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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   E21C 50/00 20060101AFI20230602BHJP
   F04F 5/48 20060101ALI20230602BHJP
   F04F 5/44 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
E21C50/00
F04F5/48 A
F04F5/44 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020571592
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 IB2019055957
(87)【国際公開番号】W WO2020016716
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】1811632.7
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508180828
【氏名又は名称】ウィアー・ミネラルズ・ネザーランズ・ベスローテン・ベンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】ファン レイスウェイク,ルドルファス
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205074(JP,A)
【文献】米国特許第03449013(US,A)
【文献】特開昭56-113616(JP,A)
【文献】特公昭50-006718(JP,B1)
【文献】実公昭42-004755(JP,Y1)
【文献】国際公開第2018/085742(WO,A1)
【文献】米国特許第03873238(US,A)
【文献】国際公開第2018/084831(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 50/00
F04F 5/48
F04F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下または海底の位置から鉱石粒子を含む液体を含む媒体を上昇レベルで地表までポンプで吸い上げるためのポンプシステムであって、前記システムが:
前記上昇レベルよりはるかに低い高度に位置し、横方向の配向に延在する細長いパイプを含み、一方の端部に駆動流体弁配置、および反対の端部に媒体弁配置を有する、少なくとも一つの圧力交換チャンバ、
前記圧力交換チャンバの前記媒体弁配置上の前記システムの送達端における加圧排出部、
前記送達端から前記上昇レベルまで上向きに延在し、前記上昇レベルに前記媒体を送達するためのライザ、
前記圧力交換チャンバとほぼ同じレベルにあり、水を提供して鉱石と混合して前記媒体を生成する流体源、
前記圧力交換チャンバを前記媒体で充填するよう動作可能な充填機構、および
前記圧力交換チャンバに接続され、前記媒体が駆動流体によって前記圧力交換チャンバから前記加圧排出部に変位するように、前記媒体と直接接触する前記駆動流体をポンプ注入するように動作可能な容積式ポンプを備える、ポンプシステム。
【請求項2】
前記駆動流体弁配置が、前記容積式ポンプに接続された前記圧力交換チャンバの端部に配置され、駆動流体入口弁を備え、駆動流体出口弁および前記媒体弁配置が、それによって媒体が前記圧力交換チャンバに供給され得るポンプ流体入口弁、およびそれによって媒体が前記圧力交換チャンバから排出され得るポンプ流体出口弁、および各弁に関連し、開位置と閉位置との間で弁を変位させるように構成されるアクチュエータを備え、前記弁が、前記ポンプ流体の流れが前記駆動流体入口弁と駆動流体出口弁を閉じるのを補助し、前記ポンプ流体入口弁と出口弁が開くのを補助するように構成される、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記駆動流体弁配置が、前記駆動流体入口弁を開く前に、前記圧力交換チャンバ内の圧力を上昇させ得るように、前記駆動流体入口弁をバイパスするための圧縮弁、および前記駆動流体出口弁を開く前に、前記圧力交換チャンバ内の圧力を降下させ得るように、前記駆動流体出口弁をバイパスするための減圧弁、および前記圧縮弁と直列に接続され、前記圧縮弁を通る前記駆動流体の流量を制限するためのチョーク弁をさらに備える、請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記ポンプシステムが、並列に接続され、ポンプ注入される媒体で連続的に充填され、駆動流体で連続的に空にされる複数の圧力交換チャンバを備える、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記ポンプシステムが、任意の圧縮弁および減圧弁と、前記駆動流体入口弁および出口弁と、ならびに必要に応じて前記ポンプ注入流体入口弁および出口弁とを適切な時間に作動させて、排出されるチャンバが、別の圧力交換チャンバが媒体で充填されている間に媒体で空にされるときに、少なくとも一つの圧力交換チャンバが媒体で満たされることを確実にするように動作可能な圧力交換チャンバコントローラをさらに備える、請求項4に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記容積式ポンプが、前記駆動流体を前記媒体が流れるのと同じ方向にポンプ注入する、請求項1~4のいずれかに記載のポンプシステム。
【請求項7】
前記充填機構が遠心ポンプを含む、請求項1~5のいずれかに記載のポンプシステム。
【請求項8】
前記容積式ポンプが、前記圧力交換チャンバとほぼ同じ高度に位置する、請求項1~6のいずれかに記載のポンプシステム。
【請求項9】
前記容積式ポンプが、前記圧力交換チャンバよりはるかに高い高度に位置する、請求項1~7のいずれかに記載のポンプシステム。
【請求項10】
前記システムが、前記地表の容積式ポンプに連結された駆動流体ライザ、および地表に位置し、前記媒体からの流体が駆動流体として使用され得るように、前記媒体からの流体を抽出かつ再利用するように動作可能な駆動流体源をさらに備える、請求項1~7または9のいずれかに記載のポンプシステム。
【請求項11】
前記システムが、前記媒体を前記容積式ポンプに供給する前に、前記媒体から大きな粒子を除去するための液体回収フィルタをさらに備える、請求項10に記載のポンプシステム。
【請求項12】
前記システムが、前記圧力交換チャンバとほぼ同じ高度に位置する駆動流体源をさらに備え、前記駆動流体源が、前記チャンバの充填ステップ中に、前記圧力交換チャンバから排出された駆動流体を再利用する、請求項1~11のいずれかに記載のポンプシステム。
【請求項13】
前記圧力交換チャンバの前記レベルに位置する第二の容積式ポンプをさらに備える、請求項12に記載のポンプシステム。
【請求項14】
前記システムが、前記地表の容積式ポンプに連結された駆動流体ライザ、および地表に位置し、前記媒体からの流体が駆動流体として使用され得るように、前記媒体からの流体を抽出かつ再利用するように動作可能である駆動流体源をさらに備え、これによって、すべての駆動流体および媒体流体が再利用されるため、一度作動すると外部流体注入をほとんど必要としない閉ループ流体システムが提供される、請求項13に記載のポンプシステム。
【請求項15】
前記加圧排出部は、加圧コンテナへの供給部、または高圧を必要とする細長い輸送ラインへの供給部のいずれかを備える、請求項1~13のいずれかに記載のポンプシステム。
【請求項16】
前記駆動流体弁配置および前記媒体弁配置が、(i)各弁の両端の圧力差が前記弁の高圧側に作用して、前記弁が作動していない時に前記弁を閉位置に維持するのを助けるように、(ii)前記駆動流体の前記流れ方向がこれらの前記駆動流体弁を閉じるのを助けるように、(iii)前記媒体の前記流れ方向が前記媒体弁を開くのを助けるように配向かつ構成された、作動式、ポペット式、逆止弁を含む、請求項1~14のいずかに記載のポンプシステム。
【請求項17】
アクチュエータ力が、作動時であっても、小さな圧力差の存在下でのみ前記バルブが開くように選択される、請求項16に記載のポンプシステム。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載のシステムを使用して、地下または海底の位置から鉱石粒子を含む液体を含む媒体を上昇レベルで地表までポンプで吸い上げるための方法であって、前記方法が、
(i)横方向に延在する圧力交換チャンバを減圧するステップと、
(ii)前記圧力交換チャンバを、比較的低い圧力源を使用してポンプ注入される媒体で充填するステップと、
(iii)容積式ポンプを使用して前記圧力交換チャンバを加圧するステップと、
(iv)前記媒体と直接接触する駆動流体を使用して前記媒体を排出するステップであって、前記駆動流体が前記容積式ポンプを使用して送達される、排出するステップと、
(v)駆動流体入口弁と出口弁対して媒体入口弁と出口弁を閉じるのを遅延させ、前記媒体入口弁と出口弁が閉じる前に、前記媒体の流れを停止し、それによって、前記媒体中のより大きな鉱石粒子が、前記媒体入口弁と出口弁から、それらが閉じられる前に、離れて沈降することが可能となる、遅延させるステップと、を含む、方法。
【請求項19】
ステップ(ii)が、前記媒体が圧力交換チャンバの実質的な部分を通過し、駆動流体出口弁を介して排出されるように、前記圧力交換チャンバを充填することをさらに含む、請求項18に記載の媒体をポンプ注入する方法。
【請求項20】
ステップ(iv)が、駆動流体が前記圧力交換チャンバの実質的な部分を通過し、ポンプ注入流体出口弁を介して排出されるように、前記媒体と直接接触する前記駆動流体を使用して前記媒体を排出することをさらに含む、請求項18または19に記載の媒体をポンプ注入する方法。
【請求項21】
前記方法が、第一の圧力交換チャンバ上でステップ(i)~(iii)を行うことと、次に、前記第一の圧力交換チャンバ上でステップ(iv)を実施する前またはその間に、第二の圧力交換チャンバ上でステップ(i)~(iii)を実施することと、を含む、請求項18~20のいずれかに記載の媒体をポンプ注入する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプシステムに関する。詳細には、本発明は、排他的ではないが、鉱物加工産業で使用するためのポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物加工産業では、一つの問題は、鉱石を地下または海底の位置から地表レベルに輸送することに関連する。このようなほとんどの用途では、この輸送は、鉱石を垂直に持ち上げるだけでなく、水平に輸送することを含む。
【0003】
比較的小さな垂直距離については、ベルトまたはトラック輸送の配置が主要な輸送方法である。地下鉱山では、最も主要な輸送方法は、鉱石を地下から積んだ後にスキップを地表に持ち上げるスキップホイストである。比較的新しい用途である海底採掘では、スキップホイスト、エアリフト、または油圧ホイストなどの複数の方法が考慮されている。油圧ホイストでは、鉱石は、担体流体、例えば水と混合されて、鉱粒子の懸濁液を形成し、その後、地表にポンプで吸い上げることができる。固体粒子と担体流体との混合物は、スラリーと称される。
【0004】
海底採掘では、油圧ホイストは、鉱石が、典型的には、いわゆるRun-Off-Mine(ROM)鉱石として水中の鉱石の懸濁液を送達する、水系採掘方法を用いて採掘されるため、最も適切であると考えられる。油圧ホイストを地下および海底鉱山に適用するには、いくつかの利点がある。これらの利点には、以下が含まれる。
