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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】色むら監視装置
(51)【国際特許分類】
   D21F 7/00 20060101AFI20230602BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
D21F7/00 Z
G01N21/892 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020066602
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021161579
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】森 拓也
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-197453(JP,A)
【文献】特開2017-203622(JP,A)
【文献】特開2019-074394(JP,A)
【文献】特開2018-205037(JP,A)
【文献】特開2015-114827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0066545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 1/00 - 13/12
G01N 21/84 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の紙製品を巻き取るスプールを含むリールパート内に設けられ、巻取前の前記紙製品の塗工面を撮像するように設けられたハイパースペクトルカメラによって撮像された前記紙製品の画像データを、抄紙機を操業するために、プロセス制御装置によって生成、取得され、データ収集装置によって定周期の時刻ごとに収集されたデータを含む操業データの前記時刻に同期させる時刻同期部と、
前記時刻に同期された前記画像データおよび前記操業データを記憶する記憶部と、
を備え、
前記画像データを、1つのバンドの2次元メッシュデータとして、前記2次元メッシュデータのそれぞれについて、前記2次元メッシュデータの大きさおよびあらかじめ設定された前記バンドの第1しきい値の比較結果にもとづいて、前記紙製品の色むらの有無を判定する色むら監視装置。
【請求項2】
前記紙製品の色むらの判定は、前記製品内の前記2次元メッシュデータの数のうち、前記2次元メッシュデータの大きさが前記第1しきい値によって設定された範囲をはずれた数の割合が、あらかじめ設定された第2しきい値以上の場合に色むらが発生したと判定する請求項1記載の色むら監視装置。
【請求項3】
前記紙製品の色むらの判定は、前記2次元メッシュデータにおいて前記紙製品の幅方向の1次元のデータの数のうち、前記1次元のデータの大きさが前記第1しきい値によって設定された範囲をはずれた数の割合が、あらかじめ設定された第3しきい値以上の場合に色むらが発生した色むら発生時刻とされる請求項2記載の色むら監視装置。
【請求項4】
前記操業データは、時間に対する変化率についての第4しきい値をあらかじめ設定され、前記操業データが前記第4しきい値を超えた場合に、前記色むら発生時刻に関連する範囲を出力される請求項3記載の色むら監視装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶された前記操業データは、過去に実施した解決策がある場合に、前記解決策に関連付けて前記記憶部に記憶され、前記解決策に関連付けられた前記操業データが出力される場合には、前記解決策を出力する請求項1~4のいずれか1つに記載の色むら監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、主に製紙産業における製造設備(以下、抄紙機という)に向けた色むら監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
