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特許7288928電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20230601BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20230601BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20230601BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/0271
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021100568
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000010
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 健人
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029023(JP,A)
【文献】特開2012-186026(JP,A)
【文献】特開2016-157693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/12
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、前記電解質層と前記空気極との間に形成された中間層と、を備える電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向視で、前記中間層の外縁の少なくとも一部は前記電解質層の外縁より内側に位置しており、
前記中間層の外縁の前記少なくとも一部には、前記電解質層の外縁に向かって突出する複数の突出部が形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向視で、前記複数の突出部のそれぞれの突出幅は、互いに隣り合う前記複数の突出部同士の離間距離よりも広い、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向視で、前記突出部の先端の形状は、前記複数の突出部の並び方向に沿った平坦状である、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向視で、前記突出部の前記先端の両端部は円弧状である、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向視で、前記中間層の外縁の全体は前記電解質層の外縁より内側に位置しており、
前記第1の方向視で、前記中間層における前記複数の突出部のうち、第2の方向に向かって突出する隣り合う一対の突出部同士の間の凹みの深さと、前記第2の方向とは異なる第3の方向に向かって突出する隣り合う一対の突出部同士の間の凹みの深さとが互いに異なる、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項6】
複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数の電気化学反応単セルの少なくとも1つは、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルである、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項7】
請求項6に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記少なくとも1つの電気化学反応単セルの周縁部と接続されており、前記空気極側の空間と、前記燃料極側の空間とを区画するセパレータと、
前記少なくとも1つの電気化学反応単セルにおける前記中間層の前記少なくとも一部と前記セパレータとの両方を一体的に覆う接合部と、を備える、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応単セルに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの最小構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)は、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
このような燃料電池単セルの中には、例えば、電解質層と空気極との境界付近で、空気極に含まれる物質が電解質層に含まれる物質と反応して高抵抗層が形成されることを抑制するために、空気極と電解質層との間に中間層が配置されたものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-029023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の燃料電池単セルでは、第1の方向視で、中間層の外縁は、電解質層の外縁より内側に位置しており、かつ、電解質層の外縁に沿って直線状に伸びている形状になっている。このため、例えば中間層と電解質層との熱膨張差に起因して中間層に生じた応力が、中間層の外縁の特定個所に集中しやすく、その結果、例えば、中間層と電解質層との剥離やクラックが生じるおそれがある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される電気化学反応単セルは、固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、前記電解質層と前記空気極との間に形成された中間層と、を備える電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向視で、前記中間層の外縁の少なくとも一部は前記電解質層の外縁より内側に位置しており、前記中間層の外縁の前記少なくとも一部には、前記電解質層の外縁に向かって突出する複数の突出部が形成されている。本電気化学反応単セルでは、中間層の外縁に複数の突出部が形成されている。このため、中間層の外縁に突出部が形成されていない構成に比べて、中間層の外縁に生じた応力が複数の突出部によって分散されるため、中間層の特定個所に応力が集中することを抑制することができる。
【0009】
(2)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向視で、前記複数の突出部のそれぞれの突出幅は、互いに隣り合う前記複数の突出部同士の離間距離よりも広い構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、各突出部の突出幅が突出部同士の離間距離よりも狭い構成に比べて、各突出部への応力集中を抑制できるとともに、中間層と電解質層との接触面積が広くなる分だけ中間層と電解質層との剥離を抑制することができる。
