(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】センサ基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230602BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230602BHJP
G01N 35/10 20060101ALN20230602BHJP
G01N 35/08 20060101ALN20230602BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20230602BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20230602BHJP
C07K 16/08 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
G01N21/64 G ZNM
G01N33/543 595
G01N35/10 A
G01N35/08 A
C12M1/34 B
C12Q1/04
C07K16/08
(21)【出願番号】P 2020540103
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025628
(87)【国際公開番号】W WO2020044762
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2018159744
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】柳川 博人
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132339(JP,A)
【文献】特開2015-052562(JP,A)
【文献】国際公開第2014/025033(WO,A1)
【文献】特表2018-515767(JP,A)
【文献】特表2017-503483(JP,A)
【文献】特開2012-220432(JP,A)
【文献】特開2016-020887(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109175(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/109057(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/027643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/83
G01N 1/00-G01N 1/44
G01N 15/00-G01N 15/14
G01N 33/00-G01N 33/98
G01N 35/00-G01N 35/10
G01N 37/00
C12M 1/00-C12M 1/42
C12M 3/00-C12M 3/10
C12Q 1/00-C12Q 1/70
C12Q 3/00
C07K 16/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
ACS PUBLICATIONS
Scitation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面増強蛍光によって検出を行うためのセンサ基板であって、
金属膜で被覆された複数の第1の微細突起を表面に有する第1の基板と、
前記第1の基板の前記表面上に配置され、スリットを有する粘着フィルムと、
前記粘着フィルム上に配置され、第1の透孔および第2の透孔を有する透明な第2の基板と、を備え、
前記第1の透孔および前記第2の透孔の各々は、前記スリットに連通しており、
前記複数の第1の微細突起は、平面視において前記スリットに重畳している、
センサ基板。
【請求項2】
前記第1の基板は、さらに、前記複数の第1の微細突起の周囲に金属膜で被覆されていない複数の第2の微細突起を有する、
請求項1に記載のセンサ基板。
【請求項3】
前記複数の第1の微細突起は、周期的に配列されている、
請求項1または2に記載のセンサ基板。
【請求項4】
前記複数の第1の微細突起は、正三角格子状に配列されている、
請求項3に記載のセンサ基板。
【請求項5】
前記複数の第1の微細突起の各々は、円柱形状を有する、
請求項4に記載のセンサ基板。
【請求項6】
前記複数の第1の微細突起のピッチは、300nm以上500nm以下であり、
前記円柱形状の直径は、150nm以上250nm以下であり、
前記円柱形状の高さは、100nm以上300nm以下である、
請求項5に記載のセンサ基板。
【請求項7】
前記金属膜は、金、銀、または、金もしくは銀を主成分とする合金からなる、
請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ基板。
【請求項8】
さらに、前記金属膜に被覆された前記複数の第1の微細突起に固定化され、被検出物質に特異的に結合する第1の特異的結合物質を備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサ基板。
【請求項9】
前記第1の特異的結合物質は、VHH抗体である、
請求項8に記載のセンサ基板。
【請求項10】
