(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】1,2,6-オキソジチアン-2,2,6,6-テトラオキシドを含む二添加剤電解質システムに基づく新規な電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230601BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20230601BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230601BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0525
H01M10/0569
(21)【出願番号】P 2020548717
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 CA2018000163
(87)【国際公開番号】W WO2019173891
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-08-12
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダーン,ジェフリー,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】マー,シャオメイ
(72)【発明者】
【氏名】グレーザー,ステファン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ロバート,スコット
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-199172(JP,A)
【文献】特開2010-225522(JP,A)
【文献】特開2012-054156(JP,A)
【文献】特開2017-157327(JP,A)
【文献】特開2010-192326(JP,A)
【文献】特開2009-038018(JP,A)
【文献】特開2013-134859(JP,A)
【文献】特開2016-081603(JP,A)
【文献】特開2010-165542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0525
H01M 10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池であって、
陰極と、
正極と、
第1の非水性溶媒に溶解したリチウムイオン、及び、添加剤混合物から本質的に成る非水性電解質であって、前記添加剤混合物は、
フルオロエチレンカーボネート、LiPO
2F
2、ビニレンカーボネート及びそれらの組み合わせから成る群から選択される第1の作動型添加剤、及び、
下記式(I)
を有する1,2,6-オキソジチアン-2,2,6,6-テトラオキシドである第2の作動型添加剤から本質的に成る、非水性電解質と、
を備え
、
前記第1の作動型添加剤の濃度が、0.25重量%~6重量%の範囲であり、前記第2の作動型添加剤の濃度が、0.25重量%~5重量%の範囲であり、
前記非水性溶媒が、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの少なくとも1つから選択され、
前記リチウムイオン電池で産生されるガスの容量が、第1の作動型添加剤のみを含むリチウムイオン電池で産生されるガスの容量に匹敵し、
前記リチウムイオン電池が、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの200サイクル後に初期容量の少なくとも95%維持率を有する、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記第1の作動型添加剤の濃度が少なくとも1重量%であり、前記第2の作動型添加剤の濃度が少なくとも1重量%である、請求項
1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記第1の作動型添加剤がフルオロエチレンカーボネートである、請求項
2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記第1の作動型添加剤がビニレンカーボネートである、請求項
2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記第1の作動型添加剤がLiPO
2F
2である、請求項
2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記リチウムイオン電池が、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0Vと4.3Vとの間の800サイクル後に初期容量の少なくとも95%維持率を有する、請求項
1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
充電式バッテリーを搭載した電気自動車であって、
駆動モータと、
ギアボックスと、
エレクトロニクスと、
請求項
1に記載のリチウムイオン電池と、を備える電気自動車。
【請求項8】
前記第1の作動型添加剤の濃度が少なくとも1重量%であり、前記第2の作動型添加剤の濃度が少なくとも1重量%である、請求項
7に記載の電気自動車。
【請求項9】
前記第1の作動型添加剤がフルオロエチレンカーボネートである、請求項
8に記載の電気自動車。
【請求項10】
前記第1の作動型添加剤がビニレンカーボネートである、請求項
8に記載の電気自動車。
【請求項11】
前記第1の作動型添加剤がLiPO
2F
2である、請求項
8に記載の電気自動車。
【請求項12】
前記電池システムが、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの800サイクル後に初期容量の少なくとも95%維持率を有する、請求項
7に記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電式電池システムに関し、より具体的には、充電式リチウムイオン電池システムの特性を改善するための、作動型電解質添加剤及び電極を含むかかるシステムの化学に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式電池は、電気自動車及びグリッドストレージ(例えば、停電時のバックアップ電源用、マイクログリッドの一部として等)の畜エネルギーシステムに不可欠なコンポーネントである。用途に応じて、畜エネルギーシステムには異なる特性が必要である。特定の用途に適したシステムを作り出すには、電池システムの化学的性質のトレードオフを行う必要がある場合がある。例えば、自動車の用途、特に電気自動車の用途では、急速に充放電する性能がシステムの重要な特性である。電気自動車の所有者は、往来で素早く加速する必要がある場合があり、これにはシステムを素早く放電させる性能が必要である。更に、急速充放電はシステムに要求を課すので、システムのコンポーネントはまた、かかる動作条件下で十分な寿命を提供するように選択される必要があり得る。
【0003】
電解質添加剤は作動型(operative)であり、リチウムイオン系電池の寿命及び性能を向上させることが示されている。例えば、非特許文献1には、5つの独自の公開されていない電解質添加剤が、添加剤を含まない又は1種類しか含んでいない電解質系と比較してサイクル寿命を延ばすことが示された。他の研究では、特許文献1に記載されているように、3種類又は4種類の添加剤を含有する電解質システムの性能向上に焦点を当てている。しかしながら、通常、研究者らは、電解質と特定の正極及び負極とが相乗的に一緒になって作用することを可能にする異なる添加剤間の相互作用を理解していない。そのため、特定のシステムの添加剤ブレンドの組成は試行錯誤に基づくことが多く、事前に予測することはできない。
【0004】
以前の研究では、リチウムイオン電池システムに組み合わせてグリッド又は自動車の用途に十分な特性を持つ堅牢なシステムを生成できる二添加剤電解質システムを特定していない。特許文献1で検討されているように、研究された二添加剤システム(例えば、2%VC+1%アリルメタンスルホネート及び2%PES+1%TTSPi)は、通常、3種及び4種の添加剤電解質システムよりも性能が劣っていた。(例えば、特許文献1の表1及び表2を参照されたい。)特許文献1は、堅牢なリチウムイオン電池システムを製造するために、0.25重量%~3重量%の濃度の第3の化合物、多くの場合、トリス(-トリメチル-シリル)-ホスフェート(TTSP)又はトリス(-トリメチル-シリル)-ホスファイト(TTSPi)が必要であったことを開示している。(例えば、特許文献1の段落72を参照されたい。)しかしながら、高価になる可能性があり、製造規模でLiイオン電池内に添加剤を含めることが難しいため、添加剤が少ないものを含めて、より単純でありながら効果的な電解質が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この開示は、種々の畜エネルギー用途、例えば車両及びグリッド蓄電で使用され得る、作動型電解質添加剤がより少ない新規の電池システムを包含する。より具体的には、この開示は、Liイオン電池の性能及び寿命を向上させ、同時に、より多くの添加剤に頼っている他のシステムの費用を削減する二添加剤電解質システムを含む。この開示はまた、開示される二添加剤電解質システムと連携して更なる系統的な向上を提供する有効な正極及び負極を開示する。
