(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】筐体、電気機器、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230602BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 G
H05K7/20 B
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2019120583
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 智大
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175748(JP,A)
【文献】特開2017-184416(JP,A)
【文献】特開2000-014169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器用の筐体であって、
発熱部品からの発熱を放熱する放熱部、及び1又は複数の電子部品が実装された基板を収容する本体部と、
前記放熱部と前記基板との間に配置されて、前記放熱部から前記基板への輻射熱を遮断する遮断部
である第1遮断部と、
前記基板の側面の一部を覆うように前記第1遮断部の一端から突出する第2遮断部と、
を備える、
筐体。
【請求項2】
電気機器用の筐体であって、
発熱部品からの発熱を放熱する放熱部、及び1又は複数の電子部品が実装された基板を収容する本体部と、
前記放熱部と前記基板との間に配置されて、前記放熱部から前記基板への輻射熱を遮断する遮断部と、
を備え、
前記本体部は、前記放熱部と前記基板とが並ぶ並び方向と交差する方向における両側に、第1壁と第2壁とを有し、
前記第1壁と前記第2壁との間の空間は、
前記遮断部よりも前記放熱部の側における第1空間と、
前記遮断部よりも前記基板の側における第2空間と、を含み、
前記第1壁及び前記第2壁の両方は、前記第1空間と対向する領域に、気体が前記第1空間を通り抜け可能な通風孔を有し、
前記第1壁及び前記第2壁の少なくとも一方は、前記第2空間と対向する領域が塞がれていて、
前記第1壁及び前記第2壁のいずれか一方は、前記第2空間と対向する領域に、前記第2空間の熱を前記本体部の外部に放出可能な孔部を有し、
前記第2空間の熱が前記孔部に向かって流れる流路は、前記第1壁と前記第2壁とが並ぶ並び方向に対して、クランク状に形成されている、
筐体。
【請求項3】
電気機器用の筐体であって、
発熱部品からの発熱を放熱する放熱部、及び1又は複数の電子部品が実装された基板を収容する本体部と、
前記放熱部と前記基板との間に配置されて、前記放熱部から前記基板への輻射熱を遮断する遮断部である第1遮断部と、
第2遮断部と、
を備え、
前記発熱部品は、前記1又は複数の電子部品に含まれる第1発熱部品であり、
前記第2遮断部は、前記基板とは異なる位置に配置された第2発熱部品からの発熱を前記基板に対して遮断する、
筐体。
【請求項4】
前記第1遮断部の前記一端である第1端とは反対側の第2端において、前記基板から離れる方向に突出して、前記本体部に固定される固定片を更に備える、
請求項
1に記載の筐体。
【請求項5】
前記1又は複数の電子部品は、インバータ回路を構成する電子部品を含み、
前記基板は、パワー基板である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の筐体。
【請求項6】
前記1又は複数の電子部品は、前記放熱部と熱的に結合される特定部品を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の筐体。
【請求項7】
前記遮断部は、前記放熱部と前記基板とが並ぶ並び方向に貫通した窓孔を有し、
前記特定部品は、前記窓孔に挿入された状態で、前記放熱部と熱的に結合される、
請求項6に記載の筐体。
【請求項8】
前記遮断部は、金属板により構成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の筐体。
【請求項9】
前記放熱部と前記遮断部との間には、隙間が設けられている、
請求項1~8のいずれか1項に記載の筐体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の筐体と、
前記放熱部と、
前記1又は複数の電子部品と、
前記1又は複数の電子部品が実装される前記基板と、
を備える、
電気機器。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の筐体と、
前記放熱部と、
前記1又は複数の電子部品と、
前記1又は複数の電子部品が実装される前記基板と、
を備え、
前記1又は複数の電子部品は、少なくとも直流電力を交流電力に変換する電力変換部を構成する電子部品を含む、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、筐体、電気機器、及び電力変換装置に関し、より詳細には、放熱部を備える電気機器用の筐体、当該筐体を備える電気機器、及び当該筐体を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のパワーコンディショナ(電力変換装置)は、電力変換部と、制御部と、これらを収容する筐体と、を備えている。電力変換部は、パワーデバイスを有している。パワーデバイスはIPM(Intelligent Power Module)に集約され、当該IPMは電力変換部の主基板の裏面側の中央部に実装されている。IPMの裏面側には、IPMを冷却するためのヒートシンクが設けられている。筐体の途中部には、仕切壁が設けられている。仕切壁の前面側が、電力変換部及び制御部を収容するための密閉された回路収容空間とされ、仕切壁の後面側には、ヒートシンクを収容する放熱通路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のパワーコンディショナでは、ヒートシンク(放熱部)が回路収容空間の外側にある。一方で、パワーコンディショナの設置環境や小型化等の要望に応じて、放熱部が、回路収容空間と同じ空間(本体部の空間)内に収容される場合がある。この場合、基板が放熱部からの輻射熱による影響をより受けやすくなり、放熱性が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、放熱性の低下の抑制を図ることができる、筐体、電気機器、及び電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る筐体は、電気機器用の筐体である。前記筐体は、本体部と、遮断部である第1遮断部と、第2遮断部と、を備える。前記本体部は、放熱部、及び基板を収容する。前記放熱部は、発熱部品からの発熱を放熱する。前記基板には、1又は複数の電子部品が実装されている。前記第1遮断部は、前記放熱部と前記基板との間に配置されて、前記放熱部から前記基板への輻射熱を遮断する。前記第2遮断部は、前記基板の側面の一部を覆うように前記第1遮断部の一端から突出する。
