(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】湿式流し掛け工法による乾粒陶磁器質タイル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/86 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
C04B41/86 A
(21)【出願番号】P 2021558863
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2019120000
(87)【国際公開番号】W WO2020233032
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】201910412550.7
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515266393
【氏名又は名称】蒙娜麗莎集団股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕭 礼標
(72)【発明者】
【氏名】汪 慶剛
(72)【発明者】
【氏名】覃 増成
(72)【発明者】
【氏名】楊 元東
(72)【発明者】
【氏名】王 賢超
(72)【発明者】
【氏名】▲やん▼ 志聰
(72)【発明者】
【氏名】程 科木
【審査官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108675637(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109516691(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103073335(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102417373(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105294163(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105272375(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102040398(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00-41/91
B28B 11/00-11/24
C03C 8/00- 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生素地に上絵釉を施釉して、インクジェット印刷でパターンを印刷した後にベルジャーで乾粒釉を流し掛け、焼成して陶磁器質タイルを得ることを含み、
そのうち、前記乾粒釉は、質量百分率で、15%の乾粒Aと、12%~15%の乾粒Bと、13%~17%の乾粒Cと、5%~7%の印刷粉末と、35%~38%のグルーと、10%~13%の水とで構成され、
前記印刷粉末は、45%~50%の長石粉末と、15%~17%の石灰石粉末と、35%~40%の石英粉末とで構成され、
前記乾粒釉の乾粒の粒度組成は、質量百分率で、60~80メッシュが8%~12%、80~100メッシュが6%~10%、100~120メッシュが8%~15%、120~140メッシュが8%~15%、140~250メッシュが50%~60%、250~325メッシュが1%~4%、325メッシュ以下が≦2%であり、
前記乾粒Aの軟化温度は1135℃~1175℃であり、
前記乾粒Bの軟化温度は980℃~1050℃であり、
前記乾粒Cの軟化温度は1020℃~1127℃である、
湿式流し掛け工程による乾粒陶磁器質タイルの製造方法。
【請求項2】
前記乾粒Aの40℃~600℃における膨張係数は7.3×10
-6~7.4×10
-6/℃であり、
前記乾粒Bの40℃~600℃における膨張係数は6.6×10
-6~6.7×10
-6/℃であり、
前記乾粒Cの40℃~600℃における膨張係数は6.9×10
-6~7.0×10
-6/℃である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記乾粒釉の化学組成は、質量百分率で、強熱減量が0.50%~2.00%、SiO
