(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 25/10 20230101AFI20230602BHJP
【FI】
H04N25/10
(21)【出願番号】P 2020541255
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034706
(87)【国際公開番号】W WO2020050295
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】舛田 勇二
(72)【発明者】
【氏名】関野 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】吉川 拓伸
(72)【発明者】
【氏名】べレンズ デイビッド クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】イスナルディ マイケル アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】チャン ユーチォン
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-078202(JP,A)
【文献】特開2008-259676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/10
H04N 23/12
A61B 5/00
G01J 3/51
H04N 1/46-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像部と、
前記被写体に向けて発光する発光部と、
前記発光部を発光させながら前記撮像部に前記被写体の第1画像を撮像させるとともに、前記発光部を発光させずに前記撮像部に前記被写体の第2画像を撮像させる制御部と、
前記第1画像の色情報と前記第2画像の前記色情報との差分値に基づいて前記被写体の色を推定する推定部と、
前記撮像部と前記発光部の位置関係に基づいて、前記第1画像および前記第2画像の中で前記発光部の光が前記被写体において正反射する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間した測定領域を特定する特定部と、
を備え
、
前記推定部は、前記第1画像および前記第2画像を構成する画素群のうち、前記測定領域に含まれる参照画素の前記色情報について前記差分値を算出する、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
前記被写体に対する前記撮像部の傾きを検出するセンサ部をさらに備え、
前記特定部は、前記撮像部と前記発光部の位置関係および前記傾きの変化量に基づいて、前記反射領域と前記測定領域の位置関係を維持しながら前記測定領域の位置を補正する
ことを特徴とする請求項
1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記センサ部は、ジャイロスコープであって、
前記特定部は、前記被写体が前記ジャイロスコープのヨー軸の軸方向に位置するときに、前記ジャイロスコープのロール軸およびピッチ軸を中心とした回転角度に基づいて前記傾きの前記変化量を算出する
ことを特徴とする請求項
2に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被写体が前記撮像部の合焦距離に位置するときに、前記発光部の発光を切換制御しながら前記撮像部に前記第1画像および前記第2画像を連続して撮像させる
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記撮像部および前記発光部は、操作画面を表示するディスプレイと反対の面にそれぞれ設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項6】
前記撮像部および前記発光部は、操作画面を表示するディスプレイと同一の面にそれぞれ設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項7】
前記ディスプレイは、前記発光部を兼ねる
ことを特徴とする請求項
6に記載の画像解析装置。
【請求項8】
前記制御部は、ホワイトバランス機能を無効化した状態で前記撮像部に前記第1画像および前記第2画像を撮像させる
ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項9】
前記第1画像および前記第2画像は、RGB表色系の前記色情報を含み、
前記推定部は、前記RGB表色系から変換したXYZ表色系の前記色情報に基づいて前記色を推定する
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項10】
前記被写体は、人体表面であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項11】
被写体に向けて発光装置を発光させながら撮像装置に前記被写体の第1画像を撮像させるステップと、
前記発光装置を発光させずに前記撮像装置に前記被写体の第2画像を撮像させるステップと、
前記第1画像の色情報と前記第2画像の前記色情報との差分値に基づいて前記被写体の色を推定するステップと、
前記撮像装置と前記発光装置の位置関係に基づいて、前記第1画像および前記第2画像の中で前記発光装置の光が前記被写体において正反射する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間した測定領域を特定するステップと、
を備え
、
前記推定するステップでは、前記第1画像および前記第2画像を構成する画素群のうち、前記測定領域に含まれる参照画素の前記色情報について前記差分値を算出する、
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項12】
