(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】リモート操作システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230602BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2019129943
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】森田 敬太
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200654(JP,A)
【文献】特開2008-311393(JP,A)
【文献】特開2014-048685(JP,A)
【文献】特開2010-026725(JP,A)
【文献】特開2001-038582(JP,A)
【文献】特開2007-293689(JP,A)
【文献】特開2006-309408(JP,A)
【文献】特開2005-346655(JP,A)
【文献】特開平10-283028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業装置の間で作業対象を受け渡しながらその作業対象に対して順次作業を施していく作業ラインと、前記作業装置に発生したエラーをリモート操作で解消できるリモート監視部とを含んで構成されるリモート操作システムであって、
前記複数の作業装置はそれぞれ、発生したエラーの情報を前記リモート監視部に送信する情報送信部を備え、
前記リモート監視部は、
表示部と、
前記複数の作業装置それぞれの前記情報送信部から送信されたエラーの情報を受信する情報受信部と、
前記情報受信部が受信している一または複数のエラーの情報に対し、エラーの解消操作を行う際の優先順位を設定する優先順位設定部と、
前記情報受信部が受信している一または複数のエラーの情報を、前記優先順位設定部により設定された前記優先順位が分かる態様で前記表示部に表示させる表示制御部とを備え
、
前記優先順位設定部は、作業装置ごとの個別タクトの基準タクトからの余裕分と、作業対象を下流側に送り出してから次の作業対象が上流側からその作業装置に到達するまでの間の待ち時間とを合算した時間を余裕時間として算出し、その余裕時間が短い作業装置から送信されたエラーの情報ほど優先度が高くなるように前記優先順位を設定する、リモート操作システム。
【請求項2】
前記基準タクトは、前記作業ラインを構成する複数の作業装置それぞれの個別タクトの平均値である請求項
1に記載のリモート操作システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記余裕時間をエラーの情報とともに前記表示部に表示させる請求項
1または
2に記載のリモート操作システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、エラーの情報の前記優先順位と前記表示部の画面内における位置とを対応づけた規則に従ってエラーの情報を前記表示部に表示させる請求項1~
3のいずれかに記載のリモート操作システム。
【請求項5】
前記表示制御部は、エラーの情報の前記優先順位と前記表示部の画面内における色彩とを対応づけた規則に従ってエラーの情報を前記表示部に表示させる請求項1~
3のいずれかに記載のリモート操作システム。
【請求項6】
前記作業装置は作業対象である基板に部品を装着する部品実装装置である請求項1~
5のいずれかに記載のリモート操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ラインを構成する作業装置に発生したエラーをリモート監視部からのリモート操作で解消できるリモート操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の作業装置の間で作業対象を受け渡しながらその作業対象に対して順次作業を施していく作業ラインにおいて、作業装置に発生したエラーをリモート監視部からのリモート操作で解消できるようになっているリモート操作システムが知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。このようなリモート操作システムの中には、作業装置にエラーが発生するとそのエラーの発生箇所がカメラによって撮像され、得られた画像がエラーの情報として、リモート監視部の表示部に自動で表示されるようになっているものがある。
【0003】
