(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】半導体封止材料及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20230602BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230602BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08L63/00 C
(21)【出願番号】P 2021501856
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004707
(87)【国際公開番号】W WO2020170847
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2019029919
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒山 千佳
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045846(WO,A1)
【文献】特開2018-188494(JP,A)
【文献】特開2013-8896(JP,A)
【文献】特開2017-195319(JP,A)
【文献】特開2018-133536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、半導体封止材料の硬化物で形成され前記半導体チップを封止する封止部と、を備え、前記半導体チップの体積をVcとし、前記半導体チップ及び前記封止部の合計体積をVaとする半導体装置の製造に用いられる前記半導体封止材料であって、
前記半導体封止材料の下記式(1)で求められるストレスインデックス(SI)が8500以上であり、
前記Vcと前記Vaとが下記式(2)を満たす、
半導体封止材料。
【数1】
式(1)中、E’(T)は貯蔵弾性率、CTE(T)は熱膨張率、Mold temp.は成形温度を示す。
【数2】
【請求項2】
前記半導体封止材料の硬化物の260℃での曲げ弾性率が0.1GPa以上0.9GPa以下の範囲内である、
請求項1に記載の半導体封止材料。
【請求項3】
前記半導体封止材料の硬化物の成形収縮率が0.35%以上1.3%以下の範囲内である、
請求項1又は2に記載の半導体封止材料。
【請求項4】
前記半導体封止材料は、無機充填材を含有し、
前記無機充填材の含有量は、前記半導体封止材料の全質量に対して、55質量%以上85質量%以下の範囲内である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体封止材料。
【請求項5】
前記無機充填材は、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含み、
前記水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムの含有量は、前記半導体封止材料の全質量に対して、10質量%以上である、
請求項4に記載の半導体封止材料。
【請求項6】
半導体チップと、前記半導体チップを封止する封止部と、を備え、
前記封止部が請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体封止材料の硬化物で形成されている、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に半導体封止材料及び半導体装置に関し、より詳細には半導体装置の製造に用いられる半導体封止材料及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージのはんだボールをリフロー処理により溶融して、半導体パッケージをはんだ付けによりプリント配線板に実装することが行われている。はんだボールには鉛フリーはんだが使用されているので、リフロー処理の温度は260℃以上の高温となる。そのため、常温から260℃程度の高温までの広範囲にわたって半導体パッケージの反りを低減することが必要とされる。
【0003】
半導体パッケージの反り挙動は、半導体パッケージの構造に合わせた物性を有する半導体封止材料を用いることによって、ある程度コントロールすることが可能である。例えば、半導体パッケージのサイズ及びチップサイズなどの構造に合わせて、半導体封止材料の成形収縮率を調整することで、半導体パッケージの反り挙動をある程度コントロールすることが可能である。
【0004】
ところで、近年、多様なパッケージング手法により、半導体パッケージの小型化及び薄型化が進められている。半導体パッケージの代表的な形態として、ウェハレベルパッケージ(WLP)、及び薄型のフリップチップ-チップサイズパッケージ(FC-CSP)の2種類が挙げられる。
【0005】
