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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】タッチセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
G01L1/20 C
G01L1/20 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019134266
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021018151
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(73)【特許権者】
【識別番号】391025730
【氏名又は名称】岡野電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 陽平
(72)【発明者】
【氏名】丸山 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲脇▼嶋 智晴
(72)【発明者】
【氏名】前田 英一
(72)【発明者】
【氏名】縄本 正俊
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/021235(WO,A1)
【文献】特開2012-146558(JP,A)
【文献】特開2008-192487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0084675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20
H01B 7/10
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力が付与されると弾性変形する中空のセンサ部と、
前記センサ部の内部に所定のピッチで螺旋状に設けられ、前記センサ部の弾性変形に伴って互いに接触する複数本の線状電極と、を有するタッチセンサであって、
前記線状電極のそれぞれは、撚り合わされた複数本の素線からなる導体層と、前記導体層を覆う導電性樹脂からなる被覆層と、を備え、
それぞれの前記線状電極の前記ピッチ(P)と当該線状電極における前記被覆層の厚み(T)との比率(P/T)が12.5であり、
前記ピッチ(P)が7.5mmであり、前記被覆層の厚み(T)が0.6mmである、タッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物の接触を検知するのに用いられるタッチセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、当該車両が備える開口部を開閉する開閉体(例えば、スライドドアやテールゲート)と、開閉体を駆動する開閉装置と、が設けられることがある。開閉装置は、駆動源である電動モータと、電動モータをオン/オフさせる操作スイッチと、を備えている。開閉装置が備える電動モータは、操作スイッチの操作に基づいて作動し、開閉体を開駆動または閉駆動する。また、開閉装置の中には、操作スイッチの操作の有無にかかわらず、開閉体を開駆動または閉駆動する自動開閉装置がある。従来の自動開閉装置の1つは、開口部と開閉体との間に挟まれた障害物を検知するタッチセンサを備えており、当該タッチセンサの検知結果に基づいて開閉体を駆動する。例えば、自動開閉装置は、タッチセンサによって障害物が検知されると、それまで閉駆動されていた開閉体を開駆動させたり、その場で停止させたりする。
【0003】
上記のようなタッチセンサの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されているタッチセンサは、弾性変形可能な中空のセンサ部と、センサ部内に設けられた2本の線状電極と、を有する。それぞれの線状電極は、導体層と、導体層の周囲に設けられた被覆層と、を備えている。さらに、2本の線状電極は、センサ部内に螺旋状に設けられ、かつ、通常は非接触の状態で互いに交差している。また、被覆層は導電性樹脂によって形成されている。よって、センサ部が何らかの外力を受けて弾性変形し、これに伴って2本の線状電極がセンサ部内において接触すると、線状電極間の電気抵抗が大きく変化(低下)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-228299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチセンサを含むセンサには検知精度や検知感度など(以下、「検知性能」と総称する場合がある。)のさらなる向上が求められている。一方、特許文献1に記載されているタッチセンサには、低温時の検知性能が常温時の検知性能よりも劣る傾向があった。本件発明者らは、タッチセンサの検知性能の向上、特に低温時における検知性能の向上を実現すべく研究を重ねる中で、センサ部内に螺旋状に設けられている線状電極のピッチと当該線状電極における被覆層の厚みとの比率が検知性能に大きく影響しているとの知見を得た。
