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特許7289103熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、樹脂付きフィルム及び樹脂付き金属箔
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、樹脂付きフィルム及び樹脂付き金属箔
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20230602BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230602BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20230602BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20230602BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20230602BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20230602BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230602BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230602BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230602BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C08L63/00 B
C08K3/36
C08K3/20
C08G59/40
C08L79/00
C08L51/04
C08L33/04
C08J5/24 CEZ
C08J5/24 CFC
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019551002
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2018038155
(87)【国際公開番号】W WO2019082698
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017206638
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 龍史
(72)【発明者】
【氏名】小畑 心平
(72)【発明者】
【氏名】安部 泰則
(72)【発明者】
【氏名】六車 智
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/017816(WO,A1)
【文献】特開2012-097283(JP,A)
【文献】特開2001-261785(JP,A)
【文献】特開2014-065829(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096273(WO,A1)
【文献】特開平06-128357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
C08J 5/04-5/10、5/24
B32B 1/00-43/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂及びビスマレイミド樹脂のうちの少なくともいずれかと、硬化剤と、を含み、
前記硬化剤は、酸化されたナフタレン型フェノール樹脂を含み、
前記酸化されたナフタレン型フェノール樹脂は、式(F)で表される1,4-ナフトキノン骨格、及び式(G)で表される1,2-ナフトキノン骨格のうちの少なくともいずれかの骨格を含み、
前記硬化剤の3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数は15以上であり、
前記硬化剤の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、10質量%以上であり、
前記無機充填材は、シリカ及び水酸化アルミニウムのうちの少なくともいずれかを含む、
熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(F)及び式(G)中、R6及びR7の各々は、水素原子、メチル基、エチル基(-CH CH )又はメトキシ基である。R6及びR7以外の置換基は水素原子である。
【請求項2】
前記無機充填材の含有量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、200質量部以下である、
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂は、反応型難燃剤を更に含む、
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
コアシェルゴム、アクリル樹脂、又は、コアシェルゴム及びアクリル樹脂の両方を更に含有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
添加型難燃剤を更に含有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
基材と、
前記基材に含浸された請求項1~5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の半硬化物と、を備えている、
プリプレグ。
【請求項7】
厚さが100μm以下である、
請求項6に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプリプレグの硬化物で形成された絶縁層と、
前記絶縁層の片面又は両面に形成された金属層と、を備えている、
金属張積層板。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のプリプレグの硬化物で形成された絶縁層と、
前記絶縁層の片面又は両面に形成された導体配線と、を備えている、
プリント配線板。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の半硬化物で形成された樹脂層と、前記樹脂層を支持する支持フィルムと、を備えている、
樹脂付きフィルム。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の半硬化物で形成された樹脂層と、前記樹脂層が接着された金属箔と、を備えている、
樹脂付き金属箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板に関する。本開示は、詳細には熱硬化性樹脂と無機充填材とを含有する熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物の半硬化物を備えるプリプレグ、当該プリプレグの硬化物を備える金属張積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物を開示する。このエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び所定の多価ヒドロキシ樹脂硬化剤を必須成分とする。この多価ヒドロキシ樹脂中のナフトール類モノマーの含有率は0.8重量%以下であり、かつ、多価ヒドロキシ樹脂の10重量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数は13以下である。
【0003】
ところで、プリント配線板などの基板の両面に、液状の感光レジストを塗布したり、フィルム状の感光レジスト(ドライフィルム)を貼着したりした後、両面露光を行って、各面に所望のパターンを有する硬化被膜を形成することが行われている。
【0004】
上記の両面露光では、各面においてフォトマスクを介して紫外線を照射している。この場合、いわゆる裏焼けが問題となる。すなわち、裏焼けとは、基板の一方の面に照射した紫外線が、基板内部を透過して、基板の他方の面の、感光させたくない箇所の感光レジストを感光させてしまうという現象である。この問題は、昨今の基板の薄型化の進展に伴って深刻化しており、特許文献1などの硬化物で基板が製造されていても解決することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-261785号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、紫外線遮蔽性の高い硬化物を得ることができる熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板、樹脂付きフィルム及び樹脂付き金属箔を提供することにある。