コンピュータに、
被写体に向けて発光装置を発光させながら撮像装置に前記被写体の第1画像を撮像させるステップと、
前記発光装置を発光させずに前記撮像装置に前記被写体の第2画像を撮像させるステップと、
前記第1画像の色情報と前記第2画像の前記色情報との差分値に基づいて前記被写体の色を推定するステップと、
前記撮像装置と前記発光装置の位置関係に基づいて、前記第1画像および前記第2画像の中で前記発光装置の光が前記被写体において正反射する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間した測定領域を特定するステップと、
を実行させ
、
前記推定するステップでは、前記第1画像および前記第2画像を構成する画素群のうち、前記測定領域に含まれる参照画素の前記色情報について前記差分値を算出する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の画像を解析することで被写体の色を測定する画像解析装置、画像解析方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の撮像装置を用いて被写体(例えば人体や物品)を撮像し、撮像画像を解析することで被写体の色を測定する測色装置が知られている。例えば、特許文献1には、色見本(標準色票)および被写体をそれぞれ撮像してRGBデータを取得するとともに、色見本のRGBデータおよび色見本の色彩基準値に基づいて被写体のRGBデータを補正する測色装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、複数の照明条件に応じた基準測色値とデジタルカメラで撮影した画像のRGBデータとの関係を表す複数の色プロファイルを予め作成しておき、被写体の撮像により取得されたRGBデータ、撮像時の照明条件、および当該色プロファイルに基づいて被写体の色を測定する色変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-34064号公報
【文献】特開2015-46142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された測色装置は、被写体の色を測定する際に、色見本だけでなく、光源以外の外部光が被写体に照射することを防止するために遮光部材を用いている。このため、ユーザが当該測色装置を用いて自宅等で色測定を行うことは困難である。
【0006】
また、特許文献2に記載された色変換装置は、被写体の色を測定する際に色見本は不要であるが、複数の照明条件に対応する色プロファイルを予め用意し、最適な色プロファイルを選択する必要がある。しかし、ユーザが測定を行う場所における外部光は様々であるため、最適な色プロファイルを選択することは困難である。すなわち、外部光の影響により測定の精度が低下してしまう場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、色見本を用いる必要がなく、かつ、外部光の影響を除去して被写体の色を簡単かつ高精度に測定できる画像解析装置、画像解析方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの観点によれば、被写体を撮像する撮像部と、前記被写体に向けて発光する発光部と、前記発光部を発光させながら前記撮像部に前記被写体の第1画像を撮像させるとともに、前記発光部を発光させずに前記撮像部に前記被写体の第2画像を撮像させる制御部と、前記第1画像の色情報と前記第2画像の前記色情報との差分値に基づいて前記被写体の色を推定する推定部と、前記撮像部と前記発光部の位置関係に基づいて、前記第1画像および前記第2画像の中で前記発光部の光が前記被写体において正反射する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間した測定領域を特定する特定部と、を備え、前記推定部は、前記第1画像および前記第2画像を構成する画素群のうち、前記測定領域に含まれる参照画素の前記色情報について前記差分値を算出する、ことを特徴とする画像解析装置が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、被写体に向けて発光装置を発光させながら撮像装置に前記被写体の第1画像を撮像させるステップと、前記発光装置を発光させずに前記撮像装置に前記被写体の第2画像を撮像させるステップと、前記第1画像の色情報と前記第2画像の前記色情報との差分値に基づいて前記被写体の色を推定するステップと、前記撮像装置と前記発光装置の位置関係に基づいて、前記第1画像および前記第2画像の中で前記発光装置の光が前記被写体において正反射する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間した測定領域を特定するステップと、を備え、前記推定するステップでは、前記第1画像および前記第2画像を構成する画素群のうち、前記測定領域に含まれる参照画素の前記色情報について前記差分値を算出する、ことを特徴とする画像解析方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の観点によれば、被写体に向けて発光装置を発光させながら撮像装置に前記被写体の第1画像を撮像させるステップと、前記発光装置を発光させずに前記撮像装置に前記被写体の第2画像を撮像させるステップと、前記第1画像の色情報と前記第2画像の前記色情報との差分値に基づいて前記被写体の色を推定するステップと、前記撮像装置と前記発光装置の位置関係に基づいて、前記第1画像および前記第2画像の中で前記発光装置の光が前記被写体において正反射する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間した測定領域を特定するステップと、を実行させ、前記推定するステップでは、前記第1画像および前記第2画像を構成する画素群のうち、前記測定領域に含まれる参照画素の前記色情報について前記差分値を算出する、ことを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、色見本を用いることなく、外部光の影響を除去して被写体の色を簡単かつ高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る画像解析装置の測定中の状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る画像解析装置の正面図である。
