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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】腫瘍性疾患を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230602BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230602BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230602BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230602BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K35/17
A61P35/04
A61K39/00 Z
A61K35/15
A61K48/00
C12N15/12 ZNA
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020502511
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 US2018024764
(87)【国際公開番号】W WO2018183447
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】62/477,754
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/516,401
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519349562
【氏名又は名称】ツェンラン・チュー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ツェンラン・チュー
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0183553(US,A1)
【文献】Cancer Research, 1990, Vol.50, No.23, pp.7450-7456
【文献】Cancer Gene Therapy, 1995, Vol.2, No.2, pp.113-124
【文献】Modern Pathology, 2008, Vol.21, No.11, pp.1403-1412
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-00-35/768
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片をコードする外因性核酸配列を含む修飾腫瘍関連マクロファージ(TAM)であって、該Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片を発現する、前記修飾TAM
【請求項2】
該対象または別の対象のマクロファージまたは単球に外因性核酸を導入することにより生成される、請求項1に記載の修飾TAM
【請求項3】
外因性核酸が、mRNA分子である、請求項1に記載の修飾TAM
【請求項4】
mRNA分子が、化学的に修飾されたmRNA分子である、請求項3に記載の修飾TAM
【請求項5】
修飾TAMが、M1表現型を示す、請求項1に記載の修飾TAM
【請求項6】
外因性核酸配列が、ヘテロなまたは内因性プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の修飾TAM
【請求項7】
プロモーターが、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである、請求項6に記載の修飾TAM
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の修飾TAMを含む、対象におけるがんの治療剤。
【請求項9】
修飾TAMが、該対象にとって自家性またはヘテロである、請求項に記載の剤。
【請求項10】
対象に免疫モジュレーターと投与するための、請求項またはに記載の剤。
【請求項11】
免疫モジュレーターが、CAR-T細胞、免疫チェックポイント阻害剤、および腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、またはネオアンチゲンに対する抗体からなる群から選択される、請求項10に記載の剤。
【請求項12】
ネオアンチゲンが、CK20である、請求項11に記載の剤。
【請求項13】
該対象が、対照と比較して、腫瘍関連マクロファージにおけるより低レベルのHom-1発現が検出されている、請求項から12のいずれか一項に記載の剤。
【請求項14】
がんが、白血病、肉腫、骨肉腫、リンパ腫、メラノーマ、グリオーマ、膠芽腫、褐色細胞腫、肝がん、卵巣がん、皮膚がん、睾丸がん、胃がん、膵臓がん、腎臓がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、脳腫瘍、食道がん、膀胱がん、副腎皮質がん、肺がん、気管支がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、鼻咽頭がん、子宮頸がん、肝臓がん、転移性がん、および原発性部位不明のがんからなる群から選択される、請求項に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月28日に出願された米国仮特許出願第62/477,754号および2017年6月7日に出願された米国仮特許出願第62/516,401号の優先権を主張するものである。両方の先行出願の内容は、本明細書でその内容全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
