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特許7289200半田合金組成物、半田およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】半田合金組成物、半田およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20230602BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20230602BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C13/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019020956
(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2019136774
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】107104271
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519045402
【氏名又は名称】シャンハイ フィケム マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチャン チョウ
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-512250(JP,A)
【文献】特開2000-208934(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217145(WO,A1)
【文献】特開2007-237252(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037279(WO,A1)
【文献】特開2001-205476(JP,A)
【文献】特開2014-146713(JP,A)
【文献】特表2003-512534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/26
C22C 13/00
C22C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田合金組成物であって、
前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.3~1wt%の銅、0.02~0.085wt%のロジウム、0.04~0.06wt%のニッケル、2~4wt%のビスマス、および残部の錫と不可避不純物からなる
半田合金組成物。
【請求項2】
前記ロジウムの含有量は、0.03~0.075wt%である請求項1に記載の半田合金組成物。
【請求項3】
前記銅の含有量は、0.3~0.7wt%である請求項1に記載の半田合金組成物。
【請求項4】
前記銅の含有量は、0.4~0.6wt%である請求項1に記載の半田合金組成物。
【請求項5】
前記ニッケルの含有量は、0.045~0.055wt%である請求項に記載の半田合金組成物。
【請求項6】
前記ビスマスの含有量は、2.9~3.1wt%である請求項に記載の半田合金組成物。
【請求項7】
前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.4~0.6wt%の銅、0.03~0.075wt%のロジウム、0.045~0.055wt%のニッケル、2.9~3.1wt%のビスマスおよび残部の錫と不可避不純物からなる請求項に記載の半田合金組成物。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の半田合金組成物によって形成される半田。
【請求項9】
半田ボールであり、かつ前記半田ボールの直径は0.05~1mmである請求項に記載の半田。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の半田合金組成物における各成分の質量パーセントに従って、銀、銅、ロジウム、錫、及びニッケルとビスマスを混合して溶融させることにより、溶融体を得ることと、
前記溶融体に対して成形処理を行うことにより、半田を得ることと、
