(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】スリングベルト
(51)【国際特許分類】
F41C 33/00 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
F41C33/00
(21)【出願番号】P 2023007865
(22)【出願日】2023-01-23
【審査請求日】2023-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516239219
【氏名又は名称】下山 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】下山 康司
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0292834(US,A1)
【文献】米国特許第08430285(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2021/0215452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さを変化可能で銃身側とグリップ側とに架け渡してライフル型のエアガンもしくは実銃を使用者の肩に掛けるスリングベル
トであって、
スリングベルト用アジャスタと可変ベルトとを両側に有し、
前記スリングベルト用アジャスタは、
左右の基体と、前記左右の基体に架け渡された複数の横バーと、を有し、
前記複数の横バーは、
前記基体の端部に設けられ
前記可変ベルトの一端が固定するベルト固定バーと、前記基体の略中央部の
下側に設置された第1のベルト支持バーと、下面が内
側に向いた斜面の第2のベルト支持バーと、前記基体を引く時の持ち手となるハンドルが固定可能なハンドル固定バーと、を有し、
前記ベルト固定バーに固定した可変ベルトはベルト通し具にて折り返されて、前記ハンドル固定バーの下面と前記第1のベルト支持バーの上面との間と、前記第1のベルト支持バーの上面と前記第2のベルト支持バーの下面との間を通り、前記スリングベルトに張力が存在する状態では、前記ハンドル固定バーに巻かれたハンドルもしくは可変ベルトと折り返された可変ベルトとの間の摩擦力が前記基体のロックに寄与
し、
銃身側の前記スリングベルト用アジャスタのハンドル固定バーには前記ハンドルが設置されるとともに、グリップ側の前記スリングベルト用アジャスタのハンドル固定バーには前記可変ベルトの一端が固定することを特徴としたスリングベルト。
【請求項2】
スリングベルト用アジャスタが、
ハンドル固定バーの内側の基体上部側にハンドルの倒伏を規制するハンドルストッパをさらに有することを特徴とする請求項1記載の
スリングベルト。
【請求項3】
スリングベルト用アジャスタが、
基体の端部にスイベルを備えたことを特徴とする請求項1記載の
スリングベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフル型のエアガンもしくは実銃を使用者の肩に掛けるためのスリングベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サバイバルゲーム等で使用するライフル型のエアガンやライフル型の実銃(以後、両者を単に小銃と記載する。)には、通常、スリングベルトが設置され使用者が肩に掛けるなどして携行することが一般的である。そして、このスリングベルトの種類としては大きく分けて1点式、2点式、3点式の3種類が存在する。このうち、1点式のスリングベルトは1つのフックで小銃を使用者の胸元辺りに吊り下げるため、肩や胸への圧迫感が強く疲れ易いことから長時間の携行には不向きとなっている。また、2点式、3点式のスリングベルトは小銃の銃身側とグリップ側の2点にベルトを架け渡して肩に掛けるため負荷が少なく疲れ難い。ただし、3点式のスリングベルトは使用者の肩に掛ける部分がリング状となっており構造が複雑で扱い難く、また余剰なベルトが多いため弛んだベルトが他の装備品と干渉するなどして邪魔になるという問題点がある。
【0003】