【0005】
地下鉱山からの油圧ホイスト用のライザパイプの建設は、ライザの穴をドリル加工することができ、スキップホイストに必要なシャフトよりもはるかに小さい断面を有するため、スキップホイストシステムの構築よりもはるかに費用効果が高い。
【0006】
ライザパイプの建設および油圧ホイストに必要な地表インフラは、スキップホイストに必要なものよりもはるかに侵襲性が低い。
【0007】
油圧ホイスト用のライザパイプは、完全に垂直である必要はないため、地下出発点に対する浮上点の位置の自由度がより高い。
【0008】
これらの最後の二つの利点は、人口密度の高い地域の鉱山、または困難な地表の地形条件に特に有利である。
【0009】
油圧ホイストは、スキップホイストのバッチプロセスと比較して連続的なプロセスであり、これによりオペレータの依存度と干渉がより少ないより自動化したプロセスが可能となる。
【0010】
スキップホイストでは、スキップの移動時間が、単位時間当たりに一つが引き上げることができるバッチ数を決定するため、特定の断面シャフトの容量は、深さと逆比例する。油圧ホイストでは、容量は、流速およびパイプ直径によって定義され、容量は、深さによって影響を受けない。
【0011】
採掘プロセス中、鉱石はより小さな粒子に分解され、その結果、鉱石は顆粒状材料として扱われ得る。しかし、ホイスト段階前のサイズ減少は、海底または地下鉱山にありうる、採掘場所の近くの高価で高エネルギー消費の粉砕(粒子サイズ減少)装置の設置要求を減少させるために制限されることが好ましい。
【0012】
追加のサイズ減少をあまり有さないROM鉱石の粒子サイズは、1~100mmの範囲である。水と混合した場合、これは、混合物が停滞している時に粒子がすぐに沈殿する、いわゆる沈殿スラリーを与える。スラリーは、二相混合物(固体粒子が懸濁されるか、またはそうでなければその中に位置する液体)である。これは、鉱物加工用途で一般的に見られる混合物とは異なる。微細粒子(直径50μm未満)との混合物では、粒子は、沈殿がスラリーの輸送にいかなる問題も呈さないように、ゆっくりと沈殿するのみである。
【0013】
油圧鉱石ホイストでは、1~100mmの範囲の比較的大きな粒子は、ライザパイプを介して地表に輸送される間に、担体流体中に懸濁されなければならない。ホイストの深さは、典型的には、地下採掘については100~2000mの範囲であり、海底採掘については5000mの範囲である。このような環境における油圧鉱石ホイストシステムの主な課題は、典型的なホイストの深さに必要な高いポンプ圧力と組み合わせて輸送される比較的大きな粒子サイズである。
【0014】
比較的大きな粒子サイズは、油圧鉱石ホイストシステムで使用することができるポンプ装置に制約を与える。典型的な粒子サイズを処理できる大型通路スラリー遠心ポンプが利用可能であるが、それらの揚程は限定的であり、典型的には50m未満である。これは、油圧鉱石ホスティングシステムの圧力要求を克服するために、非常に多くのこのようなポンプを直列に配置することを必要とする。遠心ポンプの数が直列に増加すると、システムの複雑さが増し、システムの信頼性が低下する。さらに、大型通路スラリー遠心ポンプのエネルギー効率は、多段階クリーン液体遠心ポンプまたは容積式ポンプと比較して限定されており、典型的には、70%対それぞれ80%および90%である。したがって、油圧鉱石ホイストシステムにおける複数の大型通路スラリー遠心ポンプの使用は、これらの欠点のために制限される。
【0015】
先行技術の高効率多段クリーン液体遠心ポンプは、内部通路領域が典型的には小さすぎるため、また内部速度が高すぎるため、明らかに適切ではなく、固体の混じった流体またはスラリーを取り扱う際に過度の摩耗率をもたらす。研磨スラリーを取扱うことができる先行技術の容積式ポンプは存在するが、1mmより大きい粒子を取扱う場合には限界がある。これらの制限は、主に、より大きな粒子の存在下で適切に閉じて封止しないポンプ室隔離弁の動作に関連する。さらに、先行技術の容積式ポンプの流量速度は、典型的には、より大きな粒子を確実に懸濁するには低すぎるため、大量のこれらのより大きな粒子を取扱う際に閉塞をもたらす。
【0016】
これらの問題のいくつかを克服するために、いくつかの圧力交換の概念が過去に提案されている。圧力交換システムでは、圧力交換チャンバはまず、低圧充填システムによって弁配置を介してポンプ注入される流体(ポンプ注入流体と呼ばれる)で充填される。ポンプ注入流体が充填されると、別の弁配置によって、すでに圧力交換チャンバ(駆動流体と称される)内の流体がチャンバの外に変位する。チャンバがポンプ注入流体で充填されると、ポンプ注入流体入口および駆動流体出口弁が閉じられる。高圧駆動流体入口弁および高圧ポンプ注入流体出口弁が順次開放され、高圧駆動流体が圧力交換チャンバに進入し、それによって、ポンプ注入流体出口弁を介してチャンバからポンプ注入流体を高圧排出接続に変位させる。
【0017】
しかしながら、全ての先行技術の圧力交換システムは、高圧駆動流体をシステムに供給するために、クリーン液体ポンプに依存する。先行技術のほとんどの圧力交換システムは、この目的のために、高効率の多段階クリーン液体遠心ポンプを使用する。チャンバをポンプ注入流体で充填する際に圧力交換チャンバから出て来る流体は、典型的には、駆動流体の任意の消耗を最小化するために駆動流体として再使用される。したがって、ほとんどの先行技術の圧力交換システムは、ポンプ注入流体と駆動流体を分離する圧力交換チャンバ内の分離要素を使用する。この分離要素の機能は、駆動流体とポンプ注入流体との混合を防止しながら、それらの間で圧力を交換することである。先行技術による圧力交換システムは、垂直に配置された圧力交換チャンバ内のフロート、水平に配置された圧力交換チャンバ内の浮動ピストン、ならびに、例えば、円筒形ダイヤフラムまたは膜、および気胞形状またはホース形形状などの、様々な形状および形態の気密封止された可撓性分離要素を含む、様々な形態および形状の分離要素を使用する。
【0018】
しかしながら、浮動分離要素は、ポンプ注入流体と駆動流体との間に気密封止を提供せず、両方の流体の混合をもたらす。研磨スラリーを取り扱う圧力交換システムでは、これは、チャンバをポンプ注入流体で充填する間に圧力交換チャンバから排出される駆動流体の汚染をもたらす。この汚染は、高圧駆動流体ポンプの過剰な摩耗率を防ぐために、再使用する前に駆動流体から除去される必要がある。駆動流体の完全な除染は実用的ではなく、また不可能であり、これはその後、駆動流体の汚染による高圧駆動流体ポンプの信頼性の低下をもたらす。
【0019】
一部の先行技術の圧力交換システムは、垂直に配置された圧力交換チャンバを使用して、粒子が分離要素から離れて沈殿することを可能にすることによって、浮遊分離要素にわたる混合を制限しようと試みる。これは100~500μmの範囲の中間粒子サイズに対して機能し得るが、より小さな粒子は、分離要素から離れて十分に迅速に沈殿せず、さらに圧力交換チャンバ内の乱流によって懸濁液中に保持される。約500μmを超える粒子は分離要素から離れて沈殿するが、急速に沈殿し、圧力交換チャンバの底部に堆積物を形成する。より大きな粒子の量が多すぎるかまたは総体積が大きすぎる場合、圧力交換チャンバの底部で閉塞を形成し、高圧排出接続へのポンプ注入された流体の排出を妨害する。
【0020】
さらに、浮動分離要素の速度は、その耐久性を確保するために制限されなければならない。これは、圧力交換チャンバの垂直または水平の配置に依存しない、油圧鉱石ホイスト用途に存在するような、大きな粒子の沈殿混合物に対するそれらの成功した用途をさらに制限する、圧力交換チャンバ内の流体速度に対する制約を加える。これは、比較的高流量が、粒子のスラリーへの沈降を防止するために必要とされるためである。
【0021】
気密封止分離要素を使用した先行技術の圧力交換システムは、ポンプ注入流体と駆動流体との混合を防止する。しかし、気密封止分離要素は、圧力交換チャンバのサイズおよびアスペクト比に幾何学的制約を加える。サイズ制限により、比較的小さな体積がサイクル毎に変位する。輸送される粒子を懸濁するための圧力交換チャンバ内の最小流速要求と組み合わせれば、これは比較的短いサイクルタイムをもたらすことになる。短いサイクルタイムは、多数の弁作動をもたらし、より大きな粒子の存在下で動作するとき、弁の摩耗率が高くなる。短いサイクルタイムは、そうでなければ、より大きな粒子が弁内の機能的封止面から離れて沈降することを可能にするように使用され得る弁の周りのアイドルフローの期間をさらに限定する。先行技術の気密封止された圧力交換システムは、典型的には、ポンプ注入流体が底部端部の入口および出口弁に、また駆動流体が上部端部の入口および出口弁に、垂直または少なくとも傾斜した圧力交換チャンバの配置を使用して、それによって、より大きな粒子の沈殿を使用して、サイクルの排出段階中に圧力交換チャンバを空にするのを支援する。しかしながら、垂直配置は、圧力交換チャンバの底部でより大きな粒子の堆積をもたらし、堆積物量が多すぎるときにチャンバからの排出を妨害する。これは、このような圧力交換システムによって扱われ得る固体濃度を制限し、より大きな粒子の沈殿混合物を扱う際に、2~5秒の範囲での比較的短い充填および排出段階を必要とする。
【0022】
分離要素を使用する全ての先行技術による圧力交換システムは、分離要素がその許容移動の終わりに達した時に、圧力交換チャンバの充填または排出を停止する必要がある。これらの制限を超える動作は、分離要素に損傷を与えるか、または圧力交換チャンバの内外への流れのハードストップをもたらす。これは、特に、連続的に充填および排出される複数のチャンバを並列で使用する場合に、システム動作にさらなる制約をもたらす。第一に、移動の終了を検出する必要があり、これは典型的には、些末ではあり得ない検出装置を必要とする。充填および排出段階の時間は、固定充填排出流量を使用するときに固定され、例えば、配列中の次のチャンバがまだ準備ができていないときに一つのチャンバの排出段階の延長を許容しない。分離要素は、圧力交換チャンバ内に留まる必要があるため、ポンプ注入流体の一部は、排出段階の終了時に圧力交換チャンバ内に留まる。特に、より大きな粒子スラリーを輸送する場合、これは、圧力交換チャンバ内のより大きな粒子の段階的な蓄積を防止するための追加措置を必要とする。より大きな粒子スラリーを取り扱うために予期されるほとんどの先行技術の圧力交換システムは、圧力交換チャンバの垂直または少なくとも急傾斜した配置を使用してこれを試みようとした。
【0023】
いくつかの提案された先行技術の開放圧力交換システムは、細長いパイプの形態の圧力交換チャンバを使用し得るが、高効率のクリーン流体多段遠心ポンプを使用するため、高圧駆動流体ポンプへのクリーン流体供給に依存する。これは、媒体および駆動流体の混合による汚染のため、充填段階中に圧力交換チャンバから排出される駆動流体の直接的な再使用を制限する。
【0024】
輸送システムまたはホイストシステムの端部で固体を分離した後の担体流体(ポンプ注入媒体の液体部分)の再利用は、担体流体がより小さい粒子で汚染されているので制限される。両方の場合において、汚染された流体を処理するようには設計されていない駆動流体ポンプの信頼性の高い動作を可能にするために、広範な固体分離が必要である。
【0025】
さらに、先行技術の開放圧力交換システムは、典型的には、流体の入口弁および出口弁のためにナイフゲート弁を使用する。これらの弁は、弁を横切る圧力差とは独立して、作動されると開く。これは、圧力のバランスが悪い状況で開放されたときに高流速を生じさせ、研磨スラリーを取り扱う際に高い摩耗率をもたらす可能性がある。
【0026】