を含む半田の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年02月07日に中国台湾省に出願された出願番号107104271、発明の名称「半田合金組成物および半田ボール」の中国台湾省特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、半田分野に関し、特に、半田合金組成物、半田およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、環境意識の向上に伴い、鉛を含まない無鉛半田がさまざまな分野で広く使用され、その中で、錫-銀-銅合金(Sn-Ag-Cu、SAC)が無鉛半田として最も一般的に使用されている合金である。また、現在、その他の2つの規格の合金の組み合わせがあり、1つはSAC合金にニッケル(Ni)を添加したSACN(錫-銀-銅-ニッケル合金、Sn-Ag-Cu-Ni)合金であり、SACN合金を半田として使用し、Ni元素を添加することで銅パッドの銅元素の消費を抑制でき、かつ金属間化合物(intermetallic compound、IMC;以下、境界金属と呼ぶ)の成長が速すぎることを遅らせることができ、他方は、SAC合金にニッケル(Ni)およびビスマス(Bi)を添加したSACNB(錫-銀-銅-ニッケル-ビスマス合金、Sn-Ag-Cu-Ni-Bi)合金であり、SACNB合金を半田として使用すると、優れたかつより良い硬さ、降伏強度および引張強度などの機械的特性を持ち、かつ、密集と精密なパッケージの過程において、その半田接合部はより優れた温度循環テスト(Thermal Cycling Test 、TCT)の性能を有している。
【0004】
一般的に、前述のSACN合金とSACNB合金に対しリフロー(reflow)を複数回行った後に形成された半田接合部が、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様による半田ボールの推力試験の過程で、シェアスピードが400μm/s以上になると、半田接合部に対しリフローを複数回行うことによってその界面強度が低下するため、境界金属層の脆性破壊またはグレード1(-50℃~+150℃、1000個のサイクル)の温度循環テストの過程で失効する場合が発生しやすく、その結果、その溶接強度がAEC-Q100に要求された基準を満たさないことを招く。
【発明の概要】
【0005】
本願において、まずSAC合金にロジウム金属を添加することにより合金の物理的特性を向上し、ひいてはそれを半田とするときに形成された半田接合部に対しリフローを複数回行った後、その半田接合部はAEC-Q100に要求された基準を満たすことができる。
【0006】
一態様において、本発明の実施例は、半田合金組成物を提供し、前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.3~1wt%の銅、0.02~0.085wt%のロジウム、および余剰の錫を含む。
【0007】
選択肢の一つとして、前記ロジウムの含有量は、0.03~0.075wt%である。
選択肢の一つとして、前記銅の含有量は、0.3~0.7wt%である。
選択肢の一つとして、前記銅の含有量は、0.4~0.6wt%である。
【0008】
選択肢の一つとして、前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、0.04~0.06wt%のニッケルをさらに含む。
選択肢の一つとして、前記ニッケルの含有量は、0.045~0.055wt%である。
【0009】
選択肢の一つとして、前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、2~4wt%のビスマスをさらに含む。
選択肢の一つとして、前記ビスマスの含有量は、2.9~3.1wt%である。
【0010】
選択肢の一つとして、前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.3~1wt%の銅、0.02~0.085wt%のロジウム、0.04~0.06wt%のニッケル、2~4wt%のビスマスおよび余剰の錫を含む。
【0011】
選択肢の一つとして、前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.4~0.6wt%の銅、0.03~0.075wt%のロジウム、0.045~0.055wt%のニッケル、2.9~3.1wt%のビスマスおよび余剰の錫を含む。
【0012】
別の一態様において、本発明の実施例は、半田を提供し、前記半田は前記技術案のいずれかに記載の半田合金組成物によって形成される。
選択肢の一つとして、前記半田は半田ボールであり、かつ前記半田ボールの直径は0.05~1mmである。
【0013】