ここで、特許文献1には、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FO-WLP)用の反り矯正材が開示されている。この反り矯正材は、活性エネルギー線及び熱によって硬化し得る成分を含む硬化性樹脂組成物からなる。そして、この反り矯正材を活性エネルギー線及び熱により硬化させて平膜状の硬化物とした場合に、この硬化物の、25℃における線膨張係数α(ppm/℃)、25℃における弾性率β(GPa)、及び厚さγ(μm)が、次の関係式:2000≦α×β×γ≦10000を満足している。
【0006】
しかしながら、特許文献1の反り矯正材は、用途がFO-WLPに限られている。そのため、特許文献1の反り矯正材では、上述のFC-CSPの反りを低減することが難しい。特にFC-CSPでは、従来よりも半導体パッケージにおける半導体チップの体積占有率が飛躍的に高くなっている。そのため、半導体パッケージの反り挙動と、半導体封止材料の成形収縮率との間では相関が取れないケースが増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、半導体装置の反りを低減することができる半導体封止材料及び半導体装置を提供することにある。
【0009】
本開示の一態様に係る半導体封止材料は、半導体装置の製造に用いられる。前記半導体装置は、半導体チップと、封止部と、を備える。前記封止部は、前記半導体封止材料の硬化物で形成される。前記封止部は、前記半導体チップを封止する。前記半導体封止材料の下記式(1)で求められるストレスインデックス(SI)が8500以上である。前記半導体チップの体積をVcとする。前記半導体チップ及び前記封止部の合計体積をVaとする。前記Vcと前記Vaとが下記式(2)を満たす。
【0010】
【0011】
式(1)中、E’(T)は貯蔵弾性率、CTE(T)は熱膨張率、Mold temp.は成形温度を示す。
【0012】
【0013】
本開示の一態様に係る半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップを封止する封止部と、を備える。前記封止部が前記半導体封止材料の硬化物で形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体装置(第1半導体装置:FC-CSP)の概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る半導体装置(第2半導体装置:WLP)の概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る集合基板の概略平面図である。
【
図4】
図4は、同上の集合基板を個片化して得られた半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)概要
本実施形態に係る半導体封止材料は、半導体装置1の製造に用いられる。半導体装置1は、半導体チップ2と、封止部3と、を備える(
図1等参照)。封止部3は、半導体封止材料の硬化物で形成されている。封止部3は、半導体チップ2を封止している。
【0016】
半導体封止材料の下記式(1)で求められるストレスインデックス(SI)が8500以上である。
【0017】
【0018】
式(1)中、E’(T)は貯蔵弾性率、CTE(T)は熱膨張率、Mold temp.は成形温度を示す。
【0019】
また半導体チップ2の体積をVcとし、半導体チップ2及び封止部3の合計体積をVaとすると、VcとVaとが下記式(2)を満たす。
【0020】
【0021】
本実施形態に係る半導体封止材料によれば、ストレスインデックス(SI)が8500以上であることで、封止部3が大きな収縮力を得ることができるので、半導体装置の反りを低減することができる。
【0022】
(2)詳細
まず半導体装置1(半導体パッケージ)について説明し、次に半導体封止材料について説明する。
【0023】
(2.1)半導体装置
(2.1.1)実施形態1
図1に本実施形態に係る半導体装置1(第1半導体装置11)を示す。第1半導体装置11は、半導体チップ2と、封止部3と、基板5と、を備える。第1半導体装置11は、フリップチップ-チップサイズパッケージ(FC-CSP)である。
【0024】
半導体チップ2は、略直方体状のフリップチップである。すなわち、半導体チップ2は、ウェハから切り離した機能単位の裸の半導体である。半導体チップ2は、接続端子として格子状に配置されたはんだバンプ4を有する。
【0025】
半導体チップ2の寸法は特に限定されない。すなわち、半導体チップ2の長さは、例えば、5mm以上30mm以下の範囲内である。半導体チップ2の幅は、例えば、5mm以上30mm以下の範囲内である。半導体チップ2の厚さ(DT)(ただし、はんだバンプ4を除く)は、例えば、50μm以上500μm以下の範囲内である。
【0026】
封止部3は、半導体チップ2を封止している。封止部3は、基板5に接着されている。封止部3は、半導体封止材料の硬化物で形成されている。封止部3の外形は、略直方体状である。
【0027】