【0010】
(3)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向視で、前記突出部の先端の形状は、前記複数の突出部の並び方向に沿った平坦状である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、例えば突出部の先端形状が先細り状である構成に比べて、各突出部に分散された応力が突出部の先端に集中することを抑制することができる。
【0011】
(4)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向視で、前記突出部の前記先端の両端部は円弧状である構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、各突出部に分散された応力が突出部の先端に集中することを、より確実に抑制することができる。
【0012】
(5)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向視で、前記中間層の外縁の全体は前記電解質層の外縁より内側に位置しており、前記第1の方向視で、前記中間層における前記複数の突出部のうち、第2の方向に向かって突出する隣り合う一対の突出部同士の間の凹みの深さと、前記第2の方向とは異なる第3の方向に向かって突出する隣り合う一対の突出部同士の間の凹みの深さとが互いに異なる構成としてもよい。本電気化学反応単セルによれば、突出部同士の間の凹みの深さの相違を参照することで、例えばスタックの組み立ての際に電気化学反応単セルの向きを容易に把握することができる。
【0013】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記複数の電気化学反応単セルの少なくとも1つは、上記いずれか一つの電気化学反応単セルである構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、中間層の特定個所に応力が集中することを抑制することができる。
【0014】
(7)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記少なくとも1つの電気化学反応単セルの周縁部と接続されており、前記空気極側の空間と、前記燃料極側の空間とを区画するセパレータと、前記少なくとも1つの電気化学反応単セルにおける前記中間層の前記少なくとも一部と前記セパレータとの両方を一体的に覆う接合部と、を備える構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、接合部が中間層の突出部が形成された部分とセパレータとの両方を覆うため、接合部と中間層との接触面積が相対的に広いことにより、電気化学反応単セルとセパレータとの接合強度の向上を図ることができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、電気化学反応単セルを有する電気化学反応単位を複数備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図6】電解質層112および中間層180の外縁の形状を示す説明図
図7】スクリーンメッシュ200の一部の構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。なお、上下方向は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。
【0018】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
【0019】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0020】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0021】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0022】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0023】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0024】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視で略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0025】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0026】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0027】
インターコネクタ150は、Z軸方向視で略矩形の平板形状の導電性部材であり、Crを含む材料、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0028】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112に対して上側に配置された空気極(カソード)114と、電解質層112に対して下側に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112と空気極114との間に配置された中間層180とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116によって単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、中間層180)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0029】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な(気孔率が低い)層である。電解質層112は、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア))を含んでいる。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0030】
空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、気孔率が電解質層112の気孔率よりも高い多孔質な層である。空気極114は、ABOで表されるペロブスカイト型酸化物(例えば、ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物(LSCF)、ランタンストロンチウム鉄酸化物(LSF)、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムマンガン酸化物(LSM)、ランタンニッケル鉄酸化物(LNF)等)を含有している。
