(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】分子誘導システムペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20230602BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230602BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230602BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230602BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230602BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230602BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230602BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20230602BHJP
C07K 16/32 20060101ALN20230602BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 P
A61K39/395 T
A61P3/10
A61P25/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
C07K7/00
C07K16/32 ZNA
C07K19/00
(21)【出願番号】P 2020501210
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 US2018041403
(87)【国際公開番号】W WO2019014190
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501228071
【氏名又は名称】エスアールアイ インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン キャスリン シー
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】リー シュンジ スーザン
(72)【発明者】
【氏名】オールレッド カーティス
(72)【発明者】
【氏名】チュン キーン
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア マイケル
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】PLOS ONE,2013年,Vol.8, No.6, e66084,p.1-11
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2014年,Vol.4, No.1, Article number:4480,p.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61K 39/395
A61P 3/10
A61P 25/00
A61P 31/00
A61P 35/00
A61P 43/00
C07K 7/00
C07K 16/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプチドと結合された
抗Rasモノクローナル抗体を含む
組成物であって、前記1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)、YPGSPTQYPSSMHEYHSSSE(配列番号39)、AHTIDDEWASYHMQQWNSPP(配列番号40)、またはFEEFYSRQSNTIPYPQQYKG(配列番号41)である、組成物。
【請求項2】
前記
抗Rasモノクローナル抗体が、細胞内標的をターゲティングする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)の配列を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1種以上のMGSペプチドが、1種以上の細胞内標的に局在化する、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞内標的が、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記
抗Rasモノクローナル抗体が、リンカーを介して前記1種以上のMGSペプチドと結合されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記1種以上のMGSペプチドと結合された前記
抗Rasモノクローナル抗体が、融合タンパク質である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
細胞内標的をターゲティングする
ための医薬の製造のための1種以上のMGSペプチドと結合された抗Rasモノクローナル抗体の使用であって
、前記1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)、YPGSPTQYPSSMHEYHSSSE(配列番号39)、AHTIDDEWASYHMQQWNSPP(配列番号40)、またはFEEFYSRQSNTIPYPQQYKG(配列番号41)であり、前記
抗Rasモノクローナル抗体が細胞内標的をターゲティングする
ものである、前記
使用。
【請求項9】
前記細胞内標的が、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核である、請求項
8に記載の
使用。
【請求項10】
感染症、がん、糖尿病、神経もしくは神経変性疾患、遺伝性疾患、またはバイオテロリズム剤への曝露の治療を要する対象
における感染症、がん、糖尿病、神経もしくは神経変性疾患、遺伝性疾患、またはバイオテロリズム剤への曝露を治療するための方法
において用いるための医薬の製造のための1種以上のMGSペプチドと結合された抗Rasモノクローナル抗体の使用であって、
前記方法が前記治療を要する対象に、有効量の、
前記1種以上のMGSペプチドと結合された
抗Rasモノクローナル抗体を投与することを含み、
前記1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)、YPGSPTQYPSSMHEYHSSSE(配列番号39)、AHTIDDEWASYHMQQWNSPP(配列番号40)、またはFEEFYSRQSNTIPYPQQYKG(配列番号41)であり、前記
抗Rasモノクローナル抗体が、疾患プロセスに関与する細胞内標的をターゲティングする
ものである、前記
使用。
【請求項11】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗Rasモノクローナル抗体を含む、感染症、がん、糖尿病、神経もしくは神経変性疾患、遺伝性疾患、またはバイオテロリズム剤への曝露の治療をするための医薬組成物であって、前記1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)、YPGSPTQYPSSMHEYHSSSE(配列番号39)、AHTIDDEWASYHMQQWNSPP(配列番号40)、またはFEEFYSRQSNTIPYPQQYKG(配列番号41)であり、前記抗Rasモノクローナル抗体が、疾患プロセスに関与する細胞内標的をターゲティングするものである、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
治療抗体を特定の細胞タイプ及び細胞内の特定の場所に送達するシステマチックな細胞ターゲティングシステムが切望されている。
【背景技術】
【0002】
治療モノクローナル抗体(MAb)市場は、過去十年間で700億ドルを超える規模にまで劇的な成長を遂げ、2020年には1250億ドル規模にまで成長すると予想されている。現在、広範な疾患に対してFDAの承認を得た47種類の治療MAbが市場に流通している。しかしながら、MAbは細胞透過性を有さず、そのため細胞外及び細胞表面の治療標的に限定される。このため、細胞内の治療標的の多く、特にタンパク質-タンパク質相互作用は、MAb治療の対象となっていない。MAbは、その点を除けば、タンパク質-タンパク質相互作用を調節する固有の強力な能力を有しており、したがって、MAbが細胞に浸透することができず、細胞内のタンパク質-タンパク質相互作用を調節することができないことは、感染症、がん、及び他の治療困難で難治性の疾患などの命に関わる病気の治療における主要な未解決の課題となっている。
【発明の概要】
【0003】
MAbは、タンパク質-タンパク質相互作用を調節する固有の強力な能力を有しており、MAbが細胞に浸透することができず、細胞内のタンパク質-タンパク質相互作用を調節することができないことは、命に関わる病気の治療における主要な未解決の課題となっている。治療MAbを特定の標的細胞及びその細胞内の正しい区画に送達できることは、多くの社会的な健康効果を有するであろう。MGS―MAbの組み合わせは、従来、「薬剤治療不能」(Undruggable)とされた標的を治療できる可能性を有する、新たなクラスの安全かつ効果的な、細胞内で作用する薬剤を創出するものである。本明細書では、新たに出現する感染症及びバイオテロリズムの治療に対する新たな治療戦略、がん、糖尿病、神経及び神経変性疾患、及びさらには遺伝性疾患に対する新たな治療法を与える分子誘導システム(MGS)ペプチドを用いた組成物及び方法を開示する。
【0004】
1種以上の分子誘導システム(molecular guidance system)(MGS)ペプチドと結合された抗体を含む組成物が開示される。
【0005】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、抗体が細胞内標的をターゲティングする組成物が開示される。
【0006】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、抗体がモノクローナル抗体である組成物が開示される。いくつかの態様では、モノクローナル抗体は、抗Rasモノクローナル抗体である。