封止部3の外形寸法は特に限定されない。すなわち、封止部3の長さは、例えば、6mm以上35mm以下の範囲内である。封止部3の幅は、例えば、6mm以上35mm以下の範囲内である。封止部3の厚さ(MT)は、例えば、0.15mm以上0.5mm以下の範囲内である。
【0028】
基板5は、パッケージ基板又はインタポーザとも呼ばれる。基板5としては、特に限定されないが、例えば、ETS(Embedded Trace Substrate)が挙げられる。ETSは、導体配線を内蔵する基板である。ETSは、コアレス基板でもよい。コアレス基板は、ビルドアップ層のみで構成されている基板である。基板5の厚さ(ST)は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上0.3mm以下の範囲内である。
【0029】
半導体チップ2は、基板5にフリップチップ実装(フェイスダウン実装)されている。すなわち、半導体チップ2のはんだバンプ4が基板5のランドに接合されている。基板5の半導体チップ2が実装されていない面には、接続端子としてはんだボール7が格子状に配置されている。
【0030】
半導体チップ2の体積占有率は、半導体チップ2及び封止部3の合計体積に占める半導体チップ2の体積百分率で規定される。具体的には、半導体チップ2の体積をVcとし、半導体チップ2及び封止部3の合計体積をVaとすると、半導体チップ2の体積占有率はVc/Vaで表される。そして、本実施形態では、VcとVaとは、下記式(2)を満たす。
【0031】
【0032】
すなわち、本実施形態では、半導体チップ2の体積占有率は、半導体チップ2及び封止部3の合計体積に対して、30体積%以上である。このような条件を満たす半導体装置1を製造する際に、本実施形態に係る半導体封止材料が好適に用いられる。
【0033】
半導体チップ2の体積占有率の下限値は、好ましくは35体積%以上、より好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは45体積%以上である。このように、半導体チップ2の体積占有率の下限値が大きくなるほど、相対的に封止部3の体積占有率が小さくなり、第1半導体装置11の小型化及び薄型化を実現しやすくなる。
【0034】
一方、半導体チップ2の体積占有率の上限値は、好ましくは70体積%以下、より好ましくは65体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下である。このように、半導体チップ2の体積占有率の上限値が小さくなるほど、相対的に封止部3の体積占有率が大きくなり、より大きな収縮力が得られ、第1半導体装置11の反りを低減しやすくなる。
【0035】
(2.1.2)実施形態2
図2に本実施形態に係る半導体装置1(第2半導体装置12)を示す。第2半導体装置11は、半導体チップ2と、封止部3と、再配線層6と、を備える。第2半導体装置12は、ウェハレベルパッケージ(WLP)である。再配線層6は、ウェハプロセスを用いて半導体チップ2の端子から配線を引き出して形成される。そのため、第2半導体装置12は、基板5を備えない。さらに半導体チップ2は、はんだバンプ4を有しない。その他の構成については、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0036】
(2.1.3)実施形態3
図3に本実施形態に係る集合基板100を示す。
図4に本実施形態に係る半導体装置1(第3半導体装置13)を示す。集合基板100を個片化すると、複数の第3半導体装置13が得られる。すなわち、第3半導体装置13は、いわゆるMAP(モールドアレイプロセス)により得られる。MAPでは、1つの基板5の片面において、複数の半導体チップ2を製品領域ごとに搭載し、これらの半導体チップ2を半導体封止材料により一括封止して集合基板100を得る。その後、製品領域ごとに集合基板100を切断(ダイシング)して個片化することにより、第3半導体装置13が得られる。以下、実施形態1と共通する構成については説明を省略し、相違する構成について説明する。
【0037】
集合基板100は、複数の半導体チップ2と、封止部3と、基板5と、を備える。
【0038】
基板5の外形寸法は、特に限定されない。基板5の長さ(FS2)は、例えば、100mm以上300mm以下の範囲内である。基板5の幅(FS1)は、例えば、30mm以上80mm以下の範囲内である。
【0039】
半導体チップ2の寸法は、実施形態1と同様である。複数の半導体チップ2は、1つの基板5の片面において格子状に配置されてダイアタッチフィルム8で接着されている。ダイアタッチフィルム8の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上30μm以下の範囲内である。
【0040】
封止部3は、複数の半導体チップ2を封止している。封止部3は、基板5に接着されている。封止部3は、半導体封止材料の硬化物で形成されている。封止部3の外形は、略直方体状である。
【0041】
