(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】吸着用電磁石
(51)【国際特許分類】
B66C 1/06 20060101AFI20230602BHJP
H01F 7/08 20060101ALI20230602BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B66C1/06 E
H01F7/08 Z
H01F7/16 J
H01F7/16 Z
(21)【出願番号】P 2018214336
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111899
【氏名又は名称】永山 陽二
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信秀
(72)【発明者】
【氏名】増岡 洋子
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-003344(JP,A)
【文献】特開2000-343472(JP,A)
【文献】特開平06-244020(JP,A)
【文献】特開昭49-132562(JP,A)
【文献】米国特許第05630634(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/04-1/08
B25J 1/00-21/02
H01F 7/06-7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な仮想的矩形領域内において、m(m≧4、かつ、mは偶数)行、n(n≧4、かつ、nは偶数)列からなるマトリックス状に設定されると共に、互いの間に所定幅の仮想配線領域が設定された仮想設置領域のうち、奇数列目で、かつ、奇数行目となる仮想設置領域と、偶数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とにそれぞれ設けられると共に、略柱状、又は、略筒状に形成された磁極部材と、
コイルワイヤを1行目の前記仮想設置領域と2行目の前記仮想設置領域との間の前記仮想配線領域からm-1行目の前記仮想設置領域とm行目の前記仮想設置領域との間の前記仮想設置領域までの行方向に並ぶ前記仮想配線領域に対してつづら折り状に配線した行方向配線部と、前記コイルワイヤを1列目の前記仮想設置領域と2列目の前記仮想設置領域との間の前記仮想配線領域からn-1行目の前記仮想設置領域とn行目の前記仮想設置領域との間の前記仮想設置領域までの行方向に並ぶ前記仮想配線領域に対してつづら折り状に配線して形成された列方向配線部とを備えたコイルを有していることを特徴とする吸着用電磁石。
【請求項2】
前記仮想的矩形領域の外縁と、1行目の前記仮想設置領域、m行目の前記仮想設置領域、1列目の前記仮想設置領域及びn列目の前記仮想設置領域との間に前記所定幅の仮想周辺配線領域がさらに設定され、
前記コイルは、前記コイルワイヤの、1行目の前記仮想設置領域、m行目の前記仮想設置領域、1列目の前記仮想設置領域及びn列目の前記仮想設置領域にそれぞれ設けられた前記磁極部材の前記仮想的矩形領域の前記外縁側を回り込んでいる部分を前記仮想周辺配線領域内に配線していることを特徴とする請求項1に記載の吸着用電磁石。
【請求項3】
前記コイルは、前記行方向配線部と前記列方向配線部とに連続すると共に、m行目でn列目の前記仮想設置領域に設けられた前記磁極部材の前記仮想的矩形領域の前記外縁側を回り込むように配線された接続部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の吸着用電磁石。
【請求項4】
前記仮想設置領域の、偶数列目で、かつ、奇数行目となる前記仮想設置領域と、奇数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とのうち、任意の複数箇所に設けられると共に、略柱状、又は、略筒状に形成され、非磁性材からなる支柱部材をさらに有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の吸着用電磁石。
【請求項5】
略矩形板状の磁性材からなり、かつ、前記仮想的矩形領域に沿うように配置されると共に、前記仮想設置領域のうち、奇数列目で、かつ、奇数行目となる前記仮想設置領域と、偶数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とに対応する部位に開口部がそれぞれ形成され、該開口部に前記磁極部材が前記仮想的矩形領域に直交する向きで挿入された基盤部材と、
非磁性材からなると共に、前記基盤部材の近傍に配置されたスプリング支持部材と、
一方の端部が前記スプリング支持部材に当接し、他方の端部が前記磁極部材、又は、前記磁極部材に設けられたばね受けに当接するように配置されると共に、前記磁極部材を前記基盤部材側に常時付勢するスプリングとをさらに有し、
前記支柱部材は、前記基盤部材と前記スプリング支持部材とを接続していることを特徴とする
請求項4に記載の吸着用電磁石。
【請求項6】
前記磁極部材は、前記スプリング支持部材寄りの所定部位に環状溝が形成され、
前記ばね受けは、前記磁極部材の前記環状溝に固定されると共に、前記基盤部材の前記開口部よりも径が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の吸着用電磁石。
【請求項7】
前記コイルは、前記基盤部材の前記スプリング支持部材と反対側の面に接する、又は、近接するように設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の吸着用電磁石。
【請求項8】
前記仮想設置領域の、偶数列目で、かつ、奇数行目となる前記仮想設置領域と、奇数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とのうち、任意の複数箇所に設けられると共に、略柱状、又は、略筒状に形成され、非磁性材からなるガイド部材をさらに有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の吸着用電磁石。
【請求項9】
前記基盤部材と同じ外形に形成された底板部と、前記仮想設置領域に対応する部位に開口部がそれぞれ形成されると共に、該開口部を取り囲むように立ち上がった境界壁部とを備えたコイルボビンをさらに有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の吸着用電磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着用電磁石に関し、特に、吸着部が平面状に拡がっている構成を有する吸着用電磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着部が平面状に拡がっている吸着用電磁石は、被吸着物を吸着可能な領域の面積が大きく、被吸着物をより確実に保持できることから、様々な構成の吸着用電磁石が発明されている。
図15は、従来技術に係る吸着用電磁石を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図15において、100は吊り上げ電磁石、110は鉄心、111は磁極、112は内極、113a及び113bは外極、114a及び114bは可動磁極、115a及び115bは基部、116a及び116bは外枠、117a及び117bは支持具、118a及び118bは外部鉄心、119a及び119bは磁極止め、Gc1~Gcn、Gd1~Gdn、Gc1′~Gcn′、及び、Gd1′~Gdn′は可動磁極体である。
