(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】イオン注入装置用の水素発生装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20230601BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
H01L21/265 603A
H01L21/265 603Z
(21)【出願番号】P 2020537733
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 US2019014474
(87)【国際公開番号】W WO2019144093
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ツェ-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】レズート,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】コルビー,ウェンディ
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-330939(JP,A)
【文献】特表2014-502409(JP,A)
【文献】特表2009-532826(JP,A)
【文献】特表2004-516667(JP,A)
【文献】特表2016-532289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0147435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システム用のターミナルシステムであって、
ターミナルハウジングと、
上記ターミナルハウジングの中に配置されたイオンソースアセンブリと、
上記イオンソースアセンブリに電気的に接続されたガスボックスと、
上記ガスボックスの中に配置された水素発生装置と、を備え、
上記水素発生装置が、水素ガスを発生するように構成されており、かつ、上記イオンソースアセンブリと同じ電位にある、ターミナルシステム。
【請求項2】
上記イオンソースと上記ガスボックスとは、複数の電気絶縁体によって、上記ターミナルハウジングから電気的に絶縁されている、請求項1に記載のターミナルシステム。
【請求項3】
上記ターミナルハウジングをアース接地から電気的に絶縁する複数の絶縁スタンドオフを更に備える、請求項1に記載のターミナルシステム。
【請求項4】
上記ターミナルハウジングに電気的にバイアスをかけ、上記アース接地に対して或るターミナル電位にするターミナル電源を更に備える、請求項1に記載のターミナルシステム。
【請求項5】
上記ターミナル電位は、上記アース接地に対して約-300keVである、請求項4に記載のターミナルシステム。
【請求項6】
イオンソース電源を更に備え、
上記イオンソース電源は、上記イオンソースに電気的にバイアスをかけて、上記ターミナル電位に対して或るイオンソース電位にする、請求項1に記載のターミナルシステム。
【請求項7】
上記イオンソース電位は、上記ターミナル電位に対して約60keV高い、請求項6に記載のターミナルシステム。
【請求項8】
上記ガスボックスを上記イオンソースに電気的に接続する導電性チューブを更に備える、請求項1に記載のターミナルシステム。
【請求項9】
上記導電性チューブが、上記水素発生装置と上記イオンソースとの間に流体連結を提供する、請求項8に記載のターミナルシステム。
【請求項10】
上記導電性チューブは、ステンレス製チューブを含む、請求項9に記載のターミナルシステム。
【請求項11】
イオン注入システムであって、
ターミナルと、
ビームラインアセンブリと、
エンドステーションと、
を備え、
上記ターミナルは、
ターミナルハウジングと、
イオンビームを形成するように構成されたイオンソースと、
上記イオンソースアセンブリのために水素ガスを生成するように構成された水素発生装置を備えるガスボックスであって、上記ターミナルハウジングから電気的に絶縁され、かつ、当該イオンソースアセンブリに電気的に接続された上記ガスボックスと、
を有し、
上記ビームラインアセンブリは、上記イオンビームを選択的に輸送するように構成されており、
上記エンドステーションは、ワークピースにイオンを注入するための上記イオンビームを受け入れるように構成されている、イオン注入システム。
【請求項12】
上記イオンソースと上記ガスボックスとが、複数の電気絶縁体によって、上記ターミナルハウジングから電気的に絶縁されている、請求項11に記載のターミナルシステム。
【請求項13】
