(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】シミュレーションベースの薬物処置計画
(51)【国際特許分類】
A61N 7/02 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
A61N7/02
(21)【出願番号】P 2019571961
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2018000834
(87)【国際公開番号】W WO2019002943
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-11
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508154863
【氏名又は名称】インサイテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ, ヨアフ
(72)【発明者】
【氏名】デ ピチオット, ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】グリンフェルド, ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ザディカリオ, エーヤル
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509506(JP,A)
【文献】特表2011-529039(JP,A)
【文献】特表2012-524596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0046229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
17/22 - 17/225
A61N 7/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束超音波の源を使用して、着目組織領域内の少なくとも1つの標的BBB領域の処置のための処置プロトコルをコンピュータ的に更新するためのシステムであって、前記システムは、
プロセッサと、
前記処置プロトコルを記憶するメモリであって、前記処置プロトコルは、(i)前記集束超音波の源を使用して、前記標的BBB領域に超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを印加するための少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定と、(ii)前記標的BBB領域の中に注入されるように選択されるマイクロバブルの特性とを規定し、
前記マイクロバブルの特性は、前記マイクロバブルのサイズまたは濃度のうちの少なくとも1つを規定し、前記メモリはさらに、命令を記憶しており、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、
(a)少なくとも部分的に、
前記標的BBB領域における前記マイクロバブルが前記規定されたサイズまたは前記規定された濃度のうちの少なくとも1つを達成するような前記標的BBB領域の中
への前記特性を有する前記マイクロバブル
の注入
および前記マイクロバブルの拡散をコンピュータ的にシミュレートし、
前記マイクロバブルの前記注入および拡散のコンピュータ的なシミュレーションを継続しながら、前記標的BBB領域における
前記規定されたサイズまたは前記規定された濃度のうちの前記少なくとも1つを有する前記マイクロバブルに超音波処理の前記少なくとも1つのシーケンスを
印加することをコンピュータ的に
シミュレートすることによって、前記少なくとも1つの超音波処理パラメータの前記規定された設定およびマイクロバブルの特性に従って処置を電子的にシミュレートすることと、
(b)前記処置の前記シミュレーションに基づいて、前記処置からもたらされる前記標的BBB領域の組織破綻の程度をコンピュータ的に予測することと、
(c)前記予測された組織破綻の程度に少なくとも部分的に基づいて、前記少なくとも1つの超音波処理パラメータおよび前記マイクロバブルの特性のうちの少なくとも1つを調節することによって、前記処置プロトコルをコンピュータ的に更新することと
を行うことを前記プロセッサに行わせる、メモリと
を備え
、
(c)は、
(d)前記予測された組織破綻の程度を標的目的と比較することと、
(e)前記予測された組織破綻の程度が前記標的目的から逸脱する場合、前記処置プロトコルを改変し、前記改変された処置プロトコルに関して(a)-(d)を繰り返すことと
を含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、時間の関数として前記組織破綻の程度を予測するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの超音波処理パラメータは、前記超音波処理のシーケンスにおける少なくとも1つの超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、または方向のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記標的目的は、前記標的BBB領域の開放、前記標的BBB領域における標的灌流速度、前記標的BBB領域における標的組織浸透性、標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、または前記標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値のうちの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し
、
(e)
において、前記処置プロトコルを改変することは、(i)超音波処理の後続シーケンスにおける前記少なくとも1つの超音波処理パラメータまたは(ii)前記マイクロバブルの特性のうちの少なくとも1つを改変
することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記少なくとも1つの超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得するための撮像デバイスをさらに備え、前記プロセッサは、(a)の前に、前記標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別することと、前記識別された3Dボクセルに基づいて、前記処置プロトコルを生成することとを行うようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
複数の標的BBB領域が、前記画像内で識別され、前記処置プロトコルは、それぞれが前記標的BBB領域のうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域に実質的に同時に印加するようにさらに構成される、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域にラウンドロビン方式で連続的に印加するようにさらに構成される、請求項
8に記載のシステム。
【請求項11】
(b)は、前記コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測することと、前記予測されたマイクロバブルキャビテーションに少なくとも部分的に基づいて、前記標的BBB領域の組織破綻の程度を予測することとを含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、(i)前記予測されたマイクロバブルキャビテーションまたは(ii)第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる前記組織破綻の程度のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて、第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる前記少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定を決定するようにさらに構成される、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、(a)の前に、前記画像の標的BBB領域内で複数の組織タイプを識別することと、それぞれが前記識別された組織タイプのうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する前記処置プロトコルを生成することとを行うようにさらに構成される、請求項
7に記載のシステム。
【請求項14】
(b)は、前記標的BBB領域の中へのMRI造影剤の投与およびその拡散をコンピュータ的にシミュレートすることによって、前記組織破綻の程度を予測することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記マイクロバブルの特性は
さらに、作用物質タイプ
、用量、投与速度またはタイミング、または注入部位の場所のうちの少なくとも1つを規定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
検出システムをさらに備え、前記プロセッサは、
(d)超音波トランスデューサに、前記処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを伝送させることと、
(e)前記検出システムに、前記超音波処理からもたらされる実際の処置効果を監視させることと、
(f)前記実験的に監視された処置効果を前記コンピュータ的に予測された組織破綻の程度と比較することと、
(g)前記監視された処置効果と前記予測された組織破綻の程度との間の不一致の検出に応じて、前記処置プロトコルにおける前記少なくとも1つの超音波処理パラメータまたは前記マイクロバブルの特性のうちの少なくとも1つを調節することと
を行うようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
治療剤を前記標的BBB領域の中に投与するための投与システムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、請求項
17に記載のシステム。
【請求項19】
前記組織領域に放射線を印加するための放射線デバイスをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
処置のために少なくとも1つの標的BBB領域を含む標的組織を破綻させるためのシステムであって、前記システムは、
超音波トランスデューサと、
前記標的BBB領域にマイクロバブルを注入するための投与システムと、
プロセッサであって、前記プロセッサは、
(a)少なくとも部分的に、(i)前記標的BBB領域に超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを印加するための少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定と、(ii)前記標的BBB領域の中に注入されるように選択されるマイクロバブルの特性とを規定することによって、処置プロトコルを生成すること
であって、前記マイクロバブルの特性は、前記マイクロバブルのサイズまたは濃度のうちの少なくとも1つを規定する、ことと、
(b)少なくとも部分的に、
前記標的BBB領域における前記マイクロバブルが前記規定されたサイズまたは前記規定された濃度のうちの少なくとも1つを達成するような前記標的BBB領域の中
への前記特性を有する前記マイクロバブル
の注入
および前記マイクロバブルの拡散をコンピュータ的にシミュレートし、
前記マイクロバブルの前記注入および拡散のコンピュータ的なシミュレーションを継続しながら、前記標的BBB領域における
前記規定されたサイズまたは前記規定された濃度のうちの前記少なくとも1つを有する前記マイクロバブルに超音波処理の前記少なくとも1つのシーケンスを
印加することをコンピュータ的に
シミュレートすることによって、前記少なくとも1つの超音波処理パラメータの前記規定された設定およびマイクロバブルの特性に従って処置をシミュレートすることと、
(c)前記標的BBB領域のシミュレートされた処置効果が標的目的を達成するかどうかを決定することと、
(d)該当する場合、前記特性を有する前記マイクロバブルを前記標的BBB領域に導入させ、前記少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定に従って前記超音波トランスデューサをアクティブ化することと
を行うように構成される、プロセッサと
を備える、システム。
【請求項21】
前記プロセッサは、時間の関数として前記処置効果をシミュレートするようにさらに構成される、請求項
20に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの超音波処理パラメータは、前記超音波処理のシーケンスにおける少なくとも1つの超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、または方向のうちの少なくとも1つを含む、請求項
20に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサは、
前記標的目的からの前記シミュレートされた処置効果の逸脱が閾値を超えるかどうかを決定することと、
該当する場合、前記処置プロトコルにおける前記少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定または前記マイクロバブルの特性のうちの少なくとも1つを改変し、前記逸脱が前記閾値を下回るまで(b)および(c)を繰り返すことと
を行うようにさらに構成される、請求項
20に記載のシステム。
【請求項24】
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記プロセッサは、
前記標的目的からの前記シミュレートされた処置効果の逸脱が閾値を超えるかどうかを決定することと、
該当する場合、超音波処理の後続シーケンスにおける前記少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定または前記マイクロバブルの特性のうちの少なくとも1つを改変し、(b)および(c)を繰り返すことと
を行うようにさらに構成される、請求項
20に記載のシステム。
【請求項25】
前記標的目的は、前記標的BBB領域の開放、前記標的BBB領域における標的灌流速度、前記標的BBB領域における標的組織浸透性、標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、または前記標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値のうちの少なくとも1つを含む、請求項
20に記載のシステム。
【請求項26】
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記少なくとも1つの超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である、請求項
20に記載のシステム。
【請求項27】
