(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】自動保管・出庫システム用のオポチューニスティック式充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20230602BHJP
【FI】
H02J7/02 J
(21)【出願番号】P 2020541772
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019017078
(87)【国際公開番号】W WO2019157196
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-07-30
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517420902
【氏名又は名称】アラート イノヴェイション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】コーディー マシュー ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】フォスナイト ウィリアム ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラチャンス デイヴィッド エー
(72)【発明者】
【氏名】アイゼレン デイヴィッド
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-502996(JP,A)
【文献】特表2010-515570(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035448(WO,A1)
【文献】特開平04-185234(JP,A)
【文献】特開2006-068846(JP,A)
【文献】特表2007-535282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0158430(US,A1)
【文献】米国特許第06931304(US,B1)
【文献】米国特許第09395723(US,B2)
【文献】米国特許第06291900(US,B1)
【文献】中国実用新案第205200876(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内における複数のモバイルロボットのための電源システムであって、
前記複数のモバイルロボットは、コンテナを前記施設内の保管場所に且つ保管場所から運搬するために軌道システム上を移動するように構成され、
前記電源システムは、前記軌道システム
の垂直レールに垂直に取り付けられた充電レールを含み、
この充電レールは、第1の電圧を提供するように構成され、前記垂直レールは、さらに、前記充電レールの充電中に前記複数のモバイルロボットを上下動させるラック歯車を備え、
前記電源システムは、複数のモバイルロボットの各々に設けられた充電器から成る複数の充電器を含み、
前記複数のモバイルロボットの各々の前記充電器は、前記充電レールからの前記第1の電圧を、この第1の電圧よりも低い第2の電圧に変換し、
前記電源システムは、前記複数のモバイルロボットの各々に設けられた再充電可能エネルギー貯蔵装置から成る複数の再充電可能エネルギー貯蔵装置を含み、前記複数のモバイルロボットの
各々の前記再充電可能エネルギー貯蔵装置は、前記複数のモバイルロボットの各モバイルロボットがコンテナを前記施設内の保管場所に且つ保管場所から運搬するために前記軌道システム上を移動するときに前記第2の電圧を用いて充電される、電源システム。
【請求項2】
前記複数のモバイルロボットは、前記充電レールに接続されることによって同時に充電される、請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記充電レールは、前記軌道システムの垂直部分内に設けられている、請求項1記載の電源システム。
【請求項4】
前記充電レールは、前記軌道システムの水平部分内に設けられている、請求項1記載の電源システム。
【請求項5】
さらに、前記複数のモバイルロボットの各々に設けられた複数の結合機構体を含み、1つのモバイルロボットに設けられた結合機構体は、前記充電レールに接触し、前記充電レールから前記モバイルロボットに前記AC充電電圧を送るように構成されている、請求項1記載の電源システム。
【請求項6】
前記複数のモバイルロボットのうちの一モバイルロボットでハイバーネート機能を実行するよう構成されたコントローラをさらに含み、前記ハイバーネート機能は、前記モバイルロボットが前記充電レールから離れて長期間にわたって待機せざるをえない場合に電源負荷を前記再充電可能エネルギー貯蔵装置から切り離す、請求項1記載の電源システム。
【請求項7】
前記再充電可能エネルギー貯蔵装置は、スーパーキャパシタである、請求項1記載の電源システム。
【請求項8】
前記スーパーキャパシタは、通常の電気二重層キャパシタ、リチウムスーパーキャパシタ及び極低インピーダンスキャパシタのうちの1つである、請求項7記載の電源システム。
【請求項9】
前記複数のモバイルロボットのうちの少なくとも5つのモバイルロボットは、前記少なくとも5つのモバイルロボットの前記充電器及び/又は前記再充電可能エネルギー貯蔵装置の定格値としての最大速度で前記少なくとも5つのモバイルロボットの再充電可能エネルギー貯蔵装置を同時に充電することができる、請求項1記載の電源システム。
【請求項10】
前記充電レールは、前記軌道システムの垂直レール内に設けられ、前記垂直レールは、前記充電レール上で充電を行いながら前記複数のモバイルロボットの垂直移動を可能にするためのラック歯車をさらに有する、請求項1記載の電源システム。
【請求項11】
前記複数のモバイルロボットのうちの既定最大数のモバイルロボットが前記施設内における保管ロケーションへ
のコンテナの搬送及び前記保管ロケーションから
のコンテナの搬送中、所与の時間で前記軌道システム
の垂直部分内を移動し、前記既定最大数のモバイルロボットは、各モバイルロボットが前記軌道システムの前記垂直部分内を移動している間、前記既定最大数のモバイルロボットの最大速度を変更することができる、請求項1記載の電源システム。