このようなリモート操作システムでは、作業ラインを構成する複数の作業装置にエラーが発生している場合には、発生した複数のエラーの情報がその発生順にリモート監視部の表示部に表示される。このためリモート監視部のオペレータは、表示部に表示されるエラーに対して順番にエラーの解消操作を行っていくことで、発生した全てのエラーを解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業ラインに発生した複数のエラーをその発生順に処理していくことは、エラーの発生によって生ずる作業ラインの全体のタクトの低下を抑制する観点からは必ずしも適切であるとはいえないと考えられる。
【0006】
そこで本発明は、作業ラインを構成する作業装置にエラーが発生した場合に、作業ラインの全体のタクトの低下が抑制されるような順序でエラーの解消操作を行うことができるリモート操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリモート操作システムは、複数の作業装置の間で作業対象を受け渡しながらその作業対象に対して順次作業を施していく作業ラインと、前記作業装置に発生したエラーをリモート操作で解消できるリモート監視部とを含んで構成されるリモート操作システムであって、前記複数の作業装置はそれぞれ、発生したエラーの情報を前記リモート監視部に送信する情報送信部を備え、前記リモート監視部は、表示部と、前記複数の作業装置それぞれの前記情報送信部から送信されたエラーの情報を受信する情報受信部と、前記情報受信部が受信している一または複数のエラーの情報に対し、エラーの解消操作を行う際の優先順位を設定する優先順位設定部と、前記情報受信部が受信している一または複数のエラーの情報を、前記優先順位設定部により設定された前記優先順位が分かる態様で前記表示部に表示させる表示制御部とを備え、前記優先順位設定部は、作業装置ごとの個別タクトの基準タクトからの余裕分と、作業対象を下流側に送り出してから次の作業対象が上流側からその作業装置に到達するまでの間の待ち時間とを合算した時間を余裕時間として算出し、その余裕時間が短い作業装置から送信されたエラーの情報ほど優先度が高くなるように前記優先順位を設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業ラインを構成する作業装置にエラーが発生した場合に、作業ラインの全体のタクトの低下が抑制されるような順序でエラーの解消操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムの概略構成図
【
図2】本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムを構成する作業装置の要部側面図
【
図3】本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムを構成する作業装置のパーツフィーダが部品供給位置に供給する部品を作業装置が備える装着ヘッドでピックアップした状態を示す斜視図
【
図4】本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムの制御系統を示すブロック図
【
図5】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムの作業装置を構成するパーツフィーダの部品供給位置を基板カメラにより撮像して得られた画像の一例を示す図
【
図6】本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムが備えるリモート監視部の表示部に表示された画面の一例を示す図
【
図7】本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムの作業装置にエラーが発生した場合の作業装置の処理の流れを示すフローチャート
【
図8】本発明の一実施の形態におけるリモート操作システムの作業装置にエラーが発生した場合のリモート監視部の処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態におけるリモート操作システム1を示している。リモート操作システム1は、複数の作業装置2が直列に並べられて成る作業ライン2Lと、作業ライン2Lを構成する作業装置2に発生したエラーをリモート操作で解消できるリモート監視部3とを含んでいる。本実施の形態では、作業装置2は作業対象である基板KBに部品BHを装着する部品実装装置であり、作業ライン2Lは、複数の作業装置2の間で基板KBを受け渡しながらその基板KBに対して順次作業(部品装着作業)を施していく部品実装ラインとなっている。
