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特許7289354電気絶縁切刃を有するケーブル終端アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】電気絶縁切刃を有するケーブル終端アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/04 20060101AFI20230602BHJP
   H01R 4/2445 20180101ALI20230602BHJP
   H02G 15/02 20060101ALI20230602BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H02G15/04
H01R4/2445
H02G15/02
H02G1/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021528899
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019082487
(87)【国際公開番号】W WO2020109260
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】18208391.5
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】スツェーラク,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ライニンガー,トービアス
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィボルク,オーレ
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0264044(US,A1)
【文献】特公昭53-23948(JP,B2)
【文献】特開平7-022079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/04
H01R 4/2445
H02G 15/02
H02G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本のワイヤ(6)を備えるケーブル(8)を終端させるためのケーブル終端アセンブリ(1)であって、
前記ケーブル終端アセンブリ(1)は、
- 端面(4)を有するワイヤマネージャ(2)と、
- 前記ワイヤマネージャ(2)の少なくとも一部を受け入れるための受入開口部(12)を有するコネクタハウジング(10)と、を備え、
前記ワイヤマネージャ(2)の前記端面(4)は挿入方向(I)を向き、前記少なくとも1本のワイヤ(6)を前記挿入方向(I)に沿った所定位置に保持するように構成されており、
前記コネクタハウジング(10)は、前記コネクタハウジング(10)への前記ワイヤマネージャ(2)の挿入時に前記少なくとも1本のワイヤ(6)を剪断するように構成されている、電気絶縁材料から形成された少なくとも1つの切刃(14)を備え
前記切刃(14)は、第1の切刃(54)と第2の切刃(58)を備え、
前記第1の切刃(54)が、前記挿入方向(I)に略垂直な第1の平面(56)に配置され、
前記第2の切刃(58)が、前記挿入方向(I)において前記第1の平面(56)から離間した第2の平面(60)に配置されていることを特徴とする、
ケーブル終端アセンブリ。
【請求項2】
前記ワイヤマネージャ(2)および/または前記コネクタハウジング(10)は、環状形状を有することを特徴とする、
請求項1に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記ワイヤマネージャ(2)および/または前記コネクタハウジング(10)は多角形であることを特徴とする、
請求項2に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記ワイヤマネージャ(2)および前記コネクタハウジング(10)のうちの少なくとも一方は、前記挿入方向(I)に略平行に延びる少なくとも1つのガイド機構(41)を備え、他方は少なくとも1つの相補的に形成されたガイドスロット(40)を備えることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記ワイヤマネージャ(2)は、前記少なくとも1本のワイヤ(6)を前記所定位置に保持するための少なくとも1つのワイヤホルダ(32)を特徴として備えることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのワイヤホルダ(32)は、前記ワイヤ(6)の絶縁体に少なくとも部分的に切り込むように構成されている少なくとも1つの保持刃(36)を備えることを特徴とする、
