IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】レーダー装置および車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20230602BHJP
   G01S 13/56 20060101ALI20230602BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230602BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20230602BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G01S7/03 230
G01S13/56
H01Q1/22 A
H01Q1/38
H01Q21/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019165429
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2020148757
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019043775
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 智洋
(72)【発明者】
【氏名】四方 英邦
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-202921(JP,A)
【文献】特開2013-160607(JP,A)
【文献】実開平3-27379(JP,U)
【文献】特開昭54-96389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1の表面に配置され、第1の方向を含む第1の放射角度範囲で前記基板を通らずに第1の電磁波を放射し、かつ、前記第1の方向の反対方向である第2の方向を含む第2の放射角度範囲で前記基板を通して第2の電磁波を放射し、前記第1の電磁波が第1のターゲットによって反射される第1の反射信号を前記基板を介さずに受信し、前記第2の電磁波が第2のターゲットによって反射される第2の反射信号を前記基板を介して受信するアンテナと、
前記第1の反射信号および前記第2の反射信号に基づいて、前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれについてターゲットの検出を行う回路と、
を備えるレーダー装置。
【請求項2】
前記レーダー装置は、室内の第1の座席に設けられ、
前記第1の方向は、前記第1の座席の背面から前方に向かう方向に方向付けられており、かつ、前記第2の方向は、前記室内において前記第1の座席の後方に設けられた第2の座席に向かう方向に方向付けられている、
請求項1に記載のレーダー装置。
【請求項3】
前記回路は、
前記各ターゲットが存在しない場合の前記第1の反射信号および前記第2の反射信号を記憶する記憶部を備え、
前記アンテナが受信する前記第1の反射信号および前記第2の反射信号のそれぞれと、前記記憶部に記憶された前記第1の反射信号および前記第2の反射信号のそれぞれと、の差分に基づいて、前記各ターゲットを検出する、
請求項1又は2に記載のレーダー装置。
【請求項4】
前記回路は、前記第1の反射信号および前記第2の反射信号のそれぞれが示す体動、心拍、および呼吸の少なくとも1つに基づいて、前記各ターゲットの検出を行う、
請求項1から3のいずれか一項に記載のレーダー装置。
【請求項5】
前記各座席の配置に基づいて前記室内に配置された基準指標からの反射信号に基づいて、前記各ターゲットが検出可能であるか否かを判断する、
請求項2に記載のレーダー装置。
【請求項6】
前記第1の座席のリクライニング角度を検出する角度センサ、および、前記第1の座席の前後方向のスライド位置を検出する位置センサの少なくとも1つの検出の結果に基づいて、前記各ターゲットが検出可能であるか否かを判断する、
請求項2に記載のレーダー装置。
【請求項7】
前記アンテナは、前記基板の前記第1の表面に配置された第1のアンテナ素子群を含み、
前記第1の方向は、前記第1の表面の法線方向に沿った方向である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のレーダー装置。
【請求項8】
前記基板は、前記第1のアンテナ素子群の設けられた部分の厚みが他の部分よりも薄い、
請求項7に記載のレーダー装置。
【請求項9】
前記基板は、前記基板を挟んで前記第1の表面の反対側の面である第2の表面に、導波器を備える、
請求項7または8に記載のレーダー装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載のレーダー装置と、
背もたれ部およびヘッドレスト部を含む座席と、
を備え、
前記レーダー装置の前記アンテナは、
前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に設けられ、
前記第1の電磁波の放射方向が前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に対して前方に方向付けられており、前記第2の電磁波の放射方向が前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に対して後方に方向付けられている、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダー装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性向上を目的に、車室内の乗員検出用センサの開発が進められている。このセンサは、例えば、エアバッグの制御、自動運転の制御に利用される。近年では、車室内に置き去りにされた子供を検出するためのセンサも提案されている。
【0003】
乗員検出用センサとしては、特許文献1に、座席のシートクッション内部やヘッドレスト内部に埋め込むことにより、乗員の有無を検出し、この検出情報に基づいて補機装置の制御を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-127264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、センサの設置コストを低減できる、改善されたレーダー装置および車両の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るレーダー装置は、第1の方向を含む第1の放射角度範囲で第1の電磁波を放射し、かつ、前記第1の方向の反対方向である第2の方向を含む第2の放射角度範囲で第2の電磁波を放射するアンテナと、前記アンテナによって受信された、前記第1の電磁波の第1の反射信号および前記第2の電磁波の第2の反射信号に基づいて、前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれについてターゲットの検出を行う回路と、を備える構成を採る。
【0007】
本開示に係る車両は、本開示に係るレーダー装置と、背もたれ部およびヘッドレスト部を含む座席と、を備え、前記レーダー装置の前記アンテナは、前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に設けられ、第1の電磁波の放射方向が前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に対して前方に方向付けられており、第2の電磁波の放射方向が前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に対して後方に方向付けられている構成を採る。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の非限定的な実施例によれば、センサの設置コストを低減できる、改善されたレーダー装置および車両を提供できる。
【0010】
本開示の非限定的な実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るレーダー装置の断面模式図
図2A】実施の形態1に係るレーダー装置の車両取り付けの一例を示す図
図2B】実施の形態1に係るレーダー装置が得る検出信号の一例を示す図