【0011】
図2において、作業ライン2Lを構成する各作業装置2は、基台11、搬送コンベア12、パーツフィーダ13、ヘッド移動機構14、装着ヘッド15、基板カメラ16および部品カメラ17を備えている。搬送コンベア12は基台11上を基台11の左右方向(X軸方向)に延びて設けられており、上流側から送られてきた基板KBを受け取って所定の作業位置に位置決めする。そして、その基板KBに後述する部品装着作業が施された後、基板KBを下流側に搬送して排出する。
【0012】
図2において、パーツフィーダ13は、ここではテープフィーダであり、内蔵したスプロケット13S(
図3も参照)によって、リールRLに巻き付けられたキャリアテープCTを引き出して基台11の前後方向(Y軸方向)に搬送し、搬送コンベア12側の端部に設けられた部品供給位置13Kに部品BHを供給する。ヘッド移動機構14は例えばXYガントリー機構から成り、装着ヘッド15を水平面内で移動させる。装着ヘッド15は上下方向(Z軸方向)の下方に延びた複数のノズル15Nを備えている。
【0013】
装着ヘッド15は各ノズル15NをZ軸方向に昇降させることができる。また装着ヘッド15は、各ノズル15Nの下端に真空吸着力を発生させることができる。装着ヘッド15はノズル15Nをパーツフィーダ13の部品供給位置13Kの上方に位置させた後、ノズル15Nを下降させながらノズル15Nの下端に真空吸着力を発生させて部品BHを吸着し、その部品BHをピックアップする(
図3)。
【0014】
図2および
図3において、基板カメラ16は撮像光軸を下方に向けた姿勢で装着ヘッド15に取り付けられている。基板カメラ16は装着ヘッド15と一体となって水平面内方向に移動し、搬送コンベア12によって作業位置に位置決めされた基板KBを上方から撮像する。基板カメラ16は、作業装置2にエラーが発生した場合には、そのエラーが発生した箇所(エラー発生箇所)を上方から撮像する。
【0015】
図2において、部品カメラ17は撮像光軸を上方に向けた姿勢で基台11に取り付けられている。部品カメラ17は、部品BHをピックアップした装着ヘッド15が上方に位置した状態で、その部品BHを下方から撮像する。
【0016】
各作業装置2が備える制御装置18(
図2)は、その作業装置2の各部の動作を制御する(
図4)。制御装置18は、具体的には、搬送コンベア12による基板KBの搬送および作業位置への位置決め動作の制御を行い、各パーツフィーダ13による部品供給位置13Kへの部品供給動作の制御を行う。また制御装置18は、ヘッド移動機構14による装着ヘッド15の移動動作の制御を行い、装着ヘッド15による部品BHのピックアップ動作の制御を行う。
【0017】
制御装置18はまた、基板カメラ16と部品カメラ17の撮像動作の制御を行う。基板カメラ16が撮像して得られる画像データと部品カメラ17が撮像して得られる画像データはそれぞれ制御装置18に入力され、制御装置18はそれらの画像データに対して画像認識を行う。
【0018】
図1において、リモート監視部3はいわゆるリモート端末として機能するものであり、例えばパーソナルコンピュータから構成されている。ここではリモート監視部3は作業装置2と有線で接続されているが、無線で接続されていてもよい。
図4にも示すように、リモート監視部3は少なくとも、制御部21、表示部(ディスプレイ)22および入力部23を備えている。リモート監視部3の制御部21は、複数の作業装置2それぞれから送信されたエラー情報(エラー発生箇所の画像)を受信し、その受信したエラー情報を表示部22に表示させる。リモート監視部3にはひとりのオペレータが常駐しており、そのオペレータが表示部22を通じてエラーの発生を監視し、入力部23からエラーを解消させるために必要な操作(エラー解消操作)を行う。
【0019】
図4において、作業装置2の制御装置18は、カメラ制御部18aおよび情報送信部18bを備えている。カメラ制御部18aは、作業装置2にエラーが発生した場合に、基板カメラ16をエラー発生箇所の上方に移動させて、エラー発生箇所を撮像させる。これによりエラー発生箇所のエラーの情報(エラー情報)が取得される。情報送信部18bは、基板カメラ16によって取得されたエラー情報としてのエラー発生箇所の画像を、リモート監視部3に送信する。
【0020】
図4において、リモート監視部3の制御部21は、情報受信部21a、記憶部21b、到達待ち時間算出部21c、優先順位設定部21dおよび表示制御部21eを備えている。情報受信部21aは、複数の作業装置2それぞれの情報送信部18bから送信されたエラー情報(エラー発生箇所の画像)を受信する。