【0007】
本開示の一態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する熱硬化性樹脂組成物である。前記熱硬化性樹脂は、硬化剤を含む。前記硬化剤の3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数は15以上である。前記硬化剤の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、10質量%以上である。
【0008】
本開示の一態様に係るプリプレグは、基材と、前記基材に含浸された前記熱硬化性樹脂組成物の半硬化物と、を備えている。
【0009】
本開示の一態様に係る金属張積層板は、前記プリプレグの硬化物で形成された絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に形成された金属層と、を備えている。
【0010】
本開示の一態様に係るプリント配線板は、前記プリプレグの硬化物で形成された絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に形成された導体配線と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るプリプレグの概略断面図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る金属張積層板の概略断面図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係るプリント配線板の概略断面図である。
図4図4A図4Dは、同上のプリント配線板の製造方法の各工程を示す概略断面図である。
図5図5A図5Cは、被覆プリント配線板の製造方法の各工程を示す概略断面図である。
図6図6Aは、本開示の一実施形態に係る樹脂付きフィルムの概略断面図である。図6Bは、本開示の一実施形態に係る樹脂付きフィルムの他の一例を示す概略断面図である。
図7図7は、本開示の一実施形態に係る樹脂付き金属箔の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)概要
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する。熱硬化性樹脂は、硬化剤を含む。硬化剤の3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数は15以上である。硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、10質量%以上である。
【0013】
本実施形態によれば、硬化剤が紫外線を吸収しやすく、このような硬化剤が、熱硬化性樹脂組成物に所定量含有されていることで、紫外線遮蔽性の高い硬化物を得ることができる。
【0014】
(2)詳細
(2.1)熱硬化性樹脂組成物
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する。熱硬化性樹脂及び無機充填材は必須成分である。必須成分による効果を損なわない限度において、熱硬化性樹脂組成物は、必須成分以外の任意成分を更に含有してもよい。以下、必須成分及び任意成分の各成分について説明する。
【0015】
(2.1.1)熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂は、反応性基を持つ低分子化合物(例えばプレポリマー又はオリゴマー)である。熱硬化性樹脂は、加熱されると、架橋反応(硬化反応)が進行し、三次元構造を持つ不溶不融の物質(硬化物)となる。
【0016】
熱硬化性樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂が挙げられる。
【0017】
エポキシ樹脂の具体例として、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及び、ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、そのエポキシ当量は、好ましくは158g/eq以上275g/eq以下の範囲内であり、より好ましくは158g/eq以上235g/eq以下の範囲内である。この範囲内であることで、架橋密度が高くなり、硬化物のガラス転移温度(Tg)を高めることができる。Tgを高めることによって、硬化物の寸法安定性及び耐熱信頼性を向上させることができる。
【0018】
ビスマレイミド樹脂は、エポキシ樹脂より高い耐熱性を有する硬化物を与え得る。
【0019】
熱硬化性樹脂は、硬化剤を含む。本実施形態では、硬化剤の3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数は15以上である。ここで、ガードナー色数は、ガードナー色数試験方法によって求めることができる。ガードナー色数の定義及びガードナー色数試験方法は、JIS K 0071-2に準拠する。
【0020】
すなわち、ガードナー色数は、ガードナー色数標準液と試料との透過色を比較して定める色番号のことである。ガードナー色数標準液は、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、塩化鉄(III)、塩化コバルト(II)及び塩酸を用いて調製される。ガードナー色数は、1~18の範囲の色数によって表す。原則として、試料の色は単一の整数で表される。例外的に、試料の色が二つのガードナー色数標準液の間にある場合は、試料に最も近似したガードナー色数を決定し、その色数番号より“明るい”又は“暗い”と表される。ガードナー色数標準液の代わりに、それらと透過色が等しい標準色ガラスを用いてもよい。
【0021】
上記の試料が、硬化剤の3質量%メチルエチルケトン溶液である。すなわち、この試料は、溶質である硬化剤の濃度が3質量%となるように、溶媒であるメチルエチルケトンに硬化剤を溶かして調製される。
【0022】
以下、3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数が15以上となる硬化剤のことを、第1硬化剤という場合がある。また第1硬化剤以外の硬化剤のことを、第2硬化剤という場合がある。すなわち、第2硬化剤の3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数は1以上14以下の範囲内である。特に断りのない限り、ガードナー色数といえば、3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数を意味する。
【0023】
第1硬化剤は、ガードナー色数が15以上(上限値は18)であるので、熱硬化性樹脂組成物に含有されていると、高い紫外線遮蔽性を硬化物に付与し得る。すなわち、第1硬化剤は、架橋反応して硬化物を形成するが、この硬化物中における第1硬化剤に由来する部分によって、紫外線を吸収することができる。第2硬化剤は、第1硬化剤ほど高い紫外線遮蔽性を硬化物に付与し得るものではないが、第1硬化剤と併用されてもよい。
【0024】
第1硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、10質量%以上である。第1硬化剤の含有量が10質量%以上であることで、紫外線遮蔽性の高い硬化物を得ることができる。例えば、このような硬化物で絶縁層が形成されていると、絶縁層の一方の面に紫外線が照射された場合に、この紫外線は絶縁層内部で吸収されて遮蔽され、他方の面から透過するのが抑制される。
【0025】
紫外線は、感光レジストを感光させる程度の波長域の紫外線である。例えば、紫外線の波長は350nm以上450nm以下の範囲内である。第1硬化剤の含有量が10質量%未満であると、硬化物の紫外線遮蔽性が低くなる。このような硬化物で絶縁層が形成されていると、絶縁層の一方の面に紫外線が照射された場合に、一部の紫外線は絶縁層内部で吸収され得るが、残りの紫外線が他方の面から透過し得る。
【0026】
このように、第2硬化剤に比べて紫外線を吸収しやすい第1硬化剤が、10質量%以上の含有量で熱硬化性樹脂組成物に含有されていることで、紫外線遮蔽性の高い硬化物を得ることができる。
【0027】
第1硬化剤の具体例として、ナフタレン型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