この点、2点式のスリングベルトは身体への密着性は3点式に比べ若干劣るものの、小銃を使用者の肩に掛けて携行でき、またアジャスタを設けて長さを変化させることで3点式よりも簡単な操作で携行状態から小銃の展開(射撃体勢への移行)が可能となる。また、3点式と比較して余剰なベルトが少ないため、他の装備品への干渉も生じず、総合的な観点から一番優れたスリングベルトと言える。このような2点式のスリングベルトに関して、例えば下記[特許文献1]に記載の考案が開示されている。
【0004】
ここで、一般的な2点式のスリングベルトで多く用いられている従来のアジャスタ10の模式断面図を
図9に示す。この従来のアジャスタ10は、左右の基体と、この左右の基体の間に架け渡された複数の横バーと、を有し、この複数の横バーは、基体の一端部に設けられたベルト固定バー32と、基体の略中央部の下面側に設置された第1のベルト支持バー34と、この第1のベルト支持バー34の前後に設けられ、下面36a、12aが外側から内側に向けて上に傾いた斜面の第2のベルト支持バー36と第3のベルト支持バー12と、で構成されている。そして、2点式のスリングベルトを構成する可変ベルト42は、一端がベルト固定バー32に巻かれて固定された後、平カン等のベルト通し具20にて折り返されて、第3のベルト支持バー12の下面12a側から第1のベルト支持バー34の上を通って第2のベルト支持バー36の下面36a側に抜ける。これにより可変ベルト42にアジャスタ10が設置される。そして、スリングベルトの両側に張力が掛かっている状態では、可変ベルト42とこれら横バーとの摩擦力でアジャスタ10の移動はロックされる。また、スリングベルトの長さを変化させる際には、アジャスタ10を摘まんで持ち上げて可変ベルト42を弛ませ、その状態を維持したままアジャスタ10をスライド移動させて可変ベルト42の折り返し部分の長さを増減する。これにより、スリングベルトの全体の長さが変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、携行状態から射撃体勢への移行は短時間で行うことが好ましく、より操作性に優れたスリングベルト用アジャスタの実現が望まれる。
また、従来のスリングベルト用アジャスタの移動範囲は、銃身側の接続位置近傍から使用者の胸辺りまでと限界がある。このため、スリングベルトの伸縮長さにも制限があり、例えば射撃体勢において小銃を逆側の肩に構え直す際などには長さが足りず、スムーズな切り替えができないという問題点がある。
また、従来のスリングベルトでは、スイベル部材がアジャスタとは別にベルトに設置され、このスイベル部材がアジャスタの移動範囲を狭め、スリングベルトの伸縮長さを制限するという問題点があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも操作性の高いスリングベルト用アジャスタを用いた伸縮距離の長いスリングベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)長さを変化可能で銃身側とグリップ側とに架け渡してライフル型のエアガンもしくは実銃を使用者の肩に掛けるスリングベルト80であって、
スリングベルト用アジャスタ50と可変ベルト42とを両側に有し、
前記スリングベルト用アジャスタ50は、
左右の基体13と、前記左右の基体13に架け渡された複数の横バーと、を有し、
前記複数の横バーは、前記基体13の端部に設けられ前記可変ベルト42の一端が固定するベルト固定バー32と、前記基体13の略中央部の下側に設置された第1のベルト支持バー34と、下面36aが内側に向いた斜面の第2のベルト支持バー36と、前記基体13を引く時の持ち手となるハンドル52が固定可能なハンドル固定バー38と、を有し、
前記ベルト固定バー32に固定した可変ベルト42はベルト通し具20にて折り返されて、前記ハンドル固定バー38の下面と前記第1のベルト支持バー34の上面との間と、前記第1のベルト支持バー34の上面と前記第2のベルト支持バー36の下面36aとの間を通り、前記スリングベルト80に張力が存在する状態では、前記ハンドル固定バー38に巻かれたハンドル52もしくは可変ベルト42と折り返された可変ベルト42との間の摩擦力が前記基体13のロックに寄与し、銃身側のスリングベルト用アジャスタ50のハンドル固定バー38には前記ハンドル52が設置されるとともに、グリップ側のスリングベルト用アジャスタ50のハンドル固定バー38には前記可変ベルト42の一端が固定することを特徴としたスリングベルト80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)スリングベルト用アジャスタ50が、
