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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】瞬時データ評価システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20230602BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20230602BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
H02J3/18
H02J13/00 301A
H02J13/00 311A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020110620
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007572
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】二本柳 理人
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-341706(JP,A)
【文献】特開平11-212626(JP,A)
【文献】特開2009-065766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0196033(US,A1)
【文献】特開2008-129829(JP,A)
【文献】特開2010-049533(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H02J 3/18
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント制御に用いられ第1周期でデータ伝送する通信ネットワークに接続された第1装置から、前記第1周期よりも速い第2周期で前記第1装置に関する計測値である第1データを取得し、前記第1データを取得した時刻ごとに関連付けて前記時刻とともにパケットデータを形成するデータ計測伝送装置と、
前記通信ネットワークまたは伝送周期の保証されないネットワークを介して、前記データ計測伝送装置から前記パケットデータを受信して、所望の処理を施して出力するデータ評価装置と、
を備えた瞬時データ評価システム。
【請求項2】
前記データ評価装置は、受信した前記パケットデータから前記第1データを含む時系列データを復元して出力する請求項1記載の瞬時データ評価システム。
【請求項3】
前記データ評価装置は、前記第1装置に関してあらかじめ設定されたシミュレーションモデルを有し、復元した時系列データを前記シミュレーションモデルに適用する請求項2記載の瞬時データ評価システム。
【請求項4】
前記データ評価装置は、前記時系列データにもとづいて、前記シミュレーションモデルのパラメータの最適値を計算し、前記最適値を前記第1装置に送信する請求項3記載の瞬時データ評価システム。
【請求項5】
前記通信ネットワークに接続された第2装置をさらに備え、
前記データ計測伝送装置は、前記第1周期にしたがって前記第2装置が生成する第2データを前記第1データとともに前記時刻に関連付けて前記パケットデータを形成し、
前記データ評価装置は、復元された前記第2データにもとづいて、前記シミュレーションモデルを適用する請求項3記載の瞬時データ評価システム。
【請求項6】
前記データ評価装置は、前記時系列データの出力結果を含む画像データを生成し、生成された前記画像データを、あらかじめ設定された基準画像データと比較する請求項2記載の瞬時データ評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントに設置された電力変換装置等内の高速で変動する信号やデータを取得して、低速の通信ネットワークで収集して利用する瞬時データ評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントに設置された無効電力補償装置等の電力変換装置では、その内部で制御等のために用いられている電流や電圧等の信号やデータは、高速、高周波で変化するものがある。一般にプラントでは、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)等を用いて、電力変換装置は、制御盤や他の変換器等と通信ネットワークを介して互いにデータを伝送する。PLCを運用するプラント内の通信ネットワークでは、機器間、装置間の伝送を保証するために、伝送周期は、最も高速の場合でも1ms程度に設定される場合が多い。
【0003】
上述した電力変換装置内の信号等の時間変動は、数10μs程度でサンプリングする必要があり、PLC用の通信の伝送周期では、電力変換装置内の信号等を収集して利用することは困難である。
【0004】
プラント内で用いられる電力変換装置は、プラント内の主要装置、機器等に電力を配分したり、プラント内の電力系統を適切な状態に維持したり、といった重要な機能を有していいる。そのため、運転状況を適切に監視し、より適切な状態で運用を継続できるように管理され、制御されることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-122146号公報