【請求項12】
前記複数のモバイルロボットのナビゲーションを制御するとともにコンテナを保管ロケーションに移送したり該保管ロケーションから移送したりする状態から前記充電レールとの接続状態にモバイルロボットをそらす命令を実行する資材管理システム(MCS)をさらに含み、前記モバイルロボットが保管ロケーションへのコンテナの移送及び保管ロケーションからのコンテナの移送を続行するためにより多くの電荷を必要とすることが前記MCSによって決定される、請求項1記載の電源システム。
【請求項13】
前記MCSは、前記複数のモバイルロボットの各々の前記充電を別個独立に制御するよう前記複数のモバイルロボットの各々の前記充電器と通信する、請求項12記載の電源システム。
【請求項14】
前記充電レールは、前記軌道システムの垂直部分内に設けられ、前記MCSは、前記軌道システム内の全てのモバイルロボットが前記モバイルロボットの最大速度で充電することができるよう所与の時間で前記軌道システムの前記垂直部分内にある多数のモバイルロボットを制御する、請求項12記載の電源システム。
【請求項15】
前記充電レールは、前記軌道システムの垂直部分内に設けられ、前記MCSは、前記施設の遊休期間において前記モバイルロボットの最大充電速度よりも遅い速度で充電するよう前記軌道システムの前記垂直部分内の前記複数のモバイルロボットを位置決めする、請求項12記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本願は、2018年2月8日に出願された米国特許仮出願第62/628,159号(発明の名称:OPPORTUNISTIC CHARAGING SYSTEM FOR AN AUTOMATED STORAGE AND RETRIEVAL SYSTEM)の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0002】
サプライチェーンで使用される自動注文履行(オーダフルフィルメント)システムは、個々の製品アイテム(本明細書では「イーチ(each)」とも言う)に関する注文を履行することができる。伝統的な注文履行施設は、保管スペースの垂直及び水平アレイを備えたマルチレベル型(多くの高さ位置を持つ形式)の保管構造体内でイーチをコンテナに入れた状態で保管する。自動注文履行システムは、コンテナを保管構造体内において保管スペースに移送したり保管スペースから移送したりするよう保管構造体内で水平に動いたり垂直に動いたりするモバイルロボットをさらに含む。
【0003】
定期的な再充電を必要とする搭載型エネルギー貯蔵装置によりこれらモバイルロボットに電力供給することが知られている。もっとも普通の解決策は、一般に構造体中である種々の場所に配置される別個の充電ステーションを採用することである。ロボットが再充電を必要とした場合、資材管理システム(Material Control System:MCS)は、ロボットを充電ステーションに方向付けて再充電を行う。数機の充電ステーションが存在する場合があるが、この再充電方法は、ロボットをこれらロボットの注文履行業務からそらす。
【0004】
例えばオペックス・コーポレーション(Opex Corporation)に譲渡された米国特許第9,815,625号明細書に開示されている別の方式は、電圧を充電レールに供給し、ロボットは、その注文履行作業中にこの充電レールを通って動く。かくして、ロボットは、これが充電レールへの接続によってその業務を行っているときに再充電可能である。かかるシステムは、DC電力供給装置又はバッテリ充電器が電源(例えば、壁コンセント)と充電レールとの間に配置されるように構成されている。これら従来型充電レールシステムは、単一のモバイルロボット又は数機のモバイルロボットを低い充電速度で迅速に充電するのに十分な電力を提供する。加うるに、あらゆる充電レールは、それ自体の充電器/DC電力供給装置を必要とし、それによりコストの増大、システムの複雑さの増加、及び信頼性の低下が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明は、注文履行システム内のモバイルロボットのためのオポチューニスティック式(opportunistic:チャンスを逃さないような方式の)バッテリ充電システムに関する。バッテリ充電システムは、ロボットがこれらロボットの注文履行業務を行っているときにロボットが係合して通常の在庫出庫及び配送作業中にオポチューニスティック方式で充電を行うようにする1本又は2本以上の充電レールを含む。1本又は2本以上の充電レールは、在庫保管構造体全体を通じて移動するモバイルロボットによって用いられる軌道システムの垂直塔及び/又は水平レール上に設けられるのが良い。1本又は2本以上の充電レールは、施設電源から比較的高い非規制電圧、例えば120~240VACを受けることができる。各モバイルロボットは、高い充電容量を有するとともに迅速な充電時間を実現することができる再充電可能なエネルギー貯蔵装置、例えば列状に配置されたスーパーキャパシタを備えるのが良い。各モバイルロボットは、エネルギー貯蔵装置を再充電するための搭載型充電器をさらに備えるのが良い。定額償却費用が最小限に抑えられ、と言うのは、レールに電力供給するのに過剰電流保護(ヒューズ又は回路遮断器)が必要であるに過ぎないからである。
【0007】
モバイルロボットが充電レールに沿って動いているとき、各モバイルロボット内の充電器は、レールを再充電可能エネルギー貯蔵装置が定格されている電圧に変換する。レールに加わる電圧は、各モバイルロボットエネルギー貯蔵装置内で用いられる電圧と比較して比較的高いので、多数のロボットを同一の充電レールから離して同時に迅速に再充電することができる。加うるに、充電器は、同一のレールに接続された各モバイルロボットの各エネルギー貯蔵装置への電流の流れを制御する。かくして、多数のモバイルロボットを単一の充電レールから制御された仕方で迅速に再充電することができる。
【0008】