上記ターミナルハウジングをアース接地から電気的に絶縁する複数の絶縁スタンドオフを更に備える、請求項11に記載のターミナルシステム。
【請求項14】
上記ターミナルハウジングに電気的にバイアスをかけ、上記アース接地に対して或るターミナル電位にするターミナル電源を更に備える、請求項11に記載のターミナルシステム。
【請求項15】
上記ターミナル電位は、上記アース接地に対して約-300keVである、請求項14に記載のターミナルシステム。
【請求項16】
イオンソース電源を更に備え、
上記イオンソース電源は、上記イオンソースに電気的にバイアスをかけて、上記ターミナル電位に対して或るイオンソース電位にする、請求項11に記載のターミナルシステム。
【請求項17】
上記イオンソース電位は、上記ターミナル電位に対して約60keV高い、請求項16に記載のターミナルシステム。
【請求項18】
上記ガスボックスを上記イオンソースに電気的に接続する導電性チューブを更に備える、請求項11に記載のターミナルシステム。
【請求項19】
上記導電性チューブが、上記水素発生装置と上記イオンソースとの間に流体連結を提供する、請求項18に記載のターミナルシステム。
【請求項20】
上記導電性チューブは、ステンレス製チューブを含む、請求項19に記載のターミナルシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願へのレファレンス〕
本出願は、2018年1月22日に出願された、「イオン注入装置用の水素発生装置(HYDROGEN GENERATOR FOR AN ION IMPLANTER)」という名称の米国仮出願第62/620,144号の利益を主張する米国出願である。米国仮出願第62/620,144号の内容全体が参照により本明細書に含まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、主にイオン注入システムに関し、より詳細には、イオン注入システムのイオンソース用の水素発生装置を有するイオン注入システムに関する。
【0003】
〔背景技術〕
半導体装置の製造においては、半導体に不純物をドーピングするためにイオン注入が用いられる。イオン注入システムは、イオンビームからのイオンを用いて半導体ウェハなどのワークピースをドーピングするためにn型またはp型の材料のドーピングを発生させる目的で利用されたり、あるいは、集積回路の製造中にパッシベーション層を形成する目的で利用されたりする。このようなビーム処理は、集積回路の製造中に半導体材料を生成するために、所定のエネルギーレベルかつ制御された濃度で特定のドーパント材料の不純物をウェハに選択的に注入するためにしばしば用いられる。イオン注入システムは、半導体ウェハをドーピングするために用いられる場合、選択されたイオン種をワークピースに注入して、所望の外因性材料を生成する。アンチモン、ヒ素、またはリンなどのソース材料から生成されたイオンを注入すると、例えば、「n型」外因性材料ウェハが得られる。一方、「p型」外因性材料ウェハは、ホウ素、ガリウム、またはインジウムなどのソース材料で生成されたイオンから得られることが多い。
【0004】
典型的なイオン注入装置は、イオンソースと、イオン抽出装置と、質量分析装置と、ビーム輸送装置と、ウェハ処理装置とを含む。イオンソースは、所望の原子ドーパント種または分子ドーパント種のイオンを生成する。生成されたイオンは、抽出システムによってイオンソースから抽出され、イオンの流れが励起され方向付けられて、イオンビームとなる。抽出システムは、通常、一組の電極である。所望のイオンは、質量分析装置においてイオンビームから分離される。質量分析装置は、通常、抽出されたイオンビームの質量分散または質量分離を行う磁気双極子である。ビーム輸送装置は、イオンビームの所望の性質を維持しながら、イオンビームをウェハ処理装置に輸送する。ビーム輸送装置は、通常、一連の集束装置を含む真空システムである。最後に、半導体ウェハは、ウェハハンドリングシステムを介してウェハ処理装置に出し入れされる。ウェハハンドリングシステムは、処理されるウェハをイオンビームの前に配置し、処理されたウェハをイオン注入装置から取り出すために、一つ以上のロボットアームを含み得る。
【0005】
イオン注入装置内のイオンソースは、通常、アークチャンバ内でソース材料をイオン化することによってイオンビームを生成し、ソース材料の成分は、所望のドーパント元素である。次いで、イオン化されたソース材料から所望のドーパント元素がイオンビームの形態で抽出される。場合によっては、所望のドーパント元素がアルミニウムなどの金属のイオンを含み得る。
【0006】
