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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】高伸度の脂肪族ポリエステル
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/12 20060101AFI20230602BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
C08G63/12
C08L101/16 ZBP
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020203384
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2021109959
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】109100054
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】黄勁叡
(72)【発明者】
【氏名】王炳傑
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185331(JP,A)
【文献】特開2009-161750(JP,A)
【文献】特表2017-500380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0326305(US,A1)
【文献】特表2012-504167(JP,A)
【文献】特表2005-523356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0059796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0237583(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0305297(US,A1)
【文献】特開2005-247966(JP,A)
【文献】特開2007-284595(JP,A)
【文献】特開2011-225851(JP,A)
【文献】特開平11-060709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/12
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステルであって、前記脂肪族ポリエステルは、
コハク酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、オクタン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、C36のダイマー酸、シクロヘキサン二カルボン酸、又はこれらの任意の組み合わせに由来する第1構造単位、
下記式で表す第2構造単位であって、
【化1】
式中、RはC1~C10の脂肪族ヒドロカルビルである第2構造単位、
第1架橋剤に由来する第3構造単位であって、前記第1架橋剤は1,2,4‐ブタントリオール、2‐メチル‐1,2,3‐プロパントリオール、グリセロール、3‐ヒドロキシグルタル酸、シトラマル酸、タルトロン酸、3,18‐ジヒドロキシメチレンステアリン酸、及び3‐ヒドロキシオクタデカン二酸から成る群より選択される第3構造単位、及び、
第2架橋剤に由来する第4構造単位であって、前記第2架橋剤は1,2,4‐ブタントリオール、2‐メチル‐1,2,3‐プロパントリオール、グリセロール、3‐ヒドロキシグルタル酸、リンゴ酸、シトラマル酸、タルトロン酸、3,18‐ジヒドロキシメチレンテアリン酸、3‐ヒドロキシオクタデカン二酸、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される第4構造単位、から成り、
前記第3構造単位と前記第1構造単位とのモル比は0.01:100~0.4未満:100であり、
前記第3構造単位及び前記第4構造単位の合計量と前記第1構造単位の量とのモル比は0.4以下:100であり、
前記第3構造単位と前記第4構造単位とのモル比は1:8~8:1の範囲である、ことを特徴とする、
脂肪族ポリエステル。
【請求項2】
前記第3構造単位は、
【化2】
これらの組み合わせから成る群より選択され、式中、R、R、及びRは独立してC1~C10の脂肪族ヒドロカルビルである、請求項1に記載の脂肪族ポリエステル。
【請求項3】
前記第4構造単位は、
【化3】
これらの組み合わせから成る群より選択され、式中、m及びnは独立して0~18の整数であり、R及びRは独立して水素原子又はC1~C18の脂肪族ヒドロカルビルである、請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステル。
【請求項4】
はC1~C6の脂肪族ヒドロカルビルである、請求項1~のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル。
【請求項5】
