(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】調理システム
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20230602BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20230602BHJP
F24C 15/00 20060101ALI20230602BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F24C3/12 V
F24C3/12 E
H05B6/12 312
F24C15/00 L
F24F7/06 101A
(21)【出願番号】P 2019206006
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】水野 達彦
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173246(JP,A)
【文献】特開昭62-125235(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014006422(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-15/36
H05B 6/12
F24F 7/04-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部を有する加熱調理器と、
前記加熱調理器の上方に設けられて換気を行うレンジフードと、を備えた調理システムであって、
前記加熱調理器は、近距離無線通信によって少なくとも反転信号を発信可能な第1通信部と、
前記加熱部及び前記第1通信部を制御する制御部と、を有し、
前記レンジフードは、前記近距離無線通信によって少なくとも前記反転信号を受信可能な第2通信部と、
前記第2通信部が前記反転信号を受信する毎に、点灯と消灯とを交互に反転する照明部と、を有し、
前記制御部は、前記加熱部の異常を検出したときに、前記第1通信部から前記反転信号を所定の照明点滅期間、所定の第1発信周期で繰り返し発信させる第1動作を実行するように構成されていることを特徴とする調理システム。
【請求項2】
前記加熱調理器は、前記照明部の照度を測定する照度センサを有し、
前記制御部は、
前記照度センサに基づいて前記照明部の反転を検出し、
前記第1動作の実行中に、前記第1通信部から前記反転信号を発信させても前記照明部の反転を検出できない場合、前記第1動作を保留状態とし、
前記第1通信部からの前記反転信号を前記第1発信周期よりも短い所定の再送点滅期間以内であって前記照明部の反転を検出できるまで、所定の第2発信周期で繰り返し発信させる第2動作を実行する請求項1記載の調理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2動作の実行中に前記照明部の反転を検出できた場合、前記第2動作を中止して前記第1動作を前記保留状態から再開する一方、前記第2動作を終了するまでに前記照明部の反転を検出できない場合、前記第1動作を中止する請求項2記載の調理システム。
【請求項4】
前記加熱調理器は、少なくとも前記加熱部の異常を報知可能な調理器照明部を有し、
前記制御部は、前記第1動作を実行するときに、前記照度センサに基づいて前記調理器照明部を制御し、前記照明部が点灯したときには前記調理器照明部を点灯させ、前記照明部が消灯したときには前記調理器照明部を消灯させる請求項2又は3記載の調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の調理システムの一例が開示されている。この調理システムは、加熱部を有する加熱調理器と、加熱調理器の上方に設けられて換気を行うレンジフードとを備えている。
【0003】
加熱調理器及びレンジフードはそれぞれ、通信部と、通信部を制御する制御部とを有している。加熱調理器の通信部とレンジフードの通信部とは、赤外線通信や無線通信を介して双方向に通信可能である。
【0004】
加熱調理器の制御部は、加熱部も制御する。レンジフードは、加熱調理器の加熱部を照らす照明部を有している。レンジフードの制御部は、照明部も制御する。
【0005】
この調理システムでは、加熱調理器の制御部が加熱調理器の動作態様に応じて、加熱調理器及びレンジフードのそれぞれの通信部を経由して、レンジフードの制御部に対して照明部の照明態様についての指示信号を送信する。そして、レンジフードの制御部がその指示信号に基づいて照明部の照明態様を制御することで、加熱調理器を使用するユーザが加熱調理器の動作態様を認知し易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の調理システムでは、ユーザの利便性の向上のため、加熱部の異常、例えば異常加熱、煮こぼれ又は失火を検出したときに、照明部の照明態様を制御してユーザに加熱部の異常を認知させることが考えられる。しかしながら、この場合、加熱部が異常であるという加熱調理器の動作態様に照明部の照明態様を対応させるために、レンジフードの通信部は、加熱調理器の通信部が送信する専用の指示信号を受信する必要があり、レンジフードの制御部は、その専用の指示信号に応じて照明部の照明態様を制御する必要がある。つまり、この場合、専用のレンジフードが必要となる。