【
図3】第1実施形態に係る画像解析装置の背面図である。
【
図4】第1実施形態に係る画像解析装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る画像解析装置の機能ブロック図である。
【
図6】第1実施形態に係る被写体における発光部の照明光の反射領域と測定領域の位置関係を説明する図である。
【
図7】第1実施形態に係る画像解析装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態に係る画像解析装置の測定開始時の状態を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る撮像処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態に係る高周波数成分のエネルギーの変化を示すグラフである。
【
図11】第2実施形態に係る画像解析装置の機能ブロック図である。
【
図12】第2実施形態に係る画像解析装置の姿勢状態に応じた測定領域の補正を説明する図である。
【
図13】第2実施形態に係る画像解析装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施形態に係る測定領域の補正処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】変形実施形態に係る画像解析装置の測定中の状態を示す図である。
【
図16】変形実施形態に係る画像解析装置に表示される操作画面の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る画像解析装置100の測定時の状態を示す図である。
図2は、画像解析装置100の正面図であり、
図3は、画像解析装置100の背面図である。画像解析装置100は、例えばスマートフォンやタブレットコンピュータなどの携帯情報端末であり得る。以下、画像解析装置100の一例としてスマートフォンを例に挙げて説明する。
【0014】
画像解析装置100には、正面側にタッチパネル(ディスプレイ)101が設けられている。また、画像解析装置100には、背面側の上部に撮像部102と、発光部であるLED103とが設けられている。このように、本実施形態では、撮像部102およびLED103は、操作画面を表示するタッチパネル101と反対の面にそれぞれ設けられる。撮像部102は、画像解析装置100の中心軸(Y軸)から距離W1の位置に設けられ、LED103は、中心軸から距離W2(W2<W1)の位置に設けられている(
図3参照)。
【0015】
また、画像解析装置100の内部には、被写体の色を測定するためのアプリケーションプログラム(以下、「測定アプリ」という。)が予めインストールされている。測定アプリは図示されていないネットワークからダウンロードされてもよく、メモリカードなどの記録媒体やパーソナルコンピュータを介して画像解析装置100に供給されてもよい。なお、本実施形態における被写体はユーザの頬であり、画像解析装置100は頬の肌色を測定するものとする(
図1参照)。
【0016】
タッチパネル101には測定アプリのアイコンが表示され(図示省略)、ユーザがアイコンに触れることにより測定アプリが起動するものとする(
図2参照)。ユーザは、画像解析装置100を把持し、撮像部102を被写体(頬)に向けながら、被写体に対して近接または離隔させると、画像解析装置100は合焦した画像を自動的に撮像する。画像解析装置100は撮像された画像を解析し、その解析結果をタッチパネル101に表示することができる。
【0017】
図4は、本実施形態に係る画像解析装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。画像解析装置100は、撮像部102、LED103、信号処理回路204、タイミング発生回路205、レンズ駆動回路206、スピーカ208、タッチセンサ209、座標検出回路210を備えている。さらに、画像解析装置100は、ディスプレイ211、ディスプレイコントローラ212、フレームメモリ213、CPU214、RAM215、ROM216、ストレージ217、ジャイロスコープ218、無線通信モジュール219を備えている。これらのデバイスは、バスを介して接続されている。
【0018】
撮像部102は、光学系201、撮像素子202、A/D変換器203を備える。光学系201は、光学フィルタ、固定レンズ、フォーカスレンズを含み、被写体(撮像部位)からの光を撮像素子202の撮像面に結像させ、被写体像を形成する。撮像素子202は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、2次元配列された複数の画素、色フィルタ、マイクロレンズを備える。複数の画素は、撮像用の画素、焦点検出用の画素を含み得る。また、撮像素子202は、電荷蓄積時間を制御する電子シャッタ機能を有している。複数の画素は、光学系201からの入射光に基づく画素信号をそれぞれ出力する。
【0019】
A/D(Analog/Digital)変換器203は、比較回路、ラッチ回路などから構成され、撮像素子202からのアナログの画素信号をデジタルの画像データに変換する。A/D変換器203は、撮像素子202内に設けられてもよい。撮像部102は、静止画像の他、所定のフレームレートの動画像を出力することができる。フレームレートは、例えば1/4秒、1/30秒、1/60秒などの任意の値であり得る。
