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特許7289063二次電池の残存性能評価方法、二次電池の残存性能評価プログラム、演算装置、及び残存性能評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】二次電池の残存性能評価方法、二次電池の残存性能評価プログラム、演算装置、及び残存性能評価システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230602BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20230602BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20230602BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230602BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20230602BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230602BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20230602BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/389
G01R31/387
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H02J7/00 Q
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020504790
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2018044666
(87)【国際公開番号】W WO2019171688
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2018041115
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】佐田 友和
(72)【発明者】
【氏名】永山 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】大地 幸和
(72)【発明者】
【氏名】早山 和弥
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194082(WO,A1)
【文献】特開2014-224706(JP,A)
【文献】特開2017-134894(JP,A)
【文献】特開2014-052186(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
G01R 31/382
G01R 31/385
G01R 31/389
G01R 31/387
H01M 10/48
H01M 10/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次利用済みの二次電池の劣化度を診断するために一次利用終了後に実施された劣化診断の実測値を取得する処理と、
前記実測値に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する処理と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する処理と、
をコンピュータに実行させる二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項2】
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記劣化速度を更新する処理は、前記保存劣化の劣化速度と、前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
請求項1に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項3】
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度の和で規定され、
前記診断する処理は、前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断し、
前記劣化速度を更新する処理は、前記内訳に基づき、前記保存劣化の劣化速度と前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
請求項1または2に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項4】
前記診断する処理は、前記二次電池の容量測定と、当該容量測定に加えて、dV/dQ測定、交流インピーダンス測定、及び直流抵抗測定の少なくとも1つを実施し、その実施結果に基づき前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断する、
請求項3に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項5】
一次利用済みの二次電池の劣化度を診断するための実測値として、前記二次電池の一次利用時の動作履歴を取得する処理と、
前記一次利用前に事前評価した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則と、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則が異なる場合、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則に更新する処理と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する処理と、
をコンピュータに実行させる二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項6】
前記二次電池の一次利用時は車載用途に使用され、二次利用時は一次利用時より負担の軽い使用方法で使用される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項7】
前記二次電池の二次利用時は、一次利用時と比較して、使用SOC(State Of Charge)範囲の上限が低い、使用SOC範囲の下限が高い、充電レートが低い、放電レートが低い、及び休止時間が長い、の少なくとも1つを満たす、
請求項6に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項8】
前記残存性能を推定する処理は、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を、前記二次電池の二次利用開始時から使用終了点に到達するまでの期間、充/放電可能容量、及び充/放電可能電力量の少なくとも1つで出力する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項9】
一次利用済みの二次電池の劣化度を診断するための実測値を取得する処理と、
前記実測値に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する処理と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記残存性能を推定する処理は、前記実測値に基づき、前記二次電池の二次利用開始後から前記二次電池の使用末期に発生する、電解液の減少による容量の急激な劣化の開始点である急劣化点までの残存性能を推定し、保存劣化およびサイクル劣化に基づく前記二次電池の使用終了点と、前記急劣化点の内、早く到達する方に基づき前記二次電池の残存性能を決定する、
二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項10】
一次利用済みの二次電池の劣化度を診断するための実測値を取得する処理と、
前記実測値に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する処理と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記二次電池は、複数のセルを含む電池モジュールであり、
前記残存性能を推定する処理は、前記電池モジュールのSOC範囲を、前記複数のセルのSOC範囲の最大の上限値と最小の下限値で規定されるSOC範囲に設定し、当該SOC範囲をもとに前記電池モジュールのサイクル劣化を推定する、