別の一態様において、本発明の実施例は、半田の製造方法を提供し、前記製造方法は、
前記技術案のいずれかに記載の半田合金組成物における各成分の質量パーセントに従って、銀、銅、ロジウム、錫、及び選択可能なニッケルとビスマスを混合して溶融させることにより、溶融体を得ることと、
前記溶融体に対して成形処理を行うことにより、前記半田を得ることと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施形態の技術案をより明確に説明するために、実施形態の説明に使用される以下の図面を簡単に説明する。以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施形態であり、当業者は、創造的な作業なしにそれ以外の図面を容易に得ることが理解できる。
図1】実施例1~3と比較例1~3の示差熱分析曲線図である。
図2】実施例4~6と比較例4~6の示差熱分析曲線図である。
図3】実施例7~9と比較例7~9の示差熱分析曲線図である。
図4】実施例11、13~14と比較例10~12の示差熱分析曲線図である。
図5】実施例16、18~19と比較例13~15の示差熱分析曲線図である。
図6】実施例20~24と比較例16~18の示差熱分析曲線図である。
図7】実施例26、28~29と比較例19~21の示差熱分析曲線図である。
図8】半田ボールの推力試験のステップにおいて選択されたリフロー曲線図である。
図9】Mode1の場合の断面写真の模様である。
図10】Mode2の場合の断面写真の模様である。
図11】Mode3の場合の断面写真の模様である。
図12】Mode4の場合の断面写真の模様である。
図13】Mode5の場合の断面写真の模様である。
図14】実施例30~32と比較例22~24の温度循環テスト回帰線図である。
図15】実施例33~35と比較例25~27の温度循環テスト回帰線図である。
図16】実施例36~38と比較例28~30の温度循環テスト回帰線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
別に定義しない限り、本発明の実施例に用いられるすべての技術用語は、当業者が一般に理解したものと同じ意味を持っている。本発明の目的、技術案および利点をより明確にするために、以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。本発明を以下の実施形態を参照してより詳細に説明する。本発明は以下の実施例についてさらに説明するが、当該実施例は、本発明を例示及び説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。
【0016】
一態様において、本発明の実施例は、半田合金組成物を提供し、前記半田合金組成物の総重量を100wt%とし、前記半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.3~1wt%の銅、0.02~0.085wt%のロジウム、および余剰の錫を含む。
【0017】
本発明の実施例に係る半田合金組成物は、0.02~0.085wt%のロジウムを含むため、本発明の実施例に係る半田合金組成物を半田とするときに形成された半田接合部は、温度循環テストにおいて良好またはより良い性能を維持できるほか、当該半田接合部はAEC-Q100車載電子部品信頼性仕様によるシェアテストに合格して、高い合格率があり、かつ95%の残部錫を達成できる。
【0018】
以上の効果に対し、より具体的に説明すると、本発明の実施例に係る半田合金組成物は、0.02~0.085wt%のロジウムを含むため、ロジウムを含まないSAC、SACNまたはSACNB合金と比較して、本発明の半田合金組成物は、ロジウムの添加によって合金の物理的性質を変化させ、ひいては、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様によるシェアテストに合格した半田合金組成物を半田とするときに形成された半田接合部の合格率を向上させることができ、かつ温度循環テストにおいてAEC-Q100テスト基準による温度循環テストにも合格できる。ロジウムの含有量が0.02wt%未満または0.085wt%を超えると、当該半田合金組成物を半田とするときに形成された半田接合部の温度循環回数に耐える能力を期待通りに向上させることができなく、かつ高い含有量のロジウムもコストを大幅に増加させる。
【0019】
なお、本発明の半田合金組成物は、さらに不純物を含んでもよいが、不純物は半田合金組成物に既知の含有量で存在する。「wt%」は質量パーセントを表す。