【0020】
信号処理回路204は、数値演算回路を含み、A/D変換器203からの画像データに対して、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、画素補間、輪郭強調、階調変換、ノイズリダクション、圧縮などのデジタル信号処理を行う。レンズ駆動回路206は、アクチュエータなどを備え、光学系201のフォーカスレンズを駆動し、合焦距離を調節する。タイミング発生回路205は、クロック信号、同期信号などのタイミング信号を撮像素子202、A/D変換器203に出力する。
【0021】
LED(Light Emitting Diode)103は、光学系201の近傍に設けられた光源である。LED103は、撮像に適した照度を得るために、撮像部位に向けて光を照射する照明部として使用される。LED103は、光色の異なる複数のLED103から構成されてもよく、各LED103の発光強度を調整することにより、撮像部位に最適な色温度、彩度の光を発することができる。スピーカ208は、圧電式の振動ユニットを備え、電流駆動回路によって駆動される。スピーカ208は、音楽、メッセージ、効果音などの音声信号を出力し、撮像が終了したことをユーザに通知するための通知部として使用される。
【0022】
タッチセンサ209は、透明なマトリクス状の電極を備えた容量性センサであり、ディスプレイ211上に設けられている。ユーザの指がタッチセンサ209に触れることにより、電極における静電容量が変化する。座標検出回路210は、タッチセンサ209における静電容量の変化を検出し、ユーザの指が接触した位置を算出することができる。タッチセンサ209は、ユーザからの指示を受け付ける操作部として使用される。
【0023】
ディスプレイ211は、例えばTFT(Thin Film Transistor)液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイであり、ディスプレイコントローラ212からの表示信号に応じて、画像、動画、テキスト、アイコンなどの表示を行う。ディスプレイコントローラ212は、ビデオメモリを含むプロセッサであり、ディスプレイ211の表示を制御する。ディスプレイコントローラ212は、CPU214からの表示データを一時記憶するとともに、表示信号を生成し、ディスプレイ211に出力する。タッチセンサ20、ディスプレイ211は一体的に形成され、タッチパネル101を構成する。
【0024】
フレームメモリ213は、複数フレームの画像データを一時的に保持可能であって、信号処理回路204、CPU214による画像処理において使用され得る。例えば、信号処理回路204は、複数フレームの画像データにおいて動きベクトルを検出することにより、手振れ補正、ノイズリダクションを行なってもよい。また、動画撮像において、フレームメモリ213は、時間的に連続する複数フレームの画像データを記憶することができる。なお、RAM215の一部がフレームメモリ213として使用されてもよい。CPU(Central Processing Unit)214は、CPUコア、キャッシュメモリなどを備え、画像解析装置100の各デバイスを統括的に制御する。CPU214は、ROM216、ストレージ217から所定のプログラムを読み出し実行することにより、画像解析装置100の各部の機能を実現する。
【0025】
RAM(Random Access Memory)215は、例えばDRAM(Dynamic RAM)であり、CPU214のワーク領域、プログラムのロード領域などに使用される。ROM(Read Only Memory)216は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)であり、BIOS(Basic Input Output System)、各種設定ファイルなどを格納する。ストレージ217は、例えばフラッシュメモリであり、OS(Operating System)などの基本プログラム、測定アプリなどの各種アプリケーションプログラムを格納する。ストレージ217は、測定アプリによる測定結果、撮像部102による画像、動画などの様々なデータも格納する。
【0026】
ジャイロスコープ218は、圧電振動素子から構成され、画像解析装置100の向きを検出する。画像解析装置100は、さらに、GPS(Global Positioning System)センサ、照度センサ、近接センサ、加速度センサなどを備えていてもよい。
【0027】
無線通信モジュール219は、インターネットなどの通信ネットワークと無線通信を行うためのインタフェースである。無線通信モジュール219はアンテナ(図示省略)を含み、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)などの移動体通信方式、または無線LAN(Local Area Network)などの無線通信方式を用いて通信ネットワークに接続する。無線通信モジュール219は、通信ネットワークを介して外部の機器とデータの送受信を行うことができる。
【0028】
図5は、本実施形態に係る画像解析装置100の機能ブロック図である。画像解析装置100は、制御部301、画像取得部302、測定領域特定部303、および肌色推定部304を有している。各部の機能は、CPU214がROM216あるいはストレージ217に格納された測定アプリケーション300をRAM215に読み出し、実行することにより実現される。
【0029】
制御部301は、撮像部102、LED103、スピーカ208の動作を制御する。制御部301は、オートフォーカス(AF)機能を有しており、撮像部102の合焦距離を調節できる。AF処理において、制御部301は、撮像した画像のコントラストが最大となるように、レンズ駆動回路206を介して光学系201のフォーカスレンズの位置を制御する。制御部301は、コントラスト方式によるAF処理に限らず、撮像面位相差方式によるAF処理を行ってもよい。ただし、本実施形態の制御部301は、測定アプリケーション300を実行する際、オートフォーカス機能を無効化するものとする。