【0008】
このため、この調理システムを設置しようとする場合、既設の簡素なレンジフード、例えば、反転信号を受信する毎に照明部が点灯と消灯とを交互に反転する構成を有するレンジフードを流用したり、そのような安価なレンジフードを新規で設置したりすることが難しく、高価な専用のレンジフードが必要となり、設備コストの低廉化を実現することが難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、設備コストの低廉化を実現しつつ、ユーザの利便性を向上させることができる調理システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の調理システムは、加熱部を有する加熱調理器と、
前記加熱調理器の上方に設けられて換気を行うレンジフードと、を備えた調理システムであって、
前記加熱調理器は、近距離無線通信によって少なくとも反転信号を発信可能な第1通信部と、
前記加熱部及び前記第1通信部を制御する制御部と、を有し、
前記レンジフードは、前記近距離無線通信によって少なくとも前記反転信号を受信可能な第2通信部と、
前記第2通信部が前記反転信号を受信する毎に、点灯と消灯とを交互に反転する照明部と、を有し、
前記制御部は、前記加熱部の異常を検出したときに、前記第1通信部から前記反転信号を所定の照明点滅期間、所定の第1発信周期で繰り返し発信させる第1動作を実行するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の調理システムでは、加熱調理器の制御部が加熱部の異常を検出したときに、第1動作を実行することにより、第1通信部が反転信号を所定の照明点滅期間、所定の第1発信周期で繰り返し発信し、レンジフードの第2通信部がその反転信号を受信する毎に、照明部を点灯と消灯とに交互に反転させる。このような照明部の点滅により、ユーザに加熱部の異常を容易に認知させることができる。
【0012】
また、この調理システムでは、レンジフードにおいて、第2通信部は、加熱調理器の第1通信部が繰り返し発信する反転信号を受信するだけであって上記従来技術のような専用の指示信号を受信する必要がなく、また、照明部も反転信号の繰り返しに応じて点滅するだけで特別な制御を受ける必要もない。その結果、レンジフードにおいて、第2通信部及び照明部を制御する制御部も簡素化できる。これにより、この調理システムを設置しようとする場合、反転信号を受信する毎に照明部が点灯と消灯とに交互に反転する簡素なレンジフードが既設されていればそれを流用でき、また、そのような安価なレンジフードを新規で設置できる。
【0013】
したがって、本発明の調理システムでは、設備コストの低廉化を実現しつつ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0014】
加熱調理器は、照明部の照度を測定する照度センサを有していることが望ましい。そして、制御部は、照度センサに基づいて照明部の反転を検出し、第1動作の実行中に、第1通信部から反転信号を発信させても照明部の反転を検出できない場合、第1動作を保留状態とし、第1通信部からの反転信号を第1発信周期よりも短い所定の再送点滅期間以内であって照明部の反転を検出できるまで、所定の第2発信周期で繰り返し発信させる第2動作を実行することが望ましい。
【0015】
この場合、レンジフードにおいて、第2通信部が第1通信部からの反転信号を外乱によって受信できないことにより照明部が反転できない場合に、加熱調理器において、照明部が反転するまで制御部が第1動作を保留状態とし、第2動作を実行することで、反転信号の再送を行って外乱がおさまったときに照明部を反転させることができる。つまり、外乱があるときには第1動作を一時的に止めることができ、外乱がないときには、加熱部の異常をユーザに確実に伝達できる。
【0016】
制御部は、第2動作の実行中に照明部の反転を検出できた場合、第2動作を中止して第1動作を保留状態から再開する一方、第2動作を終了するまでに照明部の反転を検出できない場合、第1動作を中止することが望ましい。
【0017】
この場合、加熱調理器において、制御部は、ユーザに照明部の点滅の不自然さを認知させ難くしつつ、照明部の点滅を再開し、又は照明部の点滅を中止することができる。
【0018】
加熱調理器は、少なくとも加熱部の異常を報知可能な調理器照明部を有していることが望ましい。そして、制御部は、第1動作を実行するときに、照度センサに基づいて調理器照明部を制御し、照明部が点灯したときには調理器照明部を点灯させ、照明部が消灯したときには調理器照明部を消灯させることが望ましい。