従来、アルミニウムイオンが所望のドーパント元素である場合、イオン注入用のアルミニウムイオンのソース材料として、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al2O3)などが用いられてきた。窒化アルミニウムまたはアルミナは、固体の絶縁材料であり、これらの材料は、通常、(イオンソースにおいて)プラズマが形成されるアークチャンバ内に配置される。また、従来は、アルミニウム含有材料を化学的にエッチングするためのエッチャントガス(例えば、フッ素を含むガス)が導入される。それにより、ソース材料がイオン化される。そして、アルミニウムが抽出されて、ビームラインに沿って、炭化ケイ素ワークピースへの注入を行うためのエンドステーションに配置された炭化ケイ素ワークピースへ移送される。しかしながら、エッチングプロセスにより、絶縁材料(例えば、AlFX、AlN、Al2O3など)が生成される。この絶縁材料(例えば、AlFX、AlN、Al2O3など)は、アークチャンバから目的のアルミニウムイオンと共に放出される。それにより、絶縁材料が、イオン注入システムの様々な構成要素間で有害なアーク放電を引き起こす可能性がある。
【0007】
〔発明の概要〕
以下では、本開示の一部の態様についての基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。本概要は、本開示の広範な概観ではない。本概要は、本発明の主要または重要な要素を特定することも意図していないし、かつ、本発明の範囲を規定(delineate)することも意図していない。本概要の目的は、後述する更に詳細な説明の前置きとして、本開示の一部のコンセプトを簡略化された形式で提示することである。
【0008】
本開示の態様は、アルミニウムイオンをワークピースに注入するイオン注入プロセスを容易にする。一つの例示的な態様によれば、イオン注入システムは、イオンビームを形成するように構成されたイオンソースと、上記イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリと、ワークピースへアルミニウムイオンの注入するための上記イオンビームを受け入れるように構成されたエンドステーションとを有して実現される。
【0009】
一つの例示的な態様によれば、イオン注入システム用のターミナルシステムが実現される。上記ターミナルシステムは、例えば、ターミナルハウジングと、上記ターミナルハウジングの中に配置されたイオンソースアセンブリとを備える。ガスボックスは、例えば、上記イオンソースに電気的に接続され、水素発生装置は、上記ガスボックスの中に配置される。上記水素発生装置は、例えば、上記イオンソース用に水素ガスを発生するように構成されており、かつ、上記イオンソースと同じ電位にある。
【0010】
一例において、上記イオンソースとガスボックスとは、複数の電気絶縁体によって、上記ターミナルハウジングから電気的に絶縁されている。更に、複数の絶縁スタンドオフが、他の一例において、上記ターミナルハウジングをアース接地から電気的に絶縁するために設けられる。
【0011】
例えば、ターミナル電源が設けられる。このターミナル電源は、上記アース接地に対して300keVなどのターミナル電位になるよう上記ターミナルハウジングに電気的にバイアスをかける構成となっている。別の例において、抽出電源が設けられる。この抽出電源は、上記ターミナル電位よりも大きい電位へ上記ガスボックスおよびイオンソースに電気的にバイアスをかけるように構成されている。上記ガスボックスおよびイオンソースとの電位は、例えば、上記ターミナル電位に対して約60keV高い。
【0012】
別の例によれば、導電性チューブが、上記イオンソースへ上記ガスボックスを電気的に接続するように設けられている。上記導電性チューブは、上記水素発生装置と上記イオンソースとの間に流体連結を提供する。上記導電性チューブは、例えば、ステンレス製チューブを含む。
【0013】
別の例示的な態様によれば、イオン注入システムが更に開示される。上記イオン注入システムは、ターミナルハウジングと、イオンビームを形成するように構成されたイオンソースと、ガスボックスとを有したるターミナルを備える。上記ガスボックスは、例えば、上記イオンソースのために水素ガスを生成するように構成された水素発生装置を備え、上記ガスボックスは、上記ターミナルハウジングから電気的に絶縁され、かつ、上記イオンソースに電気的に接続される。一例において、上記イオン注入システムは、上記イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリと、ワークピースにイオン注入するための上記イオンビームを受け入れるエンドステーションとを更に備える。
【0014】
