IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-撮像装置 図1
  • 特許-撮像装置 図2
  • 特許-撮像装置 図3A
  • 特許-撮像装置 図3B
  • 特許-撮像装置 図4A
  • 特許-撮像装置 図4B
  • 特許-撮像装置 図5
  • 特許-撮像装置 図6A
  • 特許-撮像装置 図6B
  • 特許-撮像装置 図6C
  • 特許-撮像装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/34 20210101AFI20230602BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20230602BHJP
   G02B 7/36 20210101ALI20230602BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20230602BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20230602BHJP
【FI】
G02B7/34
G02B7/28 N
G02B7/36
G03B13/36
H04N23/67
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019120392
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021005063
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】澁野 剛治
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-269604(JP,A)
【文献】特開平10-026526(JP,A)
【文献】特開2017-143504(JP,A)
【文献】特開平08-136799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/34
G02B 7/28
G02B 7/36
G03B 13/36
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを含む光学系を介して形成される被写体像を撮像して、画像データを生成する撮像部と、
合焦の状態に関する評価値に応じて、前記光学系における光軸に沿って前記フォーカスレンズの位置を調整する合焦動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記フォーカスレンズの位置を基準とする検出範囲にわたり前記評価値を算出して、前記合焦動作を実行し、
前記制御部は、合焦させる被写体距離を近くする又は遠くする指示があった場合、
前記フォーカスレンズの位置を基準とする前記検出範囲であって、合焦位置が算出されていない複数の領域のうち、前記指示の向きに応じて前記フォーカスレンズの現在位置に対して至近端あるいは無限端に近い位置を含む領域を合焦領域に設定し、
前記合焦動作において、設定した前記合焦領域の範囲内で前記フォーカスレンズの位置を調整する、撮像装置。
【請求項2】
ユーザの操作を受け付ける操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記操作部におけるユーザ操作によって前記指示があった場合、前記合焦領域の設定を行う、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、像面位相差方式、位相差方式、及びDFD(Depth From Defocus)方式の少なくとも1つによって前記評価値を算出する、請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被写体距離を近くする指示に応じて、前記検出範囲の中から、前記フォーカスレンズの現在位置に対して至近端に近い範囲を前記合焦領域に設定する、請求項1から3のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被写体距離を遠くする指示に応じて、前記検出範囲の中から、前記フォーカスレンズの現在位置に対して無限端に近い範囲を前記合焦領域に設定する、請求項1から4のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出範囲において、前記フォーカスレンズの現在位置を含む第1の領域と、前記第1の領域よりも至近端に近い第2の領域と、前記第1の領域よりも無限端に近い第3の領域とを規定し、
前記第2の領域および前記第3の領域のうち1つを、前記指示に応じた向きに基づいて、前記合焦領域に設定する、請求項1から5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記合焦動作を連続的に繰り返す動作の実行中に、前記指示があった場合、前記検出範囲の中から合焦領域を設定して再度、設定された当該合焦領域の範囲内で前記合焦動作を実行する、請求項1から6のいずれか1つに記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合焦動作を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、デジタルスチルカメラ及びデジタルビデオカメラ等に利用されるオートフォーカス(AF)技術に関して、特に像面位相差方式によるオートフォーカス技術を利用した自動合焦装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-41178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、所望の被写体に合焦させ易くすることができる撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における撮像装置は、フォーカスレンズを含む光学系を介して形成される被写体像を撮像して、画像データを生成する撮像部と、合焦の状態に関する評価値に応じて、前記光学系における光軸に沿って前記フォーカスレンズの位置を調整する合焦動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記フォーカスレンズの位置を基準とする検出範囲にわたり前記評価値を算出して、前記合焦動作を実行し、前記制御部は、合焦させる被写体距離を近くする又は遠くする指示があった場合、前記フォーカスレンズの位置を基準とする前記検出範囲において、前記指示の向きに応じて前記フォーカスレンズの現在位置に対して至近端あるいは無限端に近い位置を含む領域を合焦領域に設定し、前記合焦動作において、設定した前記合焦領域の範囲内で前記フォーカスレンズの位置を調整する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における撮像装置によれば、所望の被写体に合焦させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態1に係るデジタルカメラの構成を示すブロック図
