(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】火災検知装置及び火災検知方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20230602BHJP
G06T 7/254 20170101ALI20230602BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20230602BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G06T7/60 300A
G06T7/254 A
G08B17/10 F
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2019018392
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-126287(JP,A)
【文献】特開2014-197290(JP,A)
【文献】特開2003-087773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G06T 7/254
G08B 17/10
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域を上部から見下ろした俯瞰画像を時系列的に出力する画像出力部と、
前記画像出力部から出力された前記俯瞰画像と前回の俯瞰画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像生成部から出力された前記差分画像から輪郭線画像を生成する輪郭線画像生成部と、
前記輪郭線画像生成部から出力された前記輪郭線画像の輪郭線で囲まれた
輪郭線領域の面積と重心位置を検出する輪郭線画像処理部と、
前記輪郭線処理部から出力された前記輪郭線領域の
前記面積
が時間の経過に伴って増加し、且つ、前記重心位置
が所定の範囲内に収まるか、又は、所定方向に移動している場合に火災判定信号を出力する時系列火災判定部と、
を備え、
前記時系列火災判定部は、複数時点における前記輪郭線画像からなる複数の輪郭線画像において火源位置と前記重心位置との距離が前記輪郭線領域の前記面積と正の相関を有するものとし、前記複数の輪郭線画像における前記輪郭線領域の前記面積及び前記重心位置に基づき、誤差が最小となるように前記火源位置を推測することを特徴とする火災検知システム。
【請求項2】
請求項1記載の火災検知システムに於いて、
前記画像出力部は、撮像手段から順次出力された前記俯瞰画像を所定画像数ずつ間引きして出力する画像間引き部を備えたことを特徴とする火災監視システム。
【請求項3】
監視領域を上部から見下ろした俯瞰画像を時系列的に出力し、
前記俯瞰画像と前回の俯瞰画像との差分画像を生成し、
前記差分画像から輪郭線画像を生成し、
前記輪郭線画像の輪郭線で囲まれた
輪郭線領域の面積と重心位置を検出し、
前記輪郭線領域の
前記面積
が時間の経過に伴って増加し、且つ、前記
重心位置
が所定の範囲内に収まるか、又は、所定方向に移動している場合に火災判定信号を出力
し、
複数時点における前記輪郭線画像からなる複数の輪郭線画像において火源位置と前記重心位置との距離が前記輪郭線領域の前記面積と正の相関を有するものとし、前記複数の輪郭線画像における前記輪郭線領域の前記面積及び前記重心位置に基づき、誤差が最小となるように前記火源位置を推測することを特徴とする火災検知方法。
【請求項4】
請求項3記載の火災検知方法に於いて、
撮像手段から順次出力された前記俯瞰画像を所定画像数ずつ間引きして出力することを特徴とする火災監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラにより撮像した煙の画像から火災を検知する火災検知装置及び火災検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内には、車両火災による炎を監視するため、トンネル側壁に沿って例えば25m間隔で火災検知器を設置している。火災検出器は、透光性の受光ガラス窓を介してトンネル内で発生する火災炎からの放射線、たとえば赤外線を監視しており、左右の両方向に検出エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検出器との検出エリアが相互補完的に重なるように連続的に配置している(特許文献1)。
【0003】
また、従来のトンネルにはTV監視設備が設置されており、トンネル内を見通す位置に配置された監視カメラにより撮像された映像を監視センタのモニタ装置に表示し、
万一、トンネル内で火災が発生した場合に火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するために利用している。
【0004】
ところで、監視カメラの性能向上とコストの低下に伴い、トンネル内での火災監視に監視カメラを用いることが考えられる。例えば、従来の火災検知装置に代えトンネル内の側壁に沿って例えば50m間隔で監視カメラを設置し、監視カメラで撮像した監視領域の画像に対し画像処理を施すことにより、火災を検知することが考えられる。