2が60.50%~65.00%、Al
2O
3が12.00%~14.00%、Fe
2O
3が0.05%~0.20%、TiO
2が0.05%~0.10%、CaOが9.00%~11.00%、MgOが1.00%~2.00%、K
2Oが4.00%~8.00%、Na
2Oが0.00%~0.05%、ZnOが1.87%~2.32%、ZrO
2が0.01%~0.03%であり、
前記化学組成とは、全ての固体乾粒による化学組成であり、
乾粒釉における印刷粉末、グルー及び水が含まれていない、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記乾粒釉は、比重が1.52~1.54であり、
流速が32~35秒であり、施釉量が900~1200g/m
2である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
上絵釉を施釉する前に生素地の温度は65℃~70℃であり、
上絵釉は、比重が1.46~1.47であり、施釉量が500~550g/m
2である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
乾粒釉を流し掛ける前に生素地の温度は60℃~70℃である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
焼成周期は95~110minであり、
最高焼成温度範囲は1135℃~1223℃である、
請求項1乃至6の何れかに1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶磁器質タイル生産分野に属し、湿式流し掛けによるフルポリッシュの乾粒陶磁器質タイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の急速な発展に伴い、人々は消費レベルもしだいに向上し、品質の高い生活を追求する一方で、居住環境の装飾効果もますます重視する。建築用陶磁器質産業の発展の長い歴史の中で、従来のポリッシュタイルとポリッシュ施釉タイルは人々の装飾効果に対する要求を満たせなくなった。従来のポリッシュ施釉タイル、ポリッシュタイルは鏡面が不均一でパターン模様が不明瞭であるという欠点があるため、版面模様の細部が複雑で版面の色が深い設計に対しては、生産時に明晰な釉面効果を実現することが困難である。市場のニーズに応えるために鏡面の平坦度が高く透明度が高い釉面タイルを開発するのは業界のトレンドとなる。
【0003】
現在の市場に対しては、乾粒を乾式振り掛ける工法が一般的であるが、当該生産工程が複雑で製造コストが高く、深い色の版面を生産するときにタイル表面に多くの細孔が発生しやすく、生産技術が不安定である。
【0004】
特許文献1は、深い色のパターンのあるフルポリッシュ陶磁製品とその製造方法を開示しており、その関連工法も乾粒釉を流し掛ける工法であるが、具体的な工程フロー、変量、及び固体フリットの粒度組成関係を開示しておらず、乾粒釉を流し掛けることによって調製された陶磁製品の効果を大まかに説明するにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第109516691号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題に対して、本発明の目的は、異なる融点をもつフリット乾粒を合理的な割合で使用することにより、鏡面の平坦度が高く透明度が高い釉面タイル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、湿式流し掛け工法による乾粒陶磁器質タイルの製造方法であって、
生素地に上絵釉を施釉して、インクジェット印刷でパターンを印刷した後にベルジャーで乾粒釉を流し掛け、焼成して陶磁器質タイルを得ることを含み、
そのうち、前記乾粒釉は、質量百分率で、15%の乾粒Aと、12%~15%の乾粒Bと、13%~17%の乾粒Cと、5%~7%の印刷粉末と、35%~38%のグルーと、10%~13%の水とで構成され、
前記印刷粉末は、45%~50%の長石粉末と、15%~17%の石灰石粉末と、35%~40%の石英粉末とで構成され、