遠心駆動流体ポンプの使用により、圧力交換チャンバおよび輸送ラインまたはライザにおける油圧鉱石ホイストシステムの地表への流路保全がさらに複雑になる。遠心ポンプは、送達しなければならない圧力に依存する流量を送達し、これはさらにポンプのインペラの摩耗状態によって影響を受ける。油圧鉱石ホイストシステムでは、システム内の輸送速度が、システムの閉塞につながる可能性のあるシステム内の固体の蓄積を防止するために、臨界堆積速度を上回ることを保証することが非常に重要である。遠心駆動流体ポンプの速度制御による流量のいくらかの制御は可能であるが、遠心ポンプが高効率で確実に動作する流量範囲が比較的狭いため、これは制限される。
【0027】
本発明の実施形態の目的の一つとして、上記の不利益または先行技術のその他の不利益を排除または軽減することが挙げられる。
【0028】
本明細書に詳述する様々な態様は、別段の記載がない限り、互いに独立している。一つの態様に対応する任意の特許請求の範囲は、その特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り、他の態様の任意の要素または特徴を組み込むものとして解釈されるべきではない。
【0029】
本明細書における任意の先行の刊行物(または先行の刊行物に由来する情報)、または既知の任意の物質への言及は、先行の刊行物(または先行の刊行物に由来する情報)または既知の物質が、本明細書が関連する努力の分野における共通の一般知識の一部を形成する、あるいは本出願に対して先行技術として引用可能であるとしても、承認もしくは許可またはいかなる形態の提案としても受け取られることはなく、かつそうすべきではない。
【発明の概要】
【0030】
本概要は、以下の発明を実施するための形態でさらに説明される、簡略化された形態での概念の選択を紹介するため提供される。本概要は、請求された主題の主要な特徴または必須の特徴を識別することを意図しておらず、請求された主題の範囲を制限するためにも使用されることも意図しない。
【0031】
第一の態様によれば、媒体をポンプで吸い上げるためのポンプシステムが提供され、そのシステムは、(i)各端部に弁配置を有する横長パイプを含む少なくとも一つの圧力交換チャンバと、(ii)システムの送達端の加圧排出部と、(iii)圧力交換チャンバを媒体で充填するよう動作可能な充填機構と、(iv)媒体が駆動流体によって圧力交換チャンバから加圧排出部に変位するように、媒体と直接接触する駆動流体をポンプ注入するよう動作可能な容積式ポンプと、を備える。
【0032】
媒体は、単相または多相の混合物を含んでもよい。単相混合物の一例は水であり、二相混合物の一例は、鉱石粒子またはペースト(非常に小さな粒子の高度に濃縮された懸濁液から形成される混合物)を有する液体(スラリーとも呼ばれる)である。鉱石粒子のサイズは、1mm未満から約100mmまで変化しうる。スラリーは、混合物が沈殿スラリーと呼ばれる担体流体内に沈殿する粒子を含んでもよい。
【0033】
圧力交換チャンバ(ポンプチャンバとも呼ぶ)は、横長パイプを含む。パイプは比較的長くてもよく、例えば、100mの長さであってもよく、一部の実施形態では、パイプは少なくとも10mの長さであってもよい。パイプは、横方向の配向(垂直方向よりも水平方向に近い)に延在してもよい。横方向の配向は、略平坦な(水平または略水平)配向、または比較的緩やかな傾斜の配向、直線、湾曲、またはらせん状のものであってもよい。パイプは、海底、地面、または他の地表に沿って(そこからの局所的偏差にもかかわらず)概して水平配向に延在し得る。パイプの長さは、(パイプを充填する媒体の)流速および必要な充填および排出時間によって決定または影響され得る。例えば、25秒の充填時間に対する4ミリ秒-1の流速は、100メートルのパイプ長さを必要とする。いくつかの実施形態では、パイプの長さは、20m~400mの範囲から選択され得る。
【0034】
駆動流体は、水(海水、脱塩水、未処理水など)などの単相流体を含んでもよい。
【0035】
第一の弁配置は、好ましくは、圧力交換チャンバの一端に位置し、駆動流体入口弁、駆動流体出口弁、圧縮弁、および減圧弁を含む。これらの弁は、高圧(例えば、40バール超)での使用に適していることが好ましい。これらの弁は、作動弁を含み得る。
【0036】
駆動流体入口弁および出口弁が一般的に圧力バランスのとれた環境で開くことを可能にするために、圧力バランスラインが提供されてもよい。この圧力バランスラインは、バイパス配置(すなわち、駆動流体入口弁および出口弁をバイパスする)における圧力交換チャンバの圧縮または減圧弁を含みうる。
【0037】
圧縮弁は、圧力交換チャンバ内の圧力を駆動流体入口弁の開弁前に上昇させられるように駆動流体入口弁をバイパスするために提供され、それによって、弁を開くために必要な力を減少させ、開弁時に駆動流体入口弁を通る流体流量を減少させる。これは、駆動流体入口弁の寿命を延ばすという利点を有する。
【0038】
同様に、減圧弁は、駆動流体出口弁の開放前に圧力交換チャンバ内の圧力を降下させるように駆動流体出口弁をバイパスするために提供され、それによって、その開放時に駆動流体出口弁を通る駆動流体の排出を緩和させる。
【0039】
圧縮弁および減圧弁は、高圧差に対して開放するように設計されることが好ましい。しかしながら、これらの弁は、主に駆動流体(ポンプ注入される媒体ではない)の流れを可能にし、それゆえ、よりクリーンな流体(より粒子が少ないか、または少なくとも大きなサイズの粒子が少ない)で作動する。
【0040】
容積式ポンプを使用することにより、ポンプシステムは、流量が重力による沈殿を防止するのに十分であることを確実にするために複雑な制御配置を必要としないという利点を有する。これは、容積式ポンプが、圧力に依存しない固定流量を作り出すためである。容積式ポンプを使用して媒体を横方向圧力交換チャンバから駆動させることにより、駆動流体の出入りを可能にする弁の開閉によって、精緻なセンサを必要とするのではなく、時間によって制御することができる。
【0041】
容積式ポンプを使用することにより、駆動流体は、クリーン水である必要はないが、例えば、500μmよりも小さな粒子など、より小さい粒子を含むことができる。
【0042】
圧力交換システムを使用することは、充填機構が、圧力交換チャンバに、加圧排出部にポンプ注入される媒体を(高圧ポンプを必要とせずに)予め充填することができるという利点を有し、その後、容積式ポンプは、高圧で、媒体を加圧排出部に変位させることができる。
【0043】
第二の弁配置は、好ましくは、加圧排出部の近くの圧力交換チャンバの端部に位置し、ポンプ注入流体(または媒体)出口弁(排出弁とも呼ばれる)およびポンプ注入流体(または媒体)入口弁(吸引弁とも呼ばれる)を備える。ポンプ注入流体入口弁およびポンプ注入流体出口弁は、圧力交換チャンバがそれぞれ適切に減圧または圧縮された時に、圧力バランスのとれた状況で開かれる。これらの弁は、作動弁を含み得る。
【0044】
ポンプ注入流体出口および入口弁は、高圧(例えば、約40バール超)での使用に適していることが好ましい。
【0045】
駆動流体入口弁は、ポンプ注入流体出口弁と同時に(またはほぼ同時に)開放されてもよく、その間、駆動流体出口弁およびポンプ注入流体入口弁は閉じたままである。
【0046】
同様に、ポンプ注入流体入口弁は、駆動流体出口弁と同時に(またはほぼ同時に)開くことができ、その間、ポンプ注入流体出口弁および駆動流体入口弁は閉じたままである。
【0047】
好ましい実施形態では、ポンプ注入流体入口弁および出口弁を閉じることは、駆動流体入口弁および出口弁に対して遅延し、言い換えれば、駆動流体入口弁および出口弁は、ポンプ注入流体入口弁および出口弁の前に閉じられる。これは、ポンプ注入流体入口弁および出口弁が閉じる前に、駆動流体の流れ(したがって媒体の流れも)を停止するという利点を有する。これにより、媒体中のより大きな粒子が、ポンプ注入流体入口弁および出口弁を閉じる前に、ポンプ注入流体入口弁および出口弁から離れて沈殿することが可能になり、それによって、弁内に媒体の大きな粒子を捕捉するリスクを低下させる(そうでなければ、弁を損傷し、弁を閉鎖することを妨げ、それによって動作順序の継続を妨げ得る)。
【0048】
好ましい実施形態では、駆動流体入口弁および出口弁は、弁の幾何学的形状が弁の開閉を補助するように、作動式、非戻り式、ポペット着座弁などの作動弁を備えてもよい。ポペット弁が開く圧力差は、典型的には、逆方向への流れを遮断するときに取ることができる圧力負荷と比較して小さい。
【0049】
ポンプ注入流体入口弁および出口弁は、自動弁を含んでもよいが、好ましい実施形態では、これらは、作動式、非戻り型、ポペット着座弁などの作動弁を含む。
【0050】
作動弁は、典型的には、自動弁と比較して、より大きな弁開口部を可能にする。より大きな弁開口部は、自動弁と比較して、より大きな粒子の通過を可能にする。さらに、作動弁は、タイミングに関してより大きな柔軟性を可能にし、これは、例えば、駆動流体出口弁および入口弁それぞれに対して、ポンプ注入流体入口弁および出口弁の遅延閉鎖を可能にする。
【0051】
弁の両端に小さな圧力差があるときのみ弁が開くという利点は、弁の両側の圧力がほぼ等しくなると自動的に開くことである。弁が、大きな圧力差で開放された場合、弁の両側の圧力のバランスをとろうと、弁が開き始めると、弁を高速で流体が流れることになる。弁を通過する流体がスラリーである場合、高速流れは、弁本体および弁座を迅速に侵食する固体粒子を含有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポペット弁は、作動ポペット弁である。好ましくは、アクチュエータによって加えられる力は、圧力差が小さい(例えば、5バール未満)時に弁の開放を補助するようにし、圧力差が高い(例えば、40バール超、またはポンプ全体の全圧差がどのようなものであっても)場合でも弁を強制的に開かせるようにするようなものである。
【0053】
ポペット弁は、閉鎖された時に弁の両端の圧力差が弁を閉鎖位置に保持することを助けるように配置されることが好ましい。ポンプ注入流体入口弁およびポンプ注入流体出口弁については、ポンプ注入流体(媒体および駆動流体)の流れ方向がそれらの弁の開放を支援する。駆動流体入口弁および出口弁については、ポンプ注入流体(媒体および駆動流体)の流れ方向が逆方向に作用し、弁の閉鎖を支援する。
【0054】
いくつかの実施形態では、圧縮弁および減圧弁は、作動ボール弁もしくはポペット弁、または弁の両端の高圧差の存在下で作動され得る任意の他のタイプの弁を含む。圧縮および減圧弁が配置されるバイパスラインはさらに、圧縮および減圧弁と直列に取り付けられたチョークを有し、圧縮および減圧中の流量を制限および制御することができる。
【0055】
第一および第二の弁配置は、各弁の両端の圧力差が弁の高圧側に作用して、弁が作動していない時に弁を閉位置に維持するのを助けるように配向され構成される、作動式、ポペット式、逆止弁を含み得る。これは、弁を閉位置に維持するために、追加の(外部)力を必要としないという利点を有する。
【0056】
第一の弁配置は、駆動流体の流れ方向がこれらの弁を閉じるのを助けるように配向され構成される、作動式、ポペット式、逆止弁を含み得る。
【0057】
第二の弁配置は、ポンプ注入媒体の流れ方向がこれらの弁を開くのを助けるように配向され構成される、作動式、ポペット式、逆止弁を含み得る。
【0058】
アクチュエータ力は、弁が作動時であっても小さな圧力差(例えば、10バールより小さい)の存在下でのみ開くように選択されうる。これにより、弁が、圧力差が充分に低い前に作動され得るため、弁を開く正確なタイミングの要求が回避される。これは、弁が、正しい圧力差に達した時に自動的に開くためである。これは、高圧差に起因する高流速による過剰な摩耗が回避されるという利点を有する。