【0005】
このように監視カメラの画像から火災を検知する従来装置としては、画像から火災に伴う煙により起きる現象として、透過率又はコントラストの低下、輝度値の特定値への収束、輝度分布範囲が狭まって輝度の分散の低下、煙による輝度の平均値の変化、エッジの総和量の低下、低周波帯域の強度増加を導出し、これらを総合的に判断して煙の検出を可能としている(特許文献2)。
【0006】
また、監視カメラで撮像した画像にエッジ強調処理を施して稜線を抽出した稜線画像を複数の画像領域に分割し、分割した画像領域毎に、稜線の直線成分を抽出して時系列での変化を検出し、直線成分の時系列変化が背景による特徴的な所定の時系列変化となる画像領域を背景稜線領域として抽出し、背景稜線領域につき直線成分の時系列変化が消失した場合、当該背景稜線領域を煙候補領域と判断し、煙候補領域の分布に基づいて火災を判断するようにした火災検知装置も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-015383号公報
【文献】特開2008-046916号公報
【文献】特開2017-168117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の監視カメラを用いた火災検知装置にあっては、監視領域の側方に監視カメラを設置し、床面側の火源から上方に向かって立ち上がる煙の画像を撮像して火災を検知しており、火源から上昇する煙は、火源の強さ、監視領域の形状、監視領域に配置された物等によって様々な形をとるこことなり、煙による特徴的な変化がどのようなものかを決めることが難しく、画像処理により煙を正確に捉えることが困難な場合がある。
【0009】
また、監視カメラを利用した煙検知では、火災を早期に検知することが重要になるが、トンネル内で発生した事故等により発生する車両火災にあっては、油火災に相当することから火災発生直後から黒煙が吹き上がり、一般物体の画像認識処理と同等に扱うことが難しいという問題が残されている。
【0010】
本発明は、トンネル内に設置された監視カメラによりトンネル上部から見下ろした俯瞰画像を撮像し、俯瞰画像における煙の時間的な変化から事故等に伴う車両火災を迅速且つ確実に検知可能とする火災検知装置及び火災検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(火災検知システム)
本発明は、火災検知システムに於いて、
監視領域を上部から見下ろした俯瞰画像を時系列的に出力する画像出力部と、
俯瞰画像と前回の俯瞰画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、
差分画像生成部から出力された差分画像から輪郭線画像を生成する輪郭線画像生成部と、
輪郭線画像生成部から出力された輪郭線画像の輪郭線で囲まれた領域の面積と重心位置を検出する輪郭線画像処理部と、
輪郭線処理部から出力された輪郭線領域の面積と重心位置の時系列的な変化に基づいて火災を判定した場合に火災判定信号を出力する時系列火災判定部と、
が設けられたことを特徴とする。
【0012】
(煙画像の時系列変化による認識)
時系列火災判定部は、時間の経過に伴って輪郭線領域の面積が増加し、且つ、重心位置が所定の範囲内に収まるか、又は、所定方向に移動している場合に火災判定信号を出力する。
【0013】
(火点の推測)
時系列火災判定部はさらに、複数時点における輪郭線画像を複数の輪郭線画像とし、複数の輪郭線画像における輪郭線領域の面積及び重心位置に基づき火源位置を推測する。
【0014】
(輪郭線領域の面積と火源位置と重心位置の誤差最小化)
複数の輪郭線画像において火源位置と重心位置との距離が輪郭線領域の面積と正の相関を有するものとし、複数時点における輪郭線画像において、誤差が最小となるように火源位置を推測する。
【0015】
(画像の間引き処理)
画像出力部は、撮像手段から順次出力された俯瞰画像を所定画像数ずつ間引きして出力する画像間引き部を備える。
【0016】
(火災検知方法)
本発明の別の形態は火災検知方法であって、
監視領域を上部から見下ろした俯瞰画像を時系列的に出力し、
俯瞰画像と前回の俯瞰画像との差分画像を生成し、
差分画像から輪郭線画像を生成し、
輪郭線画像の輪郭線で囲まれた領域の面積と重心位置を検出し、
輪郭線領域の面積が時間の経過に伴って増加し、且つ、重心位置が所定の範囲内に収まるか、又は、所定方向に移動している場合に火災判定信号を出力し、
複数時点における輪郭線画像からなる複数の輪郭線画像において火源位置と重心位置との距離が輪郭線領域の面積と正の相関を有するものとし、複数の輪郭線画像における輪郭線領域の面積及び重心位置に基づき、誤差が最小となるように火源位置を推測することを特徴とする火災検知方法。
【0017】
(画像の間引き処理)
撮像手段から順次出力された俯瞰画像を所定画像数ずつ間引きして出力する。
【発明の効果】
【0018】
(基本的な効果)