図2】デジタルカメラの背面を示した図
図3A】デジタルカメラにおいて被写体の背景に合焦した合焦状態を例示する図
図3B図3Aの状況からニアシフト操作後の合焦状態を例示する図
図4A】デジタルカメラにおいて被写体に対する障害物に合焦した合焦状態を例示する図
図4B図4Aの状況からファーシフト操作が入力された後の合焦状態を例示する図
図5】実施形態1にかかるデジタルカメラの撮影動作を例示するフローチャート
図6A】デジタルカメラにおける通常のオートフォーカスの動作例を示す図
図6B】ニアシフト機能を用いたオートフォーカスの動作例を示す図
図6C】ファーシフト機能を用いたオートフォーカスの動作例を示す図
図7】実施形態2にかかるデジタルカメラの撮影動作を例示するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示における実施の形態を、図面を適宜参照しながら説明する。ただし、詳細な説明において、従来技術および実質的に同一の構成に関する説明のうち不必要な部分は省略されることもある。これは、説明を簡単にするためである。また、以下の説明および添付の図面は、当業者が本開示を充分に理解できるよう開示されるのであって、特許請求の範囲の主題を限定することを意図されていない。
【0009】
(実施形態1)
以下では、本開示に係る撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラの構成および動作について説明する。
【0010】
1.構成
図1は、実施形態1に係るデジタルカメラ1の構成を示すブロック図である。本実施形態のデジタルカメラ1は、カメラ本体100とそれに着脱可能な交換レンズ200とから構成される。
【0011】
1-1.カメラ本体
カメラ本体100(撮像装置の一例)は、画像センサ110と、液晶モニタ120と、操作部130と、カメラ制御部140と、ボディマウント150と、電源160と、カードスロット170とを備える。
【0012】
カメラ制御部140は、操作部130からの指示に応じて、画像センサ110等の構成要素を制御することでデジタルカメラ1全体の動作を制御する。カメラ制御部140は、垂直同期信号をタイミング発生器112に送信する。これと並行して、カメラ制御部140は、露光同期信号を生成する。カメラ制御部140は、生成した露光同期信号を、ボディマウント150及びレンズマウント250を介して、レンズ制御部240に周期的に送信する。カメラ制御部140は、制御動作や画像処理動作の際に、DRAM141をワークメモリとして使用する。
【0013】
画像センサ110は、交換レンズ200を介して入射される被写体像を撮像して画像データを生成する素子である。画像センサ110は、例えばCMOSイメージセンサである。生成された画像データは、ADコンバータ111でデジタル化される。デジタル化された画像データは、カメラ制御部140により所定の画像処理が施される。所定の画像処理とは、例えば、ガンマ補正処理、ホワイトバランス補正処理、キズ補正処理、YC変換処理、電子ズーム処理、JPEG圧縮処理である。画像センサ110は、CCDまたはNMOSイメージセンサ等であってもよい。
【0014】
本実施形態1の画像センサ110には、像面位相差方式用の位相差センサが含まれている。当該位相差センサを用いて、カメラ制御部140は、像面位相差方式によるオートフォーカスを実行するように構成される。
【0015】
像面位相差方式によるオートフォーカスの原理の一例について説明する。前述した画像センサ110の位相差センサにおける撮像素子の各画素は、1つのマイクロレンズと、左右方向に隣接する2つのピクセルとで構成される。各画素には位相差AFの瞳分割機能が付与されており、左側のピクセルには撮影光学系の右半分を通過した光束が導かれ、右側のピクセルには撮影光学系の左半分を通過した光束が導かれる。左ピクセル群で捉えられる像信号に基づく像と、右ピクセル群で捉えられる像信号に基づく像との相対位置を検出することで、左右の位相差画素群の出力の合致度が評価値として算出される。当該評価値に基づいて、フォーカスレンズ230の位置を調整する合焦動作を行う。
【0016】
画像センサ110は、タイミング発生器112により制御されるタイミングで動作する。画像センサ110は、記録用の静止画像もしくは動画像またはスルー画像を生成する。スルー画像は、主に動画像であり、ユーザが静止画像の撮像のための構図を決めるために液晶モニタ120に表示される。
【0017】
液晶モニタ120はスルー画像等の画像およびメニュー画面等の種々の情報を表示する。液晶モニタに代えて、他の種類の表示デバイス、例えば、有機ELディスプレイデバイスを使用してもよい。
【0018】
操作部130は、撮影開始を指示するためのレリーズ釦、撮影モードを設定するためのモードダイアル、及び電源スイッチ等の種々の操作部材を含む。カメラ本体100における操作部130を図2に例示する。
【0019】
図2は、デジタルカメラ1の背面を示した図である。図2では、操作部130の例として、レリーズ釦131、選択釦132、及び決定釦133、タッチパネル135、および複数のファンクション釦136,137(以下「Fn釦」という)が示されている。操作部130は、ユーザによる操作を受け付けると、カメラ制御部140に種々の指示信号を送信する。
【0020】