【0019】
この場合、照明部と調理器照明部とが同期して点滅するので、照明部の点滅と調理器照明部の点滅とが食い違う場合と比較して、照明部の点滅と調理器照明部の点滅とが加熱部の異常を同時に報知するものであることをユーザに容易に認知させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の調理システムによれば、設備コストの低廉化を実現しつつ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施例の調理システムの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例の調理システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、照明部の点滅動作のプログラムのフローチャートである。
【
図4】
図4は、照明部の点滅動作のプログラムのフローチャートである。
【
図5】
図5は、照明部の点滅動作のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(実施例)
図1に示すように、実施例の調理システム1は、本発明の調理システムの具体的態様の一例である。調理システム1は、台所等に設置される所謂ビルトイン式のガスコンロ10と、ガスコンロ10の上方に設けられてガスコンロ10の周辺の換気を行うレンジフード50とを備えている。ガスコンロ10は、本発明の「加熱調理器」の一例である。
【0024】
なお、
図1では、ガスコンロ10の前面パネル10P側を前方と規定し、レンジフード50側を上方と規定して、前後方向及び上下方向を表示する。また、前面パネル10Pに対面する状態でガスコンロ10を見たときに左に来る側を左方と規定して、左右方向を表示する。
【0025】
<ガスコンロの構成>
ガスコンロ10は、ガスコンロ本体10A及び天板10Bを備えている。ガスコンロ本体10Aは略箱状体であり、その前面に前面パネル10Pが配置されている。天板10Bは、ガスコンロ本体10Aの上面を覆うように配置された略矩形平板である。
【0026】
また、ガスコンロ10は、
図2に示す制御部13と、
図1及び
図2に示す燃焼部17及び操作部14とを有している。燃焼部17は、本発明の「加熱部」の一例である。なお、本実施例では、ガスコンロ10は、乾電池等のバッテリにより給電される。
【0027】
<制御部>
図2に簡略して示すように、制御部13は、CPU、ROM、RAM等を含んで構成された周知の制御回路である。制御部13は、燃焼部17を制御するとともに、操作部14がユーザから受ける操作の情報を取得する。
【0028】
また、制御部13は、
図3及び
図4に示す「照明部の点滅動作のプログラム」を含む各種の制御プログラムを記憶している。後で詳しく説明するように、制御部13は、燃焼部17の異常を検出したときに、
図3及び
図4に示すプログラムを実行するようになっている。
【0029】
<燃焼部>
図1に示すように、燃焼部17は、天板10B上に設けられた複数のガスバーナ17Bを有している。本実施例では、2つのガスバーナ17Bが天板10B上の右部分と左部分とに設けられている。左右のガスバーナ17Bのそれぞれに付帯する部品等の構成は、同じである。
【0030】
天板10B上には、ガスバーナ17Bを囲む五徳17Cが設けられている。五徳17Cには、鍋等である調理器具9が載置される。フライパン、グリルプレート、焼き網等も、調理器具9に含まれる。
【0031】
ガスバーナ17Bの中央には、有蓋筒状の温度検知部17Dが上向きに突出するように設けられている。温度検知部17Dは、五徳17Cに載置された調理器具9に当接したときに、内蔵するサーミスタ等の温度センサによって調理器具9の底部の温度を検知する。
【0032】
ガスバーナ17Bの炎孔形成部の近傍には、点火プラグ17Eが設けられている。点火プラグ17Eは、図示しないイグナイタによって高電圧が印加されることにより、ガスバーナ17Bを点火する。
【0033】
ガスバーナ17Bの炎孔形成部の近傍における点火プラグ17Eから離れた位置には、炎検知部17Fが設けられている。炎検知部17Fは、熱電対の熱起電力に基づいて、ガスバーナ17Bの燃焼炎の有無を検知するようになっている。
【0034】
ガスコンロ本体10A内には、ガスバーナ17Bに燃焼ガスを供給する図示しない燃料制御弁が設けられている。図示しない燃料制御弁は、ガスバーナ17Bの点火時に開いてガスバーナ17Bに燃焼ガスを供給し、消火時に閉じる主弁や、ガスバーナ17Bの火力調整に応じて開度調整されて燃焼ガスの供給量を調整する火力調整弁等の複数の制御弁が組み合わされてなる。
【0035】
点火プラグ17E、図示しないイグナイタ、温度検知部17D、炎検知部17F及び図示しない燃料制御弁も、燃焼部17の一部を構成している。