請求項5に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの保持刃(36)は、電気絶縁材料から形成されていることを特徴とする、
請求項6に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのワイヤホルダ(32)は、前記挿入方向(I)において前記少なくとも1つの切刃(14)に対向して位置することを特徴とする、
請求項5から7のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記ワイヤマネージャ(2)は、分離柱状部(37)によって互いに分離された少なくとも2つの隣接するワイヤホルダ(32)を備えることを特徴とする、
請求項5から8のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの切刃(14)は、繊維強化材料から形成されていることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記第1の切刃(54)と前記第2の切刃(58)とが、前記コネクタハウジング(10)の周囲に沿って互いに隣接していることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの切刃(14)は、約90°のベベル角度(66)を有する刃先(18)を備えることを特徴とする、
請求項1から11のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項13】
前記コネクタハウジング(10)と前記少なくとも1つの切刃(14)とが、一体構造部品(62)として一緒に形成されていることを特徴とする、
請求項1から12のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項14】
前記ワイヤマネージャ(2)の前記端面(4)は外縁部(16)を備え、前記外縁部(16)および前記少なくとも1つの切刃(14)の刃先(18)は、前記ワイヤマネージャ(2)を前記コネクタハウジング(10)の前記受入開口部(12)に挿入したときに、互いに滑り越えるように構成されている、
請求項1から13のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項15】
前記コネクタハウジング(10)は、外側ハウジング(64)に少なくとも部分的に入れられていることを特徴とする、
請求項1から14のいずれか一項に記載のケーブル終端アセンブリ(1)。
【請求項16】
少なくとも1本のワイヤ(6)を備えるケーブル(8)を終端させるためのケーブル終端アセンブリ(1)であって、
前記ケーブル終端アセンブリ(1)は、
- 端面(4)を有するワイヤマネージャ(2)と、
- 前記ワイヤマネージャ(2)の少なくとも一部を受け入れるための受入開口部(12)を有するコネクタハウジング(10)と、を備え、
前記ワイヤマネージャ(2)の前記端面(4)は挿入方向(I)を向き、前記少なくとも1本のワイヤ(6)を前記挿入方向(I)に沿った所定位置に保持するように構成されており、前記挿入方向(I)は、前記ワイヤマネージャ(2)が前記コネクタハウジング(10)へ挿入される方向であり、
前記コネクタハウジング(10)は、前記コネクタハウジング(10)への前記ワイヤマネージャ(2)の挿入時に前記少なくとも1本のワイヤ(6)を切断するように構成されている、電気絶縁材料から形成された少なくとも1つの切刃(14)を備え、
前記切刃(14)は、第1の切刃(54)と第2の切刃(58)を備え、
前記第1の切刃(54)が、前記挿入方向(I)に略垂直な第1の平面(56)に配置され、
前記第2の切刃(58)が、前記挿入方向(I)において前記第1の平面(56)から離間した第2の平面(60)に配置されていることを特徴とする、