二次電池の残存性能評価プログラム。
【請求項11】
一次利用済みの二次電池の劣化度を診断するために一次利用終了後に実施された劣化診断の実測値を取得する劣化診断部と、
前記実測値に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する劣化速度更新部と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する残存性能推定部と、
を備える演算装置。
【請求項12】
一次利用済みの二次電池の状態を測定する測定装置と、
前記測定装置により測定されたデータをもとに、前記二次電池の残存性能を評価する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記測定装置により測定されたデータを、前記二次電池の劣化度を診断するために一次利用終了後に実施された劣化診断の実測値として取得する劣化診断部と、
前記実測値に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する劣化速度更新部と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する残存性能推定部と、
を含む残存性能評価システム。
【請求項13】
一次利用済みの二次電池の劣化度を診断するために一次利用終了後に実施された劣化診断の実測値を取得するステップと、
前記実測値に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新するステップと、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定するステップと、
を有する二次電池の残存性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次利用済みの二次電池の残存性能を評価する、二次電池の残存性能評価方法、二次電池の残存性能評価プログラム、演算装置、及び残存性能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が様々な用途で使用されている。例えば、EV(Electric Vehicle)、HEV (Hybrid Electric Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)の走行用モータに電力を供給することを目的とする車載用途、ピークシフト、バックアップを目的とした蓄電用途、系統の周波数安定化を目的としたFR(Frequency Regulation)用途等に使用されている。
【0003】
二次電池の長寿命化に伴い、二次電池の寿命到達前における用途転換(例えば、車載用途から定置型の蓄電用途への転換)が増えてくると予想される。従って、一次利用を終えた二次電池の二次利用の前に、当該二次電池の余寿命などの残存性能を推定するニーズが、今後高まると予想される。二次電池の一次利用は、初期の使用方法による使用であり、二次電池の二次利用は、初期の使用方法から変更された使用方法による使用である。一次利用と二次利用との間で用途が異なることが原則であるが、同じ用途であっても負担が軽減された使用方法への変更である場合、変更後の使用は二次利用に該当する。
【0004】
これに対して、二次電池の一次利用中の温度、SOC(State Of Charge)の履歴を記憶し、一次利用時の保存劣化量を二次利用に引き継いで保存劣化量を推定し、別途に推定したサイクル劣化を合算して、二次電池の劣化度及び余寿命を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そこでは保存劣化は、時間の平方根に比例して劣化が進行し、サイクル劣化は、積算電流量/電力量に対して線形に劣化が進行することが前提とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/194082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら実際の二次電池の保存劣化は、必ずしも時間の平方根に比例して劣化が進行するとは限らない。例えば、時間の0.4乗則に比例して劣化が進行する場合や時間の0.6乗則に比例して劣化が進行する場合もある。また実際の二次電池のサイクル劣化も、必ずしも電流/電力の積算量に対して線形に劣化が進行するとは限らない。例えば、電流/電力の積算量の0.9乗則に比例して劣化が進行する場合もある。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の二次電池の残存性能評価方法は、一次利用済みの二次電池の劣化度を、実測値に基づき診断するステップと、前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新するステップと、更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定するステップと、を有する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る二次電池のライフサイクルを説明するための図である。
図2】本開示の実施の形態に係る残存性能評価システムの構成例を示す図である。
図3】二次電池の一次利用期間と二次利用期間のトータルの劣化予測カーブの一例を示す図である。
図4】二次電池の一次利用時の用途が、二次電池の二次利用期間の劣化予測カーブに与える影響を具体例で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施の形態は二次電池のリユースに関する。本実施の形態では、二次電池の一次利用が終了すると、当該二次電池を分解することなく、当該二次電池を回収して当該二次電池に対して劣化診断を実施する。当該劣化診断の結果に基づき、当該二次電池の二次利用時における残存性能を推定する。以下、本実施の形態では二次電池としてリチウムイオン二次電池を使用する例を想定する。
【0013】
図1は、本開示の実施の形態に係る二次電池5のライフサイクルを説明するための図である。二次電池5はまず、一次利用製品1に搭載されて使用される。一次利用製品1は例えば、EV、HEV、又はPHVであり、二次電池5は車両の駆動用電池として使用される。一次利用製品1は管理部1a及び履歴データベース1bを含む。
【0014】
二次電池5の劣化状態は一般的に、SOH(State Of Health)で規定される。SOHは、初期の満充電容量に対する現在の満充電容量の比率で規定され、数値が低いほど(0%に近いほど)劣化が進行していることを示す。即ち、SOHは容量維持率を示し、(1-SOH)は容量劣化率を示す。
【0015】
二次電池5の定常的な劣化は、保存劣化とサイクル劣化の和で近似できる。保存劣化は、充放電中、非充放電中を問わず、二次電池5の各時点における温度、各時点におけるSOCに応じて経時的に進行する劣化である。保存劣化は主に負極に被膜(SEI(Solid Electrolyte Interphase)膜)が形成されることに起因して発生する。保存劣化は一般的に下記(式1)に示すように、時間tの0.5乗則(平方根)で劣化が進行する。また保存劣化は、各時点におけるSOC(State Of Charge)と温度Tに依存する。一般的に、各時点におけるSOCが高いほど(100%に近いほど)、また各時点における温度Tが高いほど、劣化速度kは増加する。
【0016】
保存劣化による容量劣化率=t×k(T,SOC) ・・・(式1)
k(T,SOC)は保存劣化の劣化速度を示す。nは通常、0.5である。
【0017】
サイクル劣化は、充放電の回数が増えるにつれ進行する劣化である。サイクル劣化は、活物質の膨張/収縮による割れや剥離などに起因して発生する。サイクル劣化は一般的に下記式(2)に示すように、充放電進行度の1乗則(線形)で劣化が進行する。充放電進行度cは、サイクル数(充放電回数)、累積充電電流量[Ah]、累積放電電流量[Ah]、両者の絶対値和[Ah]、累積充電電力量[Wh]、累積放電電力量[Wh]、及び両者の絶対値和[Wh]のいずれかで規定することができる。充放電進行度cをサイクル数をもとに規定する場合において、充放電時に使用するSOC範囲が一定の場合、充放電進行度cにサイクル数をそのまま使用することができる。充放電時に使用するSOC範囲が可変する場合、充放電進行度cに、充放電時に実際に使用したSOC範囲で充放電回数を補正した値を使用する。またサイクル劣化は、使用するSOC範囲、温度T、電流レートCに依存する。一般的に、使用するSOC範囲は範囲が広いほど、また温度T、電流レートCが高いほど、劣化速度kは増加する。
【0018】
サイクル劣化による容量劣化率=c×k(T,SOC範囲,C) ・・・(式2)