記第2構造単位は、エチレングリコール、1,4‐ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6‐ヘキサンジオール、1,10‐デカンジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノ‐ル、又はこれらの任意の組み合わせに由来する、請求項1~のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性かつ高伸度の脂肪族ポリエステルを提供する。当該脂肪族ポリエステルは特に、使い捨て包装材としての使用に好適である。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニルは食品包装、建築、家電分野など様々な分野で広く使用されている。しかし、これらのポリマー材料は生分解性でないため、環境汚染物質である。公共の環境意識の高まりから、生分解性ポリマーに関する研究が注目されている。
【0003】
生分解性ポリマーは、環境中の微生物により極めて短期間で低分子化合物へと分解し、その後、水及び二酸化炭素に分解することが可能であるため、環境へのダメージを大幅に低減することが可能である。例えば、ポリエステルは生分解性ポリマーとして広く研究されているポリマーである。しかし生分解性ポリマーは通常、機械的強度及び伸度が低い。製造した生分解性ポリマーの機械的強度を向上させるために、製造工程中に鎖延長剤を添加してもよいが、鎖延長剤を添加すると製造工程がより困難になり、製造した生分解性ポリマーの生分解性が劣化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術的課題の観点から、本発明は、特定の架橋剤に由来する構造単位から成る脂肪族ポリエステルを提供する。本発明の脂肪族ポリエステルは生分解性であり、機械的強度、伸度、及び透明性が良好である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の目的は脂肪族ポリエステルを提供することであり、該脂肪族ポリエステルは、以下の構造単位、下記式で表す第1構造単位であって、
【0006】
【化1】
式中、Rは欠失しているか、又はC1~C40の脂肪族ヒドロカルビルである第1構造単位、下記式で表す第2構造単位であって、
【0007】
【化2】
式中、RはC1~C10の脂肪族ヒドロカルビルである第2構造単位、及び 第1架橋剤に由来する第3構造単位であって、該第1架橋剤は3つの反応性官能基を有し、該第1架橋剤の少なくとも1つの反応性官能基は第2級又は第3級ヒドロキシルであり、ただし該第1架橋剤はリンゴ酸ではない第3構造単位、から成る。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、該第1架橋剤はC3~C20の脂肪族アルコール又はC3~C20の脂肪族アルコール酸である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、該第1架橋剤は、1,2,4‐ブタントリオール、2‐メチル‐1,2,3‐プロパントリオール、グリセロール、3‐ヒドロキシグルタル酸、シトラマル酸、タルトロン酸、3,18‐ジヒドロキシメチレンステアリン酸、及び3‐ヒドロキシオクタデカン二酸から成る群より選択される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、該第3構造単位は、
【0011】
【化3】
これらの組み合わせから成る群より選択され、式中、R、R、及びRは独立してC1~C10の脂肪族ヒドロカルビルである。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、該第3構造単位と該第1構造単位とのモル比は0.4未満:100である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、該脂肪族ポリエステルは更に、第2架橋剤に由来する第4構造単位から成り、該第2架橋剤は3つの反応性官能基を有し、該第2架橋剤の少なくとも1つの反応性官能基は第2級又は第3級ヒドロキシルであり、ただし該第2架橋剤は該第1架橋剤とは異なる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、該第2架橋剤はC3~C20の脂肪族アルコール又はC3~C20脂肪族アルコール酸である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、該第2架橋剤は、1,2,4‐ブタントリオール、2‐メチル‐1,2,3‐プロパントリオール、グリセロール、3‐ヒドロキシグルタル酸、リンゴ酸、シトラマル酸、タルトロン酸、3,18‐ジヒドロキシメチレンテアリン酸、3‐ヒドロキシオクタデカン二酸、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、該第4構造単位は、
【0017】
【化4】
これらの組み合わせから成る群より選択され、式中、m及びnは独立して0~18の整数であり、R及びRは独立して水素原子又はC1~C18の脂肪族ヒドロカルビルである。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、該第3構造単位と該第4構造単位とのモル比は1:8~8:1の範囲である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、該第3構造単位及び該第4構造単位の合計量と該第1構造単位の量とのモル比は0.4以下:100である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、Rは欠失しているか、又はC1~C6の脂肪族ヒドロカルビルであり、RはC1~C6の脂肪族ヒドロカルビルである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、該第1構造単位は、コハク酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、オクタン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、C36のダイマー酸、シクロヘキサン二カルボン酸、又はこれらの任意の組み合わせに由来し;該第2構造単位は、エチレングリコール、1,4‐ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6‐ヘキサンジオール、1,10‐デカンジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノ‐ル、又はこれらの任意の組み合わせに由来する。
