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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】活電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20230601BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H01M4/485
H01M4/36 C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022573661
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 GB2021051357
(87)【国際公開番号】W WO2021245410
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】2008352.3
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2011681.0
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2013576.0
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522145144
【氏名又は名称】エチオン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】グルームブリッジ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ワンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スレイター,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジャンシェン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047374(JP,A)
【文献】特開2016-126928(JP,A)
【文献】Molleigh B. Preefer et al.,Multielectron Redox and Insulator-to-Metal Transition upon Lithium Insertion in the Fast-Charging, Wadsley-Roth Phase PNb9O25,Chem. Mater.,2020年05月13日,32, 11,PP.4553-4563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/485
H01M 4/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と電気的に接触しているリン酸化ニオブ活電極材料を含む電極であって、
前記活電極材料はM1 x-a M2 Nb 9-b 25-c-d の組成を有し、
M1は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
M2は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、P、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a≦0.5、0≦b≦2、-0.5≦c≦1.25、0≦d≦5、1≦x≦2であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0に等しくなく、
ただし、M1がNbで構成され、M2がPで構成される場合、c>0という条件である、
前記電極
【請求項2】
(i)a>0、及び/または、
(ii)0≦a≦0.3、及び/または、
(iii)0≦a≦0.2である、請求項1に記載の電極
【請求項3】
(i)b>0、及び/または、
(ii)0≦b≦1.5、及び/または、
(iii)0≦b≦1である、
請求項1又は2に記載の電極
【請求項4】
(i)c≠0、または、
(ii)0≦c≦1.25、または、
(iii)0<c≦1.25である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電極
【請求項5】
(i)d>0、及び/または、
(ii)0≦d≦2.5、及び/または、
(iii)0≦d≦1、または、
(iii)d=0である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電極
【請求項6】
(i)1≦x≦1.25、または、
(ii)x=1である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電極
【請求項7】
a及びbの少なくとも1つが0より大きい、またはa及びbの両方が0より大きい、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電極
【請求項8】
M1が、
(i)Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物、または、
(ii)Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、B、Al、GaBi、Sb、及びそれらの混合物、または、
(iii)Ti、Mo、Al、B、及びそれらの混合物から選択される、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電極
【請求項9】
M2が、
(i)Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、P、Sb、及びそれらの混合物、または、
(ii)Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、Ta及びそれらの混合物、または、
(iii)Ti、Mo、及びそれらの混合物から選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電極
【請求項10】
(i)M1が0.1<r<1.0Åのイオン半径を有する、及び/または、
(ii)M1がP5+とは異なるイオン半径を有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電極
【請求項11】
(i)M2が0.1<r<1.0Åのイオン半径を有する、及び/または、
(ii)M2がNb5+とは異なるイオン半径を有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の電極
【請求項12】
M1がNbを含まず、M2がPを含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の電極
【請求項13】
(i)Qが、F、Cl、N、S、及びそれらの混合物から選択される、または、
(ii)Qが、F、N、及びそれらの混合物から選択される、または、
(iii)QがNである、
請求項1~12のいずれか一項に記載の電極
【請求項14】
前記活電極材料が酸素欠損である、請求項1~13のいずれか一項に記載の電極
【請求項15】
前記活電極材料が炭素でコーティングされている、請求項1~14のいずれか一項に記載の電極
【請求項16】
前記炭素コーティングが多芳香族sp炭素を含む、請求項15に記載の電極。
【請求項17】
前記炭素コーティングがピッチ系炭素に由来する、請求項16に記載の電極
【請求項18】
前記活電極材料が粒子形態である、請求項1~17のいずれか一項に記載の電極。
【請求項19】
前記活電極材料が、0.1~100μm範囲のD50粒径を有する、請求項18に記載の電極
【請求項20】
前記活電極材料が、0.1~100m/g範囲のBET表面積を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の電極
【請求項21】
Li及び/またはNaをさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の電極
【請求項22】
X線回折によって決定される前記活電極材料の結晶構造が、PNb25、VNb25、もしくはP2.5Nb1850のうちの1つ以上の結晶構造に対応する、または、PNb25もしくはP2.5Nb1850のうちの1つ以上の結晶構造に対応する、またはPNb25の結晶構造に対応する、請求項1~21のいずれか一項に記載の電極
【請求項23】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであって、前記アノードが、請求項1~22のいずれか一項で定義された活電極材料を含む、前記電気化学デバイス。
【請求項24】
前記電気化学デバイスがリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池である、請求項23に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活電極材料と活電極材料の製造方法とに関する。このような材料は、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の活電極材料として、例えばリチウムイオン電池のアノード材料として注目されている。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(Li-ion)電池は、一般的に使われている充電式電池の一種であり、世界市場は、2030年には2000億ドルに成長すると予測されている。Li-ion電池は、技術性能から環境への影響まで複数の要求がある電気自動車に最適な技術であり、環境に優しい自動車産業への実現可能な道筋を提供する。
【0003】
典型的なリチウムイオン電池は、直列または並列に接続された複数のセルで構成されている。個々のセルは、通常、アノード(負極性電極)とカソード(正極性電極)とで構成されており、多孔質の電気絶縁膜(セパレータと呼ばれる)で分離され、リチウムイオンの輸送を可能にする液体(電解質と呼ばれる)に浸されている。
【0004】
ほとんどのシステムでは、電極は、電気化学的に活性な材料で構成されており(リチウムイオンと化学的に反応して、それらを制御された状態で可逆的に吸蔵及び放出できることを意味する)、必要に応じて導電性添加剤(炭素など)及び高分子結合剤と混合される。これらの成分のスラリーが集電体(一般的には銅またはアルミニウムの薄箔)上に薄膜としてコーティングされ、乾燥させることで電極が形成される
【0005】
既知のLi-ion電池技術においては、電池充電時の黒鉛アノードの安全上の制限が、高電力電子機器、自動車及び産業への応用の大きな障害となっている。最近提案された様々な代替候補の中で、チタン酸リチウム(LTO)、ならびに混合酸化ニオブが、黒鉛に代わる高電力、高速充電用途に最適な活物質として有力な候補である。
【0006】
黒鉛アノードに依存する電池は、根本的に充電レートの点で制限される。公称条件下では、充電時にリチウムイオンがアノード活物質に挿入される。充電レートが高くなると、一般的な黒鉛の電圧プロファイルは、過電圧によりアノード上の部位の電位がLi/Li+に対して0Vよりも低くなる危険性が高く、リチウムイオンが代わりにリチウム金属として黒鉛電極の表面に析出するリチウムデンドライト電気メッキと呼ばれる現象を引き起こす。この結果、活性リチウムが不可逆的に失われ、したがってセルの容量が急速に低下する。場合によっては、これらの樹枝状の析出物は非常に大きなサイズに成長するので、電池のセパレータを貫通してしまい、セルの短絡につながる可能性がある。これが引金となり、セルが突発的に故障し、出火または破裂が生じることもある。したがって、黒鉛アノードを有する最も速く充電が可能な電池では、充電レートが5~7Cに制限されているが、たいていはそれよりもかなり低くされている。