前記標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得するための撮像デバイスをさらに備え、(a)は、前記標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別することと、前記識別された3Dボクセルに基づいて、前記処置プロトコルを生成することとを含む、請求項
20に記載のシステム。
【請求項28】
複数の標的BBB領域が、前記画像内で識別され、前記処置プロトコルは、それぞれが前記標的BBB領域のうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する、請求項
27に記載のシステム。
【請求項29】
前記プロセッサは、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域に実質的に同時に印加するようにさらに構成される、請求項
28に記載のシステム。
【請求項30】
前記プロセッサは、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域にラウンドロビン方式で連続的に印加するようにさらに構成される、請求項
28に記載のシステム。
【請求項31】
前記プロセッサは、前記コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測し、前記予測されたマイクロバブルキャビテーションに少なくとも部分的に基づいて、前記標的BBB領域の処置効果をシミュレートするようにさらに構成される、請求項
30に記載のシステム。
【請求項32】
前記プロセッサは、(i)前記予測されたマイクロバブルキャビテーションまたは(ii)第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる前記処置効果のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて、第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる前記少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定を決定するようにさらに構成される、請求項
31に記載のシステム。
【請求項33】
(a)は、前記画像の標的BBB領域内で複数の組織タイプを識別することと、それぞれが前記識別された組織タイプのうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する前記処置プロトコルを生成することとを含む、請求項
27に記載のシステム。
【請求項34】
前記プロセッサは、前記標的BBB領域の中にMRI造影剤をコンピュータ的に投与し、その中で拡散を引き起こすことによって、前記処置効果をシミュレートするようにさらに構成される、請求項
20に記載のシステム。
【請求項35】
前記マイクロバブルの特性は
さらに、作用物質タイプ
、用量、投与速度またはタイミング、または注入部位の場所のうちの少なくとも1つを規定する、請求項
20に記載のシステム。
【請求項36】
検出システムをさらに備え、前記プロセッサは、
(e)前記超音波トランスデューサに、前記処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを伝送させることと、
(f)前記検出システムに、前記超音波処理からもたらされる実際の処置効果を監視させることと、
(g)前記監視された処置効果を前記シミュレートされた処置効果と比較することと、
(h)前記監視された処置効果と前記シミュレートされた処置効果との間の不一致の検出に応じて、前記少なくとも1つの超音波処理パラメータまたは前記マイクロバブルの特性のうちの少なくとも1つを調節することと
を行うようにさらに構成される、請求項
20に記載のシステム。
【請求項37】
前記投与システムは、治療剤を前記標的BBB領域の中に導入するようにさらに構成される、請求項
20に記載のシステム。
【請求項38】
前記治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、請求項
37に記載のシステム。
【請求項39】
前記組織領域に放射線を印加するための放射線デバイスをさらに備える、請求項
20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許出願第62/526,548号(出願日2017年6月29日,第62/526,545号(出願日2017年6月29日),第62/526,550号(出願日2017年6月29日),第15/637,163号(出願日2017年6月29日),第62/597,073号(出願日2017年12月11日),および第62/597,076号(出願日2017年12月11日)に対する優先権およびその利益を主張するものである。これらの優先権ドキュメントの全開示は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、概して、薬物処置計画に関する。より具体的には、種々の実施形態は、実行に先立ってキャビテーション強化薬物処置手技をシミュレートおよび調節するためのコンピューティングシステムおよび方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
中枢神経系(CNS)内の細胞の層によって形成される血液脳関門(BBB)は、脳実質から大分子を除外し、それによって、これを毒性異物による損傷から保護する。しかし、BBBはまた、多くの脳疾患を処置することに対する最大の障害のうちの1つを提示する。具体的には、BBBは、薬物および遺伝子治療ベクター等の多くの治療剤が、患者の脳組織に到達することを妨害する。例えば、CNS感染症、神経変性疾患、先天性酵素欠損、および脳癌のための処置は全て、抗生物質、抗レトロウイルス薬、酵素置換物、遺伝子製剤、および抗悪性腫瘍薬等の作用物質の通過を遮断するBBBの能力によって阻害される。したがって、BBBを一時的かつ局所的に「開放」し、これらの作用物質の治療量が罹患した脳組織に到達することを可能にすることが、望ましい。
【0004】
集束超音波(すなわち、約20キロヘルツを上回る周波数を有する音響波)が、神経疾患の処置においてBBBを開放するために利用されている。本効果の基礎となる機構的事象は、超音波パルスに対するマイクロバブルの反応を伴うと考えられ、これは、音響キャビテーションとして公知の一連の挙動をもたらし得る。安定したキャビテーションでは、マイクロバブルは、いくつかのサイクルにわたって音圧希薄化および圧縮とともに膨張および収縮し、そのような作用は、近傍の血管の拡張および収縮をもたらし得る。慣性キャビテーションでは、マイクロバブルは、それらの平衡半径を上回って数倍に膨張し、続けて、周辺組織の慣性に起因して圧潰し得る。両方の場合に、結果として生じる血管の破綻が、BBBの「開放」を誘発する。
【0005】
典型的には、マイクロバブルは、患者の脳の中または局所的に標的BBB領域の中のいずれかに、全身注入によって導入される。処置における注入の回数および注入されるマイクロバブルの量は、限定される(例えば、https://www.drugs.com/dosage/definity.html参照)。これは、特に、標的腫瘍組織が1つを上回るBBBの領域が開放されることを要求する比較的に広い面積に及ぶとき、および/または複数の標的腫瘍が処置のために識別されるとき、マイクロバブル誘発BBB開放に課題を提示する。
【0006】
加えて、制御できないマイクロバブルキャビテーション事象が、BBBおよびその周囲に所望されない損傷をもたらし得る。例えば、BBBの一部を形成する細胞をアブレーションすることは、BBB機能を損なうだけではなく、また、周辺組織における不要な細胞死または壊死を引き起こし得る。BBB破綻の間にマイクロバブルキャビテーションの所望されない効果を最小限にするために、1つの従来のアプローチは、各超音波処理後にマイクロバブルの音響応答を測定する受動的キャビテーション検出器を利用する。しかしながら、BBB破綻効果は、他のマイクロバブル特性(例えば、サイズ、濃度、または投与プロファイル)からももたらされ得る。例えば、BBB開口部の大きさおよび数は、マイクロバブルサイズおよび/または濃度と相関し得る。さらに、マイクロバブルに印加される超音波パルスの音響性質(例えば、空間的出力分布、時間的出力分布、または集束帯の形状)も、BBB開口部性質(例えば、大きさまたは数)に影響を及ぼし得る。その結果、マイクロバブルを利用するBBB開放手技は、所望の目的を達成するために、詳細な事前計画を要求する複雑性のレベルに到達し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、計画された手技をコンピュータ的にシミュレートするステップと、典型的には、シミュレーションに基づいて、手技を反復的に調節するステップとを伴う処置計画のシステムおよび方法を対象とする。処置は、標的化薬物送達、放射線治療、または任意の他の適用可能な治療方法を広く伴ってもよい。種々の実施形態では、処置は、超音波誘発マイクロバブルキャビテーションによって強化される。その結果、処置手技は、概して、(i)患者の血流の中へのマイクロバブルの投与、(ii)マイクロバブルを超音波処理し、マイクロバブルキャビテーションを引き起こし、それによって、BBBを開放すること、および(iii)BBB開口部を介した標的領域を処置するための治療剤の投与または標的領域を処置するためにイオン化ビームを放出する放射線デバイスのアクティブ化等の複数のステップを伴う。
【0008】
本明細書に説明されるシミュレーションは、概して、1つ以上の着目組織領域および組織領域における1つ以上のマイクロバブル特性をモデル化するステップと、マイクロバブルを超音波処理する効果をコンピュータ的にモデル化するステップと、それに基づいて、典型的には、時間の関数として組織領域に対するマイクロバブルの効果をコンピュータ的に予測するステップとを含む。種々の実施形態では、組織領域は、3次元(3D)画像または一連の2次元(2D)画像スライスに基づくボクセル(すなわち、体積ピクセル)のセットとして表され、標的腫瘍領域、破綻のための標的腫瘍の近傍の標的BBB領域、および、典型的には、非標的組織、例えば、標的腫瘍および標的BBB領域を囲繞する組織および/または超音波トランスデューサと標的腫瘍/BBBとの間に位置する組織を含んでもよい。組織領域は、経時的に(例えば、呼吸サイクルの間に)動的に移動し得、故に、別の実施形態では、組織領域は、4次元(4D)表現、すなわち、ボクセルの3Dセットおよび時間次元としてモデル化される。その結果、処置計画は、4Dにおいて起こり、時間の関数として体積領域を処置するための種々の処置プロファイルパラメータ(例えば、超音波処理性質および/またはマイクロバブル特性)を調節する。シミュレーションは、典型的には、2つのタイプの情報、すなわち、例えば、撮像デバイスを使用してシミュレーションに先立って取得される組織情報(例えば、標的場所および介在組織の性質および範囲)と、印加される音響出力またはエネルギー、マイクロバブルキャビテーション、および結果として生じる標的BBB領域の組織破綻の間の既知の関係とを利用する。
【0009】
種々の実施形態では、マイクロバブル特性は、作用物質タイプ、サイズ、濃度、投与プロファイル(例えば、用量またはタイミング)、および/または血流および標的BBB領域に対する注入部位の場所に基づいてモデル化される。一般に、シミュレーションは、標的BBB領域におけるマイクロバブルに対する超音波トランスデューサの幾何学形状および位置および配向を規定する物理モデルを含む。超音波処理は、例えば、所望の焦点経路に沿って標的BBB領域に向かって指向される一連のパルスを含んでもよい。マイクロバブルの効果を予測するステップは、概して、超音波処理によって誘発されるキャビテーション事象および標的BBB領域においてキャビテーションからもたらされる組織破綻効果をモデル化するステップを含む。「組織破綻効果」とは、組織における浸透性、構造、サイズ、形状、および/または血流速度の変化、および/または、特に、これが組織に浸透する薬物の能力および/または標的腫瘍を効率的に処置するための放射線量に影響を及ぼす際の血管生理機能または形態または組織の他の生理機能または形態の変化を意味する。
【0010】
キャビテーション事象は、各超音波処理パルスに対するマイクロバブルの予期される一時的音響応答に対応する音響応答レベルとして、および/または単一の超音波処理または複数の超音波処理にわたって蓄積される音響エネルギーに対するマイクロバブルの応答を推定する音響応答用量としてシミュレートされてもよい。加えて、標的BBB領域が被る破綻効果は、マイクロバブルキャビテーションの量、マイクロバブル濃度、および/または物理モデルに従って送達される組織領域内の音響出力(または出力密度)およびエネルギーに基づいてシミュレートされてもよい。種々の実施形態では、組織破綻効果は、好適な生物学的パラメータ(例えば、灌流速度または組織浸透性)を用いて捕捉される。例えば、マイクロバブルキャビテーションによって開放されているBBB領域は、破綻させられていないBBB領域よりも高い灌流速度および/または組織浸透性を有し得る。
【0011】
種々の実施形態では、複数のBBB領域内の組織破綻が、シミュレートされる。例えば、標的腫瘍領域は、広い体積に及び得、したがって、複数のBBB領域の破綻が、効率的な処置のために必要である。代替として、複数の標的腫瘍領域が、処置のために識別され、それぞれ、対応するBBB領域が開放されることを要求し得る。故に、処置計画は、異なる標的BBB領域上で連続的に、または実質的に同時に実施される処置をコンピュータ的にシミュレートし、好ましくは、別の領域をシミュレートするときに1つの領域における処置効果を考慮してもよい。例えば、2つの標的BBB領域が、血流内で、一方が他方の上流に位置し得、マイクロバブルキャビテーションを利用する上流の標的BBB領域の破綻は、下流の標的BBB領域に利用可能なマイクロバブルの濃度を低減させ、それによって、破綻の範囲を縮小してもよい。そのような効果は、以前に取得された画像情報(2つのBBB標的領域の場所および血流内のそれらの場所等)および/または物理モデルに基づいて予測されてもよい。加えて、または代替として、撮像情報は、処置に先立って診査段階において収集されてもよく、マイクロバブルが、1つの標的BBB領域内に投与されるが、破壊され、別の標的BBB領域に対する効果が、それへの別の一連の超音波処理の印加後に、それからの音響応答の撮像または検出によって追跡されてもよい。
【0012】
種々の実施形態では、シミュレートされた処置手技の算出されたキャビテーション事象および/または組織破綻効果は、例えば、キャビテーションの標的量、標的BBB領域における組織破綻の標的程度および/または標的サイズ(例えば、標的灌流速度または標的組織浸透性によって特徴付けられる)、および/または非標的領域と関連付けられる安全閾値を含む、所望の標的目的と比較される。コンピュータ予測が所望の標的目的から逸脱する場合、シミュレートされた処置手技は、調節される。調節は、2つの形態のうちの1つをとってもよく、処置計画は、「ロールバック」、すなわち、処置プロファイルパラメータ(例えば、マイクロバブル特性および/または送達される音響出力)の以前の設定に戻るか、またはさらなる超音波処理を含むように延長されるかのいずれかであり得る。例えば、シミュレーションが、標的BBB領域全体を通して組織破綻を生成しない場合、これは、標的BBB領域におけるマイクロバブル濃度/用量を増加させることによって、標的BBB領域における計画された超音波処理のエネルギーまたは強度を増加させることによって、および/または標的BBB領域においてより多くの超音波処理を追加することによって改善されることができる。逆に、非標的領域における算出された組織破綻が、安全閾値を超える場合、処置計画の好適な修正は、標的BBB領域に印加される超音波処理のエネルギーまたは強度の低減および/または計画されたマイクロバブル濃度/用量の低減を含んでもよい。処置計画は、シミュレートされた組織破綻効果が、所望の標的目的から許容可能な量(例えば、10%)を上回ってもはや逸脱しなくなるまで、反復的にシミュレートおよび調節されてもよい。