【0006】
1,2,6-オキソジチアン-2,2,6,6-テトラオキシド(ODTO)と組み合わされたビニレンカーボネート(VC)を含む作動型添加剤電解質システムが開示される。ODTOは次の式(I)を有する。
【0007】
ODTOと組み合わされたフルオロエチレンカーボネート(FEC)及びODTOと組み合わされたLiPO2F2(ここではLFOと呼ばれる)も開示されている。VC、LFO及びVCとODTOの少なくとも2つの組み合わせを含むシステムも開示される。
【0008】
VC及びFECは同様の改善を提供する(また同様に機能すると考えられている)ため、VCとFECとの混合物を単一の有効な電解質と見なすことができる。すなわち、別の開示された二作動型添加剤電解質システムは、ODTOと組み合わせたVC及びFECとの混合物を含む。より大きな電池システム(電解質、電解質溶媒、正極及び負極を含む)の一部として使用する場合、これらの二作動型添加剤電解質システムは、車両及びグリッドの用途を含む畜エネルギー用途に望ましい特性を生み出す。加えて、LFOは主要な添加剤として効果的に作用し、FEC及び/又はVCと組み合わせて、LFOによって更に改善され得る添加剤システムを作ることができる。
【0009】
より具体的には、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)正極、黒鉛負極、酢酸メチル(MA)を含んでもよい有機溶媒又は非水性溶媒に溶解したリチウム塩、及び2種類の添加剤は、種々の用途に望ましい特性を持つ電池システムを形成することができる。電解質溶媒は、次の溶媒を単独又は組み合わせて使用することができる:エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、酢酸メチル、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、別のカーボネート溶媒(環状又は非環状)、別の有機溶媒、及び/又は別の非水性溶媒。溶媒は、添加剤よりも高い、通常6重量%超の濃度で存在する。溶媒を、開示されている二添加剤ペアと組み合わせて(VCとODTO、FECとODTO、LFOとODTO、VC及びFECの混合物とODTO、又は別の組み合わせ等)、種々の用途に望ましい特性を持つ電池システムを形成することができる。正極は、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)、又は別のコーティング材等の材料でコーティングされてもよい。更に、コスト節約のため、負極は天然黒鉛から形成されてもよいが、価格設定構造によっては、特定の例では、人造黒鉛は天然黒鉛よりも安価である。
【0010】
本明細書における開示は、二添加剤電解質システムと選択された電極の共生的性質を示す実験データによって支持されている。例示的な電池システムは、2つの添加剤(例えば、FEC、LFO又はVC、ODTO)、黒鉛負極(天然起源の黒鉛又は人造の合成黒鉛のいずれか)、NMC正極、リチウム電解質(例えば、化学組成LiPF6を有する六フッ化リン酸リチウム等のリチウム塩から形成される)、及び有機溶媒又は非水性溶媒を含む。更なる実施形態では、第1の添加剤は、VC、LFO及びFECの少なくとも2つの組み合わせである。
【0011】
この出願の例示的な実施形態は、リチウム塩と、非水性溶媒と、ビニレンカーボネート、LiPO
2F
2(LFO)、フルオロエチレンカーボネート又はそれらの任意の組み合わせから選択される第1の作動型添加剤、及び下記式(I)
を有する1,2,6-オキソジチアン-2,2,6,6-テトラオキシドの第2の作動型添加剤を含む混合物と、を含むリチウムイオン電池用非水性電解質である。
【0012】
別の例示的な実施形態では、第1の作動型添加剤の濃度は、0.25重量%~6重量%の範囲である。
【0013】
別の例示的な実施形態では、第2の作動型添加剤の濃度は、0.25重量%~5重量%の範囲である。
【0014】
別の例示的な実施形態では、第1の作動型添加剤の濃度は2重量%(VC又はFECの場合)及び1重量%(LFOの場合)であり、第2の作動型添加剤の濃度は1重量%である。
【0015】
別の例示的な実施形態では、第1の作動型添加剤はフルオロエチレンカーボネートである。
【0016】
別の例示的な実施形態では、第1の作動型添加剤はビニレンカーボネートである。
【0017】
別の例示的な実施形態では、第1の作動型添加剤はLiPO2F2である。
【0018】
別の例示的な実施形態では、非水性溶媒はカーボネート溶媒である。
【0019】
別の例示的な実施形態では、非水性溶媒は、エチレンカーボネート、及びエチルメチルカーボネートから選択される少なくとも1つである。
【0020】
別の例示的な実施形態では、電解質は、第2の非水性溶媒を更に含む。
【0021】
この出願の別の例示的な実施形態は、陰極と、正極と、第1の非水性溶媒に溶解したリチウムイオン、並びにフルオロエチレンカーボネート、LiPO
2F
2及びビニレンカーボネート又はそれらの任意の組み合わせから選択される第1の作動型添加剤と、下記式(I)
を有する1,2,6-オキソジチアン-2,2,6,6-テトラオキシドの第2の作動型添加剤との添加剤混合物を含む非水性電解質と、を備えるリチウムイオン電池である。
【0022】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池で産生されるガスの容量は、第1の作動型添加剤のみを含むリチウムイオン電池で産生されるガスの用量に匹敵する。
【0023】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの間の200サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0024】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの間の300サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0025】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの間の400サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0026】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの間の500サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0027】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの間の600サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0028】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの間の700サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0029】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの800サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0030】
別の例示的な実施形態では、リチウムイオン電池は、40℃でC/3CCCVの充電率で3.0V~4.3Vの900サイクル後に初期容量の95%維持率を有する。
【0031】
本出願の別の例示的な実施形態は、充電式電池と、駆動モータと、ギアボックスと、電子装置と、本明細書に記載の電池システムとを搭載した電気自動車である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】蓄電池システムを搭載した車両の概略図である。
【0033】
【0034】
【
図3】リチウムイオン電池セルシステムの概略図である。
【0035】
【
図4A-4B】異なるタイプのセルにおける様々な電解質組成物のパッシベーション効果を示す。
【
図4C-4D】異なるタイプのセルにおける様々な電解質組成物のパッシベーション効果を示す。
【
図4E】異なるタイプのセルにおける様々な電解質組成物のパッシベーション効果を示す。
【0036】
図4Aは、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)(対照)、及び2%VC、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、及び1%LFO(LiPO