【0028】
好ましくは、ナフタレン型フェノール樹脂は、1分子中に、少なくとも1つのナフタレン環と、少なくとも1つのベンゼン環と、を含む。ナフタレン環同士、ベンゼン環同士、及び、ナフタレン環とベンゼン環とは、例えば2価の有機基(メチレン基(-CH-)など)で連結されている。このナフタレン型フェノール樹脂において、ナフタレン環の各々は、少なくとも1つのヒドロキシ基(-OH)を有し、ベンゼン環の各々は、少なくとも1つのヒドロキシ基(フェノール性ヒドロキシ基)を有する。
【0029】
言い換えると、好ましくは、ナフタレン型フェノール樹脂は、1分子中に、少なくとも1つのナフトール骨格と、少なくとも1つのフェノール骨格と、を含む。ナフトール骨格は、例えば、下記式(A)又は下記式(C)で表される。ナフトール骨格は、ナフタレン環における1つ又は複数の水素をヒドロキシ基に置換した骨格である。フェノール骨格は、例えば、下記式(B)で表される。フェノール骨格は、ベンゼン環における1つ又は複数の水素をヒドロキシ基に置換した骨格である。
【0030】
【化1】
【0031】
式(A)及び式(C)中、R1、R3及びR5の各々は、水素原子(H)、メチル基(-CH)、メトキシ基(-OCH)又はヒドロキシ基であり、R1、R3及びR5のうちの少なくともいずれかはヒドロキシ基である。式(B)中、R2及びR4の各々は、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基であり、R2及びR4のうちの少なくともいずれかはヒドロキシ基である。なお、式(A)中の1本の線分、式(B)及び式(C)中の2本の線分は、他の構造部位との結合手を表す。
【0032】
ナフタレン型フェノール樹脂はナフタレン環を含むので、ベンゼン環を含むノボラック型フェノール樹脂に比べて共役系が大きくなる。そのため、ナフタレン型フェノール樹脂の吸収ピーク波長は、ノボラック型フェノール樹脂の吸収ピーク波長よりも長波長側に位置している。すなわち、ナフタレン型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂に比べて紫外線を吸収しやすい。したがって、第1硬化剤は、ナフタレン型フェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0033】
第1硬化剤がナフタレン型フェノール樹脂を含むことで、硬化物のTgを高めることができる。そのため、硬化物の耐熱性及び耐燃性を向上させることができる。さらに硬化物の吸湿性及び熱膨張率を低減することもできる。
【0034】
好ましくは、ナフタレン型フェノール樹脂は、下記式(D)で表される。このナフタレン型フェノール樹脂は、式(A)及び式(C)で表されるナフトール骨格と、式(B)で表されるフェノール骨格と、を含む。
【0035】
【化2】
【0036】
式(D)中、R1、R3及びR5の各々は、水素原子、メチル基、メトキシ基又はヒドロキシ基であり、R1、R3及びR5の少なくともいずれかはヒドロキシ基である。式(D)中、R2及びR4の各々は、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基であり、R2及びR4の少なくともいずれかはヒドロキシ基である。
【0037】
式(D)中、nは1~3の整数、mは0~3の整数である。式(D)で表されるナフタレン型フェノール樹脂において、式(B)で表されるフェノール骨格及び式(C)で表されるナフトール骨格の配列順序は特に限定されない。すなわち、式(D)で表されるナフタレン型フェノール樹脂において、式(B)で表されるフェノール骨格同士は連続していても連続していなくてもよく、また式(C)で表されるナフトール骨格同士は連続していても連続していなくてもよい。要するに、式(D)で表されるナフタレン型フェノール樹脂は、式(A)で表されるナフトール骨格を1個、式(B)で表されるフェノール骨格をn個、及び式(C)で表されるナフトール骨格をm個有していればよい。
【0038】
好ましくは、ナフタレン型フェノール樹脂は、下記式(E)で表される。このナフタレン型フェノール樹脂は、式(D)で表されるナフタレン型フェノール樹脂の具体例である。
【0039】
【化3】
【0040】
式(E)中、R1は、水素原子、メチル基又はメトキシ基である。式(E)中、R2は、水素原子又はメチル基である。式(E)中、nは1~3の整数、mは0~3の整数である。
【0041】
さらにナフタレン型フェノール樹脂は、酸化されていることが好ましい。より詳しくは、ナフタレン型フェノール樹脂に含まれるナフタレン環が有するヒドロキシ基は、酸化されていることが好ましい。ヒドロキシ基が酸化されるとオキソ基(=O)となる。
【0042】
例えば、酸化されたナフタレン型フェノール樹脂は、ナフトキノン骨格を有する。ナフトキノン骨格は、例えば、下記式(F)で表される1,4-ナフトキノン骨格、及び下記式(G)で表される1,2-ナフトキノン骨格を含む。
【0043】
【化4】
【0044】
式(F)及び式(G)中、R6及びR7の各々は、水素原子、メチル基、エチル基(-CHCH)又はメトキシ基である。なお、式(F)及び式(G)中の2本の線分は、他の構造部位との結合手を表す。
【0045】
好ましくは、酸化されたナフタレン型フェノール樹脂は、式(F)で表される1,4-ナフトキノン骨格、及び式(G)で表される1,2-ナフトキノン骨格のうちの少なくともいずれかの骨格を含む。このように酸化されたナフタレン型フェノール樹脂は、例えば、式(D)又は式(E)で表されるナフタレン型フェノール樹脂を酸化処理することにより得られる。酸化処理の方法として、例えば、(1)ナフタレン型フェノール樹脂を非密閉型容器に入れ、この容器を空気存在下に放置又は攪拌する方法、(2)ナフタレン型フェノール樹脂を非密閉型容器に入れ、この容器に酸素を吹き込みながら放置又は攪拌する方法、(3)ナフタレン型フェノール樹脂を空気と共に密閉型容器に閉じ込めて放置又は攪拌する方法などが挙げられる。酸化処理の温度は、例えば50℃以上100℃以下の範囲内である。酸化処理の時間は、例えば6時間以上72時間以下の範囲内である。
【0046】
ナフタレン型フェノール樹脂が酸化されることで、吸収ピーク波長が、長波長側に更にシフトする。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物に含有される硬化剤は、第1硬化剤のみが好ましいが、第1硬化剤及び第2硬化剤の両方でもよい。
【0048】
熱硬化性樹脂は、反応型難燃剤を更に含むことが好ましい。反応型難燃剤は、熱硬化性樹脂組成物が硬化する際に、架橋構造を形成する。反応型難燃剤の具体例として、リン変性フェノール樹脂、テトラブロモビスフェノールA及びトリブロモフェノールが挙げられる。反応型難燃剤は、硬化物中では孤立して存在せず、架橋構造の形成に関与するので、ブリードアウトを抑制しつつ、硬化物の耐燃性(難燃性)を向上させることができる。
【0049】
反応型難燃剤は、反応型リン系難燃剤であることが好ましい。反応型リン系難燃剤をハロゲンの代わりに使用することで、ハロゲンフリーの熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。反応型リン系難燃剤の具体例として、リン変性フェノール樹脂が挙げられる。反応型リン系難燃剤がリン変性フェノール樹脂である場合、その水酸基当量は、好ましくは350g/eq以上600g/eq以下の範囲内であり、より好ましくは373g/eq以上550g/eq以下の範囲内である。
【0050】
(2.1.2)無機充填材
無機充填材は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の寸法安定性の向上などに寄与し得る。無機充填材の具体例として、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、Eガラス粉末、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、クレイ及びタルクが挙げられる。これらの中では、溶融シリカ及び水酸化アルミニウムが好ましい。
【0051】
溶融シリカは、球状であるため、熱硬化性樹脂組成物における含有量がある程度多くても、成型性を確保することができる。さらに溶融シリカは、硬化物の低熱膨張率化、レーザ加工性の向上、ドリル加工性の向上及び寸法安定化などに寄与し得る。ただし、溶融シリカが過剰であると、熱硬化性樹脂組成物の成型性が低下するおそれがある。また溶融シリカは、水酸化アルミニウムに比べて硬いため、含有量が過剰であると、硬化物のレーザ加工性及びドリル加工性が低下するおそれがある。
【0052】