文庫本などに用いる紙は、淡いクリーム色に着色されており、その紙の色に微小なむらがある場合、製本時に横から見ると縞となって表れることがある。製紙工場出荷の際、色むらが確認された場合、同一ロットとして出荷できず、損紙となることがある。同じマシンで同じ配合、同じ基準で抄造しても色に微小な差が発生することがあり、パルプや水、染料添加装置等のさまざまな要因が考えられるが、原因の特定は難しい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-68807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
色の微小な差は肉眼で判断することは難しく、紙などのシート状のむらを評価するには、1次元の測定ではなく、2次元的評価手段が必要である。特許文献1では、目視で濃淡として表れる紙の繊維の粗密を、紙の透過光から測定し、濃淡の分布を数値化して2次元的な凹凸での表現を可能にしている。しかし、色むらは繊維の粗密から生じる濃淡だけでなく、染料の添加具合やパルプや使用する水自体のわずかな色の差、塗工機器の変動によっても生じるという課題がある。
【0005】
本発明の実施形態は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、製品の微小な色むらを検出できる色むら監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る色むら監視装置は、帯状の紙製品を巻き取るスプールを含むリールパート内に設けられ、巻取前の前記紙製品の塗工面を撮像するように設けられたハイパースペクトルカメラによって撮像された前記紙製品の画像データを、抄紙機を操業するために、プロセス制御装置によって生成、取得され、データ収集装置によって定周期の時刻ごとに収集されたデータを含む操業データの前記時刻に同期させる時刻同期部と、前記時刻に同期された前記画像データおよび前記操業データを記憶する記憶部と、を備える。前記画像データを、1つのバンドの2次元メッシュデータとして、前記2次元メッシュデータのそれぞれについて、前記2次元メッシュデータの大きさおよびあらかじめ設定された前記バンドの第1しきい値の比較結果にもとづいて、前記紙製品の色むらの有無を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態では、製品の微小な色むらを検出できる色むら監視装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】抄紙機を構成する各パートのうちの主要なパートを例示する模式図である。
図2】実施形態に係る色むら監視装置を模式的に例示するブロック図である。
図3】実施形態の色むら監視装置によって生成されるデータベースを例示する模式図である。
図4図4(a)は、色むら監視装置によって取得される製品の画像データの模式図である。図4(b)は、色むら監視装置が判定する製品の色むらの評価結果を表す模式図である。
図5】実施形態の色むら監視装置の動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、抄紙機を構成する各パートのうちの主要なパートを例示する模式図である。
図1に示すように、抄紙機1は、複数のパートからなる。この例の抄紙機1では、原料(パルプ)を投入するパートから、帯状の製品を巻き取るパートに向かって、原料、中間品および製品が流れる。つまり、原料、中間品および製品は、図の矢印に示した方向に、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、コーターパート、アフタードライヤーパートおよびリールパート3の順に流れていく。なお、原料は、たとえば紙パルプである。中間品は、たとえば紙パルプから水分を除去された塗工前の紙である。製品は、たとえば中間品に塗工し、巻き取りができる状態のものおよび巻き取ったものである。
【0011】
ワイヤーパートは、原料が投入されるパートである。原料は、たとえば均一な厚さとなるようにワイヤー上に乗せられる。原料の水分は、原料がワイヤー上で搬送される過程で幾分除去される。
【0012】
プレスパートは、ワイヤーパートである程度水分を除去された原料を、フェルト等の吸水性を有する材料を表面に設けたロール等によってプレスし、さらに水分を除去して、中間品を生成する。
【0013】
ドライヤーパートでは、プレスパートで水分を除去された中間品は、たとえば蒸気で加熱されたロールに密着されてさらに乾燥される。
【0014】