k(T,SOC範囲,C)はサイクル劣化の劣化速度を示す。nは通常、1である。
【0019】
二次電池5のメーカは、二次電池5の出荷前に二次電池5と同種類の二次電池を事前に評価し、保存劣化およびサイクル劣化の劣化速度を導出する。二次電池5のメーカは、SOC条件、及び温度条件を変えながら当該二次電池の保存試験を実施し、保存劣化の劣化速度を導出する。その際、容量劣化率が線形に変化するべき乗則nを導出する。一般的に保存劣化の劣化速度は、保存時間tの0.5乗則であるが、実際には0.4に近い値であったり、0.6に近い値の場合もあり、ばらつきがある。
【0020】
二次電池5のメーカは、使用SOC範囲条件、温度条件、及び電流レート条件を変えながら当該二次電池の充放電試験を実施し、サイクル劣化の劣化速度を導出する。その際、容量劣化率が線形に変化するべき乗則nを導出する。一般的にサイクル劣化の劣化速度は、充放電進行度cの1乗則であるが、実際には1未満になる場合もある。
【0021】
二次電池5のメーカは、二次電池5の一次利用期間の使用方法及び使用環境のモデルデータを取得し、上記(式1)、(式2)に代入する。上述のように保存劣化の劣化速度はSOC、温度Tに依存し、サイクル劣化の劣化速度はSOC範囲、温度T、電流レートCに依存する。一次利用期間のモデルデータを当該各パラメータに代入することにより、保存劣化の劣化速度と、サイクル劣化の劣化速度を導出する。保存劣化の劣化速度とサイクル劣化の横軸の尺度をそれぞれ時間に換算し、保存劣化の劣化速度とサイクル劣化の劣化速度の縦軸の容量劣化率を加算して、二次電池5の劣化予測カーブ(推移)を推定する。容量劣化率が所定値に到達した時点を終了点に設定することにより、二次電池5の寿命を推定することができる。
【0022】
二次電池5のメーカは、導出した二次電池5の使用方法及び使用環境別の保存劣化マップと、サイクル劣化マップと、二次電池5の劣化予測カーブを、残存性能評価システム3の演算装置20の一次利用劣化データベース22aに登録する。
【0023】
一次利用製品1の管理部1aは、一次利用製品1に搭載されている二次電池5を管理する。管理部1aは、二次電池5の動作履歴を履歴データベース1bに記録する。具体的には管理部1aは、二次電池5の充放電動作時の上限SOC、下限SOC、充電レート、放電レートを時刻情報とともに記録する。また管理部1aは、二次電池5の休止時のSOC、温度、休止時間を時刻情報とともに記録する。
【0024】
二次電池5の一次利用が終了すると二次電池5が一次利用製品1から取り外され、劣化診断に供される。二次電池5の一次利用の終了は例えば、一次利用製品1の下取りや電池交換時に到来する。一次利用済みの二次電池5の劣化診断は、カーディーラの店舗や、メーカ又は中古流通業者の店舗や工場内で実施される。二次電池5の劣化診断は、残存性能評価システム3を用いて実施される。
【0025】
残存性能評価システム3は、測定装置10及び演算装置20を含む。測定装置10は、一次利用済みの二次電池5の状態を、二次電池5を分解せずに、測定する装置である。演算装置20は、測定装置10により測定されたデータをもとに、一次利用済みの二次電池5の劣化状態を診断し、一次利用済みの二次電池5の残存性能を評価する装置である。
【0026】
測定装置10と演算装置20は、同一の筐体内に一体化されて構成された専用の機器であってもよいし、専用の測定装置10と汎用の演算装置20との組み合わせで構成されてもよい。汎用の演算装置20として例えば、PC、サーバ、タブレット端末、スマートフォン等を使用することができる。汎用の演算装置20と専用の測定装置10は、USBケーブルなどで接続される。なお両者の間を、無線LANやBluetooth(登録商標)などの無線で接続してもよい。
【0027】
また演算装置20は、クラウド上に設置されるサーバであってもよい。その場合、測定装置10と演算装置20はインターネットや専用線を介して接続される。
【0028】
残存性能評価システム3による診断の結果、一次利用済みの二次電池5の残存性能量が所定量以上の場合、二次利用に供される。二次利用製品2は例えば、定置型蓄電システムであり、二次電池5は例えば、バックアップ用の電池として使用される。二次利用製品2は管理部2a及び履歴データベース2bを含む。
【0029】
二次利用時の二次電池5は、一次利用時より負担の軽い使用方法で使用される。具体的には、二次電池5の二次利用の用途は、一次利用の用途と比較して、使用SOC範囲の上限が低い、使用SOC範囲の下限が高い、充電レートが低い、放電レートが低い、及び休止時間が長い、の少なくとも1つを満たしている。
【0030】
一次利用が車載用途、二次利用が定置型蓄電用途は一例であり、これに限るものではない。例えば一次利用製品1が大型モータを搭載した車両、二次利用製品2が小型モータを搭載した車両であってもよい。また一次利用製品1がFR用途で使用される定置型蓄電システム、二次利用製品2がバックアップ用途で使用される定置型蓄電システムであってもよい。いずれの場合も二次利用時の方が一次利用時より、二次電池5の負担が軽くなる。
【0031】
図2は、本開示の実施の形態に係る残存性能評価システム3の構成例を示す図である。測定装置10は電源回路11、電流センサ12、電圧センサ13及び通信部14を含む。電源回路11は、測定装置10に接続された二次電池5を、所定の電圧値または所定の電流値で充電または放電することができる。また測定装置10が発振器を搭載している場合、電源回路11は所定の周波数の交流電力で二次電池5を充電または放電することができる。
【0032】
電流センサ12は、二次電池5に流れる電流を計測して通信部14に出力する。電流センサ12には例えば、シャント抵抗/ホール素子と差動アンプの組み合わせ、又はCTセンサを使用することができる。電圧センサ13は、二次電池5の電圧を計測して通信部14に出力する。電圧センサ13には例えば、差動アンプを使用することができる。なお図2に示していないが測定装置10は、測定時における二次電池5の温度変化を検出するための温度センサも含む。温度センサには例えば、サーミスタを使用することができる。
【0033】
通信部14は、電流センサ12により計測された電流、電圧センサ13により計測された電圧、温度センサにより計測された温度を所定の通信規格に従い、演算装置20に送信する。なお測定装置10側に、計測されたデータを保持するためのデータロガーが搭載されていてもよい。
【0034】
演算装置20は、制御部21、記憶部22、通信部23及び外部メディア装着部24を含む。制御部21は劣化診断部21a、劣化速度更新部21b及び残存性能推定部21cを含む。制御部21の機能はハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてCPU、GPU、DSP、FPGA、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0035】
記憶部22は一次利用劣化データベース22a、計測データデータベース22b、一次利用履歴データベース22c及び二次利用劣化データベース22dを含む。記憶部22はHDD、SSDなどの大容量の不揮発性メモリを備える。
【0036】
通信部23は、所定の通信規格に従った通信処理を実行する。通信部23は、測定装置10の通信部14から送信されてくる計測データを受信し、制御部21に出力する。制御部21は通信部14から入力された計測データを計測データデータベース22bに保存する。
【0037】
通信部23は、インターネット又は専用線を介して、二次電池5のメーカのデータ管理装置(例えば、サーバ、PC)と接続可能である。通信部23は例えば、二次電池5のメーカのデータ管理装置から、二次電池5のメーカにより事前評価された二次電池5の保存劣化マップ、サイクル劣化マップ及び劣化予測カーブを受信することができる。通信部23は、受信した二次電池5の保存劣化マップ、サイクル劣化マップ及び劣化予測カーブを制御部21に出力する。制御部21は通信部14から入力された二次電池5の保存劣化マップ、サイクル劣化マップ及び劣化予測カーブを一次利用劣化データベース22aに保存する。
【0038】
外部メディア装着部24は、リムーバブルメディアを装着するためのユニットである。リムーバブルメディアは、外部メディア装着部24に着脱可能な記録媒体であり、例えば、半導体メモリカード、光ディスクなどが該当する。なお上述した、二次電池5のメーカにより事前評価された二次電池5の保存劣化マップ、サイクル劣化マップ及び劣化予測カーブは、リムーバブルメディアを介して演算装置20内に取り込まれてもよい。
【0039】
また一次利用製品1の履歴データベース1b内に記録された一次利用期間中の二次電池5の動作履歴も、リムーバブルメディアを介して演算装置20内に取り込むことができる。制御部21は、外部メディア装着部24に装着されたリムーバブルメディア内から、一次利用期間中の二次電池5の動作履歴を読み込み、一次利用履歴データベース22cに保存する。なお一次利用期間中の二次電池5の動作履歴は、一次利用製品1と通信を介して通信部23から演算装置20内に取り込んでもよい。
