(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】アンカー設置構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/42 20060101AFI20230602BHJP
E01F 15/06 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
E02D27/42 Z
E01F15/06 A
(21)【出願番号】P 2019166028
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】高室 和俊
(72)【発明者】
【氏名】野村 展生
(72)【発明者】
【氏名】窪田 洋一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019639(JP,A)
【文献】特開2015-134985(JP,A)
【文献】特開2011-021342(JP,A)
【文献】特開2006-207119(JP,A)
【文献】特開2006-228165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E01F 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に雌ねじ部が形成された外装体と、前記外装体の雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が外周に形成された破断誘発ボルトから構成されるアンカーを脆弱母材に設置する設置構造であって、
前記脆弱母材に形成された有底穴若しくは前記脆弱母材から前記脆弱母材より深い位置にある深層まで形成された有底穴に、
未硬化の定着材が下側から内部に浸入しない有底筒形の形状で形成された前記外装体が収容され、
前記有底穴の空隙に前記定着材が充填され、硬化した前記定着材で前記外装体が前記脆弱母材に定着され、
前記破断誘発ボルトの雄ねじ部が前記外装体の雌ねじ部に螺合されて前記破断誘発ボルトが前記脆弱母材に定着されていると共に、
前記脆弱母材の表面から突出する前記破断誘発ボルトの突出部分におけるボルト軸方向の所定位置に、少なくとも前記外装体へ螺合する前記雄ねじ部よりも強度が低い破断誘発部が設けられていることを特徴とするアンカー設置構造。
【請求項2】
前記破断誘発部が前記破断誘発ボルトの軸部の断面積が小さくなるように切り欠き状に形成されている
と共に略多角柱形で形成され、
破断されて露出した略多角柱形の前記破断誘発部が工具で把持可能になっていることを特徴とする請求項1記載のアンカー設置構造。
【請求項3】
前記脆弱母材の表面と前記破断誘発部との間に前記破断誘発ボルトの雄ねじ部が設けられることを特徴とする請求項1
又は2記載のアンカー設置構造。
【請求項4】
請求項1~
3の何れかに記載のアンカー設置構造で前記破断誘発ボルトが前記破断誘発部で破断した際に、前記破断誘発部で破断した前記破断誘発ボルトの残り部分を前記外装体から取り外し、
前記残り部分を取り外して残った前記外装体に別の破断誘発ボルトを
螺合して取り付けることを特徴とするアンカー設置構造の再生方法。
【請求項5】
請求項1~
3の何れかに記載のアンカー設置構造の前記アンカーを介して設置されている衝撃吸収型取付物の設置構造であって、
前記衝撃吸収型取付物は、変形によって衝撃を吸収するように設けられると共に、前記破断誘発ボルトの前記破断誘発部を破断させる力よりも小さな力で前記衝撃吸収型取付物の前記変形が生じるように設けられていることを特徴とする衝撃吸収型取付物の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアスファルト、レンガ、ALC、軽量気泡コンクリート(ALC)、低強度コンクリート等の通常のコンクリートに比べて強度が低い脆弱母材にアンカーを設置するアンカー設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルトのような脆弱母材に取付物を取り付ける際に、脆弱母材にアンカーを設置し、アンカーを介して取付物を取り付けることが行なわれている。脆弱母材にアンカーを設置する場合、例えば
図11(a)に示すように、内周に雌ねじ211が形成されたスリーブ210と、雌ねじ211と螺合される雄ねじ221が外周に形成された寸切ボルト220で構成されるアンカー200を用い、脆弱母材230に形成されたスリーブ210の長さとほぼ対応する深さの有底穴231にアンカー200のスリーブ210を収容し、十分な定着長でスリーブ210を接着材240で有底穴231の周囲の脆弱母材230に定着して設置する。
【0003】
