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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】新規T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/725 20060101AFI20230602BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230602BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230602BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230602BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230602BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230602BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230602BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230602BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230602BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
C07K14/725 ZNA
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/63 Z
C07K16/28
A61K38/16
A61K35/17
A61K39/395 N
A61P35/00
C12N15/12
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020543406
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 GB2018053045
(87)【国際公開番号】W WO2019081902
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】1717578.7
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1806155.6
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520145986
【氏名又は名称】ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー セウェル
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー ドルトン
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/075939(WO,A1)
【文献】Won EJ, et al.,Clinical relevance of circulating mucosal-associated invariant T cell levels and their anti-cancer activity in patients with mucosal-associated cancer,Oncotarget,7(46),2016年11月15日,pp.76274-76290
【文献】Gold MC, et al.,MR1-restricted MAIT cells display ligand discrimination and pathogen selectivity through distinct T cell receptor usage,J Exp Med,211(8),2014年07月28日,pp.1601-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/725
C12N 5/0783
C12N 5/10
C12N 15/63
C12N 15/12
C12N 15/13
C12P 21/08
C07K 16/28
A61K 38/16
A61K 35/17
A61K 39/395
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α鎖及びβ鎖を有し、かつCDR3αとしてアミノ酸配列:
【化1】
CDR3βとして
【化2】
【化3】
を含む、又はこれらからなる相補性決定領域を有することを特徴とMR1に拘束される、腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
【請求項2】
粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT細胞)によって発現され、又はMAIT細胞と関連付けられるTCRではない、請求項1記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
【請求項3】
アミノ酸配列:
【化4】
若しくはそれと少なくとも88%の同一性を共有する配列を含み、又はこれらからなるα鎖を有する、請求項1又は2記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
【請求項4】
アミノ酸配列:
【化5】
若しくはそれと少なくとも88%の同一性を共有する配列を含み、又はこれらからなるβ鎖を有する、請求項1~3のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
【請求項5】
可溶性形態にある、請求項1~4のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
【請求項6】
膜適合型形態にあり、膜貫通領域及び細胞内領域を有する、請求項1~5のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載のTCRを発現するT細胞。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項記載のTCRを発現するT細胞クローン。
【請求項9】
列番号:7のアミノ酸配列又はそれと少なくとも98%の同一性を共有する配列を含み、かつCDR3αとして配列番号:1、CDR1αとして配列番号:3、及びCDR2αとして配列番号:4の配列を有するCDRを含む、α鎖を有するTCR、並びに配列番号:8のアミノ酸配列又はそれと少なくとも98%の同一性を共有する配列を含み、かつCDR3βとして配列番号2、CDR1βとして配列番号:5、及びCDR2βとして配列番号:6の配列を有するCDRを含む、β鎖を有するTCRを発現する、請求項8記載のT細胞クローン。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項記載のTCRをコードするベクター。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項記載のTCR及びキラーT細胞などの免疫細胞と結合し、従ってこれを活性化させる免疫細胞活性化成分又はリガンドを含む二重特異性モノクローナル抗体
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項記載のTCR、請求項7記載の細胞、請求項8若しくは9記載のクローン、請求項10記載のベクター、又は請求項11記載の二重特異性モノクローナル抗体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
癌の治療のための、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記癌が、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、前立腺癌、子宮頚癌、黒色腫(皮膚癌)、骨癌、卵巣癌、乳癌、及び血液癌からなる群から選択される、請求項13記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本開示は、新規T細胞受容体(TCR)、特に少なくとも1つのその相補性決定領域(CDR);前記TCRを発現するT細胞;前記TCRを発現するクローン;前記TCRをコードするベクター;可溶性形態の前記TCR;前記TCR、前記細胞、前記クローン、又は前記ベクターを含む医薬組成物又は免疫原性物質又は二重特異性又はワクチン;癌を治療するための前記TCR又は前記細胞又は前記クローン又は前記ベクター又は前記医薬組成物又は免疫原性物質又は二重特異性又はワクチンの使用;及び前記TCR、前記細胞、前記クローン、前記ベクター、前記TCRを含む前記医薬組成物、免疫原性物質、二重特異性又はワクチンを使用して癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
本発明者らは、癌の治療に有効な新たなクラスのT細胞を発見した。当該T細胞は、集団間で一様な(population-invariant)主要組織適合遺伝子複合体クラス関連タンパク質(MR)1を介して癌細胞を認識する。この新たなT細胞の同定は、特定のヒト白血球抗原(HLA)を必要とせずに癌細胞を認識するT細胞を探索する実験に端を発する。HLA座位は高度な可変性を有し、今日にあっては17,000を超える異なる対立遺伝子が記載されている。従って、HLAを介して機能するあらゆる治療的アプローチは、ごく少数の患者においてしか有効となり得ない。対照的に、ヒト集団の全体でMR1が発現する。
【0003】
MR1に拘束される主な種類の公知のT細胞は、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)と呼ばれている。MAITは、マイコバクテリウムのリボフラビン生合成における中間体を認識することが知られている。本発明者ら自身及び他の研究室による最近の研究より、異なるMR1結合性リガンドを認識する、他の種類のMR1に拘束されるT細胞も存在することが示されている。本明細書に記載の研究成果は、本発明者らの得た新たなクラスのT細胞が、MR1を介した標的特異性を有するものの、そのTCRはMR1自体とも、公知の感染性リガンドを負荷されたMR1とも結合せずに、このT細胞はMR1の結合グルーブの中の癌特異的リガンドを認識することを示す;MR1は、癌に特異的、又は癌で上方調節されているリガンドを、TCRに提示する。
【0004】