図3A】実施の形態1に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図3B】実施の形態1に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図3C】実施の形態1に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図3D】実施の形態1に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図3E】実施の形態1に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図3F】実施の形態1に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図4A】実施の形態1に係るアンテナを構成するアンテナ素子の配置の一例を示す図
図4B】実施の形態1に係るアンテナを構成するアンテナ素子の配置の一例を示す図
図5A】変形例1に係るレーダー装置の電磁ビームの放射パターンの一例を示す図
図5B】変形例1に係るアンテナを構成するアンテナ素子の配置の一例を示す図
図6】実施の形態2に係るレーダーシステムの車両取り付けの一例を示す図
図7A】実施の形態3に係るレーダーシステムの車両取り付けの一例を示す図
図7B】実施の形態3に係るレーダーシステムの車両取り付けの一例を示す図
図8A】実施の形態3に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図8B】実施の形態3に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図9A】実施の形態3に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図9B】実施の形態3に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図10】実施の形態3に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図11】実施の形態4に係るレーダーシステムの車両取り付けの一例を示す図
図12】実施の形態4に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図13】実施の形態4に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す上面図
図14】実施の形態5に係るレーダーシステムの車両取り付けの一例を示す図
図15】実施の形態5に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図16】実施の形態5に係るレーダー装置の他の一例であるレーダー装置の断面模式図
図17】実施の形態5に係るレーダー装置の他の一例であるレーダー装置の断面模式図
図18】実施の形態5に係るレーダー装置の他の一例であるレーダー装置の断面模式図
図19】実施の形態5に係るレーダー装置の他の一例であるレーダー装置の断面模式図
図20】実施の形態5に係るレーダー装置の他の一例であるレーダー装置の断面模式図
図21】実施の形態5の変形例に係るレーダーシステムの車両取り付けの一例を示す図
図22】実施の形態5の変形例に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図23】実施の形態5の変形例に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図
図24】実施の形態5の変形例に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す上面図
図25】実施の形態5の変形例に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す上面図
図26】実施の形態5の変形例に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図
図27】実施の形態6に係る車両制御システムの構成の一例を示す図
図28】実施の形態6に係る車両制御システムの動作の一例を示すフローチャート
図29】実施の形態7に係るレーダーシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
センサの中でもミリ波レーダーは、非接触型であることから設置自由度が高く、さらに、熱や外光の影響を受けにくいという利点がある。ミリ波レーダーでも送受信に複数個のアンテナを用いる多入力他出力(Multiple-Input-Multiple-Output:MIMO)方式を採用することにより、目標探知性能を向上させることができる。
【0013】
しかしながら、従来のレーダー装置では、電磁ビームが一方向に放射される。ここでいう「一方向」とは、レーダー装置の表面に立てた法線を基準にして±90°以内の範囲で放射されることを指し、この範囲内で2つ以上に電磁ビームが分岐しているものも「一方向」に含まれるものとする。したがって、従来のレーダー装置では、前後に電磁ビームを出すことが困難である。
【0014】
例えば、車両の前部座席の乗員と後部座席の乗員とを同時に検出しようとする場合、少なくとも2台のレーダー装置を組み合わせる必要があり、設置する空間を座席内部に確保するのが困難である。
【0015】
例えば、特許文献1で開示されている従来技術では、レーダー装置から放射される電磁ビームの放射方向が一方向であるため、複数のセンサが、それぞれ、乗員一人を検出することになる。したがって、乗員全員の検出をするには、多くのセンサが必要となることからセンサの設置コストを低減することが困難である。
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示は以下の実施の形態により限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るレーダー装置2の断面模式図である。図2Aは、実施の形態1に係るレーダー装置2の車両取り付けの一例を示す図である。図2Aに示されるように、レーダー装置2は、車両の前部座席51の背もたれ部に取り付けられている。例えば、第1の方向31および第2の方向32の一方が、車両前方に方向付けられ、他方が車両後方に方向付けられる。
【0018】
レーダー装置2は、座席(前部座席)51および座席(後部座席)52に、それぞれ、乗員41、42が存在するか否かを検出する。以下、検出は、検知または測定と換言してもよい。レーダー装置2は、レーダー装置2を挟んで反対向きの2つの方向(第1の方向31および第2の方向32)に、それぞれ電磁ビーム(第1の電磁波、第1のレーダー信号)11および電磁ビーム(第2の電磁波、第2のレーダー信号)12を放射する。一例において、電磁ビーム11および電磁ビーム12は、同時に放射される。第1の方向31および第2の方向32のなす角度は、90°~270°の間の任意の角度であり、例えば、180°である場合、x軸上の正方向と負方向に放射される。電磁ビーム11の放射角度範囲は、第1の方向31を含む。電磁ビーム12の放射角度範囲は、第2の方向32を含む。一例において、電磁ビーム11の放射角度範囲と電磁ビーム12の放射角度範囲とは、交わらない。
【0019】
なお、以下において、座席51および座席52が、それぞれ、車両の車室内に設けられた前部座席51および後部座席52である場合を例にとって、本開示を説明する。しかしながら、本開示において、座席51および座席52は、車両以外の移動体(例えば、航空機または船舶)の室内に設けられてもよく、移動体以外の建物(例えば、映画館、飲食店)の室内に設けられてもよい。また、座席51および座席52は、ともに同じ向きに設置されていてもよく、異なる向きに設置されていてもよい。例えば、座席51および座席52は、背中合わせに設置されていてもよい。
【0020】
レーダー装置2は、前後に電磁ビーム11、12を放射することにより、前部座席51の乗員41と後部座席52の乗員42とを、区別して検出する。
【0021】
図2Bは、実施の形態1に係るレーダー装置2が得る検出信号の一例を示す図である。図2Bに示される検出信号は、前部座席51の乗員41からの反射信号および後部座席52の乗員42からの反射信号を含む。
【0022】
一例において、前部座席の乗員41と後部座席の乗員42とは、レーダー装置2からの距離が異なる。例えば、レーダー装置2を図2Aに示される位置に設置した場合、前部座席51の乗員41は、後部座席52の乗員42よりもレーダー装置2に近い。この場合、レーダー装置2は、前部座席51の乗員41からの反射波(反射信号)と、後部座席52の乗員42からの反射波(反射信号)と、を区別して検出できる。なお、レーダー装置2と前部座席51の乗員41との距離と、レーダー装置2と後部座席52の乗員42との距離とが同程度の場合、レーダー装置2は、電磁ビーム11、12の出力タイミングに差を設けてもよい。