【0036】
燃焼部17は、ガスバーナ17B、点火プラグ17E、図示しないイグナイタ、温度検知部17D、炎検知部17F及び図示しない燃料制御弁の連携動作によって、調理器具9を加熱し、調理器具9に収容され、又は載置された被調理物の調理を行うようになっている。
【0037】
また、燃焼部17は、ガスコンロ本体10Aの内部中央に設けられた加熱庫17Gを有している。前面パネル10Pの中央には、グリル扉17Hが配置されている。加熱庫17Gは、グリル扉17Hによって閉鎖されているとともに、グリル扉17Hに連結された図示しないグリルトレーを収容している。そして、グリル扉17Hを引く操作によって図示しないグリルトレーを加熱庫17Gから引き出すことが可能となっている。
【0038】
図示は省略するが、加熱庫17G内には、複数のガスバーナと、ガスバーナに燃焼ガスを供給する燃料制御弁と、ガスバーナを点火する点火プラグ及びイグナイタと、加熱庫17G内の温度を検知する温度検知部と、炎を検知する炎検知部とが設けられており、これらも燃焼部17を構成している。
【0039】
加熱庫17Gは、図示しないグリルトレー上に載置された調理器具等をガス燃焼により加熱して、その調理器具等に収容され、又は載置された被調理物のグリル調理やオーブン調理を行うようになっている。
【0040】
<操作部>
操作部14は、ガスコンロ10の電源のオン及びオフを切り替えるための電源スイッチ14Aを有している。電源スイッチ14Aは、前面パネル10Pにおけるグリル扉17Hよりも右側に位置する領域の右上部分に配置されている。
【0041】
また、操作部14は、左右のガスバーナ17B及び加熱庫17Gのそれぞれについて、点火、消火及び火力調整を操作するための3つの点火スイッチ14Bを有している。左右のガスバーナ17B用の2つの点火スイッチ14Bは、前面パネル10Pにおけるグリル扉17Hよりも右側に位置する領域に配置されている。加熱庫17G用の1つの点火スイッチ14Bは、前面パネル10Pにおけるグリル扉17Hよりも左側に位置する領域に配置されている。
【0042】
<制御部による燃焼部の異常の検出>
電源スイッチ14Aが操作されてガスコンロ10の電源がオンになると、制御部13は、燃焼部17を制御しながら、操作部14がユーザから受ける操作や、点火プラグ17E、図示しないイグナイタ、温度検知部17D、炎検知部17F及び図示しない燃料制御弁の動作状況を常時把握する。
【0043】
そして、制御部13は、それらに基づいて、ユーザから受ける操作により燃焼部17を作動させ、燃焼部17の状態に係る情報、具体的には、左右のガスバーナ17B及び加熱庫17Gのそれぞれについて、燃焼動作中か否か、火力調整の程度、燃焼炎の有無、被加熱物の異常加熱の有無等の情報を取得する。そして、制御部13は、それらの情報に基づいて、異常加熱、煮こぼれ、失火等の燃焼部17の異常を検出するようになっている。
【0044】
<レンジフードの構成>
図1及び
図2に示すように、レンジフード50は、換気部51、照明部59、操作部54及び第2通信部52を有している。
【0045】
図1に示すように、換気部51は、図示しない電動モータ及び送風ファンによりガスコンロ10の周辺の空気をレンジフード50の底面に設けられた導入口50Hから吸い上げ、図示しない換気ダクトを経由して屋外に排出する。
【0046】
照明部59、操作部54及び第2通信部52は、レンジフード50の底面を構成しつつ前向きに庇状に延出する延出部50Aの前端に配置されている。
【0047】
照明部59は、点灯することにより下方のガスコンロ10の天板10B及びその周辺が明るくなるように光を照射する。
【0048】
操作部54は、レンジフード50の電源のオン及びオフを切り替えるための電源スイッチ54Aを有している。電源スイッチ54Aが操作されてレンジフード50の電源がオンに切り替わると、換気部51及び照明部59に給電可能となるとともに、第2通信部52に給電されて、第2通信部52が常時作動する。
【0049】
また、操作部54は、換気部操作スイッチ54B、54C、54D及び照明スイッチ54Eを有している。換気部操作スイッチ54B、54C、54Dは、レンジフード50の電源がオンの状態で、ユーザの選択操作によって風量の強弱を段階的に切り替えて換気部51を作動させる。照明スイッチ54Eは、レンジフード50の電源がオンの状態で、ユーザの操作によって照明部59を点灯と消灯とに交互に反転させる。
【0050】
本実施例では、電源スイッチ54A、換気部操作スイッチ54B、54C、54D及び照明スイッチ54Eは、図示しない簡素なリレー回路によって、換気部51の作動及び停止と、ユーザの操作による照明部59の点灯及び消灯の反転と、第2通信部52への給電及び停止とを制御するようになっている。つまり、レンジフード50は、制御プログラムによる特別な制御が必要ない設備コストの低廉なものが設置されている。
【0051】