本開示の別の一態様に係る筐体は、電気機器用の筐体である。前記筐体は、本体部と、遮断部と、を備える。前記本体部は、放熱部、及び基板を収容する。前記放熱部は、発熱部品からの発熱を放熱する。前記基板には、1又は複数の電子部品が実装されている。前記遮断部は、前記放熱部と前記基板との間に配置されて、前記放熱部から前記基板への輻射熱を遮断する。前記本体部は、前記放熱部と前記基板とが並ぶ並び方向と交差する方向における両側に、第1壁と第2壁とを有する。前記第1壁と前記第2壁との間の空間は、前記遮断部よりも前記放熱部の側における第1空間と、前記遮断部よりも前記基板の側における第2空間と、を含む。前記第1壁及び前記第2壁の両方は、前記第1空間と対向する領域に、気体が前記第1空間を通り抜け可能な通風孔を有する。前記第1壁及び前記第2壁の少なくとも一方は、前記第2空間と対向する領域が塞がれている。前記第1壁及び前記第2壁のいずれか一方は、前記第2空間と対向する領域に、前記第2空間の熱を前記本体部の外部に放出可能な孔部を有する。前記第2空間の熱が前記孔部に向かって流れる流路は、前記第1壁と前記第2壁とが並ぶ並び方向に対して、クランク状に形成されている。
本開示の更に別の一態様に係る筐体は、電気機器用の筐体である。前記筐体は、本体部と、遮断部である第1遮断部と、第2遮断部と、を備える。前記本体部は、放熱部、及び基板を収容する。前記放熱部は、発熱部品からの発熱を放熱する。前記基板には、1又は複数の電子部品が実装されている。前記第1遮断部は、前記放熱部と前記基板との間に配置されて、前記放熱部から前記基板への輻射熱を遮断する。前記発熱部品は、前記1又は複数の電子部品に含まれる第1発熱部品である。前記第2遮断部は、前記基板とは異なる位置に配置された第2発熱部品からの発熱を前記基板に対して遮断する。
【0007】
本開示の一態様に係る電気機器は、上記のいずれかの筐体と、前記放熱部と、前記1又は複数の電子部品と、前記1又は複数の電子部品が実装される前記基板と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る電力変換装置は、上記のいずれかの筐体と、前記放熱部と、前記1又は複数の電子部品と、前記1又は複数の電子部品が実装される前記基板と、を備える。前記1又は複数の電子部品は、少なくとも直流電力を交流電力に変換する電力変換部を構成する電子部品を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、放熱性の低下の抑制を図ることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る筐体を備えた電気機器の一例である電力変換装置における要部の拡大断面図である。
【
図2】
図2Aは、同上の電力変換装置の上方から見た外観斜視図である。
図2Bは、同上の電力変換装置の下方から見た外観斜視図である。
【
図3】
図3Aは、同上の電力変換装置を備えた電力変換システムのシステム構成図である。
図3Bは、同上の電力変換装置における電力変換部のブロック構成図である。
【
図4】
図4は、同上の電力変換装置の下方から見た断面斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の電力変換装置の断面図である。
【
図6】
図6は、同上の電力変換装置における基板、遮蔽板、及び放熱部の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の電力変換装置の断面図である。
【
図8】
図8Aは、同上の電力変換装置におけるカバーが外された状態の正面図である。
図8Bは、
図8Aにおける要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態に係る筐体2は、
図1、
図2A及び
図2Bに示すように、電気機器A1用の筐体である。電気機器A1は、一例として電力変換装置1であることを想定する。ただし、筐体2が適用される電気機器A1は、電力変換装置1に限定されない。なお、
図1は、電力変換装置1を
図5のX1-X1で示す位置で切った断面図である。
図4は、電力変換装置1を
図5のX1-X1で示す位置で切った断面斜視図である。
図5は、電力変換装置1を
図7のX3-X3で示す位置で切った断面図である。
図7は、電力変換装置1を
図5のX2-X2で示す位置で切った断面図である。
【0013】
筐体2は、
図1に示すように、本体部20と、遮断部21(以下、「第1遮断部21」と呼ぶこともある)と、を備えている。本体部20は、放熱部4(ここではヒートシンク)及び基板5を収容する。基板5には、1又は複数の電子部品3が実装されている。
【0014】
放熱部4は、発熱部品B1からの発熱を放熱する。ここでは、発熱部品B1が、基板5に実装されている複数の電子部品3のうちの1つであるIPM(Intelligent Power Module)60であることを想定して説明するが、IPM60以外の電子部品3も発熱部品B1に相当し得る。
【0015】
第1遮断部21は、放熱部4と基板5との間に配置されて、放熱部4から基板5への輻射熱を遮断する。
【0016】
この構成によれば、放熱性の低下の抑制を図ることができる。すなわち、第1遮断部21が設けられていない場合、発熱部品B1からの発熱を放熱するための放熱部4が、逆に発熱部品B1から受ける熱により温度が上昇して熱源となり、輻射熱により基板5の温度を上昇させる原因となり得る。一方、筐体2が第1遮断部21(遮断部)を備えていることで、輻射熱による基板5の温度上昇が抑制される。