【0059】
一部の用途、例えば、深海採掘では、駆動流体出口弁は、駆動流体を周囲の水に排出し得る。他の用途、例えば、地下採掘では、駆動流体出口弁は、駆動流体を、貯蔵部または第二の容積式ポンプなどの別のポンプ流体ポンプ用の供給に排出してもよい。
【0060】
駆動流体入口弁は、圧力交換チャンバが媒体で充填されている時に、高圧駆動流体供給ラインを圧力交換チャンバ内の低圧力に封止する必要がある。駆動流体出口弁は、媒体が圧力交換チャンバから排出されている時に、高圧圧力交換チャンバを低圧駆動流体出口ラインに封止する必要がある。ポンプ注入流体入口(吸引)弁は、媒体が圧力交換チャンバから排出されている時に、高圧圧力交換チャンバを低圧媒体供給ラインまたは吸引ラインに封止する必要がある。ポンプ注入流体出口(排出)弁は、圧力交換チャンバが媒体で充填されている時に、高圧媒体排出ラインを圧力交換チャンバ内の低圧力に封止する必要がある。
【0061】
好ましくは、容積式ポンプは、駆動流体を、媒体が送達端に変位するときに流れる方向と同じ方向に(横方向ではなく)ポンプ注入する。有利なことに、圧力交換チャンバがパイプである場合、駆動流体および媒体の両方が、圧力交換チャンバに対して長手方向にポンプで吸い上げられる。
【0062】
充填機構は、大型粒子を直接扱うことができ、比較的高流量を有することができる利点を有する遠心ポンプを備えてもよい。代替で、充填機構は、追加のポンプの必要性を回避する利点を有する重力供給システムを備えてもよい。他のオプションには、ねじポンプ、または他の任意の便利なポンプまたは供給機構が含まれる。
【0063】
加圧排出部は、ライザへの供給を含んでもよく、ライザは、加圧排出部から地表レベルまで延在する。地表レベルは、加圧排出部の100m超上方であってもよい。代替で、加圧排出部は、加圧コンテナへの供給部または高圧を必要とする、いくらかより長い長さの水平輸送ラインへの供給部を含んでもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、複数の圧力交換チャンバは並列に接続される。
【0065】
一つの圧力交換チャンバのみを使用する場合、ポンプ注入される媒体のパルス化による問題がある可能性がある。さらに、一つの圧力交換チャンバでは、充填段階および排出段階は連続的ではない。
【0066】
二つの圧力交換チャンバを並列に使用する利点は、他の圧力交換チャンバが駆動流体を使用して排出されている間に、圧力交換チャンバのうちの一つを媒体で充填することができる(または充填される過程にある)ことである。中断のない排出は可能であるが、充填段階は、他のチャンバがその排出段階を完了した後に引き継ぐように準備させるために、排出段階に対して加速されなければならない。
【0067】
三つの圧力交換チャンバを並行して使用する利点は、少なくとも一つの圧力交換チャンバが、別の圧力交換チャンバが排出されている間に、媒体で完全に充填され、排出準備完了であり得ることである。例えば、圧力交換チャンバのうちの一つは、完全に充填することができ、排出を待っていて、別の圧力交換チャンバは、充填プロセスの対象であるが、完全には充填されておらず(すなわち、その圧力交換チャンバに対して充填プロセスは継続中である)、第三の圧力交換チャンバは、排出プロセスの対象である(すなわち、第三の圧力交換チャンバに対して排出プロセスが継続中である)。
【0068】
これにより、個々の段階のタイミングにおける安全の余裕をもって、中断の無い充填および排出が可能となる。
【0069】
冗長性が所望される場合、例えば、メンテナンスまたは交換のための圧力交換チャンバへのアクセスが困難であるか、または高価であり得る深海設置において、四つ以上の圧力交換チャンバが使用されてもよい。
【0070】
複数の圧力交換チャンバが提供される場合、システムコントローラ(または拡張弁アクチュエータ)が提供されて、圧縮弁および減圧弁、ならびに入口弁および出口弁を適切な時間に作動させて、一つの圧力交換チャンバが媒体で満たされている間に、別の圧力交換チャンバが媒体で満たされることを確実にすることができる。
【0071】
容積式ポンプは、一つまたは複数の圧力交換チャンバとほぼ同じ高度(または深さ)に位置してもよい。これは、容積式ポンプが圧力交換チャンバの近くに位置するという利点を有し、それによって、圧力交換チャンバ間の切り替え時の負荷応答時間を改善する。
【0072】
圧力交換チャンバが(海底上と対照的に)地下に位置する場合、これは、容積式ポンプが加圧排出部(すなわち、媒体を地表に持ち上げるため)を圧倒するために全力で送達しなければならないという不利な点を有する。要求される圧力は、ライザ内の混合物の静水圧(加圧排出部から地表への)とライザ内の摩擦圧力損失との和である。さらに、容積式ポンプは、媒体を地表に上昇させるために高圧を克服する必要があるため、エネルギー消費は高い。圧力交換チャンバが海底上に位置する場合、周囲の水は駆動流体として使用されてもよく、これは、水深に基づく静水圧を有するため、容積式ポンプは、海水とライザ内の媒体の密度差、およびライザ内の摩擦損失による圧力差を克服するだけである。
【0073】
さらに、圧力交換チャンバが位置する(例えば、鉱床または海底の上)場所に高エネルギー電源を提供することは、高価であり得る。
【0074】
代替で、容積式ポンプは、一つまたは複数の圧力交換チャンバ(例えば、鉱山上の表面レベル、または水表面上の浮動プラットフォームもしくはボート上)よりも著しく高い高度に位置してもよい。容積式ポンプを地表に配置することによって、高エネルギー電源を地表に設置することができる。駆動流体は、圧力交換チャンバにポンプで送出されるときに静水圧の利点を有するため、容積式ポンプ筐体の圧力定格は、容積式ポンプによって生成される最大圧力がはるかに低いため、著しく低くすることができる。地下採掘の場合、駆動流体供給ラインにおいて静水圧を使用した場合、エネルギー消費量ははるかに低い。
【0075】
容積式ポンプは、駆動流体として使用するために流体源を必要とする。駆動流体源は、外部源であってもよく、または駆動流体出口弁から排出される駆動流体から提供されてもよく、あるいはより大きな粒子がポンプ注入媒体から除去された後、担体流体を再使用することによって、ポンプシステムの排出から提供されてもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。この流体は、回収(再使用のため)、交換、または二つの組み合わせのいずれかでなければならない。いくつかの実施形態では、使用される駆動流体は、駆動流体として再使用されなくてもよいが、ポンプ注入媒体の担体流体として再使用されてもよい。
【0076】
駆動流体は、地表あるいは一つまたは複数の圧力交換チャンバと同じ高度から提供されてもよい。本明細書で使用される場合、正の高度は、地表レベル(海水面でありうる)より上の高さを指し、負の高度は、地表より下の深さを指し、そのため、高度は、地表より上の高さ、または地表より下の深さを指してもよく、地表は、海水面より下、海面上、または海面より上にある場合がある。
【0077】
駆動流体が地表から提供される実施形態では、駆動流体ライザを使用して、地表と圧力交換チャンバとの間の流体連通を提供し得る。媒体が水または他の流体を含む場合、これは、(鉱石または他の大きな粒子を除去することによって)媒体ライザ(加圧排出部から地表に延在する)から回収され、駆動流体ライザ(または、容積式ポンプがまた地表に位置する場合、容積式ポンプ)内にそれを流すことによって再使用されることができる。
【0078】
駆動流体を地表に提供することによって、ポンプシステムは、静水圧から利益を得、それによって、容積式駆動流体ポンプのエネルギー要求を減少させる。
【0079】
地下用途では、媒体が圧力交換チャンバを充填している時に排出される駆動流体を再使用することが有益であり得る。そうでなければ、この流体は、鉱山脱水作業の一部として地表にポンプで吸い上げられる必要がある可能性がある。追加の(より小さな)ポンプが圧力交換チャンバレベルに位置する場合、排出された駆動流体を使用して、容積式ポンプからの駆動流体と並列にポンプ注入されることによって、地表から提供される駆動流体を補充することができる。排出される駆動流体のより大きな残りの部分を使用して、ポンプ注入される媒体を生成することができる(すなわち、鉱粒子が位置する担体流体として使用することができる)。この追加の(より小さな)ポンプは、地下用途で使用することができ、駆動流体またはポンプ注入される媒体を生成するために使用される流体に外部流体源を必要としないように、閉ループ構成で提供され得る。
【0080】
駆動流体が圧力交換チャンバと同じ高度から提供される実施形態では、別個の駆動流体ライザを必要としない場合がある。しかし、媒体を生成するための流体および駆動流体を生成するための流体が利用可能である必要がある。海底用途では、両方の用途に利用可能な海水がある。地下採掘用途では、この流体は、地表から(必ずしもライザを介してではないが)供給されてもよく、または鉱山脱水システムによって他の方法で地表に持ち上げられる必要がある鉱水として利用可能であってもよい。こうした用途では、駆動流体および媒体流体の要求は、任意の別個の鉱山脱水装置の必要性を省略または低減し得る。
【0081】
駆動流体端で圧力交換チャンバからポンプで出される任意の媒体を、将来の使用のためにリサイクルすることができる。
【0082】
複数の容積式ポンプは、媒体と直接接触する駆動流体をポンプ注入するために並列に提供されてもよい。容積式ポンプは、すべて同じ高度で提供され得るか、または異なる高度で提供され得る。例えば、一つまたは複数の容積式ポンプは、地表に位置してもよく、一つまたは複数の容積式ポンプは、圧力交換チャンバの高度に位置してもよい。
【0083】
ここで、容積式ポンプは、地表または負の高度に位置し得ることが理解されよう。同様に、駆動流体は、地表から、もしくは負の高度から、または二つの組み合わせから提供されてもよい。
【0084】
容積式ポンプを使用して、媒体と直接接触する駆動流体をポンプ注入することによって、駆動流体と媒体との間の機械的分離はない(フロートまたはダイヤフラムなし)。機械的分離器が存在しないことで、必要に応じて、駆動流体を圧力交換チャンバを超えて駆動することができ、接着されなければならないストローク位置の端部が確実になくなる。
【0085】
複数の圧力交換チャンバを有することによって、圧力交換チャンバは、低圧ポンプ(遠心ポンプなど)によって媒体で充填されてもよく、大きな粒子が圧力交換チャンバの床にとどまるように、媒体が沈殿することができ、次いで、弁は、粒子の沈殿のために大きな粒子が詰まるか、または大きな粒子によって損傷されるリスクを低減して閉めることができる。次いで、圧力交換チャンバは、その中に駆動流体をポンプ注入することによって加圧および空にすることができる。駆動流体は、出口弁を超えてポンプ注入されて、媒体からの任意の粒子による弁閉鎖の可能性を低減することができる。
【0086】
第二の態様によれば、媒体をポンプ注入する方法が提供され、その方法は、(i)圧力交換チャンバを減圧するステップと、(ii)圧力交換チャンバを、比較的低い圧力源を使用してポンプ注入される媒体で充填するステップと、(iii)容積式ポンプを使用して圧力交換チャンバを加圧するステップと、(iv)媒体と直接接触する駆動流体を使用して媒体を排出するステップであって、該駆動流体は、容積式ポンプを使用して送達される、媒体を排出するステップと、を含む。
【0087】
ステップ(ii)は、媒体が圧力交換チャンバ(または圧力交換チャンバの実質的な部分)を通過し、駆動流体出口弁を介して排出されるように、圧力交換チャンバを充填することをさらに含み得る。