【0030】
また、制御部301は、自動露出(AE)機能を有しており、撮像素子202のISO感度、電子シャッタのスピードを制御する。制御部301は、AF機能、AE機能を有効または無効に設定することができる。さらに、制御部301は、LED103、スピーカ208を制御するとともに、タッチセンサ209を介してユーザからの指示を取得する。
【0031】
また、制御部301は、LED103を発光させながら被写体を撮像した画像データ(以下、「第1画像」という。)と、LED103を発光させずに第1画像と同じ被写体を撮像した画像データ(以下、「第2画像」という。)とを、後述する画像取得部302を介して取得する。制御部301は、被写体が撮像部102の合焦距離に位置するときに、LED103の発光を切換制御しながら撮像部102に第1画像および第2画像を連続して撮像させるものとする。第1画像を撮像する際に撮像素子202に入射される光は、外部光およびLED103による照明光の2つである。これに対し、第2画像を撮像する際に撮像素子202に入射される光は、外部光のみである。
【0032】
画像取得部302は、LED103を発光させながら撮像した複数フレームの画像データ(第1画像)をフレームメモリ213から読み出し、複数フレームの画像データの中から最も鮮明な画像データを取得する。画像取得部302は、画像データから撮像部位の鮮鋭度に基づく周波数成分を抽出し、周波数成分に基づいて画像データの合焦を判定することができる。そして、画像取得部302は、合焦距離において撮像した第1画像に係る画像データをストレージ217に格納する。
【0033】
画像取得部302は、フーリエ変換などの周波数変換を用いて周波数成分を抽出する。周波数変換の結果として得られた周波数スペクトルなどのデータは、RAM215において保持される。周波数変換は、フーリエ変換に限らず、ウェーブレット変換、ラプラシアン演算、離散コサイン変換、アダマール変換、KL(Karhunen-Loeve)変換などであってもよい。
【0034】
また、画像取得部302は、LED103を発光させずに、合焦距離において撮像した第2画像に係る画像データをフレームメモリ213から取得すると、第1画像の場合と同様に、第2画像に係る画像データをストレージ217に格納する。
【0035】
測定領域特定部303は、
図3に示した撮像部102とLED103の位置関係に基づいて、第1画像および第2画像の中でLED103の光が被写体において正反射(鏡面反射)する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間した測定領域を特定する。すなわち、測定領域は、LED103の照明光の反射領域からオフセットしている。
【0036】
肌色推定部304は、第1画像の色情報と第2画像の色情報との差分値に基づいて被写体の色を推定する。具体的には、肌色推定部304は、第1画像および第2画像を構成する画素群のうち、所定の測定領域に含まれる参照画素の色情報について差分値を算出する。そして、肌色推定部304は、算出された差分値、既知の照明条件、および測定領域の表色系における値を関連付ける所定のアルゴリズムに従って被写体の色を推定するものとする。なお、本実施形態の第1画像および第2画像は、RGB表色系の色情報を含み、かつ、肌色推定部304は、RGB表色系から変換したXYZ表色系の色情報に基づいて色を推定するものとする。
【0037】
図6は、被写体におけるLED103の照明光の反射領域Sと測定領域Mの位置関係を説明する図である。ここでは、タッチパネル101に被写体の画像が表示されている場合に、反射領域Sは画像解析装置100のY軸に対して左方向に距離Aだけ離間し、X軸上の位置に設定されている。また、測定領域Mは、画像解析装置100のY軸に対して右方向に距離B、X軸に対して下方向に距離Cにある位置に設定されている。そして、反射領域Sと測定領域Mの重心間距離は距離Dに設定されている。このように、測定領域Mは、反射領域Sから所定の距離および方向の位置に設定されるため、画像解析装置100は照明光の影響を過度に受けずに被写体の色を高精度で測定できる。
【0038】
例えば、LED103の照明光の被写体に対する反射領域Sが、合焦時においてY軸に対して3.9°の位置にある場合、測定領域Mと反射領域Sの角度が7°以下であると、反射光が測定領域Mにかぶってしまう。また、測定領域Mと反射領域Sの角度が11°以上であると、測定領域Mにおける照明が暗くなり過ぎてしまう。このため、測定領域Mは、反射領域Sの位置からY軸で7.5°(
図6の画面上では、距離Aと距離Bを合計した距離に相当)、X軸で3.5°(
図6の画面上では、距離Cに相当)動かした位置に設定すると好適である。この場合、反射領域Sと測定領域Mの重心間距離Dは、角度情報に換算すると8.3°に設定される。
【0039】
図7は、本実施形態に係る画像解析装置100によって行われる処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、ユーザが測定アプリ300を用いて被写体(頬)の色(肌色)を測定する例を説明する。
【0040】
画像解析装置100において、ユーザが測定アプリ300を起動すると、制御部301は、撮像部102のAF機能を無効化する(ステップS101)。すなわち、制御部301は、光学系201を固定焦点の状態とする。ここで、合焦距離は、撮像された画像のサイズが画像解析において最適となるように定められ得る。例えば、合焦距離は、50mm~100mmの範囲であってもよく、また、撮像部102において設定可能な最短距離であってもよい。制御部301は、撮像に適した光環境が得られるようにLED103の光量、色温度、彩度を設定し、LED103を点灯する。