前記金属膜は、リンカー材料で覆われており、
前記第1の特異的結合物質は、前記リンカー材料とのペプチド結合により、前記複数の第1の微細突起に固定化されている、
請求項8または9に記載のセンサ基板。
【請求項11】
前記リンカー材料は、炭素数が10以上のアルキル鎖と、ポリエチレングリコール鎖と、を含む、
請求項10に記載のセンサ基板。
【請求項12】
前記粘着フィルムは、シリコーン粘着剤を含む、
請求項1~11のいずれか1項に記載のセンサ基板。
【請求項13】
前記粘着フィルムの厚みは、50μm以上200μm以下である、
請求項12に記載のセンサ基板。
【請求項14】
前記粘着フィルムは、シリコーン粘着層、ポリイミド層、及びシリコーン粘着層をこの順に含む三層構造を有する、
請求項13に記載のセンサ基板。
【請求項15】
前記第2の基板は、ポリカーボネートからなる、
請求項1~14のいずれか1項に記載のセンサ基板。
【請求項16】
表面増強蛍光によって検出を行うためのセンサ基板の製造方法であって、
第1の基板の表面に複数の第1の微細突起を形成する形成工程と、
前記複数の第1の微細突起上に金属膜を形成する成膜工程と、
スリットを有する粘着フィルムを前記第1の基板上に貼り合わせ、第1の透孔および第2の透孔を有する第2の基板を前記粘着フィルム上に貼り合わせる貼合工程と、を含み、
前記第1の透孔および前記第2の透孔の各々は、前記スリットに連通しており、
前記複数の第1の微細突起は、平面視において前記スリットに重畳している、
センサ基板の製造方法。
【請求項17】
前記貼合工程は、大気圧よりも減圧された環境下で行われる、
請求項16に記載のセンサ基板の製造方法。
【請求項18】
前記貼合工程は、0.1kPa以上10kPa以下の環境下で行われる、
請求項17に記載のセンサ基板の製造方法。
【請求項19】
前記成膜工程では、スパッタリングが用いられる、
請求項16~18のいずれか1項に記載のセンサ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料中の被検出物質(例えばウイルス)を検出するためのセンサ基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスを検出する装置として、イムノクロマト法によるデンシトメトリー分析装置が病院で用いられている。また、特許文献1では、コンパクトディスク型マイクロチップが開示されている。コンパクトディスク型マイクロチップでは、遠心力で検出部にサンプル液が送液される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したコンパクトディスク型マイクロチップでは、高感度にかつ信頼性の高い検出を行うことが困難である。
【0005】
そこで、本開示は、低濃度の被検出物質を高感度にかつ信頼性の高い検出を行うことができるセンサ基板等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るセンサ基板は、表面増強蛍光によって検出を行うためのセンサ基板であって、金属膜で被覆された複数の第1の微細突起を表面に有する第1の基板と、前記第1の基板の前記表面上に配置され、スリットを有する粘着フィルムと、前記粘着フィルム上に配置され、第1の透孔および第2の透孔を有する透明な第2の基板と、を備え、前記第1の透孔および前記第2の透孔の各々は、前記スリットに連通しており、前記複数の第1の微細突起は、平面視において前記スリットに重畳している。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低濃度の被検出物質を高感度かつ信頼性の高い検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、特許文献1におけるコンパクトディスク型マクロチップの断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る検出システムの概略構成図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係るセンサ基板の平面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係るセンサ基板の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るセンサ基板の測定部の平面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るセンサ基板の測定部の断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態における金属微細構造体の部分平面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態におけるリンカー材料を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係るセンサ基板を用いたウイルスの検出方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態に係るセンサ基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施例に係るセンサ基板の検出感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