【0088】
ステップ(iv)は、駆動流体が圧力交換チャンバ(または圧力交換チャンバの実質的な部分)を通過し、ポンプ注入流体出口弁を介して排出されるように、媒体と直接接触する駆動流体を使用して媒体を排出することをさらに含み得る。
【0089】
方法は、第一の圧力交換チャンバ上でステップ(i)~(iii)を実施すること、およびステップ(iv)が第一の圧力交換チャンバ上で実施される前またはその間に、第二の圧力交換チャンバ上でステップ(i)~(iii)の少なくとも一部を実施することを含み得る。
【0090】
第三の態様によれば、媒体を上昇レベルにポンプで吸い上げるためのポンプシステムが提供され、システムは、少なくとも一つの非垂直パイプであって、各パイプが各端部に弁配置を有する、少なくとも一つの非垂直パイプと、非垂直パイプを充填するよう動作可能な充填システムと、非垂直パイプから上昇レベルまで延在し、かつ媒体を上昇レベルまで送達するためのライザと、を備え、媒体がライザを通してパイプから上昇レベルまでポンプで吸い上げられるように、上昇レベルまで上昇している媒体と直接接触する駆動流体をポンプ注入するよう動作可能な容積式ポンプによって特徴付けられる。
【0091】
ポンプシステムは、各非垂直パイプの弁の開閉を含む、システムの動作を制御するためのコントローラをさらに備えてもよい。
【0092】
非垂直パイプはそれぞれ、圧力交換チャンバに含まれてもよい。
【0093】
第四の態様によれば、媒体を上昇レベルにポンプで吸い上げるためのポンプシステムが提供され、システムは、複数の非垂直パイプであって、各パイプが各端部に弁配置を有する、複数の非垂直パイプと、非垂直パイプを順番に充填するよう動作可能な充填システムと、非垂直パイプから上昇レベルまで延在し、上昇レベルに媒体を送達するためのライザと、媒体がライザを通してパイプのそれぞれから上昇レベルにポンプで吸い上げられるように、上昇レベルに上昇している媒体と直接接触する駆動流体をポンプ注入するよう動作可能な容積式ポンプと、を備え、充填システムの流量は、パイプの少なくとも一つが、容積式ポンプがそのパイプに適用される前に媒体で充填され、それによって、パイプから上昇レベルへの媒体の一定した流れを確実にするものである。
【0094】
第五の態様によれば、圧力交換システムと併用するための浮動プラットフォームが提供され、浮動プラットフォームは、(i)海底に下向きに延在し、圧力交換システムに結合されるライザに結合するためのプラットフォーム上に取り付けられた容積式ポンプであって、該容積式ポンプが、媒体が駆動流体によって圧力交換チャンバから変位するように、圧力交換システム内の媒体と直接接触する駆動流体をポンプ注入するように動作可能である、容積式ポンプと、(ii)プラットフォーム上に取り付けられ、流体回収フィルタに駆動流体によって変位した媒体を輸送するよう動作可能な第二のライザに結合された流体回収フィルタであって、該流体回収フィルタが、媒体から流体を除去し、それを駆動流体として使用するために容積式ポンプに提供するように動作可能である、流体回収フィルタと、を備える。
【0095】
この態様により、媒体(尾鉱)からの望ましくない流体を、それを駆動流体として使用することによって、海底に戻すことができる。
【0096】
浮動プラットフォームは、バージ、船、ポンツーン、または任意の他の浮動構造を含んでもよい。
【0097】
ここで、これらの態様のうちの一つ以上は、非常に大きな粒子沈殿混合物を、圧力交換チャンバ内および外に確実に輸送することを可能にすることが理解されるべきである。
【0098】
流体を駆動するための容積式ポンプの使用には、先行技術の圧力交換システムで用いられるような多段遠心ポンプと比較していくつかの利点がある。
【0099】
一つの利点は、遠心ポンプの圧力依存の高い流量と比較して、容積式ポンプの実質的に圧力に依存しない流量である。これにより、圧力交換チャンバ(水平パイプを含み得る)ならびに加圧排出部に結合された任意の容器(ライザなど)の両方における非常に安定した流量が可能になる。圧力交換チャンバ内の沈殿底の再始動によるポンプ上の圧力負荷の変動、ライザ(または他の容器)の密度の変動、およびライザ(または他の容器)の圧力損失の変動は、ライザ(または他の容器)の流量に影響を与えない。それによって、流路保全が大幅に強化され、より信頼性の高い油圧鉱石ホイストシステムをもたらす。
【0100】
容積式ポンプを使用する第二の利点は、多段階遠心ポンプと比較して、汚染された駆動流体の取り扱いにはるかに適していることである。容積式スラリーポンプを使用する場合、駆動流体自体は、粘性担体流体として使用され得るように、より高い粘度の可能性のある高濃度スラリーであってもよい。これは、例えば、容積式ポンプが油圧鉱石ホイストシステムの底部に設置される実施形態における、バックフィル(充填または吸引)ストローク中に圧力交換チャンバから出る汚染された駆動流体の直接再使用を可能にする。地表では、鉱石粒子は、その後、駆動流体として再利用され得る担体流体から分離されてもよい。駆動流体の著しい汚染は、容積式ポンプを使用して駆動流体をポンプ注入する場合に許容される。これは、多段階遠心ポンプが、駆動流体としてリサイクルされた担体流体をポンプ注入する必要がある状況と比較して、分離要求を大幅に低減する。
【0101】
第六の態様によれば、媒体をポンプで吸い上げるためのポンプシステムが提供され、システムは、(i)各端部に弁配置を有する横長パイプを含む少なくとも一つの圧力交換チャンバと、(ii)システムの送達端での加圧排出部と、(iii)圧力交換チャンバを媒体で充填するよう動作可能な充填機構と、(iv)第一の高度に位置する第一の容積式ポンプと、(v)第二の低い、高度に位置する第二の容積式ポンプであって、該容積式ポンプは、媒体が駆動流体によって圧力交換チャンバから加圧排出部に変位するように、媒体と直接接触する駆動流体をポンプ注入する際に協働する、容積式ポンプと、を備える。
【0102】
第一の容積式ポンプは、好ましくは、ポンプ注入媒体から抽出された流体から駆動流体を受けるように動作可能である。
【0103】
第二の容積式ポンプは、好ましくは、圧力交換チャンバの近傍の流体から駆動流体を受けるように動作可能である。この流体は、排出された駆動流体、または局所的に利用可能な流体(海水、湖の水、池、地下水供給、脱水装置など)から抽出されてもよい。
【0104】
上述の態様に記載される圧力交換システムは、横方向(例えば、水平)に配置された開放圧力交換システムを使用することによって、先行技術による圧力交換システムの不利益を排除または低減するものであり、開放とは、分離要素を使用することなく媒体と駆動流体との間の直接接触を指す。各圧力交換チャンバの細長いパイプ形状は、圧力交換チャンバ内の高速性を可能にし、それによって、沈殿スラリー内の粒子の懸濁および輸送を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
これらおよび他の態様は、添付図面を参照し、例示のみによって示される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0106】
図1図1は、本発明の第一の実施形態によるポンプシステムの簡略化された概略図であり、第一の実施形態は、単一の圧力交換チャンバのみを使用し、圧力交換チャンバは、媒体がポンプで吸い上げられる地表の下に位置する。
図1A図1Aは、チャンバ内の弁配置を示す、図1のポンプシステム、すなわち圧力交換チャンバの一部の簡略化された概略図である。
図2A図2は、図1のポンプシステムを操作することに関与するステップを図示したフローチャート(二つの図面に分割)である。
図2B図2は、図1のポンプシステムを操作することに関与するステップを図示したフローチャート(二つの図面に分割)である。
図3図3は、図1の一部(開放圧力交換システム)を一般化された様式で図示した、図1のポンプシステムの簡略化された概略図である。
図4図4は、本発明の第二の実施形態による別のポンプシステムの簡略化された概略図であり、第二の実施形態は、三つの圧力交換チャンバ(図1のそれに対する代替的な開放圧力交換システム)およびアップグレードされたコントローラを含む。
図5図5は、充填(またはバックフィル)動作中に図4のポンプシステムを動作することに関与するステップを示すフローチャートである。
図6図6は、排出動作中に図4のポンプシステムを動作することに関与するステップを示すフローチャートである。
図7図7は、図1または図4のいずれかのポンプシステムの一部(容積式ポンプ)の代替的な位置を有するポンプシステムの第三の実施形態を示す、簡略化された概略図である。
図8図8は、本発明の一実施形態による、閉鎖回路における地下の容積式駆動流体注入ポンプを使用する、破線で示される変形を有する、地下システムのためのポンプシステム810の一般的な構成を示す、簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
まず、図1を参照すると、図1は、本発明の第一の実施形態によるポンプシステム10の簡略化された概略図である。典型的な実施形態では、ポンプシステム10のほとんどまたはすべては、媒体がポンプシステム10によって送達される最終送達点よりも低い高度に位置する。この実施形態では、媒体は、液体担体内に位置する1~100mmのサイズの範囲の鉱石粒子を含み、混入および懸濁した鉱石粒子のスラリーを生成する。
【0108】
ポンプシステム10は、単一の圧力交換チャンバ12を備え、その各端部に弁配置14、16、すなわち、駆動流体弁配置14およびポンプ注入媒体弁配置16を有する。
【0109】
図1Aも参照すると、図1Aは、弁配置14、16をより詳細に示す、圧力交換チャンバ12の簡略化された概略図である。
【0110】
加圧排出部20は、システム10の送達端部22に提供される。この実施形態では、加圧排出部20は、地表28で送達端部22から収集レセプタクル26に略垂直方向に延在する、ポンプ注入された媒体ライザ24への入口である。媒体出口ライン29は、ポンプ注入媒体弁配置16と加圧排出部20との間に結合される。
【0111】
充填機構30は、圧力交換チャンバ12を地表28にポンプで吸い上げられる媒体32で充填するよう動作可能な遠心ポンプの形態で提供される。遠心ポンプ30は、媒体入口ライン31を介して、圧力交換チャンバ12を媒体32で充填する。
【0112】
ポンプシステム10はまた、媒体32が圧力交換チャンバ12から加圧排出部20へ、そこからポンプ注入媒体ライザ24を介して地表28へ変位するように、媒体32と直接接触して、圧力交換チャンバ12を通して駆動流体36をポンプ注入するよう動作可能な容積式ポンプ34を含む。
【0113】
容積式ポンプ34は、駆動流体ライザ38および駆動流体入口ライン40を介して、駆動流体弁配置14に結合される。
【0114】
駆動流体出口ライン42は、圧力交換チャンバ12を駆動流体排出点44に接続する。
【0115】
圧力交換チャンバ12、駆動流体弁配置14、ポンプ注入媒体弁配置16、駆動流体入口ライン40および出口ライン42、ならびに媒体入口ライン31および出口ライン29の組み合わせは、本明細書では開放圧力交換システム46と称される。「開放」は、駆動流体36と媒体32との間の直接接触を指す。「圧力交換」は、ポンプ注入される二つの異なる流体(駆動流体36および媒体32)間の圧力交換を指す。
【0116】
駆動流体弁配置14は、容積式ポンプ端部48に位置し、駆動流体入口弁50、駆動流体出口弁52、圧縮弁54、減圧弁56、チョーク弁57、およびマスター弁アクチュエータ58を備える。マスター弁アクチュエータ58は、ポンプシステム10の効率的な動作のために、適切な時に様々な弁50~56を作動させるように提供されている。