また、特許文献1のように、脆弱母材のアスファルトを貫通するように貫通穴を形成し、アスファルトの下の土部分にアスファルトの貫通穴よりも直径の大きい有底穴を形成して羽根型アンカーを挿入し、挿入した羽根型アンカーの拡張片を開いた状態にすると共に、有底穴と貫通穴の残部の空隙にモルタルを注入してアンカーを設置する構造もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、取付物やアンカーを脆弱母材に設置する場合、設置される環境や取付物の機能によっては、単に強度が高い定着力でアンカーを設置すれば事足りることにはならない。例えば道路のアスファルト舗装上に立設物をアンカーを設置して取り付ける場合、その立設物に自動車が衝突しても負けないように強固な定着力でアンカーを設置していると、自動車が衝突した際に、ボルト軸方向への引張荷重Pやボルト軸方向と直角方向へのせん断荷重Tが加わって、脆弱母材の大きな領域が母材ごと破壊されてしまう(
図11(b)、(c)参照)。このような母材の破壊が生ずると、アンカーや立設物だけではなく脆弱母材の深い位置まで補修しなければならなくなり、修理・復旧に大きな労力が必要となる。そのため、通常の使用時には必要十分な設置強度の定着力を有すると共に、万一衝撃力が加わったときに母材の破壊を防止することができる構造が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、通常の使用時には必要十分な設置強度の定着力を得ることができると共に、万一衝撃力が加わったときにアンカーが設置されている脆弱母材の破壊を防止することができ、破損時の修理・復旧作業を少ない労力で行うことができるアンカー設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンカー設置構造は、内周に雌ねじ部が形成された外装体と、前記外装体の雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が外周に形成された破断誘発ボルトから構成されるアンカーを脆弱母材に設置する設置構造であって、前記脆弱母材に形成された有底穴若しくは前記脆弱母材から前記脆弱母材より深い位置にある深層まで形成された有底穴に、未硬化の定着材が下側から内部に浸入しない有底筒形の形状で形成された前記外装体が収容され、前記有底穴の空隙に前記定着材が充填され、硬化した前記定着材で前記外装体が前記脆弱母材に定着され、前記破断誘発ボルトの雄ねじ部が前記外装体の雌ねじ部に螺合されて前記破断誘発ボルトが前記脆弱母材に定着されていると共に、前記脆弱母材の表面から突出する前記破断誘発ボルトの突出部分におけるボルト軸方向の所定位置に、少なくとも前記外装体へ螺合する前記雄ねじ部よりも強度が低い破断誘発部が設けられていることを特徴とする。
これによれば、有底穴に収容した外装体の雌ねじ部に雄ねじ部を螺合して破断誘発ボルトを定着することにより、通常の使用時には必要十分な設置強度の定着力を得ることができる。また、破断誘発ボルトの突出部分におけるボルト軸方向の所定位置の破断誘発部により、万一衝撃力が加わったときに破断誘発部でアンカーを破断させ、アンカーが設置されている脆弱母材の破壊を防止することができる。従って、破損時の修理・復旧作業を少ない労力で行うことができる。また、定着材でアンカーを定着することにより、より確実に必要十分な設置強度の定着力を得ることができる。
【0008】
本発明のアンカー設置構造は、前記破断誘発部が前記破断誘発ボルトの軸部の断面積が小さくなるように切り欠き状に形成されていると共に略多角柱形で形成され、破断されて露出した略多角柱形の前記破断誘発部が工具で把持可能になっていることを特徴とする。
これによれば、破断誘発ボルトを切り欠いて簡単に破断誘発部を形成することができる。また、破断誘発ボルトの断面積を切欠きの量で調整することが容易であり、破断誘発ボルトが破断する荷重を切欠き量の調整で容易に設定することができる。また、破断誘発ボルトの破断誘発部の断面積を小さく形成することにより、脆弱母材の破壊防止に加えて、外装体の内部で螺合された破断誘発ボルトの雄ねじ部が破損することも防止することができる。また、破断誘発部が破断した際に、略四角柱形、略六角柱形等の略多角柱形の破断された破断誘発部が露出して残ることになり、レンチ等の工具で露出した略多角形の破断誘発部を把持して容易に破断した破断誘発ボルトを回転して取り外すことができる。
【0009】
本発明のアンカー設置構造は、前記脆弱母材の表面と前記破断誘発部との間に前記破断誘発ボルトの雄ねじ部が設けられることを特徴とする。
これによれば、破断誘発部が破断した際に、脆弱母材の表面から雄ねじ部が突出した状態で残るため、破断誘発部の損傷度合に拘わらず、全ねじレンチ等の工具を突出した雄ねじ部にはめて容易に破断した破断誘発ボルトを回転して取り外すことができる。
【0010】
また、本発明のアンカー設置構造の再生方法は、本発明のアンカー設置構造で前記破断誘発ボルトが前記破断誘発部で破断した際に、前記破断誘発部で破断した前記破断誘発ボルトの残り部分を前記外装体から取り外し、前記残り部分を取り外して残った前記外装体に別の破断誘発ボルトを螺合して取り付けることを特徴とする。
これによれば、破断誘発ボルトが破断誘発部で破断して外装体から取り外された際に、損傷せずに残った外装体を再利用し、破断誘発部で破断した破断誘発ボルトとは異なる新たな別の破断誘発ボルトを取り付けて新たなアンカーを構成することができ、部品資源の有効利用、部品コストの低減を図ることができる。また、既存の有底穴に収容された外装体を利用してアンカーを設置できることから、アンカーの設置作業、新たな取付物の取付作業等の修理・復旧作業を効率的且つスピーディに行うことができる。