【0003】
図15は、特開平10-316355号公報で開示されている吸着用電磁石である。吊り上げ電磁石100は、
図15に示すように、鉄心110として、図示してない内部鉄心と1対の外部鉄心118a及び118bを有している。また、磁極111は、内部鉄心の先端に取り付けた固定磁極である内極112と、外部鉄心118a及び118bの外面に設けた外枠116a及び116bに装架された複数個の可動磁極体Gc1~Gcn、Gd1~Gdn、Gc1′~Gcn′、及び、Gd1′~Gdn′からなる1対の可動磁極114a及び114bの外極113a及び113bにより構成される。くわえて、吊り上げ電磁石100の可動磁極114a及び114bは、基部115a及び115bが外枠116a及び116bの上面と接する位置から磁極止め119a及び119bに当接するところまで、外部鉄心118a及び118bの外面に沿って上下に摺動可能になっている。
【0004】
以上の吊り上げ電磁石100によれば、支持具117a及び117bに支持された外極113a及び113bを構成する可動磁極体Gc1~Gcn、Gd1~Gdn、Gc1′~Gcn′、及び、Gd1′~Gdn′が別個に上下に摺動可能になっているので、被吸着物の上面の形状に対応するように、可動磁極体Gc1~Gcn、Gd1~Gdn、Gc1′~Gcn′、及び、Gd1′~Gdn′の上下方向の位置を変化させることができる。したがって、可動磁極体Gc1~Gcn、Gd1~Gdn、Gc1′~Gcn′、及び、Gd1′~Gdn′の全て、又は、大部分が被吸着物の上面に吸着した状態で被吸着物を吊り上げることができる。ひいては、消費電力に対する吸引力の比率を高める、或いは、吊り上げ電磁石を小型化できるなどの利点がある。
【0005】
ところで、吊り上げ電磁石100では、通電時において、被吸着物の内極112と外極113a及び113bとの間に位置する部位に磁束の流れが集中することになる。したがって、この部位の肉厚が薄いと、磁気飽和状態となって吸引力が頭打ちの状態になる。すなわち、被吸着物が建造物の構造材のような重量物である場合には、この部位の肉厚が重量に見合った十分な厚さでないと吊り上げが困難となる。各々独立した小型の電磁石をマトリックスに多数配置し、これらの電磁石を共通の構造材に固定すれば、被吸着物の広い領域に磁束の流れを分散することが可能であるが、各々の電磁石への配線が非常に複雑になり、製造コストを大幅に増大させる要因になるので、現実的な構成とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、通電時において被吸着物の特定の部位に磁束の流れが集中せず、かつ、低コストで製造可能な吸着用電磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、平坦な仮想的矩形領域内において、m(m≧4、かつ、mは偶数)行、n(n≧4、かつ、nは偶数)列からなるマトリックス状に設定されると共に、互いの間に所定幅の仮想配線領域が設定された仮想設置領域のうち、奇数列目で、かつ、奇数行目となる仮想設置領域と、偶数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とにそれぞれ設けられると共に、略柱状、又は、略筒状に形成された磁極部材と、コイルワイヤを1行目の前記仮想設置領域と2行目の前記仮想設置領域との間の前記仮想配線領域からm-1行目の前記仮想設置領域とm行目の前記仮想設置領域との間の前記仮想設置領域までの行方向に並ぶ前記仮想配線領域に対してつづら折り状に配線した行方向配線部と、前記コイルワイヤを1列目の前記仮想設置領域と2列目の前記仮想設置領域との間の前記仮想配線領域からn-1行目の前記仮想設置領域とn行目の前記仮想設置領域との間の前記仮想設置領域までの行方向に並ぶ前記仮想配線領域に対してつづら折り状に配線して形成された列方向配線部とを備えたコイルを有していることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記仮想的矩形領域の外縁と、1行目の前記仮想設置領域、m行目の前記仮想設置領域、1列目の前記仮想設置領域及びn列目の前記仮想設置領域との間に前記所定幅の仮想周辺配線領域がさらに設定され、前記コイルは、前記コイルワイヤの、1行目の前記仮想設置領域、m行目の前記仮想設置領域、1列目の前記仮想設置領域及びn列目の前記仮想設置領域にそれぞれ設けられた前記磁極部材の前記仮想的矩形領域の前記外縁側を回り込んでいる部分を前記仮想周辺配線領域内に配線していることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記コイルは、前記行方向配線部と前記列方向配線部とに連続すると共に、m行目でn列目の前記仮想設置領域に設けられた前記磁極部材の前記仮想的矩形領域の前記外縁側を回り込むように配線された接続部をさらに備えていることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記仮想設置領域の、偶数列目で、かつ、奇数行目となる前記仮想設置領域と、奇数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とのうち、任意の複数箇所に設けられると共に、略柱状、又は、略筒状に形成され、非磁性材からなる支柱部材をさらに有していることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、略矩形板状の磁性材からなり、かつ、前記仮想的矩形領域に沿うように配置されると共に、前記仮想設置領域のうち、奇数列目で、かつ、奇数行目となる前記仮想設置領域と、偶数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とに対応する部位に開口部がそれぞれ形成され、該開口部に前記磁極部材が前記仮想的矩形領域に直交する向きで挿入された基盤部材と、非磁性材からなると共に、前記基盤部材の近傍に配置されたスプリング支持部材と、一方の端部が前記スプリング支持部材に当接し、他方の端部が前記磁極部材、又は、前記磁極部材に設けられたばね受けに当接するように配置されると共に、前記磁極部材を前記基盤部材側に常時付勢するスプリングとをさらに有し、前記支柱部材は、前記基盤部材と前記スプリング支持部材とを接続していることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記磁極部材は、前記スプリング支持部材寄りの所定部位に環状溝が形成され、前記ばね受けは、前記磁極部材の前記環状溝に固定されると共に、前記基盤部材の前記開口部よりも径が大きくなるように形成されていることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記コイルは、前記基盤部材の前記スプリング支持部材と反対側の面に接する、又は、近接するように設けられていることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記仮想設置領域の、偶数列目で、かつ、奇数行目となる前記仮想設置領域と、奇数列目で、かつ、偶数行目となる前記仮想設置領域とのうち、任意の複数箇所に設けられると共に、略柱状、又は、略筒状に形成され、非磁性材からなるガイド部材をさらに有していることを特徴とする吸着用電磁石である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記基盤部材と同じ外形に形成された底板部と、前記仮想設置領域に対応する部位に開口部がそれぞれ形成されると共に、該開口部を取り囲むように立ち上がった境界壁部とを備えたコイルボビンをさらに有することを特徴とする吸着用電磁石である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、各磁極部材の四方を囲むコイルワイヤに時計回り、又は、反時計回りに電流がそれぞれ流れるので、マトリックス状に配置されたm/2×n/2個の電磁石において1本のコイルワイヤを共有する構成が実現される。