【0013】
処置は、完了された処置計画に従って実行されてもよい。例えば、超音波トランスデューサは、シミュレーションにおいて決定された超音波処理パラメータ値(例えば、振幅、周波数、位相、方向、または連続的な一連の超音波処理の間の時間間隔)に基づいて動作されてもよい。簡略化された実施例として、シミュレーションは、超音波処理の連続的シーケンスの間の時間間隔を最適化するために実行され、それによって、次の超音波処理シーケンスに先立って、マイクロバブルが標的BBB領域において補充されることを可能にしてもよく、最適化された時間間隔は、処置の間に利用される。いくつかの実施形態では、標的BBB領域に対する処置効果(例えば、組織破綻の程度および/またはサイズ)は、処置の間に(例えば、撮像デバイスまたは任意の好適なアプローチを使用することによって)監視される。監視された処置効果と以前に算出された処置効果との間の不一致が発見される場合、処置計画は、修正されてもよい。不一致は、例えば、シミュレーションの基礎となる物理モデルのあるパラメータの不正確度から生じ得る。故に、種々の実施形態では、実際の処置の間に取得される測定値は、パラメータを調節するためのフィードバックとして使用される。新しい処置計画が、次いで、調節されたパラメータを使用して生成されてもよい(または処置は、リアルタイムで改変される)。代替として、種々の状況では、既存の処置計画の容易な調節が、例えば、モデルを通してパラメータの調節を伝搬することによって実行されてもよい。
【0014】
故に、一側面では、本発明は、集束超音波の源を使用して、着目組織領域内の1つ以上の標的BBB領域の処置のためのプロトコルをコンピュータ的に生成する方法に関する。種々の実施形態では、本方法は、(a)(i)集束超音波の源を使用して、標的BBB領域に超音波処理の1つ以上のシーケンスを印加するための1つ以上の超音波処理パラメータ(例えば、シーケンスにおける超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、および/または方向)の設定および(ii)標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性(例えば、作用物質タイプ、サイズ、濃度、用量、投与速度またはタイミング、および/または注入部位の場所)を規定するステップと、(b)少なくとも部分的に、超音波処理のシーケンスをコンピュータ的に実行し、その特性を有するマイクロバブルをコンピュータ的に投与することによって、規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置を電子的にシミュレートするステップと、(c)そのシミュレーションに基づいて、処置からもたらされる標的BBB領域の組織破綻の程度をコンピュータ的に予測するステップと、(d)少なくとも部分的に、予測された組織破綻の程度に基づいて、プロトコルを生成するステップとを含む。本明細書で使用されるように、「組織破綻の程度」とは、標的BBB領域の浸透性性質における変化の任意の定量的または定性的測度を意味する。例えば、組織破綻は、標的BBBに浸透し得る分子のサイズ、標的BBBを通したそれらの透過の速度等の観点から測定されることができる。
【0015】
組織破綻の程度は、時間の関数として予測されてもよい。一実施形態では、本方法はさらに、(e)予測された組織破綻の程度を標的目的(例えば、標的BBB領域の開放、標的BBB領域における標的灌流速度、標的BBB領域における標的組織浸透性、標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、および/または標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値)と比較するステップと、(f)予測された組織破綻の程度が標的目的から逸脱する場合、処置プロトコルを改変し、改変された処置プロトコルに関してステップ(b)-(e)を繰り返すステップとを含む。別の実施形態では、処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、本方法はさらに、(e)予測された組織破綻の程度を標的目的と比較するステップと、(f)予測された組織破綻の程度が標的目的から逸脱する場合、(i)超音波処理の後続シーケンスにおける超音波処理パラメータおよび/または(ii)マイクロバブル特性を改変し、ステップ(b)-(e)を繰り返すステップとを含む。
【0016】
処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定してもよく、超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である。加えて、本方法は、標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得し、標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別するステップを含んでもよく、処置プロトコルは、次いで、識別された3Dボクセルに基づいて作成される。種々の実施形態では、複数の標的BBB領域が、画像内で識別され、処置プロトコルは、それぞれ、標的BBB領域のうちの1つに対応する、複数の超音波処理シーケンスを規定する。複数の超音波処理シーケンスは、実質的に同時に標的BBB領域に印加されてもよい。代替として、超音波処理シーケンスは、ラウンドロビン方式で標的BBB領域に連続的に印加されてもよい。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測するステップを含み、標的BBB領域の組織破綻の程度は、次いで、少なくとも部分的に、予測されたマイクロバブルキャビテーションに基づいて予測される。加えて、第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる超音波処理パラメータの設定は、少なくとも部分的に、予測されたマイクロバブルキャビテーションおよび/または第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる組織破綻の程度に基づいて決定されてもよい。複数の組織タイプが画像の標的BBB領域内で識別されると、処置プロトコルは、それぞれ、標的BBB領域の1つの組織タイプに対応する、複数の超音波処理シーケンスを規定してもよい。
【0017】
種々の実施形態では、組織破綻の程度は、標的BBB領域の中へのMRI造影剤の投与およびその拡散をコンピュータ的にシミュレートすることによって予測される。加えて、本方法はさらに、(e)超音波トランスデューサを使用して、処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の1つ以上のシーケンスを伝送するステップと、(f)超音波処理からもたらされる処置効果を実験的に監視するステップと、(g)実験的に監視された処置効果をコンピュータ的に予測された組織破綻の程度と比較するステップと、(h)実験的に監視された処置効果と予測された組織破綻の程度との間の不一致の検出に応じて、処置プロトコルにおける超音波処理パラメータおよび/またはマイクロバブル特性を調節するステップとを含んでもよい。本方法はさらに、標的BBB領域の中に治療剤をコンピュータ的に投与し、治療剤からもたらされる組織領域の処置効果をコンピュータ的に予測するステップを含んでもよい。一実施形態では、本方法はさらに、組織領域にある放射線量をコンピュータ的に印加し、その放射線量からもたらされるその処置効果をコンピュータ的に予測するステップを含む。
【0018】
別の側面では、本発明は、集束超音波の源を使用して、着目組織領域内の1つ以上の標的BBB領域の処置のためのプロトコルをコンピュータ的に生成するためのシステムに関する。種々の実施形態では、本システムは、プロセッサと、(i)集束超音波の源を使用して、標的BBB領域に超音波処理の1つ以上のシーケンスを印加するための1つ以上の超音波処理パラメータ(例えば、シーケンスにおける超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、および/または方向)の設定、(ii)標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性(例えば、作用物質タイプ、サイズ、濃度、用量、投与速度またはタイミング、および/または注入部位の場所)、および(iii)プロセッサによって実行されると、プロセッサに、(a)少なくとも部分的に、超音波処理のシーケンスをコンピュータ的に実行し、その特性を有するマイクロバブルをコンピュータ的に投与することによって、規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置を電子的にシミュレートさせ、(b)そのシミュレーションに基づいて、処置からもたらされる標的BBB領域の組織破綻の程度をコンピュータ的に予測させ、(c)少なくとも部分的に、予測された組織破綻の程度に基づいて、プロトコルをコンピュータ的に生成させる命令を規定する、処置プロトコルを記憶する、メモリとを含む。
【0019】
プロセッサはさらに、時間の関数として組織破綻の程度を予測するように構成されてもよい。一実施形態では、プロセッサはさらに、(d)予測された組織破綻の程度を標的目的(例えば、標的BBB領域の開放、標的BBB領域における標的灌流速度、標的BBB領域における標的組織浸透性、標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、および/または標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値)と比較し、(e)予測された組織破綻の程度が標的目的から逸脱する場合、処置プロトコルを改変し、改変された処置プロトコルに関して(a)-(d)を繰り返すように構成される。別の実施形態では、処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、プロセッサはさらに、(d)予測された組織破綻の程度を標的目的と比較し、(e)予測された組織破綻の程度が標的目的から逸脱する場合、(i)超音波処理の後続シーケンスにおける超音波処理パラメータおよび/または(ii)マイクロバブル特性を改変し、(a)-(d)を繰り返すように構成される。
【0020】
処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定してもよく、超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である。加えて、本システムは、標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得するための撮像デバイスを含んでもよく、プロセッサはさらに、標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別し、識別された3Dボクセルに基づいて、処置プロトコルを生成するように構成される。種々の実施形態では、複数の標的BBB領域が、画像内で識別され、処置プロトコルは、それぞれ、標的BBB領域のうちの1つに対応する、複数の超音波処理シーケンスを規定する。プロセッサはさらに、複数の超音波処理シーケンスを標的BBB領域に実質的に同時に印加するように構成されてもよい。代替として、プロセッサはさらに、複数の超音波処理シーケンスを標的BBB領域にラウンドロビン方式で連続的に印加するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサはさらに、コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測し、少なくとも部分的に、予測されたマイクロバブルキャビテーションに基づいて、標的BBB領域の組織破綻の程度を予測するように構成される。加えて、プロセッサは、少なくとも部分的に、(i)予測されたマイクロバブルキャビテーションおよび/または(ii)第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる組織破綻の程度に基づいて、第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる超音波処理パラメータの設定を決定するように構成されてもよい。一実装では、プロセッサはさらに、画像の標的BBB領域内で複数の組織タイプを識別し、それぞれ、識別された組織タイプのうちの1つに対応する、複数の超音波処理シーケンスを規定する処置プロトコルを生成するように構成される。
【0021】
種々の実施形態では、プロセッサはさらに、標的BBB領域の中へのMRI造影剤の投与およびその拡散をコンピュータ的にシミュレートすることによって、組織破綻の程度を予測するように構成される。加えて、本システムはさらに、検出システムを含んでもよく、プロセッサはさらに、(d)超音波トランスデューサに、処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の1つ以上のシーケンスを伝送させ、(e)検出システムに、超音波処理からもたらされる実際の処置効果を監視させ、(f)実験的に監視された処置効果をコンピュータ的に予測された組織破綻の程度と比較し、(g)監視された処置効果と予測された組織破綻の程度との間の不一致の検出に応じて、処置プロトコルにおける超音波処理パラメータおよび/またはマイクロバブル特性を調節するように構成される。
【0022】
本システムはさらに、治療剤を標的BBB領域の中に投与するための投与システムを含んでもよい。治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、および/またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uを含んでもよい。一実施形態では、本システムはさらに、組織領域にある放射線量を印加するための放射線デバイスを含む。
【0023】