2F
2)+1%ODTOを含むEC:EMCを有する電解質を含有するコーティングされていないNMC532/人造黒鉛セルの化成サイクル中のdQ/dV対Vを示すことにより、パッシベーション効果を図示する。
【0037】
図4Bは、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)(対照)、及び2%VC、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、及び1%LFO+1%ODTOを含むEC:EMCを有する電解質を含有するコーティングされたNMC532/人造黒鉛セルの化成サイクル中のdQ/dV対Vを示すことにより、パッシベーション効果を図示する。
【0038】
図4Cは、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、及び2%VCを有する電解質を含有するAl
2O
3コーティングされたNMC622/人造黒鉛セルの化成サイクル中のdQ/dV対Vを示すことにより、パッシベーション効果を図示する。
【0039】
図4Dは、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)(対照)、及び1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、及び2%VCを含むEC:EMCを有する電解質を含有する、アルミニウム、フッ素及び酸素(AFO)の多結晶コーティング材でコーティングされたNMC622/人造黒鉛セルの化成サイクル中のdQ/dV対Vを示すことにより、パッシベーション効果を図示する。
【0040】
図4Eは、2%VC、2%VC+1%ODTO、及び2%VC+3%ODTOを含む電解質を含有するリチウムイオン電池セルの化成サイクル中のdQ/dV対Vを示すことによるパッシベーション効果を説明する。
【0041】
【
図5A-5B】様々な電解質組成物を有する異なるタイプのセルの電気化学インピーダンス分光法(EIS:Electrochemical Impedance Spectroscopy)スペクトルである。
【
図5C-5D】様々な電解質組成物を有する異なるタイプのセルの電気化学インピーダンス分光法(EIS:Electrochemical Impedance Spectroscopy)スペクトルである。
【
図5E】様々な電解質組成物を有する異なるタイプのセルの電気化学インピーダンス分光法(EIS:Electrochemical Impedance Spectroscopy)スペクトルである。
【0042】
図5Aは、コーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC、及び1%LFOを含む異なる電解質システムのEISスペクトルである。
【0043】
図5Bは、コーティングされたNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO+1%VC、1%LFO+1%ODTO+1%FEC、1%LFO+1%ODTO+1%TTSPi、2%VC、2%FEC、及び1%LFOを含む異なる電解質システムのEISスペクトルである。
【0044】
図5Cは、Al
2O
3コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む異なる電解質システムのEISスペクトルである。
【0045】
図5Dは、AFOコーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む異なる電解質システムのEISスペクトルである。
【0046】
図5Eは、リチウムイオン電池セルにおける2%VC、2%VC+1%ODTO、2%FEC+3%ODTOを含む異なる電解質システムのEISスペクトルである。
【0047】
【
図6A】化成サイクル後に測定された様々な電解質組成を有する異なるタイプのセルの電荷移動抵抗(R
ct)を図示する。
【
図6B】化成サイクル後に測定された様々な電解質組成を有する異なるタイプのセルの電荷移動抵抗(R
ct)を図示する。
【
図6C】化成サイクル後に測定された様々な電解質組成を有する異なるタイプのセルの電荷移動抵抗(R
ct)を図示する。
【
図6D】化成サイクル後に測定された様々な電解質組成を有する異なるタイプのセルの電荷移動抵抗(R
ct)を図示する。
【
図6E】化成サイクル後に測定された様々な電解質組成を有する異なるタイプのセルの電荷移動抵抗(R
ct)を図示する。
【0048】
図6Aは、コーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC、及び1%LFOを含む異なる電解質システムのR
ctを図示する。
【0049】
図6Bは、コーティングされたNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC、及び1%LFOを含む異なる電解質システムのR
ctを図示する。
【0050】
図6Cは、Al
2O
3コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む異なる電解質システムのR
ctを図示する。
【0051】
図6Dは、コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC及び2%FECを含む異なる電解質システムのR
ctを図示する。
【0052】
図6Eは、コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたリチウムイオン電池セル内の2%VC、2%VC+1%ODTO、及び2%VC+3%ODTOを含む異なる電解質システムのR
ctを図示する。
【0053】
【
図7A】異なる電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約する。
【
図7B】異なる電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約する。
【
図7C】異なる電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約する。
【
図7D】異なる電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約する。
【
図7E】異なる電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約する。
【0054】
図7Aは、コーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC、及び1%LFOを含む電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約するプロットである。
【0055】
図7Bは、コーティングされたNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC、及び1%LFOを含む電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約するプロットである。
【0056】
図7Cは、Al
2O
3コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約するプロットである。
【0057】
図7Dは、AFOコーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む電解質システムについてセル化成中に生成された化成ガスの容量の実験データを要約するプロットである。
【0058】
図7Eは、リチウムイオン電池セルにおいて、2%VC、2%VC+1%ODTO、及び2%VC+3%ODTOを含む電解質システムについてセル化成中に生成される化成ガスの容量の実験データを要約するプロットである。
【0059】
【
図8A-8B】様々な電解質システムを備えた異なるNMC622/人造黒鉛セルの高温蓄電時の電圧対時間を図示する。
【0060】
図8Aは、Al
2O
3コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、及び1%LFO+1%ODTOを含む異なる電解質システムの高温蓄電時の電圧対時間を図示する。
【0061】
図8Bは、コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、及び1%LFO+1%ODTOを含む異なる電解質システムの高温蓄電時の電圧対時間を図示する。
【0062】
【
図9】
図9は、リチウムイオン電池セル内に様々な電解質添加剤システムを含む実験における寄生熱流を図示する。
【0063】
【