【0011】
また、本発明の衝撃吸収型取付物の設置構造は、本発明のアンカー設置構造の前記アンカーを介して設置されている衝撃吸収型取付物の設置構造であって、前記衝撃吸収型取付物は、変形によって衝撃を吸収するように設けられると共に、前記破断誘発ボルトの前記破断誘発部を破断させる力よりも小さな力で前記衝撃吸収型取付物の前記変形が生じるように設けられていることを特徴とする。
これによれば、衝撃吸収型取付物に衝撃が加わった際の変形を強固過ぎる固定で阻害することなく、必要な変形の発生を確保した状態で衝撃吸収型取付物を取り付けることができる。また、破断誘発部を破断させる力よりも小さな力で衝撃吸収型取付物の変形が生じるように設けることで、必要な変形の発生を確保した状態で衝撃吸収型防護柵等の衝撃吸収型取付物を取り付けることができる。更に、この変形では吸収しきれないほどの大きな衝撃が衝撃吸収型取付物に加えられたときに、破断誘発ボルトの破断誘発部が破断することで、脆弱母材の破損を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンカー設置構造によれば、通常の使用時には必要十分な設置強度の定着力を得ることができると共に、万一衝撃力が加わったときにアンカーが設置されている脆弱母材の破壊を防止することができ、破損時の修理・復旧作業を少ない労力で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による第1実施形態のアンカー設置構造で取付物が取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態のアンカー設置構造を示す一部断面説明図。
【
図3】(a)は第1実施形態のアンカー設置構造におけるアンカーの外装体の正面図、(b)はその縦断面図。
【
図4】(a)は第1実施形態のアンカー設置構造におけるアンカーの破断誘発ボルトの平面図、(b)はその正面図、(c)はそのA-A矢視断面図。
【
図5】(a)~(c)は第1実施形態のアンカー設置構造における破断誘発ボルトの破断と撤去を説明する一部断面説明図。
【
図6】第2実施形態のアンカー設置構造を示す一部断面説明図。
【
図7】(a)は第2実施形態のアンカー設置構造におけるアンカーの破断誘発ボルトの正面図、(b)は破断誘発ボルトに螺合されるナットの正面図、(c)は破断誘発ボルトに外挿されるワッシャーの正面図、(d)は同図(a)のアンカーの外装体の縦断面図。
【
図8】(a)、(b)は第2実施形態のアンカー設置構造における破断誘発ボルトの破断と撤去を説明する一部断面説明図。
【
図9】第3実施形態のアンカー設置構造を示す一部断面説明図。
【
図10】第4実施形態のアンカー設置構造を示す一部断面説明図。
【
図11】(a)は従来例のアンカー設置構造の一部断面説明図、(b)、(c)は従来例のアンカー設置構造の母材破壊を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態のアンカー設置構造〕
本発明による第1実施形態のアンカー設置構造は、アスファルト、レンガ、ALC、軽量気泡コンクリート(ALC)、低強度コンクリート等の通常のコンクリートに比べて強度が低い脆弱母材100にアンカー1を設置するアンカー設置構造であり、例えば
図1及び
図2に示すように、アスファルト舗装等の脆弱母材100にアンカー1が設置される。設置されたアンカー1は取付物120の取り付けに用いられ、例えばワイヤーロープ式防護柵など変形で衝撃を吸収する衝撃吸収型取付物がアンカー1を介して取り付けられる。
【0015】
第1実施形態のアンカー設置構造におけるアンカー1は、
図2~
図4に示すように、外装体2と、破断誘発ボルト3とから構成される。外装体2は有底円筒形等の有底筒形で形成され、後述する未硬化の定着材5が下側から内部に浸入しない形状になっていると共に、その内周に雌ねじ部21が形成されている。破断誘発ボルト3は、頭部31と軸部32で構成される頭付ボルトの形状であり、図示例では六角ボルトの形状になっている。破断誘発ボルト3の軸部32の下部の外周には雄ねじ部33が形成されており、雄ねじ部33は外装体2の雌ねじ部21に螺合されるようになっている。
【0016】
破断誘発ボルト3には、頭部31の首下に位置する軸部32の上部に破断誘発部34が形成されている。破断誘発部34は、ボルト軸方向の所定位置に設けられ、ボルト軸方向の少なくとも外装体2へ螺合する雄ねじ部33よりも低い強度で形成されており、第1実施形態では破断誘発ボルト3の軸部32の断面積が雄ねじ部33よりも小さくなるように切り欠かれて破断誘発部34が形成されている。また、第1実施形態における破断誘発部34は、横断面形状が略多角形の略多角柱形で形成されており、図示例では横断面形状が略四角形の略四角柱形で形成されている。
【0017】