【0023】
車両が駐車した後、もしくは、車両が駐車している最中において、数分間にわたってレーダーを動作させ、各距離における検出信号の複素信号成分は雑音の影響以外には変動が無い場合、車室内には乗員(動く物)は存在していないと考えられる。
【0024】
一方、例えば、乗員が車両の駐車中に睡眠している場合には、乗員の呼吸や心拍による周期的で規則的な振動が、レーダー装置によって、複素信号成分の変化として検出可能となる。そこで、レーダー装置は、所定の距離以内にある検出信号の複素信号成分を観測した結果、周期的で規則的な振動成分が検出されない場合には、乗員が車内に存在していないものと判断する。
【0025】
一例において、レーダーチップ8(図3A参照)に接続される図示しない信号処理回路は、乗員41、42が存在しない状態において受信した反射信号を予め記憶素子(記憶部)に記憶する。
【0026】
一例において、レーダーチップ8(図3A参照)に接続される図示しない信号処理回路は、乗員41、42が存在していないものと判断された状態において、受信した反射信号をリファレンス値として、予め記憶素子(記憶部)に記憶する。
【0027】
次いで、レーダー装置2による検出時に、レーダーチップ8に接続された図示しない信号処理回路は、受信した反射信号と記憶されたリファレンス値の反射信号とに基づいて、座席51、52に、それぞれ、乗員41、42が存在するか否かを判断する。このようにすることで、記憶されたリファレンス値の反射信号を用いない場合と比較して、レーダー装置2は、より正確に乗員41、42の存在の有無を検出できる。
【0028】
一例において、レーダー装置2は、ドップラーセンサとしての機能を有しており、複数の乗員41、42までの距離に加えて複数の乗員41、42の動きをそれぞれ検出する。例えば、複数の乗員41、42の体動、心拍、および呼吸の少なくとも1つに伴う動きを検出することにより、より確実に複数の乗員41、42をそれぞれ検出できる。さらに、レーダー装置2が搭載された車両が停車している場合、走行時よりも車両の振動が少ないため、レーダー装置2は、複数の乗員41、42の微小な動きをより高精度で検出できる。したがって、例えば、駐車中に、前部座席51、後部座席52のいずれかに置き去りにされた子供を検出する、車室内置き去り対策用のセンサとして用いることもできる。なお、停車時とは、エンジンのアイドリングしてない場合とエンジンのアイドリングしている場合の両方を含む。
【0029】
図3Aは、実施の形態1に係るレーダー装置2の一例であるレーダー装置2aの断面模式図である。
【0030】
レーダー装置2aは、基板6と、アンテナ7と、レーダーチップ(回路)8と、レドーム9と、を備える。なお、図3Aにおいて、レドーム9の一部が示され、他の部分は省略されている。
【0031】
基板6には、レーダー装置2aの機能を実現する回路が設けられる。基板6の表面には、アンテナ7が形成され、レーダーチップ8が実装されている。以下において、レーダーチップ8が実装されている基板6の面を、上面(第1の表面)と呼ぶ。一例において、アンテナ7が放射する電磁ビーム11、12の少なくとも一方およびその反射信号は、基板6を透過したビームである。基板6は、例えば、高周波用の低損失な基板材料で構成されるのが好ましい。
【0032】
アンテナ7は、送信信号を出力することによって、レドーム9を介して電磁ビーム11、12を放射する。アンテナ7は単一のアンテナであってもよく、複数のアンテナで構成されてもよい。アンテナ7は、1つ以上の送信アンテナ素子、1つ以上の受信アンテナ素子を備えたMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)構成であってもよい。
【0033】
レーダーチップ8は、アンテナ7が送信する送信信号を生成し、アンテナ7が受信した反射信号に基づいて検出信号を生成する。一例において、レーダーチップ8に接続された図示しない信号処理回路は、生成した検出信号に基づいて、乗員41、42の存在の有無を判断する。例えば、レーダーチップ8は、送信部、受信部、ADC(アナログーデジタル変換部)を含む構成である。
【0034】
レドーム9は、レーダー装置2aに設けられた、基板6と、アンテナ7と、レーダーチップ8と、を保護する。レドーム9の厚さと基板6およびレドーム9の間隔とは、放射される電磁ビーム11、12の強度が最大となるように調整されることが望ましい。
【0035】
基板6に設けられる回路(例えば、回路パターンおよび実装部品)は、電磁ビーム11、12を遮らないように、アンテナ7周辺およびその真上および真下の領域には配置されない。その結果、図3Aに示されるように、電磁ビーム11、12は、それぞれ、基板6の両面、即ち、表面(x軸の正方向)および裏面(x軸の負方向)から、レドーム9を介して外部に放射される。
【0036】
図3Bは、実施の形態1に係るレーダー装置2の一例であるレーダー装置2bの断面模式図である。
【0037】
図3Bに示されるレーダー装置2bは、電磁ビーム12が透過する領域の基板6の厚みを薄くすることによって、基板6にキャビティ10が設けられる点において、図3Aに示されるレーダー装置2aと異なる。例えば、図3Bに示されるように、レーダー装置2bの基板6には、キャビティ10が設けられる。キャビティ10は、アンテナ7を挟んで基板6の反対側に設けられる。図3Bの構成によって、アンテナ7から基板6の裏面に向かって放射された電磁ビーム12が通過する基板6の厚みが、レーダー装置2aの基板6の厚みより薄くなり、基板6内部を通過することによる電磁ビーム12の損失を低減できる。
【0038】
キャビティ10は、基板6の端部まで延在してもよい。また、レドーム9の厚さと、基板6およびレドーム9の間隔とは、キャビティ10の形状を考慮に入れた上で、放射される電磁ビーム11、12の強度が最大になるように調整されているのが好ましい。例えば、キャビティ10の位置や形状に応じて、レドーム9に凹部(図示せず)が形成されてもよい。
【0039】
図3Cは、実施の形態1に係るレーダー装置2の一例であるレーダー装置2cの断面模式図である。
【0040】
図3Cに示されるレーダー装置2cは、キャビティ10内に導波器13が設けられる点において、図3Bに示されるレーダー装置2bと異なる。図3Cの構成によって、基板6の裏面方向(x軸の負方向)に放射される電磁ビーム12の指向性をより高めることができる。
【0041】
なお、図3Cに示されるレーダー装置2cは、図3Bに示されるレーダー装置2bのキャビティ10の内部に導波器13が設けられる。これと同様に、例えば、図3Aに示されるレーダー装置2aにおいて、キャビティ10が設けられる代わりに、基板6全体の厚みを調整し、さらに、基板6の裏面に導波器13が設けられてもよい。このようにすることで、基板6の裏面方向に放射される電磁ビーム12の指向性をより高めることができる。
【0042】
また、導波器13を配置したレーダー装置2cにおいても、レドーム9の厚さと、基板6およびレドーム9の間隔とは、導波器13およびレドーム9の形状および位置を考慮に入れた上で、放射される電磁ビーム11、12の強度が最大になるように調整されているのが好ましい。
【0043】
図3Dは、実施の形態1に係るレーダー装置2の一例であるレーダー装置2dの断面模式図である。
【0044】
図3Dに示されるレーダー装置2dは、アンテナ7が基板6を挟んでレーダーチップ8とは反対側の面(第2の表面)に設けられる点において、図3Aに示されるレーダー装置2aと異なる。一例において、レーダーチップ8とアンテナ7を接続するためのビア14や配線15からの放射が発生した場合、発生した放射を電磁ビーム11、12の少なくとも1つに含まれる放射と扱ってもよい。
【0045】
図3Eは、実施の形態1に係るレーダー装置2の一例であるレーダー装置2eの断面模式図である。
【0046】
図3Eに示されるレーダー装置2eは、アンテナ72が基板6を挟んでレーダーチップ8とは反対側の面に設けられる点と、基板6の内部に反射板16が設けられる点と、において、図3Aに示されるレーダー装置2aと異なる。反射板16は、例えば、金属板である。図3Eに示される反射板16の枚数は、2枚であるが、反射板16の枚数は、1以上の任意の数(例えば、1枚、3枚、または4枚)であってよい。反射板16を設けることによって、アンテナ7、72の一方から放射した電磁ビームの他方のアンテナ7、72への影響を低減できる。
【0047】
