ばれる。
【0133】
いくつかの態様では、ガイド配列は、調節または修飾されているゲノム配列1つまたは複数の(例えば、すべて)と相補的であり得る。一態様では、ガイド配列は、単一標的ゲノム配列に対して相補的である。2つまたはそれより多い標的ゲノム配列が調節または修飾される予定である特定の態様では、各ガイド配列が1つの標的ゲノム配列に対して相補的である(特異的である)複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い)ガイド配列を導入する。いくつかの態様では、2つまたはそれより多い、3つまたはそれより多い、4つもしくはそれより多い、5つもしくはそれより多いまたは6つもしくはそれより多いガイド配列が、同一標的配列の異なる部分に対して相補的である(特異的である)。一態様では、2つまたはそれより多いガイド配列は、DNAの同一領域の異なる配列と結合する。いくつかの態様では、単一ガイド配列は、ゲノム配列の少なくとも2つの標的またはそれより多く(例えば、すべて)に対して相補的である。ゲノム配列の1つまたは複数に対して相補的であるガイド配列の一部および触媒的に不活性の部位特異的ヌクレアーゼと結合するガイド配列の一部を、単一配列として、または2つ(またはそれより多い)の別個の配列として細胞中に導入できるということも当業者には明らかとなろう。
【0134】
各ガイド配列は、約8塩基対(bp)~約200bpに長さが変わり得る。いくつかの実施形態では、RNA配列は、約9~約190bp、約10~約150bp、約15~約120bp、約20~約100bp、約30~約90bp、約40~約80bp、約50~約70bpの長さであり得る。
【0135】
各ガイド配列が相補的である、各ゲノム配列(例えば、ノードとして同定された遺伝子)の部分も、大きさが変わり得る。特定の態様では、ガイド配列が相補的である、各ゲノム配列の部分は、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、81、92、93、94、95、96、97、98または100ヌクレオチド(連続ヌクレオチド)の長さであり得る。いくつかの実施形態では、各ガイド配列は、各ゲノム配列の部分に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%同一または類似などであり得る。いくつかの実施形態では、各ガイド配列は、各ゲノム配列に対して完全にまたは部分的に同一または同様である。例えば、各ガイド配列は、ゲノム配列の部分に対する完全相補性とは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20ヌクレオチドなどだけ異なり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のガイド配列は、ゲノム配列の少なくとも約10~約25(例えば、約20)ヌクレオチドにわたって完全に相補性(100%)である。
【0136】
いくつかの実施形態では、遺伝子ノードの発現の変更または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞を、細胞を、遺伝子ノードの発現を低減させる核酸と接触させることによって得る。核酸は、3を超えるヌクレオチド長を有するリボースヌクレオチドまたはデオキシリボースヌクレオチドのポリマーである。核酸は、天然に存在するヌクレオチド、合成ヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド、またはホスホロチオエート(phosphorotiolates)などのシュードヌクレオチドならびにP32、ビオチン、蛍光色素またはジゴキシゲニンなどの検出可能な標識を有するヌクレオチドを含み得る。遺伝子ノードの発現を低減できる核酸は、遺伝子ノード核酸(例えば、mRNA)またはその一部に対して完全に相補的であり得る。あるいは、配列間の幾分かの可変性が許容される場合もある。
【0137】
本発明の核酸は、細胞内条件下またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で遺伝子ノード核酸(例えば、mRNA)とハイブリダイズし得る。本発明の核酸は、遺伝子ノード核酸(例えば、mRNA)に対して、いずれかまたは両条件下で遺伝子ノードの発現を阻害するのに十分に相補的である。細胞内条件とは、通常、細胞、例えば、哺乳動物細胞内で見られる温度、pHおよび塩濃度などの条件を指す。
【0138】
一般に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、規定のイオン強度およびpHで特定の配列の熱融点(T)よりも約5℃低いように選択される。しかし、ストリンジェントな条件は、本明細書において別に認定されるような所望のストリンジェンシーの程度に応じて、選択された配列の熱融点よりも約1℃~約20℃の範囲低い温度を包含する。例えば、隣接するコード配列に対して相補的ではない連続ヌクレオチドのストレッチによって各々分けられている、転写因子コード配列に対して正確に相補的である連続ヌクレオチドの2、3、4または5つまたはそれより多いストレッチを含む核酸は、遺伝子ノードの機能を阻害し得る。一般に、連続ヌクレオチドの各ストレッチは、少なくとも4、5、6、7または8またはそれより多いヌクレオチド長である。非相補的介在配列は、1、2、3または4ヌクレオチド長であり得る。当業者ならば、センス核酸にハイブリダイズされる核酸の算出された融点を容易に使用して、特定の標的核酸の発現を阻害するために許容されるミスマッチの程度を推定できる。本発明の核酸は、例えば、リボザイムまたはアンチセンス核酸分子を含む。
【0139】
アンチセンス核酸分子は、一本鎖であっても二本鎖であってもよく(例えば、低分子干渉RNA(siRNA))、酵素依存的に、または立体的遮断によって機能し得る。酵素依存的に機能するアンチセンス分子は、標的mRNAを分解するためのRNase H活性に対して依存性の形態を含む。これらは、一本鎖DNA、RNAおよびホスホロチオエート分子ならびにセンス-アンチセンス鎖対合による標的mRNA認識と、それに続くRNA誘導性サイレンシング複合体による標的mRNAの分解を含む二本鎖RNAi/siRNA系を含む。RNase-H非依存性である立体遮断性アンチセンスは、標的mRNAとの結合によって遺伝子発現または他のmRNA依存性細胞性プロセスを干渉し、翻訳などの他のプロセスを干渉する。立体遮断性アンチセンスは、2’-Oアルキル(普通、RNase-H依存性アンチセンスとのキメラ中に)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)およびモルホリノアンチセンスを含む。
【0140】
低分子干渉RNAを使用して、例えば、遺伝子ノードの産物のレベルが低減されるように、遺伝子ノードをコードするmRNAのレベルを特異的に低減してもよい、および/または遺伝子ノードをコードするmRNAの翻訳を低減してもよい。siRNAは、転写後遺伝子サイレンシングを配列特異的に媒介する。例えば、Carthewら、「Origins and Mechanisms of miRNAs and siRNAs」、Cell、136巻、4号、642~655頁、2009年2月20日を参照のこと。siRNAは、ひとたび、RNA誘導性サイレンシング複合体中に組み込まれると、複合体を相同mRNA転写物にガイドし、次いで、相同mRNA転写物が複合体によって切断されることによって、相同内因性mRNA転写物の切断を媒介する。siRNAは、遺伝子ノードmRNA転写物の任意の領域に対して相同であり得る。相同性の領域は、30ヌクレオチド長またはそれより短い、25ヌクレオチド未満、約21~23ヌクレオチド長またはそれより短い、例えば、19ヌクレオチド長であり得る。siRNAは、通常、二本鎖であり、ヌクレオチド3’オーバーハングを有し得る。3’オーバーハングは、最大約5または6ヌクレオチドの’3オーバーハング、例えば、2ヌクレオチドの3’オーバーハング、例えば、3’オーバーハングUUジヌクレオチドなどであり得る。いくつかの実施形態では、siRNAは、ヌクレオチド3’オーバーハングを全く含まない場合もある。siRNAを設計する方法は、当業者に公知である。例えば、Elbashirら Nature 411巻:494~498頁(2001年);Harborthら Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 13巻:83~106頁(2003年)を参照のこと。いくつかの実施形態では、AAで始まり、センスおよびアンチセンスsiRNA鎖の両方について3’UUオーバーハングを有し、およそ50%のG/C含量を有する標的部位を選択する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の標的mRNAに対して特有であり、分解または翻訳阻害が望まれない他のmRNAでは、特有ではない標的部位を選択する。siRNAは、化学的に合成してもよく、in vitro転写によって作出してもよく、またはsiRNA発現ベクターもしくはPCR発現カセットから発現させてもよい。例えば、ambion.com/techlib/tb/tb.sub.--506htmlでワールドワイドウェブを参照のこと。
【0141】
siRNAが、発現ベクターまたはPCR発現カセットから発現される場合には、siRNAをコードする挿入部分は、siRNAヘアピンにフォールディングするRNA転写物として発現され得る。したがって、RNA転写物は、ヘアピンのループならびに3’末端にU’のストリングを形成するスペーサー配列によって、その逆相補性アンチセンスsiRNA配列に連結されているセンスsiRNA配列を含み得る。ヘアピンのループは、任意の適当な長さ、例えば、最大30ヌクレオチド長、例えば、3~23ヌクレオチド長であってよく、種々のヌクレオチド配列のものであってよい。siRNAはまた、直接的に、または導入遺伝子もしくはウイルスによって導入された二本鎖RNAの切断によってin vivoで生成されてもよい。RNA依存性RNAポリメラーゼによる増幅は、いくつかの生物において起こり得る。siRNAを、当技術分野で通常の技術を有するものに公知の任意の方法に従ってさらに修飾してもよい。
【0142】
アンチセンス阻害性核酸を使用してまた、例えば、転写および/または翻訳を阻害することによって遺伝子ノード発現を特異的に低減してもよい。アンチセンス阻害性核酸は、遺伝子ノードの遺伝子産物をコードするセンス核酸に対して相補的である。例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に対して相補的である場合も、またはmRNA配列に対して相補的である場合もある。全コード鎖に対して相補的である場合も、その一部のみに対して相補的である場合もある。遺伝子ノードの遺伝子産物をコードする核酸の非コード領域のすべてに対して相補的である場合も、一部に対して相補的である場合もある。非コード領域は、コード領域に隣接する5’および3’領域、例えば、5’および3’非翻訳配列を含む。アンチセンス阻害性核酸は、一般に、少なくとも6ヌクレオチド長であるが、最大約8、12、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長であり得る。より長い阻害性核酸を使用してもよい。
【0143】
アンチセンス阻害性核酸は、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、アンチセンス阻害性核酸をコードする発現ベクターからの、または発現カセットからの発現によって調製してもよい。あるいは、天然に存在するヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドまたはその任意の組合せを使用する化学合成によって調製してもよい。いくつかの実施形態では、阻害性核酸は、例えば、阻害性核酸の生物学的安定性を増大するように、またはアンチセンス阻害性核酸とセンス核酸の間に形成される二本鎖の細胞内安定性を増大するように設計された、修飾されたヌクレオチドまたは非リン酸ジエステル結合から作製される。
【0144】
天然に存在するヌクレオチド、ヌクレオシドおよび核酸塩基として、リボースまたはデオキシリボースヌクレオチドアデノシン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルが挙げられる。修飾されたヌクレオチド、ヌクレオシドおよび核酸塩基の例として、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン(isopentenyladeninje)、ウラシル-5オキシ酢酸、ブトキソシン(butoxosine)、シュードウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキサ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキサ酢酸、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリンを含むものが挙げられる。
【0145】
したがって、本発明の核酸は、修飾されたヌクレオチドならびにリボースおよびデオキシリボースヌクレオチドの組合せなどの天然ヌクレオチドを含んでもよく、本発明の核酸は、上記で論じられた任意の長さであってよく、遺伝子ノードの核酸配列に対して相補的である。
【0146】
いくつかの実施形態では、遺伝子ノードの発現を調節する核酸は、小さいヘアピンRNA(shRNA)である。
【0147】
shRNAは、RNA干渉によって遺伝子発現をサイレンシングするために使用できる緊密なヘアピンを生成するRNAの配列である。shRNAヘアピン構造は、細胞性機構によってsiRNAに切断され、次いで、これが標的mRNAと結合し、切断する。shRNAは、shRNAをコードするベクターによって細胞に導入でき、これでは、shRNAコード領域は、プロモーターに作動可能に連結されている。選択されたプロモーターは、shRNAの発現を可能にする。例えば、プロモーターは、shRNAの連続発現にとって有用であるU6プロモーターであってもよい。ベクターは、例えば、娘細胞へ伝えられることができ、遺伝子サイレンシングが遺伝性であることを可能にする。McIntyre G、Fanning G、Design and cloning strategies for constructing shRNA expression vectors、BMC BIOTECHNOL. 6巻:1号(2006年);Paddisonら、Short hairpin RNAs (shRNAs) induce sequence-specific silencing in mammalian cells、GENES DEV. 16巻(8号):948~58頁(2002年)を参照のこと。
【0148】
いくつかの実施形態では、遺伝子ノードの発現を調節する核酸は、リボザイムである。リボザイムは、触媒活性を有するRNA分子であり、相同領域を有するmRNAなどの一本鎖核酸を切断可能である。例えば、Cech、Science 236巻:1532~1539頁(1987年);Cech、Ann. Rev. Biochem. 59巻:543~568頁(1990年);Cech、Curr. Opin. Struct. Biol. 2巻:605~609頁(1992年);Couture and Stinchcomb、Trends Genet. 12巻:510~515頁(1996年)を参照のこと。
【0149】
トランスで高度に配列特異的にRNA分子を切断できるリボザイムを設計し、構築する方法が開発されており、当技術分野で記載されている。例えば、Haseloffら、Nature 334巻:585~591頁(1988年)を参照のこと。リボザイムは、別個の「ハイブリダイゼーション」領域を工学的に操作してリボザイム中に入れることによって特定のRNAを標的化できる。ハイブリダイゼーション領域は、リボザイムが、標的と特異的にハイブリダイズすることを可能にする、標的RNAに対して相補的である配列を含有する。例えば、Gerlachら、EP321,201を参照のこと。標的配列は、約5、6、7、8、9、10、12、15、20または50連続ヌクレオチドのセグメントであり得る。標的に対するハイブリダイゼーション配列の親和性を増大するためにより長い相補的配列を使用してもよい。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書における核酸(例えば、増強された核酸)(例えば、DNA構築物、合成RNA、例えば、本明細書において記載される相同または相補的RNA、本明細書において記載されるmRNAなど)は、当業者に周知のトランスフェクション、エレクトロポレーション、カチオン性物質、ポリマーまたは脂質ベースの送達分子によって目的の細胞中に導入してもよい。本明細書において、天然に存在する対応物核酸と比較して、「増強された核酸」は、増強された特性(例えば、増強された安定性、増強された細胞性取り込み、増強された結合、増強された特異性)を有する。
【0151】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、in vivoで、ex vivoで、または培養において細胞集団への核酸送達を増強する。例えば、複数の細胞(例えば、酵母または哺乳動物細胞などの真核細胞)を含有する細胞培養を、少なくとも1つのヌクレオシド修飾および必要に応じて翻訳可能な領域を有する増強された核酸を含有する組成物と接触させる。いくつかの実施形態では、組成物はまた、一般に、トランスフェクション試薬または宿主細胞への増強された核酸取り込みの効率を増大する他の化合物を含有する。増強された核酸は、対応する未修飾核酸に対して、細胞集団において増強された保持を示す。いくつかの実施形態では、増強された核酸の保持は、未修飾核酸の保持よりも大きい。いくつかの実施形態では、未修飾核酸の保持よりも、少なくとも約50%、75%、90%、95%、100%、150%、200%または200%を超えて大きい。このような保持利点は、増強された核酸を用いる1ラウンドのトランスフェクションによって達成することができる、または反復ラウンドのトランスフェクション後に得ることができる。
【0152】
現在開示される主題の合成RNA(例えば、修飾されたmRNA、増強された核酸)を、必要に応じて、例えば、細胞への修飾されたmRNA送達の決定を促進するリポーター遺伝子(例えば、mRNAのコード領域の上流または下流)と組み合わせてもよい。適したリポーター遺伝子として、例えば、緑色蛍光タンパク質mRNA(GFP mRNA)、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼmRNA(ルシフェラーゼ mRNA)、ホタルルシフェラーゼmRNAまたはそれらの任意の組合せを挙げることができる。例えば、GFP mRNAを、核局在性配列をコードするmRNAと融合して、少なくとも1つの調節エレメントから転写されるRNAが起こっている細胞におけるmRNA局在性の確認を容易にできる。
【0153】
いくつかの実施形態では、転写後に、例えば、キャップまたは他の官能基を付加することによってRNAをさらに修飾できる。一態様では、合成RNA(増強された核酸)は、5’および/または3’-キャップ構造を含む。合成RNAは、一本鎖(例えば、ssRNA)または二本鎖(例えば、dsRNA)であり得る。5’および/または3’-キャップ構造は、センス鎖、アンチセンス鎖のみ、または両鎖であり得る。「キャップ構造」とは、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端に組み込まれている化学修飾を意味する(例えば、本明細書において参照により組み込まれる、Adamicら、米国特許第5,998,203号を参照のこと)。これらの末端修飾は、エキソヌクレアーゼ分解から核酸分子を保護し、細胞内で送達および/または局在性において補助し得る。キャップは、5’末端(5’-キャップ)にまたは3’末端(3’-キャップ)に存在する場合も、両端に存在する場合もある。
【0154】
5’-キャップの限定されない例として、それだけには限らないが、グリセリル、逆位デオキシ塩基脱落残基(部分)、4’,5’-メチレンヌクレオチド、1-(ベータ-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、アルファ-ヌクレオチド、修飾された塩基ヌクレオチド、ホスホロジチオエート連結、スレオ-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’-セコヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-逆位ヌクレオチド部分、3’-3’-逆位塩基脱落部分、3’-2’-逆位ヌクレオチド部分、3’-2’-逆位塩基脱落部分、1,4-ブタンジオールホスフェート、3’-ホスホルアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3’-ホスフェート、3’-ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートまたは架橋もしくは非架橋メチルホスホネート部分が挙げられる。
【0155】
3’-キャップの限定されない例として、それだけには限らないが、グリセリル、逆位デオキシ塩基脱落残基(部分)、4’,5’-メチレンヌクレオチド、1-(ベータ-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、5’-アミノ-アルキルホスフェート、1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート、3-アミノプロピルホスフェート、6-アミノヘキシルホスフェート、1,2-アミノドデシルホスフェート、ヒドロキシプロピルホスフェート、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、アルファ-ヌクレオチド、修飾された塩基ヌクレオチド、ホスホロジチオエート、スレオ-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’-セコヌクレオチド、3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5’-5’-逆位ヌクレオチド部分、5’-5’-逆位塩基脱落部分、5’-ホスホルアミダート、5’-ホスホロチオエート、1,4-ブタンジオールホスフェート、5’-アミノ、架橋および/または非架橋5’-ホスホルアミダート、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋メチルホスホネートおよび5’-メルカプト部分が挙げられる(より詳細については、参照により本明細書に組み込まれるBeaucageおよびIyer、1993年、Tetrahedron 49巻、1925頁を参照のこと)。
【0156】
合成RNAは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド、例えば、シュードウリジン、m5U、s2U、m6Aおよびm5C、N1-メチルグアノシン、N1-メチルアデノシン、N7-メチルグアノシン、2’-)-メチルウリジンおよび2’-O-メチルシチジンを含み得る。修飾されたヌクレオシドを受け入れるポリメラーゼは、当業者に公知である。修飾されたポリメラーゼを使用して、合成の、修飾されたRNAを生成できる。したがって、例えば、特定の修飾されたヌクレオシドを基質として許容するまたは受け入れるポリメラーゼを使用して、修飾されたヌクレオシドを含む、合成の、修飾されたRNAを生成できる。
【0157】
いくつかの実施形態では、合成RNAは、トランスフェクトされた組織または細胞集団によるin vivoでの自然免疫応答の低減(または消失)またはin vivoでのインターフェロン応答の低減を引き起こす。真核細胞、例えば、哺乳動物またはヒト細胞において産生されるmRNAは、重度に修飾され、修飾は、細胞が、その細胞によって産生されないRNAを検出することを可能にする。細胞は、翻訳を停止すること、またはそうでなければ、自然免疫もしくはインターフェロン応答を開始することによって応答する。したがって、外因的に添加されたRNAが、標的細胞によって産生された内因性RNAにおいて生じる修飾を模倣するように修飾され得る限り、外因性RNAは、外来核酸に対する標的細胞の防御の少なくとも一部を避けることができる。したがって、いくつかの実施形態では、合成RNAは、真核生物/哺乳動物/ヒトRNAにおいてin vivoで見い出されるような修飾を含むin vitro転写されたRNAを含む。このような天然に存在する修飾を模倣する他の修飾はまた、細胞によって許容される合成RNA分子の産生においても有用であり得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、合成RNAは、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞においてmRNA安定性および/または翻訳効率を増大できる1つまたは複数の修飾(例えば、修飾された5’および/または3’UTR配列、最適化されたコドン)を有する。参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20140206753号を参照のこと。
【0159】
本明細書において、用語「トランスフェクトする」または「トランスフェクション」とは、核酸、例えば、合成RNA、例えば、修飾されたmRNAの細胞への、または好ましくは、標的細胞への導入を意味する。導入された合成RNA(例えば、修飾されたmRNA)は、標的細胞中で安定にまたは一過性に維持され得る。用語「トランスフェクション効率」とは、トランスフェクションに付されている標的細胞によって取り込まれた合成RNA(例えば、修飾されたmRNA、阻害性RNA)の相対量を指す。実際には、トランスフェクション効率は、トランスフェクション後に標的細胞によって発現されたリポーター核酸産物の量によって推定できる。好ましい実施形態として、高トランスフェクション効率を有する組成物、特に、非標的細胞のトランスフェクションによって媒介される有害作用を最小化するそれらの組成物が挙げられる。いくつかの実施形態では、高トランスフェクション効率を実証する本発明の組成物は、潜在的な全身有害作用を最小にしながら、合成RNA(例えば、修飾されたmRNA、阻害性RNA)の適当な投与量が標的細胞に送達される可能性を改善する。
スクリーニングの方法
【0160】
いくつかの態様では、本発明は、生理学的プロセスまたは病理プロセスのモジュレーターについてのスクリーニング方法であって、遺伝子ノードの発現または遺伝子ノードの遺伝子産物の活性の変更を有する細胞(すなわち、変更された細胞)を提供するステップと、生理学的プロセスまたは病理プロセス(例えば、本明細書において開示される方法によってモデリングされる生理学的プロセスまたは病理プロセス)のモジュレーターについて化合物をスクリーニングするために細胞を使用するステップとを含む方法を対象とする。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法によって細胞が得られる。いくつかの実施形態では、スクリーニングの方法は、変更された細胞を薬剤(例えば、小分子、核酸、抗体またはポリペプチド)と接触させるステップおよび少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を測定するステップを含む。
【0161】
広い意味で、「スクリーニング」は、細胞表現型に対する選択された効果(例えば、潜在的治療上有用な効果)を有する試験化合物または薬剤が探索されるアレイの任意の使用を含み得る。スクリーニングは、目的の1つまたは複数の細胞表現型に対する多数の(例えば、数百、数千または数百万)の別個の試験化合物、薬剤または試験化合物/薬剤組合せの効果を評価することを含むことが多い。いくつかの実施形態では、目的の細胞表現型は、化合物に対する「応答」である。応答は、例えば、細胞生存力または細胞増殖の増大または減少、細胞の1つまたは複数の生物学的機能またはプロセスの変更、1種または複数の遺伝子産物の発現または活性または細胞下局在性または翻訳後修飾の変更などであり得る。化合物と接触させた場合に目的の特定の応答を示す細胞は、化合物に対して「応答する」または化合物に対して「感受性」であるといわれ得る。応答を示さない、または例えば、感受性細胞と比較して低減された応答を示す細胞は、化合物に対して「耐性」であるといわれ得る。多数の実施形態において、培養環境(ex vivo)における目的の細胞応答は、in vivo(すなわち、ヒトまたは動物における)での目的の応答に対応し得る、またはそれと相関し得る。例えば、化合物に応じた培養におけるがん細胞生存力または増殖の低減は、in vivoでのがん細胞生存力または増殖の低減と相関し得る、また、がんを有する対象において治療効力をもたらし得る。あるいは、毒性タンパク質凝集体(例えば、α-syn凝集体)の生成の低減または毒性タンパク質凝集体に対する感受性の低減は、タンパク質症を有する患者における有効性と相関し得る。いくつかの実施形態では、スクリーンを使用して、組合せで調節する(例えば、阻害する)ために有用であろう有用な化合物の組合せまたは標的を同定する。「併用療法」は、通常、化合物のいずれかが、単一薬剤または有効性を維持する(例えば、薬物耐性の出現を阻害することによって)のに有用であろうものと同一用量で投与される場合に達成されるであろうものよりも、大きい、またはより有益である、またはより延長された生物学的効果(通常、特定の疾患または状態に対する治療上有益な効果)を達成するための、十分に近い時間での2種またはそれより多い化合物の投与を指す。いくつかの実施形態では、2種またはそれより多い化合物を、互いに6週間以内またはそれより短い間に少なくとも1回投与する。2種またはそれより多い化合物を、互いに24または48時間以内または互いに最大1、2、3もしくは4週間以内に投与することが多い。いくつかの実施形態では、それらを単一組成物中で一緒に投与してもよいが、別個に投与するであろうことが多く、異なる投与経路を使用して投与しても、同一投与経路を使用して投与してもよい。併用療法は、例えば、有効性の増大をもたらし得る、またはより低用量の化合物の使用を可能にでき、これが副作用を低減し得る。併用療法において使用される化合物は、同一の標的または経路を標的とする場合も、異なる標的または経路を標的とする場合もある。