【0006】
本発明の目的は、上記知見に基づいてタッチセンサの検知性能のさらなる向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタッチセンサは、外力が付与されると弾性変形する中空のセンサ部と、前記センサ部の内部に所定のピッチで螺旋状に設けられ、前記センサ部の弾性変形に伴って互いに接触する複数本の線状電極と、を有する。前記線状電極のそれぞれは、撚り合わされた複数本の素線からなる導体層と、前記導体層を覆う導電性樹脂からなる被覆層と、を備える。そして、それぞれの前記線状電極の前記ピッチ(P)と当該線状電極における前記被覆層の厚み(T)との比率(P/T)は、12.5以上13.3以下である。
【0008】
本発明の一態様では、前記比率(P/T)は12.5である。
【0009】
本発明の他の一態様では、前記ピッチ(P)は7.5mmであり、前記被覆層の厚み(T)は0.6mmである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも検知性能が向上したタッチセンサが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】タッチセンサユニットが搭載された車両のテールゲートを示す正面図である。
図2】タッチセンサユニットが搭載された車両のテールゲートを示す側面図である。
図3】タッチセンサユニットを示す斜視図である。
図4】タッチセンサの構造を示す拡大図である。
図5】タッチセンサの構造を示す断面図である。
図6】センサ部内における線状電極の配置状態を示す模式図である。
図7】(a),(b)は、ピッチが異なる線状電極に障害物が接触したときの当該線状電極に対する力の入力状態を示す模式図である。
図8】タッチセンサの性能試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用されたタッチセンサの一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係るタッチセンサは、図1図2に示す車両10に搭載される。図示されている車両10は、所謂ハッチバックタイプの車両である。この車両10の後部には、大きな荷物を車室内に出し入れし得る開口部11が設けられている。開口部11は、車両10の天井部の後方側に設けられたヒンジ(図示せず)によって回動可能に支持された開閉体12によって開閉される。開閉体12は、「テールゲート」,「リアゲート」,「バッグドア」等と呼ばれるが、本明細書では「テールゲート」と呼ぶ。
【0013】
車両10には、テールゲート12を図2中の実線矢印および破線矢印に示される方向に回動(開閉)させるパワーテールゲート装置13が搭載されている。パワーテールゲート装置13は、テールゲート12を開閉させる減速機付きのアクチュエータ13aと、スイッチ(図示せず)の操作に基づいてアクチュエータ13aを制御するコントローラ13bと、障害物BLを検知するための一対のタッチセンサユニット20と、を備えている。そして、本実施形態に係るタッチセンサは、タッチセンサユニット20の一部として車両10に搭載される。つまり、本実施形態に係るタッチセンサは、タッチセンサユニット20の構成要素の1つであり、タッチセンサユニット20は、パワーテールゲート装置13の構成要素の1つである。
【0014】
図1に示されるように、タッチセンサユニット20は、テールゲート12の外周面に設けられている。具体的には、タッチセンサユニット20は、テールゲート12の車幅方向両側面にそれぞれ設けられている。より具体的には、タッチセンサユニット20は、テールゲート12の湾曲した両側面(縁)に、それら側面の形状に沿って設けられている。よって、開口部11とテールゲート12との間に障害物BLが挟まれると、当該障害物BLがタッチセンサユニット20によって検知される。タッチセンサユニット20は、障害物BLを検知すると検知信号を出力し、タッチセンサユニット20から出力された検知信号は、コントローラ13bに入力される。検知信号が入力されたコントローラ13bは、操作スイッチの操作状況に関わらず、閉駆動されているテールゲート12を開駆動させるか、閉駆動されているテールゲート12をその場で停止させる。
【0015】
図3に示されるように、タッチセンサユニット20は、タッチセンサ30,センサホルダ31およびブラケット32を含み、これらタッチセンサ30,センサホルダ31およびブラケット32は一体化されている。具体的には、タッチセンサ30は、センサホルダ31を介してブラケット32と一体化されている。
【0016】