【0021】
記憶部21bは、作業ライン2Lを構成する複数の作業装置2のそれぞれの個別タクトを記憶している。ここで、「個別タクト」とは、各作業装置2が基板KBひとつ当たりの作業に要するタクトのことである。この個別タクトは、作業装置2ごとに異なる値をとり得る。
【0022】
また記憶部21bは基準タクトを記憶している。この基準タクトは任意に設定することができ、ここでは、作業ライン2Lの平均タクトに設定されている。「平均タクト」とは、作業ライン2Lを構成する複数の作業装置2それぞれの個別タクトの平均値のことである。更に記憶部21bは、作業装置2ごとのタクト余裕を記憶している。「タクト余裕」とは、作業装置2の個別タクトを作業ライン2Lの基準タクトから差し引いて得られる時間であり、個別タクトの基準タクトからの余裕分(=基準タクト-個別タクト)に相当する時間である。「タクト余裕」の正負は、基準タクトと個別タクトとの大小関係によって決まる。基準タクトを平均タクトとしている場合には、個別タクトが最大である作業装置2については、タクト余裕は負の値となる。
【0023】
タクト余裕は、各作業装置2の個別タクトが基準タクトからどれだけの余裕があるかを示す目安時間に相当し、個別タクトが短い作業装置2ほど大きな値となる。基準タクトは上述したように任意に設定することができ、平均タクトとは異なる値、例えば、作業ライン2Lにおける個別タクトの最大値に設定することもできる。
【0024】
到達待ち時間算出部21cは、エラー情報を送信している作業装置2について、到達待ち時間を算出する。「到達待ち時間」とは、エラー情報を送信した作業装置2が基板KBを下流側に送り出してから次の基板KBが上流側からその作業装置2に到達するまでの間の待ち時間のことである。
【0025】
優先順位設定部21dは、情報受信部21aが受信している一または複数のエラー情報に対し、エラー解消操作を行う際の優先順位を設定する。優先順位設定部21dは、情報受信部21aが新たなエラー情報を受信するたびに、その新たに受信したエラー情報の送信元の作業装置2について、記憶部21bに記憶されているタクト余裕を記憶部21bから読み出すとともに、到達待ち時間算出部21cによって算出される到達待ち時間を入手する。そして、得られたタクト余裕と到達待ち時間とを合算して、エラー情報の送信元の作業装置2の「余裕時間」を算出する(余裕時間=タクト余裕+到達待ち時間)。ここで算出される「余裕時間」は、タクト余裕が負の値であり、かつ、到達待ち時間がないまたは極めて短い作業装置2では、余裕時間は負の値となり得る。
【0026】
優先順位設定部21dは、受信したエラー情報の送信元の作業装置2について余裕時間を算出したら、今回算出した余裕時間と、既に算出されている他のエラー情報についての余裕時間とを比較して、余裕時間が短いほど優先度が高くなるようにエラー情報を並べる(並べ替える)。このとき比較した余裕時間同士が互いに同じ長さであった場合には、作業ライン2Lの下流側に位置する作業装置2から送信されたエラーほど優先順位が高くなるようにする。また、既に算出されている他のエラー情報がない場合には、今回受信したエラー情報を最も優先順位が高いものに設定する。これにより情報受信部21aが受信している一または複数のエラー情報に対し、エラー解消操作を行う際の優先順位が設定される。
【0027】
ここで、余裕時間が短い順に優先順位を設定するようになっているのは、余裕時間が短い作業装置2ほどボトルネックになり易いからであり、ボトルネックになり易い作業装置2に発生したエラーを優先的に解消することで、作業ライン2Lの全体のタクトの低下を抑制できるからである。
【0028】
このように、本実施の形態において、優先順位設定部21dは、作業装置2ごとの個別タクトの基準タクトからの余裕分(タクト余裕)と、基板KBを下流側に送り出してから次の基板KBが上流側から到達するまでの間の待ち時間(到達待ち時間)とを合算した時間を余裕時間として算出し、その余裕時間が短い作業装置2から送信されたエラー情報ほど優先度が高くなるように優先順位を設定するようになっている。
【0029】
表示制御部21eは、情報受信部21aが受信している一または複数のエラー情報を、優先順位設定部21dにより設定された優先順位が分かる態様で表示部22に表示させる。これによりオペレータは、複数の作業装置2に発生した複数のエラーを、優先順位の高い順に(余裕時間が短い順)に処理することができる。
【0030】
ここで、作業装置2に発生するエラーとしては、例えば、或るパーツフィーダ13の部品供給位置13Kにおいて、ノズル15Nによって部品BHを吸着し損なうピックアップミスが挙げられる。