【0017】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る電力変換装置1の全体構成について、
図1~
図8Bを参照して詳しく説明する。以下の説明において、
図2AにおいてX軸に沿った方向を左右方向とし、X軸の正の向きを右側と規定する。またY軸に沿った方向を前後方向とし、Y軸の正の向きを前側と規定する。さらにZ軸に沿った方向を上下方向とし、Z軸の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、筐体2を備える電気機器A1(電力変換装置1)の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0018】
電力変換装置1は、
図1、
図2A、
図2B及び
図4に示すように、筐体2、ヒートシンクである放熱部4、基板5(メイン基板)、及び電力変換部6(
図3A及び
図3B参照)を備えている。また電力変換装置1は、端子ブロック7(
図5参照)、第1サブ基板SB1(
図7参照)、第2サブ基板SB2(
図7参照)、及び機能部9(
図8A及び
図8B)等を更に備えている。
【0019】
筐体2(本体部20)の設置場所は、例えば住宅等の施設の壁300(
図2A及び
図2B参照)等である。本体部20は、例えば、壁300に固定された取付部材を介して、壁300に取り付けられる。ここでは一例として、壁300は、屋内の壁である。
【0020】
本実施形態に係る電力変換装置1は、
図3Aに示すように、例えば電力変換システム200に適用され得る。電力変換システム200は、電力変換装置1、1つ以上の太陽光発電モジュールS1、蓄電池ユニットS6、リモートコントローラS2、及び分電盤S3を備えている。
【0021】
電力変換装置1は、太陽光発電モジュールS1及び蓄電池ユニットS6の少なくとも一方から出力される直流電力を、交流電力に変換して、分電盤S3を介して負荷機器S5(照明器具、空調機器、テレビジョン等)に電力を供給する。電力変換装置1が出力する電力は、分電盤S3を介して、商用交流電源S4(系統電源)から受電しているときは系統に連系し、商用交流電源S4が停電しているときには自立端子から負荷機器S5に出力される。さらに、商用交流電源S4、太陽光発電モジュールS1に由来する電力は、蓄電池ユニットS6の充電に用いられることも可能である。電力変換装置1が出力する交流電力のうち、負荷機器S5で使用されなかった交流電力は商用交流電源S4に逆潮流される。
【0022】
電力変換装置1は、リモートコントローラS2と電気的に接続されており、リモートコントローラS2を用いて電力変換装置1の駆動条件の設定、及び太陽光発電モジュールS1の発電量の確認等を行うことができる。なお、電力変換装置1は、太陽光発電モジュールS1と組み合わせられるものに限定されず、燃料電池システム、風力発電システム等の発電システムによって発電される直流電力を交流電力に電力変換するものでもよい。
【0023】
(2.2)電力変換部及び端子ブロック
電力変換部6は、複数のスイッチング素子を駆動することにより、入力電力を所定の電力に変換して出力するように構成される。電力変換部6は、少なくとも直流電力を交流電力に(ここでは双方向に)変換するインバータ回路を含む。また電力変換部6は、直流電力をDC-DC変換するDC-DCコンバータを含む。複数のスイッチング素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、又はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。複数のスイッチング素子は、後述するIPM60に集約される。
【0024】
具体的には、電力変換部6は、
図3Bに示すように、モジュール化されたIPM60、DCノイズフィルタ回路61、ACノイズフィルタ回路62、DC(直流)リアクトル63、AC(交流)リアクトル64、及び制御回路65を有している。また電力変換部6は、連系運転用のリレー66、及び自立運転用のリレー67等を更に有している。電力変換部6を構成する複数の電子部品3のうち、IPM60、リレー66及び67、並びに、フィルタ回路61及び62等を構成する電子部品3(フィルムコンデンサ、コモンチョークコイル、電解コンデンサ等)は、基板5に実装されている。特にIPM60は、基板5における放熱部4と対向する背面52に実装されている(
図1参照)。IPM60以外の電子部品3の多く(特にコンデンサ及びコモンチョークコイル等の背高部品)は、基板5の前面51に実装されている。IPM60は、基板5上に実装された第1発熱部品B11(発熱部品B1)に相当する。IPM60は、前後方向において扁平な矩形の箱状のモジュールである。
【0025】
DCリアクトル63及びACリアクトル64は、基板5とは異なる位置に配置されている。詳細には、DCリアクトル63及びACリアクトル64は、
図1に示すように、本体部20内の収容空間において、放熱部4の左横に配置されている。一方、基板5は、放熱部4の前方に配置されている。DCリアクトル63及びACリアクトル64は、基板5上に実装されていない第2発熱部品B12に相当する。
【0026】
端子ブロック7は、
図5に示すように、第1端子台71(直流用端子台)と、第2端子台72(交流用端子台)と、アース線用の端子とを含む。第1端子台71の端子には、例えば太陽光発電モジュールS1又は蓄電池ユニットS6と電気的に繋がっている第1電線が接続され得る。第2端子台72の端子には、例えば商用交流電源S4(系統電源)と電気的に繋がっている第2電線が接続され得る。また第2端子台72の別の端子(自立端子)には、負荷機器S5と電気的に繋がっている第3電線が接続され得る。
【0027】
例えば、第1端子台71から入力された太陽光発電モジュールS1からの直流電力は、DCノイズフィルタ回路61及びDCリアクトル63を通り、IPM60にて交流電力に変換される。変換された交流電力は、ACリアクトル64及びACノイズフィルタ回路62を通り、リレー66及び67の開閉状態に応じて、第2端子台72から商用交流電源S4へ逆潮流され、あるいは負荷機器S5に供給される。
【0028】
(2.3)メイン基板及びサブ基板
基板5(メイン基板)及び2枚のサブ基板(第1サブ基板SB1及び第2サブ基板SB2)は、導体のパターン配線が施されたプリント基板である。
