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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム用発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230602BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230602BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20230602BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20230602BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/42
C08G18/22
C08G18/42 008
C08G18/40 018
C08G101:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019034016
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020139007
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】関 浩之
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085496(JP,A)
【文献】特開2020-033461(JP,A)
【文献】特開2020-132835(JP,A)
【文献】特開2016-124912(JP,A)
【文献】特開2016-194034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて、ポリウレタンフォームを与える、ビニル重合性化合物不含の発泡性組成物にして、
前記組成物Aが、前記ポリオールとして、疎水性ポリエステルポリオールを少なくとも含有し、且つ触媒として、炭素数が4以上の有機カルボン酸の金属塩と、1-メチルイミダゾール以外のイミダゾール系触媒とを少なくとも含有すると共に、かかる組成物Aの水分率が、3%以下であり、更に、前記発泡剤として、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機発泡剤を、少なくとも含んでいることを特徴とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項2】
前記組成物Aが、更に、非イオン性界面活性剤を含有していることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項3】
前記疎水性ポリエステルポリオールが、その100g当りの水溶解度が100g以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項4】
前記疎水性ポリエステルポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項5】
前記ポリオールとして、前記疎水性ポリエステルポリオールと共に、疎水性ポリエーテルポリオールが用いられて、前記組成物Aに含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項6】
前記疎水性ポリエステルポリオールと前記疎水性ポリエーテルポリオールとが、質量比にて、55:45~95:5の割合において用いられることを特徴とする請求項5に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物に係り、特に、湿度の高い環境下における断熱性能を長期に亘って保持し得るポリウレタンフォームを提供することの出来る発泡性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリウレタンフォームは、その優れた耐熱性や接着性、軽量性等の特性を利用して、主に断熱材料として、建築用内外壁材やパネル等の断熱、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、輸液パイプ等の断熱に用いられ、更には、土木工事において発生する空隙を埋める裏込め材や、土木工事に際しての補強材等としても、実用されている。そして、そのようなポリウレタンフォームは、一般に、ポリオールに対して、発泡剤や触媒、更に必要に応じて、整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合して得られるポリオール配合液(プレミックス液)からなる組成物Aと、ポリイソシアネートを主体として含む組成物Bとを、混合装置により連続的に又は断続的に混合して、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物とし、これを、スラブ発泡法、注入発泡法、スプレー発泡法、ラミネート連続発泡法、軽量盛土工法、注入裏込め工法等の方式により、発泡させて、硬化させることにより、製造されている。
【0003】
ところで、上述の如くして得られるポリウレタンフォームにあっては、その優れた断熱性能が経時的に低下するという問題を内在しており、特に、発泡剤として水を使用して得られたポリウレタンフォームにおいては、その傾向が顕著であることが知られているところから、そのようにして得られるポリウレタンフォームの断熱性能の経時変化を小さくするべく、従来より、各種の対策が講じられてきている。
【0004】
例えば、特開2011-132520号公報においては、ポリイソシアネートと反応せしめられるポリオールとして、マンニッヒ縮合物にエチレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が420~600mgKOH/gであるポリエーテルポリオールを用いることにより、得られるポリウレタンフォームの断熱性能の経時的な劣化が改善され得ることが、明らかにされている。
【0005】