ハンドル固定バー38の内側の基体13上部側にハンドル52の倒伏を規制するハンドルストッパ40をさらに有することを特徴とする上記(1)記載のスリングベルト80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)スリングベルト用アジャスタ50が、
基体13の端部にスイベル44を備えたことを特徴とする上記(1)記載のスリングベルト80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明を構成するスリングベルト用アジャスタはハンドルを引くことで簡単にロック状態が解除され、スリングベルトの伸縮を従来よりも楽に行うことができる。これにより、スリングベルトの操作性が向上し、携行状態から射撃体勢への移行を迅速かつスムーズに行うことができる。
また、本発明を構成するスリングベルト用アジャスタはハンドルストッパを備えることで、ハンドルが常に立ち上がった状態となり、使用者がハンドルを容易に掴むことができる。
また、本発明に係るスリングベルトは可変ベルトとスリングベルト用アジャスタとを2つ有しているため、従来よりも伸縮距離が長く、携行時の負荷の軽減と、使用時における小銃の取り回しの自由度の高さとを両立することができる。
さらに、スイベルを備えた本発明を構成するスリングベルト用アジャスタでは、スリングベルトにスイベル部材を別途設ける必要が無く、その分、伸縮距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るスリングベルトを示す図である。
【
図2】本発明
のスリングベルト用アジャスタを示す図である。
【
図3】本発明
のスリングベルト用アジャスタのスイベル形状の例を示す図である。
【
図4】本発明
のスリングベルト用アジャスタの他の例を示す模式断面図である。
【
図5】本発明
のスリングベルト用アジャスタの使用状態を説明する図である。
【
図6】本発明
のスリングベルト用アジャスタの使用状態を説明する図である。
【
図7】本発明
のスリングベルト用アジャスタのロック解除状態を示す模式断面図である。
【
図8】本発明に係るスリングベルトを1点式のスリングベルトとした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係
るスリングベルト80の実施の形態について図面に基づいて説明する。先ず、本発明に係るスリングベルト80は、
図1に示すように、サバイバルゲーム等で使用するライフル型のエアガンやライフル型の実銃等の小銃1の銃身側とグリップ側とに架け渡して、小銃1を使用者の肩等に掛けるためのものであり、メインベルト22と可変ベルト42とで主に構成されている。そして、本発明に係るスリングベルト80は、メインベルト22の両側に可変ベルト42と本発明
のスリングベルト用アジャスタ50をそれぞれ有している。尚、以後は本発明
のスリングベルト用アジャスタ50を単にアジャスタ50と表記する。
【0012】
そして、銃身側のアジャスタ50にはハンドル52が設置されるとともに、可変ベルト42の一端が固定され、固定された可変ベルト42は平カン等のベルト通し具20にて折り返されて再度アジャスタ50内の所定の経路を通った後、フックやカラビナ等の接続部材24を介して小銃1の銃身側と接続する。また、グリップ側のアジャスタ50にはハンドル52は設置されず、可変ベルト42の一端が銃身側と同様に固定されベルト通し具20にて折り返されて再度アジャスタ50内の所定の経路を通った後、同様に接続部材24を介して小銃1のグリップ側と接続する。また、両側の可変ベルト42の間にはメインベルト22がベルト通し具20を介して接続する。そして、アジャスタ50を可変ベルト42に対してスライド移動させることで、可変ベルト42とベルト通し具20との間の折り返し部分の長さが増減し、これによりスリングベルト80全体としての長さが変化する。尚、可変ベルト42、メインベルト22には、ポリエステル繊維やナイロン繊維等の合成樹脂繊維で編まれたベルトスリングを用いることが好ましい。