【0022】
本発明の上記の目的、技術的特徴、及び利点をより明らかにするために、以下にいくつかの実施形態を参照して本発明を詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のいくつかの実施形態を詳述する。しかし、本発明の趣旨から逸脱することなく、本発明は様々な実施形態で具体化し得るものであり、本明細書に記載した実施形態に限定すべきではない。
【0024】
別段に説明していない限り、明細書及び特許請求の範囲で記述している「a」、「the」等の表現は、単数形及び複数形の両方を当然含む。
【0025】
別段に説明していない限り、明細書及び特許請求の範囲で記述している「第1」、「第2」等の表現は、特別な意味を持たずに説明した要素又は構成要素を単に区別するため使用しているに過ぎない。これらの表現は優先順位を示すことを意図したものではない。
【0026】
別段に説明していない限り、明細書及び特許請求の範囲で記述している反応性官能基の例は、その全ての異性体形態を当然含む。例えば、ブテニルは1‐ブテニル、2‐ブテニル、及び3‐ブテニルを含む。
【0027】
本発明は、生分解性かつ良好な機械的強度、伸度及び透明性を有する脂肪族ポリエステルを提供する。本発明の脂肪族ポリエステル及びその用途を以下に詳述する。
【0028】
1.脂肪族ポリエステル
以下に更に記載するように、本発明の脂肪族ポリエステルは第1構造単位、第2構造単位、及び第3構造単位から成り、更に他の構造単位(例えば、第4構造単位)から成っていてもよい。
【0029】
1.1.第1構造単位
第1構造単位は、脂肪族ジカルボン酸に由来し、下記式
【0030】
【化5】
で表され、式中、Rは欠失しているか、又はC1~C40の脂肪族ヒドロカルビルである。好ましくはRは欠失しているか、又はC1~C6の脂肪族ヒドロカルビルである。C1~C40の脂肪族ヒドロカルビルの例としては、C1~C40のアルキル、C3~C40のシクロアルキル、及びC2~C40のアルケニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
C1~C40のアルキルの例としては、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、n‐ペンチル、イソペンチル、tert‐ペンチル、ネオペンチル、n‐ヘキシル、イソヘキシル、sec‐ヘキシル、tert‐ヘキシル、ネオヘキシル、n‐ヘプチル、イソヘプチル、n‐オクチル、イソオクチル、n‐ノニル、イソノニル、n‐デシル、イソデシル、n‐ウンデシル、イソウンデシル、n‐ドデシル、イソドデシル、n‐トリデシル、イソトリデシル、n‐テトラデシル、イソテトラデシル、n‐ペンタデシル、イソペンタデシル、n‐ヘキサデシル、イソヘキサデシル、n‐ヘプタデシル、イソヘプタデシル、n‐オクタデシル、イソオクタデシル、n‐ノナデシル、イソノナデシル、n‐エイコシル、イソエイコシル、n‐ヘンエイコシル、イソヘンエイコシル、n‐ドコシル、イソドコシル、n‐トリコシル、イソトリコシル、n‐テトラコシル、イソテトラコシル、n‐ペンタコシル、イソペンタコシル、n‐ヘキサコシル、イソヘキサコシル、n‐ヘプタコシル、イソヘプタコシル、n‐オクタコシル、イソオクタコシル、n‐ノナコシル、イソノナコシル、n‐トリアコンチル、イソトリアコンチル、n‐ヘントリアコンチル、イソヘントリアコンチル、n‐ドトリアコンチル、イソドトリアコンチル、n‐トリトリアコンチル、イソトリトリアコンチル、n‐テトラトリアコンチル、イソテトラトリアコンチル、n‐ペンタトリアコンチル、イソペンタトリアコンチル、n‐ヘキサトリアコンチル、イソヘキサトリアコンチル、n‐ヘプタトリアコンチル、イソヘプタトリアコンチル、n‐オクタトリアコンチル、イソオクタトリアコンチル、n‐ノナトリアコンチル、イソノナトリアコンチル、n‐テトラコンチル、及びイソテトラコンチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
C3~C40のシクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル、シクロテトラデシル、シクロペンタデシル、シクロヘキサデシル、シクロヘプタデシル、シクロオクタデシル、シクロノナデシル、シクロエイコシル、シクロヘンエイコシル、シクロドコシル、シクロトリコシル、シクロテトラコシル、シクロペンタコシル、シクロヘキサコシル、シクロヘプタコシル、シクロオクタコシル、シクロノナコシル、シクロトリアコンチル、メチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、メチルシクロオクチル、メチルシクロノニル、メチルシクロデシル、ジメチルシクロプロピル、ジメチルシクロブチル、ジメチルシクロペンチル、ジメチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘプチル、ジメチルシクロオクチル、ジメチルシクロノニル、ジメチルシクロデシル、エチルシクロプロピル、エチルシクロブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘプチル、エチルシクロオクチル、エチルシクロノニル、エチルシクロデシル、ジエチルシクロプロピル、ジエチルシクロブチル、ジエチルシクロペンチル、ジエチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘプチル、ジエチルシクロオクチル、ジエチルシクロノニル、及びジエチルシクロデシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