前記乾粒釉の乾粒の粒度組成は、質量百分率で、60~80メッシュが8%~12%、80~100メッシュが6%~10%、100~120メッシュが8%~15%、120~140メッシュが8%~15%、140~250メッシュが50%~60%、250~325メッシュが1%~4%、325メッシュ以下は≦2%であり、
前記乾粒Aの軟化温度は1135℃~1175℃であり、
前記乾粒Bの軟化温度は980℃~1050℃であり、
前記乾粒Cの軟化温度は1020℃~1127℃である、湿式流し掛け工法による乾粒陶磁器質タイルの製造方法を提供している。
【0008】
本発明によれば、乾粒を湿式流し掛ける工法によってフルフルポリッシュ施釉タイルを製造する。当該工法による陶磁器質タイルは、研磨された後に鏡面の平坦度が高く透明度が高い釉面が得られ、版面模様の細部が複雑な設計に対しても模様の走向が明確に見える。当該生産工程は、フォローが簡単であり、深い色の版面に細孔が多いという課題をある程度に解決でき、深い色の版面の開発に有利である。且つ、本発明で使用されるフリット乾粒は異なる融点をもつ三種類の乾粒の組み合わせであり、このような組み合わせを採用することにより、生産時にタイルの形状及び焼成温度を効果的に調整することが容易になる。
【0009】
好ましくは、前記乾粒Aの40℃~600℃における膨張係数は7.3×10-6~7.4×10-6/℃であり、前記乾粒Bの40℃~600℃における膨張係数は6.6×10-6~6.7×10-6/℃であり、前記乾粒Cの40℃~600℃における膨張係数は6.9×10-6~7.0×10-6/℃である。
【0010】
好ましくは、前記乾粒釉には、5%~7%の印刷粉末と、35%~38%のグルーと、10%~13%の水が含まれている。
【0011】
好ましくは、前記乾粒釉の化学組成は、質量百分率で、強熱減量が0.50%~2.00%、SiO2が60.50%~65.00%、Al2O3が12.00%~14.00%、Fe2O3が0.05%~0.20%、TiO2が0.05%~0.10%、CaOが9.00%~11.00%、MgOが1.00%~2.00%、K2Oが4.00%~8.00%、Na2Oが0.00%~0.05%、ZnOが1.87%~2.32%、ZrO2が0.01%~0.03%であり、前記化学組成とは、全ての固体乾粒による化学組成であり、乾粒釉における印刷粉末、グルー及び水が含まれていない。
【0012】
好ましくは、前記乾粒釉は、比重が1.52~1.54であり、流速が32~35であり、施釉量が900~1200g/m2である。
【0013】
好ましくは、前記乾粒釉の乾粒の粒度組成は、60~80メッシュが8%~12%、80~100メッシュが6%~10%、100~120メッシュが8%~15%、120~140メッシュが8%~15%、140~250メッシュが50%~60%、250~325メッシュが1%~4%、325メッシュ以下が≦2%である。
【0014】
好ましくは、上絵釉を施釉する前に生素地の温度は65℃~70℃である。
【0015】
好ましくは、上絵釉は、比重が1.46~1.47であり、施釉量が500~550g/m2である。
【0016】
好ましくは、乾粒釉を流し掛ける前に生素地の温度は60℃~70℃である。
【0017】
好ましくは、焼成周期は95~110minであり、最高焼成温度範囲は1175℃~1223℃である。
【0018】
第二の発明は上記いずれかの製造方法によって製造された陶磁器質タイルを提供している。
【発明の効果】
【0019】
本発明の陶磁器質タイルは鏡面の平坦度が高く透明度が高い釉面を有し、版面模様の細部が複雑で版面の色が深い設計に対して明晰な釉面効果を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は下記の実施形態を結び付けて本発明をさらに説明する。下記の実施形態は本発明を説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。以下の各含有率は、特に指定がない限り、質量含有率を意味する。
【0021】
まず、生素地を調製する。生素地は公知の陶磁原料で一般的な方法によって調製してもよく、例えば、順次に、生素地用原料をボールミルで粉砕し、粉末を噴射して造粒し、プレスで乾式成型し、乾燥窯で乾燥させることにより、乾燥生素地が得られる。乾燥時間は1~1.2hであってもよく、乾燥生素地の含水率は0.5%以内に抑えてもよい。