本発明の別の側面は、処置のために1つ以上の標的BBB領域を含む標的組織を破綻させるためのシステムに関する。種々の実施形態では、本システムは、超音波トランスデューサと、標的BBB領域にマイクロバブルを導入するための投与システムと、(a)少なくとも部分的に、(i)標的BBB領域に超音波処理の1つ以上のシーケンスを印加するための1つ以上の超音波処理パラメータ(例えば、シーケンスにおける超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、および/または方向)の設定および(ii)標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性(例えば、作用物質タイプ、サイズ、濃度、用量、投与速度またはタイミング、および/または注入部位の場所)を規定することによって、処置プロトコルを生成し、(b)少なくとも部分的に、超音波処理のシーケンスをコンピュータ的に実行し、その特性を有するマイクロバブルをコンピュータ的に投与することによって、規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置をシミュレートし、(c)標的BBB領域のシミュレートされた処置効果が標的目的(例えば、標的BBB領域の開放、標的BBB領域における標的灌流速度、標的BBB領域における標的組織浸透性、標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、および/または標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値)を達成するかどうかを決定し、(d)該当する場合、その特性を有するマイクロバブルを標的BBB領域に導入させ、超音波処理パラメータの設定に従って超音波トランスデューサをアクティブ化するように構成される、プロセッサとを含む。
【0024】
プロセッサはさらに、時間の関数として処置効果をシミュレートするように構成されてもよい。一実施形態では、プロセッサはさらに、標的目的からのシミュレートされた処置効果の逸脱がある閾値を超えるかどうかを決定し、該当する場合、処置プロトコルにおける超音波処理パラメータの設定および/またはマイクロバブルの特性を改変し、逸脱が閾値を下回るまで(b)および(c)を繰り返すように構成される。別の実施形態では、処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、プロセッサはさらに、標的目的からのシミュレートされた処置効果の逸脱がある閾値を超えるかどうかを決定し、該当する場合、超音波処理の後続シーケンスにおける超音波処理パラメータの設定および/またはマイクロバブル特性を改変し、(b)および(c)を繰り返すように構成される。
【0025】
処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定してもよく、超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である。加えて、本システムは、標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得するための撮像デバイスを含んでもよく、プロセッサはさらに、標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別し、識別された3Dボクセルに基づいて、処置プロトコルを生成するように構成される。種々の実施形態では、複数の標的BBB領域が、画像内で識別され、処置プロトコルは、それぞれ、標的BBB領域のうちの1つに対応する、複数の超音波処理シーケンスを規定する。プロセッサはさらに、複数の超音波処理シーケンスを標的BBB領域に実質的に同時に印加するように構成されてもよい。代替として、プロセッサはさらに、複数の超音波処理シーケンスを標的BBB領域にラウンドロビン方式で連続的に印加するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサはさらに、コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測し、少なくとも部分的に、予測されたマイクロバブルキャビテーションに基づいて、標的BBB領域の処置効果をシミュレートするように構成される。加えて、プロセッサはさらに、少なくとも部分的に、(i)予測されたマイクロバブルキャビテーションおよび/または(ii)第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる処置効果に基づいて、第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる超音波処理パラメータの設定を決定するように構成されてもよい。一実装では、プロセッサはさらに、画像の標的BBB領域内で複数の組織タイプを識別し、それぞれ、識別された組織タイプのうちの1つに対応する、複数の超音波処理シーケンスを規定する処置プロトコルを生成するように構成される。
【0026】
種々の実施形態では、プロセッサはさらに、標的BBB領域の中にMRI造影剤をコンピュータ的に投与し、その中で拡散を引き起こすことによって、処置効果をシミュレートするように構成される。加えて、本システムはさらに、検出システムを含んでもよく、プロセッサはさらに、(e)超音波トランスデューサに、処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の1つ以上のシーケンスを伝送させ、(f)検出システムに、超音波処理からもたらされる実際の処置効果を監視させ、(g)監視された処置効果をシミュレートされた処置効果と比較し、(h)監視された処置効果とシミュレートされた処置効果との間の不一致の検出に応じて、超音波処理パラメータおよび/またはマイクロバブル特性を調節するように構成される。
【0027】
種々の実施形態では、投与システムはさらに、治療剤を標的BBB領域の中に導入するように構成される。治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、および/またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uを含んでもよい。一実施形態では、本システムはさらに、組織領域にある放射線量を印加するための放射線デバイスを含む。
【0028】
さらに別の側面では、本発明は、集束超音波の源を使用して、1つ以上の標的BBB領域を含む標的組織を破綻させる方法に関する。種々の実施形態では、本方法は、(a)少なくとも部分的に、(i)集束超音波の源を使用して、標的BBB領域に超音波処理の1つ以上のシーケンスを印加するための1つ以上の超音波処理パラメータ(例えば、シーケンスにおける超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、および/または方向)の設定および(ii)標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性(例えば、作用物質タイプ、サイズ、濃度、用量、投与速度またはタイミング、および/または注入部位の場所)を規定することによって、処置プロトコルを生成するステップと、(b)少なくとも部分的に、超音波処理のシーケンスをコンピュータ的に実行し、その特性を有するマイクロバブルをコンピュータ的に投与し、標的BBB領域における処置効果をコンピュータ的に予測することによって、規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置を電子的にシミュレートするステップと、(d)標的BBB領域における予測された処置効果が標的目的(例えば、標的BBB領域の開放、標的BBB領域における標的灌流速度、標的BBB領域における標的組織浸透性、標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、および/または標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値)を達成するかどうかを決定するステップと、(e)該当する場合、その特性を有するマイクロバブルを標的BBB領域に導入させ、超音波処理パラメータに従って超音波処理のシーケンスを印加するステップとを含む。一実装では、本方法はさらに、標的組織の中に治療剤を投与するステップを含む。治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、および/またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uを含んでもよい。
【0029】
本明細書で使用されるように、用語「実質的に」は、組織体積の±10%、いくつかの実施形態では、組織体積の±5%を意味する。「臨床的に許容可能」は、例えば、それへの損傷の開始を誘起することに先立って、臨床医によって有意ではないと見なされる、組織に対する所望されない効果(時として、所望の効果の欠如)を有することを意味する。本明細書全体を通した「一実施例」、「ある実施例」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の言及は、実施例と関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本技術の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通した種々の箇所における語句「一実施例では」、「ある実施例では」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の出現は、必ずしも全てが同一の実施例を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、ルーチン、ステップ、または特性は、本技術の1つ以上の実施例において任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。本明細書に提供される見出しは、便宜上のためだけのものであり、請求される技術の範囲または意味を限定または解釈することを意図していない。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
集束超音波の源を使用して、着目組織領域内の少なくとも1つの標的BBB領域の処置のためのプロトコルをコンピュータ的に生成する方法であって、前記方法は、
(a)(i)前記集束超音波の源を使用して前記標的BBB領域に超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを印加するための少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定と、(ii)前記標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性とを規定するステップと、
(b)少なくとも部分的に、前記超音波処理の少なくとも1つのシーケンスをコンピュータ的に実行し、前記特性を有する前記マイクロバブルをコンピュータ的に投与することによって、前記規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置を電子的にシミュレートするステップと、
(c)前記処置の前記シミュレーションに基づいて、前記処置からもたらされる前記標的BBB領域の組織破綻の程度をコンピュータ的に予測するステップと、
(d)少なくとも部分的に、前記予測された組織破綻の程度に基づいて、前記プロトコルを生成するステップと
を含む、方法。
(項目2)
前記組織破綻の程度は、時間の関数として予測される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記少なくとも1つの超音波処理パラメータは、前記超音波処理のシーケンスにおける少なくとも1つの超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、または方向のうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
(e)前記予測された組織破綻の程度を標的目的と比較するステップと、
(f)前記予測された組織破綻の程度が前記標的目的から逸脱する場合、前記処置プロトコルを改変し、前記改変された処置プロトコルに関してステップ(b)-(e)を繰り返すステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記標的目的は、前記標的BBB領域の開放、前記標的BBB領域における標的灌流速度、前記標的BBB領域における標的組織浸透性、前記標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、または前記標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値のうちの少なくとも1つを含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記方法はさらに、
(e)前記予測された組織破綻の程度を標的目的と比較するステップと、
(f)前記予測された組織破綻の程度が前記標的目的から逸脱する場合、(i)超音波処理の後続シーケンスにおける前記超音波処理パラメータまたは(ii)前記マイクロバブル特性のうちの少なくとも1つを改変し、ステップ(b)-(e)を繰り返すステップと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得し、前記標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別するステップをさらに含み、前記処置プロトコルは、前記識別された3Dボクセルに基づいて作成される、項目1に記載の方法。
(項目9)
複数の標的BBB領域が、前記画像内で識別され、前記処置プロトコルは、それぞれが前記標的BBB領域のうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する、項目8に記載の方法。
(項目10)
ステップ(b)において、前記複数の超音波処理シーケンスは、実質的に同時に前記標的BBB領域に印加される、項目9に記載の方法。
(項目11)
ステップ(b)において、前記複数の超音波処理シーケンスは、ラウンドロビン方式で前記標的BBB領域に連続的に印加される、項目9に記載の方法。
(項目12)
ステップ(b)はさらに、前記コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測するステップを含み、ステップ(c)において、前記標的BBB領域の組織破綻の程度は、少なくとも部分的に、前記予測されたマイクロバブルキャビテーションに基づいて予測される、項目11に記載の方法。
(項目13)
第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる前記超音波処理パラメータの設定は、少なくとも部分的に、前記予測されたマイクロバブルキャビテーションまたは第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる前記組織破綻の程度のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、項目12に記載の方法。
(項目14)
複数の組織タイプが、前記画像の標的BBB領域内で識別され、前記処置プロトコルは、それぞれが前記標的BBB領域の1つの組織タイプに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する、項目8に記載の方法。
(項目15)
前記組織破綻の程度は、前記標的BBB領域の中へのMRI造影剤の投与およびその拡散をコンピュータ的にシミュレートすることによって予測される、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記マイクロバブルの特性は、作用物質タイプ、サイズ、濃度、用量、投与速度またはタイミング、または注入部位の場所のうちの少なくとも1つを規定する、項目1に記載の方法。
(項目17)
(e)超音波トランスデューサを使用して、前記処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを伝送するステップと、