C2~C40のアルケニルの例としては、エテニル、プロペニル、アリル、n‐ブテニル、イソブテニル、n‐ペンテニル、イソペンテニル、n‐ヘキセニル、イソヘキセニル、n‐ヘプテニル、イソヘプテニル、n‐オクテニル、イソオクテニル、n‐ノネニル、イソノネニル、n‐デセニル、イソデセニル、n‐ウンデセニル、イソウンデセニル、n‐ドデセニル、イソドデセニル、n‐トリデセニル、イソトリデセニル、n‐テトラデセニル、イソテトラデセニル、n‐ペンタデセニル、イソペンタデセニル、n‐ヘキサデセニル、イソヘキサデセニル、n‐ヘプタデセニル、イソヘプタデセニル、n‐オクタデセニル、イソオクタデセニル、n‐ノナデセニル、イソノナデセニル、n‐エイコセニル、イソエイコセニル、n‐ヘンエイコセニル、イソヘンエイコセニル、n‐ドコセニル、イソドコセニル、n‐トリコセニル、イソトリコセニル、n‐テトラコセニル、イソテトラコセニル、n‐ペンタコセニル、イソペンタコセニル、n‐ヘキサコセニル、イソヘキサコセニル、n‐ヘプタコセニル、イソヘプタコセニル、n‐オクタコセニル、イソオクタコセニル、n‐ノナコセニル、イソノナコセニル、n‐トリアコンテニル、イソトリアコンテニル、n‐ヘントリアコンテニル、イソヘントリアコンテニル、n‐ドトリアコンテニル、イソドトリアコンテニル、n‐トリトリアコンテニル、イソトリトリアコンテニル、n‐テトラトリアコンテニル、イソテトラトリアコンテニル、n‐ペンタトリアコンテニル、イソペンタトリアコンテニル、n‐ヘキサトリアコンテニル、イソヘキサトリアコンテニル、n‐ヘプタトリアコンテニル、イソヘプタトリアコンテニル、n‐オクタトリアコンテニル、イソオクタトリアコンテニル、n‐ノナトリアコンテニル、イソノナトリアコンテニル、n‐テトラコンテニル、イソテトラコンテニル、プロパジエニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル、ウンデカジエニル、ドデカジエニル、トリデカジエニル、テトラデカジエニル、ペンタデカジエニル、ヘキサデカジエニル、ヘプタデカジエニル、オクタデカジエニル、ノナデカジエニル、エイコサジエニル、ヘンエイコサジエニル、ドコサジエニル、トリコサジエニル、テトラコサジエニル、ペンタコサジエニル、ヘキサコサジエニル、ヘプタコサジエニル、オクタコサジエニル、ノナコサジエニル、トリアコンタジエニル、ヘントリアコンタジエニル、ドトリアコンタジエニル、トリトリアコンタジエニル、テトラトリアコンタジエニル、ペンタトリアコンタジエニル、ヘキサトリアコンタジエニル、ヘプタトリアコンタジエニル、オクタトリアコンタジエニル、ノナトリアコンタジエニル、テトラコンタジエニル、及び9‐[(Z)‐ノナ‐3‐エニル]‐10‐オクチルノナデカニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、第1構造単位は、コハク酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、オクタン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、C36のダイマー酸、及びシクロヘキサン二カルボン酸のうちの1種以上に由来する。
【0035】
1.2.第2構造単位
第2構造単位は脂肪族ジオールに由来し、下記式
【0036】
【化6】
で表され、式中、RはC1~C10の脂肪族ヒドロカルビルである。好ましくは、RはC1~C6の脂肪族ヒドロカルビルである。C1~C10の脂肪族ヒドロカルビルの例としては、C1~C10のアルキル、C3~C10のシクロアルキル、C2~C10アルケニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。C1~C10のアルキルの例としては、C1~C40のアルキルの前述した例で記述したような炭素数1(1つ)~10のアルキルが挙げられる。C3~C10のシクロアルキルの例としては、C3~C40のシクロアルキルの前述した例で記載されているような炭素数3~10のシクロアルキルが挙げられる。C2~C10のアルケニルの例としては、C2~C40のアルケニルの前述した例で記載されているような炭素数2~10のアルケニルが挙げられる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、第2構造単位は、エチレングリコール、1,4‐ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6‐ヘキサンジオール、1,10‐デカンジオール、及び1,4‐シクロヘキサンジメタノールのうちの1種以上に由来する。
【0038】