第2通信部52は、赤外線用フォトダイオード、赤外線用フォトトランジスタ等の受光素子に赤外線信号、具体的には後述する反転信号が入射する毎にその反転信号を電流に変換し、照明部59に関係する図示しないリレー回路に作用して、照明部59の点灯及び消灯の反転を行う。
【0052】
つまり、第2通信部52は、近距離無線通信である赤外線通信により反転信号の受信のみを行い、反転信号を受信する毎に、照明部59を点灯と消灯とに交互に反転させる。
【0053】
<ガスコンロの第1通信部、照度センサ及び報知灯>
図1及び
図2に示すように、ガスコンロ10は、第1通信部11、照度センサ19及び報知灯18をさらに有している。報知灯18は、本発明の「調理器照明部」の一例である。
【0054】
図1に示すように、第1通信部11は、前面パネル10Pにおけるグリル扉17Hよりも右側に位置する領域の左上部分に配置された赤外線発光ダイオード等の赤外線発信部である。
【0055】
制御部13は、レンジフード50の照明部59について点灯及び消灯の反転を行う場合、第1通信部11から反転信号としてパルス状の赤外線信号を発信させる。
図5は、第1通信部11が発信する反転信号の一例を示している。
【0056】
第1通信部11から発信された反転信号は、ガスコンロ10を使用するユーザや、ガスコンロ10の前面パネル10Pに対向する壁面等によって反射してレンジフード50の第2通信部52に受信される。
【0057】
つまり、第1通信部11は、近距離無線通信である赤外線通信により反転信号の発信のみを行う。
【0058】
図1に示すように、照度センサ19は、天板10Bにおける前端側かつ左右方向の中央に配置されている。つまり、照度センサ19は、レンジフード50の照明部59の下方の位置であって、左右のガスバーナ17Bから前方に離れた位置に配置されている。
【0059】
照度センサ19は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の受光素子に入射した光を電流に変換して明るさを測定する周知の構成を備えている。照度センサ19は、照明部59の照度を測定し、その測定値をアナログ信号又はデジタル信号に変換して制御部13に伝達する。
【0060】
図5に示すように、制御部13は、照度センサ19の測定値について、照明部59の点灯に対応する「High」と、照明部59の消灯に対応する「Low」とに区別する。そして、制御部13は、照度センサ19の測定値が「High」及び「Low」の一方から「High」及び「Low」の他方に変化したとき、照明部59の点灯及び消灯の反転を検出する。
【0061】
図1に示すように、報知灯18は、前面パネル10Pにおけるグリル扉17Hよりも右側に位置する領域の左下部分に配置されている。報知灯18は、制御部13に制御されて赤色光等の点滅を行う警告ランプである。
【0062】
<燃焼部の異常を検出したときの照明部の点滅動作>
制御部13は、燃焼部17の異常を検出したときに、その異常をユーザが認知し易くなるように、
図3及び
図4に示す「照明部の点滅動作のプログラム」を実行する。
図3に示すステップS101~S110は、本発明の「第1動作」の一例である。
図4に示すステップS121~S126は、本発明の「第2動作」の一例である。
【0063】
初めに、制御部13は、
図3に示すステップS101において、照度センサ19の測定値が「High」及び「Low」のどちらであるかを区別し、その区別した測定値を記憶値ML1として記憶する。その理由は、
図3及び
図4に示す「照明部の点滅動作のプログラム」の実行前と実行後とで、照明部59の点灯又は消灯を一致させるためである。
【0064】
次に、制御部13は、ステップS102に移行して、報知灯18と照明部59とが点灯又は消灯で一致するか否かを判断する。制御部13は、照度センサ19によって照明部59の状態を判別できる。また、制御部13は、自己の制御対象である報知灯18の状態を当然判別でき、この段階では、燃焼部17の異常を報知する前であるので報知灯18を消灯させている。
【0065】
照明部59が消灯している場合、燃焼部17の異常を報知する前で消灯した報知灯18と一致するので、ステップS102において「Yes」となり、ステップS104に移行する。
【0066】
その一方、照明部59がユーザの操作によって既に点灯している場合、燃焼部17の異常を報知する前で消灯した報知灯18と一致しないので、ステップS102において「No」となり、ステップS103に移行する。そして、制御部13は、報知灯18を反転させて、報知灯18と照明部59とを点灯で一致させた後、ステップS104に移行する。
【0067】
制御部13は、ステップS102又はステップS103からステップS104に移行すると、第4タイマT4を初期化し、計時を開始する。第4タイマT4は、
図5に示す所定の照明点滅期間G4を計るためのものである。照明点滅期間G4は、照明部59の点滅動作をユーザが確実性高く認知できる程度の長さに設定されている。本実施例では、一例として照明点滅期間G4が数秒~10数秒程度に設定されている。