一実施形態では、本発明は、施設内における複数のモバイルロボットのための電源システムであって、本電源システムは、軌道システム内に設けられた充電レールを含み、複数のモバイルロボットは、充電レールに沿って移動し、充電レールは、第1の電圧を提供するよう構成され、本電源システムは、複数のモバイルロボットの各々に設けられた充電器から成る複数の充電器をさらに含み、複数のモバイルロボットの各々の充電器は、充電レールからの第1の電圧を第1の電圧よりも低い第2の電圧に変換し、本電源システムはさらに、複数のモバイルロボットの各々に設けられた再充電可能なエネルギー貯蔵装置から成る複数の再充電可能なエネルギー貯蔵装置を含み、複数のモバイルロボットの各々の再充電可能なエネルギー貯蔵装置は、第2の電圧を用いて充電されることを特徴とする電源システムに関する。
【0009】
この発明の概要の項は、詳細な説明の項において以下にさらに説明する単純化された形態でひとまとまりの技術的思想を導入するために設けられている。この発明の概要の項は、クレーム請求された発明の重要な特徴又は必須の特徴を特定するものではなく、またクレーム請求されている発明の範囲の決定にあたっての助けとして使用されるものでもない。クレーム請求されている発明は、技術の背景の項に記載された任意の又は全ての欠点を解決する具体化例には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る注文履行施設の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る充電レールを含む注文履行施設の軌道システムの一部分の前から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る再充電可能なエネルギー貯蔵装置及び充電器を備えたモバイルロボットの上から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る再充電可能なエネルギー貯蔵装置及び充電器を備えたモバイルロボットの下から見た斜視図である。
【
図5】エネルギー貯蔵装置及び充電器を軌道システムの充電レールに接続するための結合機構体の細部を示す図である。
【
図6】エネルギー貯蔵装置及び充電器を軌道システムの充電レールに接続するための結合機構体の細部を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態にかかる垂直塔内の充電レールを含む保管ベイの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、おおまかに説明すると、自動注文履行システム内において品物を搬送するモバイルロボットに設けられた電源を再充電するためのオポチューニスティック式レール充電システムに関する。本発明の諸観点によれば、モバイルロボットを充電するための1本又は2本以上の充電レールが軌道システムに組み込まれるのが良く、ロボットは、通常の在庫出庫及び配送作業中、この軌道システムに沿って移動する。本発明の別の諸観点では、電圧を充電レールから各モバイルロボットの再充電可能な電源供給装置が定格されている電圧に変換するための個々の充電器が各モバイルに組み込まれている。個々の充電器により、充電レールは、充電レール上に低い電流で高い電圧を利用することができる。低い電流により、小さな断面積を有する充電レールの使用が可能である。加うるに、個々の充電器及び充電レールにかかる高い電圧により、数機のモバイルロボットを同一の充電レールから離して同時に迅速かつ効率的に再充電することができる。
【0012】
本発明を多くの互いに異なる形態で具体化できるので、本発明を本明細書において説明する実施形態に限定されるものと解されてはならないことが理解される。これとは異なり、これら実施形態は、本開示が徹底的でありかつ完全であり、本発明を当業者に完全に理解させるよう提供されている。確かに、本発明は、特許請求の範囲の記載によって定められる本発明の範囲及び精神に含まれるこれら実施形態の変形例、改造例及び均等例を含むものである。さらに、本発明の以下の詳細な説明において、多くの特定の細部が本発明の徹底的な理解を提供するために記載されている。しかしながら、当業者には明らかなように、本発明をかかる特定の細部なしで実施できる。
【0013】
本明細書で用いられる場合のある「頂部」、「底部」、「上方」、「下方」、「垂直」、及び「水平」という用語は、例示でありかつ説明の目的のためのものであり、言及するアイテムを位置及び向きにおいて交換することができるので、本発明の説明を限定するものではない。また、本明細書で用いられる「実質的に」及び/又は「約」という用語は、特定の寸法又はパラメータが所与の用途について許容可能な製造公差内においてばらつきのあることを意味している。一つの実施形態において、許容製造公差は、所与の寸法の±0.25%である。
【0014】
図1は、保管ロケーション106の多数のベイ104を含む保管構造体102を示している注文履行施設100の一実施形態の部分図である。具体的に説明すると、各ベイ104は、水平列をなす保管ロケーション106のy‐zアレイ及びこの実施形態では垂直塔(タワー)であるのが良い列に沿うレベル(高さ位置)変更塔を含む。以下に説明するように、モバイル(移動)ロボット150がレベル変更塔内で保管レベル相互間をz方向に移動することができる。対をなすベイ104は、通路(アイル)108によって隔てられた状態で、互いに向くよう配置されている。通路108は、通路108内で移動しているモバイルロボット150がトートを通路108の各側でベイ104に移送することができるような幅を有するのが良い。注文履行施設100は、保管構造体102の互いに異なる水平レベルのところに互いに間隔を置いて配置されたデッキ112をさらに含むのが良い。デッキ112は、ロボットが各デッキのx‐y平面内で通り抜けて互いに異なる通路相互間を移動することができるよう通路相互間に延びるのが良い。
【0015】
図2は、通路108内の軌道システム116の一区分の斜視図である。軌道システム116は、水平レール118及びレベル変更塔120(破線で囲まれている)を含む。
図2に示された水平レベル118及びレベル変更塔120の数は、例示に過ぎず、別の実施形態では、これよりも多くの又はこれよりも少ない水平レール118及び/又はレベル変更塔120が設けられても良い。しかしながら、1つの実施形態ではベイ104内の保管ロケーション106の各水平レベルについて1組の水平レール118が存在する。保管ロケーション106(