【0040】
なお本実施の形態では、一次利用期間中の二次電池5の動作履歴を取り込むことは必須ではない。当該動作履歴を取り込まない場合、記憶部22内の一次利用履歴データベース22cは不要である。
【0041】
劣化診断部21aは、一次利用済みの二次電池5の容量測定を行う。一次利用済みの二次電池5を完全に放電した状態から満充電容量まで充電して、現在の満充電容量を測定する。測定した現在の満充電容量と、初期の満充電容量との比率から現在の二次電池5のトータルのSOHを測定することができる。
【0042】
さらに劣化診断部21aは、dV/dQ測定、交流インピーダンス測定、及び直流抵抗測定の少なくとも1つを実施し、その実施結果に基づき二次電池5の保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度の内訳を診断する。dV/dQ測定では、二次電池5を充電または放電して、電圧Vと充電/放電容量Qの関係で規定される充電カーブ/放電カーブを生成する。生成した充電カーブ/放電カーブにおいて、電圧Vを容量Qで微分することにより、dV/dQカーブを生成する。dV/dQカーブのピーク形状やシフト量、ピーク間距離などから電極内の反応分布や劣化状態を推定することができる。例えば、サイクル劣化の影響は、dV/dQカーブ自体の伸縮に現れる。保存劣化の影響は、dV/dQカーブのシフト量に現れる。なおdV/dQカーブから、イオンとして溶けているリチウムが金属として析出した量も推定することもできる。
【0043】
交流インピーダンス測定は、二次電池5に交流電圧を、低周波から高周波まで広範囲に周波数をスイープさせて印加し、その応答電流から内部抵抗を測定する。二次電池5の内部抵抗には主に、正極の抵抗成分、負極の抵抗成分、電解液の抵抗成分、及び拡散抵抗成分が含まれる。応答電流から測定した内部抵抗を複素平面上にプロットし、複素平面上の複数の円弧の形状・大きさをもとに各抵抗成分を特定・分離する。このように交流インピーダンス測定では、時定数の異なる反応を分離することができる。
【0044】
上述したように、保存劣化は主に負極に被膜(SEI膜)が形成されることに起因して発生する。負極の内部抵抗は、負極被膜の厚みと相関関係があり、負極の内部抵抗から二次電池5の保存劣化の劣化度を推定することができる。容量測定により二次電池5のトータルのSOHが既知であるため、二次電池5のトータルの劣化度から保存劣化の劣化度を減じることにより、サイクル劣化の劣化度を推定することができる。
【0045】
直流抵抗測定は、二次電池5を定電流で充電または放電した際の直流応答(DCIR)から得られる時間-電圧波形を利用して、電解液+負極の合成抵抗、正極の抵抗、拡散抵抗を分離して抽出する。周波数応答(ACIR)と時間応答(DCIR)は、フーリエ変換で記述される関係性を有している。例えば、交流印加時に高周波で応答する電解液+負極の抵抗成分は、直流印加時には印加開始から早期に応答する電圧挙動として現れる。
【0046】
一般的なリチウムイオン電池では、負極抵抗の周波数応答は、100Hzから1Hzの範囲に発生する。時間応答では0.01秒から1秒の範囲に発生する。例えば、負極抵抗の周波数応答が10Hz付近の場合、直流印加開始から0.1秒経過時点を、正極抵抗と、負極抵抗+電解液抵抗との境界点に設定する。一般的なリチウムイオン電池では、電解液抵抗の周波数応答は、1kHz近辺に出現する。直流印加開始から0.001秒経過時点を、負極抵抗と電解液抵抗との境界点に設定する。また、拡散抵抗成分は、時間の0.5乗則(平方根)に対して、電圧が1次関数の挙動として現れる。従って電圧上昇が曲線から直線に変化する変化点が、正極抵抗と拡散抵抗との境界点になる。
【0047】
0.001秒単位の電圧を高精度に計測できる電圧センサ13を用いた場合、直流抵抗測定によっても、交流インピーダンス測定と同等の精度で、負極の内部抵抗を計測することができる。上述のように負極の内部抵抗から二次電池5の保存劣化の劣化度を推定することができる。
【0048】
以上に説明した交流インピーダンス測定または直流抵抗測定とともに、GITT(Galvanostatic Intermittent Titration Technique)測定を実施して、各組成の拡散抵抗を測定してもよい。
【0049】
なお測定装置10にX線撮影機能が搭載されている場合、二次電池5をX線撮影することにより、X線透過画像内の負極被膜の厚みをもとに、二次電池5内の負極被膜の厚みを推定してもよい。また測定装置10に音波解析機能が搭載されている場合、負極の共鳴周波数を検出することにより、負極被膜の厚みを推定することができる。上述のように負極被膜の厚みは、負極の内部抵抗と相関関係があり、負極被膜の厚みから二次電池5の保存劣化の劣化度を推定することができる。
【0050】
二次電池5を二次利用するためには、二次電池5を分解せずに電解液の量を計測する必要がある。上述のように電解液抵抗の周波数応答は、1kHz近辺に出現する。そこで二次電池5に1kHz近辺の交流信号を印加して内部抵抗を測定することにより、二次電池5を分解せずに、電解液の量を推定することができる。
【0051】
また劣化診断として二次電池5の重量を測定してもよい。電解液の分解によりガスが発生すると、電解液の量が減り、二次電池5の重量が軽くなる。従って、二次電池5の重量から電解液の量を推定することができる。
【0052】
電解液の減少は容量の急激な劣化の要因となる。容量の急劣化後は、入出力性能が著しく低下する。また、イオンとして溶けているリチウムが金属として析出しやすくなる。金属リチウムが析出すると、金属リチウムがセパレータを貫通し、正極と負極を短絡させる可能性がある。このように容量の急劣化後は、二次電池5の安定性、安全性が低下するため、基本的に二次電池5の使用を終了させる。
【0053】
劣化診断された二次電池5を二次利用する前に、劣化速度更新部21bは、二次電池5の二次利用期間の使用方法及び使用環境のモデルデータを取得し、上記(式1)、(式2)に代入することにより、二次電池5の二次利用期間の保存劣化の劣化速度と、サイクル劣化の劣化速度を導出する。劣化速度更新部21bは、一次利用期間と二次利用期間のトータルの保存劣化の劣化度を下記(式3)により算出することができる。劣化速度更新部21bは、一次利用期間と二次利用期間のトータルのサイクル劣化の劣化度を下記(式4)により算出することができる。
【0054】
保存劣化によるトータルの容量劣化率=((t1×k(T1,SOC1))1/n+(t2×k(T2,SOC2))1/n ・・・(式3)
t1は一次利用期間の経過時間、k(T1,SOC1)は一次利用期間における保存劣化の劣化速度、t2は二次利用期間の経過時間、k(T2,SOC2)は二次利用期間における保存劣化の劣化速度を示す。
【0055】
サイクル劣化によるトータルの容量劣化率=((c1×k(T1,SOC範囲1,C1))1/n+(c2×k(T2,SOC範囲2,C2))1/n ・・・(式4)
c1は一次利用期間における充放電サイクル、k(T1,SOC範囲1,C1)は一次利用期間におけるサイクル劣化の劣化速度、c2は二次利用期間における充放電サイクル、k(T2,SOC範囲2,C2)は二次利用期間におけるサイクル劣化の劣化速度を示す。
【0056】
このようにnべき乗則の劣化を一次利用から二次利用間で引き継ぐには、1/n乗した劣化度同士を加算してからn乗する。これにより任意のnべき乗則の劣化について、一次利用時の劣化を二次利用時の劣化に引き継ぐことができる。なお一般的なサイクル劣化のように、n=1の場合、一次利用時の劣化度と二次利用時の劣化度を単純に合算するだけでよい。ただし、サイクル劣化の劣化べき乗則が1以外の場合、上記(式4)により算出する必要がある。
【0057】
二次電池5の二次利用期間の温度T2、SOC2、SOC範囲2、及び電流レートC2の各パラメータ値は、二次電池5の二次利用期間の使用方法及び使用環境のモデルデータをもとに決定する。二次利用期間の温度T1、SOC1、SOC範囲1、及び電流レートC1の各パラメータ値は、一次利用履歴データベース22cに保存された動作履歴データをもとに決定する。なお、一次利用製品1から動作履歴データを取得していない場合は、二次電池5の一次利用期間の使用方法及び使用環境のモデルデータをもとに決定する。
【0058】
以上に説明した方法は、一次利用期間における保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を、動作履歴データまたはモデルデータに基づき推定したものである。本実施の形態では、一次利用期間における保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度をより正確に特定するために、二次電池5の二次利用前に実施される劣化診断結果に基づき、一次利用期間における保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を特定する。