【0117】
図1Aに示すように、駆動流体入口弁50は、流体入口弁50を開閉するための油圧アクチュエータ58aを含む。同様に、油圧アクチュエータ58b、c、dは、駆動流体出口弁52、圧縮弁54、および減圧弁56の各々と対になる。これらの油圧アクチュエータ58a、b、c、dの各々は、マスター弁アクチュエータ58によって制御される。これは明確にするために図1Aには示されていない。
【0118】
この実施形態では、マスター弁アクチュエータ58は、油圧電源ユニットを備える。この電源ユニット58は、各弁50、52、54、56に一つずつある、複数の個々の弁アクチュエータ58a、b、c、dに結合される。これらのアクチュエータ58a、b、c、dは、システムコントローラ70からコマンドを受けるマスター弁アクチュエータ58に応答して、それぞれの弁50、52、54、56を制御するよう動作可能である。
【0119】
この実施形態では、これらの弁はすべて高圧(例えば、40バール超)作動式、非戻り型、ポペット着座弁であるが、他の実施形態では、異なるタイプの弁を使用してもよい。
【0120】
チョーク弁57(一つは図1に図示されているが、二つが図1Aに図示されている)は、圧力交換チャンバ12の圧縮および減圧の間の流量を制限および制御するために、圧縮弁54および減圧弁56と直列に取り付けられる。駆動流体36(およびこれらの弁54、56を通過する任意の媒体32)の流量を制限することによって、圧縮弁54および減圧弁56の摩耗が低減される。
【0121】
他の実施形態では、圧縮弁54および減圧弁56のそれぞれに対して、別個の専用のチョーク弁が提供されてもよい(すなわち、図1Aに示すように、二つのチョーク弁を使用してもよい)。チョーク弁は、オリフィスプレートなどの固定形状制限を含んでもよく、圧縮および減圧弁の上流または下流に配置され得る。
【0122】
入口弁50および出口弁52が一般的に圧力バランスのとれた環境で開くことを可能にするために、圧力バランスライン60が提供される。この圧力バランスライン60は、圧力交換チャンバ12用の圧縮弁54および減圧弁56をバイパス配置(すなわち、駆動流体入口弁50および出口弁52をバイパスする)で結合する。
【0123】
圧縮弁54は、駆動流体入口弁50の開弁前に圧力交換チャンバ12内の圧力を上昇させることができるように、駆動流体入口弁50をバイパスするために提供され、それによって、弁50を開くために必要な力を減少させ、開弁時に駆動流体入口弁50を通る流体流量を減少させる。これは、駆動流体入口弁50の寿命を延ばすという利点を有する。
【0124】
同様に、減圧弁56は、駆動流体出口弁52を開く前に圧力交換チャンバ12内の圧力を下げることができるように、駆動流体出口弁52をバイパスするために提供され、それによって、開弁時に駆動流体出口弁52を通る駆動流体36の高流量を防止する。
【0125】
圧縮弁54および減圧弁56は、高圧差に対して開放するように設計される。しかしながら、これらの弁は、駆動流体36(ポンプで吸い上げられる媒体32を運ぶ鉱石ではない)の流れを主に許容し、それに対して、よりクリーンな流体(粒子がより少ない、または少なくとも大型粒子が少ない)上で動作させる。これは、これらの弁が過度の摩耗を受けないことを意味する。
【0126】
ポンプ注入媒体弁配置16は、送達端部22に位置し、ポンプ注入流体出口弁62(排出弁とも呼ばれる)、ポンプ注入流体入口弁64(吸引弁または充填弁とも呼ばれる)、および適切な時に弁62、64を作動させるマスター弁アクチュエータ66を備える。ポンプ注入流体入口弁64および出口弁62は、圧力交換チャンバ12がそれぞれ適切に減圧または圧縮された時に、圧力バランスのとれた状況で開く。
【0127】
図1Aに示すように、ポンプ注入流体出口弁62は、流体出口弁62を開閉するための油圧アクチュエータ66aを含む。同様に、油圧アクチュエータ66bは、ポンプ注入流体入口弁64と対になる。これらの油圧アクチュエータ66a、bの各々は、マスター弁アクチュエータ66(図1Aの破線で示される)によって制御される。
【0128】
この実施形態では、マスター弁アクチュエータ66はまた、油圧電源ユニットである。この電源ユニット66は、各弁62,64に一つずつある、二つの個々の弁アクチュエータ66a、bに結合される。これらのアクチュエータ66a、bは、システムコントローラ70からコマンドを受けるマスター弁アクチュエータ66に応答して、それぞれの弁62、64を制御するよう動作可能である。ポンプ注入流体出口弁62および入口弁64は、高圧(例えば、40バール超)での使用に適している。
【0129】
この実施形態では、ポンプ注入流体入口弁64および出口弁62は、それぞれの駆動流体入口50および出口52弁を閉じた後に閉じられる。言い換えれば、駆動流体入口弁50は、ポンプ注入流体出口弁62の前に閉じ、駆動流体出口弁52は、ポンプ注入流体入口弁64の前に閉じている。これは、ポンプ注入流体入口弁50および出口弁52が閉まる前に、駆動流体36の流れ(したがって、媒体32の流れも)を停止するという利点を有する。これにより、ポンプ注入流体入口弁64および出口弁62を閉じる前に、媒体32内のより大きな粒子が、ポンプ注入流体入口弁64および出口弁62から離れて沈殿することができ、それによって、それらの弁62、64内の媒体32からの大きな粒子を捕捉するリスクを低下させる。
【0130】
図1Aに示すように、入口弁および出口弁50、52、62、64は、閉弁時に弁50、52、62、64の両端の圧力差が弁50、52、62、64を閉位置に保持することを助けるように配置される。ポンプ注入流体入口弁64およびポンプ注入流体出口弁62については、ポンプ注入流体(媒体および駆動流体)36、32の流れ方向が、これらの弁64、62の開放を支援する。駆動流体入口弁50および出口弁52については、ポンプ注入流体(媒体および駆動流体)36、32の流れ方向が逆方向に機能し、弁50、52の閉鎖を支援する。これにより、閉弁時に、追加のアクチュエータ力なしで圧力差によって支援されて、弁50、52、54、56、62、64の適切な封止が保証される。弁50、52、54、56、62、64は、アクチュエータ58a、b、c、dおよび66a、bによって小さな力のみが加えられるとき、圧力バランスのとれた状況に近い状況で開く。スモールとは、システム10の高圧部分と低圧部分との間の全圧差が弁50、52、54、56、62、64の両端に存在する閉位置にある、弁50、52、54、56、62、64の両端の油圧閉鎖力に対する小ささを指す。
【0131】
圧力バランスの取れた状況に近い状況での開放は、駆動流体入口弁50および出口弁52ならびにポンプ注入流体入口弁64および出口弁62に適用される。圧力バランスの取れた状況に近い状況での開放は、開放時に弁50、52、54、56、62、64内の高流速を排除するが、これはそうでなければ、弁50、52、54、56、62、64の両端の高圧差に起因して起こる。これらの高流速は、そうでなければ、駆動流体36およびポンプ注入媒体32の両方に存在する小さな研磨粒子のために、弁50、52、54、56、62、64の機能的封止面を損傷する。
【0132】
圧力バランスの取れた状況に近い状況での自動開放により、圧縮弁54または減圧弁56の開放時に圧力の均等化が完了する前に、比較的小さなアクチュエータ力を加えることができる。これは、駆動流体36およびポンプ注入媒体32の入口弁および出口弁50、52、64、62を起動する前に正しい圧力均等化を決定するために圧力測定を必要としないため、システムコントローラ70を大幅に単純化する。
【0133】
圧縮弁54および減圧弁56は、全圧差がまだ存在する時に開放されるように設計され、それゆえ、それらの両端に圧力差から存在する油圧閉力に関連してより大きなアクチュエータ力を必要とする。圧縮弁54および減圧弁56の機能的封止面における流速を制限するために、一つまたは複数のチョーク57は、個々の圧縮弁54および減圧弁56の上流または下流のいずれかに設置され得る。この実施形態では、チョーク57は、オリフィスプレートなどのバイパスラインにおける制限部である。ここで、チョーキング機能は、摩耗に対するその高い許容量で、圧縮弁54および減圧弁56の封止機能から分離され、それらの低い摩耗許容量から、摩耗抵抗に対するその要求が低減される。言い換えれば、制限部(チョーク57)を使用することにより、弁54、56によって経験される摩耗が低減される。流量制御機能を封止機能から分離することによって、相補的な形成を保持しなければならない高耐摩耗性封止部品を設計するよりも、速度制御機能を実施する耐摩耗部品を設計する方が容易である。
【0134】
いくつかの実施形態では、マスター弁アクチュエータ58および66は、すべての作動弁50、52、54、56、62、64のすべての弁アクチュエータ58a、b、c、dおよび66a、bを制御する単一のマスター弁アクチュエータに組み合わせることができる。
【0135】
ポンプシステム10はまた、ポンプ30、34、弁50~56および62~64、ならびにマスター弁アクチュエータ58、66を含むシステム全体の動作を制御するためのシステムコントローラ70を含む。
【0136】
ポンプ30、34のそれぞれに流体を提供する必要がある。
【0137】
この実施形態では、第一の(地表)流体源74は、駆動流体36のための水を提供するために地表28に提供されている。これは、海底の用途の海水もしくは湖底の用途のための湖水、または地下(もしくはオープンピット)採掘用途における脱水ポンプからの水であり得る、地表28からの水を提供する。これにより、地表水を使用するという静水圧の利点が得られる。流体源74は、流体を容積式ポンプ34に提供する前に、流体から大きな粒子を除去するためのフィルタを含み得る。
【0138】
流体源74は、収集レセプタクル26内のポンプ注入媒体32から流体を抽出および再利用するために使用されて、それにより、任意選択で、(鉱山からの望ましくない水または容易に利用可能な場合、過剰水をポンプで吸い上げるために使用される脱水装置の地下用途または開放ピット用途、地表水の海底または湖底用途で)追加の流体が局所的な水源によって供給されて、媒体32からの流体を駆動流体36として使用することができる。海底または湖底用途では、地表にポンプで吸い上げられた媒体からの尾鉱の再利用は、地表での尾鉱(媒体32からの不要な流体または粒子)を処分する要求を除去するという利点を有する。これは、圧力交換チャンバ充填ステップ(図2のステップ106、および図5のステップ402、406、410)中に圧力交換チャンバ12から変位する駆動流体36(尾鉱を含む)が、海底または湖底上に直接排出され得るためである。
【0139】
この実施形態では、第二の流体源76は、圧力交換チャンバ12とほぼ同じレベルで提供され、水を提供して鉱石と混合して媒体32を生成する。これは、海底の用途の海水もしくは湖底の用途のための湖水、または地下(もしくはオープンピット)の採掘用途における鉱水であり得る、局所的な水を使用する。
【0140】
ここで図2も参照すると、図2は、ポンプシステム10の動作中に実行されるステップを示すフローチャート(100)である。
【0141】
第一のステップ(ステップ102)は、減圧ステップである。このステップでは、マスター弁アクチュエータ58は、減圧弁56を開き、圧力交換チャンバ12を駆動流体出口ライン42内の圧力に減圧し、それによって、駆動流体出口弁52およびポンプ注入流体入口弁64が開くことを可能にする。
【0142】
減圧ステップは、充填コマンドを受信するまで継続する(ステップ103)。
【0143】