上述の概要は単に、本開示の一部の実施形態についての一部の構成に関する簡潔な概覧を与えることを意図したものであり、他の実施形態は、上述の構成に対して付加的な構成および/または異なる構成を含んでもよい。特に、本概要は、本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。したがって、上述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に記載され、特に特許請求の範囲において摘示される特徴を含んでいる。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に開示する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用され得る様々な方法のうちの一部を示している。本開示の他の目的、利点、および新規な構成は、以下の本開示の詳細な説明を図面と併せて考慮することによって明らかになるであろう。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示の複数の態様に係る、水素発生装置を利用する例示的な真空システムを示すブロック図である。
【0016】
図2は、本開示の別の態様に係る、イオンソースとガスボックスとを備える例示的なターミナルを示す斜視図である。
【0017】
図3は、本開示の別の態様に係る、イオンソースとガスボックスとを備える例示的なターミナルを示す平面図である。
【0018】
〔発明を実施するための形態〕
本開示は、主に、イオン注入システム、およびイオン注入システムに関連する水素ガスを発生するためのソースを対象とする。より詳細には、本開示は、上記イオン注入システム用の水素を生成するための水素生成構成要素を対象とする。本開示はイオンソースに関連するガスボックス内に水素ガス発生装置を配置する。それにより、ガスボックスは、高電圧に維持される。したがって、ガスボックス筐体の格納態様および安全態様は、重複したハードウェアおよびガス供給配管を有利に改善する。
【0019】
以下、図面を参照して本発明を説明する。本明細書において、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素(部材)を指すために使用されてもよい。これらの態様の説明は単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の説明では、説明のために、本発明の完全な理解を提供すべく、様々な特定の詳細が開示されている。しかしながら、当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細がなくとも実施できることは明らかであろう。更に、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に説明される実施形態または実施例によって限定されることを意図していない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図している。
【0020】
また、図面は、本開示の実施形態の一部の態様の例示を与えるために提供されている。従って、図面は、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることにも留意されたい。特に、図面に示されている各部材は、必ずしも互いにスケール(縮尺)通りではない。図面における様々な部材の配置は、それぞれの実施形態についての明確な理解を提供するように選択されている。当該配置は、本発明の実施形態に係る実施例(implementations)における様々な構成要素の実際の相対位置を表現したものであると必ずしも解釈されるべきではない。更に、本明細書において説明される様々な実施形態および実施例の構成は、特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。
【0021】
また、以下の説明では、図面に示されている、または本明細書において説明されている、機能ブロック、装置、構成要素、回路素子、または他の物理的または機能的ユニット間の任意の直接的な接続または結合は、間接的な接続または結合によって実施され得ることを理解されたい。更に、図面に示される機能ブロックまたはユニットは、一実施形態では個別の構成または回路として実装(実現)されてよい。あるいは、機能ブロックまたはユニットは、別の実施形態では、共通の構成または回路によって完全にまたは部分的に実装されてもよいことを理解されたい。例えば、複数の機能ブロックは、共通のプロセッサ(例:信号プロセッサ)上において実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。更に、以下の記載において有線ベースとして説明されている任意の接続は、特に断りのない限り、無線通信として実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0022】