本発明は、火災検知システムに於いて、監視領域を上部から見下ろした俯瞰画像を時系列的に出力する画像出力部と、俯瞰画像と前回の俯瞰画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、差分画像生成部から出力された差分画像から輪郭線画像を生成する輪郭線画像生成部と、輪郭線画像生成部から出力された輪郭線画像の輪郭線で囲まれた領域の面積と重心位置を検出する輪郭線画像処理部と、輪郭線処理部から出力された輪郭線領域の面積と重心位置の時系列的な変化に基づいて火災による煙画像を認識して火災判定信号を出力する時系列火災判定部と、が設けられたため、火災が発生したときに車両事故等に伴い発生した車両火災による煙は上昇しながら広がるが、この煙の動きを俯瞰画像でみると、時間の経過に伴い火源位置を中心に周囲に広がっていく二次元画像の変化としてみることができ、例えば、監視カメラの直下で発生した火災の煙は、真上から見ると、時間の経過に伴い火源を中心に同心円状に広がる二次元的な変化となり、この同心円状に広がる煙の変化を画像処理により認識し、例えば、監視カメラの直下から離れた位置で発生した火災による煙は、火源を起点に楕円状に広がりながら画面の外側に向かって移動する二次元的な変化となり、この楕円状に広がりながら移動する煙の変化を画像処理により認識する。このように監視領域の側方に配置した監視カメラで撮像する火源位置から上昇して行く煙画像の変化とは全く異なった特徴的な煙の時間的な変化となり、このため俯瞰画像の画像処理により煙の特徴的な変化を捉えて迅速且つ確実に火災を判定して出力することができる。
【0019】
また、前回の俯瞰画像との差分をとることで動きのない煙以外の背景的画像を除去し、続いて、差分画像から煙の輪郭線を抽出し、輪郭線で囲まれた領域の面積(画素数)と重心位置を求めて時系列的に記憶し、輪郭線領域の面積と重心位置の時系列的な変化から同心円状又は楕円状に広がる煙の変化を捉えて火災を判定することができる。
【0020】
(煙画像の時系列変化による認識の効果)
また、時系列火災判定部は、時間の経過に伴って輪郭線領域の面積が増加し、且つ、重心位置が所定の範囲内に収まるか、又は、所定方向に移動している場合に、火災による煙画像と認識して火災判定信号を出力するようにしたため、監視カメラの直下で発生した火災により煙が同心円状に広がる場合は、時間の経過に伴って輪郭線領域の面積が増加し、且つ、重心位置が所定の範囲内に収まることで煙画像と確実に認識し、また、監視カメラの直下から離れた位置で発生した火災により煙が楕円状に広がりながら移動する場合は、時間の経過に伴って輪郭線領域の面積が増加し、且つ、所定方向に移動していることで、煙画像と確実に認識することができる。
【0021】
(火点の推測)
また、時系列火災判定部はさらに、複数時点における輪郭線画像を複数の輪郭線画像とし、複数の輪郭線画像における輪郭線領域の面積及び重心位置に基づき火源位置を推測するようにしたため、煙が同心円状に広がる場合は、火源の位置が監視カメラの直下であることを推測し、煙が楕円状に広がりながら移動する場合は、火源の位置が監視カメラの直下から離れた位置であって楕円状の移動元であることを推測できるようになり、例えば火源の位置を含めた警報が可能となり、監視者に画像を出力する際に強調表示などを行うことが可能となる。
【0022】
(輪郭線領域の面積と火源位置と重心位置の誤差最小化)
複数の輪郭線画像において火源位置と重心位置との距離が輪郭線領域の面積と正の相関を有するものとし、複数時点における輪郭線画像において、誤差が最小となるように火源位置を推測するようにしたので、例えば、煙は火源から略円錐状に広がりながら立ち上ることから火源位置と重心位置との距離の二乗と輪郭線領域の面積が比例関係にあるものとし、複数の輪郭線画像の輪郭線領域の面積Sと、輪郭線領域の重心位置から最小二乗法等の公知の近似方法により火源位置を決定することで、複数の輪郭線画像から得られる重心位置と輪郭線領域の面積のみから火源位置を推測することができる。
【0023】
(画像の間引き処理による効果)
また、画像出力部は、撮像手段から順次出力された俯瞰画像を所定画像数ずつ間引きして出力する画像間引き部を備えたため、例えば、撮像手段としての監視カメラは毎秒30フレームの俯瞰画像を出力するが、全て処理することなく所定枚数ずつ間引きした画像を処理することで、画像処理の負担が低減されて高速処理が可能となり、また、車両事故等に伴う車両火災で発生した煙が監視カメラに到達して視界が遮られるまでには、数秒程度の時間がかかることが予想され、この間に撮像された俯瞰画像から同心円状又は楕円状に広がる煙の変化をとらえるためには、ある程度のフレーム間隔で間引きして処理することで、同心円状又は楕円状の時間的変化を確実に捉えることができ、俯瞰画像に基づく煙認識の精度を高めることができる。
【0024】
なお、本発明の火災検知方法による効果は、前述した火災検知システムの場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】トンネルに対する監視カメラの設置を示した説明図
【