コーターパートは、水分を乾燥された中間品の表面に塗料を塗布する。以下で説明する具体例では、色むらを発生する原因パートとして、コーターパートを取り上げるので、コーターパートの設備の構成を説明する。コーター用の設備には、たとえばゲートロールコーターやブレードコーター等が挙げられる。
【0015】
図1には、ゲートロールコーター2aおよびブレードコーター2bの例が示されている。コーターパートには、これらを含むいくつかの種類から、用途等に応じて適切な設備いずれか1つ選定される。図1のコーターパートの左側の図は、ゲートロールコーター2aの構成例を示している。ゲートロールコーター2aは、アプリケーターロール20a,21a、ファウンテンロール22a,23a、メタリングロール22b,23bおよび搬送ロール24a,25aを有している。
【0016】
アプリケーターロール20a,ファウンテンロール22aおよびメタリングロール22bは、中間品100の一方の面に塗料を塗布するように構成されている。アプリケーターロール21a,ファウンテンロール23aおよびメタリングロール23bは、中間品100の他方の面に塗料を塗布するように構成されている。これらのロールの表面部分には、フェルト等の塗料を浸潤する材料が設けられている。紙の中間品100は、アプリケーターロール20a,21aの間に挟まれながら、搬送ロール24a,25aを介して搬送される。中間品100は、アプリケーターロール20a,21aに挟まれて、アプリケーターロール20a,21aの表面に浸潤された塗料を塗布される。
【0017】
より具体的には、ファウンテンロール22aとメタリングロール22bとは、ロール面が接するように設けられており、ロール面の接する部分に塗料が供給されて塗布剤ポンドを形成している。メタリングロール22bとアプリケーターロール20aとは、ロール面を接するように設けられており、塗布剤ポンドに蓄積された塗料は、メタリングロール22bの表面を介して、アプリケーターロール20aの表面に浸潤される。
【0018】
ファウンテンロール23aおよびメタリングロール23bについても同様に、ロール面を接するように設けられており、メタリングロール23bおよびアプリケーターロール21aのロール面も接するように設けられている。ファウンテンロール23aおよびメタリングロール23bの接する部分に塗料が供給されて塗布剤ポンドが形成される。塗布剤ポンドの塗料は、メタリングロール23bの表面からアプリケーターロール21aの表面に浸潤される。
【0019】
このようにして、アプリケーターロール20a,21a間を通る中間品は、両面に塗料が塗布される。このようなゲートロールコーター2aでは、中間品100の入側および出側の搬送ロール25a,24aの速度制御をそれぞれ行うことによって、中間品100の表面に塗布される塗料の厚さ等が制御される。
【0020】
図1のコーターパートの右側の図は、ブレードコーター2bの構成例を示している。ブレードコーター2bは、パッキングロール26b、塗料吐出ノズル27bおよびブレード28bを有している。この例では、中間品100の一方の面に塗料を塗布する場合について示されているが、他方の面についても図示の工程で塗工し乾燥後、あるいは図示の工程前に同様の構成とすることによって、塗料を塗布することができる。
【0021】
ブレードコーター2bでは、中間品100は、パッキングロール26bによって矢印の方向に搬送される。塗料吐出ノズル27bは、適切に設定された吐出圧等によって塗料を吐出し、中間品100の一方の面に塗料を吐出する。ブレード28bは、塗料が塗布された中間品100の面上に押し当てられて、余分な塗料をそぎ落とす。
【0022】
このようにして、ブレードコーター2bでは、中間品100の表面に塗料が塗布される。このようなブレードコーター2bでは、パッキングロール26bの速度や、塗料吐出ノズル27bからの吐出圧、ブレード28bのON/OFF等を制御することによって、中間品100の表面に塗布される塗料の厚さ等が制御される。
【0023】
アフタードライヤーパートは、コーターパートで塗布された塗料を乾燥させる工程である。アフタードライヤーパートを流れる中間品は、たとえば温風を吹き付けられて乾燥される。
【0024】
リールパート3は、スプール31およびリールドラム32を有している。アフタードライヤーパートから搬送されてきた製品100aは、リールドラム32の表面を通り、リールドラム32で加圧されながらスプール31に巻き取られる。
【0025】