図10A】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10B】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10C】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10D】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10E】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10F】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10G】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10H】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10I】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10J】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10K】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10L-10M】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10N】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10O】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10P】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10Q】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10R】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10S】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10T】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10U】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10V】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【
図10W】様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート(fade rate))、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【0064】
図10A~
図10Iは、コーティングされたNMC532正極及び人造黒鉛負極を使用して様々な添加剤電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む、実験データを図示する。
【0065】
図10J~
図10Kは、コーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極を使用して様々な電解質システムのサイクリング実験及び超高精度サイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【0066】
図10L~
図10Rは、Al
2O
3コーティングされた及びAFOコーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を使用して様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【0067】
図10Sは、リチウムイオン電池セルを使用して様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【0068】
図10Tは、リチウムイオン電池セルを使用して様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【0069】
図10Uは、リチウムイオン電池セルを使用して様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、充電エンドポイント容量、クーロン効率、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む実験データを図示する。
【0070】
図10Vは、コーティングされた及びコーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極、並びにAl
2O
3コーティングされた及びAFOコーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を使用して様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む、実験データを図示する。
【0071】
図10Wは、コーティングされた及びコーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極、並びにAl
2O
3コーティングされた及びAFOコーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を使用して様々な電解質システムのサイクリング実験中に収集された、放電容量、正規化放電容量(又はフェードレート)、及びΔV(平均充電電圧と平均放電電圧の差)を含む、実験データを図示する。
【0072】
【
図11】3.0V~4.3VのサイクリングでコーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極を使用した、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む電解質システムのサイクル数に対する時間当たりのクーロン非効率性、サイクル数に対する時間当たりの部分充電エンドポイント容量のずれ、及びサイクル数に対する時間当たりの部分容量フェードを図示する。
【0073】
【
図12】3.0V~4.3VのサイクリングでコーティングされたNMC532正極及び人造黒鉛負極を使用した、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC、及び1%LFOを含む電解質システムのサイクル数に対する時間当たりのクーロン非効率性、サイクル数に対する時間当たりの部分充電エンドポイント容量のずれ、及びサイクル数に対する時間当たりの部分容量フェードを図示する。
【0074】
【
図13】3.0V~4.3VのサイクリングでAl
2O
3コーティングされたNMC622A正極及び人造黒鉛負極を使用した、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む電解質システムのサイクル数に対する時間当たりのクーロン非効率性、サイクル数に対する時間当たりの部分充電エンドポイント容量のずれ、及びサイクル数に対する時間当たりの部分容量フェードを図示する。
【0075】
【
図14】3.0V~4.3VのサイクリングでAFOコーティングされたNMC622B正極と人造黒鉛負極を使用した、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、及び2%FECを含む電解質システムのサイクル数に対する時間当たりのクーロン非効率性、サイクル数に対する時間当たりの部分充電エンドポイント容量のずれ、及びサイクル数に対する時間当たりの部分容量フェードを図示する。
【0076】
【
図15】リチウムイオン電池セル内に様々な電解質添加剤システムを含む実験におけるサイクル当たりの平均寄生熱流を図示する。
【0077】
【
図16】リチウムイオン電池セル内に様々な電解質添加剤システムを含む実験における経時的な電圧の変化及びガス容量を図示する。
【0078】
【
図17】リチウムイオン電池セル内に様々な電解質添加剤システムを含む実験における寄生熱流を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1は、電池式電気自動車(電気自動車)100の基本的なコンポーネントを示す。電気自動車100は、少なくとも1つの駆動モータ(牽引モータ)102A及び/又は102B、対応する駆動モータ102A及び/又は102Bに結合された少なくとも1つのギアボックス104A及び/又は104B、電池セル106並びに電子機器108を備える。一般に、電池セル106は、電気自動車100の電子機器に動力を供給し、駆動モータ102A及び/又は102Bを使用して電気自動車100を推進するために電力を供給する。電気自動車100は、本明細書には記載されていないが当業者に知られている他の多数のコンポーネントを備える。