封止部3の外形寸法は特に限定されない。すなわち、封止部3の長さ(MA2)は、例えば、90mm以上290mm以下の範囲内である。封止部3の幅(MA1)は、例えば、25mm以上75mm以下の範囲内である。
【0042】
集合基板100において、複数の半導体チップ2の体積占有率は、複数の半導体チップ2及び封止部3の合計体積に占める複数の半導体チップ2の体積百分率で規定される。本実施形態では、複数の半導体チップ2の体積占有率は、複数の半導体チップ2及び封止部3の合計体積に対して、30体積%以上である。なお、集合基板100における複数の半導体チップ2の体積占有率は、第3半導体装置13における1つの半導体チップ2の体積占有率よりも低くなる。その理由は、集合基板100には、切断用のスクライブライン(切り代)が存在するためである。
【0043】
複数の半導体チップ2の体積占有率の下限値は、好ましくは32体積%以上、より好ましくは35体積%以上、さらに好ましくは38体積%以上である。このように、複数の半導体チップ2の体積占有率の下限値が大きくなるほど、相対的に封止部3の体積占有率が小さくなり、集合基板100の小型化及び薄型化を実現しやすくなる。第3半導体装置13の小型化及び薄型化も実現しやすくなる。
【0044】
一方、複数の半導体チップ2の体積占有率の上限値は、好ましくは70体積%以下、より好ましくは65体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下である。このように、複数の半導体チップ2の体積占有率の上限値が小さくなるほど、相対的に封止部3の体積占有率が大きくなり、より大きな収縮力が得られ、集合基板100の反りを低減しやすくなる。第3半導体装置13の反りも低減しやすくなる。
【0045】
集合基板100において、隣り合う半導体チップ2間を切断して個片化すると、複数の第3半導体装置13が得られる。第3半導体装置13の半導体チップ2の体積占有率は、実施形態1と同様である。
【0046】
(2.2)半導体封止材料
本実施形態に係る半導体封止材料は、半導体装置1の製造に用いられる。半導体装置1には、第1半導体装置11、第2半導体装置12、第3半導体装置13、及び集合基板100が含まれる。半導体封止材料は、封止部3の形成に用いられる。
【0047】
半導体封止材料のストレスインデックス(SI)は、下記式(1)で求められる。
【0048】
【0049】
式(1)中、E’(T)は貯蔵弾性率、CTE(T)は熱膨張率、Mold temp.は成形温度を示す。
【0050】
式(1)中の貯蔵弾性率(E’(T))は、温度の関数であり、動的粘弾性測定(DMA)により測定可能である。この場合、貯蔵弾性率(E’(T))の単位はGPaである。一方、式(1)中の熱膨張率(CTE(T))は、温度の関数であり、熱機械分析(TMA)により測定可能である。この場合、熱膨張率(CTE(T))の単位はppm/℃である。成形温度は、例えば175℃であるが、特に限定されない。なお、ストレスインデックス(SI)は、評価指標であるため、特に単位は存在しない。
【0051】
上記のように、ストレスインデックス(SI)は、貯蔵弾性率(E’(T))と熱膨張率(CTE(T))とを掛け合わせて得られた温度の関数を、35℃から成形温度まで積分して得られる値であるので、半導体封止材料のガラス転移温度(Tg)の影響が考慮されている。したがって、このストレスインデックス(SI)によれば、半導体装置1の封止部3の収縮力をより正確に評価することができる。
【0052】
ストレスインデックス(SI)は、特に半導体チップ2の体積占有率が高い半導体装置1の反り挙動を評価するのに有効な指標である。具体的には、ストレスインデックス(SI)は、半導体チップ2の体積占有率が30体積%以上の半導体装置1の反り挙動の評価に有効である。さらにストレスインデックス(SI)は、第1半導体装置11の反り挙動の評価に特に有効である。
【0053】
具体的には、半導体封止材料の式(1)で求められるストレスインデックス(SI)が8500以上である。これにより、封止部3が大きな収縮力を得ることができるので、半導体装置1の反りを低減することができる。特に第1半導体装置11では、半導体チップ2及び基板5の熱膨張率のミスマッチにより、いわゆるクライ反りが生じやすい。しかしながら、ストレスインデックス(SI)が8500以上であれば、封止部3の体積占有率が小さくても、封止部3が大きな収縮力を得ることができるので、第1半導体装置11のクライ反りを低減することができる。
【0054】
ストレスインデックス(SI)は、式(1)で解析的に求めてもよいが、数値的に求めてもよい。ストレスインデックス(SI)を数値的に求める場合には、まず貯蔵弾性率(E’(T))及び熱膨張率(CTE(T))の各々について、一定の刻み幅(例えば5℃刻み)で35℃から成形温度まで測定値を得る。次に同一温度での貯蔵弾性率(E’(T))及び熱膨張率(CTE(T))の測定値を掛け合わせて乗算値を得る。その後、乗算値を積算することによって、ストレスインデックス(SI)を求めることが可能である。
【0055】
