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7288976患者に切開マーカーを投影するための方法およびシステム
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  • -患者に切開マーカーを投影するための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】患者に切開マーカーを投影するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230601BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20230601BHJP
   A61B 6/08 20060101ALI20230601BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20230601BHJP
【FI】
A61B6/00 390C
A61B6/03 377
A61B6/08 303
A61B34/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021564620
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2020076357
(87)【国際公開番号】W WO2021058451
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/075678
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514130426
【氏名又は名称】ブレインラボ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン,ゲオルグ
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-248098(JP,A)
【文献】特開2003-010346(JP,A)
【文献】国際公開第00/064223(WO,A2)
【文献】特開平01-288250(JP,A)
【文献】特開2007-007400(JP,A)
【文献】特開2018-046916(JP,A)
【文献】国際公開第2010/026785(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガントリー(2)と、該ガントリー(2)に対して調整可能な少なくとも1つのレーザー(5)とを含む医用画像システム(1)を用いて、切開マーカー(I1,I2)を患者に投影する方法であって、
- 患者の骨構造の少なくとも一部の透視画像を、患者に向かう視線方向から撮影するステップであって、前記少なくとも1つのレーザー(5)は、前記透視画像を撮影するときに、前記患者上の画像の位置を示す撮影マーカーを投影する、ステップと、
- 前記透視画像に仮想マーカー(V1,V2)を設定するステップと、
- 前記仮想マーカー(V1, V2)に応じた切開マーカー(I1, I2)を前記視線方向とは異なる投影方向から患者に投影するように、前記少なくとも1つのレーザー(5)を制御するステップと、
- 前記透視画像内の前記仮想マーカー(V1 ,V2)の位置を変更するステップと、
- 前記少なくとも1つのレーザー(5)を前記仮想マーカー(V1,V2)の変更された位置に応じて制御し、対応する切開マーカー(I1,I2)の位置を実時間で適合させるステップと、を含み、
初期仮想マーカーが前記透視画像の上に重ねられ、該初期仮想マーカーの位置は、患者上の前記撮影マーカーの位置に対応し、
前記仮想マーカーを得るために前記初期仮想マーカーの位置を変更するステップをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記視線方向と前記投影方向の間の角度は、85°と95°の間にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仮想マーカーは、点であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのレーザー(5)が、前記切開マーカーとして点または十字線(I1)を投影することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記骨構造が脊椎の少なくとも一部を含み、前記仮想マーカー(V1,V2)が脊椎上の垂直位置を示すことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザー(5)は、前記切開マーカーとして線(I1,I2)を投影することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
- 前記透視画像に第2の仮想マーカーを設定するステップと、
- 前記第2の仮想マーカーに従って第2の切開マーカーを投影するように、前記少なくとも1つのレーザ(5)を制御するステップと、をさらに含む請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ガントリー(2)と、該ガントリー(2)に対して調整可能な少なくとも1つのレーザー(5)とを含む医用画像システム(1)に接続されたコンピュータ(8)上で実行されると、該コンピュータに、
- 患者の骨構造の少なくとも一部の、患者に向かう視線方向からの透視画像を取得するステップであって、前記少なくとも1つのレーザー(5)は、前記透視画像を撮影するときに、前記患者上の画像の位置を示す撮影マーカーを投影する、ステップと、
- 前記透視画像内の仮想マーカー(V1 ,V2)を表すユーザ入力を受信するステップと、
- 前記仮想マーカーに応じた切開マーカー(I1、I2)を前記視線方向とは異なる投影方向から患者に投影するように、前記少なくとも1つのレーザー(5)を制御するための制御パラメータを出力するステップと、
- 前記透視画像内の前記仮想マーカー(V1 ,V2)の位置を変更するためのユーザ入力を受信するステップと、
- 前記少なくとも1つのレーザー(5)を前記仮想マーカー(V1,V2)の変更された位置に応じて制御し、対応する切開マーカー(I1,I2)の位置を実時間で適合させるための制御パラメータを出力するステップと、を実行させ
