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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】測位システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20230602BHJP
   G01S 19/45 20100101ALI20230602BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G01S19/45
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021521842
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 TR2020050661
(87)【国際公開番号】W WO2021021058
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】2019/11424
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】521161439
【氏名又は名称】ユルディズ テクニク ユニベルシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ユルマズ,フェルカン
(72)【発明者】
【氏名】ハティップ,イエリズ
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155635(JP,A)
【文献】特開2014-173916(JP,A)
【文献】特開2000-275051(JP,A)
【文献】特開2016-014528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/45
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられ、該車両の全地球位置を推定する測位システム(10)であって、
車両経路と、前記車両経路上の位置が定められた複数の地点の標高値と、を有する標高ベース経路地図(181)を保持する記憶ユニット(18)と、
大気圧測定値(22)を得る大気圧センサ(16)と、
前記大気圧センサ(16)による大気圧測定値(22)を取得し且つ前記記憶ユニット(18)にアクセスするように、具現化されたプロセッサユニット(14)と、
車両の瞬間速度を測定し、当該瞬間速度測定値を前記プロセッサユニット(14)に転送する速度計(17)と、を備え、
前記プロセッサユニット(14)は、
第1間隔(30)に沿って大気圧測定値(22)及び瞬間速度測定値をサンプリングするステップと、
サンプリングされた一連の大気圧測定値(22)同士によるサブ間隔(31)を、サンプリングされた瞬間速度測定値に応じて決定するステップと、
一連の大気圧測定値(22)同士による前記サブ間隔(31)と、前記第1間隔(30)に沿ってサンプリングされた大気圧測定値(22)と、を含む大気圧ベース経路パターン(20)を形成するステップと、
前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターン(182)のうち、前記大気圧ベース経路パターン(20)に一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターン(182)が有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップと、を実行する、
測位システム(10)。
【請求項2】
前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターン(182)のうち、前記大気圧ベース経路パターン(20)に一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターン(182)が有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、
前記第1地点は、前記大気圧ベース経路パターン(20)中に存在する、最後に取得された大気圧測定値(22)サンプルと一致する地点である、
請求項1に記載の測位システム(10)。
【請求項3】
前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターン(182)のうち、前記大気圧ベース経路パターン(20)に一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターン(182)が有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、
前記プロセッサユニット(14)は、目標地点と出発地点との間の標高ベース経路パターン(182)について探索を行うと同時に、前記一致を探し出す、
請求項1に記載の測位システム(10)。
【請求項4】
前記プロセッサユニット(14)は、選択した第1地点を画面(19)内の地図上に表示する、請求項1に記載の測位システム(10)。
【請求項5】
車両へ適用され、該車両の全地球位置を推定する測位方法であって、
前記車両に配置されて大気圧測定を行う大気圧センサ(16)から、大気圧測定値(22)を取得するステップと、
車両の瞬間速度を測定する速度計(17)から速度測定値を取得するステップと、
第1間隔(30)に沿って瞬間速度測定値及び大気圧測定値(22)をサンプリングするステップと、
サンプリングされた一連の大気圧測定値(22)同士によるサブ間隔(31)を、サンプリングされた瞬間速度測定値に応じて決定するステップと、
前記第1間隔(30)に沿ってサンプリングされた大気圧測定値(22)同士によるサブ間隔(31)と、一連の当該大気圧測定値(22)と、を含む大気圧ベース経路パターン(20)を形成するステップと、
車両経路と、前記車両経路上の位置が定められた複数の地点の標高値と、を有する標高ベース経路地図(181)を保持する記憶ユニット(18)にアクセスするステップと、
前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターン(182)のうち、前記大気圧ベース経路パターン(20)に一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターン(182)が有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップと、
がプロセッサユニット(14)によって実行される、測位方法。
【請求項6】
前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターン(182)のうち、前記大気圧ベース経路パターン(20)に一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターン(182)が有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、