【0007】
チタン酸リチウム(LTO)アノードは、高電位(Li/Li+に対して1.6V)のために高充電レートでのデンドライト電気メッキの影響を受けず、また、3D結晶構造に対応しているため、Liイオンのインターカレーション時に活物質の大幅な体積膨張の影響を受けないので優れたサイクル寿命を有する。これら2つの理由から、LTOセルは一般に安全性の高いセルとみなされている。しかし、LTOは比較的劣った電子伝導体及びイオン伝導体であるため、材料をナノ化して比表面積を大きくし、炭素コーティングして電子的伝導率を高めない限り、高レートでの容量維持率及びその結果による電力性能に限界がある。この粒子レベルの材料工学により、活物質の空隙率と比表面積が増加し、電極
で達成可能な充填密度が大幅に低下する結果となる。このことは、電極の密度が低くなり、電気化学的に不活性な材料(例えば結合剤、炭素添加剤)の割合が高くなり、その結果重量及び容量エネルギー密度が低くなるため、重要である。
【0008】
アノード性能の重要な指標は、その電極体積比容量(mAh/cm)、つまり、アノードの単位体積あたりに蓄積できる電荷(つまりリチウムイオン)の量である。この量は、カソード及び適切なセル設計パラメータを組み合わせるとき体積ベースでの電池全体のエネルギー密度(Wh/L)を決定する重要な要素である。電極体積比容量は、電極密度(g/cm)、活物質の比容量(mAh/g)、及び電極内の活物質の割合の積として概算できる。LTOアノードは通常、比容量が比較的小さく(約165mAh/gであり、黒鉛の約330mAh/gと比較)、これが上記の小さい電極密度(通常2.0g/cm未満)及び活物質の小さい割合(90%未満)と相まって、体積比容量が非常に小さくなり(300mAh/cm未満)、したがって様々な用途において電池エネルギー密度も小さくなり、kWhあたりの金額であるコストが高くなる。結果として、LTO電池/セルは、長サイクル寿命、急速充電性能、及び高い安全性にもかかわらず、一般に特定のニッチ的用途に限定されている。
【0009】
リン酸化ニオブに基づく混合酸化ニオブ構造は、Li-ionセルで使用するために最近注目されている。PNb25の結晶構造は、1965年にRothらによって最初に報告されたが、これは、3x3x∞配置でブロックに接続されたコーナー共有NbO八面体を持つWadsley-Roth ReOせん断構造で構成されている。ブロックは、エッジ共有とコーナー共有PO四面体によって隣接するブロックに接続される。過剰なPによるわずかな歪みを伴う同様の構造が、1994年にXuらによって報告された(P2.5Nb1850。Liイオンセルにおける電気化学的挿入及び使用は、2002年にPatouxらによって最初に報告され、さらに最近では2020年に他の人によって報告された4,5,6。この材料は、LTOよりも高い理論的及び実用的な容量(200mAh/g超)、低い公称電圧(Li/Liに対して1.6V未満)、及びLTOよりも3桁高いLi-ion拡散係数(10-9~10-12cm-1)を有する。リチウムイオン拡散係数がはるかに高いため、これらの材料は、高充電及び放電電流でLTOセルを使用するために必要な高度なナノ構造化及び設計が必要なくなった。これはまた、少量の添加剤と結合剤で商用電極を容易に製造でき、高い電極密度に達することを意味する。これにより、より高い体積エネルギー密度、kWhあたりのセルコスト低減が可能になる。
【0010】
しかしながら、複合酸化物材料としてのPNb25の性質により、商業用のLi-ionセルで効率的な充電と放電を可能にするのに十分な電子伝導性がなく、過剰なインピーダンスが生じる。さらに、Liイオン容量、サイクル効率(サイクル寿命を参照)、及び充電と放電の電圧プロファイルの調整においても、改善の余地がある。大規模なナノスケールまたは粒子レベルのエンジニアリングを必要とせず、コーティングも必要とせずに、本明細書に記載されているこれらの改善を行うことは、マスマーケットでの採用に向けた低コストの電池材料への重要なステップである。これらの改善が対処されない場合、得られるデバイスに過剰な電気抵抗が生じ、エネルギー密度が低下し、分極の増加、電力密度の低下、エネルギー効率の低下、及びコストの増加につながる。したがって、PNb25及びリチウムイオン電池で使用するための密接に関連する構造の特性をさらに改善する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様において、本発明は、組成M1x-aM2Nb9-b25-c-dを有するリン酸化ニオブ活電極材料を提供し、ここで、
M1は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、
Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
M2は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、P、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a≦0.5、0≦b≦2、-0.5≦c≦1.25、0≦d≦5、1≦x≦2であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0に等しくなく、
ただし、M1がNbで構成され、M2がPで構成される場合、c>0という条件である。
【0012】
活電極材料の組成は、化学量論的PNb25に対応しないことが理解されるであろう。本発明者らは、さらなる陽イオン(M1及び/またはM2)を組み込んで混合陽イオン活電極材料を形成することにより、及び/または誘導された酸素欠損または過剰を作り出すことにより、及び/または混合陰イオン活電極材料(O及びQを含む)を形成することにより、PNb25を含む材料を改質することによって、結果として得られる材料は、改善された電気化学特性を有し、特にアノード材料として使用されるとき、改善された電気化学特性を有することを見出した。例えば、本発明者らは、本実施例に示されるように、本発明による材料がPNb25と比較して高いCレートで容量維持率が著しく改善されたことを見出した。これは、急速充電/放電用に設計された電池に使用するための本発明の材料の利点を実証する上で重要な結果である。
【0013】
本発明の活電極材料は、電極において特に有用であり、好ましくはリチウムイオンまたはナトリウムイオン電池のアノードにおいて使用するために有用である。したがって、本発明のさらなる実施態様は、第1の態様の活電極材料及び少なくとも1つの他の成分を含む組成物であり、任意選択で、少なくとも1つの他の成分が、結合剤、溶媒、導電性添加剤、追加の活電極材料、及びそれらの混合物から選択される。このような組成物は、電極の製造に有用である。本発明のさらなる実施態様は、集電体と電気的に接触している第1の態様の活電極材料を含む電極である。本発明のさらなる実施態様は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであり、アノードは、第1の態様による活電極材料を含み、任意選択で、電気化学デバイスがリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池である。
【0014】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による活電極材料を製造する方法を提供し、方法は、1つ以上の前駆体材料を提供するステップと、当該前駆体材料を混合して、前駆体材料混合物を形成するステップと、前駆体材料混合物を400℃~1350℃または800℃~1350℃の温度範囲で熱処理して、それにより活電極材料を提供するステップと、を含む。これは、第1の態様の活電極材料を製造する便利で効率的な方法を表す。
【0015】
本発明は、そのような組み合わせが明らかに許されないか、または明示的に回避される場合を除き、本明細書に説明する態様及び特徴の組み合わせを含むものである。
【0016】
ここで、本発明の原理を、添付の図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】サンプル1~9の粉末XRDである。
図2】サンプル2のTGAである。
図3】参照PNb25ユニットセルの視覚化である。
図4】1.0~3.0Vの間の、最初のリチウム化及び脱リチウム化サイクルに対するC/10のレートでのサンプル1及び7の定電流リチウム化/脱リチウム化曲線である。
図5】1.0~3.0Vの間の10Cのレートでのサンプル1及び7の定電流脱リチウム化曲線である。リチウム化曲線はC/5で示される。
図6】1.0~3.0Vの間の、第2のリチウム化及び脱リチウム化サイクルに対するC/10のレートでのサンプル1及び7の容量対電圧の微分係数(dQ/dV)のプロットである。
図7】サンプル10~17の粉末XRDである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の態様及び実施形態について説明する。当業者には、さらなる態様及び実施形態が明らかになる。本文中で言及されているすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
「混合酸化ニオブ」(MNO)という用語は、ニオブと少なくとも1つの他の陽イオンとを含む酸化物を指す。MNO材料は酸化還元電圧がリチウムに対して高く(>0.8V)、電池セルの高速充電に不可欠である安全で長寿命の動作を可能にする。さらに、ニオブ陽イオンは原子あたり2つの酸化還元反応を起こすことができるため、例えばLTOよりも高い理論容量が得られる。本明細書に記載されている材料は、PNb25の基本構造(また、等構造のP2.5Nb1850、及びPNb1850であり、2≦x≦4である他の等構造)に由来し、これはリン酸化ニオブ(PNO)材料である。
【0020】
PNb25は、ReO由来のMO3-x結晶構造を有すると考えることができる。好ましくは、PNOは、Wadsley-Roth結晶構造またはリン酸塩青銅結晶構造を有する。Wadsley-Roth結晶構造は、結晶学的せん断を含むMO(ReO)結晶構造の結晶学的オフストイキオメトリであると考えられており、MO3-xの簡略化された式がある。結果として、これらの構造には通常、[MO]八面体サブユニットが他の結晶構造と並んでいる。これらの構造を有するPNO材料は、例えばリチウムイオン電池において活電極材料として使用するのに有利な特性を有すると考えられている。
【0021】
また、PNO材料のオープントンネル状のMO結晶構造は、Liイオン貯蔵の高容量と高レートのインターカレーション/デインターカレーションを実現するための理想的な候補にもなる。PNO構造に存在する結晶学的オフストイキオメトリは、Wadsley-Roth結晶学的超構造を引き起こす。これらの超構造は、Jahn-Teller効果や、複数の混合陽イオンを利用することによる強化された結晶学的無秩序などの他の品質によって複合され、結晶を安定させ、インターカレーション中にトンネルを開いて安定に保ち、高Li-ion拡散レート(10-9~10-10cm-1と報告されている)による非常に高いレート性能を可能にする。
【0022】
