(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】フェノールフォーム製造用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20230602BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20230602BHJP
C08K 5/02 20060101ALI20230602BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230602BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C08J9/14 CEZ
C08L61/06
C08K5/02
C08K3/32
C08K5/01
(21)【出願番号】P 2020535720
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030328
(87)【国際公開番号】W WO2020031863
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018151239
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】山田 修司
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107778766(CN,A)
【文献】特開2017-160414(JP,A)
【文献】特開昭60-170636(JP,A)
【文献】特開2017-128126(JP,A)
【文献】特開2009-035915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/14
C08L 61/06
C08K 5/02
C08K 3/32
C08K 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾール型フェノール樹脂を必須成分として含有すると共に、発泡剤として、塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素を含有し、酸硬化剤にて発泡硬化せしめられる組成物であって、更に、表面コーティング層を有する赤リン粉末を
、前記レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して1~25質量部となる割合において、分散、含有していることを特徴とするフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項2】
前記発泡剤が、イソペンタンとイソプロピルクロリドとの混合物である請求項1に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項3】
レゾール型フェノール樹脂を必須成分として含有すると共に、発泡剤として、ハロゲン化アルケンを含有し、酸硬化剤にて発泡硬化せしめられる組成物であって、更に、表面コーティング層を有する赤リン粉末を
、前記レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して1~25質量部となる割合において、分散、含有していることを特徴とするフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項4】
前記表面コーティング層が、金属の酸化物乃至は水酸化物及び/又は熱硬化性樹脂により形成されている請求項1乃至請求項
3の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸硬化剤として、パラトルエンスルホン酸及びキシレンスルホン酸が併用されることを特徴とする請求項1乃至請求項
4の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項6】
前記レゾール型フェノール樹脂が、25℃において、2000mPa・s以上の粘度を有するように調整されていることを特徴とする請求項1乃至請求項
5の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールフォーム製造用樹脂組成物に係り、特に、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを必須の成分として用いて得られるフェノールフォームの難燃・防火性と断熱性能の長期安定性とを、共に、より一層向上せしめることの出来る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを組み合わせて発泡硬化せしめることにより、フェノール樹脂発泡体、所謂フェノールフォームを製造するに際しては、フロン系の発泡剤が広く用いられてきたが、オゾン層の破壊、地球温暖化係数が高い等の問題から、現在では、好ましい発泡剤として、塩素化脂肪族炭化水素系発泡剤、炭化水素系発泡剤、ハロゲン化アルケン等の採用が推奨されている。例えば、地球温暖化係数が低い発泡剤として、特開2007-161810号公報においては、塩素化脂肪族炭化水素系発泡剤の採用が、明らかにされており、また特開2008-88208号公報においては、炭化水素系発泡剤の使用が明らかにされ、更に、それら塩素化脂肪族炭化水素系発泡剤と炭化水素系発泡剤との併用が、特開2007-70511号公報に明らかにされている。加えて、特表2014-521798号公報には、ハロゲン化アルケンが、地球温暖化係数が低く、オゾン層破壊係数がゼロであり、難燃性をも付与する最新型の発泡剤として、提案されている。