なお、破断誘発部34は、望ましくは、頭部31の首下に位置する側の断面積より軸部32に近い側の断面積が大きくなるよう、テーパ状に形成されていることが望ましい。或いは、破断誘発部34における頭部31の首下の近くに、若干の切込みが入っていても良い。これによれば、取付物120に衝撃力が加わったときに、破断誘発部34が、下部で破断することなく確実に頭部31の近傍等の上部で破断するので、残った破断誘発部34に工具を嵌めて、容易に取り外すことが可能となる。
【0018】
第1実施形態のアンカー設置構造では、
図2に示すように、脆弱母材100に形成された有底穴110にアンカー1の外装体2が脆弱母材100の表面側で開放するようにして収容される。そして、取付物120を脆弱母材100の表面に載置し、所定箇所で取付物120にワッシャー4を重ね、取付物120の貫通孔121、ワッシャー4の貫通孔41に破断誘発ボルト3を挿入し、挿入した破断誘発ボルト3の雄ねじ部33を有底穴110に収容された外装体2の雌ねじ部21に螺合して、破断誘発ボルト3が脆弱母材100に定着されると共に、取付物120がアンカー1で支持されて脆弱母材100に固定されるようにして取り付けられる。
【0019】
また、このアンカー設置構造では、有底穴110の空隙に定着材5が充填され、硬化した定着材5でアンカー1或いは外装体2が脆弱母材100に定着されている。図示例では、有底穴110内に予め定着材5の樹脂を入れておき、樹脂が注入された有底穴110に外装体2を埋設し、その後に樹脂を硬化させ、この硬化樹脂の定着材5でアンカー1或いは外装体2が脆弱母材100に定着されている。
【0020】
有底穴110に収容された外装体2に螺着された破断誘発ボルト3において、脆弱母材100の表面から突出する破断誘発ボルト3の突出部分には、ボルト軸方向の所定位置にある破断誘発部34が配設される。図示例では、アンカー1を介して取り付けた取付物120の貫通孔121とワッシャー4の貫通孔41の内側に収まるように位置して破断誘発部34が配置されている。
【0021】
第1実施形態のアンカー設置構造で取り付けられた取付物120に衝撃力が加わり、アンカー1に引張荷重Pが負荷された場合(
図5(a)参照)、脆弱母材100の破壊や外装体2の損傷を生ずることなく、断面積が小さく強度が低いアンカー1の破断誘発部34に応力が集中し、破断誘発部34が
図5(b)の白抜矢印のように破断する。また、アンカー1にせん断荷重Tが負荷された場合にも、脆弱母材100の破壊や外装体2の損傷を生ずることなく、アンカー1の破断誘発部34が同様に破断する。そして、脆弱母材100に残った破断誘発ボルト3の残り部分は、略四角柱形等の破断した破断誘発部34を工具で把持して外装体2から取り外し、脆弱母材100から撤去する(
図5(c)参照)。
【0022】
破断した破断誘発ボルト3が取り外された外装体2は、硬化した定着材5で脆弱母材100に定着された状態が維持されている。そのため、破断した破断誘発ボルト3と異なる同一形状、同一サイズで破断していない別の破断誘発ボルト3を外装体2に螺着して再利用することが可能であり、定着された外装体2の雌ねじ部21に破断した破断誘発ボルト3とは異なる別の破断誘発ボルト3の雄ねじ部33を螺合して別の破断誘発ボルト3を取り付け、新たなアンカー1を構成し、アンカー設置構造を再生することが可能である。
【0023】
第1実施形態のアンカー設置構造によれば、有底穴110に収容した外装体2の雌ねじ部21に雄ねじ部33を螺合して破断誘発ボルト3を定着することにより、通常の使用時には必要十分な設置強度の定着力を得ることができる。更に、有底穴110の空隙に定着材5を充填し、硬化した定着材5でアンカー1を定着することにより、より確実に必要十分な設置強度の定着力を得ることができる。また、破断誘発ボルト3の突出部分におけるボルト軸方向の所定位置の破断誘発部34により、万一衝撃力が加わったときに破断誘発部34でアンカー1を破断させ、アンカー1が設置されている脆弱母材100の破壊を防止することができる。従って、破損時の修理・復旧作業を少ない労力で行うことができる。
【0024】
また、破断誘発部34を破断誘発ボルト3の軸部32の断面積が小さくなるように切り欠き状に形成することにより、強度が低い破断誘発部34を簡単に形成することができる。また、破断誘発ボルト3の断面積を切欠きの量で調整することが容易であり、破断誘発ボルト3が破断する荷重を切欠き量の調整で容易に設定することができる。また、破断誘発ボルト3の破断誘発部34の断面積を小さく形成することにより、脆弱母材100の破壊防止に加えて、外装体2の内部で螺合された破断誘発ボルト3の雄ねじ部33が破損することも防止することができる。
【0025】
また、破断誘発部34を略多角柱形で形成することにより、破断誘発部34が破断した際に、略四角柱形、略六角柱形等の略多角柱形の破断された破断誘発部34が露出して残ることになり、レンチ等の工具で露出した略多角形の破断誘発部34を把持して、容易に破断した破断誘発ボルト3を回転して取り外すことができる。
【0026】