【0029】
基板5は、制御回路65、DCリアクトル63、及びACリアクトル64以外の、電力変換部6(主にインバータ回路)を構成する複数の電子部品3が実装される。すなわち、基板5は、電力を送るパワー基板である。基板5は、
図6に示すように、平面視において、後述する配線空間26(
図5参照)を避けるように右下の領域が切り欠かれていて、全体として略L字形の板状となっている。基板5は、その厚み方向が前後方向に向けた状態で、放熱部4の前方に配置されている。基板5は、放熱部4の前面の略全体を覆う程度の大きさの表面積を有している。上述の通り、IPM60は、基板5の背面52に実装され、フィルムコンデンサ、コモンチョークコイル、電解コンデンサ等の電子部品3は、基板5の前面51に実装されている。基板5は、後述する筐体2の遮蔽板H1に固定される。
【0030】
第1サブ基板SB1は、制御回路65を構成する複数の電子部品3が実装される制御系の基板である。すなわち、第1サブ基板SB1は、弱電基板といえる。第1サブ基板SB1は、基板5(メイン基板)と電気的に接続されている。第1サブ基板SB1は、
図5に示すように、平面視において、左右方向に長尺の矩形の板状となっている。第1サブ基板SB1は、その厚み方向が前後方向に向けた状態で、基板5よりも前方に配置されている(
図7参照)。第1サブ基板SB1は、左右方向に沿って見てその一部(上部)がクランク形状となっている固定板10(
図7参照)にねじ止めされている。固定板10は、1枚の板金に曲げ加工及び抜き加工等を施すことによって形成されている。固定板10は、筐体2にねじ止めされている。
【0031】
ここで制御回路65は、IPM60、機能部9、リレー66及び67等を制御するように構成される。制御回路65は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを主構成とするマイクロコントローラにて構成されている。言い換えれば、制御回路65は、CPU及びメモリを有するコンピュータにて実現されており、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータが制御回路65として機能する。プログラムは、ここではメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0032】
第2サブ基板SB2は、設定部9Aを有した機能部9が実装される基板である。設定部9Aは、外部からの操作を受け付けて制御回路65に対して、電力会社等が定める整定値の設定を行う。なお、機能部9については後述する。第2サブ基板SB2は、弱電基板である。第2サブ基板SB2は、第1サブ基板SB1と電気的に接続されている。第2サブ基板SB2は、
図8Aに示すように、平面視において、左右方向に長尺の矩形の板状となっている。第2サブ基板SB2は、その厚み方向が前後方向に向けた状態で、第1サブ基板SB1よりも前方に配置されている(
図7参照)。具体的には、固定板10は、
図7に示すように、第1サブ基板SB1が固定されている第1部位11と、第2サブ基板SB2が固定されている第2部位12と、を有している。第1部位11と第2部位12との間には段差が設けられていて、第2部位12は、第1部位11よりも手前に位置する。第2サブ基板SB2は、第1サブ基板SB1と同様に、固定板10にねじ止めされている。
【0033】
(2.4)放熱部
放熱部4は、例えば、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料から形成されているヒートシンクである。放熱部4は、前後方向から見て略矩形の板状の基台41と、基台41の背面から後方に突出する複数のフィン42と、を有している。基台41と複数のフィン42とは一体となって形成されている。
【0034】
放熱部4は、筐体2の背壁(後述する第5壁205)にねじ止めされている。なお、筐体2の遮蔽板H1は、放熱部4にねじ止めされている。そして、基板5が、遮蔽板H1にねじ止めされている。要するに基板5は、放熱部4及び遮蔽板H1を介して、筐体2の本体部20に安定的に固定されている。
【0035】
基板5は、その背面52が基台41の前面と対向するように配置されている。ただし、基板5の背面52と基台41の前面との間に、遮蔽板H1の(後述する)第1遮断部21が介在する。
【0036】
放熱部4は、主として、基板5上に実装された第1発熱部品B11(発熱部品B1)に相当するIPM60からの発熱を放熱する。言い換えると、基板5上に実装されている複数の電子部品3は、放熱部4と熱的に結合される特定部品3Aを含んでいて、ここではIPM60が、その特定部品3Aに相当する。IPM60(特定部品3A)は、遮蔽板H1の第1遮断部21の窓孔210(
図6参照)に挿入された状態で、放熱部4と熱的に結合される。ここではIPM60の背面が、基台41の前面に対して概ね面接触していて、それにより、熱的な結合が達成されている。
【0037】
(2.5)筐体
筐体2は、本体部20と、遮蔽板H1とを備えている。
【0038】
本体部20は、全体として左右方向に長尺の矩形の箱状となっている。本体部20は、例えばアルミ鋼板によって形成されている。本体部20は、放熱部4、基板5、電力変換部6、端子ブロック7、第1サブ基板SB1、第2サブ基板SB2、遮蔽板H1、及び機能部9等を、その内部に収容する。
【0039】
本体部20は、
図2A及び
図2Bに示すように、前面が開放された矩形の箱状のケース20Aと、ケース20Aの前面を覆うカバー20Bと、を有している。カバー20Bは、ケース20Aに対して着脱可能に取り付けられている。
【0040】
ケース20Aは、第1壁201(上壁)と、第2壁202(下壁)と、第3壁203(左側壁)と、第4壁204(右側壁)と、第5壁205(背壁)とから構成される。第1壁201及び第2壁202は、
図7に示すように、放熱部4と基板5とが並ぶ並び方向D1(前後方向)と交差する方向における両側(上下の両側)に位置する。
【0041】
本体部20は、その内部の右下隅に、第1端子台71に接続される第1電線、並びに第2端子台72に接続される第2電線及び第3電線等の電線が通る配線空間26(
図5参照)を有している。第1端子台71は、配線空間26の左縁近傍に配置され、第2端子台72は、配線空間26の上縁近傍に配置される。第5壁205における配線空間26と対向する領域には、上記電線が配線空間26内に挿入されるための挿入口27(