【0162】
いくつかの実施形態では、スクリーンは、目的の表現型に関して特に関連するものであり得る細胞種、例えば、薬物候補または標的が探索される疾患において影響を受ける、または化合物の望ましくない副作用に対して特に脆弱であり得る細胞種の細胞を使用して実施できる。
【0163】
いくつかの態様では、本発明は、生物(例えば、ヒト、真核生物、哺乳動物)において病理プロセスを処置するために化合物についてスクリーニングする方法であって、(a)本明細書において開示される任意の方法によって生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングするステップと、(b)ステップ(a)のモデルの遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、化合物をスクリーニングして同定された遺伝子またはタンパク質ノードのモジュレーターを同定するステップとを含む方法を対象とする。病理学的プロセスは、本明細書において開示される任意のプロセスであり得る。スクリーニングする方法は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によってであり得る。
療法の標的を決定する方法
【0164】
いくつかの態様では、本発明は、生理学的プロセスまたは病理プロセス(例えば、神経変性状態、疾患、障害)を有する生物(例えば、真核生物、ヒト)において療法のための1種または複数の標的を決定する方法であって、(a)本明細書において開示される方法のいずれかに従って生成された生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを得るステップと、(b)ステップ(a)において得られたモデルの1種または複数の遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、(c)生物が、ステップ(b)において同定された遺伝子またはタンパク質ノードのいずれかにおいて突然変異、発現の変更または活性の変更を有するか否かを決定するステップとを含む方法を対象とする。本発明において、生物が、当技術分野で公知の遺伝子またはタンパク質において突然変異、発現の変更または活性の変更を有するか否かを決定する任意の方法を使用してもよい。いくつかの実施形態では、方法は、生物のゲノムまたは生物のゲノムの関連部分を配列決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞においてタンパク質活性またはタンパク質濃度を検出するためのアッセイを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞においてタンパク質翻訳または転写の程度を検出するステップを含む。
生理学的プロセスまたは病理プロセス(増大されていない)をモデリングする方法
【0165】
いくつかの態様では、本発明は、第2の真核生物(例えば、酵母)において第1の真核生物(例えば、ヒト)の生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングする方法であって、(a)第1の真核生物の生理学的プロセスまたは病理プロセスの第2の真核生物類似物において同定された遺伝子のセットを提供するステップと、(b)同定された遺伝子間の相互作用を得るステップと、(c)生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出するステップとを含む方法を対象とする。いくつかの実施形態では、ステップ(b)における相互作用は、賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムを使用して、ネットワークを得るためのコストを最小にしながら、精選されたデータベースからの遺伝子相互作用、物理的相互作用およびアノテートされた経路を介して、遺伝子またはタンパク質ノードを接続することによって得られる。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される、および当技術分野で公知の方法を使用して、生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデル(例えば、ネットワーク)を作出してもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)の第2の真核生物遺伝子のセットは、調節された遺伝子発現または遺伝子産物活性を有するように修飾された細胞を提供するステップと、(b)修飾が、生理学的プロセスまたは病理プロセスと関連する状態に対する細胞の応答を調節するか否かを決定するステップと、(c)細胞応答が調節される場合に、生理学的プロセスまたは病理プロセスの類似物に関与するような遺伝子を同定するステップとを含む方法によって得た。いくつかの実施形態では、生理学的プロセスまたは病理プロセスと関連する状態は、1種または複数の遺伝子の異常な発現(例えば、過剰発現、発現の低減、発現の排除)を含む。いくつかの実施形態では、1種または複数の遺伝子は、非内因性遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、細胞応答は、少なくとも1つの表現型の変化、少なくとも1種の遺伝子の発現の変化、少なくとも1種のタンパク質の活性の変化または細胞生存力の変化を含む。いくつかの実施形態では、第2の真核生物遺伝子のセットは、酵母遺伝子のゲノムワイドスクリーンから得られる。
【0167】
いくつかの実施形態では、方法は、多様なアルゴリズムパラメータを用いるPCSFアルゴリズムを使用してマルチプルネットワークを生成するステップおよび最大全域木アルゴリズムを用いてマルチプルネットワークから代表的ネットワークを作出するステップをさらに含む。
【0168】
本発明のその他の態様は、真核生物において病理プロセスを処置する化合物についてスクリーニングする方法であって、本明細書において開示される方法によって真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスをモデリングするステップと、モデルの遺伝子またはタンパク質ノードを同定するステップと、同定された遺伝子またはタンパク質ノードのモジュレーターを同定する化合物をスクリーニングするステップとを含む方法を対象とする。
細胞および方法:ヒトα-シヌクレインタンパク質
【0169】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞を対象とし、細胞は、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている。いくつかの実施形態では、発現構築物は、ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、細胞のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0170】
酵母遺伝子の哺乳動物相同体は、本明細書において開示される任意の方法によって決定することができる。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子の哺乳動物相同体は、表S9、表S10または表S11に示される相同体を含む。
【0171】
プロモーターは、制限されない。いくつかの実施形態では、プロモーターは、核酸を構成的に発現する。誘導性プロモーターは、制限されない。用語「誘導性プロモーター」は、本明細書において、インデューサー(化学的薬剤および/または生物学的薬剤など)の不在下で、インデューサーに応じて作動可能に連結された遺伝子(cDNAを含む)の発現を指示しない、または低レベルの発現を指示し、発現を指示するその能力が増強されるプロモーターを指す。例示的誘導性プロモーターとして、例えば、重金属に応答するプロモーター(CRC Boca Raton、Fla.(1991年)、167~220頁;Brinsterら Nature(1982年)、296巻、39~42頁)、熱ショックに、ホルモンに応答するプロモーター(Leeら P.N.A.S. USA(1988年)、85巻、1204~1208頁;(1981年)、294巻、228~232頁;Klockら Nature(1987年)、329巻、734~736頁;IsraelおよびKaufman、Nucleic Acids Res.(1989年)、17巻、2589~2604頁)、化学的薬剤、例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトースまたは抗生物質(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)に応答するプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、ガラクトース誘導性プロモーターである。
【0172】
酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性の増大または減少を引き起こす修飾は、本明細書において開示される任意の方法によるものであり得る。いくつかの態様では、修飾は、細胞のゲノムに導入された(例えば、標的化可能なヌクレアーゼを用いて)欠失、置換、付加または破壊である。いくつかの実施形態では、修飾は、調節配列を修飾することによって、またはmRNA翻訳を阻害することによって(例えば、干渉核酸を用いて)タンパク質の発現を低減する。いくつかの実施形態では、発現は、調節配列のメチル化を変更することによって増大または減少される。
【0173】
いくつかの実施形態では、修飾は、細胞へ、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質をコードする核酸またはその哺乳動物相同体に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を導入することである。いくつかの実施形態では、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質をコードする核酸またはその哺乳動物相同体に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物は、細胞のゲノムに組み込まれる。発現構築物をゲノムに組み込むための方法および構築物は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを使用して発現構築物を組み込む。いくつかの実施形態では、相同組換えを使用して、発現構築物を組み込む。いくつかの実施形態では、組み込まれた発現構築物は、誘導性プロモーターを含む、または誘導性プロモーターの制御下にある。
【0174】
細胞は、本明細書において開示される任意の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、酵母細胞または哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つもしくは複数において列挙される遺伝子中に欠失、破壊または突然変異を有する酵母細胞であるか、またはこのような遺伝子の哺乳動物相同体中に欠失、破壊または突然変異を有する哺乳動物細胞である。
【0175】
いくつかの実施形態では、α-シヌクレインタンパク質は、突然変異体α-シヌクレインタンパク質である。いくつかの実施形態では、突然変異体α-シヌクレインタンパク質は、野生型α-シヌクレインタンパク質と約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、突然変異体α-シヌクレインタンパク質は、A30P、E46K、A53T、H50Q、G51D、A18TまたはA29S突然変異を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとα-シヌクレイン媒介毒性を抑制する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとα-シヌクレイン媒介毒性を増強する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子の欠失は、α-シヌクレイン媒介毒性を増強する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体は、α-シヌクレイン毒性ネットワークにおける隠れたノード(例えば、予測されたノード)である。いくつかの実施形態では、哺乳動物相同体は、表S9、表S10および/または表S11において列挙される。
【0177】
本発明のその他の態様は、同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれかにおいて列挙される酵母遺伝子の相同体である、哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性の増大または減少を有するように修飾されている哺乳動物細胞(例えば、ヒト、マウス)に関する。いくつかの実施形態では、哺乳動物遺伝子相同体は、表S9、表S10および/または表S11において列挙される。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物遺伝子相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含むか、または哺乳動物遺伝子相同体中に欠失、破壊または突然変異を有する。欠失、破壊または突然変異は、本明細書において開示される任意の方法によってであり得る。プロモーターは、当技術分野で公知のおよび/または本明細書において開示される任意の適したプロモーターであり得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0178】
いくつかの実施形態では、細胞は、シヌクレイン症を患っている、またはシヌクレイン症と関連する遺伝的変異を有する対象に由来するヒト細胞である。いくつかの実施形態では、シヌクレイン症は、レビー小体を伴う認知症、グリア細胞質内封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳内鉄沈着を伴う神経変性症I型、嗅覚機能障害および筋萎縮性側索硬化症の群から選択される。いくつかの実施形態では、シヌクレイン症は、パーキンソン病(PD)、レビー小体を伴う認知症および多系統萎縮症の群から選択される。
【0179】
いくつかの実施形態では、細胞(例えば、ヒト細胞)は、同一種類の正常哺乳動物細胞と比較して、アルファ-シヌクレインの発現が増大するか、または細胞は、突然変異体α-シヌクレインタンパク質を発現し、必要に応じて、突然変異体α-シヌクレインタンパク質は、A30P、E46K、A53T、H50Q、G51D、A18TまたはA29Sを含む。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、ヒト細胞)は、神経細胞またはグリア細胞である。
【0180】
本発明のいくつかの態様は、アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物を同定することを対象とし、方法は、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む。
【0181】
本発明のいくつかの態様は、シヌクレイン症の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0182】
化合物または候補薬剤を同定するための上記の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子は、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン毒性を抑制するものまたはその欠失がアルファ-シヌクレイン毒性を増強するものであり、薬剤は、タンパク質の発現または活性を増強する。化合物または候補薬剤を同定するための上記の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子は、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン毒性を増強するものまたは欠失されるとその欠失がアルファ-シヌクレイン毒性を抑制するものであり、薬剤は、タンパク質の発現または活性を阻害する。
【0183】
本発明のいくつかの態様は、アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、
(a)ヒトアルファ-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0184】
本発明のいくつかの態様は、シヌクレイン症の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアルファ-シヌクレイン毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がシヌクレイン症の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0185】
本発明のいくつかの態様は、アルファシヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1つまたは複数において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現もしくは活性を調節する薬剤を同定するためにスクリーニングするステップと、細胞の生存力を低減するアルファシヌクレインの量を発現する細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップとを含み、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアルファシヌクレイン媒介毒性を阻害する化合物として同定される方法を対象とする。
【0186】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体を発現する細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でのタンパク質の発現を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の発現の増大から、薬剤がタンパク質の発現を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのリポータータンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのリポータータンパク質の発現の減少から、その薬剤がタンパク質の発現を減少させる化合物として同定される。
【0187】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、(i)表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1種または複数において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体のプロモーター配列および(ii)リポータータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むリポーター構築物を含む細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でリポータータンパク質の発現を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのリポータータンパク質の発現の増大から、薬剤がタンパク質の発現を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのリポータータンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのリポータータンパク質の発現の減少から、その薬剤がタンパク質の発現を減少させる化合物として同定される。
【0188】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のうちいずれか1種または複数において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体を提供するステップと、タンパク質を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でタンパク質の活性を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の活性と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の活性の増大から、薬剤がタンパク質の活性を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのタンパク質の活性と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の活性の低下から、薬剤がタンパク質の活性を低下させる化合物として同定される。
【0189】
本発明のいくつかの態様は、ヒト細胞または対象においてアルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する方法であって、細胞または対象において表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0190】
本発明のいくつかの態様は、シヌクレイン症を処置する方法であって、シヌクレイン症の処置を必要とする対象において、表S3:第1列、表S5、表S6または表S7のいずれか1つまたは複数において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0191】
アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する、またはシヌクレイン症を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を増強するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって増強してもよい。
【0192】
アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する、またはシヌクレイン症を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のサプレッサーであるか、または欠失されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のエンハンサーであり、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を増強するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって増強してもよい。
【0193】
アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する、またはシヌクレイン症を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を阻害するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって阻害してもよい。
【0194】
アルファ-シヌクレイン媒介毒性を阻害する、またはシヌクレイン症を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のエンハンサーであるか、または欠失されるとアルファ-シヌクレイン媒介毒性のサプレッサーであり、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を阻害するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって阻害してもよい。
【0195】
本明細書において開示される方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、細胞を、ヒトタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップまたはその薬剤を対象に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性は増強され、薬剤は、ヒトタンパク質をコードする核酸またはヒトタンパク質をコードするRNA転写物の転写を活性化する合成転写アクチベーターを含む。いくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性は阻害され、薬剤は、ヒトタンパク質、ヒトタンパク質をコードする遺伝子の転写を抑制する合成転写レプレッサーまたはヒトタンパク質と結合するアプタマー、ポリペプチドもしくは小分子をコードするmRNAを標的とする短い干渉RNA(siRNA)またはアンチセンス核酸である。
【0196】
上記で開示される方法の実施形態では、ヒトアルファ-シヌクレインを、真核生物または哺乳動物(例えば、マウス、ラット、旧世界または新世界霊長類、ブタなど)アルファ-シヌクレインタンパク質またはその相同体で置換してもよい。本明細書において開示される方法のいくつかの実施形態では、酵母タンパク質のヒト相同体は、表S9、表S10および/または表S11に列挙されている。
細胞および方法:ヒトTDP-43タンパク質
【0197】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞を対象とし、細胞は、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている。いくつかの実施形態では、発現構築物は、ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、細胞のゲノム中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0198】
酵母遺伝子の哺乳動物相同体は、本明細書において開示される任意の方法によって決定できる。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子の哺乳動物相同体は、表S11に示される相同体を含む。
【0199】
プロモーターは、制限されない。いくつかの実施形態では、プロモーターは、核酸を構成的に発現する。誘導性プロモーターは、制限されない。用語「誘導性プロモーター」とは、本明細書において、インデューサー(化学的薬剤および/または生物学的薬剤など)の不在下で、インデューサーに応じて作動可能に連結された遺伝子(cDNAを含む)の発現を指示しない、または低レベルの発現を指示し、発現を指示するその能力が増強されるプロモーターを指す。例示的誘導性プロモーターとして、例えば、重金属に応答するプロモーター(CRC Boca Raton、Fla.(1991年)、167~220頁;Brinsterら Nature(1982年)、296巻、39~42頁)、熱ショックに、ホルモンに応答するプロモーター(Leeら P.N.A.S. USA(1988年)、85巻、1204~1208頁;(1981年)、294巻、228~232頁;Klockら Nature(1987年)、329巻、734~736頁;IsraelおよびKaufman、Nucleic Acids Res.(1989年)、17巻、2589~2604頁)、化学的薬剤、例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトースまたは抗生物質(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)に応答するプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、ガラクトース誘導性プロモーターである。
【0200】
酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性の増大または減少を引き起こす修飾は、本明細書において開示される任意の方法によるものであり得る。いくつかの態様では、修飾は、細胞のゲノムに導入された(例えば、標的化可能なヌクレアーゼを用いて)欠失、置換、付加または破壊である。いくつかの実施形態では、修飾は、調節配列を修飾することによって、またはmRNA翻訳を阻害することによって(例えば、干渉核酸を用いて)タンパク質の発現を低減する。いくつかの実施形態では、発現は、調節配列のメチル化を変更することによって増大または減少される。
【0201】
いくつかの実施形態では、修飾は、細胞へ、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質をコードする核酸またはその哺乳動物相同体に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を導入することである。
【0202】
いくつかの実施形態では、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質をコードする核酸またはその哺乳動物相同体に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物は、細胞のゲノムに組み込まれる。発現構築物をゲノムに組み込むための方法および構築物は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを使用して発現構築物を組み込む。いくつかの実施形態では、相同組換えを使用して、発現構築物を組み込む。いくつかの実施形態では、組み込まれた発現構築物は、誘導性プロモーターを含む、または誘導性プロモーターの制御下にある。