【0013】
次に、本発明
のアジャスタ50に関して説明を行う。ここで、
図2(a)は本発明
のアジャスタ50の上面図であり、
図2(b)はアジャスタ50の略断面図であり、
図2(c)は上前右方向から見た斜視図であり、
図2(d)は下前右方向から見た斜視図である。尚、従来のアジャスタ10と同等の構成は同符号にて表す。また、ここでの上とはハンドル52が設置される側を指し、前とはベルト固定バー32が位置する方向を指すものとする。尚、
図4~
図7、
図9において可変ベルト42、メインベルト22、ハンドル52は破線で示す。
【0014】
先ず、
図2に示す本発明
のアジャスタ50は、左右の基体13と、これら左右の基体13の間に架け渡された複数の横バーとを有している。そして、この複数の横バーは、基体13の端部に設けられ可変ベルト42の一端が固定するベルト固定バー32と、基体13の略中央部の下面側に設置された第1のベルト支持バー34と、下面36aが内
側に向いた斜面の第2のベルト支持バー36と、使用者が基体13を引く時の持ち手となるハンドル52を固定可能なハンドル固定バー38と、を少なくとも有している。また、本発明
のアジャスタ50は、ハンドル固定バー38の近傍の基体13の上部側にハンドル52の倒伏を規制するハンドルストッパ40を有することが好ましい。
【0015】
またさらに、基体13の端部にはフックやカラビナ等を引っ掛けることが可能なスイベル44を設けることが好ましい。また、このスイベル44は、使用者が指を引っ掛けてアジャスタ50を引っ張るための引き手としても使用することができる。尚、スイベルの形状には特に限定は無く、
図2に示す略コの字形状の他、
図3(a)に示す半円形状、略半楕円形状や、
図3(b)に示す略台形形状やその他の多角形形状としても良い。また、スイベル44の設置位置は
図2、
図3に示すように、後端(ベルト固定バー32とは逆側の端部)に設けても良いし、
図4(a)、(b)に示すように前端(ベルト固定バー32側の端部)に設けても良い。尚、スイベル44を前端に設けた際に、スイベル44と可変ベルト42とが干渉する場合には、スイベル44を上方に向けて斜めに設けるか、上方に屈曲して設けるようにしても良い。さらに、スイベル44を前端に設ける場合には、
図4(b)に示すように、スイベル44の横バーがベルト固定バー32を兼ねるようにしても良い。尚、本発明
のアジャスタ50はスイベル44を有することで、従来のスリングベルトで用いていたスイベル部材が不要となる。このため、スイベル部材によるアジャスタの移動範囲の制限がなくなり、その分、アジャスタ50の移動範囲を拡大することができる。これにより、本発明のアジャスタ50を用いたスリングベルト80の伸縮距離をより一層拡大することができる。
【0016】
また、
図2~
図4(a)、(b)では第1のベルト支持バー34の前側(ベルト固定バー32の側)にハンドル固定バー38を設け、後ろ側(第1のベルト支持バー34を挟んだ逆側)に第2のベルト支持バー36を設けた例を示しているが、これは逆でも良く、
図4(c)に示すように第2のベルト支持バー36を前側(ベルト固定バー32の側)に設け、ハンドル固定バー38を後ろ側に設けても良い。
【0017】
次に、本発明
のアジャスタ50の可変ベルト42への取付方法をハンドル固定バー38が前方に位置しスイベル44を後端に備えたアジャスタ50を例に説明を行う。ここで、
図5(a)はハンドル52を備えたアジャスタ50と可変ベルト42との取付状態を示す略断面図であり、
図5(b)、(c)は取付状態を示す斜視図である。
【0018】
先ず、ハンドル52を備えたアジャスタ50は、ハンドル固定バー38にハンドル52が巻き付いた状態で固定されている。このとき、ハンドル52はハンドルストッパ40と他の横バー(ベルト固定バー32等)とで制限された範囲で、ハンドル固定バー38を軸に回動が可能である。また、ハンドル52はハンドルストッパ40によって倒伏が制限され、ある程度、立ち上がった状態に維持される。尚、ハンドル52はメインベルト22及び可変ベルト42と同じ合成樹脂繊維ベルトを用いることが好ましい。また、ハンドル52の長さは概ね10cm~20cm程度である。