ブラケット32は、プラスチック等の樹脂材料によって形成されており、テールゲート12(図1図2)の側面(縁)と略同一の長さを有し、全体として板状の外観を呈している。また、タッチセンサ30の長手方向一部はセンサホルダ31に固定されている一方、残部はセンサホルダ31に固定されていない。そして、タッチセンサ30の一部が固定されているセンサホルダ31がブラケット32に接合されている。以下の説明では、センサホルダ31に固定されていないタッチセンサ30の長手方向一部を「引き出し部」と呼んで他の部分と区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0017】
上記のような基本構造を備えるタッチセンサユニット20は、ブラケット32がテールゲート12(図1図2)の側面(縁)に固定されることによって車両10に取り付けられる。この際、タッチセンサ30の引き出し部は、テールゲート12に設けられている引き込み穴からテールゲート12の内側に引き入れられる。また、引き出し部が引き入れられた後の引き込み穴は、引き出し部に装着されているグロメットGMによって塞がれる。
【0018】
以下、タッチセンサユニット20の構造についてより詳細に説明する。
【0019】
図3に示されるように、タッチセンサユニット20の構成要素の1つであるタッチセンサ30は、センサ部40と、センサ部40の内部に設けられた複数の電極41,42と、コネクタ43と、を有し、電極41,42を内蔵するセンサ部40の一部がセンサホルダ31に埋設されている。センサホルダ31は、絶縁性ゴムによって形成されており、弾性を有する。つまり、センサホルダ31は、外力が付与されると変形し、外力が除かれると元の形状に復帰する。また、コネクタ43は、不図示の他のコネクタに接続される。コネクタ43が他のコネクタに接続されることにより、タッチセンサユニット20がコントローラ13b(図1図2)と電気的に接続され、タッチセンサユニット20から出力される検知信号がコントローラ13bに入力可能となる。
【0020】
図4図5に示されるように、センサホルダ31は、一体成形された収容部31aおよび土台部31bを有する。収容部31aは中空であり、この収容部31aの内部にタッチセンサ30が収容され、土台部31bはブラケット32(図3)に固定される。尚、図4では、タッチセンサ30のセンサ部40およびブラケット32の図示は省略されている。
【0021】
図5に示されるように、タッチセンサ30のセンサ部40は中空である。具体的には、センサ部40は、絶縁性ゴムからなるチューブであって、弾性を有する。つまり、センサ部40は、外力が付与されると変形し、外力が除かれると元の形状に復帰する。また、センサ部40の内径は、電極41,42の外径の約3倍である。
【0022】
図4図5に示されるように、それぞれの電極41,42は線状電極である。2本の線状電極41,42は、センサ部40の内部に螺旋状に設けられており、通常は非接触の状態で互いに交差している。また、螺旋状に巻かれているそれぞれの線状電極41,42の外周面はセンサ部40の内周面に固定(溶着)されており、2本の線状電極41,42の間には、同様の線状電極がもう1本入る程度の隙間がある。
【0023】
図5に示されるように、それぞれの線状電極41,42は、撚り合わされた複数本の素線50aからなる導体層50と、導体層50を覆う被覆層51と、を備えている。本実施形態における素線50aは銅線である。つまり、本実施形態における導体層50は、複数本の銅線が撚り合わされた撚り線である。また、本実施形態における被覆層51は、導電性樹脂によって形成されており、所定の厚み(T)を有する。尚、線状電極41の被覆層51の厚み(T)と、線状電極42の被覆層51の厚み(T)とは、同一または実質的に同一である。以下の説明では、被覆層51の厚み(T)を「被覆厚(T)」と呼ぶ場合がある。
【0024】
図4に最も明確に示されているように、2本の線状電極41,42は、それぞれが螺旋状に巻かれ、かつ、通常では互いに接触しない状態で交差している。一方、図5に示されるセンサ部40は外力が付与されると弾性変形し、センサ部40が収容されているセンサホルダ31(収容部31a)も外力が付与されると弾性変形する。よって、センサホルダ31の収容部31aがある程度以上の外力を受けて弾性変形すると(潰れると)、これに伴ってセンサ部40に外力が付与される。すると、センサ部40が弾性変形し、これに伴って2本の線状電極41,42が互いに近接して接触する。具体的には、一方の線状電極41の被覆層51と他方の線状電極42の被覆層51とが接触する。つまり、2本の線状電極41,42が電気的に導通する(短絡する)。
【0025】