本発明者らの得た新たなT細胞クローン、MC.7.G5は、腺癌肺胞基底上皮細胞株であるA549(情報については、ATCC(登録商標)参照記号CCL-185)とHLA型不適合である健常ドナー由来のT細胞のスクリーニングの中で発見された。実験的アプローチには、T細胞をA549細胞とともにインキュベートし、続いてA549細胞に反応して増殖したT細胞を単離し、かつクローニングすることを含めた。さらなる検討から、MC.7.G5 T細胞クローンは、癌細胞、さらには多くの臓器及び組織種由来の癌細胞を認識し、かつ殺傷することができることが示され、従ってこのクローンはほとんどの種類の癌を治療する潜在性を有することが示された。
【0005】
知られているように、図12に示すように、TCRはジスルフィド結合を有する膜係留型ヘテロ二量体タンパク質であり、通常不変のCD3鎖分子と会合して完全機能性TCRを形成する、高度な可変性を有するアルファ(α)及びベータ(β)鎖からなる。この受容体を発現するT細胞を、α:β(又はαβ)T細胞と呼ぶ。
【0006】
α及びベータβ鎖は、定常(C)領域及び可変(V)領域を含む細胞外ドメインから構成される。定常領域は、細胞膜に近接し、これに膜貫通領域及び短い細胞質尾部が続くのに対し、可変領域はリガンドに結合する。大部分のαβ T細胞のリガンドは、MHC分子に結合したペプチドである。
【0007】
TCR α鎖及びβ鎖の両方の可変ドメインはそれぞれ、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの可変領域を有する。また、β鎖(HV4)上には別の可変性領域が存在し、この領域は通常は抗原と接触せず、したがってCDRとはみなされない。一般に、抗原結合部位は、TCR α鎖及びβ鎖のCDRループによって形成される。CDR1α及びCDR2αは個別のVα遺伝子によってコードされるのに対し、CDR1β及びCDR2βは個別のVβ遺伝子によってコードされる。TCRα鎖のCDR3は、V領域及びJ領域(Joining region)の結合部周辺においてヌクレオチド付加及び除去が起こり得ることによる超可変性を有する。TCRβ鎖のCDR3は、多様性(D)遺伝子も含み得るためにさらに高い変化可能性を有する。
【0008】
CDR3はプロセシングされた抗原の認識を担う主要なCDRであるが、α鎖のCDR1もまた抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されており、β鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用する。
【0009】
2015年には、約9050万人が癌を有していた。1年につき約1410万の新規症例が発生している(黒色腫以外の皮膚癌は含まない)。ヒトの死のうち約880万件の死(15.7%)が、癌に起因する。男性における最も一般的な種類の癌は、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、及び胃癌である。女性においては、最も一般的な種類の癌は、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、及び子宮頚癌である。各年の新規癌件数の合計に黒色腫以外の皮膚癌を含めれば、これは症例のおよそ40%を占めるだろう。アフリカ以外においては、子供について急性リンパ球性白血病及び脳腫瘍が最も一般的であり、アフリカにおいては非ホジキンリンパ腫がより高頻度で発生する。2012年には、15歳以下の約165,000人の子供たちが癌と診断された。癌のリスクは年齢とともに顕著に高まり、先進国において多くの癌がより一般的に発生する。比率は、古き時代に対しより人口が増え、発展途上世界における生活様式が変化するにつれ、上昇している。2010年については、癌の財政コストは、年当たり1.16兆ドル、USDと推定された。その結果、この疾患を治療し、又は根絶するより優れた、より安全な方法を提供することが求められている。異常な組織を殺傷する生体の自然防衛システムを使用する免疫療法が化学的介入よりも安全であることが認知されているが、有効性を高めるためには、免疫療法は癌に特異的でなくてはならない。さらに、あらゆる種類の癌に対して有効な免疫療法が発見されれば、多くの異なる種類の癌に罹患する個体に投与することができる(すなわち、汎集団的な応用性を有する)だけでなく、2以上の種類の癌に罹患する単一の個体に投与することもできるため、きわめて有益であろう。さらに、MHCに拘束されない免疫療法を特定すれば、MHC組織型にかかわりなくあらゆる個体に投与することができることを意味するので、きわめて有利ともなるであろう。
【0010】
本明細書における本発明者らが同定したT細胞は、あらゆる種類の癌に有効であり、MHCに拘束されておらず、したがって拘束するMR1分子のユビキタスな発現に起因する汎集団的な応用性を有するという点で前述の有利な特徴を有する。
【発明の概要】
【0011】
(発明の言及)
本発明の第1の態様に従って、(CDR)
【化1】
を含み、又はこれらからなる相補性決定領域を特徴とする腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)を提供する。
【0012】
本発明の好ましい実施態様において、前記CDRは(CDR)
【化2】
又はそれらと少なくとも88%、例えば89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を共有するCDRを含み、又はこれらからなる。
【0013】
本明細書に記載するCDRは、前記TCRのCDR3であり、従ってプロセシングされた抗原又はリガンドの認識を担う主要なCDRである。その他のCDR(CDR1α、CDR2α、CDR1β、及びCDR2β)は、生殖細胞系列によってコードされている。従って、本発明は1以上のこれらのその他のCDR、すなわちCDR1α、CDR2α、CDR1β、又はCDR2βを同様に含むTCRとさらに関係する。
【0014】
従って、好ましい実施態様において、前記TCRは以下の相補性決定領域:
【化3】
の任意の組合わせを含む1以上を含む、又はこれらからなる。
【0015】
本明細書における腫瘍特異的TCRの語は、MR1の状況下で腫瘍細胞又は腫瘍細胞リガンドを特異的に認識し、腫瘍細胞又は腫瘍細胞リガンドによって活性化されるが、MR1の状況下で非腫瘍細胞又は非腫瘍細胞リガンドによって活性化されないTCRを指す。
【0016】
本発明の好ましい実施態様において、前記TCRはα鎖及びβ鎖を有するαβ TCRであり、前記α鎖の前記CDRは、CDR:
【化4】
又はそれらと少なくとも88%、例えば89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を共有するCDRを含み、又はこれらからなり、前記β鎖の前記CDRは、CDR:
【化5】
又はそれらと少なくとも88%、例えば89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を共有するCDRを含み、又はこれらからなる。従って、前記TCRは前述のCDRの一方又は両方を含み、かつ好ましい実施態様において、前記CDRの両方を含み得る。
【0017】
なおさらに好ましい実施態様において、前記TCRはMHCに拘束されず、別のMHC様分子であるMR1の状況下で腫瘍特異的なリガンドと結合する点で従来型と異なる。これまで、MR1に拘束されたαβ T細胞は、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT細胞)のみであると考えられていたが、本明細書において、本発明者らはMAIT TCRα鎖を発現しないさらなるクラスのMR1に拘束されたT細胞が存在し、さらに有利なことに、これらのT細胞及びそのTCRが腫瘍特異的である(すなわち、腫瘍細胞に反応するが、非腫瘍細胞には反応しない)ものの、驚くべきことにその起源又は組織種にかかわらずあらゆる腫瘍を識別することができるため、汎癌治療の潜在性を有することを実証する。さらに、これらのT細胞及びそのTCRがMHCに拘束されていないという事実は、これらが汎集団的な治療の潜在性を有し、従ってきわめて重要な新規癌治療となることを意味する。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記TCRα鎖は、
【化6】
又はそれと少なくとも88%、例えば89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有する配列を含み、又はこれらからなる。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記TCRβ鎖は、
【化7】
又はそれと少なくとも88%、例えば89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有する配列を含み、又はこれらからなる。
(上記パラグラフにおいて、太字かつ下線の引かれたテキストは、CDRを表す)
【0020】
本発明のなおさらに好ましい実施態様において、前記TCRは、前記TCRα鎖及び前記TCRβ鎖を含む。
【0021】
なおさらに好ましい実施態様において、前記TCRは可溶性TCRすなわちsTCRであり、従って膜貫通を、理想的には細胞内ドメインをも有さない。
【0022】
本発明のなお別の好ましい実施態様において、前記TCRは本明細書に記載の機能性を有するキメラ受容体の部分である。
【0023】
本発明のさらなる態様に従って、理想的には可溶性又は膜適合型形態の、すなわち膜貫通領域及び細胞内領域を有する本発明の前記TCRを発現する、T細胞を提供する。
【0024】
本発明のなおさらなる態様に従って、理想的には可溶性又は膜適合型形態の、すなわち膜貫通領域及び細胞内領域を有する本発明の前記TCRを発現する、T細胞クローンを提供する。好ましくは、前記クローンは、本明細書に記載のMC.7.G5クローンである。
【0025】
本発明のなおさらなる態様に従って、本発明の前記TCRをコードするベクターを提供する。
【0026】
本発明のなおさらなる態様に従って、前記TCR又は細胞又はクローン又はベクターを含む医薬組成物又は免疫原性物質又は二重特異性又はワクチンを提供する。
【0027】
好ましい実施態様において、前記医薬組成物又は免疫原性物質又は二重特異性は、あらゆる癌、しかし理想的には結腸直腸癌、肺癌、腎癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮頚癌、黒色腫(皮膚)、骨癌、乳癌、卵巣癌、又は血液癌を治療するために使用する。
【0028】
本発明のなおさらなる態様に従って、癌を治療するための前記TCR又は細胞又はクローン又はベクターの使用を提供する。
