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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】照明用通信障害推定システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/19 20200101AFI20230602BHJP
【FI】
H05B47/19
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019199174
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021072228
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 薫
(72)【発明者】
【氏名】中村 重雄
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050051(JP,A)
【文献】特開2016-178014(JP,A)
【文献】特開2011-075262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信が可能な1つ以上の照明器具と、
前記1つ以上の照明器具に対し無線通信で制御するコントローラと、を備える無線制御照明システムにおいて、通信障害源の位置を推定する、通信障害推定システムであって、
前記1つ以上の照明器具と、
前記コントローラと、
表示部を有し前記コントローラと通信する表示端末と、を備え、
前記コントローラは、前記1つ以上の照明器具から受信した信号の電波強度を測定し、測定した前記電波強度を記憶し、
前記表示端末または前記コントローラは、前記電波強度の測定結果と、前記1つ以上の照明器具の位置情報とから前記通信障害源の位置を推定し、
前記表示端末は、前記表示部において、前記通信障害源の位置の推定結果を表示する、
照明用通信障害推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照明用通信障害推定システムにおいて、
前記表示端末または前記コントローラは、前記電波強度の最小値と最大値との差である変動値が所定値以上となることが所定回数以上継続したときに、前記通信障害源の位置を推定する、
照明用通信障害推定システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の照明用通信障害推定システムにおいて、
前記コントローラは、前記1つ以上の照明器具に信号の送信を要求する指令信号を定期的に送信し、受信した信号の前記電波強度を測定し、測定した前記電波強度を記憶する、
照明用通信障害推定システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の照明用通信障害推定システムにおいて、
前記表示端末または前記コントローラは、前記通信障害源の有無を、前記1つ以上の照明器具の応答信号の有無によって判断し、前記通信障害源があると判断した場合に、前記通信障害源の位置を推定し、
前記表示端末は、前記表示部において、前記通信障害源の位置の推定結果を表示する、
照明用通信障害推定システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の照明用通信障害推定システムにおいて、
前記表示端末は、ユーザからの入力を受け付け可能であり、受け付けた入力に応じて設備アイコンの位置を含む情報を設定可能であり、設定された前記設備アイコンに対応する設備について前記1つ以上の照明器具から前記コントローラで受信する信号の前記電波強度のノイズ幅を学習因子として記憶可能に構成される、
照明用通信障害推定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の照明用通信障害推定システムにおいて、
前記表示端末は、
前記1つ以上の照明器具から送信される電波の回折特性値を入力可能に構成され、
前記電波強度の測定結果と、前記1つ以上の照明器具の位置情報と、前記回折特性値の入力値とから、前記通信障害源の位置及び大きさを推定し、前記表示部において、前記通信障害源の位置及び大きさの推定結果を表示する、
照明用通信障害推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明用通信障害推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、無線通信が可能な複数の照明器具と、照明器具と無線通信する下位コントローラと、下位コントローラと有線で通信する上位コントローラとを備える無線制御照明システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-40776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信で照明器具が制御される従来の無線制御照明システムにおいて、周辺の設備や機器の影響等により電波の状況が悪化して、照明器具を制御できない、または制御が遅延する等の無線通信異常が生じる場合がある。その異常が生じた場合には、電波状況の悪化の要因である通信障害源を特定する必要がある。しかしながら、通信障害源による無線通信異常が常には生じていない場合、作業者が現場でスペクトラムアナライザ等の測定器具を用いて確認してもその異常を確認できず通信障害源を特定できない可能性がある。これにより、異常発生の度に人材派遣のコストがかかる問題がある。また、常時、専用の測定器具を設置して異常を監視する場合には、監視のためのコストが発生する。
【0005】