【0007】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE (配列番号38)、YPGSPTQYPSSMHEYHSSSE (配列番号39)、AHTIDDEWASYHMQQWNSPP (配列番号40)、FEEFYSRQSNTIPYPQQYKG (配列番号41)、THGNKHQSWTYPSEINHKNY (配列番号19)、NLADTWTQTQQHDFHVLRGTR (配列番号20)、GYSWWQPNWPSSTWDT (配列番号21)、またはこれらの組み合わせの配列を有する、組成物が開示される。いくつかの態様では、1種以上のMGSペプチドは、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)の配列を有する。1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、1種以上のMGSペプチドが、配列番号1、2、3、34、35、36、37、38、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、もしくは77、またはこれらの組み合わせの配列を含む、組成物が開示される。
【0008】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、1種以上のMGSペプチドが1種以上の細胞内標的に局在化する、組成物が開示される。
【0009】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、1種以上のMGSペプチドが1種以上の細胞内標的に局在化し、細胞内標的が、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核である、組成物が開示される。
【0010】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、抗体が、リンカーを介して1種以上のMGSペプチドと結合される、組成物が開示される。
【0011】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体が、融合タンパク質である組成物を開示する。
【0012】
細胞内標的をターゲティングする方法であって、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を投与することを含み、抗体が細胞内標的をターゲティングする、方法が開示される。いくつかの態様では、細胞内標的は、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核である。
【0013】
治療を要する対象を治療する方法であって、治療を要する対象に、有効量の、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を投与することを含み、抗体が、疾患プロセスに関与する細胞内標的をターゲティングする、方法が開示される。いくつかの態様では、治療を要する対象は、感染症、がん、糖尿病、神経もしくは神経変性疾患、遺伝性疾患を有するか、またはバイオテロリズム剤(bioterrorism agent)に曝露されている。
【0014】
開示される方法及び組成物のさらなる利点は、以下の説明文に一部記載され、説明文から一部理解されるか、または開示される方法及び組成物の実施によって理解することができる。開示される方法及び組成物の利点は、付属の特許請求の範囲において詳細に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成されよう。前述の一般的な説明及び下記の詳細な説明はいずれもあくまで例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求される本発明にとって制限的なものではない点は理解されるべきである。
【0015】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、開示される方法及び組成物のいくつかの実施形態を図示したものであり、説明文とともに、開示される方法及び組成物の原理を説明する役割を果たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】分子誘導システムの概略図である。分子ターゲティングペプチドは、FOX-Three技術によって同定される。ペプチドは、標的細胞に特異的にカーゴを送達する一方で他の細胞への取り込みは防止する。内在化されるとペプチドはカーゴを細胞内の所望の場所に誘導する。リンカーは安定的であり、その標的に達した際にカーゴを放出するように設計することができる。システムはモジュール式であるため、カーゴは事実上あらゆる生物活性化合物とすることができる。
【
図2】FOX-Threeプラットフォームの概略図である。この手法は汎用性が高く、多くの異なる細胞タイプに対するMGSが得られている。細胞内の場所のさらなる選択は、このプラットフォームの実用性をさらに拡張し、MGSの新たな治療の可能性を開くものである。
【
図3】特定の細胞下小器官にMAbをターゲティングすることにより操作することができる細胞プロセスの例を示す図である。
【
図4】4A、4B、4Cは、分子誘導システム(MGS)ペプチドが、大きなモノクローナル抗体をインビトロ及びインビボで細胞内に送達することを示す。ビオチンタグ(「ハンドル」)を有するペプチドMGSを、抗ビオチン抗体と結合させた。この抗体を蛍光タグで標識した。パネルA.MGSペプチド-抗体を培養中で生細胞とインキュベートした。細胞内への抗体の取り込みをフローサイトメトリーにより測定し、MGSペプチドを用いない場合の抗体の取り込みに対して正規化した。パネルB.蛍光顕微鏡により測定した抗体の取り込みが左側のパネルに赤い「ドット」で示されている。MGSペプチドは所望の場所に抗体を送達することができる。細胞内のゴルジ装置にカーゴを内在化して誘導するMGSペプチドを使用したところ、抗体はその細胞下区画に送達された。パネルC.MGSペプチド-抗体を腫瘍を有するマウスに静脈内注射した。設定された時点において、近赤外光イメージングを用いて腫瘍内の抗体の取り込みを測定した。
【
図5】抗RasMAbのMGSペプチドによる送達を示す。
【
図6】H1299.2-HA-Ras-MAbで処理したNu/NuマウスにおけるH2009腫瘍の増殖を示すグラフである。
【
図7】細胞内にカーゴを送達する分子送達システムが、薬剤開発の妨げとなっている2個の重要な問題を解決することを示す図である。
【
図8】本明細書に開示されるMGSペプチドの局在化を示す。
【
図9】活性治療剤の所望の細胞内の場所への送達を示す。
【
図10】親和性及び特異性の基準を満たす7種類のMGSペプチドを示す。上のパネルに示されるペプチド配列は、上から下に、配列番号38、39、40、41、19、20及び21である。
【
図11】Rasは、MGSペプチドでターゲティングすることができるがんタンパク質であることを示す。
【
図12】mAbとMGSペプチドとの1対1のペアリングについて最適化された結合を示す。
【
図13】機能遮断性抗RASモノクローナル抗体(Y13-259)のRAS抗体選択を示す。このハイブリドーマは1982年に単離されたものである。これは、K-、N-、及びH-RASを認識して野生型及び変異体RASの両方と結合するラットIgG1モノクローナル抗体である。この抗体は、RASのスイッチII領域内のアミノ酸に結合する。Y13-259のscFvフラグメントはクローニングされている。この抗体は、電気泳動による細胞ベースのアッセイにおいてRASの分裂促進活性を阻害する。
【
図14】MGSペプチドH2009.1-Y13-259が、KRASの下流の標的の活性化を低下させることを示す。トラメチニブ(及び他の下流のキナーゼ阻害剤)の制約は、RASの多くの経路のうちの1つしか阻害しないこと、毒性、薬剤耐性が6~18ヶ月以内にほとんどの場合で生じること、及び、RAS媒介経路間でのクロストークが補償につながることである。
【
図15】MGSペプチドH2009.1-Y13-259が、1.5μMのIC
50で非小細胞肺癌細胞株に細胞毒性を示すことを示す。抗RAS抗体を、ビオチン-ストレプトアビジン結合を介してMGSペプチドH2009.1と連結した。異なる濃度を、ヒト非小細胞肺癌細胞株であるH2009細胞とインキュベートした。細胞生存率を、細胞のTiterGloアッセイを用いて72時間に測定した。
【
図16】MGSペプチドH1299.2-HA-Ras-MAbで処理したNu/NuマウスにおけるH2009腫瘍の増殖を示す。
【
図17】MGSペプチド-Ras mAbを使用した細胞内タンパク質-タンパク質のターゲティングを示す。H358ヒト肺癌皮下腫瘍を使用した。KRAS G12C変異.0、7、14、及び25日目におけるマウス当たり25μgのMAbの静脈内注射。
【
図18】MGS配列の表を示す。選択された配列の縦列内の配列は、上から下に示される順にそれぞれ配列番号34~70を有する。最適化された配列の縦列内の配列は、上から下に示される順にそれぞれ配列番号71~77を有する。
【
図19】19A、19B、及び19Cは、多量体化スカフォールドの構造を示す。19Aは、2個のMGSペプチドの部位特異的マレイミド連結に用いられる二量体コア及び更なる反応基(R’)を用いたカーゴ分子の利用可能な連結を示す。19Bは、4個のMGSペプチドの部位特異的マレイミド連結に用いられる四量体コア及び更なる反応基(R’)を用いたカーゴ分子の利用可能な連結を示す。19Cは、2個のMGSペプチドを連結するための別々の化学反応基R及びカーゴを連結するためのR’を有するプロトタイプの二量体コアを示す。利用可能な反応基としては、これらに限定されるものではないが、アジド、アルデヒド、ヒドラジド、エステルなどが挙げられる。
【
図20】20A、20B、及び20Cは、抗体に対するMGSペプチドの直接結合及びその細胞内送達を示す。
【
図21】抗体にペプチドを結合させるためのSiteClick法を示す。
【
図22】H358細胞が、MSG2009.1-抗RasAb処理後に低下した生存率を示すことを示す。1回処理、50nMのAb、72時間の連続曝露。
【
図23】MGS内在化における新たな受容体合成に対する受容体リサイクルの役割を示す。
【
図24】二量体化によってペプチド親和性が有意に増大するが四量体化では中度の改善であることを示す、4種類の異なるNSCLC細胞株におけるペプチドHCC15.2の3つの異なる価数の形態(単量体、二量体、及び四量体)の細胞取り込みの主要な動態特性を示す。さらなる実験によって、MGS-ペプチドの価数の差は、細胞がペプチド受容体をリサイクルする能力を変化させ、カーゴの取り込みのさらなる制御を可能とすることが示唆されている。
