(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】飛行制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/10 20060101AFI20230602BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20230602BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230602BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230602BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230602BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C13/20 Z
B64C39/02
B64C27/08
B64D47/08
B64C13/18 E
(21)【出願番号】P 2021043625
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520036042
【氏名又は名称】株式会社RedDotDroneJapan
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 望
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-92491(JP,A)
【文献】特表2020-534592(JP,A)
【文献】特開2018-121267(JP,A)
【文献】特開2017-222187(JP,A)
【文献】特表2019-507924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作入力部を有する操縦装置と、前記操縦装置からの操縦信号に基づいて飛行制御可能な無人航空機と、を備え、
前記無人航空機は、
複数の回転翼を含む推進機構と、
前記無人航空機の位置を推定する位置推定部と、
前記無人航空機の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記無人航空機の移動速度を推定する速度推定部と、
前記無人航空機の現在の位置、姿勢、及び速度を含む情報に基づいて前記推進機構を制御する飛行制御部と、を有し、
前記飛行制御部は、操縦者による前記操作入力部の一軸方向の操作に応じて前記操縦装置から送信される操縦信号に基づき、予め地図データ上に設定された仮想的な飛行ラインに沿って飛行するように前記推進機構を制御
し、
前記飛行制御部は、前記操縦者による前記操作入力部の一軸方向の一方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う一方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御し、前記操作入力部の一軸方向の他方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う他方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御する、ことを特徴とする飛行制御システム。
【請求項2】
前記操縦装置または前記無人航空機は、前記飛行ラインの両端部に対応する前記地図データ上の2つの地点の位置情報に基づいて前記飛行ラインを設定する飛行ライン設定部を有する、請求項1に記載の飛行制御システム。
【請求項3】
前記無人航空機は、
前記無人航空機のヘディング方向を推定する方向推定部を有し、
前記飛行制御部は、現在の前記ヘディング方向に基づいて前記推進機構を制御する、請求項1又は2に記載の飛行制御システム。
【請求項4】
前記無人航空機は、
画像を撮影可能な撮像部と、
前記撮像部の撮影方向を推定する撮影方向推定部と、
前記無人航空機のヘディング方向、または前記撮像部を支持するジンバルの方向を制御することにより、前記撮影方向を変更する撮影方向制御部と、を有する、請求項3に記載の飛行制御システム。
【請求項5】
前記飛行ラインは、全体が一直線状である、請求項1~4の何れかに記載の飛行制御システム。
【請求項6】
前記飛行ラインは、屈曲部又は湾曲部を有する、請求項1~4の何れかに記載の飛行制御システム。
【請求項7】
前記操縦信号は、前記操作入力部の操作度合の情報を含み、