マクロファージは自然免疫と適応免疫の両方の実行者であり、腫瘍とその微小環境の重要な構成要素として認識されている。広範な調査は、ほぼすべての腫瘍の増殖、浸潤、転移における腫瘍関連マクロファージ(TAM)の役割を示唆した。血中単球に由来するTAMは、選択された腫瘍の初期段階におけるM1様表現型から、最も進行した腫瘍におけるM2様表現型に至るまでの、広範なスペクトルの表現型を示す。腫瘍形成の促進におけるその役割と一致して、M2様TAMは、IL-10、IL4、MMP、VEGFの発現の上昇と、殺腫瘍性活性に関与する炎症誘発性サイトカインおよび細胞毒性iNOおよびROIの発現の減少を伴う特徴的な表現型を示す。TAMは、腫瘍形成の促進における本来の機能の他に、腫瘍微小環境においてT細胞応答とバランスを交互に繰り返すことにより、抗腫瘍免疫の抑制にも寄与する。TAMの機能的柔軟性は十分に認識された。腫瘍促進性M2様TAMを抗腫瘍M1様表現型に変換することにより、TAMが抗腫瘍療法の魅力的な標的として機能する可能性があることが提案されている。過去数年にわたって、複数の細胞外因性および内因性因子が、TAMを殺腫瘍細胞に変換するそれらの潜在的な機能について探索されてきた。しかし、TAMの柔軟性が細胞内因性因子によってどのように制御されているかが十分に理解されていないため、腫瘍治療におけるTAMの標的化の有効性と潜在的な応用は制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、がん免疫療法のための標的として幅広く研究されてきた。これらの抗原を標的とすることにより、オフターゲット毒性を最小限に抑えながら、有効性を高めることができる。他方では、これらの抗原に対する抗体は、多くの場合それ自体では効果的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
一態様では、がんを治療する方法が本明細書で提供される。該方法は、Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片をコードする外因性核酸配列を含む修飾マクロファージまたは単球を提供するステップ、ここで修飾マクロファージまたは単球は該Hom-1ポリペプチドまたはその断片を発現する、および、該修飾マクロファージまたは単球を、がんを有する対象へ投与するステップ、を含む。修飾マクロファージはM1表現型を示す。一部の実施形態では、核酸配列はmRNA分子である。一部の実施形態では、外因性核酸配列はヘテロな(heterologous)または内因性プロモーターに作動可能に連結されている。該方法は、免疫モジュレーターを対象に投与するステップをさらに含むことができる。
【0005】
別の態様では、マクロファージまたは単球をHom-1の発現を誘導する1つまたは複数の薬剤と接触させ、それによってマクロファージまたは単球中の内因性Hom-1の発現レベルが接触ステップ前よりも高くなるステップ、および、こうして接触させたマクロファージまたは単球および免疫モジュレーターを、がんを有する対象に投与するステップ、を含むがんを治療する方法が本明細書に記載される。
【0006】
また、マクロファージまたは単球をM1遺伝子の発現を誘導する薬剤またはM2遺伝子の発現を阻害する薬剤と接触させ、それによってM1表現型を示すマクロファージが生成されるステップ、および、そのように生成されたマクロファージおよび免疫モジュレーターを、がんを有する対象に投与するステップ、を含むがんを治療する方法が本明細書に記載される。
【0007】
これらの方法のいずかでは、免疫モジュレーターは、CAR-T細胞、免疫チェックポイント阻害剤、および腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、またはネオアンチゲンに対する抗体からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、ネオアンチゲンはCK20である。
【0008】
本明細書で開示された方法のいずれかでは、投与ステップの前に、対照と比較して、該対象において、腫瘍関連マクロファージにおけるより低レベルのHom-1発現を検出することをさらに含むことができる。
【0009】
1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の説明に記載されている。実施形態の他の特徴、目的、および利点は、説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
正常組織から単離されたマクロファージと比較して、TAMでは、Hom-1発現が著しく減少することが予期せずに発見された。また、予期せずに、TAMにおけるHom-1の発現の増加が、殺腫瘍活性を持つM1様マクロファージにTAMを変換することがさらに発見された。さらに、Hom-1発現TAMとネオアンチゲンに対する抗体の同時投与は、インビボでの腫瘍増殖の抑制に驚くほど効果的であることが示された。したがって、Hom-1によって調節されるTAMは、がん治療の新しい様式として、単独で、またはCAR-T細胞、免疫チェックポイント阻害剤、または腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、もしくは結腸直腸がんの場合はCK20、肺がんの場合はME1、メラノーマの場合はCDC27のようなネオアンチゲンに対する抗体、などの免疫モジュレーターと組み合わせて使用できる。
【0011】
ヒトホメオボックス転写因子であるHom-1は、標準Wntシグナリングのアンタゴニストである。Hom-1の核酸配列(配列番号1)およびそれがコードするアミノ酸配列(配列番号2)は本明細書に開示されている。配列番号2内の位置91~151は、ホメオボックスドメインを含む。
【0012】
抗腫瘍活性を示すマクロファージを対象に投与することによって対象のがんを治療する方法が本明細書に記載される。本明細書で使用される場合、特別の定めのない限り、「抗腫瘍活性を示すマクロファージ」、「M1様マクロファージ」、および「M1表現型を示すマクロファージ」という用語は、互換的に使用できる。
【0013】
M1様マクロファージは、(1)マクロファージまたは単球におけるHom-1発現の増加、(2)マクロファージまたは単球における1つまたは複数のM1遺伝子の発現の増加、および/または(3)マクロファージまたは単球における1つまたは複数のM2遺伝子の発現の阻害によって作製され得る。
【0014】
Hom-1の発現は単球からマクロファージへの分化に必要かつ十分であることが示されたため、(例えば、対象の末梢血に由来する)単球をこの方法で使用できる。つまり、単球でHom-1の発現を増加させると、単球をマクロファージに分化させることができる。
【0015】
マクロファージまたは単球をエクスビボで誘導して、より高いレベルの内因性Hom-1を発現させることができる。例えば、LPS、コレラトキシン(CTX)、化学療法剤、放射線、サイトカイン(例えば、GM-CSF)、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)、およびHom-1発現の阻害剤に対する抗体またはRNAiなどのさまざまな薬剤または治療を使用してHom-1発現を誘導することができる。