初期仮想マーカーが前記透視画像の上に重ねられ、該初期仮想マーカーの位置は、患者上の前記撮影マーカーの位置に対応し、
前記仮想マーカーを得るために前記初期仮想マーカーの位置を変更するステップをさらに実行させる、プログラム。
【請求項9】
請求項に記載のプログラムが格納された、および/または請求項に記載のプログラムを実行する、コンピュータ(8)。
【請求項10】
請求項に記載のコンピュータ(8)と、ガントリー(2)および該ガントリー(2)に対して調整可能な少なくとも1つのレーザー(5)を含む医用画像システム(1)と、を含むシステム。
【請求項11】
請求項に記載のプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に切開マーカーを投影するための方法、それに対応するコンピュータプログラム、そのようなプログラムを記憶したプログラム記憶媒体、およびそのプログラムを実行するコンピュータ、並びに前述のコンピュータを含む医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手術の計画や手術直前の情報確認のため、透視画像またはX線画像を得るための医用画像システムが使用される。本明細書では、患者に切開マーカーを投影する機能を追加することによって、このような医用画像システムの機能が拡張される。
【0003】
医用画像システムは、典型的には、円錐形のX線ビームを放射するX線源を含む。このX線ビームは、任意選択で、コリメーターを用いて成形することができる。医用画像システムは、典型的には、X線ビームが患者を通過した後にX線ビームを検出するための二次元X線検出器をさらに含む。このような医用画像システムを使用して、二次元の透視画像を撮影することができる。但し、医用画像システムは、扇形のX線ビームを放射するX線源と、扇形のX線ビームに対応する線状のX線検出器とを含むことも可能である。このような画像システムでは、一次元のX線画像が撮影されるが、医用画像システムを患者に対して相対的に移動させ、複数の一次元のX線画像を合成することで、二次元の透視画像を得ることができる。なお、X線ビームの中心は、医用画像システムの中心ビームとも呼ばれる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、例えば、ブレインラボ アーゲー社(Brainlab AG)の製品であるLoop-Xなどの医用画像システムまたは他の適切な画像システムと関連して、準備手順に使用することができる。
【0005】
以下に、本発明の態様、例および例示的なステップ、並びにそれらの実施形態が開示される。本発明の様々な例示的な特徴は、技術的に有利かつ実行可能である限り、本発明に従って組み合わせることができる。
【0006】
(本発明の例の簡単な説明)
次に、本発明の特定の特徴を簡単に説明する。この説明は、本発明を、この節において説明される1つの特徴または複数の特徴の組み合わせのみに限定するものではない。
【0007】
本明細書は、医用画像システムおよび少なくとも1つのレーザーを搭載した可動式のガントリーを用いて、患者に切開マーカーを投影する技術に関する。少なくとも1つのレーザーは、ガントリーに対して調整可能である。医用画像システムは、患者の少なくとも一部の透視画像またはX線画像を撮影するために使用される。次いで、関心のある点または領域(以下、関心点または関心領域ともいう)、例えば切開する点または少なくとも1本の線など、を示すために、撮影された画像に仮想マーカーが設定される。次いで、患者の表面上に関心点または関心領域を示し、関心点または関心領域が外部から見えるようにするために、レーザーが使用される。
【0008】
(本発明の一般的な説明)
この節では、例えば、本発明の可能な実施形態を参照することによって、本発明の一般的な特徴を説明する。
【0009】
一般に、本発明は、第1の態様においては、ガントリーと、ガントリーに対して調整可能な少なくとも1つのレーザーとを含む医用画像システムを用いて、患者に切開マーカーを投影する方法を提供することにより、上述した目的を達成するものである。
【0010】
この方法は、患者の少なくとも一部、特に患者の骨構造(例えば、患者の脊椎)の少なくとも一部、の透視画像を撮影するステップを含む。医用画像システムは、透視画像を撮影することができ、したがって、例えばX線源およびX線検出器を含んでいる。一実施形態では、唯一つの透視画像が撮影される。次いで、透視画像は、表示装置に表示される。
【0011】
透視画像は、患者に向かう視線方向から撮影される。視線方向は、患者に対する医用画像システムの位置を示すものである。視線方向は、例えば、X線源から放射されたX線ビームの中心と一致する線など、医用画像システムに対して定められた線の方向を示す。
【0012】
本方法は、さらに、透視画像に仮想マーカーを設定するステップを含む。この仮想マーカーは、例えば、手術によって処置されるべき点または領域、あるいは切開の位置を示すなど、関心点または関心領域を示す。
【0013】
本方法は、仮想マーカーに応じた切開マーカーを、視線方向とは異なる投影方向から患者に投影するように、少なくとも1つのレーザーを制御するステップをさらに含む。言い換えれば、患者に投影された切開マーカーは、透視画像内の仮想マーカーの位置に対応する患者の表面上の位置を示している。
【0014】
本明細書において、「レーザー」は、レーザービームを発生させる装置を指す。このビームは、例えば、レーザービームが直線であるような点状、またはレーザービームが特定の開き角度で平面の一部分を覆うような扇形状など、様々に異なる形状をとり得る。この開き角度は、レーザービームの2つの境界線の間の角度を定める。
【0015】
投影方向は、切開マーカーが患者に投影される方向である。切開マーカーが単一のスポット(点)である場合、投影方向は、通常、レーザービームの方向に等しい。レーザーが患者に線を投影するために扇形に広がっている場合、投影方向は、例えば、扇形の中心軸である。切開マーカーが十字線のように交差する2本の線を含む場合、投影方向は、例えば、2本の線の交点と(レーザー光源または偏向ミラーのような)レーザービームの原点とを結ぶ線である。
【0016】