【0022】
次に、生素地に上絵釉を施釉する。上絵釉を施釉する前に生素地の温度を65℃~70℃に抑えることが好ましい。この温度範囲内では、生素地タイルが施釉ブースから出された後に釉面が乾燥していることを効果的に保証でき、したがって、ほこりが未乾燥釉面に落ちることによる焼成欠陥の発生確率を減らし、製品の品質を向上させる。上絵釉の配合は特に限定されず、本分野によく使用される上絵釉の配合を使用してもよい。一実施形態では、上絵釉の化学組成は、質量百分率で、強熱減量が3.00%~5.00%、SiO2が57.00%~60.00%、Al2O3が23.00%~25.00%、Fe2O3が0.30%~0.40%、TiO2が0.10%~0.20%、CaOが0.30%~0.40%、MgOが0.10%~0.30%、K2Oが4.00%~6.00%、Na2Oが2.00%~3.00%、ZrO2が6.00%~12.00%である。当該化学組成による上絵釉では、白色度が高く焼成温度範囲が広く、多種の陶磁インクは発色に優れる。
【0023】
上絵釉を施釉する方式は吹き掛け施釉、流し掛け施釉などを含むが、これらに限定されるものではない。上絵釉は比重が1.46~1.47であってもよく、施釉量が500~550g/m2であってもよい。
【0024】
次に、上絵釉にパターンを印刷する。パターンを印刷する方式は特に限定されず、本分野でよく使用される印刷方法を採用してもよく、その中で、より明晰なパターンが得られるようにインクジェット印刷が好ましい。
【0025】
続いて、生素地タイルに乾粒釉を流し掛ける。乾粒釉を流し掛ける前に生素地タイルの温度を60℃~70℃に抑えることが好ましい。深い色の版面におけるインク量が多いため、流し掛けられた釉薬スラリーから水分が容易に排出できない。乾粒釉を流し掛ける前に生素地タイルの温度をこのような範囲に抑えることは生素地タイルから水分がタイムリーに排出することに有利であり、それによって、窯への焼成条件を満たし、水分がタイムリーに排出できないことによるタイル爆破の発生確率を減らす。
【0026】
乾粒を湿式流し掛けることにより、研磨された後に鏡面の平坦度が高く透明度が高い釉面が得られ、版面(製品の設計パターン)模様の細部が複雑な設計に対しても模様の走向が明確に見えるとともに、深い色の版面を生産するときにタイル面に細孔が多く発生しやすいという課題をある程度に解決でき、深い色の版面の開発に有利である。深い色の版面では版面のグレースケールが一致しないため、乾粒を乾式散布する工程においてグルーをスプレーすることで固定するプロセスがあっても、この方法では乾粒を分散させやすく、乾粒の表面が平らかでないことになり、焼成後に釉面が平らかでない現象が発生しやすい。湿式流し掛け工程において、印刷粉末とグルーと水とを加えて均一に混合するため、乾粒の不均一な現象を効果的に防ぐことができ、且つ、印刷粉末は溶融性と高温流動性を向上させる機能を有するため、深い色の版面の異なるグレースケールによる乾粒の不均一な溶融をうまく改善でき、これに基づいて、乾粒を乾式散布する工程で深い色の版面上に細孔が多いという課題が解決される。
【0027】
乾粒釉には乾粒A、乾粒B、乾粒Cの三種類の固体乾粒が含まれている。この三種類の乾粒は、異なる融点及び異なる膨張係数を有する。前記乾粒Aの軟化温度は1135℃~1175℃である。前記乾粒Bの軟化温度は980℃~1050℃である。前記乾粒Cの軟化温度は1020℃~1127℃である。実際の陶磁器生産において、陶磁器生産中の窯炉の焼成温度の変化は、タイル製品の形状に対して大きな影響を及ぼす。しかし、陶磁器生素地の母材を調整することは時間とエネルギーを消費する方法である。製品への影響を減少するために、このような融点をもつ三種類の乾粒を組み合わせ、実際の生産状況に応じて高温乾粒と低温乾粒との比率を適切に調整して乾粒釉面の全体的な溶融温度を変えることにより、タイルの形状を改善する目的を達成する。このような調整方法では、実際の生産において陶磁器の母材の調整によるコストと時間を節約することに有利であり、陶磁器の母材の安定性は、ある程度、焼成後の製品の各性能の安定性を効果的に保証できる。
【0028】
乾粒Aの40℃~600℃における膨張係数は7.3×10-6~7.4×10-6/℃であってもよく、例えば、7.3379×10-6/℃である。
【0029】