【0203】
細胞は、本明細書において開示される任意の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、酵母細胞または哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、表S3:第2列において列挙される遺伝子中に欠失、破壊または突然変異を有する酵母細胞であるか、またはこのような遺伝子の哺乳動物相同体(例えば、ヒト)中に欠失、破壊または突然変異を有する哺乳動物細胞である。
【0204】
いくつかの実施形態では、TDP-43タンパク質は、突然変異体TDP-43タンパク質である。いくつかの実施形態では、突然変異体TDP-43は、野生型TDP-43と約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。
【0205】
いくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性を抑制する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性を増強する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子の欠失は、TDP-43媒介毒性を増強する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体は、TDP-43ネットワークにおける隠れたノード(例えば、予測されたノード)である。
【0206】
本発明のその他の態様は、同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子の相同体である、哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性の増大または減少を有するように修飾されている哺乳動物細胞(例えば、ヒト、マウス)に関する。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物遺伝子相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含むか、または哺乳動物遺伝子相同体中に欠失、破壊または突然変異を有する。欠失、破壊または突然変異は、本明細書において開示される任意の方法によってであり得る。プロモーターは、当技術分野で公知のおよび/または本明細書において開示される任意の適したプロモーターであり得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0207】
いくつかの実施形態では、細胞は、TDP-43関連疾患を患っている対象に由来するヒト細胞であるか、またはTDP-43関連疾患と関連する遺伝的変異を有する。いくつかの実施形態では、細胞は、同一種類の正常哺乳動物細胞と比較して、TDP-43の発現が増大しているか、または細胞は、突然変異体TDP-43タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、ヒト細胞)は、神経細胞またはグリア細胞である。
【0208】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43媒介毒性を阻害する化合物を同定することを対象とし、方法は、
(a)ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第2列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む。
【0209】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43媒介毒性の処置のための候補薬剤を同定する方法を対象とし、方法は、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第2列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がTDP-43媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がTDP-43媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む。
【0210】
化合物または候補薬剤を同定するための上記の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子は、過剰発現されるとTDP-43毒性を抑制するものまたはその欠失がTDP-43毒性を増強するものであり、薬剤は、タンパク質の発現または活性を増強する。化合物または候補薬剤を同定するための上記の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子は、過剰発現されるとTDP-43毒性を増強するものまたは欠失されるとその欠失がTDP-43毒性を抑制するものであり、薬剤は、タンパク質の発現または活性を阻害する。
【0211】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、
(a)TDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0212】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、
(a)ヒトTDP-43タンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がTDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてTDP-43媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのTDP-43毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がTDP-43関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0213】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、表S3:第2列において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現もしくは活性を増強する薬剤を同定するためにスクリーニングするステップと、細胞の生存力を低減するTDP-43の量を発現する細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップとを含み、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がTDP-43媒介毒性を阻害する化合物として同定される方法を対象とする。
【0214】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、表S3:第2列において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体を発現する細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でのタンパク質の発現を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の発現の増大から、薬剤がタンパク質の発現を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の発現の減少から、その薬剤がタンパク質の発現を減少させる化合物として同定される。
【0215】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、(i)表S3:第2列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体のプロモーター配列および(ii)リポータータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むリポーター構築物を含む細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でリポータータンパク質の発現を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのリポータータンパク質の発現の増大から、薬剤がタンパク質の発現を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのリポータータンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのリポータータンパク質の発現の減少から、その薬剤がタンパク質の発現を減少させる化合物として同定される。
【0216】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、表S3:第2列において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体を提供するステップと、タンパク質を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でタンパク質の活性を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の活性と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の活性の増大から、薬剤がタンパク質の活性を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのタンパク質の活性と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の活性の低下から、薬剤がタンパク質の活性を低下させる化合物として同定される。
【0217】
本発明のいくつかの態様は、ヒト細胞または対象においてTDP-43媒介毒性を阻害する方法であって、細胞または対象において、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0218】
本発明のいくつかの態様は、TDP-43関連疾患を処置する方法であって、TDP-43関連疾患の処置を必要とする対象において、表S3:第2列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0219】
TDP-43媒介毒性を阻害する、またはTDP-43毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって増強してもよい。
【0220】
TDP-43媒介毒性を阻害する、またはTDP-43毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性のサプレッサーであるか、または欠失されるとTDP-43媒介毒性のエンハンサーであり、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を増強することを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって増強してもよい。
【0221】
TDP-43媒介毒性を阻害する、またはTDP-43毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を阻害することを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって阻害してもよい。
【0222】
TDP-43媒介毒性を阻害する、またはTDP-43毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとTDP-43媒介毒性のエンハンサーであるか、または欠失されるとTDP-43媒介毒性のサプレッサーであり、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を阻害するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって阻害してもよい。
【0223】
本明細書において開示される方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、細胞を、ヒトタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップまたはその薬剤を対象に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性は増強され、薬剤は、ヒトタンパク質をコードする核酸またはヒトタンパク質をコードするRNA転写物の転写を活性化する合成転写アクチベーターを含む。いくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性は阻害され、薬剤は、ヒトタンパク質、ヒトタンパク質をコードする遺伝子の転写を抑制する合成転写レプレッサーまたはヒトタンパク質と結合するアプタマー、ポリペプチドもしくは小分子をコードするmRNAを標的とする短い干渉RNA(siRNA)またはアンチセンス核酸である。
【0224】
上記で開示される方法の実施形態では、ヒトTDP-43を、真核生物または哺乳動物(例えば、マウス、ラット、旧世界または新世界霊長類、ブタなど)TDP-43タンパク質またはその相同体で置換してもよい。本明細書において開示される方法のいくつかの実施形態では、酵母タンパク質のヒト相同体は、表S11に列挙されている。
細胞および方法:ヒトアミロイドベータタンパク質
【0225】
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む細胞を対象とし、細胞は、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されている。いくつかの実施形態では、ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物が、細胞のゲノム中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0226】
酵母遺伝子の哺乳動物相同体は、本明細書において開示される任意の方法によって決定できる。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子の哺乳動物相同体は、表S11に示される相同体を含む。
【0227】
プロモーターは、制限されない。いくつかの実施形態では、プロモーターは、核酸を構成的に発現する。誘導性プロモーターは、制限されない。用語「誘導性プロモーター」とは、本明細書において、インデューサー(化学的薬剤および/または生物学的薬剤など)の不在下で、インデューサーに応じて作動可能に連結された遺伝子(cDNAを含む)の発現を指示しない、または低レベルの発現を指示し、発現を指示するその能力が増強されるプロモーターを指す。例示的誘導性プロモーターとして、例えば、重金属に応答するプロモーター(CRC Boca Raton、Fla.(1991年)、167~220頁;Brinsterら Nature(1982年)、296巻、39~42頁)、熱ショックに、ホルモンに応答するプロモーター(Leeら P.N.A.S. USA(1988年)、85巻、1204~1208頁;(1981年)、294巻、228~232頁;Klockら Nature(1987年)、329巻、734~736頁;IsraelおよびKaufman、Nucleic Acids Res.(1989年)、17巻、2589~2604頁)、化学的薬剤、例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトースまたは抗生物質(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)に応答するプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、ガラクトース誘導性プロモーターである。
【0228】
酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または活性の増大または減少を引き起こす修飾は、本明細書において開示される任意の方法によるものであり得る。いくつかの態様では、修飾は、細胞のゲノムに導入された(例えば、標的化可能なヌクレアーゼを用いて)欠失、置換、付加または破壊である。いくつかの実施形態では、修飾は、調節配列を修飾することによって、またはmRNA翻訳を阻害することによって(例えば、干渉核酸を用いて)タンパク質の発現を低減する。いくつかの実施形態では、発現は、調節配列のメチル化を変更することによって増大または減少される。
【0229】
いくつかの実施形態では、修飾は、細胞へ、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質をコードする核酸またはその哺乳動物相同体に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を導入することである。
【0230】
いくつかの実施形態では、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質をコードする核酸またはその哺乳動物相同体に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物は、細胞のゲノムに組み込まれる。発現構築物をゲノムに組み込むための方法および構築物は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを使用して発現構築物を組み込む。いくつかの実施形態では、相同組換えを使用して、発現構築物を組み込む。いくつかの実施形態では、組み込まれた発現構築物は、誘導性プロモーターを含む、または誘導性プロモーターの制御下にある。
【0231】
細胞は、本明細書において開示される任意の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、酵母細胞または哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、表S3:第3列において列挙される遺伝子中に欠失、破壊または突然変異を有する酵母細胞であるか、またはこのような遺伝子の哺乳動物相同体(例えば、ヒト)中に欠失、破壊または突然変異を有する哺乳動物細胞である。
【0232】
いくつかの実施形態では、アミロイドベータタンパク質は、突然変異体アミロイドベータタンパク質である。いくつかの実施形態では、突然変異体アミロイドベータは、野生型アミロイドベータと約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。
【0233】
いくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性を抑制する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性を増強する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子の欠失は、アミロイドベータ媒介毒性を増強する。いくつかの実施形態では、酵母遺伝子またはその哺乳動物相同体は、アミロイドベータネットワークにおける隠れたノード(例えば、予測されたノード)である。
【0234】
本発明のその他の態様は、同一種類の修飾されていない細胞と比較して、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子の相同体である、哺乳動物遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の発現または活性が増大または減少するように修飾されている哺乳動物細胞(例えば、ヒト、マウス)に関する。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物遺伝子相同体によってコードされるタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含むか、または哺乳動物遺伝子相同体中に欠失、破壊または突然変異を有する。欠失、破壊または突然変異は、本明細書において開示される任意の方法によってであり得る。プロモーターは、当技術分野で公知のおよび/または本明細書において開示される任意の適したプロモーターであり得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0235】
いくつかの実施形態では、細胞は、アミロイドベータ関連疾患を患っている対象に由来するヒト細胞であるか、またはアミロイドベータ関連疾患と関連する遺伝的変異を有する。いくつかの実施形態では、細胞は、同一種類の正常哺乳動物細胞と比較して、アミロイドベータの発現が増大するか、または細胞は、突然変異体アミロイドベータタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、ヒト細胞)は、神経細胞またはグリア細胞である。
【0236】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物を同定することを対象とし、方法は、
(a)ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第3列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む。
【0237】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ媒介毒性の処置のための候補薬剤を同定する方法を対象とし、方法は、
(a)ヒトα-シヌクレインタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供するステップであって、細胞が、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、表S3:第3列に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む。
【0238】
化合物または候補薬剤を同定するための上記の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子は、過剰発現されるとアミロイドベータ毒性を抑制するものまたはその欠失がアミロイドベータ毒性を増強するものであり、薬剤は、タンパク質の発現または活性を増強する。化合物または候補薬剤を同定するための上記の方法のいくつかの実施形態では、遺伝子は、過剰発現されるとアミロイドベータ毒性を増強するものまたは欠失されるとその欠失がアミロイドベータ毒性を抑制するものであり、薬剤は、タンパク質の発現または活性を阻害する。
【0239】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、
(a)アミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0240】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤を同定する方法であって、
(a)ヒトアミロイドベータタンパク質を含むポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む本明細書において記載されるような細胞を提供し、細胞が、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているか、または同一種類の修飾されていない細胞と比較して、このような酵母遺伝子の哺乳動物相同体によってコードされるタンパク質の発現もしくは活性が増大もしくは減少するように修飾されているステップと、
(b)細胞を、試験薬剤と接触させるステップと、
(c)(i)薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップであって、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、試験薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップまたは(ii)細胞においてアミロイドベータ媒介毒性と関連する少なくとも1つの表現型を測定するステップであって、薬剤の不在下と比較した、薬剤の存在下でのアミロイドベータ毒性と関連する少なくとも1つの表現型の減少から、薬剤がアミロイドベータ関連疾患の処置のための候補薬剤として同定されるステップと
を含む方法を対象とする。
【0241】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物を同定する方法であって、表S3:第3列において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体の発現もしくは活性を増強する薬剤を同定するためにスクリーニングするステップと、細胞の生存力を低減するアミロイドベータの量を発現する細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下で細胞生存力を測定するステップとを含み、薬剤の不在下での細胞生存力と比較した、薬剤の存在下での細胞生存力の増大から、薬剤がアミロイドベータ媒介毒性を阻害する化合物として同定される方法を対象とする。
【0242】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、表S3:第3列において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体を発現する細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でのタンパク質の発現を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の発現の増大から、薬剤がタンパク質の発現を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の発現の減少から、その薬剤がタンパク質の発現を減少させる化合物として同定される。
【0243】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、(i)表S3:第3列において列挙される遺伝子またはその哺乳動物相同体のプロモーター配列および(ii)リポータータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むリポーター構築物を含む細胞を提供するステップと、細胞を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でリポータータンパク質の発現を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのリポータータンパク質の発現の増大から、薬剤がタンパク質の発現を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのリポータータンパク質の発現と比較した薬剤の存在下でのリポータータンパク質の発現の減少から、その薬剤がタンパク質の発現を減少させる化合物として同定される。
【0244】
いくつかの実施形態では、前記スクリーニングは、表S3:第3列において列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質またはその哺乳動物相同体を提供するステップと、タンパク質を薬剤と接触させるステップと、薬剤の存在下でタンパク質の活性を測定するステップとを含み、薬剤の不在下でのタンパク質の活性と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の活性の増大から、薬剤がタンパク質の活性を増大する化合物として同定され、薬剤の不在下でのタンパク質の活性と比較した薬剤の存在下でのタンパク質の活性の低下から、薬剤がタンパク質の活性を低下させる化合物として同定される。
【0245】
本発明のいくつかの態様は、ヒト細胞または対象においてアミロイドベータ媒介毒性を阻害する方法であって、細胞または対象において、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0246】
本発明のいくつかの態様は、アミロイドベータ関連疾患を処置する方法であって、アミロイドベータ関連疾患の処置を必要とする対象において、表S3:第3列において列挙される酵母遺伝子によってコードされる酵母タンパク質の相同体であるヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップを含む方法を対象とする。
【0247】
アミロイドベータ媒介毒性を阻害する、またはアミロイドベータ毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を増強するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって増強してもよい。
【0248】
アミロイドベータ媒介毒性を阻害する、またはアミロイドベータ毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性のサプレッサーであるか、または欠失されるとアミロイドベータ媒介毒性のエンハンサーであり、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を増強するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって増強してもよい。