図5参照)が設けられている。
【0042】
遮蔽板H1は、金属板により構成されている。遮蔽板H1は、例えばアルミ鋼板によって形成されている。すなわち、ここでは一例として、遮蔽板H1は、本体部20と同じ材料によって形成されているが、本体部20とは異なる材料によって形成されてもよい。遮蔽板H1は、例えば1枚の板金に対して曲げ加工及び抜き加工等を施すことにより、上下方向に沿って見て略L字形の板状となっている。L字形の遮蔽板H1は、
図6に示すように、第1遮断部21(遮断部)と第2遮断部22と固定片25とから構成される。
【0043】
第1遮断部21は、放熱部4と基板5との間に配置されて、放熱部4から基板5への輻射熱を遮断する。第1遮断部21は、基板5と同様に、配線空間26を避けるように右下の領域が切り欠かれていて、平面視において略L字形の板状となっている。第1遮断部21は、その厚み方向が前後方向に向くように配置される。第1遮断部21は、前後方向に沿って見て、基板5と略同形状であり、基板5よりもやや大きい面積を有している。ここでは第1遮断部21の後ろから見て、基板5は、その外周縁が第1遮断部21によって隠れるように配置されている。また前後方向に沿って見て、第1遮断部21における略正方形の領域221(
図6参照)は、放熱部4の基台41と略同形状である。ここでは第1遮断部21の前から見て、基台41は、その外周縁が第1遮断部21によって隠れるように配置されている。端子ブロック7は、第1遮断部21の前面における右隅、すなわちL字状の領域223(
図6参照)にねじ止めされている。
【0044】
第1遮断部21の上端は、僅かに前方へ折り返されていて、その折り返し部位が第1壁201と当接するように配置される(
図7参照)。同様に第1遮断部21の下端は、僅かに前方へ折り返されていて、その折り返し部位が第2壁202と当接するように配置される(
図7参照)。要するに、第1遮断部21は、第1壁201から第2壁202までわたって延びている。
【0045】
第1遮断部21は、
図6に示すように、放熱部4と基板5とが並ぶ並び方向D1に貫通した窓孔210を有している。窓孔210は、第1遮断部21の領域221における略中央に配置される。窓孔210は、矩形の開口を有していて、基板5上に実装されているIPM60が挿入可能となっている。なお、放熱部4の上下方向における寸法は、第1壁201及び第2壁202間の距離よりも僅かに小さい。
【0046】
固定片25は、第1遮断部21の右端より後方に突出している。固定片25は、第4壁204(右側壁)の近傍に配置され、筐体2の第5壁205(背壁)にねじ止め固定される。固定片25は、第1遮断部21と一体となっている。
【0047】
第2遮断部22は、放熱部4の左横に配置されるDCリアクトル63及びACリアクトル64(第2発熱部品B12)からの発熱を、基板5に対して遮断する。第2遮断部22は、略矩形の板状となっている。第2遮断部22は、その厚み方向が左右方向に向くように、第1遮断部21の左縁から前方に突出している。第2遮断部22は、第1遮断部21と一体となっている。第2遮断部22の上端は、第1壁201の近傍に位置する(第1壁201に当接してもよい)。第2遮断部22の下端は、第2壁202の近傍に位置する(第2壁202に当接してもよい)。要するに、第2遮断部22は、概ね第1壁201から第2壁202までわたって延びている。第2遮断部22の左端面は、前後方向に沿って見て、放熱部4の左端面と略面一となっている。
【0048】
以下、本体部20の内部空間(すなわち第1壁201と第2壁202との間の空間)において、第2遮断部22よりも右側で、かつ第1遮断部21よりも放熱部4の側における空間を、第1空間SP1と呼ぶ(
図7参照)。また、本体部20の内部空間において、第2遮断部22よりも右側で、かつ第1遮断部21よりも基板5の側における空間を、第2空間SP2と呼ぶ(
図7参照)。つまり、本体部20の内部空間は、第1空間SP1と第2空間SP2とを含む。本体部20の内部空間は、第2遮断部22よりも左側で、DCリアクトル63及びACリアクトル64が収容されている第3空間SP3を更に含む(
図5参照)。第3空間SP3は、本体部20の内部空間において、第2遮断部22よりも左側の空間である。第3空間SP3は、第1空間SP1及び第2空間SP2に対して、第2遮断部22によって隔離されている。ただし、第2遮断部22には、DCリアクトル63及びACリアクトル64の各々を、基板5に電気的に接続するための配線が通る孔が設けられている。
【0049】
そして、第1壁201及び第2壁202の両方は、第1空間SP1と対向する領域に、気体が第1空間SP1を上下方向に通り抜け可能な通風孔23(
図2A及び
図2B参照)を有している。通風孔23は、各々が前後方向に長尺のスリット状の複数の貫通孔から構成される。放熱部4は、第1空間SP1内に収容されているため、放熱部4の熱は、熱気として、第1壁201及び第2壁202に設けられている通風孔23から、本体部20の外部に放出され得る。
【0050】
また第1壁201は、第2空間SP2と対向する領域に、孔部24(
図2A参照)を有している。孔部24は、多数の貫通孔から構成される。基板5は、第2空間SP2内に収容されているため、基板5及び基板5上に実装されている複数の電子部品3の熱は、熱気として、孔部24から、本体部20の外部に放出され得る。つまり、孔部24は、第2空間SP2の熱を本体部20の外部に放出可能である。
【0051】
また第1壁201は、第1空間SP1と対向する、右隅近くの領域に、通風孔250(
図2A参照)を有していて、第1空間SP1内の熱気は、通風孔250からも外部に放出され得る。また第4壁204は、第1空間SP1と対向する領域に、通風孔251(
図2A参照)を有していて、第1空間SP1内の熱気は、通風孔251からも外部に放出され得る。さらに第5壁205は、放熱部4のフィン42を部分的に外部に露出する窓孔を有していて、放熱部4の周囲の熱気は、当該窓孔からも外部に放出され得る。
【0052】
さらに第1壁201は、第3空間SP3と対向する領域に、孔部252(
図2A参照)を有している。同様に、第2壁202も、第3空間SP3と対向する領域に、孔部252(