図1の電気自動車100の構成は4つの車輪を有するように示されているが、異なる電気自動車は4つより少ないか又は多い車輪を有し得る。更に他のタイプの車両の中でも、自動二輪車、航空機、トラック、ボート、列車エンジンを含む、異なるタイプの電気自動車100は、本明細書で説明される本発明の概念を組み込むことができる。本開示の実施形態を用いて作製される特定の部品を車両100で使用することができる。
【0080】
図2は、様々なコンポーネントを示す例示的な畜エネルギーシステム200の概略図を示す。畜エネルギーシステム200は、通常、少なくとも基部202及び4つの側壁204(図には2つだけが示されている)を備えたモジュール式ハウジングを含む。モジュールハウジングは、一般に、収納された電池セル206から電気的に分離されている。これは、物理的な分離により、電気絶縁層により、モジュールハウジングとしての絶縁材料の選択により、それらの任意の組み合わせ、又は別の方法により起こる場合がある。基部202は、金属シートの上の電気絶縁層、又はポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、別のプラスチック、非導電性複合材若しくは絶縁炭素繊維等の非導電性/電気絶縁性材料であってもよい。側壁204はまた、絶縁層を備えてもよく、又はポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、別のプラスチック、非導電性複合材若しくは絶縁炭素繊維等の非導電性若しくは電気絶縁性の材料から形成されてもよい。1つ以上の相互接続層230は、電池セル206の上に配置することができ、上部プレート210は相互接続層230の上に配置される。上部プレート210は、単一のプレートであってもよく、複数のプレートから形成されていてもよい。
【0081】
個々の電池セル106及び206は、リチウムイオンを含有する電解質を含み、正極及び負極を備えたリチウムイオン電池セルであることが多い。
図3は、リチウムイオンセル300の概略図を示す。リチウムイオン350は、容器360内の電解質320全体に分散されている。容器360は、電池セルの一部であってもよい。リチウムイオン350は、正極330と負極340との間を移動する。セパレータ370は、負極と正極を分離する。回路310は、負極と正極を接続する。
【0082】
発明者らによる新たな研究より、グリッド及び電気自動車の用途で使用するための新規な電解質及び電池システムが特定された。これらのシステムは、1,2,6-オキソジチアン-2,2,6,6-テトラオキシド(ODTO)と組み合わせたビニレンカーボネート(VC)、ODTOと組み合わせたLiPO2F2及びODTOと組み合わせたフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む溶媒と電極とを組み合わせた二添加剤電解質システムに基づいている。これらの二添加剤電解質システムは、LNixMnyCozO2(一般にNMCと略記又はNMCxyz、ここで、x、y及びzはそれぞれニッケル、マンガン、コバルトのモル比である)の組成を持つリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物から作られた正極とペアになっている。特定の実施形態では、正極は、NMC111、NMC532、NMC811又はNMC622から形成される。特定の実施形態では、連続結晶格子(又は粗粒)のマイクロメートルサイズの面積を有する電極をもたらした単結晶のマイクロメートルサイズ側の粒子から形成されたNMC532正極は、一部には材料が原因となって、特に堅牢であることが示されており、また処理条件により、従来の材料及び処理条件を使用する場合よりも粒度が大きくなる。
【0083】
典型的な処理条件により、ナノメートルサイズの粒子がより大きなマイクロメートルサイズの凝集体に詰め込まれたNMC電極がもたらされ、ナノメートルスケールで粒界が作られる。粒界は、望ましい特性(例えば、電気的特性)を低下させる傾向があるという欠陥のため、一般に、粗粒の数を減らし、粒度を大きくすることが望ましい。処理により、マイクロメートルサイズのスケールでより大きなドメインを作ることができるため、NMC電極の粒界の数が減り、電気的特性が向上する。特性の向上により、より堅牢な電池システムがもたらされる。特定の実施形態では、他のNMC電極を処理して、より大きなドメインサイズ(マイクロメートルサイズスケール以上)、例えば、NMC111、NMC811、NMC622、又は別のNMC化合物を作って、より堅牢なシステムを作り出すことができる。
【0084】
正極は、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)、又は別のコーティング材等の材料でコーティングされてもよい。正極のコーティング材は、寄生反応、又はコーティングされた材料を含有するセルを劣化させる可能性のある別の現象等、正極での界面現象を減らすのに役立つ場合があるため、有利である。負極は、天然黒鉛、人造黒鉛、又は他の材料から作られてもよい。
【0085】
電解質は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸メチル、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、別のカーボネート溶媒(環状又は非環状)、別の有機溶媒、及び/又は別の非水性溶媒を含む有機又は非水性溶媒の組み合わせに溶解されたリチウム塩(LiPF6等)であってもよい。溶媒は、添加剤よりも高い濃度、通常5重量%超又は6重量%超で存在する。実験データを、EC:EMC:DMCを体積25:5:70(酢酸メチル(MA)の有無にかかわらず)で含む電解質溶媒を使用して生成されたが、これらの溶媒は、他のカーボネート溶媒、特に他の非水性溶媒の単なる例である。添加剤及び電極の影響を理解するために、EC及びEMCの溶媒を実験で使用して、試験したシステムを制御した。したがって、電解質システムは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、他のカーボネート溶媒(環状又は非環状)、他の有機溶媒、及び/又は別の非水性溶媒を含む他のカーボネート溶媒及び/又は他の非カーボネート溶媒を使用することができる。溶媒は、添加剤よりも高い濃度、通常5重量%超又は6重量%超で存在する。
【0086】
FEC+ODTOの二添加剤混合物では、FECの濃度は、好ましくは0.5重量%~6重量%であり、ODTOの濃度は、好ましくは0.25重量%~5重量%である。VC+ODTOの二添加剤混合物では、VCの濃度は、好ましくは0.5重量%~6重量%であり、ODTOの濃度は、好ましくは0.25重量%~5重量%である。LFO+ODTOの二添加剤混合物では、LFOの濃度は、好ましくは0.5重量%~1.5重量%であり、ODTOの濃度は、好ましくは0.25重量%~5重量%である。
【0087】
これらの特定の新たな電池システムは、畜エネルギー用途、また自動車用途(電気自動車内の畜エネルギーを含む)で使用でき、この用途では、充放電の速度、並びに急速に充放電するときの寿命が重要である。
【0088】
前実験の構成
電池システム自体は、本開示に従って別々にパッケージされてもよいが、実験構成は、通常、機械で作られた「密閉セル」を使用して、一般的な構成を使用する、二添加剤電解質システム及び正極及び負極に使用するための特定の材料を含む電池システムを系統的に評価する。本開示内で言及される全てのパーセントは、特に指定されない限り、重量パーセントである。当業者は、使用される添加剤の種類及び採用される濃度が、最も望ましく改善される特性、並びに作製されるリチウムイオン電池で使用される他のコンポーネント及び設計に依存し、この開示から明らかであることを理解する。
【0089】
密閉型電池セル
実験構成で使用されたNMC/黒鉛密閉セルは、添加剤を加えた溶媒中に1M LiPF6を含んでいた。電解質は、30%EC及び70%EMC中に1M LiPF6からなった。電解質成分の濃度は、MA及び/又はDMCを含むように修正することができる。この電解質に、添加剤成分を指定される重量パーセントで添加した。
【0090】
実験構成で使用した密閉型電池セルは、体積比25:5:70のEC、EMC、及びDMCに添加した1.2M LiPF6からなる電解質溶媒を含有した。この電解質に、添加剤成分を指定の重量パーセントで添加した。
【0091】
密閉型NMC/黒鉛セルは、特に指定のない限り、マイクロメートルサイズの粗粒のNMC532(単結晶NMC532と呼ばれることもある)で作られた正極、及び人造黒鉛で作られた負極を使用した。特定の電池システムを試験するため、標準NMC532(マイクロメートルサイズの粗粒のNMCよりも小さい粗粒)及びNMC622を含む他の正極、及び負極(天然黒鉛を含む)を使用した。
【0092】
電解液を充填する前に、密閉セルをヒートシール未満で切り開き、100℃で12時間真空乾燥して、残留水分を除去した。次いで、充填及び真空封止を行うためセルをすぐにアルゴンを充填したグローブボックスに移した後、電解液を充填した。充填後、セルを真空封止した。
【0093】