PNb25の結晶式は、図3に示すように、角を共有する四面体を備えた3x3x∞の結晶学的ブロック構造を持つと説明できる。P2.5Nb1850の結晶式は、PNb25と等構造の相であり、追加のP(例えば、P-OとNb3-O2、Nb2-O2)により、いくつかの結合長にわずかな違いがある。これは以前にリン酸青銅材料として報告されていたが、それと関連する理論化された構造(すなわちP2-4Nb1850)は、本明細書では歪んだWadsley-Roth結晶構造と見なされる。
【0023】
本明細書に記載される材料の全結晶組成は、好ましくは電荷中性であり、上記の説明に従うのに熱力学的に有利である。MがMy-δになるように材料の電気抵抗を下げるとき、酸素空孔欠陥の導入によって酸素含有量が欠損している構造が好ましい。陽
イオン(すなわちP及びNb)または陰イオン(すなわちO)が置換された構造は、一致するイオン価(つまり、等しい割合の4+と6+の陽イオンに対する5+の陽イオン)で、または一致しないイオン価で、置換された可能性があり、これは等価な結晶部位で置換が起きる場合、酸素欠損または酸素過剰を引き起こす可能性がある(例えば、Al0.050.95Nb24.95欠損の場合、またはMo0.050.95Nb25.025の過剰)。格子間部位などの異なる結晶部位でも置換が起きる場合がある。
【0024】
材料の結晶構造は、広く知られているように、X線回折(XRD)パターンの分析によって決定することができる。例えば、特定の材料から得られたXRDパターンを既知のXRDパターンと比較して、例えばICDD結晶学データベースなどの公開データベースを介して結晶構造を確認できる。リートベルト解析も、材料の結晶構造、特にユニットセルパラメータを決定するために使用できる。したがって、活電極材料は、X線回折によって決定されるように、Wadsley-Rothまたはリン青銅の結晶構造、好ましくはWadsley-Roth結晶構造を有することができる。
【0025】
好ましくは、X線回折によって決定される活電極材料の結晶構造は、PNb25、VNb25、もしくはP2.5Nb1850のうちの1つ以上、またはPNb25もしくはP2.5Nb1850のうちの1つ以上、または最も好ましくはPNb25の結晶構造に対応する。PNb25の結晶構造は、ICDD結晶学データベースエントリJCPDS81-1304に記載されている。VNb25の結晶構造は、JCPDS49-0289に記載されている。P2.5Nb1850の結晶構造は、ICDD01-082-0081に記載されている。活電極材料は、ユニットセルパラメータa、b、及びcを有することができ、aは15.4~15.8Å、好ましくは15.5~15.7Åであり、bは15.4~15.8Å、好ましくは15.5~15.7Åであり、cは3.6~4.0Å、好ましくは3.7~3.9Åである。最も好ましくは、a=bである。活電極材料は、それぞれ約90°であるユニットセルパラメータα、β、及びγを有し、好ましくはα=β=γ=90°である。ユニットセルパラメータは、X線回折によって決定することができる。活電極材料は、シェラーの式に従って決定される、10~100nm、好ましくは30~60nmの結晶子径を有することができる。
【0026】
ここで、「対応する」という用語は、X線回折におけるピークが、上に挙げた材料のX線回折パターンにおける対応するピークから0.5度以下だけシフトしてよい(好ましくは0.25度以下、より好ましくは0.1度以下だけシフトしてよい)ことを反映させることを意図している。
【0027】
リン酸化ニオブは、組成M1x-aM2Nb9-b25-c-dを有し、ここで、
M1は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
M2は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、P、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a≦0.5、0≦b≦2、-0.5≦c≦1.25、0≦d≦5、1≦x≦2であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0に等しくなく、
ただし、M1がNbで構成され、M2がPで構成される場合、c>0という条件である。
【0028】
「及びそれらの混合物」とは、M1、M2またはQのいずれかが、それぞれのリストか
ら2つ以上の要素を、それぞれ表すことができることを意図している。このような材料の一例は、Ti0.05Mo0.050.90Nb25である。ここで、M1はTia’Moa’’(ここで、a’+a’’=a)を表し、a=0.1、b=0、c=0、及びd=0である。そのような材料の別の例は、Al0.050.95Ti0.225Mo0.225Nb8.5524.95である。ここで、M1はAlを表し、M2はTib’Mob’’(b’+b’’=b)を表し、a=0.05、b=0.45、c=0.05、及びd=0である。
【0029】
定義された範囲内のa、b、c、dの正確な値は、電荷バランスされた、または実質的に電荷バランスされた結晶構造を提供するように選択され得る。加えて、または代わりに、定義された範囲内のa、b、c、dの正確な値は、熱力学的に安定または熱力学的に準安定な結晶構造を提供するように選択され得る。
【0030】
構造内の陽イオンまたは陰イオン(つまり、P、Nb、O)の交換が最初のイオン価を保持せずに発生した場合、酸素欠損と酸素過剰の両方が生じる可能性がある。例えば、Mo6+をある程度P5+に置換する材料は、わずかな酸素過剰を示し(つまり、P対MoO)、Al3+のP5+への置換はわずかな酸素欠損を示す(つまり、P対Al)。酸素欠損は、不活性または還元条件での熱処理によっても誘導される可能性があり、その結果、構造内に酸素空孔欠陥が誘発される。
【0031】
M1は結晶構造中のPを置換する陽イオンである。M1は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物、または、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、B、Al、Ga、Bi、Sb、及びそれらの混合物、または、Ti、Mo、Al、B、及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、M1はNbではない。好ましくは、M1はNaではない。M1はP5+とは異なるイオン価を有することができる。これにより、酸素欠損または酸素過剰が生じる。好ましくは、M1はP5+より低いイオン価を有する。これは、酸素欠損、すなわち、本明細書で議論される利点を提供する酸素空孔の存在を生じさせる。M1はP5+とは異なるイオン半径を有することが好ましく、最も好ましくはより大きいイオン半径を有する。これにより、ユニットセルのサイズに変化が起こり、結晶構造に局所的な歪みが生じ、本明細書に論じる利点を提供する。
【0032】
本明細書で言及されるイオン半径は、活電極材料の結晶構造においてイオンが採用すると予想される配位及びイオン価におけるシャノンイオン半径(参考文献7で入手可能)である。例えば、PNb25の結晶構造にはNb5+八面体とP5+四面体が含まれている。
【0033】
M1の量は、基準0≦a≦0.5を満たすaによって定義される。aは0≦a≦0.3、好ましくは0≦a≦0.2であってよい。これらの各場合において、a>0でもよく、例えばa>0.01でもよい。
【0034】
M2は結晶構造中のNbを置換する陽イオンである。M2は、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、P、Sb、及びそれらの混合物、または、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、Ta、及びそれらの混合物、または、Ti、Mo、及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、M2はPではない。好ましくは、M2はNaではない。M2はNb5+とは異なるイオン価を有することができる。これにより、酸素欠損または酸素過剰が生じる。好ましくは、M2はNb5+より低いイオン価を有する。これは、酸素欠損、すなわち、本明細書で議論される利点を提供する酸素空孔の存在を生じさ
せる。M2はNb5+とは異なるイオン半径を有することが好ましく、最も好ましくはより大きいイオン半径を有する。これにより、ユニットセルのサイズに変化が起こり、結晶構造に局所的な歪みが生じ、本明細書に論じる利点を提供する。
【0035】
M2の量は、基準0≦b≦2を満たすbによって定義される。bは、0≦b≦1.5、好ましくは0≦b≦1、または0≦b≦0.9であってよい。これらの各場合において、b>0でもよく、例えばb>0.01でもよい。
【0036】
好ましくは、a及びbの少なくとも一方は0より大きい。aとbの両方を0より大きくできる。
【0037】
cは活電極材料の酸素含有量を反映する。cが0より大きい場合、活電極材料は酸素欠損材料であり、すなわち、この材料は酸素空孔を有する。そのような材料は、陽イオン酸素状態への変更なしでは正確な電荷バランスを有しないはずであるが、上述のように「実質的に電荷バランスされた」と考えられる。あるいは、cは0に等しくてもよく、その場合、それは酸素欠損材料ではない。cは0未満の場合があり、これは酸素過剰の材料である。cは-0.25≦c≦1.25であり得る。好ましくは、cは0≦c≦1.25である。任意選択で、a=b=0の場合、c≧0であり、好ましくは、a=b=0の場合、c>0である。
【0038】
cが1.25の場合、酸素空孔の数は結晶構造内の全酸素の5%に等しい。cは、0.0125(0.05%の酸素空孔)より大きく、0.025(0.1%の酸素空孔)より大きく、0.05(0.2%の酸素空孔)より大きく、または0.125(0.5%の酸素空孔)より大きくてもよい。cは、0から1の間(4%の酸素空孔)、0から0.75の間(3%の酸素空孔)、0から0.5の間(2%の酸素空孔)、または0から0.25の間(1%の酸素空孔)であり得る。例えば、cは、0.01≦c≦1.25を満たし得る。材料が酸素欠損のとき、材料の電気化学的特性が改善されることがあり、例えば、抵抗測定値は同等の非酸素欠損の材料と比較して、伝導率が改善され得る。理解されるように、本明細書で表されるパーセント値は原子百分率である。
【0039】
本発明は、酸素空孔(酸素欠損リン酸化ニオブ)を含むか、または酸素過剰のあるリン酸化ニオブに関する。酸素空孔は、上述のように基材のイオン価以下の置換によってリン酸化ニオブに形成され、酸素過剰は、増加したイオン価の置換によってリン酸化ニオブ中に形成され得る。酸素空孔はまた、任意選択で陽イオン置換なしに、還元条件下でリン酸化ニオブを加熱することによって形成され得る。したがって、リン酸化ニオブ活電極材料は、組成PNb25-c-dを有することができ、ここで、x、c、d、及びQは、本明細書で定義されるとおりである。酸素空孔及び過剰の量は、基材中の酸素の総量、すなわち非置換材料(例えばPNb25)または還元条件下で加熱する前の材料中の酸素の量に対して表すことができる。
【0040】
酸素空孔が材料に存在するかどうかを判断するための多くの方法が存在する。例えば、熱重量分析(TGA)を実行して、空気雰囲気中で加熱されたときの材料の質量変化を測定することができる。酸素空孔を含む材料は、空気中で加熱するときに、材料が「再酸化」し、酸素空孔が酸化物陰イオンで満たされるため、質量が増加する可能性がある。質量増加の大きさは、材料中の酸素空孔の濃度を定量化するために使用でき、これは、酸素空孔が満たされるために質量増加全体が起こると仮定した場合である。酸素空孔を含む材料は、酸素空孔が満たされるにつれて最初に質量が増加し、その後、材料が熱分解を受けると、より高い温度で質量が減少し得ることに留意されたい。さらに、質量減少プロセスと質量増加プロセスが重複している可能性がある。つまり、酸素空孔を含む一部の材料は、TGA分析中に質量増加を示さない(時には質量減少または質量増加を示さない)場合が