図2には示されていない)は、通路108の互いに反対側で軌道システム116に隣接して位置決めされる。
【0016】
注文履行施設100は、トート又は他の製品コンテナをベイ104内のワークステーション(図示せず)及び保管ロケーション106に移送したりワークステーション及び保管ロケーション106から移送したりするための多数のモバイルロボット150をさらに含むのが良い。モバイルロボット150については以下に詳細に説明するが、モバイルロボット150は、トート又は他の製品コンテナをモバイルロボット150と保管ロケーション106との間で移送するよう通路108内で軌道システム116に沿って水平に動いたり垂直に動いたりするよう自己誘導式であるのが良い。モバイルロボット150は、保管ロケーション106のレベル相互間でレベル変更塔120内においてz方向に垂直に移動することができる。標的水平レベルにいったん位置すると、モバイルロボットは、レール118に沿って選択された保管ロケーション106まで水平に動いて在庫をその保管ロケーションから出庫し又は在庫をその保管ロケーションに配送することができる。
【0017】
デッキ112は、保管構造体102の互いに異なるレベルでも通路108相互間におけるモバイルロボット150の移動及び通路108中へのモバイルロボット150の移動を可能にする。デッキ112は、レベル変更塔のところで、デッキフローリングに設けられた開口部112aを備えるのが良い。開口部112aにより、レベル変更塔120のレベル相互間で垂直に動いているモバイルロボットは、通路内で1つ又は2つ以上のデッキ112を通過することができる。
【0018】
本発明と関連して使用できる保管構造体、軌道システム及びモバイルロボットのそれ以上の細部は、例えば、以下の米国特許及び米国特許出願、すなわち、2015年9月22日に発行されてジョン・ラート(John Lert)に付与された米国特許第9,139,363号明細書(発明の名称:Automated System For Transporting Payloads)、2016年6月2日にジョン・ラート及びウィリアム・フォスナイト(William Fosnight)名義で出願された米国特許出願公開第2016/0355337号明細書(発明の名称:Storage and Retrieval System)、及び2017年5月10日にジョン・ラート及びウィリアム・フォスナイト名義で出願された米国特許出願公開第2017/0313514号明細書(発明の名称:Order Fulfillment System)に記載されている。これら米国特許及び米国特許出願の各々を参照により引用し、当該記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0019】
本発明の諸観点によれば、充電レール130は、レベル変更塔120のうちの1つ又は2つ以上の一方の側部で垂直軌道中に組み込まれるのが良い。充電レール130は、電圧を施設電源132から受け取るよう施設電源1332に電気的に結合されるのが良い。実施形態では、1本又は2本以上の充電レール130の各々に受け取られた電圧は、例えば120V、220V又は240VにおいてAC電圧であるのが良い。言うまでもないこととして、施設電源は、別の実施形態では他のAC電圧を提供することができる。加うるに、電圧をDC電圧又は施設電源132とは異なる電圧に変換するための電圧変換器が施設電源132と充電レール130との間に設けられるのが良い。
【0020】
一般に、1本又は2本以上の充電レール130は、施設電源からの比較的高い電圧で定電流を流す。充電レールには電圧をモバイルロボットエネルギー貯蔵装置によって使用可能なレベルまで変換するための充電レールの各区分のところに充電器又は他の機器を提供する必要なく、施設電源から直接電圧を供給することができるということが本発明の特徴である。低電流により、充電レール130の比較的小さな断面積及び低い送電損失の実現が可能である。1つの実施例では、充電レール130は、充電レール130を通って11,000Wの電力を送るために50Aで220Vに耐えることができる。これらの数値は、一礼に過ぎず、別の実施形態では様々であって良い。充電レール130は、良導体、例えば、銅、ステンレス鋼、これらの合金、又は他の材料で作られたプレート、ワイヤ又はケーブルであるのが良い。充電レール130がプレートである場合、充電レールは、断面積が10mm2の平たいプレートであるのが良い。別の実施形態では、充電レールは、少なくとも一部分が以下に説明するモバイルロボットの結合機構体を受け入れるよう全体として平たい多種多様な断面形状のうちの任意のものを形成するようその長さに沿って曲げられたプレートであるのが良い。充電レール130がワイヤ又はケーブルである場合、この充電レールは、10mm2の断面積を有するのが良い。
【0021】
以下に説明するように、充電レール130は、レベル変更塔120の垂直レールから電気的に絶縁されるのが良い。充電レール130への接触を回避するための安全措置が講じられるのが良い。1つの実施例では、充電レール130は、モバイルロボット150がレベル変更塔120に沿って動いている間にモバイルロボット150の結合機構体が充電レール130に依然として接触することができるようにした状態で人の接触を阻止する保護絶縁ガード224(
図5及び
図6)内に埋め込まれるのが良い。実施形態では、充電レール130は、注文履行施設内における単一のレベル変更塔120、幾つかのレベル変更塔120、又は全てのレベル変更塔120の一方の側に設けられるのが良い。別の実施形態では、充電レール130は、所与のレベル変更塔120内の互いに反対側の軌道の両方内に設けられるのが良い。さらに別の実施形態では、充電レール130は、1つ又は2つ以上のレベル変更塔120に備えることに代えて又はこれに加えて水平軌道118のうちの1本又は2本以上の中に組み込まれるのが良い。
【0022】
図3~