(f)前記超音波処理からもたらされる処置効果を実験的に監視するステップと、
(g)前記実験的に監視された処置効果を前記コンピュータ的に予測された組織破綻の程度と比較するステップと、
(h)前記実験的に監視された処置効果と前記予測された組織破綻の程度との間の不一致の検出に応じて、前記処置プロトコルにおける前記超音波処理パラメータまたは前記マイクロバブル特性のうちの少なくとも1つを調節するステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記標的BBB領域の中に治療剤をコンピュータ的に投与し、前記治療剤からもたらされる前記組織領域の処置効果をコンピュータ的に予測するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記組織領域に放射線量をコンピュータ的に印加し、前記放射線量からもたらされるその処置効果をコンピュータ的に予測するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
集束超音波の源を使用して、着目組織領域内の少なくとも1つの標的BBB領域の処置のためのプロトコルをコンピュータ的に生成するためのシステムであって、前記システムは、
プロセッサと、
処置プロトコルを記憶するメモリであって、前記処置プロトコルは、(i)前記集束超音波の源を使用して、前記標的BBB領域に超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを印加するための少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定と、(ii)前記標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性と、(iii)命令とを規定し、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
(a)少なくとも部分的に、前記超音波処理の少なくとも1つのシーケンスをコンピュータ的に実行し、前記特性を有する前記マイクロバブルをコンピュータ的に投与することによって、前記規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置を電子的にシミュレートすることと、
(b)前記処置の前記シミュレーションに基づいて、前記処置からもたらされる前記標的BBB領域の組織破綻の程度をコンピュータ的に予測することと、
(c)少なくとも部分的に、前記予測された組織破綻の程度に基づいて、前記プロトコルをコンピュータ的に生成することと
を行わせる、メモリと
を備える、システム。
(項目21)
前記プロセッサはさらに、時間の関数として前記組織破綻の程度を予測するように構成される、項目20に記載のシステム。
(項目22)
前記少なくとも1つの超音波処理パラメータは、前記超音波処理のシーケンスにおける少なくとも1つの超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、または方向のうちの少なくとも1つを含む、項目20に記載のシステム。
(項目23)
前記プロセッサはさらに、
(d)前記予測された組織破綻の程度を標的目的と比較することと、
(e)前記予測された組織破綻の程度が前記標的目的から逸脱する場合、前記処置プロトコルを改変し、前記改変された処置プロトコルに関して(a)-(d)を繰り返すことと
を行うように構成される、項目20に記載のシステム。
(項目24)
前記標的目的は、前記標的BBB領域の開放、前記標的BBB領域における標的灌流速度、前記標的BBB領域における標的組織浸透性、前記標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、または前記標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値のうちの少なくとも1つを含む、項目23に記載のシステム。
(項目25)
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記プロセッサはさらに、
(d)前記予測された組織破綻の程度を標的目的と比較することと、
(e)前記予測された組織破綻の程度が前記標的目的から逸脱する場合、(i)超音波処理の後続シーケンスにおける前記超音波処理パラメータまたは(ii)前記マイクロバブル特性のうちの少なくとも1つを改変し、(a)-(d)を繰り返すことと
を行うように構成される、項目20に記載のシステム。
(項目26)
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である、項目20に記載のシステム。
(項目27)
前記標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得するための撮像デバイスをさらに備え、前記プロセッサはさらに、前記標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別し、前記識別された3Dボクセルに基づいて、前記処置プロトコルを生成するように構成される、項目20に記載のシステム。
(項目28)
複数の標的BBB領域が、前記画像内で識別され、前記処置プロトコルは、それぞれが前記標的BBB領域のうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する、項目27に記載のシステム。
(項目29)
前記プロセッサはさらに、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域に実質的に同時に印加するように構成される、項目28に記載のシステム。
(項目30)
前記プロセッサはさらに、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域にラウンドロビン方式で連続的に印加するように構成される、項目28に記載のシステム。
(項目31)
前記プロセッサはさらに、前記コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測し、少なくとも部分的に、前記予測されたマイクロバブルキャビテーションに基づいて、前記標的BBB領域の組織破綻の程度を予測するように構成される、項目30に記載のシステム。
(項目32)
前記プロセッサはさらに、少なくとも部分的に、(i)前記予測されたマイクロバブルキャビテーションまたは(ii)第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる前記組織破綻の程度のうちの少なくとも1つに基づいて、第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる前記超音波処理パラメータの設定を決定するように構成される、項目31に記載のシステム。
(項目33)
前記プロセッサはさらに、前記画像の標的BBB領域内で複数の組織タイプを識別し、それぞれが前記識別された組織タイプのうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する前記処置プロトコルを生成するように構成される、項目27に記載のシステム。
(項目34)
前記プロセッサはさらに、前記標的BBB領域の中へのMRI造影剤の投与およびその拡散をコンピュータ的にシミュレートすることによって、前記組織破綻の程度を予測するように構成される、項目20に記載のシステム。
(項目35)
前記マイクロバブルの特性は、作用物質タイプ、サイズ、濃度、用量、投与速度またはタイミング、または注入部位の場所のうちの少なくとも1つを規定する、項目20に記載のシステム。
(項目36)
検出システムをさらに備え、前記プロセッサはさらに、
(d)超音波トランスデューサに、前記処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを伝送させることと、
(e)前記検出システムに、前記超音波処理からもたらされる実際の処置効果を監視させることと、
(f)前記実験的に監視された処置効果を前記コンピュータ的に予測された組織破綻の程度と比較することと、
(g)前記監視された処置効果と前記予測された組織破綻の程度との間の不一致の検出に応じて、前記処置プロトコルにおける前記超音波処理パラメータまたは前記マイクロバブル特性のうちの少なくとも1つを調節することと
を行うように構成される、項目20に記載のシステム。
(項目37)
治療剤を前記標的BBB領域の中に投与するための投与システムをさらに備える、項目20に記載のシステム。
(項目38)
前記治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、項目37に記載のシステム。
(項目39)
前記組織領域に放射線量を印加するための放射線デバイスをさらに備える、項目20に記載のシステム。
(項目40)
処置のために少なくとも1つの標的BBB領域を含む標的組織を破綻させるためのシステムであって、前記システムは、
超音波トランスデューサと、
前記標的BBB領域にマイクロバブルを導入するための投与システムと、
プロセッサであって、前記プロセッサは、
(a)少なくとも部分的に、(i)前記標的BBB領域に超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを印加するための少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定と、(ii)前記標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性とを規定することによって、処置プロトコルを生成することと、
(b)少なくとも部分的に、前記超音波処理の少なくとも1つのシーケンスをコンピュータ的に実行し、前記特性を有する前記マイクロバブルをコンピュータ的に投与することによって、前記規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置をシミュレートすることと、
(c)前記標的BBB領域のシミュレートされた処置効果が標的目的を達成するかどうかを決定することと、
(d)該当する場合、前記特性を有する前記マイクロバブルを前記標的BBB領域に導入させ、前記超音波処理パラメータの設定に従って前記超音波トランスデューサをアクティブ化することと
を行うように構成される、プロセッサと
を備える、システム。
(項目41)
前記プロセッサはさらに、時間の関数として前記処置効果をシミュレートするように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目42)
前記少なくとも1つの超音波処理パラメータは、前記超音波処理のシーケンスにおける少なくとも1つの超音波処理の振幅、周波数、ビーム形状、位相、または方向のうちの少なくとも1つを含む、項目40に記載のシステム。
(項目43)
前記プロセッサはさらに、
前記標的目的からの前記シミュレートされた処置効果の逸脱が閾値を超えるかどうかを決定することと、
該当する場合、前記処置プロトコルにおける前記超音波処理パラメータの設定または前記マイクロバブルの特性のうちの少なくとも1つを改変し、前記逸脱が前記閾値を下回るまで(b)および(c)を繰り返すことと
を行うように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目44)
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記プロセッサはさらに、
前記標的目的からの前記シミュレートされた処置効果の逸脱が閾値を超えるかどうかを決定することと、
該当する場合、超音波処理の後続シーケンスにおける前記超音波処理パラメータの設定または前記マイクロバブル特性のうちの少なくとも1つを改変し、(b)および(c)を繰り返すことと
を行うように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目45)
前記標的目的は、前記標的BBB領域の開放、前記標的BBB領域における標的灌流速度、前記標的BBB領域における標的組織浸透性、前記標的BBB領域と関連付けられる安全閾値、または前記標的BBB領域の外側の組織と関連付けられる安全閾値のうちの少なくとも1つを含む、項目40に記載のシステム。
(項目46)
前記処置プロトコルは、超音波処理の複数のシーケンスを規定し、前記超音波処理パラメータは、連続的超音波処理シーケンスの間の時間間隔である、項目40に記載のシステム。
(項目47)
前記標的BBB領域の少なくとも一部のデジタル画像を取得するための撮像デバイスをさらに備え、前記プロセッサはさらに、前記標的BBB領域の一部に対応する3Dボクセルのセットをコンピュータ的に識別し、前記識別された3Dボクセルに基づいて、前記処置プロトコルを生成するように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目48)
複数の標的BBB領域が、前記画像内で識別され、前記処置プロトコルは、それぞれが前記標的BBB領域のうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する、項目47に記載のシステム。
(項目49)
前記プロセッサはさらに、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域に実質的に同時に印加するように構成される、項目48に記載のシステム。
(項目50)
前記プロセッサはさらに、前記複数の超音波処理シーケンスを前記標的BBB領域にラウンドロビン方式で連続的に印加するように構成される、項目48に記載のシステム。
(項目51)
前記プロセッサはさらに、前記コンピュータ的に実行された超音波処理からもたらされるマイクロバブルキャビテーションをコンピュータ的に予測し、少なくとも部分的に、前記予測されたマイクロバブルキャビテーションに基づいて、前記標的BBB領域の処置効果をシミュレートするように構成される、項目50に記載のシステム。
(項目52)
前記プロセッサはさらに、少なくとも部分的に、(i)前記予測されたマイクロバブルキャビテーションまたは(ii)第1の標的BBB領域に以前に印加された第1の超音波処理シーケンスからもたらされる前記処置効果のうちの少なくとも1つに基づいて、第2の標的BBB領域に印加される第2の超音波処理シーケンスと関連付けられる前記超音波処理パラメータの設定を決定するように構成される、項目51に記載のシステム。
(項目53)
前記プロセッサはさらに、前記画像の標的BBB領域内で複数の組織タイプを識別し、それぞれが前記識別された組織タイプのうちの1つに対応する複数の超音波処理シーケンスを規定する前記処置プロトコルを生成するように構成される、項目47に記載のシステム。
(項目54)
前記プロセッサはさらに、前記標的BBB領域の中にMRI造影剤をコンピュータ的に投与し、その中で拡散を引き起こすことによって、前記処置効果をシミュレートするように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目55)
前記マイクロバブル特性は、作用物質タイプ、サイズ、濃度、用量、投与速度またはタイミング、または注入部位の場所のうちの少なくとも1つを規定する、項目40に記載のシステム。
(項目56)
検出システムをさらに備え、前記プロセッサはさらに、