図5(a)は、このようなピックアップミスが発生したパーツフィーダ13の部品供給位置13Kがエラー発生箇所として基板カメラ16によって撮像され、リモート監視部3の表示部22に表示された画像GZの一例である。この例では、画像GZの中心位置KCは、部品供給位置13Kに位置した部品BHを吸着する際にノズル15Nの下端を位置させる所定の位置(「部品吸着位置」と称する)に一致している。
【0031】
図5(a)の画像GZでは、部品吸着位置(画像GZの中心位置KC)が部品供給位置13Kに対してずれており、このために部品BHのピックアップミスが発生したと予想される。この場合、オペレータは、入力部23から、部品吸着位置が部品供給位置13Kに一致するようにするために必要な操作(エラー解消操作)を行う。
【0032】
上記のケースでは、ノズル15Nの下端の位置を部品供給位置13Kに一致させるようなエラー解消操作を入力部23から行う。これによりリモート監視部3から、作業装置2の制御装置18に記憶されたデータを変更するための操作信号が、作業装置2の制御装置18に送信される。この操作信号は、オペレータが入力部23から行ったエラー解消操作の入力に対応する信号である。
【0033】
制御装置18は、リモート監視部3から操作信号が送信されたらその操作信号を受信し、その受信した操作信号に従った所要の処置を行う。これにより作業装置2に生じていたエラーは解消される。
図5(b)は、オペレータが入力部23からエラー解消操作を行うことによって、エラー発生箇所として特定されたパーツフィーダ13の部品供給位置13Kに部品吸着位置(画像GZの中心位置KC)が一致するようになり、生じていたエラーが解消された状態の画像GZを示している。
【0034】
図6は、リモート監視部3の表示制御部21eによって表示部22に表示された画面GMの一例を示している。これは、エラーの情報の優先順位と表示部22の画面GM内における位置とを対応づけた規則に従ってエラーの情報を表示部22に表示させた例である。ここでは、画面GM内に表示される6つの画像GZが、上側の方が下側よりも処理すべき優先順位が高く、また左側に位置するほど優先順位が高いという規則で表示されており、オペレータは、優先順位の高低を意識しながら6つのエラー情報を一覧できるようになっている。これによりオペレータは、優先順位が最も高い位置として定められている位置(ここでは上列の最も左側の位置)に表示されているエラー解消操作を優先的に行えばよく、作業ライン2Lの全体のタクトの低下が抑制されるような順序でエラー解消操作を行うという作業を、極めて容易に行うことができる。
【0035】
なお、
図6に示す例では、オペレータが或るエラーについてその解消操作を行った場合、その解消操作が終了したエラーの画像GZは画面GMから消え、その消えた画像GZのあった位置に、次に優先順位が高いエラー情報の画像GZが表示されるように、残りの画像GZがそれぞれスライド式に優先順位をひとつずつ上げて(移動して)表示されるようになっていることが好ましい。なお、ここでは6つのエラー情報を同時に表示できる例を示したが、これは一例であり、同時に表示できるエラー情報の数(画面GMに表示される画像GZの数)は6つに限定されるわけではなく、任意である。
【0036】
上述の例のように、ひとつの画面GMに複数のエラー情報が表示されるのであれば、オペレータは優先順位が最も高いエラー情報のみならず、優先順位がそれに続く他のエラー情報も一覧することができるが、優先順位が最も高いエラー情報以外のエラー情報を一覧する必要がないのであれば、ひとつの画面GMに解消操作の優先順位が最も高いエラー情報の画像GZがひとつだけ表示されるのであってもよい。なお、このときは、画面GMに表示されているエラーについてその解消操作が終了したら、その画面GMは消えて、次に優先順位の高いエラー情報(エラー発生箇所の画像GZ)が画面GMに表示されるようにする。
【0037】
また、表示制御部21eは、優先順位設定部21dにおいて算出された余裕時間をエラー情報とともに表示部22に表示させるようになっていることが好ましい。この場合、表示される余裕時間はそのまま正負の符号とともに示すものであってよい。これによりオペレータは、表示された余裕時間が正の値であれば、エラーの解消操作に時間的な余裕があることが分かり、表示された余裕時間が負の値であれば、エラーの解消操作を急ぐ必要があることが分かる。
【0038】