しかしながら、そのような特定のポリエーテルポリオールを用いて得られたポリウレタンフォームにあっても、湿度の高い環境下においては、ポリウレタンフォームが吸湿することによる劣化が惹起されることとなり、そしてそれによって、断熱性能が経時的に低下するようになるために、ポリウレタンフォーム本来の優れた断熱性能を長期間に亘って発揮させることが困難となる問題を内在するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-132520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、湿度の高い環境下においても、断熱性能の低下を有利に抑制乃至は阻止して、その優れた断熱性能を長期間に亘って発揮し得るポリウレタンフォームを形成することの出来る、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物を提供することにあり、また、液状形態を呈するポリオール含有組成物Aの安定性を高めて、ポリイソシアネートを含む組成物Bとの反応によって形成されるポリウレタンフォームの特性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意に組み合せることも可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載やそこに開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され 、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて 、ポリウレタンフォームを与える発泡性組成物にして、前記組成物Aが、前記ポリ オールとして、疎水性ポリエステルポリオールを少なくとも含有し、且つ触媒とし て、炭素数が4以上の有機カルボン酸の金属塩を少なくとも含有すると共に、かか る組成物Aの水分率が、3%以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム用 発泡性組成物。
(2) 前記組成物Aが、更に、非イオン性界面活性剤を含有していることを特徴とする 前記態様(1)に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(3) 前前記疎水性ポリエステルポリオールが、その100g当りの水溶解度が100 g以下であることを特徴とする前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のポリウ レタンフォーム用発泡性組成物。
(4) 前記疎水性ポリエステルポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールであるこ とを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載のポリウレ タンフォーム用発泡性組成物。
(5) 前記ポリオールとして、前記疎水性ポリエステルポリオールと共に、疎水性ポリ エーテルポリオールが用いられて、前記組成物Aに含有せしめられることを特徴と する前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載のポリウレタンフォー ム用発泡性組成物。
(6) 前記疎水性ポリエステルポリオールと前記疎水性ポリエーテルポリオールとが、 質量比にて、55:45~95:5の割合において用いられることを特徴とする前 記態様(5)に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(7) 前記発泡剤が、少なくとも有機発泡剤を含んでいることを特徴とする前記態様(
1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成 物。
(8) 前記有機発泡剤が、ハイドロカーボン、ハイドロフルオロカーボン及びハロゲン 化アルケンからなる群より選ばれたものであることを特徴とする前記態様(7)に 記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、ポリオールとして、少なくとも疎水性ポリエステルポリオールを用いると共に、触媒として、少なくとも炭素数が4以上の有機カルボン酸の金属塩を用いることにより、かかる疎水性ポリエステルポリオールによるポリウレタンフォームの吸湿劣化の効果的な抑制を図りつつ、それらポリオールと触媒との相溶性を効果的に高めて、それらポリオールと触媒とを含む液状の組成物Aに液体分離が惹起されるのを阻止せしめ、以て、そのような組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとの反応によって形成されるポリウレタンフォームにおいて、それが吸湿することによる経時的な断熱性能の低下の抑制乃至は防止に、有利に寄与せしめ得たのである。
【0011】
しかも、本発明にあっては、それら特定のポリオールや触媒を含む液状の組成物Aの水分率が、3%以下となるように調整されているところから、かかる組成物Aの白濁化が効果的に阻止され得ることとなるのであり、これによって、液状の組成物Aの安定性が向上され得て、ポリイソシアネートを含む組成物Bとの反応、更には発泡が、有利に進行せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られるポリウレタンフォームの長期物性や経時的な劣化が、有利に抑制乃至は阻止され得ることとなる。
【0012】
従って、本発明によれば、疎水性ポリエステルポリオールと炭素数が4以上の有機カルボン酸の金属塩触媒とを組み合わせて用い、且つ液状の組成物Aの水分率が3%以下となるように調整されていることによって、ポリウレタンフォームの吸湿劣化が効果的に抑制乃至は阻止され得ると共に、ポリウレタンフォームの長期物性(熱伝導率)や断熱性等の特性の経時的な劣化が有利に回避され得て、特に、湿度の高い環境下における断熱性能の低下が効果的に抑制乃至は防止せしめられ得ることとなったのである。
【0013】
そして、そのような本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物における組成物Aに対して、疎水性ポリエステルポリオール及び特定の有機カルボン酸の金属塩触媒と共に、非イオン性界面活性剤が、更に含有せしめられることにより、それら疎水性ポリエステルポリオールと特定の有機カルボン酸金属塩触媒との相溶性が効果的に高められ得ると共に、更に添加される他の添加剤の組成物Aにおける均質性も、有利に向上せしめられ得ることとなり、これによって、ポリウレタンフォームの経時的な断熱性能の低下、特に、高湿度環境下における断熱性能の低下も、より一層有利に改善せしめることが可能となるのである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物の更に具体的な構成について、詳細に説明することとする。