図2B参照)を有している。DCリアクトル63及びACリアクトル64は、第3空間SP3内に収容されているため、これらの熱は、熱気として、第1壁201及び第2壁202孔部252を通じて、本体部20の外部に放出され得る。
【0053】
このように第1遮断部21が設けられていることで、放熱部4からの輻射熱による基板5の温度上昇が抑制される。したがって、放熱性の低下の抑制を図ることができる。特に基板5は、電力を送るパワー基板であるため、パワー基板に対する放熱性の低下の抑制を図ることができる。またIPM60(特定部品3A)が第1遮断部21の窓孔210に挿入された状態で放熱部4と熱的に結合されるため、簡素な構成でありながらも、特定部品3Aに対する放熱性がより向上される。また第1遮断部21が金属板であるため、放熱部4からの輻射熱をより効果的に遮断できる。
【0054】
また第2遮断部22が設けられていることで、第1発熱部品B11(IPM60)とは別に、第2発熱部品B12(DCリアクトル63及びACリアクトル64)が存在する場合であっても、基板5に対する放熱性の低下の抑制を図ることができる。
【0055】
ところで、放熱部4と第1遮断部21との間には、
図1に示すように、隙間G1が設けられている。具体的には、例えば4本のスペーサJ1(例えば六角スペーサ)の雄ネジが放熱部4の基台41の上下左右の四隅近傍に設けられているねじ穴に螺合されている。また4本のねじJ2を、第1遮断部21の領域221の上下左右の四隅近傍に設けられている貫通孔に前面側から挿入して、4本のスペーサJ1の雌ネジに螺合されている。その結果、前後方向に対して、各スペーサJ1の長手寸法に応じた、一定間隔の隙間G1が形成されている。隙間G1が設けられていることで、放熱部4からの輻射熱による基板5の温度上昇が更に抑制され、基板5に対する放熱性の低下がより抑制される。
【0056】
ここで第1遮断部21の上記貫通孔の周辺部位222(
図6参照)は、放熱部4に向かって凹むように湾曲していて、ねじJ2の頭部は、その周辺部位222内に収まる。したがって、電力変換装置1は、基板5とねじJ2と(言い換えれば、基板5と第1遮断部21と)における一定の電気絶縁性を保つ構造となっている。
【0057】
また基板5と第1遮断部21との間にも、
図1に示すように、隙間G2が設けられている。基板5と第1遮断部21とは、複数のスペーサJ3(例えば円筒スペーサ)を介して、ねじ止めされている。その結果、前後方向に対して、各スペーサJ3の長手寸法に応じた、一定間隔の隙間G2が形成されている。電力変換装置1は、隙間G2が設けられていることで、基板5と第1遮断部21とにおける一定の電気絶縁性を保つ構造となっている。さらに隙間G2が設けられていることで、放熱部4からの輻射熱による基板5の温度上昇が更に抑制され、基板5に対する放熱性の低下がより抑制される。
【0058】
(2.6)設置場所
ところで、この種の電力変換装置は、屋内の設置場所として、例えば脱衣場等の壁に設置されることが望まれる場合がある。脱衣場への設置は、パワー基板や制御系の基板に対する湯気対策が必要となる。ただし、湯気対策として単純に電力変換装置の筐体を密閉してしまうと、放熱性が損なわれる。
【0059】
これに対して本実施形態の電力変換装置1では、上述の通り、第1壁201及び第2壁202の両方が、第1空間SP1と対向する領域に、通風孔23を有している。したがって、脱衣場内における上昇する湯気は、電力変換装置1の第2壁202(下壁)の通風孔23から、放熱部4が収容されている第1空間SP1内に入り、第1壁201(上壁)の通風孔23から放出される。しかし、第1壁201は、第2空間SP2と対向する領域に、孔部24を有しているが、第2壁202は、第2空間SP2と対向する領域に、孔部を有していない。つまり、第2壁202の、第2空間SP2と対向する領域は、塞がれている。そのため、電力変換装置1は、脱衣場内の湯気が、基板5、第1サブ基板SB1及び第2サブ基板SB2が収容されている第2空間SP2内には容易に進入しない構造となっている。
【0060】
そのため、本実施形態の電力変換装置1では、基板5への異物(脱衣場に設置される場合、例えば湯気)の進入を抑制しつつ、第1空間SP1及び第2空間SP2に対する放熱性の低下の抑制が図られる。
【0061】
特に
図7に示すように、上部がクランク形状となっている固定板10は、第1壁201の孔部24と対向するように配置された平板部13を有している。平板部13は、第1壁201と概ね平行である。したがって、第2空間SP2の熱が孔部24に向かって流れる流路K1(
図7では模式的に矢印で示す)は、第1壁201と第2壁202とが並ぶ並び方向D2に対して、クランク状に形成されている。そのため、第2空間SP2の熱は、孔部24から放出される一方で、仮に異物(湯気や水滴等も含む)が孔部24から内部に進入しても平板部13に当たる。つまり、異物が基板5に直接的に当たる可能性が低い。したがって、基板5への異物の進入をより抑制しつつ、放熱性の向上を図ることができる。なお、第1サブ基板SB1及び第2サブ基板SB2も、平板部13の下側に配置されているため、異物がこれらの基板に直接的に当たる可能性も低い。
【0062】
(2.7)機能部
以下、機能部9について、
図8A及び
図8Bを参照しながら説明する。機能部9は、第2サブ基板SB2に実装される。
【0063】
機能部9は、設定部9Aを有している。設定部9Aは、例えば電力変換装置1を設置する施工者からの操作を受け付けて、制御回路65に対して整定値を設定可能に構成される。設定部9Aは、整定値の数値を入力するための複数(ここでは4つ)の操作部91を含む。4つの操作部91は、例えば押し釦であり、第2サブ基板SB2に実装される。4つの操作部91は、左から順に「ESC釦」、「DOWN釦」、「UP釦」及び「ENT釦」である。
【0064】
整定値は、例えば電力会社等によって定められた値である。制御回路65は、設定部9Aに対する操作に応じて入力された整定値を自身のメモリに記憶する。制御回路65は、電力変換装置1から商用交流電源S4への出力電圧を監視し、出力電圧が設定された整定値を超えたことを検出すると、出力電圧の上昇を抑制するように動作する。要するに、設定部9Aは、電力変換部6から出力される電力の増加を抑制するための整定値の設定に関する操作を受け付ける。
【0065】