ケーブル終端アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1本のワイヤを備えるケーブルを終端させるためのケーブル終端アセンブリに関する。ケーブル終端アセンブリは、端面を有するワイヤマネージャと、ワイヤマネージャの少なくとも一部を挿入方向に沿って受け入れるための受入開口部を有するコネクタハウジングとを備え、端面は挿入方向を向き、少なくとも1本のワイヤを所定位置に保持するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1本のワイヤ、特に複数のツイストワイヤ対を備えるケーブルを終端させるためのケーブル終端アセンブリは、多くの場合、少なくとも1本のワイヤを、コネクタの端子に接触するまでコネクタハウジングの一端部の開口部に押し込む必要がある。ケーブルを確実に終端させて短絡を防止するために、少なくとも1本のワイヤの余分な長さを切断(剪断)する必要があり、残りのワイヤを電気的に絶縁する必要がある。そのようなケーブル終端アセンブリの小型化および費用削減に対する大きな需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、小型で費用効率の高いケーブル終端アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は、前述したケーブル終端アセンブリによって解決される。このケーブル終端アセンブリにおいて、コネクタハウジングは、コネクタハウジングの受入開口部へのワイヤマネージャの挿入時に少なくとも1本のワイヤを切断するように構成されている、絶縁材料から形成された少なくとも1つの切刃を備える。
【0005】
少なくとも1つの切刃を絶縁材料から形成することにより、少なくとも1つの切刃は、少なくとも1本のワイヤの余分な長さを切断(剪断)し、少なくとも1本のワイヤをハウジングにおいて絶縁する。したがって、ケーブル終端アセンブリを大型にして製造費用を増加させることになる絶縁面を、切刃に加えて設ける必要がない。本発明によるケーブル終端アセンブリは、小型で費用効果の高い設計を提供する。
【0006】
本発明を以下の特徴によってさらに改良することができる。これらの特徴は、それぞれの技術的効果に関して互いに独立し、任意に組み合わせることができる。
【0007】
例えば、本発明の第1の態様によれば、コネクタハウジングおよび/またはワイヤマネージャは環状形状を有していてよい。特に、挿入方向に垂直なコネクタハウジングおよび/またはワイヤマネージャの断面が環状形状であってよい。環状形状は、コネクタハウジングおよび/またはワイヤマネージャに加わる張力を均一化することができ、変形を防止するまたは少なくとも最小限にすることができる。
【0008】
ワイヤマネージャは、端面から端面とは反対側に配置された前面へ挿入方向に延びる長手方向本体を含むことができる。端面から前面へ延びるトンネルを、少なくとも1本のワイヤを挿入するために設けてもよい。
【0009】
ワイヤマネージャおよび/またはコネクタハウジングは多角形であってよい。挿入方向に垂直な断面が多角形であってよい。例えば、ケーブルが4対のツイストワイヤを備える場合、ワイヤマネージャおよび/またはコネクタハウジングは八角形であってよい。対のツイストワイヤが、その八角形において十字形に配置され、八角形の辺に保持されていてよい。したがって、ワイヤは互いに離間して、ワイヤ間の干渉およびワイヤの誤った位置決めを防止する。しかしながら、ケーブルのワイヤの数に応じて、六角形または十二角形などの任意の他の多角形が許容できる。
【0010】
本発明の例示的な実施形態によれば、ワイヤマネージャおよびコネクタハウジングのうちの一方は、挿入方向に沿って延びるガイド機構を備えることができ、他方は、少なくとも1つのガイド機構を受け入れるための、ガイド機構と相補的に形成されたガイドスロットを備えることができる。したがって、ワイヤマネージャとコネクタハウジングとの正確な回転位置を確保することができるため、少なくとも1本のワイヤを適切な位置で終端させることができる。
【0011】
ガイド機構は、コネクタハウジングの前面から挿入方向とは逆に突出するポストであってよい。ガイドポストは、多角形の一辺に形成されていてよい。さらなる安定化のために、多角形の対向する辺に配置された少なくとも2つのガイド機構および対応するスロットを設けてもよい。
【0012】
本発明のさらなる実施形態によれば、ワイヤマネージャは、少なくとも1本のワイヤを適切な位置に保持するための少なくとも1つのワイヤホルダを特徴として備えることができる。少なくとも1つのワイヤホルダにより、特にコネクタハウジングの受入開口部へのワイヤホルダの挿入中に、少なくとも1本のワイヤが所定位置に確実に保持される。
【0013】
少なくとも1つのワイヤホルダは、ワイヤマネージャの端面に形成されていてよく、ワイヤを挿入可能なスロットを含むことができる。ワイヤホルダの数は、ケーブルのワイヤの数に対応することが好ましい。したがって、各ワイヤホルダは、別々の単一のワイヤを保持して、ワイヤの誤った位置決めをさらに防止することができる。
【0014】