上述した従来技術では、高感度かつ高信頼性で被検出物質を検出することが困難である。本発明者はその原因を発見した。その発見した原因を以下に述べる。
【0011】
図1は、特許文献1におけるコンパクトディスク型マイクロチップの断面図である。特許文献1では、コンパクトディスク型マイクロチップは、上側の第一ディスク1004と下側の第二ディスク1005とを備える。第一ディスク1004及び第二ディスク1005の間には検出部1016が設けられている。検出部1016は、第一ディスク1004に設けられた透光性を有する凹部と、第二ディスク1005上に設けられた透過型表面プラズモン共鳴センサ1023とからなる。透過型表面プラズモン共鳴センサ1023は、2次元配列された球形ビーズ1030aを有するビーズ層1030上を金属層1035で被覆することで形成されている。
【0012】
このように第一ディスク1004には凹部が形成されている。凹部を形成において、第一ディスク1004にキズ等により凹部の透光性が低下してしまい、光検出に必要な十分な透光性を確保することが難しい。
【0013】
また、第一ディスク1004と第二ディスク1005との貼り合わせに接着剤が用いられるので、製造時に接着剤が透過型表面プラズモン共鳴センサ1023上へ流れ込みやすい。また、接着剤の透過型表面プラズモン共鳴センサ1023への流れ込みを抑制するために接着剤の量を減らせば、第一ディスク1004と第二ディスク1005との密着性が低下する。
【0014】
さらに接着剤を用いれば、接着剤を硬化するための硬化処理が必要となる。硬化処理では、UV又は熱など何らかの形でエネルギーをセンサ基板に与えるため、基板上に固定化されたバイオ材料の変性が生じる。
【0015】
このような課題を解決するためのセンサ基板について、実施の形態に基づいて図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0018】
また、以下の実施の形態では、被検出物質が空気中を浮遊するウイルスを構成する成分(以下、単にウイルスという)である場合について説明するが、本開示において被検出物
質はこれに限られない。ウイルスを構成する成分とは、例えばウイルスを構成するたんぱく質又は核酸などである。ウイルスの種類は、特に限定される必要はなく、一般的にウイルスと分類されるものであれば何でもよい。また、被検出物質は、ウイルスでなくてもよい。
【0019】
(実施の形態1)
[検出システムの概要]
図2は、実施の形態1に係る検出システムの概略構成図である。検出システムは、例えば人が出入りする部屋に設置されている。
図2に示すように、検出システムは、捕集装置100と、検出装置200と、コントローラ300と、を備える。以下に、捕集装置100、検出装置200及びコントローラ300の詳細について説明する。
【0020】
[捕集装置の構成]
捕集装置100は、空気中のウイルスを含み得る微粒子を捕集して捕集液に混合する。
図2に示すように、捕集装置100は、吸引器102と、捕集液タンク104と、ポンプ106と、サイクロン108と、空気吸入口110と、洗浄液タンク116と、ポンプ114と、廃液タンク120と、液体流路126と、を備える。以下に、捕集装置100の各構成要素について説明する。
【0021】
吸引器102は、空気吸入口110から周辺の雰囲気空気を吸入する。周辺の雰囲気空気中を浮遊するウイルスを含み得る微粒子は、空気とともに空気吸入口110よりサイクロン108に吸入される。
【0022】
捕集液タンク104は、空気中のウイルスを捕集するための捕集液を保持するための容器である。
【0023】
ポンプ106は、捕集液タンク104内の捕集液をサイクロン108に供給する。
【0024】
サイクロン108は、空気吸入口110及び捕集液タンク104に接続されており、吸引器102により空気吸入口110から吸入された空気中のウイルスを含み得る微粒子と、ポンプ106により捕集液タンク104から供給された捕集液とを混合する。サイクロン108は、液体流路126を介して検出装置200に接続されている。微粒子が混合された捕集液(以下、試料という)は、サイクロン108から液体流路126を介して検出装置200に排出される。
【0025】
洗浄液タンク116は、サイクロン108及び液体流路126を洗浄するための洗浄液を保持するための容器である。洗浄液タンク116は、サイクロン108に接続されており、洗浄液タンク116内の洗浄液は、ポンプ114によってサイクロン108に供給される。
【0026】
廃液タンク120は、不要な液体を貯蔵するための容器である。廃液タンク120は、例えば、サイクロン108を洗浄後の洗浄液等を貯蔵する。
【0027】
液体流路126は、サイクロン108から出力された試料を、検出装置200に導くための経路である。
【0028】
[検出装置の構成]
次に、検出装置200について、説明する。
【0029】
検出装置200は、捕集装置100によって微粒子が混合された捕集液からウイルスを
検出する。
図2に示すように、検出装置200は、センサ基板10と、導入部206と、光源208と、ビームスプリッタ210と、レンズ212と、検出部214と、回転手段216と、を備える。以下に、検出装置200の各構成要素について説明する。
【0030】