リールパート3には、ハイパースペクトルカメラ30が設けられている。ハイパースペクトルカメラ30は、巻き取られる前の製品100aの塗装面の状態を撮影する。ハイパースペクトルカメラ30は、撮像する対象の光を波長ごとに分光して撮像することができる。分光する波長の数(バンド数)は、RGB(光の3原色)よりも十分多くすることができ、10バンドを超え、100バンド以上とすることも可能である。実施形態の色むら監視装置は、ハイパースペクトルカメラ30によって撮像した画像データに含まれる1つ以上のバンドデータを評価することによって、RGBカメラの画像データや肉眼では判別できない色むらを判定する。
【0026】
次に、実施形態の色むら監視装置の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る色むら監視装置を例示する模式的なブロック図である。
図2に示すように、色むら監視装置40は、通信ネットワーク80に接続されている。通信ネットワーク80は、汎用のネットワークでよく、たとえばイーサネット(登録商標)等である。通信ネットワーク80は、有線によるものでもよいし、無線によるものであってもよいし、これらが複合されたものであってもよい。通信ネットワーク80には、ハイパースペクトルカメラ30およびデータ収集装置50が接続されている。
【0027】
ハイパースペクトルカメラ30は、上述したように、塗工、乾燥後に製品100aとして巻き取られる前に、製品100aの塗工面の状態を撮像する。
【0028】
データ収集装置50は、図示しないが、専用の制御ネットワーク等を介して接続されたプロセス制御装置、たとえばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)によって生成され、取得される制御データやセンサ等のデータを時系列で収集する。以下では、プロセス制御装置によって生成され、取得されるデータを操業データと呼ぶ。
【0029】
色むら監視装置40は、入力装置60に接続されている。入力装置60は、色むら監視装置40の操作者が操作するための端末装置である。操作者は、入力装置60を介して、手動でデータベースに情報を入力することができる。また、操作者は、入力装置60を介して、表示装置70に出力するデータの数等を制限したり、追加したりすることもできる。
【0030】
色むら監視装置40は、表示装置70に接続されている。表示装置70は、色むら監視装置40が生成し、出力するデータを表示する。表示装置70は、たとえば液晶モニタ等である。
【0031】
色むら監視装置40は、ハイパースペクトルカメラ30で撮像した画像データおよびデータ収集装置50によって収集された操業データを取得し、データベースに格納する。色むら監視装置40は、データベースに格納するに際して、画像データおよび操業データを時刻で同期し、時系列データとする。つまり、製品の画像データは、スプール31に巻き取られた順に時系列データとされてデータベースに格納される。
【0032】
色むら監視装置40は、画像データから製品の色むらの発生有無を自動的に検出する。色むら監視装置40は、色むらが発生した時刻に同期された操業データから、出力すべき操業データを抽出する。操業データは、変化率についてのしきい値があらかじめ設定されており、色むら監視装置40は、このしきい値を越えた操業データを出力すべき操業データとして抽出する。色むら監視装置40は、抽出された操業データを画像データとともに表示装置70に出力する。色むら監視装置40は、画像データおよび操業データを出力する場合には、たとえば色むら発生時刻から色むら発生終了時刻までを表示することができる。
【0033】
色むら監視装置40の構成について詳細に説明する。
色むら監視装置40は、時刻同期部41と、記憶部42と、を備える。色むら監視装置40は、画像データおよび操業データを収集し、時刻同期部41によって、画像データおよび操業データの時刻を同期して、データベースに格納し、記憶部42に記憶する。
【0034】
色むら監視装置40は、所定の条件を満たす(あるいは所定の条件を満たさない)画像データを有する製品の画像データを疑似カラーチャートとして抽出する。抽出された疑似カラーチャートは、抽出データ43に含まれる。色むら監視装置40は、抽出された画像データを用いて、2次元の画像データ中のどこにしきい値を超える境界が存在するかを判定する。色むら監視装置40は、判定した境界を色むらが発生した時刻として設定し、その時刻に同期された操業データであって、所定の変化率のしきい値を超えた操業データを抽出データ43として、記憶部42から抽出する。