【0016】
M1表現型を示す修飾マクロファージまたは単球は、Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片をコードする配列を含む外因性mRNA分子(例えば、合成mRNA分子)をマクロファージまたは単球に導入することにより生成され得る。したがって、マクロファージまたは単球におけるHom-1の発現は一時的に増加し、M1表現型を誘導する。修飾マクロファージまたは単球は、次いでがん患者へ投与され得る。mRNA分子は、mRNAの安定性および/または翻訳効率を促進するために化学的に修飾されたmRNAであり得る。
【0017】
上昇したレベルのHom-1を発現するように遺伝子修飾されたマクロファージまたは単球も、がんを有する対象の治療に使用することができる。例えば、遺伝子修飾マクロファージまたは単球は、Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片をコードする核酸配列を含むことができる。核酸配列はプロモーターに作動可能に連結され、修飾マクロファージまたは単球は、Hom-1ポリペプチドまたはその断片を発現する。そのような修飾マクロファージまたは修飾単球(マクロファージへ分化する)は十分に高レベルのHom-1を発現し、抗腫瘍活性および/またはM1表現型を示す。
【0018】
遺伝子修飾マクロファージまたは単球は、追加のコピーのHom-1遺伝子をマクロファージまたは単球へ導入することによって生成され得る。例えば、内因性Hom-1プロモーターに作動可能に連結されたHom-1核酸配列(Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片をコードする)を含む発現構築体はマクロファージまたは単球に導入され得る。
【0019】
マクロファージまたは単球における内因性Hom-1の発現レベルは、また、Hom-1発現の遺伝子修飾調節エレメントによって増加させることができる。例えば、Hom-1の1つまたは複数のネガティブ転写または翻訳調節エレメントを修飾、欠失、または置換して、Hom-1転写産物および/またはタンパク質レベルを増加させることができる。CRIPR、TALEN、もしくはZFNを利用するゲノム編集技術、または当技術分野で知られている他の技術を使用して、Hom-1発現の調節エレメントを改変することができる。
【0020】
Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片は、直接ペプチド送達によりマクロファージまたは単球に導入することもできる。
当技術分野で既知の方法を使用して、マクロファージおよび単球を遺伝子修飾することができる。例えば、Hom-1を発現するための外因性発現構築体は、マクロファージまたは単球に導入(例えば、安定的または一時的にトランスフェクト)され得る。一実施形態では、Hom-1核酸配列はヘテロな(heterologous)(すなわち、Hom-1プロモーターではない)構成的または誘導性プロモーターに作動可能に連結されている。一実施形態では、Hom-1核酸配列は内因性プロモーターに作動可能に連結されている。
【0021】
M1様殺腫瘍マクロファージは、マクロファージまたは単球においてM1遺伝子の発現を誘導することによっても生成され得る。M1遺伝子を誘導できる薬剤は、LPS、CTX、PMA、GM-SCF、INFγ、および化学療法剤を含むが、これに限定されない。マクロファージまたは単球は、上昇したレベルのM1遺伝子を発現するように遺伝子修飾することもできる。M1遺伝子は、IL1b、IL6、IL12、IL23、TNFα、iNOs、CD40、CD80、CD86、CD68、TLR4、TLR2、IL-1R、MHCII、CCL15、CCL20、CXCL9、CXCL1、およびSOCS3を含む。
【0022】
マクロファージまたは単球でのM2遺伝子の発現を阻害することにより、M1様殺腫瘍マクロファージを作製することもできる。M2遺伝子を阻害する薬剤は、抗IL4薬剤(例えば、抗体またはRNAi薬剤)、抗IL13薬剤(例えば、抗体またはRNAi薬剤)、M2タンパク質に対する抗体、M2遺伝子を標的とするRNAi薬剤を含む。M2遺伝子は、ARG1、MMP9、CCL18、VEGF、IL10、IL4、TGFb、CD163、CD206、CD68、TLR8、TLR1、MHCII、TGM2、DcoyR、IL-1RII、Ym1/2、MMR/CD206、およびSRを含む。
【0023】
ヘテロな(heterologous)もしくは自家性マクロファージまたは単球を使用してM1様マクロファージを生成することができる。ヘテロなマクロファージまたは単球が使用される場合、HLA一致を実行して、宿主反応を回避または最小限に抑えることができる。HLA不一致マクロファージまたは単球が使用される場合もある。自家性マクロファージまたは単球は、当技術分野で既知の方法を使用してがん患者から得ることができる。
【0024】
免疫モジュレーターは、免疫系の1つまたは複数の構成要素を強化、阻害、または調節する。そのようなモジュレーターは、CAR-T細胞、免疫チェックポイント阻害剤、または腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、もしくは結腸直腸がんの場合はCK20、肺がんの場合はME1、メラノーマの場合はCDC27のようなネオアンチゲンに対する抗体を含む。
【0025】
生成されたM1様マクロファージおよび/または免疫モジュレーターは、点滴または注射(例えば、静脈内、クモ膜下、筋肉内、内腔内、気管内、腹腔内、頭蓋内、皮下、もしくは他のタイプの組織内経路を介して)、経皮的投与、または当技術分野で既知の他の経路から対象へ投与され得る。一例では、マクロファージ、単球、および/または免疫モジュレーターは、腫瘍が発見された部位または組織(例えば、肝臓もしくは膵臓)またはその周辺領域に直接注射することができる。
【0026】
対象は、がんを治療するのに必要なだけ頻繁に(例えば、1~30日ごとに)および必要な回数(例えば、1~30回)M1様マクロファージで治療され得る。本明細書に記載のM1様マクロファージは、放射線、化学療法、および小分子薬剤のような他のがん治療との併用療法においても使用することができる。
【0027】