センサ基板10は、主面に垂直な直線を回転軸11aとして回転可能に配置されている。センサ基板10は、同一の主面上に設けられた複数の測定部12を同一の主面上に備える。本実施の形態では、センサ基板10は、回転軸11aに対して回転対称な形状を有し、具体的にはディスク型の基板である。複数の測定部12は、固定化抗体が固定化される金属微細構造体を備える。センサ基板10の詳細は
図2及び
図3を用いて後述する。
【0031】
導入部206は、標識化抗体及び試料を複数の測定部12に導入する。具体的には、導入部206は、標識化抗体と試料とを含む試料2061を複数の測定部12に滴下する。標識化抗体は、蛍光物質で標識された抗体である。試料は、ウイルスを含み得る液体であり、本実施の形態ではサイクロン108から排出された捕集液である。
【0032】
試料にウイルスが含まれれば、当該ウイルスは、固定化抗体を介して金属微細構造体に結合する。このとき、ウイルスは、蛍光物質で標識された標識化抗体とも結合している。つまり、金属微細構造体に、固定化抗体、ウイルス、標識化抗体及び蛍光物質の複合体が結合される。この状態で金属微細構造体に光が照射されると、ウイルスと間接的に結合している蛍光物質から蛍光が発せられ、当該蛍光が表面プラズモンによって増強される。以降において、表面プラズモンによって増強された蛍光を表面増強蛍光と呼ぶ。
【0033】
光源208は、複数の測定部12に励起光を照射する光照射部の一例である。光源208としては、公知の技術を特に限定することなく利用することができる。例えば半導体レーザ、ガスレーザ等のレーザを光源208として利用することができる。なお、光源208は、ウイルスに含まれる物質と相互作用が小さい波長(例えば400nm~2000nm)の励起光を照射することが好ましい。さらには、励起光の波長は、半導体レーザが利用できる波長600nm~850nmであることが好ましい。
【0034】
ビームスプリッタ210は、光源208から照射された励起光から測定部12で発生した表面増強蛍光を分離する。具体的には、ビームスプリッタ210は、光源208からの励起光を通過させ、複数の測定部12の各々で発生した表面増強蛍光を分離して検出部214に導く。
【0035】
レンズ212は、ビームスプリッタ210を通過した光源208からの励起光を検出領域204bに集光する。
【0036】
検出部214は、ビームスプリッタ210により導かれた表面増強蛍光を分光し、特定の波長帯の光を検知することにより、試料中のウイルスの量に相当する電気信号を出力する。検出部214は、特定の波長帯の光を検出できるものであれば公知の技術を特に限定無く利用することができる。例えば、検出部214として、光を分光するために特定の波長帯を透過させる干渉フィルター、回折格子を用いて分光するツェルニー型分光器、及び、エシェル型分光器等を利用することができる。さらには、検出部214は、光源208からの励起光を除去するためのノッチフィルター、あるいは、光源208からの励起光を遮断し、かつ、測定部12で発生した表面増強蛍光を透過させることができるロングパスフィルターを含んでもよい。
【0037】
[コントローラの構成]
コントローラ300は、検出システム全体の動作を制御する。具体的には、コントローラ300は、捕集装置100及び検出装置200を制御する。
【0038】
より具体的には、コントローラ300は、測定の開始を制御して、吸引器102に周辺の空気の吸引を開始させ、かつ、ポンプ106に、捕集液タンク104からサイクロン108に捕集液を供給させる。これにより、サイクロン108において捕集液と微粒子とが混合され、試料がサイクロン108から検出装置200に供給される。さらには、コントローラ300は、光源208に光を照射させ、検出部214に表面増強蛍光を検知させる。
【0039】
例えば、コントローラ300は、入力パラメータに基づいて、予め設定された条件で、各ポンプを制御して所定体積の試料を検出装置200に供給することができる。さらに、コントローラ300は、計時機能を有しており、各動作に要した時間の情報を生成し記憶してもよい。また、コントローラ300は、検出装置200から計測値を受信して、計測値と時間情報とに基づいて、空気中を浮遊するウイルスの濃度の経時的変化を算出してもよい。
【0040】
なお、コントローラ300は、例えば1以上の専用の電子回路によって実現される。1以上の専用の電子回路は、1個のチップ上に集積されてもよいし、複数のチップ上に個別に形成されてもよい。また、コントローラ300は、1以上の専用の電子回路の代わりに、汎用のプロセッサ(図示せず)と、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが格納されたメモリ(図示せず)とによって実現されてもよい。この場合、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが実行されたときに、プロセッサは、コントローラ300として機能する。
【0041】
[センサ基板の構成]
ここで、センサ基板10の詳細な構成について、
図3及び
図4を参照しながら具体的に説明する。
図3は、実施の形態に係るセンサ基板10の平面図である。
図4は、実施の形態に係るセンサ基板10の分解斜視図である。
【0042】