レリーズ釦131は、二段押下式のボタンである。レリーズ釦131がユーザにより半押し操作されると、カメラ制御部140はオートフォーカス制御(AF制御)やオート露出制御(AE制御)などを実行する。また、レリーズ釦131がユーザにより全押し操作されると、カメラ制御部140は、押下操作のタイミングに撮像された画像データを記録画像としてメモリカード171等に記録する。
【0021】
選択釦132は、上下左右方向に設けられた押下式ボタンである。ユーザは、上下左右方向のいずれかの選択釦132を押下することにより、液晶モニタ120に表示される各種条件項目を選択したり、カーソルを移動したりすることができる。
【0022】
決定釦133は、押下式ボタンである。デジタルカメラ1が撮影モードあるいは再生モードにあるときに、決定釦133がユーザにより押下されると、カメラ制御部140は液晶モニタ120にメニュー画面を表示する。メニュー画面は、撮影/再生のための各種条件を設定するための画面である。決定釦133が各種条件の設定項目が選択されているときに押下されると、カメラ制御部140は、選択された項目の設定を確定する。
【0023】
タッチパネル135は、液晶モニタ120の表示画面と重畳して配置され、ユーザの指による表示画面上へのタッチ操作を検出する。これにより、ユーザは、液晶モニタ120に表示された画像に対する領域の指定等の操作を行える。
【0024】
Fn釦136,137は、押下式ボタンである。各Fn釦136,137には、例えばメニュー画面における設定により、後述するニア/ファーシフト機能などのユーザ所望の機能を割り当てることができる。
【0025】
図1に戻り、カードスロット170は、メモリカード171を装着可能であり、カメラ制御部140からの制御に基づいてメモリカード171を制御する。デジタルカメラ1は、メモリカード171に対して画像データを格納したり、メモリカード171から画像データを読み出したりすることができる。
【0026】
電源160は、デジタルカメラ1内の各要素に電力を供給する回路である。
【0027】
ボディマウント150は、交換レンズ200のレンズマウント250と機械的及び電気的に接続可能である。ボディマウント150は、レンズマウント250を介して、交換レンズ200との間で、データを送受信可能である。ボディマウント150は、カメラ制御部140から受信した露光同期信号を、レンズマウント250を介してレンズ制御部240に送信する。また、カメラ制御部140から受信したその他の制御信号を、レンズマウント250を介してレンズ制御部240に送信する。また、ボディマウント150は、レンズマウント250を介してレンズ制御部240から受信した信号をカメラ制御部140に送信する。また、ボディマウント150は、電源160からの電力を、レンズマウント250を介して交換レンズ200全体に供給する。
【0028】
また、カメラ本体100は、BIS機能(画像センサ110のシフトにより、手振れを補正する機能)を実現する構成として、カメラ本体100のぶれを検出するジャイロセンサ184(ぶれ検出部)と、ジャイロセンサ184の検出結果に基づきぶれ補正処理を制御するBIS処理部183とをさらに備える。さらに、カメラ本体100は、画像センサ110を移動させるセンサ駆動部181と、画像センサ110の位置を検出する位置センサ182とを備える。
【0029】
センサ駆動部181は、例えば、マグネットと平板コイルとで実現可能である。位置センサ182は、光学系の光軸に垂直な面内における画像センサ110の位置を検出するセンサである。位置センサ182は、例えば、マグネットとホール素子で実現可能である。
【0030】
BIS処理部183は、ジャイロセンサ184からの信号及び位置センサ182からの信号に基づき、センサ駆動部181を制御して、カメラ本体100のぶれを相殺するように画像センサ110を光軸に垂直な面内にシフトさせる。センサ駆動部181により画像センサ110を駆動できる範囲には機構的に制限がある。画像センサ110を機構的に駆動できる範囲を「駆動可能範囲」という。
【0031】
1-2.交換レンズ
交換レンズ200は、光学系と、レンズ制御部240と、レンズマウント250とを備える。光学系は、ズームレンズ210と、OIS(Optical Image Stabilizer)レンズ220と、フォーカスレンズ230と、絞り260とを含む。
【0032】
ズームレンズ210は、光学系で形成される被写体像の倍率を変化させるためのレンズである。ズームレンズ210は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。ズームレンズ210は、ズームレンズ駆動部211により駆動される。ズームレンズ駆動部211は、使用者が操作可能なズームリングを含む。または、ズームレンズ駆動部211は、ズームレバー及びアクチュエータまたはモータを含んでもよい。ズームレンズ駆動部211は、使用者による操作に応じてズームレンズ210を光学系の光軸方向に沿って移動させる。
【0033】
フォーカスレンズ230は、光学系で画像センサ110上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させるためのレンズである。フォーカスレンズ230は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。フォーカスレンズ230は、フォーカスレンズ駆動部233により駆動される。
【0034】
フォーカスレンズ駆動部233はアクチュエータまたはモータを含み、レンズ制御部240の制御に基づいてフォーカスレンズ230を光学系の光軸に沿って移動させる。フォーカスレンズ駆動部233は、DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、または超音波モータなどで実現できる。
【0035】
OISレンズ220は、OIS機能(OISレンズ220のシフトにより、手振れを補正する機能)において、交換レンズ200の光学系で形成される被写体像のぶれを補正するためのレンズである。OISレンズ220は、デジタルカメラ1のぶれを相殺する方向に移動することにより、画像センサ110上の被写体像のぶれを小さくする。OISレンズ220は1枚又は複数枚のレンズで構成される。OISレンズ220はOIS駆動部221により駆動される。