【0019】
そして、スリングベルト80を構成する可変ベルト42の一端がアジャスタ50のベルト固定バー32に巻き付いた状態で固定される。尚、可変ベルト42はベルト固定バー32を軸に回動が可能である。次に、可変ベルト42はベルト通し具20を通って下方に折り返され、アジャスタ50の下面側からハンドル固定バー38の下面と第1のベルト支持バー34の上面との間を通っった後、第2のベルト支持バー36の下面36aとの間を通ってアジャスタ50の下面に抜ける。
【0020】
また、
図4(c)に示すハンドル52が後方の構成では、ベルト通し具20を通って下方に折り返された可変ベルト42はアジャスタ50の下面側から第2のベルト支持バー36の下面36aと第1のベルト支持バー34の上面との間を通った後、ハンドル固定バー38の下面との間を通ってアジャスタ50の下面に抜ける。
【0021】
また、ハンドル52を設置しない例えばグリップ側のアジャスタ50では、
図6(a)、(b)に示すように、可変ベルト42の一端はベルト固定バー32とハンドル固定バー38とに巻き付けて固定される。そして、可変ベルト42はベルト通し具20を通って下方に折り返され、アジャスタ50の下面側からハンドル固定バー38の下面と第1のベルト支持バー34の上面との間を通った後、第2のベルト支持バー36の下面36aとの間を通ってアジャスタ50の下面に抜ける。このようにして、可変ベルト42がアジャスタ50内の所定の経路に沿って通されることで、可変ベルト42にアジャスタ50が設置される。
【0022】
そして、スリングベルト80(可変ベルト42)の両側に、ある程度の張力が掛かった状態では、可変ベルト42はハンドル固定バー38の下部、第1のベルト支持バー34の上面部、第2のベルト支持バー36の下面36aとの摩擦力により固定される。尚、本願の各図ではハンドル固定バー38の下部が基体13の下面と略同等の位置となるように図示されているが、ハンドル固定バー38の上下方向の位置はハンドル52を構成する部材の厚みによって設定され、ハンドル固定バー38に巻き付いたハンドル52もしくは可変ベルト42の端部がアジャスタ50の下面から適度に突出するように設計することが好ましい。そして、ハンドル固定バー38に巻き付いたハンドル52は凹凸の存在する合成樹脂繊維ベルトで構成され、張力が掛かった状態では折り返した可変ベルト42がハンドル固定バー38に巻き付いたハンドル52の突出部分を押し付ける形となる。このため、この部分には他の接触部位よりも強い摩擦力が生じ、アジャスタ50のロックにはこの部分の摩擦力が大きく寄与することとなる。また、ハンドル52を備えていないアジャスタ50の場合では、折り返した可変ベルト42がハンドル固定バー38に巻き付いた可変ベルト42の突出部分を押し付ける形となる。このため、この部分では凹凸の存在する合成樹脂繊維の可変ベルト42同士が押圧され他の接触部位よりも強い摩擦力が生じる。そして、アジャスタ50のロックにはこの部分の摩擦力が大きく寄与することとなる。
【0023】
尚、ハンドル固定バー38は従来のアジャスタ10の第3のベルト支持バー12よりも小さいため、この分、アジャスタ50の長さ寸法の自由度が向上する。これにより、アジャスタ50の基体13をスイベル44を設置可能な適切且つコンパクトな大きさにすることができる。
【0024】
次に、本発明に係るスリングベルト80の使用方法を説明する。先ず、両端の接続部材24を介して本発明に係るスリングベルト80を小銃1の銃身側とグリップ側とに接続する。次に、メインベルト22の長さを使用者の身体に応じて調節する。このときのメインベルト22の長さとは、スリングベルト80を使用者の身体に斜め掛けして双方の可変ベルト42の長さを最長とした展開状態において、例えば使用者の双方の肩で射撃体勢をとれるような十分な長さを有し、且つ、双方の可変ベルト42の長さが短い携行状態において、斜め掛けした小銃1が使用者の身体に十分密着するような長さである。
【0025】