【0029】
本発明のなおさらなる態様に従って、前記TCR又は細胞又はクローン又はベクターを、治療するべき個体に投与することを含む、癌の治療方法を提供する。
【0030】
理想的には、前記癌は、あらゆる種類であるが、特に結腸直腸癌、肺癌、腎癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮頚癌、黒色腫(皮膚)、骨癌、乳癌、卵巣癌、又は血液癌である。
【0031】
本発明の好ましい方法において、前記TCR、細胞、クローン、又はベクターを、抗腫瘍剤、例えばこれらに限定はされないが、二重特異性と組み合わせて投与する。
【0032】
本明細書における二重特異性の語は、2つの異なる種類の抗原に同時に結合することができる人工タンパク質である二重特異性モノクローナル抗体(BsMAb、BsAb)を指す。
【0033】
あるいは、前記TCRは、癌細胞表面のそのリガンドと、及び同時にキラーT細胞などの免疫細胞と結合し、従ってこれを活性化させる免疫細胞活性化成分又はリガンドと結合させることを目的とした前記TCRを含む、二重特異性の部分を形成し得る。
【0034】
本発明のなおさらなる態様に従って、癌を治療するための医薬の製造における前記TCR又は細胞又はクローン又はベクターの使用を提供する。
【0035】
本発明のなおさらなる態様に従って、癌の治療のための組合わせ治療薬であって:
a) 前記TCR又は細胞又はクローン又はベクターを、
b) さらなる癌治療薬と組み合わせて含む、前記組合わせ治療薬を提供する。
【0036】
以下の特許請求の範囲及び本発明の先行する記述において、文脈により表現言語又は必要な意味のために別段に要求される場合を除き、「含む」という語、又は「含む」、若しくは「含んでいる」などの変形を、非排他的な意味で、すなわち言及された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施態様におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除しないように使用する。
【0037】
本明細書中で引用するあらゆる特許又は特許出願を含むすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込む。任意の参考文献が先行技術を構成することは容認しない。さらに、いずれの先行技術も当技術分野の共通一般知識の部分を構成することは容認しない。
【0038】
本発明の各態様の好ましい特徴は、いずれかの他の態様と関連して説明することができる。
【0039】
本発明の他の特徴は、以下の実施例から明らかとなる。一般的に、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、又は任意の新規な組合わせに拡張する。従って、本発明の特定の態様、実施態様、又は実施例と関連して記載される特徴、整数、特性、化合物又は化学成分は、本明細書に記載される任意の他の態様、実施態様又は実施例に不適合ではない限り、それに適用可能であると理解すべきである。
【0040】
さらに、別段に言及しない限り、本明細書に開示する任意の特徴は、同じ又は同様の目的に役立つ代替の特徴によって置換することができる。
【0041】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体を通じて、文脈により別段に要求されない限り、単数形は複数を包含する。特に、不明確な冠詞が使用される場合、文脈により別段に要求されない限り、本明細書は複数形並びに単数形を意図するものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の実施態様は、ここで以下を参照してのみ例として記載される:
図1】MC.7.G5を単離する方法及びその初期特性評価を示す。A. T細胞を色素CFSEで標識し、A549とともに2週間インキュベートした。CFSE蛍光の低下はこれらのT細胞が増殖したことを表し、A549反応性T細胞を単離することが可能となる。B. TNFαの放出に基づくA549細胞に対するMC.7.G5の反応性は、MHCクラスI又はIIに対する遮断抗体によっては妨害されなかった。アッセイからの上清を、TNFα ELISAによる解析のために収集した。C. MC.7.G5クローンの抗体表現型決定パネルにより、それがγδ-αβ+ CD8+であることが示された(図16Aにおいて繰り返す)。
図2】正常(非癌)細胞に反応しないMC.7.G5を示す。実験は、黒色腫細胞株MM909.24(MC.7.G5の癌標的)及び4つの1次(非腫瘍、非不死)細胞株に反応するクローンMC.7.G5からのTNFαの放出量を比較する。SMC3は平滑筋細胞株であり;CIL-1は繊毛上皮細胞であり、MCR5はhTERT形質導入線維芽細胞株であり;Hep2は肝細胞株である(正常細胞株も、図15及び17において試験する)。
図3】MC.7.G5のTCRα及びβ鎖の配列を示す。
図4】クローンMC.7.G5が広範囲の腫瘍標的に反応することを示す。T細胞活性化アッセイから収集した上清から、腫瘍のパネルに対するMC.7.G5の反応が示され、これにより、TNFα及びMIP1βの産生量を調べた。B. クロム放出アッセイより、示されたT細胞対癌細胞比における癌細胞の比殺傷能が示される。A及びB 2連で実施し、エラーバーを伴う。
図5】クローンMC.7.G5のリガンドであるMR1を同定するために使用した全ゲノムCRISPRアプローチによる遺伝子トラップ法を示す。MC.7.G5クローンのためのCRISPRライブラリスクリーニングのデータを、図13に示す。
図6】MR1を介した標的特異性を示すクローンMC.7.G5を示す。 A. MR1抗体により、A549細胞の認識が遮断された。ELISAによるTNFα及びMIP1βの産生量。 B. A549c9及び黒色腫MM909.24c4のMR1ノックアウト株(CRISPR/Cas9技術)はMC.7.G5により認識されなかった。C. MR1をノックアウトしたA549c9細胞又は初代細胞株MRC5に対する比殺傷能はなかった。MM909.24wt及びA549wtの殺傷も示す。D. この細胞株におけるレンチウイルスを用いた形質導入によるMR1の過剰発現により、認識能がわずかに増強される。LCL株pt146は、MR1を過剰発現するように形質導入した場合でさえも、クローンMC.7.G5によって認識されない。このMR1の一部は、細胞表面に提示され、MR1抗体を用いて検出することができる(右)。
図7】クローンMC.7.G5は、四量体形態のMAITリガンドMR1-5-(2-オキソプロピリデンアミノ)-6-d-リビチルアミノウラシル(MR1-5-OP-RU)又はMR1アセチル-6-ホルミルプテリン(Ac-6-FP)により染色されないことを示す。並列実験において、MAITクローンは、MR1-5-OP-RU四量体により強く染色された。また、PBMC集団の中には、MR1-5-OP-RUにより染色される細胞の小集団が存在する。PBMC試料内には、検出可能なMAIT細胞が存在すると予想される。この結果は、MC.7.G5 TCRはMR1自体とも、公知の感染性リガンドを負荷されたMR1とも結合するのではないことを示し、このT細胞はMR1の結合グルーブの中の癌特異的リガンドを認識することを示す。反復的四量体染色実験が図14Eに示されており、これには「空の」MR1を含む。
図8】Ac-6-FP及びスメグマ菌(M. smeg)による感染により、細胞表面におけるMR1の発現が増強されるにもかかわらず、クローンMC.7.G5の認識能が低下することを示している。A549又はMM909.24細胞を12時間にわたり50 μg/mL Ac-6-FPでインキュベートすると、表面でのMR1の発現が増加するが、クローンMC.7.G5による認識能は低下する。スメグマ菌による感染の影響はさらにより劇的であり、MAITクローンの強力な活性化因子として作用する一方、クローンMC.7.G5の反応を大きく低下させる。反復的なスメグマ菌及びAc-6-FPの実験を、図14F及びGに示す。
図9】MC.7.G5 TCRによるポリクローナルT細胞の形質導入により(図2に示す)、腫瘍認識能が付与されることを示している。MC.7.G5 TCR及び患者T細胞を用いたさらなる実験を、図15に示す。
図10】癌細胞のみを認識するクローンMC.7.G5 TCRを示す模式図である。認識にはMR1が必要であり、公知の非癌MR1リガンドによって阻害される。このことは、MR1は癌特異的又は癌により上方調節されるリガンドを、MC.7.G5 TCRに提示することを示唆する。
図11】公知のMR1リガンドが、MC.7.G5 TCRによる癌細胞の認識を阻害することを示す模式図である。
図12】T細胞受容体mRNA及びタンパク質の構造を示す。mRNA構造(上)は、各鎖についてCDR1及びCDR2は生殖細胞系列にコードされることを示している。CDR3はT細胞受容体(TCR)-α鎖のV-J結合部及びTCR-β鎖におけるV-D-J結合部での連結多様性の産物である。CDR3は結果的に、超可変性を有する。CDRループに採用された色コードは、図の全体を通して維持される。灰色に着色された領域は、TCRの定常及び可変ドメインを表す(超可変CDRループを含まない)。下のパネルは、予測されたタンパク質のフォールディングを示す。TCRは分子の膜遠位端に相補性決定領域(CDR)ループを配置する類似した三次構造を採用する。6つのCDRループは一緒になって抗原結合部位を形成する。
図13】全ゲノムCRISPR-Cas9ライブラリスクリーニングにより、MC.7.G5の候補標的としてのMR1が明らかになる。(A) MC.7.G5のリガンドを明らかにするために使用したアプローチの概観。GeCKO v2全ゲノムCRISPR/Cas9ライブラリA及びBを、標的細胞株HEK293Tに形質導入するためのレンチウイルスとして使用した。MC.7.G5はHEK293Tの認識に無関係な遺伝子に対するsgRNAを発現するHEK293Tを溶解し、それによりMC.7.G5による癌細胞の溶解に不可欠な遺伝子に対するsgRNAが富化された。MC.7.G5による2ラウンドの選択を実施し、富化されたsgRNAを明らかにするために、選択されたライブラリを選択されていないHEK293T(MC.7.G5なし)と比較した。(B) MC.7.G5による選択後の選択されたHEK293Tライブラリの認識能は、野生型HEK293Tと比較して大きく低下しており、全ゲノムCRISPR-Cas9アプローチにより、重要な遺伝子が除去されたことが示唆される。終夜の活性化及びTNF ELISA。(C) MR1はMC.7.G5によるHEK293Tの認識に重要な遺伝子の1つとして同定された。MAGeCK解析及び2つ以上のsgRNAが選択されたHEK293T細胞で富化された、強調された(色付き)遺伝子。MC.7.G5の標的としてのMR1の検証を図14に示す。