図5を参照してモバイルロボット150のそれ以上の細部について説明する。モバイルロボット150は、本明細書ではエネルギー貯蔵装置160とも呼ばれる搭載型再充電可能なエネルギー貯蔵装置160を有するのが良く、このエネルギー貯蔵装置は、実施形態では、列状に配置されたスーパーキャパシタであるのが良く又は列状に配置されたスーパーキャパシタを含むのが良い。スーパーキャパシタは、これらが普通のキャパシタよりも単位体積あたり例えば10~100倍のエネルギーを貯蔵することができるという点でエネルギー貯蔵装置としての利点を提供する。加うるに、スーパーキャパシタは、極めて大きな電流を受け入れることができ、かくして、スーパーキャパシタは、極めて短い期間で、例えば2秒以下で再充電が可能である。種々のスーパーキャパシタのうちの任意のものをエネルギー貯蔵装置160内に用いることができ又はエネルギー貯蔵装置160として用いることができ、かかるスーパーキャパシタとしては、例えば、通常の電気二重層キャパシタ、リチウムスーパーキャパシタ及び極低インピーダンスキャパシタが挙げられる。さらに言うまでもないこととして、搭載型エネルギー貯蔵装置160は、別の実施形態ではスーパーキャパシタとは異なる種々の再充電可能な電力供給装置であっても良く又は種々の再充電可能な電力供給装置を含んでいても良く、かかる再充電可能な電力供給装置としては、例えば、通常のキャパシタ、電気化学的バッテリ及び他形式の再充電可能電源が挙げられる。再充電可能エネルギー貯蔵装置160は、エネルギー貯蔵装置の動作を制御し、例えば以下において説明するハイバーネーション(hibernation)モードを実行する関連マイクロコントローラを有するのが良く、ハイバーネーションモードでは、モバイルロボット駆動装置からの負荷がエネルギー貯蔵装置160から切り離される。
【0023】
モバイルロボット150は、充電レール130からの電力を受け取り、そしてこれをエネルギー貯蔵装置160によって使用可能な低い電圧に変換する充電器162をさらに有する。実施形態では、エネルギー貯蔵装置160によって使用可能な電圧は、一般に、商業的因子の組み合わせによって決定されるのが良く、かかる商業的因子としては、例えば、どのような電圧が最も高い電荷貯蔵能力を許容するか及びどのような電圧が1ドル当たり最も多くのエネルギー貯蔵量を提供するかが挙げられる。1つの実施例では、エネルギー貯蔵装置160は、20~70Vの電圧を用いるのが良いが、この範囲の外にある電圧を別の実施形態において用いることができる。以下において、モバイルロボット150の独立した電荷管理及び効率的な充電を可能にする充電器162のそれ以上の細部について説明する。エネルギー貯蔵装置160及び充電器162が別々のコンポーネントとして図示されているが、別の実施形態では、エネルギー貯蔵装置160と充電器162は、互いに一体化されても良い。
【0024】
モバイルロボット150は、モバイルロボット150をデッキ112に沿って水平に推進し、そして軌道システム116に沿って水平に推進したり垂直に推進したりするようにするために用いられる種々の駆動システムをさらに有するのが良い。1つの実施例では、モバイルロボット150は、駆動輪168の回転を制御するための1対の位置制御モータ166(これらのうちの1つが
図4に見える)を含む水平駆動システムを有するのが良い。位置制御モータ166は、タンデム環境をなして作動してモバイルロボットを軌道システム116のレール118に沿って前進させることができる。位置制御モータ166は、モバイルロボットをこれが平坦な表面、例えばデッキ112上で移動するときに左又は右に制御可能に方向転換させるよう別個独立に作動することができる。
【0025】
モバイルロボット150は、レベル変更塔120内でモバイルロボットを垂直に推進するために用いられる種々の駆動システムをさらに有するのが良い。1つの実施例では、モバイルロボット150は、駆動シャフト172に取り付けられた垂直駆動装置170を有するのが良い。駆動シャフト172は、その反対側の端部のところに1対の案内ベアリング174をさらに有するのが良く、各案内ベアリングは、レベル変更塔の互いに反対側の側部に設けられた垂直チャネル173(
図5及び
図6)内のラック歯車171と係合するよう構成されている。垂直駆動装置170によるラック歯車に沿う案内ベアリング174の回転により、モバイルロボットは、レベル変更塔内で制御可能に上下に動く。
【0026】
モバイルロボット150は、支承シャフト177の互いに反対側の端部のところに取り付けられたカウンタベアリング175をさらに有するのが良い。カウンタベアリングは、モバイルロボットを垂直移動中、全体として水平の向きに維持するようレベル変更塔内の案内ベアリング174を受け入れる垂直チャネルの背後に位置する表面にのっている。
【0027】
モバイルロボット150は、通路108の各側で保管ロケーション106のところで在庫コンテナを出庫したり及び/あるいは配送したりするために用いられる駆動システムをさらに有するのが良い。1つの実施形態では、モバイルロボット150は、駆動シャフト182に取り付けられたコンテナ移送駆動装置180を有するのが良い。駆動スプロケット184が駆動シャフト182の反対側の端部に取り付けられるのが良い。駆動スプロケット184は、第1のチェーン188によって被動スプロケット186に結合されるのが良い。第2のチェーン190が被動スプロケット186に巻き付くのが良い。1対のフリッパ192,194が第2のチェーン190に取り付けられている。第2のチェーン190及びフリッパ192,194は、トート又は他のコンテナを運搬するためのペイロードベッド198の側壁196に取り付けられるのが良い。駆動装置180の回転により、第2のチェーン190及びフリッパ192,194が回転する。反対側の側壁200が第2のチェーン及びフリッパの同様な組立体を有し、第2のチェーン及びフリッパもまた、駆動装置180によって回転する。両方の側壁に設けられたフリッパ192,194は、コンテナを保管ロケーション106に移送するようペイロードベッド198上に着座したコンテナの特徴部に係合するよう構成されている。これら特徴部はまた、コンテナを保管ロケーション106からペイロードベッド198上に移送するよう両方の側壁上のフリッパ192,194と係合するのが良い。
【0028】