【
図25】4種類のNSCLC細胞株で4種類のMGSについて測定された有効用量、化学量論、及び取り込みの速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
開示される方法及び組成物は、以下の本明細書に含まれる特定の実施形態の詳細な説明及び実施例、ならびに図面及びその前述及び後述の説明を参照することにより、より容易な理解が可能である。
【0018】
開示される方法及び組成物は、特に指定しない限り、特定の合成法、特定の分析技術、または特定の試薬に限定されず、したがって、さまざまに異なりうる。本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものに過ぎず、限定しようとするものではない点も理解されるべきである。
【0019】
本明細書で触れるすべての刊行物は、その関連でかかる刊行物が引用される方法及び/または材料を開示及び説明するため、参照により本明細書に援用する。本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日よりも以前のそれらの開示内容についてのみ示されるものである。本明細書の一切の記載は、先の発明のために、本発明がかかる刊行物に先行する資格を有さないことを容認するものとして解釈されるべきではない。さらに、本明細書に示される刊行物の日付は、実際の刊行の日付と異なりうるものであり、実際の刊行の日付は独立した確認を必要としうる。
【0020】
開示される方法及び組成物において使用することができる、それらと組み合わせて使用することができる、それらの調製に使用することができる、またはそれらの生成物である、材料、組成物、及び成分を開示する。これらの材料及び他の材料を本明細書に開示するが、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物のそれぞれ異なる個々の、及び集合的な組み合わせ及び順列の具体的な言及が明示的に開示されていない場合もあるが、それぞれが具体的に想到され、本明細書に記載されているものと理解される。例えば、結合体が開示及び検討され、MGSペプチドをはじめとする多くの分子に対して行うことができる多くの改変が検討される場合、そうでない旨が具体的に示されていない限り、結合体及び可能な改変のありとあらゆる組み合わせ及び順列が具体的に想到されているものである。したがって、1群の分子A、B、及びC、ならびに1群の分子D、E、及びFが開示され、組み合わせ分子A-Dの例が開示されている場合、それぞれが個別に記載されていない場合であっても、それぞれが個々に、また集合的に想到されている。したがってこの例では、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fの組み合わせのそれぞれが、A、B、及びC、D、E、及びF、ならびに例示的な組み合わせA-Dの開示から具体的に想到され、開示されているものとみなされるべきである。同様に、これらのあらゆるサブセットまたは組み合わせも具体的に想到及び開示されるものである。したがって、A-E、B-F、及びC-Eのサブグループが、A、B、及びC、D、E、及びF、ならびに例示的な組み合わせA-Dの開示から具体的に想到され、開示されているものとみなされるべきである。この概念は、これらに限定されるものではないが、開示される組成物の製造及び使用方法における各工程を含む、本出願のすべての態様に当てはまるものである。実施することが可能なさまざまな追加の工程がある場合、これらの追加工程のそれぞれは、開示される方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせによって実施することが可能である点、及び、それぞれのかかる組み合わせが具体的に想到され、開示されているものとみなされるべきである点を理解されたい。
【0021】
A.定義
開示される方法及び組成物は、方法、プロトコール、及び試薬はさまざまに異なりうるため、特定の方法、プロトコール、及び試薬に限定されない点を理解されたい。本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない点も理解されるべきであり、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0022】
本明細書において、また付属の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象が含まれる点に留意すべきである。したがって、例えば、「a MGS peptide」と言った場合には複数のそのようなMGSペプチドが含まれ、「the MGS peptide」と言った場合には1以上のMGSペプチド及び当業者には周知のその均等物のことを言っている、といった具合である。
【0023】
「任意選択の」または「任意選択的な」とは、それに続いて記載される事象、状況、または材料が、生じても生じなくてもよく、または存在してもしなくてもよく、また、その記載が、かかる事象、状況、または材料が生じるかまたは存在する場合、及びそれが生じもしなければ存在もしない場合を含むことを意味する。
【0024】
本明細書で使用するところの「対象」なる用語は、本明細書に開示される組成物を例えば、実験、診断、及び/または治療の目的で投与することができるあらゆる生物のことを指す。一般的な対象には、動物(例えば、ヒト以外の霊長類、及びヒト;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ及びブタなどの家庭用動物及び家畜;マウス、ラット、及びモルモットなどの実験動物;ウサギ;魚類;爬虫類;動物園及び野生動物)、及び/または植物が含まれる。通常、「対象」は、ヒト及び霊長類などの哺乳動物を含む、動物である。
【0025】
本明細書で使用するところの「患者」なる用語は、疾患または障害に罹患した患者のことを指す。「患者」なる用語は、ヒト及び獣医学的対象を含む。開示される方法のいくつかの態様では、「患者」は、例えば、投与工程に先立って、自己免疫疾患の治療を要するという診断がなされている。
【0026】
本明細書で使用するところの「アミノ酸配列」なる用語は、アミノ酸残基を表す略語、文字、英数字、または単語のリストのことを指す。本明細書で使用するアミノ酸の略語は、従来のアミノ酸の一文字コードであり、以下のように表記される。すなわち、A(アラニン)、C(システイン)、D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、F(フェニルアラニン)、G(グリシン)、H(ヒスチジン)、I(イソロイシン)、K(リシン)、L(ロイシン)、M(メチオニン)、N(アスパラギン)、P(プロリン)、Q(グルタミン)、R(アルギニン)、S(セリン)、T(スレオニン)、V(バリン)、W(トリプトファン)、Y(チロシン)。
【0027】
本明細書で使用するところの「ポリペプチド」とは、あらゆるペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、遺伝子産物、発現産物、またはタンパク質のことを指す。ポリペプチドは、連続したアミノ酸で構成される。「ポリペプチド」なる用語は、天然に存在するかまたは合成分子を包含する。
【0028】
さらに、本明細書で使用するところの「ポリペプチド」なる用語は、ペプチド結合または改変されたペプチド結合(例えば、ペプチド等価体など)により互いに連結されたアミノ酸を指し、20種類の遺伝子にコードされるアミノ酸以外の修飾アミノ酸を含みうる。ポリぺプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスによって、または当該技術分野では周知の化学修飾法によって修飾されてもよい。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、及びアミノ末端またはカルボキシ末端を含むペプチド内のどこに生じてもよい。同じ種類の修飾が、特定のペプチドの複数の部位で同じ、または異なる程度で存在しうる。また、特定のポリペプチドは多くの種類を有しうる。修飾には、これらに限定されるものではないが、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、共有架橋または環化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、システインまたはピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、及び、アルギニル化などの、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加が挙げられる(Proteins-Structure and Molecular Properties 2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York (1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pp.1-12(1983)を参照)。
【0029】
本明細書で使用するところの「核酸」なる語句は、DNAであるかRNAであるかDNA-RNAハイブリッドであるかによらず、一本鎖であるか二本鎖であるかによらず、センスであるかアンチセンスであるかによらず、ワトソン-クリック塩基対の形成により相補的な核酸にハイブリダイズすることが可能な、天然に存在する、または合成オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのことを指す。本発明の核酸は、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU)、及び非ホスホジエステルヌクレオチド間結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステル結合)も含むことができる。詳細には、核酸としては、これらに限定されるものではないが、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、またはこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0030】