【0249】
アミロイドベータ媒介毒性を阻害する、またはアミロイドベータ毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を阻害するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって阻害してもよい。
【0250】
アミロイドベータ媒介毒性を阻害する、またはアミロイドベータ毒性を処置する上記の方法のいくつかの実施形態では、酵母遺伝子は、過剰発現されるとアミロイドベータ媒介毒性のエンハンサーであるか、または欠失されるとアミロイドベータ媒介毒性のサプレッサーであり、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、ヒトタンパク質の発現または活性を阻害するステップを含む。ヒトタンパク質の発現または活性は、本明細書において開示される、または当技術分野で公知の任意の方法によって阻害してもよい。
【0251】
本明細書において開示される方法のいくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性を調節するステップは、細胞を、ヒトタンパク質の発現または活性を調節する薬剤と接触させるステップまたはその薬剤を対象に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性は増強され、薬剤は、ヒトタンパク質をコードする核酸またはヒトタンパク質をコードするRNA転写物の転写を活性化する合成転写アクチベーターを含む。いくつかの実施形態では、ヒトタンパク質の発現または活性は阻害され、薬剤は、ヒトタンパク質、ヒトタンパク質をコードする遺伝子の転写を抑制する合成転写レプレッサーまたはヒトタンパク質と結合するアプタマー、ポリペプチドもしくは小分子をコードするmRNAを標的とする短い干渉RNA(siRNA)またはアンチセンス核酸である。
【0252】
上記で開示される方法の実施形態では、ヒトアミロイドベータを、真核生物または哺乳動物(例えば、マウス、ラット、旧世界または新世界霊長類、ブタなど)アミロイドベータタンパク質またはその相同体で置換してもよい。
【0253】
本明細書において開示される方法のいくつかの実施形態では、酵母タンパク質のヒト相同体は、表S11に列挙されている。
一時的でない媒体および系
【0254】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される方法の任意の結果を、一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶させてもよい。いくつかの実施形態では、方法を使用して同定されるドラッガブルなノードおよび必要に応じて、ドラッガブルなノードを調節する化合物を、一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶させてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書において記載される方法によって作出される、または本明細書において記載されるネットワークまたはモデルを、一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶させてもよい。
【0255】
本発明のいくつかの態様は、本明細書において記載される方法を容易にするように構成されたシステムであって、実行された場合に、コンピュータシステムに、本明細書において記載される方法のステップのうち少なくとも1つを実施させる1つまたは複数のコンピュータにより実行可能な命令を実行するようにプログラムされた1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータシステムを含むシステムを対象とする。いくつかの実施形態では、システムは、第1の真核生物(例えば、ヒト)および第2の真核生物(例えば、酵母)における遺伝子間の相同性を決定することを容易にするように構成され、システムは、実行された場合に、コンピュータシステムに、第2の真核生物における遺伝子のセットに対して相同な第1の真核生物における遺伝子のセットを決定させる、および/または第2の真核生物に由来する相同な遺伝子のセットから得られた相互作用を用いて遺伝子のセット間の相互作用を増大することによって真核生物における生理学的プロセスまたは病理プロセスのモデルを作出させる1つまたは複数のコンピュータにより実行可能な命令を実行するようにプログラムされた1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、本明細書において開示される方法のいずれかによって生成されたモデルをディスプレイするためのスクリーンをさらに含む。
【0256】
本明細書において開示される本発明の特定の実施例を、実施例において以下に示す。
【0257】
当業者ならば、本発明が、目的を実施するのに、また記載された目標および利点ならびにそれらにおける固有のものを得るのに十分に適応していることを容易に理解する。本明細書における説明および実施例の詳細は、特定の実施形態の代表であり、例示的なものであって、本発明の範囲に対する制限と意図されない。それにおける改変および他の使用は、当業者には思い浮かぶであろう。これらの改変は、本発明の趣旨内に包含される。本明細書において開示される本発明に、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく様々な置換および改変を行うことができるということは、当業者には容易に明らかとなろう。
【0258】
本明細書および特許請求の範囲において、本明細書において使用される冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」とは、反対に明確に示されない限り、複数の言及を含むと理解されなければならない。群メンバーの1つ、1つよりも多く、またはすべてが、所与の製品またはプロセス中に存在する、それに使用される、そうでなければそれと関連する場合に、反対に示されない限り、または文脈から明らかでない限り、群の1つまたは複数のメンバー間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は満たされると考えられる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが、所与の製品またはプロセス中に存在する、それに使用される、そうでなければそれと関連する実施形態を含む。本発明はまた、群の1つよりも多い、またはすべてが、所与の製品またはプロセス中に存在する、それに使用される、そうでなければそれと関連する実施形態を含む。さらに、本発明は、すべての変動、組合せおよび順列を提供し、特に断りのない限り、または矛盾もしくは不一致が生じるであろうと当業者に明らかでない限り、列挙された特許請求の範囲のうち1つまたは複数に由来する1つまたは複数の制限、要素、条項、記述用語などは、同一の基本の特許請求の範囲に依存して(または、関連する任意の他の特許請求の範囲として)別の特許請求の範囲に導入されるということは理解されるべきである。本明細書において記載されるすべての実施形態は、必要に応じて、本発明のすべての異なる態様に適用可能であるということは考慮される。実施形態または態様のいずれも、必要に応じて1つまたは複数の他のこのような実施形態または態様と自由に組み合わせることができるということも考慮される。要素が、例えば、マーカッシュ群または同様の形式でリストとして提示される場合には、要素の各亜群も開示され、任意の要素が群から除去され得るということは理解されるべきである。一般に、本発明または本発明の態様は、特定の要素、特徴などを含むと呼ばれ、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、このような要素、特徴などからなる、またはそれから本質的になるということは理解されなければならない。簡潔さのために、それらの実施形態は、どの場合においても、本明細書において非常に多くの言葉で具体的に示されているわけではない。本発明の任意の実施形態または態様は、特定の排除が本明細書において列挙されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲から明確に排除され得るということは理解されなければならない。例えば、任意の1種または複数の核酸、ポリペプチド、細胞、生物の種または種類、障害、対象またはそれらの組合せが排除され得る。
【0259】
特許請求の範囲または説明が、物質の組成物、例えば、核酸、ポリペプチド、細胞または非ヒトトランスジェニック動物に関する場合、本明細書において開示される方法のいずれかに従って物質の組成物を作製または使用する方法および本明細書において開示される目的のいずれかのために物質の組成物を使用する方法は、特に断りのない限り、または矛盾もしくは不一致が生じるであろうと当業者に明らかでない限り、本発明の態様であるということは理解されるべきである。特許請求の範囲または説明が、方法に関する場合、例えば、方法を実施するのに有用な組成物を作製する方法、方法に従って製造された製品は、特に断りのない限り、または矛盾もしくは不一致が生じるであろうと当業者に明らかでない限り、本発明の態様であるということは理解されるべきである。
【0260】
範囲が本明細書において与えられる場合には、本発明は、端点が含まれる実施形態、両端点が排除される実施形態および一方の端点が含まれ、もう一方が排除される実施形態を含む。特に断りのない限り、両端点が含まれることが想定されなければならない。さらに、特に断りのない限り、またそうでなければ文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる実施形態において示された範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、文脈が明確に別に示さない限り、範囲の下限の単位の1/10まで想定できることは理解されるべきである。一連の数値が本明細書において示される場合には、本発明は、一連のものの中の任意の2つの値によって規定される任意の介在する値または範囲に類似的に関する、最低値を最小ととってもよく、最大値を最大ととってもよい実施形態を含むということも理解される。数値は、本明細書において、パーセンテージとして表される値を含む。数値に「約」または「およそ」が前置きされる本発明の任意の実施形態について、本発明は、正確な値が列挙される実施形態を含む。数値に「約」または「およそ」が前置きされない本発明の任意の実施形態について、本発明は、値に「約」または「およそ」が前置きされる実施形態を含む。「およそ」または「約」は、一般に、特に断りのない限り、または文脈から明らかでない限り、いずれかの方向に(数より大きいまたは数より小さい)数の1%の範囲内に、いくつかの実施形態では、5%の範囲内に、またはいくつかの実施形態では、10%の範囲内に入る数を含む(このような数が、あり得る値の100%を許容されないほど超える場合を除く)。反対に明確に示されない限り、1つより多い行為を含む本明細書において特許請求される任意の方法において、方法の行為の順序は、方法の行為が列挙される順序に必ずしも制限されず、本発明は、順序がそのように制限されない実施形態を含むということは理解されなければならない。特に断りのない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において記載される任意の製品または組成物が「単離された」と考えられ得るということは理解されなければならない。
【実施例
【0261】
SteinerForest Ensembleネットワークは、α-synスクリーンヒット間の生物学的接続を明らかにする
【0262】
遺伝子リストからネットワークを作製するための従来の一アプローチは、これらを公知の遺伝的または物理的タンパク質-タンパク質相互作用により接続することである。例証するため、本発明者らは、本発明者らの以前の過剰発現スクリーンにおいてα-syn毒性を修飾する77種の遺伝子を考慮した(表S1および表S2)。豊富な酵母インタラクトームを用いても、30種のヒットが、ネットワークに組み込まれなかった(図1A、上部パネル)。さらに、一部の遺伝子(「ハブ」)は、タンパク質毒性に対するその重要性のせいではなく、より多くの遺伝子に接続されたために、ネットワークにおける中心位置を占有した。例えば、PMR1は、77種の修飾因子にわたる70種の相互作用の中央値と比較して、BioGRIDにおける955種のアノテートされた相互作用を有するハブである(図1A、右上;表S2)。
【0263】
表S1:図1図2および図3に関連する、本研究において生成されたネットワークの指標。
【0264】
表S2:図1および図2に関連する、以前の過剰発現スクリーンにおいて回収された酵母修飾因子。
【0265】
より包括的なネットワークを築くために、本発明者らは、分子相互作用または「エッジ」を介して遺伝子またはタンパク質「ノード」を接続する、「賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズム」を適応させた(S.-S. C. HuangおよびFraenkel、2009年;Tuncbagら、2013年;2016年)(図1A、下部)。エッジは、遺伝的もしくは物理的相互作用、または精選されたデータベース由来のアノテートされた経路を含むことができ(Szklarczykら、2014年)、「コスト」を最小化することにより精緻化される。1)「懸賞された」ノード(遺伝的スクリーン由来の本来のヒット)が除外された場合;2)2個のノードを接続する「エッジ」が、低い信頼度の相互作用から派生する場合;または3)エッジがハブに接続する場合、コストは増加する。本発明者らのPCSFが、特異的パラメータ化に依存しなかったことを確実にするために、本発明者らは、異なるアルゴリズムパラメータにより112種の個々の森のアンサンブルを生成し、最大全域木アルゴリズムにより平均されたまたは「崩壊された」代表的ネットワークを作製した(「SteinerNet Ensemble」;図1A、右下)。
【0266】
見込みのない相互作用を回避しつつ最大数の懸賞されたノードを包括するために、PCSF方法は、本来の懸賞されるヒットリストの一部ではないタンパク質または遺伝子である「予測されるノード」を導入する(図1A、緑色の三角形)。予測されるノードは、ネットワーク内の2個のノードの間に発生するであろう。しかし、最終ネットワークは、多くの異なるネットワークの重ね合わせであるため、これらは、最終アンサンブルアウトプットにおける末梢に存在し得る。いずれのハイスループットスクリーンも、多くの真の生物学的接続を見逃すであろうことから、予測されるノードは、生物学的値を加えることができる。
【0267】
本発明者らが、本発明者らの以前のα-syn過剰発現スクリーンデータにSteinerForest Ensembleを適用した場合、断片化されたネットワークは、よりコヒーレントに接続されるようになった。全77種の修飾因子遺伝子は現在、ネットワークに組み込まれている(図1A、左下;表S1;表S3)。遺伝的修飾因子の排除およびハブの包含にペナルティーを科すことにより、PCSFアルゴリズムは、ハブの支出における生物学的文脈を好んだ。ネットワークアウトプットの特異性を確立するために、本発明者らは、α-syn修飾因子リストへと、同一接続性(次数分布)により酵母ゲノムからランダムに選択される77種の遺伝子の1000セットから森のアンサンブルを生成した。ノード毎の経験的p値(ネットワークにおける偶然に発生する確率に基づく)は有意であった(p=0.025、SD=0.021)。
【0268】
表S3:図1に関連する、3種のタンパク質毒性スクリーンのためのネットワークアウトプット(修飾因子+予測されるノード)。
【0269】
重要なことに、予測されるノード(図1A、緑色の三角形)は、Sec14(ホスホリパーゼD)(OuteiroおよびLindquist、2003年)およびPbp1(アタキシン-2の酵母相同体、後述および図3を参照)を含む、本来のスクリーンにおけるヒットではないが、他の研究により明らかになった、α-syn毒性の遺伝的修飾因子を含んだ。このネットワークは、2種のドラッガブルな標的も同定した:Cnb1(カルシニューリンサブユニットB)およびRsp5(図1A、右下)。Cnb1は、α-syn毒性を改良する薬物であるFK506によって標的化される(Caraveoら、2014年)。Rsp5は、α-syn毒性から保護する特異的N-アリールベンズイミダゾール(NAB)の標的である(Tardiffら、2013年)。よって、SteinerForest Ensemble方法論は、ドラッガブルな標的を含む生物学的に関連性がある経路を介して遺伝的スクリーンヒットを接続する。
【0270】
α-syn、TDP-43およびAβタンパク質症の相互比較は、別個のおよび共有される機構を明らかにする
【0271】
異なるタンパク質症を相互比較するために、本発明者らは、以前のAβおよびTDP-43過剰発現スクリーンを試験したところ(図1B;表S1における「酵母過剰発現ネットワーク」)、実質的に重複を見い出さなかった(図1B、左;表S2)。しかし、酵母遺伝的修飾因子、および次のものを含むヒト障害に関連する疾患遺伝子の間には、再保証する重複が存在した:α-synスクリーンにおいて回収された推定パーキンソニズム遺伝子[ATP13A2(PARK9)およびEIF4G1(PARK18)];AβスクリーンにおけるADリスク因子[PICALM、CD2AP、INPP5DおよびRIN3];TDP-43スクリーンにおけるALS遺伝的リスク因子(Eldenら、2010年)。
【0272】
これらのスクリーンヒット由来のSteinerForest Ensembleは、タンパク質輸送、mRNA翻訳、ユビキチン化および細胞周期遺伝子を含む、これらのタンパク質症の間のより多くの生物学的重複を明らかにした(表S3および表S4;図1B右)。別個のヒト疾患の遺伝的リスク因子の間のクロスオーバーも存在した:ATXN2相同体は、α-synネットワークにおける予測されるノードであった(α-syn毒性の修飾因子として確認;図3および図4);パーキンソニズム遺伝子VPS35(PARK17)の相同体は、酵母Aβネットワークにおける予測されるノードであった。VPS35は、レトロマー複合体の鍵となる成分をコードし、欠損したレトロマー機能が、AD脳および動物モデルにおいて同定された(Smallら、2005年)。これらの重複は、遺伝子数の増加に無関係であった。ペアワイズ(p<=0.002)またはトリプルワイズ(p<=0.001)で考慮するかにかかわらず、1000種の同様に接続されたランダムネットワークの経験的p値は、統計的に有意であった。
【0273】
表S4:タンパク質毒性の比較:図1に関連する、過剰発現スクリーンヒットインプット対STEINERネットワークアウトプット。
【0274】
全3種のタンパク質症の間で共通ノードであることが予測される1種の輸送遺伝子は、NABによって活性化されるユビキチンリガーゼであるRsp5であった。実際に、NABは本来、酵母におけるTDP-43タンパク質症に対する小分子スクリーンにおいて回収された。本発明者らは、高感度バイオスクリーンアッセイを利用して、これらのタンパク質症によって誘導される成長欠損におけるNABを検査した。実際に、NABは、ネットワークによって予測される通りに全3種のタンパク質症をレスキューした。これは、α-synに最も有効であり(図1C)、Aβ毒性から保護することが公知の他の化合物と組み合わせて相乗的にAβ毒性に対してレスキューしただけであった(データ示さず)。NABは、いずれか20種の無関係な毒性酵母株に有意なレスキューを提供することができなかった(図6)。
【0275】
TransposeNetは、「ヒト化」ネットワークを生成する
【0276】
酵母に明快な相同体がないヒト疾患遺伝子を含むヒト遺伝子への本発明者らの酵母分子ネットワークの間の接続を同定することが望ましいであろう。したがって、本発明者らは、酵母分子ネットワークを「ヒト化」するための一式のコンピュータ処理による方法である、TransposeNetを開発した(図2A)。
【0277】
Transposenetにおける第1のステップは、配列類似性(BLASTおよびDIOPT(Huら、2011年)スコア)、酵母-対-ヒト構造アラインメント(HHpredツールを使用)(Sodingら、2005年)を考慮し、ネットワークトポロジー(図2A、左上)を組み込むことによる、酵母-対-ヒト相同性の割り当てである。ネットワークトポロジーは、所与のタンパク質の周りの遺伝的および物理的分子相互作用の近隣を評価し、ネットワーク内のトポロジカルな場所が生物学的機能に関連するという「連座の誤謬」論理を仮定する(Choら、2016年)。よって、同様の隣接の共有は、2種のタンパク質が相同体であるか否かの決定における因子となるべきである。各相同性方法の相対的重みは、慎重に整調され(全詳細については「STAR方法」および図7)、より網羅的で統一されたタンパク質相同性スコアを提供する(Bergerら、2013年;Singhら、2008年;Sodingら、2005年)。これらの異なる特色に従って遺伝子を関連付ける根底にあるフレームワークは、拡散成分解析(DCA)として公知である。DCAは、複数の不均一インタラクトームを統合するためのツールであるMashupにおけるコアアルゴリズムとしても使用されてきた。さらなる情報は、「STAR方法」の「方法詳細」セクションおよびChoら(2016年)に見い出すことができる。
【0278】
本発明者らの方法は、4923種の酵母タンパク質をヒト相同体に割り当て、逆に、15,200種のヒトタンパク質に対して酵母相同体を予測し、これは、BLAST(4023種の酵母対ヒトおよび7248種のヒト対酵母)またはBLASTとHHpred(4312種の酵母対ヒトおよび9577種のヒト対酵母)を上回る実質的な改善である。その上、本発明者らの方法は、遺伝子オントロジー(GO)精度およびJaccard類似性スコア(「STAR方法」;図8)によって決定される予測を改善し、高い信頼度の酵母-ヒトタンパク質ペアのために偽陽性を導入しなかった(EnsemblCompara;「STAR方法」)。
【0279】
酵母から人へのコア真核生物の生物学のこのように高い保存、および酵母における中心的相補性研究は、ヒトを含む他の種における多くの遺伝子の機能を決定した(OsbornおよびMiller、2007年)(Kachrooら、2015年)。これに基づいて、本発明者らは、本発明者らの相同性ツールを使用して、はるかにより良い精選された酵母インタラクトームから推論される相互作用によるヒトインタラクトームを増大させた。これは、TransposeNetを有効にした鍵となる進歩であった。重要なことに、この異種間「エッジ」転位は、偽陽性ヒットの率を増加させなかった。むしろ、これは、ネットワーク性能を実質的に改善した。実際に、本発明者らのスクリーンヒットに関して、PCSFに基づくSteinerForest Ensembleは、2種の代替ネットワークが築く方法論、DAPPLE(Rossinら、2011年)およびPEXA(Tuら、2009年)よりも優れていた(「STAR方法」および図9)。
【0280】
本発明者らの「ヒト化ネットワーク」(表S1;図2A、右において指標化)において、各酵母遺伝子(赤色の三角形)は、本発明者らの相同性ツール生成スコアに基づき、1種または複数のヒト相同体(丸)に接続される。次に、SteinerForest Ensembleは、「ヒト化」酵母分子インタラクトームにより増大されたヒトインタラクトームから生成されたエッジを介して、その結果得られたヒト遺伝子/タンパク質のそれぞれを相互接続する。酵母遺伝的修飾因子の特定のヒト相同体が、パーキンソニズム遺伝子として意味付けられた場合、小さい包含重みが与えられる。しかし、本発明者らの酵母ヒットの他の緊密な相同体のいかなるヒト疾患遺伝子にも、特別な優先度は与えられなかった。
【0281】
過剰発現スクリーン由来のヒト化ネットワークは、α-synを他のヒト疾患遺伝子に接続する
【0282】
本発明者らは、α-syn過剰発現スクリーン由来の77種の修飾因子におけるヒト化ネットワークアプローチを検査した(「α-syn過剰発現ヒト化ネットワーク」;表S1、表S9および表S11;図2A、右)。結果としてのヒト化ネットワークにおけるいくつかの予測されるヒトノードは、酵母プロテオームに明らかな相同体がなく、最も著しい例は、α-synそれ自体である。α-synは、ニューロンにおいてα-synのごく近傍に局在化するクラスリンアダプター複合体の成分である、予測されるノードAp1b1(図2A、右)を介して、ER品質管理およびタンパク質輸送修飾因子に接続された(添付の原稿;Chungら、Cell Systems 2016年)。ヒト化ネットワークにおけるα-synの出現は、本発明者らの本来の酵母遺伝的ヒットとα-synとの間の機能的で高度に相互接続された関係性が、酵母から人に保存されていることを強く示す。
【0283】
表S9:図2に関連する、ヒト化アルファ-シヌクレイン過剰発現相互作用ネットワーク、酵母-ヒトペア形成(インプットおよびSTEINERFOREST ENSEMBLEアウトプット)。
【0284】
表S11:図2および図3に関連する、ヒト化ネットワークにおいて推論される、予測されるノード。
【0285】
LRRK2およびα-synは、ERストレスおよび小胞輸送を介して接続される
【0286】
明らかな酵母相同体がない別のPD遺伝子コードタンパク質である、キナーゼ/GTPase LRRK2は、ヒト化ネットワークの中心に組み込まれた(図2A、右)。本発明者らは、ランダムに選択された遺伝子の1000種のリストからヒト化Steiner森のアンサンブルをコンピュータ処理により生成することにより、この知見の頑健性および特異性を検査した(本発明者らの本来のα-syn遺伝的修飾因子リストのサイズをマッチさせる)。LRRK2およびα-syn(SNCA)は、本発明者らのインプットリストからPCSFにより生成されたヒト化ネットワークの72%において一緒に発生した(個々には、SNCAは、ネットワークの86%において現れ、LRRK2は、76%において現れた)。どちらも、AβまたはTDP-43スクリーンヒットから生成されたヒト化ネットワークのいずれにも組み込まれなかった(表S1における「TDP-43」のおよび「Aβ」の「過剰発現ヒト化ネットワーク」)。LRRK2およびα-synは、ランダムに生成されたアンサンブルの0/1000種のネットワークにおいて一緒に現れた。本発明者らのネットワークへの酵母相互作用情報の転位なしでは、α-synは、末梢に置かれ、Ap1b1へのその接続(上述を参照)は失われ、LRRK2は完全に非存在であった(図2B)。よって、LRRK2およびα-synの包含は、頑健であり、特異的であり、酵母相互作用データによるヒトネットワークの増大に依存性である。
【0287】
LRRK2は、LRRK2-(Choら、2014年;G. Liuら、2012年)およびα-syn(Chungら、2013年;Cooperら、2006年)誘導性の毒性に以前に関係付けられた経路である、ERからゴルジへの輸送(Nsf1、Rab1a)およびER品質管理(Stub1/Chip/Scar6、Sgk1、Syvn1)に関与するタンパク質を介して、ヒト化α-synネットワークに関連付けられた。本発明者らのデータは、これらが鍵となる収束点となり得ることを示唆した。本発明者らは以前に、野生型α-synのA53T突然変異および三倍化が、ニカストリンを含む、患者由来ニューロンのERにおける特異的な輸送されるタンパク質の病的蓄積をもたらすことを示した(Chungら、2013年)。以前に生成されたLRRK2突然変異体iPSc由来ニューロンを使用して、本発明者らは、この表現型を再現した(図10)。分化開始4週間後もの早さで、ニカストリンは、同質遺伝子的突然変異補正済み対照と比較して、LRRK2G2019S細胞のERに蓄積し(図2D)、α-syn突然変異を有する患者に由来するニューロンにおける以前に記載された病理を表現型コピーする。よって、ヒト化α-synネットワークは、別個の形態のパーキンソニズムにおける細胞病理の収束を正確に予測した。ニカストリン輸送欠損も、LRRK2ノックアウトマウス線維芽細胞において実証されており(Choら、2014年)、G2019S突然変異が、タンパク質輸送におけるLRRK2関連機能の欠乏をもたらし得るという可能性を高める。
【0288】
α-syn毒性に対するゲノムワイドプール過剰発現および欠失スクリーン
【0289】
より網羅的な見解のため、本発明者らは、α-syn毒性に対する2種の追加的なゲノムワイドスクリーンを実行した(図11Aナンバー1):1)ゲノムワイド欠失スクリーンは、欠失されると、それ以外にとっては毒性ではない低レベルのα-synに対する極端な高感度をもたらす非必須遺伝子を同定した(図11Aナンバー2;図11;表S5);2)ガラクトース誘導性過剰発現ライブラリーが、本発明者らのα-syn HiTox株にまとめて形質転換された、プールスクリーン(図11Aナンバー3;補足図7;表S6)。3)プールスクリーンのため、本発明者らは、プラスミドDNAを配列決定して、同様に形質転換されたYFP対照株由来のプラスミドDNA配列と比較して、選択的条件下で特異的に過剰にまたは過少に表される遺伝子を同定して、α-syn特異的修飾因子を同定する。これらは、それぞれ毒性の推定サプレッサーおよびエンハンサーである。プールスクリーンは、各ライブラリープラスミドを個々にα-syn株に形質転換し、成長を測定するよりもはるかに迅速であり、理論的にはより高感度である。
【0290】
これらのスクリーンは、およそ10,000種の潜在的遺伝的相互作用の検査を包含した(約5500種の過剰発現、約4500種の欠失)。ヒットの大規模検証後に(図11Cおよび図12B)、本発明者らは、318種の遺伝的修飾因子を回収した。極めて少ない重複が、欠失、対、過剰発現スクリーンにおいて回収された特異的遺伝子の間に存在した(図3B)。しかし、本発明者らは、表される生物学的経路における相当な重複を見い出した(後述するネットワーク解析を参照)。16種の修飾因子が、本発明者らの研究室から独立した研究において出現した(Caraveoら、2014年;Chungら、2013年)、または本明細書で同定された(表S7)。これらのうち14種は、本発明者らのスクリーンヒットとは別個であり、α-syn毒性の総計332種の遺伝的修飾因子をもたらす(図3B)。