【0041】
次に、制御部301は、例えば画像解析装置100がユーザの頬に接触している初期状態において、LED103を発光させながら、撮像部102による被写体の撮像を開始する(ステップS102)。なお、制御部301は、ホワイトバランス機能も無効化した状態で撮像部102に第1画像を撮像させるとよい。
【0042】
図8は、画像解析装置100の測定開始時の状態を示す図である。ここでは、ユーザが画像解析装置100を頬に密着させた状態で、画面をタップする場合を示している。このように、ユーザが測定アプリ300を起動すると、制御部301は、例えば「画面をタップすると撮影を開始します。カメラを頬からゆっくり遠ざけてください。」などのメッセージをディスプレイ211に表示する(
図2参照)。
【0043】
制御部301は、メッセージとともにアニメーションを表示してもよく、音声によってメッセージを発してもよい。ユーザがメッセージに従って撮像部102を被写体(頬)に近づけ、タッチパネル101をタップすると(
図1参照)、制御部301は、撮像部102による撮像を開始する。撮像は、所定のフレームレート(例えば4~5フレーム毎秒)で行われる。撮像開始時における撮像部102と撮像部位との間の距離は、合焦距離よりも短いため、最初に撮像される画像の鮮鋭度は低い。
【0044】
次に、制御部301は、被写体(頬)から合焦距離に達するまで、撮像部102による撮像を継続する(ステップS103)。ユーザは、タッチパネル101をタップした後、撮像部102を被写体(頬)に対して垂直な方向に徐々に遠ざけていく。制御部301は、画像の鮮鋭度の変化に基づいて、撮像部102が被写体(頬)に対して合焦距離まで移動したか否かを判断する。撮像処理(ステップS103)の詳細については、後述する。
【0045】
次に、画像取得部302は、合焦距離における被写体の撮像画像(第1画像)を取得する(ステップS104)。具体的には、画像取得部302は、撮像で得られた複数フレームの画像データの中から、高周波数成分のエネルギーが最大の画像データを第1画像として取得する。画像データの取得処理(ステップS104)は、上述の撮像処理(ステップS103)と同時に実行されてもよい。
【0046】
次に、制御部301は、LED103の発光を停止させた状態で、撮像部102による被写体の撮像を行う(ステップS105)。これに伴い、画像取得部302は、発光停止状態、かつ、合焦距離における被写体の撮像画像(第2画像)をフレームメモリ213から取得する(ステップS106)。なお、制御部301は、ホワイトバランス機能も無効化した状態で撮像部102に第2画像を撮像させるとよい。
【0047】
次に、肌色推定部304は、第1画像と第2画像の測定領域における色情報を取得する(ステップS107)。上述したように、測定領域は、第1画像および第2画像の中でLED103の光が被写体において正反射(鏡面反射)する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間している。
【0048】
次に、肌色推定部304は、第1画像と第2画像の間で、共通の測定領域における色情報の差分値を算出する(ステップS108)。
そして、肌色推定部304は、算出された差分値に基づいて、被写体の色を推定する(ステップS109)と、推定値を測定結果としてタッチパネル101(ディスプレイ)に表示する。
【0049】
図9は、
図6において示した撮像処理(ステップS103)の詳細を示すフローチャートである。
まず、制御部301は、1フレームの画像データの撮像を行い、フレームメモリ213から読み出す(ステップS201)。制御部301は、読み出した画像データを所定のサイズ(例えば640×480画素)にトリミングしてもよい。
次に、制御部301は、画像データをフーリエ変換し、高周波数成分のエネルギーを抽出する(ステップS202)。
【0050】
次に、制御部301は、直近に撮像されたフレームとの間で、高周波数成分のエネルギーの変化量を算出する(ステップS203)。例えば、制御部301は、直近のフレーム(n)についてのエネルギーE(n)と、1つ前のフレーム(n-1)についてのエネルギーE(n-1)との差(E(n)-E(n-1))を計算する。高周波数成分のエネルギーは、所定フレーム数の移動平均値を用いてもよい。複数フレーム間における高周波数成分のエネルギーの変化の一例を
図10に示す。
【0051】
図10において、縦軸は高周波数成分のエネルギーEを表し、横軸は時系列に番号付けされた複数フレームの画像データを表している。すなわち、フレーム番号“1”は撮像において最初に撮像されたフレームの画像データであり、撮像が継続している間、順次撮像されていく。
図10の例では、エネルギーEの差(E(n)-E(n-1))は、フレーム番号“2”からフレーム番号“28”までは正の値であり、フレーム番号“29”で負の値になる。すなわち、高周波数成分のエネルギーのピークがフレーム番号“28”に位置していることを示している。
【0052】
次に、制御部301は、エネルギーの変化量を所定の閾値と比較する(ステップS204)。制御部301は、例えば0を閾値とし、エネルギーの差(E(n)-E(n-1))が0以上か否か(正負)を判断する。制御部301は、変化量が0以上(正の値)である場合(ステップS204でNO)、撮像を継続し、次のフレームに対してステップS201~ステップS204の処理を実行する。制御部301は、変化量が0より小さい(負の値)である場合(ステップS204でYES)、LED103が発光した状態での撮像処理を終了し、
図7のフローチャートの処理に戻る。
【0053】
本実施形態に係る画像解析装置100によれば、LED103を発光させた状態で撮像した第1画像とLED103の発光を停止させた状態で撮像した第2画像を取得し、これらの画像における所定の測定領域の色情報の差分値から測定領域の色を推定する。すなわち、差分値を算出することで外部光(環境光)の影響をキャンセルし、既知の照明光の性質(発光強度など)と2種類の撮像画像から算出した色情報の差分値に基づいて測定領域の色を高精度で推定できる。この結果、肌測定専用の機器を持たないユーザであっても、色見本を用いることなく、スマートフォン等のカメラを用いて精度の良い肌測定を行うことができる。