前記飛行制御部は、前記操作度合の情報に基づいて、前記無人航空機の飛行速度を制御する、請求項1~6の何れかに記載の飛行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の飛行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に利用されるドローン(Drone)に代表される無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)や回転翼機を含む飛行体を利用した上空からの画像撮影等の様々なサービスが提供されている。
【0003】
飛行体の飛行制御の方法としては、例えば、所謂「プロポ」等の操縦装置を用いて手動で操縦する方法と、予め設定した飛行計画に従って、自律的に飛行させる方法とが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、操縦装置を用いて手動で操縦する場合、操縦者に高い技術が求められるため、操縦経験の少ない人にとっては気軽に操作ができないという問題がある。一方で、自律飛行させる場合は、飛行計画に従って飛行するのみであり、様々な飛行中の状況に応じて、飛行速度や飛行方向を動的に変更することは困難である。
【0006】
本発明は、高度な操縦技術を必要とせず、飛行体の安全な手動操縦が可能な飛行制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、操作入力部を有する操縦装置と、前記操縦装置からの操縦信号に基づいて飛行制御可能な無人航空機と、を備え、
前記無人航空機は、
複数の回転翼を含む推進機構と、
前記無人航空機の位置を推定する位置推定部と、
前記無人航空機の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記無人航空機の移動速度を推定する速度推定部と、
前記無人航空機の現在の位置、姿勢、及び速度を含む情報に基づいて前記推進機構を制御する飛行制御部と、を有し、
前記飛行制御部は、操縦者による前記操作入力部の一軸方向の操作に応じて前記操縦装置から送信される操縦信号に基づき、予め地図データ上に設定された仮想的な飛行ラインに沿って飛行するように前記推進機構を制御することを特徴とする飛行制御システムが得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高度な操縦技術を必要とせず、飛行体の安全な手動操縦が可能な飛行制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による飛行制御システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1の飛行体の構成を表す機能ブロック図である。
【
図3】
図1の操縦装置の構成を表す機能ブロック図である。
【
図6】飛行ラインのさらに他の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による飛行制御システムは、以下のような構成を備える。
[項目1]
操作入力部を有する操縦装置と、前記操縦装置からの操縦信号に基づいて飛行制御可能な無人航空機と、を備え、
前記無人航空機は、
複数の回転翼を含む推進機構と、
前記無人航空機の位置を推定する位置推定部と、
前記無人航空機の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記無人航空機の移動速度を推定する速度推定部と、
前記無人航空機の現在の位置、姿勢、及び速度に基づいて前記推進機構を制御する飛行制御部と、を有し、
前記飛行制御部は、操縦者による前記操作入力部の一軸方向の操作に応じて前記操縦装置から送信される操縦信号に基づき、予め地図データ上に設定された仮想的な飛行ラインに沿って飛行するように前記推進機構を制御することを特徴とする飛行制御システム。
[項目2]
前記操縦装置または前記無人航空機は、前記飛行ラインの両端部に対応する前記地図データ上の2つの地点の位置情報に基づいて前記飛行ラインを設定する飛行ライン設定部を有する、項目1に記載の飛行制御システム。
[項目3]
前記無人航空機は、
前記無人航空機のヘディング方向を推定する方向推定部を有し、
前記飛行制御部は、現在の前記ヘディング方向に基づいて前記推進機構を制御する、項目1又は2に記載の飛行制御システム。
[項目4]
前記無人航空機は、
画像を撮影可能な撮像部と、
前記撮像部の撮影方向を推定する撮影方向推定部と、
前記無人航空機のヘディング方向、または前記撮像部を支持するジンバルの方向を制御することにより、前記撮影方向を変更する撮影方向制御部と、を有する、項目3に記載の飛行制御システム。
[項目5]
前記飛行ラインは、全体が一直線状である、項目1~4の何れかに記載の飛行制御システム。
[項目6]
前記飛行ラインは、屈曲部又は湾曲部を有する、項目1~4の何れかに記載の飛行制御システム。
【0011】
<本発明による実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は、一例を表すにすぎず、その用途、目的又は規模等に応じて、他の既知の要素や代替手段を採用できる。