【0068】
次に、制御部13は、
図3に示すステップS105に移行して、第1通信部11からパルス状の反転信号を発信させる。それと同時に、制御部13は、第1タイマT1を初期化し、計時を開始する。第1タイマT1は、
図5に示す所定の第1発信周期G1を計るためのものである。第1発信周期G1は、照明部59の点灯及び消灯をユーザが区別して認知し易い程度の長さに設定されている。本実施例では、一例として第1発信周期G1が0.5秒~1秒程度に設定されている。照明部59は、第1発信周期G1の2倍の周期で点滅する。
【0069】
次に、制御部13は、
図3に示すステップS106に移行して、照度センサ19の測定値が「High」及び「Low」の一方から「High」及び「Low」の他方に変化したか否か、すなわち、照明部59の点灯及び消灯が反転したか否かを判断する。
【0070】
ステップS106において「Yes」の場合、ステップS107に移行する。その一方、ステップS106において「No」の場合、
図4に示すステップS121に移行する。
【0071】
図5では一例として、第1動作の開始から3回目の反転信号までを第2通信部52が受信でき、第1動作の開始から4回目の反転信号は、遮蔽物等の外乱により第2通信部52が受信できなかった場合を示している。
【0072】
照明部59は、第1動作の開始から3回目の反転信号までに対応して、点灯及び消灯が3回反転し、その反転毎にステップS106において「Yes」となる。その一方、照明部59は、第1動作の開始から4回目の反転信号に対応できず、反転しないままとなってステップS106において「No」となる。
【0073】
ステップS106において「No」となって
図4に示すステップS121に移行する場合については、後で詳しく説明する。
【0074】
制御部13は、
図3に示すステップS106からステップS107に移行すると、照明部59の反転に一致するように報知灯18の点灯及び消灯を反転させる。
【0075】
次に、制御部13は、ステップS108に移行して、第4タイマT4が照明点滅時間G4を経過したか否かを判断する。ステップS108において「Yes」の場合、ステップS109に移行する。その一方、ステップS108において「No」の場合、ステップS110に移行する。
【0076】
制御部13は、ステップS108からステップS109に移行すると、照度センサ19の測定値が記憶値ML1と一致するか否かを判断する。ステップS109において「No」の場合、ステップS110に移行する。
【0077】
その一方、ステップS109において「Yes」の場合、
図3及び
図4に示す「照明部の点滅動作のプログラム」の実行前と実行後とで、照明部59の点灯又は消灯が一致する。このため、制御部13は、ステップS111に移行し、報知灯18を消灯させてガスコンロ10側での異常の報知を終了した後、照明部59の点滅動作を終了する。
【0078】
制御部13は、ステップS108又はステップS109からステップS110に移行すると、第1タイマT1が第1発信周期G1を経過したか否かを判断する。ステップS110において「No」の場合、ステップS108に戻る。
【0079】
その一方、ステップS110において「Yes」の場合、ステップS105に戻る。これにより、
図5に示すように、第1動作の反転信号が所定の照明点滅期間G4、所定の第1発信周期G1で繰り返し発信される。そして、第2通信部52がその反転信号を受信することにより、照明部59が第1発信周期G1の2倍の周期で点滅し、報知灯18が照明部59に同期して点滅する。
【0080】
制御部13は、
図3に示すステップS106において「No」の場合、第1動作(ステップS101~S110)の実行中に反転を検出できないと判断する。そして、制御部13は、第1動作を保留状態として
図4に示すステップS121に移行して、第2動作(ステップS121~S126)を実行する。
【0081】
制御部13は、ステップS121において、第3タイマT3を初期化し、計時を開始する。第3タイマT3は、
図5に示す所定の再送点滅期間G3を計るためのものである。再送点滅期間G3は、ユーザに照明部59の点滅の不自然さを認知させ難くするため、第1発信周期G1よりも短く設定されている。本実施例では、一例として再送点滅期間G3が0.1秒~0.3秒程度に設定されている。
【0082】
次に、制御部13は、
図4に示すステップS122に移行して、第1通信部11から反転信号を発信させる。それと同時に、制御部13は、第2タイマT2を初期化し、計時を開始する。第2タイマT2は、
図5に示す所定の第2発信周期G2を計るためのものである。第2発信周期G2は、再送点滅期間G3が経過するまでに多数の反転信号を発信できる程度に短く設定されている。本実施例では、一例として第2発信周期G2が数10ミリ秒程度に設定されている。
【0083】
次に、制御部13は、