本発明の脂肪族ポリエステルでは、全構造単位の合計mol数に基づいて、第1構造単位及び第2構造単位の合計量は90mol%以上であり、好ましくは95~99.8mol%の範囲、例えば95.1mol%、95.2mol%、95.3mol%、95.4mol%、95.5mol%、95.6mol%、95.7mol%、95.8mol%、95.9mol%、96mol%、96.1mol%、96.2mol%、96.3mol%、96.4mol%、96.5mol%、96.6mol%、96.7mol%、96.8mol%、96.9mol%、97mol%、97.1mol%、97.2mol%、97.3mol%、97.4mol%、97.5mol%、97.6mol%、97.7mol%、97.8mol%、97.9mol%、98mol%、98.1mol%、98.2mol%、98.3mol%、98.4mol%、98.5mol%、98.6mol%、98.7mol%、98.8mol%、98.9mol%、99mol%、99.1mol%、99.2mol%、99.3mol%、99.4mol%、99.5mol%、99.6mol%、又は99.7mol%である。
【0039】
1.3 第3構造単位
第3構造単位は第1架橋剤に由来する。第1架橋剤は3つの反応性官能基を有し、第1架橋剤の少なくとも1つの反応性官能基は第2級又は第3級ヒドロキシルであり、ただし第1架橋剤はリンゴ酸ではない。第2級ヒドロキシルとは、ヒドロキシルが結合する炭素原子が第2級炭素であることを意味する。第3級ヒドロキシルとは、ヒドロキシルが結合する炭素原子が第3級炭素であることを意味する。理論に何ら制限されることなく、第1級ヒドロキシルは第2級又は第3級ヒドロキシルに対してより反応性が高いため、少なくとも1つの第2級又は第3級ヒドロキシルを有する第1架橋剤は重合反応を主に直線的に行うと考えられている。このことにより、主鎖が長く、分岐鎖が短い脂肪族ポリエステルポリマーが得られ、よって、より優れた伸長性が得られる。脂肪族ポリエステルの透明性を考慮すると、第1架橋剤はアミノ、シアノ、ニトロなどの、カルボキシル又はヒドロキシルではない反応性官能基から構成しないことが好ましい。即ち、第2級又は第3級ヒドロキシルではない第1架橋剤の反応性官能基はカルボキシル又はヒドロキシルであることが好ましい。
【0040】
第1架橋剤はC3~C20の脂肪族アルコール及びC3~C20の脂肪族アルコール酸から選択し、好ましくはC3~C18の脂肪族アルコール及びC3~C18の脂肪族アルコール酸から選択してもよい。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
第1架橋剤として使用できるC3~C18の脂肪族アルコールの例としては、グリセロール、1,2,4‐ブタントリオール、1,2,3‐ブタントリオール、1,2,5‐ペンタントリオール、1,2,4‐ペンタントリオール、1,2,3‐ペンタントリオール、2,3,4‐ペンタントリオール、1,3,5‐ペンタントリオール、1,2,6‐ヘキサントリオール、1,2,5‐ヘキサントリオール、1,2,4‐ヘキサントリオール、1,2,3‐ヘキサントリオール、1,3,6‐ヘキサントリオール、1,3,5‐ヘキサントリオール、1,3,4‐ヘキサントリオール、1,4,5‐ヘキサントリオール、2,3,4‐ヘキサントリオール、2,3,5‐ヘキサントリオール、2‐メチル‐1,2,3‐プロパントリオール、3‐メチル‐1,3,5‐ペンタントリオール、3‐メチル‐1,3,6‐ヘキサントリオール、1,4,7‐ヘプタントリオール、1,3,5‐ヘプタントリオール、1,2,7‐ヘプタントリオール、1,2,6‐ヘプタントリオール、1,2,3‐ヘプタントリオール、2,4,6‐ヘプタントリオール、及び2‐メチル‐2,3,6‐ヘプタントリオールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
第1架橋剤として使用できるC3~C18の脂肪族アルコール酸の例としては、タルトロン酸、メチルタルトロン酸、シトラマル酸、3‐ヒドロキシグルタル酸、3‐ヒドロキシ‐3‐メチルグルタル酸、2‐ヒドロキシアジピン酸、3‐ヒドロキシアジピン酸、2‐ヒドロキシヘプタン二酸、3‐ヒドロキシヘプタン二酸、4‐ヒドロキシヘプタン二酸、2‐ヒドロキシスベリン酸、3‐ヒドロキシスベリン酸、2‐ヒドロキシノナン二酸、4‐ヒドロキシノナン二酸、2‐ヒドロキシデカン二酸、3‐ヒドロキシデカン二酸、3,18‐ジヒドロキシメチレンテアリン酸、及び3‐ヒドロキシオクタデカン二酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、第1架橋剤は、1,2,4‐ブタントリオール、2‐メチル‐1,2,3‐プロパントリオール、グリセロール、3‐ヒドロキシグルタル酸、シトラマル酸、タルトロン酸、3,18‐ジヒドロキシメチレンステアリン酸、及び3‐ヒドロキシオクタデカン二酸から成る群より選択される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、第1架橋剤に由来する第3構造単位は、
【0045】
【化7】
これらの組み合わせから成る群より選択され、式中、R、R、及びRは独立してC1~C10の脂肪族ヒドロカルビルである。C1~C10の脂肪族ヒドロカルビルについての説明は上述している。例えば、第3構造単位中のR、R、及びRがメチルである実施形態は、第1架橋剤がグリセロールである条件に対応している場合もある。第3構造単位中のR及びRがエチルである実施形態は、第1架橋剤が1,2,4‐ブタントリオールである条件に対応している場合もある。
【0046】