(e)前記超音波トランスデューサに、前記処置プロトコルにおける設定に従って、超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを伝送させることと、
(f)前記検出システムに、前記超音波処理からもたらされる実際の処置効果を監視させることと、
(g)前記監視された処置効果を前記シミュレートされた処置効果と比較することと、
(h)前記監視された処置効果と前記シミュレートされた処置効果との間の不一致の検出に応じて、前記超音波処理パラメータまたは前記マイクロバブル特性のうちの少なくとも1つを調節することと
を行うように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目57)
前記投与システムはさらに、治療剤を前記標的BBB領域の中に導入するように構成される、項目40に記載のシステム。
(項目58)
前記治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、項目57に記載のシステム。
(項目59)
前記組織領域に放射線量を印加するための放射線デバイスをさらに備える、項目40に記載のシステム。
(項目60)
集束超音波の源を使用して、少なくとも1つの標的BBB領域を含む標的組織を破綻させる方法であって、前記方法は、
(a)少なくとも部分的に、(i)前記集束超音波の源を使用して前記標的BBB領域に超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを印加するための少なくとも1つの超音波処理パラメータの設定と、(ii)前記標的BBB領域の中に投与されるように選択されるマイクロバブルの特性とを規定することによって、処置プロトコルを生成するステップと、
(b)少なくとも部分的に、前記超音波処理の少なくとも1つのシーケンスをコンピュータ的に実行し、前記特性を有する前記マイクロバブルをコンピュータ的に投与し、前記標的BBB領域における処置効果をコンピュータ的に予測することによって、前記規定された超音波処理パラメータ設定およびマイクロバブル特性による処置を電子的にシミュレートするステップと、
(d)前記標的BBB領域における前記予測された処置効果が標的目的を達成するかどうかを決定するステップと、
(e)該当する場合、前記特性を有する前記マイクロバブルを前記標的BBB領域に導入させ、前記超音波処理パラメータに従って前記超音波処理の少なくとも1つのシーケンスを印加するステップと
を含む、方法。
(項目61)
前記標的組織の中に治療剤を投与するステップをさらに含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記治療剤は、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、またはシタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-Uのうちの少なくとも1つを含む、項目60に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面では、同様の参照文字は、概して、異なる図全体を通して同一の部分を指す。また、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、概して、本発明の原理を例証することに重点が置かれている。以下の説明では、本発明の種々の実施形態は、以下の図面を参照して説明される。
【0031】
【
図1】
図1は、種々の実施形態による、例示的処置計画アプローチを図示する、フローチャートである。
【0032】
【
図2A】
図2Aは、患者の脳組織に到達しないように治療剤を除外する、BBBを図式的に描写する。
【0033】
【
図2B】
図2Bは、種々の実施形態による、治療剤が脳組織にアクセスすることを可能にするためにBBBを一時的かつ局所的に開放するためのマイクロバブル強化超音波手技を図式的に描写する。
【0034】
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、種々の実施形態による、集束超音波処置を計画および実行するための例示的システムを図式的に図示する。
【
図3B】
図3Aおよび3Bは、種々の実施形態による、集束超音波処置を計画および実行するための例示的システムを図式的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書の種々の実施形態は、標的腫瘍組織、標的腫瘍組織の近傍の標的BBB領域、およびいくつかの実施形態では、非標的組織を含む、1つ以上の組織領域内の標的化薬物送達、放射線治療、または任意の他の適用可能な治療方法のためのマイクロバブル強化超音波手技を伴う処置を計画することに対するアプローチを提供する。処置計画は、多くの場合、標的腫瘍組織および標的BBB領域における所望の処置効果(例えば、それぞれ、腫瘍アブレーションおよびBBB破綻)を達成することと、それと同時に非標的組織への損傷を回避することとの2つの目標を有する。
図1は、種々の実施形態による、例示的処置計画アプローチ100を図示する、フローチャートである。示されるように、処置計画は、ステップ102において、撮像デバイスを使用して、着目領域内の患者の解剖学的構造の画像を取得することから開始されてもよい。画像は、3D画像または着目解剖学的領域の3D画像を再構成するために好適な2D画像スライスのセットであってもよい。撮像デバイスは、例えば、磁気共鳴撮像(MRI)デバイス、コンピュータトモグラフィ(CT)デバイス、陽電子放射トモグラフィ(PET)デバイス、単一光子放射コンピュータトモグラフィ(SPECT)デバイス、または超音波診断デバイスであってもよい。ステップ104において、そのために処置が計画される標的腫瘍領域および標的腫瘍の近傍の標的BBB領域が、好適な画像処理技法を使用して自動的に、またはユーザによって手動で識別され、標的腫瘍およびBBB領域は、3Dボクセルの集合として定義されてもよい。いくつかの処置シナリオでは、標的腫瘍は、複数の不連続領域から成り、例えば、癌患者は、個別に処置される複数の腫瘍または転移に悩まされ得る。その結果、不連続腫瘍領域に対応する複数のBBB領域は、連続的に、または実質的に同時に破綻させられてもよい。標的腫瘍が単一の連続組織領域である場合であっても、これは、大きい体積に及び得、したがって、1つを上回る標的BBB領域(分離的または重複的)が、効果的な処置のために必要である。例えば、これは、有利なこととして、標的BBB領域毎に超音波ビーム性質に対するより良好な制御を可能にし得る。種々の実施形態では、標的BBB領域は、場合によっては、後続BBB領域のための処置を計画するときに1つのBBB領域の破綻の効果を考慮するが、処置計画が以前に完了したと見なされたBBB領域に関する処置手技に立ち戻るリスクを生じることなく、異なるBBB領域のための処置計画が連続的に実施されることを可能にする様式で分割される。
【0036】
いったん標的BBB領域が処置計画のために選択されると、超音波パラメータ値(例えば、トランスデューサ要素と関連付けられる振幅、周波数、位相、および/または方向、または連続的な一連の超音波処理の間の時間間隔)が、集束帯が標的BBB領域において生成されるように算出される(ステップ106において)。本ステップは、概して、物理モデルを適用し、標的BBB領域に対する超音波トランスデューサの幾何学形状および位置および配向を考慮する。加えて、トランスデューサと標的BBB領域との間のビーム経路上に位置する介在組織の解剖学的特性(例えば、タイプ、性質、構造、厚さ、密度等)および/または物質特性(例えば、採用される周波数または音の速度における組織のエネルギー吸収)が、それからもたらされるビーム収差を予測および補正するために、物理モデルに含まれてもよい。一実装では、介在組織の解剖学的特性は、撮像デバイスを使用して取得される。例えば、着目解剖学的領域の取得された画像に基づいて、標的および/または非標的領域の物質特性を特徴付ける組織モデルが、確立されてもよい。組織モデルは、標的および/または非標的組織を表すボクセルに対応するセルの3Dテーブルの形態をとってもよく、セルの値は、組織を横断するときのビーム収差に関連する音の速度等の組織の特性を表す。ボクセルは、撮像デバイスによって断層撮影で取得され、各ボクセルが表す組織のタイプは、従来の組織分析ソフトウェアによって自動的に決定されることができる。決定された組織タイプおよび組織パラメータ(例えば、組織のタイプによる音の速度)のルックアップテーブルを使用して、組織モデルのセルは、取り込まれてもよい。種々の組織の音の速度、熱感受性、および/または熱エネルギー耐性を識別する組織モデルの作成に関するさらなる詳細が、米国特許公開第2012/0029396号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0037】
故に、標的/非標的組織の解剖学的および/または物質特性に基づいて、物理モデルは、超音波ビーム経路、標的BBB領域および/または非標的領域に送達される超音波エネルギー、標的BBB領域および/または非標的領域における超音波エネルギーまたは圧力の熱および/または組織変位への変換、および/または組織を通した誘発される効果の伝搬を予測してもよい。典型的には、シミュレーションは、微分方程式の形態をとってもよい(またはそれを含む)。例えば、物理モデルは、組織中の熱伝達をシミュレートするために、Pennesモデルおよび生体熱方程式を含んでもよい。超音波処理および組織に対するそれらの効果をシミュレートすることに対するアプローチが、例えば、米国特許公開第2015/0359603号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0038】
随意のステップ108において、選択された特性を有するマイクロバブルが、定義された標的BBB領域にコンピュータ的に導入され、マイクロバブル特性は、作用物質タイプ、サイズ分布、濃度、投与プロファイル(例えば、用量および投与タイミング)、および/またはマイクロバブルがコンピュータ的に投与される部位の関連付けられる場所を含んでもよい。比較的に低い音響出力(例えば、マイクロバブル生成閾値を1~2ワット上回る)において、生成されるマイクロバブルは、大きさにおいて等しい圧縮および希薄化を伴う発振を受ける傾向があり、したがって、マイクロバブルは、概して、破裂しない(すなわち、「安定したキャビテーション」の)ままである。より高い音響出力(例えば、マイクロバブル生成閾値を10ワットを超えて上回る)において、マイクロバブルは、圧縮を上回る希薄化を受け、これは、液体中のマイクロバブルが急速に圧潰するマイクロバブルの慣性(または過渡的)キャビテーションを引き起こし得る。マイクロバブルキャビテーションは、順に、標的BBB領域内の組織の過渡的破綻をもたらし得る。
【0039】
種々の実施形態では、マイクロバブル特性は、マイクロバブル強化超音波手技を被る患者の遡及的研究に基づいて、経験的に決定される。例えば、遡及的研究は、マイクロバブル応答(例えば、各超音波処理パルス後のマイクロバブルの一時的音響効果および/または単一の超音波処理または複数の超音波処理にわたるマイクロバブルの累積的効果)と所与の超音波設定において種々の特性を有するマイクロバブルとの間の関係を確立してもよい。標的BBB領域を破綻させるための所望のマイクロバブル応答を有するマイクロバブル特性が、次いで、選択されてもよい。加えて、または代替として、マイクロバブル特性は、物理モデルを使用して選択されてもよい。例えば、マイクロバブルのサイズ分布は、マイクロバブルの有意な割合(例えば、50%、90%、95%、または99%、またはそれを上回る)が印加される超音波周波数に等しい共振周波数に対応するものを下回る半径を有するように(マイクロバブル共振周波数が印加される超音波周波数を超えるように)選択されてもよい。これは、標的BBB領域を囲繞する健常組織内およびトランスデューサと標的BBB領域との間の経路に沿った組織内のマイクロバブル応答に対して、標的BBB領域において印加される超音波へのマイクロバブル応答を最大限にし得る。その結果、非標的領域におけるマイクロバブルは、比較的に低い音響場に不応答性であり、組織損傷を回避する一方、(音響場が集束ビームに起因して比較的に高い)標的領域におけるマイクロバブルは、発振および/または圧潰し、それによって、組織破綻効果を引き起こし得る。マイクロバブルの所望のサイズ分布を決定および選択することに対するアプローチが、例えば、本明細書と同日付で出願され、「Ultrasound Frequency and Microbubble Size Optimization in Microbubble-Enhanced Ultrasound Treatment」と題された米国特許出願(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0040】
ステップ110において、一連の超音波処理が、次いで、決定された超音波パラメータ値に従って、標的BBB領域におけるマイクロバブルにコンピュータ的に印加される。ステップ112において、シミュレーションは、印加される超音波パラメータ値、超音波トランスデューサの幾何学形状およびマイクロバブルに対するその位置および配向、介在組織の解剖学的/物質特性、およびマイクロバブルの特性に基づいて、マイクロバブルからの音響応答を予測してもよい。例えば、音響応答は、各超音波処理パルス後のマイクロバブルの一時的音響効果を表す音響応答レベルおよび/または単一の超音波処理または複数の超音波処理にわたるマイクロバブルの累積的効果を表す音響応答量を含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、処置計画シミュレーションは、印加される音響エネルギーおよび注入されるマイクロバブルによって誘発される付加的マイクロバブルの生成をコンピュータ的に予測する。したがって、マイクロバブルからの音響応答は、注入されるマイクロバブルおよび超音波処理の間に標的BBB領域内で付加的に生成されるマイクロバブルの組み合わせから予測されてもよい。
【0042】
ステップ114において、印加される超音波波/パルスのパラメータ値(例えば、エネルギーの出力)および/または注入されるマイクロバブルの特性が、マイクロバブルキャビテーション事象が標的BBB領域において起こるまで、コンピュータ的に調節される。例えば、音響出力を増加させることは、概して、マイクロバブルキャビテーションを誘発し得る。しかし、音響出力を増加させることはまた、介在組織および/または標的BBB領域を囲繞する組織への損傷を引き起こし得るため、いくつかの実施形態では、音響出力は、上限境界を有してもよい。いったん境界に到達すると、シミュレーションは、例えば、音響出力を増加させる代わりに、キャビテーションを引き起こすために、(マイクロバブルの共振周波数が超音波周波数とあまり異ならないように)マイクロバブル濃度および/またはマイクロバブルサイズを増加させてもよく、これは、非標的組織への所望されない損傷を回避する。
【0043】