一実施形態では、視線方向と投影方向の間の角度は、90°、85°と95°の間、80°と100°の間、または、70°と110°の間である。
【0017】
例えば、患者の側面から透視画像を撮影するように視線方向が患者の側面方向である場合、切開マーカーは、例えば、患者の後面(背面)または前面に投影される。
【0018】
レーザーは、例えば、医用画像システムとの間で校正される。これは、レーザーの医用画像システムに対する位置が既知であることを意味し、医用画像システムに対するレーザービームの位置を調整することができることを意味する。この校正は、例えば、ファントムまたは逆投影法を用いて得ることができる。レーザーの医用画像システムに対する向きが既知であれば、レーザーの撮影面に対する向きも既知である。
【0019】
本方法には、患者の画像内に関心点または関心領域をマークすることができ、これによって患者を検討することが可能となること、そして、次いで関心点または関心領域に対応する位置を別の方向から患者の表面上に示すことができること、という利点がある。これは、マーカーなどの追加のツールまたは照射の繰り返しが不要であり、投影方向から撮影された画像では認識できない可能性のある患者の撮影された部分の詳細を示す画像に、切開マーカーを設定できる点で有利である。
【0020】
透視画像を撮影するときの医用画像システムの視線方向が既知であるため、医用画像システムの基準系における画像検出器の撮影面の位置、したがって透視画像の位置は既知である。そして、切開マーカーの位置も医用画像システムの基準系で定められる。これは、透視画像の撮影時と切開マーカーの投影時に患者が医用画像システムに対して同じ位置にいる限り、患者を追跡する、または登録する必要はないことを意味する。
【0021】
1つの応用例において、透視画像は患者の脊椎の少なくとも一部を示しており、透視画像内で1つの椎骨または複数の椎骨をマークし、患者内の選択された1つの椎骨または複数の椎骨の位置を切開マーカーで示すことができる。椎骨の位置を外部から直接検知することはできず、場合によって棘突起の位置が検知されるだけであり、例えば肥満の患者などでは、脊椎の一部を直接検知することができない場合もある。しかし、椎骨の位置とその棘突起の間に普遍的な相関関係はないため、椎骨の実際の位置を把握することはできない。これは、本発明によって解決される。
【0022】
一実施形態では、少なくとも1つのレーザーは、撮影マーカーを患者上に投影する。撮影マーカーは、透視画像が撮影されるときの患者上の画像の位置を示すものである。撮影マーカーは、例えば、X線源の中心ビームを表す。言い換えれば、撮影マーカーは、患者が医用画像システムの視野内に正しく配置されるように、医用画像システムを患者に対して相対的に配置するために使用することができる。本実施形態において、撮影マーカーと、後の切開マーカーの投影のために、同じレーザーが使用されるものであってもよい。
【0023】
一実施形態では、初期仮想マーカーが透視画像に重ねて表示される。初期仮想マーカーの位置は、患者上の撮影マーカーの位置に対応している。これは、透視画像を撮影するときの医用画像システムの撮影方向が透視画像内に示されることを意味する。撮影マーカーがX線源の中心ビームを示す場合、初期仮想マーカーは、透視画像内の中心ビームの位置を示す。また、初期仮想マーカーは、例えば、透視画像内の患者上の撮影マーカーの長手方向の位置を示す。
【0024】
本方法は、一実施形態では、仮想マーカーを得るために初期仮想マーカーの位置を変更するステップをさらに含む。この位置は、例えばユーザ入力データに従って変更される。この際、ユーザ入力データは、初期仮想マーカーの意図された移動を表すものである。また、初期仮想マーカーは、透視画像に重ねられた後に仮想マーカーとなり、この仮想マーカーの位置に応じて切開マーカーが投影されるとも言える。このように、仮想マーカーの設定には、初期仮想マーカーの移動が含まれる。
【0025】
一般に、仮想マーカーの設定は、透視画像内の仮想マーカーを移動させる、例えばドラッグする、ことにより実行することができる。さらに、仮想マーカーの設定は、透視画像内の点をクリックすることにより実行することもできる。
【0026】
別の実施形態では、仮想マーカーは、例えば構造物の1つまたは複数のリストから構造物を選択することにより、構造物を示すことによって設定することができる。例えば、骨のランドマークのような構造物を示すことが可能である。この構造物は、透視画像内で自動的に検出され、それに応じて仮想マーカーが設定される。別の例では、透視画像に表示されている骨のリストが表示され、ユーザはそれらの骨のうちの1つを選択する。さらに、任意選択で、第2のステップにおいて、選択された骨のランドマークおよび/またはセクションのリストが表示され、ユーザがランドマークまたはセクションを選択すると、仮想マーカーが自動的に設定される。自動的に設定された仮想マーカーは、その後、ユーザが変更することができる。
【0027】
上記において、ユーザが選択を行うことは、その選択を示すユーザ入力を受け取ることが含まれる。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1つのレーザーを制御することは、少なくとも1つのレーザーの1つの並進次元における直線変位を実行すること、および、少なくとも1つのレーザーによって放射されるレーザービームの1つの軸回りの回転変位を実行すること、のうちの少なくとも1つを含む。一例では、直線変位および/または回転変位は、ガントリーに対して相対的に行われる。レーザービームの回転変位は、例えば、レーザービームの方向を変更するために調整可能なミラーを用いて実現することができる。レーザービームを変位させる1つの軸は、例えば、レーザービームの方向に直交するか、またはレーザービームが存在する平面内にある。
【0029】
ガントリーに対する変位により、ガントリーを患者に対して移動させることなく、切開マーカーを正しい位置に投影することができる。
【0030】
別の実施形態では、切開マーカーを投影するために少なくとも1つのレーザーを制御することは、例えば患者の垂直軸回りに、レーザーを回転させることを含む。垂直軸は、頭尾軸または長手軸とも呼ばれる。一実施形態では、レーザーは、円形の軌道上を移動する。レーザーは、例えばガントリーに対して相対的に、例えばガントリーの内部を、例えばレール上を、移動することができる。レーザーは、例えば、X線検出器と一緒に移動することができる。レーザーがガントリーに固定されている場合は、ガントリーまたはガントリーのレーザーが搭載された一部が回転を行う。レーザーの回転は、撮影マーカーの投影に使用されるレーザーが、切開マーカーの投影にも使用される場合に、特に有効である。