本発明の脂肪族ポリエステルにおいて、第3構造単位と第1構造単位とのモル比は、好ましくは0.4未満:100、例えば0.39:100、0.38:100、0.37:100、0.36:100、0.35:100、0.34:100、0.33:100、0.32:100、0.31:100、0.3:100、0.29:100、0.28:100、0.27:100、0.26:100、0.25:100、0.24:100、0.23:100、0.22:100、0.21:100、0.2:100、0.19:100、0.18:100、0.17:100、0.16:100、0.15:100、0.14:100、0.13:100、0.12:100、0.11:100、0.1:100、0.09:100、0.08:100、0.07:100、0.06:100、0.05:100、0.04:100、0.03:100、0.02:100、又は0.01:100である。第3構造単位と第1構造単位とのモル比が上記範囲内であると、脂肪族ポリエステルの伸張性がより良好となる。
【0047】
1.4.第4構造単位
本発明の好ましい実施形態では、本発明の脂肪族ポリエステルは更に、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位に加えて、第2架橋剤に由来する第4構造単位から成る。第2架橋剤を導入することにより、異なる重合反応を交互に生じさせ、よってポリマーの主鎖の長さを増加させ、これにより脂肪族ポリエステルの伸長特性を更に向上できることが分かった。第2架橋剤は第1架橋剤とは異なり、3つの反応性官能基を有する。ここで、第2架橋剤の少なくとも1つの反応性官能基は第2級又は第3級ヒドロキシルである。脂肪族ポリエステルの透明性を考慮すると、第2架橋剤はアミノ、シアノ、ニトロなどの、カルボキシル又はヒドロキシルではない反応性官能基から構成しないことが好ましい。即ち、第2級又は第3級ヒドロキシルではない第2架橋剤の反応性官能基はカルボキシル又はヒドロキシルであることが好ましい。
【0048】
第2架橋剤はC3~C20の脂肪族アルコール及びC3~C20の脂肪族アルコール酸から選択し、好ましくはC3~C18の脂肪族アルコール及びC3~C18の脂肪族アルコール酸から選択してもよい。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
第2架橋剤として使用できるC3~C18の脂肪族アルコールの例としては、グリセロール、1,2,4‐ブタントリオール、1,2,3‐ブタントリオール、1,2,5‐ペンタントリオール、1,2,4‐ペンタントリオール、1,2,3‐ペンタントリオール、2,3,4‐ペンタントリオール、1,3,5‐ペンタントリオール、1,2,6‐ヘキサントリオール、1,2,5‐ヘキサントリオール、1,2,4‐ヘキサントリオール、1,2,3‐ヘキサントリオール、1,3,6‐ヘキサントリオール、1,3,5‐ヘキサントリオール、1,3,4‐ヘキサントリオール、1,4,5‐ヘキサントリオール、2,3,4‐ヘキサントリオール、2,3,5‐ヘキサントリオール、2‐メチル‐1,2,3‐プロパントリオール、3‐メチル‐1,3,5‐ペンタントリオール、3‐メチル‐1,3,6‐ヘキサントリオール、1,4,7‐ヘプタントリオール、1,3,5‐ヘプタントリオール、1,2,7‐ヘプタントリオール、1,2,6‐ヘプタントリオール、1,2,3‐ヘプタントリオール、2,4,6‐ヘプタントリオール、及び2‐メチル‐2,3,6‐ヘプタントリオールが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0050】
第2架橋剤として使用できるC3~C18の脂肪族アルコール酸の例としては、リンゴ酸、タルトロン酸、メチルタルトロン酸、シトラマル酸、3‐ヒドロキシグルタル酸、3‐ヒドロキシ‐3‐メチルグルタル酸、2‐ヒドロキシアジピン酸、3‐ヒドロキシアジピン酸、2‐ヒドロキシヘプタン二酸、3‐ヒドロキシヘプタン二酸、4‐ヒドロキシヘプタン二酸、2‐ヒドロキシスベリン酸、3‐ヒドロキシスベリン酸、2‐ヒドロキシノナン二酸、4‐ヒドロキシノナン二酸、2‐ヒドロキシデカン二酸、3‐ヒドロキシデカン二酸、3,18‐ジヒドロキシメチレンステアリン酸、及び3‐ヒドロキシオクタデカン二酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、第4構造単位は
【0052】
【化8】
これらの組み合わせから成る群より選択され、式中、m及びnは独立して0~18の整数であり、R及びRは独立して水素原子又はC1~C18のヒドロカルビルである。C1~C18のヒドロカルビルの例としては、C1~C18のアルキル、C3~C18のシクロアルキル、及びC2~C18アルケニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。C1~C18のアルキルの例としては、C1~C40のアルキルの前述した例で記述しているような炭素数1(1つ)~18のアルキルが挙げられる。C3~C18のシクロアルキルの例としては、C3~C40のシクロアルキルの前述した例で記述しているような炭素数3~18のシクロアルキルが挙げられる。C2~C18のアルケニルの例としては、C2~C40のアルケニルの前述した例で記述しているような炭素数2~18のアルケニルが挙げられる。例えば、第4構造単位中のm及びnが0であり、第4構造単位中のR及びRが水素原子である実施形態は、第2架橋剤がリンゴ酸である条件に対応している場合もある。
【0053】
架橋剤としてリンゴ酸を単独で使用すると、脂肪族ポリエステルの透明性が劣化することが分かった。そこで、本発明では、第1架橋剤ではなく第2架橋剤としてリンゴ酸を使用している。
【0054】