したがって、通電時において被吸着物の特定の部位に磁束の流れが集中せず、かつ、低コストで製造可能な吸着用電磁石を実現できる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、仮想周辺配線領域を設定し、仮想周辺配線領域にコイルを配線するので、1行目にある磁極部材、m行目にある磁極部材、1列目にある磁極部材及びn列目にある磁極部材において、外縁側のコイルワイヤと他の三方を囲むコイルワイヤの間隙を等しいものとし、外縁側のコイルワイヤと磁極部材との間隙と、他の三方を囲むコイルワイヤと磁極部材との間隙のばらつきによる磁束密度の低下を防止することが可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、コイルワイヤをm行目でn列目の磁極部材がある仮想的矩形領域の外縁側を回り込むように配線することによって、m行目でn列目の磁極部材を流れる磁束密度を他の磁極部材の磁束密度と同等のものにすることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、磁極部材を設けていない仮想設置領域に支柱部材を設けるので、仮想的矩形領域の外部に支柱部材を設ける領域を確保する必要がない。ひいては、吸着用電磁石の小型化に寄与する。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、スプリングによって磁極部材が付勢されるので、通電停止後に残留磁気によって元の位置に復帰しなくなることを防止できる。また、磁性部材を自重によって復帰させる構成ではないので、吸着用電磁石の上に被吸着物を載置し、磁力によって被吸着物を保持するような用途にも利用できる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、ばね受けが基盤部材に当接したところで、磁極部材の摺動が停止するので、磁極部材の可動範囲を基盤部材によって設定できる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、磁極部材とコイルとの間にスプリングを設けるための間隙を確保する必要がないので、磁極部材とコイルとを必要最小限度の距離まで接近させることによって、生成される磁界強度を高めることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、ガイド部材を設けることによって、コイルワイヤを配線する際に、配線の乱れを生じることを防止できる。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、吸着用電磁石が非常に大型であるなど基盤部材にコイルワイヤを直接配線することが困難である場合に、あらかじめコイルワイヤをコイルボビンに対して配線しておき、吸着用電磁石の組立時にコイルボビンを基盤部材に固定することによってコイルを容易に設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の第1レイヤにおける基本構成の説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の第pレイヤにおける基本構成の説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の第qレイヤにおける基本構成の説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石における仮想的矩形領域に関する説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の配線順序に関する説明図である。
【
図6】本発明の第1の形態に係る吸着用電磁石の仮想的矩形領域における構造材の配置等に関する説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の部分断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の通電状態における断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石のコイルボビンの平面図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石のコイルボビンを示し、(a)はA-A線断面図、(b)はB-B線断面図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石をユニットとして利用した集合型吸着用電磁石を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石をユニットとして利用した集合型吸着用電磁石の使用状態図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態に係る吸着用電磁石の断面図である。
【
図14】本発明の第3の実施の形態に係る吸着用電磁石の断面図である。
【
図15】従来技術に係る吸着用電磁石を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明における仮想的矩形領域の構成に関する定義と、本発明の吸着用電磁石の基本構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の第1レイヤにおける基本構成の説明図である。
図1において、10は磁極部材、11はコイルワイヤ、19は接続部である。また、
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の第pレイヤにおける基本構成の説明図である。
図2において、12はコイルワイヤであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。さらに、
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の第qレイヤにおける基本構成の説明図である。
図3において、13はコイルワイヤであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。くわえて、
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石における仮想的矩形領域に関する説明図である。