ストレスインデックス(SI)を数値的に求める場合には、好ましくは、5℃刻みで35℃から成形温度(175℃)までの測定値を得る。この場合、ストレスインデックス(SI)の下限値は、好ましくは8500以上、より好ましくは8600以上、さらに好ましくは8700以上である。一方、ストレスインデックス(SI)の上限値は、好ましくは17000以下、より好ましくは16000以下、さらに好ましくは15000以下である。
【0056】
半導体封止材料は、熱硬化性樹脂を含有し得る。熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂系硬化剤を含む。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0057】
半導体封止材料は、熱硬化性樹脂の硬化を促進させるため、硬化促進剤を更に含有してもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィンが挙げられる。
【0058】
半導体封止材料は、貯蔵弾性率、熱膨張率、及び機械強度の調整のため、無機充填材を含有してもよい。半導体封止材料が無機充填材を含有する場合、無機充填材の含有量は、半導体封止材料の全質量に対して、55質量%以上85質量%以下の範囲内であることが好ましい。これにより、半導体装置1の反りを更に低減することができる。
【0059】
無機充填材の含有量の下限値は、より好ましくは57質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。一方、無機充填材の上限値は、より好ましくは83質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0060】
無機充填材は、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含んでもよい。半導体封止材料が水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含有する場合、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムの含有量は、半導体封止材料の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましい。これにより、半導体装置の反りを更に低減することができる。
【0061】
水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムの含有量の下限値は、より好ましくは11質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上である。一方、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムの含有量の上限値は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0062】
半導体封止材料が無機充填材を含有する場合、半導体封止材料は、熱硬化性樹脂と無機充填材との接着性を向上させるため、シランカップリング剤を更に含有してもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0063】
半導体封止材料は、腐食性イオンを除去するため、イオン捕捉剤を更に含有してもよい。イオン捕捉剤は、無機イオン交換体とも呼ばれる。
【0064】
半導体封止材料は、封止部3を着色するため、顔料を更に含有してもよい。顔料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラックが挙げられる。
【0065】
好ましくは、半導体封止材料の硬化物の260℃での曲げ弾性率は0.1GPa以上0.9GPa以下の範囲内である。これにより、半導体装置1の反りを更に低減することができる。特にMAPにより半導体装置1を製造する場合には、個片化前の集合基板100の反りを低減することができる。集合基板100の反りを低減することで、その後の集合基板100に対する各種の処理を円滑に進めることが可能である。
【0066】
好ましくは、半導体封止材料の硬化物の成形収縮率は0.35%以上1.3%以下の範囲内である。これにより、半導体装置1の反りを更に低減することができる。
【0067】
成形収縮率の下限値は、より好ましくは0.38%以上、さらに好ましくは0.40%以上である。一方、成形収縮率の上限値は、より好ましくは1.28%以下、さらに好ましくは1.26%以下である。
【0068】
(3)変形例
上記実施形態では、第1半導体装置11としてFC-CSPを例示し、第2半導体装置12としてWLPを例示したが、これらには限定されない。他の半導体装置として、SiP(System in Package)のようなモジュールタイプの半導体装置、及びワイヤ接続とフリップチップ接合とが併用されたハイブリッドタイプの半導体装置などが挙げられる。
【0069】