本明細書で使用するところの「試料」は、本明細書に記載されるようにしてアッセイされる、動物;動物由来の組織または臓器;細胞(対象の体内のもの、対象から直接採取されたもの、または培養中で維持された、もしくは培養細胞株由来の細胞);細胞ライセート(またはライセートの画分)または細胞抽出物;または細胞もしくは細胞物質(例えば、ポリペプチドまたは核酸)に由来する1種類以上の分子を含む溶液を意味する。試料は、細胞または細胞成分を含む任意の体液または排泄物(例えば、これらに限定されるものではないが、血液、尿、糞便、唾液、涙液、胆汁など)であってもよい。
【0031】
本明細書で使用するところの「調節する」とは、増大させるかまたは減少させることによって変化させることを意味する。
【0032】
本明細書で使用するところの化合物の「有効量」とは、所望の効果を与えるのに充分な量の化合物を意味する。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、及び一般的状態、治療される疾患(または基礎をなす遺伝的欠陥)の重症度、使用される特定の化合物、その投与形態などに応じて、対象ごとに異なる。したがって、正確な「有効量」を特定することはできない。しかしながら、適当な「有効量」は、通常の実験のみを用いて当業者により決定することができる。
【0033】
本明細書で使用するところの「単離されたポリペプチド」または「精製されたポリペプチド」は、自然界でそのポリペプチドに通常付随する物質を実質的に含まないポリペプチド(またはそのフラグメント)を意味する。本発明のポリペプチド、またはそのフラグメントは、例えば、天然由来源(例えば、哺乳動物細胞)からの抽出により、ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現により(例えば、細胞内または無細胞翻訳系での)、またはポリペプチドを化学的に合成することによって得ることができる。さらに、ポリペプチドフラグメントは、これらの方法のいずれかによって、または完全長のタンパク質及び/またはポリペプチドを切断することによって得ることができる。
【0034】
本明細書で使用するところの「単離された核酸」または「精製された核酸」とは、本発明のDNAが由来する生物の天然に存在するゲノム内でその遺伝子に隣接する遺伝子を含まないDNAを意味する。したがって、この用語には、例えば、自己複製するプラスミドまたはウイルスのようなベクターに組み込まれるか、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれるか(例えば、導入遺伝子)、または別の分子として存在する(例えば、PCR、制限エンドヌクレアーゼ消化、またはインビトロ合成によって生成されたcDNAまたはゲノムもしくはcDNAフラグメント)組換えDNAが含まれる。この用語には、さらなるポリペプチド配列をコードしたハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。「単離された核酸」なる用語は、RNA、例えば、単離されたDNA分子によってコードされるか、または化学的に合成されるか、または少なくとも特定の細胞成分、例えば他の種類のRNA分子もしくはポリペプチド分子から分離されるかもしくはこれらを実質的に含まないmRNA分子のことも指す。
【0035】
本明細書で使用するところの「予防する」は、がんを発症する感受性が高い対象ががんを発症する可能性を最小限に抑えることを意味する。
【0036】
本明細書で使用するところの「特異的に結合する」は、抗体がその同種抗原または標的(例えば、開示される合成MGS配列)を認識してこれと物理的に相互作用するが、他の抗原または標的はほとんど認識せず、相互作用もしないことを意味し、かかる抗体は、当該技術分野では周知の方法によって作製されるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってよい。
【0037】
本明細書で使用するところの「プローブ」、「プライマー」、またはオリゴヌクレオチドは、相補的配列(「標的」)を含む第2のDNAまたはRNA分子と塩基対を形成することができる定義された配列の一本鎖DNAまたはRNA分子を意味する。得られたハイブリッドの安定性は、生じる塩基対形成の程度に応じて決まる。塩基対形成の程度は、プローブと標的分子との相補性の程度、及びハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度といったパラメータに影響される。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの程度は、温度、塩濃度、及びホルムアミドなどの有機分子の濃度などのパラメータによって影響され、当業者には周知の方法により決定される。開示されるMGS配列をコードすることが可能な核酸(例えば、遺伝子及び/またはmRNA)に対して特異的なプローブまたはプライマーは、それらがハイブリダイズする開示されるMGS配列をコードすることが可能な核酸の領域に対して少なくとも80%~90%の配列相補性、好ましくは少なくとも91%~95%の配列相補性、より好ましくは少なくとも96%~99%の配列相補性、最も好ましくは100%の配列相補性を有する。プローブ、プライマー、及びオリゴヌクレオチドは、当業者には周知の方法により、放射性的または非放射性的に検出可能に標識することができる。プローブ、プライマー、及びオリゴヌクレオチドは、核酸シークエンシング、逆転写及び/またはポリメラーゼ連鎖反応による核酸増幅、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限フラグメント多型(RFLP)分析、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、インサイチューハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)などの核酸ハイブリダイゼーションが関与する方法で用いられる。
【0038】
本明細書で使用するところの「特異的にハイブリダイズする」は、プローブ、プライマー、またはオリゴヌクレオチドが、高ストリンジェンシー条件下で実質的に相補的な核酸(例えば、開示されるMGS配列をコードすることが可能な核酸)を認識してこれと物理的に相互作用する(すなわち、塩基対を形成する)が、他の核酸とはほとんど塩基対を形成しないことを意味する。
【0039】
本明細書で使用するところの「高ストリンジェンシー条件」とは、0.5M NaHPO4、pH7.2、7%SDS、1mM EDTA、及び1%BSA(Fraction V)を含むバッファー中、65℃の温度で、または48%ホルミアミド、4.8X SSC、0.2M Tris-Cl、pH7.6、1Xデンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、及び0.1%SDSを含むバッファー中、42℃の温度で少なくともヌクレオチド40個の長さのDNAプローブの使用によって得られるものと同等のハイブリダイゼーションを可能とする条件を意味する。PCR、ノーザン、サザン、またはインサイチューハイブリダイゼーション、DNAシークエンシングなどの高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション用の他の条件は、分子生物学の分野の当業者には周知のものである(例えば、F.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,NY,1998を参照)。
【0040】
本明細書で使用するところの「治療有効量」なる用語は、疾患、障害、及び/または状態に罹患した、または罹患しやすい対象に投与される場合に、疾患、障害、及び/または状態を治療、軽減、改善、緩和、それらの症状を軽減、予防、それらの発症を遅延、それらの進行を阻止、それらの重症度を軽減、及び/またはそれらの発生を低減するうえで充分な治療的、予防的、及び/または診断的薬剤(例えば、抗体と結合されたMGSペプチド結合体)の量を意味する。
【0041】
本明細書で使用するところの「治療する」なる用語は、特定の疾患、障害、及び/または状態の1種以上の症状または特性を部分的または完全に軽減、改善、緩和、それらの発症を遅延、それらの進行を阻止、それらの重症度を軽減、及び/またはそれらの発生を低減することを指す。例えば、微生物の感染を「治療する」とは、微生物の生存、増殖、及び/または拡散を阻止することを指すことができる。治療は、疾患、障害、及び/または状態の兆候を示していない対象に、及び/または疾患、障害、及び/または状態の初期の兆候のみを示す対象に、かかる疾患、障害、及び/または状態に伴う病状を発症するリスクを低減する目的で投与することができる。いくつかの実施形態では、治療は、開示される組成物のうちの1種以上を対象に投与することを含む。
【0042】
本明細書で使用するところの「抗体」なる用語には、完全長の抗体及び完全な抗体分子の抗原結合フラグメントも含まれる。本明細書で使用するところの抗体の「抗原結合部分」、「抗原結合フラグメント」なる用語、及びこれに類する用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、あらゆる天然に存在するか、酵素的に得ることができるか、合成されるか、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、タンパク質消化、または抗体の可変ドメイン及び場合により定常ドメインをコードしたDNAの操作及び発現を行う組換え遺伝子操作技術などの任意の適当な標準的技術を用いて完全な抗体分子から得ることができる。かかるDNAは周知のものであり、及び/または例えば商業的供給元、DNAライブラリー(例えば、ファージ/抗体ライブラリーを含む)から容易に入手できるか、または合成することができる。かかるDNAはシークエンシングして化学的に操作するか、または例えば分子生物学の手法を用いて、1種以上の可変及び/または定常ドメインを適当な配置に配列するか、またはコドンを導入し、システイン残基を形成し、アミノ酸を改変、付加、もしくは欠失させるなどを行うことができる。
【0043】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基で構成された最小の認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー、ナノボディー(例えば、一価のナノボディー、二価のナノボディーなど)、小分子のモジュール式免疫薬(SMIP(small modular immunopharmaceuticals))、及びサメ類の可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用するところの「抗原結合フラグメント」なる表現の中に包含される。