【0031】
一実施形態では、レーザーは、X線検出器に取り付けられている。切開マーカーが投影方向から投影され得るようにレーザー源を配置することは、任意選択で、X線検出器を患者の回りに、例えば患者の長手軸回りに、例えばガントリーと一緒にまたはガントリーに沿って回転させることが含まれる。X線検出器の回転は、X線検出器が透視画像の撮影に使用される位置から開始して、例えば90°、85°と95°の間、80°と100°の間、または70°と110°の間で行われる。レーザーがX線検出器に取り付けられているとは、レーザーがX線検出器に固定されている意味であってもよく、または、レーザーがX線検出器に対して、例えばレールに沿って、移動可能であるような取り付けを意味するものであってもよい。
【0032】
一実施形態では、仮想マーカーは点である。このような点は、例えば、患者内の単一のオブジェクトをマークすることができる。点は、例えばグラフィカルユーザインターフェースを使用して初期設定することができ、または、透視画像内で移動する既存の点とすることもできる。既存の点は、例えば、上述のように透視画像が撮影されたときの医用画像システムの中心ビームを示すものであってもよい。点は、十字線でマークすることもできる。
【0033】
本実施形態では、少なくとも1つのレーザーが、例えば、切開マーカーとして点または十字線を投影する。この点または十字線は、例えば、仮想マーカーで示された点に到達するための切開または最小の侵襲的な切断に適した点をマークすることができる。
【0034】
一実施形態では、仮想マーカーは、脊椎の垂直位置を示す。垂直位置とは、患者の長手軸に沿った位置を意味する。仮想マーカーは、例えば、切開マーカーによって示されるべき所望の切開の開始点または終了点を示すことができる。
【0035】
一実施形態では、少なくとも1つのレーザーによって放射されるビームは、患者の前後方向を指し示す。レーザービームは、例えば、患者の後面(背面)に投影され、仮想マーカーによって表される脊椎の垂直位置を示すことができる。
【0036】
一実施形態では、レーザーは、切開マーカーとして線を投影する。この線は、例えば、患者の水平面(横断面とも呼ばれる)に存在する。この線は、例えば、光学プリズムを用いて点状のビームを扇形に広げること、または、可動ミラーを用いてレーザービームを走査することで得ることができる。
【0037】
本方法は、一実施形態では、透視画像に第2の仮想マーカーを設定するステップをさらに含む。
【0038】
一実施形態では、第1の仮想マーカーは、所望の切開の第1の端部を示し、第2の仮想マーカーは、所望の切開の第2の端部を示す。しかし、第2の仮想マーカーを関心領域の任意の点に使用することも可能である。本実施形態では、別のステップとして、第2の仮想マーカーに従って第2の切開マーカーを投影するように、少なくとも1つのレーザーを制御する。これは、2つの仮想マーカーに対応する2つの切開マーカーが投影されることを意味する。ただし、3つ以上の仮想マーカーを設定し、少なくとも1つのレーザーで3つ以上の切開マーカーを投影することも可能である。
【0039】
第2の切開マーカーは、第1の切開マーカーを投影するレーザーと同じレーザーによって投影されるものであってもよい。この際、例えば、レーザービームを偏向するためのミラーを使用することができる。しかし、第2の切開マーカーを投影するために、別のレーザーを使用するものであってもよい。
【0040】
本方法は、一実施形態では、透視画像内の仮想マーカーの位置を変更するステップと、少なくとも1つのレーザーを仮想マーカーの変更された位置に応じて制御し、対応する切開マーカーの位置を実時間で適合させるステップと、をさらに含む。これは、仮想マーカーの位置を透視画像内で調整し、かつ仮想マーカーの位置の変更の結果を患者の表面上で直ちに視覚化することができることを意味する。
【0041】
また、本発明は、移動可能なガントリーと、ガントリーに対して相対的に調整可能な少なくとも1つのレーザーとを含む医用画像システムに接続されたコンピュータ上で実行されると、そのコンピュータに、患者の脊椎の少なくとも一部の透視画像を取得するステップと、透視画像内の仮想マーカーを表すユーザ入力を受信するステップと、仮想マーカーに応じて切開マーカーを患者に投影するように少なくとも1つのレーザーを制御するための制御パラメータを出力するステップと、を実行させるプログラムにも関する。
【0042】
このプログラムは、上述した方法に対応しているため、同様の技術的効果を得ることができる。ただし、このプログラムは、単にデータ処理の側面に関連する。
【0043】
本発明は、さらに、上記プログラムが格納された、および/または、上記プログラムを実行するコンピュータに関する。
【0044】
本発明は、さらに、上記コンピュータと、ガントリーおよびガントリーに対して調整可能な少なくとも1つのレーザーを含む医用画像システムと、を含むシステムに関する。
【0045】
発明は、さらに、上記プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0046】
例えば、本発明には、侵襲的手順は含まれない。この侵襲的手順は、身体に対する実質的な物理的干渉を意味し、医療の専門家によって実施されることを要するともともに、必要とされる専門的配慮と技能をもって実施された場合でも、健康に対する実質的な危険性を伴うものである。
【0047】
例えば、本発明は、切開を行うステップを含んでいない。より詳細には、本発明には、任意の外科的または治療的な活動は含まれない。代わりに、本発明は、切開の準備への適用に向けられている。この準備だけのために、本発明を実施することによって、外科的または治療的な活動、特に外科的または治療的なステップ、が必要とされることはなく、示唆されることもない。本発明の切開マーカーは、むしろ、例えば人がペン等を用いて患者の皮膚にマークを描く際のマーカーとして使用することができる。
【0048】
(デバイスまたはシステムの使用)