【0015】
先ず、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され、それらポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなる発泡性組成物であるが、そこで用いられる組成物Aを構成する主たる成分であるポリオールには、その必須の構成成分として、疎水性ポリエステルポリオールが、単独で、又はポリイソシアネートと反応してポリウレタンを生じる他の公知の各種のポリオール化合物と組み合わされて、用いられることとなる。なお、そのような組成物Aにおけるポリオールの割合は、合計で、50~80質量%程度、好ましくは60~70質量%程度とされ、また、疎水性ポリエステルポリオールは、全ポリオールの50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上となる割合において用いられることとなる。
【0016】
そして、そのようなポリオールの1つとして必須の疎水性ポリエステルポリオールは、その100g当りの水溶解度が100g以下であるものであり、具体的には、多価アルコール-多価カルボン酸縮合系のポリエステルポリオールや環状エステル開環重合体系のポリエステルポリオール等の公知のものの中から、疎水性のものが選択使用されることとなる。そこにおいて、ポリエステルポリオールを与える多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることが出来、中でも、2価アルコールが好ましく用いられることとなる。また、多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらの無水物等を挙げることが出来る。更に、環状エステルとしては、ε-カプロラクトン等を挙げることが出来る。それらポリエステルポリオールの中でも、触媒との相溶性を高め、またポリウレタンフォームの経時的な吸湿劣化を阻止し、更に難燃性を得るために、本発明にあっては、芳香族ポリエステルポリオールが好適に用いられ、特に、テレフタル酸系ポリエステルポリオールが有利に用いられることとなる。
【0017】
また、本発明にあっては、上述の如き疎水性ポリエステルポリオールと共に、疎水性のポリエーテルポリオールを併用することも有効であり、それら2種のポリオールの併用によって、ポリウレタンフォームの強度や寸法安定性等の特性の向上を有利に図ることが出来る。ここで、疎水性ポリエーテルポリオールは、その100g当りの水溶解度が100g以下であるものである。そして、それら疎水性ポリエステルポリオールと疎水性ポリエーテルポリオールとは、質量比において、55:45~95:5、好ましくは60:40~90:10の範囲内の配合割合にて、併用されることとなる。かかる疎水性ポリエステルポリオールの使用量が、それら両者の合計量の55%よりも少なくなると、本発明の目的を充分に達成し難くなる問題があり、また疎水性ポリエーテルポリオールの使用量が、それら両者の合計量の5%よりも少なくなると、その添加効果を充分に享受することが困難となる。
【0018】
なお、かかるポリエーテルポリオールとしては、公知の各種のものの中から、適宜に選択されることとなるが、一般に、多価アルコール、糖類、脂肪族アミン、芳香族アミン、フェノール類、マンニッヒ縮合物等の少なくとも1種の開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて、得られるものを、例示することが出来る。そこにおいて、アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、エチレンオキシド等を挙げることが出来る。また、開始剤としての多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等があり、また糖類としては、シュクロース、デキストロース、ソルビトール等があり、更に脂肪族アミンとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、エチレンジアミン等のポリアミン等があり、そして芳香族アミンとしては、トリレンジアミンと総称されるフェニレンジアミンの各種のメチル置換体の他、そのアミノ基に、メチル、エチル、アセチル、ベンゾイル等の置換基が導入されてなる誘導体や、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられ、更にまたフェノール類としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂等を挙げることが出来る。また、マンニッヒ縮合物としては、フェノール類、アルデヒド類及びアルカノールアミン類をマンニッヒ縮合反応させて得られるマンニッヒ縮合物を挙げることが出来る。それらポリエーテルポリオールの中でも、本発明にあっては、疎水性のマンニッヒ系ポリエーテルポリオール、疎水性のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオール、疎水性のシュクロース系ポリエーテルポリオール、疎水性のポリアルキレングリコール等を挙げることが出来、特に、疎水性のマンニッヒ系ポリエーテルポリオールが好ましく用いられることとなる。
【0019】
また、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物における組成物Aには、上述の如き疎水性ポリエステルポリオールを少なくとも含む液状のポリオールと共に、触媒の少なくとも1つとして、炭素数が4以上の有機カルボン酸の金属塩が含有せしめられることとなるのであるが、そのような有機カルボン酸の金属塩を用いることによって、疎水性ポリエステルポリオールに対する触媒の相溶性が効果的に高められ得て、ポリイソシアネート(組成物B)との反応によって形成されるポリウレタンフォームの物性やその経時的な劣化防止に有利に寄与せしめることが出来る。なお、ここで用いられる有機カルボン酸金属塩触媒における有機カルボン酸の炭素数としては、一般に4以上であり、その上限は、実用上において、12以下であることが好ましく、中でも7~11、より好ましくは8~10であることが望ましい。また、そのような有機カルボン酸の金属塩としては、具体的には、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、オクチル酸ビスマス、オクチル酸コバルト、オクチル酸カリウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス等を挙げることが出来、中でも、オクチル酸カリウムの使用が推奨される。
