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  • 特許-構台杭の杭頭構造および杭頭キャップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】構台杭の杭頭構造および杭頭キャップ
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20230602BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
E02D27/00 Z
E02D5/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019085678
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180518
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】酒徳 直人
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148236(JP,A)
【文献】特開2015-143457(JP,A)
【文献】特開2014-005652(JP,A)
【文献】特開2015-068028(JP,A)
【文献】特開2002-317452(JP,A)
【文献】特開2006-336414(JP,A)
【文献】特開2002-070048(JP,A)
【文献】特開2017-020265(JP,A)
【文献】特開2001-164586(JP,A)
【文献】特開2012-162862(JP,A)
【文献】特開2011-094474(JP,A)
【文献】特開2016-145475(JP,A)
【文献】特開2008-115628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に打設された羽根付き鋼管杭からなる複数の構台杭と、前記構台杭の杭頭にそれぞれ立設された複数の構台柱と、記構台柱間に架設された複数の大引および複数の垂直ブレースと前記大引間に架設された複数の根太および前記根太の上に敷設された複数の覆工板とを備えてなる作業構台において施工される構台杭の杭頭構造であって、前記構台杭の杭頭に前記構台杭間の杭頭高を同一高に調整する杭頭キャップが設置され、前記杭頭キャップは前記構台杭の設定された杭頭高に対して不足する高さを補足する高さに形成され、前記構台杭の杭頭に固定されたキャップ本体と、前記キャップ本体の上端部に設けられたベース部と、前記キャップ本体と前記ベース部との隅角部に設けられ、前記キャップ本体および前記ベース部を補強する複数の補強リブを備え、前記キャップ本体は前記構台杭とほぼ同一径の鋼管から形成され、かつ前記構台杭の上端部に溶接によって一体に取り付けられていることを特徴とする構台杭の杭頭構造。
【請求項2】
請求項1記載の構台杭の杭頭構造において、前記構台杭の杭頭間に敷桁が架設され、前記敷桁は前記ベース部の上に、前記構台柱は前記敷桁の上にそれぞれ複数の固定ボルトによって脱着可能に固定されていることを特徴とする作業構台の杭頭構造。
【請求項3】
先端部に羽根を備えた羽根付き鋼管杭からなる複数の構台杭と、前記構台杭の杭頭にそれぞれ立設された複数の構台柱と、記構台柱間に架設された複数の大引および複数の垂直ブレースと前記大引間に架設された複数の根太および前記根太の上に敷設された複数の覆工板とを備えてなる作業構台において施工される構台杭の杭頭に設置され、前記構台杭間の杭頭高を同一高に調整する杭頭キャップであって、前記構台杭の設定された杭頭高に対して不足する高さを補足する高さに形成され、前記構台杭の杭頭に固定されたキャップ本体と、前記キャップ本体の上端部に設けられたベース部と、前記キャップ本体と前記ベース部との隅角部に設けられ、前記キャップ本体および前記ベース部を補強する複数の補強リブを備え、前記キャップ本体は前記構台杭とほぼ同一径の鋼管から形成され、かつ前記構台杭の上端部に溶接によって一体に取り付けられていることを特徴とする杭頭キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構台杭の杭頭構造および構台杭の杭頭に設置される杭頭キャップに関し、打設された複数の構台杭の杭頭高を設定された杭頭高に容易に調整することができ、かつその上に作業構台を効率的に構築できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木工事では、建設機械の作業スペースや建設資材の仮置スペース等を確保のため、本体工事に先行して作業構台が構築される。
【0003】
図4は、従来の作業構台の概要を図示したものであり、作業構台30は、地盤に一定間隔に離間して打設された複数の構台杭31,31の上に構築され、各構台杭31の上に立て付けられた構台柱32、構台柱32,32の上端部間に架設された大引33、大引33,33間に架設された根太34および根太34,34間に敷設された覆工板35、さらに各構台柱32,32間に架設された垂直ブレース36等からなり、特に、構台杭31には先端部に螺旋状の羽根を備えた羽根付き鋼管杭が用いられている。
【0004】
羽根付き鋼管杭は、鋼管の先端部に地盤への回転貫入を容易にする翼を備え、特に低振動、低騒音、無排土施工が可能で環境への負荷が少ない。
【0005】