【0035】
色むら監視装置40は、色むらが発生した時刻を自動的に検出し、操業データの中から変化率の大きいものを抽出して出力するので、より迅速に適切な操業データを抽出することができる。
【0036】
なお、色むら監視装置40は、抽出する操業データについて、抄紙機のパートごとに設定することができるようにしてもよい。たとえば、抽出対象の操業データを、コーターパートに関するデータ等とすることができる。あらかじめ抽出する操業データのパートを限定することによって、より迅速に適切な操業データを抽出することが可能になる。
【0037】
色むら監視装置40は、抽出する操業データのうち、たとえば過去の実績として、色むらを含む問題発生時の解決策等を紐づけてデータベースに格納することができる。その場合には、その解決策等を抽出データ43に含めることができる。このような抽出データに含まれる解決策データは、紐づけられた操業データが抽出された場合には、その操業データとともに表示装置70により表示することができる。
【0038】
記憶部42に記憶されるデータベースの構成について説明する。
図3は、実施形態の色むら監視装置によって生成されるデータベースを例示する模式図である。
図3に示すように、データベースは、製品の画像データおよび操業データを含んでいる。製品の画像データは、製品の巻き取りに応じて、順次収集される。画像データが取得されるときには、時刻のデータが関連付けれていないので、時刻同期部41によって、画像データに時刻のデータが関連付けられる。
【0039】
この例では、製品は、製品1、製品2、製品3、製品4、…の順にスプールに巻き取られており、画像データは、この順に時系列的なデータとされている。製品1の先端は、時刻t10に対応し、尾端は、時刻t20の直前の時刻に対応する。製品2の先端は、時刻t20に対応し、尾端は、時刻t30の直前の時刻に対応する。製品3の先端は、時刻t30に対応し、尾端は、時刻t40の直前に時刻に対応する。製品4の先端は、時刻t40に対応し、尾端は、図示されないが、直後に後続する製品の先端に対応する時刻の直前の時刻に対応する。なお、製品の間隔は、任意に設定できるので、この例の場合に限らず、尾端の時刻は、製品の間隔に応じて適切に設定することができる。
【0040】
操業データは、PLC等によって定周期のデータとして取得されている。つまり、各操業データは、一定の時間間隔で取得されている。操業データは、この例では、4種類のデータが示されている。図示されている操業データは、コーターパートの制御に関するデータであり、コーターパート用の設備は、ブレードコーターの場合とされている。4つの操業データは、パッキングロールの速度指令値V*、パッキングロールの速度実測値v、塗料吐出ノズルからの吐出圧DおよびブレードのON/OFFデータである。
【0041】
データベース上には、操業データとして、これ以外にも多種のデータが格納されている。以下説明する例では、色むら発生に直接的に寄与する操業データとして、複数のパートのうちコーターパートを選定している。なお、実施形態の色むら監視装置40では、コーターパート以外のパートを選択するようにもできる。
【0042】
このように、データベースでは、画像データと各操業データとは、時刻同期されて格納され、管理されている。そのため、データベース上の時刻の範囲を設定することによって、所望の画像データおよび操業データを抽出データ43として抽出することができる。
【0043】
以下では、画像データと操業データとの時刻同期の方法について、図1も参照しつつ説明する。
時刻t10は、製品1の巻き始めの時刻に相当する。なお、製品の巻き始めや巻き終わりのタイミングは、PLC側で操業データとして取得されるので、巻き始めの時刻は既知の値として扱うことができる。
【0044】
時刻t1kは、時刻t10よりも遅い時刻であり、製品1の先端がスプール31に到達したときに、ハイパースペクトルカメラ30が設置された場所の撮像の時刻である。製品の巻き始めの時刻は、その直前の製品の巻き終わりを検出することによって設定される。
【0045】
製品1の巻き始めの時刻t10、スプール31からハイパースペクトルカメラ30までの距離Lおよび製品の搬送速度Nが既知であるため、これらに数値にもとづいて、時刻t1kを計算することができる。搬送速度Nは、一定値であるため、距離Lは、以下のように表される。