【0291】
表S5:図3に関連する、アルファ-シヌクレインゲノムワイド欠失スクリーン修飾因子(α-synとの合成致死的相互作用による全てエンハンサー)。
【0292】
表S6:図3に関連する、アルファ-シヌクレインプール過剰発現スクリーン修飾因子。
【0293】
表S7:図3に関連する、アルファ-シヌクレイン毒性の追加的なロースループット「候補に基づく」修飾因子(仮説に基づく研究)。
【0294】
PARKおよび他の神経変性遺伝子の相同体は、酵母におけるα-syn毒性を修飾する
【0295】
α-syn毒性の修飾因子は、パーキンソニズムおよび他の神経変性疾患表現型の多くの公知遺伝的リスク因子の相同体を含んだ(図3Aおよび表S14)。これらは、とりわけ、小胞輸送(yRAB7L1、yRAB39B、ySORL1、ySYNJ1/PARK20、yVPS35/PARK17)、mRNA翻訳(yATXN2、yEIF4G1/PARK18)、ミトコンドリア品質管理/機能(yCHCHD2/10)、金属イオン搬送(yATP13A2)、転写調節(yATXN7)、代謝(yDHDDS)およびシグナル伝達(yPDE8B、yPPP2R2B/ATXN12)に関与する遺伝子を含んだ。いわゆるPARK遺伝子座における遺伝子を含むこれらの遺伝子の多くは、PDを定義するα-syn病理とは全く別個のニューロン病理に関係付けられた。本発明者らのスクリーンにおけるこれらの回収は、多様な神経変性疾患遺伝子に関連する神経毒性の機構が共有され得ることを示唆した。
【0296】
19種のPARK遺伝子座のうち、9種は、明らかな酵母相同体を有する(表S8)。これらのうち4種は、本発明者らのスクリーンにおいて出現した:yATP13A2(PARK9)[酵母におけるYPK9]、yVPS35(PARK17)[VPS35]、yEIF4G1(PARK18)[TIF4631、TIF4632]およびySYNJ1(PARK20)[INP53]。第5の推定PARK遺伝子、yRAB7L1(PARK16)[YPT7]は、候補として検査されたときに、遺伝的修飾因子として出現した(後述を参照)。これらの遺伝子の相同体を偶然に回収する確率は、p=0.00013である(超幾何分布検定)。これらのyPARK遺伝子のいずれも、AβまたはTDP-43過剰発現スクリーンにおける修飾因子ではなかった(表S2)。これらの知見は、酵母におけるα-synスクリーンヒットの生物学的特異性を強調する。
【0297】
表S14.図3に関連する、本発明者らのネットワークによってα-SYN毒性に接続される神経変性遺伝子の概要。他に特に規定がなければ、パーキンソニズム遺伝学に関する最近の総説は、参考文献を提供する。ヒト遺伝子の明らかな酵母相同体が存在しない場合、「N/A」が使用される(このような遺伝子は、本発明者らのヒト化ネットワークにおける「予測されるノード」として現れた)。赤色で強調された遺伝子は、古典的PD/PDDに強く関連し、α-syn(レビー型)病理を有することが公知であるまたは強く推定されるのいずれかである。これらの遺伝子の大部分は、PDとは全く別個の疾患に関する。一部の遺伝子(EIF4G1およびUCHL1を含む)は、高度に議論の余地があるPD遺伝子と考慮されるが、にもかかわらず、本発明者らのα-syn毒性ネットワークにおいて回収される。略語:AD:常染色体優性;ALS:筋萎縮性側索硬化症。AR:常染色体劣性;CBD:大脳皮質基底核変性症;DA:ドーパミン作動性DLB:レビー小体型認知症;Enh:毒性のエンハンサー;GWAS:ゲノムワイド関連研究;NBIA:脳鉄蓄積による神経変性。OE:過剰発現スクリーン。PD:パーキンソン病;PDD:パーキンソン病認知症;ポリQ:遺伝子内のCAG反復伸長によるポリグルタミン(polygutamine)伸長;PSP:進行性核上性麻痺;Supp:毒性のサプレッサー。「PD」が、α-syn(レビー小体型)病理に関連したパーキンソニズムを指すことに留意されたい。「パーキンソニズム」は、異なる(または未知の)病理による臨床表現型を指す。
【0298】
表S8:図3に関連する、「PARK」遺伝子座および遺伝子。
【0299】
TransposeNetは、α-syn毒性のゲノムスケール「マップ」を生成する
【0300】
本発明者らは、332種のα-syn毒性修飾因子の相同体にTransposeNetを適用して、ヒト化ネットワークまたは「マップ」を生成した(表S1、表S10および表S11;図3B図13における「完全α-synヒト化ネットワーク」)。神経変性に関係付けられる複数の遺伝子は、酵母ヒットに対する直接的相同性によって、または予測されるネットワークノードとして、このα-synネットワークにおいて出現した(図3B図13;表S14)。
【0301】
本発明者らが、本発明者らのマップ(図3B)における「分枝」に遺伝子オントロジーを重ねたところ、様々な小胞媒介性搬送プロセスが優占した。定型PDに関連する遺伝的リスク因子(SNCAそれ自体、LRRK2、RAB7L1、VPS35)は、小胞輸送遺伝子に富んだサブネットワークにおいて濃縮された(図3B)。対照的に、非レビー型神経病理、非定型パーキンソニズムまたは非パーキンソン病様神経変性表現型に関連する神経変性遺伝子の大部分(表S14)は、小胞輸送ネットワークから遠隔にあった。ネットワーク「分枝」に富んだ生物学的プロセスの完全解析は、表S12に提示されている。注目すべきことに、このヒト化ネットワークは、以前に同定されたドラッガブルな標的であるNEDD4(Tardiffら、2013年)ならびにカルシニューリンおよびNFAT(Caraveoら、2014年)が、α-syn毒性に影響を与える分子的な文脈を解明する(図3B)。
【0302】
さらに、α-synそれ自体およびLRRK2の両方が、ちょうど過剰発現ネットワークにおけるもののようなノードとして予測される(図2A)。332種の修飾因子の本発明者らのリストから生成されたSteiner森のアンサンブルにおいて、α-synは、100%において現れ、LRRK2は70%において現れた。332種の遺伝子の1000種のランダムセットにおいて、本発明者らが、本発明者らの遺伝的実験において回収された5種のyPARK遺伝子(yPARK9、yPARK16、yPARK17、yPARK18、yPARK20)の組み込みを押し進めた場合であっても、α-synおよびLRRK2は、ヒト化ネットワークの0.6%のみにおいて一緒に現れた。よって、α-syn毒性の酵母修飾因子は、PD関連タンパク質α-synおよびLRRK2が決定的なネットワークノードとして出現した、特異的ヒト化ネットワークを生成した。
【0303】
TransposeNetは、コヒーレントネットワークを生成した:同様のオントロジーの遺伝子を含む、生物学的に直感的な「ステム」を有する単一木ネットワーク(表S10)における332種の酵母修飾因子遺伝子のうち295種(図3B)。酵母インタラクトームデータの転位なしでこれらの332種の修飾因子から生成されたネットワーク(図3B、挿入図;)は、それぞれ136、2および122種の酵母遺伝子を含む、3種の断片化されたネットワークを産生した(図3B、挿入図)。共通細胞プロセスにおける関与により生物学的に関連付けられるべき遺伝子は存在しなかった(図3B)。さらに、LRRK2およびNFATは、組み込まれなかった。EIF4G1およびATXN2の関係性等、検証できる仮説(図5および図6、後述)は、出現しなかったが、それは、これらのタンパク質が、異なるネットワークに収まったためである。DAPPLE(Rossinら、2011年)およびPEXA(Tuら、2009年)も、仮説生成に無用な高度に断片化されたまたは高密度な「毛玉」ネットワークを産生し(図14)、著しいことに、LRRK2のような決定的なノードを含まなかった(図15)。よって、ヒトインタラクトームを増大させるための酵母ネットワークの転位は、コヒーレントで生物学的に有意義なα-synネットワークを作製した。
【0304】
表S10:図3に関連する、ヒト化アルファ-シヌクレイン完全ネットワーク(過剰発現、プール過剰発現、欠失スクリーン)、酵母-ヒトペア形成(インプットおよびSTEINERFOREST ENSEMBLEアウトプット)。
【0305】
表S12.図3に関連する、ヒト化アルファ-シヌクレイン完全ネットワークにおける濃縮オントロジー。
【0306】
α-syn毒性マップにおけるエンドサイトーシスおよび逆行性輸送サブネットワークは、RAB7L1(PARK16)およびVPS35(PARK17)の酵母相同体を組み込む。
α-synマップにおいて、いくつかのパーキンソニズム遺伝子の相同体は、RAB6Aの酵母相同体であるYPT6周囲のサブネットワークにおいて癒合した(Soperら、2011年)(図4A)。エンドソーム輸送に関与するタンパク質をコードするYPT7、VTH1およびVPS35が含まれていた。YPT7は、PARK16遺伝子座のリード候補であるRAB7L1(Macleodら、2013年;Nallsら、2014年)の、また、メンデルの法則に従ったパーキンソニズムリスク因子RAB39B(Wilsonら、2014年)の緊密な相同体である。VTH1は、細胞内選別(NykjaerおよびWillnow、2012年)に関与するタンパク質をコードする確立されたADリスク修飾因子(Rogaevaら、2007年)であるSORL1の緊密な酵母相同体である。VPS35は、古典的PDのメンデルの法則に従ったリスク因子、VPS35(PARK17)と相同である(Zimprichら、2011年)。VPS35は、VPS26およびVPS29と共に、エンドソーム区画からゴルジ区画へとカーゴを搬送するレトロマー複合体を含む。近日発表される研究において(Chungら Cell Systems 2016年)、本発明者らは、VSP26およびVPS29コアレトロマー成分の欠失が、α-syn毒性を強く増強することを示す。ゴルジからエンドソームへのおよびエンドサイトーシス輸送に関与する第4の遺伝子、INP53は、メンデルの法則に従ったパーキンソニズム遺伝子SYNJ1(PARK20)と相同である(Olgiatiら、2014年)。これらの遺伝子のうちいずれか1種の欠失は、野生型株において毒性ではなかった。しかし、低(無毒)レベルのα-synを発現する株におけるこれらの遺伝子のうちいずれか1種の欠失は、強く相乗的な成長欠損を産生した(表S5、図4Bおよび図15A)。重要なことに、酵母またはヒトVPS35の異所性発現は、VPS35欠失によって誘導された毒性をレスキューしたが、疾患を引き起こす突然変異(VPS35-D620N)の発現は、レスキューしなかった(図4C)。最後に、yRAB7L1は、欠失された場合にα-syn毒性を増強したが、過剰発現された場合にこの毒性からレスキューした(図15B)。
【0307】
α-synマップは、ΔPARK9(ATP13A2)およびΔPARK17(VPS35)感作酵母モデルにおける分岐する遺伝的相互作用プロファイルを予測する
【0308】
本発明者らのα-synマップの別個のサブネットワークに位置することの機能的帰結を検査するために、本発明者らは、VPS35(PARK17)およびATP13A2(PARK9)を比較した。ATP13A2は、カチオン搬送および金属イオン恒常性に関係付けられる5型P-ATPaseである(Kongら、2014年;Parkら、2014年;Ramonetら、2012年;TsunemiおよびKrainc、2014年)。ATP13A2における突然変異は、PDとは別個である、若年発症型パーキンソニズムまたはクフォー・ラケブ症候群をもたらす(Schneiderら、2010年)。yATP13A2は、本発明者らの過剰発現スクリーンにおいてα-syn毒性を抑制し(図1C)、yATP13A2の欠失は、α-syn毒性を強く増強した(図4B)。本発明者らのヒト化ネットワークにおいて、ATP13A2は、VPS35から空間的に遠隔にあり、小胞輸送サブネットワークの十分に外側に位置した(図3Cおよび図4A)。本発明者らは、この空間的分離が、根底にある生物学における差を反映するかについて答えを求めた。
【0309】
本発明者らは、同様の毒性を有する3種の株を生成した(図4D)。1種の株において、毒性は、α-synの過剰発現に起因した(HiTox)。他の2種の株において、中等度レベルのα-syn発現によって誘導される軽度毒性は、酵母ATP13A2(以降、ΔATP13A2/α-syn)またはVPS35(以降、ΔVPS35/α-syn)の欠失によって増強された。よって、これら3種の酵母株は、3種の形態の家族性パーキンソニズムに関連する細胞病理をモデリングした:2種は定型α-syn病理(α-syn増倍およびVPS35(PARK17)関連パーキンソニズムに関連するPD)により、1種は著しく異なる病理、PARK9(ATP13A2)による。
【0310】
ΔATP13A2は、金属イオンストレスに対して細胞を感作するが(Kongら、2014年)、ΔVPS35株は、逆行性輸送欠損を示し(Seamanら、1997年)、ΔATP13A2およびΔVPS35株が、α-syn毒性に対して差次的に感作されたことを示唆する。本発明者らは、本発明者らの77種のα-syn過剰発現スクリーンヒットが、本発明者らのΔVPS35/α-synおよびΔATP13A2/α-synモデルの毒性に影響を与えたかについて答えを求めた。
【0311】
本発明者らは、酵母モデルのそれぞれにおいてこれらのα-syn毒性修飾因子を発現させ、成長をモニターした。α-syn HiToxおよびΔVPS35/α-synモデルに関して、69/77種の遺伝子が重複し(図4E、左)、これらの遺伝的形態のパーキンソニズムに関連する同様の病理と十分に相関する。注目すべきことに、重複する修飾因子は、小胞輸送遺伝子に富んだ(表S13)。対照的に、3/77種の修飾因子のみが、α-syn HiToxとΔATP13A2/α-synとの間に共通して存在した(図4E、右)。これらは、それぞれ鉄およびマンガン恒常性(CCC1)ならびにアクチン細胞骨格再編成(ICY1、AFI1)に関与した。注目すべきことに、金属イオン恒常性は、クフォー・ラケブ症候群(Schneiderら、2010年)およびその哺乳動物モデル(Parkら、2014年)に強く関係付けられる。よって、遺伝学的に、臨床的におよび神経病理学的に別個の神経変性疾患は、そうであるにもかかわらず、いくつかの鍵となる分子病理を共有することができる。
【0312】
表S13.図4に関連する、アルファ-SYN(HITOX)とアルファ-SYN/ΔVPS35株修飾因子との間の重複、および遺伝子濃縮。
【0313】
mRNA翻訳サブネットワークは、PABPC1、EIF4G1およびATXN2にα-synを連結する
【0314】
α-syn毒性に対する本発明者らの過剰発現スクリーンにおいて、TIF4632(以降、yEIF4G1-2)は、サプレッサーとして出現した。TIF4632は、翻訳開始因子EIF4G1の酵母相同体である。ゲノムワイド欠失およびプール過剰発現スクリーンは、開始因子および複数のリボソームサブユニットを含む、mRNA翻訳に関連する追加的な遺伝的修飾因子を同定した(図3Bおよび図5A;表S5および表S6)。これらは、PABPC1(細胞質ポリ(A)結合タンパク質コード)、相同体PAB1;ATXN2相同体PBP1;および酵母における第2のEIF4Gファミリー相同体、TIF4631(以降、yEIF4G1-1)を含んだ。これらのヒットは、定量的PCRによって確認され(図5B、左)、これらの遺伝子の過剰発現は、バイオスクリーン(図5B、右)および/またはスポット(図16)成長アッセイにおいてα-syn毒性を抑制した。異なるタンパク質症モデルにおける遺伝的実験は、α-syn毒性におけるこれらの修飾因子の効果が特異的であることを明らかにした(図16)。よって、mRNA翻訳の撹乱は、単純に一般的なタンパク質毒性応答ではなかった。
【0315】
タンパク質翻訳は、PD患者由来ニューロンにおいて撹乱される
【0316】
本発明者らは、mRNA翻訳およびmRNAプロセシング経路における多数の遺伝的修飾因子を回収したため(図3および図5)、本発明者らは、タンパク質翻訳が、PD患者由来ニューロンを含む、細胞シヌクレイン症モデルにおいて撹乱されたかについて答えを求めた。タンパク質産生のバルク変化は、S35放射標識メチオニンおよびシステインがタンパク質に組み込まれる速度を短時間「パルス標識付け」後に経時的に決定することにより、初期に評価された。HEK(ヒト胎児由来腎臓)細胞および初代ラット皮質ニューロンにおけるα-synの過剰発現は、アミノ酸取込みを変化させずに、S35-Met/Cysの蓄積を低減させた(図17)。同様に、α-synA53T突然変異を有する6~8週齢iPScニューロンにおいて、タンパク質へのS35-Met/Cys組み込みは、同質遺伝子的突然変異補正済み対照と比較して低減された(図5C)。よって、本発明者らのα-synスクリーンおよびネットワーク解析は、シヌクレイン症の細胞モデルにおいて、バルクmRNA翻訳におけるα-syn毒性の強い効果を同定した。EIF2Aのリン酸化(図17D図18A)またはXBP1スプライシング(図18B)は、これらのニューロンにおいて変更されなかったため、この効果は、正準ERストレス応答に起因し得なかった。
【0317】
酵母から患者ニューロンへの、ATXN2およびEIF4G1の保存された遺伝的相互作用
【0318】
本発明者らは次に、過剰発現された場合にα-syn毒性を抑制した2種の翻訳因子(ATXN2およびEIF4G1)のヒト相同体が、ニューロンにおけるタンパク質翻訳欠損を同様に反転できるか検査した。本発明者らは、EIF4G1およびATXN2のニューロンアイソフォームを転写的に上方調節するためのTALE-TF構築物を生成した(Sanjanaら、2012年)(図5D、左)。次に、これらの構築物を、アデノ随伴ウイルスベクターにより、分化したα-synA53TiPSc由来ニューロン培養物に送達した。
【0319】
形質導入10日後に、内在性EIF4G1およびATXN2 mRNAレベルは、定量的PCRによって測定された場合、およそ4倍増加した(図5D、右)。この増加した発現は、α-synA53Tニューロンにおいて本発明者らが観察したバルクタンパク質翻訳における欠損を実質的に反転した(図5E)。EIF4G1の過剰発現は、A53Tニューロンにおける翻訳を増加させたが、突然変異補正済み対照においては増加させなかった。ATXN2過剰発現は、突然変異体および対照細胞においてバルク翻訳を等しく増加させた(図5F)。
【0320】
よって、本発明者らの種間分子ネットワークは、PD患者由来ニューロンにおけるα-synとmRNA翻訳因子との間の生物学的相互作用を予測した。これらのデータは、撹乱されたmRNA翻訳が、α-syn毒性の重要な側面であるという議論を強化する。興味深いことに、本発明者らは、同質遺伝子的突然変異補正済み対照ニューロンと比較して、分化4および12週間目のα-synA53TiPSc由来皮質ニューロンのリボソームフットプリンティング実験において、mRNA翻訳関連の転写物の翻訳減少の強いシグネチャーを同定した(図19Aおよび図14B図20)。実際に、mRNA関連の翻訳因子、リボヌクレオタンパク質およびリボソームタンパク質は、α-syn毒性の本発明者らの遺伝的および翻訳的マップにおいて富んだだけでなく、ニューロン中のα-synのごく近傍におけるタンパク質の間においても富んだ(発表保留中、Chungら、Cell Systems、2016年、図4;「空間的α-synマップ」、図20A)。さらに、多数のmRNA翻訳タンパク質は、α-synと直接的に複合体形成した。遺伝的、翻訳的および空間的マップのこの収束は、α-syn毒性とmRNA代謝との間の接続が、α-syn生物学に深く根付いたことを示唆する。
【0321】
考察
【0322】
本発明者らは、α-synミスフォールディングおよび誤輸送が、細胞生物学をどのように撹乱するかに関するコヒーレントな、システムレベル解析について記載する。ゲノムワイドスクリーンは、パン酵母S.cerevisiaeにおけるα-syn発現の毒性帰結の修飾因子を同定した。本発明者らの鍵となるコンピュータ処理による寄与であるTransposeNetは、酵母における豊富にアノテートされた分子相互作用を、Steiner賞金収集アルゴリズムおよび洗練された種間相同性ツールとカップリングして、スクリーンヒットを「ヒト化」分子ネットワークとして視覚化した。TransposeNetは、α-syn病理が、パーキンソニズムのヒト遺伝的リスク因子に深く接続されることを明らかにし、これらの接続が発生する分子経路をはっきりさせた。本発明者らは、遺伝学的に扱い易い生物におけるいずれかの生理的または病的プロセスのモデリングに容易に一般化できる、共同体のための価値ある資源としてTransposeNetを想定する。
【0323】
神経変性における差し迫った課題は、高度に別個の病理に関連するが、そうであるにもかかわらず、同様の臨床表現型に収束する遺伝子が、分子レベルで関連するか否かを決定することである。本発明者らのネットワークは、古典的PDを引き起こす遺伝子(Ogakiら、2015年)のみならず、異なる病理によるパーキンソニズムを引き起こす遺伝子、および他の神経変性表現型に関連する遺伝子にも、ひとまとめに、α-synを結び付けた(表S14)。関係性は、α-synに高度に特異的であった。さらに、古典的PDまたはα-syn病理に結び付けられた遺伝子(RAB7L1、VPS35およびLRRK2のような)は、小胞輸送関連サブネットワークにおいて濃縮された一方、「非定型」パーキンソニズムに結び付けられた遺伝子(ATP13A2およびATXN2のような)は、別々のサブネットワークに存在した。いくつかの例について、本発明者らのネットワークは、マップ上の空間的位置に関連する収束性および分岐性の分子病理を明らかにした。よって、LRRK2およびα-syn病理は、撹乱されたタンパク質輸送のレベルで接続され、患者由来ニューロンにおいて確認された。別の例では、VPS35およびATP13A2は、酵母における高度に別個の遺伝的修飾因子プロファイルを示した。他のネットワークおよびモデル生物研究は、α-synとLRRK2(Choら、2014年;G. Liuら、2012年)、RAB7L1とLRRK2との間(Macleodら、2013年)(Beilinaら、2014年)、ならびにVPS35およびα-synとの間(Dhungelら、2014年)の接続を含む、本発明者らの結果に重要な支持を提供する。
【0324】
EIF4G1(PARK18)およびCHCHD2を含む、本発明者らのネットワークによってα-syn毒性に接続される一部の遺伝子に関して、ヒト遺伝的データは、限定されるまたは議論の余地がある(Funayamaら、2015年;Z. Liuら、2015年;Ogakiら、2015年)(Chartier-Harlinら、2011年;Nuytemansら、2013年)。別の遺伝子、RAB7L1は、パーキンソニズム関連共通遺伝子バリアント(PARK16)と連鎖した2種の候補の1種である。本発明者らの解析は、このような遺伝子とα-synタンパク質症との間の接続を肯定し、これらの相互作用を置くための生物学的文脈を提供する。例えば、本発明者らは、翻訳因子EIF4G1が、「PD遺伝子」と命名されるべきだと主張しない。しかし、EIF4G1およびα-syn毒性は、mRNA生物学およびタンパク質翻訳におけるα-synの重要かつ以前に認識されない直接的効果の文脈において接続される。これは、本発明者らの遺伝的解析(図3)およびニューロンの本発明者らのmRNA翻訳プロファイリング(図19)における複数のヒットによって確認された。興味深いことに、新興の接続は、mRNA翻訳と他のパーキンソニズム関連遺伝子との間に出現している(Gehrkeら、2015年)(Martinら、2014年)。さらに、mRNA翻訳および代謝への接続が、ニューロンにおけるα-synの本発明者らの空間的マッピングにおいても確認された(Chungら、Cell Systems 2016年、添付の原稿)。このマップは、α-synが、mRNA翻訳およびタンパク質輸送に関与するタンパク質のごく近傍にあり、それと複合体形成することを明らかにし、このような撹乱が、a-syn毒性における上流または近位事象となり得ることを示唆する。
【0325】
最後に、ドラッガブルな標的と遺伝子ネットワークとの間の接続を同定することにより、本発明者らのアプローチから、処置が将来的に、特異的遺伝的病変に標的化され得る仕方が垣間見られる。本発明者らは、単一の臨床的または病理的診断の硬直化が、より微妙に異なる分子診断をもたらすことを想定する。このシナリオにおいて、遺伝的病変は、化合物標的にマッチされ、コンビナトリアル遺伝的病変が導入されて、特異的な遺伝的リスクおよび生物学を反映する、「個別化された」細胞モデルにおいて確認されるであろう。新興のゲノム編集技術は、このようなモデルが、患者由来細胞において開発され、ゲノムワイドスクリーニングが同様に実行されることを可能にするであろう(Hassonら、2013年;Khuranaら、2015年;Shalemら、2014年;Wangら、2014年)。これらは、疑いなく歓迎される進歩となるであろうが、単純なモデル生物において目を見張るような発展が続くであろう。酵母におけるバリオミックライブラリーは例えば、現在、酵母プロテオーム全体にわたる単一アミノ酸分解能での突然変異誘発を可能にし(Z. Huangら、2013年)、表現型スクリーンにおける標的同定のための莫大な潜在力を解き明かす。本発明者らは、多面的な種間アプローチが、多くの複雑な疾患への決定的な洞察を明示し続け、おそらく、ポストゲノミクス時代における治療的な見込みを満たすであろうと心に描く。
【表S1-1】
【表S1-2】
【表S1-3】
【表S2-1】
【表S2-2】
【表S2-3】
【表S2-4】
【表S3-1】
【表S3-2】
【表S3-3】
【表S3-4】
【表S3-5】
【表S3-6】
【表S4-1】
【表S4-2】
【表S4-3】
【表S4-4】
【表S4-5】
【表S4-6】
【表S4-7】
【表S4-8】
【表S4-9】
【表S4-10】
【表S4-11】
【表S4-12】
【表S4-13】
【表S4-14】
【表S4-15】
【表S4-16】
【表S4-17】
【表S4-18】
【表S4-19】
【表S4-20】
【表S4-21】
【表S4-22】
【表S4-23】
【表S4-24】
【表S4-25】
【表S4-26】
【表S4-27】
【表S4-28】
【表S4-29】
【表S4-30】
【表S4-31】
【表S5-1】
【表S5-2】
【表S5-3】
【表S5-4】
【表S5-5】
【表S6-1】
【表S6-2】
【表S6-3】
【表S6-4】
【表S7-1】
【表S7-2】
【表S7-3】
【表S8-1】
【表S8-2】
【表S8-3】
【表S9-1】
【表S9-2】
【表S9-3】
【表S9-4】
【表S9-5】
【表S10-1】
【表S10-2】
【表S10-3】
【表S10-4】
【表S10-5】
【表S10-6】
【表S10-7】
【表S10-8】
【表S10-9】
【表S11-1】
【表S11-2】
【表S11-3】
【表S12-1】
【表S12-2】
【表S12-3】
【表S12-4】
【表S12-5】
【表S12-6】
【表S12-7】
【表S12-8】
【表S12-9】
【表S12-10】
【表S12-11】
【表S12-12】
【表S12-13】
【表S12-14】
【表S12-15】
【表S12-16】
【表S12-17】
【表S12-18】
【表S12-19】
【表S12-20】
【表S12-21】
【表S12-22】
【表S12-23】
【表S12-24】
【表S12-25】
【表S12-26】
【表S12-27】
【表S12-28】
【表S12-29】
【表S12-30】
【表S12-31】
【表S12-32】
【表S12-33】
【表S12-34】
【表S12-35】
【表S12-36】
【表S12-37】
【表S12-38】
【表S12-39】
【表S12-40】
【表S12-41】
【表S12-42】
【表S12-43】
【表S12-44】
【表S12-45】
【表S12-46】
【表S12-47】
【表S12-48】
【表S12-49】
【表S12-50】
【表S12-51】
【表S12-52】
【表S12-53】
【表S12-54】
【表S12-55】
【表S12-56】
【表S12-57】
【表S12-58】
【表S12-59】
【表S12-60】
【表S12-61】
【表S12-62】
【表S12-63】
【表S12-64】
【表S12-65】
【表S12-66】
【表S12-67】
【表S12-68】
【表S12-69】
【表S12-70】
【表S12-71】
【表S12-72】
【表S12-73】
【表S12-74】
【表S12-75】
【表S13-1】
【表S13-2】
【表S13-3】
【表S14-1】
【表S14-2】
【表S14-3】
【表S15-1】
【表S15-2】
STAR方法
実験モデルおよび対象詳細
酵母株:
【0326】
欠失スクリーンに関して、株は、BY4741バックグラウンドにあり、他の文献に詳細に記載されている(Baryshnikovaら、2010年;TongおよびBoone、2006年)。
【0327】
欠失スクリーンおよび検証を除く全実験に関して、使用された酵母株は、w303バックグラウンドにあった(MATa can1-100、his3-11,15、leu2-3,112、trp1-1、ura3-1、ade2-1)。ベクター対照株は、trpおよびura遺伝子座に空ベクターを含有した(pAG304Gal、pAG306GAL)。NoTox α-syn株は、その遺伝子座に挿入されて、緑色蛍光タンパク質に融合されたα-syn(α-syn-GFP)を含有した(pAG303Gal-α-syn-GFP)。IntToxおよびHiTox α-syn株は、これおよびtrp遺伝子座に挿入されて、α-syn-GFPの複数のタンデムコピーを含有した(pRS303GAL-α-syn-GFP、pRS304GAL-α-syn-GFP)。IntTox株は、4~5コピーのα-synを有する一方、HiTox細胞は、>6コピーのα-synを有する。IntTox α-syn株におけるPARK17/VPS35またはPARK9/SPF1遺伝子座を、カナマイシン抵抗性カセット(VPS35::kanMXまたはSPF1::kanMX)で置き換えることにより、ΔPARK17/α-synおよびΔPARK9/α-synを生成した。