本発明の脂肪族ポリエステルにおいて、第3構造単位と第4構造単位とのモル比は、好ましくは1:8~8:1の範囲、例えば1:7.5、1:7、1:6.5、1:6、1:5.5、1:5、1:4.5、1:4、1:3.5、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、又は7.5:1、より好ましくは1:3~3:1の範囲、例えば1:2.9、1:2.8、1:2.7、1:2.6、1:2.5、1:2.4、1:2.3、1:2.2、1:2.1、1:2、1:1.9、1:1.8、1:1.7、1:1.6、1:1.5、1:1.4、1:1.3、1:1.2、1:1.1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、又は2.9:1である。第3構造単位と第4構造単位とのモル比が上記範囲内であると、脂肪族ポリエステルの伸長がより良好となる。
【0055】
第3構造単位及び第4構造単位の合計量と第1構造単位の量とのモル比は好ましくは0.4以下:100、例えば0.39:100、0.38:100、0.37:100、0.36:100、0.35:100、0.34:100、0.33:100、0.32:100、0.31:100、0.3:100、0.29:100、0.28:100、0.27:100、0.26:100、0.25:100、0.24:100、0.23:100、0.22:100、0.21:100、0.2:100、0.19:100、0.18:100、0.17:100、0.16:100、0.15:100、0.14:100、0.13:100、0.12:100、0.11:100、0.1:100、0.09:100、0.08:100、0.07:100、0.06:100、0.05:100、0.04:100、0.03:100、0.02:100、又は0.01:100である。第3構造単位及び第4構造単位の合計量と第1構造単位の量とのモル比が上記範囲内であると、脂肪族ポリエステルの伸長がより良好となる。
【0056】
1.5.脂肪族ポリエステルの製造及び特性
本発明の脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、第1架橋剤、及び任意で第2架橋剤を触媒の存在下で縮合重合に供することにより得られる。コストや工程の利便性を考慮すると、縮合重合は、溶媒の非存在下、即ち溶媒を添加せずに行うことが好ましい。
【0057】
上記触媒の例としては、チタン、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、マグネシウム、スズ、アンチモン、マンガン、コバルト、ジルコニウム、バナジウム、イリジウム、ランタン、セリウム、リチウム、ストロンチウム、及びカルシウムから成る群より選択される金属を含む化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。化合物の例としては、上記金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、スルホン酸塩、酸化物、及びハロゲン化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、触媒はチタン酸テトラ‐n‐プロピル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラ‐n‐ブチル、チタン酸テトラ‐tert‐ブチル、チタン酸テトラシクロヘキシル、乳酸チタン、チタン酸トリエタノールアミン、チタン酸ブチル二量体、二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから成る群より選択してもよい。添付の実施例では、チタン酸テトラ‐n‐ブチルを触媒として使用している。
【0058】
脂肪族ジカルボン酸の重量に基づいて、触媒の含有量は、30ppm~2000ppmの範囲、例えば、50ppm、100ppm、150ppm、200ppm、250ppm、300ppm、350ppm、400ppm、450ppm、500ppm、550ppm、600ppm、650ppm、700ppm、750ppm、800ppm、850ppm、900ppm、950ppm、1000ppm、1050ppm、1100ppm、1150ppm、1200ppm、1250ppm、1300ppm、1350ppm、1400ppm、1450ppm、1500ppm、1550ppm、1600ppm、1650ppm、1700ppm、1750ppm、1800ppm、1850ppm、1900ppm、又は1950ppmとすることが可能である。
【0059】
本発明の脂肪族ポリエステルの詳細な製造方法は添付の実施例で説明する。当業者であれば、必要以上の実験を行うことなく、本明細書、特に添付の実施例に基づいて、本発明の脂肪族ポリエステルの製造を達成できる。従って本明細書では、本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法について詳細な説明は省略する。
【0060】
本発明は、特定の架橋剤又は架橋剤の組み合わせを使用することにより、以下の優れた特性のうちの1つ以上を有する脂肪族ポリエステルを提供できる。
(i)190℃、2.16kgの負荷でISO1133に従って測定したメルトインデックス(MI)は1~40の範囲である。
(ii)溶融温度(Tm)は80℃~120℃の範囲である。
(iii)引張伸びが185%以上である。
(iv)降伏点で引張強さは35MPa以上、破壊点で引張強さは25MPa以上である。
(v)ASTM D6290に準拠して測定した脂肪族ポリエステルのYI値(透明性を示す)は10以下である。
【0061】
1.6.脂肪族ポリエステルの応用