【0031】
燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、気孔率が電解質層112の気孔率よりも高い多孔質な層である。なお図示しないが、本実施形態では、燃料極116は、燃料極116における下方側の表面を構成する基板層と、基板層と電解質層112との間に位置する機能層とを備える。燃料極116の機能層は、主として、電解質層112から供給される酸素イオンと燃料ガスFGに含まれる水素等とを反応させて、電子と水蒸気とを生成する機能を発揮する層であり、電子伝導性物質であるNiと、酸素イオンイオン伝導性酸化物(例えば、YSZ)とを含んでいる。また、燃料極116の基板層は、主として、機能層と電解質層112と空気極114とを支持する機能を発揮する層であり、電子伝導性物質であるNiと、酸素イオン伝導性酸化物(例えば、YSZ)とを含んでいる。
【0032】
中間層(反応防止層)180は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材である。中間層180は、例えば、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、LDC(ランタンドープセリア)、YDC(イットリウムドープセリア)等のイオン伝導性を有する固体酸化物により形成されている。
【0033】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)やガラスにより形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0034】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0035】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0036】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0037】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、Crを含む材料、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。空気極114と空気極側集電体134との間に、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されてもよい。
【0038】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0039】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0040】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0041】
A-3.中間層180の詳細構成:
次に、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する単セル110における中間層180の詳細構成について説明する。図6は、電解質層112および中間層180の外縁の形状を示す説明図である。図6では、上下方向視で電解質層112と中間層180とのそれぞれの外縁の形状が示されている。また、図6では、中間層180の外縁の一部分(X1部分)が拡大して示されている。
【0042】
図6に示すように、上下方向視で、中間層180の外縁は、全周にわたって電解質層112の外縁より内側に位置している。中間層180の外縁には、複数の突出部182が形成されている。突出部182は、上下方向視で、電解質層112の外縁(該中間層180に最も近い電解質層112の外縁部分)に向かって突出するように形成されている。また、突出部182は、電解質層112の表面に接触している。
【0043】
上下方向視で、複数の突出部182は、中間層180の外縁に沿って並んでいる。なお、本実施形態では、複数の突出部182は、セパレータ120の外縁に沿って並んでいる。また、複数の突出部182は、凹み184を介して、互いに間隔を空けて配置されている。ここで、上下方向視で、複数の突出部182のそれぞれの突出幅W1(突出部182の突出方向に直交する方向の長さ)は、互いに隣り合う複数の突出部182同士の離間距離(凹み184の開口幅W2)よりも広い。なお、中間層180に形成された全ての突出部182の突出幅W1は、略均一であり、中間層180に形成された全ての凹み184の開口幅W2は、略均一である。
【0044】
なお、突出部182の突出幅W1は、例えば、50μm以上、200μm以下でもよいし、70μm以上、150μm以下でもよい。凹み184の開口幅W2は、例えば、15μm以上、60μm以下でもよいし、30μm以上、40μm以下でもよい。また、凹み184の開口幅W2に対する突出部182の突出幅W1の割合(W1/W2)は、1.5倍以上でもよいし、2倍以上でもよい。また、突出部182の突出高さ(突出部182と凹み184との高低差)は、例えば、6.5μm以上、40μm以下でもよいし、10.5μm以上、20μm以下でもよい。
【0045】
上下方向視で、各突出部182の先端の形状は、複数の突出部182の並び方向に沿った平坦状である。なお、ここでいう平坦状とは、並び方向に直交する方向の高低差が6μm以下であることをいう。
【0046】
図6のX1部分に示すように、上下方向視で、突出部182の先端の両端部183のそれぞれの形状は、円弧状である。また、凹み184の底部分187の形状は、円弧状である。
【0047】
上下方向視で、中間層180における複数の突出部182のうち、第2の方向(図6では、Y軸負方向)に向かって突出する隣り合う一対の突出部182同士の間の凹み184(以下、「特定凹み185」という)の深さと、第2の方向とは異なる第3の方向(図6では、Y軸正方向、X軸正方向、X軸負方向)に向かって突出する隣り合う一対の突出部182同士の間の凹み184の深さとが互いに異なる。具体的には、特定凹み185の深さは、他の凹み184の深さよりも深い。

【0048】
図4および図5に示すように、発電単位102は、さらに、接合部124を備えている。接合部124は、セパレータ120と単セル110(電解質層112)とを接合する。接合部124は、さらに、中間層180における空気極114側の表面の周縁部と、セパレータ120における孔121の周囲部分とを、全周にわたって、一体的に覆っている。なお、接合部124は、例えばガラスやろう材(例えばAgろう)により形成されている。
【0049】
A-4.燃料電池スタック100の製造方法:
本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法は、例えば以下の通りである。
【0050】
(電解質層112と燃料極116との積層体の形成)
YSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるフタル酸ジオクチル(DOP)と、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば約6μm)の電解質層用グリーンシートを得る。また、NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末に対して、造孔材である有機ビーズと、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば約400μm)の燃料極基板層用グリーンシートを得る。また、NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば約11μm)の燃料極機能層用グリーンシートを得る。各グリーンシートを貼り付けて圧着することにより、燃料極基板層用グリーンシートと燃料極機能層用グリーンシートと電解質層用グリーンシートとがこの順で積層された成形体を得る。
【0051】
次に、成形体を、所定の温度(例えば約280℃)で脱脂した後、所定の温度(例えば約1350℃)で所定の時間(例えば約1時間)焼成を行う。これにより、電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
【0052】
(中間層180の形成)
GDC粉末に、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを加えて混合し、粘度を調整して中間層用ペーストを調製する。得られた中間層用ペーストを、上述した積層体における電解質層112の表面に、例えばスクリーン印刷によって塗布する。ここで、中間層ペーストのスクリーン印刷において、中間層ペーストのチクソ性と、スクリーンメッシュ200の線径LWと、スクリーンメッシュ200のオープニングPWと、を相互に調整することにより、上述した突出部182が形成された中間層180を形成することができる。
【0053】
図7は、スクリーンメッシュ200の一部の構成を概略的に示す説明図である。図7に示すように、スクリーンメッシュ200の線径LWは、スクリーンメッシュ200を構成する素線210,220の直径(上下方向視での線幅)である。スクリーンメッシュ200のオープニングPWは、互いに隣り合う素線210,220同士の間の距離である。中間層ペーストのスクリーン印刷の際、電解質層112上に形成される中間層ペースト180Pのうち、外縁を除く部分では、スクリーンメッシュ200のオープニングエリアSの全体を塞ぐように形成されたペーストによって均一に印刷される。一方、中間層ペースト180Pの外縁では、スクリーンメッシュ200のオープニングエリアSを構成する4本の素線210,220のうち、中間層ペースト180Pの中央側に位置する素線(図7では、オープニングエリアSに対してY軸負方向側に位置する素線220)側のみに形成されたペーストによって印刷される。
【0054】
このため、中間層ペーストのチクソ性と、スクリーンメッシュ200の線径LWと、スクリーンメッシュ200のオープニングPWと、を相互に調整することにより、中間層ペースト180Pの外縁に、突出部182に対応する突出部を形成することができる。具体的には、中間層ペーストのチクソ性が高いほど、電解質層112上に形成された中間層ペースト180Pの形状が維持されるため、突出部182と凹み184との凹凸が相対的に明確になる。スクリーンメッシュ200の線径LWが大きい程、凹み184の開口幅W2が広くなる。スクリーンメッシュ200のオープニングPWが広いほど、突出部182の突出幅W1が広くなる。本実施形態では、例えば、スクリーンメッシュ200の線径LWを30μm、オープニングPWを72μmとし、中間層ペーストのチクソ性を適宜調整することにより、所望の突出部182に対応する突出部を形成した。なお、中間層ペーストのチクソ性が高すぎると、スクリーン印刷の不具合(例えば印刷の不均一やかすれ)が生じやすくなる。一方、中間層ペーストのチクソ性が低いと、中間層ペースト180Pの形状が維持されずレベリング作用により突出部182が形成されにくくなる。これらのことを踏まえて、中間層ペーストのチクソ性を調整することが好ましい。
【0055】
次に、中間層ペースト180Pが印刷された積層体に対して、所定の温度(例えば1200℃)で焼成を行う。これにより、突出部182が形成された中間層180が形成され、中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
【0056】
(空気極114の形成)
ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF)の粉末と硫酸塩(例えばSrSO)の粉末との混合粉末を準備し、該混合粉末に対し、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを加えて混合し、粘度を調整することにより、空気極用ペーストを調製する。得られた空気極用ペーストを、上述した中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体における中間層180の表面に、例えばスクリーン印刷によって塗布して乾燥させ、空気極用ペーストが塗布された積層体を所定の温度(例えば約1100℃)で焼成する。これにより、空気極114が形成され、燃料極116と電解質層112と中間層180と空気極114とを備える単セル110が作製される。
【0057】
上述した方法に従い複数の単セル110を作製した後、組み立て工程(例えば、各単セル110にセパレータ120等の他の部材を取り付ける工程、複数の単セル110を積層する工程、ボルト22により締結する工程等)を行う。以上により、燃料電池スタック100の製造が完了する。
【0058】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する単セル110では、中間層180の外縁に複数の突出部182が形成されている。このため、本実施形態では、電解質層112と中間層180との熱膨張差や対長期耐久に起因して中間層180の外縁に応力が生じた場合でも、その応力が複数の突出部182によって分散される。このため、本実施形態によれば、中間層180の外縁に突出部182が形成されていない構成に比べて、中間層180の特定個所に応力が集中することを抑制することができる。また、中間層180の外縁に互いに離間した複数の突出部182が存在することにより、中間層180に生じた応力が中間層180の外縁に沿って伝達されることを抑制することができる。その結果、中間層180と電解質層112との剥離やクラックが生じることが抑制される。