次に、携行状態から展開状態に移行する際のスリングベルト80及びアジャスタ50の動作を説明する。先ず、小銃1を銃口を上にして斜め掛けに背負った携行状態ではスリングベルト80のハンドル52は使用者の肩に位置する。そして、この携行状態から展開状態に移行する場合、使用者は肩の位置にあるハンドル52を掴みこれをスリングベルト80に沿って斜め下に位置するベルト通し具20の方向に引き下げる。このとき、ハンドル52はハンドルストッパ40等の存在により常に立ち上がった状態にあるため、使用者はハンドル52を容易に探り当てて掴むことができる。そして、ハンドル52が引かれることでアジャスタ50は
図7(a)に示すように、ハンドル固定バー38側が引き上げられ、可変ベルト42とハンドル52との接触部分が離間もしくは緩和される。これにより、可変ベルト42とハンドル52間の摩擦力が大幅に減少してロック状態が解除されアジャスタ50のスライド移動が可能となる。そして、同時にハンドル52が引かれることでアジャスタ50がベルト通し具20の方向に移動して可変ベルト42とベルト通し具20との間の折り返し部分の長さが減少する。これにより、銃身側の可変ベルト42の長さが長くなる。
【0026】
次に、使用者は腰側に位置するグリップ側のアジャスタ50の基体13を摘まんで引き上げ、スリングベルト80に沿って斜め上のベルト通し具20の方向に引き上げる。これにより、アジャスタ50は、
図7(b)に示すように、ハンドル固定バー38の近傍部分が摘まみ上げられ、可変ベルト42同士の接触部分が離間もしくは緩和される。これにより、可変ベルト42同士の接触部分の摩擦力が大幅に減少してロック状態が解除されアジャスタ50のスライド移動が可能となる。そして、同時にアジャスタ50がベルト通し具20の方向引かれて移動することで可変ベルト42とベルト通し具20との間の折り返し部分が減少し、グリップ側の可変ベルト42の長さが長くなる。この2つの動作により、スリングベルト80は銃身側とグリップ側の双方の可変ベルト42が延びた展開状態となる。
【0027】
次に、小銃1を銃口を下にして胸側に斜め掛けした携行状態では、スリングベルト80のハンドル52は使用者の腰に位置する。そして、この携行状態から展開状態に移行する場合、使用者は小銃1のグリップを押さえながら肩側のアジャスタ50の基体13を摘まんで背側のベルト通し具20の方向に押し上げる。これにより、アジャスタ50は、
図7(b)に示すように、ハンドル固定バー38の近傍部分が摘まみ上げられ、可変ベルト42同士の接触部分が離間もしくは緩和される。これにより、可変ベルト42同士の接触部分の摩擦力が大幅に減少してロック状態が解除されアジャスタ50のスライド移動が可能となる。そして、使用者はアジャスタ50をベルト通し具20の方向に押し上げながら、緩んだベルトの分だけ小銃1のグリップを前方に押し出す。これにより、アジャスタ50がベルト通し具20の方向に相対的に移動して可変ベルト42とベルト通し具20との間の折り返し部分が減少し、グリップ側の可変ベルト42の長さが長くなる。
【0028】
次に、使用者は小銃1を保持しながら腰側のハンドル52を掴み背側に引き上げる。このときもハンドル52はハンドルストッパ40等の存在により常に立ち上がった状態にあるから、使用者はハンドル52を容易に探り当てて掴むことができる。これにより、
図7(a)に示すように、ハンドル固定バー38側は引き上げられ、可変ベルト42とハンドル52との接触部分は離間もしくは緩和される。これにより、可変ベルト42とハンドル52間の摩擦力が大幅に減少してロック状態が解除されアジャスタ50のスライド移動が可能となる。そして、使用者はハンドル52を背側に引き上げながら、緩んだベルトの分だけ小銃1の銃口を前方に押し出す。これにより、アジャスタ50が相対的にベルト通し具20の方向に移動して、可変ベルト42とベルト通し具20との間の折り返し部分が減少し銃身側の可変ベルト42の長さが長くなる。この2つの動作により、スリングベルト80は銃身側とグリップ側の双方の可変ベルト42が延びた展開状態となる。
【0029】
そしてこの展開状態において、使用者は銃口を目標物に向ける射撃体勢をとることができる。尚、本発明に係るスリングベルト80は上記のように可変ベルト42とアジャスタ50とを2つ有しているためスリングベルト80の伸縮距離が長く、射撃体勢において例えば小銃1を逆側の肩に構え直すことも問題無く行うことができる。
【0030】