図3に示すように、センサ基板10は、センサ基板10の中心を通りセンサ基板10の主面11eに垂直な直線を回転軸11aとして回転可能に配置される。複数の測定部12は、センサ基板10の主面11e上に、センサ基板10の周方向に並んで配置されている。具体的には、複数の測定部12は、センサ基板10の内側に配列された16個の測定部と、センサ基板10の外側に配列された32個の測定部と、を含む。
【0043】
また、
図4に示すように、センサ基板10は、第1の基板111と、粘着フィルム112と、第2の基板113と、を備える。
【0044】
第1の基板111は、例えばオレフィン等の樹脂基板である。第1の基板111は、複数の微細突起を表面に有する。複数の微細突起の一部は、金属膜で被覆され、金属微細構造体121を構成する。以下において、複数の微細突起のうち金属膜で被覆されたものを第1の微細突起という。一方、複数の微細突起のうち、第1の微細突起の周囲に配置されたものを第2の微細突起という。金属微細構造体121は、センサ基板10の周方向に沿って離散的に配置されている。
【0045】
粘着フィルム112は、両面粘着フィルムであり、第1の基板111上に配置される。粘着フィルム112には、複数のスリット122がセンサ基板10の周方向に沿って離散的に配置されており、この複数のスリット122によって複数の流路が離散的に形成される。複数のスリット122の各々は、センサ基板10の径方向に延びる長円形状の貫通孔である。複数のスリット122は、第1の基板111上の複数の金属微細構造体121に一対一で対応する位置に配置される。これにより、平面視において、各金属微細構造体1
21は、対応する1つのスリットに重畳している。つまり、複数のスリット122に対して一対一で金属微細構造体121が配置される。
【0046】
粘着フィルム112は、シリコーン粘着剤を含んでもよい。これにより、金属微細構造体121への残存モノマーの流出を抑制することができる。また例えば、粘着フィルム112は、シリコーン粘着層、ポリイミド層、及びシリコーン粘着層をこの順に含む三層構造を有してもよい。これにより、粘着フィルム112の強度を向上させることができ、センサ基板10の変形を抑制することができる。なお、粘着フィルム112は、シリコーン粘着層からなる単層構造を有してもよい。また、粘着フィルムの材料は、シリコーン粘着剤及びポリイミドに限定されない。
【0047】
第2の基板113は、例えばガラス又は樹脂製の透明なシートであり、粘着フィルム112上に配置される。具体的には、第2の基板113としては、ポリカーボネート基板を用いることができる。ポリカーボネート基板は、DVDなどの光学ディスクに用いられる汎用的な材料であり、安価で加工も容易である。第2の基板113には、センサ基板10の径方向に並ぶ供給孔123及び排出孔124の複数のセットがセンサ基板10の周方向に沿って離散的に形成される。ここでは、供給孔123及び排出孔124の各々は、カバーシートを貫通する円形状の孔である。各セットにおいて、供給孔123は、排出孔124よりも内側(つまり回転軸11a側)に配置されている。
【0048】
なお、第2の基板113には、流路を形成するための凹部が形成されなくてもよい。したがって、凹部によって第2の基板113の透光性が損なわれることはない。
【0049】
供給孔123及び排出孔124の複数のセットは、複数のスリット122に一対一で対応する位置に配置される。これにより、平面視において、供給孔123及び排出孔124の各セットは、対応する1つの流路内に配置される。つまり、供給孔123及び排出孔124の各セットは、対応する1つのスリットに連通する。
【0050】
これらの1つの金属微細構造体121と、1つのスリット122と、供給孔123及び排出孔124の1つのセットとによって、複数の測定部12の各々が構成されている。
【0051】
[測定部の構成]
ここで、測定部の構成について
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、実施の形態に係るセンサ基板10の測定部12の平面図である。
図6は、実施の形態に係るセンサ基板10の測定部12の断面図である。具体的には、
図6は、
図5のVI-VI切断線における断面図である。
【0052】
ここでは、複数の測定部12のうちの1つの測定部12について説明するが、特に断りがない限り、残りの測定部12も実質的に同一の構成を有する。
【0053】
図5及び
図6に示すように、測定部12は、金属微細構造体121と、スリット122と、供給孔123と、排出孔124と、を備える。
【0054】
供給孔123には、導入部206によって、標識化抗体及びウイルスを含む試料2061が滴下される。供給孔123から供給された試料2061は、センサ基板10の回転による遠心力によってスリット122内の金属微細構造体121上を径方向の外側(センサ基板10の周縁側)に進み、排出孔124に到達する。このとき、試料2061に含まれる標識化抗体及びウイルスの複合体は、金属微細構造体121に固定化された固定化抗体と結合する。
【0055】
排出孔124からスリット122内の試料2061が排出された後、金属微細構造体121が洗浄される。これにより、ウイルスと結合しなかった余剰な標識化抗体が金属微細構造体121から排出される。つまり、固定化抗体に結合したウイルスに結合した標識化抗体が金属微細構造体121内に残る。
【0056】
[金属微細構造体の構成]
次に、金属微細構造体121の構成について
図6及び
図7を参照して説明する。
図7は、実施の形態における金属微細構造体121の部分平面図である。具体的には、