乾粒Bの40℃~600℃における膨張係数は6.6×10-6~6.7×10-6/℃であってもよく、例えば、6.6630×10-6/℃である。
【0030】
乾粒Cの40℃~600℃における膨張係数は6.9×10-6~7.0×10-6/℃であってもよく、例えば、6.9141×10-6/℃である。
【0031】
生産条件により、実際の生産中の生素地の膨張係数は全て釉面の膨張係数よりも高くて、生素地の膨張係数を下げることは困難である。このような膨張係数を有する三種類の乾粒の組み合わせによって、生産時に釉面の膨張係数の調節に対してより便利で高速な調整方法を提供し、釉面の膨張係数の調整可能なスペースをより広くするようにできる。
【0032】
いくつかの実施形態では、乾粒Aの化学組成は、SiO2が63.35%~64.21%、Al2O3が13.43%~13.98%、CaOが10.01%~11.32%、MgOが1.20%~1.33%、K2Oが4.87%~5.44%、Na2Oが0.0%~0.3%、ZnOが5.34%~6.74%、ZrO2が0.20%~0.37%である。
【0033】
いくつかの実施形態では、乾粒Bの化学組成は、SiO2が58.73%~59.81%、Al2O3が10.90%~13.30%、CaOが11.62%~13.93%、MgOが0.52%~1.12%、K2Oが5.25%~6.23%、Na2Oが1.50%~1.96%、ZnOが4.34%~6.49%、ZrO2が0.12%~0.29%である。
【0034】
いくつかの実施形態では、乾粒Cの化学組成は、SiO2が60.10%~62.35%、Al2O3が11.10%~11.70%、CaOが10.00%~11.52%、MgOが1.20%~1.75%、K2Oが5.10%~5.65%、Na2Oが1.92%~2.16%、ZnOが6.21%~6.84%、ZrO2が0.25%~0.30%である。
【0035】
乾粒釉では、乾粒Aの含有量は15%であってもよい。乾粒Bの含有量は12%~15%であってもよく、例えば、14%である。乾粒Cの含有量は13%~17%であってもよく、例えば、15%である。
【0036】
乾粒釉では、乾粒A、乾粒B、乾粒Cの含有量の合計は40%~44%であってもよい。
【0037】
乾粒釉における固体乾粒フリットの粒度組成は、60~80メッシュが8%~12%、80~100メッシュが6%~10%、100~120メッシュが8%~15%、120~140メッシュが8%~15%、140~250メッシュが50%~60%、250~325メッシュが1%~4%、325メッシュ以下が≦2%であってもよい。このような粒度組成により、乾粒釉はベルジャーによる流し掛け施釉に適用されるようにでき、線形流し掛け施釉器と比較すれば、タイル面全体における乾粒釉量の均一性をより効果的にコントロールでき、製品は焼成過程においてより高い平坦度が得られるようにできる。
【0038】
乾粒釉は、5%~7%の印刷粉末と、35%~38%のグルーと、10%~13%の水が含まれてもよい。
【0039】
グルーは、主に乾粒を均一に分散させ、スラリーの懸濁性能を調整するように機能する。使用されるグルーの表面張力は、インクの表面張力に近い(等しいのが好ましい)。例えば、インクの表面張力は28mN・m-1~34mN・m-1の場合、グルーの表面張力も28mN・m-1~34mN・m-1にする。グルーは、当該分野でよく使用される釉薬グルーを高粘度(例えば、2%の水溶液において粘度≧800~1200mPa・s)のカルボキシメチルセルロースと混合することで調製されることができ、例えば、100:0.7~0.9(例えば、100:0.8)の比率で混合される。
【0040】
当該実施形態では、乾粒釉薬には大量のグルー及び少量の水が含まれるため、生産及び使用中の乾粒釉薬スラリーの流動及び懸濁性能を効果的に保証し、乾粒フリットが凝集し沈殿する現象を抑制する。この範囲の含水量では印刷粉末の溶解性を保証できるため、溶解はより均一であり、過飽和によって凝集し沈殿する現象は発生しない。この範囲のグルー含有量では、乾粒釉の接着性能を向上させるだけでなく、固定剤として機能することもできる。グルーの表面張力の範囲は、インクメーカーから提供されたインクの表面張力(提供されたインクの表面張力データは28mN・m-1~34mN・m-1である)を基に、グルーの表面張力がインク張力に適応するように調整されたものであり、これによって、インクジェット印刷の設計パターンは、両方の表面張力の大きな相違によって排斥して、パターンを印刷する領域における乾粒釉薬を外側に収縮させ、パターンの表面に乾粒釉薬が付着せず、焼成後の乾粒釉薬が脱落する欠陥がないことを保証できた。