【0003】
一方、フェノール樹脂発泡体であるフェノールフォームは、それ自体、比較的に難燃性の高いものとして認識されているのであるが、そのままでは、建築、土木、工業用品等の分野において要求される安全性基準を充分に満たすことが出来ず、そのために、難燃剤をフェノールフォーム製造用樹脂組成物に配合して、目的とするフェノールフォームの難燃性の向上が図られて来ている。例えば、特開平2-49037号公報においては、難燃剤として、リン化合物、硫黄化合物又はホウ素化合物を用いて、それらを、フェノールフォーム製造用樹脂組成物に配合せしめることによって、有用な難燃性フェノールフォームを製造し得ることが明らかにされているのであり、また、先に指摘した特開2007-161810号公報や特開2007-70511号公報等においても、フェノールフォーム製造用樹脂組成物に、通常、配合せしめられることとなる無機フィラーとして、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛の如き金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩を用いることにより、発泡して得られるフェノールフォームの難燃性乃至は耐火性を向上せしめ得ることが、明らかにされている。
【0004】
ところで、先述の如き地球温暖化係数の低い発泡剤を用いて得られるフェノールフォームにおいて、その難燃性を更に向上せしめるべく、上記した公報において提案されている各種の難燃剤を用いて、目的とするフェノールフォームを製造すると、その得られたフェノールフォームの熱伝導率が必然的に高くなり、そのために、断熱特性が悪化する問題を惹起すると共に、フェノールフォームの長期間の使用によって、その熱伝導率が経時的に変化して、大きく上昇するようになるために、断熱特性の長期安定性を確保することは、著しく困難なことであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-161810号公報
【文献】特開2008-88208号公報
【文献】特開2007-70511号公報
【文献】特表2014-521798号公報
【文献】特開平2-49037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、上述の如き地球温暖化係数の低い発泡剤として有効な、塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素、或いはハロゲン化アルケンを用いて、形成されるフェノールフォームの難燃性を更に向上せしめるべく、難燃剤を配合せしめた際において、必然的に惹起される熱伝導率の悪化の問題を解消すべく、鋭意検討した結果、そのような地球温暖化係数の低い所定の発泡剤と特定の難燃剤とを組み合わせることにより、形成されるフェノールフォームの熱伝導率を効果的に改善し、更には、製造直後から中長期的に、優れた熱伝導率を発現せしめることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
従って、本発明の解決課題とするところは、環境破壊を可及的に回避するべく、地球温暖化係数の低い特定の発泡剤を用い、それによって形成されるフェノールフォームに対して、より一層向上せしめられた難燃性と共に、格別の断熱特性を同時に且つ有利に付与することの出来るフェノールフォーム製造用樹脂組成物を提供することにあり、また、他の課題とするところは、難燃剤の使用によって必然的に惹起される熱伝導率の悪化の問題を解決すると共に、その優れた熱伝導率を、製造直後から中長期的に備えたフェノールフォームを、有利に製造することの出来る樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明にあっては、かくの如き課題を解決するために、レゾール型フェノール樹脂を必須成分として含有すると共に、発泡剤として、塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素を含有し、酸硬化剤にて発泡硬化せしめられる組成物であって、更に、赤リン粉末を分散、含有していることを特徴とするフェノールフォーム製造用樹脂組成物を、その要旨とするものである。
【0009】
なお、そこにおいて、発泡剤としては、イソペンタンとイソプロピルクロリドとの混合物が、好適に用いられることとなる。
【0010】
また、本発明にあっては、上記した課題を解決するために、レゾール型フェノール樹脂を必須成分として含有すると共に、発泡剤として、ハロゲン化アルケンを含有し、酸硬化剤にて発泡硬化せしめられる組成物であって、更に、赤リン粉末を分散、含有していることを特徴とするフェノールフォーム製造用樹脂組成物をも、その要旨とする。
【0011】
なお、本発明に従う上記したフェノールフォーム製造用樹脂組成物の好ましい態様の一つによれば、赤リン粉末は、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、0.3~30質量部の割合において、含有せしめられている。
【0012】
また、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物の他の望ましい態様の一つによれば、赤リン粉末は、表面コーティング層を有しており、これによって、本発明に従う優れた特性を有するフェノールフォームが有利に形成され得るのである。
【0013】