ある。
【0041】
酸素空孔が存在するかどうかを判断する他の方法には、電子常磁性共鳴(EPR)、X線光電子分光法(XPS、例えば酸素1のXPS及び/または混合酸化物中の陽イオンのXPS)、X線吸収端近傍構造(XANES、例えば混合金属酸化物中の陽イオン)、及びTEM(例えば、高角度環状暗視野(HAADF)を備えた走査型TEM(STEM)及び環状明視野(ABF)検出器)が含まれる。酸素空孔の存在は、同じ材料の非酸素欠損サンプルと比較して材料の色を評価することで定性的に判断でき、光との相互作用による電子バンド構造の変化を示す。例えば、化学量論的PNb25は白またはオフホワイトの色をしているが、酸素欠損のPNb24.990は水色をしている。空孔の存在は、酸素欠損材料の特性と比較した化学量論的材料の特性、例えば電気伝導率から推測することもできる。
【0042】
d>0であると、追加の陰イオンQがリン酸化ニオブに導入される。異なる電子構造(つまりF対O2-)、及び異なるイオン半径(6配位O2-=1.40Å、6配位F=1.33Å)のため、それらは、活物質の電気化学的性能を向上させることができる。これは、異なるイオン半径でユニットセルの特性を変更することにより、Liイオン容量の改善、または可逆性の改善によるクーロン効率の改善が可能になるためである。それらは、結晶の電子構造(すなわちドーピング効果)を変化させることによって、酸素空孔欠陥、またはイオン価以下の陽イオン置換について電気伝導率をさらに改善し得る。dは、0≦d≦2.5、または0≦d≦1であり得る。これらの各場合において、d>0であってもよい。Qは、F、Cl、N、S、及びそれらの混合物、またはF、N、及びそれらの混合物から選択することができ、またはQはNである。
【0043】
任意選択でd=0の場合、材料は組成M1x-aM2Nb9-b25-cを有し、M1、M2、a、b、c、及びxは本明細書で定義されるとおりである。有利なことに、d=0では材料は陰イオンQを含まず、合成が容易であり得る。
【0044】
xは、基準1≦x≦2を満たす材料中のリンの量を反映する。xは1≦x≦1.25であってよい。好ましくは、x=1である。x=1のとき、組成はPNb25の結晶構造に基づいている。
【0045】
組成の変数(M1、M2、Q、a、b、c、d、及びx)の考察は、組み合わせて読むことを意図していることを理解されたい。例えば、好ましくは、M1は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、M2は、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、P、Sb、及びそれらの混合物から選択される。M1は、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、B、Al、Ga、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択することができ、M2は、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、Ta、及びそれらの混合物から選択することができる。M1は、Ti、Mo、Al、B、及びそれらの混合物から選択することができ、M2は、Ti、Mo、及びそれらの混合物から選択することができる。M1は好ましくはNbではなく、M2は好ましくはPではない。M1及びM2は好ましくはNaではない。M1とM2は異なっていてもよい。aは0≦a≦0.3であり、bは0≦b≦1.5であってもよい。好ましくは0≦a≦0.2であり、0≦b≦1である。これらの場合のそれぞれにおいて、a及び/またはbは0より大きくてもよい。
【0046】
例えば、リン酸化ニオブ活電極材料は、組成M1x-aM2Nb9-b25-c-dを有することができ、ここで、
M1はTi、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
M2はTi、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、Cl、N、S、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a≦0.3、0≦b≦1.5、-0.25≦c≦1.25、0≦d≦2.5、1≦x≦1.25であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0に等しくない。
【0047】
例えば、リン酸化ニオブ活電極材料は、組成M11-aM2Nb9-b25-c-dを有することができ、ここで、
M1はTi、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
M2はTi、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、N、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a≦0.3、0≦b≦1.5、0≦c≦1.25、0≦d≦2.5であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0に等しくない。
【0048】
例えば、リン酸化ニオブ活電極材料は、組成M11-aM2Nb9-b25-c-dを有することができ、ここで、
M1は、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、B、Al、Ga、Ge、Bi、Sb、及びそれらの混合物から選択され、
M2は、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、Ta、Ga、Ge、及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、N、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a≦0.2、0≦b≦1、0≦c≦1.25、0≦d≦2.5であり、
a及びbの少なくとも一方は0より大きい。
【0049】
活電極材料は、Li及び/またはNaをさらに含むことができる。例えば、活電極材料が金属イオン電池電極で使用されるとき、Li及び/またはNaは結晶構造に入り得る。
【0050】
活電極材料は、粒子状であることが好ましい。材料は、0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50粒径を有し得る。これらの粒子サイズは、電極への加工及び製造が容易であるため有利である。さらに、これらの粒子サイズにより、ナノサイズの粒子を提供するための複雑及び/または高価な方法を使用する必要がなくなる。ナノサイズの粒子(例えば、100nm以下のD50粒径を有する粒子)は、通常、合成がより複雑であり、追加の安全性を考慮する必要がある。
【0051】
活電極材料は、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.1μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmのD10粒径を有し得る。D10粒径をこれらの範囲内に維持することにより、表面積の減少によるLiイオンセルの寄生反応の可能性を低減し、電極スラリー中の結合剤が少なくて済み、加工が容易になる。
【0052】
活電極材料は、200μm以下、100μm以下、50μm以下、または20μm以下のD90粒径を有し得る。D90粒径をこれらの範囲内に維持することによって、大きな
粒子サイズを有する粒子サイズ分布の割合が最小化され、材料を均質な電極に製造することが容易になる。
【0053】
「粒径」という用語は、等価球直径(esd)、すなわち所与の粒子と同じ体積を有する球の直径を指し、粒子体積は、粒子内細孔の体積を含むと理解される。「D」及び「D粒径」という用語は、それ未満で粒子集団の体積のn%が見出される直径を指す。すなわち、用語「D50」及び「D50粒径」という用語は、それ未満で粒子集団の体積の50%が見出される体積ベースの中央粒径を指す。材料が二次粒子に凝集した一次結晶子を含む場合、粒径は二次粒子の直径を指すことが理解されるであろう。粒径は、レーザー回折によって決定できる。例えば、粒径はISO13320:2009に従って決定できる。
【0054】
活電極材料は、0.1~100m/g、または0.5~50m/g、または1~20m/gの範囲のBET表面積を有することができる。一般に、活電極材料と電解質との反応を最小限に抑えるため、例えば、この材料からなる電極の最初の充放電サイクル中の固体電解質間相(SEI)層の形成を最小限に抑えるために、BET表面積は小さいことが好ましい。しかし、BET比表面積が小さすぎると、活電極材料のバルクが周囲の電解質中の金属イオンにアクセスできないため、充電レートや容量が許容できないほど低くなってしまう。
【0055】
BET表面積とは、Brunauer-Emmett-Teller理論を用いて、固体表面への気体分子の物理的吸着の測定から算出した単位質量あたりの表面積のことをいう。例えば、BET表面積は、ISO9277:2010に準拠して決定することができる。
【0056】
本発明による活電極材料の比容量/可逆的脱リチウム化容量は、180mAh/g以上、190mAh/g以上、最大で約200mAh/g以上までとすることができる。ここで、比容量は、ハーフセルのLi/Li+に対して1.0~3.0Vの電圧窓で0.1Cのレートでハーフセル定電流サイクリング試験の第2サイクルで測定されたものとして定義される。高い比容量を有する材料を提供することは、活電極材料を含む電気化学デバイスにおいて改善された性能を提供することができるため、有利であり得る。
【0057】
下記の説明による電極として(任意選択で、導電性炭素添加剤及び結合剤材料と共に)配合またはコーティングされるとき、活電極材料のシート抵抗は、750Ωパースクエア以下、より好ましくは675Ωパースクエア以下であり得る。シート抵抗は、そのような材料の電子的伝導率の代理測定として有用であり得る。好適に低いシート抵抗を有する材料を提供することは、活電極材料を含む電気化学デバイスにおいて改善された性能を提供することができるので、有利であり得る。
【0058】
活電極材料は、10-14cm-1より大きい、またはより好ましくは10-12cm-1より大きいリチウム拡散レートを有することができる。好適に高いリチウム拡散レートを有する材料を提供することは、活電極材料を含む電気化学デバイスにおいて改善された性能を提供することができるので、有利であり得る。
【0059】
活電極材料は、カレンダー加工後2.5g/cm以上の電極密度を提供するために、以下の説明に従って適切な結合剤及び導電性添加剤を用いて複合電極を形成することが可能であり得る。これにより、高エネルギー及び高出力セルの産業要件に沿った、30~40%の範囲の電極の空隙率(測定された電極密度/各成分の真密度の平均によって計算される)を備えた複合電極が可能になる。例えば、カレンダー処理後の電極密度は最大3.2g/cmが達成されている。このような電極密度を有する材料を提供することは、活
電極材料を含む電気化学デバイスにおいて改善された性能を提供することができるので、有利であり得る。具体的には、電極密度が高い場合、重量容量×電極密度×活電極材料分率=体積比容量となるため、高い体積比容量を得ることができる。
【0060】