図4において、14は仮想設置領域、15は仮想配線領域、16は仮想周辺配線領域である。また、
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の配線順序に関する説明図である。
図5において、25は行方向配線部、26は列方向配線部であり、その他の符号は
図4と同じものを示す。なお、
図1乃至
図3の磁極部材10、及び、
図4の仮想設置領域14は、それぞれ多数存在しているが、記載を簡潔にするために、各図において1つのみ符号を記載している。
【0028】
本発明における仮想的矩形領域は、
図4に示すように、2次元直交座標の第3象限にあるものとし、X軸方向における仮想設置領域14の配列を「行」とし、Y軸方向における仮想設置領域14の配列を「列」としている。仮想設置領域14は、後述するように、磁極部材や支柱部材などを設けるための領域である。また、本発明の第1の実施の形態においては、仮想設置領域14を(m=)8行で(n=)8列設定しており、64箇所設定している。行数mと列数nは、後述する配線上の理由から、それぞれ4以上の偶数とする必要がある。なお、行数mと列数nは、後述する集合型として利用する場合を考慮すると、同数であることが望ましい。これらの仮想設置領域14は、互いに等距離となるように配置されており、さらに互いの間には所定幅の仮想配線領域15が設定されている。
【0029】
くわえて、最も外縁に位置する仮想設置領域14のさらに外縁側には、正方形の輪郭を持つ仮想周辺配線領域16が設けられている。よって、仮想設置領域14において、1行目で1列目にあるものは原点に最も近く、8行目で8列目にあるものは原点から最も遠いものとなる。なお、仮想設置領域14、仮想配線領域15及び仮想周辺配線領域16の互いの位置関係、並びに、コイルワイヤの起点及び終点は、2次元直交座標の第3象限とした以下の説明するものに限られるものではなく、X軸又はY軸に関して対称となるものであってもよく、原点に関して対象となるものであってもよい。また、
図4等における仮想設置領域14、仮想配線領域15及び仮想周辺配線領域16の大きさ及び幅の比率は、説明の便宜を考慮したものであり、本発明の実施物の大きさ及び幅と必ずしも一致するものではない。さらに、仮想設置領域14、仮想配線領域15及び仮想周辺配線領域16の大きさ及び幅の比率は、本発明の実施物に要求される磁界強度や磁極部材の中心軸方向における長さ等によって変わってくるので、特定の比率に定まるものではない。
【0030】
上述のように、仮想的矩形領域の仮想設置領域14は、8行×8列のマトリックス状に64箇所設定されているが、磁極部材が設けられるのはこれらの仮想設置領域14の半数のみとなる。すなわち、
図1乃至
図3に示すように、磁極部材10は、1行目では1列目、3列目、5列目及び7列目、2行目では2列目、4列目、6列目及び8列目に設けられている。3行目以降も同様に、奇数行目では奇数列目に設けられ、偶数行目では偶数列目に設けられている。よって、32箇所に設けられた磁極部材10は、全体として千鳥格子状に配置されていると言える。本発明では、このように配置することによって、32個の磁極部材10がなるべく離隔するように、かつ、仮想的矩形領域おける磁界強度が全体として均一になるようにしている。この理由については後述する。なお、仮想的矩形領域は仮想的な平面に含まれる領域であるが、磁極部材10はシート状に薄いものではなく、本発明の実施物を想定した場合、例えば50mmや200mm程度の長さを持つ棒状の磁性材となる。したがって、
図1乃至
図3に示した磁極部材10は、仮想的矩形領域おける断面を示すものであり、仮想的矩形領域と直交する方向、つまり
図1乃至
図3の手前側及び奥側に所定の長さを有している。
【0031】
仮想配線領域15は、
図4に示すように、64箇所の仮想設置領域14を互いに同じ幅で離隔するように設定されており、全体として格子状の外観を呈している。また、仮想周辺配線領域16は、最も外縁に配置されている1行目、8列目、8行目及び1列目をさらに外縁側から取り囲むように、かつ、仮想設置領域14と同一幅で、仮想設置領域14に連続するように設定されている。したがって、64箇所の仮想設置領域14は、仮想配線領域15と仮想周辺配線領域16とによってそれぞれ周囲を囲まれた状態に設定されている。なお、
図1乃至
図3に示したコイルワイヤ11、12及び13は、それぞれ1層、p層及びq層というレイヤを構成するものであり、これらのレイヤが重なり合うことによって1つのコイルを構成しているので、1つの仮想的な平面にすべてが含まれるわけではない。本発明の実施物を想定した場合、例えば5mmや20mm程度の厚みを持ったコイルとなる。したがって、
図1乃至
図3に示したコイルワイヤ11、12及び13からなるコイルは、仮想的矩形領域おける1つずつのレイヤを示すものであり、仮想的矩形領域と直交する方向、つまり
図1乃至
図3の手前側及び奥側に所定の長さを有している。
【0032】
次に、コイルワイヤの配線手順について説明する。コイルワイヤ11は、
図1に示すように、1行目で1列目の磁極部材10の近傍で、かつ、仮想周辺配線領域16の1行目で1列目側の隅となるところを起点としている。そして、この起点から仮想周辺配線領域16の1列目に配線され、1行目の仮想設置領域14と2行目の仮想設置領域14との間の仮想配線領域15を通って2行目で8列目の磁極部材10に至る。続けて、2行目で8列目の磁極部材10の外縁側の仮想周辺配線領域16を回り込んで、2行目の仮想設置領域14と3行目の仮想設置領域14との間の仮想配線領域15を通って3行目で1列目の磁極部材10に至る。以下同様に、1列目と8列目との磁極部材10の外縁側の仮想周辺配線領域16を回り込みながら、次の仮想配線領域15をつづら折り状に往復して行く。つづら折り状の配線が8行目で8列目の磁極部材10まで至ると、
図5(a)に示すように、行方向配線部が完成する。
【0033】
そして、8行目で8列目の磁極部材10まで至ったら、この磁極部材10の外縁側の仮想周辺配線領域16を回り込んで、8列目の仮想設置領域14と7列目の仮想設置領域14との間の仮想配線領域15を通って1行目で7列目の磁極部材10に至る。続けて、1行目で7列目の磁極部材10の外縁側の仮想周辺配線領域16を回り込んで、7列目の仮想設置領域14と6列目の仮想設置領域14との間の仮想配線領域15を通って8行目で6列目の磁極部材10に至る。以下同様に、8行目と1行目との磁極部材10の外縁側の仮想周辺配線領域16を回り込みながら、次の仮想配線領域15をつづら折り状に往復して行く。最後に仮想周辺配線領域16の1行目で1列目側の隅となるところに至ったら、仮想周辺配線領域16の外縁を越えるように行方向に配線して第2レイヤの配線に進んで終点となる。くわえて、終点となるところの手前で、起点近傍のコイルワイヤ11と必ず交差させる。このように交差させると、1行目で1列目の磁極部材10が他の位置の磁極部材10と同じ強度の磁界を生成し、吸着用電磁石の吸着力をより高めることができる。以上の手順によって、列方向配線部26が完成する。
【0034】
以上の構成についてまとめると、コイルワイヤを行方向につづら折り状に配線した後、列方向につづら折り状に配線することによって1つのレイヤを構成している。また、行方向に配線した後、別のコイルワイヤを用いずに、8行目で8列目の磁極部材10の外縁側の仮想周辺配線領域16を回り込む接続部19を形成した後に、列方向につづら折り状に配線している。そして、終点近傍のコイルワイヤ11と起点近傍のコイルワイヤ11とを交差させて、コイルワイヤ11が1行目で1列目の磁極部材10を囲むようにして第1レイヤを構成している。また、第2レイヤ以降についても同様である。すなわち、