また、展開状態から携行状態に移行する場合、使用者は先ずハンドル52を掴みスリングベルト80に沿って銃身側に押し出す。これにより、
図7(a)に示すように、ハンドル固定バー38側が引き上げられ、可変ベルト42とハンドル52との接触部分は離間もしくは緩和される。これにより、可変ベルト42とハンドル52間の摩擦力が大幅に減少してロック状態が解除されアジャスタ50のスライド移動が可能となる。そして、ハンドル52を銃身側に押し出すことでアジャスタ50が銃身側の接続部材24の方向に移動して、可変ベルト42とベルト通し具20との間の折り返し部分の長さが増加し、銃身側の可変ベルト42の長さが短くなる。
【0031】
次に、使用者は小銃1を胸側もしくは背中側に移動し、グリップ側のアジャスタ50の基体13を摘まんで小銃1のグリップ側の方向に押し込む。これにより、アジャスタ50は、
図7(b)に示すように、ハンドル固定バー38の近傍部分が摘まみ上げられ、可変ベルト42同士の接触部分が離間もしくは緩和される。これにより、可変ベルト42同士の接触部分の摩擦力が大幅に減少してロック状態が解除されアジャスタ50のスライド移動が可能となる。そして、このアジャスタ50を小銃1のグリップの方向に押し込むことで、アジャスタ50がグリップ側の接続部材24の方向に移動し、可変ベルト42とベルト通し具20との間の折り返し部分が増加してグリップ側の可変ベルト42の長さが短くなる。この2つの動作により、スリングベルト80は銃身側とグリップ側との可変ベルト42が縮み、小銃1が使用者の身体に密着した携行状態となる。
【0032】
以上のように、本発明を構成するスリングベルト用アジャスタ50はハンドル52を引くことで簡単にロック状態が解除され、スリングベルト80の伸縮を従来よりも楽に行うことができる。これにより、スリングベルト80の操作性が向上し、携行状態から射撃体勢への移行を迅速かつスムーズに行うことができる。
【0033】
また、本発明に係るスリングベルト80は可変ベルト42とアジャスタ50とを2つ有しているため、従来よりも伸縮距離を長くすることができる。また、アジャスタ50がスイベル44を備えた構成では、スイベル部材が不要な分、スリングベルト80の伸縮距離を更に長くすることができる。これにより、本発明に係るスリングベルト80は携行状態では小銃1を使用者の身体に密着させながら、展開状態では小銃1を逆側の肩に構え直すことが可能な十分な長さを有することができる。そして、本発明に係るスリングベルト80は、携行時の負荷の軽減と、使用時における小銃1の取り回しの自由度の高さとを両立することができる。
【0034】
さらに、本発明に係るスリングベルト80は2点式のスリングベルトとして使用するのみならず、例えば
図8に示すように、一方の接続部材24を小銃1から外して、他方のアジャスタ50のスイベル44に取り付けることで1点式のスリングベルトとしても使用することができる。
【0035】
尚、本例で示したスリングベルト用アジャスタ50及びスリングベルト80は一例であり、各部の形状、デザイン、部材構成等は上記の例に限定されるわけではなく、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
13 基体
20 ベルト通し具
32 ベルト固定バー
34 第1のベルト支持バー
36 第2のベルト支持バー
36a (第2のベルト支持バー)の下面
38 ハンドル固定バー
40 ハンドルストッパ
42 可変ベルト
44 スイベル
50 スリングベルト用アジャスタ
52 ハンドル
80 スリングベルト
【要約】
【課題】携行状態から射撃体勢への移行は短時間で行うことが好ましく、より操作性に優れたスリングベルト用アジャスタの実現が望まれる。また、従来のスリングベルトは伸縮長さに制限があり、例えば小銃を逆側の肩に構え直す際などには長さが足りず、スムーズな切り替えができない。
【解決手段】このスリングベルト用アジャスタ50はハンドル52を引くことで簡単にロック状態が解除され、スリングベルト80の伸縮を従来よりも楽に行うことができる。また、このスリングベルト80は可変ベルト42とアジャスタ50とを2つ有しているため、従来よりも伸縮距離が長く、携行時の負荷の軽減と、使用時における小銃1の取り回しの自由度の高さとを両立することができる。
【選択図】
図2