次に、リモート操作システム1の全体の動作を説明する。リモート操作システム1を構成する作業ライン2Lによって基板KBに部品装着作業を施す場合には、各作業装置2は、先ず搬送コンベア12を作動させて、基板KBを所定の作業位置に位置決めする。搬送コンベア12によって基板KBを作業位置に位置決めしたら、ヘッド移動機構14を作動させて装着ヘッド15を基板KBの上方に移動させ、基板カメラ16に基板KBを撮像させて、基板KBを認識する。
【0039】
作業装置2は、基板KBを認識したら、パーツフィーダ13を作動させてそのパーツフィーダ13に部品BHを供給させつつ、装着ヘッド15に装着ターンを繰り返し実行させる。装着ヘッド15は、1回の装着ターンにおいて、パーツフィーダ13の部品供給位置13Kの上方に移動してノズル15Nに部品BHを吸着(ピックアップ)させる動作と、パーツフィーダ13の上方から部品カメラ17の上方を通って基板KBの上方に移動する動作と、基板KBの上方でノズルを下降させて部品BHを基板KB上の所定の部品装着位置に装着する動作とを行う。
【0040】
装着ターンにおいて、装着ヘッド15が部品カメラ17の上方を通るときには部品カメラ17が部品BHを下方から撮像し、これにより部品BHが認識される。この部品BHの認識結果と前述の基板KBの認識結果は、部品BHを部品装着位置に装着する際の位置合わせに利用される。このようにして装着ヘッド15の装着ターンが繰り返し実行され、必要な部品BHがすべて基板KBに装着されたら、制御装置18は搬送コンベア12作動させて、基板KBを作業装置2の下流側に排出する。
【0041】
次に、作業ライン2Lを構成する複数の作業装置2のいずれかに、何らかのエラーが発生した場合の作業装置2側の処理の流れとリモート監視部3側の処理の流れとについて説明する。
図7は作業装置2にエラーが発生した場合における作業装置の処理の流れを示すフローチャートであり、
図8はリモート監視部3の処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
作業装置2の制御装置18は常時、自身にエラーが発生した場合にはこれを検知できる検知待ちの状態にある(
図7に示すフローチャートのステップST1)。そして、自身に何らかのエラーが発生したことを検知した場合には、そのエラーの発生箇所を特定したうえで(ステップST2)、リモート操作モードに入る(ステップST3)。例えば、装着ヘッド15が或るパーツフィーダ13から部品BHをピックアップする動作を連続して失敗するようなエラーが生じた場合には、制御装置18は、そのパーツフィーダ13の部品供給位置13Kをエラー発生箇所として特定し、部品装着作業を中断したうえで、リモート操作モードに入る。
【0043】
制御装置18は、リモート操作モードに入ったら、カメラ制御部18aを通じて、基板カメラ16をエラー発生箇所の上方に移動させる。そして、エラー発生箇所を基板カメラ16に撮像させることによって、エラー情報を取得する(ステップST4)。そして、その取得したエラー情報(エラー発生箇所の画像)を、情報送信部18bからリモート監視部3に送信する(ステップST5)。
【0044】
リモート監視部3の制御部21は、常時、作業装置2のいずれかからエラー情報が送信されてきた場合にはこれを受信できる受信待ちの状態にある(
図8に示すフローチャートのステップST11)。そして、制御部21は、複数の作業装置2のいずれかから送信されてきたエラー情報を受信した場合には、その受信したエラー情報の送信元の作業装置2のタクト余裕を記憶部21bから読み出すとともに(ステップST12)、エラー情報の送信元の作業装置2の到達待ち時間を、到達待ち時間算出部21cに算出させる(ステップST13)。そして、得られたタクト余裕と到達待ち時間とを合算して、エラー情報の送信元の作業装置2の余裕時間を算出する(ステップST14)。
【0045】
制御装置18は、受信したエラー情報の送信元の余裕時間を算出したら、その算出した余裕時間に基づいて、情報受信部21aが受信している一または複数のエラーの情報に対し、優先順位を設定する(ステップST15)。ステップST15において、まだエラーが解消されていない他のエラー情報があった場合には、そのまだエラーが解消されていないエラー情報と、今回新たに受信したエラー情報との全てについて優先順位を設定する。
【0046】
制御部21は、エラー情報の優先順位を設定したら、その設定した優先順位に従って、表示制御部21eにより、情報受信部21aが受信している一または複数のエラー情報を表示部22に表示させる(ステップST16)。これによりオペレータは、表示部22に表示されたエラー情報を見ながら、優先順位の高いエラーの解消操作を優先して行うことができる。
【0047】