また、本発明は、患者に切開マーカーを投影するための装置/システムまたはその任意の実施形態の使用にも関するものである。
【0049】
(定義)
この節では、本開示の一部として、本開示で使用される特有の用語の定義が提供される。
【0050】
(コンピュータが実行する方法)
本発明に従う方法は、例えば、方法のステップを実行するための、または方法のステップを適切に実行するようにエンティティに指示するための、コンピュータが実行する方法である。例えば、コンピュータ(例えば、少なくとも1つのコンピュータ)は、本発明に従う方法の全てのステップまたは幾つかのステップ(すなわち、全てのステップよりも少数のステップ)を実行することができる。本発明に係るコンピュータが実行する方法の一実施形態は、データ処理方法を実行するためにコンピュータを使用することである。コンピュータが実行する方法の一実施形態は、コンピュータが本方法の1つの、複数の、または全てのステップを実行するように操作されるようなコンピュータの操作に関する方法である。
【0051】
コンピュータは、例えば電子工学的および/または光学的に、データを(工学的に)処理するために、例えば、少なくとも1つの処理装置(プロセッサ)と例えば少なくとも1つの記憶装置(メモリー)とを含んでいる。処理装置は、例えば、半導体である物質または組成物からなる。この半導体または組成物は、例えば少なくとも部分的にn型および/またはp型の、例えばII族、III族、IV族、V族、VI族の半導体材料のうちの少なくとも1つの、半導体であり、例えば(ドープされた)ケイ素および/またはガリウム・ヒ素である。説明されている計算する(算出する)ステップまたは決定する(特定する、定める、判定する)ステップは、例えば、コンピュータが実行する。決定するステップまたは計算するステップは、例えば、技術的方法のフレームワーク、例えばプログラムのフレームワーク、においてデータを決定する(特定する、定める、判定する)ステップである。コンピュータは、例えば、任意の種類のデータ処理装置であり、例えば電子データ処理装置である。コンピュータは、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノートブック型パーソナルコンピュータ、ネットブック型パーソナルコンピュータ等の、一般的にコンピュータと見なされる装置であってもよい。但し、コンピュータは、例えば携帯電話機または埋め込み型プロセッサ等の、任意のプログラム可能な装置であってもよい。
【0052】
コンピュータは、例えば、複数の「下位コンピュータ」のシステム(ネットワーク)を含むものであってもよい。ここで、各下位コンピュータは、それ自体がコンピュータに相当する。「コンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータ、例えばクラウドサーバを含む。また「コンピュータ」という用語は、サーバリソースを含む。「クラウドコンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータシステムを含む。クラウドコンピュータシステムは、例えば、少なくとも1つのクラウドコンピュータを含むシステム、および、例えば、サーバファームなどのように、動作可能に相互接続された複数のクラウドコンピュータを含む。このようなクラウドコンピュータは、好ましくは、ワールドワイドウェブ(WWW)のような広域ネットワークに接続され、全てワールドワイドウェブに接続された複数のコンピュータからなるいわゆるクラウド中に存在する。このような基盤構造は、「クラウドコンピューティング」に使用される。クラウドコンピューティングとは、特定のサービスを提供するコンピュータの物理的位置および/または構成についてエンドユーザが知る必要のない計算、ソフトウェア、データのアクセスおよびストレージサービスをいう。この点において、「クラウド」という用語は、例えば、インターネット(ワールドワイドウェブ)の暗喩として使用される。例えば、クラウドは、そのサービスとして計算の基盤構造を提供する(IaaS)。クラウドコンピュータは、本発明に係る方法を実行するために使用されるオペレーティングシステムおよび/またはデータ処理アプリケーションのための仮想ホストとして機能するものであってもよい。クラウドコンピュータは、例えば、Amazon Web Services(登録商標)によって提供される Elastic Compute Cloud(EC2)である。
【0053】
コンピュータは、例えば、データの入出力および/またはアナログ-デジタル変換を実行するためのインターフェースを含む。このデータは、例えば、物理的特性を表すデータおよび/または工学的信号から生成されたデータである。工学的信号は、例えば、(工学的)検出装置(例えば、マーカーデバイスを検出するための装置)および/または(工学的)分析装置(例えば、(医療用)イメージングの方法を実行する装置)であり、この場合、工学的信号は、例えば、電気信号または光信号である。工学的信号は、例えば、コンピュータにより受信または出力されたデータを表す。
【0054】
コンピュータは、好ましくは、表示装置に動作可能に結合される。表示装置は、コンピュータによって出力された情報を、例えばユーザに対して、表示することを可能にする。
表示装置の一例は、仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイス(仮想現実メガネまたは拡張現実メガネとも呼ばれる)であり、これをナビゲーションのための「ゴーグル」として使用することができる。このような拡張現実メガネの特定の例は、グーグル社製のグーグル・グラス(登録商標)である。拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスは、ユーザ相互作用による情報のコンピュータへの入力と、コンピュータによって出力された情報の表示の両方に使用することができる。表示装置の別の例は、標準的なコンピュータ用モニターである。このモニターには、例えば、表示装置上に画像情報のコンテンツを表示するために使用される信号を生成するためのコンピュータからの表示制御データを受信するために、コンピュータと動作可能に結合される液晶ディスプレイが含まれる。このようなコンピュータ用モニターの特定の実施形態は、デジタル・ライトボックスである。このようなデジタル・ライトボックスの一例は、ブレインラボ社(Brainlab AG)の製品であるBuzz(登録商標)である。モニターは、例えば携帯型の、可搬型のデバイスのモニターであってもよい。携帯型のデバイスは、例えば、スマートフォン、またはパーソナル・デジタル・アシスタント、または、デジタル・メディア・プレーヤーである。