水酸化アルミニウムは、硬化物の耐燃性の向上に寄与し得る。ただし、水酸化アルミニウムが過剰であると、同量の溶融シリカを使用する場合に比べて、熱硬化性樹脂組成物の成型性が低下したり、硬化物が吸湿しやすくなったりするおそれがある。
【0053】
溶融シリカ及び水酸化アルミニウムを併用してもよいし、これらのうち溶融シリカのみを使用してもよい。このような場合には、溶融シリカ及び水酸化アルミニウムの合計質量に対して、溶融シリカの割合は、50質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような最適量であれば、溶融シリカ及び水酸化アルミニウムの各々の利点が得られる。すなわち、硬化物の低熱膨張率化、耐燃性、レーザ加工性及びドリル加工性の向上を実現し得る。
【0054】
無機充填材の平均粒子径は0.5μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましい。本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法によって測定された粒度分布における積算値50%での粒径(d50)を意味する。
【0055】
無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましい。無機充填材の含有量が200質量部以下であることで、熱硬化性樹脂組成物の成型性を向上させることができる。さらに熱硬化性樹脂組成物の硬化物内におけるボイドの発生を抑制することができる。無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましい。
【0056】
(2.1.3)任意成分
任意成分の具体例として、コアシェルゴム、アクリル樹脂、添加型難燃剤及び硬化促進剤が挙げられる。これらの成分について、以下、順に説明する。
【0057】
熱硬化性樹脂組成物は、コアシェルゴム、アクリル樹脂、又は、コアシェルゴム及びアクリル樹脂の両方を更に含有することが好ましい。
【0058】
まずコアシェルゴムについて説明する。コアシェルゴムは、コアシェル構造を有するゴム粒子の集合体である。ゴム粒子は、コアとシェルとで形成されている。コア及びシェルの少なくともいずれかが弾性を有する。このようなコアシェルゴムを熱硬化性樹脂組成物が含有することで、硬化物の耐衝撃性、耐熱衝撃性、レーザ加工性及びドリル加工性を高めることができる。好ましくは、コアシェルゴムがコア及びシェルの少なくともいずれかにシリコーンを含んでいる。これにより耐熱衝撃性を更に高めることができる。つまり、シリコーンを含んでいない場合に比べて、より低温でも耐衝撃性を高めることができる。
【0059】
コアは、粒子状のゴムである。ゴムは、共重合体でも単独重合体でもよい。共重合体の具体例として、シリコーン/アクリル共重合体が挙げられる。単独重合体の具体例として、架橋アクリル重合体が挙げられる。架橋アクリル重合体は、アクリルモノマーの単独重合体であって、三次元架橋構造を有するものである。
【0060】
シェルは、コアの表面に存在する。シェルは、複数のグラフト鎖からなる。各グラフト鎖の一端はコアの表面に結合されて固定端となっており、他端は自由端となっている。グラフト鎖は、共重合体でも単独重合体でもよい。共重合体の具体例として、アクリロニトリル/スチレン共重合体が挙げられる。単独重合体の具体例として、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0061】
コアシェルゴムの平均粒子径は、0.1μm以上0.7μm以下の範囲内であることが好ましい。コアシェルゴムの平均粒子径が0.1μm以上であることによって、硬化物の耐衝撃性を更に高めることができる。コアシェルゴムの平均粒子径が0.7μm以下であることによって、コアシェルゴムが熱硬化性樹脂組成中において均一に分散しやすくなり、その結果、硬化物中においても均一に分散しやすくなる。
【0062】
コアシェルゴムの含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下の範囲内であることが好ましい。コアシェルゴムの含有量がこの範囲内であることで、熱硬化性樹脂組成物の成型性を適度に維持しながら、硬化物の耐衝撃性、ドリル加工性及びレーザ加工性を向上させることができる。
【0063】
次にアクリル樹脂について説明する。アクリル樹脂は、下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)のうちの、少なくとも下記式(2)及び下記式(3)で表される構造を有することが好ましい。以下では、このような構造を有するアクリル樹脂について説明するが、このアクリル樹脂には限定されない。
【0064】
【化5】
【0065】
式(1)中のx、式(2)中のy及び式(3)中のzは、次の関係式を満たす。x:y:z(モル分率)=0:0.95:0.05~0.2:0.6:0.2(ただし、x+y+z≦1、0≦x≦0.2、0.6≦y≦0.95、0.05≦z≦0.2)である。式(2)中、R1は水素原子又はメチル基、R2は、水素原子、アルキル基、グリシジル基及びエポキシ化されたアルキル基のうち、少なくともグリシジル基及びエポキシ化されたアルキル基のうちの1つを含む。式(3)中、R3は水素原子又はメチル基、R4はフェニル基(-Ph)、-COOCHPh又は-COO(CHPhである。
【0066】
アクリル樹脂の主鎖は、式(1)、式(2)及び式(3)のうちの、少なくとも式(2)及び式(3)で表される構造を有している。
【0067】
アクリル樹脂の主鎖が式(1)、式(2)及び式(3)で表される構造を有する場合、式(1)、式(2)及び式(3)で表される構造の配列順序は特に限定されない。この場合、アクリル樹脂の主鎖において、式(1)で表される構造同士が連続していても連続していなくてもよく、また式(2)で表される構造同士が連続していても連続していなくてもよく、また式(3)で表される構造同士が連続していても連続していなくてもよい。
【0068】
アクリル樹脂の主鎖が式(2)及び式(3)で表される構造を有する場合も、式(2)及び式(3)で表される構造の配列順序は特に限定されない。この場合、アクリル樹脂の主鎖において、式(2)で表される構造同士が連続していても連続していなくてもよく、また式(3)で表される構造同士が連続していても連続していなくてもよい。
【0069】
ここで、式(2)中のR2が、水素原子、アルキル基、グリシジル基及びエポキシ化されたアルキル基のうち、少なくともグリシジル基及びエポキシ化されたアルキル基のうちの1つを含むことの意味について補足説明する。前提として、1つの式(2)で表される構造におけるR2は1つである。アクリル樹脂が、式(2)で表される構造を1つのみ有する場合と、2つ以上有する場合とに分けて説明する。
【0070】
アクリル樹脂が1つの式(2)で表される構造を有する場合、R2は、グリシジル基又はエポキシ化されたアルキル基である。
【0071】
アクリル樹脂が2つ以上の式(2)で表される構造を有する場合、少なくとも1つの式(2)で表される構造におけるR2は、グリシジル基又はエポキシ化されたアルキル基であり、残りの式(2)で表される構造におけるR2は、水素原子又はアルキル基である。少なくとも1つの式(2)で表される構造におけるR2が、グリシジル基又はエポキシ化されたアルキル基であるから、全部の式(2)で表される構造におけるR2が、グリシジル基又はエポキシ化されたアルキル基でもよい。
【0072】
式(3)で表される構造は、フェニル基(-Ph)、-COOCHPh、-COO(CHPhを有している。-Ph、-COOCHPh、-COO(CHPhは熱的に安定であるため、プリプレグの硬化物の強度が高められる。したがって、プリプレグを材料として製造された金属張積層板2及びプリント配線板3(以下まとめて「基板」という場合がある。)基板の吸湿耐熱性を向上させることができる。
【0073】
アクリル樹脂は、隣り合う炭素原子間に二重結合や三重結合のような不飽和結合を有しないことが好ましい。すなわち、アクリル樹脂の隣り合う炭素原子同士は飽和結合(単結合)により結合されていることが好ましい。これにより、経時的な酸化を低減することができるので、弾性を失って脆くなることを抑制することができる。
【0074】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は20万以上85万以下の範囲内であることが好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量が20万以上であることで、硬化物の耐薬品性を向上させることができる。アクリル樹脂の重量平均分子量が85万以下であることで、熱硬化性樹脂組成物の成型性を向上させることができる。