【0054】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態に係る画像解析装置400について説明する。なお、第1実施形態の図中において付与した符号と共通する符号は同一の対象を示す。このため、第1実施形態と共通する箇所の説明は省略し、異なる箇所について詳細に説明する。
【0055】
図11は、画像解析装置400の機能ブロック図である。画像解析装置400において、センサ部であるジャイロスコープ218は、被写体に対する画像解析装置400(撮像部102)の向き(傾き)を検出すると、その検出信号を制御部301に出力する。制御部301は、検出信号に対応する角度情報をストレージ217に格納する。第1角度情報は、ユーザが撮像の開始を指示した時点での画像解析装置400の向き(傾き)を示す。これに対し、第2角度情報は、合焦距離に達して第1画像および第2画像を撮像した時点での画像解析装置400の向き(傾き)を示すものとする。
【0056】
測定領域特定部303は、撮像部102とLED103(発光部)の位置関係および傾きの変化量(角度変化量)に基づいて、反射領域と測定領域の位置関係を維持しながら測定領域の設定位置を補正する。測定領域特定部303は、測定領域を動かすことにより、LED103の照明光の当たり方を一定に保つ。
【0057】
測定領域特定部303は、被写体がジャイロスコープ218のヨー軸の軸方向に位置するときに、ジャイロスコープ218のロール軸およびピッチ軸を中心とした回転角度に基づいて傾きの変化量を算出する。算出した傾きの変化量と測定領域の補正位置との関係については、ストレージ217などに予め定義されているとよい。
【0058】
図12は、画像解析装置400の姿勢状態に応じた測定領域の補正を説明する図である。
図12(a)では、X軸がピッチ軸であり、Y軸がロール軸であり、Z軸がヨー軸である。X1、X2はX軸周りの回転方向を示し、Y1、Y2はY軸周りでの回転方向を示す。なお、Z軸周りで回転した場合は、測定領域と反射領域との相対的な位置関係は変わらないため、測定領域の補正対象とはしないものとする。
図12(b)は、
図12(a)で示したX軸およびY軸周りでそれぞれ回転した場合に、撮像領域Pの中で照明光の反射領域Sと測定領域Mがそれぞれどの方向に移動されるのかを示している。
【0059】
図13は、画像解析装置400で行われる処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、ユーザが測定アプリ300を用いて被写体(頬)の色(肌色)を測定する例を説明する。
【0060】
画像解析装置400において、ユーザが測定アプリ300を起動すると、制御部301は、撮像部102のAF機能を無効化する(ステップS301)。すなわち、制御部301は、光学系201を固定焦点の状態とする。ここで、合焦距離は、撮像された画像のサイズが画像解析において最適となるように定められ得る。例えば、合焦距離は、50mm~100mmの範囲であってもよく、また、撮像部102において設定可能な最短距離であってもよい。制御部301は、撮像に適した光環境が得られるようにLED103の光量、色温度、彩度を設定し、LED103を点灯する。
【0061】
次に、制御部301は、例えば画像解析装置400がユーザの頬(被写体)に接触している初期状態において、LED103を発光させながら、撮像部102による被写体の撮像を開始する(ステップS302)。
【0062】
次に、制御部301は、撮像開始時点の第1角度情報を記憶する(ステップS303)。具体的には、ユーザが画像解析装置400を頬に当てた状態でタッチパネル101をタップした際、画像解析装置400のX軸およびY軸方向における傾き状態が第1角度情報として記憶される。
【0063】
続いて、制御部301は、被写体(頬)から合焦距離に達するまで、撮像部102による撮像を継続する(ステップS304)。ユーザは、タッチパネル101をタップした後、撮像部102を被写体(頬)に対して垂直な方向に徐々に遠ざけていく。制御部301は、画像の鮮鋭度の変化に基づいて、撮像部102の位置が被写体(頬)に対して合焦距離まで移動したか否かを判断する。撮像処理(ステップS304)は、上述した
図9と同様である。
【0064】
次に、画像取得部302は、合焦距離における被写体の撮像画像(第1画像)を取得する(ステップS305)。具体的には、画像取得部302は、撮像で得られた複数フレームの画像データの中から、高周波数成分のエネルギーが最大の画像データを取得する。画像データの取得処理(ステップS305)は、上述した撮像処理(ステップS304)と同時に実行されてもよい。
【0065】
次に、制御部301は、LED103の発光を停止させた状態で、撮像部102による被写体の撮像を行う(ステップS306)。これに伴い、画像取得部302は、発光停止時の合焦距離における撮像画像(第2画像)を取得し、制御部301は、合焦距離における第2角度情報を取得する(ステップS307)。
【0066】
次に、測定領域特定部303は、第1角度情報と第2角度情報により測定領域の設定位置を補正する(ステップS308)。
【0067】
次に、肌色推定部304は、第1画像と第2画像の測定領域における色情報を取得する(ステップS309)。上述したように、測定領域は、第1画像および第2画像の中でLED103の光が被写体において正反射(鏡面反射)する位置に対応する反射領域から所定の距離で離間している。ステップS308およびステップS309の処理は、同時に行われてもよい。
【0068】
次に、肌色推定部304は、第1画像と第2画像の間で、共通の測定領域における色情報の差分値を算出する(ステップS310)。