【0020】
かくの如き有機カルボン酸金属塩触媒は、ポリオール(組成物A)とポリイソシアネート(組成物B)との反応を促進させるために用いられるものであって、その使用量としては、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に0.1~8質量部の範囲内において、好ましくは0.5~6質量部の範囲内において選択されることとなる。この触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、樹脂骨格に占めるウレタン化結合やイソシアヌレート(三量体)構造の割合が少なくなり、フォームが軟らかくなるために、圧縮強度や寸法安定性が低下するようになる問題を惹起し、一方8質量部よりも多くなると、得られるウレタン化結合やイソシアヌレート(三量体)構造の割合が増加し難くなり、その添加量に見合う効果を期待し難くなることに加えて、反応速度が上昇し過ぎて、ポリウレタンフォームの形成のための作業性等に悪影響をもたらすようになる。
【0021】
そして、本発明においては、触媒として、上述の如き有機カルボン酸金属塩触媒に加えて、その補助として、ポリウレタンフォームの形成に用いられている公知の各種の触媒の1種又は2種以上が、かかる有機カルボン酸金属塩と疎水性ポリエステルポリオールとの相溶性に影響をもたらさない範囲において、必要に応じて用いられることとなる。例えば、イミダゾール系触媒、アミン系触媒、第四級アンモニウム塩等の公知の触媒が、本発明に従う有機カルボン酸金属塩触媒と共に、用いられ得るのである。そして、それら各種の触媒は、それぞれ、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に0.1~8質量部の範囲内において、好ましくは0.5~6質量部の範囲内において、用いられることとなる。
【0022】
なお、本発明に従う有機カルボン酸金属塩触媒と共に用いられる、上述の如き触媒の中でも、イミダゾール系触媒が有利に用いられることとなる。そのようなイミダゾール系触媒としては、例えば、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、1-メチルベンズイミダゾール、1-エチルベンズイミダゾール、1-プロピルベンズイミダゾール、1-イソプロピルベンズイミダゾール、1-イソブチルベンズイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール等を挙げることが出来る。
【0023】
また、第四級アンモニウム塩も、本発明に従う有機カルボン酸金属塩触媒と共に、有利に用いられることとなる。そのような第四級アンモニウム塩を構成する第四級アンモニウム基としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム基;(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウム基;、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム基等を、挙げることが出来る。
【0024】
さらに、そのような第四級アンモニウム基と共に、塩を構成する有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。
【0025】
なお、このような第四級アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U-CAT 18X、U-CAT 2313(サンアプロ株式会社製)、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0026】
加えて、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を構成する組成物Aには、ポリオールとしての疎水性ポリエステルポリオールや触媒としての所定の有機カルボン酸金属塩と共に、更に、非イオン性界面活性剤が好適に含有せしめられることとなる。この非イオン性界面活性剤は、それら疎水性ポリエステルポリオールと有機カルボン酸金属塩触媒との相溶化剤として、更には疎水性ポリエステルポリオールと組成物A中に存在する水分や他の添加成分との相溶化剤として機能するものであるところから、そのような非イオン性界面活性剤を含有させることにより、組成物A中に存在する水分に起因するところの液の白濁化が効果的に抑制され得ると共に、また、有機カルボン酸金属塩触媒や発泡剤等との相溶性も向上せしめられることによって、形成されるポリウレタンフォームの経時的な断熱性能の低下を効果的に防止し、更に高湿度環境下においても、長期物性を維持することに、有利に寄与することが出来るのである。
【0027】
ところで、ここで用いられる非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等のエーテル型;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸(ラウリル)メチルエステル、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエステルエーテル型;ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型;オクチルグルコシド等のアルキルグリコシド;ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のアルカノールアミド型;ドデシルジメチルアミンオキサイド、テトラデシルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキシド;ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルアミン等のアルキルアミン型;セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を挙げることが出来る。それらの中でも、本発明にあっては、凝固点が低くて、親和性がよいところから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等が、特に好ましく用いられることとなる。