本開示の一態様によれば、
図1は、例示的な真空システム100を示す。本例の真空システム100は、イオン注入システム101を備えるが、プラズマ処理システム、または他の半導体処理システムなど、様々な他のタイプの真空システムも考えられる。イオン注入システム101は、例えば、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備えている。
【0023】
概説すれば、ターミナル102内のイオンソースアセンブリ108は、アークチャンバ110を有する。アークチャンバ110は、電源112に接続されており、イオンビーム114を形成するためにドーパントガスを複数のイオンにイオン化する。引出し電極116は、イオンソースアセンブリ108の近くまたは引出し電極の下流で生成された電子の逆流を阻止するようにバイアスされ得る。本発明のイオンソース材料118は、イオンソースアセンブリ108内のアークチャンバ110に提供され、イオンソース材料は所望のイオン注入に基づき、BF3、PF3、NF3、または他の材料を含み得る。一例では、ヨウ化アルミニウム(III)(AlI3)などの気化材料120をアークチャンバ110に供給すること、あるいは、以下で更に詳細に説明するように、アークチャンバに関連するイオンソースアセンブリ108の一部である気化器122に、上記気化材料を取り付けることが可能である。
【0024】
本例におけるイオンビーム114は、ビームステアリング装置124を通って、開口126からエンドステーション106に向かって出される。エンドステーション106において、イオンビーム114は、チャック130(例えば、静電チャックまたはESC)に選択的に固定または取り付けされたワークピース128(例えば、シリコンウェハ、表示パネルなどの半導体)に衝突する。注入されたイオンは、ワークピース128の格子に埋め込まれると、ワークピースの物理的および/または化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体装置の製造や金属の仕上げ加工、更には材料科学研究における様々な用途にも用いられる。
【0025】
本開示のイオンビーム114は、ペンシルビームすなわちスポットビーム、リボンビーム、走査ビーム、またはイオンがエンドステーション106に向けられる任意の他の形態など、任意の形態をとることができ、すべてのそのような形態は、本開示の範囲内に入ると考えられる。
【0026】
一つの例示的な態様によれば、エンドステーション106は、真空チャンバ134などの処理チャンバ132を含み、処理環境136は処理チャンバに付随する。処理環境136は、一般的に、処理チャンバ132内に存在する。一例では、処理環境136は、真空を備える。この真空は、処理チャンバに接続されて処理チャンバを実質的に排気するように構成された真空源138(例えば、真空ポンプ)によって、生成されたものである。更に、真空システム100の統括制御のために、コントローラ140が設けられている。
【0027】
本開示は、特に、電気自動車などの高電圧および高温デバイスで使用される用途において、炭化ケイ素系デバイスを上に有するワークピース128がシリコン系デバイスよりも優れた熱的および電気的特性を有することを十分理解できる。しかしながら、炭化ケイ素へのイオン注入は、シリコンのワークピースに使用される注入ドーパントとは異なるクラスの注入ドーパントを利用する。炭化ケイ素へのイオン注入では、アルミニウム注入および窒素注入がしばしば行われる。例えば、窒素注入は、窒素をガスとして導入することができるので比較的簡単であり、比較的容易な調整、汚染除去などを実現する。一方、アルミニウムの良好な気体溶液は現在ほとんど知られていない。そのため、アルミニウムの方が難しい。
【0028】
イオン注入用のアルミニウムイオンソースとしては、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)などを用い得る。窒化アルミニウムまたはアルミナは固体の絶縁材料であり、これらは、(イオンソース内において)プラズマが形成されるアークチャンバ内に置かれる。アルミニウム含有材料を化学的にエッチングするために、ガス(例えばフッ素)が導入され得る。それにより、材料がイオン化される。そして、アルミニウムが抽出されて、ビームラインに沿って、エンドステーションに配置された炭化ケイ素ワークピースへ移送される。例えば、アルミニウム含有材料は、アークチャンバ内の何らかの形態のエッチャントガス(BF3、PF3、NF3など)と共に、アルミニウムイオンのソースとして一般に使用される。これらの材料は、アークチャンバから目的のイオンと共に放出される絶縁材料(例えば、AlN、Al2O3など)を生成するという残念な付随的作用を有する。