【0055】
また、本発明は、コンピュータ上で実行されるプログラムであって、コンピュータ上で実行されたときに、本明細書に記載された方法のうちの1つ、複数、または全てのステップをコンピュータに実行させるプログラム、および/または、上記プログラムが(特に、非一時的な形式で)格納されたプログラム記憶媒体、および/または、上記プログラム記憶媒体を含むコンピュータ、および/または、プログラム(例えば、本明細書に記載された方法の任意のまたは全てのステップを実行するために適したコード手段を含む上記プログラム)を表す情報を搬送する電磁搬送波のような、(物理的な、例えば電気的な、例えば工学的に生成された)信号波、例えばデジタル信号波、にも関する。
【0056】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア(これには、ファームウェア、常駐型ソフトウェア、マイクロコード等が含まれる)によって実現され得る。本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、コンピュータプログラム製品の形をとるものであってもよい。コンピュータプログラム製品は、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体として実現されるものであってもよい。このデータ記憶媒体には、命令実行システム上でまたは命令実行システムと関連して使用するために、このデータ記憶媒体内に具体的に表されている、コンピュータが使用可能な、特にコンピュータが読み取り可能なプログラム命令、「コード」、または「コンピュータプログラム」が含まれる。このようなシステムは、コンピュータであってもよい。コンピュータは、本発明に従うコンピュータプログラム要素および/またはプログラムを実行するための手段を含むデータ処理装置、例えば、コンピュータプログラム要素を実行するためのデジタルプロセッサ(中央処理装置またはCPU)を含み、さらに、任意選択で、コンピュータプログラム要素を実行するために使用されるデータ、および/または、コンピュータプログラム要素を実行することによって生成されたデータを保存するための揮発性記憶装置(特に、ランダムアクセスメモリーまたはRAM)を含むデータ処理装置であってもよい。
【0057】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体は、命令実行システム、命令実行装置、または命令実行デバイス上で、または、これらのシステム、装置、デバイスと関連して使用するためのプログラムについて、それを含む、それを保存する、それと通信する、それを伝搬させる、またはそれを輸送することが可能な任意のデータ記憶媒体とすることができる。コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、または半導体のシステム、装置、またはデバイスであってもよく、もしくは、例えばインターネットのような伝搬媒体であってもよいが、これらに限定されるものではない。コンピュータが使用可能なまたはコンピュータが読み取り可能なデータ記憶媒体は、例えば、プログラムが印刷された紙または他の適切な媒体ですらあってもよい。それは、例えば、紙または他の適切な媒体を光学的にスキャンすることによりプログラムを電子的に取り込み、次いで、適切な手段によりコンパイル、インタープリット、または、他の処理をすることが可能であるからである。データ記憶媒体は、好ましくは、不揮発性のデータ記憶媒体である。
【0058】
本明細書に記載されたコンピュータプログラム製品、並びに、任意のソフトウェアおよび/またはハードウェアは、例示的な実施形態において、本発明の機能を実施するための様々な手段の形をとるものである。コンピュータおよび/またはデータ処理装置は、例えば、ガイダンス情報を出力するための手段を含むガイダンス情報装置を含むものであってもよい。ガイダンス情報は、例えば、視覚的指示手段(例えば、モニターおよび/またはランプ)による視覚的な方法、および/または、音響的指示手段(例えば、スピーカーおよび/またはデジタル音声出力装置)による音響的な方法、および/または、触覚的指示手段(例えば、振動要素または機器に組み込まれた振動要素)による触覚的な方法により、例えばユーザに対して、出力されるものであってもよい。本明細書において、コンピュータは工学的コンピュータであり、例えば工学的な(例えば触知可能な)構成要素、例えば機械的な構成要素、および/または、電子的な構成要素を含むものである。本明細書にこのように記載された任意の装置は、工学的な、例えば触知可能な、装置である。
【0059】
(データの取得)
「データを取得する」という表現には、例えば、(コンピュータが実行する方法のフレームワークにおいて)コンピュータが実行する方法またはプログラムがデータを決定する(特定する、定める、判定する)ことが含まれる。データを決定することには、例えば、物理量を測定し、その測定値を、例えばデジタルデータのような、データに変換すること、および/または、そのデータをコンピュータにより計算すること、特に、本発明に従う方法のフレームワークにおいてデータを計算する(および、例えば、出力する)ことが含まれる。本明細書に記載されている「決定する」ステップは、例えば、本明細書に記載されている決定を実行するためのコマンドを発行することを含むか、またはそのコマンドを発行することから構成される。例えば、このステップは、コンピュータ、例えばリモートコンピュータ、例えばリモートサーバ、例えばクラウドに、決定を実行させるためのコマンドを発行することを含むか、またはそのコマンドを発行することから構成される。その代わりにまたはそれに加えて、本明細書に記載されている「決定する」ステップは、例えば、本明細書に記載されている決定の結果としてのデータを受信すること、例えば、決定を実行させたそのリモートコンピュータから結果としてのデータを受信すること、を含むか、またはそのデータを受信することから構成される。