図14】MC.7.G5によるMR1の認識の検証及び探索。(A-D) MR1は癌細胞に発現するMC.7.G5の標的である。(A) 黒色腫MM909.24の認識能は、MR1遮断抗体(Ab)の存在下で低下した。MHC I及びII Abを陰性対照として使用した。終夜の活性化及びTNF ELISA。(B) 癌細胞株からのMR1発現の除去により、MC.7.G5により仲介される認識及び殺傷が妨げられた。黒色腫MM909.24及び肺腺癌A549に、CRIPSRCas9によってMR1遺伝子をノックアウトする(-/-)ために、sgRNAで形質導入した。終夜の活性化及びTNF ELISA。6時間(MM909.24)又は18時間(A549)にわたるクロム放出細胞傷害性アッセイ。(C) MR1の過剰発現(+)により、MC.7.G5による癌細胞殺傷能が向上した。比較的小さいMC.7.G5の活性化を誘導することが示されている癌細胞株C1R及びHeLaには、レンチウイルスを使用して形質導入し、MR1を安定に過剰発現させた。黒色腫MM909.24を陽性対照として含めた。クロム放出細胞傷害性アッセイを6時間にわたり実施した。(D) MR1-/-細胞におけるMR1の発現により、MC.7.G5の活性化が復帰した。A549野生型、MR1-/-及びMR1導入遺伝子(+)であるMR1-/-細胞を、MC.7.G5を用いた終夜活性化アッセイにおいて使用した。TNF ELISA。(E及びF) MC.7.G5は、既知の機構によってMR1を認識するのではない:(E) MC.7.G5クローン、標準的MAITクローン(5-OP-RUと結合したMR1を認識する)、及びMHC Iに拘束されたクローン(MEL5/13、HLA A2に拘束されたMelan AペプチドELAGIGILTV)を以下の四量体:MR1「空」(MR1リガンドの非存在下での再フォールディングを可能にするためのK43A突然変異体)、MR1 5-OP-RU、及びMHC I(HLA A2 ELAGIGILTV)で染色するために使用した。MHC Iクローンを無関係なMHC I四量体に対する陽性対照として使用した。(F) MAITを活性化させる細菌であるマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)を負荷したA549では、MC.7.G5によるA549の認識能は低下した。Eで得た標準的MAITクローンを陽性対照として使用した。A549 MR1-/-を両クローンに対する陰性対照として使用した。表面CD107a及び細胞内TNFの染色。クローン単独にゲートを設定した。(G) 既知のMR1結合分子である外因性Ac-6-FPにより、MC.7.G5による黒色腫MM909.24の認識能は低下した。モック処理したWT及びAc-6-FP MR1-/-標的を対照として使用した。左のパネル:FlowJoにより三重陽性度を解析した細胞内CD107a、TNF、及びIFNγの染色。エラーバーはプロット記号より小さく、2つの実験の代表である。右パネル:Ac-6-FPで処理した標的細胞の表面のMR1の発現。
図15】MC.7.G5 T細胞受容体の導入により、患者T細胞は自己黒色腫を殺傷するように再方向付けされる。(A) MC.7.G5のT細胞受容体で形質導入された、転移性黒色腫患者(MM909.11及びMM909.24)由来のT細胞は、自己及び非自己黒色腫を認識した。形質導入していないT細胞を、陰性対照として使用した。4時間の活性化後の表面CD107a及び細胞内TNFの染色。(B) MC.7.G5 TCRを形質導入された患者MM909.11由来T細胞は、自己及び非自己黒色腫を殺傷したが、健常細胞は殺傷しなかった。形質導入していない(-)及びMC.7.G5 TCRを形質導入した(+)、患者MM909.11由来のT細胞の自己黒色腫、患者MM909.24由来黒色腫(野生型及びMR1ノックアウト(-/-))及び健常細胞株:SMC3(平滑筋);CIL-1(繊毛上皮);及びHep2(肝細胞)に対するクロム放出細胞傷害性アッセイ。T細胞対標的細胞比5:1で、6時間及び18時間にわたり実施した。
図16】(A) MC.7.G5のフローサイトメトリーによる表現型解析。(B) CRISPR-Cas9によりエキソン2に両遺伝子座欠失を誘導したMR1を有する黒色腫MM909.24のMR1遺伝子座のゲノム配列。(C) 抗MR1抗体(Ab)で評価した、図14A-Dで使用した標的細胞のMR1の発現。(D) MC.7.G5 TCRを形質導入した、及びしていない、黒色腫患者MM909.11及びMM909.24由来のT細胞のrCD2染色。
図17】MC.7.G5による48時間の共インキュベーション後の、起源の異なる様々な癌細胞株(x軸)(キー(key))の殺傷(「長期殺傷能アッセイ」)(A)。このことは、MC.7.G5が各細胞株の95~99.9%を殺傷することが可能であることを示し、これにより図4に示した比較的短期の殺傷能アッセイからのデータに補足される。T細胞対標的細胞比を5:1としてインキュベートし、殺傷の程度を計数用ビーズ又はCFSE標識参照細胞を使用して決定した。(B) MC.7.G5は、7日間にわたり共インキュベートした場合、正常細胞を殺傷しなかった。5:1のT細胞対標的細胞比及び計数用ビーズを使用して、残存する標的細胞数を確立した。SMC3(平滑筋)、Hep2(肝細胞)、及びMRC5(皮膚線維芽細胞)。黒色腫MM909.11を陽性対照として使用した。MC.7.G5の存在下及び非存在下での、計数用ビーズ1000個当たりの標的細胞数(健常又は黒色腫)として示す。(C) MC.7.G5は高い感度で黒色腫MM909.24を殺傷した。7日にわたりインキュベートし、CFSE標識参照細胞を使用して殺傷の程度を確立した。同じアッセイにおいて、正常細胞株Hep2は殺傷されなかった。
図18】CIR細胞における変異型K43A(「空」)MR1の過剰発現により、M.7.G5の活性化は引き起こされなかった(A)にもかかわらず、CIR-K43AはMR1抗体により強く染色された(B)ことを示す。対照的に、CIRにおける野生型MR1の過剰発現により、MC.7.G5の活性化が誘導された。このことは、MC.7.G5 TCRがカーゴと結合したMR1を認識することをさらに実証し、空のK43A MR1四量体を有するMC.7.G5が染色されないことを示す図14Eのデータを補強する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(詳細な説明)
(方法及び材料)
(T細胞クローンMC.7.G5の入手及び特性評価)
末梢血単核球(PBMC)を標準的密度勾配分離により健常ドナーの血液から精製し、続いてヒト腺癌肺胞基底上皮細胞株A549(培養条件及び背景情報については、ATCC(登録商標)CCL-185)で刺激した。A549に反応したT細胞の増殖を追跡するために、PBMCを細胞色素カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE, Molecular Probes, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)で標識した。PBMCをPBSで徹底的に洗浄し、続いて1 μM CFSEにより暗所で37℃、10分間インキュベートし、続いて過剰のウシ胎仔血清でクエンチした。CFSEで標識したPBMCを24ウェル組織培養プレート中単独で、又はA549とともに、T細胞刺激培地(T-cell priming media)中でPBMCについては6-8×106、A549については0.1-0.2×106の密度で培養した(Theakerらの文献、2016)。培養培地を週に3回交換し(体積で50%)、細胞を全体で2週間インキュベートした。A549に反応しての増殖の程度を評価するため、細胞をPBSで洗浄した培養物から収集し、細胞生存性色素Vividで標識し(PBS中1:40に希釈し、続いて染色当たり50 μL中2 μL)(Life Technologies)、かつRTで5分間インキュベートした後、抗CD3抗体(Ab)(BW264/56, Miltenyi Biotec, Bergish Gladbach, Germany)を追加して、さらに20分間氷上に置いた。細胞をリンパ球(前方対側方散乱)、単一(前方対側方散乱)、及びVivid-CD3+細胞についてゲーティングし、解析については二変量プロットをCD3 Ab対CFSEとして示した。CFSE細胞(増殖T細胞)をBD FACS Aria(Central Biotechnology Services, Cardiff University, UK)を使用してソーティングし、過去に記載の通り限界希釈法によりクローニングした(Theakerらの文献、2016)。活性化アッセイを実施する前に、MC.7.G5を収集し、洗浄し、過去に記載の通り低減血清培地中24時間インキュベートした(Wooldridgeらの文献、2012)。続いて、MC.7G.5(96穴U底ウェルプレートのウェル当たり30,000個)を、標識されていないままの、又は10 μg/mLのMHCクラスI(W6/32, BioLegend, San Diego, CA) 若しくはMHCクラスII(Tu39, BioLegend)抗体(Ab)で1時間標識したA549(ウェル当たり60,000個)とともにインキュベートした。洗浄せずに、MC.7G.5をウェルに加えて100 μLの最終体積とし、またクローンを単独で、又は10 μg/mLのフィトヘマグルチニン(PHA)とともにインキュベートした。終夜インキュベートした後、上清を収集し、TNFαELISA(R&D Research, Minneapolis, MN)により発色させた。MC.7.G5をCD3(Miltenyi Biotec)、CD8(BW135/80, Miltenyi Biotec)、CD4(M-T466, Miltenyi Biotec)、γδTCR(11F2, Miltenyi Biotec)、及びαβTCR(BW242/412, Miltenyi Biotec)の表面発現のためにAbで染色した。染色のために、クローンを培養物から収集し、PBSで洗浄し、生存性染色試薬Vividを用いて室温(RT)で標識し、各々のAbを個別に氷上で20分間置いた。取得をBecton Dickinson FACS Canto II上で実施し、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用してデータを解析した。細胞のサイズ(リンパ球ゲート)についてゲーティングし、vivid-細胞、続いて対象とする細胞表面マーカーをヒストグラムとして示した。
【0044】