充填コマンドが受信されると(圧力交換チャンバ12が十分に減圧されると起こる)、マスター弁アクチュエータ58は、駆動流体出口弁52を開く(ステップ104)。マスター弁アクチュエータ58は、減圧ステップ(ステップ102)の間に出口弁52に通電してもよい。弁52の限定された開圧のため、マスター弁アクチュエータ58の開力によって決定される、圧力差が弁52の開圧に下がった後にのみ、弁52は開放する。この実施形態では、駆動流体36が圧力交換チャンバ12から変位して、媒体32が減圧弁56を通過するのを防ぐ前に、マスター弁アクチュエータ58が減圧弁56を閉じることが好ましい(必須ではない)。
【0144】
チャンバが減圧されると、マスター弁アクチュエータ66は次に、ポンプ注入流体入口弁64(吸引弁)を開き、ポンプ注入流体入口弁64(吸引弁)が開放されると、媒体32は遠心ポンプ30の動作により自動的に圧力交換チャンバ12に流入する(ステップ106)。マスター弁アクチュエータ66は、減圧ステップ(ステップ102)中に入口弁64を通電し得る。限定された開圧のため、弁64は、マスター弁アクチュエータ66の開力によって決定される、圧力差が弁64の開圧に下がった時にのみ開放する。圧力交換チャンバ12に入る媒体は、媒体32が圧力交換チャンバ12を充填し始めるように、駆動流体出口弁52を通して、駆動流体36を圧力交換チャンバ12から変位させる。媒体32は、比較的高い流量であるが比較的低い圧力でポンプ注入されるため、圧力交換チャンバ12は比較的急速に充填される。
【0145】
圧力交換チャンバ12が充填されると(例えば、システムコントローラ70による時間内の測定されたまたは推定された流量の積分によって、充填体積の直接的または間接的な測定または推定によって決定され得る)(ステップ108)、マスター弁アクチュエータ58は駆動流体出口弁52(ステップ110)を閉じ、それによって、圧力交換チャンバ12からの駆動流体36の流出を停止し、媒体32の圧力交換チャンバ12への流入を停止する。
【0146】
媒体32の流れが停止した後、マスター弁アクチュエータ66は所定の時間の間待機する(ステップ112)。この実施形態では、待機時間は3秒であるが、他の実施形態では、待機時間は、ゼロ秒から10秒の間の時間に対して選択されてもよい。この待機時間は、媒体32内のより大きな粒子が、圧力交換チャンバ12の下部に、弁64の弁座から離れて沈殿することを可能にし、それによって弁64のより良い閉鎖を可能にする。
【0147】
マスター弁アクチュエータ66は、所定の待機時間が経過した後、ポンプ注入流体入口弁64(吸引弁)を閉じる(ステップ114)。
【0148】
ポンプ注入流体入口弁64(吸引弁)が閉じられると、マスター弁アクチュエータ58は圧縮弁54(ステップ116)を開き、それによって、容積式ポンプ34によって送達される高圧駆動流体36が、圧力交換チャンバ12に入ることを可能にする。これは、圧力交換チャンバ12の内容物を駆動流体入口ライン40の圧力に圧縮する。
【0149】
圧力交換チャンバ12の圧縮が十分なレベルに到達し、空の(または開始)コマンドが受信された後(ステップ117)、マスター弁アクチュエータ58、66は、駆動流体入口弁50およびポンプ注入流体出口弁62(ステップ118)を開く。上述のように、マスター弁アクチュエータ58、66の開力によって決定される、圧力差が弁50、62の開圧に下がった時にのみ、弁50、62は開くので、マスター弁アクチュエータ58、66は、圧力均等化の前に、圧力均等化の前に弁50、62を起動させてもよい。この実施形態では、駆動流体36が、圧縮弁54ではなく、主に駆動流体入口弁50を通って流れるように、圧力が均等になった時に、マスター弁アクチュエータ58が圧縮弁54を閉じることが好ましい(必須ではない)。
【0150】
これらの弁50、62が開くと、駆動流体36は、容積式ポンプ34の動作のために、駆動流体入口ライン40および駆動流体入口弁50を通って圧力交換チャンバ12に流入する(ステップ120)。駆動流体36は、ポンプ注入流体出口弁62、媒体出口ライン29、加圧排出部20、および部分的にポンプ注入媒体ライザ24(ライザ24の高さによる)を通して媒体32を変位させる。
【0151】
媒体32が媒体出口ライン29(例えば、システムコントローラ70によって時間内の測定されたまたは推定された流量の積分によってなど、充填体積の直接的または間接的な測定または推定によって決定され得る)(システムコントローラ70、によって生成される停止コマンドによって実施される、ステップ121)に変位されると、駆動流体入口弁50は閉じられる(ステップ122)。これは、駆動流体36の圧力交換チャンバ12への流入を停止し、媒体32の圧力交換チャンバ12からの流出を停止する。
【0152】
媒体32の流出が停止した後、マスター弁アクチュエータ66は所定の時間の間待機する(ステップ124)。この実施形態では、待機時間は3秒であるが、他の実施形態では、待機時間は、ゼロ秒から10秒の間の時間に対して選択されてもよい。この待機時間は、媒体32内のより大きな粒子が、圧力交換チャンバ12の下部に、ポンプ注入流体出口弁62の弁座から離れて沈殿することを可能にし、それによって、弁62のより良い閉鎖を可能にする。
【0153】
他の実施形態では、追加または代替として、ステップ120は、駆動流体36がポンプ注入流体出口弁62を通って流れるように延長される。これにより、ポンプ注入流体出口弁62が、駆動流体36の存在下で確実に閉まり、これは、媒体36よりもよりクリーンであってもよく、またはより少ない大きな粒子を有してもよい。こうした実施形態では、ポンプ注入流体(または媒体)32は、一部の駆動流体36を含み得る。これはまた、圧力交換チャンバ12内の媒体からの粒子の蓄積を防止する。
【0154】
マスター弁アクチュエータ66は、所定の待機時間が経過した後、ポンプ注入流体出口弁62(排出弁)を閉じる(ステップ126)。
【0155】
ポンプ注入流体出口弁62が閉鎖されると、順序は、圧力交換チャンバ12の減圧のためにステップ102に戻り、新しい媒体充填プロセスを開始する。
【0156】
ここで図3を参照すると、図3は、図1のポンプシステム10の簡略化された概略図である。図3では、開放圧力交換システム46(すなわち、圧力交換チャンバ12、駆動流体弁配置14、ポンプ注入媒体弁配置16、駆動流体入口および出口ライン40、42、ならびに媒体入口ライン31および出口ライン29)は、概して数字46で示されている。
【0157】
ここで図4を参照すると、図4は、本発明の第二の実施形態による、別のポンプシステム310の簡略化された概略図である。明確にするために、図1の実施形態の部品に共通するそれらの部品は取り除かれている。このポンプシステム310は、ポンプシステム10と非常に類似している。主な違いは、開放圧力交換システム346は、一つの圧力交換チャンバ12の代わりに三つの圧力交換チャンバ312a、b、cを備え、システムコントローラ370は、三つの圧力交換チャンバ312の順次の充填および排出を管理することである。
【0158】
三つの圧力交換チャンバ312a、b、cの各々は、図1のポンプシステム10を参照して記載するものと同一の弁を含む(明確にするために、チョーク弁57は図4に図示されていないが、各圧力交換チャンバ312に含まれる)。三つの圧力交換チャンバ312a、b、cの各々は、図1の圧力交換チャンバ12と同一である(またはすべての実用的な目的のために少なくとも非常に類似している)。ポンプシステム310はまた、ポンプシステムコントローラ70と類似しているが、三つの圧力交換チャンバ312の順次の充填および排出を追加的に管理する、ポンプシステムコントローラ370を含む。圧力交換チャンバ312a、b、cの充填および排出の配列決定は、主にポンプシステムコントローラ370のタイミング設定によって制御されてもよく、または別の圧力交換チャンバ312a、b、cの状態(または状況)によって影響されてもよい。
【0159】
複数の圧力交換チャンバ312が並列に配置されることによって、ポンプシステム310は、少なくとも一つの圧力交換チャンバ312が常に媒体32で充填され、排出準備完了であることを保証し、それによって、駆動流体36を圧力交換チャンバ312に連続的に供給し、媒体32を圧力交換チャンバ312に連続的に供給することができる。
【0160】
ここで図5および図6を参照すると、図5および図6は、ポンプシステム310の動作中(それぞれ充填および排出)に実行されるステップを示すフローチャート400、420である。
【0161】
最初に、圧力交換チャンバ(例えば、第一の圧力交換チャンバ312a)のうちの一つが、図2のプロセス100のステップ106を使用して充填される(ステップ402)。
【0162】
次に、システムコントローラ370は、ステップ108(図2)に到達するまで第一の圧力交換チャンバ312aを充填させる(ステップ404)。
【0163】
第一のチャンバ312aがステップ108(図2)に達すると、システムコントローラ370は、次の圧力交換チャンバ312b(ステップ406)の充填を開始する。
【0164】
次に、システムコントローラ370は、ステップ108(図2)に達するまで、第二の圧力交換チャンバ312bを充填させる(ステップ408)。
【0165】
第二のチャンバ312bがステップ108(図2)に達すると、システムコントローラ370は、次の圧力交換チャンバ312c(ステップ410)の充填を開始する。
【0166】
次に、システムコントローラ370は、ステップ108(図2)に到達するまで、第三の圧力交換チャンバ312cを充填させる(ステップ412)。
【0167】
次いで、プロセスは、第一の圧力交換チャンバ312aの充填に戻る(ステップ402)。
【0168】
図6を参照すると、最初に、システムコントローラ370は、図2のプロセス100のステップ120を使用して、第一の圧力交換チャンバ312aの排出を開始する(ステップ422)。
【0169】
次に、システムコントローラ370は、ステップ122(図2)に到達するまで、第一の圧力交換チャンバ312aを排出させる(ステップ424)。
【0170】
第一のチャンバ312aがステップ122(図2)に到達したら、システムコントローラ370は、次の圧力交換チャンバ312b(ステップ426)の排出を開始する。
【0171】
次に、システムコントローラ370は、ステップ122(図2)に到達するまで、第二の圧力交換チャンバ312bを排出させる(ステップ428)。
【0172】
第二のチャンバ312bがステップ122(図2)に到達した後、システムコントローラ370は、次の圧力交換チャンバ312c(ステップ430)の排出を開始する。
【0173】
次に、システムコントローラ370は、ステップ122(図2)に到達するまで、第三の圧力交換チャンバ312cを排出させる(ステップ432)。
【0174】
次いで、プロセスは、第一の圧力交換チャンバ312aの排出に戻る(ステップ422)。
【0175】
充填および排出のこの順序は、一つの圧力交換チャンバ312から次への充填流れ、および一つの圧力交換チャンバ312から次への排出流れの段階的引継ぎを提供する。
【0176】
ポンプシステム310への連続的な供給およびポンプシステム310からの連続的な供給を維持するため、個々の圧力交換チャンバ312の配列のタイミングは、システムコントローラ370によって制御および整列される。
【0177】
配列のタイミングを制御するために、複数のパラメータを使用できる。例えば、駆動流体36の流量は調整され得る。駆動流体36の流量は、容積式ポンプ34のポンプ速度に正比例する。圧力交換チャンバ排出ステップ(ステップ120)の持続時間は、調整され得る。好ましい実施形態では、チャンバ排出ステップ(ステップ120)は、媒体32を圧力交換チャンバ312から変位させた後も継続し、ポンプ注入流体出口(排出)弁62が、ポンプ注入媒体32内ではなく、汚染の少ない駆動流体36を通して閉じることを可能にする。