【0041】
印刷粉末とは、長石粉末、石灰石粉末、石英粉末の三種類の粉末を組み合わせて使用するものである。そのうち長石粉末の含有量は45%~50%であってもよく、石灰石粉末の含有量は15%~17%であってもよく、石英粉末の含有量は35%~40%であってもよい。印刷粉末は、溶融性を向上するように機能し、且つ、当該システムでは、ス、乾粒釉薬の焼成温度、高温流動性、及び乾粒釉薬の流速度をより適切に調節でき、ラリーは優れた流動性を有することを保証する。
【0042】
いくつかの実施形態では、印刷粉末の化学組成は表1に示されている。
【0043】
【0044】
乾粒釉フリットの化学組成は、質量百分率で、強熱減量が0.50%~2.00%、SiO2が60.50%~65.00%、Al2O3が12.00%~14.00%、Fe2O3が0.05%~0.20%、TiO2が0.05%~0.10%、CaOが9.00%~11.00%、MgOが1.00%~2.00%、K2Oが4.00%~8.00%、Na2Oが0.00%~0.05%、ZnOが1.87%~2.32%、ZrO2が0.01%~0.03%であってもよい。ここでの前記化学組成とは、印刷粉末、グルー及び水が含まれていないものである。
【0045】
好ましい実施形態では、乾粒釉は、比重が1.52~1.54であり、流速が32~35秒である。ここでの流速とは、8mm口径の流速カップに測定対象物を充填し、流量カップの下部の小穴を開けて測定対象物を流し、流れの開始から終了までの時間を測定対象物の流速として記録する。乾粒釉の比重と流速を上記範囲に抑えることにより、乾粒釉スラリーの沈殿現象を効果的に改善し、スラリーは優れた懸濁性及び流動性を有するようにできる。乾粒釉の施釉量は900~1200g/m2であってもよい。
【0046】
次に、得られた生素地タイルを乾燥させる。乾燥温度を140℃~150℃に抑えてもよく、乾燥後の水分を1.0%以内に抑えてもよい。
【0047】
次に、生素地タイルを焼成する。焼成周期は95~110minであってもよく、乾粒釉フリットは割合関係が調整可能なものであるため、その最高焼成温度範囲はより広く調整可能で、1135~1223℃であってもよい。
【0048】
次に、研磨(フルポリッシュ)する。いくつかの実施形態では、研磨ライン変量は表2に示されている。
【0049】
【0050】
表2のメッシュ数はモジュールのメッシュ数であり、セット数はモジュールのセット数であり、圧力は研磨ヘッドの圧力である。
【0051】
表2に示される研磨ライン変量を使用することにより、灰色の版面で黄色の研磨エッジが発生しやすく透過しやすいことを改善できる。
【0052】
研磨された後、エッジ研磨、等級付け、梱包、倉庫保管などの後処理を行ってもよい。
【0053】
本発明の製造方法による陶磁器質タイルは、鏡面の平坦度が高く透明度が高い釉面を有し、特許文献1に関わる乾粒釉工程と比較すれば、製品は同じ鏡面の平坦度を有する条件下で、本発明におけるグルー及び印刷粉末の特性は、乾粒固体フリットの乾粒釉薬での分散均一性を効果的に確保して、乾粒釉を流し掛ける過程においてタイル面全体における乾粒釉量の等方性の効果を実現することができ、高粘度粘着性は、釉面乾燥後に乾粒固体フリットが吹き散らされることを防ぐことを確保して、窯に入る前の乾粒釉面の平坦度を保証する。さらに、当該乾粒釉は高温溶融時に優れた流動性を有するため、焼成後により高い平坦度が得られ、製品に対しては後期の研磨工程に深く研磨しなくても鏡面の平坦度が高い釉面効果が得られ、同じ条件下で生産コストを節約することができる。本発明では、乾粒釉を調製するにおいて水分比重は特許文献1におけるものよりも少なく、生産及び使用中の乾粒釉スラリーの流動、懸濁性能を効果的に保証し、乾粒フリットの沈殿現象を減少するとともに、スラリーを流し掛けた生素地タイルの乾燥周期を短縮し、エネルギー消費量を削減し、生産周期を短縮する。固体乾粒フリットの粒度組成関係のため、当該工程では生産過程においてベルジャーで流し掛ける方式を使用し、線形流し掛け施釉器と比較すれば、タイル面全体における乾粒釉量の均一性をより効果的にコントロールし、製品は焼成過程においてより高い平坦度が得られるようにできる。同時に、本発明で使用される印刷粉末は、長石粉末、石灰石粉末及び石英粉末の組み合わせであるため、乾粒フリットが高温溶融時に優れた流動性を有するようにし、釉面の平坦度を促進する。釉面の平坦度が高いほど、研磨工程でのモジュールの損失が少なくなり、モジュールの耐用年数が長くなり、生産コストが節約される。