そして、肌色推定部304は、算出された差分値に基づいて、被写体の色を推定する(ステップS311)と、推定値を測定結果としてタッチパネル101(ディスプレイ)に表示する。
【0069】
図14は、
図13において示した測定領域の補正処理(ステップS308)の詳細を示すフローチャートである。
【0070】
まず、肌色推定部304は、ストレージ217に記憶されている第1角度情報および第2角度情報を取得する(ステップS401)と、X軸周りでの角度変化量を算出する(ステップS402)。
【0071】
次に、肌色推定部304は、X軸周りでの角度変化量が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS403)。X軸周りでの角度変化量の閾値は、例えば6°である。ここで、肌色推定部304が、角度変化量は閾値以下であると判定した場合(ステップS403でYES)には、処理はステップS404へ移行する。これに対し、ここで、肌色推定部304が、角度変化量は閾値を超えると判定した場合(ステップS403でNO)には、処理はステップS407へ移行する。
【0072】
次に、肌色推定部304は、Y軸周りでの角度変化量を算出する(ステップS404)と、Y軸周りでの角度変化量が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS405)。Y軸周りでの角度変化量の閾値は、例えば6°である。ここで、肌色推定部304が、角度変化量は閾値以下であると判定した場合(ステップS405でYES)には、処理はステップS406へ移行する。これに対し、ここで、肌色推定部304が、角度変化量は閾値を超えると判定した場合(ステップS405でNO)には、処理はステップS407へ移行する。
【0073】
次に、肌色推定部304は、LED103の照明光が正反射する領域と測定領域の位置関係を維持するように、測定領域の設定位置を補正し(ステップS406)、
図13のフローチャート(ステップS309)へ戻る。
【0074】
そして、肌色推定部304は、再測定を促すメッセージをタッチパネル101への表示または音声によって出力し(ステップS407)、
図13のフローチャートには戻らずに処理を終了する。すなわち、測定領域を補正可能な範囲を超えて画像解析装置400が測定開始時よりも傾けられた場合には、LED103の照射条件が大きく変動したことになるため、再測定となる。
【0075】
本実施形態に係る画像解析装置400によれば、ジャイロスコープ218で検出された角度情報に基づいて照明光の反射領域と測定領域との位置関係を維持しつつ、測定領域の位置を補正できる。このため、測定開始時と測定終了時との間で画像解析装置400の傾き(姿勢状態)が変化した場合でも、測定領域における照明光の当たり方を一定レベルに維持することで、測定領域の色を高精度で測定できる。
【0076】
[変形実施形態]
上述の実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されるものではない。すなわち、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施可能である。
【0077】
上述の実施形態では、発光部であるLED103は、画像解析装置100の背面側にのみ設けられていたが、正面側にも設けられてもよい。
図15は、画像解析装置500の撮像処理時の状態を示す図である。また、
図16は、画像解析装置500に表示される操作画面の一例を示す正面図である。ここでは、背面側の撮像部102およびLED103とは別に、撮像部104(インカメラ)およびLED105が、操作画面を表示するディスプレイ211(タッチパネル101)と同一の面(画像解析装置500の正面)にそれぞれ設けられることが示されている。この場合、ユーザは、ディスプレイ211に表示された操作画面を参照しながら、肌色測定の開始および終了指示を入力できるため、操作性がさらに向上する利点がある。
【0078】
また、上述の実施形態では、LED103が発光部となる場合について説明したが、発光部はLED103のみに限られない。例えば、タッチパネル101のディスプレイ自体が発光部を兼ねるように構成することもできる。この場合、上述した
図15と同様に、インカメラを用いた肌色測定が可能になるとともに、LED103に比べて照明光の照射範囲を詳細に設定できる利点もある。
【0079】
上述の実施形態では、画像解析装置100、400、500がユーザの頬の色を測定する場合について説明したが、測定部位はユーザの頬に限られない。画像解析装置100、400、500は、肌、頭皮、爪、毛髪、唇などの人体表面の様々な部位を測定するために適用可能である。同様に、画像解析装置100、400、500による測定部位は人体に限られない。画像解析装置100は、人体以外の任意の物体の色を測定するために適用可能である。
【0080】
上述の各実施形態では、画像解析装置100、400、500が被写体から合焦距離に達したときに撮像した第1画像および第2画像に基づいて被写体の色を測定(推定)する方法を説明したが、測定方法はこれに限られない。例えば、3Dスキャニング機能を持つ携帯電話の場合では、撮影時の距離から双方向反射率分布関数BRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)に基づいて照明条件に距離の補正を行うことで、合焦距離以外の位置における撮影画像(第1画像および第2画像)を用いて各実施形態の場合と同様に被写体の色の測定が可能となる。
【0081】
100、400、500 画像解析装置
101 タッチパネル(ディスプレイ)
102、104 撮像部
103、105 LED(発光部)
213 フレームメモリ
214 CPU
215 RAM
217 ストレージ
218 ジャイロスコープ
301 制御部
302 画像取得部
303 測定領域特定部(特定部)
304 肌色推定部(推定部)