【文献】特開2004-40200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、高速で変化する電力変換装置等の瞬時データを収集し、利用することを可能にする瞬時データ評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る瞬時データ評価システムは、プラント制御に用いられ第1周期でデータ伝送する通信ネットワークに接続された第1装置から、前記第1周期よりも速い第2周期で前記第1装置に関する計測値である第1データを取得し、前記第1データを取得した時刻ごとに関連付けて前記時刻とともにパケットデータを形成するデータ計測伝送装置と、前記通信ネットワークまたは伝送周期の保証されないネットワークを介して、前記データ計測伝送装置から前記パケットデータを受信して、所望の処理を施して出力するデータ評価装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、高速で変化する電力変換装置等の瞬時データを収集し、利用することを可能にする瞬時データ評価システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る瞬時データ評価システムを例示する模式的なブロック図である。
図2】瞬時データ評価システムを構成するデータ計測・伝送装置を例示する模式的なブロック図である。
図3】瞬時データ評価システムで用いられるパケットデータの構成例の模式図である。
図4】瞬時データ評価システムを構成するデータ評価装置を例示する模式的なブロック図である。
図5】データ評価装置によって評価する制御回路のブロック線図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る瞬時データ評価システムを例示する模式的なブロック図である。
図1には、瞬時データ評価システム100が用いられるプラント制御システム1の構成が、瞬時データ評価システム100とともに示されている。
まず、この例におけるプラント制御システム1の構成について説明する。
図1に示すように、プラント制御システム1は、制御装置5、ドライブ装置6、無効電力補償装置(以下、SVCと表記)7および瞬時データ評価システム100を含んでいる。
【0012】
プラント制御システム1は、電力線4から電力を供給されて運転される。この例では、電力線4は、変圧器3を介して、電力系統2に接続されている。制御装置5の電力供給のための構成は示されていないが、たとえば、電力線4から供給される交流電圧を、制御装置5のための直流電圧等に変換する電源盤等が設けられており、制御装置5は、電源盤から供給される電力で動作する。電力線4は、プラント制御システムの構成によって、複数供給され、たとえば電力線ごとに異なる電圧等とされることがある。この例では、単純化のため、単一の電力線4の場合について説明する。
【0013】
電力線4は、ドライブ装置6やその他の交流電力で運転される機器や装置等によって、力率、無効電力が変動する。SVC7は、電力線4によって供給される電力を無効電力を保障することによって、所望の力率に調整する。
【0014】
プラント制御システム1は、たとえば、電気炉を運転するプラントの制御システムである。電気炉では、スクラップ溶解時のスクラップ等の状態によって発生する特有の電圧変動が生じることがあるので、SVC7を設けることによって、電力線4の変動を抑制し、溶解時のフリッカを低減する。
【0015】
プラント制御システム1においては、ドライブ装置6やSVC7等の運転状況は、制御装置5によって、監視され、制御される。制御装置5は、あらかじめ導入された制御プラグラムにしたがって、ドライブ装置6およびSVC7等の運転を制御する。
【0016】
制御装置5、ドライブ装置6、SVC7および瞬時データ評価システム100は、通信ネットワーク30を介して、互いに接続されている。通信ネットワーク30は、制御用通信ネットワークであり、たとえば産業用のイーサネット(イーサネットは登録商標)等である。
【0017】
通信ネットワーク30を介して接続された制御装置5、ドライブ装置6、SVC7および瞬時データ評価システム100は、たとえば1ms~5ms程度の一定周期で、操業データ等のデータ伝送を行うことができる。通信ネットワーク30では、上述の周期でデータ伝送されることが保証されており、プラント制御システム1の安定した運用が保証される。
【0018】
次に、瞬時データ評価システム100の構成について説明する。
瞬時データ評価システム100は、データ計測・伝送装置10と、データ評価装置20と、を備える。この例では、データ計測・伝送装置10およびデータ評価装置20は、通信ネットワーク30を介して接続されているが、他の通信手段によって接続されてもよい。たとえば、データ計測・伝送装置10およびデータ評価装置20は、汎用のイーサネット等によって接続されていてもよい。汎用のイーサネット等では、データの伝送周期が必ずしも保証されない。
【0019】