【0059】
残存性能推定部21cは、上記(式3)のt1×k(T1,SOC1)の値、及び上記(式4)のc1×k(T1,SOC範囲1,C1)の値に、二次電池5の劣化診断により特定した診断時点の保存劣化の劣化度、及びサイクル劣化の劣化度をそれぞれ代入する。残存性能推定部21cは、保存劣化の劣化速度とサイクル劣化の横軸の尺度をそれぞれ時間に換算し、保存劣化の劣化速度とサイクル劣化の劣化速度の縦軸の容量劣化率を加算して、二次電池5の一次利用期間と二次利用期間のトータルの劣化予測カーブを推定する。
【0060】
なお二次電池5が、複数のセルを直列または並列に接続したモジュールで構成される場合、モジュール内の複数セルのSOCにばらつきが発生する場合がある。通常、サイクル劣化の劣化速度は単セルのデータをもとに導出される。モジュールの場合、モジュールに含まれる複数のセルが一律のSOC範囲で動作することを前提としている。モジュール内の複数のセル間の使用SOC範囲にばらつきが発生すると、この前提が崩れる。
【0061】
残存性能推定部21cは、一次利用履歴データベース22cに保存された動作履歴データからモジュールに含まれる複数のセルの各使用SOC範囲を取得する。残存性能推定部21cは全てのセルの使用SOC範囲のOR条件をとり、当該モジュールの使用SOC範囲を決定する。即ち、全てのセルの使用SOC範囲の内、最大となる上限値と、最小となる下限値で規定される範囲を当該モジュールの使用SOC範囲に決定する。
【0062】
残存性能推定部21cは、二次電池5の二次利用期間の使用方法及び使用環境のモデルデータに含まれる二次電池5の使用SOC範囲を、上記モジュールの使用SOC範囲で補正する。一次利用期間のモデルデータに含まれる使用SOC範囲と、二次利用期間のモデルデータに含まれる使用SOC範囲が同じ場合、上記モジュールの使用SOC範囲を、二次利用期間のSOC範囲2に設定する。一次利用期間のモデルデータに含まれる使用SOC範囲と、二次利用期間のモデルデータに含まれる使用SOC範囲が異なる場合、一次利用期間のモデルデータに含まれる使用SOC範囲と、上記モジュールの使用SOC範囲との比率を、二次利用期間のモデルデータに含まれる使用SOC範囲に乗じた値を二次利用期間のSOC範囲2に設定する。
【0063】
モジュールに含まれる全てのセルの使用SOC範囲のOR条件で規定される、最も広く見積もったSOC範囲(=サイクル劣化が最も大きくなるSOC範囲)を使用して、サイクル劣化の劣化度を推定することにより、サイクル劣化の劣化度が実際より低く見積もられることを防止することができる。
【0064】
なお、残存性能推定部21cは、モジュールに含まれる全てのセルの使用SOC範囲の上限値の平均値と、下限値の平均値で規定される範囲を当該モジュールの使用SOC範囲に決定してもよい。また残存性能推定部21cは、モジュールに含まれる全てのセルの使用SOC範囲の上限値の中央値と、下限値の中央値で規定される範囲を当該モジュールの使用SOC範囲に決定してもよい。これらの場合、より実態に近い使用SOC範囲をもとに、サイクル劣化の劣化度を推定することができる。
【0065】
図3は、二次電池5の一次利用期間と二次利用期間のトータルの劣化予測カーブの一例を示す図である。縦軸の電池性能は例えば、SOHで表すことができる。二次電池5の一次利用の終了後、二次電池5の使用方法が、一次利用時の使用方法より負担が軽い使用方法に変更されると、二次電池5の劣化速度が減速する。残存性能推定部21cは、二次電池5の電池性能が所定値(例えば、SOH60%)に到達した時点を使用限界点に設定する。残存性能推定部21cは、二次電池5の二次利用開始時から使用限界点に到達するまでの期間を推定する。
【0066】
また残存性能推定部21cは、二次電池5の二次利用開始時から急劣化点に到達するまでの期間を推定する。上述のように一般的なリチウムイオン電池では、電解液抵抗の周波数応答は、1kHz近辺に出現する。二次電池5の電池メーカは事前評価において、1kHzの交流信号印加時の内部抵抗値の変化速度を導出する。また二次電池5が急劣化点に到達する抵抗閾値を導出する。一般的に、急劣化点に到達する抵抗閾値は20~40mΩの範囲に存在することが多い。
【0067】
残存性能推定部21cは、二次電池5の劣化診断において測定された1kHzの交流信号印加時の内部抵抗値と、事前に導出されている1kHzの交流信号印加時の内部抵抗値の変化速度と、二次電池5の急劣化点に到達する抵抗閾値をもとに、二次電池5の二次利用開始時から急劣化点に到達するまでの期間を推定する。なお一次利用製品1において、1kHzの交流信号印加時の内部抵抗値が定期的に測定されていた場合、内部抵抗値の変化速度は、一次利用履歴データベース22cに保存された動作履歴データをもとに導出することもできる。
【0068】
残存性能推定部21cは、二次電池5の二次利用開始時から定常的な保存劣化およびサイクル劣化に基づく使用限界点に到達するまでの期間と、二次利用開始時から急劣化点に到達するまでの期間の内、短いほうを二次電池5の余寿命の期間として推定する。
【0069】
残存性能推定部21cは、二次電池5の余寿命の期間を、充/放電可能容量、及び充/放電可能電力量の少なくとも1つに換算することができる。残存性能推定部21cは、残存期間、充/放電可能容量、及び残存充/放電可能電力量の少なくとも1つで表した二次電池5の残存性能を、演算装置20の図示しない表示部に表示させる。カーディーラー、メーカ、中古流通業者、又はユーザは、二次電池5の残存性能を把握することにより、二次電池5の経済的な現在価値を評価することができる。
【0070】
また残存性能推定部21cは、推定した二次電池5の残存性能が基準値に満たない場合、再利用不可と表示部に表示してもよい。
【0071】
図4は、二次電池5の一次利用時の用途が、二次電池5の二次利用期間の劣化予測カーブに与える影響を具体例で示す図である。この例では一次利用製品1も二次利用製品2も定置型蓄電システムである。劣化予測カーブaは、一次利用時がFR用途に使用され、二次利用時がバックアップ用途に使用される場合の劣化予測カーブである。劣化予測カーブbは、一次利用時がピークシフト用途に使用され、二次利用時がバックアップ用途に使用される場合の劣化予測カーブである。劣化予測カーブcは、一次利用時も二次利用時もバックアップ用途に使用される場合の劣化予測カーブである。
【0072】
FRは系統の周波数を安定させるために、系統に対して充電と放電を繰り返す制御である。従って、FR用途では充放電の頻度が高いためサイクル劣化が保存劣化よりも相対的に大きくなる。バックアップは、系統の停電に備えて電力を貯蔵しておくものであり、休止時間が殆どを占める。従って、バックアップ用途ではサイクル劣化が小さくなり、保存劣化が相対的に大きくなる。ピークシフトは夜間に系統から充電し、昼間に負荷に放電するものである。ピークシフトは基本的に1日に1回充電し、1日に1回放電する。従って、バックアップ用途ではサイクル劣化も保存劣化も中程度になる。
【0073】
本実施の形態では、一次利用済みの二次電池5の劣化診断により、一次利用による保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度の内訳を特定することができる。図4に示す例では二次利用時の用途がバックアップであるため、二次利用時は保存劣化の寄与が大きくなる。一次利用時の用途もバックアップの場合、一般的に0.5乗則の劣化速度で進行する保存劣化が既に進行しているため、劣化速度の傾きが緩くなるゾーンに入ってくる。従って、一次利用時の用途がバックアップで二次利用時の用途もバックアップである場合、二次利用時の劣化速度は緩くなり、二次利用における余寿命は長くなる。
【0074】
これに対して、一次利用時の用途がFRである場合、保存劣化が進行していない状態であるため、二次利用時の用途がバックアップである場合、保存劣化の劣化速度の傾きが急なゾーンの影響を大きく受ける。従って、一次利用時の用途がFRで二次利用時の用途がバックアップの場合、二次利用における余寿命は短くなる。一次利用時の用途がピークシフトで二次利用時の用途がバックアップの場合、二次利用における余寿命は、両者の中間になる。
【0075】
以上説明したように本実施の形態によれば、一次利用済みの二次電池5を劣化診断し、劣化診断結果をもとに二次利用時の劣化予測カーブを推定することにより、一次利用済みの二次電池5の残存性能を高精度に推定することができる。一次利用済みの二次電池5の劣化状態を実測値に基づき推定するため、一次利用製品1における二次電池5の動作履歴データを必須としない。従って、二次電池5の動作履歴データを記録する機能を有しない一次利用製品1で使用された二次電池5も、残存性能推定の対象とすることができる。