ヒトiPSc系統:
【0328】
対照個体、および同質遺伝子的遺伝子補正済み対照と共にG2019S LRRK2を保有するPD患者由来のiPSCを、以前に記載された通りに生成した(Reinhardtら、2013年)。皮膚生検、ヒト皮膚線維芽細胞培養、iPS細胞生成、およびA53T突然変異(α-synA53T)を有する患者のための突然変異補正は、以前に記載されている(Cooperら、2006年;Soldnerら、2011年)。この以前の刊行物において、A53T iPS系統は、WIBR-IPS-SNCAA53Tと称された。全iPSc系統に関して、書面形式を使用して細胞提供に先立ち患者からインフォームドコンセントを得ており、プロトコールは、関連する施設内審査委員会によって承認された:LRRK2 iPSCに関して、委員会は、テュービンゲン医学部および大学病院(Medical Faculty and the University Hospital Tubingen)倫理委員会(Ethik-Kommission der Medizinischen Fakultat am Universitatsklinikum Tubingen)であり;A53T系統に関して、ボストン大学医学部キャンパス(Boston University Medical Campus)のIRBおよび実験対象としてのヒトの使用に関するMIT委員会(MIT Committee on the Use of Humans as Experimental Subject)であった。
LRRK2突然変異体系統のための、ヒトiPSC生成、および中脳ドーパミン作動性(DA)ニューロンへの分化
【0329】
若干の修正を加えたフロアプレートに基づくプロトコールを使用して、iPSCをmDAニューロンに分化させた(Kriksら、2011年;Schondorfら、2014年)。分化は、0~11日目にLDN193189(100nM、Stemgent)に、0~5日目にSB431542(10mM、Tocris)に、1~7日目にSHH C25II(100ng/mL、R&D)、パルモルファミン(2mM、EMD)およびFGF8(100ng/mL、Peprotech)に、ならびに3~13日目にCHIR99021(CHIR;3mM、Stemgent)に曝露することに基づいた。DMEM、15%ノックアウト血清代替物、2mM L-グルタミンおよび10μM β-メルカプトエタノールを含有するノックアウト血清代替物培地(KSR)において、マトリゲル(BD)上で細胞を11日間成長させた。分化5日目に開始して、KSR培地をN2培地に徐々にシフトさせた。11日目に、培地を、CHIRを(13日目まで)、また、BDNF(脳由来神経栄養因子、20ng/ml;R&D)、アスコルビン酸(0.2mM、Sigma)、GDNF(グリア細胞株由来神経栄養因子、20ng/ml;R&D)、TGFβ3(トランスフォーミング成長因子β3型、1ng/ml;R&D)、ジブチリルcAMP(0.5mM;Sigma)およびDAPT(10μM;Tocris)を補充したNeurobasal/B27/L-Glut含有培地(NB/B27;Invitrogen)に9日間交換した。18日目に、細胞を、Accutase(Innovative Cell Technology)を使用して解離し、分化培地(NB/B27+BDNF、アスコルビン酸、GDNF、dbcAMP、TGFβ3およびDAPT)において、15μg/mlポリオルニチンおよび1μg/mlラミニンで予めコーティングされたディッシュに高細胞密度条件下で再度プレーティングした。DIV30に、細胞を収集し、遠心分離後に、さらなる解析を行うまで細胞ペレットを-80℃で貯蔵した。
α-syn突然変異体系統のためのヒト多能性幹細胞培養
【0330】
皮膚生検、ヒト皮膚線維芽細胞培養、iPS細胞生成、およびA53T突然変異(WIBR-IPS-A53T)を有する患者のための突然変異補正は、以前に記載されている(Cooperら、2006年;Soldnerら、2011年)。この以前の刊行物において、A53T iPS系統は、WIBR-IPS-SNCAA53Tと称された。
【0331】
本発明者らの多能性幹細胞株は、hES培地[15%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)、5%ノックアウト血清代替物(Invitrogen)、1mMグルタミン(Invitrogen)、1%非必須アミノ酸(Invitrogen)、0.1mM β-メルカプトエタノール(Sigma)および4ng/ml FGF2(R&D systems)を補充したDMEM/F12(Invitrogen)]において、マイトマイシンC不活性化マウス胚性線維芽細胞(MEF)フィーダー層上に初期に維持された(5%0、3%C0)。手作業により、またはコラゲナーゼIV型(Invitrogen;1.5mg/ml)を用いて酵素により、培養物を5~7日毎に継代した。分化に先立つ50継代前後で、系統を、成長因子低減マトリゲル(BD Biosciences;DMEM:F12において1:30)で予めコーティングされたプレートに継代し、mTESR-1培地(Stem Cell Technologies)において培養し(21%0、5%CO)、その後、分化まで(継代40~90における)、ディスパーゼ(Invitrogen;1mg/mL)を用いて酵素により5~7日毎に継代した。核型分析のため、細胞株の標準G-バンド染色体解析を、10~20継代毎に行った(Cell Line Genetics,Inc)。本発明者らは、2~4週間毎に本発明者らの培養物のマイコプラズマ陰性状態を確認した(MycoAlert、Lonza)。
初代ラット皮質培養物
【0332】
全動物研究は、MIT実験動物委員会(Committee on Animal Care)によって承認された。胎生期18に麻酔された妊娠したスプラーグドーリーラットの帝王切開によって胚を収集した。20分間37℃のAccumax(Innovative Cell Technologies,Inc)消化、およびパスツールピペットによる粉砕(triutration)により、大脳皮質を単離および解離した。ポリオルニチンおよびラミニンコーティングされた96ウェルプレートに、B27(Life Technologies)、0.5mMグルタミン、25μM β-メルカプトエタノール、ペニシリン(100IU/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したneurobasal培地(Life Technologies)においてそれぞれ4×10個の細胞を播種した。培地の3分の1を、3~4日毎に交換した。
方法詳細
酵母-対-ヒト相同性
【0333】
酵母およびヒトは、進化的に遠隔の種であるため、酵母タンパク質のヒト相同体を同定するために、本発明者らは、4階層メタ解析パイプラインを開発した。本発明者らのメタ解析は、配列レベルから開始し、そこでは、本発明者らは先ず、酵母およびヒトを越えて同様である遺伝子/タンパク質を同定する。本発明者らは次に、この解析を構造レベルまで拡張し、そこで、本発明者らは、構造的に、よって、より遠隔に、種を越えて同様であるタンパク質を調査する。次に、本発明者らは、ネットワークトポロジーに基づくアプローチを使用することにより、各種内で同様であるタンパク質を同定する。最後に、本発明者らは、アプローチを導入して、配列、構造およびネットワークトポロジーにわたって類似性を統合する。詳細を次に記す:
【0334】
1)配列類似性。酵母タンパク質とヒトタンパク質との間の配列類似性をコンピュータ処理するために、本発明者らは、BLOSUM62置換マトリックスによるNCBIタンパク質BLASTを使用した(Altschulら、1990年;1997年)。酵母タンパク質およびヒトタンパク質の全ペアに対して、配列類似性をコンピュータ処理した。本発明者らは、E-値閾値=1E-5を使用して、有意性を決定した。本発明者らは、また、統合的オルソログ予測ウェブサーバーであるDIOPT(GTEx Consortium、2013年;Huら、2011年;Reinhardtら、2013年;Sodingら、2005年)を使用して、酵母タンパク質毎にヒトオルソログを予測した。本発明者らは、フィルターをかけた酵母-ヒトタンパク質ペアの全てを、そのBLAST E-値、ビットスコアおよびDIOPTスコアと一緒に保存した。
【0335】
2)進化的および構造的類似性。酵母およびヒトタンパク質毎に、本発明者らは、PSI-BLASTを適用して、マルチプル配列アラインメントを構築し、プロファイル隠れマルコフモデルを築いて、リモート進化シグネチャーをコードした。次に、本発明者らは、インプットとしてのプロファイル隠れマルコフモデルおよび二次構造アノテーションによるHHpred(Kriksら、2011年;RobinsonおよびOshlack、2010年;Schondorfら、2014年;Sodingら、2005年;Voevodskiら、2009年)を適用して、酵母タンパク質およびヒトタンパク質の全ペアを比較した。配列類似性計算と同様に、本発明者らは、また、E-値=1E-5閾値を使用した。本発明者らは、フィルターをかけた酵母-ヒトタンパク質ペアの全てを、それらのHHpred E-値およびビットスコアと共に保存した。
【0336】
3)ネットワークトポロジー(拡散成分解析;DCA)。本発明者らのネットワークトポロジーアプローチの裏にある中心的な考えは、各ノードが、相互作用の保存されたパターンと共にネットワークにおける相同タンパク質を捕捉する、単一スコアの代わりの低次元ベクトルにより表され得るように、タンパク質レベルで機能的に関連するモジュールの捕捉を試みることである。最終目標(後述する「統合的アプローチ」を参照)は、種を越えてノードベクトルの低次元表現を比較して、他の生物における情報を得ることができるようになることである。しかし、明快なPageRank様アプローチ(Choら、2015年;Tuncbagら、2016年;Voevodskiら、2009年)に従って、各ノードのベクトルをコンピュータ処理する場合、ネットワークノイズにより機能的類似性予測に不正確さが生じるであろう。よって、圧縮がノイズを減少させるという直観を使用して、本発明者らは、洗練された機械学習技法を使用して、ベクトルの次元を削減させる。本発明者らのアプローチは、ノイズを低減させ、機能的類似性等のトポロジカルネットワーク情報をより良く抽出することができることが示された(Bailly-Bechetら、2011年;Choら、2015年)。このアプローチは最近、Mashupと呼ばれる方法に一般化された(Cho, H.ら、2016年)。
【0337】
より公式には、Aに、遺伝子またはタンパク質をそれぞれ表示するn個のノードを有する、(重みを加えた)分子相互作用ネットワークG=(V;E)の隣接マトリックスを表示させる。ノードiからノードjへの推移の確率を保存する、推移確率マトリックスにおける各項目Bi,jは、
【数1】
としてコンピュータ処理される。次に、収束まで、拡散アルゴリズムが、
【数2】
として定義され、ここで、pは、ネットワーク中のローカルおよびグローバル情報の相対的影響を制御する再開の確率であり;eは、バイナリベクトルであり、ノードiそれ自体に対しe(i)=1であり、他のノードjに対してe(j)=0である。2個のノードの拡散パターンが、互いに同様である場合、両者が、他のノードに対してネットワーク中の近位の位置にあることを暗示し、これは、機能的類似性を潜在的に示唆する。実際には、この様式で得られる拡散ベクトルには、一部には、その高い次元数、ならびに本来のハイスループットネットワークデータのノイズおよび不完全性のせいで、依然としてノイズがある。ノイズおよび次元削減を目標に、本発明者らは、本来のベクトルよりもはるかに少ない次元を使用するノードの潜在ベクトル表現に基づく多項ロジスティックモデルにより各拡散ベクトルを近づける。特に、本発明者らは、ノードiの拡散ベクトルにおけるノードjに割り当てられた確率を:
【数3】
(式中、上付き文字Tは、ベクトル転位を表示し;wおよびxは、低次元ベクトルである)としてコンピュータ処理する。各ノードは、2種のベクトル表現、wおよびxが与えられる。本発明者らは、wを文脈特色と呼び、xをノードiのノード特色と呼び、両者は、ネットワークにおける固有のトポロジカル特性を捕捉する。この多項ロジスティック回帰モデルは、ネットワークにおけるあるノードと他のノードとの間の関連性のモデルに適用され、これは、ネットワークにおける全ノードにわたる別々の分布としてモデリングされ得る。全ノードのためにwおよびxベクトルを得るために、本発明者らは、拡散ベクトルsとモデルベクトル
【数4】
との間のKL-発散(または相対的エントロピー)を最適化する:
【数5】
【0338】
分散を最も良く説明するマトリックスデータの内部低次元線形構造を明らかにするPCAと類似して、このアプローチは、ネットワークにおける接続性パターンが最も良く説明され得るように、全遺伝子の低次元ベクトル-空間表現をコンピュータ処理する。網羅的実験は、このような低次元ベクトルwおよびxが、ネットワーク内の機能的関連の同定においてより正確であることを示した(Choら、2016年;Tuncbagら、2013年)。
【0339】
4)統合的アプローチ。酵母およびヒト由来のタンパク質を比較するために、本発明者らは、両方のインタラクトームのトポロジーと共にこれらの間の配列/構造的類似性を考慮するために上述のDCA方法を拡張した。本発明者らは、配列および構造類似性スコアを確率分布に変換し、関連性ベクトルとパラメータ化された多項分布との間のカルバック・ライブラー(KL)発散を最小化することにより、疎らなベクトル表現のそれを含むノードの全ペアの特色ベクトルを一緒にコンピュータ処理した。
【0340】
そこで、公式には、本発明者らは、2種のインタラクトーム、酵母のGおよびヒトのGを有する。インタラクトーム内のトポロジカル類似性を捕捉するために、本発明者らは、GおよびGにおいて別々に、記載された拡散アルゴリズムを行い、次いで、酵母タンパク質iの拡散ベクトル
【数6】
およびヒトタンパク質jの拡散ベクトル
【数7】
を得る。単一のネットワークにおけるDCAと同様に、本発明者らは、また、酵母タンパク質毎にベクトル
【数8】
を、ヒトタンパク質毎にベクトル
【数9】
を割り当てる。明らかな相同体間の配列/構造的類似性に対し、本発明者らは、各酵母タンパク質iとそのヒト相同体jとの間のBLASTビットスコアを、
【数10】
として確率分布へと正規化する。同様に、本発明者らは、また、各ヒトタンパク質jとその酵母相同体iとの間のBLASTビットスコアを、
【数11】
として確率分布へと正規化する。本発明者らは同様に、HHpredビットスコアのために
【数12】
として、DIOPTスコアのために
【数13】
として同じ正規化を行う。各酵母タンパク質iとヒトタンパク質jとの間で、本発明者らは:
【数14】
として、多項ロジスティックモデルにより各正規化ビットスコア分布ベクトルを近づける。
【0341】
同じ分子ネットワークにおける遺伝子のための
【数15】
の定義と同様に、
【数16】
は、酵母遺伝子とヒト遺伝子との間の相同類似性を捕捉する。このような仕方で、異なるネットワーク中であっても、酵母およびヒト遺伝子は、同じベクトル空間において表される。
【0342】
最後に、本発明者らは、拡張DCA目的関数を:
【数17】
(式中、αBlast、αHHpredおよびαDioptは、各類似性成分の重要性を整調するためのパラメータである)として最適化する。重要なことに、これらのベクトルを最適化することにより、本発明者らは、比較目的のため、分子ネットワーク接続性および配列類似性情報の両方を、同じベクトル空間へと統合する。
【0343】
そこで、本発明者らは、欲張りな方法を使用して、これらのパラメータを選択した。特に、本発明者らは、各項を増分的に加え、予測される酵母-ヒト相同性ペアの間の機能的一致に従って、項に対する最適または合理的な重みを見い出した。パラメータ選択手順の詳細は、後述する「パラメータ整調」セクションに見い出すことができる。その中に含まれる解析に基づいて、本発明者らは、αBlast=10、αHHpred=5およびαDiopt=5を選択した。最後に、本発明者らは、酵母タンパク質iとヒトタンパク質との間の統合された相同関連
【数18】
をコンピュータ処理した。
【0344】
有意な相同性ペアを見い出すために、本発明者らは、全酵母-ヒトタンパク質ペアのためにpijをコンピュータ処理し、経験的バックグラウンド分布を構築した。本発明者らは、経験的p値カットオフとして0.0005を使用して、酵母タンパク質の推定ヒト相同体を予測し、pij<0.5max{pik}の場合に相同体jを除去した。バックグラウンド分布は、ヒトおよび酵母遺伝子をランダムにペア形成することによって生成される。このカットオフを利用すると、4923種の酵母タンパク質と予測されるヒト相同体が存在し、BLAST(4023種の酵母タンパク質)およびHHpred(4312種の酵母タンパク質)のカバレッジを大幅に改善した(図8A)。
インタラクトームの前処理
【0345】
本発明者らは、STRING v9.1(string-db.org)から酵母およびヒトインタラクトームの両方をダウンロードした。STRINGにおいて、qijは、インタラクトームにおけるエッジ毎に割り当てられた信頼値である。本発明者らは、「experimental」および「database」チャネルのみによる
【数19】
が含まれるように、予測される相互作用を除去し、相互作用ペア毎に信頼度を再度較正した。本発明者らは、また、低い信頼度のqij<0.2を有する相互作用ペアを除去した。前処理後に、本発明者らは、372026種の相互作用および6164種のタンパク質を有する酵母インタラクトーム、ならびに643822種の相互作用および15317種のタンパク質を有するヒトインタラクトームを得た。
【0346】
ヒトネットワークのため、本発明者らは、また、2セットの最近発表された高品質バイナリヒトインタラクトームデータセット(7種の公共リポジトリから抽出された高品質の再度精選されたバイナリ相互作用由来の11045種;および最近の酵母2ハイブリッド実験データセット由来の13944種)を含めた(Geethaら、1999年;Huら、2011年;Rollandら、2014年)。これらの相互作用は、重みを加えられていなかったため、本発明者らは、これらのための信頼スコアを割り当てることを必要とした。優れた信頼値を推定するために、本発明者らは、BIOGRIDデータベース(v3.2.116)から物理的バイナリ相互作用を全て抽出し、これらの相互作用のSTRING信頼スコアの統計学をコンピュータ処理した。BIOGRID由来の相互作用は、大部分はハイスループット実験に由来し、バイナリであるため、本発明者らは、平均または中央値統計学を使用して、新たなバイナリ相互作用のための信頼スコアを割り当てた。BIOGRID相互作用のSTRING信頼スコアの分位統計学は、25%:0.391、50%:0.620および75%:0.717であった。BIOGRID相互作用のSTRING信頼スコアの平均値は、0.588であった。よって、本発明者らは、これらのデータセットにおける各重みを加えられていないバイナリ相互作用に0.6信頼スコアを割り当てることが合理的であると考慮した。
【0347】
本発明者らは、本研究において神経変性タンパク質症をモデリングしていたため、脳特異的となるようにヒトインタラクトームをさらに剪定した。これを為すために、本発明者らは、脳において認識できるほど発現される遺伝子のみを含むように、GTEX遺伝子発現データセットを採用した(GTEx Consortium、2013年;Huら、2011年;Sodingら、2005年)。特に、本発明者らは、RPKM方法によって357種のGTEX脳RNA-seqデータセットを正規化した(RobinsonおよびOshlack、2010年;Sodingら、2005年;Voevodskiら、2009年)。次に、本発明者らは、(357種のRNA-seqデータセットのうち少なくとも1種において)より大きい正規化脳発現レベルを有するタンパク質のみが含まれるように、本発明者らのヒトインタラクトームにフィルターをかけた。最終的に、本発明者らの脳特異的インタラクトームは、369634種の相互作用および10365種のタンパク質を含有した。
酵母-対-酵母エッジによるヒトインタラクトームの増大(ヒト化ネットワークのみのため)
【0348】
遺伝的相互作用は、ヒトインタラクトームにおいて疎らであるため、本発明者らは、酵母インタラクトームからエッジを移動することにより、推論される相同性を使用してヒトインタラクトームを増大させた。これをなすために、本発明者らは、統合された相同関連pijおよびpklが、pij*pkl>0.2を満たすように、酵母タンパク質iおよびlのペアが存在する場合、ヒトタンパク質jとkとの間にエッジを加えた(上述の定義を参照)。この閾値は、増大された脳インタラクトームの作製が、酵母インタラクトームの密度(約0.019)と同様の密度(約0.018)を達成するように選択され、751282種の相互作用ペアが移動される。
賞金収集Steiner森アルゴリズム
【0349】
本発明者らは、賞金収集Steiner森(PCSF)構築を使用して、酵母ネットワークおよび上述の増大されたヒト-酵母ネットワークを解析した(Choら、2015年;Tuncbagら、2013年;2016年;Voevodskiら、2009年)。ノード(遺伝子)セットVおよびエッジ(相互作用)セットEのネットワークG(V,E,c,p)(ここで、p(ν)≧0は、各ノードν∈Vに賞金を割り当て、c(e)≧0は、各エッジe∈Eにコストを割り当てる)について、PCSFの目標は、次の費用関数:
【数20】
(式中、κは、森Fにおける接続された成分または木の数であり;βは、ノード賞金とエッジコストとの間のトレードオフを定量化するパラメータであり;d(ν)は、ノードνの次数であり;μは、ネットワークにおける多数の隣接を有するハブノードにペナルティーを科すためのパラメータである)を最小化するための木F(V,E)のセットを見い出すことである。このような仕方で、アルゴリズムは、実験データを連結する相対的に高い信頼性のエッジのネットワークを検索する。
【0350】
目的関数f(F)を最適化するために、本発明者らは、コストωでエッジ(ν,ν)によって各ノードv∈Vに接続されたネットワークに、追加のルートノードνを導入した。このステップは、PCSF問題を賞金収集Steiner木問題(PCST)に転換し、これは、以前に発表されたメッセージ伝達アルゴリズムによって解決することができる(Bailly-Bechetら、2011年;Choら、2015年)。木の解が得られた後に、本発明者らは、木の解からノードνおよびこれを指す全エッジを除去し、森の解を得た。森の解が、本来のPCSFに最適である場合にかつその場合に限り、木の解が、上述のPCSTに最適であることを示すことは困難ではない。メッセージ伝達アルゴリズムは、最適解を見い出すことは保証されないが、実際に非常によく機能し(Choら、2015年;Tuncbagら、2013年)、より重要なことに、酵母およびヒトインタラクトーム等の大型ネットワークを取り扱うことができない線形計画法のアプローチよりも相当に速い。
【0351】
PCSFのコンピュータ処理による困難は、パラメータβ、ωおよびμを整調する仕方である。βは、ノードの賞金値のスケールを制御するため、本発明者らは、本発明者らの実験における本発明者らのスクリーン由来の各遺伝子に一定の賞金値(100)を割り当てた。いずれかのパラメータの撹乱は、ネットワーク構造のトポロジーを潜在的に変化させ得、パラメータの選択を決定的なものとする(Altschulら、1997年;1990年;Ashburnerら、2000年;Tuncbagら、2013年)。よって、単一セットのパラメータを選択する代わりに、本発明者らは、複数の合理的パラメータ設定からコンセンサスネットワークを得るためのアンサンブルアプローチを開発した。
【0352】
パラメータの範囲を決断するために、本発明者らは、次のように上界および下界を設定した:PCSFのネットワーク解が、十分な数の予測されるタンパク質(これは、インプット賞金遺伝子の数の半分である)を含有した;ネットワーク解は、インプットネットワークにおける1000個を超える隣接を有するハブノードを導入しなかった。本発明者らは、グリッドへとパラメータの範囲を離散化させ、PCSF実行のためのあらゆる可能なパラメータ組合せを列挙した。酵母ネットワークのため、βの範囲は{1,2,4,6,8,10,12}であり;ωの範囲は{1,2,3,4,5,6,7,8}であり;μの範囲は{0.001,0.003}であった。ヒト化ネットワークのため、βの範囲は{4,6,8,10,12,14,16}であり;ωの範囲は{3,4,5,6,7,8,9,10}であり;μの範囲は{0.003,0.005}であった。本発明者らは、また、PCSFプログラムにおけるデフォルトガウスノイズ設定を使用して、PCSF実行のためのエッジノイズをインジェクトして頑健性を検査した。各PCSFパラメータ設定の解を得た後に、本発明者らは、全ての解のアンサンブルに現れる各可能なエッジの頻度をコンピュータ処理した。エッジの頻度は、異なるパラメータ設定を越えたエッジの頑健性の代替である。最後に、本発明者らは、インプットとして、全ての解のアンサンブルにおけるエッジおよびその頻度を採用し、最大全域木アルゴリズムを適用して、最も頑健な代表的ネットワークを見い出した。
【0353】
解における選択されたノードの有意性を評価するために、本発明者らは、インプットとして同数の酵母遺伝子のランダム選択を使用して同じPCSFおよびアンサンブルプロセスをシミュレートすることにより、各ノードにバックグラウンド分布を構築した。本発明者らは、賞金ノードリストのものと同一の次数分布を有するランダム遺伝子セットを使用して、バックグラウンド分布をコンピュータ処理した。特に、本発明者らは、それぞれ次数[1~5]、[5~10]、[10~100]および[>100]を有する遺伝子をそれぞれ含有する4種のカテゴリーへと、全酵母遺伝子をビニングした。次に、次数分布の統計学が、賞金ノードリストのものと同一となるように、ランダム遺伝子セットは、これらのカテゴリーからの置き換えなしでサンプリングされる。次に、本発明者らは、PCSFを行い、1000種のランダムセットから森の10000種のランダムアンサンブルを生成して、バックグラウンドにおける各ノードの経験的分布をコンピュータ処理した。
【0354】
異なるタンパク質症に関する森の重複の有意性を評価するために(図1D)、本発明者らは、また、バックグラウンド分布としてこれらのランダムセットのペアワイズおよびトリプルワイズ交差を計算した。例えば、本発明者らは、α-synのために生成されたランダムアンサンブルと、tdp-43のためのランダムアンサンブルとをランダムにペア形成させ、その重複のサイズの分布をコンピュータ処理した。このような仕方で、本発明者らは、バックグラウンド分布を構築して、ネットワークのサイズ増加に単純に起因する比較される重複の有意性を評価した。経験的p値もコンピュータ処理される。本発明者らの以前の結果と同様に、ペアワイズ重複は全て統計的に有意であった(p<=0.002)。トリプルワイズ交差のため、p値は、さらにより有意であった(p<=0.001)。
酵母およびヒト化Steinerネットワークのためのノードおよびエッジセットアップ
【0355】
パラメータ化(上に記す)の差は別として、酵母ネットワークと「ヒト化」ネットワークとの間にはいくつかの重要な差が存在した。
【0356】
酵母ネットワークのため(図2)、「賞金ノード」は、酵母遺伝的スクリーン由来の修飾因子ヒットであった。懸賞されたノードのそれぞれは、任意賞金値として「100」を割り当てられた。酵母ネットワークのためのエッジは、STRING実験的およびデータベースエッジに由来した。上に記載されている通り、各エッジは、重みqijを割り当てられた。
【0357】
ヒト化ネットワークのため(図3および図4)、「賞金ノード」は、酵母遺伝的スクリーン由来の修飾因子ヒットとして同様に定義された。酵母-対-ヒトエッジは、酵母タンパク質とそれらのヒト相同体との間の相同性の強度によって重みを加えた(上述のpij)。ヒト化ネットワークにおいて、これらは、赤色の三角形(スクリーン由来のヒットである)と青色の丸(ヒト相同体)との間に見られる一次連結である。酵母修飾因子の明らかなヒト相同体の1種が、公知パーキンソニズムまたは神経変性遺伝子(例えば、PARK遺伝子座の遺伝子)であった場合、他の潜在的相同体よりも当該ノードの包含を好むように、0.5の任意報酬がpijに加えられた。最後に、ヒト化ネットワークにおけるヒトタンパク質間のエッジは、STRINGに由来したが、上の「インタラクトームの前処理」および「酵母-対-酵母エッジによるヒトインタラクトームの増大」に記載されている通り、他のソースにも由来した。
コンピュータ処理によるパイプラインのためのパラメータ整調
【0358】
そこで、本発明者らは、本発明者らの論文において使用されるパラメータのための解析およびガイドラインを提供する。
【0359】
DCA相同性ツールにおけるBLAST、HHpredおよびDioptのための重み。
【0360】
あらゆる可能な組合せを列挙せずに最適なパラメータを選択することは不可能であるため、本発明者らは、拡張DCA目的関数のパラメータ選択のための欲張りな解析を行った。特に、本発明者らは、各項を増分的に加え、項に最適または合理的な重みを見い出した。
【0361】