【0054】
本発明では、平坦度を確保するとともに0.35~0.45mmの釉面の有効厚さを得られる。浅い色の版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル4に達すことができ、深い色版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル3に達することができる。
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。下記の実施例は本発明に対する更なる説明に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、当業者が本発明の上記内容に基づいてなされる非本質的な改良と調整は共に本発明の保護範囲に属する。下記の例における具体的な工程変量なども適合範囲内の一例に過ぎず、即ち、当業者が本発明の説明に基づいて適当な範囲内で選択できるものであり、下記例の具体的な数値に限定されるものではない。
【0056】
実施例1
【0057】
1、プレスでタイルを押し固める。
【0058】
2、乾燥窯で乾燥させる。乾燥時間は1hである。乾燥生素地の含水率を0.5%以内に抑える。
【0059】
3、上絵釉を吹き掛ける。上絵釉を吹き掛ける前に生素地タイルの温度は68℃である。上絵釉は比重が1.46であり、施釉量が500g/m2である。
【0060】
4、インクジェット印刷でパターンを印刷する。
【0061】
5、ベルジャーで乾粒釉を流し掛ける。乾粒釉を流し掛ける前に生素地タイルの温度は65℃である。乾粒釉の各構成成分の含有量は表3に示されている。
【0062】
表3に乾粒釉の構成成分が示されている。その関連比率関係は質量比の関係である。
【0063】
【0064】
乾粒Aの化学組成は、SiO2が63.37%、Al2O3が13.57%、CaOが10.21%、MgOが1.33%、K2Oが5.04%、Na2Oが0.0%、ZnOが6.13%、ZrO2が0.35%であり、乾粒フリットAは軟化温度が1135℃~1175℃であり、膨張係数が7.3379×10-6/℃である。
【0065】
乾粒Bの化学組成は、SiO2が59.78%、Al2O3が12.48%、CaOが11.74%、MgOが1.07%、K2Oが6.21%、Na2Oが1.96%、ZnOが6.47%、ZrO2が0.29%であり、乾粒Bは軟化温度が980℃~1050℃であり、膨張係数が6.6630×10-6/℃である。
【0066】
乾粒Cの化学組成は、SiO2が61.34%、Al2O3が11.49%、CaOが10.51%、MgOが1.75%、K2Oが5.64%、Na2Oが2.15%、ZnOが6.83%、ZrO2が0.29%であり、乾粒Cは軟化温度が1020℃~1127℃であり、膨張係数が6.9141×10-6/℃である。
【0067】
印刷粉末は45%長石粉末と、17%石灰石粉末と、38%石英粉末とを混合したものである。
【0068】
グルーは、釉薬グルー(意達加精密陶磁科技有限公司から購入)と粘度950mPa・sのカルボキシメチルセルロース(栄盛化工有限公司から購入)とを質量比100:0.8で混合したものである。
【0069】
乾粒釉フリットの化学組成は、強熱減量が1.50%、SiO2が63.84%、Al2O3が13.73%、Fe2O3が0.05%、TiO2が0.09%、CaOが10.84%、MgOが1.20%、K2Oが6.75%、Na2Oが0.02%、ZnOが1.97%、ZrO2が0.01%である。
【0070】
乾粒釉の粒度組成は、60~80メッシュが10%、80~100メッシュが8%、100~120メッシュが11%、120~140メッシュが9%、140~250メッシュが60%、250~325メッシュが1%、325メッシュ以下が1%である。
【0071】
乾粒釉は比重が1.53であり、流速が33秒であり、施釉量が1050g/m2である。