上述の内容は、モバイルロボット150内に設けられてエネルギー貯蔵装置160によって電力供給される駆動モータのうちの幾つかの一般化された説明のために提供されている。エネルギー貯蔵装置160に含まれて電力供給されるのが良い追加の又は別の駆動モータの細部が上述の参照により引用された米国特許出願公開、例えば2017年5月10日に出願されたジョン・ラート及びウィリアム・フォスナイト名義の米国特許出願公開第2017/0313514号明細書(発明の名称:Order Fulfillment System)に提供されている。しかしながら、言うまでもないこととして、上述し又は違ったやり方でモバイルロボット150に用いられる特定の駆動システムは、本発明の充電システムにとって必要不可欠であるというわけではなく、本発明の充電システムは、多様な他の又は別の駆動システム、動力コンポーネント及び/又は別の形態を有するモバイルロボットに使用することができる。
【0029】
各モバイルロボット150は、モバイルロボットが信号を資材管理システム(MCS)210に送ったり信号をMCS210から受け取ったりすることができるようにするアンテナ(図示せず)をさらに有するのが良い。一般に、MCS210は、モバイルロボットが注文履行施設内全体にわたって移動しているときにモバイルロボットの全体的な作動を制御する。MCS210は、ロボットに在庫コンテナのピックアップ及び配送という業務を課すとともに施設内全体におけるモバイルロボットの交通の流れを制御する。一般に、モバイルロボット150は、そのMCS指定業務を実行する際にある時点でレベル変更塔120に沿って移動し、そして、モバイルロボット150は、MCS210からの別個の充電指令を必要としないでこの時点で再充電が可能である。しかしながら、MCS210は、ロボットが充電レール130を含むレベル変更塔120内で移動しないで、ロボットに長距離にわたって移動する業務を課すことが起こる場合がある。この場合、MCS210は、モバイルロボットがその業務を開始する前にレベル変更塔に沿って充電を行うよう方向付けることができる。
【0030】
加うるに、実施形態では、MCS210は、各モバイルロボット150の電力レベルをモニタすることができる。モバイルロボットの電力が極めて低い場合、MCS210は、モバイルロボットをレベル変更塔120内の充電レール130に向け直すことができる。さらに、以下に説明するように、MCS210は、モバイルロボットが充電レール130から離れて長期間にわたって待機せざるを得ない場合、モバイルロボット150についてハイバーネート機能を実行することができる。
【0031】
作用を説明すると、本発明は、オポチューニスティック式充電システムを提供し、すなわち、モバイルロボット150は、これらが充電レール130を含むレベル変更塔120に沿って移動する機会を有する場合にはいつでも充電を行うことになる。
図3及び
図4は、充電レール130を充電器160に電気的に結合するための結合機構体216を示している。
図5及び
図6は、結合機構体216のそれ以上の細部を示している。結合機構体216は、充電レール130の軌道に押しつけられる1対のばね押し充電トウ218を含む。充電レール130はそれ自体、チャネル173のベース内に位置決めされるのが良い。上述したように、チャネル173は、チャネルの側壁上にラック歯車171をさらに有し、このラック歯車は、モバイルロボット150の垂直移動を可能にするよう案内ベアリング174と係合する。
【0032】
モバイルロボットが充電レール130を含むレベル変更塔120に入ると、充電トウ218は、充電レール130に押しつけられ、その結果、充電レールからの電流が充電トウを通って充電器162まで流れ、それによりエネルギー貯蔵装置160を再充電するようになっている。充電トウ218は、モバイルロボット150がレベル変更塔120内に位置している間、充電レールと接触状態のままである。エネルギー貯蔵装置160は、モバイルロボット150がレベル変更塔120内で上方に動いていても下方に動いていてもいずれにせよ、同一の仕方で充電される。しかしながら、エネルギー貯蔵装置160は、モバイルロボットが動いている場合に迅速に充電可能であり、と言うのは、潜在的エネルギーの変化の結果として、駆動装置のうちの1つ又は2つ以上の電流がエネルギー貯蔵装置160に流れることができるからである。
【0033】
上述したように、各モバイルロボット150は、充電レール130からの電圧を、エネルギー貯蔵装置160を充電するために用いられる低い電圧に変換するための充電器162を備えるのが良い。充電器162が従来型システムの場合のように施設電源と充電レールとの間に設けられるのではなく、モバイルロボット150の各々に設けられるということが本発明の特徴である。従来型システムでは、充電器が故障すると、その充電器が受け持っていたレールの部分は、最早電力を受け取らず、ルート変更される必要のある幾つかの又は全てのモバイルロボットに潜在的に悪影響を及ぼす。本発明の充電器が故障した場合、このことは、充電器が配置されているモバイルロボットのみに影響を及ぼす。したがって、本発明は、単一の故障箇所のない極めて信頼性の高いシステムを提供する。1つのロボットが故障した場合、これは、循環から取り出されて容易に交換可能である。
【0034】
本発明はまた、充電器162がロボット中に組み込まれているという点で費用効果の良いシステムを提供する。加うるに、充電器をロボットに設けることにより、ACライン電力によってレールに直接的に電力供給することができる。高電圧能力を充電レールに提供することに加えて、この種の電源使用法は、最小限の充電インフラストラクチャ、例えば少数の充電箇所及び充電箇所1個あたりの低コスト(過剰電流保護)を必要とする。さらに、このシステムは、保管構造体に対する変更を必要としないで、多くのロボットを追加することによってシステムを容易にスケールアップすることができる。
【0035】
本発明はまた、ロボット寿命について利点を提供する。上述したように、充電器162をモバイルロボットまで動かすことは、充電器が故障したときの保守のために稼働停止する必要のあるシステムの部分が存在しないということを意味している。この利点をオポチューニスティック式スーパーキャパシタ利用システムと組み合わせることができ、このことは、エネルギー貯蔵装置がロボットの寿命(10年超)にわたって長持ちし、作動中、ロボットが再充電されるために休止する必要が決してないことを意味している。