図3に示されるように、タッチセンサ30の先端にはモールド部45が設けられている。図4に示されるように、モールド部45は、絶縁体からなるセパレータSPと、抵抗Rと、2つの接続部材SW1,SW2と、これらを被覆するモールド樹脂MRと、から構成されている。そして、線状電極41の端部は、接続部材SW1を介して抵抗Rの一端に接続され、線状電極42の端部は、接続部材SW2を介して抵抗Rの他端に接続されている。つまり、2本の線状電極41,42は、モールド部45内において、抵抗Rを介して直列接続されている。よって、線状電極41,42が短絡していない状態では、抵抗Rの抵抗値がコントローラ13b(図1)に入力される。一方、線状電極41,42が短絡すると、抵抗Rを介さない抵抗値がコントローラ13b(図1)に入力される。つまり、線状電極41,42が短絡すると、コントローラ13bに入力される抵抗値が大幅に低下する。図1に示されるコントローラ13bは、入力される抵抗値が所定の閾値よりも小さくなると、操作スイッチの操作状況に関わらず、閉駆動されているテールゲート12を開駆動させるか、閉駆動されているテールゲート12をその場で停止させる。ここで、線状電極41,42の短絡は、開口部11とテールゲート12との間に挟まれた障害物BLによって引き起こされる。具体的には、開口部11とテールゲート12との間に挟まれた障害物BLにセンサホルダ31の収容部31aが接触すると、当該収容部31aが外力を受けて弾性変形する。すると、上記のとおり、収容部31aに収容されているセンサ部40が弾性変形し、センサ部40に収容されている線状電極41,42が互いに近接して接触する。このように、テールゲート12に装着されているタッチセンサユニット20(センサホルダ31)に障害物BLが接触すると、タッチセンサユニット20からそれまでよりも低い抵抗値が検知信号として出力され、コントローラ13bに入力される。もっとも、タッチセンサユニット20(センサホルダ31)に障害物BLが接触すると、タッチセンサユニット20から所定の電気信号が検知信号として出力され、コントローラ13bに入力される実施形態もある。
【0026】
図6を参照する。螺旋状に巻かれている線状電極41,42上には、その長手方向(図6の紙面左右方向)に沿って山部61と谷部62とが交互に現れる。尚、図6では、線状電極41と線状電極42とを区別し易いように、線状電極42にのみハッチング(ドットパターン)を付してある。
【0027】
線状電極41における隣接する2つの山部61,61の間隔または隣接する2つの谷部62,62の間隔が線状電極41のピッチ(P)である。また、線状電極42における隣接する2つの山部61,61の間隔または隣接する2つの谷部62,62の間隔が当該線状電極42のピッチ(P)である。そして、線状電極41のピッチ(P)と線状電極42のピッチ(P)とは、同一または実質的に同一である。
【0028】
本実施形態では、線状電極41,42のピッチ(P)と図5に示される線状電極41,42の被覆厚(T)との比率(P/T)が12.5以上13.3以下である。より具体的には、図6に示される線状電極41,42のピッチ(P)は7.5mmであり、図5に示される線状電極41,42の被覆厚(T)は0.6mmである。つまり、本実施形態における比率(P/T)は12.5である。
【0029】
線状電極41,42のピッチ(P)と線状電極41,42の被覆層51の厚み(T)との比率(P/T)が上記範囲内である本実施形態のタッチセンサ30は、検知性能、特に低温時における検知性能が高い。以下、その理由について説明する。
【0030】
図6を参照する。線状電極41,42は、そのピッチ(P)が大きく(広く)なるほど潰れやすくなる。具体的には、線状電極41,42のピッチ(P)が大きくなればなるほど、それら線状電極41,42における山部61の高さが低くなり、勾配も緩やかになる。同様に、線状電極41,42のピッチ(P)が大きくなればなるほど、それら線状電極41,42における谷部62の深さが浅くなり、勾配も緩やかになる。つまり、線状電極41,42のピッチ(P)が大きければ大きいほど、当該線状電極41,42の山部61を押し下げ、谷部62を押し上げるために必要な力は小さくなる。よって、線状電極41,42は、より小さな力によって互いに接触し得る。言い換えれば、線状電極41,42のピッチ(P)が小さければ小さいほど、線状電極41,42を互いに接触させるために必要な力が大きくなる。
【0031】
図5を参照する。線状電極41,42は、被覆厚(T)が小さく(薄く)なるほど潰れやすくなる。具体的には、線状電極41,42の被覆厚(T)が小さくなればなるほど、それら線状電極41,42の弾性復元力が弱くなる。つまり、線状電極41,42の被覆厚(T)が小さければ小さいほど、当該線状電極41,42の山部61(図6)を押し下げ、谷部62(図6)を押し上げるために必要な力は小さくなる。よって、線状電極41,42は、より小さな力によって互いに接触し得る。言い換えれば、線状電極41,42の被覆厚(T)が大きければ大きいほど、線状電極41,42を互いに接触させるために必要な力が大きくなる。
【0032】