図3Fは、実施の形態1に係るレーダー装置2の一例であるレーダー装置2fの断面模式図である。
【0048】
図3Fに示されるレーダー装置2fは、アンテナ7、72がレーダーチップ8の異なるポートに接続されている点において、図3Eに示されるレーダー装置2eと異なる。
【0049】
レーダー装置2fにおいては、レーダーチップ8の送信ポート1個につき1個のアンテナ7またはアンテナ72が接続される。その結果、アンテナ出力をより高め、検出可能距離をより延ばすことが可能である。このため、車室内の乗員検出に加えて、車室外の危険検出に、レーダー装置2fを用いてもよい。また、レーダー装置2fについては、異なる送信ポートに接続された異なるアンテナ7、72の出力を、個別に調整しやすい。なお、図3Fでは、レーダーチップ8の送信ポートのそれぞれは、異なるパターンの信号を出力してもよい。
【0050】
図4Aおよび図4Bは、実施の形態1に係るアンテナ7、72を構成するアンテナ素子17の配置の一例を示す図である。
【0051】
例えば、図4Aおよび図4Bに示されるように、レーダー装置2(2a~2f)の用途に応じて、アンテナ7、72の表面上および裏面上に設けられるアンテナ素子17の数は、表と裏とで異なってもよい。このようにすることで、レーダー装置2(2a~2f)の用途に応じて、アンテナ7、72のアンテナ利得や視野角を調整できる。
【0052】
(変形例1)
実施の形態1に係るレーダー装置2(2a~2f)においては、基板6の上面に垂直な方向に沿って電磁ビーム11、12が放射される。これに対して、変形例1においては、基板6の上面に沿った方向に電磁ビーム11、12が放射される。
【0053】
図5Aは、変形例1に係るレーダー装置2gの電磁ビーム28の放射パターンの一例を示す図である。図5Bは、変形例1に係るアンテナ27を構成するアンテナ素子27a~27nの配置の一例を示す図である。
【0054】
レーダー装置2gは、基板6と、レーダーチップ8と、アンテナ27と、を備える。基板6には、基板6の片面(例えば、上面)から表面に沿った左右両方向(x軸の正方向、負方向)へ電磁ビームを放射するアンテナ27が複数配置されている。
【0055】
アンテナ27には、2つのアンテナ素子(例えば、アンテナ素子27a、27b)に、位相の180度異なる信号が入力される。したがって、図5Aの側面図に示されるように、天頂方向(基板6の上面に垂直な方向:z軸の正方向)ではなく、基板6の左右両方向(基板6の上面に沿った方向:x軸の正方向と負方向)へ分かれた指向性を有する電磁ビーム28が放射される。図5Aおよび図5Bに示されるレーダー装置2gを用いても、レーダー装置2gの左右両方の複数の検出対象(乗員41、42、ターゲット)を同時に検出可能なセンサを構成できる。
【0056】
なお、アンテナ27およびアンテナ素子27a~27nの配置位置や数、形状は、図5Aおよび図5Bに図示されたものに限定されない。例えば、アンテナ素子27a~27nの個数は、任意の正の偶数であってもよい。
【0057】
実施の形態1または変形例1によれば、1つのレーダー装置2(2a~2g)によって複数の乗員を同時に検出できるので、複数のセンサまたはレーダー装置を設置する場合と比較して、コストを低減できる。
【0058】
なお、図1に示される座席51、52と、図3A図3F図5Aおよび図5Bに示されるレーダー装置2a~2gと、図4Aおよび図4Bに示されるアンテナ7、72およびアンテナ素子17とは一例にすぎず、形状および配置は、図示されるものに限定されない。
【0059】
また、レーダー装置2(2a~2g)の視野角を水平方向に広げてもよい。また、前部座席51の乗員41の検出に支障がない範囲で、レーダー装置2の電磁ビーム11(または電磁ビーム12)の放射方向が後部座席52の中央部に向くように、レーダー装置2を設置してもよい。このようにすることで、レーダー装置2は、後部座席52の中央部に着座する乗員を検出できる。
【0060】
(実施の形態2)
レーダー装置2を座席51、52に取り付けた場合、座席51、52の移動に応じて、レーダー装置2の電磁ビーム11、12、28の向きも変化し、乗員41、42の検出が困難である、換言すると、検出誤りの確率が高くなる場合が生じうる。ここで、座席51、52の移動とは、例えば、座席51、52の前後へのスライド、または座席51、52のリクライニングによる背もたれ部の傾き角度の変化である。そこで、実施の形態2においては、座席51、52の移動に応じて乗員41、42の検出が困難になる場合も含めて考察する。
【0061】
図6は、実施の形態2に係るレーダーシステム3aの車両取り付けの一例を示す図である。
【0062】
レーダーシステム3aは、レーダー装置2と、角度センサ18と、を備える。
【0063】
実施の形態2に係るレーダー装置2は、実施の形態1に係るレーダー装置2と共通の構成を備える。レーダー装置2は、図3A図3Fと、図5Aおよび図5Bと、に示される、レーダー装置2a~2gのいずれかであってもよい。
【0064】
角度センサ18は、レーダー装置2の向きを検出する。角度センサ18は、例えば、レーダー装置2の内部または近傍に設置される。
【0065】
前部座席51は、リクライニングシートである場合が多い。レーダー装置2を設置した前部座席51の背もたれ19の角度は、乗員41の希望する角度に変化することがある。座席51の傾きの加減により、レーダー装置2の後部座席52の乗員42へ向けられた電磁ビームの放射方向が変化する。その結果、背もたれ19の角度によっては、後部座席の乗員42がレーダー装置2の検出範囲から外れることがある。
【0066】
そこで、角度センサ18は、レーダー装置2による乗員42の検出が困難になる角度の範囲を予め記憶する。レーダー装置2が動作する間に、角度センサ18が検出した前部座席51の角度が、角度センサ18が記憶する角度の範囲に含まれることを検出した場合、角度センサ18は、検出困難(または、検出結果無効)を示す信号を出力してもよい。また、一例において、レーダーシステム3aは、角度センサ18が検出困難(または、検出結果無効)を示す信号を出力した場合、乗員41に、検出困難(または、検出結果無効)であることを通知する通知部(図示せず)を備えてもよい。通知部は、例えば、乗員41が監視するモニタであってもよく、車内に設けられたスピーカであってもよい。
【0067】
一例において、前部座席51が、リクライニングに加えてスライドして前後位置を調整できる場合、レーダーシステム3aは、前部座席51の前後位置を検出する位置センサ(図示せず)を備える。この場合、位置センサは、レーダー装置2による乗員42の検出が困難になる位置の範囲を予め記憶する。レーダー装置2が動作する間に、位置センサが検出した前部座席51の位置が、角度センサ18が記憶する位置の範囲に含まれることを検出した場合、位置センサは、検出困難(または、検出結果無効)を示す信号を出力してもよい。このようにすることで、レーダー装置2が乗員41、42を検出することが困難になる状態が、さらに正確に検出されうる。
【0068】
また、一例において、レーダー装置2は、車室の内部または外部に配置されている物体からの反射信号を予め記憶する。ここで、物体は、反射係数がより高いほどより好ましく、例えば、車体のフレームのような固定物であってもよく、リアワイパーのような既知の動きをする可動物であってもよい。次いで、レーダー装置2による検出時に、レーダー装置2に接続された図示しない信号処理回路は、受信した反射信号と記憶された反射信号とに基づいて、検出困難(または、検出結果無効)か否かを判断する。受信した反射信号と記憶された反射信号との差分信号に基づいて、座席51、52に、それぞれ、乗員41、42が存在するか否かを検出する。このようにすることで、レーダー装置2が乗員41、42を検出することが困難になる状態が、さらに正確に検出されうる。なお、信号処理回路は、レーダーチップ8と接続されてレーダー装置2内部に配置されてもよい。
【0069】
(実施の形態3)
実施の形態2においては、座席51、52の移動に応じてレーダー装置2による乗員41、42の検出が困難になる状態を、角度センサ18を用いて検出した。実施の形態3においては、座席51、52の移動に応じてレーダー装置2による乗員41、42の検出が困難になる状態を検出するための、他の手段を考察する。
【0070】
図7Aおよび図7Bは、実施の形態3に係るレーダーシステム3bの車両取り付けの一例を示す図である。レーダーシステム3bは、レーダー装置2と、基準マーク(第1の基準マーク、基準ターゲット)20と、を備える。一例において、レーダーシステム3bは、さらに角度センサ18を備える。実施の形態3に係るレーダーシステム3bの構成要素のうち、実施の形態2に係るレーダーシステム3aと共通するものについては、説明を省略する。