(MC.7.G5は正常細胞に反応しない)
健常細胞及びそれらにつき専売される培養培地をSciencell(Carlsbad, CA)から入手し、材料及び方法の節のいずこかに記載した活性化及び細胞傷害性アッセイにおける標的細胞として使用した。SMC3(ヒト大腸平滑筋)CIL-1(ヒト毛様体無色素上皮細胞)及びHep2(ヒト肝細胞)を全て96穴U底ウェルプレートのウェル当たり60,000細胞として使用した。さらにまた、老化を遅延させるために、hTERTを発現するMRC-5(肺線維芽細胞、ATCC(登録商標)参照番号CCL-171)を同アッセイにおいて使用した。
【0045】
(MC.7.G5のTCRα及びβ鎖の配列)
RNAをRNEasy Microキット(Qiagen)を使用して抽出した。cDNAを製造業者の説明書に従って、5’/3’ SMARTerキット(Clontech, Paris, France)を使用して合成した。SMARTerアプローチでは、マウスモロニー白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素、3’オリゴdTプライマー、及び5’オリゴヌクレオチドを使用して、既知のユニバーサルアンカー配列に隣接するcDNA鋳型を生成した。続いて、PCRを単一のプライマーペアを使用してセットアップした。TCR-β定常領域特異的リバースプライマー(Cβ-R1、
【化8】
、Eurofins Genomics, Ebersberg, Germany)及びアンカー特異的フォワードプライマー(Clontech)を以下のPCR反応:2.5 μL鋳型cDNA、0.25 μL高フィデリティPhusion Taqポリメラーゼ、10 μL 5×Phusion緩衝液、0.5 μL DMSO(全てThermo Fisher Scientific社製)、1 μL dNTP(各々50 mM、Life Technologies)、各プライマー1 μL(10 μM)及び最終反応体積を50 μLにするためのヌクレアーゼフリー水を使用した。 続いて、第1のPCR産物を2.5 μL採取し、ネステッドプライマーペア(Cβ-R2、
【化9】
、Eurofins Genomics及びClontech社製アンカー特異的プライマー)を使用して、上記の通りネステッドPCRをセットアップした。両方のPCR反応について、サイクル条件は、以下の通りとした:94 ℃で5分、94℃で30秒、63℃で30秒、72℃で90秒を30サイクル、及び最後に72℃で10分。最後のPCR産物を1%アガロースゲルに負荷し、QIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen)を用いて精製した。精製した産物を標準的配列決定法のためにZero-Blunt TOPOにクローニングし、One Shot化学コンピテント大腸菌(E.coli)細胞に形質転換した(両方ともLife Technologies社製)。
【0046】
(クローンMC.7.G5は広範囲の腫瘍標的に反応する)
活性化アッセイ及びまた、クロム酸ナトリウム(クロム51)で標識した標的細胞(Ekeruche-Makindeらの文献、2012)、又はフローサイトメトリーベースの長期殺傷能アッセイ(材料及び方法の節のいずこかを参照されたい)のいずれかを使用した細胞傷害性アッセイを上記の通り実施した。クロム放出アッセイのために、各細胞株を1×106細胞当たり30 μCiのCr51(Perkin Elmer, Waltham, MA)で標識し、MC.7.G5を入れたウェル(96穴U底ウェルプレート)当たり2000個の標的細胞を使用して、所望のT細胞対標的細胞比を達成した。終夜インキュベートした後、上清を収集し、シンチラント(scintillant)と混合し、かつMicrobetaカウンターを使用して読み取り、かつ過去に記載された通り比溶解能を計算した(Ekeruche-Makindeらの文献、2012)。上記A549やHEK293Tに加え、使用した癌細胞株の詳細は以下のとおりである:細胞株名(背景及び培養情報のための、ATCC(登録商標)参照番号又はECACC番号)/起源となる組織又は器官:HEK293T(胎仔腎、CRL-1573);LnCaP(CRL-1740)/前立腺;SiHa(HTB-35)及びHeLa(CCL-2)/子宮頚部;MCF7(HTB-22)、MDA-MB-231(CRM-HTB-26)及びT47D(HTB-133)/乳房;TK143(CRL-8303)及びU20S(HTB-96)/骨;HCT-116(CCL-247)/結腸;Jurkat(TIB-152)、T2(.174 x CEM.T2)(CRL-1992)、K562(CCL-243)、HLA-A2発現CIR(CRL-1193)、THP-1(TIB-202)、U266(TIB-196)及びMolts(CRL-1552)/全血;FM74(ECACC 13012422)、SK-Mel-28(HTB-72)、及びFM45(ECACC 13012410)/全皮膚黒色腫。RC177(腎臓、腎細胞癌)、MM909.11、MM909.15、及びMM909.24(全皮膚黒色腫)は、癌免疫治療センター(Center for Cancer Immune Therapy)(CCIT, Herlev Hospital, Copenhagen, Denmark)で治療する癌患者から入手した。
【0047】
(T細胞クローン)
Melan A由来のペプチドEAAGIGILTV及びELAGIGILTV(ベースが同じで位置2がLと異なる)を認識する、HLA-A*0201に拘束されたクローンMEL5/13(Woodridgeらの文献(2010); Lissinaらの文献(2009));及び標準的MAITクローンを、過去に記載した通り培養した(Tungattらの文献(2014))。
【0048】
(全ゲノムCRISPRによる遺伝子トラップ)
全ゲノムCRISPR/Cas9ライブラリアプローチを使用した(概観については図5及び14。また、最近記載されている(Patelらの文献、2017))。GeCKO v2サブライブラリA及びB(Adgeneプラスミド、#1000000048、Feng Zhang博士により寄託)を用いた全ゲノム標的化HEK293Tを、MC.7G.5による選択のために使用した。簡潔に説明すると、ピューロマイシンを用いて選択して形質導入に成功したHEK293T(MOI 0.4)をあらかじめ定めた比1:1で、96ウェル平底プレート中2~3週間MC.7G.5とともに共インキュベートした。MC.7G.5による2ラウンドの選択を生き残ったHEK293TからのゲノムDNAを次世代配列決定法のために使用して、挿入されたガイドRNAを、従って標的化され除去された遺伝子を明らかにした。
【0049】
(クローンMC.7.G5はMR1を介した標的特異性を示す)
MHC遮断Abについて上記と同じアプローチを使用して、活性化アッセイも抗MR1抗体を使用して実施した。図6及び図14(クローン26.5、BioLegend)。MC.7.G5をCRISPR/Cas9技術を用いて標的化させ、過去の記述の通り(Laugelらの文献、2016)MR1遺伝子の発現を除去したA549及びMM909.24細胞による活性化アッセイに使用した。細胞株を上記の通り活性化及びクロム放出アッセイに使用した。全長のコドンを最適化したMR1遺伝子をレンチウイルス粒子として作製し、以下にMC.7G.5 TCRについて説明する類似の方法(この事例では単一の遺伝子であり、ratCD2ではない)を使用して標的細胞を形質導入し、MR1を過剰発現する(高)細胞株を作製した。MR1の発現を(上記の通り)10 μg/mLのMR1 Ab及び50 μLの2% FBSを含むPBS中、染色当たり50,000個の細胞を使用して評価した。MM909.24のMR1ノックアウトを、A549について先に記載の通り達成した(6)。細胞株:MM909.24 wt、MM909.24 MR1-/-、MM909.24 MR1、pt146 wt (B-リンパ芽球細胞株)、pt146 MR1-/-、及びpt146 MR1を用いて上記の通り活性化アッセイを実施した。
【0050】
(クローンMC.7.G5はMAITリガンドMR1-5-OP-RU又はMR1-Ac-6-FPの四量体形態により染色されない)
MC.7.G5を培養物から収集し、PBS+2% FBSで洗浄し、続いて50 nMのプロテインキナーゼインヒビター(PKI))、ダサチニブで処理し(Lissinaらの文献、2009)、続いてAc-6-FP又は5-OP-RUのいずれかとともに再フォールディングされたMR1を組み入れたPEコンジュゲート四量体で標識した。図6及び14。四量体で染色された細胞を過去の記載の通り非コンジュゲート抗PE Abにより標識し(Tungattらの文献、2015)、続いてVivid及び抗CD8 Abで標識した。MR1-5-OP-RU反応性MAITクローンを同様に染色し、陽性対照として機能させた。細胞を大きさ、続いてVivid-CD8+でゲーティングし、続いて上記の通りのデータ取得及び解析による四量体の蛍光のヒストグラムを表示した。
【0051】
(Ac-6-FP及びスメグマ菌による感染により、細胞表面におけるMR1の発現が増強されるにもかかわらず、クローンMC.7.G5の認識能が低下)
MC.7.G5を50 μg/mL(図8)、及び1、10、又は100 μg/mL(図14)のAc-6FPとともにプレインキュベートした標的細胞(MM909.24及びA549)を使用する活性化アッセイにおいて使用した。さらに、スメグマ菌を負荷したA549細胞も使用した。未処理のままの/負荷されていない標的細胞を陰性対照として使用した、図8及び14。A549を100:1のスメグマ菌対A549のMOIでスメグマ菌とともに抗生物質不含培地中2時間インキュベートし、続いて培養フラスコ中で細胞をすすぎ、続いてR10中で2時間培養した。MC.7.G5及びMAITクローンをTNFプロセシング阻害剤(TAPI)-0(30 μM)及び抗CD107a Ab(H4A3, BD)の存在下で4~5時間インキュベートし、続いて抗TNF Ab(cA2, Miltenyi Biotec)、抗CD3 Ab、抗CD8 Ab、及びVividで染色した。上記データ取得及び解析に伴う大きさ、単一、vivid-CD3+細胞についてのゲーティングに続いて、CD8+対CD107a又はTNFαについてのゲーティング。また、各々の標的細胞を2% FBSを含む50 μLのPBS中、染色当たり 50,000細胞を使用して、10 μg/mLのAc-6FP又はスメグマ菌とともにインキュベートした後、MR1 Abでも染色した。
【0052】
(MC.7.G5 TCRによるポリクローナルT細胞の形質導入により(図2に示す)、腫瘍認識能が付与される)