図2では、コイルワイヤ12を中間層である第pレイヤを同様の構成で形成しており、
図3では、コイルワイヤ13を最上層である第qレイヤを同様の構成で形成している。
【0035】
なお、糸巻き状のコイルボビンを用いた吸着用電磁石では、コイルワイヤが比較的細い場合には、1つのレイヤを例えば10ターンや20ターンで構成し、さらにレイヤ数を10レイヤや20レイヤとする場合がある。本発明においても、コイルワイヤが比較的細い場合に1つのレイヤを例えば10ターンや20ターンで構成することは可能であるが、コイルワイヤを行方向と列方向につづら折り状に複雑に配線することから、コイルワイヤの巻き乱れを生じやすいので、ターン数は少ない方が望ましいと言える。また、行方向に配線した後、別のコイルワイヤを用いて列方向に配線し、最後に行方向配線部の終端部近傍部分と列方向配線部の始端部近傍部分とを、8行目で8列目の磁極部材10の外縁側の仮想周辺配線領域16を回り込むように接続することによって接続部19を構成してもよい。さらに、コイルワイヤ11、12及び13のように分割せずに、第1レイヤから第qレイヤまで1本のコイルワイヤで形成してもよい。
【0036】
また、本発明のコイルでは、
図1の矢印に示すように、コイルワイヤ11の配線順序と同じ方向に通電する。この方向に通電すると、磁極部材10の四方を取り巻くコイルワイヤ11によって、奇数列の磁極部材10では時計回り、偶数列の磁極部材10では反時計回りの電流の流れができる。この電流の流れによって、奇数列の磁極部材10と偶数列の磁極部材10とで逆方向となる磁束の流れが生成される。この磁束の流れによって、鉄やニッケル、これらの合金などからなる被吸着物が吸着される。つまり、32個の磁極部材10全てに対して共通する1本のコイルワイヤで32個の電磁石の単位体を備えた構成となり、個別にコイルボビン及びコイルを有する吸着用電磁石よりも大幅に小型化を図ることができる。この一方、3行目で4列目の仮想設置領域14など磁極部材10を設けていない仮想設置領域14では、四方を取り巻くコイルワイヤ11が2つずつ互いに逆方向に電流が流れる。したがって、仮に、奇数列目で偶数行目の仮想設置領域14、及び、偶数列目で奇数行目の仮想設置領域14に磁極部材10を設けても、被吸着物を吸着する作用を発揮しない。これが奇数列目で奇数行目の仮想設置領域14、及び、偶数列目で偶数行目の仮想設置領域14にのみ磁極部材10を設ける理由である。
【0037】
仮想周辺配線領域16は、最も外縁に配置されている1行目、8列目、8行目及び1列目に設けた磁極部材10の外縁側を回り込むコイルワイヤ11、12及び13が磁極部材10から離れすぎず、適正な経路を通るように設定したものである。また、仮想周辺配線領域16は、前述のように、仮想配線領域15と同じ幅に設定されているが、外縁側にはコイルワイヤ11、12及び13を案内する部材が存在しない。そこで、本発明の実施物においては、仮想周辺配線領域16の外縁に沿って境界壁となる部材を設けることが望ましい。また、仮想配線領域15は、磁極部材10がコイルワイヤ11、12及び13を案内する部材として多少作用するが、不十分であるので、仮想配線領域15の両側端部にも境界壁となる部材を設けることが望ましい。さらに、磁極部材10は、
図1乃至
図3において、中心軸方向に直交する断面が正方形のものとして記載しているが、円形などでもよく、磁束の流れに大きな影響がない場合には中空部(貫通孔)を設けてもよい。
【0038】
以上のように、本発明においては、コイルワイヤ11を1行目の仮想設置領域14と2行目の仮想設置領域14との間の仮想配線領域15から7行目の仮想設置領域14と8行目の仮想設置領域14との間の仮想設置領域14までの行方向に並ぶ仮想配線領域に対してつづら折り状に配線した行方向配線部と、コイルワイヤ11を1列目の仮想設置領域14と2列目の仮想設置領域との間の仮想配線領域15から7行目の仮想設置領域14と8行目の仮想設置領域14との間の仮想設置領域14までの行方向に並ぶ仮想配線領域15に対してつづら折り状に配線して形成された列方向配線部という2つの配線部を備えたコイルに特徴がある。このように構成することによって、32個の磁極部材10全てに対して共通する1本のコイルワイヤで32個の電磁石の単位体を作用させることがでる。ひいては、個別にコイルボビン及びコイルを有する吸着用電磁石よりも大幅に小型化を図ることが可能となる。また、通電時において被吸着物の特定の部位に磁束の流れが集中せず、かつ、低コストで製造可能な吸着用電磁石を実現できる。言い換えるならば、仮想設置領域をm行×n列のマトリックス状に配列している場合に、m又はnが奇数であると、行方向配線部と列方向配線部とを一筆書きのように連続した構成にできないので、m及びnは偶数であることが要件である。さらに、通電時において被吸着物の特定の部位に磁束の流れを集中させないという課題を考慮するならば、m又はnが2では磁束の流れを十分に分散できないので、m及びnは少なくとも4とする必要があると言える。
【0039】
また、仮想的矩形領域の外縁と、1行目の仮想設置領域14、8行目の仮想設置領域14、1列目の仮想設置領域14及び8列目の仮想設置領域14との間に所定幅の仮想周辺配線領域を設定し、コイルワイヤ11、12及び13の、1行目の仮想設置領域14、8行目の仮想設置領域14、1列目の仮想設置領域14及び8列目の仮想設置領域14にそれぞれ設けられた磁極部材10の仮想的矩形領域の外縁側を回り込んでいる部分を仮想周辺配線領域内に配線しているので、外縁側のコイルワイヤ11、12及び13と他の三方を囲むコイルワイヤ11、12及び13の間隙を等しいものとし、外縁側のコイルワイヤ11、12及び13と磁極部材10との間隙と、他の三方を囲むコイルワイヤ11、12及び13と磁極部材10との間隙のばらつきによる磁束密度の低下を防止することが可能となる。
【0040】
さらに、コイルは、行方向配線部と列方向配線部とに連続すると共に、8行目で8列目の仮想設置領域14に設けられた磁極部材10の仮想的矩形領域の外縁側を回り込むように配線された接続部19を備えているので、コイルワイヤを8行目で8列目の磁極部材10がある仮想的矩形領域の外縁側を回り込むように配線することによって、8行目で8列目の磁極部材10を流れる磁束密度を他の磁極部材10の磁束密度と同等のものにすることができる。
【0041】
続けて、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石に関して構造等の具体的な構成について説明する。また、
図6は、本発明の第1の形態に係る吸着用電磁石の仮想的矩形領域における構造材の配置等に関する説明図である。
図6において、30は可動磁極、31は磁極部材、42は支柱部材、43はガイド部材である。さらに、
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の部分断面図である。