図7は、
図5の領域VIIの拡大図である。
【0057】
図6に示すように、測定部12には、表面プラズモンを発生するためのナノスケールの金属微細構造体121が設けられている。金属微細構造体121は、第1の基板111上の金属膜202で被覆された領域である。
【0058】
第1の基板111は、ナノインプリント又は射出成形により一方の主面の全面に形成されたナノ構造体を有する。ここでは、ナノ構造体は、複数の第1の微細突起111aと、複数の第1の微細突起111aの周囲に配置された複数の第2の微細突起111bと、を含む。なお、微細突起は、第1の基板111の全面に形成される必要はない。例えば、第1の微細突起111aの周囲にのみ第2の微細突起111bが形成されてもよい。
【0059】
複数の第1の微細突起111aは、第1の基板111の金属膜202で被覆された領域にある。複数の第1の微細突起111aは、
図7に示すように、周期的に配列されており、本実施の形態では正三角格子状に配列されている。正三角格子は、六角格子又はp6mとも呼ばれる。なお、複数の第1の微細突起111aの配列は、正三角格子に限定されず、例えば正方格子であってもよい。
【0060】
複数の第2の微細突起111bは、第1の基板111の金属膜202で被覆されていない領域にあり、第1の微細突起111aを囲んでいる。複数の第2の微細突起111bは、複数の第1の微細突起111aと同様に周期的に配列されており、本実施の形態では、正三角格子状に配列されている。なお、複数の第2の微細突起111bの配列は、正三角格子に限定されず、例えば正方格子であってもよい。
【0061】
複数の第1の微細突起111a及び複数の第2の微細突起111bの各々は、円柱形状を有する。複数の第1の微細突起111a及び複数の第2の微細突起111bにおいて、高さとピッチとのサイズの比率は、1:1~1:3であることが望ましい。本実施の形態では、励起光の波長及び蛍光の波長は、750nm~850nmである。したがって、本実施の形態では、複数の第1の微細突起111a及び複数の第2の微細突起111bの各々において、例えば高さは約100nm以上300nm以下であり、直径は約150nm以上250nm以下であり、ピッチは約300nm以上500nm以下であることが望ましい。これらの条件が満たされることにより、750nm~850nmの波長帯において共鳴波長を有する表面プラズモンを発生させることができた。なお、第1の基板111のナノ構造体の形状は、これに限定されるものではなく、複数の微細突起は、円柱形状の代わりに、半球形状を有してもよい。
【0062】
金属膜202は、第1の基板111に金属を成膜することで作製される。励起光の波長及び蛍光の波長が750nm~850nmである場合は、金属膜202の膜厚は、約400nmであることが望ましい。また、金属膜202で被覆された複数の第1の微細突起111aにおいて隣接する金属突起の間の隙間の長さは、固定化抗体の長さと被検出物質の長さと標識化抗体の長さとの総和の100%~200%であることが望ましい。
【0063】
金属膜202の材料は、特に限定される必要はなく、金、銀、銅、若しくはアルミニウム、又はこれらのいずれかの金属を主成分として含む合金であってもよい。また、本実施の形態では、金属膜202の成膜方法として、スパッタリングが用いられている。なお、金属膜202の成膜方法は、特に限定される必要はなく、例えば電子ビーム(EB)蒸着又は真空蒸着であってもよい。
【0064】
[リンカー材料の構成]
ここで、固定化抗体を金属微細構造体121に固定化するためのリンカー材料について
図8を参照しながら具体的に説明する。
図8は、実施の形態におけるリンカー材料203を説明するための図である。
【0065】
図8に示すように、金属微細構造体121は、リンカー材料203で覆われている。ここでは、リンカー材料203は、リンカー分子203a及び非リンカー分子203bを含む自己組織化単分子膜(以下、SAM膜と呼ぶ)である。固定化抗体204は、リンカー分子203aを介して金属微細構造体121に固定される。
【0066】
リンカー分子203aは、一方の末端にチオール基を、他方の末端にカルボキシル基を有する。チオール基は、金属微細構造体121の表面と結合する。カルボキシル基は、固定化抗体204とペプチド結合する。
【0067】
さらに、リンカー分子203aは、チオール基とカルボキシル基との間に、炭素数が10以上のアルキル鎖203dと、ポリエチレングリコール鎖203cとを含む。具体的には、アルキル鎖203dは、チオール基及びポリエチレングリコール鎖203cに接続されており、ポリエチレングリコール鎖203cは、アルキル鎖203d及びカルボキシル基に接続されている。
【0068】
非リンカー分子203bは、一方の末端にチオール基を、他方の末端にヒドロキシル基を有する。チオール基は、金属微細構造体121の表面と結合する。ヒドロキシル基は、親水性であるため、標識化抗体2063及び蛍光物質2064の非特異吸着を抑制する。
【0069】
さらに、非リンカー分子203bは、チオール基とヒドロキシル基との間に、炭素数が10以上のアルキル鎖203dと、ポリエチレングリコール鎖203cとを含む。具体的には、アルキル鎖203dは、チオール基及びポリエチレングリコール鎖203cに接続されており、ポリエチレングリコール鎖203cは、アルキル鎖203d及びヒドロキシル基に接続されている。
【0070】