ステップ116において、マイクロバブルキャビテーションからもたらされる標的BBB領域および/または非標的領域の組織破綻効果は、少なくとも部分的に、標的BBB領域および/または非標的領域の確立された組織モデルに基づいて、コンピュータ的に予測される。破綻効果は、破綻させられるBBB領域の体積サイズおよび推定される破綻の程度を含んでもよく、一実装では、標的BBB領域と関連付けられる好適な生物学的パラメータ(例えば、標的BBB領域内の血管サイズ、標的BBB領域内の灌流速度、標的BBB領域の開口部サイズまたは程度、分子がBBB領域を通過する速度(例えば、組織浸透性速度、および/またはBBB領域を通過する分子のサイズ))を用いて捕捉される。一実施形態では、破綻効果は、臨床処置に先立って超音波誘発キャビテーションを受けている患者の遡及的研究に基づいて予測される。例えば、臨床処置の前に、腫瘍処置のために注入される治療剤と実質的に同一の分子量(または他のサイズメトリック)を有するMRI造影剤が、キャビテーション事象が起こった後に標的BBB領域の中に導入されてもよい。MRI造影剤が浸透し、標的BBB領域内で拡散する様子を監視することによって、標的BBB領域が、注入される治療剤に対して開放されているかどうか、およびその程度が決定されることができる。キャビテーション効果と組織破綻効果との間の関係が、次いで、確立され、シミュレーションの基礎となる物理モデルに組み込まれてもよい。本関係は、患者および/または実施される処置の数が増加するにつれて経験的に改良され得る。マイクロバブルキャビテーションと組織破綻効果との間の関係を経験的に確立することに対するアプローチが、例えば、本明細書と同日付で出願され、「Cavitation-Enhanced Targeted Drug Delivery and Dosing」と題された米国特許出願(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。いくつかの実施形態では、処置計画シミュレーションはまた、類似するアプローチを使用して、非標的領域の組織破綻効果を予測する。
【0044】
ステップ118において、標的BBB領域および/または非標的領域の算出された組織破綻効果は、次いで、標的目的(上記に説明される生物学的パラメータの所望の標的値および/または非標的領域と関連付けられる安全閾値等)と比較される。算出が許容可能な量(例えば、10%)を上回って所望の標的目的から逸脱する場合、シミュレートされた処置手技は、調節される(ステップ120)。調節は、2つのアプローチにおいて実装されてもよい。第1のアプローチでは、処置計画は、ロールバックされ、ステップ106-120が、シミュレートされた組織破綻効果が標的目的を達成するまで、反復的に実施される。別のアプローチでは、処置計画は、さらなる超音波処理を含むように延長され、すなわち、処置プロファイルパラメータ(例えば、超音波パラメータおよび/または付加的マイクロバブルの特性)の新しい設定が、標的BBB領域を処置するために導入され、再び、処置計画は、シミュレートされた組織破綻効果が標的目的を達成するまで延長されてもよい(ステップ122)。その結果、4D処置計画は、種々の処置プロファイルパラメータ(例えば、超音波処理性質および/またはマイクロバブル特性)が、時間の関数として3D標的BBB領域を効率的かつ安全に処置するために動的に調節されることを可能にする。
【0045】
処置プロファイルパラメータの調節は、概して、マイクロバブル特性および/または超音波トランスデューサパラメータ設定を調節するステップを伴う。一実施形態では、マイクロバブルの投与速度、投与量、濃度、および/または投与のタイミングは、処置効率(例えば、治療効果を生じるように、または治療剤がそれを通して浸透することを可能にするように、標的程度まで標的BBB領域内の組織を過渡的に破綻させること)および/または安全性(例えば、非標的組織への損傷を限定すること)を最適化するためにコンピュータ的に調整される。概して、最適なマイクロバブル濃度は、所望の音響出力に依存し、より高い濃度のマイクロバブルが、典型的には、より低い音響出力の使用がマイクロバブルキャビテーションを達成することを可能にするために好ましい。例えば、標的BBB領域を囲繞する組織が、音響エネルギーに感受性があるとき、低出力超音波処理が、周辺組織への損傷を回避するために採用される。この場合、マイクロバブル濃度は、低出力超音波処理が標的BBB組織を破綻させるために十分なキャビテーション事象を依然として誘発することを確実にするために、増加されてもよい。加えて、または代替として、マイクロバブルのサイズは、その共振周波数が選択された最適な超音波周波数とあまり異ならないように、後続用量において増加されてもよく、これは、標的BBB領域においてより多くのマイクロバブル圧潰を引き起こし得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、標的BBB領域における一定のマイクロバブル濃度が、組織破綻が経時的に大きさにおいて変動するのではなく、定常であるように所望される。患者の血流中に注入されるマイクロバブルの濃度は、薬物動態の明確に理解される原理に従って経時的に変動し、投与後にピークレベルに上昇し、次いで、下降し、言い換えると、いかなる投与プロファイルも、予測可能な濃度プロファイルをもたらす。したがって、処置計画シミュレーションは、一定の速度におけるマイクロバブルの注入をコンピュータ的にシミュレートし、それらが拡散し、定常状態に到達するまで待機し、定常状態条件を維持するように注入を継続することによって、定常濃度レベルを生成してもよい。代替として、マイクロバブルは、処置を開始するために比較的により高い速度でコンピュータ的に注入されてもよく、比較的により低い注入速度が、次いで、一連のシミュレートされる処置の間に使用されてもよい。他の実施形態では、処置が進むにつれて(安全目的のために超音波処理出力を低減させるように)マイクロバブル濃度を増加させることが、所望され、この場合、処置計画シミュレーションは、経時的にマイクロバブル注入速度を連続的または離散的に増加させてもよい。使用される投与プロファイルにかかわらず、マイクロバブル投与プロファイルを決定するとき、音響出力(例えば、一時的音響出力)および/または音響エネルギー(超音波処理手技全体の間の累積的出力および音響効果を含む)は、標的および/または非標的組織への所望されない損傷を回避するために考慮されてもよい。
【0047】
同様に、処置計画シミュレーションは、標的BBB組織を破綻させるための超音波処理手技の間に利用可能な予測されたマイクロバブル濃度に基づいて、音響出力および/または音響エネルギーを動的に調節してもよい。これは、特に、マイクロバブル投与の開始および終了時にマイクロバブル濃度が変化している(すなわち、定常状態にない)ときに重要である。いくつかの実施形態では、音響出力/エネルギーは、低減されたマイクロバブル濃度に応答してコンピュータ的に増加される。ある閾値を上回って音響出力/エネルギーを増加させることは、有益なこととして、標的BBB領域内のマイクロバブルの生成を引き起こし、それによって、低減されたマイクロバブル濃度を補償してもよい。
【0048】
加えて、マイクロバブル投与プロファイル、音響出力/エネルギープロファイル、ビーム形状プロファイル、および/またはそれらの組み合わせの調節は、標的BBB領域の破綻速度を促進してもよい。いくつかの実施形態では、時間の関数としての標的BBB領域の所望の破綻速度は、処置効率および/または安全性を最適化するために、標的BBB領域および/または非標的領域の解剖学的/物質特性に基づいて決定される。超音波処置のシミュレーションの間、マイクロバブル投与プロファイルおよび/または音響出力/エネルギープロファイルは、所望の破綻速度が達成および維持されるまで調節されてもよい。BBB破綻速度を制御することは、上記に解説されるように、過剰な速度が安全上の問題を生産し得る一方、不十分な速度が効率を低減させ、また、処置の持続時間自体が患者にリスクをもたらし得るため、安全性を損ない得るため、重要である。
【0049】
種々の実施形態では、音響出力および/または音響エネルギーは、効率的な処置および患者安全性を確実にするために、下限および上限境界の間で制御される。下限境界は、処置閾値(すなわち、マイクロバブルキャビテーションを誘発し、標的BBB領域の組織破綻を引き起こすために必要とされる最小印加エネルギー)に対応し、上限境界は、安全閾値(すなわち、介在組織および/または標的BBB領域を囲繞する組織に損傷を及ぼさない最大許容可能エネルギー)に対応する。再び、処置計画シミュレーションは、標的BBB領域における利用可能なマイクロバブル濃度に基づいて、これらの下限および上限境界を動的に決定してもよい。加えて、超音波処理プロファイル(例えば、超音波処理の異なるシーケンスの間の時間間隔)が、動的に調節されてもよい。例えば、超音波処理の2つのシーケンスの間の時間間隔は、次の超音波処理シーケンスの前にマイクロバブルが標的BBB領域において補充されることを可能にするために、増加されてもよい。
【0050】
種々の実施形態では、単一の腫瘍領域または複数の不連続腫瘍領域に対応する複数のBBB領域を破綻させることが、望ましくあり得る。好ましい実装では、複数の標的BBB領域は、例えば、各領域上の組織破綻が対応する標的目的を満たすまで、連続的に(例えば、ラウンドロビン方式で)処置される。故に、処置計画は、BBB処置を連続的にシミュレートしてもよい。加えて、処置計画シミュレーションは、別の標的BBB領域の処置をシミュレートするとき、1つの標的BBB領域を処置することからもたらされる効果を考慮してもよい。例えば、1つのBBB標的が別のものの上流にあるとき、マイクロバブルキャビテーションを利用する上流標的BBB領域の破綻は、下流標的BBB領域において利用可能なマイクロバブルの濃度を低減させ、それによって、その破綻効果を変化させてもよい。故に、処置計画は、上流標的BBB領域を処置するために要求されるマイクロバブルの量および/または以前に取得された画像情報(2つのBBB標的領域の場所および血流中のそれらの場所等)に基づいて、そのような効果をシミュレートしてもよい。
【0051】
代替として、連続的処置は、1つの標的BBB領域に対する処置効果が、別の標的BBB領域がシミュレートされる前に所望の標的目的を満たす必要性がある、別のアプローチをとってもよい。しかし、再び、以前の標的BBB領域の処置からもたらされる効果は、後続標的BBB領域の処置をシミュレートするときに考慮されてもよい。
【0052】
別の実施形態では、複数の標的BBB領域は、実質的に同時に処置される。上記に説明されるステップ106-120は、標的BBB領域の開口部をシミュレートおよび評価するために実施される。処置計画は、処置のシミュレーションおよびその予測された効果を使用して、処置プロファイルパラメータを反復的に(初期化されたパラメータ設定から開始される)決定し、標的BBB領域のそれぞれの組織破綻がその対応する標的目的を満たすまで、連続的反復においてパラメータを調節してもよい。
【0053】
いくつかの処置シナリオでは、標的BBB領域は、複数のタイプの組織を含んでもよい。各タイプの組織は、ともに群化されてもよく、トランスデューサパラメータ設定および/またはマイクロバブル特性を含む処置プロファイルパラメータは、各タイプの組織を最適に処置するために(すなわち、その標的目的を達成するために)調節されてもよい。再び、組織タイプの異なる群は、上記に説明されるアプローチに従って連続的に、または実質的に同時に処置されてもよい。
【0054】
随意のステップ124において、処置計画シミュレーションは、処置のためにある用量の治療剤を標的腫瘍領域の中にコンピュータ的に注入してもよい。治療剤の投与プロファイルは、同一の治療を被る患者の遡及的研究に基づいて決定されてもよい。加えて、または代替として、超音波手技は、放射線治療等の他の治療方法と組み合わせて実施されてもよい。例えば、超音波誘発マイクロバブル発振/キャビテーションが標的領域内の血管組織を破綻した後、放射線治療は、標的腫瘍における効率的な処置を生産するために放射線量を有意に低減させてもよい。再び、シミュレートされた組織破綻効果および同一の治療を被る患者の遡及的研究に基づいて、処置計画シミュレーションは、処置のための放射線量を決定してもよい。
【0055】
故に、本発明における処置計画は、概して、種々の段階におけるシミュレートされた処置計画の試験を利用し得る反復的プロセスである。プランナは、1つ以上の以前の処置プロファイルパラメータ(例えば、超音波設定および/またはマイクロバブル特性)の調節に戻る、次の超音波処理を継続する(多くの場合、先行する処置プロファイルパラメータのシミュレーション結果から後続処置プロファイルパラメータを決定する)、またはさらには計画を完全に新しい標的BBB領域に切り替えてもよい(例えば、医師が計画のために標的BBB領域を選択することを可能にするステップ104に戻る)。
【0056】
いったん標的BBB領域のための処置計画が完了すると、処置計画は、医師に提示されてもよい。医師は、例えば、標的BBB領域の処置順序を変更する、または処置計画が繰り返される標的BBB領域を示すことによって、計画を修正してもよい。医師が処置計画を許容可能と見出すと、実際の処置が、計画に従って自動的に、または手動で開始されてもよい。例えば、超音波トランスデューサは、シミュレーションにおいて決定された超音波処理パラメータ(例えば、振幅、位相、方向、および/または2つの一連の超音波処理の間の時間間隔)の設定に基づいて動作されてもよい。したがって、1秒が、2つの連続的な一連の超音波処理の間の典型的な超音波処理停止時間であるが、処置計画の間、標的領域内のマイクロバブル濃度が補充されることを可能にするように(すなわち、マイクロバブルがシリンジから脳内の標的BBB領域に送達されるように)、例えば、20秒の超音波処理停止時間が、第2の一連の超音波処理の印加後に必要であると決定されてもよく、治療の間、本計画に従ってもよい(すなわち、超音波処理は、第2の一連の超音波処理後に20秒にわたって停止される)。
【0057】
実際の処置の間、マイクロバブルは、静脈内に、またはある場合には、投与システムを使用して標的BBB領域に近接する注入によって導入されてもよい。投与システムおよびマイクロバブルの所望のサイズ分布を選択し、マイクロバブルを標的領域の中に導入するための1つ以上のフィルタの構成が、米国特許出願第62/597,076号(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に見出され得る。加えて、放射線治療等の他の治療方法も、処置計画に基づいて、超音波処置と組み合わせて実施されてもよい。超音波および放射線治療を組み合わせることに対するアプローチが、例えば、2017年6月29日に出願された米国特許出願第15/637,163号(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0058】