さらに、本発明にあっては、そのような表面コーティング層は、有利には、金属の酸化物乃至は水酸化物及び/又は熱硬化性樹脂により形成されている。
【0014】
更にまた、本発明の他の望ましい態様によれば、前記酸硬化剤として、パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸とが、併用されることとなる。
【0015】
加えて、前記レゾール型フェノール樹脂は、25℃において、2000mPa・s以上の粘度を有するように調整されていることが、好ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物にあっては、発泡剤として、塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素、或いはハロゲン化アルケンが用いられているところから、環境負荷の低い、環境に優しいフェノールフォームが有利に形成され得ることとなると共に、そのような地球温暖化係数の低い特定の発泡剤に対して、特定の難燃剤として、赤リン粉末を組み合わせて、用いていることにより、形成されるフェノールフォームに対して、より一層高度な難燃性に加えて、難燃剤の使用によって必然的に影響を受けることとなる熱伝導率の悪化を、効果的に抑制乃至は阻止せしめ得ることとなったのである。
【0017】
すなわち、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物においては、地球温暖化係数の低い特定の発泡剤と共に、難燃剤として、赤リン粉末が組み合わされて、配合せしめられているところから、そのような樹脂組成物を発泡硬化せしめて得られるフェノールフォームの製造直後の熱伝導率を、効果的に低く維持することが出来るようになったのであり、しかも、そのような熱伝導率は、中長期的な時間の経過後においても、有利に低く維持され得ることとなるのであって、以て、優れた断熱性能を長期安定的に有する有用なフェノールフォームが提供され得たのである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ところで、かくの如き本発明において使用されるレゾール型フェノール樹脂は、有利には、フェノール類の1モルに対して、アルデヒド類を、1.0~3.0モル程度の割合において、好ましくは1.5~2.5モル程度の割合において用い、それらを、アルカリ性の反応触媒の存在下において、例えば50℃~還流温度の範囲内の温度下において反応させた後、中和処理を実施し、次いで減圧下で、所定の特性値、例えば25℃での粘度が2000mPa・s以上であり、且つ含有水分量が3~20%、好ましくは5~18%となるように、脱水濃縮を行い、そして冷却し、しかる後に、必要に応じて、所定の添加物を従来と同様に加えて、製造されることが望ましい。
【0019】
勿論、このようなレゾール型フェノール樹脂の他、本発明においては、酸硬化剤によって硬化せしめられ得る、公知の各種のレゾール型フェノール樹脂も、適宜に採用され得るところであり、また適当な変性剤によって変性されたレゾール型フェノール樹脂をも、同様に用いることが出来る。
【0020】
そして、このようにして得られるレゾール型フェノール樹脂が、25℃において、2000mPa・s以上、好ましくは2000~100000mPa・s、より好ましくは3000~80000mPa・s、更に好ましくは4000~30000mPa・sの粘度を有していることにより、目的とする樹脂組成物の調製、中でも赤リン粉末の分散、含有をより効果的に実現せしめ、更にはその分散状態の安定性を有利に高め得ることとなるのであり、以て、難燃性並びに熱伝導率のより一層の向上を図り得ることとなるのである。なお、かかるレゾール型フェノール樹脂の粘度が2000mPa・s未満となると、赤リン粉末が沈降して局在化し、形成されるフェノールフォームにムラが生じて、充分な難燃性、熱伝導率が得られず、また逆に、100000mPa・sを超えるようになると、粘度が高くなり過ぎて、目的とするフェノールフォームを得ることが困難となる問題を惹起する。
【0021】
なお、かかる本発明方法で用いられるレゾール型フェノール樹脂の一方の原料となるフェノール類としては、フェノール、o‐クレゾール、m‐クレゾール、p‐クレゾール、p‐tert‐ブチルフェノール、m‐キシレノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA等を挙げることが出来、また、このフェノール類と組み合わせて用いられる、他方の原料であるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ポリオキシメチレン、グリオキザール等を挙げることが出来る。更に、反応触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、アンモニア等を挙げることが出来る。勿論、これらフェノール類、アルデヒド類及び反応触媒は、何れも、上例のものに限定されるものでは決してなく、公知の各種のものが、適宜に用いられ得るものであり、また、それらは、それぞれ単独において、或いは2種以上を組み合わせて、用いられ得るものである。
【0022】
そして、本発明にあっては、上述の如きレゾール型フェノール樹脂と共に、発泡剤として、地球温暖化係数の低い、塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素や、ハロゲン化アルケンが用いられて、フェノールフォーム製造用樹脂組成物が、構成されることとなる。
【0023】