また、大きな支持力を持ちながら撤去が容易で、かつ再使用が可能で経済性に優れているため、作業構台などの後々撤去される仮設構造物の基礎杭として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-55984号公報
【文献】特開2009-24350号公報
【文献】特開2005-76399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、羽根付き鋼管杭は、施工に際して杭頭レベルの管理が非常に難しく、施工される杭の全てについて杭頭高を一致させることは非常に困難であった。
【0008】
このため、従来、打設された各構台杭の上に構台柱を立設して作業構台を構築する際は、各構台杭ごとに構台柱の長さを決め、また、構台柱に接合される大引や垂直ブレース等をボルト締結するためのボルト孔は、機械式穴明け機を用い現地で穴明けを行う必要があった。このため、施工効率が非常に悪く、工期の長期化等が避けられない等の課題があった。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、打設された複数の構台杭の杭頭高を設定された杭頭高に容易に調整することができ、かつその上に作業構台を効率的に構築できるようにした構台杭の杭頭構造および杭頭キャップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、地盤中に打設された羽根付き鋼管杭からなる複数の構台杭と、前記構台杭のそれぞれの杭頭に立設された複数の構台柱と、前記構台柱間に架設された複数の大引および複数の垂直ブレースと前記大引間に架設された複数の根太および前記根太の上に敷設された複数の覆工板とを備えてなる作業構台において施工される構台杭の杭頭構造の発明であり、前記構台杭の杭頭に、前記構台杭間の杭頭高を同一高に調整する杭頭キャップが設置され、前記杭頭キャップは、前記構台杭の設定された杭頭高(設計杭頭高)に対して不足する高さを補足する高さに形成され、かつ前記構台杭の杭頭に固定されたキャップ本体と、前記キャップ本体の上端部に設けられ、前記構台柱が固定されたベース部と、前記キャップ本体と前記ベース部との隅角部に設けられ、前記キャップ本体および前記ベース部を補強する複数の補強リブを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
前記構台杭には、特に先端部に螺旋状の羽根を備えた羽根付き鋼管杭が用いられていることで、低振動、低騒音、無排土施工が可能となり、環境への負荷を少なくすることができる。
【0012】
また、羽根付き鋼管杭は、大きな支持力を持ちながら撤去が容易で、後々撤去される作業構台の基礎杭には適している。
【0013】
通常は、各構台杭のそれぞれの杭頭に、設定された杭頭高(設計杭頭高)に対して不足する杭頭高を補足する高さに調整された杭頭キャップを設置し、その上に作業構台の構台柱を直接立て付けるが、作業構台の設置地盤が不安定であったり、或いは作業構台の床面積が広く作業構台の規模が大きいとき等には、前記杭頭キャップを設置した杭頭間に敷桁を架設し、その上に作業構台の構台柱を立て付けることにより、杭頭部を補強して作業構台の安定性を高めることができる。
【0014】
その際、一部の杭頭キャップを省略し、その代替部材として杭頭と敷桁との間にプレート等を複数層に重ねて介在することにより、杭頭キャップの種類を減らすこともできる。
【0015】
杭頭キャップは、鋼管と複数のプレートを用いて溶接により形成することができ、また、鋳造によって一体的に形成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、打設された複数の構台杭の杭頭に杭頭キャップを設置することにより、構台杭間の杭頭高を同じ高さに容易に調整することができ、これにより各構台杭の杭頭に構台柱を立て付けて作業構台をきわめて効率的に構築することができる。
【0017】
特に、構台柱と大引間や垂直ブレース間などの各部材間の接合は、原則、接合ボルト(図省略)によってなされるため、杭頭キャップによって構台杭の杭頭高を全て同じ杭頭高に調整することにより、構台柱や垂直ブレース等のカットや穴あけ加工は、全て工場にて正確かつ容易に行うことができ、また、これにより、現地における作業構台の構築もきわめて効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態を図示したものであり、(a)は複数の構台杭の杭頭間に敷桁を架設し、その上に構台柱を立て付けて構築された作業構台の正面図、(b)は作業構台と作業構台を支持する構台杭との取合い部を示す正面図である。
図2】杭頭キャップを図示したものであり、(a)は一部破断正面図、(b)は平面図である。
図3】本発明の他の実施形態を図示したものであり、(a)は複数の構台杭のそれぞれの杭頭上に構台柱を直接立て付けて構築された作業構台の正面図、(b)は作業構台と作業構台を支持する構台杭との取合い部を示す正面図である。
図4】従来の作業構台を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図2は、本発明の一実施形態を図示したものであり、地盤中に打設された複数の構台杭、複数の構台杭の上に構築された作業構台および複数の構台杭のそれぞれの杭頭に設置された杭頭キャップを図示したものである。
【0020】
図において、一定区画の敷地内の地盤中に複数の構台杭1が作業構台2の桁行方向および梁間方向に所定間隔に離間して打設され、当該各構台杭1のそれぞれの杭頭に杭頭キャップ3が設置されている。
【0021】