ここで、銀の含有量は、0.9wt%、1wt%、1.3wt%、1.5wt%、1.7wt%、1.9wt%、2wt%、2.2wt%、2.5wt%、2.7wt%、2.9wt%、3wt%、3.2wt%、3.5wt%、3.7wt%、3.9wt%、4wt%、4.1wt%などであってもよい。銅の含有量は、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、1wt%などであってもよい。ロジウムの含有量は、0.02wt%、0.03wt%、0.04wt%、0.05wt%、0.06wt%、0.07wt%、0.08wt%、0.085wt%などであってもよい。
【0020】
当該半田合金組成物において、銅の含有量は0.3~1wt%である。銅の含有量が0.3wt%未満の場合、当該半田合金組成物の機械的強度が劣り、これは半田の信頼性に対する業界の要求と矛盾し、銅の含有量が1wt%を超える場合、当該半田合金組成物によって形成された半田ボールに対しリフローを行った後、溶融状態での流動性が悪くなり、濡れ性が低下するという問題があることを特に説明しなければならない。好ましくは、当該銅の含有量は0.3~0.7wt%である。より好ましくは、当該銅の含有量は0.4~0.6wt%である。
【0021】
好ましくは、当該ロジウムの含有量は0.03~0.075wt%である。
好ましくは、半田合金組成物の総重量を100wt%とし、本発明の実施例に係る半田合金組成物は、0.04~0.06wt%のニッケルをさらに含む。より好ましくは、当該ニッケルの含有量は0.045~0.055wt%である。
【0022】
ここで、ニッケルの含有量は、0.04wt%、0.045wt%、0.05wt%、0.055wt%、0.06wt%などであってもよい。
好ましくは、半田合金組成物の総重量を100wt%とし、本発明の実施例に係る半田合金組成物は、2~4wt%のビスマスをさらに含む。本発明の半田合金組成物が2~4wt%のビスマスと0.02~0.085wt%のロジウムを同時に含む場合、より良い降伏強度および引張強度などの特性を持ち、かつ、銅基材上の濡れ性を向上させることができ、また、当該半田合金組成物を半田とするときに形成された半田接合部は境界金属の成長をより効果的に抑制できることを特に説明しなければならない。なお、ビスマスの含有量が2.0wt%を超える場合、当該半田合金組成物を半田とするときに形成された半田接合部は、温度循環テストにおいてより良い性能を得るほか、銅基材に対する濡れ性も向上し、ビスマスの含有量が4wt%未満である場合、降伏強度および引張強度などの特性が強すぎず、温度循環テストにおいて当該半田合金組成物を半田とするときに形成された半田接合部はより多くの循環回数を持つことができる。より好ましくは、当該ビスマスの含有量は、2.9~3.1wt%であり、かつ、ビスマスの含有量が2.9~3.1wt%である場合、銅基材に対し最良の濡れ性能を有することができ、そして半田接合部の境界金属層の厚さを効果的に減少させることができる。
【0023】
選択肢の一つとして、半田合金組成物の総重量を100wt%とし、本発明の実施例に係る半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.3~1wt%の銅、0.02~0.085wt%のロジウム、0.04~0.06wt%のニッケル、2~4wt%のビスマスおよび余剰の錫を含む。
【0024】
当該半田合金組成物における各成分の間の協力作用により、当該半田合金組成物は、半田として使用されるときに、温度循環テストにおいて良好またはより良い性能を維持でき、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様によるシェアテストにより良く適合するだけでなく、良好な機械的強度、降伏強度および引張強度などの特性を持ち、銅基材に対して良好な濡れ性を示す。
【0025】
選択肢の一つとして、半田合金組成物の総重量を100wt%とし、本発明の実施例に係る半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.4~0.6wt%の銅、0.03~0.075wt%のロジウム、0.045~0.055wt%のニッケル、2.9~3.1wt%のビスマスおよび余剰の錫を含む。
【0026】
このようにすると、当該半田合金組成物における各成分をお互いに協力作用させるにより、より良好な機械的強度、降伏強度および引張強度などの特性を示し、温度循環テストにおいてより良い性能を維持でき、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様によるシェアテストにより良く適合することができる。