封止後、密閉セルを40.0+/-0.1℃の温度ボックスに入れ、1.5Vで24時間保持して、ウェッティングを完了させた。その後、密閉セルを化成プロセスに供した。特に明記しない限り、NMC/黒鉛セルの化成プロセスは、11mA(C/20)で4.2Vまで密閉セルを充電し、3.8Vまで放電することからなった。C/xは、セルに初期容量がある場合、選択されている電流でのセルの充電又は放電にかかる時間がx時間であることを示す。例えば、C/20は、充電又は放電に20時間かかることを示す。化成後、セルをグローブボックスに移して移動させ、切り開いて発生したガスを放出させ、再度真空封止して適切な実験を行った。
【0094】
サイクリング実験及び蓄電実験のための電池セルの化成プロセスは、密閉セルを40℃にてC/2で1時間充電すること、セルを60℃で22時間蓄電すること、セルを40℃にてC/2で4.2Vに充電すること、及び3.8Vに放電することからなった。化成後、セルをグローブボックスに移して移動させ、切り開いて発生したガスを放出させ、再度真空封止して適切な実験を行った。
【0095】
充電プロファイル及びin-situガス容量測定実験のための電池セルの化成プロセスは、セルをin-situガス測定機器に接続しながら、密閉セルを40℃にてC/20で4.2Vまで充電すること、40℃にてC/20で3.8V放電することからなった。
【0096】
パッシベーション効果
異なるタイプのセルにおける様々な電解質組成物のパッシベーション効果を
図4A~
図4Eに示す。
図4A~
図4Eのデータからわかるように、ODTOは、5つの異なるタイプのセルにおいて同様のパッシベーション効果の影響を示す。第1及び第2のセル(
図4A~
図4B)では、コーティングされていないNMC532正極(
図4A)及び人造黒鉛電極を備えるセル、並びにコーティングしたNMC532正極(
図4B)及び人造黒鉛電極を備えるセルにおけるエチレンカーボネート(EC);エチルメチルカーボネート(EMC)(対照)、2%VC、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、及び1%LFO+1%ODTOのパッシベーション効果の比較を示す。第3及び第4のセル(
図4C~
図4D)では、Al
2O
3コーティングNMC622/人造黒鉛電極を備えたセル(
図4C)及びAFOコーティングNMC622電極を備えたセル(
図4D)における2%VC、1%LFO+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、2%VC+1%ODTO、1%ODTO、3%ODTO及び5%ODTOのパッシベーション効果を示す。そして、第5のセル(
図4E)では、EC:EMC:DMC、2%VC、2%VC+1%ODTO、2%VC+3%ODTOのパッシベーション効果を示す。およそ2.3Vのピークは、1%ODTOが存在する場合のODTOの減少に対応する(パッシベーションピーク)。1%ODTO添加剤の効果は、Al
2O
3コーティングされたNMC622正極、AFOコーティングされたNMC622正極、及び電池セルに見られる電極のそれぞれのデータに関する
図4C~
図4Eの同様のピークによって実証されるように、使用される正極のタイプに依存しない。
【0097】
セルインピーダンス
本明細書に開示される二添加剤電解質システム及び新規の電池システムは、低いセルインピーダンスを有する。セルインピーダンスはセルのエネルギー効率を低下させるため、セルインピーダンスを最小限に抑えることが望ましい。逆に、インピーダンスが低いと、可能な充電率が高くなり、エネルギー効率が高くなる。
【0098】
セルインピーダンスを、電気化学インピーダンス分光法(EIS)を使用して測定した。10.0+/-0.1℃の温度ボックスに移動する前に、セルを3.80Vに充電又は放電した。ACインピーダンススペクトルを、10.0+/-0.1℃で10mVの信号振幅で100kHzから10mHzまで10分当たり10ポイントで収集した。測定されたACインピーダンスから電荷移動抵抗(Rct)を計算し、プロットした。
【0099】
特定の実施形態では、各添加剤の濃度が約0.25%~6%である二添加剤電解質システムが、電池システムの一部を形成する。
図5A~
図5Eは、コーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC及び1%LFO(
図5A);コーティングされたNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO+1%VC、1%LFO+1%ODTO+1%FEC、1%LFO+1%ODTO+1%TTSPi、2%VC、2%FEC及び1%LFO(
図5B);Al2O3コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC及び2%FEC(
図5C);AFOコーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えるセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC及び2%FEC(
図5D);並びに別のリチウムイオン電池セル内の2%VC、2%VC+1%ODTO、2%FEC+3%ODTO(
図5E)からなる二添加剤電解質システムのセル電荷移動インピーダンス実験の実験データを示す。これらの電気化学セルのそれぞれに人造黒鉛負極を使用した。
【0100】
また、セルの電荷移動インピーダンス(R
ct)をこれらのセルについて調べた。
図6A~
図6Eのデータに示されているように、セル電荷移動インピーダンスは、3%ODTO又は5%ODTOを含む電解質と比較して、1%ODTO単独で又は2%FEC、2%VC又は1%LFOと組み合わせた1%ODTOで減少する。したがって、これらの新規な二添加剤電解質システムは、ODTOを含めることで大幅に電荷移動インピーダンス性能を犠牲にすることはない。
【0101】
ガス容量の測定
化成プロセスは、セルが電気自動車等の自動車におけるグリッド蓄電又は畜エネルギー等のそれらの意図された用途で使用される前に行われる。化成中、セルは正確に制御された充放電サイクルに供され、これは、それらを意図された用途で使用するために電極及び電解質を活性化することを目的としている。化成中にガスが生成される。(セルによって許容される特定の耐性及びセルのパッケージングに応じて)十分な量のガスが生成される場合、化成プロセスの後、用途で使用する前にガスを放出する必要がある場合がある。これには通常、密閉を破った後に再封止するという追加の工程が必要である。これらの工程は多くの電池システムで一般的であるが、可能であればガスの産生が少ないシステムを選択することによって、これらの工程を取り除くことが望ましい。
【0102】
ガス容量実験を次の通り進めた:Ex-situ(静的)ガス測定を使用して、化成中及びサイクリング中のガス放散を測定した。測定は、アルキメデスの原理を使用して、液体に沈めた状態でセルを天秤から吊り下げて行った。流体に浮遊しているセル重量の試験前後の変化は、浮力の変化による体積変化に直接関連する。密度ρの流体に浮遊しているセルの質量の変化Δmは、セル体積の変化ΔvとΔv=-Δm/ρの関係がある。充放電中及び高電位保持期間中に生成されたガスを、Aiken et al.(C.P.Aiken,J.Xia,David Yaohui Wang,D.A.Stevens,S.Trussler and J.R.Dahn,J.Electrochem.Soc.2014 volume 161,A1548-A1554)によって記載されるin-situガス測定装置を使用して測定した。
【0103】
特定の実施形態では、各添加剤の濃度が約0.25%~6%である二添加剤電解質システムが、電池システムの一部を形成する。
図7A~
図7Eは、コーティングされていないNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC及び1%LFO(
図7A);コーティングされたNMC532正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC、2%FEC及び1%LFO(
図7B);Al2O3コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えたセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC及び2%FEC(
図7C);コーティングされたNMC622正極及び人造黒鉛負極を備えるセル内の1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、2%VC+1%ODTO、2%FEC+1%ODTO、1%LFO+1%ODTO、2%VC及び2%FEC(
図7D);別のリチウムイオン電池セル内の2%VC、2%VC+1%ODTO及び2%VC+3%ODTO(
図7E)からなる二添加剤電解質システムにおけるガス生成実験の結果を示す。これらの電気化学セルのそれぞれに人造黒鉛負極を使用した。これらのセルのそれぞれにおいて、生成されたガスの量を、上記の手順に従って測定した。
図7A~