【0059】
なお、中間層180と電解質層112との剥離やクラックの発生を抑制するため、中間層180の形成材料や気孔率等を工夫することも考えられる。しかし、中間層180は、上述したように高抵抗層の形成を抑制する機能を果たす必要があるため、その機能を果たす範囲で中間層180の形成材料や気孔率等を定めざるを得ない。これに対して、本実施形態では、複数の突出部182を形成するという中間層180の形状を工夫するため、中間層180と電解質層112との剥離やクラックの発生を、より効果的に抑制することができる。
【0060】
上記実施形態では、上下方向視で、複数の突出部182のそれぞれの突出幅W1は、凹み184の開口幅W2よりも広い。これにより、本実施形態によれば、突出部182の突出幅W1が凹み184の開口幅W2よりも狭い構成に比べて、各突出部182への応力集中を抑制できるとともに、中間層180と電解質層112との接触面積が広くなる分だけ中間層180と電解質層112との剥離を抑制することができる。
【0061】
上記実施形態では、上下方向視で、各突出部182の先端の形状は、複数の突出部182の並び方向に沿った平坦状である。これにより、本実施形態によれば、例えば突出部182の先端形状が先細り状である構成に比べて、各突出部182に分散された応力が突出部182の先端に集中することを抑制することができる。
【0062】
上記実施形態では、上下方向視で、突出部182の先端の両端部183のそれぞれの形状は、円弧状である。これにより、本実施形態によれば、各突出部182に分散された応力が突出部182の先端に集中することを、より確実に抑制することができる。
【0063】
上記実施形態では、上下方向視で、特定凹み185の深さと、他の凹み184の深さとが互いに異なる。このため、本実施形態によれば、突出部182同士の間の凹み184,185の深さの相違を参照することで、例えば燃料電池スタック100の組み立ての際に単セル110の向きを容易に把握することができる。また、上記製造方法において、突出部182同士の間の凹み184,185の深さの相違を参照することで、中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体の向きを容易に把握できるため、空気極用ペーストの印刷方向を容易に特定することができる。
【0064】
上記実施形態では、セパレータ120と単セル110とを接合する接合部124は、中間層180における空気極114側の表面の周縁部と、セパレータ120における孔121の周囲部分とを、全周にわたって、一体的に覆っている。このため、本実施形態によれば、接合部124と中間層180との接触面積が相対的に広いことにより、単セル110とセパレータ120との接合強度の向上を図ることができる。
【0065】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
上記実施形態における単セル110または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0067】
上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0068】
上記実施形態において、上下方向視で、中間層180の外縁の一部だけが電解質層112の外縁より内側に位置していてもよい。上記実施形態では、複数の突出部182は、等間隔に並んでいたが、これに限らず、複数の突出部182が、等間隔以外の所定のパターンで規則性をもって並んでいてもよいし、複数の突出部182が不規則に並んでいてもよい。
【0069】
上記実施形態において、中間層180に形成された複数の突出部182の突出幅W1の少なくとも一部は、不均一でもよいし、中間層180に形成された複数の凹み184の開口幅W2の少なくとも一部は、不均一でもよい。突出部182の突出幅W1は、凹み184の開口幅W2と同じでもよいし、凹み184の開口幅W2よりも狭くてもよい。
【0070】
上記実施形態において、上下方向視で、各突出部182の先端の形状は、平坦状に限らず、他の形状(円弧状など)でもよい。また、上下方向視で、突出部182の先端の両端部183のそれぞれの形状は、円弧状に限らず、他の形状(鈍角状など)でもよい。上記実施形態において、上下方向視で、特定凹み185の深さと、他の凹み184の深さとが互いに同じでもよい。
【0071】
上記実施形態において、接合部124は、中間層180における空気極114側の表面の周縁部と、セパレータ120における孔121の周囲部分とを、全周ではなく、部分的覆っていてもよい。また、上記実施形態において、接合部124は、中間層180を覆っていなくてもよい。
【0072】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0073】
上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110について、中間層180の外縁に突出部182が形成された構成が実現されている必要は無く、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの単セル110について、中間層180の外縁に突出部182が形成された構成が実現されていれば、中間層180の特定個所に応力が集中することを抑制することができる。
【0074】
上記実施形態では、平板形の単セル110を対象としているが、本明細書に開示される技術は、平板形以外の他の単セル(例えば筒形の単セルなど)にも同様に適用可能である。
【0075】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルおよび電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様、中間層180の外縁に突出部182が形成された構成を採用すれば、同様の効果を奏する。
【0076】
上記実施形態における燃料電池スタック100の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、中間層180に突出部182が形成されていない中間層180と電解質層112と燃料極116とも積層体の焼成後に、中間層180の外縁を、例えばレーザ加工により加工して突出部182を形成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121,131,141:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:中間層 180P:中間層ペースト 182:突出部 183:端部 184,185:凹み 187:底部分 200:スクリーンメッシュ 210,220:素線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7