【0071】
レーダー装置2は、実施の形態1に係るレーダー装置2と共通の構成を備える。レーダー装置2は、図3A図3Fと、図5Aおよび図5Bと、に示される、レーダー装置2a~2gのいずれかであってもよい。さらに、レーダー装置2に接続された図示しない信号処理回路は、基準マーク20による反射波に相当する反射信号を検出した場合、座席51、52の検出が可能である(検出困難(または、検出結果無効)でない)と判断する。
【0072】
基準マーク20は、レーダー装置2から放射された電磁ビーム11または電磁ビーム12を反射する。一例において、基準マーク20は、図7Bに示されるように、後部座席52の両側面に設置される。基準マーク20からの反射信号は、人体からの反射信号と比較して強度が高いことが、より好ましい。基準マーク20は、例えば、図7Bに示されるように、長方形の金属板の長手方向の中心軸に沿って90°の角度で片側に折り曲げたものであってもよい。この場合、金属板は、電磁ビーム11または電磁ビーム12の反射面が鋭角に交わるように設置される。
【0073】
実施の形態3に係るレーダーシステム3bによれば、レーダー装置2に接続された図示しない信号処理回路は、基準マーク20からの反射信号に基づいて、レーダー装置2が検出困難(または、検出結果無効)か否かを判断できる。なお、図7Aおよび図7Bに示される基準マーク20は、後部座席52の両側面に設置されているが、基準マーク20の形状、設置位置、および個数は、限定されない。
【0074】
図8Aおよび図8Bは、実施の形態3に係るレーダーシステム3bの車両取り付けの他の一例を示す図である。例えば、図8Aおよび図8Bに示されるように、長方形の金属板である基準マーク20は、長手方向が水平方向に延在するように配置されてもよい。
【0075】
図8Aおよび図8Bに示されるように基準マーク20が配置された場合、後部座席52の乗員42および荷物(図示せず)によって基準マーク20がレーダー装置2から隠れる可能性が、図7Aおよび図7Bに示される基準マーク20と比較して低くなる。したがって、乗員42および荷物により基準マーク20が隠されることにより、基準マーク20からの反射信号が得ることが困難であることに起因する「検出困難(または、検出結果無効)」との誤検出を低減できる。
【0076】
なお、長手方向が水平方向に延在する基準マーク20の本数および位置は、図8Aおよび図8Bに示されるものに限定されない。
【0077】
図9Aおよび図9Bは、実施の形態3に係るレーダーシステム3bの車両取り付けの他の一例を示す図である。一例において、図9Aおよび図9Bに示されるように、レーダーシステム3bは、さらに、電波吸収体21を備える。
【0078】
電波吸収体21は、例えば、図9Aおよび図9Bに示されるように、基準マーク20の背面に配置される。このようにすることで、レーダー装置2は、基準マーク20からの反射信号と、基準マーク20の周囲に設置された構造物からの反射信号とを、より容易に区別できるので、基準マーク20からの反射信号をより確実に識別できる。
【0079】
なお、レーダー装置2が基準マーク20からの反射信号と、基準マーク20の周囲に設置された構造物からの反射信号とが容易に区別できる限り、電波吸収体21の形状および位置は、図9Aおよび図9Bに示されるものに限定されない。なお、図7Aおよび図7Bと、図8Aおよび図8Bと、図9Aおよび図9Bと、の少なくとも1つを組みあせた基準マーク20でもよい。
【0080】
図10は、実施の形態3に係るレーダーシステム3bの車両取り付けの他の一例を示す図である。一例において、図10に示されるように、レーダーシステム3bは、さらに、基準マーク(第2の基準マーク、基準ターゲット)22を備える。
【0081】
基準マーク22は、レーダー装置2から放射された電磁ビーム11または電磁ビーム12を反射する。一例において、基準マーク22は、図10に示されるように、車室の天井部または床部に設置される。基準マーク22からの反射信号は、人体からの反射信号と比較して強度が高いと、より好ましい。基準マーク22は、例えば、図10に示されるように、長方形の金属板の長手方向の中心軸に沿って90°の角度で片側に折り曲げたものであってもよい。この場合、金属板は、電磁ビーム11、12の反射面が鋭角に交わるように設置される。
【0082】
レーダー装置2は、基準マーク22からの反射信号を検出した場合、レーダー装置2に接続された図示しない信号処理回路は、検出困難と判断する。このようにすることで、レーダー装置2は、基準マーク22からの反射信号に基づいて、レーダー装置2に接続された図示しない信号処理回路は、が検出困難(検出結果無効)か否かを判断できる。
【0083】
なお、基準マーク22の本数、形状、および位置は、図10に示されるものに限定されない。また、基準マーク22は、図10に示される車室内に設置された固定物であってもよいし、既知の動きをする可動物であってもよい。
【0084】
なお、レーダー装置2が基準マーク22からの反射信号と、基準マーク20の周囲に設置された構造物からの反射信号とが容易に区別できる限り、電波吸収体21の形状および位置は、図9Aおよび図9Bに示されるものに限定されない。
【0085】
(実施の形態4)
本実施形態では、3列シートを有する車両において、2つのレーダー装置2で乗員を検知するレーダーシステム3について説明する。
【0086】
図11は、実施の形態4に係るレーダーシステム3cの車両取り付けの一例を示す図である。図11のレーダーシステム3cでは、3列シートを有する車両に対して、2つのレーダー装置2が配置されている。レーダー装置2は、少なくとも電磁ビーム(レーダ信号、送信信号)を車室内の乗員方向に照射する機能を有しており、車室内天井に配置されている。電磁ビームを、乗員41、42、43に照射することで、乗員検知を行うことができる。
【0087】
2つのレーダー装置2は、第1列目シートの上部と、第3列目シートの上部に配置される。これにより、第1列目シート上部のレーダー装置2は、第1列目シートと第2列目シートを検出範囲とすることができ、第3列目シート上部のレーダー装置2は、第3列目シートと第3列目シート後方の荷室とを検出範囲とすることができる。
【0088】
図12は、実施の形態4に係るレーダーシステム3dの車両取り付けの他の一例を示す図である。図12のレーダーシステム3dでは、3列シートを有する車両に対して、2つのレーダー装置2が配置されている。図12は、第1列目シートの上部に配置されたサンルーフ4を考慮したレーダー装置の配置の一例である。2つのレーダー装置2は、第1列目シートの前方上部のヘッドコンソール付近と、第2列目シートの上部と、に配置される。これにより、第1列目シートの前方上部のヘッドコンソール付近のレーダー装置2は、第1列目シートを検出範囲とすることができ、第2列目シート上部のレーダー装置2は、第2列目シートと第3列目シートを検出範囲とすることができる。
【0089】
図13は、実施の形態4に係るレーダーシステム3eの車両取り付けの他の一例を示す上面図である。図13のレーダーシステム3eでは、3列シートを有する車両に対して、2つのレーダー装置2が配置されている。
【0090】
図13は、第1列目シートの上部に配置されたサンルーフ4を考慮した場合のレーダー装置2の配置の一例である。サンルーフ4を点線で示す。レーダー装置2は、第1列目シートのy軸正方向にオフセットして、サンルーフを避けた位置と、第3列目シートの上部と、に配置される。これにより、サンルーフを避けた位置のレーダー装置2は、第1列目シート、第2列目シートを検出範囲とすることができ、第3列目シート上部のレーダー装置2は、第3列目シート、第3列目シート後方の荷室を検出範囲とすることができる。
【0091】
なお、図12図13の配置例は、サンルーフ4の設置が無い場合であっても用いることができる。これは、サンルーフ4はオプションパーツであるため、サンルーフ4の設置の有無に応じて、レーダー装置2の配置を変更することは、製造コストの増加の原因となる。これに対して、サンルーフ4の設置の有無にかかわらず、レーダー装置2の配置を固定することによって、製造コストを削減することができる。なお、図12図13のレーダー装置2の配置の例は、2列シートの車両にも適用することができる。
【0092】
(実施の形態5)
本実施形態では、3列シートを有する車両において、1台のレーダー装置2で乗員を検知するレーダーシステムについて説明する。
【0093】
図14は、実施の形態5に係るレーダーシステム3fの車両取り付けの他の一例を示す図である。図14のレーダーシステム3fでは、3列シートを有する車両に対して、1つのレーダー装置2が配置されている。