データ計測・伝送装置10は、SVC(第1装置)7に接続されている。SVC7およびデータ計測・伝送装置10間の接続によって、SVC7からデータ計測・伝送装置10に複数個のデータが送信される。複数個のデータは、この例ではn個のデータとされている。n個のデータは、SVC7内やSVC7に接続された電線に設けられた電流センサや電圧センサ、筐体内に設けられた温度センサ等によって計測された電流値のデータ、電圧値のデータ、温度のデータ等である。計測され、取得されるデータは、この例では、アナログデータである。
【0020】
データ計測・伝送装置10は、SVC7から受信した電流値等のデータをディジタルデータに変換し、アナログデータの取得時刻とともに、パケットデータに変換して、通信ネットワーク30を介して、データ評価装置20に送信する。
【0021】
データ評価装置20は、データ計測・伝送装置10から送信されてきたパケットデータに所望の処理を施して、処理を施したデータを、たとえば制御装置5に送信する。
【0022】
制御装置5は、データ評価装置20によって処理を施されたデータを、更新されたパラメータとして制御プログラムに設定する。制御装置5は、新たに設定されたパラメータにもとづいて動作し、ドライブ装置6およびSVC7等の制御を継続する。
【0023】
データ評価装置20は、処理を施したデータを制御装置5に限らず、ドライブ装置6やSVC7に送信するようにしてもよい。たとえば、SVC7は、処理を施されたデータを受信し、更新されたパラメータとして、データを設定して、運転を継続する。
【0024】
瞬時データ評価システム100の各部の構成についてより詳細に説明する。
図2は、瞬時データ評価システムを構成するデータ計測・伝送装置を例示する模式的なブロック図である。
図2に示すように、データ計測・伝送装置10は、A/D変換器12と、データ処理部14と、伝送コントローラ16と、を含む。A/D変換器12は、この例では、SVC7から受信するアナログデータA1~Anの個数分設けられている。
【0025】
A/D変換器12は、アナログデータA1~Anを入力して、ディジタルデータに変換して、変換したデータをデータ処理部14に送る。
【0026】
n個のアナログデータA1~Anは、同一時刻に取得されたデータである。データ処理部14は、アナログデータA1~Anが取得された時刻に、アナログデータに対応するディジタルデータに関連付ける処理を行う。
【0027】
アナログデータは、たとえば一定の周期で取得されるので、データ取得時刻にデータを関連付けることによって、時刻ごとのデータをひとまとまりのデータとすることができる。アナログデータを取得する時刻は、たとえば30μs~50μsの周期とされる。アナログデータを取得する時刻の周期は、たとえば、A/D変換器12の変換速度に応じて設定される。この周期は、通信ネットワーク30の伝送周期よりも十分速ければよく、30μsよりも速くてもよいし、50μsよりも遅くなる場合もある。
【0028】
実施形態の瞬時データ評価システム100のデータ計測・伝送装置10では、データ処理部14は、時刻ごとのひとまとまりのデータでパケットデータを構成する。時刻ごとのデータを複数時刻分まとめてパケットデータとすることによって、たとえば通信ネットワーク30の伝送周期よりも短い周期の瞬時データを、それよりも低速あるいは伝送周期の保証されない通信ネットワークを用いてデータ伝送することができる。
【0029】
伝送コントローラ16は、データ処理部14によって生成されたパケットデータD1を、所望のアドレスに送信する。
【0030】
図3は、瞬時データ評価システムで用いられるパケットデータの構成例の模式図である。
図3に示すように、パケットデータD1は、IPヘッダD11、UDPヘッダD12および搬送データ領域D13,D14,…を含む。IPヘッダD11およびUDPヘッダD12は、送信先・送信元を識別するデータを格納している。
【0031】
搬送データは、搬送データ領域D13,D14,…に格納される。搬送データ領域D13,D14,…のそれぞれに、時刻ごとに取得されたデータが格納される。この例では、搬送データ領域D13には、時刻t1において取得されたアナログデータに対応するディジタルデータが格納されている。搬送データ領域D14には、時刻t2において取得されたアナログデータに対応するディジタルデータが格納されている。符号を付していないデータ領域には、時刻tmにおいて取得されたアナログデータに対応するディジタルデータが格納されている。時刻t1,t2,…tmは、この順に取得された時系列の時刻である。
【0032】
この例では、時刻tiにおけるディジタルデータをAj(ti)のように表している。jは、j番目のデータであることを表している。たとえば、時刻t1で取得されたアナログデータA1をアナログ-ディジタル変換したディジタルデータは、A1(t1)のように表されている。この例では、パケットデータD1は、m個の時刻においてそれぞれ取得されたn個のアナログデータに対応するディジタルデータが格納されている。
【0033】
上述の時刻の前後の時刻におけるデータがある場合には、たとえばパケットデータD1と同一の長さのパケットデータとして生成される。生成されるパケットデータは、たとえば同じ形式とされる。
【0034】