また、第1実施形態のアンカー設置構造では、破断誘発ボルト3が破断誘発部34で破断して外装体2から取り外された際に、損傷せずに残った外装体2を再利用し、破断誘発部34で破断した破断誘発ボルト3とは異なる新たな別の破断誘発ボルト3を取り付けて新たなアンカー1を構成することができ、部品資源の有効利用、部品コストの低減を図ることができる。また、既存の有底穴110に収容された外装体2を利用してアンカー1を設置できることから、アンカー1の設置作業、新たな取付物120の取付作業等の修理・復旧作業を効率的且つスピーディに行うことができる。
【0027】
また、第1実施形態のアンカー設置構造で変形で衝撃を吸収する衝撃吸収型取付物がアンカー1を介して取り付けられる構造では、衝撃吸収型取付物に衝撃が加わった際の変形を強固過ぎる固定で阻害することなく、必要な変形の発生を確保した状態で衝撃吸収型取付物を取り付けることができる。例えば道路の中央分離帯用途等に設置されるワイヤーロープ式防護柵など衝撃吸収型防護柵は、車両衝突時にワイヤーロープの張力等で車両を受け止めると共に、支柱の変形や倒れ込みによって衝撃を緩和するものであり、支柱の定着力が強すぎると衝撃を緩和することができなくなってしまうが、破断誘発部34を有するアンカー1を介しての取り付けにより、必要な変形の発生を確保した状態で衝撃吸収型防護柵を取り付けることができる。
【0028】
また、第1実施形態のアンカー設置構造で衝撃吸収型取付物をアンカー1を介して取り付け、変形によって衝撃を吸収するように設けられる衝撃吸収型取付物の設置構造においては、破断誘発ボルト3の破断誘発部34を破断させる力よりも小さな力で、衝撃を吸収するための衝撃吸収型取付物の変形が生じるように設けることが好ましい。例えば道路の中央分離帯用途等に設置されるワイヤーロープ式防護柵など衝撃吸収型防護柵は、車両衝突時にワイヤーロープの張力等で車両を受け止めると共に、支柱の変形や倒れ込みによって衝撃を緩和するものであるが、ワイヤーや支柱等の変形が生じるよりも小さな力で破断誘発部34が破断すると、衝撃吸収型取付物の備える衝撃を吸収し緩和する機能が十分に発揮されなくなってしまう。そのため、破断誘発部34を破断させる力よりも小さな力で衝撃吸収型取付物の変形が生じるように設けることで、必要な変形の発生を確保した状態で衝撃吸収型防護柵等の衝撃吸収型取付物を取り付けることができる。更に、この変形では吸収しきれないほどの大きな衝撃が衝撃吸収型取付物に加えられたときに、破断誘発ボルト3の破断誘発部34が破断することで、脆弱母材100の破損を効果的に抑制できる。
【0029】
〔第2実施形態のアンカー設置構造〕
本発明による第2実施形態のアンカー設置構造も、アスファルト、レンガ、ALC、軽量気泡コンクリート(ALC)、低強度コンクリート等の通常のコンクリートに比べて強度が低い脆弱母材100にアンカー1aを設置するアンカー設置構造であり、例えば
図6に示すように、アスファルト舗装等の脆弱母材100にアンカー1aが設置される。設置されたアンカー1aは取付物120aの取り付けに用いられ、衝撃吸収型取付物等の取付物120aがアンカー1aを介して取り付けられる。
【0030】
第2実施形態のアンカー設置構造におけるアンカー1aは、
図6及び
図7に示すように、外装体2aと、破断誘発ボルト3aとから構成される。外装体2aも有底円筒形等の有底筒形で形成され、未硬化の定着材5が下側から内部に浸入しない形状になっていると共に、その内周に雌ねじ部21aが形成されている。破断誘発ボルト3aは、軸部32aから構成される寸切ボルトの形状であり、軸部32aの外周には雄ねじ部33aが形成され、雄ねじ部33aが外装体2aの雌ねじ部21aに螺合されるようになっている。
【0031】
破断誘発ボルト3aには、軸部32aのボルト軸方向の中間位置に破断誘発部34aが形成され、破断誘発部34aはボルト軸方向の少なくとも外装体2aへ螺合する雄ねじ部33aよりも低い強度で形成されている。第2実施形態でも破断誘発ボルト3aの軸部32aの断面積が小さくなるように切り欠かれて破断誘発部34aが形成されている。第2実施形態における破断誘発部34aは、第1実施形態と同様に、横断面形状が略多角形の略多角柱形で形成すると良好であるが、横断面形状が略円形等の略円柱形など、略多角柱形で形成しないことも可能である。
【0032】
上記のように、第2実施形態のアンカー設置構造では、破断誘発部34aは軸部32aよりも断面積を小さく設ければ多角柱形以外の形状に形成可能であるが、四角柱形状や六角柱形状など、外周部分に1組以上の平行面を備える形状に形成することで、破断誘発部34aがレンチなどの工具で把持しやすくなるので、破断誘発部34aで破断し外装体2aに残った雄ねじ部33aを取り除く作業を容易に行うことができる。このため、破断誘発部34aは、四角柱や六角柱などの多角柱形状に形成することが好ましく、また、外周部分に1組の平行面を備える所謂小判型の断面形状に形成するのが好ましい。尚、破断誘発部34aの上記形状に関しては、第1実施形態のアンカー設置構造の破断誘発部34においても同様である。
【0033】