【0044】
本明細書に記載される抗体は、組換え、キメラ、またはヒト化抗体でありうる。「キメラ抗体」なる用語は、1つの抗体からの1種以上の領域と、1種以上の他の抗体からの1種以上の領域を含んだ抗体のことを指す。「ヒト化抗体」は、ヒト以外の種に由来する抗体の配列と1種以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/または付加において異なる配列を有しているため、ヒト化抗体は、ヒト以外の種の抗体と比較してヒト対象に投与された場合に免疫反応を誘発しにくく、及び/または誘発する免疫反応がそれほど重篤ではない。
【0045】
本明細書において範囲は、「約」(ある特定の値)から、及び/または「約」(別の特定の値)までとして表現される。かかる範囲が表現される場合、文脈がそうでない旨を特に示さない限りにおいて、ある特定の値から、及び/または他の特定の値までの範囲もまた、具体的に想到され、開示されているものとみなされる。同様に、値が、「約」なる先行詞の使用により近似値として表される場合、その特定の値は、文脈がそうでない旨を特に示さない限りにおいて、開示されているものとみなされるべき別の具体的に想到される実施形態を構成するものと理解される。範囲のそれぞれの端点は、文脈がそうでない旨を特に示さない限りにおいて、他の端点との関連において、また、他の端点とは独立して、有効である。最後に、明確に開示される範囲内に含まれる個々の値及び値のサブ範囲のすべてもまた、文脈がそうでない旨を特に示さない限りにおいて、具体的に想到され、開示されているものとみなされるべきである点は理解されよう。上記は、特定の場合においてこれらの実施形態の一部またはすべてが明確に開示されているかどうかとは無関係に適用される。
【0046】
別途の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示される方法及び組成物が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法及び材料を、本方法及び組成物の実施または試験において使用することができるが、特定の有用な方法、装置、及び材料は記載の通りである。本明細書に引用される刊行物及びそれについてかかる刊行物が引用される材料を、参照によって本明細書に詳細に援用する。本明細書の一切の記載は、先の発明のために、本発明がかかる開示に先行する資格を有さないことを容認するものとして解釈されるべきではない。いずれかの参照文献が従来技術を構成することを一切容認するものではない。参照文献の考察はそれらの著者の主張するところを述べるものであり、出願人らは、引用される文献の正確性及び適切性に異議を唱える権利を有する。本明細書では多くの刊行物に言及するが、かかる言及はこれらの文献のいずれかが当該技術分野の一般的な知識の一部を構成するという容認をなすものではないことは明確に理解されよう。
【0047】
本明細書の説明文及び特許請求の範囲の全体を通じて、「含む(comprise)」なる語ならびに「comprising」及び「comprises」といったこの語の変化形は、「~を含むがそれらに限定されない(including but not limited to)」を意味し、例えば、他の添加剤、構成成分、整数、または工程を除外しようとするものではない。詳細には、1種以上の工程または操作を含むものとして述べられる方法において、各工程は列記されているものを含むことが具体的に想到され(その工程が「~で構成される(consisting of)」のような限定的な用語を含まない限りにおいて)、これは、各工程が、例えば工程中に列記されていない他の添加剤、構成成分、整数、または工程を除外しようとするものではないことを意味する。
【0048】
B.組成物
開示される組成物を調製するために使用される各成分、及び本明細書に開示される方法の中で用いられる組成物自体を開示する。これらの材料及び他の材料を本明細書に開示するが、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物のそれぞれ異なる個々の、及び集合的な組み合わせ及び順列の具体的な言及が明示的に開示されていない場合もあるが、それぞれが具体的に想到され、本明細書に記載されているものと理解される。1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物が開示される。いくつかの態様では、抗体は細胞内の標的をターゲティングする。
【0049】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、抗体がモノクローナル抗体である組成物を開示する。いくつかの態様では、モノクローナル抗体は、抗Rasモノクローナル抗体であってよい。
【0050】
MGSペプチド 本明細書では、MGSまたはターゲティングペプチドを開示する。これらのペプチドは、細胞に選択的に結合することができる。開示される組成物において使用するかまたは改変することができるMGSペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、McGuire et al.,Sci Rep.2014 Mar 27;4:4480に開示されるMGSペプチドの1種以上のものを挙げることができる。開示される組成物及び方法においてやはり使用することができるMGSペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、表1ならびに
図9及び
図10に示されるMGS配列が挙げられる。
表1.ペプチド配列
【表1】
【0051】
配列番号71~77は、最適化されたMGSペプチドである。最適化されたペプチドは、FOX-Threeプラットフォーム技術によって同定された個々の親ペプチド配列に改変を加えることによって得られたものである。これらの改変は、細胞特異的結合及び内在化に必要とされる親配列内の必須アミノ酸を同定するために用いられる。これらの改変は、親ペプチドのアラニンスキャニングとアミノ末端領域及びC末端領域の切断との組み合わせによって得られる。PEG11は、MGSペプチドのC末端の保護を与え、ペプチドとC末端にシステインを介して結合されたカーゴ分子との間のスペーサーを与え、MGSペプチドの可溶性を増大させる。アセチル化(CH3CO-)及び/またはd-アミノ酸によるアミノ末端の改変、例えば、血中のペプチダーゼによる分解に対するd(Leu)保護。すべてのMGSペプチドに適用できる最適化されたペプチドの均一な長さは存在せず、すべての変更はペプチドの取り込み及び安定性に対する影響を確認するために試験する必要がある。ペプチド73では、YCを用いることでペプチド合成及び280nmにおける光の吸光度による濃度をモニタリングすることが可能である。チロシン(Y)を加えなければ、このペプチドのモニタリングは大幅に困難となる。
【0052】
CH3CO-YAAWPASGAWT-PEG11-C-NH2(配列番号71)、CH3CO-LQWRRNFGVWARYRL-PEG11-C-NH2(配列番号72)、CH3CO-d(Leu)-RGDLATLRQL-PEG11-YC-NH2(配列番号74)、CH3CO-LQWRRNFGVWARYRL-PEG11-C-NH2(配列番号75)、CH3CO-FHAVPQSFYT-PEG11-C-NH2(配列番号76)、またはCH3CO-FHAVPQSFYT-PEG11-C-NH2(配列番号77)の配列を有する改変ペプチドが開示される。
【0053】
表1に記載されるMGSペプチドのいずれも開示される。
【0054】
一態様では、組成物は、MGSペプチドの1種以上と、抗体と、を含む。一態様では、組成物は、本明細書に開示されるMGSペプチドの1種以上と、抗体と、を含む。一態様では、脂質膜を通過する輸送のための膜透過性結合体は、1種以上のMGSペプチドと、抗体と、を含むことができる。
【0055】
一態様では、1種以上のMGSペプチドは、本明細書に開示されるMGSペプチドのいずれかを含みうる。一態様では、1種以上のMGSペプチドは、配列番号1、2、3、34、35、36、37、38、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、81、81、82、83、84、またはこれらの組み合わせを含む。
【0056】
一態様では、1種以上のMGSペプチドは、配列番号1、2、3、34、35、36、37、38、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、81、81、82、83、または84を含む。一態様では、1種以上のMGSペプチドは、配列番号3であってよい。一態様では、組成物は1種以上のMGSペプチドを含んでよく、いくつかの態様では、組成物は1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのMGSペプチドを含むことができる。一態様では、1種以上のMGSペプチドは、四量体のスカフォールドタンパク質を形成することができる。一態様では、1種以上のMGSペプチドは、短縮することができる。
【0057】
一態様では、1種以上のMGSペプチドは、改変されてもよい。一態様では、1種以上のMGSペプチドは、N末端がアセチル化されてもよい。一態様では、1種以上のMGSペプチドは、抗体と化学的に結合させることができる。一態様では、化学結合体は、ポリエチレングリコール(PEG)であってよい。一態様では、PEG単位の数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11、またはそれ以上であってよい。各態様では、PEG単位の数は、1種以上のMGSペプチドを抗体から分離して1種以上のMGSペプチドと抗体との間の立体障害を防止するのに充分な長さのものとすることができる。例えば、本明細書では、化学結合体を含む組成物であって、化学結合体がPEGであり、PEGが11個のPEG単位で構成される組成物が開示される。一態様では、1種以上のMGSペプチドは、配列番号3であって、そのN末端をアセチル化することができ、PEGと化学的に結合させることができる配列番号3と、抗体であって、PEGに共有結合させることができる抗体とを含む。
【0058】