【0046】
L=N×(t1k-t10)=N×(t2k-t20)
=N×(t3k-t30)=N×(t4k-t40)
=…
【0047】
L,N,t10~t40は、既知の値であるから、上式より、時刻t1k~t4kを求めることができる。時刻は、定周期で設定され、距離Lおよび搬送速度Nが一定値であるので、これらにもとづいて、画像データの搬送方向に沿う位置を、すべての時刻にわりあてることができる。このようにして、時刻同期部41は、画像データと操業データとの時刻同期をとることができる。なお、上述は一例であり、他の時刻同期の方法を用いてもよいのは言うまでもない。たとえば、製品の先端および尾端がスプール31に到達時刻、搬送速度および製品の全長にもとづいて、周期当たりの長さを計算して、長さ(位置)と時刻とを関連付けるようにしてもよい。あるいは、先端および尾端の到達時刻をスプール31に代えて、ハイパースペクトルカメラ30の撮像タイミングとしてもよい。
【0048】
実施形態の色むら監視装置40の動作について詳細に説明する。
図4(a)は、色むら監視装置によって取得される製品の画像データの模式図である。図4(b)は、色むら監視装置が判定する製品の色むらの評価結果を表す模式図である。
図4(a)に示すように、製品の色むらは、画像データの2次元メッシュデータにもとづいて判定される。2次元メッシュデータは、製品を搬送方向にn等分し、幅方向にm等分し、n×mの格子点の座標ごとのデータの大きさとして表される。なお、この例では、図示の製品1~製品4は、いずれも同じ製品仕様(同一長さを有し同一色で塗工されている)のものである。
【0049】
画像データは、複数のスペクトルのデータを含んでいる。画像データは、スペクトルごとに大きさ(輝度)が示され、スペクトルごとの大きさを表すデータをバンドデータと呼ぶことがある。実施形態の色むら監視装置40では、たとえば、画像データに含まれるバンドデータのうち適切ないくつかバンドを選定して、2次元メッシュデータの大きさを評価する。色むら監視装置40は、これによって、製品の色むらの有無を判定する。以下では、説明の便宜上、1つのバンドデータに関する色むら評価の方法について説明する。なお、複数のバンドデータを設定して色むらを評価する場合については、たとえばバンドデータごとに取得した2次元メッシュデータのそれぞれについて、バンドデータごとに重みづけを設定して判定するようにしてもよい。
【0050】
色むら監視装置40は、バンドデータに関してしきい値があらかじめ設定される。このしきい値をバンドしきい値Bth(第1しきい値)と呼ぶ。バンドしきい値Bthは、上限しきい値の場合や、下限しきい値の場合、上下限のしきい値(範囲データ)の場合とすることができる。なお、以下の具体例の説明では、特に断らない限り、バンドしきい値Bthは、下限しきい値であるものとする。
【0051】
色むら監視装置40は、2次元メッシュデータのそれぞれの大きさと、バンドしきい値Bthとを比較する。色むら監視装置40は、2次元メッシュデータの個数のうち、2次元メッシュデータの大きさがバンドしきい値Bthの条件を満たすものの個数の割合で色むらの判定をする。この個数の割合が所定のしきい値以上の場合に、色むらなしと判定し、この個数の割合が所定のしきい値よりも小さい場合に、色むらありと判定する。この所定のしきい値を色むらしきい値α[%](第2しきい値)と呼ぶ。
【0052】
たとえば、図4(b)に示すように、製品1では、すべての2次元メッシュデータのうち、バンドしきい値Bthの条件を満たすデータの個数の割合が90%であることを示している。同様に、製品2では80%、製品3では70%、製品4では60%との結果が得られている。たとえば、色むらしきい値αを65%とすると、製品1~3は色むらなしと判定され、製品4については色むらありと判定される。
【0053】
色むら監視装置40は、このようにして抽出された製品の画像データについて、巻き始めの時刻から巻き終わりの時刻までの操業データを抽出して、製品ごとに画像データおよび操業データを評価するようにしてもよいが、抽出するデータを以下のようにすることによって、より対象を絞ることができる。
【0054】