本開示の目的は、無線制御照明システムにおいて、専用の測定器具を用いることなく、かつ、人材派遣のコストを抑制して、通信障害源の位置を確認しやすい照明用通信障害推定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である照明用通信障害推定システムは、無線通信が可能な1つ以上の照明器具と、1つ以上の照明器具に対し無線通信で制御するコントローラと、を備える無線制御照明システムにおいて、通信障害源の位置を推定する、通信障害推定システムであって、1つ以上の照明器具と、コントローラと、表示部を有しコントローラと通信する表示端末を備え、コントローラは、1つ以上の照明器具から受信した信号の電波強度を測定し、測定した電波強度を記憶し、表示端末またはコントローラは、電波強度の測定結果と、1つ以上の照明器具の位置情報とから通信障害源の位置を推定し、表示端末は、表示部において、通信障害源の位置の推定結果を表示する、照明用通信障害推定システムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様である照明用通信障害推定システムによれば、無線制御照明システムにおいて、専用の測定器具を用いることなく、かつ、人材派遣のコストを抑制して、通信障害源の位置を確認しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例の照明用通信障害推定システムを適用して、無線照明制御システムの通信障害源を確認する状態を示す図である。
図2】実施形態の一例の照明用通信障害推定システムにおいて、照明器具、下位コントローラ、上位コントローラ、及び表示端末の構成を示すブロック図である。
図3】実施形態において、照明用通信障害推定方法を示すシーケンス図である。
図4】実施形態において、一部の照明器具について、下位コントローラで記憶された電波強度の測定結果のリストを示す図である。
図5】実施形態において、表示端末で表示される通信障害源の推定位置を含む照明器具のマップを示す図である。
図6】実施形態の別例において、一部の照明器具について、2つの下位コントローラで記憶された電波強度の測定結果のリストを示す図である。
図7】実施形態の別例において、表示端末で表示される通信障害源の推定位置を含む照明器具のマップを示す図である。
図8】実施形態の別例において、照明用通信障害推定方法を示すフローチャートである。
図9】実施形態の別例において、1つの下位コントローラがあるときに複数の照明器具で電波強度の変動値が所定値以上となった場合を示す、図5に対応する図である。
図10】実施形態の別例において、照明用通信障害推定方法を示すフローチャートである。
図11】実施形態の別例において、1つの下位コントローラがあるときに複数の照明器具からの応答なしが所定時間以上継続した場合を示す、図5に対応する図である。
図12】実施形態の別例において、表示端末の表示画面における設備アイコンについての情報を入力するときの表示を示す図である。
図13】実施形態の別例において、照明器具から送信される電波の回折特性値で通信障害源の大きさを変更可能とする状態を示している、図9に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る照明用通信障害推定システムの実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下で説明する実施形態に限定されない。
【0010】
本開示のシステムの主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示のシステムの主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって上記機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、集積回路(IC)または大規模集積回路(LSI)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されていてもよく、複数のチップに設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよく、複数の装置に備えられていてもよい。また、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記憶媒体に記憶される。プログラムは、記憶媒体に予め格納されていてもよく、インターネット等を含む広域通信網を介して記憶媒体に供給されてもよい。
【0011】
図1は、実施形態の一例の照明用通信障害推定システム10を適用して、無線照明制御システムの通信障害源を確認する状態を示す図である。以下、照明用通信障害推定システム10は推定システム10と記載し、無線照明制御システムは、照明システムと記載する。まず、照明システムを説明する。
【0012】
照明システムは、無線通信が可能な複数の照明器具12と、複数の照明器具12に対し無線通信で制御する複数の下位コントローラ30と、各下位コントローラ30と有線で通信可能な上位コントローラ40とを備える。
【0013】
照明システムが備える照明器具12の数は1つ以上であれば特に限定されない。複数の照明器具12のそれぞれは、例えばシーリングライトである。照明器具12は、ダウンライト、スポットライト等の他の種類としてもよい。
【0014】
実施形態の推定システム10は、このような照明システムに適用して、照明システムにおいて、通信障害源の位置を推定する。推定システム10は、複数の照明器具12と、複数の下位コントローラ30と、上位コントローラ40と、表示端末50とを含んで構成される。このため、照明システムの構成要素である複数の照明器具12と、複数の下位コントローラ30と、上位コントローラ40とは、推定システム10の構成要素でもある。
【0015】
図2は、推定システム10において、照明器具12、下位コントローラ30、上位コントローラ40、及び表示端末50の構成を示すブロック図である。図2では、照明器具12、下位コントローラ30をそれぞれ1つずつ示している。複数の照明器具12は、スイッチ102を介して外部交流電源103に接続される。複数の照明器具12は、部屋の天井に例えば整列して取り付けられる。
【0016】
複数の下位コントローラ30は、部屋の天井に配置される。例えば、後述の図5では、照明器具12の配置図の表示が示される。この配置図では、照明器具12を丸のマークMで示し、下位コントローラ30を太線の丸のマークGで示している。図5から理解されるように、下位コントローラ30は、複数の照明器具12の配置領域の内部において、各照明器具12と異なる位置に配置される。