コドン最適化された、全長TCR鎖は、自己切断2A配列で隔てられており、合成され(Genewiz)、第3世代レンチウイルス導入ベクターpELNS(親切にもUniversity of Pennsylvania, PAのJames Riley博士に提供いただいた)にクローニングした。pELNSベクターはもう1つの自己切断2A配列によりTCRから隔てられたラットCD2(rCD2)マーカー遺伝子を含む。レンチウイルス粒子はHEK293T細胞の塩化カルシウムトランスフェクションによって作製した。TCR導入ベクターをパッケージング及びエンベローププラスミドpMD2.G、pRSV-Rev、及びpMDLg/pRREにより共トランスフェクションした。レンチウイルス粒子を超遠心分離により濃縮した後、5 μg/mlポリブレンを使用してCD8+ T細胞に形質導入し、CD8+ T細胞は24時間前に健常ドナー(図9)又は黒色腫患者(図15)から磁気分離(Miltenyi Biotec)により精製し、CD3/CD28ビーズ(Dynabeads, Life Technologies)を用いて3:1のビーズ:T細胞比として終夜活性化させた。ウイルスを取り込んだT細胞は、抗rCD2 PE Ab(OX-34, BioLegend)とそれに続く抗PE磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を用いた富化によって選択した。形質導入から14日後にT細胞を同種異系のフィーダーとともに増殖させた。全ての機能実験について、MC.7.G5 TCRを形質導入されたT細胞は、95%超がrCD2+であり、これを機能解析に使用した(図16)。形質導入された細胞は30 mMのTAPI-0 CD107a Abの存在下で4~5時間標的細胞とともにインキュベートし、続いてTNFα、CD3、CD8、及びまたVividに対するAbで染色した。大きさ、単一、vivid-CD3+細胞についてのゲーティング、及び続いてCD8+対CD107a又はTNFαについてのゲーティング。上記データ取得及び解析。また、患者から得たTCRを形質導入されたT細胞を先に記載の通りクロム放出細胞傷害性アッセイに使用した(図15)。
【0053】
(フローサイトメトリー)
細胞を固定可能なLive/Dead Violet色素(Life Technologies)及び以下の表面抗体:汎αβ TCR PE(クローンIP26, Biolegend)、汎γδ TCR-FITC(クローンREA591, Miltenyi Biotec)、CD3 PerCP(クローンUCHT1, Biolegend)、CD4 APC(クローンVIT4, Miltenyi Biotec)、CD8 PE(クローンBW135/80, Miltenyi Biotec)、ラットCD2 PE(クローンOX-34, Biolegend)及びMR1 PE(クローン26.5, Biolegend)を用いて染色した。MR1 PEでの染色については、製造業者の説明書に従い、Fc Block(Miltenyi Biotec)を使用した。四量体染色について、MR1単量体はJamie Rossjohn(Monash University)から提供を受け、pMHC単量体は自前で生産した。四量体を会合させ、過去に記載の通り染色を最適化するために使用した(Tungattらの文献、(2014))。データをBD FACS Canto II(BD Biosciences)上で取得し、FlowJoソフトウェア(TreeStar)で解析した。
【0054】
(MR1ノックアウト及び導入遺伝子発現)
MR1 sgRNA及びCRISPR/Cas9レンチウイルスを過去の記載の通りに生産し、使用した(Laugelらの文献、(2016))MR1導入遺伝子を、ヒトPGKプロモーター及びGFP cDNAを欠く、Didier Tronoの研究室によって開発された第2世代レンチベクター骨格pRRL.sin.cppt.pgk-gfp.wpre(Addgene no. 12252)にクローニングし、レンチウイルス粒子をMR1 sgRNAに記載されている通りに生産した(Laugelらの文献、(2016))。標的細胞を8 μg/mLポリブレンの存在下;500×g、37℃で2時間スピンフェクトした(spinfected)(Shalemらの文献、(2014))。抗MR1抗体PE(クローン26.2, Biolegend)陽性細胞を、製造業者の説明書(Miltenyi Biotec)に従って抗PE磁気ビーズを使用して磁気により富化させた。
【0055】
(TCRの配列決定及び形質導入)
MC.7.G5 TCRをSMARTer RACEキット(Clontech)、並びにTCR-α及びTCR-βの定常領域に特異的なユニバーサルフォワードプライマー及び逆相プライマーを使用した2ステップポリメラーゼ連鎖反応を用いて自前で配列決定した。続いてコドン最適化しながらTCRを合成した(Genewiz)。全長のTCR鎖は自己切断2A配列(Ryanらの文献、1991)により隔てられている。TCRは第3世代のpELNSレンチウイルスベクター(親切にもUniversity of PennsylvaniaのJames Riley氏に提供いただいた)にクローニングし、該レンチウイルスベクターには第2の2A自己切断配列によってTCRから隔てられたrCD2を含む。レンチウイルス粒子はHEK293T細胞の塩化カルシウムトランスフェクションによって作製され、超遠心分離により濃縮した。治療後にPBMCをTIL患者MM909.11及びMM909.24から入手し、CD8及びCD4 T細胞を磁気富化(Miltenyi Biotec)により精製した。続いて、T細胞をCD3/CD28ビーズ(Dynabeads; Life Technologies)を3:1のビーズ対T細胞比として終夜インキュベートすることにより、活性化させた。続いてT細胞を5 μg/mLプロビレン(Santa Cruz Biotechnology)の存在下でMC.7.G5 TCRにより形質導入した。ウイルスを取り込んだT細胞を製造業者の説明書に従って、抗rCD2抗体及び抗PE磁気ビーズを用いて磁気により富化させた(Miltenyi Biotec)。形質導入から14日後、T細胞を過去に記載の通り増殖させた(Tungattらの文献、(2014))。全ての機能的実験について、形質導入されたT細胞の85%超がrCD2+であった(図16D)。
【0056】
(全ゲノムGeCKOv.2スクリーニング)
GeCKOv.2ライブラリ(プラスミドは親切にもFeng Zhang氏に提供いただいた(Sanjanaらの文献(2014))(Addgene plasmid #1000000048)のためのレンチウイルス粒子。GeCKOv.2ライブラリは、19,050個のタンパク質コード遺伝子(遺伝子当たり6つのsgRNA)及び1,864個のマイクロRNA(マイクロRNA当たり4つのsgRNA)を標的とする123,411個の単一ガイド(sg)RNAからなり、標的細胞株HEK293Tに形質導入するためのレンチウイルスとして使用した。4×107個のHEK-293T細胞にMOI 0.4で形質導入し、各サブライブラリの100×カバレッジを提供した。レンチウイルスを取り込んだ細胞をピューロマイシンの下で選択した。14日後、ライブラリの半分を対照として凍結させた。MC.7.G5を20 IU IL-2培地中、T細胞対HEK-293T比を0.25:1として、残存する形質導入されたHEK-293T細胞に加えた。14日後、MC.7.G5を0.5:1の比で再度加えた。7日後、HEK293T細胞を配列決定に使用した。3×107個のHEK-293T細胞(選択されていない対照及びMC.7.G5を用いて選択されたもの)からゲノムDNAを単離した(GenElute哺乳動物ゲノムDNAミニプレップキット, Sigma Aldrich)。単離したゲノムDNAの全て(反応物50 μl当たり2.5 μg)を続くPCRに使用して、ライブラリの完全な表現を確実に補足した。HPLC精製プライマー及びNEBNext高フィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs)を使用して、2ステップPCRを先に記載の通りに実施した(Shalemらの文献(2014))。続いて300 bp未満のPCR産物をアガロースゲルから単離し、HiSeq装置(Illumina)上で、80サイクルのリード1(sgRNAの配列を決定するため)及び8サイクルのリード2(試料特異的バーコードを識別するため)により、配列決定した。富化されたガイドの解析を、MAGeCK解析を使用して実施した(Liらの文献、(2014))。
【0057】
(長期殺傷能アッセイ)
フローベースの殺傷能アッセイのために、5000~10,000個の癌細胞又は正常細胞株を96穴U底ウェルプレートに入れ、MC.7.G5クローンを標的細胞当たり5つのT細胞を与えるように加えた(実験ウェル)。細胞を20 IU IL-2及び25 ng/mL IL-15を補充した標的細胞培地200 μL中で共培養した。また、解析を補助するために、標的細胞(対照ウェル)、MC.7.G5、及びCSFE CIRを単独で培養した。細胞を48時間インキュベートした。感度アッセイのため、標的細胞に対するMC.7.G5の数を漸増させ、7日間インキュベートした。材料及び方法の節のいずこかに記載した細胞株に加え、卵巣癌細胞株A2780(ECACC 93112519)も使用した。収集前に、0.1×106 CFSE標識(0.1 μM)CIR細胞を各ウェルに加え、実験及び対照ウェルに残る標的細胞の数を確立させた。細胞を2 mM EDTAを補充した冷却D-PBSで3回洗浄し、続いて固定可能Live/Dead Violet色素(Life Technologies)を、続いてCD3 PerCP(クローンUCHT1, BioLegend)及び/又は抗TRBV25.1 APC TCR(TRBV11 アーデン術語体系: カタログA66905, Beckman Coulter)Abを用いてアッセイプレート中で染色し、死細胞及びT細胞をゲートアウトして生標的細胞を解析用に残した。殺傷率を以下の式を用いて計算した:
【数1】
【0058】
(空の(K43A)MR1を発現するCIR細胞を用いた活性化アッセイ)
CIR細胞に野生型MR1についてK43A突然変異(R. Reantragoonらの文献)を保持するMR1を形質導入した。活性化アッセイ及びフローサイトメトリーを材料及び方法の節のいずこかに記載した通りに実施した。
【0059】
(結果)
(クローンの特性評価)
1. T細胞クローンMC.7.G5はA549細胞を認識する(図1A)。10 μg/mlの遮断性MHC-I及びMHC-II抗体の追加により、認識は遮断されなかった(図1B)。
【0060】