【0012】
図1に示されるように、本発明によるシステム1は、操縦者が操作する操縦装置10と、操縦装置10から送信される操縦信号に基づいて飛行可能な無人航空機20と、を備える。本システム1では、操縦者による無人航空機20の手動操縦飛行が可能であり、操縦装置10の操作入力部13を一軸方向に操作することにより、予め設定された仮想的な空中の飛行ラインFLに沿って、無人航空機20を飛行させることができる。なお、本実施形態にあっては、上記構成に加えて、操縦装置10及び無人航空機20にネットワークを介して接続される管理端末や中継機等を有していてもよい。
【0013】
<操縦装置の構成>
操縦装置10は、
図2に示される機能ブロックを有している。操縦装置10は、制御部11、記憶部12、操作入力部13、送受信部14、表示部15、飛行ライン設定部16を備える。なお、
図2の機能ブロックは参考構成であり、操縦装置10は、上記以外のその他の構成部(例えばボタン等の操作部)を備えてもよい。
【0014】
制御部11は、例えばプロセッサを有する。制御部11は、操縦装置10の各部の動作を統括して制御するための信号処理(生成、出力、送受信)、他の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。制御部11は、操縦者の操作入力部13の操作に基づいて、適宜記憶部12に記憶された情報を参照しつつ、無人航空機20の飛行を制御するための操縦信号を生成することができる。制御部11は、この操縦信号を、(送受信部14を介して)無人航空機20に送信して無人航空機20を遠隔制御することができる。これにより、操縦装置10は、無人航空機20の移動を遠隔で制御できる。操縦装置10は、飛行方向、飛行速度、飛行加速度等を変更する信号を無人航空機20に送信することができる。
【0015】
記憶部12は、例えば操縦装置10の動作を規定するプログラムや設定値のデータが格納されたROMと、制御部11の処理時に使用される各種の情報やデータを一時的に保存するRAMを有してよい。記憶部12は、ROM及びRAM以外のメモリが含まれてよい。記憶部12は、操縦装置10の内部に設けられてよいし、操縦装置10から取り外し可能に設けられてよい。記憶部12は、飛行ラインFLに関する情報を記憶することができる。
【0016】
送受信部14は、操作入力に基づく操縦信号等を無人航空機20に送信する送信部と、無人航空機等からの信号を受信する受信部が一体となった構成であるが、送信部と受信部とを別々に設けてもよい。送受信部14は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部25は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部25は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)等の近距離通信インタフェースを備えていてもよい。
【0017】
表示部15は、操縦装置10が取得した各種の情報(例えば無人航空機20から受信した画像、飛行データ等)を表示する。表示部15は、操縦装置10の内部または外部に設けられてよいし、操縦装置10から取り外し可能に設けられてよい。表示部15は、各種の入力を受け付け可能なタッチパネルで構成されていてもよい。
【0018】
操作入力部13は、操縦者による操作入力を受け付ける。操作入力部13は、少なくとも一軸方向の操作入力が可能となるように構成されている。一軸方向の操作入力とは、中立な状態から、一方側への操作入力と、その逆の他方側への操作入力とが含まれる。操作入力部13における一軸方向の一方側、他方側はそれぞれ、無人航空機20の飛行ラインFLに沿う一方側、他方側の飛行方向に対応する。
【0019】
操作入力部13は、左右に傾倒操作可能な操縦スティック、左右一対の押しボタン(十字キーの左右ボタン等を含む)、または、回転式のダイヤル等で構成されるが、特に限定されるものではない。例えば、操作入力部13が操縦スティックの場合、直立姿勢の中立状態から、左右方向の一方側及び他方側にそれぞれ傾倒させることで、一軸方向の一方側及び他方側への操作入力を行うことができる。これにより、操縦装置10の送信部(送受信部14)から無人航空機20に向けて、一軸方向の一方側及び他方側への操作入力に基づく操縦信号が送信される。なお、操作入力部13の一軸方向は、例えば左右方向、前後方向、又は上下方向(押し引き方向)等とすることができるが、特に限定されるものではない。
【0020】
操作入力部13は、操作可能な方向が上記の一軸方向のみに制限されていることが好ましいが、これに限定されるものではない。本例の操作入力部13は、左右方向のみに操作入力が制限されているため、操作が複雑ではなく、容易に無人航空機20を手動操縦することができる。