【0036】
OIS駆動部221は、OIS処理部223からの制御を受けて、光学系の光軸に垂直な面内でOISレンズ220をシフトする。OIS駆動部221によりOISレンズ220を駆動できる範囲には機構的に制限がある。OIS駆動部221によりOISレンズ220を機構的に駆動できる範囲(駆動可能範囲)という。OIS駆動部221は、例えば、マグネットと平板コイルとで実現可能である。位置センサ222は、光学系の光軸に垂直な面内におけるOISレンズ220の位置を検出するセンサである。位置センサ222は、例えば、マグネットとホール素子で実現可能である。OIS処理部223は、位置センサ222の出力及びジャイロセンサ224(ぶれ検出器)の出力に基づいてOIS駆動部221を制御する。
【0037】
絞り260は画像センサ110に入射される光の量を調整する。絞り260は、絞り駆動部262により駆動され、その開口の大きさが制御される。絞り駆動部262はモータまたはアクチュエータを含む。
【0038】
ジャイロセンサ184または224は、デジタルカメラ1の単位時間あたりの角度変化すなわち角速度に基づいて、ヨーイング方向及びピッチング方向のぶれ(振動)を検出する。ジャイロセンサ184または224は、検出したぶれの量(角速度)を示す角速度信号をOIS処理部223またはBIS処理部183に出力する。ジャイロセンサ184または224によって出力された角速度信号は、手ぶれやメカノイズ等に起因した幅広い周波数成分を含み得る。ジャイロセンサに代えて、デジタルカメラ1のぶれを検出できる他のセンサを使用することもできる。
【0039】
カメラ制御部140及びレンズ制御部240は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、プログラムを用いたマイクロコンピュータなどで構成してもよい。例えば、カメラ制御部140及びレンズ制御部240は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGAまたはASIC等のプロセッサで実現できる。
【0040】
2.動作
以上のように構成されるデジタルカメラ1の動作について、以下説明する。
【0041】
デジタルカメラ1は、例えば交換レンズ200がカメラ本体100に装着されて撮影準備のための動作を完了すると、ライブビューモードで動作可能である。ライブビューモードは、画像センサ110が順次、生成した画像データが示す画像をスルー画像として液晶モニタ120に表示する動作モードである。
【0042】
撮影準備のための動作では、カメラ本体100と交換レンズ200間のデータ通信により、カメラ制御部140が、レンズ制御部240からレンズデータ及びAF用データ等を取得する。レンズデータは、レンズ名称、Fナンバー、焦点距離等の交換レンズ200特有の特性値を示すデータである。AF用データは、オートフォーカスを動作させるために必要なデータであり、例えば、フォーカス駆動速度、フォーカスシフト量、像倍率、コントラストAF可否情報の少なくともいずれかを含む。こうした各データは、予めフラッシュメモリ242に格納されている。
【0043】
ライブビューモードでは、スルー画像が動画で液晶モニタ120に表示されるので、ユーザは、液晶モニタ120を見ながら静止画像を撮像するための構図を決めることができる。ライブビューモードとするか否かはユーザが選択可能である。例えば、ライブビューモードの代わりに、電子式ビューファインダ(図示省略)において画像表示を行う動作モードが用いられてもよい。以下では、ライブビューモードが用いられる例を説明する。
【0044】
2-1.ニア/ファーシフト機能について
本実施形態のデジタルカメラ1は、例えばユーザ操作に基づき、オートフォーカスの対象となる被写体距離を近くしたり遠くしたりする機能であるニア/ファーシフト機能を提供する。ニア/ファーシフト機能について、図3A~4Bを用いて説明する。
【0045】
図3A,3Bは、本実施形態のデジタルカメラ1におけるニアシフト機能を説明するための図である。
【0046】
図3Aは、デジタルカメラ1において、被写体51の背景52に合焦した合焦状態を例示する。例えばライブビューモードの液晶モニタ120を見ながら、ユーザがレリーズ釦131を半押し操作し、デジタルカメラ1のオートフォーカスを動作させた際に、こうした合焦状態になることが想定される。
【0047】
図3Aの例では、所望の被写体51と、被写体51までの距離よりも遠い距離にある背景52とが、AFエリア50の範囲内に含まれている。AFエリア50は、オートフォーカスの動作時に、撮像される画像中で合焦の対象として検知される領域であり、適宜デジタルカメラ1に設定される。本例では、オートフォーカスにおいてAFエリア50内の背景52に合焦してしまい、所望の被写体51にピントが合わない状況になっている。
【0048】
上記のような状況に対して、本実施形態のニアシフト機能によると、デジタルカメラ1は、合焦させる被写体距離を近くするための指示を受け付ける。以下、こうした指示を示すユーザ操作を「ニアシフト操作」という。図3Bに、図3Aの状況からニアシフト操作が入力された後の合焦状態を例示する。
【0049】
図4A,4Bは、本実施形態のデジタルカメラ1におけるファーシフト機能を説明するための図である。
【0050】
図4Aは、被写体51に対する障害物53に合焦した合焦状態を例示する。本例では、AFエリア50の範囲内に、所望の被写体51と、被写体51までの距離よりも近い距離にある(柵等の)障害物53とが含まれている。本例では、オートフォーカスにおいてAFエリア50内の障害物53に合焦してしまい、所望の被写体51にピントが合わない状況になっている。
【0051】
上記のような状況に対して、本実施形態のファーシフト機能によると、デジタルカメラ1は、合焦させる被写体距離を遠くするための指示を受け付ける。以下、こうした指示を示すユーザ操作を「ファーシフト操作」という。図4Bに、図4Aの状況からファーシフト操作が入力された後の合焦状態を例示する。
【0052】
図3B,4Bに示すように、本実施形態のニア/ファーシフト機能は、デジタルカメラ1においてオートフォーカス時に被写体51への合焦の障害となる背景52又は障害物53等がある状況下であっても、ユーザの意図した被写体51に合焦させることを可能にする。