【0075】
アクリル樹脂が熱硬化性樹脂組成物に含有されていると、プリプレグの硬化物が吸湿しにくくなることによって、基板の耐湿性を高めることができ、絶縁信頼性を向上させることができる。またプリプレグの硬化物が吸湿したとしても、この硬化物を構成する樹脂の破断強度が高められているので、基板の吸湿耐熱性を向上させることができる。
【0076】
アクリル樹脂は、1分子中に少なくとも1つ以上のエポキシ基を有するプレポリマーである。エポキシ基は、アクリル樹脂が有する官能基の1種である。アクリル樹脂のエポキシ当量は、好ましくは1250g/eq以上100000g/eq以下の範囲内であり、より好ましくは2500g/eq以上7000g/eq以下の範囲内である。この場合のエポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含むアクリル樹脂の質量を意味する。エポキシ当量が小さければエポキシ基の濃度が高く、エポキシ当量が大きければエポキシ基の濃度が低い。
【0077】
アクリル樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下の範囲内であることが好ましい。アクリル樹脂の含有量が10質量部以上であることで、金属に対する硬化物の密着性を向上させることができる。アクリル樹脂の含有量が30質量部以下であることで、硬化物を燃えにくくすることができる。
【0078】
コアシェルゴム及びアクリル樹脂を併用してもよいし、これらのうちコアシェルゴムのみを使用してもよい。このような場合には、コアシェルゴム及びアクリル樹脂の合計質量に対して、コアシェルゴムの割合は、50質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような最適量であれば、コアシェルゴム及びアクリル樹脂の各々の利点が得られる。すなわち、硬化物の耐衝撃性、耐熱衝撃性、レーザ加工性、ドリル加工性、及び、金属に対する密着性の向上を実現し得る。
【0079】
次に添加型難燃剤について説明する。添加型難燃剤の具体例として、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物及び酸化アンチモンが挙げられる。熱硬化性樹脂組成物に添加型難燃剤が含有されていることで、硬化物の耐燃性を向上させることができる。
【0080】
添加型難燃剤は、添加型リン系難燃剤であることが好ましい。添加型リン系難燃剤をハロゲンの代わりに使用することで、ハロゲンフリーの熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。添加型リン系難燃剤の具体例として、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、亜リン酸エステル化合物、ホスフィン化合物、ホスフィン酸塩化合物、ポリリン酸塩化合物、ホスホニウム塩化合物及びホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
【0081】
次に硬化促進剤について説明する。硬化促進剤は、熱硬化性樹脂及び硬化剤に応じて適宜に選定される。硬化促進剤の具体例として、2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。
【0082】
次に熱硬化性樹脂組成物に含有されていないのが好ましい任意成分について説明する。
【0083】
熱硬化性樹脂組成物は、顔料及び染料を実質的に含有しないことが好ましい。顔料及び染料の中には紫外線を吸収し得るものもあるが、顔料及び染料の少なくともいずれかが熱硬化性樹脂組成物に実質的に含有されていると、以下のような問題が生じ得る。
【0084】
一般に顔料及び染料は、熱硬化性樹脂と反応し得る架橋点を持たないため、架橋構造を形成することができない。そのため、顔料及び染料が硬化物51中に過剰に含有されていると、硬化物51の耐熱性が低下するおそれがある。
【0085】
また顔料の溶剤への分散性が悪いと、硬化物51を均一に着色することができなくなるおそれがある。すなわち、硬化物51の表面に顔料が局所的に凝集し、この局所的な凝集によって濃淡が発生することにより、不均一な着色となる。
【0086】
また染料の溶剤への溶解性が悪いと、硬化物51を均一に着色することができなくなるおそれがある。すなわち、硬化物51の表面に染料が局所的に析出し、この局所的な析出によって濃淡が発生することにより、不均一な着色となる。
【0087】
また、プリント配線板3の導体配線81の高密度化が進展すると、隣り合う導体配線81間の絶縁不良を生じるおそれもある。この絶縁不良の原因として、例えば、隣り合う導体配線81間において、カーボンブラックのように導電性を有する顔料が凝集した状態で存在することで、上記の導体配線81間を短絡してしまうことが挙げられる。
【0088】
これに対して、本実施形態では、熱硬化性樹脂組成物が硬化する際に、紫外線を吸収する第1硬化剤は、架橋構造を形成し、硬化物中では孤立して存在しないので、上記のような問題は生じにくい。なお、紫外線遮蔽効果が損なわなければ、熱硬化性樹脂組成物は、顔料及び染料の少なくともいずれかを含有してもよい。
【0089】
また熱硬化性樹脂組成物は、ハロゲンを実質的に含有しないことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物がハロゲンフリーであることで、硬化物を含むプリント配線板などが焼却される場合に、ダイオキシン類の発生を抑制することができる。硬化物に耐燃性を付与する場合には、上述のようにハロゲンの代わりに、リン含有難燃剤を熱硬化性樹脂組成物に含有させればよい。なお、紫外線遮蔽効果が損なわれず、かつ、ダイオキシン類の発生が抑制できるのであれば、熱硬化性樹脂組成物は、微量のハロゲンを含有してもよい。
【0090】
(2.2)プリプレグ
本実施形態に係るプリプレグ1を図1に示す。プリプレグ1は、全体としてシート状又はフィルム状である。プリプレグ1は、金属張積層板2の材料、プリント配線板3の材料、及びプリント配線板3の多層化(ビルドアップ法)などに利用される。
【0091】
プリプレグ1は、基材4と、基材4に含浸された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物50と、を備えている。
【0092】
基材4の具体例として、織布及び不織布が挙げられる。織布の具体例として、ガラスクロスが挙げられる。不織布の具体例として、ガラス不織布が挙げられる。ガラスクロス及びガラス不織布は、ガラス繊維で形成されているが、ガラス繊維以外の強化繊維で形成されていてもよい。強化繊維の具体例として、芳香族ポリアミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)繊維、及び、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂繊維が挙げられる。
【0093】
1枚のプリプレグ1は、少なくとも1枚の基材4を備えている。
【0094】
半硬化物50は、熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態のものである。ここで、半硬化状態とは、硬化反応の中間段階(Bステージ)の状態を意味する。中間段階は、ワニス状態の段階(Aステージ)と、硬化状態の段階(Cステージ)との間の段階である。プリプレグ1は加熱されると一度溶融した後、完全に硬化して硬化状態となる。プリプレグ1の硬化物は、基板の絶縁層を形成し得る。
【0095】
プリプレグ1は、好ましくは厚さが100μm以下、より好ましくは厚さが60μm以下、さらに好ましくは厚さが40μm以下である。これにより絶縁層の厚さを薄くすることができ、基板の薄型化を実現することができる。プリプレグ1の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0096】
(2.3)金属張積層板
本実施形態に係る金属張積層板2を図2に示す。金属張積層板2は、絶縁層52と、金属層80と、を備えている。金属張積層板2は、プリント配線板3の材料などに利用される。
【0097】
絶縁層52は、プリプレグ1の硬化物51で形成されている。図2では、絶縁層52は、1枚の基材4を有しているが、2枚以上の基材4を有していてもよい。絶縁層52の厚さは、特に限定されない。絶縁層52の厚さが厚ければUV遮蔽性に有効であり、絶縁層52の厚さが薄ければ基板の薄型化に有効である。これらを両立させるために、絶縁層52の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。UV遮蔽性は、第1硬化剤の寄与するところが大きいが、絶縁層52の厚さをある程度確保することも有効であるので、絶縁層52の厚さは10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。