以下に記載されたデータは、Hom-1発現がTAMを腫瘍のタイプに関係なく殺腫瘍細胞に変換することを示している。したがって、本明細書に記載のM1様マクロファージを使用して、あらゆるがん、特に低レベルのHom-1を発現するTAMに関連するがんを治療することができる。上記のように、M1様マクロファージで対象を治療する前に、対象のTAMのHom-1発現レベルが、対照(例えば、対象の正常組織で見られるマクロファージ)で見られるレベルより低いかどうかを判定することが有用な場合がある。
【0028】
M1様マクロファージで治療することができるがんの例は、これらに限定されないが、白血病、肉腫、骨肉腫、リンパ腫、メラノーマ、グリオーマ、膠芽腫、褐色細胞腫、肝がん、卵巣がん、皮膚がん、睾丸がん、胃がん、膵臓がん、腎臓がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、脳腫瘍、食道がん、膀胱がん、副腎皮質がん、肺がん、気管支がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、鼻咽頭がん、子宮頸がん、肝臓がん、転移性がん、のようながん腫および肉腫、ならびに原発性部位不明のがんが挙げられる。
【0029】
対照のものと比較して(例えば、正常組織のマクロファージにおける対応するレベル)、組織領域の微小環境で見られるマクロファージにおいて、Hom-1もしくはM1遺伝子のよち低い発現レベル、またはM2遺伝子のよち高い発現レベルを検出することは、組織領域ががんである、またはがんになる危険性があることを示す。したがって、本明細書では、疑わしい組織領域ががんであるか、がんになる危険性があるかどうかを識別する方法も企図している。
【0030】
さらに、がん治療の候補化合物を同定する方法が本明細書に記載される。試験細胞(すなわち、マクロファージまたは単球)を試験化合物に接触させることができ、試験細胞中の(i)Hom-1、(ii)Hom-1プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子、(iii)M1遺伝子、(iv)M1プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子、(v)M2遺伝子、または(vi)M2プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現レベルが検出される。対照(例えば、試験化合物に接触させていない試験細胞における対応するレベル)と比較して、(i)~(iv)のいずれかの発現レベルを増加させる、および/または(v)もしくは(vi)の発現レベルを減少させる試験化合物は、がん治療の候補化合物である。
【0031】
1つのスクリーニング方法では、試験化合物は、試験細胞とがん試料を含む共培養に添加される。対照と比較して、(i)試験細胞においてHom-1、Hom-1プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子、M1遺伝子、またはM1プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現レベルを増加させる、(ii)試験細胞においてHom-1、Hom-1プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子、M1遺伝子、またはM1プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現レベルの有意な減少を阻害する、または(iii)試験細胞中のM2遺伝子、もしくはM2プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現レベルを減少させる場合、試験化合物は、がん治療の候補化合物である。
【0032】
共培養システムでは、試験化合物ががん試料に対して阻害効果を有するかどうかも測定できる。対照と比較して、がん試料を阻害する(例えば、がん細胞の増殖を阻害する、がん細胞を死滅させる、またはがん試料のサイズを減少させる)試験化合物は、がん治療の候補化合物である。試験細胞とがん試料は、互いに直接接触することができる。あるいは、試験細胞とがん試料は直接接触しない(例えばトランズウェルインサートを使用して)。がん試料は、がん細胞、例えばがん組織試料、がん組織試料から単離されたがん細胞、またはがん細胞株の細胞を含む試料であり得る。がん組織試料は、がん患者の外科的に解剖された検体から取得できる。そのようながん組織試料はTAMを含む場合がある。
【0033】
スクリーニング法は、また、試験細胞の非存在下でがん組織試料を用いて実行され得る。がん組織試料は試験化合物と接触させることができる。一定期間後、TAMをがん組織試料から単離し、TAMのHom-1、M1遺伝子、またはM2遺伝子の発現レベルを測定することができる。あるいは、またはそれに加えて、組織試料中のHom-1の発現レベルを測定することができる。対照と比較して、(i)Hom-1またはM1遺伝子の発現レベルを増加させる、(ii)Hom-1またはM1遺伝子の発現レベルの有意な減少を阻害する、および/または(iii)M2遺伝子の発現レベルを減少させる場合、試験化合物は、がん治療の候補化合物である。対照と比較して、がん組織試料を阻害する(例えば、試料のサイズを小さくする)試験化合物は、また、がん治療の候補化合物であると考えられる。
【0034】
スクリーニングされる試験化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、ペプトイド、抗体、RNAi、小分子、または他の薬物)は、当技術分野で知られている方法を使用して得ることができる。
【0035】
本明細書に記載のいずれかの方法では、Hom-1、M1遺伝子、またはM2遺伝子の発現レベルは、mRNAレベルまたはタンパク質レベルで測定することができる。プロモーター活性もまた測定することができる。mRNAレベル、タンパク質レベル、およびプロモーター活性を測定する方法は、当技術分野でよく知られている。
【0036】
上記のスクリーニング方法のいずれかでは、試験細胞はマクロファージまたは単球であり得る。マクロファージは、M1マクロファージ、M2マクロファージ、腫瘍関連マクロファージ、組織マクロファージ、または単球由来のマクロファージであり得る。試験細胞は、単球でもあり得る。
【0037】
以下の具体例は、ただ例示するだけのものとして解釈されるべきであり、いかなる形であれ本開示の残りの部分を限定するものではない。さらに詳述することなく、当業者は、本明細書の記載に基づいて、本開示を最大限に利用できると考えられる。本明細書で引用されるすべての出版物は、その内容全体が本明細書で参照により組み込まれるものとする。