なお、破断誘発部34aは、望ましくは、外装体2aへ螺合する雄ねじ部33aに近い側の断面積が大きくなるよう、テーパ状に形成されていることが望ましい。或いは、破断誘発部34aにおける外装体2aへ螺合する雄ねじ部33aと逆側の雄ねじ部33a(脆弱母材100の表面から突出する雄ねじ部33a)の首下近くに、若干の切込みが入っていても良い。これによれば、取付物120aに衝撃力が加わったときに、破断誘発部34aが、下部で破断することなく確実に上部で破断するので、残った破断誘発部34aに工具を嵌めて、容易に取り外すことが可能となる。
【0034】
第2実施形態のアンカー設置構造でも、
図6に示すように、脆弱母材100に形成された有底穴110にアンカー1aの外装体2aが脆弱母材100の表面側で開放するようにして収容される。そして、取付物120aを脆弱母材100の表面に載置し、所定箇所で取付物120aにワッシャー6aを重ね、取付物120aの貫通孔121a、ワッシャー6aの貫通孔61aに破断誘発ボルト3aを挿入し、挿入した破断誘発ボルト3aの雄ねじ部33aを有底穴110に収容された外装体2aの雌ねじ部21aに螺合して、破断誘発ボルト3aが脆弱母材100に定着される。また、ワッシャー6aから突出する破断誘発ボルト3aの雄ねじ部33aには、ワッシャー6aの外側からナット7aが螺合され、螺入されたナット7aとワッシャー6aで取付物120aが脆弱母材100側に押圧されて脆弱母材100に固定され、取付物120aがアンカー1aで支持されて脆弱母材100に取り付けられる。
【0035】
第2実施形態のアンカー設置構造でも、有底穴110の空隙に定着材5が充填され、硬化した定着材5でアンカー1a或いは外装体2aが脆弱母材100に定着されている。
図6の例でも、有底穴110内に予め定着材5の樹脂を入れておき、樹脂が注入された有底穴110に外装体2aを埋設し、その後に樹脂を硬化させ、この硬化樹脂の定着材5でアンカー1a或いは外装体2aが脆弱母材100に定着されている。
【0036】
有底穴110に収容された外装体2aに螺着された破断誘発ボルト3aにおいて、脆弱母材100の表面から突出する破断誘発ボルト3aの突出部分には、ボルト軸方向の所定位置にある破断誘発部34aが配設される。本例では、ほぼワッシャー6aの貫通孔61a内に位置して破断誘発部34aが配置され、脆弱母材100の表面と破断誘発部34aとの間に破断誘発ボルト3aの雄ねじ部33aの一部が設けられるようになっている。
【0037】
図8に示すように、第2実施形態のアンカー設置構造で取り付けられた取付物120aに衝撃力が加わり、アンカー1aにせん断荷重Tが負荷された場合、脆弱母材100の破壊や外装体2aの損傷を生ずることなく、断面積が小さく強度が低いアンカー1aの破断誘発部34aに応力が集中し、破断誘発部34aが
図8(a)の白抜矢印のように破断する。また、アンカー1aに引張荷重Pが負荷された場合にも、脆弱母材100の破壊や外装体2aの損傷を生ずることなく、アンカー1aの破断誘発部34aが同様に破断する。そして、脆弱母材100に残った破断誘発ボルト3aは、脆弱母材100の表面と破断誘発部34aとの間に露出している破断誘発ボルト3aの雄ねじ部33aを工具で把持して外装体2aから取り外し、脆弱母材100から撤去する(
図8(b)参照)。尚、破断誘発部34aが略多角柱形である場合には、破断した破断誘発部34aを工具で把持して外装体2aから取り外すことも可能である。
【0038】
破断した破断誘発ボルト3aが取り外された外装体2aは、硬化した定着材5で脆弱母材100に定着された状態が維持されている。そのため、破断した破断誘発ボルト3aと異なる同一形状、同一サイズで破断していない別の破断誘発ボルト3aを外装体2に螺着して再利用することが可能であり、定着された外装体2aの雌ねじ部21aに破断した破断誘発ボルト3aとは異なる別の破断誘発ボルト3aの雄ねじ部33aを螺合して別の破断誘発ボルト3aを取り付け、新たなアンカー1aを構成し、アンカー設置構造を再生することが可能である。
【0039】
第2実施形態のアンカー設置構造は、第1実施形態のアンカー設置構造と対応する構成から対応する効果を発揮することができる。また、破断誘発部34aが破断した際に、脆弱母材100の表面から破断誘発ボルト3aの雄ねじ部33aが突出した状態で残るため、破断誘発部34aの損傷度合に拘わらず、全ねじレンチ等の工具を突出した雄ねじ部33aにはめて容易に破断した破断誘発ボルト3aを回転して取り外すことができる。
【0040】
〔第3実施形態のアンカー設置構造〕
本発明による第3実施形態のアンカー設置構造も、通常のコンクリートに比べて強度が低い脆弱母材100にアンカー1bを設置するアンカー設置構造であり、例えば
図9に示すように、アスファルト舗装等の脆弱母材100にアンカー1bが設置される。設置されたアンカー1bは取付物の取り付けに用いられ、衝撃吸収型取付物等の取付物がアンカー1bを介して取り付けられる。
【0041】
第3実施形態のアンカー設置構造におけるアンカー1bは、
図9に示すように、外装体2bと、破断誘発ボルト3bとから構成される。外装体2bは、略有底円筒形等の略有底筒形で形成され、未硬化の定着材5が下側から内部に浸入しない形状になっていると共に、底部に截頭円錐形等の底に向かって漸次拡径するテーパ部22bが形成されている。外装体2bは、テーパ部22bにより、定着材5に埋設された状態でアンカー効果を発揮できるようになっている。外装体2bの内周には雌ねじ部21bが形成されている。