図7において、20は吸着用電磁石、30aは基端側部分、30bは先端側部分、30cは先端面、30dは環状溝、31aは基端側部分、31bは先端側部分、31cは先端面、31dは環状溝、21及び22は吸着用電磁石、32は周側面、35及び36はスプリング、37及び38は止め輪、40は基盤部材、40a、40b、40c及び40dは開口部、41はスプリング支持部材、41a及び41bは開口部、42aは貫通孔、43aはネジ穴、44及び45は軸受、46a及び46bはボルト、47はネジ、50はコイル、51はコイルボビン、52は外縁壁部、53は蓋部材であり、その他の符号は
図6と同じものを示す。くわえて、
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石の通電状態における断面図である。
図8において、90は被吸着物、91は吸着面であり、その他の符号は
図6及び
図7と同じものを示す。なお、
図7は、吸着用電磁石20の部分断面図であるので、磁極部材、支柱部材、ガイド部材、スプリングなどの大部分は図示していない。以下の説明において、図示していない磁極部材などは、「他の磁極部材」などと記載している。また、吸着用電磁石の外部配線や吊り下げに係る構成の記載は省略している。
【0042】
吸着用電磁石20は、
図7に示すように、基盤部材40の下面側にコイルボビン51を設け、コイルボビン51の内部にコイル50を収納している。また、吸着用電磁石20における仮想的矩形領域は基盤部材40の下面が相当し、この下面における配線等の構成は
図6に示すものとなっている。すなわち、
図1乃至
図3と同様に、8行×8列のマトリックス状に64箇所の仮想設置領域が設定されており、これらの間隙及び外縁に仮想配線領域及び仮想周辺配線領域が設定されている。また、仮想設置領域においては、7行目で3列目、及び、7行目で1列目のところに、可動的な磁極部材30及び31が設けられており、さらに、他の奇数行目で奇数列目、及び、偶数行目で偶数列目のところにも同じ磁極部材が設けられている。磁極部材30及び31、並びに、他の磁極部材は、中心軸方向に直交する断面が円形に形成されている。くわえて、7行目で2列目の仮想設置領域には、吸着用電磁石20の構造を支持する支柱部材42が設けられており、さらに、7行目で6列目、3行目で2列目、及び、3行目で6列目のところにも同じ支柱部材が設けられている。支柱部材42及び他の支柱部材は、中心軸に直交する方向の断面が円形に形成されている。
【0043】
また、7行目で4列目の仮想設置領域には、コイルワイヤ11を案内するガイド部材43が設けられており、さらに、支柱部材を設けていない奇数行目で偶数列目、及び、偶数行目で奇数列目のところにも、同じガイド部材が設けられている。ガイド部材43、並びに、他のガイド部材は、中心軸方向に直交する断面が円形に形成されている。さらに、仮想配線領域及び仮想周辺配線領域には、コイルワイヤ11を
図5の行方向配線部25、列方向配線部26及び接続部19と同様に配線している。したがって、磁極部材を設けていない仮想設置領域に支柱部材を設けるので、仮想的矩形領域の外部に支柱部材を設ける領域を確保する必要がない。ひいては、吸着用電磁石20の小型化に寄与する。なお、支柱部材とガイド部材の本数は、この実施の形態における本数に限られるものではなく、例えば重量物を対象とする吸着用電磁石である場合には、すべて支柱部材としてもよい。
【0044】
さらに、吸着用電磁石20の各部材について説明する。基盤部材40は、正方形板状に形成されており、磁極部材30及び31などの各部材の基盤となっている。また、磁極部材30及び31が設けられる位置には、開口部40a及び40bが形成されている。開口部40a及び40bには、軸受44及び45が圧入によって固定されている。軸受44及び45は、磁性材から形成されており、磁極部材30及び31を摺動可能に支持している。したがって、磁極部材30及び31は、基盤部材40の上面側にも下面側にも自在に動く。また、軸受44及び45が磁性材から形成されていることから、コイル50に通電したときには、磁極部材30及び31が軸受44及び45に吸着されて、磁極部材30及び31が上下方向に摺動しない状態となる。なお、軸受44及び45を省略することも可能であるが、磁極部材30及び31と基盤部材40との間に生じる摩擦力を低減する、あるいは、磁極部材30及び31と基盤部材40が擦れ合って不快な音を生じることを防止する観点から、軸受44及び45を設けることが望ましい。また、他の磁極部材が設けられる位置においても同様の開口部が形成されており、これらの開口部に対しても軸受が圧入によって固定され、さらにこれらの軸受は磁極部材をそれぞれ摺動可能に支持している。
【0045】
また、支柱部材42が設けられる位置には、開口部40cが形成されている。開口部40cは、支柱部材42を固定するボルト46bを挿通するためのものである。なお、他の支持部材においても同様の開口部が形成されており、これらの開口部に対してもボルトが挿通されている。さらに、ガイド部材43が設けられる位置には、開口部40dが形成されている。開口部40dは、ガイド部材43を圧入するためのものである。なお、他のガイド部材においても同様の開口部が形成されており、これらの開口部にはこれらのガイド部材が圧入されている。なお、基盤部材40は、少なくとも仮想的矩形領域に相当する面積を有していればよく、例えば基盤部材40を吊り下げる、又は、下方から支持するためのスペースを確保するために仮想的矩形領域を超える面積を有していてもよい。また、ガイド部材43は、基盤部材40に対して接着剤で固定されていてもよい。スプリング支持部材41は、スプリング35及び36のばね受けであり、矩形板状に形成され、かつ、基盤部材40に対して平行に配置されると共に、支柱部材42及びガイド部材43によって基盤部材40に接続されている。すなわち、スプリング支持部材41は、支柱部材42が設けられる位置に開口部41aが形成され、ガイド部材43が設けられる位置に開口部41bが形成されている。開口部41bには、ネジ47が挿通されている。さらに、他の支持部材及びガイド部材が設けられる位置にも同様に開口部が形成されている。なお、スプリング支持部材41は、例えば、支柱部材42又はガイド部材43に強固に固定することなどを目的として、部分的に凹凸面や傾斜面を設ける、つまり、基盤部材40に対して平行とならない部分があってもよい。
【0046】
磁極部材30及び31は、基端側部分30a及び31aがスプリング支持部材41側に位置し、先端側部分30b及び31bがスプリング支持部材41とは反対側に位置するように配置されている。磁極部材30及び31の先端面30c及び31cは、コイル50への通電時に被吸着物に接する部分となる。また、磁極部材30及び31の中間部分には環状溝30d及び31dが形成されており、さらに、環状溝30d及び31dには止め輪37及び38が設けられている。スプリング35及び36の基端側はスプリング支持部材41に当接しており、スプリング35及び36の先端側は止め輪37及び38に当接している。なお、スプリング35及び36は、
図7及び
図8に示したような形状でなくてもよく、例えば、円錐コイルバネのような形状であってもよい。止め輪37及び38は、開口部40a及び40bよりも径が大きいので、軸受44及び45が開口部40a及び40bに進入することはない。磁極部材30及び31は軸受44及び45に摺動可能に支持されているので、磁極部材30及び31は、外部から逆方向の応力が加わらない限り、先端側に付勢される。止め輪37及び38は、ばね受けとして設けられたEリングであり、スプリング35及び36の弾発力によって基盤部材40に当接した状態となる。なお、ばね受けとなるものであれば、止め輪37及び38のようなものでなくてもよく、例えば、磁極部材30及び31に対して長手方向に直交するように貫通したピンや、磁極部材30及び31の周側面に形成された段差面や環状溝をばね受けとしてもよい。支柱部材42は、非磁性材から形成されており、基盤部材40と共に吸着用電磁石20の構造を支持している。