【0076】
二次電池5の二次利用の直前に非破壊(二次電池5を分解することなく)で劣化診断を行うことにより、一次利用終了から二次利用開始までの在庫期間における保存劣化の影響も、残存性能推定に反映させることができる。また電解液の減少などに起因する急劣化の発生時期も予測するため、二次利用開始後の余寿命を高精度に予測することができる。
【0077】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0078】
例えば、二次電池5の二次利用開始前に、演算装置20の劣化速度更新部21bは、一次利用期間中の二次電池5の動作履歴データをもとに保存劣化の劣化速度の劣化べき乗則を新たに導出してもよい。二次電池5の保存劣化の劣化速度の劣化べき乗則が、二次電池5の個体差や使用後の特性変化などにより、事前評価により導出された値とずれることがある。動作履歴データに、温度、SOC、時間、SOHに関する計測データが含まれる場合、保存劣化の劣化速度k(T,SOC)が一次関数になるように逆算して劣化べき乗則nを導出する。導出した劣化べき乗則nが事前評価で導出した劣化べき乗則nと異なる場合、新たに導出した劣化べき乗則nを用いて上記(式3)を算出する。
【0079】
二次電池5のサイクル劣化の劣化速度の劣化べき乗則も同様に、一次利用期間中の二次電池5の動作履歴データをもとに新たに導出してもよい。動作履歴データを用いて、サイクル劣化の劣化速度k(T,SOC範囲,C)が一次関数になるように逆算して劣化べき乗則nを導出する。導出した劣化べき乗則nが事前評価で導出した劣化べき乗則nと異なる場合、新たに導出した劣化べき乗則nを用いて上記(式4)を算出する。
【0080】
このように保存劣化の劣化速度の劣化べき乗則と、サイクル劣化の劣化速度の劣化べき乗則を厳密に推定して適宜更新することにより、劣化べき乗則に固定値を使用する場合より、高精度に保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を推定することができる。
【0081】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0082】
[項目1]
一次利用済みの二次電池の劣化度を、実測値に基づき診断する処理と、
前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する処理と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する処理と、
をコンピュータに実行させる二次電池の残存性能評価プログラム。
これによれば、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。[項目2]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記劣化速度を更新する処理は、前記保存劣化の劣化速度と、前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目1に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を考慮することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目3]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度の和で規定され、
前記診断する処理は、前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断し、
前記劣化速度を更新する処理は、前記内訳に基づき、前記保存劣化の劣化速度と前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目1または2に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を実測値に基づき推定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目4]
前記診断する処理は、前記二次電池の容量測定と、当該容量測定に加えて、dV/dQ測定、交流インピーダンス測定、及び直流抵抗測定の少なくとも1つを実施し、その実施結果に基づき前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断する、
項目3に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
複数の診断方法を併用することにより、保存劣化とサイクル劣化の内訳を高精度に推定することができる。
[項目5]
前記二次電池の一次利用時の動作履歴を取得する処理をさらにコンピュータに実行させ、
前記劣化速度を更新する処理は、前記一次利用前に事前評価した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則と、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則が異なる場合、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則に更新する、
項目1から4のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
劣化速度の劣化べき乗則を最適な値に設定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目6]
前記二次電池の一次利用時は車載用途に使用され、二次利用時は一次利用時より負担の軽い使用方法で使用される、
項目1から5のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
これによれば、二次電池のライフサイクル全体の期間を延長することができる。
[項目7]
前記二次電池の二次利用時は、一次利用時と比較して、使用SOC(State Of Charge)範囲の上限が低い、使用SOC範囲の下限が高い、充電レートが低い、放電レートが低い、及び休止時間が長い、の少なくとも1つを満たす、
項目6に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
これによれば、二次電池の二次利用時の負担を軽減することができる。
[項目8]
前記残存性能を推定する処理は、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を、前記二次電池の二次利用開始時から使用終了点に到達するまでの期間、充/放電可能容量、及び充/放電可能電力量の少なくとも1つで出力する、
項目1から7のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
これによれば、一次利用済みの二次電池の価値を数値化することができる。
[項目9]
前記残存性能を推定する処理は、前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の二次利用開始後から前記二次電池の使用末期に発生する急劣化点までの残存性能を推定し、保存劣化およびサイクル劣化に基づく前記二次電池の使用終了点と、前記急劣化点の内、早く到達する方に基づき前記二次電池の残存性能を決定する、
項目1から8のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
これによれば、二次電池の余寿命を高精度に推定することができる。
[項目10]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記二次電池は、複数のセルを含む電池モジュールであり、
前記残存性能を推定する処理は、前記電池モジュールのSOC範囲を、前記複数のセルのSOC範囲の最大の上限値と最小の下限値で規定されるSOC範囲に設定し、当該SOC範囲をもとに前記電池モジュールのサイクル劣化を推定する、
項目1から9のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価プログラム。
これによれば、サイクル劣化の劣化度を過小に推定することを防止することができる。
[項目11]
一次利用済みの二次電池の劣化度を、実測値に基づき診断する劣化診断部(21a)と、
前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する劣化速度更新部(21b)と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する残存性能推定部(21c)と、