本実施の形態では、リンカー材料203に含まれるリンカー分子203aは、非リンカー分子203bよりも少ない。
【0071】
試料2061中にウイルス(被検出物質)2062が含まれる場合、そのウイルス2062は、金属微細構造体121に固定された固定化抗体204に結合する。ウイルス2062には、蛍光物質2064で標識された標識化抗体2063も結合されている。
【0072】
このような金属微細構造体121に励起光が照射されると、蛍光物質2064から蛍光が発せられ、金属微細構造体121に生じた表面プラズモンによって当該蛍光が増強される。つまり、ウイルスの量に対応する表面増強蛍光が発せられる。
【0073】
なお、固定化抗体204は、被検出物質に特異的に結合する第1の特異的結合物質の一例であり、例えばVHH抗体である。標識化抗体2063は、被検出物質に特異的に結合する第2の特異的結合物質の一例であり、例えばVHH抗体である。なお、固定化抗体2
04及び標識化抗体2063は、VHH抗体に限定されず、IgG抗体であってもよい。
【0074】
[検出装置の動作]
以上のように構成された検出装置200の動作について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、実施の形態に係るセンサ基板10を用いたウイルスの検出方法を示すフローチャートである。
【0075】
まず、導入部206は、ウイルスを含み得る試料2061を測定部12に導入する(S102)。続いて、光源208は、試料2061が導入された測定部12の金属微細構造体121に励起光を照射する(S104)。検出部214は、励起光の照射により蛍光物質2064から生じる蛍光であって表面プラズモンによって増強された蛍光を計測することにより、試料2061中のウイルスを検出する(S106)。
【0076】
[センサ基板の製造方法]
次に、センサ基板10の製造方法について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、実施の形態に係るセンサ基板10の製造方法を示すフローチャートである。
【0077】
まず、第1の基板111に複数の微細突起(第1の微細突起111a及び第2の微細突起111bを含む)を形成する(S202)。形成方法は、特に限定されないが、例えばナノインプリントを用いることができる。
【0078】
続いて、第1の基板111上に金属膜202を形成する(S204)。金属膜202は、第1の基板111上の複数の微細突起上に離散的に形成される。例えば
図3の測定部12に対応する位置にのみパターニングして金属膜202を形成する。
【0079】
次に、金属微細構造体121をリンカー材料203で覆う(S206)。例えば、第1の基板111をSAM溶液に浸漬することで金属膜202の表面のみにSAM膜が形成される。
【0080】
次に、固定化抗体を金属微細構造体121に固定化する(S208)。例えば、VHH抗体をSAM膜にペプチド結合させる。なお、金属膜202が形成されていない領域にはSAM膜が形成されないため、抗体も固定化されない。
【0081】
最後に、固定化抗体が固定化された第1の基板111、粘着フィルム112及び第2の基板113を貼り合わせる(S210)。このとき、大気圧よりも減圧された環境下で貼り合わせが行われてもよい。特に、0.1kPa以上10kPa以下の環境下で貼り合わせてもよい。これにより、センサ基板10内に気泡が入ることを抑制することができる。
【0082】
また、極めて高い平滑度及び硬度を有するセラミックステージ上でダイヤフラムを用いて第1の基板111、粘着フィルム112及び第2の基板113を押さえ付けることにより貼り合わせが行われてもよい。ダイヤフラムは、周囲が固定された半可撓性材料のシートであり、丸みを帯びた形状を有する。これにより、センサ基板10の反りを抑えながら、第1の基板111及び粘着フィルム112の間、並びに、粘着フィルム112及び第2の基板113の間に気泡が入ることを抑制することができる。このとき、粘着フィルム112の厚みは、50μm以上200μm以下であることが望ましい。これにより、センサ基板10の変形を抑制しつつ、効果的に第1の基板111及び第2の基板113を貼り付けることができた。
【0083】
[効果等]
以上のように、本実施の形態に係るセンサ基板10によれば、第1の基板111と第2
の基板113との間にスリット122を有する粘着フィルム112が挟まれる。したがって、粘着フィルム112のスリット122によって流路を形成することができ、第1の基板111に流路を形成するための加工が不要となる。その結果、第1の基板111の透光性を損なうことなく、高感度検出が可能となる。
【0084】
また、粘着フィルムが用いられるため、第1の基板111と第2の基板113の貼り合わせに接着剤を用いなくてもよい。粘着フィルムは、接着剤よりも流動性が低いので、流路への流れ込みを抑制できる。さらに、粘着フィルムは、硬化工程を必要としないので、固定化抗体の変性を抑制することができる。
【0085】