【0028】
また、かかる非イオン性界面活性剤の使用量は、疎水性ポリエステルポリオールや有機カルボン酸金属塩触媒の種類や使用量等に応じて、適宜に決定されることとなるが、一般に、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して5~30質量部、好ましくは8~25質量部の割合となるように用いられることとなる。この非イオン性界面活性剤の使用量が5質量部未満となると、相溶性の向上効果が充分に発揮され得なくなるからであり、また30質量部を超えるようになると、ポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンフォームの発泡体物性が低下するようになるからである。
【0029】
このようにして、ポリオールとしての疎水性ポリエステルポリオールや触媒としての所定の有機カルボン酸金属塩が、必須成分として含有せしめられ、更に必要に応じて、非イオン性界面活性剤等の添加剤が添加されて調製される液状の組成物Aには、発泡剤として添加される水や、ポリオール、触媒等の添加成分に必然的に混在する水分が含有せしめられるようになるが、そのような水分の組成物A中の存在割合が多くなると、液状の組成物Aの白濁化を招き、また液の不均質化を惹起する等して、ポリイソシアネート(組成物B)との反応によって形成されるポリウレタンフォームの物性にも、悪影響をもたらすこととなる。
【0030】
そこで、本発明にあっては、発泡剤の1つとして用いられる水の添加量を規制し、またポリオールや触媒等に含まれる水分量を低減せしめて、組成物A中の水分率が、質量基準で、3%以下、好ましくは2%以下となるように、調整したのである。なお、この水分率は、組成物Aに非イオン性界面活性剤や他の添加剤を更に加えた場合においても、かかる3%以下の範囲内となるように調整されることとなる。このように、本発明に従って、組成物A中の水分率が3%以下となるように、かかる組成物Aを構成することによって、ポリオール含有組成物Aの白濁化を防止すると共に、その均質性を高め、以て形成されるポリウレタンフォームの経時的な断熱性の低下や長期物性の低下を効果的に抑制乃至は阻止し得たのであり、特に、高湿度の環境下における断熱性能の低下を有利に防止し得ることとなったのである。
【0031】
一方、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を、上記したポリオール含有の組成物Aと共に構成する組成物Bは、かかる組成物A中のポリオールと反応して、ポリウレタン(樹脂)を生成する、分子中に2つ以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機イソシアネート化合物(ポリイソシアネート)を主体として含むものである。そして、そのような有機イソシアネート化合物であるポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用しても、何等差支えない。一般的には、反応性や経済性、取扱い性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、好適に用いられることとなる。
【0032】
なお、かかるポリイソシアネートを含む組成物Bと、前記したポリオールを含む組成物Aとの配合割合は、フォームの種類(例えば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート)によって変更されることとなるが、一般に、組成物B中のポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)と組成物A中のポリオールの水酸基(OH)との比率を示すNCO/OHインデックス(当量比)が、0.9~2.5程度の範囲となるように、適宜に決定されることとなる。
【0033】
ところで、本発明において、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンを発泡せしめて、ポリウレタンフォームを得るために用いられる発泡剤は、組成物A及び組成物Bのうちの少なくとも何れか一方に対して、添加、含有せしめられることとなるが、有利には、ポリオール含有の組成物Aに対して含有せしめられることとなる。そして、そこで用いられる発泡剤としては、公知の各種の非フロン系やフロン系の発泡剤が適宜に選択されることとなるが、その中でも、非フロン系発泡剤(及び/又はその発生源)が有利に用いられ、例えば、ハイドロカーボン(HC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)及びハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機の発泡剤が、組成物Aに対して好適に含有せしめられるのである。
【0034】
そして、そのような本発明において用いられ得る公知の各種の発泡剤の中で、フロン系発泡剤であるハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等を挙げることが出来る。
【0035】
また、非フロン系発泡剤の一つであるハイドロカーボン(HC)としては、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、イソブタン等を挙げることが出来る。更に、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン(HFO1345)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1354)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等を挙げることが出来、加えてハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)、1-クロロ-2,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)等を挙げることが出来る。特に、かかるハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低く、そのために、環境に優しい発泡剤として、注目を受けており、本発明においても、好適に用いることが出来る。