【0036】
さらに、各モバイルロボット150のところで局所的に適用される別個独立の充電管理が可能である。かくして、各モバイルロボットのところでの充電速度が高度に制御される。かくして、例えば、多数のロボットを充電レールに同時に追加することができ、と言うのは、搭載型充電器162が全てのロボットの充電速度を調節するからである。充電速度調節は、多様な利点をもたらし、かかる利点としては、電力負荷がAC回路遮断器定格を超えることがないようにするということが挙げられる。さらに、充電器162は、エネルギー貯蔵装置160が完全に充電されると、エネルギー貯蔵装置160への電力を停止することができる。加うるに、充電器162は、充電レール130に接続され2つ又は3つ以上のモバイルロボット相互間の電気的ショートを阻止する。
【0037】
充電器162はまた、エネルギー貯蔵装置160及び充電器162の関数であるように充電速度を制御する。具体的に説明すると、エネルギー貯蔵装置は、大きな電力を受け取った際に一般的に迅速に充電を行うことになる。特に、エネルギー貯蔵装置に送られるエネルギーは、電力と時間の積(E=P・t)である。モバイルロボット150が充電レールに接続されている時間の長さがモバイルロボットの行き先によって制限されるとともに設定されるので、モバイルロボットに送られるエネルギーは、その時間でそのロボットに送られる電力を最大にすることによって最大になる。
【0038】
しかしながら、エネルギー貯蔵装置160及び充電器162のパラメータは一緒になって、エネルギー貯蔵装置160に対して最大電力Pmaxを定めることになり、これよりも大きい場合、エネルギー貯蔵装置は、迅速には充電を行わないであろう。すなわち、Pmaxがエネルギー貯蔵装置160にいったん加えられると、加えられた電力をそれ以上に増大させても、結果として充電が迅速にはならない。充電速度は、充電レールによって送られる電力及びその充電レールに接続されているモバイルロボット150の機数の関数でもある。上述したように、従来型充電システムは、低電圧低電力充電レールを用いていた。
【0039】
従来型システムとは対照的に、数機のモバイルロボットを高い充電速度では単一の充電レール130から離して充電することができるということが本発明の特徴である。多数のロボットnが充電レール130から離れて同時に充電を行っている場合、モバイルロボットnにより引き出される電力の合計は、次のように、充電レールによって供給される電力であろう。
Prail=Σ(P1+P2+……+Pn)
上述したように、Pmaxは、エネルギー貯蔵装置に供給される最大電力Pmaxを定めることになり、これよりも大きい場合、エネルギー貯蔵装置は、迅速には充電を行わないであろう。本発明の充電レール130が高い電圧及び大きな電力をもたらすと仮定すると、充電レールから離れて充電を行うことができるロボットのある数nが存在し、その結果、次のように各ロボットがPmaxを受け取ることができる。
Prail≧Σ(P1max+P2max+……+Pnmax)
注文履行システムの通常の作動中、m基という多くのロボットが所与のレベル変更塔内で同時にレベルを変更している場合がある。Pmaxで充電レール130から離れて充電を行うことができるロボットの数nが通常の動作下において一度にレベル変更塔内に存在するロボットの数mよりも大きいということが本発明の有利な特徴である。かくして、m基のロボットの各々は、エネルギー貯蔵装置160及び充電器162によって許容される最も高い充電速度で充電可能である。
【0040】
例えば、
図7は、保管構造体102の縁104を示している。ベイ104は、上述したような充電レール130を含むレベル変更塔120を有する。図示の実施例は、レベル変更塔120内に5基のモバイルロボット150を有し、各モバイルロボットは、これらが垂直に動いているときに充電レール130から離れて充電を行う。この実施形態では、5基のモバイルロボットは、通常の作動下において任意所与の時刻に塔120内に存在する最も多くのモバイルロボットである。
【0041】
この実施例では、塔120内の充電レールが上述したように11kWまでの電力を送ることができると想定する。この実施例では、さらに、5基のモバイルロボットの各々に設けられたエネルギー貯蔵装置160に関するPmaxが2000Wであると想定する。かくして、次式が成り立つ。
Prail≧Σ(P1max+P2max+P3max+P4max+P5max)
11,000W≧Σ(2000W+2000W+2000W+2000W+
2000W)=10,000W
充電レール130により供給される電力が5基のモバイルロボット150のためのPmaxの合計よりも大きいので、モバイルロボットの各々をこれらの電力供給装置について可能な限り最も短い時間(例えば、数秒)で充電レール130及び充電器162によって同時に充電することができる。4基以下のモバイルロボットの150が塔120内に存在している場合、各モバイルロボットは、依然として最も短い時間で充電を行う。塔120内に6基のモバイルロボットが存在していることが万一起こった場合、充電レールによって供給される最大電力(11kW)は、6基のモバイルロボットに関するPmaxの合計(12kW)よりも最早大きくはない。この場合、6基のモバイルロボットは、可能な限り最も短い時間で最早充電を行うことはなく、6基のモバイルロボットは、依然として迅速に充電を行う(11kW/6=1833W)。
【0042】
モバイルロボットが充電を行う速度が決定的に重要な要因ではないということが起こる場合がある。例えば、注文履行施設の遊休(非稼働)期間中、多数のモバイルロボット(例えば、100機以上)が
図7の塔120内に保管される場合があり、各モバイルロボットは、充電レール130から離れて充電を行う。実施形態では、各モバイルロボットのエネルギー貯蔵装置は、P