【0042】
破断誘発ボルト3bは、軸部32bから構成される寸切ボルトの形状であり、軸部32bの外周には雄ねじ部33bが形成され、雄ねじ部33bが外装体2bの雌ねじ部21bに螺合されるようになっている。破断誘発ボルト3bには、軸部32bのボルト軸方向の中間位置で脆弱母材100と逆側に寄った位置には破断誘発部34bが形成され、破断誘発部34bはボルト軸方向の前後の位置よりも低い強度で形成されている。破断誘発部34bの構成は第2実施形態における破断誘発部34aの構成と同一である。
【0043】
第3実施形態のアンカー設置構造では、脆弱母材100から脆弱母材100より深い位置にある深層130まで形成された有底穴140にアンカー1bの外装体2bが収容され、外装体2bは脆弱母材100の表面側で開放するようにして収容される。そして、図示省略する取付物、ワッシャーに破断誘発ボルト3bを挿入し、挿入した破断誘発ボルト3bの雄ねじ部33bを有底穴140に収容された外装体2bの雌ねじ部21bに螺合して、破断誘発ボルト3bが脆弱母材100及び土などの深層130に定着される。また、ワッシャーから突出する破断誘発ボルト3bの雄ねじ部33bには、図示省略するナットが螺合され、螺入されたナットとワッシャーで取付物が脆弱母材100側に押圧されて脆弱母材100に固定され、取付物がアンカー1bで支持されて脆弱母材100に取り付けられる。
【0044】
第3実施形態のアンカー設置構造では、有底穴140の空隙に定着材5が充填され、硬化した定着材5でアンカー1b或いは外装体2bが脆弱母材100と深層130に定着されている。
図9の例では、有底穴140内に予め定着材5の樹脂を入れておき、樹脂が注入された有底穴140に外装体2bを埋設し、その後に樹脂を硬化させ、この硬化樹脂の定着材5でアンカー1b或いは外装体2bが脆弱母材100と深層130に定着されている。
【0045】
有底穴140に収容された外装体2bに螺着された破断誘発ボルト3bにおいて、脆弱母材100の表面から突出する破断誘発ボルト3bの突出部分には、ボルト軸方向の所定位置にある破断誘発部34bが配設されると共に、脆弱母材100の表面と破断誘発部34bとの間に破断誘発ボルト3bの雄ねじ部33bの一部が設けられるようになっている。
【0046】
第3実施形態のアンカー設置構造で取り付けられた取付物に衝撃力が加わった際の破断誘発ボルト3bの破断誘発部34bの破断、破断した破断誘発ボルト3bの取り外し、硬化した定着材5で脆弱母材100に定着された状態が維持されている外装体2bの再利用についての構成は、第2実施形態のアンカー設置構造における構成と同一である。
【0047】
第3実施形態のアンカー設置構造は、第2実施形態のアンカー設置構造と対応する構成から対応する効果を発揮することができる。また、外装体2bのテーパ部22bにより、定着材5に埋設された状態でアンカー効果を発揮することができ、外装体2bの抜け出し、外装体2bと定着材5で構成される定着部の損傷をより確実に防止することができる。
【0048】
〔第4実施形態のアンカー設置構造〕
本発明による第4実施形態のアンカー設置構造も、通常のコンクリートに比べて強度が低い脆弱母材100にアンカー1cを設置するアンカー設置構造であり、例えば
図10に示すように、アスファルト舗装等の脆弱母材100にアンカー1cが設置される。設置されたアンカー1cは取付物の取り付けに用いられ、衝撃吸収型取付物等の取付物がアンカー1cを介して取り付けられる。
【0049】
第4実施形態のアンカー設置構造におけるアンカー1cは、
図10に示すように、外装体2cと、パイプ体8dと、第3実施形態における破断誘発ボルト3bと同一構成の軸部32c、雄ねじ部33c、破断誘発部34cを有する破断誘発ボルト3cとから構成される。パイプ体8dの内径は、破断誘発ボルト3cの外径より僅かに大きく構成されている。外装体2cは、略有底円筒形等の略有底筒形で形成されると共に、外周面が底と逆側に向かって漸次拡径するテーパ面23cになっており、開放側の基面24cの面積が通常の筒形の対応する箇所の面積よりも大きく形成されている。外装体2cは、大きく広がった基面24cにより、アンカー効果を発揮できるようになっている。外装体2cの内周には雌ねじ部21cが形成されている。
【0050】
第4実施形態のアンカー設置構造では、脆弱母材100から脆弱母材100より深い位置にある深層130まで形成された有底穴140にアンカー1cの外装体2cが収容され、外装体1cは脆弱母材100の表面側で開放するようにして収容される。外装体2cの収容は、例えば深層130に外装体2cの形状と大きさに略対応する有底穴140の一部を形成して外装体2cを収容し、その後にアスファルト舗装等の脆弱母材100を深層130の上に形成し、脆弱母材100の収容された外装体2cに対応する位置に有底穴140の残部を基面24cの外周縁よりも小径のパイプ体8dを配置することによって形成する等により行う。なお、パイプ体8dの外周面の周囲の脆弱母材100に定着材5が注入すると良好であるが、定着材5を注入しないことも可能である。