初期クーロン効率は、ハーフセルにおいてC/10の第1の充電/放電サイクルでのリチウム化容量と脱リチウム容量の差として測定されている。活電極材料の初期クーロン効率は、90%以上、または92.5%以上、または95%であり得る。好適に高い初期クーロン効率を有する材料を提供することは、活電極材料を含む電気化学デバイスにおいて改善された性能を提供することができるので、有利であり得る。
【0061】
本発明はまた、本発明の第1の態様の活電極材料及び少なくとも1つの他の成分を含む組成物を提供し、任意選択で、少なくとも1つの他の成分は、結合剤、溶媒、導電性添加剤、追加の活電極材料及びそれらの混合物から選択される。このような組成物は、電極、例えばリチウムイオン電池用のアノードを調製するのに有用である。追加の活電極材料は、リチウムチタン酸化物、酸化ニオブ、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0062】
組成物は、本発明の第1の態様の活電極材料とリチウムチタン酸化物との混合物を含むことができる。
【0063】
リチウムチタン酸化物は、好ましくは、例えばX線回折によって決定されるように、スピネルまたはラムスデライト結晶構造を有する。スピネル結晶構造を有するリチウムチタン酸化物の例は、LiTi12である。ラムスデライト結晶構造を有するリチウムチタン酸化物の例は、LiTiである。これらの材料は、活電極材料として使用するための優れた特性を有することが示されている。したがって、リチウムチタン酸化物は、LiTi12及び/またはLiTiに対応するX線回折によって決定される結晶構造を有し得る。リチウムチタン酸化物は、LiTi12、LiTi、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0064】
リチウムチタン酸化物は、追加の陽イオンまたは陰イオンでドープされてもよい。リチウムチタン酸化物は、酸素欠損であり得る。リチウムチタン酸化物はコーティングを含むことができ、任意選択で、コーティングは、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リン酸塩、及びフッ化物から選択される。
【0065】
リチウムチタン酸化物は、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成によって合成することができる。あるいは、リチウムチタン酸化物は商用品供給業者から得ることができる。
【0066】
リチウムチタン酸化物は粒子状であることが好ましい。リチウムチタン酸化物は、0.1~50μm、または0.25~20μm、または0.5~15μmの範囲のD50粒径を有し得る。リチウムチタン酸化物は、少なくとも0.01μm、または少なくとも0.1μm、または少なくとも0.5μmのD10粒径を有し得る。リチウムチタン酸化物は、100μm以下、50μm以下、または25μm以下のD90粒径を有することができる。D90粒径をこの範囲に維持することによって、活電極材料粒子との混合物中のリチウムチタン酸化物粒子のパッキングが改善される。
【0067】
リチウムチタン酸化物は、通常、材料の電子伝導率が低いため、小さな粒子サイズで電池のアノードに使用される。対照的に、第1の態様の活電極材料は、典型的にはリチウムチタン酸化物よりも高いリチウムイオン拡散係数を有するので、より大きな粒子サイズで使用することができる。有利には、組成物において、リチウムチタン酸化物は、活電極材料よりも小さい粒子サイズを有することができ、例えば、活電極材料のD50粒径に対す
るリチウムチタン酸化物のD50粒径の比率は、0.01:1~0.9:1、または0.1:1~0.7:1の範囲にある。このようにして、より小さいリチウムチタン酸化物粒子は、より大きい活電極材料粒子間の空隙に収容され得、組成物の充填効率を増加させる。
【0068】
リチウムチタン酸化物は、0.1~100m/g、または1~50m/g、または3~30m/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0069】
活電極材料に対するリチウムチタン酸化物の質量比は、0.5:99.5~99.5:0.5の範囲、好ましくは2:98~98:2の範囲であってよい。1つの実施態様では、組成物は、活電極材料よりも高い比率のリチウムチタン酸化物を含み、例えば、少なくとも2:1、少なくとも5:1、または少なくとも8:1の質量比である。有利なことに、これにより、製造技術の大きな変更を必要とせずに、活電極材料をリチウムチタン酸化物に基づく既存の電極に徐々に導入することができ、既存の電極の特性を改善する効率的な方法が提供される。別の実施態様では、組成物は、例えばリチウムチタン酸化物と活電極材料との質量比が1:2未満、または1:5未満、または1:8未満であるように、リチウムチタン酸化物よりも高い割合の活電極材料を有する。有利なことに、これにより、活電極材料の一部をリチウムチタン酸化物で置き換えることによってコストを削減することが可能になる。
【0070】
組成物は、本発明の第1の態様の活電極材料と酸化ニオブとの混合物を含むことができる。酸化ニオブは、Nb1229、NbO、NbO、及びNbから選択することができる。好ましくは、酸化ニオブはNbである。
【0071】
酸化ニオブは、例えば、酸化ニオブの結晶構造がNb及びOからなる酸化物の結晶構造、例えば、Nb1229、NbO、NbO、及びNbに対応するという条件で、追加の陽イオンまたは陰イオンでドープされてもよい。酸化ニオブは、酸素欠損であり得る。酸化ニオブはコーティングを含むことができ、任意選択で、コーティングは、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リン酸塩、及びフッ化物から選択される。
【0072】
酸化ニオブは、X線回折によって決定されるように、Nb1229、NbO、NbO、またはNbの結晶構造を有することができる。例えば、酸化ニオブは、斜方晶Nbの結晶構造または単斜晶Nbの結晶構造を有することができる。好ましくは、酸化ニオブは単斜晶Nbの結晶構造を有し、最も好ましくはH-Nbの結晶構造を有する。Nbの結晶構造に関するさらなる情報は、Griffith
et al.,J.Am.Chem.Soc.2016,138,28,8888-8899に記載されている。
【0073】
酸化ニオブは、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成によって合成することができる。あるいは、酸化ニオブは商用品供給業者から得ることができる。
【0074】
酸化ニオブは粒子状であることが好ましい。酸化ニオブは、0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50粒径を有し得る。酸化ニオブは、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmのD10粒径を有し得る。酸化ニオブは、100μm以下、50μm以下、または25μm以下のD90粒径を有することができる。D90粒径をこの範囲に維持することによって、活電極材料粒子との混合物中の酸化ニオブ粒子のパッキングが改善される。
【0075】
酸化ニオブは、0.1~100m/g、または1~50m/g、または1~20m/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0076】
活電極材料に対する酸化ニオブの質量比は、0.5:99.5~99.5:0.5の範囲、または2:98~98:2の範囲、または好ましくは15:85~35:55の範囲とすることができる。
【0077】
本発明はまた、集電体と電気的に接触している本発明の第1の態様の活電極材料を含む電極を提供する。電極はセルの一部を形成することができる。電極は、リチウムイオン電池の一部としてアノードを形成することができる。
【0078】
本発明はまた、金属イオン電池用のアノードにおける本発明の第1の態様の活電極材料の使用を提供し、任意選択で金属イオン電池はリチウムイオン電池である。
【0079】
本発明のさらなる実施態様は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであり、アノードは、本発明の第1の態様による活電極材料を含み、任意選択で、電気化学デバイスがリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池である。好ましくは、電気化学デバイスは、20mA/gで200mAh/gを超える可逆アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、電池は、200mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上のアノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができながら、20mA/gで初期セル容量の70%超を保持する。本発明の第1の態様の活電極材料を使用することにより、高い充電電流密度と放電電流密度が必要である用途での使用に適したリチウムイオン電池を示す、この特性の組み合わせを有するリチウムイオン電池の製造が可能になることが見出された。特に、実施例は、本発明の第1の態様による活電極材料が高いCレートで容量維持率が優れていることを示した。
【0080】
リン酸化ニオブ活電極材料は、従来のセラミック技術によって合成することができる。例えば、材料は、固体合成またはゾルゲル合成のうちの1つ以上によって作製され得る。材料は、水熱合成またはマイクロ波水熱合成、溶媒熱合成またはマイクロ波溶媒熱合成、共沈合成、スパークまたはマイクロ波プラズマ合成、燃焼合成、エレクトロスピニング、及びメカニカルアロイングなど、一般的に使用される代替技術の1つ以上によってさらに合成され得る。
【0081】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による活電極材料を製造する方法を提供し、方法は、1つ以上の前駆体材料を提供するステップと、当該前駆体材料を混合して、前駆体材料混合物を形成するステップと、前駆体材料混合物を400℃~1350℃または800℃~1350℃の温度範囲で熱処理して、それにより活電極材料を提供するステップと、を含む。
【0082】
元素Qを含む活電極材料を提供するために、方法は、活電極材料を、元素Qを含む前駆体と混合して、さらなる前駆体材料混合物を提供するステップと、さらなる前駆体材料混合物を400~1200℃または800~120℃の温度範囲で、任意選択で、還元条件下で熱処理し、それによって元素Qを含む活電極材料を提供するステップと、をさらに含んでもよい。
【0083】
この方法は、活電極材料または元素Qを含む活電極材料を還元条件下で400~1350℃または800~1350℃の温度範囲で熱処理し、それによって酸素空孔を活電極材料に導入するさらなるステップを含んでもよい。酸素空孔は、活電極材料にすでに存在する、例えば、P及び/またはNbとM1及び/またはM2のイオン価以下の置換によりすでに存在する酸素空孔に加えられ得る。あるいは、例えば、M1及びM2がP及びNbと同じイオン価を有する場合、及びM1及びM2が存在しない場合、酸素空孔は新しい酸素
空孔であり得る。酸素空孔の存在は、本明細書で議論される利点を提供する。
【0084】