【0053】
本実施形態のデジタルカメラ1は、ニア/ファーシフト操作に応じてフォーカスレンズ230の駆動範囲を所望の範囲に制限した上でオートフォーカスを実行する簡単な制御により、上記のようなニア/ファーシフト機能を実現する。以下、デジタルカメラ1の動作の詳細を説明する。
【0054】
2-2.動作の詳細
本実施形態のニア/ファーシフト機能を実行するデジタルカメラ1の動作の詳細を、図5~6Cを用いて説明する。以下では、一例としてAFS(Auto Focus Single)モードにおけるデジタルカメラ1の動作を説明する。AFSモードは、オートフォーカスの動作モードにおいて、レリーズ釦131の半押しを継続すると、自動的に合焦状態を検出する合焦動作を一度、実行して得られた合焦状態を維持する動作モードである。
【0055】
図5は、実施形態1にかかるデジタルカメラ1の撮影動作を例示するフローチャートである。図5に示すフローは、デジタルカメラ1がオートフォーカスに関してAFSモードに設定された状態で、例えばライブビューモードの動作中に開始する。図5のフローチャートに示す各処理は、例えばカメラ制御部140によって実行される。
【0056】
まず、カメラ制御部140は、各種の操作部130からの入力に基づいてユーザ操作を受け付けたか否かを判断する(S1~S3)。判断対象とするユーザ操作は、例えばレリーズ釦131の半押し操作(S1)、ニアシフト操作(S2)、及びファーシフト操作(S3)を含む。例えば、ニアシフト操作はFn釦136の押下操作に予め設定でき、ファーシフト操作は別のFn釦137の押下操作に設定できる。カメラ制御部140は、上記いずれかのユーザ操作を受け付けるまで、各種操作部130からの入力を監視し続ける(S1~S3でNO)。
【0057】
カメラ制御部140は、レリーズ釦131が半押しされたと判断すると(S1でYES)、検出範囲における全領域を合焦領域に設定する(S4)。検出範囲とは、フォーカスレンズ230の位置を基準としたときに、カメラ制御部140により評価値を検出可能な範囲である。合焦領域とは、フォーカスレンズ230の位置を基準とする検出範囲において、後述する合焦動作(S8)が実行される領域であり、合焦領域の範囲内でフォーカスレンズ230の位置が駆動される。
【0058】
本実施形態では、オートフォーカスの方式に像面位相差方式を採用し、カメラ制御部140は、像面位相差方式に基づく検出範囲にわたり、評価値を検出する(S7)。カメラ制御部140は、ステップS4で設定した合焦領域にて合焦動作を行い(S8)、フォーカスレンズ230を駆動する。通常のオートフォーカスの動作例を、図6Aに例示する。
【0059】
図6Aは、像面位相差方式で得られる特性曲線C1の一例を示す。横軸はフォーカスレンズ位置を示し、縦軸は合焦状態を評価する評価値を示す。フォーカスレンズ位置は、フォーカスレンズ230の光軸に沿った位置である。評価値は、例えば像面位相差方式における左右の位相差画素群の出力の合致度を示す。
【0060】
像面位相差方式などの合焦動作において、デジタルカメラ1のカメラ制御部140は、フォーカスレンズ230を現在位置P0から特に動かさない状態において、検出範囲R1内で包括的にフォーカス位置毎の評価値を算出する(S7)。これにより、特性曲線C1が得られる。フォーカスレンズ位置は、デジタルカメラ1に対して焦点が最も近くなる至近端と最も遠くなる無限端との間で規定される。以下、光軸に沿った方向において、フォーカスレンズ位置が至近端に向かう向きを「ニア側(或いはニア方向)」といい、無限端に向かう向きを「ファー側(或いはファー方向)」という。検出範囲R1は、例えば交換レンズ200の特性によって規定され、現在位置P0を基準としてニア側の範囲及びファー側の範囲を含む。
【0061】
図6Aの例の特性曲線C1は、3つのピーク位置P10,P11,P12を有している。通常のオートフォーカス時に、カメラ制御部140は、例えば、合焦領域に設定された検出範囲R1において最も高い評価値を示す位置にフォーカスレンズ230を移動させる(S8)。図6Aに示す例では、3つのピーク位置P10,P11,P12のうち、ピーク位置P10が最も高い評価値を示しているため、ピーク位置P10にフォーカスレンズ230を移動させる。
【0062】
こうした通常のオートフォーカスによると、図6Aに例示するように、フォーカスレンズ230の(レリーズ釦131の半押し時の)現在位置P0近傍における特性曲線C1のピーク位置P10が、合焦位置として検出される。
【0063】
一方、ユーザがニアシフト操作を入力すると(S2でYES)、カメラ制御部140は、検出範囲R1におけるニア領域を合焦領域に設定する(S5)。ステップS5は、通常よりも近距離にある被写体を対象としてオートフォーカスを動作させるための処理である。この場合の動作例を、図6Bに例示する。
【0064】
図6Bの動作例は、図6Aと同様のフォーカスレンズ230の現在位置P0において、ニアシフト操作が入力された場合を例示する。カメラ制御部140は、例えば現在位置P0を基準として、現在位置P0よりもニア側に位置する領域をニア領域R2として規定する。
【0065】
本実施形態ではニア領域R2に加えてファー領域R3及びミドル領域R4が規定されている。ファー領域R3は、現在位置P0よりもファー側に位置する領域であり、ミドル領域R4は、ニア領域R2とファー領域R3の間に位置する領域である。
【0066】
図6Bに示す例では、ミドル領域R4は現在位置P0を含んでおり、ニア領域R2及びファー領域R3は現在位置P0と重複しない。すなわち、ニア領域R2は現在位置P0よりもニア側のみに位置し、ファー領域R3は現在位置P0よりもファー側のみに位置している。
【0067】
図6Aに示す例と同様に、カメラ制御部140は、検出範囲R1における評価値を検出し(S7)、特性曲線C1を得る。
【0068】
さらに、カメラ制御部140は、ステップS5で合焦領域に設定したニア領域R2において合焦動作を行う(S8)。具体的には、ニア領域R2において最も高い評価値を示す位置にフォーカスレンズ230を移動させる。図6Bに示す例では、ニア領域R2において最も高い評価値を示す位置はピーク位置P11であるため、ピーク位置P11にフォーカスレンズ230を移動させる(矢印A1)。