【実施例
【0038】
本発明者らは、ヒトマクロファージの機能的極性化におけるヒトホメオボックスタンパク質Hom-1の役割を確認する。Hom-1は、ヒトマクロファージのM1活性化を促進し、ヒトマクロファージのM1活性化に必要とされるが、M2活性化に関与する重要な遺伝子の発現には必要とされないことを本発明者らは見出した。
【0039】
がんから単離された初代TAMを使用することにより、正常な対照組織から単離されたマクロファージと比較して、TAMにおけるHom-1発現が有意に減少することを本発明者らは見出した。本発明者らは、TAM表現型と関連があるTAMにおけるHom-1発現プロファイルを示した。さらに、Hom-1の異所性発現は、TAMをM1様表現型に変換した。インビトロおよびインビボの両方のデータは、Hom-1がTAMに殺腫瘍活性を付与することを示した。総合すると、本発明者らの研究は、Hom-1がTAMを殺腫瘍細胞へ変換することを実証した。Hom-1発現TAM(M1表現型を示す)は、さまざまながんの増殖に強力な阻害効果を発揮することから、がんの治療における新しい様式として、Hom-1調節TAMの役割が示唆されることを本発明者らは示した。
Hom-1発現はTAMで減少した
進行性腫瘍では、TAMは前腫瘍M2様の表現型を示す。BronteおよびMurray、(2015)、Nat Med 21、117~119を参照。TAMの柔軟性は十分に理解されており、さまざまなサイトカインがM2表現型へのTAMの極性化に関与している。NoyおよびPollard、(2014)、Immunity 41、49~61を参照。それに比べて、TAM極性化を制御する転写機構はほとんど不明のままである。
【0040】
結腸がん切除から廃棄された外科的検体を使用して、腫瘍組織からTAMを単離し、以下に記載するように腫瘍部位から15cm離れた正常粘膜からマクロファージを単離した。前述のように、正常な対照粘膜から単離されたマクロファージと比較して、TAMは有意に高いレベルのCD68、CD163、CD206などのM2表現型に関連する細胞表面マーカーを発現することをFACS分析は示した。Zhangら、(2013)、Eur J Cancer 49、3320~3334を参照。本発明者らは、TAMおよび対照マクロファージの非識別マクロファージマーカーCD33の発現に有意差はなかったことを見出した。
【0041】
Hom-1がTAMで役割を果たす場合があるかどうかを判定するために、本発明者らはqRT-PCRによりTAMでのHom-1発現を定量し、対照マクロファージでの発現と比較して、Hom-1発現がTAMで有意に減少することを見出した。
VentXはTAM柔軟性を制御し、M1表現型へTAMを極性化した
以前の研究では、LPSによってTAMが誘導されてM1表現型を示すことが示された。Zhangらを参照。Hom-1がTAM柔軟性において役割を果たすかどうかを判定するために、本発明者らはLPSに曝露したTAMにおけるHom-1発現を調べた。Hom-1発現はLPSで刺激された後、TAMで有意に上昇することを本発明者らは見出した。Hom-1の発現上昇と並行して、以前の研究結果と一致して、TAMのLPS刺激は炎症性サイトカインおよび細胞毒性iNOの分泌の上昇をもたらした。
【0042】
Hom-1がTAM柔軟性の調節的役割を果たしているかどうかを判定するために、本発明者らはTAM表現型に対するHom-1ノックダウンの影響を調べた。抗Hom-1モルホリノ(MO)によるTAMの処理により、Hom-1発現が約80%減少した。TAM柔軟性の重要な調節因子としてのHom-1の役割と一致して、Hom-1 MOがTAMのLPS誘導性炎症性サイトカインおよび細胞傷害性iNOの分泌を中断することを本発明者らは見出した。CD206はマンノース受容体であり、TAMで高度に発現するM2細胞表面マーカーである。TAMの柔軟性を反映して、TAMのLPSへの曝露は、CD68+CD206+集団の有意な減少とCD68+CD206-細胞数の増加をもたらした。Hom-1 MOは、TAMに対するLPSの両方の効果を破棄した(p<0.01)。
【0043】
Hom-1発現レベルとTAM表現型との相関は、Hom-1がTAM柔軟性を制御するという考えをさらに探索することを本発明者らに促した。TAMを単離し、GPF-Hom-1または対照GFPをコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照GFPをトランスフェクトしたTAMと比較して、GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMは、細長い/線維芽細胞様の細胞形状を持つ特徴的なM1形態を示した。FACS分析は、GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMで、M1マーカーのCD40、CD80、およびCD86の表面発現が有意に増加したことを示した。さらに、GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMにおいて、炎症誘発性サイトカインのTNFα、IL-1β、およびIL-12の分泌は有意に増加し、一方M2サイトカインのIL-10の分泌は有意に減少した。一貫して、遺伝子発現分析は、GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMにおいて、IL-1β、IL-6、TNF-α、およびiNOsのようなM1遺伝子は有意に増加し、一方GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMにおいて、CCL18、MMP9、VEGFA、およびArg1のようなM2遺伝子は有意に減少したことを示した。総合すると、本発明者らのデータは、Hom-1はTAM柔軟性を制御し、TAMのM1極性化を促進することを示唆した。
【0044】
Hom-1はTAMを腫瘍抑制細胞に変換した