【0047】
また、支柱部材42は、中心軸に沿ってネジ山加工された貫通孔42aが形成されており、ボルト46a及び46bによってスプリング支持部材41を基盤部材40に接続している。ガイド部材43は、非磁性材から形成されており、コイルボビンを設けないにはコイルワイヤを配線する際にコイルワイヤを案内し、コイルボビンを設けないにはコイルボビンを固定する役割を持つ。また、前述のように、ガイド部材43は、スプリング支持部材41のネジ穴41bを介してネジ穴43aにねじ込まれたネジ47によってスプリング支持部材41に固定されている。
【0048】
さらに、コイルボビンについて説明する。
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石のコイルボビンの平面図である。
図9において、54、55、56、57、58、59、60、61及び62は境界壁部、63は底板部、65は開口部であり、その他の符号は
図7と同じものを示す。また、
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石のコイルボビンを示し、(a)はA-A線断面図、(b)はB-B線断面図である。
図10において用いた符号は、すべて
図9と同じものを示す。
【0049】
コイルボビン51は、
図9に示すように、仮想設置領域14に対応するために、開口部65を含めて8行×8列の計64箇所の開口部がマトリックス状に設けられている。これらの開口部は、
図10の境界壁部54、55、56、57、58、59、60、61及び62、並びに、他の境界壁部によって囲まれている。また、底板部63は、仮想配線領域及び仮想周辺配線領域に対応するものである。さらに、仮想周辺配線領域の外縁に対応する部位には外縁壁部52が設けられている。また、外縁壁部52と境界壁部54、55、56、57、58、59、60、61及び62、並びに、他の境界壁部は、底板部63に対して同じ高さを有している。くわえて、コイルボビン51は、
図7に示すように、外縁壁部52、並びに、境界壁部54、55、56、57、58、59、60、61及び62などで囲まれていない開口している側に蓋部材53が設けられる。したがって、コイルボビン51に収納されたコイル50は外部空間から遮蔽された状態となり、吸着用電磁石20の周囲に付着した水滴や塵埃、或いは、雰囲気温度の変化によって発生した結露がコイル50に付着することを確実に防止する。なお、コイルボビン51又は蓋部材53の任意の部位に、コイルワイヤの端部及びその近傍部分を外部に導出するための開口部又はスリット部が形成されるが、
図9及び
図10では記載を省略している。
【0050】
さらに、吸着用電磁石20の使用状態について説明する。吸着用電磁石20は、前述のように、コイル50への通電によって、磁極部材30の先端面30c、及び、磁極部材31の先端面31cに被吸着物を吸着する。すなわち、
図8に示すように、あらかじめ磁極部材30の先端面30c、及び、磁極部材31の先端面31cを被吸着物の吸着面91に接するようにして、又は、押し付けておく。前述のように、磁極部材30の先端面30c、及び、磁極部材31の先端面31c、並びに、他の磁極部材は被吸着物90の吸着面91に押し付けても、これらの磁極部材はスプリング支持部材41側に後退可能であるので、被吸着物90の吸着面91の凹凸に応じて動く。すなわち、これらの磁極部材の全て、又は、大部分の先端面が被吸着物90の吸着面91に接した状態にすることが可能である。
【0051】
次に、コイル50に通電すると、基盤部材40、磁極部材30の先端側部分30b、被吸着物90、磁極部材31の先端側部分31bを経由して基盤部材40に戻る磁束の流れが生成される。さらに、他の磁極部材においても、基盤部材40、被吸着物90、隣接する他の磁極部材を経由して基盤部材40に戻る磁束の流れが生成される。これらの磁束の流れによって千鳥格子状に配置された32本の磁極部材に分散された磁束の流れが生成され、被吸着物90の広範囲の部分に磁束が流れる。また、被吸着物90を吸着する作業を終えてコイル50への通電を停止すると、磁極部材30及び磁極部材31、並びに、他の磁極部材は、スプリング35及び36、並びに、他のスプリングの弾発力によって、止め輪37及び38、並びに、他の止め輪が基盤部材40に当接することまで摺動するので、これらの磁極部材を元の位置に復帰される操作は必要ない。
【0052】
以上のように、吸着用電磁石20は、被吸着物90の特定の部位に磁束の流れが集中せず、被吸着物90の広範囲の部分に磁束の流れを分散することが実現できる。例えば、128本の磁極部材を備えた吸着用電磁石であれば、1本当たりの吊り下げ可能な加重が800gであっても、128本の合計で100kgの被吸着物を吊り下げることが可能となる。したがって、被吸着物の肉厚がかなり薄い、つまり、磁気飽和によって流れる磁束量への制約が大きい場合であっても、被吸着物を容易に吊り下げられる。また、スプリング35及び36、並びに、他のスプリングによって、磁極部材30及び磁極部材31、並びに、他の磁極部材が付勢されるので、通電停止後に残留磁気によって元の位置に復帰しなくなることを防止できる。さらに、磁極部材30及び磁極部材31、並びに、他の磁極部材を自重によって復帰させる構成ではないので、吸着用電磁石20の上に被吸着物90を載置し、磁力によって被吸着物を保持するような用途にも利用できる。くわえて、止め輪37及び38、並びに、他の止め輪が基盤部材40に当接したところで、磁極部材30及び磁極部材31、並びに、他の磁極部材の摺動が停止するので、これらの磁極部材の可動範囲を基盤部材40によって設定できる。また、磁極部材30及び磁極部材31、並びに、他の磁極部材とコイル50との間にスプリングを設けるための間隙を確保する必要がないので、これらの磁極部材とコイル50とを必要最小限度の距離まで接近させることによって、生成される磁界強度を高めることができる。さらに、ガイド部材43を設けることによって、コイルワイヤを配線する際に、配線の乱れを生じることを防止できる。
【0053】
また、吸着用電磁石20を多数設けて、集合型の吸引電磁石とすることも可能である。
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石をユニットとして利用した集合型吸着用電磁石を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図11において、70は集合型吸着用電磁石、71は貼付用シート、72は電磁石群であり、その他の符号は
図7と同じものを示す。また、
図12は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着用電磁石をユニットとして利用した集合型吸着用電磁石の使用状態図である。
図12において、92は被吸着物、93は吸着面であり、その他の符号は
図11と同じものを示す。なお、集合型吸着用電磁石の吊り下げに係る構成の記載は省略している。
【0054】
集合型吸着用電磁石70は、