図2】火災検知装置の機能構成の実施形態を示したブロック図
【
図3】監視カメラによるトンネル内の監視領域を示した説明図
【
図4】監視カメラにより撮像された俯瞰画像を示した説明図
【
図5】トンネル内で火災が発生した場合の煙モデルを示した説明図
【
図6】監視カメラの直下と離れた位置で発生した火災による煙モデルと俯瞰した煙画像を示した説明図
【
図7】監視カメラの直下と離れた位置で発生した火災による煙モデルの気流による影響と俯瞰した煙画像を示した説明図
【
図8】監視カメラの直下で発生した火災による煙の輪郭線画像の時系列的変化を示した説明図
【
図9】監視カメラの直下から離れた位置で発生した火災による煙の輪郭線画像の時系列的変化を示した説明図
【
図10】火災検知装置により火災検知制御を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
[トンネル設備の概要]
図1はトンネルに対する監視カメラの設置を示した説明図である。
図1に示すように、例えばシールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版により仕切られることで道路14が設けられており、この例にあっては、道路14は1方向2車線としている。
【0027】
道路14の左側のトンネル壁面12の長手方向の50メートルおきには、消火栓装置18と水噴霧設備の自動弁装置17が設置されている。消火栓装置18は内部にノズル付きホースが収納されており、消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出して消火作業を行なう。また消火栓装置18に隣接して水噴霧設備の自動弁装置17が設置され、自動弁装置17からはトンネル壁面12に沿って配水管が立ち上げられ、天井側に配置された水噴霧ヘッド22が連結されている。更に、トンネル天井側には所定間隔で照明装置20が配置されている。
【0028】
本実施形態にあっては、水噴霧ヘッド22の上側となるトンネル天井側の高所位置に撮像手段として機能する監視カメラ24が設置されている。監視カメラ24はトンネル長手方向に、消火栓装置18と同様に、例えば50メートル間隔で設置されており、道路14の路面からの高さは9メートル程度となる。なお、トンネル天井には所定距離間隔で換気ファンが設置されていることから、換気ファンの設置位置を避けるように監視カメラ24が設置される。
【0029】
監視カメラ24は撮像光軸を道路14のセンターラインに向けて垂直となるように下向きに設置されており、監視カメラ24の設置位置からトンネル10内の道路14側を下向きに見た俯瞰画像を撮像している。また、監視カメラ24はCCD撮像素子を備え、例えば毎秒30フレームのフレーム速度でカラーの俯瞰フレーム画像を監視センター等に設置された火災検知装置に出力する。なお、以下の説明では、俯瞰フレーム画像を俯瞰画像又はフレーム画像という場合がある。
【0030】
[火災検知装置]
図2は火災検知システムの機能構成の実施形態を示したブロック図である。
図2に示すように、監視カメラ24と一体又はその近傍に配置された火災検知装置26は、画像出力部28、間引き処理部30、差分画像生成部32、輪郭線画像生成部34、輪郭線画像処理部36、時系列火災判定部38及び制御部40で構成される。このような火災検知装置26の機能は、CPU、メモリ、各種の入出力ポート備えたコンピュータ回路により実現され、CPUによるプログラムの実行により各機能が実現される。
【0031】
火災検知装置26は、監視領域となるトンネル10の天井高所に配置された監視カメラ24により道路14を上から見下ろして撮像された俯瞰画像を入力し、入力した俯瞰画像から車両事故等により発生した車両火災による煙を認識して火災を判定し、監視センターに設置された防災監視盤に火災判定信号を出力して火災警報を出力させる。
【0032】
火災検知装置26による俯瞰画像に基づく火災検知は、時間の経過に伴い同心円状に広がる画像の変化、又は、時間の経過に伴い所定方向に移動しながら楕円状に広がる画像の変化から火災による煙を認識して火災を判定するものであり、このための火災検知処理が画像出力部28、間引き処理部30、差分画像生成部32、輪郭線画像生成部34、輪郭線画像処理部36及び時系列火災判定部38により行われることになる。
【0033】
(画像出力部)
画像出力部28は、監視カメラ24からカラー動画の俯瞰フレーム画像をグレースケール化して間引き処理部30に出力する。ここで、監視カメラ24で撮像されたカラーの俯瞰フレーム画像のサイズは、例えば1280×720ピクセルの解像度であるが、画像出力部28は、入力した俯瞰フレーム画像に対しガウシアンピラミッドで複数スケールの画像を作成し、煙の変化が抽出されるスケールに注目してグレースケール化し、例え、入力フレーム画像を1/4にスケール化して640×360ピクセルの解像度の1/4グレースケール画像を生成して間引き処理部30に出力する。
【0034】
(間引き処理部)
間引き処理部30は、画像出力部28から順次出力されるグレースケール化された俯瞰フレーム画像を所定フレーム枚数ずつ間引きして出力する。