【0069】
図6Bでは、合焦領域に設定されたニア領域R2における特性曲線C1を実線で図示し、合焦領域に設定されていないファー領域R3及びミドル領域R4における特性曲線C1を点線で図示する。図6Cでも同様に図示する。
【0070】
一方、ユーザがファーシフト操作を入力した場合(S3でYES)、カメラ制御部140は、検出範囲R1におけるファー領域R3を合焦領域に設定する(S6)。ステップS6は、通常よりも遠距離離にある被写体を対象としてオートフォーカスを動作させるための処理である。この場合の動作例を、図6Cに例示する。
【0071】
図6Cの動作例は、図6A,6Bと同様のフォーカスレンズ230の現在位置P0において、ファーシフト操作が入力された場合を例示する。カメラ制御部140は、例えば図6Bに示す例と同様に、検出範囲R1において、ニア領域R2、ファー領域R3およびミドル領域R4を規定している。
【0072】
図6Bに示す例と同様に、カメラ制御部140は、検出範囲R1における評価値を検出し(S7)、特性曲線C1を得る。
【0073】
さらに、カメラ制御部140は、ステップS6で合焦領域に設定したファー領域R3において合焦動作を行う(S8)。具体的には、ファー領域R3において最も高い評価値を示す位置にフォーカスレンズ230を移動させる。図6Cに示す例では、ファー領域R3において最も高い評価値を示す位置はピーク位置P12であるため、ピーク位置P12にフォーカスレンズ230を移動させる(矢印A2)。
【0074】
図5に戻り、合焦動作(S8)の結果としてフォーカスレンズ230が合焦位置にある合焦状態において、カメラ制御部140は、ステップS1~S3で入力されたユーザ操作が解除されたか否かを判断する(S9)。例えば、レリーズ釦131、ニアシフト機能のFn釦136、およびファーシフト機能のFn釦137の内の少なくとも1つに対するユーザ操作が継続している場合、ステップS9でNOに進む。
【0075】
カメラ制御部140は、上記ユーザ操作の継続中(S9でNO)、レリーズ釦131が全押しされたか否かを判断する(S10)。レリーズ釦131が全押しされると(S10でYES)、カメラ制御部140は、撮影を実行する(S11)。この際、カメラ制御部140は、画像センサ110の撮像結果による画像データをメモリカード171に記録する。その後、カメラ制御部140は、ステップS1以降の処理を再度、実行する。
【0076】
一方、カメラ制御部140は、レリーズ釦131が全押しされていないとき(S10でNO)、ステップS9に戻る。これにより、ステップS9前の合焦動作(S8)で得られた合焦状態を維持するAFSの動作が実現される。
【0077】
また、カメラ制御部140は、ステップS1~S3の何れのユーザ操作も継続していない場合(S9でYES)、ステップS1に戻る。その後に再度、ユーザ操作が入力されると(S1~S3でYES)、ステップS8後のフォーカスレンズ230の位置を現在位置として再度、ステップS4~S8の処理が、入力されたユーザ操作に応じて行われる。
【0078】
以上の処理によると、ユーザ操作に応じて、合焦動作の対象とする被写体距離を近くしたり遠くしたりするニア/ファーシフト機能を実現できる。例えば図3Aの状況においてユーザがニアシフト操作を入力すると(S2でYES)、背景52の合焦位置のような現在位置P0近傍から、ニア側に離れたピーク位置P11が検出される。これにより、図3Bに例示するような所望の被写体51に対する合焦状態が得られる。また、例えば図4Aの状況においてユーザがファーシフト操作を入力すると(S3でYES)、障害物53からファー側に離れたピーク位置P12を検出して、図4Bに例示するような所望の合焦状態が得られる。
【0079】
また、以上のようなニア/ファーシフト操作は、例えば各Fn釦136,137の押下と解除を繰り返す(S2,S3,S9)ことにより、複数回、入力可能である。これにより、特性曲線C1において多数のピーク位置P10~P12がある場合に、ニア/ファーシフト操作を繰り返すことで、ユーザ所望のピーク位置に選択的に合焦させることができる。
【0080】
3.まとめ
以上のように、本実施形態におけるデジタルカメラ1及びカメラ本体100は、それぞれ撮像装置の一例であり、撮像部の一例としての画像センサ110と、制御部の一例としてのカメラ制御部140とを備える。画像センサ110は、フォーカスレンズ230を含む光学系の一例である交換レンズ200を介して形成される被写体像を撮像して、画像データを生成する。カメラ制御部140は、合焦の状態に関する評価値に応じて、光学系における光軸に沿ってフォーカスレンズ230の位置を調整する合焦動作を制御する。カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230の位置を基準とする検出範囲R1にわたり評価値を算出して、合焦動作を実行する。カメラ制御部140は、合焦させる被写体距離を近くする又は遠くする指示があった場合(S2,S3)、検出範囲R1において、指示の向きに応じてフォーカスレンズ230の現在位置P0に対して至近端あるいは無限単に近い位置を含む領域の一例であるニア領域R2あるいはファー領域R3を合焦領域に設定する(S5,S6)。カメラ制御部140は、合焦動作において、設定した合焦領域であるニア領域R2あるいはファー領域R3の範囲内でフォーカスレンズ230の位置を調整する(S8)。
【0081】
以上の撮像装置によると、指示を受ける前のフォーカスレンズ230近傍の合焦位置を、合焦動作の検出対象から外し易い。このため、所望の被写体51に対する合焦の障害となる背景52又は障害物53等がある状況であっても、上記の指示に基づき、所望の被写体51に合焦させ易くすることができる。
【0082】
本実施形態の撮像装置は、ユーザの操作を受け付ける操作部130をさらに備える。カメラ制御部140は、操作部130におけるユーザ操作によって指示があった場合(S2,S3)、検出範囲R1における合焦領域の設定を行う(S5、S6)。これにより、ユーザ操作によるニアシフト操作或いはファーシフト操作により、ユーザの意図に沿った被写体への合焦を実現しやすい。
【0083】
本実施形態において、カメラ制御部140は、像面位相差方式において評価値を算出する。これにより、像面位相差方式のオートフォーカスを実施できる。