そこにおいて、発泡剤としての塩素化脂肪族炭化水素は、一般に、炭素数が2~5個程度の直鎖状、分岐鎖状の脂肪族炭化水素の塩素化物が好ましく用いられ、その塩素原子の結合数としては、一般に、1~4個程度である。このような塩素化脂肪族炭化水素の具体例としては、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等を挙げることが出来る。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよいが、それらの中でも、プロピルクロリドやイソプロピルクロリド等のクロロプロパン類が好ましく、特にイソプロピルクロリドが好適に用いられることとなる。
【0024】
また、発泡剤としての脂肪族炭化水素には、従来から公知の、炭素数が3~7個程度の炭化水素系発泡剤が、適宜に選択されて用いられ得るところであり、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、シクロペンタン等を挙げることが出来、それらの中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いられることとなる。
【0025】
さらに、本発明にあっては、上記した塩素化脂肪族炭化水素と脂肪族炭化水素とを組み合わせてなる混合発泡剤も好適に用いられ、その混合比率としては、質量比において、脂肪族炭化水素:塩素化脂肪族炭化水素=25:75~5:95の範囲内において、有利に採用されることとなる。なお、そのような2種類の発泡剤の組み合わせとしては、イソペンタンとイソプロピルクロリドとの組み合わせが推奨され、これによって、本発明の目的がより一層有利に達成され得るのである。
【0026】
加えて、本発明にあっては、発泡剤として、ハロゲン化アルケンも有利に用いられ、それによって、得られるフェノールフォームの特性、特に難燃性のより一層の向上に寄与せしめることが出来る。このような特性を有するハロゲン化アルケンは、ハロゲン化オレフィンやハロゲン化ハイドロオレフィンと称されるものをも含み、一般的に、ハロゲンとして塩素やフッ素を結合、含有せしめてなる、炭素数が2~6個程度の不飽和炭化水素誘導体であって、例えば、3~6個のフッ素置換基を有するプロペン、ブテン、ペンテン及びヘキセンであり、また、他の置換基、例えば塩素も置換、含有することの出来る、テトラフルオロプロペン、フルオロクロロプロペン、トリフルオロモノクロロプロペン、ペンタフルオロプロペン、フルオロクロロブテン、ヘキサフルオロブテンや、これらの2種以上の混合物を挙げることが出来る。
【0027】
具体的には、かかるハロゲン化アルケン(ハロゲン化オレフィン)の1つであるハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン異性体(HFO1354)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1345)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等を挙げることが出来る。また、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)、2-クロロ-2,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)等を挙げることが出来る。
【0028】
そして、上述の如き各発泡剤は、その合計量において、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、一般に1~30質量部、好ましくは5~25質量部の割合において用いられることとなる。
【0029】
なお、本発明で使用される発泡剤は、上述の如き塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素、或いはハロゲン化アルケンを含むことを特徴としているが、本発明の目的に悪影響をもたらさない限りにおいて、例えば、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン等のフッ素化炭化水素(代替フロン)、トリクロロモノフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン等の塩フッ素化炭化水素、水、イソプロピルエーテル等のエーテル化合物、窒素、アルゴン、炭酸ガス等の気体、空気等を、適宜の割合において含有することも可能である。
【0030】
また、本発明において用いられる酸硬化剤は、上述せる如きレゾール型フェノール樹脂の硬化反応を促進するための成分(硬化触媒)であって、従来から公知の酸硬化剤が、適宜に選択されて、用いられることとなる。そして、そのような酸硬化剤としては、例えばベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウフッ化水素酸等の無機酸等が挙げられ、これらは、単独で用いられてもよく、また2種以上が組み合わされて用いられても、何等、差し支えない。なお、これら例示の酸硬化剤の中でも、フェノールスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸にあっては、フェノールフォームの製造に際して、適度な硬化速度を実現することが出来るために、レゾール型フェノール樹脂の硬化と発泡剤による発泡とのバランスがより一層良好となり、以て、望ましい発泡構造を実現することとなるところから、特に好適に用いられることとなるのである。中でも、本発明にあっては、パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との併用が推奨される。それらの使用割合は、質量基準において、パラトルエンスルホン酸の使用量が、キシレンスルホン酸の使用量より多いことが望ましい。具体的には、質量比でパラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸が51:49~95:5の範囲内において、有利に採用されることとなる。
