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  • 特許-アンテナユニット、及びRFIDリーダ 図1
  • 特許-アンテナユニット、及びRFIDリーダ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】アンテナユニット、及びRFIDリーダ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20230602BHJP
   H01Q 3/24 20060101ALI20230602BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q3/24
H04B5/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018236799
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020099012
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】506359288
【氏名又は名称】株式会社アスタリスク
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 規之
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-081809(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0037707(KR,A)
【文献】特開2005-223730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 17/00
H01Q 3/24
H01Q 21/24
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDリーダのアンテナユニットであって、
単一の指向性を有する、少なくとも3つの指向性アンテナを備え、
前記指向性アンテナの各々
互いに同一の進行方向に直線偏波の電波を出力し、
前記電波の偏波面の傾きが互いに異なるように配置されていることを特徴とするアンテナユニット。
【請求項2】
互いに隣接する前記偏波面同士の成す角度が均等であることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナユニット。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載のアンテナユニットと、
前記指向性アンテナの各々との間で信号を送受信する送受信回路と、
前記少なくとも3つの指向性アンテナと前記送受信回路の間に設けられた切替部と、
を備え、
前記切替部は、前記指向性アンテナのいずれかを択一的に切り替えて前記送受信回路に接続させることを特徴とする、RFIDリーダ。
【請求項4】
前記切替部は、前記少なくとも3つの指向性アンテナのうち一の指向性アンテナを他の指向性アンテナよりも長い間前記送受信回路に接続させるよう切り替えることを特徴とする、請求項3に記載のRFIDリーダ。
【請求項5】
前記一の指向性アンテナの偏波面は垂直であることを特徴とする、請求項4に記載のRFIDリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDリーダに関し、特にアンテナユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、商品管理や物流管理において、RFタグと携帯型RFIDリーダを備えたRFID通信システムが用いられる。当該RFタグが有するICチップには商品の識別情報が予め記憶されている。そして、当該識別情報を読み取るためにRFIDリーダのアンテナから信号が電波として送信され、当該電波がRFタグのアンテナで受信されることで、ICチップに電力と信号が供給され、ICチップが信号に基づいて識別情報をRFIDリーダに対して電波として送信する。
【0003】
ここで、上記のアンテナとして直線偏波方式のもの(以下、直線偏波アンテナという。)が用いられているが、電波の偏波方向が整合しない場合には通信距離が著しく短くなったり、通信そのものが成立しない場合があった。
【0004】
上記のような偏波方向の不整合を解決する発明が特許文献に記載されている。特許文献に記載の発明では、RFIDリーダに設けられた直線偏波アンテナが常に一定の姿勢になるように、電波の進行方向に向かって伸びる軸をリーダ本体に設け、アンテナが当該軸周りに回転自在に吊り下げられた構成となっている。当該特許文献によれば、アンテナがリーダ本体に対して常に吊り下げられた姿勢となるため、当該アンテナの偏波方向と整合するようにRFタグのアンテナを設けることで上記の不整合を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-124536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、商品管理や物流管理においては、RFタグが付された物品(商品)の姿勢は一様ではなく、また物品(商品)におけるRFタグの取り付け位置や向きも一様ではないため、RFIDリーダのアンテナの姿勢を一定にするだけでは偏波方向の整合性を担保することは困難である。
【0007】
上記した課題に鑑み、本発明は、物品に付されたRFタグとの関係で偏波方向の整合性を向上させるアンテナユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
RFIDリーダのアンテナユニットであって、少なくとも3つの指向性アンテナを備え、前記指向性アンテナの各々が、互いに同一の進行方向に対して電波を出力し、前記進行方向に対する偏波面の傾きが互いに異なるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、互いに隣接する前記偏波面同士の成す角度が均等であることを特徴とする。