前駆体材料は、1つ以上の金属酸化物、金属水酸化物、金属塩またはアンモニウム塩を含むことができる。例えば、前駆体材料は、異なる酸化状態及び/または異なる結晶構造の1つ以上の金属酸化物または金属塩を含むことができる。適切な前駆体材料の例には、Nb、Nb(OH)、ニオブ酸、NbO、シュウ酸ニオブ酸アンモニウム、NHPO、(NHPO、(NHPO、P、HPO、Ta、WO、ZrO、TiO、MoO、V、ZrO、CuO、ZnO、Al、KO、KOH、CaO、GeO、Ga、SnO、CoO、Co、Fe、Fe、MnO、MnO、NiO、Ni、HBO、ZnO、及びMgOが含まれるが、これらに限定されない。前駆体材料は、金属酸化物を含まなくてもよく、または酸化物以外のイオン源を含んでもよい。例えば、前駆体材料は、金属塩(例えばNO 、SO )または他の化合物(例えばシュウ酸塩)を含み得る。酸素陰イオンを他の電気陰性陰イオンQで置換するために、元素Qを含む前駆体は、1つ以上の有機化合物、ポリマー、無機塩、有機塩、ガス、またはアンモニウム塩を含み得る。元素Qを含む適切な前駆体材料の例には、メラミン、NHHCO、NH、NHF、PVDF、PTFE、NHCl、NHBr、NHI、Br、Cl、I、オキシ塩化アンモニウムアミド、及びヘキサメチレンテトラミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
前駆体材料の一部または全部は、粒子状材料であってもよい。それらが粒状材料である場合、好ましくは、それらは直径20μm未満、例えば10nm~20μmのD50粒径を有する。このような粒径を有する微粒子材料を提供することは、前駆体材料のより密接な混合を促進するのに役立ち、それによって、熱処理ステップ中のより効率的な固相反応をもたらすことができる。しかしながら、前駆体材料混合物を形成するために当該前駆体材料を混合するステップの間に、1つ以上の前駆体材料の粒子サイズを機械的に減少させることができるので、前駆体材料が20μm未満の初期粒子サイズを有することは必須でない。
【0086】
前駆体材料を混合して前駆体材料混合物及び/またはさらなる前駆体材料混合物を形成するステップは、乾式または湿式遊星ボールミリング、ローリングボールミリング、高エネルギーボールミリング、高せん断ミリング、空気ジェットミリング、スチームジェットミリング、及び/または衝撃ミリングから選択されるプロセスによって実行することができる(限定ではない)。混合/ミリングに用いる力は、前駆体材料の形態に依存し得る。例えば、前駆体材料の一部またはすべてがより大きな粒子サイズ(例えば、20μmを超えるD50粒径)を有する場合、ミリング力は、前駆体材料混合物の粒径が直径20μm以下に減少するように、前駆体材料の粒径を減少させるように選択され得る。前駆体混合物中の粒子の粒径が20μm以下であると、熱処理ステップにおける前駆体混合物中の前駆体材料の固相反応をより効率的に促進することができる。
【0087】
前駆体材料混合物及び/またはさらなる前駆体材料混合物を熱処理するステップは、1時間~24時間、より好ましくは3時間~18時間の時間で実行することができる。例えば、熱処理ステップを、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、または12時間以上実行することができる。熱処理ステップは、24時間以下、18時間以下、16時間以下、または12時間以下で実行することができる。
【0088】
前駆体材料混合物を熱処理するステップは、気体雰囲気、好ましくは空気中で実行することができる。好適な気体雰囲気は、空気、N、Ar、He、CO、CO、O、H、NH、及びそれらの混合物を含む。気体雰囲気は、還元性雰囲気であってもよい。酸素欠損材料を作製することが望まれる場合、好ましくは、前駆体材料混合物を熱処理す
るステップは、不活性雰囲気または還元性雰囲気中で実行される。
【0089】
さらなる前駆体材料混合物を熱処理するステップは、例えばQがNであるとき、還元条件下で実行することができる。還元条件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス下、または不活性ガスと水素の混合物下、または真空下が含まれる。好ましくは、さらなる前駆体材料混合物を熱処理するステップは、不活性ガス下で加熱することを含む。あるいは、さらなる前駆体材料混合物を熱処理するステップは、例えばQがFであるとき、空気中で実行することができる。
【0090】
活電極材料、及び/または場合により還元条件下での元素Qを含む活電極材料を熱処理するさらなるステップは、1時間~48時間、1時間~24時間、より好ましくは3時間~18時間の時間実行することができる。例えば、熱処理ステップを、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、または12時間以上実行することができる。さらなる熱処理のステップは、48時間以下、24時間以下、18時間以下、16時間以下、または12時間以下で実行することができる。還元条件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス下、または不活性ガスと水素の混合物下、または真空下が含まれる。好ましくは、還元条件下での加熱は、不活性ガス下での加熱を含む。
【0091】
いくつかの方法では、2ステップの熱処理を行うことが有益であり得る。例えば、前駆体材料混合物、及び/またはさらなる前駆体材料混合物を、第1の温度で第1の時間加熱し、続いて第2の温度で第2の時間加熱することができる。好ましくは、第2の温度は第1の温度よりも高い。このような2ステップ熱処理を行うことにより、固相反応を補助して所望の結晶構造を形成することができる。
【0092】
この方法は、リン酸化ニオブ活電極材料の形成後に、1つ以上の後処理ステップを含むことができる。場合によっては、この方法は、「アニーリング」と呼ばれることもあるリン酸化ニオブを熱処理する後処理ステップを含むことができる。この後処理熱処理ステップは、前駆体材料混合物を熱処理してリン酸化ニオブを形成するステップとは異なるガス雰囲気で実行することができる。後処理熱処理ステップは、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気で実行することができる。このような後処理熱処理ステップは、500℃を超える温度、例えば約900℃で実行することができる。後処理熱処理ステップを含めることは、例えば、リン酸化ニオブに欠損または欠陥を形成するために、例えば、酸素欠損を形成するために、または、形成されたリン酸化ニオブ上に陰イオン交換、例えばO陰イオンに対するN交換を実行するために、有益であり得る。
【0093】
この方法は、リン酸化ニオブ活電極材料をミリング及び/または分類して(例えば、衝撃ミリング、ジェットミリング、スチームジェットミリング、高エネルギーミリング、高せん断ミリング)、上記の粒子サイズパラメータのいずれかを有する材料を提供するステップを含むことができる。
【0094】
リン酸化ニオブ活電極材料を炭素コーティングして、その表面の電気伝導率を改善するか、または電解質との反応を防止するステップがあり得る。これは、典型的には、ミリング、好ましくは高エネルギーミリングを含むことができる、中間材料を形成するためにリン酸化ニオブを炭素前駆体と組み合わせることからなる。あるいは、またはさらに、このステップは、水、エタノール、またはTHFなどの溶媒中でリン酸化ニオブを炭素前駆体と混合することを含むことができる。これらは、リン酸化ニオブと炭素前駆体との均一な混合を確実にする効率的な方法を表している。
【0095】
多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体は、本発明の第1の態様の活電極材料上に特に有益な炭素コーティングを提供することが見出された。したがって、活電極材料を製造する
方法は、活電極材料または元素Qを含む活電極材料を、多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体と組み合わせて、中間材料を形成するステップ、及び、中間材料を還元条件下で加熱して炭素前駆体を熱分解し、活電極材料上に炭素コーティングを形成し、酸素空孔を活電極材料に導入するステップをさらに含んでもよい。
【0096】
中間材料は、活電極材料の総重量と炭素前駆体に基づいて、炭素前駆体を最大25重量%、または0.1~15重量%、または0.2~8重量%の量で含むことができる。活電極材料上の炭素コーティングは、活電極材料の総重量に基づいて、最大10重量%、または0.05~5重量%、または0.1~3重量%の量で存在し得る。これらの量の炭素前駆体及び/または炭素コーティングは、リン酸化ニオブの割合を過度に減少させることによって活電極材料の容量を過度に減少させることなく、炭素コーティングによる電子伝導率の改善との間の良好なバランスを提供する。熱分解中に失われる炭素前駆体の質量は、30~70重量%の範囲であり得る。
【0097】
還元条件下で中間材料を加熱するステップは、400~1,200℃、または500~1,100℃、または600~900℃の範囲の温度で実行することができる。還元条件下で中間材料を加熱するステップは、30分~12時間、1~9時間、または2~6時間の範囲内の持続時間で実行することができる。
【0098】
還元条件下で中間材料を加熱するステップは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス下で行うことができ、または、不活性ガスと水素の混合気下で実行することができ、または、真空下で実行することができる。
【0099】
多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体は、ピッチ系炭素、酸化グラフェン、グラフェン、及びそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体は、ピッチ系炭素、酸化グラフェン、及びそれらの混合物から選択される。最も好ましくは、多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体は、ピッチ系炭素から選択される。ピッチ系炭素は、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、ウッドタールピッチ、等方性ピッチ、ビチューメン、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0100】
ピッチ系炭素は、分子量の異なる芳香族炭化水素の混合物である。ピッチ系炭素は、石油精製所からの低コストの副産物であり、広く入手可能である。ピッチは酸素含有量が少ないので、ピッチ系炭素の使用は有利である。したがって、還元条件下で中間材料を加熱することと組み合わせて、ピッチの使用は、リン酸化ニオブ中の酸素空孔の形成に有利に働く。
【0101】
他の炭素前駆体は、通常、かなりの量の酸素を含んでいる。例えば、グルコースやスクロースなどの炭水化物は、炭素前駆体としてよく使用される。これらは経験式C(HO)を有し、したがってかなりの量の共有結合酸素を含む(例えば、スクロースは式C122211を有し、約42重量%の酸素である)。かなりの量の酸素を含む炭素前駆体の熱分解は、リン酸化ニオブの還元を防止または阻害するか、または酸化にさえつながると考えられており、酸素空孔がリン酸化ニオブに導入されない可能性があることを意味する。したがって、炭素前駆体は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満の酸素含有量を有し得る。
【0102】
炭素前駆体は、sp炭素を実質的に含まなくてもよい。例えば、炭素前駆体は、10重量%未満のsp炭素源、好ましくは5重量%未満のsp炭素源を含むことができる。炭水化物は、sp炭素の供給源である。炭素前駆体は炭水化物を含まなくてもよい。本発明で使用されるいくつかの炭素前駆体は、sp炭素の不純物、例えば好ましくは最大3重量%までの炭素を含み得ることが理解されよう。
【0103】