【0027】
別の一態様において、本発明の実施例は、半田を提供し、当該半田は前記技術案のいずれかに係る半田合金組成物によって形成される。
当該半田は、溶接のために使用され、溶接箇所における機械的強度、降伏強度および引張強度などの特性を良くすることに有利であり、半田接合部はより優れた温度循環テストの性能を有し、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様によるシェアテストにより良く適合することができる。
【0028】
選択肢の一つとして、本発明の実施例に係る半田において、半田合金組成物の総重量を100wt%とし、半田合金組成物は、0.04~0.06wt%のニッケルをさらに含む。
選択肢の一つとして、本発明の実施例に係る半田において、半田合金組成物の総重量を100wt%とし、半田合金組成物は、2~4wt%のビスマスをさらに含む。
【0029】
選択肢の一つとして、本発明の実施例に係る半田において、半田合金組成物の総重量を100wt%とし、半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.3~1wt%の銅、0.02~0.085wt%のロジウム、0.04~0.06wt%のニッケル、2~4wt%のビスマスおよび余剰の錫を含む。
【0030】
ここで、半田はさまざまな構造にすることができ、好ましくは、半田は半田ボールであり、かつ半田ボールの直径は0.05~1mmである。
例として、半田ボールの直径は、0.05mm、0.15mm、0.25mm、0.35mm、0.45mm、0.55mm、0.65mm、0.75mm、0.85mm、0.95mm、1mmなどであってもよい。
【0031】
当該半田ボールは、半田として使用されるときに、優れたかつより良い硬さ、降伏強度および引張強度などの機械的特性を持ち、かつ、密集と精密なパッケージの過程において、その半田接合部はより優れた温度循環テストの性能を有し、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様によるシェアテストにより良く適合することができる。
【0032】
別の一態様において、本発明の実施例は、半田の製造方法を提供し、当該製造方法は、
前記技術案のいずれかに係る半田合金組成物における各成分の質量パーセントに従って、銀、銅、ロジウム、錫、及び選択可能なニッケルとビスマスを混合して溶融させることにより、溶融体を得るステップ1と、
溶融体に対して成形処理を行うことにより、半田を得るステップ2と、
を含む。
【0033】
ここで、成分均一な溶融体を得るのを容易にするために、混合の際に撹拌操作が必要であることに留意すべきである。
選択肢の一つとして、当該製造方法は、
半田合金組成物の総重量を100wt%とし、半田合金組成物は、0.04~0.06wt%のニッケルをさらに含み、銀、銅、ロジウム、錫、ニッケルを混合して溶融させることにより、溶融体を得ることと、
溶融体に対して成形処理を行うことにより、半田を得ることと、
を含む。
【0034】
半田合金組成物がニッケルを含むときに、銀、銅、ロジウム、錫、ニッケルを混合して溶融させることにより、溶融体を得ることは、以下のステップを含むが、これらに限定されない。
【0035】
ステップaにおいて、ロジウム、錫、ニッケルを周波炉の中にプレアロイを形成する。
ロジウム、錫、ニッケルを混合して溶融させた後冷却し、ロジウム、錫、ニッケルによって形成されたプレアロイを得る。
【0036】
ステップbにおいて、プレアロイを銀および銅と混合して溶融させることにより、溶融体を得る。
このようにすると、各成分をお互いに十分に溶融させ、均一に分散されることができ、成分均一な溶融体を得ることに有利である。
【0037】
選択肢の一つとして、当該製造方法は、
半田合金組成物の総重量を100wt%とし、半田合金組成物は、2~4wt%のビスマスをさらに含み、銀、銅、ロジウム、錫、ビスマスを混合して溶融させることにより、溶融体を得ることと、
溶融体に対して成形処理を行うことにより、半田を得ることと、
を含む。
【0038】
選択肢の一つとして、当該製造方法は、
半田合金組成物の総重量を100wt%とし、半田合金組成物は、0.9~4.1wt%の銀、0.3~1wt%の銅、0.02~0.085wt%のロジウム、0.04~0.06wt%のニッケル、2~4wt%のビスマスおよび余剰の錫を含み、銀、銅、ロジウム、錫、ビスマスを混合して溶融させることにより、溶融体を得ることと、