【0098】
金属層80は、絶縁層52の片面又は両面に形成されている。金属層80の具体例として、銅層が挙げられる。図2では、絶縁層52の両面に金属層80が形成されているが、絶縁層52の片面のみに金属層80が形成されていてもよい。絶縁層52の両面に金属層80が形成されている金属張積層板2は、両面金属張積層板である。絶縁層52の片面のみに金属層80が形成されている金属張積層板2は、片面金属張積層板である。
【0099】
(2.4)プリント配線板
本実施形態に係るプリント配線板3を図3に示す。プリント配線板3は、絶縁層52と、導体配線81と、を備えている。本明細書において、「プリント配線板」は、電子部品がはんだ付けされておらず、配線だけの状態のものを意味する。
【0100】
絶縁層52は、プリプレグ1の硬化物51で形成されている。絶縁層52は、上述の金属張積層板2の絶縁層52と同じである。
【0101】
導体配線81は、絶縁層52の片面又は両面に形成されている。図3では、絶縁層52の両面に導体配線81が形成されているが、絶縁層52の片面に導体配線81が形成されていてもよい。
【0102】
次にプリント配線板3の製造方法について説明する。具体的には、図2に示す金属張積層板2を、図3に示すプリント配線板3に加工する方法である。金属張積層板2の金属層80の不要部分を除去することによって、プリント配線板3を製造することができる。金属層80の不要部分を除去して残った必要部分が導体配線81となる。
【0103】
まず図4Aに示すように、金属張積層板2の一方の金属層80に第1エッチングレジスト61を塗布又は貼着し、他方の金属層80に第2エッチングレジスト62を塗布又は貼着する。以下では、第1エッチングレジスト61及び第2エッチングレジスト62がネガティブレジストである場合について説明するが、ポジティブレジストでもよい。
【0104】
次に図4Bに示すように、第1エッチングレジスト61に第1フォトマスク601を重ね、第2エッチングレジスト62に第2フォトマスク602を重ねる。
【0105】
ここで、第1フォトマスク601は、透光部601a及び遮光部601bを有する。第2フォトマスク602は、透光部602a及び遮光部602bを有する。
【0106】
そして、両面露光を行う。すなわち、第1フォトマスク601及び第2フォトマスク602の各々に紫外線UVを照射する。
【0107】
第1フォトマスク601において、紫外線UVは、透光部601aを透過し、遮光部601bで遮られる。第1エッチングレジスト61のうち、透光部601aを透過して紫外線UVが照射された部分は、光重合で硬化して第1レジスト層61aとなる。
【0108】
この場合において、紫外線UVが第1エッチングレジスト61を透過したとしても、その先には金属層80が存在するので、この金属層80で紫外線UVは反射される。そのため、いわゆる裏焼けの問題は生じない。
【0109】
一方、第2フォトマスク602において、紫外線UVは、透光部602aを透過し、遮光部602bで遮られる。第2エッチングレジスト62のうち、透光部602aを透過して紫外線UVが照射された部分は、光重合で硬化して第2レジスト層62aとなる。
【0110】
この場合も同様に、紫外線UVが第2エッチングレジスト62を透過したとしても、その先には金属層80が存在するので、この金属層80で紫外線UVは反射される。そのため、いわゆる裏焼けの問題は生じない。
【0111】
次に図4Cに示すように、第1エッチングレジスト61及び第2エッチングレジスト62のうち、紫外線UVが照射されなかった部分を現像液で除去する。このとき、第1レジスト層61a及び第2レジスト層62aは、現像液に溶解しないで残存する。第1レジスト層61a及び第2レジスト層62a以外の部分は、現像液に溶解して除去される。
【0112】
次に図4Dに示すように、金属層80のうち、第1レジスト層61a及び第2レジスト層62aで保護されていない部分をエッチング液で除去する。
【0113】
その後、第1レジスト層61a及び第2レジスト層62aを剥離液で除去する。そうすると、図3に示すプリント配線板3が得られる。
【0114】
(2.5)被覆プリント配線板
被覆プリント配線板30の製造方法について説明する。具体的には、図3に示すプリント配線板3を、図5Cに示す被覆プリント配線板30に加工する方法である。
【0115】
まず図5Aに示すように、プリント配線板3の一方の面に第1ソルダーレジスト71を塗布又は貼着し、他方の面に第2ソルダーレジスト72を塗布又は貼着する。以下では、第1ソルダーレジスト71及び第2ソルダーレジスト72がネガティブレジストである場合について説明するが、ポジティブレジストでもよい。
【0116】
次に図5Bに示すように、第1ソルダーレジスト71に第1フォトマスク701を重ね、第2ソルダーレジスト72に第2フォトマスク702を重ねる。
【0117】
ここで、第1フォトマスク701は、透光部701a及び遮光部701bを有する。第2フォトマスク702は、透光部702a及び遮光部702bを有する。
【0118】
そして、両面露光を行う。すなわち、第1フォトマスク701及び第2フォトマスク702の各々に紫外線UVを照射する。
【0119】
第1フォトマスク701において、紫外線UVは、透光部701aを透過し、遮光部701bで遮られる。第1ソルダーレジスト71のうち、透光部701aを透過して紫外線UVが照射された部分は、光重合で硬化して第1レジスト層71aとなる。
【0120】
ここで、第1ソルダーレジスト71と絶縁層52との間に導体配線81が存在する箇所では、紫外線UVが第1ソルダーレジスト71を透過したとしても、その先には導体配線81が存在するので、この導体配線81で紫外線UVは反射される。
【0121】
これに対して、第1ソルダーレジスト71と絶縁層52との間に導体配線81が存在しない箇所では、紫外線UVが第1ソルダーレジスト71を透過し、絶縁層52に照射される。この場合において、絶縁層52は、プリプレグ1の硬化物51で形成されているので、紫外線遮蔽性が高い。そのため、第1フォトマスク701の透光部701aを透過し、さらに第1ソルダーレジスト71を透過してきた紫外線UVがあったとしても、この紫外線UVは絶縁層52で遮られることとなる。したがって、絶縁層52を透過して反対側の第2ソルダーレジスト72まで感光させることを抑制することができる。つまり、いわゆる裏焼けを抑制することができる。
【0122】
一方、第2フォトマスク702において、紫外線UVは、透光部702aを透過し、遮光部702bで遮られる。第2ソルダーレジスト72のうち、透光部702aを透過して紫外線UVが照射された部分は、光重合で硬化して第2レジスト層72aとなる。
【0123】
ここで、第2ソルダーレジスト72と絶縁層52との間に導体配線81が存在する箇所では、紫外線UVが第2ソルダーレジスト72を透過したとしても、その先には導体配線81が存在するので、この導体配線81で紫外線UVは反射される。
【0124】
これに対して、第2ソルダーレジスト72と絶縁層52との間に導体配線81が存在しない箇所では、紫外線UVが第2ソルダーレジスト72を透過し、絶縁層52に照射される。この場合も同様に、絶縁層52は、プリプレグ1の硬化物51で形成されているので、紫外線遮蔽性が高い。そのため、第2フォトマスク702の透光部702aを透過し、さらに第2ソルダーレジスト72を透過してきた紫外線UVがあったとしても、この紫外線UVは絶縁層52で遮られることとなる。したがって、絶縁層52を透過して反対側の第1ソルダーレジスト71まで感光させることを抑制することができる。つまり、いわゆる裏焼けを抑制することができる。
【0125】
次に図5Cに示すように、第1ソルダーレジスト71及び第2ソルダーレジスト72のうち、紫外線UVが照射されなかった部分を現像液で除去する。このとき、第1レジスト層71a及び第2レジスト層72aは、現像液に溶解しないで残存する。第1レジスト層71a及び第2レジスト層72a以外の部分は、現像液に溶解して除去される。
【0126】
上記のようにして被覆プリント配線板30が得られる。導体配線81のうち、第1レジスト層71a及び第2レジスト層72aで保護されていない部分は、パッド81aとなり得る。パッド81aには電子部品(不図示)をはんだ付けすることができる。
【0127】
なお、プリント回路板は、被覆プリント配線板30のパッド81aに電子部品がはんだ付けされて、電子回路として動作するようになったものである。さらに半導体パッケージは、プリント回路板の電子部品が封止されたものである。