図4に示すステップS123に移行して、照度センサ19の測定値が「High」及び「Low」の一方から「High」及び「Low」の他方に変化したか否か、すなわち、照明部59の点灯及び消灯が反転したか否かを判断する。
【0084】
ステップS123において「Yes」の場合、ステップS124に移行する。その一方、ステップS123において「No」の場合、ステップS125に移行する。
【0085】
図5では一例として、第2動作の開始から4回目の反転信号までは、遮蔽物等の外乱により第2通信部52が受信できず、その後外乱が無くなって、第2動作の開始から5回目の反転信号を第2通信部52が受信できた場合を示している。
【0086】
照明部59は、第2動作の開始から4回目の反転信号までに対応できず、反転しないままとなってステップS123において「No」となる。その一方、照明部59は、第2動作の開始から5回目の反転信号に対応して点灯及び消灯が反転し、ステップS123において「Yes」となる。
【0087】
照明部59の反転が第2通信部52に対する外乱によって遅延した時間DT1は、再送点滅期間G3よりも短く、第1発信周期G1よりも大幅に短いため、ユーザが照明部59の点滅の不自然さを認知し難い。
【0088】
制御部13は、
図4に示すステップS123からステップS124に移行すると、照明部59の反転に一致するように報知灯18の点灯及び消灯を反転させた後、
図3に示すステップS108に戻る。つまり、制御部13は、第2動作(ステップS121~S126)の実行中に照明部59の反転を検出できた場合、第2動作を中止して第1動作(ステップS101~S110)を保留状態から再開する。
【0089】
制御部13は、
図4に示すステップS123からステップS125に移行すると、第3タイマT3が再送点滅時間G3を経過したか否かを判断する。ステップS125において「No」の場合、ステップS126に移行する。
【0090】
その一方、ステップS125において「Yes」の場合、制御部13は、第2動作(ステップS121~S126)を終了するまでに照明部59の反転を検出できないと判断する。そして、制御部13は、
図3に示すように、第1動作(ステップS101~S110)を中止し、ステップS111において報知灯18を消灯させてガスコンロ10側での異常の報知を終了した後、照明部59の点滅動作を終了する。
【0091】
制御部13は、
図4に示すステップS125からステップS126に移行すると、第2タイマT2が第2発信周期G2を経過したか否かを判断する。ステップS126において「No」の場合、ステップS125に戻る。
【0092】
その一方、ステップS126において「Yes」の場合、ステップS122に戻る。これにより、
図5に示すように、第2動作の反転信号が所定の再送点滅期間G3、所定の第2発信周期G2で繰り返し発信される。
【0093】
<作用効果>
実施例の調理システム1では、ガスコンロ10の制御部13が燃焼部17の異常を検出したときに、
図3に示す第1動作(ステップS101~S110)を実行することにより、
図5に示すように、第1通信部11が反転信号を所定の照明点滅期間G4、所定の第1発信周期G1で繰り返し発信し、レンジフード50の第2通信部52がその反転信号を受信する毎に、照明部59を点灯と消灯とに交互に反転させる。このような照明部59の点滅により、ユーザに燃焼部17の異常を容易に認知させることができる。
【0094】
また、この調理システム1では、レンジフード50において、第2通信部52は、ガスコンロ10の第1通信部11が繰り返し発信する反転信号を受信するだけであって上記従来技術のような専用の指示信号を受信する必要がなく、また、照明部59も反転信号の繰り返しに応じて点滅するだけで特別な制御を受ける必要もない。その結果、レンジフード50において、第2通信部52及び照明部59を制御する制御部も簡素化できる。これにより、この調理システム1を設置しようとする場合、反転信号を受信する毎に照明部59が点灯と消灯とに交互に反転する簡素なレンジフード50が既設されていればそれを流用でき、また、そのような安価なレンジフード50を新規で設置できる。
【0095】
したがって、実施例の調理システム1では、設備コストの低廉化を実現しつつ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0096】
また、この調理システム1では、第1通信部11が赤外線通信により反転信号の発信のみを行い、第2通信部52が赤外線通信により反転信号の受信のみを行う構成により、第1通信部11及び第2通信部52を簡素化できるので、設備コストの低廉化を一層実現できる。
【0097】
さらに、この調理システム1では、制御部13は、
図5に示すように、照度センサ19の測定値が「High」及び「Low」の一方から「High」及び「Low」の他方に変化したか否かに基づいて照明部59の反転を検出する。そして、制御部13は、