機能部9は、例えば樹脂成型品の本体部90(樹脂製のカバー部に相当)と、整定値等を表示する表示部92と、電力変換部6の動作状態を表示する作動灯93と、電力変換装置1の運転及び停止を切り替える切替部94と、カバー95と、を更に有している。
【0066】
本体部90は、左右方向に長尺で矩形の板状の第1板部901と、第1板部901の上縁に一体となって形成されている第2板部902と、を有している。また本体部90は、第1板部901の周縁に沿って前方に突出する枠状のガード部903と、第2板部902の周縁に沿って前方に突出する枠状のガード部904と、を更に有している。本体部90は、その背面側に後方へ突出する係合爪を有している。本体部90は、係合爪が第2サブ基板SB2に形成されている係合孔に引っ掛けられて固定される。
【0067】
第1板部901は、作動灯93の4つの光源930(例えばLED:Light Emitting Diode)から放出される光をそれぞれ外部に導出するための4つのガイド孔905を有している。第1板部901は、その裏側において、各光源930に向かって突出する筒状のリブを有し、ガイド孔905は、当該リブを貫通するように設けられている。作動灯93の各光源930は、第2サブ基板SB2に実装されていて、制御回路65の制御下で電力変換装置1の運転状態(電力変換部6の動作状態)に応じて点灯する。また第1板部901は、第2サブ基板SB2に実装された表示部92を露出するための孔906を有している。表示部92は、制御回路65の制御下で、整定値、及び(電力変換装置1が運転中であれば)現在の出力電力等を表示する。また第1板部901は、第2サブ基板SB2に実装された切替部94を露出するための孔907を有している。
【0068】
カバー95は、透光性を有している。カバー95は、第1板部901の前面において、表示部92及び作動灯93を覆うように、ガード部903の内側に嵌め込まれている。カバー95は、切替部94を露出するための孔を有している。
【0069】
第2板部902は、第2サブ基板SB2に実装された4つの操作部91をそれぞれ露出するための4つの釦孔908を有している。
【0070】
なお、筐体2のカバー20Bは、
図2A及び
図2Bに示すように、機能部9のうち設定部9A以外の部分を外部に露出するための窓孔255を有している。そのため、カバー20Bがケース20Aに取り付けられた状態でも、切替部94を操作可能であり、また表示部92及び作動灯93を視認可能である。そして、設定部9Aは、カバー20Bをケース20Aから取り外すことで露出され、施工者は、この状態で整定値の設定作業を行える。
【0071】
施工者が設定部9Aを用いて整定値の設定作業中において、表示部92は、4つの操作部91のうち「UP釦」又は「DOWN釦」への押し操作に応じて変動する整定値を表示する。「UP釦」を押せば表示部92に表示される整定値が増加し、「DOWN釦」を押せば表示部92に表示される整定値が減少する。要するに、施工者は、表示部92に表示される整定値を見ながら設定が可能である。施工者が「ENT釦」を押すことで、表示部92に表示中の整定値が制御回路65のメモリに登録される。施工者が「ESC釦」を押すことで整定値の設定がキャンセルされる。
【0072】
ここで本実施形態では、樹脂製の本体部90が、設定部9Aを囲むように設けられているため、施工者が設定部9Aを用いて整定値の設定作業中において、指等が設定部9Aの周辺にある部位(ここでは第2サブ基板SB2)に接触してしまう可能性を抑制できる。つまり、施工者の指等が第2サブ基板SB2に接触すると、第2サブ基板SB2が静電気等の影響を受けて故障の原因となり得るが、本体部90によって、そのような接触を抑制できる。特に、枠状のガード部904が、設定部9Aを囲むように第2板部902の周縁に沿って設けられているため、そのような接触をより抑制できる。
【0073】
また本体部90は、設定部9Aだけでなく、表示部92及び作動灯93も囲むように設けられているため、施工者の指等が、表示部92、作動灯93及び第2サブ基板SB2に接触してしまう可能性も抑制できる。特に、枠状のガード部903が、表示部92及び作動灯93を囲むように第1板部901の周縁に沿って設けられているため、そのような接触をより抑制できる。特に、本体部90が、指等の接触を抑制する機能だけでなく、作動灯93の光をガイドする機能も有しているため、部材の共通化を図ることができる。
【0074】
ところで、本実施形態の筐体2は、
図8Aに示すように、本体部90の周縁の少なくとも一部に沿うように配置される保護板28(
図8Aではドットハッチングで示す)を更に有している。
図8Aは、カバー20Bが外された状態の正面図である。保護板28は、金属板である。保護板28は、例えばアルミ鋼板により形成されている。保護板28は、1枚の板金に曲げ加工及び抜き加工等を施すことによって形成されている。保護板28は、その正面から見て、基板5、第1サブ基板SB1及び第2サブ基板SB2を全て覆い隠すように構成される。ただし、保護板28は、少なくとも機能部9を避けるように切り欠かれた形状となっている。要するに、保護板28は、その正面から見て、本体部90の外郭に沿うように凹んでいる。したがって、施工者が設定部9Aを用いて整定値の設定作業中において、指等が基板5、第1サブ基板SB1及び第2サブ基板SB2に接触してしまう可能性をより抑制できる。また保護板28(金属板)が接地されていれば、設定部9A及びその周辺における静電気除去にも寄与する。
【0075】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0076】
基本例では、第1壁201が、第2空間SP2と対向する領域に、孔部24を有している一方で、第2壁202は、第2空間SP2と対向する領域が塞がれている。しかし、逆に第1壁201は、第2空間SP2と対向する領域が塞がれていて、第2壁202が孔部24を有してもよいし、これらの両方が塞がっていてもよい。この場合、基板5への異物(湯気や水滴等も含む)の進入が更に抑制される。
【0077】
また例えば第1壁201及び第2壁202の両方が、孔部24を有してもよい。この場合、遮蔽板H1が、第1壁201及び第2壁202のいずれか一方の孔部24を塞ぐ第3遮断部を有してもよい。第3遮断部は、例えば、第1遮断部21の上端又は下端から前方に突出してもよい。
【0078】