【0017】
各照明器具12は、1つ以上の下位コントローラ30と無線通信が可能である。下位コントローラ30は、無線コントローラまたは無線アダプタである。下位コントローラ30は、複数の照明器具12に対し、定期的に、応答信号の送信を要求する指令信号を送信し、これに応じて、複数の照明器具12は、定期的に応答信号を、下位コントローラ30に送信する。応答信号に照明器具12の器具番号等の識別情報が含まれていてもよい。下位コントローラ30は、指令信号の送信に応じて受信した信号の電波強度を測定し、測定した電波強度を記憶する。表示端末50は、下位コントローラ30から上位コントローラ40を介して受信した、下位コントローラ30で記憶された電波強度の複数回の測定結果と、その測定結果に対応する複数の照明器具12の位置情報とから通信障害源の位置を推定する。下位コントローラ30は、表示端末50の代わりに、下位コントローラ30で記憶された電波強度の複数回の測定結果と、その測定結果に対応する複数の照明器具12の位置情報とから通信障害源の位置を推定してもよい。下位コントローラ30は、上位コントローラ40を介して、その推定結果を表示端末50に送信する。表示端末50は、後述の操作表示部51において、通信障害源の位置の推定結果を表示する。推定システム10が備える下位コントローラ30の数は1つ以上であれば特に限定されない。
【0018】
各照明器具12は、識別情報(ID)を有する。識別情報は、各照明器具12を他の照明器具12に対して識別できる情報であれば、いかなる情報でもよい。例えば、識別情報は、MACアドレス(Media Access Control address)、バーコード情報、RF(radio frequency)タグ、品番の情報、IPアドレス、または製造ナンバー等である。
【0019】
上位コントローラ40は、複数の照明器具12と同じ部屋に配置される。上位コントローラ40は、照明器具12の点灯制御を行う。上位コントローラ40は、ユーザが照明操作を可能な操作部を有するリモートコントローラとすることができる。本例では、上位コントローラ40を省略してもよい。そのときには、表示端末50と各下位コントローラ30とが直接に無線通信を行って、照明器具12の点灯制御を行う。このとき、下位コントローラ30は、単にコントローラと呼ばれてもよい。
【0020】
照明器具12、下位コントローラ30、上位コントローラ40、及び表示端末50の構成をより詳しく説明する。複数の照明器具12のそれぞれは、電源装置13と光源部20とを含む。電源装置13は、電力変換部14、通信部15、制御部16、及び記憶部17を有し、照明器具12に組み込まれる。電力変換部14は、外部交流電源103から供給される交流電力を直流電力に変換すると共に、後述の制御部16による制御信号に基づいて電圧調整して後述の光源部20に出力する。
【0021】
通信部15は、照明器具12が、下位コントローラ30と無線通信するためのインターフェースである。通信部15は、無線送受信部を含む。
【0022】
制御部16は、通信部15及び電力変換部14を制御する。制御部16は、下位コントローラ30から受信した、応答信号を要求する指令信号に応じて、下位コントローラ30に応答信号を送信させる。制御部16は、例えば、CPUを有し、記憶部17に記憶されたプログラムによって演算処理が実行される。
【0023】
記憶部17は、EEPROM等のROM、RAM、HDD、フラッシュメモリ等により実現される。記憶部17は、受信した操作信号や、照明器具12に設定された識別情報を記憶する機能を有する。
【0024】
光源部20は、電力が供給されることにより、照明光を発する。例えば光源部20は、LED、蛍光灯、ハロゲンランプ等である。
【0025】
複数の下位コントローラ30のそれぞれは、照明側通信部31、設定側通信部32、制御部33、及び記憶部34を有する。本例における以下の説明では、下位コントローラ30が1つである場合を説明する。照明側通信部31は、下位コントローラ30が、照明器具12と無線通信するためのインターフェースである。照明側通信部31は、無線送受信部を含む。設定側通信部32は、下位コントローラ30が、上位コントローラ40と有線で通信するためのインターフェースである。設定側通信部32は、有線の送受信部を含む。
【0026】
制御部33は、照明側通信部31及び設定側通信部32を制御する。制御部33は、例えば、CPUを有し、記憶部34に記憶されたプログラムによって演算処理が実行される。さらに、制御部33は、複数の照明器具12に対し、定期的に、応答信号の送信を要求する指令信号を送信し、それに応じて照明器具12から受信した信号の電波強度を測定する。
【0027】
記憶部34は、ROM、RAM、HDD、フラッシュメモリ等により実現される。記憶部34は、表示端末から受信した操作信号を記憶する。さらに、記憶部34は、照明器具12に無線で指令信号を送信して、その指令信号に対して応答信号があった場合に、その応答信号の内容を記憶する。これにより、下位コントローラ30と通信可能である照明器具12を特定してもよい。さらに、記憶部34は、制御部33で測定された電波強度を記憶する。
【0028】
上位コントローラ40は、照明側通信部41、設定側通信部42、制御部43、及び記憶部44を有する。照明側通信部41は、上位コントローラ40が、下位コントローラ30と有線で通信するためのインターフェースである。設定側通信部42は、上位コントローラ40が、表示端末50と無線通信するためのインターフェースである。設定側通信部42は、無線送受信部を含む。
【0029】
制御部43は、照明側通信部41及び設定側通信部42を制御する。制御部43は、例えば、CPUを有し、記憶部44に記憶されたプログラムによって演算処理が実行される。
【0030】
記憶部44は、ROM、RAM、HDD、フラッシュメモリ等により実現される。記憶部44は、受信した操作信号を記憶する。
【0031】