前記第1地点は、前記大気圧ベース経路パターン(20)中に存在する、最後に取得された大気圧測定値(22)サンプルと一致する地点である、
請求項1に記載の測位システム(10)。
【請求項7】
前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターン(182)のうち、前記大気圧ベース経路パターン(20)に一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターン(182)が有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、
前記プロセッサユニット(14)は、出発地点と目標地点との間の標高ベース経路パターン(182)について探索を行う同時に、前記一致を探し出す、
請求項1に記載の測位システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられ該車両の全地球位置を推定する位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の物理的位置は、個人的用途、特定な用途、または軍事的用途において非常に重要である。現在の測位システムは、ほとんど全地球衛星測位システム(GNSS/GPS)に基づいている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、GPSは干渉を受けることがあり、または、区域によっては非アクティブ状態になることがある。このような場合、車両位置を正確に特定するための解決策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述した問題点を解消し、新たな利点を本技術分野にもたらす測位システム及び測位方法に関する。
【0005】
本発明の目的は、GPSが動作しない場合、使用されていない場合、または使用不能な場合の車両の位置を推定する測位システム及び測位方法を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、干渉による影響を受けない測位システム及び測定方法を提供することにある。
【0007】
上述した目的、及び、以下の詳細な説明から推論される目的を実現するために、本発明は、車両に備えられ、該車両の全地球位置を推定する測位システムである。したがって、本開示の改良された測位システムは、車両経路と、前記車両経路上の位置が定められた複数の地点の標高値と、を有する標高ベース経路地図を保持する記憶ユニットと、大気圧測定値を得る大気圧センサと、前記大気圧センサによる大気圧測定値を取得し且つ前記記憶ユニットにアクセスするように具現化されたプロセッサユニットと、車両の瞬間速度を測定し、当該瞬間速度測定値を前記プロセッサユニットに転送する速度計と、を備える。前記プロセッサユニット(14)は、第1間隔に沿って大気圧測定値及び瞬間速度測定値をサンプリングするステップと、サンプリングされた一連の大気圧測定値同士によるサブ間隔を、サンプリングされた瞬間速度測定値に応じて決定するステップと、一連の大気圧測定値同士による前記サブ間隔と、前記第1間隔に沿ってサンプリングされた大気圧測定値と、を含む大気圧ベース経路パターンを形成するステップと、前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターンのうち、前記大気圧ベース経路パターンに一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターンが有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップと、を実行する。これにより、GPSのような測位システムが作動しない場合に、瞬間的な大気圧測定値を用いて車両の位置を推定する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターンのうち、前記大気圧ベース経路パターンに一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターンが有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、前記第1地点は、前記大気圧ベース経路パターン中に存在する最後に取得された大気圧測定値サンプルと一致する地点である。
【0009】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターンのうち、前記大気圧ベース経路パターンに一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターンが有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、前記プロセッサユニットは、目標地点と出発地点との間の標高ベース経路パターンについて探索を行うと同時に、前記一致を探し出す。これにより、高速な位置推定が実現される。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記プロセッサユニットは、選択した第1地点を画面内の地図上に表示する。
【0011】
さらに、本発明は、前記システムを備える車両の全地球位置を推定する測位方法である。したがって、したがって、改良されたこの測位方法において、前記車両に配置されて大気圧測定を行う大気圧センサから大気圧測定値を取得するステップと、車両の瞬間速度を測定する速度計から速度測定値を取得するステップと、第1間隔に沿って瞬間速度測定値及び大気圧測定値をサンプリングするステップと、サンプリングされた一連の大気圧測定値同士によるサブ間隔を、サンプリングされた瞬間速度測定値に応じて決定するステップと、前記第1間隔に沿ってサンプリングされた大気圧測定値同士によるサブ間隔と、一連の当該大気圧測定値と、を含む大気圧ベース経路パターンを形成するステップと、車両経路と、前記車両経路上の位置が定められた複数の地点の標高値と、を有する標高ベース経路地図を保持する記憶ユニットにアクセスするステップと、前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターンのうち、前記大気圧ベース経路パターンに一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターンが有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップと、がプロセッサユニットによって実行される。