【0036】
さらに、本発明にあっては、発泡剤としての水が、上記した有機の発泡剤と共に、或いはそれに代えて、有利に用いられることとなる。そのような水が、ポリオール含有組成物A中に存在することによって、ポリオール含有組成物Aとポリイソシアネート含有組成物Bとが混合せしめられて、反応させられるときに、かかる水とポリイソシアネートとが反応して、二酸化炭素を生じる際に、反応熱が発生することとなるため、その熱によって、ウレタン化反応やイソシアヌレート化反応が、効果的に進行せしめられ得て、得られるポリウレタンフォームの圧縮強度が、更に高められ得るようになるのである。また、そのような水とポリイソシアネートとの反応によって発生する二酸化炭素が、ポリウレタンの発泡にも寄与することとなることは、勿論である。そして、かかる水の使用量としては、組成物A全体の水分率が3%を超えないような割合において、選定され、一般に、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して0.5~3質量部、好ましくは1~2.5質量部の割合となるように、水が組成物A中に含有せしめられる。なお、この水の使用量が多くなり過ぎると、ポリウレタンフォームの強度や熱伝導度等の特性に悪影響をもたらすようになるからであり、また、その使用量が少なくなり過ぎると、水を用いることによる発泡剤としての効果が充分に得られなくなる。
【0037】
ところで、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を構成するポリオール含有組成物Aやポリイソシアネート含有組成物Bには、上記した配合成分乃至は含有成分に加えて、更に必要に応じて、公知の難燃剤や整泡剤等の、従来から知られている各種の助剤を適宜に選択して、配合せしめることも可能である。
【0038】
ここで用いられる整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、公知のものの中から、適宜に選択されて用いられることとなる。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの、1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられることとなる。なお、この整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜に決定されるところであるが、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に0.1~10質量部程度、好ましくは1~8質量部程度の範囲で選択される。
【0039】
また、難燃剤としては、ポリウレタンフォームの難燃化のために従来から用いられている各種の難燃剤が適宜に用いられ得るところであるが、その一つとして、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート、トリエチルホスフェート等のリン酸エステルを挙げることが出来る。勿論、上記リン酸エステル以外にも、難燃剤として、赤リン、リン酸塩、ホウ酸塩、スズ酸金属塩、金属水酸化物等も、好適に使用され得ることとなる。なお、難燃剤を配合する場合において、その配合量は、所期のフォーム特性や難燃剤の種類等に応じて適宜決定され得るが、組成物A中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に5~60質量部、好ましくは10~40質量部の範囲で選択される。
【0040】
さらに、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、更に必要に応じて、例えば、尿素、メラミン等のホルムアルデヒド捕捉剤や、気泡微細化剤、可塑剤、補強基材等の、従来から知られている各種添加剤を、適宜に選択して配合することも出来る。
【0041】
なお、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を構成する組成物Aは、従来から公知の各種の手法によって、製造することが可能であるが、一般に、少なくとも疎水性ポリエステルポリオールを含むポリオールに、所定の有機カルボン酸金属塩を含む触媒を混合せしめ、更に必要に応じて、非イオン性界面活性剤、発泡剤、整泡剤、その他の添加剤等を配合して、均一に混合させてなる組成物として調製され、これが、プレミックス液として用いられて、ポリイソシアネート(組成物B)と反応せしめられることとなる。なお、そこで、非イオン性界面活性剤を含有させる場合にあっては、先に、非イオン性界面活性剤をポリオールに混合せしめた後、所定の有機カルボン酸金属塩を含む触媒や発泡剤、更に他の配合成分を混合する手法が、有利に採用されることとなる。このように、非イオン性界面活性剤とポリオールとを、先に混合することで、後から配合される所定の有機カルボン酸金属塩を含む触媒が、ポリオールに対して、かかる界面活性剤を介することによって、混ざり易くなるからである。このように、非イオン性界面活性剤の存在下において、所定の有機カルボン酸金属塩を含む触媒が、ポリオールに添加、混合せしめられるようにすることによって、それらポリオールと触媒との相溶性が、より一層効果的に高められ得るのである。
【0042】