【0051】
そして、図示省略する取付物、ワッシャーに破断誘発ボルト3cを挿入し、挿入した破断誘発ボルト3cの雄ねじ部33cを有底穴140に収容されたパイプ体8dの内部を通して外装体2cの雌ねじ部21cに螺合して、破断誘発ボルト3cが脆弱母材100及びコンクリートなどの深層130に定着される。また、ワッシャーから突出する破断誘発ボルト3cの雄ねじ部33cには、図示省略するナットが螺合され、螺入されたナットとワッシャーで取付物が脆弱母材100側に押圧されて脆弱母材100に固定され、取付物がアンカー1cで支持されて脆弱母材100に取り付けられる。
【0052】
第4実施形態のアンカー設置構造では、外装体2cが深層130に位置し、基面24cの外周縁より小径で脆弱母材100に配置するパイプ体8dによって拘束されることにより脆弱母材100に定着されている。
図10の例では、破断誘発ボルト3cの雄ねじ部33cを有底穴140に収容された外装体2cの雌ねじ部21cに螺合する一方、脆弱母材100に配置したパイプ体8dの周囲には脆弱母材100の空隙を埋めると共にパイプ体8dを脆弱母材100に定着させる樹脂が注入され、この硬化樹脂の定着材5により脆弱母材100に定着されたパイプ体8dに拘束された深層130の外装体2cの移動が阻止され、アンカー1cが脆弱母材100と深層130又は脆弱母材100に定着されている。
【0053】
有底穴140に収容された外装体2cに螺着された破断誘発ボルト3cにおいて、脆弱母材100の表面から突出する破断誘発ボルト3cの突出部分には、ボルト軸方向の所定位置にある破断誘発部34cが配設されると共に、脆弱母材100の表面と破断誘発部34cとの間に破断誘発ボルト3cの雄ねじ部33cの一部が設けられる。第4実施形態のアンカー設置構造で取り付けられた取付物に衝撃力が加わった際の破断誘発ボルト3cの破断誘発部34cの破断の構成は、第3実施形態のアンカー設置構造における構成と同一である。
【0054】
第4実施形態のアンカー設置構造は、第2実施形態のアンカー設置構造と対応して備える構成から対応する効果を発揮することができる。また、外装体2cの基面24cが脆弱母材100に配置しているパイプ体8dに拘束されることにより、アンカー効果を発揮することができる。
【0055】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記追加内容や変形例も含まれる。
【0056】
例えば第1~第3実施形態では、有底穴110、140の空隙に定着材5を充填し、硬化した定着材5でアンカー1、1a、1b、1cや外装体2、2a、2bを定着する構造としたが、例えば外装体の先端の拡開片を拡開させて有底穴の周壁に食い込ませ、外装体を機械定着させ、外装体の後部の雌ねじ部に破断誘発ボルトを螺着する構成など、本発明には定着材を用いずにアンカーや外装体を定着する構成も含まれる。
【0057】
また、第1~4実施形態では、工具で把持し易くする好適な構成として、破断誘発部34等を多角柱形状や断面小判型形状に形成したが、工具で把持し易くする構成はこれに限るものではない。例えば、レンチなどで把持しやすい平行面を外周部分に有する部位を破断誘発部とは別に形成して破断誘発部より外装体側に配置してもよい。この場合には、この平行面を設けた部位を、外装体の表面から突出する位置に配置するようにする。
【0058】
また、本発明における破断誘発部には、ボルト軸方向の所定位置に設けられる、少なくとも外装体へ螺合する雄ねじ部よりも強度が低い適宜の破断誘発部が含まれ、例えば強度の低い別材料で破断誘発部を形成する構成、破断誘発部或いはその前後を改質して破断誘発部の強度を低下させる構成等とすることも可能であり、軸部の断面積が小さくなるように切り欠き状に形成された破断誘発部に限定されない。また、本発明には、定着した外装体の雌ねじ部に破断した破断誘発ボルトとは異なる破断誘発ボルトの雄ねじ部を螺合して再利用することができない構成も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えばアスファルト等の脆弱母材に防護柵等の取付物をアンカーを介して取り付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1、1a、1b、1c…アンカー 2、2a、2b、2c…外装体 21、21a、21b、21c…雌ねじ部 22b…テーパ部 23c…テーパ面 24c…基面 3、3a、3b、3c…破断誘発ボルト 31…頭部 32、32a、32b、32c…軸部 33、33a、33b、33c…雄ねじ部 34、34a、34b、34c…破断誘発部 4…ワッシャー 41…貫通孔 5…定着材 6a…ワッシャー 61a…貫通孔 7a…ナット 8d…パイプ体 100…脆弱母材 110、140…有底穴 120、120a…取付物 121、121a…貫通孔 130…深層 200…アンカー 210…スリーブ 211…雌ねじ 220…寸切ボルト 221…雄ねじ 230…脆弱母材 231…有底穴 240…接着材 P…引張荷重 T…せん断荷重