【0031】
さらに、そのような酸硬化剤の使用量としては、その種類や、前記レゾール型フェノール樹脂との混合時における温度条件等に応じて、適宜に設定されるものの、本発明においては、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、一般に1~50質量部、好ましくは5~30質量部、特に好ましくは7~25質量部とすることが望ましい。その使用量が1質量部未満では、硬化が進行せず、逆に50質量部を超えるようになると、硬化速度が速くなり過ぎて、目的とするフェノールフォームが出来ない問題を惹起する。
【0032】
そして、本発明に従って、上述の如き必須の成分を含有せしめてなるフェノールフォーム製造用樹脂組成物には、それから形成されるフェノールフォームに優れた難燃性を付与しつつ、熱伝導率の上昇を抑制乃至は阻止し、更に、中長期間に亘って低い熱伝導率が確保され得るように、難燃剤として、赤リン粉末が配合されて、分散、含有せしめられることとなるのである。なお、そこで用いられる赤リン粉末としては、公知のものが、何れも対象とされ、通常、市販品の中から適宜に選択して用いられることとなる。例えば、燐化学工業株式会社製の「NOVARED」,「NOVAEXCEL」、日本化学工業株式会社製の「HISHIGUARD」、クラリアント社製の「EXOLIT」等の名称にて販売されているものを挙げることが出来る。中でも、そのような赤リン粉末は、取扱い性乃至は作業性の向上と共に、樹脂組成物中への分散性を高め、その添加効果を有利に向上せしめる上において、その表面にコーティング層が形成されているものであることが望ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属の酸化物や水酸化物からなる無機化合物、及び/又はフェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂による被覆層を粒子表面に形成してなる赤リン粉末が、有利に用いられることとなる。なお、かかる被覆層は、一般に、赤リンの100質量部に対して、1~30質量部程度の割合において、形成されている。
【0033】
また、このような赤リン粉末の使用量としては、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、一般に0.3~30質量部、好ましくは1~25質量部、更に好ましくは2~20質量部の範囲内において決定される。この赤リン粉末添加量が少なくなり過ぎると、フェノールフォームに対する難燃性の付与効果を充分に奏し難くなるからであり、また、その添加量が多くなり過ぎると、反って熱伝導率を悪化せしめたり、それが添加された組成物の粘度を上昇させ、撹拌不良等の問題を惹起するようなことに加えて、中長期における低い熱伝導率の維持が困難となる等の問題を惹起するようになる。
【0034】
さらに、かかる赤リン粉末の平均粒径は、一般に1~100μm程度、好ましくは5~50μm程度である。この赤リン粉末の粒径が小さくなり過ぎると、その取扱いや樹脂組成物中への均一な分散が困難となる等の問題を惹起し、またその粒径が大きくなり過ぎても、樹脂組成物中における均一な分散効果を得ることが難しく、そのために本発明の目的を充分に達成し得ない問題を惹起する。
【0035】
ところで、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物には、上述の如きレゾール型フェノール樹脂と共に、発泡剤としての、塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素、或いはハロゲン化アルケンや、酸硬化剤が、必須の成分として添加、配合せしめられるものであるが、その他、必要に応じて、従来から公知の整泡剤、無機フィラー、可塑剤、尿素等を含有せしめることも可能である。
【0036】
ここで、かかる必要に応じて添加、含有せしめられる添加剤のうち、整泡剤は、樹脂組成物における混合成分の混合や乳化の補助、発生ガスの分散、フォームセル膜の安定化等を図るために配合せしめられるものである。そして、そのような整泡剤としては、特に限定されるものではなく、当該技術分野で従来から使用されてきた各種の整泡剤が、何れも選択使用されることとなるが、中でも、ポリシロキサン系化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物等の非イオン系界面活性剤が、特に好ましく用いられる。なお、これらの整泡剤は、単独で用いられる他、その2種以上を組み合わせて、用いることも出来る。また、その使用量についても、特に制限は無いが、一般的には、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、0.5~10質量部の範囲内において、用いられることとなる。
【0037】
その他、無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩を挙げることが出来る。なお、これらの無機フィラーは、単独で用いられる他、その内の2種以上を組み合わせて用いることも可能である。勿論、このような無機フィラーの使用により、難燃性や耐火性の向上が図られ得ることとなるが、その使用量は、本発明の目的を阻害しない使用量の範囲内において、適宜に決定されるものであることは、言うまでもないところである。