構台杭1には、特に先端部に螺旋状の羽根を備えた羽根付き鋼管杭が用いられている。羽根付き鋼管杭は、鋼管の先端部に地盤への回転貫入を容易にする翼を備えていることで、特に低振動、低騒音、無排土施工が可能で環境への負荷が少ない。
【0022】
また、大きな支持力を持ちながら撤去が容易で、しかも繰り返しの使用が可能で経済性にも優れているため、作業構台などの後々撤去される仮設構造物の基礎杭などに適している。
【0023】
杭頭キャップ3は、地盤中に打設された各構台杭1の杭頭高を、設定された杭頭高(設計杭頭高)に調整するための高さ調整部材であり、構台杭1の上端部に取り付けられたキャップ本体3aと、キャップ本体3aの上端部に取り付けられたベースプレート3bと、キャップ本体3aとベースプレート3bとの隅角部(入隅部)に取り付けられた複数の補強リブ3cとを備えている。
【0024】
キャップ本体3aは、構台杭1とほぼ同径の鋼管から形成され、特にその高さhは、各構台杭1の杭頭高h1ごとに設計杭頭高h2に対して不足する高さを補足する高さhに設定されている。
【0025】
例えば、構台杭1の杭頭高がh1で設計杭頭高h2より低いときは、キャップ本体3aはh2-h1の高さhに形成されている。したがって、キャップ本体3aは、設置される各構台杭1ごとに高さhが異なっている。
【0026】
このように形成されたキャップ本体3aは、各構台杭1の上端部に溶接によって一体的に取り付けられ、これにより各構台杭1の杭頭高は、すべて設計杭頭高h2に統一されている。
【0027】
ベースプレート3bは、キャップ本体3aの外径より大きい寸法の板状に形成され、キャップ本体3aの上端部に一体的に溶接されている。また、ベースプレート3bの所定位置に後述する敷桁4をボルト締結するためのボルト孔3dが複数形成されている。
【0028】
なお、ベースプレート3bの平面形状は、特に限定されるものではなく、図示するような矩形板状でも円形板状であってもよい。また、補強リブ3cは、キャップ本体3aの円周方向に等間隔に配置され、キャップ本体3aおよびベースプレート3bに一体的に溶接されている。
【0029】
また、キャップ本体3a、ベースプレート3bおよび補強リブ3cは、工場において杭頭キャップ3として溶接により一体的に製作されており、特に、キャップ本体3aは、全ての構台杭1に対応できるように長めに形成し、現地にて設置される構台杭1の杭頭高h1に合わせてカットするようにしてもよい。
【0030】
また、キャップ本体3a、ベースプレート3bおよび補強リブ3cは、鋳造により杭頭キャップ3として一体的に形成することもできる。
【0031】
作業構台2の桁行方向および梁間方向の各構台杭1,1の上端部間に敷桁4が架設されている。敷桁4には主としてH形鋼が用いられ、各構台杭1の上端部に設置された杭頭キャップ3のベースプレート3bの上に載置され、かつボルト孔3dを貫通する複数の締結ボルト5によって脱着可能に固定されている。
【0032】
さらに、各敷桁4の上に作業構台2の構台柱6が桁行方向および梁間方向に所定間隔に離間して立て付けられている。構台柱6には主としてH形鋼が用いられ、また、構台柱6は構台杭1の直上に立て付けられ、かつ敷桁4の上に複数の固定ボルト7によってボルト締結することで脱着可能に固定されている。
【0033】
さらに、作業構台2の梁間方向に隣接する各構台柱6,6の上端部間に大引8が架設され、各大引8,8間に根太9が架設されている。また、各根太9,9間に覆工板10が敷設され、かつ桁行方向および梁間方向に隣接する各構台柱6,6間に垂直ブレース11が架設されている。
【0034】
大引8、根太9および垂直ブレース11にはH形鋼や溝形鋼、或いは山形鋼などが用いられている。また、各構台柱6と大引8間、各大引8と根太9間、各根太9と覆工板10間および各構台柱6と垂直ブレース10間の各接合部は、原則全てが複数の接合ボルト(図省略)によって接合されている。
【0035】
また、構台杭1の杭頭に杭頭キャップ3を設置することにより、各構台杭1の杭頭高が全て同じ杭頭高に統一されていることで、構台柱1などの各部材のカットや穴あけ等の加工は、原則全てを工場で行うことができ、特に構台柱6のカットや穴あけ加工は、杭頭高を基準に工場にて正確かつ容易に行うことができる。
【0036】
また、これにより、現地における作業構台の構築もきわめて効率的に行うことができる。
【0037】
図3(a),(b)は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、
図1,2における敷桁が省略され、各構台杭1の杭頭に設置された杭頭キャップ3の上に構台柱6が直接立て付けられている。
【0038】
また、杭頭キャップ3のベースプレート3bの上に複数の固定ボルト7によって固定されている。特に、作業構台の設置地盤が比較的安定している場合や、構台柱6の数が少なく、比較的小規模な作業構台などの構築に適している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、一定区画の地盤中に打設された複数の構台杭の杭頭高を設定された杭頭高に容易に調整することができ、かつその上に作業構台を効率的に構築することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 構台杭
2 作業構台
3 杭頭キャップ
3a キャップ本体
3b ベースプレート(ベース部)
3c 補強リブ
3d ボルト孔
4 敷桁
5 締結ボルト
6 構台柱
7 固定ボルト
8 大引
9 根太
10 覆工板
11 垂直ブレース
図1
図2
図3
図4