【0084】
本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦させる被写体距離を近くする指示の一例であるニアシフト操作に応じて(S2でYES)、検出範囲R1の中から、フォーカスレンズ230の現在位置P0に対して至近端に近い範囲であるニア領域R2を合焦領域に設定する(S5)。その後、ニア領域R2において合焦動作が行われ、比較的近い被写体に合焦し易くできる。
【0085】
本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦させる被写体距離を遠くする指示の一例であるファーシフト操作に応じて(S3でYES)、検出範囲R1の中から、フォーカスレンズ230の現在位置P0に対して無限端に近い範囲であるファー領域R3を合焦領域に設定する(S6)。その後、ファー領域R3において合焦動作が行われ、比較的遠い被写体に合焦し易くできる。
【0086】
本実施形態において、カメラ制御部140は、検出範囲R1において、第1の領域の一例であるミドル領域R4と、第2の領域の一例であるニア領域R2と、第3の領域の一例であるファー領域R3とを規定する。ミドル領域R4は、フォーカスレンズ230の現在位置P0を含む領域であり、ニア領域R2は、ミドル領域R4よりも至近端に近い領域であり、ファー領域R3は、ミドル領域R4よりも無限端に近い領域である。カメラ制御部140は、ニア領域R2およびファー領域R3のうち1つを、指示の一例であるニアシフト操作あるいはファーシフト操作に応じた向きに基づいて、合焦動作(S8)を行う合焦領域に設定する。これにより、ユーザ操作によるニアシフト操作或いはファーシフト操作により、ユーザの意図に沿った被写体への合焦を実現しやすい。
【0087】
(実施形態2)
実施形態1では、AFSモードにニア/ファーシフト機能を適用するデジタルカメラ1の動作例を説明した。実施形態2では、他の動作モードにニア/ファーシフト機能を適用する例を説明する。
【0088】
以下、実施形態1に係るデジタルカメラ1と同様の構成、動作の説明は適宜、省略して、本実施形態に係るデジタルカメラ1を説明する。
【0089】
図7は、実施形態2にかかるデジタルカメラ1の撮影動作を例示するフローチャートである。以下では、一例としてAFC(Auto Focus Continuous)モードにおけるデジタルカメラ1の動作を説明する。AFCモードは、レリーズ釦131の半押しを継続すると、合焦動作を繰り返し実行し、合焦状態を更新し続ける動作モードである。
【0090】
図7に示す動作例において、カメラ制御部140は、実施形態1と同様にステップS1~S8,S10,S11の処理を行う。この際、カメラ制御部140は、レリーズ釦131が全押しされていないと判断すると(S10でNO)、ステップS1以降の処理を再度、実行する。これにより、レリーズ釦131が半押しされている間(S1でYES)、ステップS8における合焦動作が繰り返し実行され、AFCモードの動作が実現される。
【0091】
本動作例において、カメラ制御部140は、図5のステップS9の代わりに、ニアフラグF1及びファーフラグF2を用いた処理を行う(S21~S25,S31~S35)。ニアフラグF1及びファーフラグF2は、それぞれニア/ファーシフト機能の状態をON/OFFで管理するフラグであり、RAM141に記憶される。
【0092】
例えば、ニアシフト操作が入力されていないとき(S2でNO)、ニアフラグF1は「OFF」に設定される(S21)。カメラ制御部140は、ニアシフト操作が入力されたと判断すると(S2でYES)、ニアフラグF1が「OFF」であるか否かを判断する(S22)。
【0093】
ニアフラグF1が「OFF」である場合(S22でYES)、カメラ制御部140は、ニアシフト機能のための設定を行う(S5)。その後、カメラ制御部140は、ニアフラグF1を「ON」に設定して(S23)、ステップS7に進む。
【0094】
一方、ニアフラグF1が「ON」である場合(S22でNO)、カメラ制御部140は、ステップS5,S23の処理を行わず、ステップS7に進む。
【0095】
また、カメラ制御部140は、レリーズ釦131が半押し中(S1でYES)の状態においてもステップS21と同様に、ニアシフト操作が入力されたか否かを判断する(S24)。この際にも、カメラ制御部140は、ニアシフト操作が入力されていなければ(S24でNO)ニアフラグF1を「OFF」に設定する(S25)。又、カメラ制御部140は、ニアシフト操作が入力されると(S24でYES)、ステップS22の判断に進む。
【0096】
以上のようにニアフラグF1を用いた処理(S21~S25)によると、ニアシフト操作が入力された回数分、ニアシフト機能による合焦動作が実行される。本動作例では、ニアシフト機能のFn釦136の押下操作を継続すると、ニアシフト機能による合焦動作が1回行われ、その後に通常の合焦動作が繰り返される。
【0097】
また、ファーシフト機能に関して、カメラ制御部140は、ニアフラグF1の代わりにファーフラグF2を用いて、ファーシフト操作に応じてステップS21~S25と同様の処理を行う(S31~S35)。これにより、ファーシフト機能についても、ファーシフト操作が入力された回数分、同機能による合焦動作が実行される。
【0098】
以上では、AFCモードの動作例を説明したが、他の様々な動作モードに対しても、ニア/ファーシフト機能は適用可能である。例えば、静止画を連写で撮影する連写AFの動作モードにおいて、図7と同様の処理を行うことにより、ニア/ファーシフト機能を連写AFに適用できる。また、静止画に限らず、デジタルカメラ1が動画を撮影する動作時にも、ニア/ファーシフト機能を上記と同様に適用可能である。
【0099】
以上のように、本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦動作を連続的に繰り返す種々の動作の実行中に、ニア/ファーシフト機能を用いる指示があった場合(S24,S34)、検出範囲R1の中から合焦領域を設定して(S5,S6)再度、設定された合焦領域で合焦動作を実行する(S8)。これにより、合焦動作を連続的に行う各種の動作中にも、所望の被写体に合焦させ易くすることができる。