表示端末50及び上位コントローラ40の間、下位コントローラ30及び照明器具12の間は、それぞれ920MHz帯または2.4GHz帯の周波数を利用した特定小電力無線通信、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信により通信可能に接続される。
【0032】
表示端末50は、端末装置であり、例えば信号を送受信する機能と、表示画面とを有するタブレットPCや、スマートフォンである。表示端末50は、作業者W(図1)が持って、照明器具12の近くの通信障害源の位置を確認するために用いられる。
【0033】
表示端末50は、操作表示部51、通信部52、制御部53、及び記憶部54を含む。操作表示部51は、表示部に相当し、表示画面を有する。操作表示部51は、例えば表示端末50がスマートフォンである場合に表示画面であるタッチパネルスクリーンを有する。表示端末は、表示部と操作部とを別に持つ構成としてもよい。
【0034】
表示端末50は、上位コントローラ40と無線通信可能であり、上位コントローラ40を介して下位コントローラ30と通信する。通信部52は、表示端末50が上位コントローラ40と通信するためのインターフェースである。
【0035】
制御部53は、通信部52を制御する機能と、操作表示部51の表示状態を制御する機能を有する。制御部53は、例えば、CPUを有し、記憶部54に記憶されたプログラムによって演算処理が実行される。
【0036】
記憶部54は、ROM、RAM、HDD、フラッシュメモリ等により実現される。記憶部54には、制御部53を動作させるためのアプリケーションプログラムが記憶される。ユーザは、制御部53にアプリケーションプログラムを実行させることで、通信障害源の位置を推定する推定方法を実行させ、操作表示部51の表示画面のマップ上において、通信障害源を推定結果と対応する位置に表示させることができる。
【0037】
図3は、実施形態において、照明用通信障害推定方法を示すシーケンス図である。図3では、下位コントローラ30と表示端末50とが直接通信するように示しているが、実際には、下位コントローラ30と表示端末50とは上位コントローラ40を介して通信する。なお、下位コントローラ30と表示端末50とが直接無線で通信する構成としてもよい。図3では、複数の照明器具12を器具番号1-1,1-2,1-3・・・と共に示している。
【0038】
まず、照明システムの使用時において、図3のA1で示すように、下位コントローラ30は、下位コントローラ30と通信可能な複数の照明器具12に対し、状態監視要求信号として、応答信号の送信を要求する信号を送信する。例えば、器具番号1-1の照明器具12に状態監視要求信号を送信する。器具番号1-1の照明器具12は、下位コントローラ30に応答信号を送信する。下位コントローラ30は、この応答信号の有無を確認し、応答信号があったときにその電波強度を測定し、記憶部34(図4)に照明器具12の器具番号、位置情報としての座標情報、及び応答信号の確認時刻に関連付けて、応答信号の有無、及び電波強度の測定結果の情報を記憶し蓄積する。ここで「確認時刻」は、時、分だけでなく、日付も含む意味である。電波強度は、例えばRSSI値(dB)である。下位コントローラ30には、記憶部34に、器具番号と関連付けて座標情報が記憶されていてもよい。座標情報は、水平方向である横方向に沿うX軸方向と、水平方向であり、横方向と直交する縦方向に沿うY軸方向とについてのXY座標である。
【0039】
下位コントローラ30は、下位コントローラ30と通信可能な他の照明器具12として、他の器具番号1-2,1-3・・・の照明器具12について、器具番号1-1の照明器具12の場合と同様に、状態監視要求信号を順に送信し、他の器具番号の照明器具12からも、下位コントローラ30に応答信号が送信される。下位コントローラ30は、それらの応答信号の有無を順に確認し、応答信号があったときにその電波強度を測定し、記憶部34に照明器具12の器具番号、座標情報、及び応答信号の確認時刻に関連付けて、応答信号の有無、及び電波強度の測定結果の情報を記憶し蓄積する。
【0040】
下位コントローラ30での複数の照明器具12に対する状態監視要求信号の送信、応答信号の有無の確認、電波強度の測定、及び記憶部への蓄積は、定期的に(例えば1分毎に)実行される。
【0041】
照明システムでの通信障害が生じたときに、通信障害の確認作業を行う作業者Wは表示端末50を持って、通信障害確認用のアプリケーションプログラムを起動させる。その起動によって、図3のA2で示すように、表示端末50は、下位コントローラ30に、情報の送信を要求する指令信号を送信する。下位コントローラ30は、その指令信号に応じて、図3のA3で示すように、通信可能な全部の照明器具12について、記憶部34に記憶され、照明器具12の器具番号、座標情報、及び応答信号の確認時刻に関連付けられた、応答信号の有無、及び電波強度の測定結果の情報を、表示端末50に送信する。
【0042】
図3のA4で示すように、表示端末50は、その情報から通信障害源の位置を推定する解析を行う。具体的には、応答信号の有無、及び電波強度の測定結果と、対応する照明器具12の位置情報である座標情報とから通信障害源の位置を推定する。
【0043】
図4図5を用いて通信障害源の位置の推定方法を説明する。図4は、実施形態において、一部の照明器具12について、下位コントローラ30で記憶された電波強度(RSSI値)の測定結果のリストを示す図である。図4に示すように、表示端末50は、下位コントローラ30から送信された情報に基づいてリストを作成可能である。このリストでは、照明器具12の器具番号に関連付けて、XY座標と、確認時刻と電波強度(RSSI値)または応答有無との関係が表される。リストで電波強度が示される場合は応答があったことを表す。図4の例では、器具番号1-2の7/31の12:00-12:02で電波強度の履歴において、最大値と最小値との差である変動値が所定値以上となったことを砂地で示している。器具番号1-2の電波強度の変動値が所定値以上となる状態は、実際には12:15まで続いている。図4では、下位コントローラ30が通信可能な照明器具12のうち、一部の照明器具12について示しているが、通信可能な他の照明器具12についても同様にリストが作成される。