溶融体に対して成形処理を行うことにより、半田を得ることと、
を含む。
【0039】
上記の製造方法は簡便であり、当該半田の促進や使用に有利である。そして、製造した半田は良好な機械的特性を有し、半田接合部は温度循環テストにおいて良好またはより良い性能を維持でき、半田接合部はAEC-Q100車載電子部品信頼性仕様によるシェアテストにおいて高い合格率を有する。
【0040】
以下、具体的な実施例を利用して本発明をさらに説明する。
以下の具体的な実施例において、条件を指定しない関与する操作は、従来の条件または製造業者によって推奨される条件に従って行われる。使用された製造元および仕様を示しない原材料は、市場から入手可能な従来の製品である。
【0041】
以下の実施例および比較例における合金の化学組成は、ドイツのスペクトロ(代理業者はShanghai Jinpu Instrument Co.、Ltd.である)から購入しかつ機器モデルがSPECTROLAB M12である直読スペクトロメーターにより測定されたことをまず説明しなければならない。また、実施例および比較例の合金は、最終的に得られる合金の金属含有量の割合に基づいて、周波炉と融和炉を使用して必要量の錫、銀、銅およびその他の必要金属(例えば、ロジウム、ニッケル、またはビスマス)を配制することにより形成され、ここで、ロジウムとニッケルの融点および特性関係のために、錫とその2つの金属元素に対し周波炉でプレアロイの作成を行う必要がある。また、ロジウムとニッケルの偏析と溶解不良を回避するために、ロジウムとニッケルと錫に対し周波炉でプレアロイの作成を行う過程において、攪拌が必要である。
【0042】
(比較例1、4、7)
錫-銀-銅合金および当該錫-銀-銅合金により形成された半田ボール
比較例1、4、7の錫-銀-銅合金は錫、銀と銅を含み、当該錫-銀-銅合金の化学成分および含有量(wt%)をそれぞれ整理し表1、表2および表3に示す。
【0043】
(実施例1~9と比較例2~3、5~6、8~9)
ロジウムを含む半田合金組成物および当該半田合金組成物により形成された半田ボール
実施例1~9と比較例2~3、5~6、8~9の半田合金組成物は錫、銀、銅とロジウムを含み、当該半田合金組成物の化学成分および含有量(wt%)をそれぞれ整理し表1~3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】

(比較例10、13、16、19)
ニッケルを含む半田合金組成物および当該半田合金組成物により形成された半田ボール
比較例10、13、16、19の半田合金組成物は錫、銀、銅とニッケルを含み、当該半田合金組成物の化学成分および含有量(wt%)を整理し表4~7に示す。
【0047】
(実施例10~29と比較例11~12、14~15、17~18、20~21)
ロジウムとニッケルを含む半田合金組成物および当該半田合金組成物により形成された半田ボール
実施例10~29と比較例11~12、14~15、17~18、20~21の半田合金組成物は錫、銀、銅、ロジウムとニッケルを含み、当該半田合金組成物の化学成分および含有量(wt%)をそれぞれ整理し表4~7に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】

(比較例22、25、28)
ニッケルとビスマスを含む半田合金組成物および当該半田合金組成物により形成された半田ボール
比較例22、25、28の半田合金組成物は錫、銀、銅、ニッケルとビスマスを含み、当該半田合金組成物の化学成分および含有量(wt%)を整理し表8~10に示す。
【0052】
(実施例30~38と比較例23~24、26~27、29~30)
ロジウム、ニッケルとビスマスを含む半田合金組成物および当該半田合金組成物により形成された半田ボール
実施例30~38と比較例23~24、26~27、29~30の半田合金組成物は錫、銀、銅、ロジウム、ニッケルとビスマスを含み、当該半田合金組成物の化学成分および含有量(wt%)をそれぞれ整理し表8~10に示す。
【0053】
【表8】
【0054】
【表9】
【0055】
【表10】

実施例1の適用
(合金融点分析)
A.分析方法
実施例1~29と比較例1~21の合金を示差走査熱量計(DSC:differential scanning calorimetry、モデル:Perkin Elmer DSC 2260)により分析し、得られた結果を図1(実施例1~3と比較例1~3)、図2(実施例4~6と比較例4~6)、図3(実施例7~9と比較例7~9)、図4(実施例11、13~14と比較例10~12)、図5(実施例16、18~19と比較例13~15)、図6(実施例20~24と比較例16~18)及び図7(実施例26、28~29と比較例19~21)に示す。