2. 抗体染色及びフローサイトメトリーにより、クローンMC.7.G5がαβ TCRを発現し、CD8+であることが確認された(図1C図16Aに繰り返す)。
【0061】
3. 重要なことに、T細胞クローンMC.7G.5は正常(非癌)細胞株に反応しなかった(図2並びに図17B及びC)MC.7.G5 TCRを初代CD8 T細胞に発現させても、正常細胞の殺傷は仲介されなかった(図15B)。MC.7.G5クローンはそれ自体にも、新鮮な末梢血単核球にも反応しなかった(不図示)。MC.7G.5 T細胞クローンを、それが明らかな損傷を来さない正常健常ドナーから単離した。本発明者らは、T細胞クローンMC.7G.5が腫瘍特異的であると結論付けた。
【0062】
4. MC.7.G5 T細胞クローンは、図3に示すTRAV38.2/DV8 TRAJ31及びTRBV25.1 TRBJ2.3の配列からできるTCRを発現する。MR1に拘束されるクローンMC.7.G5はMAITではなく、MAIT TCRα鎖を発現しない。
【0063】
5. MC.7.G5 T細胞クローンは広範囲の癌細胞株に反応してMIP1β(図4A)及びTNFα(図4A)を生産する。また、MC.7.G5は非常に低いエフェクター対標的比(図4B及び17C)でさえも、多くの癌細胞(図4B及び17A)に対し、高度に細胞傷害性を有する。MC.7G.5は試験した全ての種類の癌:血液、骨、黒色腫(皮膚)、結腸、腎臓、肺、子宮頚部、乳房、卵巣及び前立腺の癌を認識した。さらに、この細胞傷害性は有効かつ高感度であった:長期(48時間)殺傷能アッセイからのデータから、95%超の癌細胞株が殺傷されたこと(図17A)、及び低いT細胞対標的細胞比(図17C)で殺傷されたことを示している。
【0064】
6. MC.7.G5の癌標的の全ゲノムCRISPR/Cas9ライブラリから、クローンMC.7.G5による溶解に抵抗性を示した標的株を作製することにより、MR1がMC.7.G5のリガンドであることが明らかとなった。この抵抗性株におけるガイドRNAの配列決定から、これらが主に代謝及び免疫系に関与する標的遺伝子であることが示された。MR1及びβ2ミクログロブリンのガイドRNAは、MC.7.G5による溶解に抵抗性を示す細胞集団中で高度に富化していた。これらの遺伝子はまもなく、そのMAIT細胞の活性化との関連性のために、本発明者らの注目を集めた(MR1はフォールディングするためにβ2ミクログロブリンを必要とする)。
【0065】
7. 抗MR1抗体を用いた遮断により、A549細胞株の認識能が除去された(図6A図14において繰り返す)。
【0066】
6. 癌細胞株A549(クローンc9)及びMM909.24(クローンc4)は、これらの株からMR1をノックアウトした場合、認識されなかった(図6B及びC並びに14)。レンチウイルスによる形質導入を介したMM909.24におけるMR1の過剰発現により、認識能がわずかに増強される(図6D及び14)。
【0067】
8. LCL株pt146は、T細胞クローンMC.7.G5によって認識されない。また、MC.7.G5はそれがMR1発現レンチウイルスを用いて形質導入され、ある程度のMR1の細胞表面発現を示す場合でさえ、pt146細胞を認識することができない。LCL株pt146は、MC.7.G5 T細胞リガンドを発現しない。このことは、MC.7.G5がMR1自体に反応するのではなく、MR1の結合グルーブの中の固有の癌特異的リガンドを認識することを示唆する(図6)。
【0068】
9. クローンMC.7.G5はAc-6-FP又は5-OP-RUを負荷したMR1四量体により染色されない(図7図14Eにおいて繰り返す)。MAIT T細胞クローンは並列アッセイにおいて、MR1-5-OP-RU四量体により染色される。本発明者らは、MC.7.G5がMAITリガンドと結合しないと結論付ける。この発見は、MC.7.G5が標準的MAITに無関係なTRAV1-2α鎖を発現しないことと一致する。このことは、MC.7.G5が染色されない「空の」(K43A)MR1四量体を使用して、裏付けられた。MR1のK43A突然変異により、結合カーゴの非存在下でのMR1の再フォールディングが可能となる(図14)。同様に、空の(K43A)MR1の発現は、C1R(図18、右パネルのMR1 Abによる染色)についてのMR1の細胞表面発現が良好であるにもかかわらず、MC.7.G5による認識を導かない。このことは、癌に発現するリガンドがMR1と結合することが、MC.7.G5の活性化に重要であることをさらに実証する。
【0069】
10. 10、50、又は100 μg/mLのMR1リガンドAc-6-FP(http://www.rcsb.org/pdb/explore.do?structureId=4pj5)を12時間にわたり追加すると、MM909.24細胞の表面でのMR1の発現が大きく増強するが(図8及び14G)、クローンMC.7.G5によるこれらの細胞の認識能は低下する(図8及び14G)。この発見から、クローンMC.7.G5が、MR1と結合したMM909.24細胞表面のAc-6-FPとは異なるリガンドを認識することが強く示唆される。同様の発見が、A549細胞について観察された。A549細胞のAc-6-FPとのインキュベーションにより認識能が低下した一方、表面上のMR1の発現は増加した。またA549細胞のマイコバクテリウム・スメグマチス(スメグマ菌)への暴露により、MR1の発現が増強された。このことは、スメグマ菌がMR1リガンドを生産することが分かっているため、予想されていた。これらのリガンドは、MAIT細胞により認識することができる。スメグマ菌に感染したA549細胞は、並列実験においてMAITクローンの優れたリガンドであった(図8及び14F)。A549細胞のスメグマ菌への暴露により、クローンMC.7.G5による認識能は大きく低下した。本発明者らは、クローンMC.7.G5は、MR1の結合グルーブ中の、癌細胞表面にのみ存在するリガンドを介して癌細胞を認識すると結論付ける。
【0070】
11. ポリクローナルT細胞へのMC.7.G5の形質導入により、これらのT細胞が腫瘍標的を認識することが可能となる(図9)。実に、MC.7.G5 TCRを形質導入された転移性黒色腫患者MM909.11から得たCD8 T細胞は、自己及び非自己黒色腫を殺傷したが、正常細胞は殺傷しなかった(図15)。本発明者らは、クローンMC.7.G5による腫瘍認識は、図3に示すMC.7.G5 T細胞受容体により、MR1分子によって提示されたリガンドを介して発生すると結論付ける。
【0071】
6つの異なる単一ガイド(sg)RNAによるヒトゲノム中の全てのタンパク質コード遺伝子を標的とするGeCKOv.2ライブラリを使用したゲノムワイドCRISPR/Cas9アプローチを使用して、MC.7.G5による標的細胞の認識に必須な遺伝子を同定した(図13A)。MC.7.G5を用いた2ラウンドの選択の後、生存した形質導入HEK293T細胞は、MC.7.G5を刺激する能力の低下を示し、これによりこれらの細胞の認識能に関与する重要な遺伝子が除去されたことが示唆された(図13B)。溶解抵抗性のHEK293T細胞中のCRISPR sgRNAの配列決定により、わずか6遺伝子:β2M(5つのsgRNA)、MR1(2つのsgRNA)、調節因子X(RFX、5つのsgRNA)、RFX関連アンキリン含有タンパク質(RFXANK、5つのsgRNA)、RFX関連タンパク質(RFXAP、3つのsgRNA)、及び転写のシグナル伝達因子及び活性化因子6(STAT6、2つのsgRNA)が、2以上の富化されたsgRNAによって標的とされたことが示された(図13C)。RFX、RFXANK、及びRFXAPは、β2M、MHC I、及びMHC IIのプロモーターのトランス活性化を担うタンパク質複合体の必須の構成要素である。β2M及びMR1が一体化して、MAIT及び他のMR1に拘束されたT細胞を活性化させることが知られる非多型性安定抗原提示分子を形成するという事実と合わせると、これらのデータは、MC.7.G5 T細胞が不変のMR1分子を介して癌標的を認識することを強く示唆していた。従って、MR1の抗体はMC.7.G5 による標的細胞の認識を遮断したが、MHC I又はMHC IIの抗体はそうでなかった(図14A)。A549及び黒色腫MM909.24からのMR1をCRISPRを仲介してノックアウトすると(欠失突然変異を図16Bに示す)、MC.7.G5によって仲介される認識及び溶解から保護される(図14B)。黒色腫MM909.24は、抗MR1抗体によって染色されず、標的の認識には非常に小さなレベルのMR1が必要となることが示唆された(図16C)。MR1を過剰発現させると、認識されにくい標的、HeLa及びC1Rへの認識能が強化され、かつ黒色腫MM909.24への認識能がわずかに増強された(図14C)。CRISPR/Cas9 MR1-ノックアウトA549細胞へのMR1の再導入により、MC.7.G5による認識が復帰し(図14D)、癌細胞への認識能が、MR1依存的であることへの確信がさらに浸透した。
【0072】
MR1はMAIT細胞の細胞表面でのリボフラビン合成における中間体を提示することが知られており、結合カーゴなしで細胞表面に発現するとは考えられていない。MC.7.G5は結合リガンドなしでのMR1の再フォールディングを可能とするK43A突然変異を含むMR1から構成される四量体によって染色されなかった。癌細胞のMR1依存的な認識は、MC.7.G5が悪性細胞に特異的に発現し、又は悪性細胞において上方調節されたMR1結合代謝物質を認識し得ることを示唆していた。この仮説に一致して、MC.7.G5は微生物由来T細胞活性化因子5-OP-RUを提示するMR1と会合した四量体により染色されなかった。さらに標的細胞の認識能は、MR1の表面発現が増加したにもかかわらず、MAIT活性化細菌マイコバクテリウム・スメグマチス(スメグマ菌)(図14F)又はMR1リガンド、アセチル-6-ホルミルプテリン(Ac-6-FP)(22, 23)(図14G)を負荷した場合に低下した(図14G)。これらの結果から、MC.7G.5はMR1自体を認識するのでも、既知の機構によりMR1を認識するのでもなく、癌細胞に特異的又は関連するカーゴと結合したMR1を認識することが示される。
【0073】