【0094】
レーダー装置2のアンテナは、乗員41、42、43に照射するため、広い視野角を有する。このため、乗員42用アンテナに加えて、乗員41、42用に指向性を調整したアンテナをさらに搭載している。
【0095】
図15は、実施の形態5に係るレーダー装置の一例であるレーダー装置の断面模式図である。図15では、レーダー装置2hは、基板6の周りにレドームを配置した構成である。図15のレーダー装置2hは、レドーム9の一部を凹レンズとして用いることで、ビームの視野角を広げてもよい。なお、本実施の形態において、基板6は、図3Aから図3Fと同様に、アンテナ7、レーダーチップ8が実装されるが、ここでの記載、説明は省略する。
【0096】
図16は、実施の形態5に係るレーダー装置2iの他の一例であるレーダー装置の断面模式図である。図16では、基板6に配置された図示しないアンテナ素子17から、乗員41、43に電磁ビームを向けるための反射鏡80、81,82,83(反射板と記載してもよい)を備えてもよい。図16では、乗員42に対しては、基板6に配置されたアンテナ素子17から直接波を送受信する。
【0097】
図17は、実施の形態5に係るレーダー装置の他の一例であるレーダー装置2jの断面模式図である。図17では、基板6の周囲を覆うようにレドーム9を配置し、レドーム9の表面(z軸の負方向の面)に凹凸をつけた形状とし、電波が様々な方向に散乱する様に構成することも好適である。なお凹凸の形状は、図17に示した様に周期的で一様な形状であってもよいし、規則性の無いランダムな形状であっても良い。また、レドーム9は、基板6の全てを覆わなくてもよく、すくなとも電磁ビームの放射される方向に凹凸を付けた形状で配置れていればよい。
【0098】
図18は、第5の実施形態のレーダー装置2の他の一例を示す図である。図19は、第5の実施形態のレーダー装置2の他の一例を示す図である。
【0099】
図18のレーダー装置2kは、乗員41~43が視野角内に入るよう、図示しない駆動部によって周期的にレーダー装置の向きを物理的に変更する。この周期に合わせて各乗員の検知を行うことで、レーダー装置2の視野角が狭い場合でも乗員41、42、43を検知することができる。なお、レーダー装置2Lは、図19のように、図示しない駆動部によって前後方向に平行移動してもよく、図18と同様の効果が得られる。
【0100】
図20は、第5の実施形態のレーダー装置2の他の一例を示す図である。図20では、レーダー装置2を第2列目シートの上部に取り付けており、レーダー装置2からは、乗員42の方向(z軸の負方向)と天井方向(z軸の正方向)との両方に電磁ビームが照射される。レーダー装置の天井方向には、ビームを車室前後方向に分割するための反射鏡86が設置されている。
【0101】
反射鏡86の反射面は少なくとも前方向(x軸の負方向)と後方向(x軸の正方向)の2面が備えられており、反射面は金属製でかつ凹面であることが望ましい。反射鏡86の凹面には例えば放物面の一部を用いることができる。
【0102】
反射鏡86の前方および後方には、反射鏡87、88が設置されている。反射鏡87、88の反射面は、金属製であることが望ましく、乗員41、43の方向に電磁ビームが反射されるように平面または凹面状に加工されていることが望ましい。また、反射鏡87、88は、レーダー装置2から乗員41、43までの電磁ビームの経路長が異なるように配置されていることが望ましい。
【0103】
このような構成とすることで、3列シートの乗員41、42、43の各々と電磁ビームの経路長を紐づけることで、1台のレーダー装置2での検知を容易にすることができる。
【0104】
(実施の形態5の変形例)
本実施形態では、3列シートを有する車両において、1つのレーダー装置2と反射鏡とを用いて乗員を検知するレーダーシステムについて説明する。
【0105】
図21は、実施の形態5の変形例に係るレーダーシステム3gの車両取り付けの一例を示す図である。図21では、レーダーシステム3gは、フロントガラスを反射鏡84として用いている。
【0106】
図21では、第1列目シートの乗員を検知するにあたっては、フロントガラス(反射鏡84)からの反射波成分であるマルチパスを利用する。レーダー装置2から放射された電ビームは、一旦、フロントガラス(反射鏡84)で反射された後、第1列目シートの乗員に反射される。次に、乗員によって反射された電波ビームは、再びフロントガラス(反射鏡84)で反射されたマルチパスの電波がレーダー装置2にて受信される。このため、図21のレーダーシステム3gは、第1列目シートの乗員41を、第1列目シートとレーダー装置2との実際の距離よりも、遠方に位置する物体として検出する。
【0107】
レーダー装置2は、反射による距離増大分をあらかじめ考慮した位置に、反射物(乗員41)が存在するか否かと、フロントガラスにおける反射点がレーダー装置2の位置を考慮した角度に一致するか否かと、を判断基準として、乗員41の有無の判断を行う。
【0108】
なお、フロントガラスによる反射波は、第1列目シートの乗員41からの直接の反射波よりも、レーダー装置2に対して端の方向(エンドファイア寄り)から反射波が入力されることとなる。
【0109】
レーダーシステム3gは、図21の反射鏡84であるフロントガラスの代わりに、例えば、ルームミラー(バックミラー)、サイドミラーなどを用いてもよい。ここで、ルームミラーやサイドミラーは、運転手が後方を確認するために、運転者が目視し易い角度に調整される。このため、レーダー装置2を運転手の後方である第2列目シート上部に配置することで、ルームミラーによって反射された電磁ビームをレーダー装置2が受信することができる。
【0110】
なお、助手席に着座する乗員に対しては、レーダーシステム3gは、ルームミラーから弱い反射波が入力されると考えられる。このため、助手席に着座する乗員に対しては、レーダー装置2の設置位置を中心よりも助手席側もしくは、運転席側のいずれかにオフセットさせて、サイドミラーからの反射波の強度を調整してもよい。また、助手席に着座する乗員に対しては、ミラー以外の反射鏡を車内に別途設けてもよい。
【0111】
図22は、実施の形態5の変形例に係るレーダーシステムの車両取り付けの他の一例を示す図である。図22では、レーダーシステム3hは、ヘッドコンソール付近にルームミラー(反射鏡85)を配置している。ヘッドコンソールは、第1列目シートの上部にあるため、フロントガラスからの反射波を用いる場合に比べ、第1列目シートの乗員を検出することが容易になる。
【0112】
なお、ヘッドコンソール付近に配置する反射鏡85は、1つの反射鏡によって、左右の座席に電磁ビーム(レーダー信号)を分離反射してもよいし、左右の座席の各々に対して反射鏡85を配置していもよい。これにより、各座席からの反射信号の強度を増し、より正確に受信することができる。また、左右の座席の各々に対して反射鏡85を配置する場合、レーダー装置に対して、オフセット配置することで、経路長に差を設け、左右の座席からの反射波(反射信号)の判断を容易にすることができる。
【0113】
なお、反射鏡(反射板)の他の例として、ルームミラーの取り付け部分に配置した反射鏡85などであってもよい。
【0114】
図23は、実施の形態5の変形例に係るレーダーシステム3jの車両取り付けの他の一例を示す図である。図23ではレーダー装置2を第1列目シートの上部に配置することで、第1列目シートと第2列目シートを検出範囲とすることができ、第3列目シートの上部に反射鏡89を配置することで、第3列目シートを検出範囲とすることができる。
【0115】
図24は、実施の形態5の変形例に係るレーダーシステム3kの車両取り付けの他の一例を示す上面図である。図24ではレーダー装置を第1列目シートの前方上部のヘッドコンソール付近に配置することで、第1列目シートを検出範囲とすることができ、車両の天井の左右それぞれの縁に反射鏡80a、80bを配置することで、第2列目シート、第3列目シートを検出範囲とすることができる。なお、図24では、細長い反射鏡80a、80bを用いているが、より小さい面積の反射鏡を複数個配置してもよい。
【0116】
ここで、第2列目シート、第3列目シートに対して、レーダー装置2から反射鏡80a、80bまでの電磁ビームは、天井に並行して送信され、反射鏡80a、80bから所望のシートに向けて電磁ビームの方向を変更するように、反射鏡80a、80bの形状を形成すればよい。
【0117】
また、細長い反射鏡80a、80bを用いてことで、第2列目シート及び第3列目シートがスライドした場合であっても、レーダー装置からのレーダー信号を、第2列目シート及び第3列目シートの乗員に反射することができる。