1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を含む組成物であって、1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE (配列番号38)、YPGSPTQYPSSMHEYHSSSE (配列番号39)、AHTIDDEWASYHMQQWNSPP (配列番号40)、FEEFYSRQSNTIPYPQQYKG (配列番号41)、THGNKHQSWTYPSEINHKNY (配列番号19)、NLADTWTQTQQHDFHVLRGTR (配列番号20)、GYSWWQPNWPSSTWDT (配列番号21)、またはこれらの組み合わせの配列を有する、組成物が開示される。いくつかの態様では、1種以上のMGSペプチドは、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)の配列を有する。
【0059】
開示される組成物のいくつかの態様では、1種以上のMGSペプチドは、1種以上の細胞内標的に局在化する。例えば、細胞内標的は、これらに限定されるものではないが、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核でありうる。あらゆる細胞下区画をターゲティングすることができる。
【0060】
抗体と、1種以上のMGSペプチドとは、タンパク質同士が一般的に結合または連結される方法のいずれによって結合されてもよい。いくつかの態様では、抗体はリンカーを介して1種以上のMGSペプチドと結合させることができる。例えば、いくつかの場合では、リンカーは、ペプチドリンカーまたは核酸リンカーとすることができる。いくつかの態様では、リンカーは切断可能なリンカーとすることができる。いくつかの態様では、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体は、融合タンパク質である。換言すれば、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体は、別々のペプチドとして生成した後に互いに結合または連結する代わりに、いくつかの異なるペプチドからなる1つの長いタンパク質とすることができる。いくつかの態様では、MGSペプチドは、これに限定されるものではないがSiteClick化学を含む任意の周知の結合方法を用いて抗体と結合することができる。
【0061】
開示される組成物のいくつかの態様では、抗体はさらに標識を含むことができる。例えば、本明細書に開示される組成物は、検出可能な標識を含むことができる。かかる検出可能な標識は、これらに限定されるものではないが、発現されたポリペプチドまたは配列の検出(例えば、精製または局在化)用に設計されたタグ配列を含むことができる。タグ配列としては、例えば、緑色蛍光タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、またはFlag(商標)タグが挙げられ、これらを、コードされた核酸と融合させることができる。かかる検出可能な標識としては、これらに限定されるものではないが、蛍光物質、酵素標識、または放射性同位体が挙げられる。
【0062】
いくつかの態様では、開示される組成物は、医薬組成物でありうる。例えば、いくつかの態様では、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む組成物を含む医薬組成物が開示される。「薬学的に許容される」とは、当業者には周知であるように、有効成分の分解を最小限に抑え、対象における悪い副作用を最小限に抑えるように選択される材料または担体を意味する。担体の例としては、ジミリストイルホスファチジル(DMPC)、リン酸緩衝生理食塩水、または多胞リポソームが挙げられる。例えば、PG:PC:コレステロール:ペプチド、またはPC:ペプチドを本発明において担体として使用することができる。他の適当な薬学的に許容される担体及びその配合物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。一般的に、配合物を等張とするうえで適当な量の薬学的に許容される塩が、配合物中に使用される。薬学的に許容される担体の他の例としては、これらに限定されるものではないが、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、約5~約8、または約7~約7.5とすることができる。さらに、組成物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスのような徐放製剤が挙げられ、このマトリクスは、例えば、フィルム、ステント(血管形成術において血管内に埋め込まれる)、リポソーム、またはマイクロ粒子などの成形物品の形態である。当業者には、例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に応じて特定の担体がより好ましい場合があることは明らかであろう。これらの特定の担体は、最も一般的には、滅菌水、食塩水、及び生理学的pHの緩衝溶液などの溶液を含む、薬剤をヒトに投与するための標準的な担体である。
【0063】
医薬組成物は、本発明のポリペプチド、ペプチド、または結合体が損なわれない限りにおいて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1種以上の有効成分(本発明の組成物以外の)をさらに含んでもよい。
【0064】
本明細書に開示される医薬組成物は、経口または非経口投与用に調製することができる。非経口投与用に調製される医薬組成物としては、静脈内(または動脈内)、筋肉内、皮下、腹腔内、経粘膜(例えば、鼻腔内、膣内、または直腸)、または経皮(例えば、局所)投与用に調製されたものが挙げられる。エアロゾル吸入を用いて融合タンパク質を送達することもできる。したがって、組成物は、これらに限定されるものではないが、水、緩衝水、生理食塩水、緩衝生理食塩水(例えば、PBS)などの水性担体を含む、許容される担体中に溶解または懸濁された融合タンパク質を含む非経口投与用に調製することができる。pH調整及び緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、洗剤などの1種以上の含有される賦形剤は、生理学的条件を近似するうえで役立ちうる。組成物が固体成分(経口投与用の場合におけるような)を含む場合、賦形剤のうちの1種以上のものが、結合剤または充填剤として働くことができる(例えば、錠剤、カプセル剤などの配合用)。組成物が皮膚または粘膜表面への塗布用に配合される場合、賦形剤のうちの1種以上のものを、クリーム、軟膏などの配合用の溶媒または乳化剤とすることができる。
【0065】
医薬組成物は無菌状態とすることができ、従来の滅菌法または滅菌濾過により滅菌することができる。水溶液はそのまま使用されるようにパッケージングされてもよく、または凍結乾燥されてもよく、本開示に包含される凍結乾燥製剤を投与に先立って滅菌水性担体と加え合わせることができる。医薬組成物のpHは、通常、3~11(例えば、約5~9)、または6~8(例えば、約7~8)である。固体の形態の得られた組成物は、それぞれが一定量の1乃至複数の上記の薬剤を含有する、例えば錠剤またはカプセル剤の密封パッケージにおけるような複数の1回用量単位としてパッケージングすることができる。固体の形態の組成物は、局所的に塗布することができるクリームまたは軟膏用に設計されたスクイズチューブにおけるような、柔軟な量を与える容器にパッケージングすることもできる。
【0066】
C.方法
細胞内標的をターゲティングする方法であって、治療有効量の、開示される組成物のうちの1種以上のものを投与することを含む方法が開示される。
【0067】
細胞内標的をターゲティングする方法であって、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を投与することを含み、抗体が細胞内標的をターゲティングする、方法が開示される。いくつかの態様では、細胞内標的は、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核であってよい。あらゆる細胞下区画をターゲティングすることができる。
【0068】
一態様では、当業者は、開示される組成物または開示される融合タンパク質の有効な用量、有効なスケジュール、または有効な投与経路を決定することで細胞内標的が不活性化されるように細胞内標的を誘導することができる。
【0069】
治療を要する対象を治療する方法であって、治療を要する対象に、有効量の、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を投与することを含み、抗体が、疾患プロセスに関与する細胞内標的をターゲティングする、方法も開示される。
【0070】
本明細書に開示される方法のいずれの一態様でも、本明細書に記載される組成物、結合体または融合タンパク質を、1種以上のさらなる療法と併用することができる。一態様では、組成物、結合体、または融合タンパク質は、単独で投与するか、または他の生物活性を有する薬剤と組み合わせて対象への投与に適した組成物とすることができる。一態様では、がんを有するかまたはがんを発症するリスクを有する対象の治療を目的とした方法、本明細書に開示される組成物、結合体、または融合タンパク質を、例えば、治療有効量の放射線治療、免疫療法、または化学療法、またはこれらの組み合わせと併用することができる。複合療法は、共配合物として、または別々に投与することができる。別々に投与される場合、複合療法は、同時または順次に投与することができる。配合物は、当該技術分野における常法を用いて製造することができる。
【0071】
上記に述べた医薬組成物は、治療有効量の本明細書に開示される組成物、結合体、または融合タンパク質を含むように配合することができる。治療的投与は予防的投与を包含する。遺伝子検査及び他の予後診断法に基づき、患者の相談を受ける医師は、患者が1種以上の自己免疫疾患に対する臨床的に判定された素因または高い感受性(場合によっては大幅に高い感受性)を有するか、または患者ががんに対する臨床的に判定された素因または高い感受性(場合によっては大幅に高い感受性)を有する場合に予防的投与を選択することができる。
【0072】
本明細書に記載される医薬組成物は、臨床的疾患を遅延、緩和、または好ましくは予防するうえで充分な量で対象(例えば、ヒト対象またはヒト患者)に投与することができる。したがって、いくつかの態様では、対象はヒト対象である。治療用途では、組成物は、自己免疫疾患を既に有するかまたは診断された対象(例えば、ヒト対象)に、兆候もしくは症状を少なくとも部分的に改善するか、または病態の症状の進行、その合併症及び転帰を阻止する(及び好ましくは止める)うえで充分な量で投与される。これを実現するのに適した量は、「治療有効量」として定義される。医薬組成物の治療有効量は、治癒を実現する量とすることができるが、その転帰は実現することが可能ないくつかの転帰のうちの1つに過ぎない。記載したように、治療有効量には、がんの発症または進行が遅延、阻止、または予防されるか、または自己免疫疾患もしくは自己免疫疾患の症状が改善される治療を与える量が含まれる。症状のうちの1種以上のものは重症度が低くともよい。治療を受けた個人では回復が促進されうる。