各ワイヤの適切な位置決めをさらに確実にするために、ワイヤホルダをコード化してもよい。ワイヤホルダを視覚的にコード化、例えば色分けして、各ワイヤホルダを他のワイヤホルダから容易に区別できるようにしてもよい。ワイヤホルダをワイヤに対応してコード化してもよく、これは、ワイヤホルダの色がワイヤの色に対応し得ることを意味する。
【0015】
少なくとも1つのワイヤホルダは、ワイヤの絶縁体に少なくとも部分的に切り込むことのできる少なくとも1つの保持刃(retention blade)を特徴として備えることができる。少なくとも1つの保持刃は、スロットの側部に配置されていてよい。スロットの両側がそのような保持刃を特徴として備えることが好ましい。保持刃は、ワイヤの絶縁体に部分的に切り込むため、ワイヤホルダの保持力(holding force)がさらに増加する。したがって、少なくとも1つの保持刃は、少なくとも1本のワイヤが少なくとも1つのワイヤホルダにしっかりと保持されることを確実にすることができる。
【0016】
少なくとも1つの保持刃は、絶縁材料から形成され得ることが好ましい。特に、少なくとも1つの切刃および少なくとも1つの保持刃は、同一の材料から形成されてよい。
【0017】
少なくとも1つのワイヤホルダは、挿入方向に略垂直な半径方向に離間した2つのU字形座部を備えることができる。したがって、ワイヤとの電気接続を確立するコンタクト端子、例えば圧接コンタクトを受け入れるための間隙が、2つのU字形座部の間に設けられていてよい。2つのU字形座部は、ベアリングとして機能して、少なくとも1本のワイヤがコンタクト端子に押し付けられたときに、少なくとも1本のワイヤに対する背圧を生じさせて挿入力を均衡させることができる。
【0018】
2つの隣接するワイヤホルダを分離する分離柱状部(separation column)を設けることができる。分離柱状部は、隣接するワイヤホルダを越える方向に延びることができ、テーパ先端を備えることができる。分離柱状部は、ワイヤ、特に対のツイストワイヤのより良好かつ迅速な処理をもたらす。これは、ワイヤを完全に撚り戻す代わりに半ターンのみの後にワイヤを分離柱状部上に置くことにより、対のツイストワイヤを接合することが可能であるからである。
【0019】
少なくとも1本のワイヤが保持される所定位置は、少なくとも1つの切刃に対向して位置してよい。少なくとも1つのワイヤホルダは、挿入方向において少なくとも1つの切刃に対向して位置することが好ましい。各ワイヤホルダを切刃に対向して配置することができるため、各ワイヤホルダに対応する切刃が存在する。
【0020】
少なくとも1つのワイヤホルダは、少なくとも1つの切刃から半径方向にずれて、挿入中のワイヤホルダおよび/または切刃の損傷を防止することができる。ワイヤマネージャの端面は外縁部を含むことができ、この外縁部から、少なくとも1本のワイヤの余分な長さが半径方向に突出する。外縁部は、少なくとも1つのワイヤホルダによって設けることができる。外縁部は、切刃と相補的な刃を形成することができる。
【0021】
外縁部は、少なくとも1つの切刃の刃先を滑るように越える(glide past)ことができる。互いに滑り越える刃先と外縁部との相互作用により、少なくとも1本のワイヤの余分な長さの切断を容易にすることができる。したがって、ワイヤマネージャと少なくとも1つの切刃、特に外縁部と少なくとも1つの切刃の刃先とは、切断アセンブリを形成することができる。
【0022】
少なくとも1つの切刃は、絶縁樹脂材料またはセラミック材料から形成されていてよい。少なくとも1つの切刃は、ナノメートル繊維強化樹脂材料および/またはガラス繊維強化樹脂材料から形成され得ることが好ましい。ナノメートル繊維強化により、切刃の弾性率を高めて、少なくとも1本のワイヤに切断中に少なくとも1つの切刃の変形を防止することができる。したがって、耐摩耗性を高め、ケーブル終端アセンブリの嵌合サイクルの数を増加させることができる。少なくとも1つの切刃は、約16000の弾性率を有するナノメートル繊維強化樹脂材料および/またはガラス繊維強化樹脂材料から形成され得ることが好ましい。
【0023】
本発明のさらなる実施形態において、コネクタハウジングは、挿入方向に互いに離間した異なる平面に配置された、少なくとも2つのワイヤを切断するための少なくとも2つの切刃を備えることができる。少なくとも2つの切刃が挿入方向に互いに離間した2つの異なる平面に配置されていることにより、少なくとも2本のワイヤの切断が適切な時間的ずれを可能にする。したがって、ワイヤマネージャを受入開口部に挿入しワイヤの余分な長さを切断するために必要な挿入力を低減させることができる。特に、切断力のピークを低減させることができる。