【0118】
図25は、実施の形態5の変形例に係るレーダーシステム3Lの車両取り付けの他の一例を示す上面図である。図25ではレーダー装置を第1列目シートのy軸の正方向にオフセット配置し、第1列目シートを検出範囲とし、車両の天井の左の縁(y軸の負方向)に反射鏡80cを配置することで、第2列目シート、第3列目シートを検出範囲とする。なお、図25では、反射鏡80cの配置は、第1列目シートの上部にあってもよく、第1列目シートの左座席に対して、反射信号を用いて、乗員検出を行ってもよい。
【0119】
また、反射鏡80dは、天井の右の縁(y軸の正方向)にも配置してもよい。レーダー装置2は、天井の左の縁の反射鏡80cで反射した反射波を反射鏡80dが再度反射して、乗員検出を行ってもよい。この場合、反射鏡80cの構成は、反射鏡80dに反射させる部分と、所望のシートに反射させる部分とを含んでもよい。
【0120】
図23図24図25の構成では、レーダー装置は反射鏡を用いることで、第2列目シート、第3列目シートの乗員を検出できるため、背もたれよりも座高の低い子供であっても、検出することができる。
【0121】
図26は実施の形態5に係るレーダー装置の他の一例であるレーダー装置2mの断面模式図である。図23図24図25のレーダーシステム3では、レーダー装置の放射方向は、天井にほぼ水平方向となるため、例えば、レーダー装置2の視野角が160°の場合、z軸の正の方向に10°傾けることで、レーダー装置の後方に水平にレーダー信号を放射することができる。
【0122】
以上のように、反射鏡を用いることで、1つのレーダー装置を用いる場合であっても、3列シートに対しても、乗員検出を行うことができる。
【0123】
(実施の形態6)
本実施の形態では、物体(乗員)の存在を検知するモード(物体検知モード)と心拍等の微小な動きを検知するモード(生体検知モード)とを切替えることについて説明する。以前の実施の形態では、レーダー装置が検出したターゲットが、乗員であるこを前提に説明したが、本実施の形態では、レーダー装置が検出したターゲットが、荷物であるか生体であるかの判断を行うため、レーダー装置は物体の検知を行うとして説明する。
【0124】
図27は、実施の形態6に係る車両制御システム92の構成を示す図である。図28は、実施の形態6に係る車両制御システム92の動作の一例を示すフローチャートである。
【0125】
車両制御システム92は、レーダーシステム3、車両制御装置90、シートベルト着用確認装置91を含む。レーダーシステム3は、他の実施の形態で説明した1つ以上のレーダー装置2、物体検知モードと生体検知モードを切り替えるモード切替部25、生体検知モードにおいて、レーダー装置2によって検知された物体が生体であるか否かの判断する判断部24、を含み、車内の荷物の有無、または、車内の生体の有無を判断する。
【0126】
車両制御装置90は、レーダー装置2の出力信号とシートベルト着用確認装置91の出力信号とを用いて、図示しない表示部にドライバーに対して警告の発報を行い、または、例えば、図示しない車両に設置されたライト、ドアロック、通信装置、空調装置の制御を行う。
【0127】
シートベルト着用確認装置91は、図示しないシートベルトのタングプレートがバックルに挿入されたか否かを判断した信号を出力する。
【0128】
まず、モード切替部25は、車両の走行に関する情報として、乗員の乗車後、エンジンがスタートされたことを示す情報を受信した後(運転開始)、または、車両の走行中、信号や渋滞による停車中であって、乗員の数に変化が無いことを示す情報を受信した後(運転再開)(S101)、物体検知モードとして動作することを車両制御装置90に出力する。
【0129】
レーダー装置2は、レーダー信号を出力し、反射波を受信することによって、それぞれの座席に物体が存在しているか否かを判断する(S102)。そして、車両制御装置90は、レーダー装置2によって物体が存在することが検出され(S103のYES)、シートベルト着用確認装置91によってシートベルトが着用されていないことが検出された場合(S104のNO)、シートベルト着用の警告を発する(S105)。
【0130】
なお、車両制御装置90は、物体が存在しない座席に関しては、シートベルト着用についての確認は省略してもよい。つまり、車両制御装置90は、全ての座席について、シートベルト着用の警告を発するか否かの判断が終了するまで、物体検知モードを実施する(S103のNO)。
【0131】
なお、物体検知モードは、物体の存在の有無を検知するモードなので、単に大きな荷物などであっても、乗員(生体)との区別をしていない。そこで、モード切替部25は、車両の発車前、信号や渋滞による車両の停車中といった、車両の振動が小さい時には、物体検知モードから生体検知モードに切替え、物体が存在している距離及び角度において、レーダー装置2から出力される反射波の複素信号成分の変動を、例えば数十秒間にわたり観測する。
【0132】
この変動が規則的で周期的であって、人の呼吸や心拍とみなせる変動周期の場合には、判断部24は、生体であると判断する。前記条件を満たさない場合には、判断部24は、荷物であるとみなし、警告を発しないように制御する信号を車両制御装置90に出力してもよい。
【0133】
なお、シートベルト着用確認装置91は、車両のエンジンが停止し、少なくとも一名以上の乗員がシートベルトを外した場合、車両が目的地等に到着し、少なくとも一名以上の乗員が降車したと判断した結果(運転終了)をレーダーシステム3、車両制御装置90に通知する(S107)。
【0134】
モード切替部25は、シートベルト着用確認装置91、車両からの情報を基にして、生体検知するモードに切替えるか否かを判断する(S108)。そして、レーダー装置2が物体の検知数の変化を検知した場合(S108のYES)、レーダーシステム3が、生体検知モードを実施する(S109)。なお、物体の検知数の変化には、減数後、増数することによって物体数が不変である場合を含む。
【0135】
判断部24が、心拍や呼吸等に伴う、微小な動きが検出した場合(S110のYES)、判断部24は、乗員もしくはペット(生体)が車室内に残っていると判断して、その結果を車両制御装置90に通知する。車両制御装置90は、通知結果に従い、置き去り警告を行う(S111)。置き去り警告は、例えば、ライトの点滅、ドアロックを解除、スマートフォン(通信装置)へのメール送信等が想定される。なお、生体検知モードにおいて、判断部24が、生体を検知しない場合(S110のNO)、車内に生体の置き去りはないと判断して、車両制御システム92は、処理を終了する。
【0136】
なお、車両制御システム92は、判断部24が車室内に残っている乗員の全てが子供であると判断した場合には置き去り警告に関する情報を車両制御装置90に通知するが、車室内に残っている乗員に大人が含まれる場合には、警告に関する情報の通知を省略してもよい。ここで、判断部24は、生体検知モードにおいて、レーダー装置2が検知した物体について、大きさも考慮して判定し、所定の大きさ以上である場合には、物体が大人の生体であると判断してもよい。
【0137】
なお、車両制御装置90は、車室内に残っている乗員に運転席の乗員(生体)が含まれる場合にも、警告の実施を省略してもよい。なお、運転席の乗員とは、車両の走行の開始時から停車後まで、運転席に着座している乗員(生体)である。
【0138】
(実施の形態7)
本実施の形態では、物体検知の結果の正誤を乗員にフィードバックさせて、教師データの更新に活用することで、検知性能を高める構成を含むレーダーシステムについて説明する。図29は、実施の形態7に係るレーダーシステムの構成の一例を示す図である。
【0139】
レーダーシステムは機械学習部26を含む。機械学習部26は、レーダー装置2の出力を記憶された教師データと比較して、レーダー装置2の出力がノイズでなく乗員であるか否かを判断する。なお、レーダー装置2の出力のうち、教師データに類似したデータは、新たな教師データとして蓄積してもよい。また、教師データが複数ある場合、所定期間、レーダー装置2の出力と類似しない教師データは機械学習部26から削除してもよい。また、機械学習部26は、複数ある教師データに対して、所定期間、教師データとしての比較実績に応じて、重み付けを与えて、教師データとしての信頼度を付加してもよい。
【0140】
なお、図29では、図27の、判断部24、モード切替部25を省略するが、図27の車両制御システム92に、図29のレーダーシステム3を用いる場合は、判断部24、モード切替部25を追加することができる。また、判断部24の出力に対しても機械学習を適用することができる。
【0141】