【0073】
本明細書に開示される医薬組成物中の結合体または融合タンパク質の総有効量を哺乳動物に、ボーラスとしてまたは注入による単一用量として、比較的短時間にわたって投与することができ、または、複数用量をより長い時間(例えば、4~6、8~12、14~16、もしくは18~24時間ごと、または2~4日、1~2週ごと、もしくは月1回の投与)にわたって投与する分割治療プロトコールを用いて投与することができる。また、血中の治療有効濃度を維持するうえで充分な連続静脈内注入も本開示の範囲内に含まれる。
【0074】
本明細書に記載される組成物中に存在し、哺乳動物(例えばヒト)に適用される本明細書に開示される方法で使用される抗体の治療有効量は、年齢、体重、及び他の一般的条件(上記に述べたような)の個々の差を考慮して当業者によって決定することができる。本明細書の組成物、結合体及び融合タンパク質は血清中及び血流中で安定であり、場合によりより特異性が高いため、個々の成分を含む組成物、結合体、及び融合タンパク質の用量は、加え合わされていない個々の成分のいずれかの有効用量よりも低くても(または高くても)よい。したがって、いくつかの態様では、投与される抗体は、結合体または融合タンパク質の一部として投与される場合、抗体が単独で投与されるかまたは結合体または融合タンパク質の一部として投与されない場合と比較して高い効果または低い副作用を有しうる。
【0075】
いくつかの態様では、治療を要する対象は、感染症、がん、糖尿病、神経もしくは神経変性疾患、遺伝性疾患、リソソーム疾患、ミトコンドリア疾患を有するか、またはバイオテロリズム剤に曝露されている。
【0076】
D.ベクター
開示される組成物のうちの1種以上のものをコードした核酸配列を含むベクターが開示される。いくつかの態様では、ベクターは、開示されるMGSペプチドのうちの1種以上のものをコードすることが可能な核酸配列のみを含む。
【0077】
E.キット
上記に記載した材料及び他の材料は、開示される方法を実施する、またはその実施を助けるうえで有用なキットとして任意の適当な組み合わせで一緒にパッケージングすることができる。特定のキットの中のキット要素は、開示される方法で一緒に使用されるように設計及び適合されていれば有用である。例えば、開示される組成物のうちの1種以上のものを含むキットが開示される。
【0078】
いくつかの態様では、キットは、MGSペプチドと、モノクローナル抗体と、結合を行うための使用説明書とを含む。
【0079】
いくつかの態様では、キットは、MGSペプチドのうちの1種以上のものをコードした核酸配列を含む細胞株を含む。
【実施例】
【0080】
A.実施例1
細胞内/細胞下区画を標的とするシステマチックな手法は最近まで報告されていなかった。特許技術であるFOX-Three技術は、MAbを細胞及び細胞下標的に送達することが可能なMGSをシステマチックに発見するためのプラットフォームである。FOX-Threeプラットフォームは、所望の細胞タイプに誘導する能力、細胞の取り込みを誘発する能力、及び標的細胞の個別の場所にペイロードを送達する能力の3つの主要な特性によりMGSを同定する。MGSの働き方を示す概観を
図1に示す。
【0081】
FOX-Threeプラットフォームは、特異的にターゲティングされるMGS(
図2)を同定するために標的細胞及び細胞内システムに対して速やかにスクリーニングすることができる10
9~10
12種の候補ペプチドに基づいたMGSメンバーを含む確立されたファージディスプレイライブラリーに基づいたものである。ペプチドは、生物学的プロセスにより、また、人工的な化学プロセスによって容易に合成されるよく理解された生体分子のクラスである。その結果、FOX-Threeプラットフォームのその速度及び柔軟性の面での実力が実証されている。このプラットフォームは、その細胞の分子特性に関する知識とは無関係にあらゆる細胞に適用することができ、2~4週間でリードMGSを生成する。次いで、選択されたペプチドベースのMGSを最適な性能となるように速やかに操作する。表2は、FOX-Three技術を用いて同定されたMGSを示す。
【表2】
【0082】
FOX-Threeプラットフォームは、細胞及び細胞下成分のターゲティングについて既に実証されている。さまざまな細胞ターゲティングシステムに対する多くの実証済みのMGSが、異なる開発段階にある(表1及び2)。さまざまなペイロードをそのターゲティング能力を損なわずにペプチドMGSと結合させる方法が確立されている。選択されたMGSは、薬剤、造影剤、ナノ粒子、DNA、及びタンパク質を培養中及び動物モデルの標的細胞に送達することが実証されている。細胞ターゲティングは確立された技術であり、標的細胞の表面をターゲティングするための多くの競合する抗体ベースの技術が存在しているが、細胞内MGSはこれまでに知られていなかった。細胞内ターゲティングの重要性は、細胞の複雑な構造を示す
図3に示されている。例えば、細胞核内におけるDNA複製に関与するタンパク質に結合することを意図したMAbの送達は、ゴルジ体または細胞の他の場所に捕らわれると治療上の効果が得られない。FOX-Threeによるスクリーニングプロセスは、選択基準として細胞内の場所を含むように近年、改良がなされた。がん細胞内のリソソーム、オートファゴソーム、及びゴルジ体に蓄積するMGS、ならびに細胞膜をターゲティングするMGSが単離されている。MGSの治療効果は、正しい細胞内の場所への送達に依存することが実証されている。
【0083】
細胞タイプ、病態、細胞内小器官、及び送達することが可能なペイロードの多さを考慮すると、FOX-Threeプラットフォームの可能性は計り知れない。選択された疾患の細胞タイプ及び細胞下成分に対して焦点を合わせたMAbのセットを送達することが可能な最適化されたMGSの「ツールボックス」を与える安定したプラットフォームを開発することができる。これを行うには、FOX-Threeプラットフォームを用いてターゲティングすることができる細胞下小器官の数を増やすことができる(
図3)。定量的な指標を用いた一群の実験を行うことができる。
【0084】
いくつかの態様では、非小細胞がん株をターゲティングしてリソソーム、ゴルジ体、及びミトコンドリアに蓄積する3種類のMGSの合成、特性評価、及び最適化について研究することができる。
【0085】
いくつかの態様では、3種類の単離されたMGSを用いて生物学的活性を有する抗体をリソソーム、ゴルジ体、及びミトコンドリアに細胞内送達することができる。これらの細胞下成分のそれぞれにおける特異的なタンパク質ターゲティングの調節を実証することができる。
【0086】
いくつかの態様では、ウイルス感染した細胞をターゲティングする少なくとも5種類のMGSを同定することができる。さらに、細胞内の場所を、リソソーム、ゴルジ体、ミトコンドリア、小胞体、及び細胞核を含むように増やすことができる。
【0087】
治療MAbを特定の標的細胞及びその細胞内の正しい区画に送達できることは、多くの社会的な健康効果を有しうる。MGS―MAbの組み合わせは、従来、「薬剤治療不能」(Undruggable)とされた標的を治療できる可能性を有する、新たなクラスの安全かつ効果的な細胞内で作用する薬剤を創出することが可能である。これにより、新たに出現する感染症及びバイオテロリズムの治療に対する新たな治療戦略、がん、糖尿病、神経及び神経変性疾患、及びさらには遺伝性疾患に対する新たな治療への道が開かれる。MGS-MAb複合薬は、MAbの700億ドルの現在の市場規模と少なくとも同程度のこの新規な薬剤のクラスのまったく新しい市場を創出しうるものであり、事実上すべての病態に影響し、現代医療に大きなブレークスルーをもたらすものである。
【0088】
FOX-ThreeはMGSを発見し、前例のないスピードで細胞内ターゲティングヒト治療抗体の速やかな開発を可能とすることで新たに出現する脅威に対する極めて安全かつ速やかな対応を与えるものである。
【0089】
開発されたFOX-Three MGSツールボックスはさまざまな他のペイロードを送達することができる。MAbの送達が主たる狙いであるものの、MGSは多くの異なるペイロードを送達することができ、他の臨床用途を有しうる点に留意することは重要である(表1及び2)。MGSは、小分子薬剤、造影剤、ナノ粒子、DNA、放射性核種、及び他のタンパク質を送達することができる。MGSは疾患の早期の検出において、また、コンパニオン診断として用いることが可能である。早期の疾患検出はしばしば臨床転帰の主要な決定因子である。コンパニオン診断は、治療に対する反応に従うことができ、必要に応じて治療の速やかな変更を可能とし、時間及びコストの節約につながる。MGS-治療薬は、広範な病態、インビトロ及びインビボ診断、がんの個別化治療、細胞内ナノ粒子送達、及び革新的免疫療法におけるターゲティング治療(小分子、核酸、ポリマー及びタンパク質のような合成マクロ分子)で使用することができる。
【0090】
この技術は、病原体に感染した細胞をターゲティングするMGS-MAbを迅速に作製する能力を有し、既存の、ならびに新たに出現する病原体に対する治療を年単位でなく週単位で改善するものである。現在の技術では、出現するウイルスに対するターゲティング治療を開発するには遅すぎる。
【0091】
この技術は、従来、細胞不透過性であった化合物を送達することにより、多くの疾患の治療に対して新たなクラスの治療薬の道を開くものであり、戦闘員分子を保護するためのまったく新しい武装となるものである。
【0092】
この技術は、再活性化するかまたは地域社会全体に拡散/再拡散しうる潜伏性の細胞内ウイルス感染を検出及び中和する能力を提供するものである。
【0093】
この技術は、診断及び生物学的読み取り用のセンサー技術に用いることができるMGSを迅速に開発することができる。
【0094】
B.実施例2
MGSは多くの疾患の治療に影響し、新たな治療選択肢を開きうるものである。タンパク質の相互作用をターゲティングすることで、「薬剤治療不能」(undruggable)な標的を治療できる可能性を有する、新たなクラスの細胞内で作用する薬剤が創出される。治療適応症としては、がん、新たに出現する感染症及びバイオテロリズム、心臓疾患、糖尿病、線維症、神経及び神経変性疾患が挙げられる。MGSは広範な利用可能性を有し、小分子薬剤、造影剤、核酸及びタンパク質の送達、ナノ粒子、及び細胞療法を送達するために用いることができる。