【0035】
火災検知装置26は、車両事故等に伴う車両火災で発生した煙が監視カメラ24に到達して視界が遮られるまでの間に撮像された俯瞰画像の同心円状又は楕円状に広がる煙の変化を捉えて煙を認識する。この場合、火災による煙が監視カメラ24に到達して視界が遮られるまでには、早くて1~2秒、通常でも数秒かかることが予想される。
【0036】
このため間引き処理部30で例えば4フレームずつ間引きすると、1秒当り6フレームの俯瞰フレーム画像が得られ、ある程度のフレーム間隔で間引きした俯瞰フレーム画像を処理することで、同心円状又は楕円状の時間的変化を確実に捉えることができる。
【0037】
(差分画像生成部)
差分画像生成部32は、間引き処理部30で間引きされた俯瞰フレーム画像を入力して記憶すると共に、前回入力した俯瞰フレーム画像との差分画像を生成して輪郭線画像生成部34に出力する。差分画像生成部32による差分画像の生成により、画像中に含まれる動きのない煙以外の背景的な画像が除去され、時間の経過に伴い拡大して行く変化のある煙画像のみを残すことができる。
【0038】
(輪郭線画像生成部)
輪郭線画像生成部34は、差分画像生成部32から出力された差分画像からループ状に繋がった輪郭線画像を生成する。輪郭線画像生成部34の輪郭線画像の生成は、入力した差分画像に対しゾーベルフィルタの適用等により輪郭線抽出処理を施して煙の輪郭線を抽出して2値化する。
【0039】
(輪郭線画像処理部)
輪郭線画像処理部36は、輪郭線画像生成部34から出力された輪郭線画像の輪郭線で囲まれた領域の面積と重心位置を検出する。輪郭線画像処理部36による輪郭線領域の面積は、輪郭線領域に含まれる画素数を検出する。また、輪郭線画像処理部36による輪郭線領域の重心位置は、例えば水平最大画素数ラインと垂直最大画素数ラインが交差する画素の座標位置を検出する。また、Pythonのmoment関数に代表されるような輪郭線を元に重心を求める公知の方法により重心位置を求めるようにしても良い。
【0040】
(時系列火災判定部)
時系列火災判定部38は、輪郭線画像処理部36で検出された輪郭線領域の面積と重心位置の時系列的な変化から同心円状又は楕円状に広がる煙の変化を捉えて火災を判定し、火災判定信号を監視センターの防災監視盤に出力して火災警報を出力させる。
【0041】
時系列火災判定部38の判定処理は、監視カメラ24の直下で発生した火災による煙が同心円状に広がることから、時間の経過に伴って輪郭線領域の面積が増加し、且つ、重心位置が所定の範囲内に収まることで煙画像と認識し、火災判定信号を出力する。
【0042】
また、時系列火災判定部38の判定処理は、監視カメラ24の直下から離れた位置で発生した火災による煙が楕円状に広がりながら移動することから、時間の経過に伴って輪郭線領域の面積が増加し、且つ、所定方向に移動していることで煙画像と認識し、火災判定信号を出力する。
【0043】
また、時系列火災判定部38は、煙画像の認識が予め定めた所定回数連続した場合に火災と判定して火災判定信号を出力し、煙画像の一時的な誤認識により誤って火災判定信号が出力されることを防止する。
【0044】
[監視カメラの監視領域]
図3は監視カメラによるトンネル内の監視領域を示した説明図である。トンネル10の天井側の最も高い位置に配置された監視カメラ24は、撮像中心線24aを道路
14の路面上のP点に向けて垂直方向となるように設定してり、監視カメラ24の画角で決まる監視角度θは例えばθ≒140°に設定し、その内側を撮像領域25としている。
【0045】
ここで、監視カメラ24の路面からの高さを例えば9メートルとすると、PQ1及びPQ2の距離は約25メートルとなり、トンネル内に監視カメラ24を50メートル間隔で設置することで、トンネル内の全範囲に撮像領域25を設定してカバーすることができる。
【0046】
なお、監視カメラ24のトンネル長手方向となる撮像領域25の長さは、監視カメラ24の設置高さにより相違することから、この撮像領域25の長さに対応して監視カメラ24の設置間隔を決めることになる。
【0047】
[監視カメラにより撮像された俯瞰画像]
図4は監視カメラにより撮像された俯瞰画像を示した説明図であり、
図4(A)に通常時の俯瞰画像を示し、
図4(B)に火災発生時の俯瞰画像を示す。
【0048】
図4(A)に示す通常時に監視カメラ24により撮像した俯瞰画像42にあっては、道路14のセンターライン上のP点にトンネル上部に設置した監視カメラの撮像光軸が指向しており、トンネル隔壁12で仕切られた2車線の道路14の路肩は、左右方向にいくほど監視カメラから遠くなって距離が増加することから、画面上では、両端が内側に湾曲した画像として映っている。また、道路14上には通行中の車両44,46が映っている。
【0049】
このような
図4(A)に示す俯瞰画像42が
図2に示した火災検知装置26の画像出力部28及び間引き処理部30を介して
差分画像生成部32に入力された場合、前回の俯瞰画像との差分がとられることで、道路14、トンネル