【0128】
(2.6)樹脂付きフィルム
本実施形態に係る樹脂付きフィルム10を図6Aに示す。樹脂付きフィルム10は、全体としてフィルム状又はシート状である。樹脂付きフィルム10は、樹脂層11と、支持フィルム12と、を備えている。樹脂付きフィルム10は、プリント配線板3の多層化(ビルドアップ法)などに利用される。
【0129】
樹脂層11は、熱硬化性樹脂組成物の半硬化物50で形成されている。半硬化物50は、加熱されることにより、紫外線遮蔽性の高い硬化物51となり得る。このようにして樹脂層11は、絶縁層52を形成し得る。
【0130】
樹脂層11は、好ましくは厚さが100μm以下、より好ましくは厚さが60μm以下、さらに好ましくは厚さが40μm以下である。これにより絶縁層52の厚さを薄くすることができ、基板の薄型化を実現することができる。樹脂層11の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0131】
支持フィルム12は、樹脂層11を支持している。このように支持することで、半硬化状態の樹脂層11を扱いやすくなる。支持フィルム12は、例えば電気絶縁性フィルムである。支持フィルム12の具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びポリアリレートフィルム等が挙げられる。支持フィルム12は、これらのフィルムに限定されない。支持フィルム12の樹脂層11を支持する面には離型剤層(不図示)が設けられていてもよい。離型剤層によって、支持フィルム12は、必要に応じて樹脂層11から剥離可能である。好ましくは、絶縁層52を形成した後に、絶縁層52から支持フィルム12が剥離される。
【0132】
図6Aでは、樹脂層11の一方の面を支持フィルム12が被覆しているが、図6Bに示すように、樹脂層11の他方の面を保護フィルム13で被覆してもよい。このように樹脂層11の両面を被覆することで、半硬化状態の樹脂層11を更に扱いやすくなる。また異物が樹脂層11に付着することを抑制することができる。保護フィルム13は、例えば電気絶縁性フィルムである。保護フィルム13の具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、及びポリメチルペンテンフィルム等が挙げられる。保護フィルム13は、これらのフィルムに限定されない。保護フィルム13の樹脂層11に重ねられている面には離型剤層(不図示)が設けられていてもよい。離型剤層によって、保護フィルム13は、必要に応じて樹脂層11から剥離可能である。
【0133】
(2.7)樹脂付き金属箔
本実施形態に係る樹脂付き金属箔100を図7に示す。樹脂付き金属箔100は、全体としてフィルム状又はシート状である。樹脂付き金属箔100は、樹脂層101と、金属箔102と、を備えている。樹脂付き金属箔100は、プリント配線板3の多層化(ビルドアップ法)などに利用される。
【0134】
樹脂層101は、熱硬化性樹脂組成物の半硬化物50で形成されている。半硬化物50は、加熱されることにより、紫外線遮蔽性の高い硬化物51となり得る。このようにして樹脂層101は、絶縁層52を形成し得る。
【0135】
樹脂層101は、好ましくは厚さが100μm以下、より好ましくは厚さが60μm以下、さらに好ましくは厚さが40μm以下である。これにより絶縁層52の厚さを薄くすることができ、基板の薄型化を実現することができる。樹脂層101の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0136】
金属箔102には、樹脂層101が接着されている。金属箔102の具体例として、銅箔が挙げられる。金属箔102は、不要部分がエッチングにより除去されることで、導体配線81を形成し得る。
【0137】
(3)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する熱硬化性樹脂組成物である。熱硬化性樹脂は、硬化剤を含む。硬化剤の3質量%メチルエチルケトン溶液のガードナー色数は15以上である。硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、10質量%以上である。
【0138】
第1の態様によれば、紫外線遮蔽性の高い硬化物(51)を得ることができる。
【0139】
第2の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第1の態様において、硬化剤が、ナフタレン型フェノール樹脂を含む。
【0140】
第2の態様によれば、ノボラック型フェノール樹脂に比べて紫外線を吸収しやすくなる。
【0141】
第3の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第1又は2の態様において、無機充填材の含有量が、熱硬化性樹脂100質量部に対して、200質量部以下である。
【0142】
第3の態様によれば、熱硬化性樹脂組成物の成型性を向上させることができる。さらに硬化物(51)内におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0143】
第4の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第1~3のいずれかの態様において、熱硬化性樹脂が、反応型難燃剤を更に含む。
【0144】
第4の態様によれば、硬化物(51)の耐燃性を向上させることができる。
【0145】
第5の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第1~4のいずれかの態様において、コアシェルゴム、アクリル樹脂、又は、コアシェルゴム及びアクリル樹脂の両方を更に含有する。
【0146】
第5の態様によれば、硬化物の耐衝撃性、耐熱衝撃性、レーザ加工性及びドリル加工性、及び、金属に対する密着性のうち、少なくともいずれかの特性を向上させることができる。
【0147】
第6の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第1~5のいずれかの態様において、添加型難燃剤を更に含有する。
【0148】
第6の態様によれば、硬化物(51)の耐燃性を更に向上させることができる。
【0149】
第7の態様に係るプリプレグ(1)は、基材(4)と、基材(4)に含浸された第1~6のいずれかの熱硬化性樹脂組成物の半硬化物(50)と、を備えている。
【0150】
第7の態様によれば、紫外線遮蔽性の高い硬化物(51)を得ることができる。
【0151】
第8の態様に係るプリプレグ(1)は、第7の態様において、厚さが100μm以下である。
【0152】
第8の態様によれば、厚さが100μm以下の硬化物(51)であって、紫外線遮蔽性の高い硬化物(51)を得ることができる。
【0153】
第9の態様に係る金属張積層板(2)は、第7又は8の態様のプリプレグ(1)の硬化物(51)で形成された絶縁層(52)と、絶縁層(52)の片面又は両面に形成された金属層(80)と、を備えている。
【0154】
第9の態様によれば、絶縁層(52)の紫外線遮蔽性を高めることができる。
【0155】
第10の態様に係るプリント配線板(3)は、第7又は8の態様のプリプレグ(1)の硬化物(51)で形成された絶縁層(52)と、絶縁層(52)の片面又は両面に形成された導体配線(81)と、を備えている。
【0156】
第10の態様によれば、絶縁層(52)の紫外線遮蔽性を高めることができる。
【0157】
第11の態様に係る樹脂付きフィルム(10)は、第1~6のいずれかの熱硬化性樹脂組成物の半硬化物(50)で形成された樹脂層(11)と、樹脂層(11)を支持する支持フィルム(12)と、を備えている。
【0158】
第11の態様によれば、紫外線遮蔽性の高い硬化物(51)を得ることができる。
【0159】
第12の態様に係る樹脂付き金属箔(100)は、第1~6のいずれかの熱硬化性樹脂組成物の半硬化物(50)で形成された樹脂層(101)と、樹脂層(101)が接着された金属箔(102)と、を備えている。
【0160】
第12の態様によれば、紫外線遮蔽性の高い硬化物(51)を得ることができる。
【実施例
【0161】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。
【0162】
[実施例1~13及び比較例1~5]
〔熱硬化性樹脂組成物〕
熱硬化性樹脂組成物の原料として、以下のものを用意した。
【0163】
(熱硬化性樹脂)
・トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「EPPN-502H」、エポキシ当量:158~178g/eq)
・ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「HP-9900」、エポキシ当量:272g/eq)
・ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「HP-4710」、エポキシ当量:170g/eq)
・ビスマレイミド樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「MIR-3000」、日本化薬株式会社製)
(硬化剤:第1硬化剤)
式(E)で表されるナフタレン型フェノール樹脂を非密閉型容器に入れ、空気存在下でこの容器内を攪拌した。酸化処理の温度を50℃以上100℃以下の範囲内で調整し、酸化処理の時間を6時間以上72時間以下の範囲内で調整することで、以下の2種の酸化されたナフタレン型フェノール樹脂を得た。
【0164】
・酸化されたナフタレン型フェノール樹脂(水酸基当量:153g/eq、ガードナー色数18)
・酸化されたナフタレン型フェノール樹脂(水酸基当量:153g/eq、ガードナー色数15)
(硬化剤:第2硬化剤)
・ノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名「TD-2090」、水酸基当量:105g/eq、ガードナー色数1以下)
・ナフタレン型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名「HPC-9500」、水酸基当量:153g/eq、ガードナー色数7)
なお、硬化剤のガードナー色数は、3質量%メチルエチルケトン溶液を試料としてJIS K 0071-2に準拠して求めた。
【0165】
(反応型難燃剤)
・反応型リン系難燃剤(リン変性フェノール樹脂、ダウ・ケミカル製、商品名「XZ-92741」、水酸基当量:550g/eq)
・反応型リン系難燃剤(リン変性フェノール樹脂、DIC株式会社製、商品名「HPC-9080」、水酸基当量:373g/eq)
(無機充填材)
・溶融シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名「SC-2500SEJ」、平均粒子径:0.5μm)
・水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名「C-301N」、平均粒子径:1.5μm)
・水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、商品名「CL-303」、平均粒子径:4μm)
(コアシェルゴム)
・コアシェルゴム(三菱ケミカル株式会社製、商品名「SRK200A」、コア:シリコーン/アクリル共重合体、シェル:アクリロニトリル/スチレン、平均粒子径:0.15μm)
・コアシェルゴム(アイカ工業株式会社製、商品名「AC3816N」、コア:架橋アクリル重合体、シェル:ポリメタクリル酸メチル、平均粒子径:0.5μm)
・コアシェルゴム(アイカ工業株式会社製、商品名「AC3364」、コア:架橋アクリル重合体、シェル:ポリメタクリル酸メチル、平均粒子径:0.1μm)
(アクリル樹脂)
・アクリル樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「SG-P3改197」、重量平均分子量70万)
(染料)
・油溶性染料(中央合成化学株式会社製、商品名「Oil Red 168」)
(硬化促進剤)
・2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2E4MZ」)
(熱硬化性樹脂組成物)
熱硬化性樹脂、硬化剤、無機充填材、リン含有難燃剤、コアシェルゴム、アクリル樹脂及び硬化促進剤を表1に示す割合で配合して、固形分濃度が65質量%となるように溶媒で希釈し、これを撹拌、混合して均一化することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。上記の溶媒として、実施例8ではトルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(体積比1:10)を使用し、その他の実施例及び比較例ではメチルエチルケトンのみを使用した。
【0166】
(プリプレグ)
プリプレグの硬化物の厚さが25μmとなるように、熱硬化性樹脂組成物をガラスクロス(日東紡績株式会社製、♯1017タイプ、Eガラス)に含浸させた。ガラスクロスに含浸された熱硬化性樹脂組成物を、半硬化状態となるまで非接触タイプの加熱ユニットによって加熱乾燥した。加熱温度は130~140℃とした。これにより、熱硬化性樹脂組成物中の溶媒を除去し、ガラスクロスと、このガラスクロスに含浸された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを備えるプリプレグを製造した。プリプレグのレジンコンテント(樹脂量)は、プリプレグ全体(100質量%)に対して、68質量%以上74質量%以下の範囲内であった。
【0167】
(金属張積層板)
1枚のプリプレグの両面に、キャリア箔付き極薄銅箔(キャリア箔の厚さ:18μm、極薄銅箔の厚さ:2μm)の極薄銅箔を重ね、加熱加圧成形することによって、絶縁層の厚さが25μmの第1の両面金属張積層板を製造した。加熱加圧成形の条件は、210℃、4MPa、120分間である。
【0168】
1枚のプリプレグの両面に、銅箔(厚さ:12μm)を重ね、加熱加圧成形することによって、絶縁層の厚さが25μmの第2の両面金属張積層板を製造した。加熱加圧成形の条件は、210℃、4MPa、120分間である。
【0169】
[特性評価]
第1の両面金属張積層板の両面の極薄銅箔をエッチングにより除去し、絶縁層のみを得た。この絶縁層を試料として用いて、紫外線遮蔽性、成型性、耐熱性1及び耐燃性の評価を実施した。
【0170】
第2の両面金属張積層板を、両面の銅箔を除去しないで試料として用いて、耐燃性2の評価を実施した。
【0171】
<紫外線遮蔽率>
露光機(株式会社ハイテック製、型番「HTE-3000M」)及び紫外線照度計(株式会社オーク製作所製、型番「UV-M02」、受光器「UV-42」(ピーク波長400nm))の間に試料を介在させ、露光機から試料を透過して受光器に照射される紫外線の透過率を紫外線照度計により測定した。そして、下記の式に従い、紫外線遮蔽率(%)を算出した。
【0172】
紫外線遮蔽率(%)=100-透過率
<成型性>
試料の表面を目視により観察してカスレの有無を確認し、さらに試料の断面を顕微鏡により観察してボイドの有無を確認した。試料の大きさは、410mm×510mm×厚さ25μmである。成型性は、以下の基準で判定した。
【0173】
A:カスレ及びボイドが存在しないもの
B:少なくともカスレ及びボイドのいずれかが、試料の外周縁から10mm以内の領域(外周領域)に存在するもの
C:少なくともカスレ及びボイドのいずれかが、外周領域で囲まれた領域(中央領域)、又は、中央領域及び外周領域の両方に存在するもの。
【0174】
<耐熱性1>
動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型式:DMS6100)を用いて、試料のTgを測定した。Tgは、動的粘弾性試験の昇温過程で得られた損失正接(tanδ)と温度との関係を示すチャートにおいて、tanδが最大となる温度とした。試料の大きさは、5mm×50mm×厚さ25μmである。測定条件は、変形モード:引張り、周波数:10Hz、昇温速度:5℃/minとした。
【0175】
<耐熱性2>
小型高温チャンバー(エスペック株式会社製、型式:STH-120)を用いて、第2の両面金属張積層板の耐熱性をJIS C6481に基づいて評価した。具体的には、第2の両面金属張積層板を、270℃に設定された上記の小型高温チャンバーに1時間静置した後、取り出して、銅箔の膨れ(デラミネーション)の有無を確認した。試料の大きさは、50mm×50mm×厚さ49μm(絶縁層の厚さ25μm、絶縁層の両面の銅箔の厚さ12μm)である。
【0176】
<耐燃性>
UL規格(Underwriters Laboratories Inc.)のUL94(プラスチック材料の燃焼性試験)による評価試験方法に従い、試料の耐燃性を確認した。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【符号の説明】
【0179】
1 プリプレグ
2 金属張積層板
3 プリント配線板
4 基材
50 半硬化物
51 硬化物
52 絶縁層
80 金属層
81 導体配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7