【0056】
B.結果と考察
図1図7から分かるように、示差熱曲線がほぼ重なっており、ロジウムを添加しない合金と適量のロジウムを添加した合金の融点はあまり変化していない。本発明において、はんだ合金組成物にロジウムを添加することは、最終的に得られる合金の融点に影響を与えないないことが示される。
【0057】
実施例2の適用
(半田ボールのビッカース(Vickers)硬さの分析)
A.分析方法
以下の実験は、台湾省の中沢株式会社から購入しかつ製品モデルがFM-100 eのビッカース硬度測定器でテストしている。まず、実施例と比較例のロジウムを添加しない半田ボールと適量のロジウムを添加した半田ボールを特定の直径(0.45mmまたは0.25mm)の半田ボールに作成し、次に半田ボールを基板に半田付けして一つの接点を形成し、この接点と金型との間にエポキシ樹脂を注入して埋めこむことにより、この接点部をエポキシ樹脂に固定させ、次に、この金型を剥離させ、球体の残り約2/4のところまでこの接点部を研磨機で研磨して、さらに艶出しを行って、研磨した半田ボールのビッカース硬さをビッカース硬度測定器で測定する(荷重:10g、時間:10秒)。実施例1~29と比較例1~21の合金を前述の方法で分析して得られたビッカース硬さの結果、各実施例と比較例の合金の銀、銅、ニッケルとロジウムの含有量、および作成した半田ボールの直径をそれぞれ整理し表11-1、表11-2に示す。
【0058】
【表11-1】
【0059】
【表11-2】

B.結果と考察
表11-1、表11-2の硬さの結果から、同じ半田ボール直径および類似の銀の含有量のもとで、半田ボールの硬さはロジウムの含有量の増加につれて増加することが分かり、このことからはんだ合金組成物にロジウムを添加すると、合金の硬さを高めることができることが分かる。
【0060】
実施例3の適用
(半田ボールの推力試験)
A.分析方法
まず、この半田ボールの推力試験は、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様と以下のステップに基づいてテストしている。
【0061】
ステップ(1)-半田ボールマウント(solder ball mount): 実施例と比較例の半田ボールをそれぞれ特定の直径(0.45mmまたは0.25mm)の半田ボールに作成した後、当該半田ボールを半田パッドにリフローして半田接合部を形成する。ここで、半田ボールの直径が0.45mmであるとき、当該半田パッドの開口(opening)の直径は0.40mm(opening)であり、半田ボールの直径が0.25mmであるとき、当該半田パッドの開口の直径は0.25mmの開口である。
【0062】
ステップ(2)-リフロー:室温から温めてリフローし、内外の温度が均一である場合に、ピーク温度に上昇し、例えば図8の曲線(profile)のピーク温度は約250±5℃である。このピーク温度を維持する加熱時間(peak time)は約40~60秒であり、リフロー炉でステップ(1)-半田ボールマウントを経た半田ボールと半田パッドとに対し、リフローを一回行う。
【0063】
ステップ(3)-三回のリフロー:リフロー炉でステップ(2)を経た半田ボールと半田パッドとに対し、リフローを三回行う。
ステップ(4)-半田ボールの推力試験:ステップ(2)とステップ(3)のリフローを経たパッケージに対し、実密会社から購入しかつモデルがDage-4000である押し引き機によりシェアテストを実施する。ここで、AEC-Q100における010 REV-Aによると、プッシュカッターと半田接合部との接触高さ(シェア高さ)が1 / 3に達し、かつプッシュカッターはこの半田パッドのソルダーレジスト層に触れてはいけない。半田ボールの推力試験の各条件を整理し表12に示す。
【0064】
【表12】

ステップ(5)-顕微鏡による観察:前記ステップ(4)の推力試験を経た半田ボールは破壊によって断面を発生し、その断面の状況を顕微鏡で観察し、断面を5つの断面モード(モード1~モード5)に分ける。モード1~モード5の断面の状況の記述、断面の残部錫の割合、および境界金属層が破壊したかどうかについて、整理して表13にに示す。
【0065】
【表13】

実施例1~29と比較例1~21の合金に対し前述の推力試験を実施して得られた断面モードの回数(モード1、モード3またはモード5の回数)、各実施例と比較例の合金の銀、銅、ニッケル及びロジウムの含有量、および作成した半田ボールの直径をそれぞれ整理し表14-1、表14-2に示し、ここで、表14-1、表14-2の断面モードの結果は、いずれも15個(または20個)の同じ合金と同じ直径を有する半田ボールを使用して推力試験を実施してから、統計を行った結果になる。