いくつかの実施形態では、処置効果(例えば、標的BBB領域内の組織破綻のサイズおよび/または程度)は、患者への処置計画の実行の間に(例えば、撮像デバイスを使用することによって)監視される。監視された処置効果と以前に算出された処置効果との間の不一致が発見される場合、処置計画は、修正されてもよい。不一致は、例えば、シミュレーションの基礎となる物理モデルのあるパラメータの不正確度から生じ得る。故に、種々の実施形態では、実際の処置の間に取得される測定値は、パラメータを調節するためのフィードバックとして(例えば、パラメータを測定値に適合させることによって)使用される。更新された処置計画が、次いで、調節されたパラメータを使用して作成されてもよい。調節は、最初に、特に高い関連付けられる不確定性を有する(したがって、調節を必要とする可能性が高いであろう)パラメータまたはパラメータのセットおよび/または算出される処置効果に大いに影響を及ぼすことが公知であるパラメータまたはパラメータのセット(すなわち、例えば、処置効果がパラメータの線形関数ではなく、高次関数であるため、それに処置効果が非常に感受性があるパラメータ)に行われてもよい。例えば、標的BBB領域における音響吸収係数およびマイクロバブルサイズ分布は、パラメータ調節に関する良好な候補であり得る。最初に選択されたパラメータへの調節に基づく処置効果の再算出が、一連の処置における観察された値と標的値との間の不一致を満足に減少させない場合、付加的パラメータが、変更されてもよい。いくつかの実施形態では、モデルパラメータは、それらの不確定性および/またはそれへのモデルの感受性に従ってランク付けられ、本ランキングは、処置の間の調節に関する1つ以上のパラメータの選択を促進する。超音波手技の間にリアルタイムで標的BBB領域および/または非標的領域に対する処置効果を監視することに対するアプローチが、例えば、2017年12月11日に出願された米国特許出願第62/597,073号(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、パラメータが他の空間および/または時間依存量の関数(例えば、概して、空間において変動する組織タイプまたは時間において変化し得る温度)として変動する限り、フィードバックは、例えば、測定された量の空間的または時間的分布の形態においてそのような依存性についての情報を本質的にエンコードしてもよい。パラメータ調節はまた、少なくとも部分的に、例えば、処置を監視する医師によって提供されるような人間入力に基づいてもよい。そのような人間介入は、(例えば、標的BBB領域の組織破綻効果を示す境界の形態における)予測および測定の両方の直感的視覚表現によって補助されてもよい。表示される予測は、パラメータ値の任意のユーザ操作に応答して動的に変化してもよい。パラメータ調節は、物理的に現実的ではない推定される値を防止するために、事前設定された限界によって境界されてもよい。
【0060】
種々の状況では、既存の処置計画の容易な調節(すなわち、完全な再計画を要求しない調節)が、例えば、処置の間にモデルを通してパラメータの調節を伝搬することによって実行されてもよい。例えば、予測された処置効果と測定された処置効果との間の逸脱が臨床的に許容可能な範囲内である場合、現在標的化されているBBB領域の処置は、継続し得る一方、他の標的BBB領域に関する後続計画段階は、フィードバックから利益を享受し得る。
【0061】
標的BBB領域内の組織破綻の測定が、上記に説明されるが、処置計画の実行の間に提供されるフィードバックは、それに限定されず、また、音響、熱、または機械的フィードバックおよび/または(例えば、蓄積された加熱量または累積的音響応答量の)分析および計算を通した測定から導出されるフィードバックを含んでもよい。例えば、マイクロバブルから発生する音響応答は、検出デバイスおよび/または超音波トランスデューサを使用して検出されてもよい。検出されたマイクロバブル応答は、次いで、処置計画によって予測される応答と比較されてもよい。瞬間的音響応答レベルおよび累積的音響応答量を測定することに対するアプローチが、例えば、2018年5月22日に出願された国際出願第PCT/US18/33815号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。加えて、マイクロバブルから音響信号を検出するためにトランスデューサアレイを構成することに対するアプローチが、例えば、2018年6月6日に出願された米国特許出願第62/681,282号(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0062】
さらに、処置の間に受信されるフィードバックは、解剖学的情報、および重要なこととして、処置が計画された時点で存在していた際の患者の解剖学的構造に対する任意の変化についての情報を含んでもよい。多くの場合、有意な変化は、処置の間の不可避の患者運動からもたらされる。運動追跡アプローチが、関連する標的または非標的領域の変形および位置変化を検出し、(例えば、画像位置合わせアプローチを介して)処置計画の調節を促進し、そのような変化を補償するために採用されてもよい。さらに、移動および他の変化が、概して、(ある限界内で)処置の間に起こることが予期される際、それらは、処置を方略的に計画することによって、例えば、予期される変化が処置に干渉しない、または処置リスクを実質的に増加させないように、種々の領域が処置される順序を規定することによって考慮されてもよい。2つ以上の撮像システムを使用して取得される画像を位置合わせすることに対するアプローチが、例えば、米国特許第9,934,570号に提供されており、処置手技の間にリアルタイムで着目解剖学的領域内の処置標的または他の着目物体の運動を追跡することに対するアプローチが、例えば、米国特許公開第2017/0358095号に提供されている(これらの文書の内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)。
【0063】
図2Aは、BBBが、治療剤が患者の脳組織に到達することを妨害する様子を図式的に描写する。種々の実施形態では、患者の脳の画像の取得に応じて(ステップ102において)、処置プランナは、画像をアップロードするために撮像デバイスと通信してもよい。
図1のフローチャートに記載されるように、処置プランナは、1つ以上の標的BBB領域202を識別してもよい。随意に、プランナは、処置シミュレーションの間に標的BBB領域202にマイクロバブル204をコンピュータ的に注入してもよい。
図2Bを参照すると、プランナは、次いで、一連の超音波処理206を標的BBB領域におけるマイクロバブルにコンピュータ的に印加してもよい。処置プロファイルパラメータ(例えば、マイクロバブル特性および/または超音波パラメータ値)の設定およびトランスデューサと標的BBB領域との間のビーム経路上に位置する介在組織の解剖学的/物質性質に基づいて、プランナは、マイクロバブル204からの音響応答を予測してもよい。続けて、プランナは、その解剖学的/物質性質および予測されたマイクロバブル応答に基づいて、標的BBB領域内の組織破綻の程度を予測してもよい。マイクロバブル強化超音波処置が、標的化薬物送達等の他の治療方法と組み合わせて実施される場合、処置プランナは、ある用量の治療剤208をコンピュータ的に注入し、応答を予測してもよい。再び、いったん標的BBB領域に関する処置計画が完了すると、実際の処置が、計画に従って実行されてもよい。
【0064】
図3Aは、上記に説明されるような集束超音波処置を計画および実行するための例示的システム300を図式的に図示する。システム300は、例えば、圧電性セラミック要素またはピエゾ複合材料要素であり得る、トランスデューサ要素304の1、2、または3次元配列を備える超音波トランスデューサ302を含む。トランスデューサ302は、(示されるように)湾曲する、または平面であってもよく、単一の表面を形成する、または複数の不連続かつ随意に独立して可動の区画を含んでもよい。トランスデューサ要素304は、個別に制御可能であってもよく、すなわち、各要素は、他のトランスデューサ要素304の振幅および/または位相から独立した振幅および/または位相において超音波を放出することが可能であってもよい。代替として、要素304は、群化されてもよく、各群は、別個に制御されてもよい。集合的に、トランスデューサ要素304は、ビーム形成器306によって提供される電子制御信号に基づいて、処置セッションの間に所望の方向に超音波ビームを操向し、これを移動させることが可能な「位相アレイ」を形成する。ビーム形成器306は、典型的には、トランスデューサ要素304のための増幅器および位相遅延回路を含む電子制御回路を含む。これは、典型的には、0.1MHz~10MHzの範囲内の無線周波数(RF)入力信号を分割し、それらが集束超音波ビーム308を集合的に生産するように、同一の周波数であるが、異なる振幅および位相における個々のトランスデューサ要素304(またはそれらの群)を駆動するための複数のチャネルを提供してもよい。システム300はまた、標的腫瘍領域への治療剤の投与のための投与デバイスまたは放射線デバイス等の他の処置装置309を含んでもよい。
【0065】
治療剤は、腫瘍を処置するために好適である任意の薬物を含んでもよい。例えば、膠芽腫(GBM)を処置するために、薬物は、例えば、ブスルファン、チオテパ、CCNU(ロムスチン)、BCNU(カルムスチン)、ACNU(ニムスチン)、テモゾロミド、メトトレキサート、トポテカン、シスプラチン、エトポシド、イリノテカン/SN-38、カルボプラチン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、パクリタキセル、フォテムスチン、イホスファミド/4-ヒドロキシイフォスファミド/アルドイホスファミド、ベバシズマブ、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、ドセタキセル、シタラビン(シトシンアラビノシド、ara-C)/ara-U等のうちの1つ以上のものを含む、またはそれらから成ってもよい。
【0066】
加えて、GBMを処置するために、当業者は、患者安全性制約内でBBBを横断して薬物吸収を強化させるために最適化された薬物およびBBB開放方式を選択することができる。この点において、BBBは、実際には、多くの腫瘍のコア内ですでに破綻させられており、抗腫瘍薬物の部分的浸透を可能にすることが知られている。しかし、BBBは、侵襲性/逃散GBM細胞が見出され得る、「腫瘍に隣接する脳」(BAT)領域の周囲で広く無傷であって、これは、腫瘍再発を引き起こす。腫瘍コアおよびBAT内のより良好な薬物送達のために、BBBを克服することは、本明細書に説明されるように、超音波を使用して遂行されることができる。採用される薬物は、種々の毒性度およびBBBを通した種々の浸透パーセンテージを有する。理想的薬物は、腫瘍に対して高細胞毒性および無BBB浸透性(その吸収および細胞毒性効果が、BBBが破綻させられる領域に閉じ込められ得るように)、低神経毒性(神経系への損傷を回避するため)、および事前に規定された用量における許容可能全身毒性(例えば、閾値を下回る)を有する。薬物は、静脈内から、またはある場合には、腫瘍領域に近接した注射によって、投与されてもよい。
【0067】
種々の実施形態では、システム300はさらに、処置計画の目的のために処置に先立って、および超音波ビームを誘導し、処置進行を監視する目的のために処置の間の両方で、患者内の着目領域を(例えば、断層撮影で)撮像する撮像デバイス(例えば、MRI装置または他の撮像デバイス)310を含む。加えて、システム300は、ビーム形成器306および撮像デバイス310と通信し、処置計画および調節を促進する、算出設備312を含む。算出設備312は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードワイヤリングの任意の好適な組み合わせで実装されてもよく、図示される実施形態では、これは、好適にプログラムされた汎用コンピュータによって提供される。コンピュータは、中央処理ユニット(CPU)314およびシステムメモリ316、および、典型的には、1つ以上の不揮発性大容量記憶デバイス318(1つ以上のハードディスクおよび/または光学記憶ユニット等)を含んでもよい。コンピュータ312はさらに、それを経由してCPU314、メモリ316、および記憶デバイス318が相互に通信し、伝統的なユーザインターフェースコンポーネント322(例えば、スクリーン、キーボード、およびマウスを含む)等の内部または外部入力/出力デバイス、およびビーム形成器306および撮像デバイス310と通信する、双方向性システムバス320を含む。
【0068】
システムメモリ316は、CPU314の動作および他のハードウェアコンポーネントとのその相互作用を制御する、モジュールの群として概念的に図示される命令を含有する。オペレーティングシステム324は、メモリ分配、ファイル管理、および大容量記憶デバイス318の動作等の低レベル基本システム機能の実行を指図する。より高いレベルにおいて、1つ以上のサービスアプリケーションが、処置計画および実行のために要求される算出機能性を提供する。例えば、図示されるように、本システムは、撮像デバイス310から受信された画像を表示し、分析し、注釈を付けるための画像処理モジュール326と、トランスデューサ要素304の相対的位相および振幅を算出するためのトランスデューサ制御モジュール328とを含んでもよい。
【0069】
さらに、本システムは、処理された画像およびユーザ入力に基づいて、一連の超音波処理のシーケンス、場所、および処置プロファイルパラメータを決定する処置プランナ330を含み、結果として生じる処置計画は、位相および振幅設定を決定するためにトランスデューサコントローラ328によって、および/またはマイクロバブル投与プロファイルを決定するために投与デバイス309によって使用されてもよい。
図3Bを参照すると、処置プランナ330は、それ自体が、上記に説明されるシミュレーションステップおよび機能を実施するためのいくつかの別個であるが、相互通信するモジュールを含んでもよい。例えば、処置プランナ330は、撮像デバイス310から受信された画像データを処理および分析し、それに基づいて、画像内の標的腫瘍領域および/または標的BBB領域を決定するための画像分析モジュール332と、標的BBB領域における集束帯を生成するために超音波パラメータの設定を算出するための超音波印加モジュール334と、(例えば、マイクロバブル強化超音波手技を被る患者の遡及的研究に基づいて、および/または物理モデルを使用して)所望のマイクロバブル特性を決定するためのマイクロバブル注入モジュール336と、マイクロバブル特性および超音波設定に基づいて、マイクロバブルからの音響応答を予測するための音響応答予測モジュール338と、予測されたマイクロバブル応答および/または標的/非標的組織の解剖学的/物質性質に基づいて、標的BBB領域および/または非標的領域における組織破綻効果を予測するための組織応答予測モジュール340とを含んでもよい。一実装では、処置プランナ330はさらに、標的腫瘍組織を処置するための治療剤の投与プロファイルを決定するための作用物質注入モジュール342を含む。代替として、処置プランナ330は、ある放射線量を標的腫瘍組織に印加するための放射線印加モジュール344を含んでもよい。種々のモジュールは、上記に説明される技法を利用し、限定ではないが、C、C++、C#、Ada、Basic、Cobra、Fortran、Java(登録商標)、Lisp、Perl、Python、Ruby、またはObject Pascal等の高レベル言語または低レベルアセンブリ言語を含む、任意の好適なプログラミング言語でプログラムされてもよく、いくつかの実施形態では、異なるモジュールは、異なる言語でプログラムされる。当業者によって容易に理解されるであろうように、本明細書に従って処置計画方法を実行するために要求される算出機能性は、多くの異なる方法で(ソフトウェアモジュールにおいて、または別様に)編成されてもよく、
図3Aおよび3Bに描写される実施形態は、したがって、限定と見なされるものではない。
【0070】
一般に、本明細書に採用される用語および表現は、限定ではなく、説明の用語および表現として使用され、そのような用語および表現の使用において、示され、説明される特徴の任意の均等物またはその一部を除外するいかなる意図も存在しない。加えて、本発明のある実施形態を説明しているが、本明細書に開示される概念を組み込む他の実施形態も、本発明の精神および範囲から逸脱することなく使用され得ることが、当業者に明白となるであろう。故に、説明される実施形態は、あらゆる点で例証的にすぎず、制限的ではないと見なされるものである。