図11に示すように、吸着用電磁石20を5行×5列のマトリックス状に配置した電磁石群72を備えており、さらに、電磁石群72を貼付用シート71によって一体にしている。このように構成したことにより、
図12に示すように、非常に大型で、かつ、なだらかな吸着面93を持つ被吸着物92を吸着して吊り下げることが容易に実現できる。なお、電磁石群72を一体にする手段は、例えばリング状のジョイントなど他の手段を用いてもよい。
【0055】
続けて、本発明の第2の実施の形態に係る吸着用電磁石について説明する。
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る吸着用電磁石の断面図である。
図13において、21は吸着用電磁石、48a及び48bはネジ、80は 基盤部材、80a及び80bは開口部、80cはネジ穴、80dは開口部、81はスプリング支持部材、81a及び81bは開口部、81c及び81dはネジ穴、82は支柱部材、82a及び82bはネジ穴、83はガイド部材、83aはネジ穴、85及び86はスプリングであり、その他の符号は
図7と同じものを示す。
【0056】
本発明の第2の実施の形態に係る吸着用電磁石21は、吸着用電磁石20を薄型化したものである。すなわち、
図13に示すように、吸着用電磁石21では、基盤部材80とスプリング支持部材81との距離を吸着用電磁石20よりも近いものにしている。基盤部材80は、開口部80a、80b及び80d、ネジ穴80cが形成されている。開口部80a、80b及び開口部80dには、吸着用電磁石20と同様に、軸受44及び45、並びに、ガイド部材83が圧入によって固定されている。ネジ穴80cは、ネジ48bをねじ込んで挿通するために形成されている。ネジ48bは、先端部及びその近傍部分が支柱部材82のネジ穴82aにねじ込まれている。また、スプリング支持部材81には、開口部81a及び81bと、ネジ穴81c及び81dとを形成している。開口部81a及び81bは、磁極部材30及び磁極部材31を挿通させて、基盤部材80とスプリング支持部材81とを接近させるために形成したものである。ネジ穴81c及び81dは、ネジ48a及びネジ47をねじ込んで挿通するために形成されている。ネジ48a及びネジ47は、先端部及びその近傍部分が支柱部材82のネジ穴82b、及び、ガイド部材83のネジ穴83aにねじ込まれている。スプリング85及び86は、吸着用電磁石20のものよりも短いものになっている。その他の構成は、吸着用電磁石20と同じである。
【0057】
続けて、本発明の第3の実施の形態に係る吸着用電磁石について説明する。
図14は、本発明の第3の実施の形態に係る吸着用電磁石の断面図である。
図14において、22は吸着用電磁石、39は磁極部材、39aは基端側部分、39bは先端側部分、39cは先端面、39dはネジ穴、47a及び47bはネジ、49はスプリング支持部材、49aは開口部、49b及び49cはネジ穴であり、その他の符号は
図7と同じものを示す。
【0058】
本発明の第3の実施の形態に係る吸着用電磁石22は、吸着用電磁石20の一部の磁極部材を固定磁極化したものである。すなわち、
図14に示すように、吸着用電磁石22では、スプリング支持部材49に開口部49a、並びに、ネジ穴49b及び49cを設けている。開口部49a及びネジ穴49bは吸着用電磁石20のスプリング支持部材41と同様のものであるが、ネジ穴49cは磁極部材39を固定するためのネジ47bがねじ込まれている点で異なっている。すなわち、磁極部材39においては、先端側部分39bが磁極部材31の先端側部分31bと同じ長さだけ基盤部材40から下方に突出しているが、基端側部分39aはスプリング支持部材49に接しており、さらにネジ穴39dが形成されている。ネジ穴39dには、スプリング支持部材49のネジ穴49cを介してネジ47bがねじ込まれている。したがって、例えば、被吸着物が全て同じ形状で、同じ向きに置かれている場合など、磁極部材39の先端面39cに当接する部位が常に同じ高さであるときに有用な構成である。なお、ネジ47bは、ネジ47aと同じ形状及び大きさである。また、基盤部材40の開口部40bには軸受けは設けていない。その他の構成は、吸着用電磁石20と同じである。
【0059】
以上のように、吸着用電磁石21及び吸着用電磁石22は吸着用電磁石20と大半の構成品が共通しているが、吸着用電磁石21は吸着用電磁石20よりも薄型化しており、吸着用電磁石22は部品点数が削減された構成となっている。このように、本発明の実施の形態に係る吸着用電磁石は、構成が比較的簡素な上に、用途に応じて構成を適宜変更できるという利点もある。
【0060】
本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、本発明の第3の実施の形態に係る吸着用電磁石22において、磁極部材をすべて固定磁極にするなど、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の構成にすることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 磁極部材
11 コイルワイヤ
12 コイルワイヤ
13 コイルワイヤ
14 仮想設置領域
15 仮想配線領域
16 仮想周辺配線領域
19 接続部
20 吸着用電磁石
21 吸着用電磁石
22 吸着用電磁石
25 行方向配線部
26 列方向配線部
30 可動磁極
30a 基端側部分
30b 先端側部分
30c 先端面
30d 環状溝
31 磁極部材
31a 基端側部分
31b 先端側部分
31c 先端面
31d 環状溝
35 スプリング
36 スプリング
37 止め輪
38 止め輪
39 磁極部材
39a 基端側部分
39b 先端側部分
39c 先端面
39d ネジ穴
40 基盤部材
40a 開口部
40b 開口部
40c 開口部
40d 開口部
41 スプリング支持部材
41a 開口部
41b 開口部
42 支柱部材
42a 貫通孔
43 ガイド部材
43a ネジ穴
44 軸受
45 軸受
46a ボルト
46b ボルト
47 ネジ
47a ネジ
47b ネジ
48a ネジ
48b ネジ
49 スプリング支持部材
49a 開口部
49b ネジ穴
49c ネジ穴
50 コイル
51 コイルボビン
52 外縁壁部
53 蓋部材
54 境界壁部
55 境界壁部
56 境界壁部
57 境界壁部
58 境界壁部
59 境界壁部
60 境界壁部
61 境界壁部
62 境界壁部
63 底板部
65 開口部
70 集合型吸着用電磁石
71 貼付用シート
72 電磁石群
80 基盤部材
80a 開口部
80b 開口部
80c ネジ穴
80d 開口部
81 スプリング支持部材
81a 開口部
81b 開口部
81c ネジ穴
81d ネジ穴
82 支柱部材
82a ネジ穴
82b ネジ穴
83 ガイド部材
83a ネジ穴
85 スプリング
86 スプリング
90 被吸着物
91 吸着面
92 被吸着物
93 吸着面
100 吊り上げ電磁石
110 鉄心
111 磁極
112 内極
113a 外極
113b 外極
114a 可動磁極
114b 可動磁極
115a 基部
115b 基部
116a 外枠
116b 外枠
117a 支持具
117b 支持具
118a 外部鉄心
118b 外部鉄心
Gc1 可動磁極体
Gcn 可動磁極体
Gd1 可動磁極体
Gdn 可動磁極体
Gc1‘ 可動磁極体
Gcn‘ 可動磁極体
Gd1‘ 可動磁極体
Gdn‘ 可動磁極体