抄紙機におけるプロセス制御では、製品等の搬送方向に沿って各パートが配置され、各プロセスが実行される。そのため、色むらの発生は、製品の搬送方向に交差する境界を有することが多い。したがって、2次元メッシュデータをさらに製品の幅方向および搬送方向に分解して評価解析することによって、色むらの発生箇所、その時刻およびその時刻に関連する操業データのデータ範囲を制限することができる。
【0055】
図5は、実施形態の色むら監視装置の動作を説明する模式図である。
図5の上の図は、製品Xの画像データである疑似カラーチャートを示している。この疑似カラーチャートでは、5000mから6000mの間で色むらが発生していることを示している。この例では、色むらの境界は、製品Xの幅方向に対して少し角度を有するように発生している。
【0056】
色むら監視装置40は、2次元メッシュデータのうち、製品Xの幅方向に沿って1次元の色むらを判定する。そして、製品の先端から尾端に向かって、1次元の色むら判定を繰り返して実行する。
【0057】
たとえば、色むら監視装置40は、製品Xの先端付近の幅方向の2次元メッシュデータの大きさとバンドしきい値Bthとを比較する。幅方向の2次元メッシュデータの数に対して、2次元メッシュデータの大きさがバンドしきい値Bthよりも小さいものの数の割合が所定のしきい値以上となった場合に、色むら監視装置40は、幅方向の色むらが発生したと判定する。ここで、所定のしきい値を幅方向色むらしきい値β[%](第3しきい値)と呼ぶ。
【0058】
色むら監視装置40は、幅方向の色むら判定した位置を搬送方向に隣接する2次元メッシュデータの位置にずらして、上述と同様に、幅方向の色むら判定する。色むら監視装置40は、2次元メッシュデータの位置を順次ずらして、上述と同様に、幅方向の色むら判定をする。
【0059】
図の疑似カラーチャートでは、位置Aは、幅方向の2次元メッシュデータの全数に対して、2次元メッシュデータの大きさがバンドしきい値Bthを下回る数の割合が幅方向色むらしきい値β以上となった位置である。したがって、色むら監視装置40は、位置Aに対応する時刻tAを抽出開始時刻に設定し、抽出対象とされている操業データを時刻tAから出力する。
【0060】
なお、このときに、製品Xの尾端に達する前に、2次元メッシュデータの大きさがバンドしきい値Bthの下回る数の割合が幅方向色むらしきい値βよりも小さくなった場合には、その搬送方向の位置Bを設定し、位置Bに対応する時刻tBを抽出終了時刻とする。製品の尾端に達するまでに、割合が幅方向色むらしきい値βを下回らない場合には、色むら監視装置40は、製品の尾端を位置Bに設定する。
【0061】
色むら監視装置40は、抽出開始時刻tAから抽出終了時刻tBまでの操業データを出力する。この例では、抽出対象のデータは、コーターパートの制御等に関連するデータに選定されており、コーターパート中の操業データが出力される。コーターパートのすべての操業データには、あらかじめ時間に対する変化率のしきい値が設けられている。出力される操業データは、抽出された時刻の範囲で、これらの変化率のしきい値を超えたものが選択される。
【0062】
実施形態の色むら監視装置40では、抽出対象とされた操業データには、操業データごとに、あらかじめ変化率のしきい値が設定されている。操業データの変化率のしきい値を変化率しきい値γと呼び、変化率しきい値γは、変化率の最大値であってもよいし、最小値(負方向の最大の絶対値)であってもよいし、両方を設定することとしてもよい。
【0063】
この例では、出力される操業データは、図1に示したブレードコーター2bに対応するデータであり、パッキングロール26bの速度指令値V*、速度実測値vおよび塗料吐出ノズル27bの吐出圧Dである。なお、色むら監視装置40の操作者は、変化率のしきい値を超えた操業データのほか、自己が選択した操業データを出力することもできる。この例では、操作者が選択した操業データとして、ブレード28bのONまたはOFFの状態を表す信号が選択されている。
【0064】
また、色むら監視装置40は、操業データの時間に対する変化率の大きいものから順に表示することができる。この例では、速度指令値V*、速度実測値v、吐出圧DおよびブレードのON/OFF状態がこの順に表示されている。操作者は、変化率の大きいものから色むら発生の要因として把握することができる。
【0065】
抽出された操業データのうち、解決策データが紐づけられている場合には、操業データの表示とともに、解決策データを表示する。
【0066】