【0178】
充填機構(上記の実施形態における遠心ポンプ)30の流量を調整することができる。このようなポンプの流量は、ポンプ30自体の速度を変更することによって、または駆動流体出口ライン42の流量制御弁を使用することによってポンプ30上の圧力負荷を変更することによって変更することができる。遠心ポンプの流量は、ポンプの速度ならびにポンプの圧力負荷の両方に依存するため、駆動流体出口ライン42における流量測定値を使用して、実際の流量を確認してもよい。
【0179】
チャンバ充填ステップ(ステップ106)の持続時間は、調整され得る。好ましい実施形態では、チャンバ充填ステップ(ステップ106)は、媒体32を駆動流体出口弁52を通して圧力交換チャンバ312から変位させる前に停止し、駆動流体出口弁52がポンプ注入媒体32内ではなく、汚染がより少ない駆動流体36内で閉じることを可能にする。
【0180】
駆動流体36とポンプ注入媒体32との間の直接接触を有するポンプシステム10、310の一つの利点は、充填および排出ステップの持続時間がほぼ無制限に延長され得ることである。これは、クランクシャフトもしくは油圧駆動ポンプ内のストローク上の固定された端部停止、または駆動流体とポンプ注入混合物との間に分離要素を使用する圧力交換システムとは対照的である。これにより、配列のタイミングにおいて大きな柔軟性が可能になり、ポンプ34内の変化する状況によるタイミング変化があっても、非常に頑強である。
【0181】
図1~6の実施形態の代替として、第一の流体源74を、圧力交換チャンバ12、312と同じレベルで位置付けることができる。これは、図1の破線の低レベル流体源74’として図示される。低レベル流体源74’は、部分的に(他の場所から提供される一部の駆動流体とともに)または完全に(流体源74’から提供されるすべての駆動流体とともに)駆動流体入口ライン40に供給することによって、圧力交換チャンバ充填ステップ(図2のステップ106、および図5のステップ402、406、410)中に、圧力交換チャンバ12、312によって排出される駆動流体36を再使用することができる。しかしながら、この排出された流体は、地表の容積式ポンプ34の位置よりもはるかに低い高度にあり、駆動流体入口ライン40は高圧(容積式ポンプ34によって供給される)であるため、圧力交換チャンバ12のレベルに位置付けられた(破線図1に示す)第二の容積式ポンプ34’によって駆動される低レベル流体源74’を必要とするであろう。第二の容積式ポンプ34’を使用して、駆動流体の全てを送達することができ、地表の容積式ポンプ34(図7に示す通り)を不要にし得る。これは、スラリー混合物を生成するために地下レベルで利用可能な水がある地下鉱山の場所で利点を有し、ポンプ注入媒体からの過剰な水が地表で除去および処分され得る。これにより、ほとんどの地下鉱山が既に持っている脱水要求を下げる。
【0182】
媒体32からの流体が駆動流体36として使用され得るように、ポンプ注入媒体32から流体を抽出および再利用するように構成された地表の流体源74を、ポンプ充填チャンバステップ(図2のステップ106および図5のステップ402、406、410)中に排出される駆動流体36を再使用するように構成される、第二の容積式ポンプ34’と組み合わせることができ、その結果、すべての駆動流体36および媒体32流体が(図8の実線で示される)再利用されるため、動作可能になった時点で外部の流体入力を必要としない(またはわずかだけ必要とする)理論的に閉ループ流体システムが提供される。この実施例では、第二の容積式ポンプ34’は、地表28での媒体32の脱水から生じる駆動流体36の不足を補う。容積式駆動流体ポンプ34、34’の使用により、この並列駆動流体ポンプの設置が可能になるが、これは、流量の圧力感度が個々の遠心ポンプ間の相互作用をもたらすため、並列遠心駆動流体ポンプを扱うのははるかに困難となる。
【0183】
ここで、図7を参照すると、図7は、図1または図4のポンプシステムの部品(容積式ポンプ)の代替的な位置を有するポンプシステム710の第三の実施形態を示す、簡略化された概略図である。
【0184】
第一および第二の実施形態(図1~6)では、容積式ポンプ34は、圧力交換チャンバ12、312よりも著しく高い地表28に位置する。例えば、地表28は、圧力交換チャンバ12よりも高度で50m~5000m高くてもよい。しかし、容積式ポンプを、圧力交換チャンバ12またはチャンバ312とほぼ同じレベル(または高度もしくは深さ)で位置付けることが可能である。これは、図7の低レベル容積式ポンプ734として図示される。
【0185】
これは、容積式ポンプ734が圧力交換チャンバ12、312の近くに位置するという利点を有し、それによって、圧力交換チャンバ312間の切り替え時の負荷応答時間を改善する。もう一つの利点は、駆動流体36が低レベル流体源74’によって提供され得るため、駆動流体ライザ(図1のライザ38)が不要なことである。代替で、駆動流体ライザを使用して、駆動流体36を地表28から容積式ポンプ734に直接供給してもよい。これは、駆動流体ライザ内の静水圧が、そのエネルギー消費を低減する容積式ポンプ734に高い吸引圧を生じさせるという利点を有する。
【0186】
圧力交換チャンバ12、312が(海底または湖底上とは対照的に)地下に位置する場合、容積式ポンプ734は、加圧排出部20を圧倒するために(すなわち、媒体32を地表28まで持ち上げるために)全力で送達しなければならない。圧力交換チャンバ12、312が海底(または湖底)上に位置する場合、周囲の水は駆動流体36として使用されてもよく、これは、水深に基づく静水圧を有するため、容積式ポンプ734は、海水とポンプ注入媒体ライザ24の媒体32の密度差とポンプ注入媒体ライザ24の摩擦損失とによる圧力差を克服するだけである。
【0187】
代替で、図1を参照して記載したのと同様の方法で、駆動流体36は、駆動流体ライザ38を介して地表の流体源74から供給されてもよい。
【0188】
容積式ポンプ34を、圧力交換チャンバ312と同じレベルに設けることは、圧力交換チャンバ312が位置する(例えば、鉱床下または海底上)場所に高エネルギー電源を提供することが高価であり得るという欠点を有する。
【0189】
ここで、容積式ポンプ34は、地表28または負の高度に位置し得ることが理解される。同様に、駆動流体36は、地表28から、または負の高度から、あるいは二つの組み合わせから提供されてもよい。
【0190】
ここで、図8を参照すると、図8は、本発明の実施形態による、閉回路で地下の容積式駆動流体注入ポンプを使用する地下システムについて、破線で示された変形を有するポンプシステム810の一般的な構成を示す、簡略化された概略図である。ポンプシステム810は、上述のように開放圧力交換システム46,346を含む。
【0191】
図8では、Cはスラリー中の固体の体積濃度を指し、Q_upはポンプシステム810が送達する総流量を指す。地表の流体源74は、大気圧での水タンクとして図示される。この(第一の)地表の流体源74は、どのシステム変形が使用されるかに応じて、必要に応じて、海、湖、または池の表面からの、任意の容易に利用可能な水(箱74’’によって示される)によって供給され得る。
【0192】
破線ボックス811は、第二の容積式ポンプ34’(または一部の実施形態では、唯一の容積式ポンプ34’)および第二の流体源76の周りに示されている。地下(海底または湖底ではない)環境では、第二の流体源76は、開放圧力交換システム46、346から流体を捕捉するために必要とされ、そうでなければ、排出された駆動流体が領域を浸水させる。こうした用途では、第二の流体源76は、第二の流体源76からの流体を採掘された鉱石(図示せず)と混合するスラリー調製ミキサー813に供給することができる。図1、3、および7の実施形態はまた、スラリー調製ミキサー813を含むが、明確にするためにそれらの図には示されていない。海底または湖底環境では、圧力交換チャンバ12、312の周りの海水または湖水に排出することができるため、開放圧力交換システム46、34から流体を捕捉する必要がないため、第二の流体源76は必要とされない。
【0193】
図8はまた、任意の流体不足に供給するため、またはどのシステム変形が使用されるかに応じて必要とされる時に任意の過剰な流体を受けるために使用することができる、地下の流体源876(水を保持するために使用される池またはタンクであってもよい)を示す。
【0194】
本明細書に記載される方法のステップは、任意の適切な順序で、または適切な場合には同時に実施され得る。
【0195】
用語「備える(comprising」」、「含む(including」」、「組み込む(incorporating」」、および「有する(having
【0196】
」は、本明細書では、排他的なリストではなく、一つまたは複数の要素またはステップの非限定的なリストを列挙するために使用される。かかる用語が使用されるとき、リストに列挙されるそれらの要素またはステップは、リストに追加され得る他の要素またはステップに限られていない。
【0197】
文脈によって別段の示唆が無い限り、本明細書において、用語「一つの(a)」および「一つの(an)」は、その後言及される要素、整数、ステップ、特徴、動作、または構成要素のうちの少なくとも一つを示すために使用されるが、追加の要素、整数、ステップ、特徴、動作、または構成要素を除外しない。
【0198】
一部の実例では、例えば“一つまたは複数の”、“少なくとも”、“限定されないが”、または類似の他の語句など、幅の広い語句の存在は、より狭い場合が、そのような幅の広い語句が使用されない場合に意図されるか、または必要とされることを意味するものではなく、かつ意味として解釈されるべきではない。
【0199】
他の実施形態では、充填機構30は、ドレッジポンプ、または他の任意の便利なポンプを備えてもよい。
【0200】
本明細書で使用される参照番号および対応する部品は、以下に提供される。
10 ポンプシステム
12 圧力交換チャンバ
14 駆動流体弁配置
16 ポンプ注入媒体弁配置
20 加圧排出部
22 送達端部
24 ポンプ注入媒体ライザ
26 収集レセプタクル
28 地表
29 媒体出口ライン
30 充填機構
31 媒体入口ライン
32 媒体(スラリーポンプ注入)
34 容積式ポンプ
34’ 第二の容積式ポンプ
36 駆動流体
38 駆動流体ライザ
40 駆動流体入口ライン
42 駆動流体出口ライン
44 駆動流体排出点
46 開放圧力交換システム
48 容積式ポンプ端部
50 駆動流体入口弁
52 駆動流体出口弁
54 圧縮弁
56 減圧弁
57 チョーク弁
58 マスター弁アクチュエータ(弁50~56用)
60 圧力バランスライン
62 ポンプ注入流体出口弁
64 ポンプ注入流体入口弁
66 マスター弁アクチュエータ(弁60、62用)
70 システムコントローラ
72 第二の容積式ポンプ
74 地表の流体源
74’ 低レベルの流体源
76 第二の流体源
100 フローチャート
310 代替ポンプシステム
312a、b、c 圧力交換チャンバ
346 開放圧力交換システム(三つのチャンバ)
370 システムコントローラ
400 圧力交換チャンバ310を充填するためのフローチャート
420 圧力交換チャンバ310を排出するためのフローチャート
710 ポンプシステム
734 低レベル容積式ポンプ
810 ポンプシステム
811 オプションコンポーネント付きボックス
813 スラリー調製ミキサー
876 地下の流体源
図1
図1A
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8