MC.7.G5のTCRの配列決定から、新規TCRがTRAV38.2/DV8 TRAJ31 α鎖がTRBV25.1 TRBJ2.3 β鎖と対になったものから構成されることが明らかとなった。癌細胞表面のMR1の標的化の治療の潜在性を調査するために、本発明者らはステージIVの黒色腫患者のPBMCからT細胞を精製し、レンチウイルスを使用してこのT細胞にMC.7.G5 TCRを形質導入した。これにより、自己及び非自己の黒色腫が認識され、殺傷されたが(図15)、健常細胞は認識も殺傷もされなかった(図15B)。MC.7.G5 TCRを形質導入された細胞はMR1ノックアウト黒色腫を溶解しなかったため(図15B)、殺傷能はMR1特異的であった。本発明者らは、MC.7.G5 TCRは特異的なHLAを要求することなく、患者の癌細胞を殺傷するために患者のT細胞を再方向付けすることができると結論付ける。MR1はその非多型性、ユビキタスに発現される性質のために、癌免疫療法の魅力的な標的である。最近のMR1四量体及びリガンド発見における進歩は、この領域における知識を発展させたが、依然として発見されるべきものは多い。本明細書では、本発明者らは、多様な組織種に由来する複数の癌細胞株に反応するT細胞クローンによる癌細胞認識を確認した。
【0074】
長期殺傷能アッセイ(図17)では、MC.7.G5が起源の異なる様々な癌細胞株を殺傷することが示される。実際、MC.7.G5は各細胞株の95~99.9%を殺傷することができる。さらに、MC.7.G5は健常細胞を殺傷しなかった。
【0075】
CIR細胞における変異型K43A(「空」)MR1の過剰発現により、M.7.G5の活性化は引き起こされなかった(図18A)にもかかわらず、CIR-K43AはMR1抗体により強く染色された(図18B)。対照的に、CIRにおける野生型MR1の過剰発現により、MC.7.G5の活性化が誘導された。このことは、MC.7.G5 TCRによりカーゴと結合したMR1が認識されることを実証する。
【0076】
現在のMR1抗体は、mRNAの発現が検出可能であるにもかかわらず、癌細胞表面の低い表面発現を検出することができない。実に、MC.7.G5による癌細胞の認識に必要なMR1の表面発現のレベルは、しばしば抗体を用いた染色に必要な閾値を下回り、このことからMC.7.G5 TCRが低コピー数のMR1リガンドに反応することができ、pMHCを認識するT細胞と同種であることを示唆している。また、本発明者らの結果は、従来型と異なるT細胞リガンドを発見するプラットフォームとしてのゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニングの非常に大きな力を実証する。実に、本発明者らはこの技術を使用して、γδ TCRによる癌細胞の認識に必要な必須の細胞表面発現分子も見出し、かつ本発明者らは本明細書で適用する方法論が、新たなリガンドを明らかにすることにより従来型と異なるT細胞の分野を急激に変革するものと期待する。
【0077】
要約すると、全ゲノムCRISPRスクリーニングを使用して、癌に発現するMC.7.G5のリガンドを明らかにした。MR1の検証実験では、A549細胞によるMC.7.G5の活性化はMR1抗体によって遮断することができ、クローンは本発明者らの研究室で作製されたMR1ノックアウトA549細胞(Laugelらの文献、2012)又は黒色腫標的のMM9909.24のCRISPR/Cas9を仲介したMR1ノックアウトに反応しないことが示された。MC.7.G5は大部分の癌細胞株に反応したが、初代(非腫瘍)細胞に反応しなかった。MC.7.G5による標的癌細胞の認識には、MR1の発現が必要であった。MR1の唯一の多型はサイレントであり、(Parra-Cuadradoらの文献、2000)、その結果MR1に拘束されたTCRは、集団のあらゆる個体からの細胞に反応し得る。これにより、単一の生産物を全ての患者で使用することができるので、MR1は養子細胞療法アプローチのための特に魅力的な候補となる(Guoらの文献、2015)。
【0078】
(結論)
MC.7.G5 TCRは、T細胞が広範囲の腫瘍を認識することを可能にする。認識は、集団間で一様な分子、MR1を介して発生する。MR1は通常、その結合グルーブの中にリガンドが存在しない場合、細胞表面に発現しない(Chuaらの文献、2011)。MR1と結合するリガンドの発現により、この分子が細胞表面に移動してこのリガンドを提示することが可能となる(図10)。既知のMR1リガンドの追加により、MC.7.G5 T細胞クローンによる腫瘍認識能が低下し、MC.7.G5がMR1の状況下で癌細胞特異的リガンドを認識することが示唆される(図11)(すなわち、他のリガンドがMR1との結合について癌リガンドと競合する)。MR1について知られていることを考慮すれば、このリガンドは腫瘍形成によって上方調節された代謝経路における中間体である可能性が高いようである。進行中の実験は、このリガンドの性質を決定することを目的とする。
【0079】
本発明は、T細胞クローンMC.7.G5において同定されたTCRを中心にする。このTCRは保存されたMHC関連(MR)1タンパク質を介して広範囲の癌細胞を認識する。このTCRは非腫瘍細胞を認識しない。腫瘍株から得たMR1のCRISPR/Cas9ノックアウト又は抗MR1抗体によるブロッキングにより、TCRの認識能が除去される。既知のMR1結合性リガンドとともにインキュベートすると、TCRの認識能が低下する。このことは、T細胞受容体(TCR)リガンドが、MR1の結合グルーブの中に配置され、又はTCRに提示される癌特異的代謝物質であることを示唆している。MC.7.G5 TCRは、様々な異なる癌免疫療法戦略に使用することができる。広い腫瘍認識能及び認識についてのヒト白血球抗原(HLA)非依存性から、このTCRを使用して汎癌、汎集団的免疫療法の心躍るような可能性が開かれる。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
(CDR)
(化1)
若しくはそれと少なくとも88%の同一性を共有しているCDR;及び/又は
(CDR)
(化2)
若しくはそれと少なくとも88%の同一性を共有しているCDRを含む、又はこれらからなる相補性決定領域を特徴とする、腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様2)
前記CDRの両方を含む、態様1記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様3)
以下の相補性決定領域:
(化3)
の任意の組合わせを含む1以上を含む、又はこれらからなる、態様1又は2記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様4)
粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT細胞)によって発現され、又は該MAIT細胞と関連付けられるTCRではない、態様1~3のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様5)
(化4)
又はそれと少なくとも88%の同一性を共有するα鎖をさらに含み、又はこれらからなるα鎖である、態様1~4のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様6)
(化5)
又はそれと少なくとも88%の同一性を共有するβ鎖をさらに含み、又はこれらからなるβ鎖である、態様1~4のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様7)
可溶性である、態様1~6のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様8)
MR1に拘束される、態様1~7のいずれか1項記載の腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)。
(態様9)
態様1~8のいずれか1項記載のTCRを発現するT細胞。
(態様10)
態様1~8のいずれか1項記載のTCRを発現するT細胞クローン。
(態様11)
MC.7.G5クローンである、態様9記載のT細胞クローン。
(態様12)
態様1~8のいずれか1項記載のTCRをコードするベクター。
(態様13)
態様1~8のいずれか1項記載のTCRを含む医薬組成物若しくは免疫原性物質若しくは二重特異性若しくはワクチン、又は態様9記載の細胞、又は態様10若しくは11記載のクローン、又は態様12記載のベクター。
(態様14)
癌の治療における使用のための、態様1~8のいずれか1項記載のTCR、又は態様9記載の細胞、又は態様10若しくは11記載のクローン、又は態様12記載のベクター、又は態様13記載の医薬組成物若しくは免疫原性物質若しくは二重特異性若しくはワクチン。
(態様15)
前記癌が、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、前立腺癌、子宮頚癌、黒色腫(皮膚)、骨癌、卵巣癌、乳癌、及び血液癌を含み、又はこれらからなる群から選択される、癌の治療における使用のための、態様14記載のTCR、細胞、クローン、ベクター、医薬組成物、免疫原性物質、二重特異性、又はワクチン。
(態様16)
態様1~8のいずれか1項記載のTCR、又は態様9記載の細胞、又は態様10若しくは11記載のクローン、又は態様12記載のベクター、又は態様13記載の医薬組成物若しくは免疫原性物質若しくは二重特異性若しくはワクチンを、治療すべき個体に投与することを含む、癌を治療する方法。
(態様17)
前記癌が、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、前立腺癌、子宮頚癌、黒色腫(皮膚)、骨癌、乳癌、卵巣癌、及び血液癌を含み、又はこれらからなる群から選択される、態様16記載の方法。
(態様18)
前記TCR、細胞、クローン、ベクター、医薬組成物、免疫原性物質、二重特異性、又はワクチンを、抗腫瘍剤と組み合わせて投与する、態様16又は17記載の方法。
(態様19)
癌の治療のための医薬の製造における、態様1~8のいずれか1項記載のTCR、又は態様9記載の細胞、又は態様10若しくは11記載のクローン、又は態様12記載のベクターの使用。
(態様20)
a) 態様1~8のいずれか1項記載のTCR、又は態様9記載の細胞、又は態様10若しくは11記載のクローン、又は態様12記載のベクター、又は前記医薬組成物若しくは免疫原性物質若しくは二重特異性若しくはワクチンを、
b) 更なる癌治療剤と組み合わせて含む、癌の治療のための組合わせ治療薬。
(態様21)
実質的に本明細書に記載されている、TCR、細胞、クローン、ベクター、医薬組成物、免疫原性物質、二重特異性、又はワクチン。


【0080】
(参考文献)
【化10】
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-C】
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B-C】
図14A-D】
図14E
図14F-G】
図15A
図15B
図16A-B】
図16C-D】
図17
図18
【配列表】
0007289311000001.app