maxよりも十分に低い電力を受け取り、保管状態のモバイルロボットに関する充電時間は、最大充電速度よりも十分に高いであろう。しかしながら、ロボットが保管されて休止状態であると仮定すると、これらロボットを低い電力、例えばトリクル充電で充電することができ、その結果、ある期間後、例えば数時間後、保管状態のモバイルロボットの全てが完全に充電される。各モバイルロボットの充電速度をMCS210内の監視ソフトウェアアルゴリズムによって設定することができ、それによりもしそのように構成されていなければ回路遮断器をトリップ動作させる可能性のある過負荷条件が阻止される。1つの実施例では、アルゴリズムは、各モバイルロボットの充電速度を充電レールに取り付けられているモバイルロボットの機数によって除算された充電レールの電力能力に合わせて設定することができる。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、エネルギー貯蔵装置コントローラに組み込まれるハイバーネート機能を含むエネルギー貯蔵解決策をさらに具体化する。エネルギー貯蔵装置コントローラのハイバーネート機能は、ロボットが充電レール130から離れて長期間にわたって待機せざるをえない場合、全ての電力負荷をロボット駆動装置から切り離すとともに他のコンポーネントをエネルギー貯蔵装置160から切り離す。これは、例えば輸送、点検整備及び/又は作業停止を含む多くの理由の場合に起こることがある。MCS210の監視ソフトウェアアルゴリズムは、これら又は他の条件についてモニタすることができ、そしてモバイルロボット150がその電力を保つためにハイバーネーション(休止)状態にされることが必要であることを判定する。この場合、MCS210は、ワイヤレス信号をモバイルロボットに送り、その結果、エネルギー貯蔵装置コントローラは、全ての電力負荷をエネルギー貯蔵装置160から切り離す。
【0044】
MCS210はまた、エネルギー貯蔵装置コントローラによって使用される持続時間を伝えてワイヤレス通信に必要なむき出しの最小限のハードウェアに定期的に電源を入れることができ、それにより作動がいつでも再開できるかどうか又は再開されたかどうかを確認することができる。予測される点検整備までの時間が長ければ長いほど、起動相互間の持続時間がそれだけいっそう長くなり、それによりエネルギーが必要なときに診断及び電動式の運動に利用できるようにする。次に、エネルギー貯蔵装置コントローラは、MCS210により「チェックイン」する時間までの数分間を数えながら超低電力状態で別個独立に動作し、次にワイヤレス通信サブシステムに電力供給してMCS210への接続を行う。準備ができると、ロボットは電力供給され、もしそうでなければ、MCS210は、新たな稼働停止期間を定めるための機会を持ち、ロボットをハイバ-ネーション状態に戻す。
【0045】
ハイバ-ネーション機能をモバイルロボットに組み込むことにより、これらモバイルロボットは、ロボットが充電ロケーションから遠ざかって取り残されているときに長期間にわたってエネルギーを保ち、多くの場合、手動によるロボットの回収の必要性がなくなる。
【0046】
以上、要するに、本発明は、施設内における複数のモバイルロボットのための電源システムであって、本電源システムが軌道システム内に設けられた充電レールを含み、複数のモバイルロボットは、充電レールに沿って移動し、充電レールは、第1の電圧を提供するよう構成され、本電源システムが複数のモバイルロボットの各々に設けられた充電器から成る複数の充電器をさらに含み、複数のモバイルロボットの各々の充電器は、充電レールからの第1の電圧を第1の電圧よりも低い第2の電圧に変換し、本電源システムがさらに、複数のモバイルロボットの各々に設けられた再充電可能なエネルギー貯蔵装置から成る複数の再充電可能なエネルギー貯蔵装置を含み、複数のモバイルロボットの各々の再充電可能なエネルギー貯蔵装置は、第2の電圧を用いて充電されることを特徴とする電源システムに関する。
【0047】
別の実施例では、本発明は、施設内における複数のモバイルロボットのための電源システムであって、モバイルロボットは、コンテナを施設内の保管ロケーションに搬送したりこの保管ロケーションから搬送したりするよう軌道システム上で移動するよう構成され、本電源システムが軌道システム内に設けられた充電レールを含み、充電レールは、第1の電圧を提供するよう構成され、本電源システムが複数のモバイルロボットの各々に設けられた充電器から成る複数の充電器をさらに含み、複数のモバイルロボットの各々の充電器は、充電レールからの第1の電圧を第1の電圧よりも低い第2の電圧に変換し、複数のモバイルロボットの各々の再充電可能エネルギー貯蔵装置は、複数のモバイルロボットのうちの各モバイルロボットが軌道システム上で移動してコンテナを施設内の保管ロケーションに搬送したりこの保管ステーションから搬送したりしているときに、第2の電圧を用いてオポチューニスティック方式で充電されることを特徴とする電源システムに関する。
【0048】
別の実施例では、本発明は、自動保管・出庫システム施設内における複数のモバイルロボットの再充電可能エネルギー貯蔵装置を充電する方法であって、(a)施設のための線間電圧を充電レールに送るステップと、(b)複数のモバイルロボットのうちの一モバイルロボットを方向付けてこのモバイルロボットを、充電レールを有する軌道に接続させるステップと、(c)モバイルロボットと充電レールとの接続時、施設からの線間電圧をモバイルロボットに設けられた充電器によりモバイルロボットの再充電可能なエネルギー貯蔵装置を充電するよう使用できる低電圧に変換するステップと、(d)ステップ(c)で変換された電圧でモバイルロボットの再充電可能エネルギー貯蔵装置を充電するステップとを含むことを特徴とする方法に関する。
【0049】
本発明についての上述の詳細な説明は、例示及び説明の目的で提供されている。網羅的であることを意図しておらず、あるいは本発明を開示した形態そのものに限定することを意図していない。上記教示に照らして多くの改造及び変形が可能である。説明した実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を最も良く説明し、それにより当業者が本発明を種々の実施形態で、しかも想定される特定の使用に合うような種々の改造を施した状態で最も良く利用することができるようにするために選択された。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲の記載によって定められることが意図されている。