このようにして、パケットデータD1は、通信ネットワーク30の伝送周期よりも短い周期の時刻で取得された瞬時データを複数の時刻についてひとまとまりとして格納し、伝送される。パケットデータを受信したプログラムは、所定のアルゴリズムを用いて、パケットデータD1内の瞬時データを利用することができる。たとえば、時系列でデータを表示するプログラムでは、同一センサによって取得されたデータを時系列でプロットして、SVC7内の各種電流、電圧等の波形情報として、出力し、表示することができる。
【0035】
図4は、瞬時データ評価システムを構成するデータ評価装置を例示する模式的なブロック図である。
図4に示すように、データ評価装置20は、データ取得部22と、データ解析部24と、データ出力部26と、を含む。
【0036】
データ取得部22は、通信ネットワーク30等を介して送信されてきたパケットデータD1を受信する。データ取得部22は、受信したパケットデータD1をデータ解析部24に送信するほか、データベースを有するデータサーバ(図示せず)との相互のデータ送受信を行うようにしてもよい。
【0037】
データベースは、取得されたパケットデータを格納して管理する。データベースは、たとえば、パケットデータ内の搬送データに関する情報を、データAjごとに時系列で格納するようにしてもよい。つまり、データベースは、SVC7において計測された電流値や電圧値等のデータを、データごとに時系列データとして格納し、管理する。
【0038】
データベースは、データ解析部24における解析に応じて、上述以外のデータを、データAjごとに関連付けて格納し、管理するようにしてもよい。たとえば、ドライブ装置6の起動用の操作信号を、制御装置5を経由して収集し、時系列データとして格納し、管理するようにしてもよい。この場合には、制御装置5によって収集される操作信号や操作データは、通信ネットワーク30の伝送周期ごとのデータとなる。
【0039】
データ解析部24は、データ取得部22によって取得されたパケットデータD1を解析し、所望の形式のデータにして出力する。データ解析部24でのデータ解析は、1つまたは複数の解析を選択的に実行する。たとえば、データ解析部24は、SVC7内の制御回路のシミュレーションモデルを有しており、データごとの時系列データから、電流や電圧波形の信号を復元し、復元した信号および制御回路のシミュレーションモデルを用いて、制御回路の動作をシミュレーションする。たとえば、電力線4の特定の条件における復元した信号を入力条件として、制御回路の出力をシミュレーションし、制御回路の設定パラメータを適宜変更して、シミュレーションを繰り返すことによって、より適切な設定パラメータを算出することができる。
【0040】
上述では、復元した信号は、時系列データであるが、データ解析部24は、周波数領域変換機能を有することによって、時系列データを周波数領域のデータに変換し、制御回路の周波数特性等を取得するようにすることもできる。データ解析部24は、周波数領域におけるシミュレーションモデルを有することによって、より高度に適切な設定パラメータを算出することができる。
【0041】
通信ネットワーク30上の伝送周期で取得されるデータを、上述のシミュレーションモデルによる最適な設定パラメータを自動計算する場合のためのトリガ信号として利用するようにしてもよい。たとえば、制御装置(第2装置)5からドライブ装置6への運転指令(第2データ)をデータベース中に含めることによって、ドライブ装置6が特定の運転モードの期間内におけるSVC7の動作状況を識別することができる。データ解析部24は、データベース中の運転指令がアクティブの期間のデータを用いて、信号を復元し、適切な設定パラメータを算出するようにシミュレーションを実行することができる。
【0042】
データ解析部24は、適切な設定パラメータを算出するたびに、算出したデータをデータ出力部26に送信し、データ出力部26は、通信ネットワーク30を介して、制御装置5やSVC7に送信する。たとえば、SVC7は、あらかじめ設定されたプログラムによって、受信した設定パラメータを設定する。これにより、SVC7は、特定の運転モードの場合におけるより適切な設定パラメータを自動的に導入することができる。
【0043】
また、データ解析部24は、典型的な動作波形や周波数応答特性のデータおよび特定の部品の故障時に再現される動作波形や周波数応答特性のデータをあらかじめ有し、復元された動作波形や推定された周波数応答特性と比較するようにしてもよい。動作波形等の比較では、それぞれプロットした波形を画像処理して抽出した特徴量の一致および相違により、典型的な動作か部品故障時の動作かを判定することもできる。
【0044】
上述の部品故障判定の場合には、特定の部品の故障時に再現される動作波形や周波数応答特性のデータを多数取得して、これらの画像データを機械学習用のデータセットとして用いることによって、より高精度に不具合部品の判定を行うことができる。
【0045】
図5は、データ評価装置によって評価する制御回路のブロック線図の例である。
図5には、SVC等の電力変換器の出力電圧Voutを電圧指令値V*に追従するように制御するPID制御モデルが示されている。データ解析部24が有するシミュレーションモデルは、たとえばこのようなブロック線図で表される。