Hom-1がTAMのM1極性化を促進するという本発明者らの研究結果は、Hom-1修飾TAMが腫瘍抑制を発揮できるかどうか探索することを本発明者らに促した。結腸がんから新たに単離されたTAMを、GPF-Hom-1または対照GFPをコードするプラスミドでトランスフェクトした。次いで、トランズウェル培養システムを使用して、修飾されたTAMを同一患者の腫瘍または正常組織と共培養した。驚くべきことに、共培養の7~10日後、GFP-Hom-1修飾TAMとのインキュベート中に腫瘍体積は有意に減少した(約70%)(p<0.01)が、GFPをトランスフェクトしたTAMまたはTAMのみとインキュベートされた腫瘍のサイズに有意な変化はなかった。腫瘍体積の縮小ががん細胞の減少に関連しているかどうかを判定するために、本発明者らは組織切片、H&E染色、およびCK20抗体による結腸がん細胞の免疫組織化学を実施した。CK20陽性腫瘍細胞は、TAMまたはGFP修飾TAMとともにインキュベートした腫瘍のネスト、コード、およびシートに出現することを本発明者らは見出した。しかしCK20陽性腫瘍細胞は、GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMとインキュベーションする間に消失した。Hom-1修飾TAMの殺腫瘍効果の特異性は、Hom-1修飾TAMがGFPまたはGFP-Hom-1のいずれかをトランスフェクトしたTAMとのインキュベーション中に、正常な結腸粘膜の体積および形態に最小限の影響しか及ぼさないという研究結果によって実証された。
【0045】
Hom-1はインビボでTAMの殺腫瘍機能を促進する
Hom-1がインビトロでTAMを殺腫瘍細胞に変換したという本発明者らの研究結果は、インビボでの腫瘍形成におけるHom-1調節TAMの潜在的な役割を探索することを本発明者らに促した。結腸がんを約0.5cmの小片に切り分け、NSGマウスの腹部側の皮下スペースに外科的に播種した。1週間後、MO-Hom-1をトランスフェクトしたTAM(Hom-1阻害)またはGFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAM(Hom-1発現)をマウスの尾の静脈(vain)から注射した。異種移植の8週間後、MO-Hom-1をトランスフェクトしたTAMを注射したマウスでは腫瘍が成長したが、GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMを注射したマウスでは成長しなかった。
【0046】
さらに、同一のマウスモデルでMO-Hom-1をトランスフェクトしたTAMと組み合わせた抗CK20抗体の効果を評価した。抗体単独で、またはMO-Hom-1をトランスフェクトしたTAMと組み合わせて、腫瘍が形成された後にマウスに投与した。抗体のみを投与したマウスの腫瘍は成長し続けた。他方では、抗体およびMO-Hom-1をトランスフェクトしたTAMを投与したマウスの腫瘍は、抗体のみで治療したマウスと比較して、成長が止まるか、はるかに遅い速度で成長した。
【0047】
本発明者らはまた、TAMまたは単球をM1分化培地で培養することにより、M1表現型を示すように誘導できることを見出した。これらのM1分化TAM/単球をNSGマウスに注射し、インビボでがんの増殖を阻害することができる。腫瘍の増殖に対するM1分化TAMの影響は、これらのTAMまたは単球でのHom-1発現の阻害により無効になる。
【0048】
さまざまながんタイプに及ぼすTAMにおけるHom-1の異所性発現の影響
TAMは基本的にすべての腫瘍の腫瘍形成に関与している。結腸がん細胞のTAMに関する研究に続いて、本発明者らは他の種類の腫瘍にも調査を拡大した。
【0049】
肺、メラノーマ、食道、胃、および膵臓のがんの外科的種を得て、TAMを上記のように単離した。同一患者の対応する正常な組織からマクロファージを得た。TAMおよび組織マクロファージにおけるHom-1発現を、リアルタイムRT-PCRを使用して定量した。これらすべての腫瘍のTAMにおけるHom-1発現は、対応する離れた正常組織由来のマクロファージにおけるHom-1発現と比較して低かった。
【0050】
Hom-1がこれらのTAMを殺腫瘍細胞に変換できるかどうかを判定するために、GFPまたはGFP-Hom-1をTAMにトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、GFP陽性細胞を選別し、個々の腫瘍と共培養した。すべての腫瘍の腫瘍体積は、GFP-Hom-1をトランスフェクトしたTAMとの共培養中に減少したが、対照GFPをトランスフェクトしたTAMとの共培養では減少しなかった。本発明者らの結果は、Hom-1がTAMを腫瘍の種類に関係なく殺腫瘍細胞に変換できることを示唆した。
【0051】
結腸組織試料の収集
がん組織および正常組織は、病理学検査室の患者から外科的に解剖された検体から得られた。各腫瘍塊から、または腫瘍塊から15cm離れた正常粘膜から、約5~10グラムの組織を採取した。患者の血液試料も収集した。
【0052】
上皮内リンパ球の調製
粘膜固有層単核細胞(LPMC)を、変更を加えた以前に記載された技術を使用して単離した(Kamada Nら、2008; Pignata Cら、1990)。簡単に言えば、解剖した新鮮な粘膜および腫瘍塊を、10cmペトリ皿の中で、2%ウシ胎児血清(FBS)および1mMジチオスレイトール(DTT)(Sigma-Aldrich)を含むCa2+フリーおよびMg2+フリーハンクス平衡塩溶液(HBSS)(life technologies)ですすぎ、粘液を除去した。粘膜および腫瘍をかみそりの刃で0.5cm小片に切断し、6ウェルプレートの中で、1mM EDTA(Sigma-Aldrich)を含む5mL HBSSとともに37°C、1時間インキュベートし、次いでグレーメッシュ(100ミクロン)を通過させた。通過画分は上皮内リンパ球および上皮細胞を含み、フローサイトメーターで分析した。
【0053】
腫瘍塊および正常な粘膜からのマクロファージの単離
続いて粘膜および腫瘍を、2%FBS、1.5mg/mLコラゲナーゼD(Roche)、0.1mg/mL Dnase Iを含むHBSS(Ca2+およびMg2+含有)中で37°C、1時間.インキュベートした。消化された組織はグレーメッシュ(70ミクロン)フィルターを通過させた。通過画分を回収し、40%パーコール溶液(Pharmacia)に再懸濁し、次いで60%パーコール上に層状にし、2000rpm、30分間、ブレーキをかけずに遠心分離した。境界のLPMCを回収した。EasySep(商標)Human Monocyte/Macrophage Enrichment kit without CD16 depletion(StemCell Technologies)を使用し、製造業者の使用説明書に従って、LPMCから正常な粘膜マクロファージおよびTAMを精製した。これらの技術によって単離された細胞は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色によって日常的に98%以上生存した。腸管マクロファージの純度は95%以上であった。