【0029】
その後、絶縁材料は、イオンソースアセンブリ108のソースハウジング142に接続された引出し電極116などの構成要素を被覆し得る。このことは、結果として、これらの電極がチャージアップし始め、静電特性を不利に変化させて、これらの電極上の電荷を増大させる。これは、これらの電極のグリッチまたはアークと一般に呼ばれる挙動を引き起こす。上記の増大した電荷が他の構成要素および/または接地へのアークとなるためである。極端な場合には、電源の動作が変更され、歪められる可能性がある。これは、予測不可能なビーム挙動を引き起こし、これらの構成要素の洗浄のための頻繁な予防保全とビーム電流の減少につながる。更に、これらの材料からのフレークおよび他の残留物が、イオンソースアセンブリ108およびソースハウジング142内だけでなくアークチャンバ110内にも形成され、これにより、その動作特性を変化させ、頻繁に洗浄することになる。
【0030】
一態様によれば、本開示は、原子状アルミニウムイオンを生成するためにヨウ化アルミニウム(III)(AlI3)を使用し、それにより、前述の絶縁材料、フレークなどが生成も蓄積もせず、それゆえに、ソースおよび電極の寿命を延ばし、より安定したイオンビーム動作を発生させ、実質的により高いビーム電流を可能にすることを企図している。したがって、本開示は、ヨウ化アルミニウム(III)(AlI3)固体ソース材料から単原子アルミニウムイオンを生成し、現在の技術よりも改善されたソース寿命、ビーム電流、および動作特性を用いて、室温から1000℃の範囲の温度で炭化ケイ素、シリコン、または他の基板を電気的にドーピングする。
【0031】
別の例では、種々のイオン注入プロセスが、ハロゲン系ド-パントガスまたはBF3、GeF4、SiF4などの化合物を利用し得る。これらの化合物がアークチャンバ110内で分解されると、結果として発生するフッ素副生成物は、イオンソースおよびビームライン全体の安定性および寿命に有害な影響を及ぼす可能性がある。これは、上記フッ素副産物が、高度に電気陰性であり、イオンソースおよび引出し電極アセンブリを構成する種々の耐熱金属、グラファイトおよびセラミック成分と容易に反応するためである。
【0032】
ヨウ化アルミニウム(III)(AlI3)を出発材料(例えば、気化器122に供給される気化材料120)としてイオンソースアセンブリ108に使用する場合、結果として生じる副生成物(例えば、ヨウ素)は、ソースハウジング142内の様々な構成要素を絶縁コーティングで被覆してしまう可能性がある。絶縁コーティングは、例えば、高電圧場付近にある場合、その後に充放電し得る。充放電する場合、イオンビーム114は一般的に、非常に不安定になり得、その結果、時間が経つにつれ、保全、洗浄、または交換のために、製造環境からイオンソースアセンブリ108などの構成要素を取り外すことが必要となり得る。このようなドーパント副生成物の悪影響を軽減するために、水素共ガス(hydrogen co-gas)がアークチャンバ110に導入され得る。それにより、水素共ガスは、フッ素と反応してHFまたはH2Fを形成し、その結果、ハロゲンサイクルを排除する。ヨウ素の場合、水素反応は、一般的に、イオンソースから安全に排気することができる揮発性ガスを形成する。
【0033】
例えば、イオンソースにおいて、共ガスとしての水素と共に四フッ化ゲルマニウム(GeF4)を使用すると、以下の反応が起こり得る:
4GeF4 + 2H2 + 2W → 4Ge+ + +2WF6 + 4HF (g) ... (1)
および
2WF6 (g) + 6H2 (g) → 2W (s) + 12HF (g) ... (2)。
【0034】
共ガスとしての水素を用いずにGeF4を使用すると、以下の反応が起こり得る:
6GeF4 + 4W → 6Ge + +4WF6 ... (3)
および
4WF6 (g) → 4W (s) + 24F・ (g) ... (4)。
【0035】
式(4)の結果は、一般的に、熱的に不安定であり、元素タングステン(W)に戻る分解、およびプラズマに戻るF・の放出が発生し得る。
【0036】
共ガスとしての水素と共にヨウ化アルミニウム(III)AlI3を使用すると、以下の反応が起こり得る:
AlI3 + H2 + H2O → Al (s) + 3HI (g) + OH ... (5)。
【0037】