壁面12、消火栓装置16を含む動きのない背景画像は削除された差分画像が生成される。一方、動きのある車両44,46については、前回の俯瞰画像との差分をとっても除去されず、車両44,46の画像が差分画像に残ることになる。
【0050】
このように車両44,46が残った差分画像は次の輪郭線画像生成部34に入力され、車両44,46の外周を囲む輪郭線を含む輪郭線画像が生成され、輪郭線画像処理部36で車両44,46の輪郭線領域の面積と重心位置が検出される。続いて、時系列火災判定部38で車両44,46の輪郭線領域の面積と重心位置の時系列変化が判定されるが、時間の経過に対して輪郭線面積は増加しないことから、煙画像と判定されることはない。
【0051】
図4(B)の俯瞰画像42は、車両48,50の衝突事故により火災が発生した直後の俯瞰画像であり、車両48,50の衝突事故に伴い火源52から噴き上がった煙54が上昇しながら広がろうとしている状態である。また、車両48,50の事故発生に伴い他の車両56も走行を停止した状態となり、このため火災時の俯瞰画像42の中で動いているのは、火源52から噴き上がる煙54のみということができる。
【0052】
このような火災発生時の俯瞰画像42が
図2の火災検知装置26に入力された場合、画像出力部28及び間引き処理部30を介して
差分画像生成部32に入力されることで、動きのない車両48,50,56を含む背景画像は除去され、動きのある煙54の前回の煙との差分画像(略ドーナツ形の煙画像)が生成され、輪郭線画像処理部36及び時系列火災判定部38により煙画像が認識されることになる。
【0053】
また、避難や消火にあたる人の動きにより輪郭線領域の面積と重心位置の時系列変化が判定されるが、時間の経過に対して輪郭線面積は増加しないこと、また重心位置がその場にとどまるか又は特定の方向に移動し続けるものではないから、煙画像と判定されることはない。
【0054】
[煙モデルと俯瞰画像]
図5はトンネル内で火災が発生した場合の煙モデルを示した説明図、
図6は監視カメラの直下と離れた位置で発生した火災による煙モデルと俯瞰した煙画像を示した説明図、
図7は監視カメラの直下と離れた位置で発生した火災による煙モデルの気流による影響と俯瞰した煙画像を示した説明図である。
【0055】
(煙モデル)
図5に示すように、トンネル内に設置した監視カメラ24の直下に火源52が存在した場合、火源52からの煙は、略円錐状に広がりながら上昇すると仮定することができ、そのため、逆円錐の上面となる煙の円が
煙輪郭線54a~54fに示すように上昇しながら広がり、これを監視カメラ24から見下ろした俯瞰画像の時間的変化として見ると、火源52を中心に同心円状に広がる特徴的な変化として撮像される。
【0056】
図6(A)は、監視カメラ24の直下のP0点、監視カメラ24の直下から離れたP1点,P2点を火源とした煙モデル54-0,54-1,54-2を示しており、高さ方向に4分割することで、横の線が時間的に拡大する煙モデルの直径を示している。
【0057】
図6(B)は、
図6(A)のP0~P2点を火源とする煙モデル54-0~54-2を監視カメラ54により時間的に4段階に分けて撮像した俯瞰画像の合成による煙画像の変化を示している。
【0058】
監視カメラ24の直下となるP0点を火源として立ち上がる煙モデル54-0の場合の合成俯瞰画像は、P0点を中心に同心円状に広がる煙画像の変化となる。
【0059】
また、監視カメラ24の直下となるP0点から左側に離れたP1点を火源として立ち上がる煙モデル54-1の場合の合成俯瞰画像は、煙が垂直に上昇しても俯瞰画面上では外側に移動する動きとなるため、P1点を起点に外側となる左側に移動しながら楕円状に広がる煙画像の変化となる。
【0060】
この点は、監視カメラ24の直下となるP0点から右側に離れたP2点を火源として立ち上がる煙モデル54-2の場合の合成俯瞰画像も同様となり、煙が垂直に上昇しても俯瞰画面上では外側に移動する動きとなるため、P2点を起点に外側となる右側に移動しながら楕円状に広がる煙画像の変化となる。
【0061】
更に、
図6(B)にあっては、監視カメラ24の直下となるP0点から道路を横切る方向に離れたP3,P4の各点を火源とした煙モデル54-3,54-4の合成俯瞰画像における煙画像の変化も示しており、煙モデル54-1,54-2と同様に、P3,P4点を起点に外側に移動しながら楕円状に広がる煙画像の変化となる。
【0062】
(気流を受けた場合の煙モデル)
図7(A)は、トンネル内に設置された換気ファンにより例えば右方向に向かう気流58を受けた場合の監視カメラ24の直下のP0点、監視カメラ24の直下から離れたP1,P2点を火源とした煙モデル54-0,54-1,54-2を示しており、P0~P2点を火源として上昇する煙は、気流58により流され、右側に傾いた逆円錐形となる。
【0063】
図7(B)は、
図7(A)のP0~P2を火源とする煙モデル54-0~54-2を監視カメラ54により時間的に4段階に分けて撮像した俯瞰画像の合成による煙画像の変化を示している。
【0064】
監視カメラ24の直下となるP0点を火源として立ち上がる煙モデル54-0の場合の合成俯瞰画像は、気流58により右側に流されることで、P0点を起点に右側に移動しながら楕円状に広がる煙画像の変化となる。