リモート監視部3の制御部21は、上述のステップST16でエラー情報を表示部22に表示したら、オペレータによるリモート操作の操作入力の待ち状態に入る(ステップST17)。そして、オペレータが入力部23からエラーの解消操作の入力があったことを検知したら、リモート監視部3の制御部21は、作業装置2の制御装置18に操作信号を送信する(ステップST18)。
【0048】
作業装置2の制御装置18は、前述のステップST5において、リモート監視部3へエラー情報を送信したら、リモート監視部3から送信される操作信号の受信待ちに入る(
図7のフローチャートのステップST6)。そして、リモート監視部3から送信された操作信号を受信したら、その受信した操作信号に従って、作業装置2に発生したエラーを解消させるための所要の処置を実行する(ステップST7)。
【0049】
制御装置18は、作業装置2に発生したエラーが解消されるようにするための処置を実行したら、リモート操作モードから抜ける(ステップST8)。そして、ステップST1に戻り、改めて、ステップST1のエラー発生の検知待ち状態に戻る。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態におけるリモート操作システム1では、リモート監視部3は、作業ライン2Lを構成する作業装置2から受信している一または複数のエラー情報に対し、エラーの解消操作の操作を行う際の優先順位を設定し、その設定した優先順位に従ってエラー情報を表示部22に表示させるようになっている。表示部22に表示されるエラー情報に対し、オペレータはその優先順位に従った順序でエラーの解消操作を行えばよく、これにより作業ライン2Lの全体のタクトのロスが抑えられる。このように本実施の形態におけるリモート操作システム1によれば、作業ライン2Lを構成する作業装置2にエラーが発生した場合に、オペレータは、作業ライン2Lの全体のタクトの低下が抑制されるような順序でエラーの解消操作を行うことができる。
【0051】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は前述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、前述の実施の形態において、優先順位の設定は、作業装置2から新たにエラーの情報が送信されたときに行うようになっていたが、作業ライン2Lの状況は刻一刻と変わるので、数秒ごとに優先順位を設定するようにしてもよい。また、前述の実施の形態において示した優先順位の設定手順は一例に過ぎず、他の手順によっても構わない。
【0052】
また、表示制御部21eが、優先順位設定部21dにより設定された優先順位が分かる態様で複数のエラー情報を表示部22に表示させる方法は、前述したものに限定されない。すなわち、前述の実施の形態では、エラー情報の優先順位と表示部22の画面GM内における位置とを対応づけた規則に従ってエラー情報を表示部22に表示させるようになっていたが、これに替えて、エラーの情報の優先順位と表示部22の画面GM内における色彩とを対応づけた規則に従ってエラー情報を表示部22に表示させるようになっていてもよい。この場合には、例えば、ひとつの画面GMに表示される複数のエラー情報(エラー発生箇所の画像GZ)の背景色を色分けできるようにしたうえで、エラー情報を、色彩と優先順位との関係の規則に従って色分けして表示部22に表示させる。これによりオペレータは、優先順位が最も高い色として定められている色彩(背景色)で表示されているエラーの解消操作を優先的に行えばよく、作業ラインの全体のタクトの低下が抑制されるような順序でエラーの解消操作を行うという作業を、極めて容易に行うことができる。
【0053】
また、前述の実施の形態では、リモート操作システム1を構成する作業ライン2Lの作業装置2が、パーツフィーダ13によって供給される部品BHを移動自在な装着ヘッド15によりピックアップして基板KBに装着する作業装置2であるとしていたが、本発明が適用される作業装置2は、部品実装装置に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
作業ラインを構成する作業装置にエラーが発生した場合に、作業ラインの全体のタクトの低下が抑制されるような順序でエラーの解消操作を行うことができるリモート操作システムを提供する。
【符号の説明】
【0055】
1 リモート操作システム
2 作業装置
2L 作業ライン
3 リモート監視部
18b 情報送信部
21a 情報受信部
21d 優先順位設定部
21e 表示制御部
22 表示部
GM 画面
KB 基板(作業対象)