上記実施形態では、第3半導体装置13をMAPにより製造しているが、第1半導体装置11及び第2半導体装置12もMAPにより製造可能である。
【0070】
(4)まとめ
上記実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。なお、以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0071】
第1の態様に係る半導体封止材料は、半導体装置(1)の製造に用いられる。前記半導体装置(1)は、半導体チップ(2)と、封止部(3)と、を備える。前記封止部(3)は、前記半導体封止材料の硬化物で形成される。前記封止部(3)は、前記半導体チップ(2)を封止する。前記半導体封止材料の下記式(1)で求められるストレスインデックス(SI)が8500以上である。半導体チップ(2)の体積をVcとする。半導体チップ(2)及び封止部(3)の合計体積をVaとする。VcとVaとが下記式(2)を満たす。
【0072】
【0073】
式(1)中、E’(T)は貯蔵弾性率、CTE(T)は熱膨張率、Mold temp.は成形温度を示す。
【0074】
【0075】
この態様によれば、半導体装置(1)の反りを低減することができる。
【0076】
第2の態様に係る半導体封止材料では、第1の態様において、前記半導体封止材料の硬化物の260℃での曲げ弾性率が0.1GPa以上0.9GPa以下の範囲内である。
【0077】
この態様によれば、半導体装置(1)の反りを更に低減することができる。特にMAPにより半導体装置(1)を製造する場合には、個片化前の集合基板(100)の反りを低減することができる。
【0078】
第3の態様に係る半導体封止材料では、第1又は2の態様において、前記半導体封止材料の硬化物の成形収縮率が0.35%以上1.3%以下の範囲内である。
【0079】
この態様によれば、半導体装置(1)の反りを更に低減することができる。
【0080】
第4の態様に係る半導体封止材料は、第1~3のいずれかの態様において、無機充填材を含有する。前記無機充填材の含有量は、前記半導体封止材料の全質量に対して、55質量%以上85質量%以下の範囲内である。
【0081】
この態様によれば、半導体装置(1)の反りを更に低減することができる。
【0082】
第5の態様に係る半導体封止材料では、第4の態様において、前記無機充填材は、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含む。前記水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムの含有量は、前記半導体封止材料の全質量に対して、10質量%以上である。
【0083】
この態様によれば、半導体装置(1)の反りを更に低減することができる。
【0084】
第6の態様に係る半導体装置(1)は、半導体チップ(2)と、前記半導体チップ(2)を封止する封止部(3)と、を備える。前記封止部(3)が第1~5のいずれかの態様に係る半導体封止材料の硬化物で形成されている。
【0085】
この態様によれば、半導体装置(1)の反りを低減することができる。
【実施例】
【0086】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【0087】
1.半導体封止材料
表1中の「組成」の欄に示す成分を配合して半導体封止材料を得た。なお、表1に示す成分の詳細は、以下のとおりである。
【0088】
・エポキシ樹脂1:日本化薬株式会社製、ビフェニル型エポキシ樹脂、「NC-3000」、エポキシ当量265~285g/eq
・エポキシ樹脂2:日本化薬株式会社製、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、「EPPN-501HY」、エポキシ当量163~175g/eq
・エポキシ樹脂3:三菱ケミカル株式会社製、ビフェニル型エポキシ樹脂、「YX4000」、エポキシ当量180~192g/eq。
【0089】
・フェノール樹脂1:明和化成株式会社製、「MEHC-7851」、OH当量201~220g/eq
・フェノール樹脂2:明和化成株式会社製、「MEHC-7800-M」OH当量167~180g/eq。
【0090】
・無機充填材1:デンカ株式会社、「FB-5SDC」、平均粒子径(d50)4.1μm、シリカ
・無機充填材2:協和化学工業株式会社、「KISUMA 8SN」、平均粒子径1.48μm、水酸化マグネシウム。
【0091】
・顔料:三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック、「MA600」、粒子径20nm(算術平均径)
・イオントラップ剤:東亞合成株式会社製、「IXE-700F」(Mg、Al系)
・硬化促進剤:北興化学工業株式会社製、トリフェニルホスフィン、「ホクコーTPP」
・シランカップリング剤:信越化学工業株式会社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、「KBM-403」。