【0065】
また、監視カメラ24の直下となるP0点から左側に離れたP1点を火源として立ち上がる煙モデル54-1の場合の合成俯瞰画像は、気流56がない場合の
図6(B)の煙モデル54-1が、気流58により右側に流されることでP1点を起点に左側に移動する度合いが低下するが、同じく左側に移動しながら楕円状に広がる煙画像の変化となる。
【0066】
また、監視カメラ24の直下となるP0点から右側に離れたP2点を火源として立ち上がる煙モデル54-2の場合の合成俯瞰画像は、気流56により流されることで右側に移動する度合いが増加し、P2点を起点に外側となる右側に移動しながら楕円状に広がる煙画像の変化となる。
【0067】
更に、
図7(B)にあっては、監視カメラ24の直下となるP0点から道路を横切る方向に離れたP3,P4の各点を火源とした煙モデル54-3,54-4の合成俯瞰画像における煙画像の変化も示しており、気流58により流されることで、P3、P4点を起点に紙面上で斜め右上と斜め右下となる外側に移動しながら楕円状に広がる煙画像の変化となる。
【0068】
[時系列火災判定]
(監視カメラ直下の煙画像による火災判定)
図8は監視カメラの直下で発生した火災による煙の輪郭線画像の時系列的変化を示した説明図である。
【0069】
図8に示すように、
図6に示した監視カメラ24の直下を火源とする煙モデル54-0の俯瞰画像を
図2の火災検知装置26に入力して処理することにより、時間分割された例えば4枚の
輪郭線画像60-1~60-4が生成される。
輪郭線画像60-1~60-4には、P1~P4を中心とした円形の煙輪郭線54a~54dが存在し、中心(重心と同じ)P1~P4の画面上での座標位置と、煙輪郭線
54a~54dで囲まれた輪郭線領域の画素数が面積として検出される。
【0070】
輪郭線合成
画像62は、
輪郭線画像60-1~60-4を合成したものであり、中心P1~P4の座標位置はほぼ一致し、中心P1~P4から面積の小さい順に同心円状に煙輪郭線54a~54dが広がる時系列的な変化が得られる。このため、
図2に示した時系列火災判定部38は、
図8に示す中心P1~P4の座標位置が一致し、中心P1~P4から面積の小さい順に同心円状に煙輪郭線54a~54dが広がる時系列的な変化から煙画像を認識する。
【0071】
しかしながら、
図8に示す煙輪郭線54a~54dが同一中心を起点に同心円状に広がる時系列変化は理想的なものであり、実際には、中心位置はばらつきをもつことから、輪郭線合成
画像62は、中心位置が所定の範囲内に収まり、且つ、時間の経過に伴って面積が増加する時系列変化であれば、煙画像と認識する。
【0072】
(監視カメラ直下から離れた位置の煙画像による火災判定)
図9は監視カメラの直下から離れた位置で発生した火災による煙の輪郭線画像の時系列的変化を示した説明図である。
【0073】
図9に示すように、
図6に示した監視カメラ24の直下から例えば右側に離れた位置P2を火源とする煙モデル54-2の俯瞰画像を
図2の火災検知装置26に入力して処理することにより、時間分割された例えば4枚の
輪郭線画像64-1~64-4が生成される。
【0074】
輪郭線画像64-1~64-2には、P1~P4を重心とした楕円の煙輪郭線54a~54dが存在し、重心P1~P4の画面上での座標位置と、煙輪郭線54a~54dで囲まれた輪郭線領域の画素数が面積として検出される。
【0075】
このため、輪郭線合成画像66は、輪郭線画像64-1~64-4を合成したものであり、重心P1~P4の座標位置は右側に移動し、面積の小さい順に楕円状に煙輪郭線54a~54dが広がる時系列的な変化が得られる。
【0076】
図2に示した時系列火災判定部38は、
図9に示す重心P1~P4の座標位置が一定方向に移動し、且つ、面積の小さい順に楕円状に煙輪郭線54a~54dが広がる時系列的な変化から煙画像を認識する。
【0077】
(火源位置の推定)
煙は火源から略円錐状に立ち上ることから火源位置と輪郭線領域重心位置との距離の二乗と輪郭線領域の面積が比例関係にあるものとしてとらえられる。
【0078】
このとき、複数の輪郭線画像において、輪郭線領域の面積をS1、S2、S3・・・Smとし、輪郭線領域の重心を(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)・・・(xm,ym)とし、火源位置を(x0,y0)とするとき、以下の計算式が成立する。
Sm=a(xm-x0)2
Sm=b(ym-y0)2
(a≧0、b≧0)(mは自然数)
複数の輪郭線画像の輪郭線領域の面積Sと輪郭線領域の第1軸側の重心xから最小二乗法等の公知の近似方法により第1軸側の火源位置x0を決定し、同様に第2軸側の火源位置y0を決定する。
【0079】
また、気流を検出する装置を設け、煙火源から立ち上ると共に重心がどの程度移動するかを含めて上記の計算を行って気流を考慮した火源位置の検出を行うようにしても良い。
【0080】
[火災検知装置の火災検知制御]
図10は