【0095】
小分子ペプチド-MGSは、大きなモノクローナル抗体をインビトロ及びインビボで細胞内に送達する。小分子ペプチドは、その分子量のおよそ60倍よりも大きなMAbは運ぶことができない。細胞をMAb単独で処理したところ、細胞への取り込みは生じなかった。しかしながら、MAbを、同定されたMGSペプチドの1つと結合させたところ、細胞取り込み量の20~4000倍の増大が認められた。ペプチドは、細胞不透過性のMAbを細胞内に送達するだけではなく、MAbを結合させてもペプチドが所望の細胞内の場所に蓄積する能力は変化しない。
【0096】
ペプチド-MGSは、MAbを送達し、細胞取り込み量を20~380倍増加させる(
図4A)。ペプチド-MGSは、MGSによって決まる個別の細胞内の場所にMAbを送達することができる(
図4B)。ペプチド-MGSはMAbを腫瘍に再誘導し、腫瘍内にMAbを72時間以上にわたって維持することが可能である(
図4C)。腫瘍取り込み量が2~4倍増大する一方で非特異的組織(例えば、腎臓及び肝臓)の取り込み量は低減される。
【0097】
ペプチド(MGS)がどのように正しい細胞内の場所にカーゴを送達することができるか、及びこの精密な送達の重要性を示すため、2つの異なるペプチド治療結合体を試験した。第1のペプチド(MGS)は、NSCLC細胞に特異的に結合するゴルジ体ターゲティングペプチドである(
図9)。このペプチド(MGS)をDNA損傷剤であるデュオカルマイシンに結合させた。この結合体は薬剤とペプチドとの間にリンカーを有し、活性となって細胞核に到達するためにはリソソーム内に見られる酵素によってこのリンカーが切断されなければならない。しかしながら、細胞をこの結合体で処理すると、極めて強力な薬剤であるにも関わらず、これらの細胞に対して結合体は実質的に無毒である。これは、このペプチドがゴルジ体に蓄積してそこで隔離されるためである。
【0098】
ペプチド-MGSは、細胞不透過性の治療薬(タンパク質毒素、サポリン、及びDNAアルキル化剤であるデュオカルマイシン)を送達して、がん細胞を特異的に殺滅することができる。細胞内局在化は治療薬の効果を決定する。MGS-サポリン結合体の予備データは、動物における抗腫瘍作用を示している。
【0099】
図10は、7種類のMGSペプチド及びそれらの細胞内の局在化区画を示す。ペプチドEHPWFNMWSWATQVQE (配列番号38)(H2009.2)が最初に前方に押し出されている。ペプチド価数が最適化されており、ペプチドは3つの異なる非小細胞肺癌細胞に結合し、正常なコントロール細胞に対する結合が最小であり、MAbを細胞内に送達し、細胞不透過性のタンパク質-毒素を効果的に送達して80nMの作用濃度でがん細胞に細胞死を誘発する。
【0100】
図11は、Rasががん増殖の重要な中心的因子であり、薬剤治療の対象となってきたことを示している。Rasを治療するMAb治療アプローチは、細胞内のRasの全体濃度を低下させ、細胞での場所を変えることによって活性化を防止し、Rasを不活性状態に維持するものである。
【0101】
図17は、治療を行わない場合、またはMAb単独による治療を行った場合と比較した腫瘍増殖の低減を示している。全体的な毒性は認められなかった。
【0102】
図20は、直接的な結合がMGSの細胞取り込みを媒介する能力を妨げないことを示している。MGSとMAbとの間のリンカーが長いほど、標的細胞への取り込み量は増大している。同じ化学反応基を有する二官能性リンカーを用いてMAb(NHSエステル化学反応)とMGS-ペプチド(マレイミド化学反応)との結合体を形成した。SMCCがPEGスペーサーを有していないのに対して、PEG-12及びPEG-24は、化学反応基の間により短い、またはより長いPEGリピートを有しており、これにより、MGS-ペプチドがMAbタンパク質による立体障害を受けることなくその細胞受容体と相互作用する能力が高められる。実証されたように、PEG-24スペーサーは、より短いスペーサーアームを有する2つの結合体と比較してより高いMAb-MGS結合体の取り込みを実現した。
【0103】
図23は、特定のMGSペプチドが、リサイクルされた細胞受容体とどのように結合するか、及び特定のMGSペプチドが新しく合成される必要のある細胞受容体とどのように結合するかを示している。MGS_H2009.1 v4は、細胞表面へと速やかにリサイクルされてそこでMGSの別の分子で運搬されうる細胞受容体と結合する。MGS_H1299.2 v4、HCC15.1 v4、及びHCC15.2 v8は、内在化されると大部分が分解される細胞受容体と結合し、さらなるMGSを内在化するために新しい受容体合成が生じる。
【0104】
MGS_H1299.2 v4の細胞受容体はEphA2である。以下の結果は、EphA2の研究において得られたものである。細胞のEphA2の減少は、MGS_H1299.2 V4の結合を消失させる。細胞のEphA2の増大は、MGS_H1299.2 V4の結合を増大させる。MGS_H1299.2 V4は、溶解した細胞から得られたEphA2に結合し、精製EphA2に結合する(Kd3.2nM)。EprhrinA1とMGS_H1299.2 V4とは結合について競合する。最後に、MGS_H1299.2 V4は、EphaA2の内在化を誘導し、リソソーム内に受容体と共局在化する。
【0105】
当業者には、本発明に発明の範囲または趣旨から逸脱することなくさまざまな改変及び変更を行いうる点は明らかであろう。発明の他の態様は、明細書及び本明細書に開示される発明の実施を考慮することで当業者には明らかとなろう。本明細書及び実施例は、あくまで例示的なものとみなされることを意図したものであり、発明の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されるものである。
【0106】
当業者であれば、通常の実験以上のことを行うことなく、本明細書に記載される方法及び組成物の特定の実施形態の多くの均等物が認識されるか、または確認できるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕1種以上の分子誘導システム(MGS)ペプチドと結合された抗体を含む、組成物。
〔2〕前記抗体が、細胞内標的をターゲティングする、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記抗体が、モノクローナル抗体である、前記〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記モノクローナル抗体、が抗Rasモノクローナル抗体である、前記〔3〕に記載の組成物。
〔5〕前記1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)、YPGSPTQYPSSMHEYHSSSE(配列番号39)、AHTIDDEWASYHMQQWNSPP(配列番号40)、FEEFYSRQSNTIPYPQQYKG(配列番号41)、THGNKHQSWTYPSEINHKNY(配列番号19)、NLADTWTQTQQHDFHVLRGTR(配列番号20)、GYSWWQPNWPSSTWDT(配列番号21)、またはこれらの組み合わせの配列を含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔6〕前記1種以上のMGSペプチドが、配列番号1、2、3、34、35、36、37、38、39、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、5、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、もしくは77、またはこれらの組み合わせの配列を含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔7〕前記1種以上のMGSペプチドが、EHPWFNMWSWATQVQE(配列番号38)の配列を含む、前記〔5〕に記載の組成物。
〔8〕前記1種以上のMGSペプチドが、1種以上の細胞内標的に局在化する、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔9〕前記細胞内標的が、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核である、前記〔8〕に記載の組成物。
〔10〕前記抗体が、リンカーを介して前記1種以上のMGSペプチドと結合されている、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔11〕前記1種以上のMGSペプチドと結合された前記抗体が、融合タンパク質である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔12〕細胞内標的をターゲティングする方法であって、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を投与することを含み、前記抗体が細胞内標的をターゲティングする、前記方法。
〔13〕前記細胞内標的が、リソソーム、ゴルジ装置、小胞体、細胞質、または細胞核である、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕治療を要する対象を治療するための方法であって、前記治療を要する対象に、有効量の、1種以上のMGSペプチドと結合された抗体を投与することを含み、前記抗体が、疾患プロセスに関与する細胞内標的をターゲティングする、前記方法。
〔15〕前記治療を要する対象が、感染症、がん、糖尿病、神経もしくは神経変性疾患、遺伝性疾患を有するか、またはバイオテロリズム剤に曝露されている、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕CH
3
CO-YAAWPASGAWT-PEG
11
-C-NH
2
の配列を含む、改変ペプチド。
〔17〕CH
3
CO-LQWRRNFGVWARYRL-PEG
11
-C-NH
2
の配列を含む、改変ペプチド。
〔18〕CH
3
CO-d(Leu)-RGDLATLRQL-PEG
11
-YC-NH
2
の配列を含む、改変ペプチド。
〔19〕CH
3
CO-FHAVPQSFYT-PEG
11
-C-NH
2
の配列を含む、改変ペプチド。
【配列表】