本発明の第1の態様の活電極材料は、炭素コーティングを含んでもよい。炭素コーティングは、多芳香族sp炭素を含むことが好ましい。このようなコーティングは、多芳香族sp炭素を含む炭素前駆体を熱分解することによって形成される。これは、sp混成が熱分解中に大部分保持されるからである。通常、還元条件下での多芳香族sp炭素前駆体の熱分解は、sp芳香族炭素のドメインのサイズの増加をもたらす。したがって、多芳香族spを含む炭素コーティングの存在は、コーティングを作製するために使用される前駆体を知ることによって確立することができる。炭素コーティングは、多芳香族sp炭素を含む炭素前駆体の熱分解から形成される炭素コーティングとして定義することができる。好ましくは、炭素コーティングはピッチ系炭素に由来する。
【0104】
多芳香族sp炭素を含む炭素コーティングの存在は、通常の分光技術によって確立することもできる。例えば、ラマン分光法は特徴的なピーク(1,000~3,500cm-1の領域で最も多く観察される)を提供し、これを使用して様々な形態の炭素の存在を識別することができる。sp炭素(ダイヤモンドなど)の結晶性の高いサンプルでは、約1332cm-1で狭い特徴的なピークを提供する。多芳香族sp炭素は通常、特徴的なD、G、及び2Dピークを提供する。D及びGピークの相対強度(I/I)は、sp対sp炭素の相対比率に関する情報を提供できる。活電極材料は0.85~1.15、または0.90~1.10、または0.95~1.05の範囲内のラマン分光法によって観察されるI/I比を有し得る。
【0105】
X線回折も、炭素コーティングのタイプに関する情報を提供するために使用することができる。例えば、炭素コーティングを有するリン酸化ニオブのXRDパターンは、コーティングされていないリン酸化ニオブのXRDパターンと、及び/または炭素コーティングを作るために使用される炭素前駆体の熱分解サンプルのXRDパターンと、比較することができる。
【0106】
炭素コーティングは半結晶性であってもよい。例えば、炭素コーティングは、約26°の2θを中心とする活電極材料のXRDパターンにおいて、幅(最大半量での全幅)が少なくとも0.20°、または少なくとも0.25°、または少なくとも0.30°でピークを示す。
【実施例
【0107】
ベースのリン酸化ニオブ材料は、固体ルートによって合成された。最初のステップで、前駆体材料(Nb、NHPO、TiO、MoO、HBO、Al、ZrO、GeO、Ga、Cr)を化学量論比(合計350g)で混合し、10:1の粉末比率まで3時間の間550rpmでボールミリングされた。得られた粉末は、マッフル炉内のアルミナるつぼで、T1a=250~600℃の空気中で1~12時間、続いてT1b=800~1350℃で4~24時間、熱処理されて目的のWadsley-Roth相を提供した。いくつかの場合では、T=800~1350℃で1~12時間、N雰囲気下で、追加の熱処理ステップも適用されて、基本結晶構造に酸素欠損(酸素空孔)が誘導された。陰イオンを含めるために、追加のミリング/混合が前駆体(1:3質量比のNに対してNHHCO、1:10質量比のFに対してPVDF)で行われ、その後、Nに対してN雰囲気で、そしてFに対して空気雰囲気中でT=400~1200℃で1~24時間、熱処理を行った。
【0108】
衝撃ミリングまたはジェットミリングによって最終的な解凝集ステップを利用して、必要に応じて所望の粒子サイズ分布に調整した。具体的には、材料は、20,000RPMで10秒間の衝撃ミリングによって解凝集された。
【0109】
【表1】
【0110】
材料特性評価
サンプルの相純度を、Rigaku社製Miniflex粉末X線回折計を用いて、2θ範囲(20~70°)をスキャンレート1°/分で分析した。
【0111】
図1は、サンプル1~9の測定されたXRD回折パターンを示す。図7は、サンプル10~17の測定されたXRD回折パターンを示す。回折パターンは同じ位置にピーク(ドーピングによる最大約0.2°のシフトあり)を有し、PNb25に対応するICDD結晶学データベースエントリJCPDS81-1304と一致する。非晶質のバックグラウンドノイズはなく、ピークは鋭く強い。これは、すべてのサンプルが相純粋かつ結晶
質であり、シェラーの式によると結晶子径が30~60nmであり、結晶構造がPNb25に一致することを意味する。これにより、Wadsley-Roth結晶構造の存在が確認される。
【0112】
【表2】
【0113】
一部のサンプルについて、Perkin Elmer社製Pyris1システムを用いて、空気雰囲気中で、熱重量分析(TGA)を実行した。サンプルは20mL/分の空気流によって、5℃/分で30℃から900℃に加熱され、30分間900℃で保たれた。酸化による質量変化を定量化するために、サンプル2及び7でTGAを実行した。測定された質量増加は、存在する誘導酸素欠損の程度に対応すると仮定された。
【0114】
【表3】
【0115】
粒子サイズ分布を、Horiba社製の乾燥粉末用レーザー回折式粒子分析器で取得した。空気圧は0.3MPaに保った。結果を表1に示す。
【0116】
電気化学特性評価
Li-ionセルの充電レートは、通常「Cレート」として表される。1C充電レートとは、セルが1時間で完全に充電されるような充電電流を意味し、10C充電とは、電池が1時間の1/10(6分)で完全に充電されることを意味する。ここでのCレートは、印加される電圧制限内のアノードの可逆容量から定義される。つまり、1.0~3.0Vの電圧制限内で1.0mAh cm-2の容量を示すアノードの場合、1Cレートは1.0mAcm-2の印加電流密度に対応する。
【0117】
分析のため、ハーフコインセル(CR2032サイズ)で電気化学試験を行った。ハーフコイン試験では、活物質を電極でLi金属電極に対して試験して、材料の基本的性能を評価する。以下の実施例では、試験しようとしている活物質組成物をN-メチルピロリドン(NMP)、導電性添加剤として作用するカーボンブラック、ポリ(ビニルジフルオライド)(PVDF)結合剤と組み合わせ、実験室規模の遠心式遊星型ミキサでスラリー状に混合した。スラリーの非NMP組成は、90重量%の活物質、6重量%の導電性添加剤、4重量%の結合剤であった。このスラリーをドクターブレードコーティングによりAl箔集電体上に所望の充填70g cm-2までコーティングし、乾燥させた。次に、電極を80℃で2.6~3.2gcm-3の密度にカレンダー加工して、35~40%の目標空隙率を達成した。電極を所望の大きさに打ち抜き、スチール製コインセルケース内でセパレータ(Celgard社製多孔質PP/PE)、Li金属、及び電解質(EC/DEC中に1.3MのLiPF)と組み合わせ、圧力下で密封した。次に、サンプル1~9の場合は1.0~2.5V、サンプル10~17の場合は1.0~3.0Vのリチウム化と脱リチウム化の2フルサイクルに対して、低電流レート(C/10)で23℃でサイクリングを実行した。その後、電流密度を上げてセルの性能を試験した。レート試験中、セルは23℃で非対称にサイクルされ、ゆっくりと充電され(リチウム化、C/5)、続いて、放電能力試験(例えば、容量維持率の測定)のために放電レートを上げた(脱リチウム化、例えば、1C、次に2C、次に5C、次に10C)。Li/Liに対する公称リチウム化電圧は、V/Q曲線の積分をリチウム化中の5Cでの総容量で割ったものから計算している。サンプル10~17は、少なくとも3組で評価されており、誤差は標準偏差として示されている。
【0118】
電極コーティングの電気抵抗率は、Ossila社製機器を使用した4点プローブ法によって評価された。電極コーティングは、70gcm-2の質量充填に調製され、すべてのサンプルについて、絶縁マイラーのシート上で35~40%の空隙率にカレンダー加工された。次いで、23℃の一定温度でΩパースクエアの単位で直径15mmのディスク上でシート抵抗を測定した。
【0119】
また、Cu及びAl両方の集電体箔上に均質で平滑なコーティングを行い、目に見える欠陥または凝集物のないコーティングを、遠心式遊星型ミキサを用いて、活物質最大94重量%、導電性添加剤4重量%、結合剤2重量%の組成で選択されたサンプルに対して上記のように調製した。これらはPVDFとCMC:SBRベースの結合剤システムの両方で調整されている。コーティングは、PVDFでは80℃、及びCMC:SBRでは50℃で、1.0から3.5mAh cm-2の充填で35~40%の空隙率にカレンダー加工された。これは、これらの材料が、高エネルギーと高出力の両方の用途向けの商業的に焦点を合わせた電極で実行可能であることの重要な照明である。
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
実施例A-サンプル1*及び3
比較サンプル1*は、P5+陽イオンによる陽イオン置換によって改質されており、サンプル3(すなわち、a>0である等価M1置換)のように全体的なイオン価を維持している。イオン価が維持されているので、PNb25活物質への影響は、使用される陽イオンの異なるイオン半径の結果として、ユニットセルサイズの変化と結晶構造の局所的な歪みによるものになる。例えば、4配位P5+陽イオンのイオン半径は、0.42Åの4配位Ti4+陽イオンのイオン半径に対して0.17Åである。これにより、空洞サイズ(この場合は特にタイプVI空洞(この場合、特にタイプVI空洞の可能性)を変化させてLiイオン部位の利用可能性を変更することで、電気化学的性能を向上させることができ、可逆的リチウム化に対するエネルギー障壁の低減による比容量の改善、またはクーロン効率の改善などの電気化学的特性をもたらす。これにより、結晶特性の変化によって電気伝導率が向上し、Li-ion拡散を改善することにより、電気化学的にインピーダンス/分極を低減することができる。
【0124】
5+陽イオンをTi4+またはMo6+などの代替の電気化学的に活性な陽イオンに交換することは、Li/Liに対する公称電圧を下げてセル全体のエネルギー密度を高めることによって、またはより効率的で可逆的な酸化還元プロセスを通じて容量とクーロン効率を向上させること、などによって材料の酸化還元特性の調整にも役立ち得る。
【0125】
表2は、サンプル1*及び3の間でユニットセルパラメータに生じた変化を示している。特に、0.0075Åだけ増加するa及びbパラメータの変化があり、cパラメータは0.0030Åのわずかな減少を示している。これは、より大きなイオン半径の材料による等価置換が、a及びb方向の格子の拡大を引き起こす可能性があることを示している。
これは、表4に示す電気抵抗のわずかな改善に引き継がれ、サンプル1*からサンプル3に18Ωパースクエア減少する。電気化学的性能は、表5と表6で大幅な改善を示しており、比容量の改善、第2サイクルのコロンブス効率の改善、及び高電圧(5Cでの公称電圧で表される)での分極の減少が見られる。さらに、レートを10Cまで上げて比容量維持率が改善され、これを超えて20C以上、または50C以上、または100C以上になる可能性がある。
【0126】
同様の利点が、記載されているLi-ionセルで使用するためのM1ドーパントで観察されることが期待される。
【0127】
実施例B-サンプル1*,4及び5
比較サンプル1*は、Nb5+陽イオンによる陽イオン置換によって改質されており、サンプル4及び5(すなわち、b>0である等価M2置換)のように全体的なイオン価を維持している。ユニットセルサイズ、電気的及び電気化学的特性が変化した結果として、実施例Aと同様の利点が見られる。具体的には、サンプル4及び5は、サンプル1*に対して表4の電気抵抗の改善を示しており、また、表6の10Cまで速度を上げて比容量維持率を改善し、これを超えて20C以上、または50C以上、または100C以上のレートになる可能性がある。
【0128】