【0054】
末梢血由来のマクロファージの調製
Brigham and Women病院において、健康な成人ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール密度勾配遠心分離によって単離した。EasySep(商標)Human Monocyte Enrichment kit without CD16 depletionを使用し、製造業者の使用説明書に従って、PBMCからヒト単球を精製した。精製した細胞を、10ng/mLのM-CSF(PeproTech)を含む完全RPMI培地で培養した。濃縮後、単球をM-CSFを含む完全RPMI培地で5日間培養し、細胞を共培養システムに使用した。
【0055】
FACS分析
TAMおよび他のリンパ球の表現型分析は、蛍光色素結合抗体による細胞の免疫標識後にフローサイトメトリーを使用して行った。以下の抗体を使用した:PE結合-抗-CD3(OKT3)、-CD25(BC96)、-CD14(61D3)、-CD68(eBio Y182A)、-CD163(eBio GH161)、-CD206、FITC結合-抗-CD4(RPA-T4)、-CD33(HIM3-4)、APC結合-抗-CD8(OKT8)、-CD4(OKT4)(eBioscience、Inc)。Foxp3(236A/E7)、IFN-γ、パーフォリン、およびグランザイムBの細胞内染色は、製造業者が提供するプロトコールに従ってPE結合抗体を使用して行った。同位体コントロール標識を平行して行った。供給業者が推奨するように、抗体を希釈した。標識細胞をCell-Questソフトウェア(BD Biosciences)を備えたFACScanフローサイトメーターで回収し、FlowJoソフトウェアで分析した。結果を陽性細胞の割合として表す。
【0056】
腫瘍およびマクロファージの器官型共培養
トランズウェルインサート(0.4μm孔径、Costar、Corning)を12ウェルのポリスチレン組織培養プレート(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)に設置した。粘膜および腫瘍塊を計量し、1×PBS緩衝液と抗生物質で洗浄し、次いで0.5cmの小片に切り分けた。約50mgの組織を12ウェルのトランズウェルの上部コンパートメントに播種し、0.5mLのRPMI 1640完全培地で満たした。5×10個のTAMを下部コンパートメントに50万細胞/ウェルの密度で添加し、細胞と組織を直接接触させずに、2mLのPRMI完全培地で満たした。プレートを37°C、5%COでインキュベートした。サイトカイン分析のために培地0.5mLを回収し、3日ごとに新鮮な培地を添加した。2週間の共培養後、低チャンバーマクロファージを回収し、TRIzol試薬(Ambion)によって総RNAを単離した。式(長さ×幅)/2に従って腫瘍体積を算出するために、腫瘍および正常粘膜をキャリパーで週2回モニターした。組織の写真は、Leica EZ4D実体顕微鏡の3メガピクセルCMOSカメラまたはiPhone(登録商標)のデジタルカメラで撮影した。
【0057】
免疫組織化学
腫瘍または正常組織はホルマリンで固定した(Fisher Scientific Company、Kalamazoo、MI)。CK20染色(Dako、Carpinteria、CA、クローンKs20.8、1:50)およびヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色を行った。CK20染色は、Leica Bone III染色プラットフォームで、Epitope Retrieval 2をオンラインで20分間使用し、Bone Polymer Refine検出キットを使用して行った。顕微鏡分析は、Nikon Eclipse Ti蛍光顕微鏡で行った。NIS Elementsイメージングソフトウェア(Nikon)を適用したカラーカメラを使用して、40倍の元の倍率で画像を取得した。代表的な画像の明るさおよびコントラストは、グループ間で等しく調整された。
【0058】
Hom-1過剰発現
GFP-Hom-1の血液マクロファージおよびTAMへのトランスフェクションは、製造プロトコールに従ってリポフェクタミン2000(Life Technologies)によって行われた。トランスフェクションの48時間後、細胞選別のために70μmフィルターを通して細胞を濾過した。GFP陽性細胞を、無菌条件のBaker Bio-Protect Hoodの下でBD FACSAria IIによって選別した。選別後、細胞をRPMI 1640完全培地で培養した。
【0059】
Hom-1ノックダウン
Human Monocyte Nucleofector Kit(Lonza、Walkersville、MD)を使用して、製造業者の使用説明書に従って、結腸TAMまたはヒト初代単球をモルホリノ(MO)アンチセンスオリゴヌクレオチドでトランスフェクトした。簡潔に言えば、5×10の細胞を2.5nmolのHom-1MOオリゴヌクレオチドまたは標準対照MOオリゴヌクレオチドのいずれかを含む100μlヌクレオフェクター溶液に再懸濁し、Nucleofector II Device(Lonza)でエレクトロポレーションした。次いで、細胞を即時にデバイスから除去し、2mMグルタミンおよび10%FBSを含む1mlの予め加温したHuman Monocyte Nucleofector Mediumとともに一晩インキュベートした。次いで、細胞を完全RPMI培地に再懸濁し、適切なサイトカインで処理して、マクロファージへの分化を誘導した。すべてのMOオリゴヌクレオチドはGene Tools(Philomath、OR)に注文した。
【0060】
サイトカイン測定
E.coli LPS(Sigma-Aldrich)処理した血液マクロファージまたはLPS処理したTAMの上清中のIL-1β、IL-10、TNF-αおよびIL-12p70のレベルを、eBiosciencesから入手したELISAキットを使用して定量した。製造業者の使用説明書に従って分析を行った。
【0061】
qRT-PCR