【0021】
また、操縦装置10は、飛行を開始する要求を発信するための飛行開始ボタン等を備えていてもよい。飛行開始ボタンが押されると、例えば、操縦装置10の制御部11は、記憶部12を参照し、所定位置までの飛行を指示する操縦信号を出力し、当該操縦信号を無人航空機20に送信する。地上に設置され静止している無人航空機20は、当該操縦信号を受信すると、所定の空中位置(所定の緯度、経度、及び高度)まで自律的に飛行し、当該位置でホバリングする。
【0022】
操縦装置10の全体または一部は、例えばタッチパネル式の画面を有するスマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置で構成されていてもよい。その場合、タッチパネルの画面に表示された操縦スティック等の画像アイコンが操作入力部を構成する。画面に表示された操作入力部をタップ(画面に指を接触させること)したり、スライドしたり(画面に指を接触させた状態のまま、指を何れかの方向に滑らせて移動させること)することで、各種の操作入力を行うことができる。
【0023】
操縦者が操作入力部13を一軸方向の一方側または他方側に傾ける等の操縦操作を実行すると、操縦装置10の制御部11が当該操作入力に応じた操縦信号を出力し、無人航空機20に送信する。操縦信号には、方向(一方側または他方側)に関する情報、操作度合に関する情報(操縦スティックを傾ける角度、タッチパネル上の操作アイコンの移動距離等)が含まれる。操縦信号における方向の情報に基づいて、無人航空機20の飛行方向が制御される。操縦信号における操作度合に関する情報に基づいて、無人航空機20の飛行速度が制御される。つまり、操縦装置10は、飛行ラインFLに沿う無人航空機20の飛行方向(水平移動方向)を指示する信号を出力し、無人航空機20に送信することができる。また、本例の操縦装置10は、無人航空機20の飛行速度を指示する信号を送信することができる。なお、操縦装置10は、無人航空機20の飛行高度に関する指示、離陸指示、着陸指示、ホバリング(空中での停止)指示、カメラ26の向き(撮影方向)の変更指示、機体の向き(ヘディング方向)の変更指示等を示す操縦信号を出力し、無人航空機20に送信できるようにしてもよい。カメラ26のジンバル27を制御することで撮影方向を変更するようにしてもよいし、機体の向きを変更することで撮影方向を変更するようにしてもよい。
【0024】
送受信部14は、無人航空機20からの信号を受信することができる。これにより、例えば、無人航空機20のカメラ26で撮影した画像やマイクで取得した音声等を、操縦装置10の表示部15(モニタ等)に表示させたり、スピーカから出力させたりすることができる。
【0025】
操縦装置10は、飛行ラインFLの設定を行うための飛行ライン設定部16を備えている。飛行ライン設定部16は、例えば、飛行ラインFLの両端に対応する2つの地点の位置情報と、2地点を繋ぐ線の形状情報とに基づいて、任意の形状の飛行ラインFLを記憶部に記憶された地図データ上に設定することができる。飛行ライン設定部16は、2地点の位置情報のみに基づいて、それら2点を繋ぐ直線(線分)を飛行ラインFLとして設定することができる。また、直線以外の線の形状情報は、使用者等がタッチパネル等の入力部を介して描画すること等により入力することができる。具体的に、飛行ライン設定部16は、タッチパネル等に表示された2次元平面地図上に操縦者等が入力(描画、選択)した1本の線の形状及び位置の情報に基づいて、飛行ラインFLを設定することができる。
【0026】
なお、飛行ライン設定部16は、無人航空機20に設けてもよいし、ネットワークを介して操縦装置10や無人航空機に接続される管理端末等に設けてもよい。管理端末は、例えば、1台または複数台の無人航空機と同時に情報の授受を行い、1台または複数台の無人航空機の飛行を管理することができる。管理端末は、例えば、データベースと接続される。管理端末は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。管理端末は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、送受信部、入出力部等を備え、これらはバスを通じて相互に電気的に接続される。
【0027】
<無人航空機の構成>
本実施の形態における無人航空機20(Unmanned aerial vehicle:UAV)は、飛行体、ドローン(Drone)、マルチコプター(Multi Copter)、RPAS(remote piloted aircraft systems)、又はUAS(Unmanned Aircraft Systems)等と称呼されることがある。
【0028】
無人航空機20は、
図3に示される機能ブロックを有している。なお、