BLASTは、配列相同性検出のための最も高感度な方法であるため、本発明者らは先ず、BLASTのための合理的パラメータ区間を調査した。本発明者らは、拡張DCA目的関数における2種のネットワークトポロジー項およびBLAST項のみを保持し、{1,2,5,10,20,100}のセットからアルファ_BLASTを列挙した。性能を評価するために、本発明者らは、方法セクションに概要を述べる通り、本発明者らの方法によって予測される上位5種の相同体の遺伝子オントロジー(GO)の平均精度をコンピュータ処理した。補足図2Aにおいて、BLAST重みが、小さ過ぎる場合(<10)、本発明者らの方法が、BLAST由来の相同性情報を十分に活用できなかったことが容易に分かる。この重みが、10を超えるまたはこれに等しかった場合、予測性能は、飽和されるようになって、本来のBLAST方法よりも僅かな性能改善のみがもたらされた。重みが、大きくなり過ぎた場合(=100)、予測性能は降下し、BLASTのものと同一であった。それは、ネットワークトポロジーの効果が縮小され、本発明者らの方法が、BLASTの結果を単純に再構築したためである。よって、可能な値のより大型でより精緻化されたセットを列挙することにより、追加のコンピュータ処理によるコストにおけるより優れた選択が存在する可能性があるが、解析に基づいて、本発明者らは、BLASTパラメータを10に単純に固定した。
【0362】
本発明者らは、BLAST重みを固定した後に、HHpred項を加え、HHpred重みに対して同じ解析を行った。性能曲線(補足図2B)から、本発明者らは、最適HHpred重みが、5前後であることを観察した。おそらく、少なくとも一部には、BLASTが、最も関連性がある相同性情報を既に捕捉している一方、HHpredの結果は、追加の遠く離れた配列および構造的相同体を含むことによりBLASTを拡張するため、この重みは、BLAST重みよりも小さい。
【0363】
最後に、本発明者らは、BLASTおよびHHpred重みの両方を固定し、Diopt重みの解析を行った(図7C)。Dioptに関して、重みが大き過ぎない限り(<20)、性能差は非常に小さかった。これは、BLASTおよびHHpredの両方によって見逃されるいくつかの追加的な配列相同体のみを提供する、Dioptデータベースと一貫した。分かり易くするために、本発明者らは、同様に5に等しいその重みを加えることを選択した。
DCA相同性ツールにおけるBLASTおよびHHpredのための有意性閾値
【0364】
本発明者らは、配列相同性または構造予測に典型的に使用される合理的にストリンジェントな閾値であることから、1E-5を選択した(Geethaら、1999年)。閾値の他の選択も可能であるが、本発明者らは、結果が、本発明者らの設定と認識できるほどには異ならないと考える。次のウェブサイトおよび論文は、1E-5が、タンパク質BLASTのための合理的にストリンジェントカットオフであることを示す。
公知パーキンソン遺伝子の相同体に対する報酬
【0365】
本発明者らが、公知パーキンソン遺伝子の相同体に対する報酬値を加えた主要な理由は、賞金収集Steiner森(PCSF)アルゴリズムが、最終ネットワークにおける全賞金ノードを含むことを保証されないからである。加えて、本発明者らの相同性ツールは、時折、一方には公知文献の支持があり他方にはない、2種の相同体に同様スコアを割り当てることがある。PCSFアルゴリズムそれ自体は、接続性を考慮することにより大部分の正確な相同体を区別することができるが、本発明者らは、周知相同体に報酬を与えることにより、ノイズがさらに低減され得ることを見い出した。本発明者らのスクリーン由来の周知パーキンソン遺伝子の現存する相同体が、最終ネットワークに含まれるように、報酬パラメータ0.5が選択される。より大きい報酬値が、同様の効果も有し得ることが明らかであるが、本発明者らは、本発明者らのパイプラインにおけるこの報酬ヒューリスティックの効果を過剰に整調しないことを望んだため、このような選択を調査しなかった。
現存するインタラクトームのための信頼閾値および予測される連結
【0366】
STRINGのための信頼閾値の選択は、実際に、偽陽性と真陽性との間のトレードオフである。ストリンジェントな閾値、例えば、0.8は、偽陽性の数を低減させることができるが、トランケートされた酵母およびヒトインタラクトームは、疎らで接続切断され過ぎているように思われた。このような閾値は、シグナル伝達経路または他の十分に研究され局在化された生物学的経路に対して良好に機能することができるが、本発明者らは、これが、機構の理解が不十分であり(また、「より幅広の網」を打つことがより適切であると思われる)、一見異質な疾患関連性遺伝子間の接続が十分に理解されていない、複雑なタンパク質症に適切なアプローチであるとは思わなかった。よって、本発明者らは、0.2を選択して、非常に低い信頼度の相互作用のみを除外し、依然として、インタラクトームの主要な接続性を維持した。
新たなハイスループットバイナリインタラクトームのための信頼スコア
【0367】
新たなハイスループットバイナリインタラクトームは、重みを加えられていないため、本発明者らは、適切なスコアを割り当てて、STRING相互作用によりこれらを統合することを必要とする。適切な信頼値を推定するために、本発明者らは、一番最近のBIOGRIDデータベースから全物理的バイナリ相互作用を抽出し、このような相互作用のSTRING信頼スコアの統計学をコンピュータ処理した。BIOGRID由来の相互作用は、大部分はハイスループット実験に由来し、バイナリであるため、本発明者らは、平均または中央値統計学を使用して、新たなバイナリ相互作用のための信頼スコアを割り当てることができる。BIOGRID相互作用のSTRING信頼スコアの分位統計学は、25%:0.391、50%:0.620および75%:0.717である。BIOGRID相互作用のSTRING信頼スコアの平均値は、0.588である。よって、本発明者らは、中央値および平均の統計学の両方に緊密に関連することから、0.6を割り当て、これを、現存するSTRINGデータベースへと新たなハイスループットバイナリ相互作用を組み込むために合理的な割り当てと判断する。
賞金収集Steiner森アルゴリズム(PCSF)のためのパラメータ
【0368】
上に記す通り、本発明者らは、アンサンブルアプローチを使用して、パラメータ選択の問題を回避した。PCSFのためのパラメータのセットの有効性を決定するための明らかな仕方はない。さらに、いくつかのパラメータが存在するため、あらゆる組合せの列挙は、コンピュータ処理により実行不可能となる。この課題に取り組むために、上に記す通り、本発明者らは、広範囲の可能なパラメータを選択し、あらゆるパラメータ組合せによりPCSFを実行し、各パラメータ組合せから生成された単一のネットワークからアンサンブルネットワークを作製した。最終ネットワークが、ネットワークにおける80%賞金ノードを接続することができるように、これらのパラメータは選択される。本発明者らのパラメータ範囲は、ユビキチンのような「欲張りな」過剰接続されたハブによって過度に歪められたネットワークも除外する。本発明者らの方法セクションに記す通り、本発明者らは、エッジ分布にノイズをインジェクトすることにより、頑健性をさらに検査した。いずれかのパラメータ化されたモデルと同様に、ここに主観性のエレメントが存在することに疑いの余地はないが、本発明者らは、おそらく可能となり得ると感じるのと同じくらい幅広さの苦痛を大いに受けた。最終的に、目的は、批判に耐え得る仮説を生成すること、または生物学的に有意義な相互作用を予測することである。
スポット形成アッセイ
【0369】
アミノ酸(MP Biomedicals)および2%糖を補充した、0.67%アミノ酸不含酵母窒素塩基(Fischer Scientific)からなる合成培地において酵母を培養した。大部分の実験のため、細胞を先ず、グルコースを含有する合成培地において対数期中期まで成長させ、次いで2%ラフィノースを含有する合成培地において一晩再度培養した。次に、対数期中期の細胞を、ガラクトースを含有する合成培地において希釈した。典型的に、細胞を30℃で6時間誘導した。
【0370】
出発OD600=1.0となるよう各株を希釈し、5倍連続希釈し、次いでガラクトースを含有する寒天プレート(誘導)またはグルコース(対照)プレート上にスポットした。
ΔPARK17/α-synおよびΔPARK9/α-syn株における公知α-syn修飾因子に対するスクリーニング
【0371】
標準酢酸リチウム形質転換プロトコールを、96ウェルプレートによる使用に適応させた(Cooperら、2006年;D. Gietzら、1992年;R. D. Gietzら、1995年)。形質転換後に、所望のプラスミドで形質転換した酵母の選択のためのウラシルを欠きラフィノースを有する合成培地において、飽和するまで細胞を成長させた。飽和したら、グルコースまたはガラクトースのいずれかを有する合成培地プレート上に細胞をスポットした。2日間成長させた後に、ガラクトースおよびグルコースプレートの写真を撮り、目視で解析した。平行した実験において、形質転換された酵母を、384ウェルプレートにおいて、35μLのガラクトース培地においてOD600=0.01となるよう再度希釈した。18、24および48時間成長させた後にOD600を測定することにより(Tecan safire)、384プレートにおける成長をモニターし、定量化可能な成長尺度を得た。
小分子(NAB2)処理
【0372】
対照、TDP-43またはα-syn酵母株を、ラフィノースを含有する完全合成培地(非誘導)において対数期(OD600約0.5)まで成長させた。次に、0.01(TDP-43実験)および0.025(α-syn実験)のOD600となるよう、2%ガラクトースを含有する完全合成培地において培養物を希釈して、毒性タンパク質の発現を誘導した。NAB処理のため、10μM(α-synのため)または20μM(TDP-43のため)を培養物に添加し、断続的に振盪しつつ30℃で2日間、バイオスクリーン機器内でインキュベートした。
プールα-syn過剰発現スクリーン
【0373】
YFP対照株およびα-syn株においてプール遺伝的スクリーンを実行した。大部分の酵母オープンリーディングフレームを表す酵母FLEX遺伝子ライブラリー(Huら、2007年)を、アレイ化細菌ライブラリーストックからプールし、深96ウェルプレートにおいて飽和するまで37℃で成長させた。培養物をプールし、Qiagenマキシプレップキットを使用してプラスミドを単離した。次に、プールFLEX遺伝子ライブラリーを、対照YFPまたはα-syn発現酵母株のいずれかにまとめて形質転換し、プラスミド選択のためのウラシルを欠く5枚の四角15cm固体寒天プレート上で選択した。約6,000種の酵母遺伝子のおよそ200倍カバレッジを表す、およそ10CFUを得た。各プレートからコロニーを濯いで、プールし、20%グリセロールに入れ、個々の使用チューブに等分し(約100μL)、液体窒素中でスナップ凍結し、-80℃で貯蔵した。
【0374】
次の通りにプールスクリーンを実行した。プール酵母ライブラリーのアリコートを氷上で解凍し、3×30mLフラスコにおいて3種の異なる濃度にSRafUraで希釈した(約0.025、0.05および0.1)。30℃で一晩振盪した後に、0.4~0.8の間のOD600を有する培養物を選択して、プールスクリーンを始めた。次に、SGal Uraにおいて0.1のOD600となるよう培養物を希釈して、YFPまたはα-synのいずれかの発現を誘導した。ゼロ時として50 OD単位を維持し、遠心分離し、水で洗浄し、凍結した。次に、必要に応じて適切な希釈を行いつつ、培養物を対数期成長に24時間維持して、0.8より下にOD600を維持した。この時点の後に、培養に値する50 OD単位を遠心分離し、水で洗浄し、ペレットを凍結した。
【0375】
次に、次の適応によりQiagenミニプレップを使用して、酵母からプラスミドを単離した。50 OD単位当たり5回のミニプレップを行った。細胞ペレットを緩衝液に再懸濁し、小型の酸洗浄されたビーズを用いたビーズビート法によって溶解した。ビーズを除去し、次いで、従来のミニプレッププロトコールにより溶解物を採取した。次に、5回のプレップ由来の精製されたプラスミドをプールした。次に、FLEX遺伝子プラスミドに含有される酵母ORFを、ORFを挟むattR Gateway配列にアニールするPCRプライマーを使用して増幅した。HiFidelty Platinum Taqを増幅に使用した。50uL反応当たり5uL DNAを使用し、試料当たり4回の反応を実施した。約6’の伸長時間による30+サイクルを使用して、より長いORFの増幅を確実にした。Qiagen PCRカラムを使用してPCR産物を精製した。次に、2マイクログラムのPCR産物を超音波処理し、Qiagen Minelute PCRカラムにおいて精製し、OD260を再度解析した。次に、この産物をライブラリー生成のためのインプットとして使用し、Whitehead Institute Genome Technology Coreにより配列決定した。Illumina HiSeqプラットフォームを使用して、およそ1億2千万種の40bp単一末端リードを配列決定した。
【0376】
リードを、ボウタイにより酵母ORF配列にマッピングした(Langmeadら、2009年)。本発明者らは、Huら(Huら、2007年)において報告された酵母ORF、プラス、SGDに存在したが、Huらにおける記載由来の配列のリストに含まれていない903種のORFのDNA配列によりボウタイ指標を作製した。シードにおける2個のミスマッチ(-n 2)を許容し、シード長さを40(-l 40)とし、2個以上の場所にマッピングする全アラインメントを抑制し(-m 1)、「--best」および「--strata」を使用して、リードをマッピングした。マッピングされないリードをfastx_trimmer(hannonlab.cshl.edu/fastx_toolkit/commandline.htmlにおけるワールドワイドウェブ上)によりトリミングして、最初の20ntを除去し、次のパラメータを使用してボウタイにより再度マッピングした:「-n 0 -l 20 --best --strata -m 1」。アウトプットsamファイルを構文解析して、各ORFにマッピングするリードの数を得た。RパッケージNoiseqにより差次的発現解析を行った(Tarazonaら、2011年)。NOISeqは、カウントデータから差次的に発現される遺伝子を同定するためのノンパラメトリック方法である。NOISeqは、差次的発現の倍数変化値および確率を計算する。各遺伝子の差次的発現の確率(P-val)は、表セット内の全遺伝子の倍数変化差(M)-絶対的発現差(D)値の接合分布に由来する。
【0377】
(A)どちらの実験も>0.5のP-valに関連しない場合を除いて、2種のプールα-synスクリーンにおいて一貫して上方または下方である(両方のスクリーンにおいて|log2倍数変化|>0.8);(B)>2.5の絶対値による平均倍数変化を有する(P-valに関係なく);(C)当該ソースと一貫したプールスクリーンにおいて倍数変化を有する、以前の実験法由来の公知修飾因子である場合、遺伝子は、検証のために選択した。gal誘導性導入遺伝子の発現を変更することが期待されるであろうガラクトース代謝に関連する遺伝子のみならず、YFP対照において|log2倍数変化|>1.0を有するいずれかの遺伝子(推定サプレッサーまたはエンハンサーと同じ方向で)も除外した。アレイ化α-syn過剰発現スクリーンヒットの本発明者らの以前の大規模特徴付けから得られる知識によって、閾値はガイドされた(図1を参照)。別の言い方をすれば、本発明者らの以前の過剰発現スクリーンを「絶対的基準」として使用して、プール過剰発現データを解析した。
プールスクリーンQPCR立証
【0378】
プールスクリーン(「プールα-syn過剰発現スクリーン」方法)から生成された形質転換細胞を氷上で解凍し、生じたODがおよそ0.03、0.05および0.1になるようSRaf-Uraにおいて希釈した。培養物を30℃で一晩成長させ、0.4~0.8のODを有する培養物を誘導のために選択した。これらの培養物を、SGal-Uraにおいて0.1のODになるよう希釈した。ゼロ時の時点を表す50 OD単位をストックした。誘導された培養物を24時間成長させ、24時間の時点を表す50 OD単位をストックした。Qiagenミニプレップキット(27106)を使用してプラスミドを単離し、5種の試料において各時点に50OD単位を分割した。P1緩衝液における細胞再懸濁後に、酸洗浄されたビーズを使用したビーズビート法によって細胞を溶解した。ビーズビート法の後に、試料からビーズを除去し、溶解物を標準ミニプレップキットプロトコールに付した。生じたプラスミドをプールし、QPCR解析に使用した。標準attFプライマーを、QPCR解析のためにorf特異的リバースプライマー(産物<150bpのサイズとなるようにプライマー3によって生成された配列)と組み合わせて使用した。試料の正規化に使用された複数の陰性対照、および陽性対照を、全QPCRプレートにおいて実行した。SYBR 緑色蛍光検出システム(Applied Biosystems)を使用したApplied Biosystems(7900HT)において、生物学的3回複製の技術的3回複製を使用してQPCR解析を実施した。増幅のためのプログラムは、40サイクルの95℃15秒間および60℃1分間を含んだ。
プールスクリーン成長曲線解析
【0379】
Flex遺伝子過剰発現ライブラリーを使用して、個々の推定修飾因子のそれぞれをα-syn株において過剰発現させた。3種の独立したUra形質転換体をSRaf-Uraにおいて30℃で一晩成長させた。培養物をSRaf-Uraにおいて継代培養し、0.4~0.8のODにおいて、誘導のためにSgal-Uraにおいて希釈した。各単離株を3回複製してセットアップし、成長を15分毎におよそ60時間モニターした。
ゲノムワイド欠失スクリーン(合成遺伝子アレイ方法論)
【0380】
使用される方法は、基本的に以前に記載された通りであった(Baryshnikovaら、2010年;TongおよびBoone、2006年)。簡潔に説明すると、欠失株を、YPD+G418プレートにピニングした。クエリー株(α-synおよび野生型対照)をYPDにおける5ml一晩培養物において30℃で成長させ、YPDプレート上に延展し、一晩成長させた。YPD上に一緒にピニングすることにより、欠失株を各クエリー株に交配し、48時間30℃で成長させた。生じた二倍体をSD/MSG-Ura+G418にピニングし、2日間30℃で成長させた。細胞を、胞子形成培地プレートにピニングし、23℃で7日間インキュベートした。胞子をSD-His/Arg/Lys+カナバニン+チアリシンにピニングし、2日間30℃で成長させた。細胞を、新鮮SD-His/Arg/Lys+カナバニン+チアリシンにピニングし、1日間30℃で成長させた。細胞を、SD/MSG-His/Arg/Lys+カナバニン+チアリシン+G418にピニングし、2日間30℃で成長させ、次いで、SD/MSG-His/Arg/Lys/Ura+カナバニン+チアリシン+G418にピニングし、2日間30℃で成長させた。初期スクリーンのため、細胞を、SD/MSG-His/Arg/Lys/Ura+カナバニン+チアリシン+G418およびSgal/MSG-His/Arg/Lys/Ura+カナバニン+チアリシン+G418の両方にピニングし、スポット成長をモニターした。検証研究のため、細胞を、液体SD/MSG-His/Arg/Lys/Ura+カナバニン+チアリシン+G418にピニングし、一晩30℃で成長させ、次いで、SD/MSG-His/Arg/Lys/Ura+カナバニン+チアリシン+G418およびSgal/MSG-His/Arg/Lys/Ura+カナバニン+チアリシン+G418の両方にピニングし、スポット成長をモニターした。次の通りにストック溶液(1000×)を調製した:G418 200mg/ml、カナバニン50mg/ml、チアリシン50mg/ml。上述の方法を初期スクリーンに使用し、初期スクリーンヒットの検証のために96ウェルプレートフォーマットを使用して、2回複製して反復した。
LRRK2突然変異体系統のためのヒトiPSC生成、および中脳ドーパミン作動性(DA)ニューロンへの分化
【0381】
対照個体、および同質遺伝子的遺伝子補正済み対照と共にG2019S LRRK2を保有するPD患者由来のiPSCを、以前に記載された通りに生成した(Reinhardtら、2013年)。若干の修正を加えたフロアプレートに基づくプロトコールを使用して、iPSCをmDAニューロンに分化させた(Kriksら、2011年;Schondorfら、2014年)。分化は、0~11日目にLDN193189(100nM、Stemgent)に、0~5日目にSB431542(10mM、Tocris)に、1~7日目にSHH C25II(100ng/mL、R&D)、パルモルファミン(2mM、EMD)およびFGF8(100ng/mL、Peprotech)に、ならびに3~13日目にCHIR99021(CHIR;3mM、Stemgent)に曝露することに基づいた。DMEM、15%ノックアウト血清代替物、2mM L-グルタミンおよび10μM β-メルカプトエタノールを含有するノックアウト血清代替物培地(KSR)において、マトリゲル(BD)上で細胞を11日間成長させた。分化5日目に開始して、KSR培地をN2培地に徐々にシフトさせた。11日目に、培地を、CHIR(13日目まで)、また、BDNF(脳由来神経栄養因子、20ng/ml;R&D)、アスコルビン酸(0.2mM、Sigma)、GDNF(グリア細胞株由来神経栄養因子、20ng/ml;R&D)、TGFβ3(トランスフォーミング成長因子β3型、1ng/ml;R&D)、ジブチリルcAMP(0.5mM;Sigma)およびDAPT(10μM;Tocris)を補充したNeurobasal/B27/L-Glut含有培地(NB/B27;Invitrogen)に9日間交換した。18日目に、細胞を、Accutase(Innovative Cell Technology)を使用して解離し、分化培地(NB/B27+BDNF、アスコルビン酸、GDNF、dbcAMP、TGFβ3およびDAPT)において、15μg/mlポリオルニチンおよび1μg/mlラミニンで予めコーティングされたディッシュに高細胞密度条件下で再度プレーティングした。DIV30に、細胞を収集し、遠心分離後に、さらなる解析まで細胞ペレットを-80℃で貯蔵した。
α-syn突然変異体系統のためのヒト多能性幹細胞培養
【0382】
皮膚生検、ヒト皮膚線維芽細胞培養、iPS細胞生成、およびA53T突然変異(WIBR-IPS-A53T)を有する患者のための突然変異補正は、以前に記載されている(Cooperら、2006年;Soldnerら、2011年)。この以前の刊行物において、A53T iPS系統は、WIBR-IPS-SNCAA53Tと称された。
【0383】
本発明者らの多能性幹細胞株は、hES培地[15%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)、5%ノックアウト血清代替物(Invitrogen)、1mMグルタミン(Invitrogen)、1%非必須アミノ酸(Invitrogen)、0.1mM β-メルカプトエタノール(Sigma)および4ng/ml FGF2(R&D systems)を補充したDMEM/F12(Invitrogen)]において、マイトマイシンC不活性化マウス胚性線維芽細胞(MEF)フィーダー層上に初期に維持された(5%0、3%C0)。手作業により、またはコラゲナーゼIV型(Invitrogen;1.5mg/ml)を用いて酵素により、培養物を5~7日毎に継代した。分化に先立つ50継代前後で、系統を、成長因子低減マトリゲル(BD Biosciences;DMEM:F12において1:30)で予めコーティングされたプレートに継代し、mTESR-1培地(Stem Cell Technologies)において培養し(21%0、5%CO)、その後、分化まで(継代40~90における)、ディスパーゼ(Invitrogen;1mg/mL)を用いて酵素により5~7日毎に継代した。核型分析のため、細胞株の標準G-バンド染色体解析を、10~20継代毎に行った(Cell Line Genetics,Inc.)。本発明者らは、2~4週間毎に本発明者らの培養物のマイコプラズマ陰性状態を確認した(MycoAlert、Lonza)。
胚様体(EB)形成によるヒト神経誘導
【0384】
以前に発表されたプロトコールを修正せずに使用した(Chungら、2013年;Huら、2007年;J.-E. Kimら、2011年)。このプロトコールは、完全性のためにここで反復された。
【0385】
分化を開始するために、0日目に、ヒトESまたはiPS細胞コロニーを、5μM Y-27632/ROCK阻害剤(Calbiochem)で30~60分間前処理し、accutase(StemPro Accutase;Life Technologies)への5~10分間曝露後に単一細胞解離し、次いで、N2およびB27を補充したDMEM/F12(Gibco/Life Technologies)である神経基盤(NB)培地に再懸濁した。N2およびB27サプリメントは、Life Technologiesから入手し、それぞれ1/2~1%および1~2%で使用した。細胞は、デュアルSMAD阻害剤(Chambersら、2009年;Langmeadら、2009年)組換えヒトノギン(R&D Systems)200ng/mLおよび10μM SB431542(Tocris Bioscience)ならびに5μM Y-27632を補充したNB培地において、AggreWell 800マイクロウェル(Stem Cell Technologies;プライミングおよびプレーティングは製造業者のプロトコールに従う;ウェル当たり2.4×10個の細胞)内にプレーティングした。ノギンおよびSB431542は、神経分化プロトコールを通してこれらの濃度で培地に残った。
【0386】
1日目に、培地を1/2交換した。2日目までに、十分に形成された神経誘導されたEB(NEB)が、AggreWellにおいて典型的に観察され、NB培地において一晩ペトリ皿に移した(4個のAggreWellウェル/ペトリ皿)。4日目に、NEBを、付着のために成長因子低減マトリゲル(DMEM:F12において1:30;BD Biosciences)でコーティングされたディッシュに移した。この日以降Y-27632を省略した。5日目~10日目に、付着したNEBを、20ng/mL FGF2(R&D Systems)および組換えヒトDkk1、200ng/mL(R&D Systems)にその上曝露した。10日目に、神経ロゼットを解剖し(P20ピペットチップ)、DnaseI(Sigma Aldrich)を補充したaccutaseにおいて10分間37℃でインキュベートし、小型の細胞塊および単一の細胞へと穏やかに解離した。洗浄後に、ロゼットを、20ng/mL FGF2(Life Technologies)を補充したNB培地である神経前駆細胞(NPC)培地において高密度(200,000/cm)で、ポリ-L-オルニチンおよびラミニン(BD Biocoat)で予めコーティングされたプラスチックディッシュに再度プレーティングし、10μm Y-27632を一晩補充した。典型的に、1個のAggrewell 800ウェルは、継代0における少なくとも1~2個の6ウェルに十分なNPCを提供した。
【0387】
その後、生存するNPCは増殖した。培地交換は毎日行った。これは、神経分化前に最大10回継代することができ、分化能を損なうことなく初期継代(p1~p5)において凍結/融解に成功することができた。凍結培地は、10%FBS(Hyclone)を有するNPC培地であった。
ヒト皮質神経分化
【0388】
以前に発表されたプロトコールを修正せずに使用した(Chungら、2013年;Huら、2007年;J.-E. Kimら、2011年)。このプロトコールは、完全性のためにここで反復された。
【0389】
神経分化を始めるために、accutaseによりNPCを解離し、マトリゲルコーティングされたT75フラスコ(CytoOne)に再度プレーティングした。翌日、培地を、組換えヒトBDNFおよびGNDF(両者共に10ng/mL;R&D Systems)ならびにジブチリルサイクリックAMP(Sigma;500μM)を補充した、FGF-2を含まないNB培地である神経分化(ND)培地に完全に交換した。その後、培地を1日おきに1/2交換した。7~9日目に、分化しているニューロンを単一の細胞に穏やかに解離し、0.1%ウシ血清アルブミン(Gibco/Life Technologies)を補充した予め冷却したハンクス平衡塩類溶液(HBSS;Gibco/Life Technologies)に再懸濁した。洗浄ステップ後に、細胞を、生化学的アッセイのためにポリオルニチンおよびラミニン(BD Biocoat)で予めコーティングされた6または24ウェルプラスチックプレートにプレーティングした。培地を1/2、3日毎に最大12週間交換した。
初代ラット皮質培養物
【0390】
胎生期18に、麻酔した妊娠したスプラーグドーリーラットから帝王切開により胚を収集した。20分間37℃のAccumax(Innovative Cell Technologies,Inc)消化、およびパスツールピペットによる粉砕により、大脳皮質を単離および解離した。ポリオルニチンおよびラミニンコーティングされた96ウェルプレートに、B27(Life Technologies)、0.5mMグルタミン、25μM β-メルカプトエタノール、ペニシリン(100IU/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したneurobasal培地(Life Technologies)において、それぞれ4×10個の細胞を播種した。培地の3分の1を、3~4日毎に交換した。
iPSニューロンのAAV-1形質導入
【0391】
立証されたTALE-TFを含有するプラスミドは、エンドトキシンフリーに精製されており(Qiagen)、アデノ随伴ウイルス血清型1(AAV-1)へのパッケージングは、Gene Transfer Vector Core、Massachusetts Eye and Ear Infirmary/MEEI、Harvard Medical Schoolによって行われた(ミニスケール産生)。A53Tおよび突然変異補正済み皮質ニューロンは、0.25~0.75×10細胞/cmのプレーティング密度において4~7週間熟成させた。細胞に、500μl ND培地において、単一のTALE-TFまたはTALEクローニング骨格単独を含有する、30μlのミニスケール産生されたMEEI AAV-1力価を形質導入した。ND培地を、形質導入12~16時間後に交換した。