図7Eに示すように、1%ODTO又は1%LFO+1%ODTOを有するセルでは、かなりの量のガスが産生された。しかしながら、ガス産生は2%VC+1%ODTO及び2%FEC+1%ODTOのセルでは大幅に減少した。
【0104】
蓄電実験
化成後、C/10に対応する電流でセルを2回に亘り3Vまで放電し、4.4Vまで充電した。次いで、セルを4.4Vで24時間保持し、その後60℃の蓄電ボックスに移した。開路電圧を、500時間の間、6時間ごとに自動的に記録した。
図8A及び
図8Bは、2VC+1ODTOを組み込んだセルがこれらの条件下で最小の自己放電量を示したことを示す。
【0105】
超高精度サイクリング
作動型電解質添加剤及び電極を含む、本開示の電池システムの有効性を研究するため、超高精度サイクリング(UHPC:ultrahigh precision cycling)を行った。標準UHPC手順は、C/20に対応する電流を使用して、40℃にて3.0V~4.3Vでセルを15サイクルに亘ってサイクリングしてデータを生成することからなった。クーロン効率の場合、クーロン効率、充電エンドポイント容量のずれ、及びその他のパラメータを30ppmの精度まで測定するためUPHCを用いる。UHPC手順の詳細は、その全体が本明細書に組み込まれる、T.M.Bond,J.C.Burns,D.A.Stevens,H.M.Dahn,and J.R.Dahn,Journal of the Electrochemical Society,160,A521(2013)に記載されている。
【0106】
特に関心のあるUHPC測定から測定及び/又は決定される測定基準には、クーロン効率、正規化クーロン効率、正規化充電エンドポイント容量のずれ、正規化放電容量(すなわちフェードレート)、及びデルタVが含まれる。クーロン効率は、放電容量(Qd)を前のサイクルの充電容量(Qc)で除したものである。クーロン効率は、Liイオンセルで起こる寄生反応を追跡し、正極及び負極の両方からの寄与を含む。CE値が高いほど、セル内の電解質の劣化が少ないことを示す。1時間当たりクーロン効率(CIE/h)は、(1時間当たりの)正規化クーロン効率であり、クーロン効率は1-CEとして定義される。CIE/hは、1-CEを得て、CEが測定されるサイクル時間で割ることによって計算される。充電エンドポイント容量の動き(又はずれ)は、正極で発生する寄生反応、並びにある場合は正極材料の質量損失を追跡する。動きが少ない方が良く、電解質の酸化が少ないことと関連している。正規化放電容量、すなわちフェードレートは別の重要な測定基準であり、フェードレートが低いほど望ましく、通常は電池システムの寿命が長いことを示す。ΔVは、平均充電電圧と平均放電電圧の差として計算される。ΔVの変化は分極の成長と密接に関係しており、サイクリングが起こるにつれてΔVの変化は小さくなる。UHPC測定は、測定基準をより高い精度で正確に追跡でき、様々な劣化メカニズムを比較的迅速に評価できるため、電解質組成の比較に特に適している。
【0107】
ここでは、1%ODTO、3%ODTO、5%ODTO、1%ODTO+2%VC、1%ODTO+2%FEC、1%ODTO+1%LFO、2%VC、2%FEC、2%VC、20%MA+2%VC、20%MA+2%VC+1%ODTO及び1%LFOを使用してUHPC実験を行った。調査した5つの異なるセルの正極の材料には、コーティングされていない(
図11)及びコーティングされた(
図12)NMC532、並びにAl
2O
3コーティングされたNMC622(
図13)及びAFOコーティングされたNMC622(
図14)、並びにその他のリチウムイオン電池セル活物質が含まれる。コーティングされたNMC532セルの生データを
図10D及び
図10Eに示す。コーティングされていないNMC532セルの生データを
図10J及び
図10Kに示す。Al
2O
3コーティングされたNMC622セルの生データを
図10O及び
図10Pに示す。AFOコーティングされたNMC622セルの生データを
図10Q及び
図10Rに示す。他のリチウムイオン電池セルの生データを
図10Uに示す。
【0108】
特定の実施形態では、各添加剤の濃度が約0.25%~6%である二添加剤電解質システムが、電池システムの一部を形成する。電池システムはまた、NMC111、NMC532、NMC811、NMC622、又は別のNMC組成物(NMCxyz)から作られた正極を備えてもよい。特定の実施形態では、マイクロメートルスケールの粗粒のNMC532から作られた正極は、部分的には、処理条件が、通常の処理条件が生成するよりも大きな粒度を作り出すため、特に堅牢であることが示された。
【0109】
典型的な処理条件により、ナノメートルサイズの粒子がより大きなマイクロメートルサイズの凝集体に詰め込まれたNMC電極がもたらされ、ナノメートルスケールで粒界が作られる。粒界は、望ましい特性(例えば、電気的特性)を低下させる傾向があるという欠陥のため、一般に、粗粒の数を減らし、粒度を大きくすることが望ましい。現在の処理では、マイクロメートルサイズのスケールでより大きなドメインを作ることができるため、NMC電極の粒界の数が減り、電気的特性が向上する。特性の向上により、より堅牢な電池システムがもたらされる。特定の実施形態では、他のNMC電極を処理して、より大きなドメインサイズ(マイクロメートルサイズスケール以上)、例えば、NMC111、NMC811、NMC622、又は別のNMC化合物を作って、より堅牢なシステムを作り出すことができる。
【0110】
長期サイクリング
電池システムの寿命は電池システムの重要な特性である。充電及び放電の速度は寿命に影響を与える場合がある。長期サイクリング実験は、予想される動作条件下での回復力のある電池システムの経時変化を判断するのに役立つ。所望の用途に十分な寿命を持つ電池システムを選択することが重要である。
【0111】
本開示の実施形態は、グリッド及び車両の蓄電を含む、種々の用途のための望ましい長期サイクリングを示す。具体的には、VC+ODTO、LFO+ODTO及びFEC+ODTOの二添加剤電解質システムは、特に、充電率及び放電率が通常グリッド蓄電用途の場合よりも高い自動車用途(特に電気自動車内の畜エネルギー)に関連する。
【0112】
長期サイクリング実験では、通常、(特に指定のない限り)単結晶NMC532及びNMC622を正極として使用し、人造黒鉛を負極として使用した。長期サイクリング実験の前に、密閉セルを、各セルのタイプについて上に記載されるように、化成プロセスに供した。化成後、セルをNeware充電システムでサイクルした。
【0113】
幾つかの実験では、セルを、40℃+/-0.2℃の温度制御ボックスに収納した。3.0V及びC/3(3時間の半サイクル)の電流による充電開始時(top of charge)(4.2V又は4.3V)と、充電開始時の定電圧工程の間で、電流がC/20を下回るまでセルをサイクルした。50サイクルごとに、セルはC/20で1つの完全なサイクルを経た。コーティングされたNMC532のかかる実験による結果を
図10A、
図10B、
図10C、
図10V(b)及び
図10W(b)に示し、コーティングされていないNMC532を
図10V(a)及び
図10W(a)に示し、Al
2O
3コーティングされたNMC622を
図10L、
図10V(c)及び10W(c)に示し、AFOコーティングされたNMC622を
図10M、
図10N、
図10V(d)、
図10W(d)に示し、他のリチウムイオン電池セルを
図10T(b)に示す。
【0114】
幾つかの実験では、セルを、55℃+/-0.2℃の温度制御ボックスに収納した。3.0V及びC/3(3時間の半サイクル)の電流による充電開始時(top of charge)(4.2V又は4.3V)と、充電開始時の定電圧工程の間で、電流がC/20を下回るまでセルをサイクルした。50サイクルごとに、セルはC/20で1つの完全なサイクルを経た。コーティングされたNMC532に対するかかる実験による結果を、
図10F及び
図10Gに示し、他のリチウムイオン電池セルについて
図10S及び
図10T(c)に示す。
【0115】
幾つかの実験では、セルを、20℃+/-0.2℃の温度制御ボックスに収納した。3.0V及びC/3(3時間の半サイクル)の電流による充電開始時(top of charge)(4.2V又は4.3V)と、充電開始時の定電圧工程の間で、電流がC/20を下回るまでセルをサイクルした。50サイクルごとに、セルはC/20で1つの完全なサイクルを経た。コーティングされたNMC532に対するかかる実験の結果を
図10Hに示し、他のリチウムイオン電池セルの結果を
図10T(a)示す。
【0116】
幾つかの実験では、セルを、20℃+/-0.2℃の温度制御ボックスに収納した。3.0V及び1C(充電に1時間かかり、放電に1時間かかる)の電流による充電開始時(top of charge)(4.2V又は4.3V)と、充電開始時の定電圧工程の間で、電流がC/20を下回るまでセルをサイクルした。50サイクルごとに、セルはC/20で1つの完全なサイクルを経た。コーティングされたNMC532についてのかかる実験による結果を
図10Iに示す。
【0117】