図3の機能ブロックは参考構成であり、適宜変更が可能である。無人航空機20は、フライトコントローラ21(飛行制御部)、メモリ22(記憶部)、センサ類23、バッテリー24、送受信部25、カメラ26(撮像部)、ジンバル27、ESC29、モータ30、及びプロペラ31(回転翼)を備える。なお、ジンバル27を設けずに、無人航空機20の本体部にカメラ26を固定するようにしてもよい。ジンバル27を設けることで、無人航空機20の本体部に対するカメラ26の向きを変更可能となる。
【0029】
フライトコントローラ21は、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU)、MPU又はDSP)などの1つ以上のプロセッサを有することができる。処理ユニットは、メモリ22にアクセス可能である。メモリ22は、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリ22は、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類23から取得したデータは、メモリ22に直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ26等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0030】
処理ユニットは、無人航空機20の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する無人航空機20の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために無人航空機20の推進機構(ESC29、モータ30、及びプロペラ31等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類23の状態のうちの1つ以上を制御することができる。フライトコントローラ21は、操縦装置10からの操縦信号に基づいて、無人航空機20の飛行を制御することができる。またフライトコントローラ21は、記憶部に記憶された2次元又は3次元の地図データを含む地図情報、無人航空機20の現在の位置情報、姿勢情報、速度情報、及び加速度情報等に基づいて、無人航空機20の飛行を制御することができる。フライトコントローラ21は、上記各種情報及び受信する操縦信号に基づき、飛行ラインFLに沿って、無人航空機20が一方側または他方側に飛行するように推進機構を制御することができる。また、フライトコントローラ21は、無人航空機20のヘディング方向に関わらず、無人航空機20が飛行ラインFLに沿って移動するように(無人航空機20が飛行ラインFLから逸脱しないように)推進機構を制御することができる。その場合、フライトコントローラ21は、無人航空機20の現在のヘディング方向の情報を取得して、当該ヘディング方向の情報に基づいて、それぞれのプロペラ31の回転数等を制御する。また、フライトコントローラ21は、無人航空機20が飛行ラインFL上を移動する際、ヘディング方向が常に一定で変化しないように飛行制御することも可能である。
【0031】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部25と通信可能である。送受信部25は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部25は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部25は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)等の近距離通信インタフェースを備えていてもよい。送受信部25は、カメラ26やセンサ類23で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、操縦装置10または管理端末等からのユーザコマンド(操縦信号)などのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0032】
本実施の形態によるセンサ類23は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0033】
無人航空機20は、無人航空機20の現在位置を推定するための位置推定部を有する。位置推定部は、GPS等のGNSS(global navigation satellite system)から得られる緯度及び経度の座標情報、気圧センサ等から得られる高度情報等に基づいて、メモリ22等の記憶部に記憶された2次元平面地図または3次元空間地図等の地図データ上における無人航空機20の現在位置を推定する。フライトコントローラ21は、無人航空機20の現在位置に基づいて、無人航空機20が飛行ライン上に留まるように推進機構を制御することができる。