同様の利点が、記載されているLi-ionセルで使用するためのM2ドーパントで観察されることが期待される。
【0129】
実施例C-サンプル1*、6、9及び11~17
比較サンプル1*は、サンプル6、9、及び11~17で全体的なイオン価を維持することなく、陽イオン置換によって改質されている。例えば、サンプル6と9では、より低い価数の陽イオンが使用されており、サンプル6の場合は他の陽イオンが使用されている。実施例A及びBにおいて説明した置換によるイオン半径の変更からの利点は維持される。サンプル6と9では、イオン価が低いほど結晶構造が変化し、電子構造が変化する。置換が同じ陽イオン部位で起こる場合、例えば、P5+がAl3+を直接置換する場合、材料のO含有量は比例して減少し、電荷のバランスがとれた構造(つまり、ベースのPNb25構造に対して酸素欠損)が維持される。これにより、構造内に欠陥と追加の電荷キャリア(つまり、正孔)が作成され、電気伝導率が向上する。これはまた、O陰イオン及び周囲P/Nb陽イオンとの配位の変化による結晶の歪みを引き起こす可能性があり、説明したようにイオン半径を変更するのと同様の方法で、電気的及び電気化学的性能をさらに改善する。
【0130】
これは、表2で観察され、ここでは、ユニットセルパラメータがa及びbパラメータの減少を示し、それだけでなくcパラメータの減少も示しており、全体的に小さな結晶構造の収縮を示している。電気抵抗測定値は表4の改善を示しており、サンプル1と比べて観察されたシート抵抗が大幅に減少している。表5と表6では、電気化学測定により、サンプル6と9の両方について、比容量、第2サイクルのクーロン効率、分極、及び高レートでの容量維持率においてさらに利点が示されている。
【0131】
サンプル11~17は、全体的な価数を維持せずにM1によるP5+の、またはM2によるNb5+のさらなる置換を示している。サンプル11~17の各々は、比較サンプル1*と比較して、高レートで著しく改善された容量維持率を提供した(表6)。
【0132】
同様の利点が、Li-ionセルでの使用について、P5+またはNb5+に対してより低いまたはより高いイオン価の陽イオンまたは陰イオン交換で観察されることが期待される。
【0133】
実施例D-サンプル1*、2、6及び7
比較サンプル1*及びサンプル6は、サンプル2及び7を提供するために、不活性または還元雰囲気での熱処理によって誘導された酸素空孔欠陥(酸素欠損を参照)の導入によって改質されている。これらの材料を不活性雰囲気または還元性雰囲気中で高温で処理することによって、それらは部分的に還元され、室温に戻って空気雰囲気にさらされたときにこれを維持することができる。これには明らかな色の変化が伴う。例えば、サンプル2は水色であるが、サンプル1*は白である。この色の変化は、材料の電子構造が大幅に変化したことを示しており、バンドギャップが減少したために、可視光の異なるエネルギー(つまり波長)と相互作用できるようになる。
【0134】
誘導酸素空孔は、具体的には、酸素陰イオンが除去された結晶構造の欠陥である。これにより、材料の電気伝導率を大幅に改善する過剰な電子が提供され、色の変化によって示されるようにバンドギャップエネルギーが変化する。誘導酸素空孔が5原子%を超えて存在する場合(すなわち、c>1.25)、安定性の喪失のために結晶構造が崩壊する。これらの誘導酸素空孔は、サンプル7に示すように、亜価陽イオン交換の使用によって引き起こされる酸素欠損に加えて存在する可能性がある。ここで酸素欠損の証拠は空気中のTGA分析によって提供され、温度の上昇時に質量増加を示す。これは、酸化されてサンプル1*及び6に再び類似した構造を提供するようになるため、存在する酸素欠損の程度に対応すると想定されている。酸素欠損を定量化するために、上記のように多くの他の技術を使用することもできる。
【0135】
表2は、サンプル2及び7で酸素空孔を誘導したときに起こるユニットセルパラメータの変化を示している。電気抵抗の測定値は、サンプル1*に対するサンプル2の表4の改善を示している。サンプル6とサンプル7の間で同様のシート抵抗が観察された。これは、サンプル6がP5+のAl3+との亜イオン価置換のためにすでに酸素欠損状態になっているためである。電気化学測定では、表5と表6で、比容量、第1サイクルと第2サイクルのクーロン効率、分極、及び容量維持率において高レートで、サンプル7が6に対して大幅に有利であることも加えて示されている。
【0136】
Li-ionセルで使用するための誘導酸素欠損を有する記載されたPNO構造のいずれかで、同様の利点が観察されることが期待される。
【0137】
実施例E-サンプル1*、5、8及び10
サンプル5は、N3-陰イオン(窒化を参照)の導入によって改質されており、サンプル8を提供する。これは固相合成ルートによって行われたが、高温でNHガスを利用する気体ルートでも同様に行うことも、続いて蒸発させてから高温熱処理を行う溶媒に溶解したN含有材料を使用して行うこともできる。サンプル8は、オフホワイト/薄黄色であるサンプル5と比較して茶色であり、実施例Dと同様の方法で活物質の電子構造が変化したことを示している。
【0138】
実施例A~Cと同様に、この交換はO2-陰イオン部位で起こり得、この場合、イオン価の増加は材料の電子伝導率を増加させ得る。それはまた、結晶構造内の格子間部位でも発生し得る。両方の場合において、これはまた、異なるイオン半径及び陰イオンのイオン価に起因して、異なるユニットセルサイズ及び関連する結晶学的歪みを生じさせ、実施例A~Dに同様の潜在的利点を提供し得る。
【0139】
表2は、サンプル5に対してサンプル8にN3-陰イオンを導入したときに起こるユニットセルパラメータの変化を示しており、a及びbパラメータを大きく低減し、cパラメータを少しだけ増加させ、結晶構造内へのN3-の組み込みの証拠を提供している。電気
化学的測定では、サンプル5に対してサンプル8の高速での容量維持率の改善が示されている(表6)。参考サンプル1*と比較して、サンプル8では、高レートでの容量維持率が大幅に改善された。
【0140】
比較サンプル1*は、サンプル10を提供するためにF陰イオンを導入するように改質されている。電気化学的測定では、サンプル1*に対してサンプル10の高速での容量維持率の大幅な改善が示されている(表6)。
【0141】
Liイオンセルで使用するための記載されたPNO構造のいずれかと異なる電気陰性度及びイオン価の陰イオンを使用することによって、同様の利点が観察されることが期待される。
【0142】
考察
比較サンプル1*は、複数のタイプの陽イオン/陰イオン置換、または誘導酸素欠損(すなわち、a>0及びb>0、またはa>0、d>0、またはa>0、b>0、c>0など)で改質することもできる。サンプル6は、a>0及びb>0を有することの効果を実証し、サンプル7は、a>0、b>0及びc>0を有することの効果を実証する。さらにd>0を有する材料は、活物質に対する性能においてさらなる利点をもたらすことが期待される。実施例A~Eについて記載されているような改善は、複数のタイプの改質を示すこれらの材料について期待される。
【0143】
表2は、発生した材料の変化を反映したユニットセルパラメータの変化を示している。サンプル6と7は両方とも、表4に示すようにサンプル1*に対して電気抵抗が大幅に改善されていることを示している。電気化学測定では、表5と表6で、比容量、第2サイクルのクーロン効率、分極(サンプル7の)、及び容量維持率において高レートで、サンプル6及び7が1*に対して大幅に有利であることも加えて示されている。
【0144】
結晶構造の無秩序度を高めることで(エントロピーを参照)、これは可逆的リチウム化に対するエネルギー障壁が少なくなるため、可逆的リチウム化プロセスが促進され、部分的にリチウム化された結晶内でのLiイオンの秩序化が妨げられるのに役立つ。これは、Liイオンのインターカレーションのエネルギー状態の広がりを生み出すこととして定義することもでき、これが望ましくないリチウム秩序化及びエントロピーエネルギー障壁を妨げる。例えば、これは、図6に示されているdQ/dVプロットを調べることから推測でき、サンプル7に対してサンプル1*に存在するピークはそれほど大きくない。
【0145】
Liイオンセルで使用するための記載された制限内で、M1、M2、Q、a、b、c、及びdの任意の組み合わせを利用する、記載されたPNO構造のいずれにおいても、同様の利点が観察されることが期待される。
【0146】
本発明は、上記の例示的な実施形態と併せて説明されてきたが、本開示が与えられた場合、多くの同等の修正及び変形が当業者には明らかであろう。したがって、上記に記載された本発明の例示的な実施形態は、例示であって、限定的なものではないと考えられる。記載された実施形態に対する種々の変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。疑問を避けるために、ここで提供される理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0147】
本明細書で使用されているセクションの見出しは、編成的な目的のみであり、説明されている主題を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0148】
参考文献
本発明及び本発明が関係する技術の水準をより完全に説明し、開示するために、いくつかの刊行物が上記で引用されている。これらの参考文献の完全な引用を以下に示す。これらの参考文献のそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる。
1. J.B.Goodenough et.al.,J.Am.Chem.Soc.,135,(2013),1167-1176。
2. R.S.Roth et al,Acta Cryst.,18,1965,643-647。
3. J.Xu et al,Inorg.Chem.,33,1994,267-270。
4. S.Patoux et al,J.Electrochem.Soc.,149,2002,A391-A400。
5. H.Yu et al,Mater.Chem.Front.,4,2020,631-637。
6. M.B.Preefer et al,Chem.Mater.,32,2020,4553-4563。
7. R.D.Shannon,Acta Cryst.,A32,1976,751-767。
8. A.Benabbas,Acta Cryst.Cryst.Struct.Comm.,47,1991,849-850。
【要約】
本発明は、M1aPx-aM2bNb9-bO25-c-dQdの組成を有するリン酸化ニオブ活電極材料を提供し、M1は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、Sb、及びこれらの混合物から選択され、M2は、Na、K、Mg、Ca、Sr、Y、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、Bi、P、Sb、及びこれらの混合物から選択され、Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びこれらの混合物から選択され、0≦a≦0.5、0≦b≦2、-0.5≦c≦1.25、0≦d≦5、1≦x≦2であり、a、b、c、及びdのうち1つ以上は0に等しくなく、ただし、M1がNbで構成され、M2がPで構成される場合、c>0という条件である。このような材料は、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池における活電極材料として注目されている。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7