図2の火災検知装置による火災検知制御を示したフローチャートであり、
図2の火災検知装置26に設けられた制御部40による制御動作となる。
【0081】
図10に示すように、制御部40は、ステップS1で画像出力部28を動作し、監視カメラ24で撮像されたトンネル内の俯瞰画像としての俯瞰フレーム画像を入力してグレースケール化することで、例えば1280×720ピクセルの俯瞰フレーム画像を640×360にグレースケール化した俯瞰フレーム画像を出力する。
【0082】
続いて、制御部40は間引き処理部30の動作により、画像出力部28から出力された俯瞰フレーム画像を例えば4フレームずつ間引く処理を行い、続いて、ステップS3で差分画像生成部32を動作し、入力した俯瞰フレーム画像を記憶すると共に、前回記憶した俯瞰フレーム画像との差分をとって差分画像を生成する。
【0083】
続いて、制御部40は、ステップS4に進み、輪郭線画像生成部34を動作し、入力した差分画像に対しゾーベルフィルタの適用等により輪郭線を抽出して二値化し、ループ状に繋がった輪郭線画像を生成する。
【0084】
なお、ゾーベルフィルタの適用等により抽出された輪郭線が部分に切断されている場合には、切断部分を介して隣接する最短距離の画素間を直線連結して補完することで、ループ状に閉じた輪郭線画像を生成する。
【0085】
続いて、制御部40は、ステップS5に進み、輪郭線画像処理部36の動作により、輪郭線画像における輪郭線で囲まれた輪郭線領域の画像数を求めて面積として検出し、また輪郭線領域の重心位置(座標位置)を検出して記憶する。
【0086】
続いて、制御部40はステップS6に進み、時系列火災判定部38の動作により、現在及び過去を含む所定回数分の輪郭線の重心座標位置と面積の記憶情報を読み出し、ステップS7で時間の経過に伴い輪郭線領域の面積の増加を判定した場合はステップS8に進み、重心位置が所定の範囲内にあることを判別するとステップS9に進み、監視カメラ24の直下を火源とする時間の経過に伴い同心円状に広がる煙画像と判定する。
【0087】
一方、制御部40は、ステップS8で輪郭線領域の時間的な重心位置が所定の範囲内とならないことを判別した場合はステップS10に進み、重心位置が所定の方向に移動していることを判別するとステップS9に進み、監視カメラ24の直下から離れた位置を火源とする時間の経過に伴い所定方向に移動しながら楕円状に広がる煙画像と判定する。
【0088】
続いて、制御部40はステップS11に進み、煙画像の連続判定回数が所定回数Nに達したか否か判定し、所定回数N未満の場合はステップS1からの処理を繰り返し、所定回数Nに達したことを判別するとステップS12に進み、火災判定信号を監視センターの防災監視盤に出力して火災警報を行わせる。
【0089】
〔本発明の変形例〕
上記の実施形態に加え、火災判定を行った際に監視センターのモニタに火災判定を行った監視カメラの撮像画像を強調表示しても良い。
【0090】
上記の実施形態に加え、監視カメラに透明なアクリルカバーを設ける等の汚れ防止機能や汚れを拭き取る機能を設けるようにしても良い。
【0091】
上記の実施形態は、監視カメラを可視光検出するものとしているが、赤外線や紫外線を検出するものとしても良い。
【0092】
(監視カメラの設置位置)
上記の実施形態は、トンネル内の最も高い位置に監視カメラを配置しているが、例えば
図1に示した水噴霧ヘッド22の上側の位置に監視カメラを配置しても良い。この場合にも、監視カメラの撮像光軸は、路面に垂直となるように真下に向けるか、道路14のセンターラインに向け、ほぼ真上から見た俯瞰画像が撮像できるように配置する。
【0093】
(トンネル以外の監視)
上記の実施形態は監視カメラによりトンネル内の俯瞰画像を撮像して火災を検知する場合を例にとっているが、これに限定されず、建物等の施設内を監視領域とし、天井面等の高所に配置した監視カメラにより見下ろした監視領域の俯瞰画像を撮像して煙画像を認識することで火災を判定するようにしても良い。
【0094】
(監視カメラ)
上記の実施形態は、カラー動画を出力する監視カメラを使用したため、画像出力部28でカラーの俯瞰フレーム画像をグレースケール画像に変換しているが、モノクロ動画を出力する監視カメラを使用した場合には、画像出力部におけるグレースケール化は不要となる。
【0095】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0096】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:道路
16:監視員通路
17:自動弁装置
18:消火栓装置
20:照明器具
22:水噴霧ヘッド
24:監視カメラ
25:撮像領域
26:火災検知装置
28:画像出力部
30:間引き処理部
32:差分画像生成部
34:輪郭線画像生成部
36:輪郭線画像処理部
38:時系列火災判定部
40:制御部
42:俯瞰画像
44,46,48,50,56:車両
52:火源
54,54a~54f:煙輪郭線
54-0~54-4:煙モデル
60-1~60-4,64-1~64-4:輪郭線画像
62,66:輪郭線合成画像