【0034】
無人航空機20は、無人航空機20の現在の姿勢を推定する姿勢推定部を有する。姿勢推定部は、慣性センサから得られる情報等に基づいて、無人航空機20の現在の姿勢(傾き)を推定する。
【0035】
また、無人航空機20は、無人航空機20の現在の移動速度を推定する速度推定部を有する。速度推定部は、例えば慣性センサから得られるデータに基づいて、速度を推定する。
【0036】
また、無人航空機20は、無人航空機20の現在の向き(ヘディング方向)を推定する方向推定部を有する。方向推定部は、例えば無人航空機20の機体(本体部分)に設けられたコンパス等のセンサから得られる方角データ等に基づいて、ヘディング方向を推定する。
【0037】
また、無人航空機20は、撮像部の撮影方向を推定する撮影方向推定部を有する。撮影方向推定部は、例えばカメラ26、ジンバル27、または機体に設けられたコンパス等のセンサから得られる方角データ等に基づいて、撮影方向を推定する。
【0038】
本実施の形態において、無人航空機20から得られるデータとしては、位置情報(高度情報を含む)、姿勢情報、速度情報、バッテリー残量、信号強度、カメラの画像情報、カメラの方向(撮影方向)、ズームイン/ズームアウト等、無人航空機20が備えているセンサから取得できるあらゆるデータがあり得る。無人航空機20の飛行情報、得られるデータは、操縦装置10に送信されてもよいし、必要に応じて中継機等を介して管理端末に送信されてもよい。また、操縦装置10は、操縦者の操作入力に基づき、カメラによる撮影の開始/停止、カメラの方向(撮影方向)の変更、ズームイン/ズームアウト等を指示する信号を生成し、無人航空機20に送信することができる。
【0039】
<飛行ラインの設定>
以下に、飛行ラインFLの設定方法の一例について説明する。なお、飛行ラインFLの設定方法は本例に限定されず、操縦装置10、無人航空機20、またはネットワークを介して接続された管理端末等を用いて任意の方法で設定することができる。また、設定された飛行ラインFLは、操縦装置10、無人航空機20、またはネットワークを介して接続された管理端末等の記憶部(12、22等)に記憶される。飛行ラインFLは、空中の所定高度に仮想的に設定された線状の飛行可能範囲を意味するものであり、全体が連続した1本の線で構成される。飛行ラインFLは、無人航空機20の飛行開始前に予め設定される。飛行ラインFLは、一端から他端まで連続する1本の線状の構成であるか(
図1、
図4、
図5参照)、1本の線で構成される環状の構成とすることができる(
図6参照)。
【0040】
図1は、サッカー等のスポーツ分野のコートにおける一方のサイドラインSLの上空に設定された飛行ラインFLを示している。なお、
図1に示すサッカーコートは平面視で長方形であり、長辺を構成する一対のサイドラインSL(タッチライン)と、短辺を構成する一対のゴールラインGLとを有する。
【0041】
飛行ライン設定部16は、例えば、サイドラインSLの両端に位置する2地点P1、P2の位置情報を取得し、この2地点P1、P2の位置情報に基づいて飛行ラインFLを設定することができる。例えば、サイドラインSLの一方の端部(ゴールラインGLとの交点)の地点P1に無人航空機20を配置し、無人航空機20のGPSから得られる位置情報を操縦装置10に送信することで、飛行ライン設定部16は地点P1の緯度及び経度の情報を取得する。また、同様に、サイドラインSLの他方の端部の地点P2の緯度及び経度の情報を取得する。飛行ライン設定部16は、当該2地点を結ぶ直線(線分)を、2次元平面地図上の飛行ラインFLとして設定することができる。また、飛行ラインFLの高度(地上高度または海抜高度)は、予め設定され、記憶部12等に記憶された所定の高度(例えば10m等)とすることができる。あるいは、操縦者等が飛行ラインFLを設定する際に、任意の高さに設定できるようにしてもよい。飛行ラインFLの高度は、全体が一定の高さに設定されていてもよいし、部分的に異なる高さに設定されていてもよい。
【0042】
操縦者等が飛行ラインFLの高さを設定する場合、例えば、操縦装置10に設けたタッチパネル等の入力部から高度の数値(m)を入力するようにしてもよいし、または予め設定された高度の選択肢(例えば5m、10m、20m等)の中から選択入力するようにしてもよい。
【0043】
飛行ラインFLは、本例のように全体が1直線であるものに限られず、円弧状等の湾曲部や、所定角度(鋭角、直角、または鈍角)で屈曲する屈曲部を有していてもよいし、全体もしくは一部が任意の曲線状であってもよい。飛行ライン設定部16は、湾曲部や屈曲部の起点(一端)、終点(他端)、曲率中心、曲率半径、屈曲角度、角部(屈曲点)の位置情報等の入力情報に基づいて、飛行ラインFLを設定することができる。
【0044】