【0044】
図5は、実施形態において、表示端末50で表示される通信障害源の推定位置を含む照明器具12のマップを示す図である。図5のマップは、下位コントローラ30が通信可能な全部の照明器具12についての図4のようなリストから作成される。図5において、横軸はX軸を示し、縦軸はY軸を示している。複数の円で示すマークMは照明器具12を表す。太線の円で示すマークGは、下位コントローラ30を表す。マークMの下に示すdB値は初回測定時のRSSI値を表す。
【0045】
上記のように7/31の12:00-12:15の時間帯に器具番号1-2の照明器具12のRSSI値は他の時間帯に比べて大きく変動し、記憶しているRSSI値の最大値と最小値との差である変動値が所定値以上となり、それが所定回数以上、例えば2回以上継続した。表示端末50は、RSSI値の変動値が所定値以上となることが所定回数以上継続したときに、電波遮蔽物としての通信障害源があると判断し、通信障害源の位置を推定する。下位コントローラ30で受信した信号の電波強度の変動値が大きい照明器具12は、器具番号1-2の照明器具であり、図5では、内側を砂地で示す円で表している。これにより、表示端末50は、下位コントローラ30を表すマークGと、器具番号1-2の照明器具12を表すマークMとを結ぶ直線L上の中間部に通信障害源があると推定する。表示端末50は、表示画面における複数の照明器具12の配置図であるマップ上において、位置を推定した通信障害源を、内側に砂地がある矩形状のマークPにより、複数の照明器具12を表す複数のマークMの位置との関係で、推定結果を表す位置に表示する。これにより、表示端末50は、表示画面において、通信障害源の位置の推定結果を表示する。さらに、表示端末50は、このマークPの付近に、電波強度の変動値が所定値以上となった時間を、開始時間から終了時間である12:00-12:15と表示する。これにより、図3にA5で示すように、表示端末50の表示画面には、通信障害源の推定位置が表示される。
【0046】
上記では、表示端末50が、複数の照明器具12についての電波強度の測定結果と、対応する照明器具12の位置情報とから通信障害源の位置を推定する場合を説明した。一方、図3のカッコ内にA6で示すように、下位コントローラ30が、表示端末50の代わりに、複数の照明器具12についての電波強度の測定結果と、対応する照明器具12の位置情報とから通信障害源の位置を推定してもよい。この場合には、表示端末50から下位コントローラ30に、情報の送信を要求する指令信号が送信されることに応じて、下位コントローラ30から表示端末50に、通信障害源の位置の推定結果を含む情報が送信される。
【0047】
上記の推定システム10によれば、照明システムにおいて、専用の測定器具を用いることなく、かつ、人材派遣のコストを抑制して、通信障害源の位置を確認しやすい。具体的には、作業者Wは、通信障害が発生したときに、1回現場に行って表示端末50を操作すれば、そのときに通信障害が発生した場合でも、過去の履歴で通信障害があったことを確認できると共に、その通信障害源の位置を確認できるので、通信障害源の位置を確認しやすい。
【0048】
さらに、表示端末50は、下位コントローラ30で受信した電波強度の変動値が所定値以上となることが所定回数以上継続したときに、電波遮蔽物としての通信障害源があると判断し、通信障害源の位置を推定するので、誤検出による推定を抑制できる。これにより、通信障害源の推定精度を高くできる。
【0049】
図6は、実施形態の別例において、一部の照明器具12について、2つの下位コントローラ30で記憶された電波強度の測定結果のリストを示す図である。図7は、実施形態の別例において、表示端末50で表示される通信障害源の推定位置を含む照明器具12のマップを示す図である。
【0050】
本例の構成の場合には、図7に太線で円の内側に1、2を付したマークG1,G2で示すように、複数の照明器具12の配置領域内の異なる位置に、2つの下位コントローラ30が配置される。マークG1は識別番号が1の下位コントローラ30を示し、マークG2は識別番号が2の下位コントローラ30を示す。各下位コントローラ30は、複数の照明器具12と通信可能である。そして、各下位コントローラ30で、複数の照明器具12から受信した信号の電波強度を測定し、測定した電波強度を記憶する。表示端末50は、2つの下位コントローラ30から取得した、複数の照明器具12についての電波強度の測定結果と、対応する照明器具12の位置情報とから通信障害源の位置を推定する。
【0051】
図6は、図4と同様に、表示端末50が、下位コントローラ30から送信された情報に基づいて作成されたリストを示している。このリストでは、識別番号1,2の下位コントローラ30で記憶された情報によって、上側と下側とで分けられており、左端の下位コントローラ30の欄の1、2がそれぞれ識別番号1、2を表す。リストの他の部分が表す意味は、図4の場合と同様である。図6の例では、識別番号が1の下位コントローラ30についての器具番号1-23の照明器具、識別番号が2の下位コントローラ30についての器具番号1-22,1-23の照明器具のそれぞれで、7/31の12:00-12:02で電波強度の履歴において変動値が所定値以上となったことを砂地で示している。器具番号1-22,1-23の電波強度の変動値が所定値以上となる状態は、実際には12:15まで続いている。図6では、各下位コントローラ30が通信可能な照明器具12の一部の照明器具について示しているが、通信可能な他の照明器具12についても同様にリストが作成される。
【0052】