【0072】
6、窯前部に電気窯で乾燥させる。乾燥窯の温度を145℃に抑えて乾燥後の含水率を1.0%以内に抑える。
【0073】
7、ローラーハースキルンで低温高速で焼成する。焼成周期は102minであり、最高焼成温度は1176℃である。
【0074】
8、研磨する。研磨ライン変量は表2に示されている。
【0075】
製造された陶磁器質タイルは、平坦度を保証するとともにその釉面の有効厚さを0.42mmにすることができ、業界標準による施釉タイルの耐摩耗性試験方法に従って、サンプルを12cm×12cmにカットし施釉タイルの耐摩耗性試験器に置き、サンプル上に蓋を固定し、直径が異なる鋼球を割合に応じて加重し蓋に入れ、次に金剛砂3gを入れて水20mlを入れる。耐摩耗性試験によって耐摩耗性を測定することにより、浅い色の版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル4に達するができ、深い色の版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル3に達することができることがわかった。
【0076】
実施例2
【0077】
使用される乾粒A、乾粒B、乾粒C、印刷粉末及びグルーの成分、並びに下記以外の工程変量は全て実施例1と同じである。実施例1と異なるのは、その乾粒釉の割合関係は下記の通りである。
【0078】
【0079】
乾粒釉フリットの化学組成は、強熱減量が1.52%、SiO2が63.30%、Al2O3が13.53%、Fe2O3が0.15%、TiO2が0.05%、CaOが10.94%、MgOが1.80%、K2Oが6.75%、Na2Oが0.02%、ZnOが1.93%、ZrO2が0.01%である。
【0080】
乾粒釉の粒度組成は、60~80メッシュが11%、80~100メッシュが8%、100~120メッシュが10%、120~140メッシュが9%、140~250メッシュが60%、250~325メッシュが1%、325メッシュ以下が1%である。
【0081】
乾粒釉は比重が1.54であり、流速が35秒であり、施釉量が900g/m2である。
【0082】
ローラーハースキルンで低温高速で焼成する。焼成周期は96minであり、最高焼成温度は1193℃である。
【0083】
研磨する。研磨ライン変量は表2に示されている。
【0084】
製造された陶磁器質タイルは、平坦度を保証するとともにその釉面の有効厚さを0.37mmにすることができ、浅い色の版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル4に達することができ、深い色の版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル3に達することができる。
【0085】
実施例3
【0086】
使用される乾粒A、乾粒B、乾粒C、印刷粉末及びグルーの成分、並びに下記以外の工程変量は全て実施例1と同じである。実施例1と異なるのは、その乾粒釉の割合関係は下記の通りである。
【0087】
【0088】
乾粒釉フリットの化学組成は、強熱減量が1.45%、SiO2が63.08%、Al2O3が13.93%、Fe2O3が0.13%、TiO2が0.05%、CaO:11.00%、MgOが1.60%、K2Oが6.72%、Na2Oが0.02%、ZnOが2.01%、ZrO2が0.01%である。
【0089】
乾粒釉の粒度組成は、60~80メッシュが12%、80~100メッシュが9%、100~120メッシュが14%、120~140メッシュが8%、140~250メッシュが55%、250~325メッシュが1%、325メッシュ以下が1%である。
【0090】
乾粒釉は比重が1.52であり、流速が35秒であり、施釉量が1200g/m2である。
【0091】
ローラーハースキルンで低温高速で焼成する。焼成周期は98minであり、最高焼成温度は1186℃である。
【0092】
研磨する。研磨ライン変量は表2に示されている。
【0093】
製造された陶磁器質タイルは、平坦度を保証するとともにその釉面の有効厚さを0.44mmにすることができ、浅い色の版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル4に達することができ、深い色の版面に対してその釉面耐摩耗性はレベル3に達することができる。