実験データは、二添加剤電解質システム(ODTO+FEC、ODTO+LFO、及びDTD+VC)が、4.2V又は4.3Vまでのサイクリング時により容量の損失が少ないこと、また、VC又はFECの単一添加剤電解質システムと比較して分極成長も低いこと、並びにサイクリングが2%VC+1%DTD及び1%LFO+2FECに類似することを示している。
【0118】
サイクルあたりの平均寄生熱流の研究(
図15、
図17及び
図9)と、
図16に示す充電保持中のin-situでのガスの評定を含む、その他の研究を他のリチウムイオン電池セルで行った。
【0119】
ガス容量実験を次の通り進めた:Ex-situ(静的)ガス測定を使用して、化成中及びサイクリング中のガス放散を測定した。測定は、アルキメデスの原理を使用して、液体に沈めた状態でセルを天秤から吊り下げて行った。流体に浮遊しているセル重量の試験前後の変化は、浮力の変化による体積変化に直接関連する。密度ρの流体に浮遊しているセルの質量の変化Δmは、セル体積の変化ΔvとΔv=-Δm/ρの関係がある。充放電中及び高電位保持期間中に生成されたガスを、Aiken et al.(C.P.Aiken,J.Xia,David Yaohui Wang,D.A.Stevens,S.Trussler and J.R.Dahn,J.Electrochem.Soc.2014 volume 161,A1548-A1554)によって記載されるin-situガス測定装置を使用して測定した。
【0120】
図16の結果は、ODTOが、充電/保持中に、20%MAの有無にかかわらず高電圧においてガスを抑制するのに有益であることを示した。
微少熱量測定
【0121】
微小熱量測定は、操作中のセルへの熱流を測定する。セルへの熱流は、3つの異なる効果の組み合わせ:(1)オーミック加熱、(2)電極でのLi挿入によるエントロピー変化、及び(3)寄生反応(いずれかの電極での添加剤を含む電解質の劣化)である。試験セルには電解質のみが異なる同じ物理学的設計が含まれているため、熱流の違いは主に寄生熱流の違いによるものである。それでも、Downie et al.(Journal of the Electrochemical Society,161,A1782-A1787(2014))及びGlazier et al.(Journal of the Electrochemical Society,164(4)A567-A573(2017))によって開発された手順を使用して全熱流から寄生熱流を抽出することができる。これらの参考文献はいずれも、それらの全体が本明細書に組み込まれる。サイクル中の寄生熱流が少ないセルは、寿命が長くなる。寄生反応速度の電圧依存性は、測定された寄生熱流をセル電圧の関数としてプロットすることによって観察できる。
【0122】
微少熱量測定手順:各電解質の2つのセルをMaccor充電器に接続し、40.0℃でTAMIIIマイクロ熱量計(TA Instruments、安定性+/-0.0001℃、精度+/-1μW、精密度+/-1nW)に挿入した。実験中の基線変動は+/-0.5μWを超えなかった。微小熱量測定の校正、セル接続、及び操作手順に関する全ての仕様及び情報は、以前の文献に記載されている。(例えば、Downie et al、ECS Electrochemical Letters 2、A106-A109(2013))適切に化成され安定したSEIを保証するためセルを3.0V~4.2VのC/20レートで4回サイクルさせ、次いで、4.0Vと3.7mA(C/100)の異なる上限カットオフとの間で充電して性能及び種々の電圧範囲での寄生熱流を調査した。セルの各ペアはほぼ同じ性能を示したため、各電解質に対して1セットの熱流データのみを提示する。
【0123】
3.7mAサイクリングプロトコルは次の通りであった:
14.0Vまで充電、3.9Vまで放電、繰り返し
2.4.1Vまで充電、3.9Vまで放電(繰り返し)
3.4.2Vまで充電、3.9Vまで放電(繰り返し)
6.4.0Vまで充電、3.9Vまで放電(繰り返し)
【0124】
図15、
図17及び
図9に示される実験データは、電解質添加剤2VC、2VC+1ODTO、20%MAを含む2VC及び20%MAを含む2VC+1ODTOを含む他のリチウムイオン電池セルについて使用したものである。セルを3.9V~4.2Vで試験すると、ODTOの有用性が観察される。この状況では、寄生熱流が減少し、1%ODTOを含む他のリチウムイオン電池セルは、4.2Vまで充電(満充電状態)すると寿命が長くなることを示唆している。これは、電池パックの寿命を数年又は数マイルの駆動に延ばすために重要である。
【0125】
特定の実施形態では、正極は、NMC111、NMC532、NMC822、NMC622及び/又NMCxyzから形成される。特に、単結晶NMC532から作製された正極は、より多結晶でより粒度の小さい他の標準的なNMC材料の粒度よりも、NMC532の粒度が、より大きいことから、部分的には、特に堅牢であることが示された。
【0126】
前述の開示は、本開示を、開示される正確な形態又は特定の使用分野に限定することを意図するものではない。そのため、本明細書で明示的に説明又は含意されているかどうかにかかわらず、本開示に照らして、様々な代替の実施形態及び/又は本開示に対する修正が可能であることが企図される。このように本開示の実施形態を説明したが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に変更を加えることができることを認識するであろう。したがって、本開示は、特許請求の範囲によってのみ制限される。本明細書における添加剤への言及は、本明細書において別段の記載がない限り、概して作動型添加剤を指す。
【0127】
前述の明細書では、具体的な実施形態を参照して本開示を記載した。しかしながら、当業者に理解されるように、本明細書に開示される様々な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、修正され又は他の様々な方法で実施され得る。したがって、この記載は、例示的なものと見なされるべきであり、開示される電池システムの様々な実施形態を作製及び使用する方法を当業者に教示することを目的とするものである。本明細書に示され、説明される開示の形態は、代表的な実施形態として解釈されるべきであることを理解されたい。同等の要素又は材料は、本明細書で代表的に例示及び記載されているものと置き換えることができる。更に、本開示の特定の特徴は、他の特徴の使用とは無関係に利用されてもよく、いずれも、本開示のこの説明の利益を得た後に当業者に明らかとなろう。本開示を説明及び主張するために使用される「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」、「組み込む(incorporating)」、「からなる(consisting of)」、「有する」等の表現は、非排他的な方法で解釈されるべきであり、すなわち、明示的に記載されていない事項、コンポーネント又は要素も存在し得る。単数形への言及はまた、複数形に関連すると解釈されるべきである。「約」又は「およそ」への言及は、プラス又はマイナス10%を意味すると解釈されるべきである。同様に、添加剤の任意のパーセンテージへの言及は、プラス又はマイナス10%を意味すると解釈される。
【0128】
更に、本明細書に開示される様々な実施形態は、例示的及び説明的な意味で解釈されるべきであり、決して本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。全ての結合参照(例えば、添付、貼り付け、結合、接続等)は、本開示の読者の理解を助けるためにのみ使用され、特に本明細書で開示されるシステム及び/又は方法の位置、方向又は使用に関して制限を作ることはできない。したがって、結合参照は、ある場合は、広く解釈される。更に、かかる結合参照は、2つの要素が互いに直接接続されていることを必ずしも推測するものではない。
【0129】
更に、限定されるものではないが、「第1」、「第2」、「第3」、「一次、主な」、「二次」、「主」、又はその他の通常の用語及び/又は絶対数等の全ての絶対数は、本開示の様々な要素、実施形態、変形及び/又は修正についての読者の理解を助けるための識別子としてのみ受け取られ、特に、別の要素、実施形態、変形及び/又は修正に又はそれらに対する、任意の要素、実施形態、変形及び/又は修正の順番又は優先度について限定を設けることはできない。
【0130】
また、図面/図に示されている1つ以上の要素は、特定の用途に応じて有用であることから、より分離若しくは統合された方法で実装することもでき、又は更には特定の場合に削除若しくは動作不能とされ得ることもあると理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0131】
【文献】米国特許出願公開第2017/0025706号公報
【非特許文献】
【0132】
【文献】J.C.Burns et al.,Journal of the Electrochemical Society,160,A1451(2013)