なお、色むらの境界を判定する場合に、上述では、幅方向の1次元のバンドデータの大きさを評価し、製品の先端から尾端に向かって走査することとしたが、搬送方向の走査手順については、任意としてもよい。たとえば尾端から先端に向かって走査してもよいし、1つおきに隣接する1次元バンドデータを評価するようにしてもよい。
【0067】
抽出され、出力される操業データの期間は、抽出開始時刻から抽出終了時刻の期間に限られない。たとえば、抽出された操業データは、抽出開始時刻よりも前の時刻から出力されるようにしてもよい。このような出力開始時刻は、抽出開始時刻にもとづいて、あらかじめ設定されていてもよいし、操作者が出力結果を見ながら、前後に調整できるようにしてもよい。
【0068】
実施形態の色むら監視装置40の効果について説明する。
実施形態の色むら監視装置40は、時刻同期部41を備えているので、ハイパースペクトルカメラ30によって撮像された画像データを、操業データに時刻同期して、データベースとして記憶部42に記憶することができる。画像データは、操業データに時刻同期されているので、画像データを解析することによって、色むらを検出し、色むらを検出した時刻を特定することができる。そのため、色むらが発生した時刻に関連する操業データを抽出することできる。
【0069】
実施形態の色むら監視装置40は、画像データの2次元メッシュデータを用いて、最初に製品単位で色むらが生じているものを抽出する。その上で、色むら監視装置40は、抽出された画像データから、色むらの発生位置および時刻を特定する。色むら監視装置40によって収集し、監視する製品の数は、非常に多い。すべての画像データの2次元メッシュデータを幅方向および搬送方向にそれぞれ沿って、しきい値判定をするのでは、演算量や記憶量が多くなるため、製品単位で選択的に色むら発生品を抽出することによって、演算量および記憶量を抑制することができ、迅速に色むら発生箇所および時刻を特定することができるようになる。
【0070】
実施形態の色むら監視装置40は、ハイパースペクトルカメラ30によって撮像された画像データを解析するので、肉眼やRGBカメラの画像データでは、差異を判定することができなかった色むらに関する情報を判定することができる。
【0071】
データベースに格納された操業データでは、操業データごとにそのデータの変化率のしきい値(変化率しきい値)を設けている。そのため、多数の操業データの中から自動的に出力すべきデータを選択することができる。また、抄紙機の構成に応じて、出力対象の操業データが属するパートをあらかじめ設定したり、操作者が設定したりすることができるので、多数の操業データを効率よく絞り込んで、問題の要因の解析をより迅速に進めることが可能になる。
【0072】
画像データおよび操業データを格納するデータベースには、過去に実施した解決策を対応する操業データに紐づけて格納することができる。そのため、抽出された操業データにそのような解決策データがある場合には、より迅速に問題を解決することが可能になる。
【0073】
なお、上述では、色むらの発生は、塗工におけるプロセス制御の問題に起因する場合があるとの観点から、コーターパートを例にとって説明したが、他のパートについてもコーターパートで説明したのと同様に評価することができるのは言うまでもない。たとえば、ワイヤーパートにおいて、原料の吐出圧の異常の有無は、製品表面の凹凸に影響し、色むらの発生要因となり得る。また、プレスパートやドライヤーパートにおいて、水分の除去が不十分であるような制御状態等の場合には、製品の紙質に影響し、色むらの発生要因となり得る。実施形態の色むら監視装置40では、操作者が評価対象のパートを選定することができるので、より迅速に問題の解析を図ることができる。
【0074】
以上説明した実施形態によれば、製品の微小な色むらを自動的に検知し、色むらと色むら発生時の操業データとの関連性を容易に抽出することができる色むら監視装置を実現することができる。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 抄紙機、2a ゲートロールコーター、2b ブレードコーター、3 リールパート、30 ハイパースペクトルカメラ、31 スプール、32 搬送リール、40 色むら監視装置、41 時刻同期部、42 記憶部、43 抽出データ、50 データ収集装置、60 入力装置、70 表示装置、80 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5