【0100】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1,2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1,2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0101】
上記の各実施形態では、像面位相差方式のオートフォーカスを採用する例を説明したが、本開示は像面位相差方式に限定されない。図5のステップS7のように、フォーカスレンズ230を駆動させることなく検出範囲R1にわたって評価値を算出して図6A図6Cに示すような特性曲線C1を得られる方式であれば、任意の方式を適用可能である。そのような方式として例えば、位相差方式あるいはDFD(Depth From Defocus)方式がある。評価値は例えば、DFDにおけるコスト値であってもよい。これらの方式によれば、コントラスト方式などのように所定の検出範囲にわたって評価値を検出する際にフォーカスレンズ230の駆動が必要な方式とは異なり、検出範囲R1にわたる評価値および検出範囲R1を一挙に検出することができる。これにより、検出範囲R1における特定の領域を合焦領域に設定し、設定した領域にて合焦動作を行うという制御を迅速に実行することができる。
【0102】
また、上記の各実施形態では、検出範囲R1にて合焦領域を設定してから(S5、S6)、検出範囲R1の評価値を算出したが(S7)、このような場合に限らない。検出範囲R1の評価値を算出してから、検出範囲R1にて合焦領域を設定してもよい。
【0103】
また、上記の各実施形態では、図6B、6Cに示すように、検出範囲R1の中で3つの領域R2~R4を規定した上でニア領域R2あるいはファー領域R3を合焦領域に設定したが、このような場合に限らない。例えば、ニアシフトが入力された場合には(ステップS2でYES)、検出範囲R1の中でニア領域R2のみを規定・選択し、合焦領域に設定してもよい。また、ファーシフトが入力された場合には(ステップS3でYES)、検出範囲R1の中でファー領域R3のみを規定・選択し、合焦領域に設定してもよい。また、検出範囲R1の中で2つあるいは4つ以上の領域を規定し、その中から1つのニア領域あるいは1つのファー領域を合焦領域に設定するようにしてもよい。
【0104】
また、上記の各実施形態では、図6B、6Cに示すように、ニア領域R2及びファー領域R3がフォーカスレンズ230の現在位置P0に重複せず、ニア側のみ及びファー側のみにそれぞれ位置しているが、このような場合に限らない。ニア領域R2あるいはファー領域R3をフォーカスレンズ230の現在位置P0に重複させてもよい。この場合、ニア領域R2は中心位置が現在位置P0よりもニア側にシフトしていればよく、ファー領域R3は中心位置が現在位置P0よりもファー側にシフトしていればよい。ニア領域R2はフォーカスレンズ230の現在位置P0よりもニア側の位置を含む領域であればよく、ファー領域R3はフォーカスレンズ230の現在位置P0よりもファー側の位置を含む領域であればよい。
【0105】
また、上記の各実施形態では、図6Aの通常のオートフォーカスにおいて、ステップS8の合焦動作を行う際に検出範囲R1において最も高い評価値を示す位置に合焦する場合について説明したが、このような場合に限らず、その他の合焦方法を用いてもよい。例えば、現在位置P0に最も近いピーク位置に合焦してもよい。図6Aの例では、現在位置P0に最も近いピーク位置はピーク位置P10であるが、ピーク位置P11,P12等、その他のピーク位置が現在位置P0に最も近いピーク位置であってもよい。
【0106】
また、上記の各実施形態では、ニア/ファーシフト操作の一例としてFn釦136,137の押下操作を例示した。ニア/ファーシフト操作は、特にこれに限らず、種々のユーザ操作であってもよい。例えば、ニア/ファーシフト操作は、操作部130における各種釦に対するダブルクリック、同時押し、あるいは長押し等であってもよい。また、ニア/ファーシフト操作は、レリーズ釦131の半押し操作と、MFリング又はダイヤル等の操作との組み合わせであってもよい。さらに、例えばメニュー設定において、レリーズ釦131の半押し操作が、ニアシフト操作及びファーシフト操作のいずれかに設定可能であってもよい。
【0107】
また、上記の各実施形態では、ニア/ファーシフト機能を用いる指示がユーザ操作によって行われたが、当該指示はユーザ操作に限らず、例えばデジタルカメラ1における自動判定によって行われてもよい。例えば、カメラ制御部140は、図4Aのようなスルー画像が得られた際に、柵などの特定の障害物53に合焦したことを画像認識によって検出して、自動的にファーシフト機能を用いるように指示可能である。こうした画像認識は、例えば機械学習により容易に実現可能である。また、ユーザがニア/ファーシフト操作を用いた履歴などの操作ログをフラッシュメモリ142等に蓄積しておき、操作ログに基づき自動的にニア/ファーシフト機能の指示を行ってもよい。
【0108】
また、上記の各実施形態では、ニアシフト機能とファーシフト機能との双方が実現される例を説明した。本実施形態のデジタルカメラ1では、ニアシフト機能とファーシフト機能との一方が実装されてもよい。これによっても、図3A又は図4Aのような状況下で、ユーザ所望の被写体51に合焦させ易くすることができる。
【0109】
また、上記の各実施形態では、撮像装置の一例としてレンズ交換式のデジタルカメラについて説明したが、本実施形態の撮像装置は、特にレンズ交換式ではないデジタルカメラであってもよい。また、本開示の思想は、デジタルカメラのみならず、ムービーカメラであってもよいし、カメラ付きの携帯電話或いはPCのような種々の撮像機能を有する電子機器にも適用可能である。
【0110】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0111】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0112】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示は、合焦動作を行う各種の撮像装置に適用可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7