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターンのうち、前記大気圧ベース経路パターンに一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターンが有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、前記第1地点は、前記大気圧ベース経路パターン中に存在する最後に取得された大気圧測定値サンプルと一致する地点である。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記標高ベース経路地図中の前記地点と当該地点の標高値とによって形成される標高ベース経路パターンのうち、前記大気圧ベース経路パターンに一致する少なくとも1つを探し出すとともに、探し出した当該標高ベース経路パターンが有する少なくとも1つの第1地点を選択するステップにおいて、前記プロセッサユニットは、出発地点と目標地点との間の標高ベース経路パターンを探索すると同時に、前記一致を探し出す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】測位システムの模式図である。
図2】標高ベース経路地図及び標高ベース経路パターンの代表的なイメージである。
図3】大気圧ベース経路パターンの代表的なイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示をより理解されやすくするために、実施例を参照して本開示の事項を説明する。但し、これらの実施例は限定効果を形成するものではない。
【0016】
本発明は、GPSシステムが車両にアクセスできない場合に、オフライン方式で現在位置を推定するための測位システム(10)に関する。
【0017】
そこで、測位システム(10)は、考えられる車両経路と当該車両経路上の複数の地点の標高値とを含む標高ベース経路地図(181)を保持する記憶ユニット(18)を備える。なお、車両経路上の当該複数の地点同士の間隔は既知である。記憶ユニット(18)は、データの永久的保持を少なくとも実現する永久メモリと、好ましくはデータの一時的保持を含む一時メモリと、を含む。測位システム(10)は、記憶ユニット(18)にアクセスするように構成されたプロセッサユニット(14)も備える。前記プロセッサ(14)はマイクロプロセッサであってもよい。
【0018】
車両経路の標高情報は、地表の標高情報を含むデジタル地形データベースから取得することができる。例えば、このようなデータは「シャトル・レーダ・トポグラフィ・ミッション」(Shuttle Radar Topography Mission)という探索法により探し出される。
【0019】
図2を参照すると、代表的な形態として標高ベース経路地図(181)が図示されている。標高ベース経路地図(181)には、位置が既知である地点に加え、これらの地点の標高も含まれている。図2は代表的な図示であるが、標高ベース経路地図(181)は、地点の座標及び標高を含む配列や行列の形で記述されたものであってもよい。これらの地点とこれらの地点の標高値とによって形成される、標高ベース経路地図(181)の一部は、標高ベース経路パターン(182)と定義する。
【0020】
測位システム(10)は、環境内の瞬間的な開放大気圧を測定し、当該大気圧測定値をプロセッサユニット(14)に転送する大気圧センサ(16)を備える。さらに、測位システム(10)は、車両の速度を測定する速度計(17)を備える。速度計(17)は、車両の速度及び移動方向を記述した信号をプロセッサユニット(14)に送信してもよい。例示的な実施形態において、プロセッサユニット(14)は、車両の速度に関する情報のみを速度計(17)から取得し、車両上の他の機器と協働する計測装置を用いて車両の移動方向を決定してもよい。
【0021】
測位システムは次のように機能する。すなわち、プロセッサユニット(14)が、第1間隔(30)に沿って、大気圧測定値(22)及びこれらの大気圧測定値(22)が取得された時点の速度測定値をサンプリングする。なお、速度測定値はベクトルタイプである。プロセッサユニット(14)が、大気圧測定値(22)が取得された地点における速度測定値に応じて、一連の大気圧測定値(22)同士によるサブ間隔を決定する。そしてプロセッサユニット(14)が、第1間隔(30)に沿っている大気圧測定値(22)と、当該大気圧測定値(22)同士によるサブ間隔(31)を含む大気圧ベース経路パターン(20)と、を形成する。なお、代表的な形態の大気圧ベース経路パターン(20)が図3に示されている。
【0022】
そして、プロセッサユニット(14)は記憶ユニット(18)中の標高ベース経路地図(181)にアクセスする。続いて、プロセッサユニット(14)は、形成された大気圧ベース経路パターン(20)に類似するか、該大気圧ベース経路パターン(20)に一致する標高ベース経路パターン(182)を、標高ベース経路地図(181)内から探索する。一致または類似する標高ベース経路パターン(182)を見つけると、見つけた該標高ベース経路パターン(182)中から、最後に取得された大気圧測定値(22)と対応または一致する地点を選択する。こうして、車両の位置が推定される。
【0023】
形成された大気圧ベース経路パターン(20)に適合または一致する標高ベース経路パターン(182)を探索する間において、まず、測定された大気圧から標高を推定する。そして、推定された標高に最も近いか、推定された標高を包含する標高ベース経路パターン(182)を探索する。
【0024】
考えられる一実施形態において、プロセッサユニット(14)は、形成された大気圧ベース経路パターン(20)に適合または一致する標高ベース経路パターン(182)を探し出す間に、目標地点と予め選択された出発地点との間の経路上に存在する標高ベース経路パターン(182)を探索する。
【0025】
標高が増加すると大気圧が減少し、標高が減少すると大気圧が増加する。この理論によれば、大気圧測定値(22)は経路の標高に応じて変動する。形成された大気圧ベース経路パターン(20)に適合または一致する標高ベース経路パターン(182)を探し出す過程において、この理論が考慮されて処理が行なわれる。
【0026】
なお、車両経路の標高情報は、大気圧測定値(22)を作成する車両が、考えられる全ての経路について取得した大気圧測定値(22)に加え、「シャトル・レーダ・トポグラフィ・ミッション」(Shuttle Radar Topography Mission)という探索法により得られた標高データによって、規定されてもよい。標高ベース経路地図(181)は、これらの測定値、及び当該測定値が取得された地点の位置により、形成されてもよい。
【0027】
本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されており、以上に詳細に説明された例示的な開示によって限定されるものではない。これは、当業者が上記の開示に照らし、同様な実施形態を本発明の主な原理から逸脱することなく見出すことが明らかに可能なためである。
【符号の説明】
【0028】
10 測位システム
14 プロセッサユニット
16 大気圧センサ
17 速度計
18 記憶ユニット
181 標高ベース経路地図
182 標高ベース経路パターン
19 画面
20 大気圧ベース経路パターン
22 大気圧測定値
30 第1間隔
31 サブ間隔
図1
図2
図3