全RNAをTRIzol試薬によって単離し、NanoDrop 2000(Thermo Scientific)によってRNA量を測定した。製造業者のプロトコールに従って、SuperScript III First-Strand Synthesis System(Life Technologies)を使用して、同量のRNAをファーストストランドcDNA合成に使用した。従来のPCRでHom-1cDNAを増幅するために、製造業者の使用説明書に従って、AccuPrime Taq DNAポリメラーゼシステム(Life Technologies)を使用した。PCR産物を2%アガロースゲルで分離し、エチジウムブロマイドで染色した。GAPDHを内部標準として使用した。LightCycler(480 Real-Time PCR System、Roche)でSYBR Greenを使用して、Hom-1およびその他の遺伝子cDNAの定量的測定を行った。次いで、比較Ct法(ΔΔC法)を使用して、mRNAの相対発現プロファイルを算出した。
【0062】
アルギナーゼ活性およびNOアッセイ
QuantiChromアルギナーゼアッセイキット(DARG-200、BioAssays Systems)を使用して尿素の産生を測定することにより、細胞溶解物のアルギナーゼ活性を定量した。培養上清の亜硝酸濃度を、Griess試薬キット(Molecular Probes)を使用して測定した。
【0063】
統計分析
スチューデント検定を統計分析に使用した。
他の実施形態
本明細書で開示されたすべての特徴は、どの組合せで組み合わせてもよい。本明細書で開示された各特徴は、同一、同等、または類似の目的を果たす代替する特徴に置換してもよい。したがって、明示されない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴の一般的な一連の例にすぎない。
【0064】
上記の記載から、当業者は、記載された実施形態の本質的な特性を容易に確認することができ、その精神および範囲から逸脱しない範囲で、実施形態のさまざまな変更および修正を行って、さまざまな用途および条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
発明の態様
[態様1]がんを治療する方法であって、
Hom-1ポリペプチドまたはHom-1ホメオボックスドメインを含むその断片をコードする外因性核酸配列を含む修飾マクロファージまたは単球を提供するステップ、ここで修飾マクロファージまたは単球は該Hom-1ポリペプチドまたはその断片を発現する、および
該修飾マクロファージまたは単球を、がんを有する対象へ投与するステップ
を含む方法。
[態様2]修飾マクロファージまたは単球が、該対象または別の対象に由来するマクロファージまたは単球に外因性核酸を導入することにより生成される、請求項2に記載の方法。
[態様3]外因性核酸が、mRNA分子である、態様1に記載の方法。
[態様4]mRNA分子が、化学的に修飾されたmRNA分子である、態様3に記載の方法。
[態様5]修飾マクロファージが、M1表現型を示す、態様1に記載の方法。
[態様6]外因性核酸配列が、ヘテロなまたは内因性プロモーターに作動可能に連結されている、態様1に記載の方法。
[態様7]プロモーターが、構成的プロモーターである、態様6に記載の方法。
[態様8]プロモーターが、誘導性プロモーターである、態様6に記載の方法。
[態様9]免疫モジュレーターを対象に投与することをさらに含む、態様1から8のいずれかに記載の方法。
[態様10]免疫モジュレーターが、CAR-T細胞、免疫チェックポイント阻害剤、および腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、またはネオアンチゲンに対する抗体からなる群から選択される、態様9に記載の方法。
[態様11]ネオアンチゲンが、CK20である、態様10に記載の方法。
[態様12]投与ステップの前に、対照と比較して、該対象において、腫瘍関連マクロファージにおけるより低レベルのHom-1発現を検出することをさらに含む、態様1から11のいずれかに記載の方法。
[態様13]がんが、白血病、肉腫、骨肉腫、リンパ腫、メラノーマ、グリオーマ、膠芽腫、褐色細胞腫、肝がん、卵巣がん、皮膚がん、睾丸がん、胃がん、膵臓がん、腎臓がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、脳腫瘍、食道がん、膀胱がん、副腎皮質がん、肺がん、気管支がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、鼻咽頭がん、子宮頸がん、肝臓がん、転移性がん、および原発性部位不明のがんからなる群から選択される、態様1に記載の方法。
[態様14]がんを治療する方法であって、
マクロファージまたは単球をHom-1の発現を誘導する1つまたは複数の薬剤と接触させ、それによってマクロファージまたは単球中の内因性Hom-1の発現レベルが接触ステップ前よりも高くなるステップ、および
そのように接触させたマクロファージまたは単球および免疫モジュレーターを、がんを有する対象に投与するステップ
を含む方法。
[態様15]免疫モジュレーターが、CAR-T細胞、免疫チェックポイント阻害剤、および腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、またはネオアンチゲンに対する抗体からなる群から選択される、態様14に記載の方法。
[態様16]ネオアンチゲンが、CK20である、態様15に記載の方法。
[態様17]マクロファージまたは単球が、該対象にとって自家性またはヘテロである、態様14に記載の方法。
[態様18]接触ステップおよび投与ステップが、少なくとも1回反復される、態様14に記載の方法。
[態様19]がんを治療する方法であって、
マクロファージまたは単球を、M1遺伝子の発現を誘導する薬剤またはM2遺伝子の発現を阻害する薬剤と接触させ、それによってM1表現型を示すマクロファージが生成されるステップ、および
そのように生成されたマクロファージおよび免疫モジュレーターを、がんを有する対象に投与するステップ
を含む方法。
[態様20]マクロファージまたは単球が、該対象にとって自家性またはヘテロである、態様19に記載の方法。
[態様21]免疫モジュレーターが、CAR-T細胞、免疫チェックポイント阻害剤、および腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原、またはネオアンチゲンに対する抗体からなる群から選択される、態様19に記載の方法。
[態様22]ネオアンチゲンが、CK20である、態様20に記載の方法。
【配列表】
0007289289000001.app