【0038】
また、可塑剤は、フェノールフォームの気泡壁に柔軟性を付与し、断熱性能の経時的な劣化を抑制するために、有利に添加されるものであって、難燃剤としての赤リン粉末の採用と同様に、本発明の目的に有利に寄与し得るものである。この可塑剤としては、特に制限はなく、従来からフェノールフォームの製造に用いられている公知の可塑剤、例えば、リン酸トリフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル等を用いることが出来、更にポリエステルポリオールの使用も有効である。特に、ポリエステルポリオールは、親水性且つ界面活性に優れるエステル結合及びヒドロキシル基を含む構造を有しているところから、親水性のフェノール樹脂液と相溶性がよく、フェノール樹脂と均一に混合することが出来る。また、このポリエステルポリオールを用いることにより、気泡の偏在を回避し、発泡体全体に気泡を均一に分布させ、品質的にも均質なフェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)が生成し易くなり、好ましい可塑剤ということが出来る。なお、このような可塑剤は、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、通常、0.1~20質量部、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1~12質量部の範囲において用いられ、これによって、得られるフェノールフォームの他の性能を損なうことなく、気泡壁に柔軟性を付与する効果が良好に発揮され、本発明の目的が、より一層良好に達成され得ることとなる。
【0039】
さらに、本発明に従って構成されるフェノールフォーム製造用樹脂組成物には、尿素が好適に添加、含有せしめられることとなる。このような尿素の含有によって、得られるフェノールフォームの初期熱伝導率を効果的に低下せしめることが出来、更には強度、特に低脆性のフェノールフォームを得ることが出来ると共に、その中長期に亘る熱伝導率を低く維持することにも有利に寄与し、以て、優れた断熱性能を長期安定的に有するフェノールフォームを得ることが容易となるのである。
【0040】
ところで、上述の如き配合成分を含有する本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物は、例えば、前述のレゾール型フェノール樹脂に、前記した赤リン粉末を加えて混合せしめ、更に必要に応じて、前記の無機フィラー、整泡剤、更には可塑剤、尿素等を加えて混合し、そしてその得られた混合物に、発泡剤として、前記した塩素化脂肪族炭化水素及び/又は脂肪族炭化水素、或いはハロゲン化アルケンを添加した後、これを、酸硬化剤と共に、ミキサに供給して、撹拌することにより、調製することが可能である。
【0041】
また、そのようにして調製されたフェノールフォーム製造用樹脂組成物を用いて、目的とするフェノールフォームを形成させる方法としては、従来から公知の各種の手法が採用され得、例えば、(1)エンドレスコンベアベルト上に樹脂組成物を流出させて、発泡、硬化させる成形方法、(2)スポット的に充填して部分的に発泡、硬化させる方法、(3)モールド内に充填して加圧状態で発泡、硬化させる方法、(4)所定の大きな空間内に充填して、発泡、硬化させることにより、発泡体ブロックを形成する方法、(5)空洞中に圧入しながら充填発泡させる方法を挙げることが出来る。
【0042】
そして、それら成形方法の中でも、上記(1)の成形方法によれば、前述の如きフェノールフォーム製造用樹脂組成物は、連続的に移動するキャリア上に吐出され、この吐出物が加熱ゾーンを経由して発泡せしめられると共に成形されて、所望のフェノールフォームが作製されるようにする方法が、採用される。具体的には、前記フェノールフォーム製造用樹脂組成物を、コンベアベルト上の面材の上に吐出した後、かかるコンベアベルト上の樹脂材料の上面に面材を載せて、硬化炉に移動せしめ、そして硬化炉の中では、上から他のコンベアベルトで押さえて、かかる樹脂材料を所定の厚さに調整して、60~100℃程度、2~15分間程度の条件下で発泡硬化せしめ、その後、硬化炉から取り出された発泡体を所定の長さに切断することにより、目的とする形状のフェノールフォームが作製されるのである。
【0043】
なお、ここで用いられる面材としては、特に制限されることはなく、一般的には天然繊維、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維等の合成繊維、ガラス繊維等の無機繊維等の不織布、紙類、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔等が用いられるものであるが、通常、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、構造用パネル、パーティクルボード、ハードボード、木質系セメント板、フレキシブル板、パーライト板、珪酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、パルプセメント板、シージングボード、ミディアムデンシティーファイバーボード、石膏ボード、ラスシート、火山性ガラス質複合板、天然石、煉瓦、タイル、ガラス成形体、軽量気泡コンクリート成形体、セメントモルタル成形体、ガラス繊維補強セメント成形体等の水硬化性セメント水和物をバインダー成分とする成形体が、好適に用いられることとなる。そして、この面材は、フェノールフォームの片面に設けてもよく、また両面に設けても、何等差支えない。また、両面に設けられる場合において、面材は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。更に、後から接着剤を用いて、面材を貼り合わせて形成されるものであっても、何等差支えない。