また、飛行ライン設定部16は、飛行ラインFLの一端に対応する1地点の情報(緯度、経度の座標情報)と、その1地点から飛行ラインFLの他端に対応する地点までの距離(m)及び方向(方角)の情報とに基づいて、飛行ラインFLを設定することも可能である。
【0045】
ここで、
図4、
図5、
図6は、飛行ラインFLを例示する平面図である。
図4に示す飛行ラインFLは、一端から他端まで、略円弧状の曲線が互い違いに連なる波線状の構成である。
図4の場合、操縦者が操作入力部13を一軸方向の一方側又は他方側に操作すると、無人航空機20は、波線状の飛行ラインFLに沿って一方側(一端に向かう方向)又は他方側(他端に向かう方向)に、飛行する。なお、操縦者が操作入力部13を操作していない時、無人航空機20は飛行ラインFL上でホバリングする。
【0046】
図5に示す飛行ラインFLは、一端と他端との間に4か所の屈曲部を有する。飛行ライン設定部16は、例えば、一端、他端、及び4か所の屈曲部に対応する6地点の位置情報と、それらをそれぞれ繋ぐ線(本例では5本の直線)の形状の情報とに基づいて、飛行ラインFLを設定することができる。
図5の場合においても、
図4の場合と同様に、無人航空機20は屈曲する飛行ラインFLに沿って一方側または他方側に向けて移動する。
【0047】
図6に示す飛行ラインFLは、4つの屈曲部を有する四角形状である。飛行ライン設定部16は、例えば、4か所の屈曲部に対応する4地点の位置情報と、それらを繋ぐ線(本例では4本の直線)の形状の情報とに基づいて、飛行ラインFLを設定することができる。
図6の場合においても、無人航空機20は環状の飛行ラインFLに沿って一方側または他方側に周回するように移動する。なお、環状の飛行ラインFLは、平面視で長方形状の構成に限定されず、正方形や他の多角形状でもよいし、円形、楕円形等であってもよい。なお、飛行ラインFLが円形の場合は、例えば円の中心の位置情報と、半径(直径)の情報とに基づいて飛行ラインFLを設定することができ、楕円形の場合は、例えば楕円の中心の位置情報と、長径及び短径の情報とに基づいて飛行ラインFLを設定することができる。
【0048】
飛行ラインFLは、操縦装置10の記憶部12、及び/又は、無人航空機20に送信されて無人航空機20のメモリ22に記憶される。無人航空機20のフライトコントローラ21は、2次元地図または3次元地図等の地図データ上の飛行ラインFLの情報と、無人航空機の現在の位置、姿勢、速度等の情報に基づいて、飛行ラインFL上に無人航空機20が留まるように、各プロペラ31等の推進機構を制御することができる。フライトコントローラ21は、さらに、無人航空機20のヘディング方向や加速度の情報に基づいて、推進機構を制御するようにしてもよい。
【0049】
<制御例1>
以下、
図1を参照して、本実施の形態による飛行制御の一例を説明する。本例においては、無人航空機20のカメラ26を用いてサッカー等の試合を撮影する場合について説明する。なお、上記の方法等により、飛行開始前に飛行ラインFLが予め設定される。
【0050】
操縦者は、例えば、無人航空機20を地面に置いた状態で操縦装置10の自動浮上ボタン等を選択入力する。これにより、操縦装置10から無人航空機20に飛行ラインFLまでの自動浮上を指示する信号が送信される。当該信号を受信した無人航空機20は、フライトコントローラ21が推進機構を制御することで自動的に予め設定された高度まで浮上し、飛行ラインFL上でホバリングする。なお、無人航空機20を地面に置く際には、飛行ラインFLに対応する地上の線(本例ではサイドラインSL)上に配置することが好ましい。このようにすることで、無人航空機20を真上に浮上させるだけで、無人航空機20を飛行ラインFL上に移動させることができる。例えば、無人航空機20を
図1の地点P1と地点P2の中間地点P3に配置した状態で自動浮上ボタンを選択入力した場合、その真上の飛行ラインFLの中央位置でホバリングする。
【0051】
操縦者は、操作入力部13の一軸方向(左右方向等)の操作入力を行い、飛行ラインFLに沿う無人航空機20の移動方向、移動速度等を制御することができる。なお、操縦者は、無人航空機20を目視しながら操縦してもよいし、操縦装置10のモニタ画面等に表示される画像(無人航空機20のカメラ26が撮影するリアルタイムの映像)を見ながら操縦操作を行ってもよい。
【0052】
操縦者が操縦装置10の操作入力部13を操作して、一軸方向の一方側の操作入力がなされると、無人航空機20は、飛行ラインFLに沿う一方側に移動(例えば水平飛行)し、一軸方向の他方側の操作入力がなされると、無人航空機20は、飛行ラインFLに沿う他方側に移動する。操作入力部13の一軸方向の一方側及び他方側はそれぞれ、飛行ラインFLに沿う一方側及び他方側に対応している。例えば、操作入力部13の一軸方向が左右方向である場合、操作入力部13を左側に傾倒操作すると、無人航空機20は、飛行ラインFLに沿って一方側に移動し、操作入力部13を右側に傾倒操作すると、無人航空機20は、飛行ラインFLに沿って他方側に移動する。