上記のとおり、なるべく小さな力によって線状電極41,42を接触させるためには、図6に示されるピッチ(P)を大きくし、かつ、図5に示される被覆厚(T)を小さくすることが好ましい。つまり、比率(P/T)を大きくすることが好ましい。特に、低温時には、被覆層51のみでなく、センサ部40やセンサホルダ31(収容部31a)などの樹脂部材が硬くなる。このため、センサホルダ31(収容部31a)に同一の外力が付与されたとしても、低温時に線状電極41,42に及ぶ力は、常温時に線状電極41,42に及ぶ力よりも小さく(弱く)なる傾向がある。よって、比率(P/T)を大きくすることは、低温時におけるタッチセンサ30の検知性能向上につながる。
【0033】
しかしながら、線状電極41,42のピッチ(P)を大きく(広く)し過ぎると、タッチセンサ30の検知性能が却って低下する虞がある。図7(a),(b)は、ピッチ(P)が異なる線状電極41,42に同サイズの障害物BLが接触したときの線状電極41,42に対する力の入力状態を示す模式図である。尚、実際のタッチセンサ30では、線状電極41,42の周囲にセンサ部40が存在しており、線状電極41,42に直に障害物BLが接触することはない。
【0034】
図7(a),(b)に示されるように、ピッチ(P)が大きい場合(図7(b))は、ピッチ(P)が小さい場合(図7(a))に比べて、障害物BLと線状電極41,42との接点(入力点)から直近の山部61の頂点までの距離が長くなる。そして、ピッチ(P)がより大きくなると、入力点から直近の山部61の頂点までの距離はさらに長くなる。
【0035】
一方、線状電極41,42の山部61をより効率的に潰すためには(押し下げるためには、)、入力点と山部61の頂点とが一致していることが望ましい。つまり、山部61の頂点に真下に向かう力を加えることが望ましい。このことから、線状電極41,42のピッチ(P)を大きく(広く)し過ぎると、線状電極41,42に対する力の入力効率が低下し、却ってタッチセンサ30の検知性能が低下する虞があることが理解できる。
【0036】
また、図5に示される線状電極41,42の被覆厚(T)を小さく(薄く)し過ぎると、弾性復元力が不足し、潰れた山部61が元に戻らなかったり、元に戻るのに時間が掛かったりする虞がある。
【0037】
以上のように、一見すると、線状電極41,42のピッチ(P)と線状電極41,42の被覆厚(T)との比率(P/T)を大きくすれば低温時におけるタッチセンサ30の検知性能が容易に向上するように思えるが、実はそうではない。タッチセンサ30の検知性能、特に低温時における検知性能の向上を実現するためには、様々な技術的要素を踏まえた上で比率(P/T)を設定する必要がある。この点、上記比率(P/T)が12.5以上13.3以下の範囲内である本実施形態のタッチセンサ30では、検知性能、特に低温時における検知性能の向上が実現されている。
【0038】
次に、本発明の効果を確認すべく本件発明者らが行った試験の結果について説明する。この試験では、本発明を適用したタッチセンサを2種類用意するとともに、比較例としてのタッチセンサを2種類用意した。それぞれのタッチセンサの諸元は図8に示されている表に記載されているとおりである。図8に示されている表では、本発明が適用された2種類のタッチセンサのそれぞれを実施例1,実施例2と表記し、比較例として用意した2種類のタッチセンサのそれぞれを比較例1,比較例2と表記してある。
【0039】
さらに、本試験では、用意した各タッチセンサに低温環境下において外力を付与し、抵抗値を測定した。より具体的には、-30℃の環境下において各タッチセンサの外周面に20Nの力を加えた状態で、各タッチセンサが備える線状電極間の抵抗値を測定した。尚、タッチセンサに対する外力付与は、センサホルダの外周面に直径40mmの丸棒状の押し子を押し付けることによって実現した。
【0040】
本試験により、本発明が適用されたタッチセンサ(実施例1,2)は、低温時に同一の外力が付与されたときの抵抗値が、比較例としてのタッチセンサ(比較例1,2)に比べて大幅に小さくなることが確認された。つまり、本発明が適用されたタッチセンサ(実施例1,2)は、比較例としてのタッチセンサ(比較例1,2)に比べて低温時における検知性能が高いことが確認された。
【0041】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 車両
11 開口部
12 開閉体(テールゲート)
13 パワーテールゲート装置
13a アクチュエータ
13b コントローラ
20 タッチセンサユニット
30 タッチセンサ
31 センサホルダ
31a 収容部
31b 土台部
32 ブラケット
40 センサ部
41,42 電極(線状電極)
43 コネクタ
45 モールド部
50 導体層
50a 素線
51 被覆層
61 山部
62 谷部
BL 障害物
GM グロメット
MR モールド樹脂
P ピッチ
R 抵抗
SP セパレータ
SW1,SW2 接続部材
T 厚み(被覆厚)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8