【0044】
また、かくの如くして得られるフェノールフォームは、初期熱伝導率が、一般に0.0200W/m・K(20℃)以下、好ましくは0.0195W/m・K(20℃)以下となるものであり、更に長期安定性を確認するための促進試験による熱伝導率が、一般に0.0250W/m・K(20℃)以下、好ましくは0.0210W/m・K(20℃)以下の優れた特性を有するものであり、加えて、独立気泡率が、一般に80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上であり、これによって、優れた難燃性乃至は防火性と共に、優れた熱伝導率特性を有利に発揮するものである。
【0045】
さらに、本発明に従って得られるフェノールフォームにおいて、その密度は、10kg/m3 ~150kg/m3 、好ましくは15kg/m3 ~100kg/m3 であり、より好ましくは15kg/m3 ~70kg/m3 であり、更に好ましくは20kg/m3 ~50kg/m3 であり、最も好ましくは20kg/m3 ~40kg/m3 である。密度が10kg/m3 よりも低いフェノールフォームは、強度が低く、運搬又は施工時にフォーム(発泡体)が破損する恐れがある。また、密度が低いと、フォーム中の気泡を区画する気泡膜が薄くなる傾向がある。そして、その気泡膜が薄いと、フォーム(発泡体)中の発泡剤が空気と置換し易くなったり、発泡時に気泡膜が破れ易くなることから、高い独立気泡構造を得ることが困難となり、長期の断熱性能が低下する傾向がある。その一方で、密度が150kg/m3 を超えると、フェノール樹脂を始めとする固形成分由来の固体の熱伝導が大きくなるために、フェノールフォームの断熱性能が低下する傾向がある。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0047】
-実施例1-
還流器、温度計及び撹拌機を備えた三つ口反応フラスコ内に、フェノール1600部、47%ホルマリン2282部及び50%水酸化ナトリウム水溶液41.6部を仕込み、80℃の温度下において70分間反応させた。次いで、40℃に冷却した後、50%パラトルエンスルホン酸水溶液で中和せしめ、その後、減圧・加熱下において、水分率:10%まで脱水濃縮することにより、液状のレゾール型フェノール樹脂を得た。この得られたフェノール樹脂は、粘度:10000mPa・s/25℃、数平均分子量:380、遊離フェノール:4.0%の特性を有するものであった。
【0048】
次いで、その得られた液状のレゾール型フェノール樹脂の100部に、整泡剤として、ひまし油エチレンオキサイド付加物(付加モル数22)の3部、及び添加剤として、尿素の5部を加えて、混合し、均一なフェノール樹脂混合物を得た。
【0049】
更にその後、かかる得られたフェノール樹脂混合物の108部に対して、添加剤(難燃剤)として赤リン粉末(燐化学工業株式会社製ノーバエクセル140、平均粒径:25~35μm、表面コーティング処理)の1.0部と、発泡剤として、イソプロピルクロリド:イソペンタン=85:15の質量割合からなる混合物の9.0部と、硬化剤として、パラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸=2:1(質量比)の混合物の16部とを、撹拌、混合せしめることにより、フェノールフォーム製造用樹脂組成物である発泡性フェノール樹脂成形材料を調製した。
【0050】
そして、かくの如くして調製された発泡性フェノール樹脂成形材料を用い、それを、予め70~75℃に加熱されてなる、縦300mm、横300mm、厚み50mmの型枠内に注入した後、かかる型枠を70~75℃の乾燥機に収容して、10分間発泡硬化せしめ、更に70℃の温度で12時間、加熱炉内で加熱することにより、後硬化させて、フェノールフォーム(フェノール樹脂発泡体)を作製した。
【0051】
-実施例2~8-
実施例1において、赤リン粉末の添加量を、下記表1に示す割合としたこと以外は、実施例1と同様にして、各種のフェノール樹脂発泡体を、それぞれ、作製した。
【0052】
-実施例9-
実施例4において、発泡剤をハイドロフルオロオレフィン(1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン:HFO-1336mzz、Chemours社製品)に変更し、その添加量を17.5部としたこと以外は、実施例4と同様にして、フェノール樹脂発泡体を作製した。
【0053】
-比較例1-
実施例1において、赤リン粉末を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体を作製した。
【0054】
-比較例2-
実施例4において、赤リン粉末を、無機フィラーである水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製B1403)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、フェノール樹脂発泡体を作製した。
【0055】
-比較例3-