式(5)における水(H2O)は、例えば、チャンバウェル内の湿気から生じる。例えば、ヨウ化物および水素からの反応速度(kinetics)は、形成と同時に連続的にポンプで排気される揮発性ガス副生成物(HI)を形成した後、全体のエネルギーを減少させるので、好ましい。
【0038】
イオンソースアセンブリ108用(例えば、ソースハウジング142に供給される)またはアークチャンバ110用に水素ガスを供給または生成するいくつかの方法が考えられる。例えば、水素を含有する高圧ボトルがガスソースとして用いられ得る。それにより、高圧ボトルは、イオンソースアセンブリ108に流体接続され得る。このような例では、大量のガスの放出に関連する重大な故障に備えて、大量のガスが放出されるのを防止するために、ガスソースの出力に小さなオリフィスが利用される。イオンソースアセンブリ108またはアークチャンバ110に水素ガスを供給するための別の代替例は、低圧ボトルを利用する安全供給システム(SDS)として機能する真空作動ボトルを備え得る。それにより、イオンソースへのガス供給ラインは真空下にある。
【0039】
イオンソースアセンブリ108またはアークチャンバ110用に水素ガスを供給する更に別の代替例は、水素発生装置144を備え得る。例えば、水は、直列に接続された一つまたは複数の電解セルを使用して解離され得る。各電解セルは、アノード電極(例えば、酸素生成用)、カソード電極(例えば、水素生成用)、およびダイアフラム(例えば、酸素および水素の分離用)を備える。貯槽(reservoir)は、例えば、プロセスに必要とされる水素のみを十分に貯蔵するように構成され得る。それによって、水素発生装置144は、高圧水素ボトルの存在が懸念となる用途に対する安全な代替手段とされる。
【0040】
本開示は、ターミナル102に関連するガスボックス146内に水素発生装置144を設けることを企図している。それにより、ガスボックスは、イオンソースアセンブリ108の抽出電位となる(例えば、ガスボックスはイオンソースと同じ高電位または抽出電圧となる)。また、水素発生装置の出力は、共ガスとして使用されるように、導電性チューブ148(例えば、ステンレス鋼管)を用いてイオンソース内に直接配管されることが可能となる。このように、ガスボックス146の安全構成および格納構成が利用され得る。それにより、高電圧ギャップに非導電性チューブを橋かけする(bridging)懸念を回避することができる。例えば、非導電性チューブは、容易に損傷され得る。従って、非導電性チューブは、イオンソースアセンブリ108の外部近傍において、可燃性水素および/または毒性ドーパントを放出する可能性がある。ガスボックス146は、例えば、
図2に示されるターミナル102内の筐体であり、イオンソースアセンブリ108に接続される。それにより、注入に関連する様々なガスを含む加圧ガスボトルが配置される。水素発生装置144を(一例では、すでに接地から上昇した電圧の)ガスボックス146内に配置することによって、ガスボックス筐体の格納態様および安全態様を利用することができる。これにより、ガス供給配管を含めて重複した設計/ハードウェアを回避することができる。
【0041】
従来、ガスボックスは、約1keV~60keVの範囲にあり得る抽出電位(例えば、接地電位から上昇した電位)に維持される。従来、イオンソース用の水素共ガスを生成するための水素発生装置(図示しない)を実装する際、水素発生装置は、独立型の構成要素として、ターミナル外部に接地電位で床に置かれている。このような接地電位では、独立型の水素発生装置は、イオンソースよりも著しく低い電位となる可能性がある。そのため、ガスボックスにガスを移送する目的で、ポリエチレン(例えば、Poly-Flo(登録商標))またはテフロン(登録商標)チューブのような非導電性チューブが、流量コントローラに接続するために、接地とターミナルとの間の高電圧ギャップを超えるために利用されてきた。流量コントローラは、水素ガスをイオンソース自体に流すものである。しかしながら、高電圧ギャップを超えるための非導電性チューブのそのような使用は、躓く危険(trip hazard)になるとともに、爆発する可能性がある水素ガスを近くの環境に漏らす可能性があるなど、種々の有害な欠点を有することが、現在認識されている。
【0042】