【0053】
操縦者が操縦装置10の操作入力部13を一方側に操作入力している間、無人航空機20は、操縦装置10からの操縦信号に基づいて、飛行ラインFLに沿って一端に向けて移動し続ける。しかし、無人航空機20が飛行ラインFLの一端に到達すると、操縦者が操縦装置10の操作入力部13を一方側に操作入力しても、無人航空機20は、それ以上は移動を継続せず、一端の位置でホバリングする。すなわち、無人航空機20は飛行ラインFL上に留まるように飛行制御される。操縦者が操縦装置10の操作入力部13を他方側に操作入力する場合も同様であり、飛行ラインFLの他端に到達するまでは飛行ラインFLに沿って他端に向けて移動し、他端に到達すると、それ以上は移動せず、ホバリングする。このように、操縦装置10による簡易な手動操縦を実現しつつも、予め設定した飛行ラインFL上に自動的に留まるように無人航空機20を飛行制御することができる。
【0054】
このように、操縦者は操作入力部13の一軸方向の操作のみで、飛行ラインFL上での無人航空機20の位置を容易に調整することができる。その結果、無人航空機20の操縦経験がない操縦者でも容易に、無人航空機20のカメラ26を利用して、サッカーの試合等の撮影を行うことができる。例えば、無人航空機20で撮影をする場合、撮影対象の人物や物体の位置に応じて、飛行ラインFL上での無人航空機20の位置を調整することで、撮影対象を適切に撮影することが可能となる。また、無人航空機20のフライトコントローラ21によって、自動的に無人航空機20が飛行ラインFL上に留まるように飛行制御されるため、操縦者の操作ミス等により意図しない方向に無人航空機20が飛行してしまう虞がなく、格段に安全性を高めることができる。従って、本システム1によれば、高度な操縦技術を必要とせず、飛行体の安全な手動操縦が可能となる。
【0055】
無人航空機20は、撮像部の撮影方向を推定する撮影方向推定部と、撮影方向を制御するための撮影方向制御部と、を有していてもよい。撮影方向推定部は、例えば、無人航空機20のヘディング方向、ジンバル27の向きに関する情報、及びカメラ26で撮影された映像等の少なくとも何れかの情報に基づいて、撮影方向を推定する。撮影方向制御部は、カメラ26を支持するジンバル27の制御、及び/または、無人航空機20のヘディング方向の制御等により、撮影方向を制御することができる。このような構成により、撮像部により撮影対象を撮影する精度を高めることができる。
【0056】
本発明にかかる無人航空機20の飛行制御方法は、飛行ライン設定部16により、地図データ上に、仮想的な飛行ラインを設定する飛行ライン設定ステップと、操縦者による操作入力部13の一軸方向の操作に応じて操縦装置10から送信される操縦信号に基づいて、飛行制御部21が、飛行ラインに沿って飛行するように無人航空機を制御する飛行制御ステップと、を含む。
【0057】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0058】
例えば、操縦装置10の機能の一部を無人航空機20が担うこととしてもよいし、無人航空機20の機能の一部を操縦装置10が担うこととしてもよい。
【0059】
また、操縦装置10は、飛行ラインFLに沿う移動のみを行うように無人航空機20を飛行制御する特定制御モードと、飛行ラインFLに沿う移動に限定されない通常モードとを切り替えるための切り替えスイッチを有していてもよい。その場合、操縦装置10の制御部11、及び/又は、無人航空機20のフライトコントローラ21には、特定制御モードと通常モードとを切り替えるためのモード切替部が設けられる。モード切替部によって、特定制御モードに切り替えられると、上述のように、無人航空機20の移動範囲が、飛行ラインFL上のみに制限される。例えば、特定制御モードの間は、操縦装置10の操作入力が一軸方向のみに制限されたり、操縦装置10から無人航空機20に送信される操縦信号が、一軸方向の操縦信号のみに制限されたりしてもよい。また、通常モードの間は上記の制限が解除され、操縦装置10の操作入力部13による複数軸方向の操作入力が可能となり、操縦装置10から無人航空機20に、複数軸方向の操縦信号を送信可能となる。このような構成により、例えば、操縦経験の豊富な操縦者が使用する際には通常モードとして、飛行ラインFLに関係なく自由に無人航空機20を手動操縦することができる。また、操縦経験の少ない操縦者が使用する際には特定制御モードに切り替えることで、容易に、且つ、安全に、飛行ラインFLに沿う移動のみの手動操縦を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
10 操縦装置
20 無人航空機
21 飛行制御部