図3に示すように、第1動作(ステップS101~S110)の実行中に、ステップS105において第1通信部11から反転信号を発信させてもステップS106において照明部59の反転を検出できない場合、第1動作(ステップS101~S110)を保留状態とし、
図4に示すように、第2動作(ステップS121~S126)を実行する。制御部13は、第2動作として、第1通信部11からの反転信号を第1発信周期G1よりも短い所定の再送点滅期間G3以内であって照明部59の反転を検出できるまで、所定の第2発信周期G2で繰り返し発信させる。この構成により、この調理システム1では、レンジフード50において、第2通信部52が第1通信部11からの赤外線通信による反転信号を外乱によって受信できないことにより照明部59が反転できない場合に、第2動作を実行することで、
図5に示すように、反転信号の再送を行って外乱がおさまったときに照明部59を反転させることができる。つまり、外乱があるときには第1動作を一時的に止めることができ、外乱がないときには、燃焼部17の異常をユーザに確実に伝達できる。
【0098】
また、この調理システム1では、制御部13は、
図4に示すように、第2動作(ステップS121~S126)の実行中にステップS123において照明部59の反転を検出できた場合、ステップS123を実行した後に第2動作を中止し、
図3に示すステップS108に移行して、第1動作(ステップS101~S110)を保留状態から再開する。その一方、制御部13は、第2動作を終了するまでに照明部59の反転を検出できない場合、
図4に示すステップS125から
図3に示す「点滅動作終了」に移行して第1動作を中止する。この構成により、ガスコンロ10において、制御部13は、ユーザに照明部59の点滅の不自然さを認知させ難くしつつ、照明部59の点滅を再開し、又は照明部59の点滅を中止することができる。
【0099】
さらに、この調理システム1では、制御部13は、
図3に示すように、第1動作(ステップS101~S110)を実行するときに、ステップS102、S103、S106、S107において照度センサ19に基づいて報知灯18を制御し、照明部59が点灯したときには報知灯18を点灯させ、照明部59が消灯したときには報知灯18を消灯させる。この構成により、照明部59と報知灯18とが同期して点滅するので、照明部59の点滅と報知灯18の点滅とが食い違う場合と比較して、照明部59の点滅と報知灯18の点滅とが燃焼部17の異常を同時に報知するものであることをユーザに容易に認知させることができる。また、この場合、ガスコンロ10が単独で燃焼部17の異常を報知する場合と比較して、電力消費を低減できるので、ガスコンロ10を駆動する乾電池等のバッテリの消耗を抑制できる。
【0100】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0101】
例えば、実施例では、第1通信部11及び第2通信部52が一方向の赤外線通信を行うが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、第1通信部及び第2通信部は、Bluetooth(登録商標)等によって双方向の近距離無線通信が可能であってもよい。
【0102】
例えば、実施例では、加熱部が燃焼部17であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、加熱部は、電熱ヒータ式や高周波誘導加熱式の電気コンロ等であってもよい。
【0103】
実施例では、調理器照明部は、警告点滅のみを行う報知灯18であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、報知灯18は、燃焼部17に異常がないときに、白色光等によってガスコンロ10の前面パネル10Pの周辺を明るくしてもよい。また、調理器照明部は、天板10B側に設けられて燃焼部17に異常がないときにガスバーナ17Bの周辺を明るくする一方、燃焼部17の異常が検出されたときに照明部59と同期して点滅してもよい。さらに、調理器照明部は、前面パネル10P側又は天板10B側に設けられて燃焼部17に異常がないときに燃焼部17の作動状況等を表示する表示部として機能する一方、燃焼部17の異常が検出されたときに照明部59と同期して点滅してもよい。また、ガスコンロ10が有する音声発生部による警告音声を照明部59と同期して発音及び消音させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は例えば、住宅や調理施設等に設置される調理システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…調理システム
17…加熱部(燃焼部)
10…加熱調理器(ガスコンロ)
50…レンジフード
11…第1通信部
13…制御部
52…第2通信部
59…照明部
19…照度センサ
G4…照明点滅期間
G1…第1発信周期
G3…再送点滅期間
G2…第2発信周期
18…調理器照明部(報知灯)