抗体
【表1-1】
【表1-2】
35S-メチオニン/-システインによるタンパク質標識付け
【0392】
A53Tおよび突然変異補正済み皮質ニューロンを、0.25~0.75×10細胞/cmのプレーティング密度で4~8週間熟成させた。タンパク質標識付けに先立ち、皮質ニューロン培養物を、メチオニンおよびシステインを含まない神経分化(ND)培地において90分間維持した。ND培地は、1%(v/v)B-27、0.5%(v/v)N-2および1%(v/v)GlutaMAXサプリメント、1%(v/v)MEM非必須アミノ酸、1%(v/v)ペニシリン-ストレプトマイシン(全てLife Technologies)ならびに10ng/ml BDNFおよびGDNF(両者共にR&D Systems)および500μM cAMP(Sigma-Aldrich)を補完したDMEMであった。タンパク質標識付けのため、ニューロン細胞培養物を、最終濃度100μCi/mlの35S-メチオニンおよび-システイン(Perkin Elmer)を補充したND培地において様々な持続時間インキュベートした。冷PBSによる急速洗浄後に、細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich)を補充した50mM Tris-HClおよび2%(w/v)SDSを含有する緩衝液において溶解させた。試料を100℃で5分間煮沸し、10,000gで15分間スピンダウンした。上清を収集し、BCAアッセイ(Pierce、Thermo Fisher Scientific)を使用してタンパク質濃度を決定した。35S標識された試料を、4~12%Nupage Bis-Trisゲル(Life Technologies)において泳動した。ローディング対照として、ゲルをSimplyBlue SafeStain(Life Technologies)で染色し、水におけるインキュベーションによって脱染した。その後、ゲルを11.2%(v/v)サリチル酸および10%グリセロール(v/v)において15分間インキュベートした。ゲルを乾燥させ、リン光体スクリーン(Fujifilm)に最小で48時間露光させた。ホスフォロイメージャーBAS-2500(Fujifilm)を使用してスクリーンをスキャンし、各レーンの強度を測定することにより、35S組み込みを決定した(MultiGauge解析ソフトウェアv2.2、Fujifilm)。
サイトゾルにおける遊離35S-メチオニン/-システイン
【0393】
GFPまたはαSyn-GFPのいずれかを過剰発現するラット初代ニューロンを、100μCi/mlの35S-メチオニンおよび-システインと共に様々な持続時間インキュベートした。冷PBSによる急速洗浄後に、細胞を、RIPA緩衝液において20分間氷上で溶解し、遠心分離によってデブリを除去した。4体積の溶解物に対し1体積の100%TCAを添加することにより、溶解物中のタンパク質を沈殿させ、10分間4℃でインキュベートした。14K rpmにおける10分間の遠心分離後に、上清を収集して、遊離35S-メチオニン/-システインのサイトゾルプールを測定した。7mlシンチレーションカクテル(National Diagnostics)に浸漬されている5μlの試料によりLS 6500液体シンチレーションカウンター(Beckman Coulter)を使用して定量化することにより、35S組み込みを決定した。
細胞溶解およびエンドグリコシダーゼH消化
【0394】
細胞を、20mM HEPES、150mM NaCl、10%(v/v)グリセロール、1mM EGTA、1.5mM MgCl、1%(v/v)Triton X-100、pH7.4まで、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich)ならびにタンパク質ホスファターゼ阻害剤カクテル1および2(Sigma-Aldrich)を含有する緩衝液において溶解し、氷/水スラリー中で20分間インキュベートし、続いて、2回の凍結-融解サイクル(-80℃/37℃、各約1分間)を行った。100,000g、4℃、30分間の超遠心分離後に上清を収集した。BCAアッセイ(Pierce、Thermo Fisher Scientific)を使用してタンパク質濃度を決定した。製造業者の説明書に基づきエンドグリコシダーゼ(Endo)H(New England Biolabs)消化を実施した。簡潔に説明すると、20~40μgバルクタンパク質を、15.3μl反応体積においてアセンブルした;1.7μl変性緩衝液を添加し、試料を10分間100℃で煮沸した。次に、2μlのG5緩衝液および1μlのEndo Hまたは1μlのHOを、変性反応液に添加し、2時間37℃でインキュベートした。
ウエスタンブロッティング
【0395】
Endo H消化後のタンパク質輸送のため、タンパク質試料を、試料緩衝液(20mM Tris-Cl pH6.8、4%(v/v)グリセロール、180mM 2-メルカプトエタノール、0.0003%(v/v)ブロモフェノールブルーおよび2%(v/v)SDS)において変性させ、10%Tris-グリシンゲルにおいて泳動し、20%メタノールによりPVDF膜(BioRad)に湿式転写した。ブロットを、1:1希釈のOdysseyブロッキング緩衝液(Li-Cor Biosciences)およびPBSにおいて1時間室温でブロッキングし、続いて、1:1希釈のOdysseyブロッキング緩衝液(Li-Cor Biosciences)および0.1%Tween 20を含有するPBS(PBST)における一次抗体とのインキュベーションを4℃で一晩、穏やかに振動しつつ行った。PBSTによる3回の5分間洗浄後に、ブロットを、1:1希釈のOdysseyブロッキング緩衝液およびPBSTにおいて、IRDye 680または800にコンジュゲートされた抗マウスまたはウサギIgG(1:10,000、Rockland)等の二次抗体と共に2時間室温でインキュベートした。PBSTによる3回の5分間洗浄および水による2回の洗浄後に、Odyssey定量的蛍光イメージングシステム(Li-Cor Biosciences)を使用してブロットをスキャンし、Odysseyソフトウェアv2.1(Li-Cor Biosciences)を使用してバンドを定量化した。
【0396】
他のウエスタンブロットのため、試料をRIPA緩衝液において溶解し、8または10%Nupage Bis-Trisゲル(Life Technologies)のいずれかにおいて泳動し、iBlot(Life Technologies)を使用して転写した。ブロッキングは、PBST中5%脱脂粉乳で行った。二次抗体および化学発光検出に関しては、HRPにコンジュゲートされた抗マウス、抗ウサギIgGまたはアビジンを、SuperSignal West Pico化学発光基質(Thermo Fisher Scientific)と共に使用した。
TALE-TF設計
【0397】
ATXN2またはEIF2G転写物の転写開始部位(TSS)の200bp上流(5’)と50bp下流(3’)との間を標的とするようにTALE-TFを設計した。TSS付近のこれらの領域内で、本発明者らは、ヒト腹内側前頭前皮質試料からDNAseI高感受性領域を同定した(Thurmanら、2012年、PMID:22955617)。これらのDNAseI HS領域内で、本発明者らは、各転写物に5種のTALE-TFを設計した。
【0398】
最初のチミジン(T)+12個の完全反復および1個の半反復からなる14bpゲノム配列を標的とするように各TALE-TFを設計した。以前に記載された通りにPCRに基づくGolden Gateクローニング戦略を使用して、各TALE-TFに、TALE反復をrAAV移入プラスミドにクローニングした(Konermannら、2014年;Sanjanaら、2012年;Tarazonaら、2011年)。rAAV移入プラスミドは、翻訳の間に切断される2A連結EGFPと共に合成VP64アクチベータードメインに融合されたTALE骨格を含有した。
TALE-TFアセンブリ
【0399】
以前に記載されたGolden Gateクローニングを使用して、14-mer転写アクチベーター様エフェクター転写因子(TALE-TF)を構築した(Sanjanaら、2012年)。遺伝子、ATXN2およびeIF4G1(転写物バリアント7)毎に、5種の異なるTALE-TFが設計され、14bp長の標的遺伝子座が、近位プロモーター領域に位置する(ATXN2 TALE-TF#1:5’-TGTCCAGATAAAGG-3’(配列番号1)、#2:5’-TGAACCTATGTTCC-3’(配列番号2)、#3:5’-TGCCAGATTCAGGG-3’(配列番号3)、#4:5’-TGGAGCGAGCGCCA-3’(配列番号4)、#5:5’-TAGCTGGTCATGGT-3’(配列番号5);eIF4G1 TALE-TF#1:5’-TGTCACGTGACGGG-3’(配列番号6)、#2:5’-TGTGGCTGTCACGT-3’(配列番号7)、#3:5’-TCAAAGTTCGGGAG-3’(配列番号8)、#4:5’-TCGCGGAACAGAGA-3’(配列番号9)、#5:5’-TCTCCTGCCTCAGC-3’(配列番号10))。TALE-TF毎に、DNA結合ドメインの正確な配列がサンガー配列決定によって立証され、非サイレント突然変異を有する全TALE-TFクローンを除外した。
リボソームフットプリントプロファイリング
【0400】
リボソームフットプリントプロファイリングのため、12週齢細胞を、シクロヘキシミド(100ug/mL)で5分間37℃にて処理して、翻訳伸長を停止させた。100μg ml-1シクロヘキシミドを含有する氷冷9.5mM PBS、pH7.3で細胞を2回洗浄し、溶解緩衝液(10mM Tris-HCl、pH7.4、5mM MgCl2、100mM KCl、2mMジチオスレイトール、100μg ml-1シクロヘキシミド、1%Triton X-100、500U ml-1 RNasin Plusおよびプロテアーゼ阻害剤(1×完全、EDTAフリー、Roche))を添加し、プレートから細胞を掻爬し、次いで26ゲージ針により4回粉砕することにより溶解した。1,300g、10分間、4℃で粗溶解物を遠心分離した後に、上清を除去し、液体窒素中でフラッシュ凍結した。溶解物を氷上で解凍し、その後、http://bartellab.wi.mit.edu/protocols.htmlで利用できる詳細なプロトコールを使用して以前に記載された通りに(Subtelnyら、2014年)、リボソームプロファイリングおよびmRNA-seqを実施した。4週齢細胞を37℃成長培地で2回洗浄し、次いで、吸引によって培地を除去した後に、プレートを封着し、次いで液体窒素中に押し込んだ。次に、上に記載されている通り溶解緩衝液により細胞を溶解したが、ショ糖勾配を含む全溶液からシクロヘキシミドが除外された。氷上で解凍した後に、RNase Iによる消化に先立ち、少量のシクロヘキシミドフリーゼブラフィッシュRPF溶解物を、4週齢細胞溶解物にスパイクした(A260に基づき10分の1)。
【0401】
以前に記載された通り、RPFおよびRNA-seqタグをORFにマッピングした(Subtelnyら、2014年)。4週齢試料に存在するゼブラフィッシュリードを説明するために、ゼブラフィッシュおよびヒトゲノムまたはトランスクリプトームの両方を含む指標を作製し、これらのデータを組合せ指標にマッピングした。特有にマッピングするリードのみが考慮され、ゼブラフィッシュにマッピングするものは、解析から除外された。
【0402】
4週間および12週間データセットのための翻訳プロファイリングにおける濃縮された経路を、Broad Instituteウェブサイト(software.broadinstitute.org/gsea/index.jspにおけるワールドワイドウェブ上で利用可)で利用できる遺伝子セット濃縮解析ツールによりコンピュータ処理した。
定量化および統計解析
現存する相同性予測アプローチとの比較
【0403】
酵母タンパク質と予測されるヒト相同体との間の機能的関連を評価するために、本発明者らは、本発明者らの方法、HHpredおよびBLASTによって予測される上位5種の相同体の遺伝子オントロジー(GO)の平均精度をコンピュータ処理した(Altschulら、1997年;1990年;Ashburnerら、2000年;Tuncbagら、2013年)(図8B)。酵母タンパク質は、2種以上の優れたヒト相同体を有することが多いため、本発明者らは、上位5種の相同体を選択した。相同体の精度を、酵母タンパク質と推定相同体との間の重複されるGO標識のパーセンテージとして計算した。本発明者らは、GO精度測定基準が、多数の標識を有する予測される相同体および少数のGO標識を有するクエリータンパク質を好むように、遺伝子当たりの割り当てられたGO標識の数が、酵母とヒトプロテオームとの間で相当に変動し、解析を潜在的に偏らせたことを認めた。さらに、偽陽性は、この測定基準によって考慮されなかった。これらの課題に取り組むために、本発明者らは、酵母(またはヒト)遺伝子およびそのヒト(または酵母)相同体の特有のGO標識の総数で割った重複するGO標識の数である、広く使用されているJaccard類似性スコアをコンピュータ処理した。4023種の酵母タンパク質に対するBLASTの精度は、31.1%であった。BLASTと併せてHHpredは、4312種の酵母タンパク質に対する精度の32.6%を達成した。本発明者らの方法は、有意により大きい数の4923種の酵母タンパク質に対して31.6%精度を得た。これはまた、BLASTアウトプットによる4023種の酵母タンパク質におけるBLAST(32.0%対31.1%精度および25.2%対24.3%Jaccard類似性)およびHHpredアウトプットによる4312種のタンパク質におけるHHpred(34.1%対32.6%精度および26.9%対24.9%Jaccard類似性)よりも優れる。BLASTおよびHHpredを上回る改善は、有意であった(対応t検定p値<0.01)。
【0404】
次に、本発明者らは、ヒトタンパク質の酵母相同体を見い出す際に本発明者らの方法を検査した(図3Cおよび図3D)。BLASTおよびHHpredを上回るカバレッジの改善は、酵母タンパク質からヒト相同体を生成するためよりもさらに大幅であった。本発明者らの方法は、15200種のタンパク質の相同体を予測したが、BLASTおよびHHpredは、ヒトプロテオームの相対的に小さい部分のみを網羅した(それぞれ7248および9577種)。精度測定基準もDCA方法を好んだ。本発明者らの方法は、BLASTまたはHHpredがGO精度およびJaccard類似性スコアの両方における酵母相同体を見い出すことができるタンパク質においてBLAST(57.6%対57%精度および26%対26.6%Jaccard類似性)およびHHpred(56%対54.9%精度および25%対24.2%Jaccard類似性)を上回って予測力を改善した。これらの比較は全て、統計的に有意であった(対応t検定により全p値<0.01)。
【0405】
本発明者らはまた、本発明者らの相同性ツールを、最先端のEnsembl Compara方法と比較した。Ensembl Comparaは、系統樹に基づくクラスタリングおよび複数の種を越えた解析により高い信頼度の相同体ペアを同定する。この配列に基づく方法は、精度のためのカバレッジを犠牲にし、これらのペアは、伝統的解析のための絶対的基準と考えられる(Vilellaら、2009年)。本発明者らは、Ensembl Compara v85をダウンロードし、本発明者らの相同性ツールにおいて使用される遺伝子名に遺伝子idをマッピングし、2409種の酵母遺伝子のための5093種の高い信頼度の酵母/ヒトペアを同定した。これらのペアの中に、3種の主要カテゴリーが存在する:「1対1」、「1対多」および「多対多」。本発明者らのDCA相同性ツールを評価するために、本発明者らは、これが、高い信頼度の酵母/ヒトペアに対して少なくとも同様に行うか、Ensembl Comparaによって1対1、1対多または多対多として予測されるかチェックした。ヒトと酵母遺伝子との間のオルソロジー関係性は、それらの遠く離れた進化的距離のせいで不明瞭となり得るため、DCAおよびEnsembl Comparaは、特に多対多の事例に対して、異なる推定相同体を予測することができる。このような事例のため、本発明者らはまた、酵母タンパク質と予測される相同体との間で重複するGO標識のパーセンテージとしてGO精度をコンピュータ処理した。Ensembl Comparaによる明らかな1対1のペアのため、DCAは、1040種の遺伝子のうち25種のみにおいて異なった。異なったこの25種の遺伝子のうち、本発明者らの方法は、オントロジーマッチングに基づくEnsembl Compara(0.388)と比較して、オントロジー予測において匹敵する精度を達成した(0.394)。「多対多(many2many)」予測カテゴリーに1518種のエントリーが存在した。これらのため、本発明者らの方法は、Ensembl Compara(0.412)と等価な正確なペア形成(0.414)を達成した。最後に、1対多の対応が予測される酵母遺伝子のため、2535種のエントリーが存在した。重ねて、本発明者らの方法は、Ensembl Compara(0.390)と同様の遺伝子オントロジー(0.391)により相同体を同定した。差の中で、本発明者らは、これらの大部分が、同じファミリー内の同様の遺伝子であることを観察した;さらに、これらの差は、統計的に有意ではない。よって、本発明者らのアプローチは、他のいずれかの絶対的基準酵母-対-ヒト相同体ペア形成の非存在下での偽陽性の代替である、高い信頼度のオルソロジーペアのための相同性予測を破壊しない。これらの結果から、本発明者らは、DCAが、同じインプット酵母遺伝子に対してEnsembl Comparaと匹敵する酵母-対-ヒト精度を提供することを実証した。
【0406】
最近、Kachrooら(Kachrooら、2015年)は、配列によって明らかな相同体による相補性に関して414種の必須酵母遺伝子を慎重に検査した。よって、これらの414種の酵母/ヒト遺伝子ペアのそれぞれに対して、相補性アッセイは、相同性のバイナリで実験的に強い読み出し情報を提供した。Kachrooらは、これらの高い信頼度のペアのいずれが、実際の陽性相補性ペアである可能性が高いか予測するための方法を開発した。彼らは、配列特性、ネットワーク特色、転写および翻訳特色、ならびに発現存在量の慎重な手作業の精選を含む、100種を超える特色を利用して、予測ツールを確立した。彼らは、この予測ツールが、実験的に検査される酵母/ヒトペアのサブセットにおいて訓練されて、別々の検査セットにおける機能的交換可能性を正確に同定し得ることを示した。DCAの統合の有効性を実証するために、本発明者らは、配列およびネットワーク情報のみを使用して、DCAに基づく分類子を訓練して、真の酵母-ヒト相補性ペアを予測した。特に、本発明者らのDCAパイプラインの予測力をチェックするために、本発明者らは、本発明者らの接合DCA学習パイプラインから得られる低次元遺伝子ベクトルに基づく分類子を築いた。酵母/ヒト遺伝子の各ペアに、本発明者らは、遺伝子ベクトルに基づく特色を築いて、それらの配列類似性およびそれらの分子ネットワークにおけるトポロジカルな役割を考慮した。要素毎の積ならびに2種の遺伝子ベクトルの差および和を含むこれらの特色を、勾配ブースト森分類子へのインプットとして使用した。本発明者らは、この分類子が、配列/ネットワーク特色のみに基づく本発明者らのより要素的な自動DCAツールのため、酵母とヒトとの間の機能的相補性も予測するように整調され得るかを検査した。本発明者らは、Kachrooら由来の酵母/ヒトペアにおける5倍相互検証により本発明者らのDCA分類子を訓練した場合、高い率の予測精度を達成した(AUC=0.82、SD=0.08)。これは、Kachrooらの入り組んだ手作業の統合された方法に匹敵し、配列およびネットワークトポロジーのみに基づく本発明者らの自動相同性ツールが、この特異的相同性タスクのための分類子の訓練に十分であることを実証する。BLASTおよびHHpredを含む配列類似性を単独で利用する方法が、DCAよりも性能が相当に悪かった(それぞれ0.70および0.69)ことは注目に値する。ネットワークトポロジーおよび配列類似性を有効に統合する本発明者らのDCAに基づく分類子が、100種を超える特色を利用するKachrooらにおける方法と同じ程度に有効であり、よって、主要な時間のかかる手作業特色精選の障壁を克服することが明らかである。
PCSFおよびヒト化Steinerネットワークの評価
【0407】
本発明者らは、2種の別々のデータセットにおいてPCSFを検査し、現存する方法と比較して大いに優れた性能を実証した。比較のため、本発明者らは、2種の一般的なアルゴリズム、DAPPLE(Rossinら、2011年)およびPEXA(Tuら、2009年)を同定し、これらを実行した。両方の方法が、シード遺伝子を採用し、シード遺伝子にまたがるサブネットワークを同定して、これらの遺伝子の可能な機能的相互接続性を明らかにする。第1のアルゴリズム、DAPPLEは、ヒトインタラクトームにおける有意な直接的およびワンホップの間接的エッジを同定して、可能な限り多くのシード遺伝子を接続する。第2のアルゴリズム、PEXAは、KEGGまたはリアクトーム等、現存する経路アノテーションを利用して、シード遺伝子を網羅する。次に、統合および剪定が適用されて、接続された成分を連結し、ハンギング遺伝子を除去する。これらの比較のため、本発明者らは、本発明者らのPCSF方法を提供するのと同じように、各アルゴリズムに、酵母-対-ヒト相同性連結を提供し、ヒトネットワークに酵母相互作用エッジをインジェクトした。疎らな直接的ネットワークは、隠れた遺伝子を同定することができないことから、DAPPLEのため、本発明者らは、有意なワンホップの間接的エッジによる予測される高密度ネットワークを使用した。本発明者らは、酵母における15種の完全スクリーン由来のヒットを精選した(Tong、2004年)。これらのスクリーンにおいて、遺伝子は欠失されると共に、その遺伝的相互作用物質または修飾因子である。本発明者らは、ネットワークアルゴリズムのためのインプットとしてこれらの遺伝的修飾因子を使用した。不活性化された遺伝子は、アルゴリズムから隠れ、予測されるネットワークの評価に使用された。以前に発表された方法(Yeger-Lotemら、2009年)から手掛かりを得て、そこで本発明者らは、予測される隠れたヒト遺伝子が、隠れた不活性化酵母遺伝子に帰属する特異的遺伝子オントロジー生物学的プロセス項のために有意に濃縮された場合(超幾何分布検定;p値<0.01)、細胞応答の発見において成功したアルゴリズムを考慮した。本発明者らは、PCSFおよび2種の代替方法:DAPPLE(Rossinら、2011年)およびPEXA(Tuら、2009年)によりヒト化ネットワークを生成した。これらのスクリーンのため、それぞれ6.6%および13%であるDAPPLEおよびPEXAと比較して、PCSFの成功率は、47%であった。これらの結果は、DAPPLEおよびPEXAを上回る、PCSFの優れた性能を示唆する。
【0408】
PCSF、DAPPLEおよびPEXAによって回収される遺伝子および予測される経路の関連性をより良く理解するために、本発明者らは、十分に制御されたシミュレーションを設計した。撹乱された経路の遺伝的スクリーンを模倣するために、本発明者らは、周知ヒト経路データベースKEGG由来の個々の経路を選択し、各経路における全遺伝子を同定した(補足表S15)。次に、本発明者らは、ストリンジェントEnsemblの1対1のマッピングにより酵母相同体を同定した。本発明者らは、「撹乱された」として明らかな酵母相同体を有するこれらのヒト遺伝子を処理し、「バーチャル酵母遺伝的スクリーン」由来のヒットとしてそれらの相同体の遺伝的相互作用隣接遺伝子を選定した。これらのようなバーチャルスクリーンは、交絡因子として実験ノイズを最小化し、アルゴリズム性能のよりクリーンな評価を可能にする。本発明者らは、「真の」経路情報を知っているため、この方法を使用して、本来のKEGG経路における「関連性」遺伝子が予測される(非シード)遺伝子として回収される頻度を定量化することにより、アルゴリズムの感度および特異性を検査することができる。本発明者らは、明らかな酵母相同体を有する少なくとも5種のヒト遺伝子を有する50種のKEGG経路を選択し、検査のために50種の関連する「バーチャル」スクリーンを作製した(表S15)。本発明者らは、2種の性能測定基準:精密度、すなわち、本来のKEGG経路において示される予測される隠れた遺伝子のパーセンテージ、およびリコール、すなわち、予測される経路における隠れたノードとして示される本来のKEGG遺伝子のパーセンテージを使用した。理想的には、これらの値は、完全な予測に対して100%となるであろう。PCSFに関して、平均精密度およびリコール値は、それぞれ63%および74%である。対照的に、DAPPLEに関して、平均精密度およびリコール値は、それぞれ6%および47%である一方、PEXAに関して、これらは、それぞれ8%および83%である。3種の精密度値の間の差は、大幅である:PCSFは、非常にコンパクトなサブネットワーク内にはるかにより高い精密度を有する一方、DAPPLEおよびPEXAの両方は、低い精密度による巨大な「毛玉」ネットワークを予測する。PEXAが、おそらくKEGG経路を使用してネットワークを築くため、非常に高いリコール値を有し、よって、予想通りに高いリコールを有することは注目に値する(ここでシミュレートされたスクリーンがKEGG経路から生成されるため);しかし、その精密度測定基準は非常に低い。
【0409】
表S15。図2および図9に関連する、シミュレーションのためのKEGG経路。
【0410】
さらに、本発明者らは、本発明者らが生成したシミュレートされた酵母遺伝的スクリーンにより、ネットワークへとインジェクトされた酵母遺伝的相互作用の有効性を検査し、本発明者らのPCSF方法を他のアルゴリズム、DAPPLEおよびPEXAと相互比較した。先ず、本発明者らは、インジェクトされた酵母相互作用を全て除去することにより、性能を検査した。PCSFに関して、平均精密度およびリコール値は、それぞれ37%および54%である。DAPPLEに関して、平均精密度およびリコール値は、それぞれ8%および27%である。精密度およびリコール結果と比較すると(すなわち、PCSFに関する63%および74%、対、DAPPLEに関する6%および47%)、酵母相互作用が除外された場合、PCSFおよびDAPPLEの両方が、はるかにより低いリコールを有することが明らかである。よって、この解析は、「ヒト化」ネットワークへの酵母相互作用のインジェクションが、撹乱された遺伝子に遺伝的修飾因子の間の鍵となる接続を提供するというデータにより確認する。PEXAに関して、酵母インジェクションによるものと同様に、平均精密度値は、9%である一方、リコール率は、再度、予想通りに非常に高い。第2に、本発明者らは、10回の試行にわたりインジェクトされた遺伝的相互作用の部分をランダムに除去することの効果を検査した。平均精密度およびリコール値を図9に示し、これらの方法の精度とインジェクトされた酵母相互作用のパーセンテージとの間の関係性を実証する。注目すべき観察は、相互作用の>40%がインジェクトされると、性能が合理的になることである。PEXAの性能は、上に記す通り、そのアルゴリズムにおけるヒトKEGG経路情報を利用するため、相対的に未変化のままである。偽陽性および偽陰性の観点から、異なる方法の間に明らかにトレードオフがある。PCSFは、コスト効率の良い実験的調査のための関連性遺伝子の小セットを同定するため、PCSFは、本発明者らの本研究に対して最もよく機能する。
細胞に基づくアッセイのための統計的方法およびデータ解析
【0411】
全実験法のための試料サイズは、これらの研究における方法およびアッセイによる本発明者らの以前の大規模な経験に基づき選択した。哺乳動物細胞における大部分の実験のため、結果の頑健性および一貫性は典型的に、3種の生物学的複製が解析された後に確立される。図の説明文において特に明記しない限り、これは、全実験に要求される複製の標準的な数であった。全ヒトおよびラット細胞実験のため、次に、本分野において標準の適切な統計的検定によって有意性を決定した。実験内で比較するために2つの条件のみが存在した場合、両側t検定を適用した。実験が、複数の条件を含む場合、多重比較事後検定による一元配置ANOVAを行った。次の予め確立された基準に基づきデータ点を除外した:1)誤差は、実験を行う際に特定の試料に導入された、2)値は、平均から2標準偏差よりも大きいまたはそれに満たない。酵母スポットアッセイのため、3種の生物学的複製(特に明記しない限り)が、目視により同じ傾向を実証した場合、結果は、有意と考えられた。図5Eに使用される方法は、図の説明文に概要を述べる。プールスクリーン酵母アッセイのため(図4A図11)、リードおよびカットオフ閾値のための詳細な統計的方法は、上述の方法において供給されている。コンピュータ処理による解析のための統計的方法は、上述の方法セクションに詳細に記載されている。
データおよびソフトウェア利用能
【0412】
TransposeNetパイプラインは、http://transposenet.csail.mit.eduに記載されている。
【0413】
DCA/Mashupウェブポータルは、http://mashup.csail.mit.eduである。PCSFウェブポータルは、http://fraenkel-nsf.csbi.mit.edu/omicsintegrator/である。
【0414】
参考文献:
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【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
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図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18
図19-1】
図19-2】
図20-1】
図20-2】
【配列表】
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