【0066】
【表14-1】
【0067】
【表14-2】

前記表14-1、表14-2の断面モードの回数に応じて、推力試験後の境界金属層の破壊(モード3またはモード5)の発生率(%)を計算し、その発生率の式が式Iに示すようになり、計算して得られた結果を整理して表15-1、表15-2に示す。
【0068】
【数1】
【0069】
【表15-1】
【0070】
【表15-2】

B.結果と考察
実施例1~29と比較例1~21の比較結果から分かるように、半田合金組成物が0.02~0.085wt%のロジウムを含む場合、リフローを複数回行ってかつシェアテスト(AEC-Q100仕様)を実施した後、境界金属層の破壊の確率がいずれも0%であり、ロジウムの含有量が半田合金組成物の0.02wt%未満または0.085wt%を超える場合、比較例17および20の境界金属層の破壊の発生率のみが0%であり、残りは5%以上で、場合によって73%にも達する。
【0071】
従って、上記の結果によると、本発明のロジウムの含有量が0.02~0.085wt%の半田合金組成物を半田として半田パッド上にマウントし、三回のリフローのステップを経た後、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様に基づいて半田ボールの推力試験を実施し、シェアスピードが400μm/s以上になると、境界金属層には破壊は発生しない(モード1またはモード5)。逆に、ロジウムの含有量が0.02~0.085wt%ではない半田合金組成物に対し、AEC-Q100車載電子部品信頼性仕様に基づいて半田ボールの推力試験を行うと、一定の比例の境界金属層の破壊は発生し、ひいては当該半田合金組成物を半田とするときに形成された半田接合部に耐えられるせん断力を期待通りに向上させることができなく、よって、コストが増加する。
【0072】
実施例4の適用
(温度循環テスト(Thermal Cycling Test 、TCT))
A.分析方法
本温度循環テストにおいて、実施例30~38および比較例22~30で作製した半田ボール(直径0.45mm)をそれぞれ半田パッドにマウントし、SMTでPCBに半田付けして、さらにグレード1(-50℃~+150℃、1000個のサイクル)の温度循環テストを行う。最終的に得られる温度循環テストの結果を図14(実施例30~32と比較例22~24)、図15(実施例33~35と比較例25~27)および図16(実施例36~38と比較例28~30)に示す。ここで、実施例30~38と比較例22~30の銀、銅、ニッケル、ビスマスとロジウムの含有量を整理し表16に示す。
【0073】
【表16】

B.結果と考察。
【0074】
まず、温度循環テストは、部品が極端な温度(非常に高い温度と低い温度)に耐える能力をテストするために使用される。たとえば、図14~16に示すように、部品が同じ失効率の場合、必要な失効時間が長いほど、部品が極端な温度に耐える能力が良いということを表す。
【0075】
図14~16によると、比較例23、26、29と実施例30、33、36との比較から、ロジウムの添加量が0.02wt%未満の場合、温度循環テストの回数を効果的に増やすことができないことが判明した。
【0076】
なお、比較例24、27、30と実施例32、35、38の温度循環テストの回数から、ロジウムの添加量が0.085wt%より多い場合、温度循環テストに耐える回数が減少し、使用のニーズを満たしていないことが判明した。
【0077】
また、0.02~0.085wt%のロジウムを含む実施例30~38は、2000回以上の温度循環テストに耐えることができ、かつロジウムを適切に添加することは、温度循環テストにおける半田接合部の性能を向上させるのに役立つが、ロジウムの添加量が0.085wt%を超える(例えば、0.09wt%)と、半田接合部が耐えることができる温度循環テストの回数を再び増やすことはできず、製造コストを増加させるだけであるので、過剰量のロジウムの添加は温度循環テストの回数を効果的に増加させることができないことが確認される。
【0078】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎない、本発明を限定するものではなく、本開示の精神および範囲内でなされた任意の変更、等効な置換、改善などは、本発明の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16