したがって、本開示の一つの例示的な態様によれば、水素発生装置144は、従来のガスボトルがガスボックス146内に通常置かれるスロット内に設けられ、このスロット内に収まるサイズにされる。したがって、様々な安全構成が設けられる。それにより、水素ガスは、イオンソースアセンブリと同じ電位で、イオンソースアセンブリ108に注入され得る。ガスボックス146は、例えば、複数の電気絶縁体150上に載っている。それによって、ガスボックスとイオンソースアセンブリ108用各種コントローラ(図示せず)とが、イオンソースと同じ電位となる一方、ターミナル102のターミナルハウジング152から電気的に絶縁される。従って、水素発生装置144をガスボックス146内に配置することによって、水素発生装置とイオンソース108との間に電圧降下が不在となる。従って、ガスボックス146内の水素発生装置144からイオンソース108への流体接続は、ステンレス鋼チューブなどの導電性チューブ148を有利に含むことができ、それによって、導電性チューブは、水素発生装置とイオンソース108との間に強くて安全な流体接続を実現する。
【0043】
本開示は、接地基準よりも高く上昇した電圧の水素ガスを有利に実現する。そのため、低流量の可燃性ガスに伴うスパークを緩和するために種々の格納装置および制御などを重複させる必要がない。代替的に高圧水素ボトルをガスボックス146内に置くことができるが、このような可燃性ガスの高圧ボトルの配置は、ボトルの落下またはボトル上の遮断弁の破損による破滅的な故障につながり得る。従って、水素の制御不能な漏洩につながる可能性がある。更に、イオン注入システムを収容する建物内への輸送は、そのような高圧ボトルの実装を管理する規制などの様々な理由で問題となり得る。
【0044】
本開示の水素発生装置144は、例えば、約10sccmの速度で水素ガスを流すように構成し得る。一例では、水素発生装置144は、約5psi以下の比較的小さい貯蔵容量を有する。そのため、水素ガスは、上述の高圧ガスボトルに典型的に連想される高圧力(例えば、2000psi)で貯蔵されない。更に、水素発生装置144は、イオンソース108と同じ電位(例えば、電気的接地より高く上昇した電圧)に維持される。この電位は、接地電位より約1keV~60keV高くなり得る。
【0045】
したがって、本開示は、イオン注入システム101用の
図2および
図3に示すターミナルシステム154(例えば、
図1のターミナル102)であって、イオンソースアセンブリ108と同じ電位にある水素発生装置144を備えるターミナルシステム154を提供する。ターミナルシステム154は、例えば、
図2および
図3に示すように、複数の絶縁スタンドオフ(insulating standoffs)156によってアース接地から電気的に絶縁され得る。ターミナルシステム154は、絶縁スタンドオフ156を介してアース接地から電気的に絶縁されているので、ターミナルシステムは、接地基準(例えば、リターン基準(return reference))とみなすことができる。それによって、ターミナルシステム154は、約-300keV程度の種々の電圧にバイアスされることができる。ガスボックス146およびイオンソースアセンブリ108は、例えば、上述した導電性チューブ148と接続される。従って、ガスボックス146およびイオンソースアセンブリ108は、互いに同じ電位となる。それによって、ガスボックスおよびイオンソースの両方が、複数の絶縁スタンドオフ156によってアース接地から更に絶縁されつつ、ターミナルハウジング152よりも高く上昇した電位(例えば、60keV)となり得る。これにより、接地電位より360keV高いガスボックスおよびイオンソースが実現される。
【0046】
本発明は、一つ以上の特定の実施形態に関して図示および説明されたが、上述の実施形態は、本発明のいくつかの実施形態の実施の例に過ぎず、本発明の出願は、これらの実施形態に限定されるものではないことに留意されなければならない。特に、上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路など)によって実行される様々な機能に関して、当該構成要素を説明するために使用されるターム(「手段」(means)への言及を含む)は、特段の指定がない限り、本発明に示されている例示的な実施形態において、特定の機能を実行する開示された構造と構造的に同等ではなくとも、説明された構成要素の上記機能を実行する(すなわち、機能的に同等である)任意の構成要素に対応することが意図されている。加えて、本発明の特定の構成は、複数の実施形態のうちの一つのみに関して開示されたが、そのような構成は任意の所与または特定の利用に関して、望ましくかつ有益であるように、他の実施形態の一つ以上の他の構成と組み合わせることができる。従って、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本開示の複数の態様に係る、水素発生装置を利用する例示的な真空システムを示すブロック図である。
【
図2】本開示の別の態様に係る、イオンソースとガスボックスとを備える例示的なターミナルを示す斜視図である。
【
図3】本開示の別の態様に係る、イオンソースとガスボックスとを備える例示的なターミナルを示す平面図である。