また、本実施の形態に係るセンサ基板10によれば、金属膜202で被覆された複数の第1の微細突起111aの周囲に金属膜202で被覆されていない第2の微細突起111bを有することできる。したがって、各測定部12の流路から試料が流出することを抑制することができる。金属膜202で被覆された複数の第1の微細突起111aは、SAM膜によって親水化される。したがって、複数の第1の微細突起111a上は、試料が流れやすい。一方、金属膜202で被覆されない複数の第2の微細突起111bは、SAM膜で覆われず、樹脂材料が露出しているため疎水性を有する。したがって、試料は、各測定部12の流路内を流れやすく、疎水性を有する流路外に流出しにくい。その結果、隣接する測定部間による試料の液漏れ(クロストーク)を抑制することができる。
【0086】
また、複数の第2の微細突起111bの微細な隙間を介して、複数の第1の微細突起111a内の試料の脱泡を図ることができる。したがって、複数の第1の微細突起111aの隙間に試料が充填されやすくなり、抗原抗体反応を促進させることができる。
【0087】
(実施例)
以下、実施例を用いてより具体的に説明するが、これら実施例は、本開示を何ら制限するものではない。
【0088】
本実施例では、第1の基板として、複数のピラー(円柱形状の微細突起)を有するナノ構造体がナノインプリントにより形成された樹脂基板を用いた。ピラー高さは200nm、ピラー直径は230nm、ピラーピッチは460nmであった。この樹脂基板に、スパッタリングにより金を400nmの厚さで成膜することで、金属微細構造体を作製した。光源は、785nmの波長を有する励起光を金属微細構造体に照射し、蛍光物質から800nmの波長を有する蛍光が発せられた。この金属微細構造体では、650nm~850nmの波長帯に急峻なプラズモン共鳴による吸収ピークが見られた。
【0089】
その金属微細構造体を、40℃のインキュベータ内でSAM溶液に一晩浸漬することにより、金属微細構造体上にSAM膜を形成した。
【0090】
なお、SAM溶液は、以下の手順で作製した。まず、Carboxy-EG6-undekanethiolと、Hydroxy-EG3-undecanethiolをそれぞれ1mM(10-3mol/L)になるようにエタノールで希釈し混合した。その後、エタノールで5倍希釈することでSAM溶液を作製した。
【0091】
その後、SAM膜の末端に位置するカルボキシル基と、第1のVHH抗体の末端に位置するアミノ基とを、EDC-NHS反応によりペプチド結合させ、第1のVHH抗体をSAM膜に固定化した。
【0092】
このようにして形成した第1の基板を真空貼り合わせ装置を用いて両面粘着フィルムを用いて第2の基板と貼り合わせた。
【0093】
ここに被検出物質であるインフルエンザウイルスの核タンパク(NP)と、有機色素で蛍光標識した第2のVHH抗体を混合した溶液を供給孔から排出孔へ流した。この際、NP濃度を0,1,10,100,1000pMと切り替えて、センサ基板の検出感度を実証したデータを
図11に示す。
【0094】
図11に示すように、本実施例では、PL強度にNP濃度依存性が見られたため、センサ基板内で抗原抗体反応が行われていることを確認できた。また、極めて低濃度であるNP1pMを検出できており、高感度検出できることが実証できた。先行技術では500mMまでしか検出できておらず、先行技術に比べ5x10^11の高感度であった。またこの感度は極めて低濃度である空気中のウイルス濃度を検出することができる値であった。
【0095】
(他の実施の形態)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係るセンサ基板について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0096】
例えば、上記実施の形態において、センサ基板は、円板であったが、これに限定されない。例えば、センサ基板は、多角形板(例えば矩形板)又は楕円板であってもよい。この場合、測定部は、マトリックス状に配列されもよい。
【0097】
なお、上記実施の形態では、センサ基板は、複数の測定部を有していたが、これに限定されない。例えば、センサ基板は、1つの測定部のみを有してもよい。
【0098】
なお、上記実施の形態では、第1の基板の表面の全体に微細突起が形成されていたが、第1の微細突起のみが形成されてもよい。つまり、第1の微細突起の周囲に第2の微細突起が形成されなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示に係るセンサ基板は、部屋に滞在している人へのウイルスの感染リスクを低減するために、部屋の空気中の浮遊するウイルス濃度を高感度に検出する検出システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 センサ基板
11a 回転軸
11e 主面
12 測定部
100 捕集装置
102 吸引器
104 捕集液タンク
106、114 ポンプ
108 サイクロン
110 空気吸入口
111 第1の基板
111a 第1の微細突起
111b 第2の微細突起
112 粘着フィルム
113 第2の基板
116 洗浄液タンク
120 廃液タンク
121 金属微細構造体
122 スリット
123 供給孔
124 排出孔
126 液体流路
200 検出装置
202 金属膜
203 リンカー材料
203a リンカー分子
203b 非リンカー分子
203c ポリエチレングリコール鎖
203d アルキル鎖
204 固定化抗体
206 導入部
208 光源
210 ビームスプリッタ
212 レンズ
214 検出部
216 回転手段
300 コントローラ
2061 試料
2062 ウイルス
2063 標識化抗体
2064 蛍光物質