【0010】
また、上記記載のアンテナユニットと、前記指向性アンテナの各々との間で信号を送受信する送受信回路と、前記少なくとも3つの指向性アンテナと前記送受信回路の間に設けられた切替部と、を備え、前記切替部は、前記指向性アンテナのいずれかを択一的に切り替えて前記送受信回路に接続させることを特徴とする。
【0011】
また、前記切替部は、前記少なくとも3つの指向性アンテナのうち一の指向性アンテナを他の指向性アンテナよりも長い間前記送受信回路に接続させるよう切り替えることを特徴とする。
【0012】
また、前記一の指向性アンテナの偏波面は垂直であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、偏波面が異なるように複数のアンテナがアンテナユニットに組み込まれているため、複数の偏波方向の電波を出力することができる。このため、例え物品に付されたRFタグの位置や方向が一定でない場合であっても、いずれかのアンテナから出力された電波の偏波面が当該物品のRFタグと整合することとなり、読み取り効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)本実施形態に係るRFIDリーダの側面図、(b)当該RFIDリーダが有するアンテナユニットの正面図。
図2】上記RFIDリーダのリーダ本体とアンテナユニットのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るアンテナユニットを備えたRFIDリーダを図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、RFIDリーダ2は、携帯情報端末である公知のスマートフォン4、リーダ本体6、及びアンテナユニット8が一体化されたハンディ型のRFIDリーダ2である。スマートフォン4には、物品(商品)に付された不図示のパッシブ型のRFタグの情報を取得し、当該取得した情報をネットワークを介して物品の管理サーバ(不図示)に送信するアプリケーションが組み込まれている。当該アプリケーションがスマートフォン4のCPU(不図示)によって実行されることで、リーダ本体6およびアンテナユニット8による読み取り処理が実行される。なお、当該スマートフォン4は、タッチパネルディスプレイを露出させた状態でケース10に収納されており、当該ケース10の背面に設けられた磁石(不図示)によりリーダ本体6に取り付けられている。
【0017】
リーダ本体6は、ユーザによって把持可能に形成されたガン型の筐体12を備えている。当該筐体12の上面には磁石(不図示)が設けられており、当該筐体12の磁石とケース10の磁石が互いに吸着する。これによりスマートフォン4が筐体12に保持される。筐体12内には、図2に示すように、Bluetooth(登録商標)モジュール14、CPU16、メモリ18、RFIDモジュール20などの電子部品が基板に実装されており、これらの電子部品に電力を供給するための電源が内蔵されている。また、筐体12には、トリガースイッチ22が設けられており、当該トリガースイッチ22の出力がCPU16の入力端子に電気的に接続されている。
【0018】
リーダ本体6のメモリ18には読取プログラムが記憶されており、当該読取プログラムをCPU16が実行することで、CPU16は、トリガースイッチ22からの入力を定期的に確認し、トリガースイッチ22が押されたことを検出すると、RFIDモジュール20に読取命令を送信し、RFIDモジュール20から取得した情報をBluetoothモジュール14を介してスマートフォン4へと送信する。
【0019】
RFIDモジュール20は、コネクタ24を介してアンテナユニット8に電気的に接続された送受信回路26と、CPU16からの読取命令に基づいて送受信回路26を制御して、RFタグから情報を読み取る制御部(制御回路28)を有している。
【0020】
アンテナユニット8は3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cを有している。これら3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cは、指向性アンテナであって、同一の進行方向F(図1)に電波が進行するように設けられている。さらに、これら3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cは、進行方向に対する偏波面の傾きが互いに異なるように設けられている。本実施形態では、図1(a)に示すように、アンテナユニット8が接続部24によりリーダ本体6に接続されており、図1(b)に示すように当該接続部24を中心とした周りに120度ずつ角度をつけて3つの平板状のアンテナ体34a,34b,34cが設けられている。第1アンテナ体34aは接続部24から鉛直方向に延出するように設けられており、当該第1アンテナ体34aには垂直偏波の電波を出力する第1直線偏波アンテナ30a(図2)が内蔵されている。当該第1アンテナ体34aから左右に120度回転した位置には第2アンテナ体34bおよび第3アンテナ体34cが延出しており、第2アンテナ体34bには、第1直線偏波アンテナ30aの偏波面に対して時計回りに120度(反時計回りに60度)の角度をつけた偏波面で電波を出力する第2直線偏波アンテナ30bが内蔵されている。また、第3アンテナ体34cには、第1直線偏波アンテナ30aの偏波面に対して反時計回りに120度(時計回りに60度)の角度をつけた偏波面で電波を出力する第3直線偏波アンテナ30cが内蔵されている。すなわち、3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cは、互いに隣接する偏波面同士の成す角度が均等となるように設けられている。
【0021】