本発明の脂肪族ポリエステルは、当技術分野で公知の任意の成形方法により、あらゆる分野の各種成形品へと形成することが可能である。成形品としては、フィルム、積層フィルム、シート、プレート、延伸フィルム、モノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、扁平糸、ステープル、捲縮繊維、ストライプテープ、複合繊維、発泡体、及び射出成形品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の脂肪族ポリエステルは、使い捨て包装材、使い捨てプラスチックストロー、生分解性包装材、食品容器、使い捨て生分解性ポリ袋、使い捨て食器、屋外用ケーブルタイ、農業用ケーブルタイ、農業用梱包ポリ袋、化粧品包装材、環境に配慮した玩具、水筒(スポーツボトルも含むがこれに限定されるものではない)、使い捨て繊維、及び堆肥化梱包材の分野で有用であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
2.実施例
2.1.試験方法
本発明を更に以下の実施形態により説明する。試験装置及び方法は以下のとおりである。
【0063】
[メルトインデックス(MI)試験]
メルトインデックス試験はISO1133に準拠して実施する。試験用装置はメルトインデックス分析器(型番:LMI5000、Dynisco社製)であり、試験条件は以下の通りである:190℃;及び2.16kgの負荷。
【0064】
[引張伸び試験]
引張伸び試験はISO527に準拠して実施する。試験では脂肪族ポリエステルを4つの試験試料(成形品)へと成形した後、試験に供する。試験用装置は引張試験機(型番:3367、Instron社製)である。脂肪族ポリエステルの成形品の引張伸びは4回の引張伸び試験の結果の平均値を取ることにより求める。
【0065】
[降伏点での引張強さ及び破壊点での引張強さの試験]
降伏点での引張強さ及び破壊点での引張強さはISO527に準拠して試験する。試験では脂肪族ポリエステルを4つの試験試料(成形品)へと成形した後、試験に供する。試験用装置は引張試験機(型番:3367、Instron社製)である。脂肪族ポリエステルの成形品の引張強さは4回の引張強さ試験の結果の平均値を取ることにより求める。引張強さの単位はMPaである。
【0066】
[YI値試験]
YI値試験はASTM D6290に準拠して実施する。試験では脂肪族ポリエステルを、直径2.5mm~2.8mm及び高さ3.2mm~3.5mmの円筒ペレット型試験試料へと形成した後、試験に供する。試験用装置は色差計(型番:NE4000、日本電色工業社製;光源:D65/10)である。
【0067】
[融解温度(Tm)試験]
融解温度試験はISO11357に準拠して実施する。試験用装置は示差走査熱量計(型番:Q200、TA Instruments社製)である。
【0068】
2.2.実施例及び比較例で使用する原材料のリスト
【0069】
【表1】

【0070】
2.3.脂肪族ポリエステルの製造及び特性
実施例1~20及び比較例1~5の脂肪族ポリエステルを表2‐1~2‐3に示す割合に従って製造した。具体的には、3リットルの反応器は攪拌機、分別凝縮器、温度計、及びガス注入口を備えていた。脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、第1架橋剤、任意で第2架橋剤、及びTBT(TBTの含有量は脂肪族ジカルボン酸の重量に対して1050ppmである)を反応器に入れ、反応器に窒素を導入し、窒素雰囲気を形成した。次に、反応器を230℃に加熱し、その温度で5時間反応を行った。その後、反応器内の水を蒸留により除去した。次いで、反応器内の混合物を真空下、250℃で90分間反応させた後、同温度で撹拌し、一定時間、重縮合反応させ、脂肪族ポリエステルを得た。攪拌条件は以下の通り、回転数は20rpm、動力は0.3~0.5kWであった。得られた脂肪族ポリエステルの、190℃、2.16kgの負荷で測定したメルトインデックス(MI)は5~30の範囲である。重縮合反応に要する時間を表2‐1~2‐3に示す。
【0071】
実施例1~20及び比較例1~5の脂肪族ポリエステルのメルトインデックス(MI)、Tm、YI値、引張伸び、降伏点での引張強さ、及び破壊点での引張強さを上記試験方法に従って測定し、その結果を表2‐1~2‐3に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】


【0075】
表2‐1~2‐3に示すように、本発明の脂肪族ポリエステルは優れた引張伸びを示すと共に、十分な引張強さ、YI値、及びMIを示す。本発明の脂肪族ポリエステルの特性は、本発明によらない脂肪族ポリエステルの特性と比較して大幅に優れている。特に、実施例1~6及び20では、第3構造単位と第1構造単位とのモル比が0.4未満:100となる量で第1架橋剤を単独で使用すると、本発明の脂肪族ポリエステルの引張伸びは188%以上でYIは7以下となり得ることが示されている。実施例8~10及び実施例13~19では、第3構造単位と第4構造単位とのモル比が1:8~8:1となる割合で第1架橋剤を第2架橋剤と共に使用すると、本発明の脂肪族ポリエステルの引張伸びは315%以上でYIは5以下となり得ることが示されている。
【0076】
上記の実施例は、本発明の原理及び有効性を例示し、また本発明の独創的な特徴を示すために利用しているが、本発明の範囲を限定するために利用するものではない。当業者であれば、本発明の原理及び趣旨から逸脱することなく、記載された本発明の開示及び示唆に基づいて、様々な変更及び置換を進めることが可能である。従って、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲に定義されている範囲である。