図7のマップは、表示端末50において、各下位コントローラ30が通信可能な全部の照明器具12についての図6のようなリストから作成される。上記のように7/31の12:00-12:15の時間帯に器具番号1-22,1-23の照明器具のRSSI値は他の時間帯に比べて大きく変動し、記憶しているRSSI値の最大値と最小値との差である変動値が所定値以上となり、それが所定回数以上継続した。表示端末50は、これにより、電波遮蔽物としての通信障害源があると判断し、通信障害源の位置を推定する。2つの下位コントローラ30の少なくとも一方で受信した信号の電波強度の変動値が大きい照明器具12は、器具番号1-22,1-23の照明器具12であり、図7では、内側を砂地で示す円のマークMで表している。これにより、表示端末50は、各下位コントローラ30と器具番号が1-22または1-23の照明器具12とを結ぶ直線上の中間部に通信障害源があると推定する。図6では、識別番号が1の下位コントローラ30について器具番号1-23の照明器具12での電波強度の変動値が最大となったので、マークG1と1-23のマークMとを直線L1で結んでいる。また、識別番号が2の下位コントローラ30について器具番号1-22の照明器具12での電波強度の変動値が最大となったので、マークG2と1-22のマークMとを直線L2で結んでいる。表示端末50は、直線L1と直線L2との交点に通信障害源があると推定する。表示端末50は、表示画面のマップ上において、通信障害源を、内側に砂地がある矩形状のマークPで、推定結果を表す位置に表示する。さらに、表示端末50は、このマークPの付近に、電波強度の変動値が所定値以上となった時間を、開始時間から終了時間である12:00-12:15と表示する。
【0053】
本例の場合には、2つの下位コントローラ30からの情報により通信障害源の位置を推定するので、推定精度をより高くできる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【0054】
図8は、実施形態の別例において、照明用通信障害推定方法を示すフローチャートである。本例の場合には、図5のように下位コントローラ30で受信した電波強度の変動値が所定値以上となる照明器具12である変動照明が1つの場合と、変動照明が複数の場合とで、通信障害源の推定方法を切り換える。具体的には、まず、図8のステップS1において、下位コントローラ30は、複数の照明器具12に、状態監視要求信号を送信し、電波強度の監視を開始する。その送信に応じて複数の照明器具12から応答信号が送信されるので、ステップS2において、下位コントローラ30は、応答信号の有無を確認し、応答信号があったときにその電波強度を測定し、記憶部34(図2)に照明器具12の器具番号、座標情報、及び応答信号の確認時刻に関連付けて、応答信号の有無、及び電波強度の測定結果の情報を記憶し(格納し)蓄積する。上記の応答信号の有無、及び電波強度の測定結果の情報は、下位コントローラ30から表示端末50に送信される。
【0055】
ステップS3では、表示端末50が、各照明器具12について、下位コントローラ30で取得した電波強度の変動値が所定値以上となったか否かを判定する。ステップS3の判定が肯定判定(YES)の場合には、ステップS4に移行し、ステップS3の判定が否定判定(NO)の場合には、ステップS1に戻る。なお、ステップS3において、表示端末50が、各照明器具12について、下位コントローラ30で取得した電波強度の変動値が所定値以上となったことが所定回数以上継続したか否かを判定してもよい。
【0056】
ステップS4では、表示端末50は、上記の変動照明が複数か否かを判定する。ステップS4の判定が否定判定(NO)の場合には、ステップS5に移行する。ステップS5では、表示端末50は、変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ直線上の中間に電波遮蔽物としての通信障害源があると推定し、表示画面のマップ上に、変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ直線上に通信障害源があるように表示する。さらに、表示端末50は、その表示において、通信障害源の推定位置の近くに電波強度の変動値が所定値となった開始時間と終了時間とを、該当時間として表示し処理を終了する。これにより、図5の場合のように、変動照明が1つのときの通信障害源の位置の推定結果が表示端末50に表示される。
【0057】
一方、ステップS4の判定が肯定判定(YES)の場合には、ステップS6において、表示端末50が、複数の変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ全部の直線が、一部で重複しているか否かを判定する。全部の直線が重複している場合には、複数の変動照明のうち、下位コントローラ30と最も近い位置の変動照明と下位コントローラ30との間に通信障害源があると推定できる。このため、ステップS6の判定が肯定判定(YES)の場合には、ステップS7に移行する。ステップS7では、表示端末50は、変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ直線のうち、最短距離の直線上に電波遮蔽物としての通信障害源があると推定し、表示画面のマップ上において、通信障害源を推定結果を表す位置に表示すると共に、その付近に該当時間を表示し処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS6の判定が否定判定(NO)の場合には、複数の変動照明と下位コントローラ30との間の通信を邪魔するように通信障害源が広がっているか、または複数の通信障害源があるか、またはその両方があると推測される。このため、ステップS8において、表示端末50は、複数の変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ複数の直線上の中間位置に通信障害源をまたがって配置できる場合にはその位置で通信障害源が広がっていると推定する。また、表示端末50は、複数の変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ複数の直線上の中間位置に通信障害源をまたがって配置できない場合には、複数の直線上の中間位置に、複数の通信障害源があると推定する。そして、表示端末50は、表示画面のマップ上において、通信障害源を推定結果を表す位置に表示すると共に、その付近に該当時間を表示し処理を終了する。
【0059】