ここで、上記のような角度をつけて3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cを設けたのは、事前に行った実測結果に基づくものである。当該測定は一つのRFタグに対して一つの直線偏波アンテナから読み取りを行い、読み取ることができた距離を測定した。先ず、RFタグと偏波方向が最も整合するように一の直線偏波アンテナを設けた場合には、当該RFタグから10m離れた位置において読み取ることができた(以下、読み取ることができた距離を「読取可能距離」という)。また、当該偏波方向が最も整合した位置から、電波の進行方向を変えないで直線偏波アンテナを15度回転させた場合には、読取可能距離は9.2mであった。以下同様に、直線偏波アンテナを30度回転させた場合には読取可能距離が8.2m、直線偏波アンテナを45度回転させた場合には読取可能距離が5.4m、直線偏波アンテナを60度回転させた場合には読取可能距離は2.8m、直線偏波アンテナを75度回転させた場合には読取可能距離が1.2m、直線偏波アンテナを90度回転させた場合には読取可能距離が0.6mとなった。上記の実測結果によれば、偏波方向が最も整合する位置(0度)では読取可能距離が最も長く、当該位置から30度回転させる間は比較的長い読取可能距離を得ることができた。また、30度回転させた位置から90度回転させた位置までの間では比較的短い読取可能距離となった。したがって、当該実測結果に基づけば、第1アンテナ体34aの直線偏波アンテナ30aは、図1(b)において破線で示される範囲(アンテナ体の接続部24の上下において、接続部24を中心とする60度の範囲)で長い読取可能距離を発揮する。第2アンテナ体34bの直線偏波アンテナ30bおよび第3アンテナ体34cの直線偏波アンテナ30cも同様に、接続部24の左右において当該接続部24を中止とする60度の範囲で長い読取距離を発揮する。したがって、少なくとも3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cを互いに120度ごとに設けることにより、アンテナユニット8の接続部24を中心とする360度の範囲で長い読取距離を確保することができる。
【0022】
上記直線偏波アンテナの各々30a,30b,30cは、切替部として機能するスイッチ36a,36b,36cを介して送受信回路26に対して電気的に接続されている。具体的には、第1直線偏波アンテナ30aは第1スイッチ36aを介して送受信回路26に電気的に接続される。また、第2直線偏波アンテナは第2スイッチ36bを介して送受信回路26に電気的に接続される。また、第3直線偏波アンテナ30cは、第3スイッチ36cを介して送受信回路26に電気的に接続される。これらの第1スイッチ36aから第3スイッチ36cは、アンテナユニット8内に設けられたCPU38によって開閉制御される。アンテナユニット8のCPU38は、3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cのいずれかを択一的に送受信回路26へと接続するよう各スイッチ36a,36b,36cに開閉信号を送信する。なお、本実施形態では、CPU38は、第1直線偏波アンテナ30a、第2直線偏波アンテナ30b、第3直線偏波アンテナ30cがこの順に交互に送受信回路26に接続されるよう開閉信号を出力しており、なおかつ、垂直偏波を出力する第1直線偏波アンテナ30aが他の直線偏波アンテナ30b,30cよりも長く送受信回路26に接続されるように開閉信号を出力している。
【0023】
本実施形態のアンテナユニット8を備えたRFIDリーダ2によれば、第1直線偏波アンテナ30a、第2直線偏波アンテナ30b、及び第3直線偏波アンテナ30cが、電波の進行方向F周りに偏波面をずらして設けられているため、これらの直線偏波アンテナ30a,30b,30cのいずれかが、物品に付されたRFタグのアンテナの偏波方向と整合しやすくなり、感度の良い通信を実現することが可能となる。
【0024】
本発明のアンテナユニットを実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、例えば以下のように変形したものであっても構わない。
【0025】
<変形例>
(1)上記の実施形態では、第1直線偏波アンテナ30aを他の直線偏波アンテナ30b,30cよりも長く接続されるよう切替部の切り替えを行なっていたが、切り替えのタイミングは均等であっても構わない。
【0026】
(2)また、上記の切替部は、アンテナユニット8内に設けられる態様に限定されず、リーダ本体内に設けても構わない。
【0027】
(3)上記の実施形態では、アンテナユニット8は3つの直線偏波アンテナ30a,30b,30cを有していたが、3つに限られず4つ以上の直線偏波アンテナを備えても構わない。この場合、電波の進行方向に対して偏波面が均等に傾斜する姿勢で各直線偏波アンテナが設けられる。
【0028】
(4)また、アンテナユニット8が備える複数のアンテナは、全てが直線偏波アンテナである必要はなく、円偏波式のアンテナ(以下、円偏波アンテナという。)と直線偏波アンテナの両方を備えても構わない。このように、円偏波アンテナを備えることで、RFタグに近づいた場合には、RFタグとの通信を安定して行うことが可能となる。なお、このように偏波方式が異なるアンテナを用いた場合であっても、アンテナユニット内には、各々のアンテナを送受信回路26に対して交互に切り替えて択一的に接続させる切替部を有する。
【0029】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0030】
2 … RFIDリーダ
8 … アンテナユニット
26 … 送受信回路
30a … 第1直線偏波アンテナ(アンテナ)
30b … 第2直線偏波アンテナ(アンテナ)
30c … 第3直線偏波アンテナ(アンテナ)
36a,36b,36c … スイッチ(切替部)

図1
図2