【0046】
実施形態の瞬時データ評価システム100のデータ解析部24では、SVC7の出力電圧Voutおよび電圧指令値V*のデータを用いて、PID制御における各部のゲインKP,KI,KDの最適値を求めることができる。
【0047】
出力電圧Voutや電圧指令値V*のデータは、瞬時値データとして、時系列で取得されている。また、データ取得部22によって、時刻のデータには、ドライブ装置6等の起動やモード設定信号のデータも関連付けられている。そのため、データ解析部24では、起動、停止等を含む特定の動作モードごとに、出力電圧Voutおよび電圧指令値V*の評価期間を設定することができる。
【0048】
設定された評価期間において、各部のゲインKP,KI,KDの最適値を求めることができる。設定された評価期間は、たとえば、特定の運転モード時に制御装置5が生成する運転指令がアクティブとなる期間である。データ解析部24は、この期間における電圧指令値V*をデータベースから抽出し、たとえば、KP,KI,KDを設定範囲内でランダムに変化させて、出力電圧Voutを計算する。データ出力部26は、計算されたVoutを表示装置に出力する。データ評価装置20の操作者は、表示装置に出力された出力電圧Voutの動作波形や周波数特性を確認して、より適切なゲインKP,KI,KDを決定する。
【0049】
出力される動作波形や周波数応答特性について、あらかじめ適切な波形等をデータ解析部24に記憶させ、出力されたデータと比較することによって、データ解析部24によって自動的に要否判定させるようにしてもよい。
【0050】
本実施形態の瞬時データ評価システム100の効果について説明する。
本実施形態の瞬時データ評価システム100は、プラントに用いられる伝送周期が保証された低速の通信ネットワーク30に接続されるとともに、SVC7内部の信号等を取得するセンサに接続されている。SVC7内部の信号の取得周期は、通信ネットワーク30の伝送周期よりも十分に速く設定されているので、高速に変化する運転時のSVC7内の電流や電圧等の信号の変化を収集することができる。瞬時データ評価システム100は、収集した瞬時データを、時刻ごとに関連付けられたパケットデータとして生成し、利用するので、通信ネットワーク30を含む瞬時データのデータ収集サイクルよりも遅いネットワークを介して、データ収集し、利用することができる。
【0051】
瞬時データ評価システム100によって収集されたパケットデータは、データごとに時系列データとすることができ、時間変化する信号として復元し、利用することが可能になる。
【0052】
瞬時データ評価システム100のデータ評価装置20は、復元された瞬時データを、たとえばオシロスコープで波形確認を行うように、所望の復元信号を選択して、カラーディスプレイ等の出力表示装置に出力し、表示することができる。そのため、運転中のSVC7の動作状態をより正確に確認することができる。
【0053】
データ評価装置20は、シミュレーションモデルを有するようにすることができるので、復元された信号を用意されたシミュレーションモデルに適用して、シミュレーションモデルに対応した制御回路等の回路パラメータの最適値を決定することができる。
【0054】
取得する瞬時データには、低速周期の通信ネットワーク30経由の操作データを含めることができる。PLC等の制御プログラムに関する操作データを瞬時データとともに、時刻データに関連付けて管理することによって、SVC7の運転条件の変化を、操作データの変化をトリガとして抽出することができるようになり、特定条件下における瞬時データを復元することができる。
【0055】
操作データをトリガとすることによって、シミュレーションによる最適化パラメータを計算を、特定条件下で行うことができるので、特定条件ごとに最適な運転条件、制御条件での運転が可能になる。
【0056】
データ評価装置20のデータ解析部24には、画像認識機能を持たせることができ、復元された瞬時データによる特性図を画像データとして特性の良否判定を行うことができる。
【0057】
瞬時データによる特性図の良否判定には、機械学習を導入することによって、多数の画像サンプルを学習させることができ、より精密に判定をすることが可能になる。
【0058】
なお、上述では、SVCの内部信号を瞬時データとして取得する場合について具体例を挙げて説明したが、瞬時データを取得する装置は、SVCに限られず、その他の電力変換装置であってももちろんかまわない。また、電力変換装置に限らず、ドライブ装置等の定周期の伝送周期で運転される他の装置や機器であってもよい。
【0059】
以上説明した実施形態によれば、高速で変化する電力変換装置等の瞬時データを収集し、利用することを可能にする瞬時データ評価システムを実現することができる。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 プラント制御システム、2 電力系統、4 電力線、5 制御装置、6 ドライブ装置、7 無効電力補償装置、10 データ計測・伝送装置、12 A/D変換器、14 データ処理部、16 伝送コントローラ、20 データ評価装置、22 データ取得部、24 データ解析部、26 データ出力部、100 瞬時データ評価システム
図1
図2
図3
図4
図5