図9は、実施形態の別例において、1つの下位コントローラ30があるときに複数の照明器具12で電波強度の変動値が所定値以上となった場合を示す、図5に対応する図である。図9の表示画面を有する表示端末50では、電波遮蔽物としての通信障害源の位置が、図8の推定方法により推定され、その推定結果に応じて表示画面で表示する。
【0060】
このとき、図8のステップS4において、変動照明が複数あると判定される。図9では、円の内側を砂地で示した複数のマークMが変動照明に相当する。そして、図8のステップS6で複数の変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ全部の直線が重複してはいないので、ステップS8に移行する。そして、ステップS8で、表示端末50は、複数の変動照明と下位コントローラ30とを結ぶ複数の直線L3,L4上の中間位置と、複数の直線L5,L6上の中間位置とにそれぞれ通信障害源をまたがって配置できるので、その位置で通信障害源が広がっていると推定する。また、表示端末50は、複数の変動照明と下位コントローラ30とを結ぶすべての直線L3,L4,L5,L6上の中間位置に通信障害源をまたがって配置できないので、複数の通信障害源が分かれて配置されると推定する。これにより、表示端末50は、図9に示すように、表示画面のマップ上に広がるように配置された2つの通信障害源を表すマークP1,P2によって、通信障害源の推定位置を表示する。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【0061】
図10は、実施形態の別例において、照明用通信障害推定方法を示すフローチャートである。本例の場合には、照明器具12から下位コントローラ30への応答信号の有無の監視によって、電波を発生する電波妨害物としての通信障害源の位置を推定する。このために、表示端末50は、下位コントローラ30から送信された情報に基づいて、複数の照明器具12の応答信号の有無によって通信障害源の有無を判断し、通信障害源があると判断した場合に、通信障害源の位置を推定する。表示端末50は、操作表示部51(図2)において、通信障害源を推定結果を表す位置に表示する。
【0062】
これについて、図10のフローチャートを用いてより具体的に説明する。まず、ステップS11では、まず、下位コントローラ30は、複数の照明器具12に、状態監視要求信号を送信し、応答有無の監視が開始される。その送信に応じて複数の照明器具12から応答信号が送信されるので、ステップS12において、下位コントローラ30は、応答信号の有無を確認する。本例では、上記の各例と異なり、応答信号があったときの電波強度の測定を省略してもよい。下位コントローラ30は、記憶部34(図2)に照明器具12の器具番号、座標情報、及び応答信号の確認時刻に関連付けて、応答信号の有無の情報を記憶し(格納し)蓄積する。
【0063】
ステップS13では、表示端末50が、各照明器具12について、応答なしが所定時間以上継続したか否かを判定する。ステップS13の判定が肯定判定(YES)の場合には、ステップS14に移行し、ステップS13の判定が否定判定(NO)の場合には、ステップS11に戻る。ステップS13では、表示端末50は、各照明器具12について、下位コントローラ30からの状態監視要求信号の送信に対し応答がなかった回数が所定値以上か否かを判定してもよい。
【0064】
ステップS14では、表示端末50は、応答がなかった照明器具12である応答なし照明が複数か否かを判定する。ステップS14の判定が肯定判定(YES)の場合には、ステップS15に移行する。ステップS15では、表示端末50は、複数の応答なし照明において、一群となるように配置される応答なし照明からなる応答なし照明群の中央に電波妨害物としての通信障害源があると推定し、表示画面のマップ上において、通信障害源を推定結果と対応する位置に表示する。さらに、表示端末50は、その表示において、通信障害源の位置の付近に、応答なしの開始時間と終了時間とを、該当時間として表示し処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS14の判定が否定判定(NO)の場合には、ステップS16において、表示端末50が、応答なし照明の位置またはその付近に電波遮蔽物としての通信障害源があると推定し、表示画面のマップ上の応答なし照明の位置に通信障害源があるように表示すると共に、その付近に該当時間を表示し処理を終了する。
【0066】
図11は、実施形態の別例において、1つの下位コントローラ30があるときに複数の照明器具12からの応答なしが所定時間以上継続した場合を示す、図5に対応する図である。図11の表示画面では、電波妨害物としての通信障害源の位置が、図10の推定方法により推定され、その推定結果に応じて表示される。
【0067】
このとき、図10のステップS14において、応答なし照明が複数あると判定される。図11では、円の内側を砂地で示した複数のマークMが応答なし照明に相当する。そして、図11のステップS15で、表示端末50は、複数の応答なし照明群の中央に電波妨害物としての通信障害源があると推定し、表示画面には、2つの通信障害源を表す、内側に砂地を示す矩形のマークQ1,Q2の推定位置を表示する。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【0068】
図12は、実施形態の別例において、表示端末50の表示画面における設備アイコンについての情報を入力するときの表示を示す図である。図12に示すように、本例の場合には、表示端末50は、ユーザのタッチ操作等により、設備アイコンについての情報の入力を受け付け可能である。設備アイコンは、PC、プリンタ、ネットワーク機器等の電気機器、または金属製の本棚、キャビネット等の金属製設備であり、通信障害源となりうる設備を表すアイコンである。ユーザは、表示端末50の操作表示部51の入力部51a~51fにおいて、設備アイコンについての情報として、設備の縦寸法、横寸法、高さ寸法、配置位置、素材を入力可能である。入力部51d、51eには、設備の配置位置として、X方向についての横方向位置、及びY方向についての縦方向位置を入力可能である。表示端末50は、情報として、設備アイコンについての他の情報が入力可能であってもよい。