そして、上述の如くして得られたポリオール含有組成物Aとポリイソシアネート含有組成物Bとを用いて、触媒の存在下で反応させて、発泡・硬化せしめるに際しては、公知の各種のポリウレタンフォームの製造手法が採用され得るところであって、例えば、それらポリオール含有組成物Aとポリイソシアネート含有組成物Bとの混合物を面材上に塗布して、板状に発泡・硬化を行なうラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性の要求される空間部内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内に注入、充填して、発泡・硬化を行なう注入発泡法、又は現場発泡機のスプレーガンヘッドから所定の被着体(構造体)へ吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法によって、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物は発泡・硬化せしめられ、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなるのであるが、特に、本発明にあっては、環境温度(周囲温度)下において、現場発泡せしめられるスプレー発泡法が、好適に採用される。このような現場吹付け発泡法への適用によって、本発明の特徴が更に有利に発揮され、また寸法安定性等の特性に優れたポリウレタンフォームが、有利に得られることとなるのである。
【実施例
【0043】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0044】
また、以下の実施例及び比較例において得られたポリオールを含む組成物Aの水分率の測定、濁り性の評価、更には、ポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンフォームの熱伝導率の測定及び難燃性、寸法安定性の評価は、それぞれ、以下の如くして実施した。
【0045】
(1)水分率の測定
以下の実施例及び比較例において調製されたポリオールを含む組成物Aを、それぞれ供試液として用いて、JIS-K-0113(2005)における「8.カールフィッシャー滴定方法」に準拠して、カールフィッシャー自動容量滴定法により、かかる供試液(組成物A)中の水分率を、測定する。
【0046】
(2)濁り性の評価
上記水分率の測定において用いた各供試液について、それぞれ、100mlとなるように計量して、25℃の雰囲気下において、10分間静置した後、その計量された供試液の濁りを目視にて評価する。なお、かかる目視による評価は、10名のパネラーにより、下記の評価基準にて実施し、その得られた評価レベルの平均値を取って、優劣を評価する。
◎:供試液に濁りが全く認められない。
○:供試液にはほぼ濁りは認められない。
△:供試液には若干の濁りが認められる。
×:供試液が濁っていることが認められる。
【0047】
-発泡体の作製-
以下の実施例及び比較例においてそれぞれ調製された、ポリオールを含む組成物Aを用いて、それと、ポリイソシアネートとしてのポリメリックMDI(万華化学ジャパン株式会社製Wannate PM-130)からなる組成物Bとを、発泡機(グラコ社製A-25)を使用して、910mm×910mmのフレキシブルボードに対して5mm以下の下吹きの後、30mm以下の厚みで積層を行ない、総厚みが60mm程度の発泡体(ポリウレタンフォーム)を作製した。なお、この吹付発泡において、ポリオール含有組成物Aとポリイソシアネート(組成物B)とは、体積比で1:1の割合で混合せしめられるようにした。
【0048】
(3)熱伝導率の測定
上記で得られた各発泡体について、それぞれの熱伝導率を、JIS-A-9511(2017)に準拠して、熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製オートラムダHC-074)を使用して、測定する。具体的には、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間静置した発泡体のコア部から、縦:190mm、横:190mm、厚み:25mmの寸法で、試験片を切り出した後、その切り出しから1日以内の試験片の熱伝導率を測定する一方、25℃、80%RHの雰囲気下で15日間保管された試験片の熱伝導率を測定して、それらの測定値を、それぞれ、初期熱伝導率及び15日後の熱伝導率とする。また、初期熱伝導率と15日後の熱伝導率の値から、下記式により、各発泡体についての熱伝導率の変化率(%)を算出する。
熱伝導率の変化率(%)=[(15日後の熱伝導率-初期熱伝導率)
/15日後の熱伝導率]×100
【0049】
先ず、以下の実施例及び比較例において用いられる成分として、以下の各種原料を準備した。
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI(万華化学ジャパン株式会社製Wannat e PM-130)
ポリオール:テレフタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製RFK 505)
(水溶解度:20g/100g-ポリオール)
ポリオール:マンニッヒ系ポリエーテルポリオール(第一工業製薬株式会社製DKポリ オール3776)
(水溶解度:50g/100g-ポリオール)
ポリオール:シュクロース系ポリエーテルポリオール(三洋化成工業株式会社製サンニ ックスHS-209)
(水溶解度:100g超/100g-ポリオール)
整泡剤:シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング株式会社製SH-193)
触媒:オクチル酸カリウム(日本化学産業株式会社製プキャット15G)
触媒:オクチル酸ビスマス(日本化学産業株式会社製プキャット25)
触媒:ネオデカン酸ビスマス(日本化学産業株式会社製)
触媒:酪酸カリウム(東京化成株式会社製)
触媒:酢酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
触媒:蟻酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
触媒:プロピオン酸カリウム(東京化成株式会社製)
触媒:イミダゾール触媒(花王株式会社製カオーライザーNo.390、1,2-ジメ チルイミダゾール:ジプロピレングリコール=70:30[質量比])
非イオン性界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(花王株式会社製エマ ルゲンLS106)
非イオン性界面活性剤:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式 会社製エマルゲンA-60)
難燃剤:赤リン(燐化学工業株式会社製ノーバエクセル140)