【0092】
2.物性
(1)ストレスインデックス
(DMA)
半導体封止材料で作製した試験片(寸法:5mm×50mm×1mm)を25℃から280℃まで5℃/分で昇温させ、熱機械分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス、「DMA7100」)にて周波数10Hzで試験片の貯蔵弾性率(E’(T))(単位はGPa)を測定した。25℃から5℃刻みで貯蔵弾性率(E’(T))の測定値を得た。
【0093】
(TMA)
半導体封止材料で作製した試験片(寸法:φ5mm×1mm)を25℃から280℃まで5℃/分で昇温させ、熱機械分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス、「TMA7100」)にて荷重-1gで試験片の熱膨張率(CTE(T))(単位はppm/℃)を測定した。25℃から5℃刻みで熱膨張率(CTE(T))の測定値を得た。
【0094】
(計算)
ストレスインデックス(SI)を計算するにあたっては、35℃から175℃(成形温度)までの貯蔵弾性率(E’(T))(GPa)及び熱膨張率(CTE(T))(ppm/℃)の測定値を用いた。同一温度について、貯蔵弾性率(E’(T))の測定値と、熱膨張率(CTE(T))の測定値とを掛け合わせて乗算値を得た。これらの乗算値を積算することによって、ストレスインデックス(SI)を求めた。なお、既述のとおり、ストレスインデックス(SI)は、評価指標であるため、特に単位は存在しない。
【0095】
(2)曲げ弾性率
半導体封止材料で作製した試験片(寸法:80mm×10mm×4mm)の260℃での曲げ弾性率を、精密万能試験機オートグラフ(株式会社島津製作所製、「AG-IS」)を用いて、支点間距離64mm、及び試験速度2mm/minの条件にて測定した。
【0096】
(3)成形収縮率
半導体封止材料を用いてトランスファー成形により試験片を作製した。成形条件は、金型の直径80mm、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、成形時間150秒である。得られた試験片の直径を測定して、金型の直径に対する試験片の寸法により、成形収縮率を算出した。
【0097】
3.評価
(1)集合基板
図3に示すような集合基板100を製造した。すなわち、1つの基板5の片面において、複数(4個×16個)の半導体チップ2を製品領域ごとに搭載し、これらの半導体チップ2を半導体封止材料により一括封止して集合基板100を得た。一括封止は、モールディング装置(TOWA株式会社製、「FFT」)を用いて行った。その他の詳細は、以下のとおりである。
【0098】
・基板:ETS、コアレス、3層(各層の残銅率55%、70%、及び60%)
・基板の長さ(FS2):220.0mm
・基板の幅(FS1):60.0mm
・基板の厚さ(ST):110μm
・半導体チップの長さ:12.4mm
・半導体チップの幅:10.9mm
・半導体チップの厚さ(DT):150μm
・複数の半導体チップの体積占有率:42.0体積%
・ダイアタッチフィルムの厚さ:15μm
・封止部の長さ(MA2):213.6mm
・封止部の幅(MA1):53.6mm
・封止部の厚さ(MT):270μm
・集合基板の厚さ(PT):380μm。
【0099】
(2)個片化前の反り
集合基板100に対して175℃、6時間のポストキュアを行い、さらにリフロー炉にて160℃から200℃までの温度領域が1分30秒、最高到達温度が260℃、10秒となるように加熱した。その後、集合基板100を平坦な面上に起き、四隅の持ち上がり量を定規で測定し、これらの平均値を個片化前の反り量とした。ただし、表1では、実施例1~5及び比較例2の個片化前の反り量は、比較例1の個片化前の反り量を100%(Ref)としたときの相対値で表示している。
【0100】
(3)個片化後の反り
集合基板100を個片化して、
図4に示すような第3半導体装置13を64個得た。第3半導体装置13の25℃から260℃までの温度領域のコプラナリティーを、3D加熱表面形状測定装置(AKROMETRIX社製、サーモレイ、「PS200」)を用いて測定し、これらの平均値を個片化後の反り量とした。ただし、表1では、実施例1~5及び比較例2の個片化前の反り量は、比較例1の個片化前の反り量を100%(Ref)としたときの相対値で表示している。なお、第3半導体装置13のその他の詳細は、以下のとおりである。
【0101】
半導体チップの体積占有率:51.9体積%
第3半導体装置の長さ:12.8mm
第3半導体装置の幅:11.3mm
第3半導体装置の厚さ(PT):270μm。
【0102】
【0103】
表1から、比較例1、2に比べて、実施例1~5では、ストレスインデックス(SI)がいずれも8500以上であるので、個片化前後の反りが低減されていることが確認される。なお、個片化前後の反りは、いずれもクライ反りである。
【符号の説明】
【0104】
1 半導体装置
2 半導体チップ
3 封止部