例えば、「データを取得する」の意味には、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えば別のプログラム、該方法の先行するステップ、またはデータ記憶媒体からのデータを、例えばコンピュータが実行する方法またはプログラムによる後の処理のために、受け取ることまたは取り出すこと(例えば、そのデータがプログラムに入力されること)も含まれる。本発明に従う方法において、取得されるデータの生成は、本発明に従う方法の一部であってもよいが、そうである必要はない。したがって、「データを取得する」という表現は、例えば、データを受け取るために待機すること、および/またはそのデータを受け取ることを意味する場合もある。受け取られたデータは、例えば、インターフェースを介して入力されるものであってもよい。また、「データを取得する」という表現は、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えばデータ記憶媒体(例えば、ROM、RAM、データベース、ハードドライブ等)のようなデータ源から、または(例えば、別のコンピュータまたはネットワークから)インターフェースを介して、データを(能動的に)受け取るまたは取り出すためのステップを実行することを意味する場合もある。
【0060】
開示された方法または装置のそれぞれによって取得されるデータは、データストレージ装置中にあるデータベースから取得されるものであってもよい。このデータストレージ装置は、データベースとコンピュータとの間の、例えばデータベースからコンピュータへの、データ転送のために、コンピュータに動作可能に結合されるものである。コンピュータは、データを決定するステップのための入力として使用するためにデータを取得する。決定されたデータは、同じまたは別のデータベースに再び出力され、後の使用のために保存されるものであってもよい。このデータベースもしくは開示された方法を実行するために使用されるデータベースは、ネットワークデータストレージ装置またはネットワークサーバ(例えば、クラウドデータストレージ装置またはクラウドサーバ)、あるいはローカルデータストレージ装置(例えば、開示された方法を実行する少なくとも1つのコンピュータに動作可能に結合された大容量ストレージ装置)上に存在するものであってもよい。データは、取得ステップに先行する追加のステップを実行することによって、「使用可能な状態」にされるものであってもよい。データは、この追加のステップに従って、取得されるために生成される。例えば、データは、(例えば、分析装置によって)検出またはキャプチャーされる。
【0061】
その代わりに、または、それに追加して、データは、追加のステップに従って、例えばインターフェースを介して入力されるものである。例えば、生成されたデータは、(例えばコンピュータに)入力されるものであってもよい。データは、(取得ステップに先行する)追加のステップに従って、データ記憶媒体(例えば、ROM、RAM、CD、および/または、ハードドライブ)にデータを格納する追加のステップを実行することにより、本発明に従う方法またはプログラムのフレームワークにおいてそのデータが利用可能となるように、準備されるものであってもよい。したがって、「データの取得」には、取得されるべきデータを取得および/または準備するように、装置に命令することも含まれ得る。
【0062】
特に、データを取得するステップには、侵襲的手順は含まれない。この侵襲的手順は、身体に対する実質的な物理的干渉を意味し、医療の専門家によって実施されることを要するともともに、必要とされる専門的配慮と技能をもって実施された場合でも、健康に対する実質的な危険性を伴うものである。特に、データを取得するステップ、例えばデータを決定するステップには、外科的なステップは含まれておらず、かつ、特に、人間または動物の身体を手術または治療を用いて処置するステップは含まれていない。本方法によって使用される様々なデータを区別するために、データは、「XYデータ」等のように記載(または、参照)され、このデータが記述する情報(好ましくは、「XY情報」等と呼ばれる)の観点から定義される。
【0063】
(ランドマーク)
ランドマークは、解剖学的身体部位の定められた要素であり、この要素は、複数の患者の同じ解剖学的身体部位中で常に同一であるか、または、高い類似性をもって再現されるものである。典型的なランドマークは、例えば、大腿骨の上顆、あるいは、椎骨の横突起および/または後突起の先端部である。点(主要点または補助点)は、このようなランドマークを表すものであってもよい。また、身体部位の特徴的な解剖学的構造物上に(例えば、その表面上に)存在するランドマークによって、その構造物を表すこともできる。ランドマークは、解剖学的構造物の全体、または一点のみ、または部分を表すものであってもよい。ランドマークは、例えば、解剖学的構造物(例えば、目立つ構造物)上に存在するものであってもよい。このような解剖学的構造物の例としては、腸骨稜の後面が挙げられる。ランドマークの別の例は、寛骨臼の縁部によって(例えば、上記縁部の中央として)定められるものである。別の例において、ランドマークは、寛骨臼の底部または最深点を表し、これは、多数の検出点から得られる。このように、1つのランドマークは、例えば、多数の検出点を代表する場合もある。上述したように、ランドマークは、身体部位の特徴的な構造物に基づいて定められた解剖学的特徴を表すものであってもよい。さらに、ランドマークは、例えば、寛骨臼に対して動くときの大腿骨の回転中心のように、2つの身体部位の相対運動によって定められる解剖学的特徴を表すものであってもよい。
【0064】
以下に、本発明の背景的説明を示すとともに特定の実施形態を表す添付図面を参照して、本発明が説明される。但し、本発明の範囲は、図面の文脈において開示される特定の特徴によって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、医用画像システムを示す図である。
図2図2は、レーザーを含む検出器の詳細を示す図である。
図3図3は、本発明の方法を実行するコンピュータを模式的に示す図である。
図4図4は、本発明の方法のワークフローを示す図である。
図5a図5aは、2つの仮想マーカーを備える透視画像を示す図である。