難燃剤:リン酸塩(富士フイルム和光純薬株式会社製、リン酸二水素アンモニウム)
難燃剤:リン酸エステル[大八化学工業株式会社製、TMCPP:トリス(1-クロロ -2-プロピル)ホスフェート]
発泡剤:HCFO-1233zd(Honeywell社製、1-クロロ-3,3,3 -トリフルオロプロペン)
発泡剤:HFO-1336mzz(Chemours社製、1,1,1,4,4,4- ヘキサフルオロ-2-ブテン)
発泡剤:HFC245fa(セントラル硝子株式会社製、1,1,1,3,3-ペンタ フルオロプロパン)
発泡剤:HFC365mfc(SOLVAY株式会社製、1,1,1,3,3-ペンタ フルオロブタン)
発泡剤:水
【0050】
上記で準備した各種の原料、即ち、ポリオール、触媒、整泡剤、非イオン性界面活性剤及び発泡剤を、下記表1~表2に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~11及び比較例1~6に係る各種の液状の組成物Aを、それぞれ、調製した。なお、非イオン性界面活性剤を配合せしめる場合にあっては、先ず、ポリオールに非イオン性界面活性剤を配合して、均一に混合せしめた後、触媒や発泡剤、更には他の添加成分を配合せしめる手法を、採用した。
【0051】
そして、かくして得られた各種のポリオール含有組成物Aを、供試液として用いて、その水分率を測定し、また濁り性の評価を行ない、更に、それら組成物Aとポリイソシアネートとの反応によって得られる発泡体(ポリウレタンフォーム)の初期熱伝導率及び15日後の熱伝導率について、それぞれ測定し、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1及び表2にまとめて示した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1~11において調製された、ポリオールを含有する各組成物Aにあっては、何れも、ほぼ濁りは認められず、ポリオールと触媒との相溶性が良好であることが認められた。特に、非イオン性界面活性剤を更に含有せしめてなる実施例10及び実施例11に係る組成物Aにあっては、濁りが全くなく、耐濁り性においてより優れていることが認められる。また、実施例1~11において調製された、濁りの認められない組成物Aとポリイソシアネート(組成物B)とを用いて得られたポリウレタンフォームにあっては、何れも、高湿度環境下での特性の長期安定性を確認するために求められた、15日後の熱伝導率が0.025W/m・K以下となるものであって、中長期に亘る熱伝導率の変化も低く維持し得るという格別な特性を有するものであることが認められる。
【0055】
これに対して、表2に示される結果から明らかな如く、比較例1~6において調製された、濁りが認められる組成物Aを用いて、ポリイソシアネート(組成物B)との反応により形成されたポリウレタンフォームにあっては、何れも、15日後の熱伝導率が、初期熱伝導率から大きく変化して、中長期に亘る断熱性能が低下していることが認められた。特に、発泡剤としての水を多く含有する比較例4及び5に係る組成物Aや、疎水性でないポリエーテルポリオールを含有する比較例6に係る組成物Aを用いて作製されたポリウレタンフォームにあっては、何れも、初期熱伝導率が高く、且つ長期安定性を確認するための15日後の熱伝導率が大きく変化して、中長期に亘る断熱性能が低下していることが認められる。
【0056】
-難燃性の評価-
下記表3に示されるように、ポリオール、触媒、整泡剤及び発泡剤に加えて、更に難燃剤が配合せしめられてなる、実施例12~14に係る組成物Aを用いて、それぞれ、上記の実施例と同様にして、前記した発泡体の作製手法に従って、ポリウレタンフォームを作製し、そしてその得られたポリウレタンフォームについて、JIS-A-9511(2017)に規定される燃焼試験の試験方法Bに準じて、難燃性の評価を行なった。具体的には、各発泡体から50mm×150mm×13mmの試験片を切り出し、その試験片の一端を、魚尾灯を備えたブンゼンバーナーで60秒間燃焼させた後、消炎までの時間及び燃焼距離の測定を行ない、以下の基準で評価して、その結果を、下記表3に示した。
◎:燃焼距離が30mm未満、且つ燃焼時間が60秒未満。
○:燃焼距離が60mm未満、且つ燃焼時間が120秒未満。
△:燃焼距離が60mm以上又は燃焼時間が120秒以上。
×:燃焼距離が60mm以上、且つ燃焼時間が120秒以上。
【0057】
【表3】
【0058】
かかる表3の結果から明らかなように、難燃剤が添加された、実施例12~14に係る組成物Aを用いて得られた何れのポリウレタンフォームにあっても、優れた難燃性を有していることが、認められた。
【0059】
-寸法安定性の評価-
実施例1、実施例3及び実施例4で得られた各ポリウレタンフォームから、内部スキン層(1回目の下吹きによって形成されたスキン層)を含む、100mm×100mm×25mmの大きさを有する試験片を切り出し、その切り出された試験片を、70℃(湿度不制御)、70℃(相対湿度:95%)及び-30℃(湿度不制御)の各環境下において、それぞれ、48時間静置し、その後、それぞれの試験片の寸法をノギスで測定し、その測定結果を用いて、下記式より、寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=[(試験後の試験片の寸法-試験前の試験片の寸法)
/試験前の試験片の寸法]×100
【0060】
そして、かかる算出された寸法変化率を、以下の基準に従って評価して、その結果を、下記表4に示した。なお、「◎」及び「○」の評価を合格とする。
◎:寸法変化率が1%未満である。
○:寸法変化率が1%以上3%未満である。
△:寸法変化率が3%以上7%未満である。
×:寸法変化率が7%以上である。
【0061】
【表4】
【0062】
かかる表4の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1、実施例3及び実施例4において得られたポリウレタンフォームにあっては、何れも、小さな寸法変化率を有するものであり、良好なフォーム特性を有していることが認められる。特に、実施例3及び実施例4においては、疎水性ポリエステルポリオールと共に、疎水性ポリエーテルポリオールが、組成物A中に含有されているために、形成されたポリウレタンフォームが、より優れた寸法特性を発揮していることが認められる。