実施例4において、赤リン粉末を、縮合リン酸エステル系難燃剤であるアデカスタブPFR(株式会社ADEKA製品)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、フェノール樹脂発泡体を、作製した。
【0056】
次いで、かくして得られた各種のフェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)を用いて、その密度、初期熱伝導率、熱伝導率の長期安定性、独立気泡率、圧縮強さ、及び難燃性評価試験(総発熱量、最大発熱速度、試験後の状況)について、それぞれ、以下の方法に従って、測定乃至は評価して、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1、及び表2に示した。
【0057】
(1)密度の測定
JIS-A-9511(2003)における「5.6密度」の記載に従って、それぞれの発泡体の密度を測定した。
【0058】
(2)初期熱伝導率の測定
300mm角のフェノール樹脂発泡体サンプルを用い、それを200mm角にカット(厚みは50mm)した後、低温板10℃、高温板30℃に設定して、JIS-A-1412-2(1999)に規定の「熱流計法」に従い、熱伝導率測定装置:HC-074 304(英弘精機株式会社製)を使用して、測定する。なお、ここでは、フェノール樹脂発泡体サンプルを、70℃の雰囲気下で4日間放置した後の熱伝導率を、初期熱伝導率として、測定した。
【0059】
(3)熱伝導率の長期安定性の評価
ISO 11561 Annex Bに準拠し、建築物において発生し得る最高温度を70℃として、フェノール樹脂発泡体サンプルを、70℃の雰囲気下で、25週間放置した後の熱伝導率を測定する方法を、熱伝導率の長期安定性を確認するための促進試験として採用し、その得られた熱伝導率に基づいて長期安定性を評価した。
【0060】
(4)独立気泡率の測定
ASTM-D2856によって、フェノール樹脂発泡体サンプルの独立気泡率を測定した。
【0061】
(5)圧縮強さの測定
JIS-A-9511(2003)における「5.9圧縮強さ」により、フェノール樹脂発泡体サンプルの圧縮強さを測定した。
【0062】
(6)難燃性評価試験
各フェノール樹脂発泡体から、それぞれ、縦×横のサイズが99±1mmとなるように切り出して、それぞれの試験体を準備した。なお、この試験体の厚みは50mmとした。次いで、それら試験体について、コーンカロリーメーター(株式会社東洋精機製作所製CONE III)を用いて、(財)日本建築綜合試験所編「防耐火性能試験・評価業務方法書 4.12.1発熱性試験・評価方法」に準拠して、加熱時間5分における総発熱量及び最大発熱速度を、それぞれ測定した。測定結果としては、それぞれの発泡体から切り出した試験体の3個について、得られた測定値の平均値を採用した。また、評価試験後の試験体について観察して、裏面まで貫通する亀裂や穴の有無を調べた。
【0063】
【0064】
【0065】
かかる表1及び表2の結果から明らかなように、実施例1~9において形成されたフェノール樹脂発泡体は、何れも、初期熱伝導率が0.0192W/m・K以下であり、加えて、長期安定性を確認するための促進試験で得られた熱伝導率が0.0250W/m・K以下のものであって、優れた初期熱伝導率と共に、中長期に亘る熱伝導率の変化も低く維持し得るという格別な特性を有するものであり、しかも、難燃性評価試験においても、総発熱量や最大発熱速度が低いものであるところから、難燃性乃至は耐火性に優れた発泡体であることを認めた。
【0066】
これに対して、比較例1において得られたフェノール樹脂発泡体は、難燃剤としての赤リン粉末が添加、含有せしめられていないところから、有効な難燃性を付与することが出来ず、燃焼され易いものであることは、明らかであり、また無機フィラーとしての水酸化アルミニウムを添加、含有せしめてなる比較例2のフェノール樹脂発泡体や、縮合リン酸エステル系難燃剤が添加、含有せしめられてなる比較例3のフェノール樹脂発泡体にあっては、何れも、初期熱伝導率が高く、且つ長期安定性を確認するための促進試験で得られた熱伝導率が大きく変化して、中長期に亘る断熱性能が低下していることが認められた。なお、比較例2のフェノール樹脂発泡体にあっては、難燃性においても劣るものであることが、認められた。
【0067】
-赤リン粉末分散安定性試験-
実施例1と同様にして得られたレゾール型フェノール樹脂を用い、これに、水を適宜添加して、下記表3に示される粘度を有する各種のレゾール型フェノール樹脂を作製した。ここで、各レゾール型フェノール樹脂の粘度は、JIS-K-7117-1に従い、ブルックフィールド形回転粘度計を用いて、試験温度:25℃で測定した。次いで、それらレゾール型フェノール樹脂の各々の100部と赤リン粉末10部とを混合せしめた後、容量110ml、胴径40mmのガラス製スクリュー管瓶に収容して、1週間室温で静置し、かかるスクリュー管瓶に生じる沈殿物の有無及び沈殿層の高さを評価した。なお、その評価に際しては、沈殿物を観察できない場合を○、沈殿層の高さが5mm以下の場合を△、沈殿層の高さが5mmを超えた場合を×とし、その結果を、下記表3に示した。
【0068】
【0069】
かかる表3に示される如く、レゾール型フェノール樹脂の粘度が2000mPa・s(25℃)である場合にあっては、赤リン粉末との混合によって、沈殿層の発生が認められる一方、3000mPa・s(25℃)以上の粘度を有するレゾール型フェノール樹脂にあっては、赤リン粉末を混合せしめても、その沈殿物の発生は認められず、従って沈殿層の存在も確認されなかった。