図5b図5bは、2つの切開マーカーを備える患者の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1は、X線源3が搭載され、またX線検出器4が搭載されたガントリー2を含む医用画像システム1を模式的に示している。ガントリー2は、ベース部およびリング部を含んでおり、少なくともX線検出器4は、また任意選択でX線源3も、リング部内で回転可能である。ベース部2は車輪(図示せず)を含み、これによって、医用画像システム1を、例えば手術室に配置することができる。リング部は、ベース部に対して傾けることが可能なものであってもよい。X線源3は、患者(図示せず)の放射線写真を撮影するX線ビームを放射し、次いで、X線ビームは、検出器4を用いて検出され、人間が認識できる表示可能な画像に変換される。
【0067】
図2は、X線検出器4を展開して示す図である。X線検出器4は、互いに直交するX方向とY方向で定められる二次元の検出器パネル7を含む。検出器パネル7に隣接して、ガイドレール6a、6b、6cがあり、ガイドレール6aにはレーザー5a、5bが搭載され、ガイドレール6bにはレーザー5cが搭載され、ガイドレール6cにはレーザー5dが搭載されている。各レーザー5は、レーザービームを放射する。本実施形態では、各レーザービームは、特定の平面に広がる扇形ビームである。この平面は、典型的には、対応するガイドレール6が延びる方向に直交する。これは、レーザー5aおよび5bが放射する扇形ビームは、典型的には、Y方向と、Y方向およびX方向の両方に垂直なZ方向とで張られる平面に広がり、レーザー5cおよび5dが放射するレーザービームは、典型的には、X方向および方向で張られる平面に広がることを意味する。しかし、本実施形態では、例えば回動可能なミラーを用いて、レーザービームを上記の平面に対して傾斜させることができる。レーザー5a、5bが放射するレーザービームは、Y方向回りに回転させることができ、レーザー5c、5dが放射するビームは、X方向回りに回転させることができる。
【0068】
医用画像システム1を用いて透視画像を撮影するときに、レーザー5を用いて医用画像システムの視野を示すことができる。一実施形態では、2つのレーザーが、医用画像システム1の中心ビームを示す十字線を投影する。別の実施形態では、複数のレーザー5が、複数のビームでX線ビームの境界を示すように、それぞれのビームをX線源3に向かって放射するように制御される。
【0069】
図3は、医用画像システム1に接続可能なコンピュータ8を模式的に示している。コンピュータ8は、中央処理装置9、メモリ10、およびコンピュータ8を医用画像システム1に接続するためのインターフェース11を含む。コンピュータ8には,キーボードやマウスなどの入力装置12と、モニターなどの出力装置13が接続されている。メモリ10は、中央処理装置9によって実行されると、請求される方法を実施する命令を格納する。メモリ10は、さらに、医用画像システム1から得られた透視画像などの作業データを格納するものであってもよい。コンピュータ8は、さらに、インターフェース11を介して医用画像システム1を制御するように構成される。これらの制御は、例えば、1つまたは複数のレーザー5を制御すること、または、例えばガントリー2のベース部を移動させるため、もしくはガントリー2のリング部内でX線源および/またはX線検出器4を回転させるために、医用画像システムのアクチュエータを作動させることである。
【0070】
図4は、請求される方法の一般的な構成を示している。
ステップS01において、医用画像システム1を用いて、患者の少なくとも一部の画像を撮影する。この透視画像は、コンピュータ8に転送され、出力装置13に表示される。ステップS02において、ユーザは、入力装置12を用いて、透視画像内に1つまたは複数の仮想マーカーを設定することができる。
【0071】
ステップS03において、コンピュータ8は、ステップS02で設定された仮想マーカーに応じた切開マーカーを投影するように、少なくとも1つのレーザー5を制御する。
【0072】
図5aは、患者の脊椎の一部を横方向から撮影した例示的な横方向の透視画像である。矢印Aは、患者の長手方向を示し、矢印Bは、患者の前後方向を示す。横方向は、長手向と前後方向の両方に直角である。
【0073】
図5aの例では、横方向の透視画像内に、縦線で表現された2つの仮想マーカーV1およびV2が設定されている。この2つの仮想マーカーV1およびV2は、患者の切開を施すべき長手方向に延びる領域の開始点および終了点を示している。なお、2つの端点は、点または任意の他の適切な形状の仮想マーカーで示すことも可能である。
【0074】
図5aに示す例では、コンピュータ8がレーザー5aおよび5bを制御して、透視画像内の仮想マーカーV1およびV2の位置に対応する2本の平行線を患者の背面に投影する。この2本の平行線は、患者の模式的な背面図である図5bにおいて、切開マーカーI1およびI2として示されている。切開マーカーは、点、ドット、十字線、または任意の他の適切な形状を有することができる。必要に応じて、コンピュータ8は、レーザー5aおよび5bが患者の背面にレーザー光を放射できる位置に配置されるように、ガントリー2のリング部をX線検出器4とともに回転させるか、またはX線検出器4をガントリー2に沿って回転させるように、医用ナビゲーションシステムに指令する。横方向の透視画像に設定された対応する数の仮想マーカーの位置に基づいて、1つだけ、または2つ以上の切開マーカーを、患者の背面、または後面、に投影することができる。
【0075】
透視画像の患者に向かう視線方向(この例では、横方向)が既知であり、レーザー5がガントリー2に対して校正されているため、コンピュータ8は、ガイドレール6に沿ったレーザー5の位置と、レーザーの線が患者の表面の正しい位置に投影されるためにレーザーがレーザービームを放射しなければならない角度とを計算することができる。
【0076】
変更または拡張された実施形態において、入力装置12を用いて、対応する透視画像内の仮想マーカーV1またはV2を移動させることが可能である。透視画像内の仮想マーカーの位置が変更された場合、コンピュータ8は、患者の表面のレーザーの線の位置を適合させるために、レーザー5に実時間で指令する。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b