を備える演算装置(20)。
これによれば、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目12]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記劣化速度更新部(21b)は、前記保存劣化の劣化速度と、前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目11に記載の演算装置(20)。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を考慮することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目13]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度の和で規定され、
前記劣化診断部(21a)は、前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断し、
前記劣化速度更新部(21b)は、前記内訳に基づき、前記保存劣化の劣化速度と前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目11または12に記載の演算装置(20)。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を実測値に基づき推定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目14]
前記劣化診断部(21a)は、前記二次電池の容量測定と、当該容量測定に加えて、dV/dQ測定、交流インピーダンス測定、及び直流抵抗測定の少なくとも1つを実施し、その実施結果に基づき前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断する、
項目13に記載の演算装置(20)。
複数の診断方法を併用することにより、保存劣化とサイクル劣化の内訳を高精度に推定することができる。
[項目15]
前記残存性能推定部(21c)は、前記二次電池の一次利用時の動作履歴を取得し、
前記劣化速度更新部(21b)は、前記一次利用前に事前評価した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則と、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則が異なる場合、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則に更新する、
項目11から14のいずれか1項に記載の演算装置(20)。
劣化速度の劣化べき乗則を最適な値に設定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目16]
前記二次電池の一次利用時は車載用途に使用され、二次利用時は一次利用時より負担の軽い使用方法で使用される、
項目11から15のいずれか1項に記載の演算装置(20)。
これによれば、二次電池のライフサイクル全体の期間を延長することができる。
[項目17]
前記二次電池の二次利用時は、一次利用時と比較して、使用SOC(State Of Charge)範囲の上限が低い、使用SOC範囲の下限が高い、充電レートが低い、放電レートが低い、及び休止時間が長い、の少なくとも1つを満たす、
項目16に記載の演算装置(20)。
これによれば、二次電池の二次利用時の負担を軽減することができる。
[項目18]
前記残存性能推定部(21c)は、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を、前記二次電池の二次利用開始時から使用終了点に到達するまでの期間、充/放電可能容量、及び充/放電可能電力量の少なくとも1つで出力する、
項目11から17のいずれか1項に記載の演算装置(20)。
これによれば、一次利用済みの二次電池の価値を数値化することができる。
[項目19]
前記残存性能推定部(21c)は、前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の二次利用開始後から前記二次電池の使用末期に発生する急劣化点までの残存性能を推定し、保存劣化およびサイクル劣化に基づく前記二次電池の使用終了点と、前記急劣化点の内、早く到達する方に基づき前記二次電池の残存性能を決定する、
項目11から18のいずれか1項に記載の演算装置(20)。
これによれば、二次電池の余寿命を高精度に推定することができる。
[項目20]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記二次電池は、複数のセルを含む電池モジュールであり、
前記残存性能推定部(21c)は、前記電池モジュールのSOC範囲を、前記複数のセルのSOC範囲の最大の上限値と最小の下限値で規定されるSOC範囲に設定し、当該SOC範囲をもとに前記電池モジュールのサイクル劣化を推定する、
項目11から19のいずれか1項に記載の演算装置(20)。
これによれば、サイクル劣化の劣化度を過小に推定することを防止することができる。
[項目21]
一次利用済みの二次電池の状態を測定する測定装置(10)と、
前記測定装置(10)により測定されたデータをもとに、前記二次電池の残存性能を評価する演算装置(20)と、を備え、
前記演算装置(20)は、
前記測定装置(10)により測定されたデータに基づき前記二次電池の劣化度を診断する劣化診断部(21a)と、
前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新する劣化速度更新部(21b)と、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定する残存性能推定部(21c)と、
を含む残存性能評価システム(3)。
これによれば、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目22]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記劣化速度更新部(21b)は、前記保存劣化の劣化速度と、前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目21に記載の残存性能評価システム(3)。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を考慮することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目23]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度の和で規定され、
前記劣化診断部(21a)は、前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断し、
前記劣化速度更新部(21b)は、前記内訳に基づき、前記保存劣化の劣化速度と前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目21または22に記載の残存性能評価システム(3)。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を実測値に基づき推定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目24]
前記劣化診断部(21a)は、前記二次電池の容量測定と、当該容量測定に加えて、dV/dQ測定、交流インピーダンス測定、及び直流抵抗測定の少なくとも1つを実施し、その実施結果に基づき前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断する、
項目23に記載の残存性能評価システム(3)。
複数の診断方法を併用することにより、保存劣化とサイクル劣化の内訳を高精度に推定することができる。
[項目25]
前記残存性能推定部(21c)は、前記二次電池の一次利用時の動作履歴を取得し、
前記劣化速度更新部(21b)は、前記一次利用前に事前評価した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則と、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則が異なる場合、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則に更新する、
項目21から24のいずれか1項に記載の残存性能評価システム(3)。
劣化速度の劣化べき乗則を最適な値に設定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目26]