次に、機械学習の動作について説明する。まず、レーダー装置2の出力に対して、機械学習部26が、乗員が着席していない座席(例えば、助手席)に対して、乗員が着席していると誤判断する。シートベルト着用確認装置91は、全ての座席に対して、シートベルトの着用の有無を示す信号(助手席のシートベルトは未着用)を車両制御装置90に出力する。
【0142】
車両制御装置90は、レーダーシステム3からの判断結果と、シートベルト着用確認装置91からの信号とから、「助手席は、乗員の着席あり、シートベルトの未着用」の誤った警告を行う。乗員(例えば、運転手)は、UI(User Interface)部93、例えば、カーナビゲーションシステムの画面を介して、レーダーシステム3の検知結果を訂正する。その後、機械学習部26は、今回の判断に用いた教師データを削除、または、信頼度を低下させることができる。
【0143】
一方、UI部93への乗員からのフィードバックが無い場合、レーダーシステムは、乗員を正しく検知していると判断し、教師データとして検知結果を採用し、機械学習部26のメモリに蓄積する。
【0144】
また、レーダー装置によって乗員が着席していると検知された座席に、荷物が置かれていた場合、単に間違っていたという訂正方法でなく、座席の物体は荷物である(生体でない)と訂正してもよい。これにより、レーダーシステムは、呼吸や心拍による微小な動きがなかったために間違えただけであり、物体の検知としては正しかったケースとして、教師データを設定する。ここで、上記の誤判断を抑制するために、物体検知モードであっても、定期的に、生体検知モードに変更して、座席に存在する物体が、生体か、荷物かを判断してもよい。
【0145】
さらに、ユーザは、車両内に乗員がいないと確認した場合、例えば、スマートフォンなどによって、車外から車両制御システム92にアクセスし、レーダーシステムに物体検知モード、生体検知モードを実施させ、乗員が存在しない場合のリファレンス信号として学習させることも好適である。
【0146】
(その他の実施の形態)
実施の形態1~7に係るレーダー装置2またはレーダーシステム3a、3bについて、前部座席51および後部座席52の2列からなる座席配置を例にとって上述した。しかしながら、3列からなる座席配置については、例えば、一列目の座席と二列目の座席に対して、実施の形態1~7を適用してもよく、二列目の座席と三列目の座席に対して、実施の形態1~7を適用してもよい。4列以上の場合についても、同様である。
【0147】
実施の形態1~7に係るレーダー装置2について、背もたれ19にレーダー装置2を配置したが、背もたれ19に接続された図示しないヘッドレストにレーダー装置2を設置してもよい。
【0148】
上述の実施の形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0149】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0150】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0151】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0152】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売s機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0153】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサ等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサが含まれる。
【0154】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【0155】
本開示に係るレーダー装置は、第1の方向を含む第1の放射角度範囲で第1の電磁波を放射し、かつ、前記第1の方向の反対方向である第2の方向を含む第2の放射角度範囲で第2の電磁波を放射するアンテナと、前記アンテナによって受信された、前記第1の電磁波の第1の反射信号および前記第2の電磁波の第2の反射信号に基づいて、前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれについてターゲットの検出を行う回路と、を備える。
【0156】
本開示に係るレーダー装置において、前記レーダー装置は、室内の第1の座席に設けられ、前記第1の方向は、前記第1の座席の背面から前方に向かう方向に方向付けられており、かつ、前記第2の方向は、前記室内において前記第1の座席の後方に設けられた第2の座席に向かう方向に方向付けられている。
【0157】
本開示に係るレーダー装置において、前記回路は、前記各ターゲットが存在しない場合の前記第1の反射信号および前記第2の反射信号を記憶する記憶部を備え、前記アンテナが受信する前記第1の反射信号および前記第2の反射信号のそれぞれと、前記記憶部に記憶された前記第1の反射信号および前記第2の反射信号のそれぞれと、の差分に基づいて、前記各ターゲットを検出する。
【0158】
本開示に係るレーダー装置において、前記回路は、前記第1の反射信号及び第2の反射信号のそれぞれが示す体動、心拍、および呼吸の少なくとも1つに基づいて、前記各ターゲットの検出を行う。
【0159】
本開示に係るレーダー装置において、前記各座席の配置に基づいて前記室内に配置された基準指標からの反射信号に基づいて、前記各ターゲットが検出可能であるか否かを判断する。
【0160】
本開示に係るレーダー装置において、前記第1の座席のリクライニング角度を検出する角度センサ、および、前記第1の座席の前後方向のスライド位置を検出する位置センサの少なくとも1つの検出の結果に基づいて、前記各ターゲットが検出可能であるか否かを判断する。
【0161】
本開示に係るレーダー装置において、前記アンテナは、基板の第1の表面に配置された第1のアンテナ素子群を含み、前記第1の方向は、前記第1の表面の法線方向に沿った方向である。
【0162】
本開示に係るレーダー装置において、前記基板は、前記第1のアンテナ素子群の設けられた部分の厚みが他の部分よりも薄い。
【0163】
本開示に係るレーダー装置において、前記基板は、前記基板を挟んで前記第1の表面の反対側の面である第2の表面に、導波器を備える。
【0164】
本開示に係るレーダー装置において、前記アンテナは、前記基板を挟んで前記第1の表面の反対側の面である第2の表面に配置された第2のアンテナ素子群を含む。
【0165】
本開示に係るレーダー装置において、前記第1のアンテナ素子群のアンテナ素子数と、前記第2のアンテナ素子群のアンテナ素子数と、が異なる。
【0166】
本開示に係る車両は、本開示に係るレーダー装置と、背もたれ部およびヘッドレスト部を含む座席と、を備え、前記レーダー装置の前記アンテナは、前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に設けられ、第1の電磁波の放射方向が前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に対して前方に方向付けられており、第2の電磁波の放射方向が前記背もたれ部または前記ヘッドレスト部に対して後方に方向付けられている。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本開示は、車室内の乗員検出用センサに用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0168】
2(2a~2m) レーダー装置
3(3a~3L) レーダーシステム
4 サンルーフ
6 基板
7 アンテナ
8 レーダーチップ
9 レドーム
10 キャビティ
11、12 電磁ビーム
13 導波器
14 ビア
15 配線
16 反射板
17 アンテナ素子
18 角度センサ
19 座席の背もたれ
20 基準マーク
21 電波吸収体
22 基準マーク
24 判断部
25 モード切替部
26 機械学習部
27 アンテナ
27a~27n アンテナ素子
31 第1の方向
32 第2の方向
41、42 乗員
51 前部座席
52 後部座席
72 アンテナ
80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、80a、80b、80c、80d 反射鏡
90 車両制御装置
91 シートベルト着用確認装置
92 車両制御システム
93 UI部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29