基本例では、第1遮断部21(遮断部)が金属板(板金)により構成されている。しかし、第1遮断部21は、例えば樹脂板により構成されてもよい。同様に、第2遮断部22も、樹脂板により構成されてもよい。ただし、耐熱性の点を考慮すると、基本例のように第1遮断部21及び第2遮断部22が板金により構成される方が好ましい。
【0079】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る筐体(2)は、電気機器(A1)用の筐体である。筐体(2)は、本体部(20)と、遮断部(21)と、を備える。本体部(20)は、放熱部(4)、及び基板(5)を収容する。放熱部(4)は、発熱部品(B1)からの発熱を放熱する。基板(5)には、1又は複数の電子部品(3)が実装される。遮断部(21)は、放熱部(4)と基板(5)との間に配置されて、放熱部(4)から基板(5)への輻射熱を遮断する。第1の態様によれば、放熱性の低下の抑制を図ることができる。
【0080】
第2の態様に係る筐体(2)に関して、第1の態様において、1又は複数の電子部品(3)は、インバータ回路(電力変換部6)を構成する電子部品(3)を含む。基板(5)は、パワー基板である。第2の態様によれば、パワー基板に対する放熱性の低下の抑制を図ることができる。
【0081】
第3の態様に係る筐体(2)に関して、第1の態様又は第2の態様において、1又は複数の電子部品(3)は、放熱部(4)と熱的に結合される特定部品(3A)を含む。第3の態様によれば、特定部品(3A)に対する放熱性がより向上される。
【0082】
第4の態様に係る筐体(2)に関して、第3の態様において、遮断部(21)は、放熱部(4)と基板(5)とが並ぶ並び方向(D1)に貫通した窓孔(210)を有する。特定部品(3A)は、窓孔(210)に挿入された状態で、放熱部(4)と熱的に結合される。第4の態様によれば、簡素な構成でありながら、特定部品(3A)に対する放熱性がより向上される。
【0083】
第5の態様に係る筐体(2)に関して、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、遮断部(21)は、金属板により構成されている。第5の態様によれば、放熱部(4)からの輻射熱をより効果的に遮断できる。
【0084】
第6の態様に係る筐体(2)に関して、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、本体部(20)は、放熱部(4)と基板(5)とが並ぶ並び方向(D1)と交差する方向における両側に、第1壁(201)と第2壁(202)とを有する。第1壁(201)と第2壁(202)との間の空間は、遮断部(21)よりも放熱部(4)の側における第1空間(SP1)と、遮断部(21)よりも基板(5)の側における第2空間(SP2)と、を含む。第1壁(201)及び第2壁(202)の両方は、第1空間(SP1)と対向する領域に、気体が第1空間(SP1)を通り抜け可能な通風孔(23)を有する。第1壁(201)及び第2壁(202)の少なくとも一方は、第2空間(SP2)と対向する領域が塞がれている。第6の態様によれば、基板(5)への異物(湯気や水滴等も含む)の進入を抑制しつつ、第1空間(SP1)及び第2空間(SP2)に対する放熱性の向上を図ることができる。
【0085】
第7の態様に係る筐体(2)に関して、第6の態様において、第1壁(201)及び第2壁(202)のいずれか一方は、第2空間(SP2)と対向する領域に、孔部(24)を有する。孔部(24)は、第2空間(SP2)の熱を本体部(20)の外部に放出可能である。第2空間(SP2)の熱が孔部(24)に向かって流れる流路は、第1壁(201)と第2壁(202)とが並ぶ並び方向(D2)に対して、クランク状に形成されている。第7の態様によれば、基板(5)への異物(湯気や水滴等も含む)の進入をより抑制しつつ、放熱性の向上を図ることができる。
【0086】
第8の態様に係る筐体(2)に関して、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、発熱部品(B1)は、1又は複数の電子部品(3)に含まれる第1発熱部品(B11)である。筐体(2)は、遮断部(21)としての第1遮断部(21)に加えて、第2遮断部(22)を、更に備える。第2遮断部(22)は、基板(5)とは異なる位置に配置された第2発熱部品(B12)からの発熱を基板(5)に対して遮断する。第8の態様によれば、基板(5)に実装された第1発熱部品(B11)とは別に、第2発熱部品(B12)が存在する場合であっても、基板(5)に対する放熱性の低下の抑制を図ることができる。
【0087】
第9の態様に係る筐体(2)に関して、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、放熱部(4)と遮断部(21)との間には、隙間(G1)が設けられている。第9の態様によれば、放熱性の低下がより抑制される。
【0088】
第10の態様に係る電気機器(A1)は、第1~第9の態様のいずれか1つにおける筐体(2)と、放熱部(4)と、1又は複数の電子部品(3)と、1又は複数の電子部品(3)が実装される基板(5)と、を備える。第10の態様によれば、放熱性の低下の抑制を図ることが可能な電気機器(A1)を提供できる。
【0089】
第11の態様に係る電力変換装置(1)は、第1~第9の態様のいずれか1つにおける筐体(2)と、放熱部(4)と、1又は複数の電子部品(3)と、1又は複数の電子部品(3)が実装される基板(5)と、を備える。1又は複数の電子部品(3)は、少なくとも直流電力を交流電力に変換する電力変換部(6)を構成する電子部品(3)を含む。第11の態様によれば、放熱性の低下の抑制を図ることが可能な電力変換装置(1)を提供できる。
【0090】
第2~9の態様に係る構成については、筐体(2)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0091】
A1 電気機器
1 電力変換装置
2 筐体
20 本体部
201 第1壁
202 第2壁
21 第1遮断部(遮断部)
210 窓孔
22 第2遮断部
23 通風孔
24 孔部
3 電子部品
3A 特定部品
4 放熱部
5 基板
6 電力変換部(インバータ回路)
B1 発熱部品
B11 第1発熱部品
B12 第2発熱部品
D1 並び方向
D2 並び方向
G1 隙間
SP1 第1空間
SP2 第2空間