前記二次電池の一次利用時は車載用途に使用され、二次利用時は一次利用時より負担の軽い使用方法で使用される、
項目21から25のいずれか1項に記載の残存性能評価システム(3)。
これによれば、二次電池のライフサイクル全体の期間を延長することができる。
[項目27]
前記二次電池の二次利用時は、一次利用時と比較して、使用SOC(State Of Charge)範囲の上限が低い、使用SOC範囲の下限が高い、充電レートが低い、放電レートが低い、及び休止時間が長い、の少なくとも1つを満たす、
項目26に記載の残存性能評価システム(3)。
これによれば、二次電池の二次利用時の負担を軽減することができる。
[項目28]
前記残存性能推定部(21c)は、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を、前記二次電池の二次利用開始時から使用終了点に到達するまでの期間、充/放電可能容量、及び充/放電可能電力量の少なくとも1つで出力する、
項目21から27のいずれか1項に記載の残存性能評価システム(3)。
これによれば、一次利用済みの二次電池の価値を数値化することができる。
[項目29]
前記残存性能推定部(21c)は、前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の二次利用開始後から前記二次電池の使用末期に発生する急劣化点までの残存性能を推定し、保存劣化およびサイクル劣化に基づく前記二次電池の使用終了点と、前記急劣化点の内、早く到達する方に基づき前記二次電池の残存性能を決定する、
項目21から28のいずれか1項に記載の残存性能評価システム(3)。
これによれば、二次電池の余寿命を高精度に推定することができる。
[項目30]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記二次電池は、複数のセルを含む電池モジュールであり、
前記残存性能推定部(21c)は、前記電池モジュールのSOC範囲を、前記複数のセルのSOC範囲の最大の上限値と最小の下限値で規定されるSOC範囲に設定し、当該SOC範囲をもとに前記電池モジュールのサイクル劣化を推定する、
項目21から29のいずれか1項に記載の残存性能評価システム(3)。
これによれば、サイクル劣化の劣化度を過小に推定することを防止することができる。
[項目31]
一次利用済みの二次電池の劣化度を、実測値に基づき診断するステップと、
前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の劣化速度を更新するステップと、
更新された劣化速度と、前記二次電池の二次利用時の使用方法に基づき、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を推定するステップと、
を有する二次電池の残存性能評価方法。
これによれば、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。[項目32]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記劣化速度を更新するステップは、前記保存劣化の劣化速度と、前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目31に記載の二次電池の残存性能評価方法。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を考慮することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目33]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度の和で規定され、
前記診断するステップは、前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断し、
前記劣化速度を更新するステップは、前記内訳に基づき、前記保存劣化の劣化速度と前記サイクル劣化の劣化速度をそれぞれ個別に更新する、
項目31または32に記載の二次電池の残存性能評価方法。
保存劣化とサイクル劣化の内訳を実測値に基づき推定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目34]
前記診断するステップは、前記二次電池の容量測定と、当該容量測定に加えて、dV/dQ測定、交流インピーダンス測定、及び直流抵抗測定の少なくとも1つを実施し、その実施結果に基づき前記保存劣化の劣化度と前記サイクル劣化の劣化度の内訳を診断する、
項目33に記載の二次電池の残存性能評価方法。
複数の診断方法を併用することにより、保存劣化とサイクル劣化の内訳を高精度に推定することができる。
[項目35]
前記二次電池の一次利用時の動作履歴を取得するステップをさらに有し、
前記劣化速度を更新するステップは、前記一次利用前に事前評価した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則と、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則が異なる場合、前記一次利用時の動作履歴に基づき導出した前記二次電池の劣化速度の劣化べき乗則に更新する、
項目31から34のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価方法。
劣化速度の劣化べき乗則を最適な値に設定することにより、一次利用済みの二次電池の残存性能を高精度に推定することができる。
[項目36]
前記二次電池の一次利用時は車載用途に使用され、二次利用時は一次利用時より負担の軽い使用方法で使用される、
項目31から35のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価方法。
これによれば、二次電池のライフサイクル全体の期間を延長することができる。
[項目37]
前記二次電池の二次利用時は、一次利用時と比較して、使用SOC(State Of Charge)範囲の上限が低い、使用SOC範囲の下限が高い、充電レートが低い、放電レートが低い、及び休止時間が長い、の少なくとも1つを満たす、
項目36に記載の二次電池の残存性能評価方法。
これによれば、二次電池の二次利用時の負担を軽減することができる。
[項目38]
前記残存性能を推定するステップは、前記二次電池の二次利用開始後の残存性能を、前記二次電池の二次利用開始時から使用終了点に到達するまでの期間、充/放電可能容量、及び充/放電可能電力量の少なくとも1つで出力する、
項目31から37のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価方法。
これによれば、一次利用済みの二次電池の価値を数値化することができる。
[項目39]
前記残存性能を推定するステップは、前記二次電池の診断結果に基づき、前記二次電池の二次利用開始後から前記二次電池の使用末期に発生する急劣化点までの残存性能を推定し、保存劣化およびサイクル劣化に基づく前記二次電池の使用終了点と、前記急劣化点の内、早く到達する方に基づき前記二次電池の残存性能を決定する、
項目31から38のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価方法。
これによれば、二次電池の余寿命を高精度に推定することができる。
[項目40]
前記二次電池の劣化度は、保存劣化の劣化度とサイクル劣化の劣化度を含み、
前記二次電池は、複数のセルを含む電池モジュールであり、
前記残存性能を推定するステップは、前記電池モジュールのSOC範囲を、前記複数のセルのSOC範囲の最大の上限値と最小の下限値で規定されるSOC範囲に設定し、当該SOC範囲をもとに前記電池モジュールのサイクル劣化を推定する、
項目31から39のいずれか1項に記載の二次電池の残存性能評価方法。
これによれば、サイクル劣化の劣化度を過小に推定することを防止することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 一次利用製品、 1a 管理部、 1b 履歴データベース、 2 二次利用製品、 2a 管理部、 2b 履歴データベース、 5 二次電池、 3 残存性能評価システム、 10 測定装置、 11 電源回路、 12 電流センサ、 13 電圧センサ、 14 通信部、 20 演算装置、 21 制御部、 21a 劣化診断部、 21b 劣化速度更新部、 21c 残存性能推定部、 22 記憶部、 22a 一次利用劣化データベース、 22b 計測データデータベース、 22c 一次利用履歴データベース、 22d 二次利用劣化データベース、 23 通信部、 24 外部メディア装着部。
図1
図2
図3
図4