【0069】
表示端末50は、受け付けた入力に応じて設備アイコンの位置を含む情報として、縦寸法、横寸法、高さ寸法、配置位置、素材の情報を設定可能である。表示端末50に設備アイコンについての情報が入力されたときに、表示端末50は、表示画面のマップ上の対応する位置に、対応する大きさの設備アイコンを表示可能としてもよい。
【0070】
表示端末50は、設定された設備アイコンに対応する設備について1つ以上、例えば複数の照明器具12から下位コントローラ30で受信する信号の電波強度のノイズ幅としての変動幅を、学習因子として記憶可能に構成される。表示端末50には、ユーザとしての作業者によって、照明システムが設置された室内の現在のレイアウトと、上記の各例のいずれか1つによって推定された通信障害源の位置とから、通信障害源に対応する設備の存在を確認されたときに、その設備に対応する情報が入力される。表示端末50は、設備アイコンについての情報が入力された場合に、設定された設備アイコンについての情報と、通信障害源により生じた複数の照明器具12からの電波強度の変動幅とを関連付けて記憶部54(図2)に記憶する。これにより、表示端末50は、設備の設置による電波強度の変動幅を学習因子として記憶部54に記憶可能である。
【0071】
さらに、表示端末50は、図12と同様の表示を有する入力部で、新規の設備導入または設備移動の際の、設備アイコンについての情報の入力を受け付け可能としてもよい。この入力の受付によって、表示端末50は、今回入力された情報と、記憶部54に記憶されていた過去の入力情報とが類似する場合に、設備の設置により今回の照明システムで生じる各照明器具12からの電波強度の変動幅を算出して、マップ上に設備アイコンの位置と共に、算出された電波強度の変動予測とを表示させることができる。このため、作業者が、照明システムが設置された別の環境等で、新規の設備の導入、または設備の移動を検討する場合に、表示端末50で表示された、各照明器具12からの電波強度の変動幅の変動予測を用いて、照明器具12に対する影響が少ない適切な位置に設備を導入または移動しやすくなる。本例において、その他の構成及び作用は、上記の各例のいずれか1つと同様である。
【0072】
図13は、実施形態の別例において、照明器具12から送信される電波の回折特性値で通信障害源の大きさを変更可能とする状態を示している、図9に対応する図である。本例の構成では、表示端末50は、1つ以上、例えば複数の照明器具12から送信される電波の回折特性値を入力可能に構成される。表示端末50は、電波強度の測定結果と、1つ以上の照明器具12の位置情報と、回折特性値の入力値とから、通信障害源の位置及び大きさを推定し、操作表示部51において、通信障害源の位置及び大きさの推定結果を表示する。具体的には、障害物に対する電波の回り込みやすさである回折度合いが大きい場合に、電波の回折特性値は大きい値となる。これにより、回折特性値が大きい場合には、下位コントローラ30と電波強度の変動が大きい照明器具12との間に配置される通信障害源において、下位コントローラ30及び照明器具12間を横切る方向(図13の矢印α1、α2方向)の長さが大きい場合が考えられる。これにより、表示端末50が、電波強度の測定結果と、1つ以上の照明器具12の位置情報とから、通信障害源の位置を推定する場合に、入力された回折特性値を用いて、上記の横切る方向の長さを変化させる。このとき、表示端末50は、回折特性値が大きい場合に横切る方向の長さが大きくなり、回折特性値が小さい場合に横切る方向の長さが小さくなるように、通信障害源の位置及び大きさを推定し、その位置及び大きさを、マークP1,P2の位置及び大きさにより、複数の照明器具12を表す複数のマークMの位置との関係で、操作表示部51に表示する。例えば、表示端末50は、入力された回折特性値が所定値未満の場合には、通信障害源が図13に実線の矩形のマークP1,P2で示すように横斜め方向の長さが短い形状であると推定する。また、表示端末50は、入力された回折特性値が所定値以上の場合には、通信障害源が図13に二点鎖線の矩形で示すようにマークP1,P2が横斜め方向に大きくなっていると推定する。通信障害源の横斜め方向の推定長さは、入力された回折特性値に応じて連続的に変化するようにしてもよい。例えば、図13に二点鎖線β1、β2で示すように、下位コントローラ30で受信される電波強度の変動が小さい照明器具12から電波が送信される場合でも、その電波の回折が大きい場合には通信障害源を回り込んで下位コントローラ30に到達することが推測される。この場合には、通信障害源が大きくなっていると推定される。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成、または図8図9の構成と同様である。
【0073】
上記の各例では、表示端末の表示部において、照明器具のマップ上におけるマークの位置、またはマークの位置及び大きさで、複数の照明器具を表す複数のマークの位置との関係で、通信障害源の位置、または位置及び大きさを表示する場合を説明したが、本開示はこれに限定しない。例えば、上記の各例において、表示端末の表示部において、室内の縦方向及び横方向における通信障害源の推定位置を数値で表示したり、通信障害源の寸法の推定結果を数値で表示してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 照明用通信障害推定システム(推定システム)、12 照明器具、13 電源装置、14 電力変換部、15 通信部、16 制御部、17 記憶部、20 光源部、30 下位コントローラ、31 照明側通信部、32 設定側通信部、33 制御部、34 記憶部、40 上位コントローラ、41 照明側通信部、42 設定側通信部、43 制御部、44 記憶部、50 表示端末、51 操作表示部、51a~51f 入力部、52 通信部、53 制御部、54 記憶部、102 スイッチ、103 外部交流電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13