【0024】
少なくとも2つの切刃は、コネクタハウジングの周囲に沿って互いに隣接して配置されていてよい。少なくとも2つの切刃は、多角形の一辺において互いに隣接して配置され得ることが好ましい。したがって、挿入方向に離間した異なる平面に配置された対の切刃を、対のワイヤを切断するために設けることができ、これにより、異なる切刃が各ワイヤを適切な時間的ずれで切断する。
【0025】
少なくとも1つの切刃およびハウジングは、容易で費用効果の高い大量生産のために一体構造部品として形成されていてよい。一体構造部品は、成形部品、例えば射出成形部品として形成されていてよい。
【0026】
少なくとも1つの切刃の耐摩耗性をさらに高め、ケーブル終端アセンブリの可能な嵌合サイクルの数をさらに増加させるために、少なくとも1つの切刃は、約90°のベベル角度を有する刃先を備えることができる。約90°のベベル角度により、少なくとも1本のワイヤの切断中に少なくとも1つの切刃の偏向をさらに防止して、ケーブル終端アセンブリの嵌合サイクルの数を増加させる。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、コネクタハウジングは、外側ハウジング、例えば外側ダイカストに少なくとも部分的にさらに受け入れられて、コネクタハウジングをさらに安定化させ、少なくとも1本のワイヤの余分な長さの切断中にコネクタハウジングの偏向を防止することができる。
【0028】
以下で、例示的な実施形態を示す添付図面を参照しながら、本発明による少なくとも1本のワイヤを有するケーブルを終端させるためのケーブル終端アセンブリについて、より詳細に説明する。
【0029】
図中、機能および/または構造に関して互いに対応する要素については、同一の参照符号を使用する。
【0030】
様々な態様および実施形態の説明によれば、図示する要素は、それらの要素の技術的効果が特定の応用例に必要でなければ省略することができる。逆に、図示しないまたは図を参照して説明しないが前述した要素を、それらの特定の要素の技術的効果が特定の応用例に有利であれば追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明によるケーブル終端アセンブリの実施形態の概略斜視図である。
図2】本発明によるケーブル終端アセンブリの概略断面図である。
図3】本発明によるワイヤマネージャの概略斜視図である。
図4】本発明による、複数のワイヤを保持するワイヤマネージャの概略斜視図である。
図5】本発明によるコネクタハウジングの概略斜視図である。
図6】本発明によるケーブル終端アセンブリの概略切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明によるケーブル終端アセンブリ1の概略斜視図であり、図2は、本発明のケーブル終端アセンブリ1の断面図である。
【0033】
ケーブル終端アセンブリ1は、端面4を有するワイヤマネージャ2を備え、端面4は、挿入方向Iを向き、ケーブル8のワイヤ6を所定位置に保持するように構成されている。ケーブル終端アセンブリ1は、ワイヤマネージャ2の少なくとも一部を挿入方向Iに沿って受け入れるための受入開口部12を有するコネクタハウジング10をさらに備える。
【0034】
この例示的な実施形態において、ケーブル8は、4対のツイストワイヤ6を備え、このワイヤ6は撚り戻されており、ワイヤマネージャ2が各ワイヤ6を端面4の所定位置に保持する。
【0035】
ワイヤ6は、端面4から半径方向に突出しており、ワイヤマネージャ2をコネクタハウジング10に挿入するときに所定の長さに切断する必要がある。このために、コネクタハウジング10は、ワイヤ6の所定位置に対応して配置された切刃14を備える。挿入中に、切刃14はワイヤ6の余分な長さを切断する。切刃14は絶縁樹脂材料などの電気絶縁材料から形成されているため、コネクタハウジング10の切刃14によって所定の長さに切断されたワイヤ6はさらに電気的に絶縁され、さらなる絶縁機構が不要になる。
【0036】
図2に見られるように、挿入方向Iから見たケーブル終端アセンブリ1の断面図を示す。ワイヤマネージャ2をコネクタハウジング10の受入開口部12に挿入したときに互いに滑り越える端面4の外縁部16と切刃14の刃先18との相互作用によって、ワイヤ6の余分な長さが切断される。したがって、外縁部16と刃先18とは切断アセンブリ19を形成する。
【0037】
コネクタハウジング10およびワイヤマネージャ2の両方が環状形状であり、より詳細には、八角形20の形の多角形である。各対のツイストワイヤ6は、八角形20の他の辺22に略垂直に配置された一辺22に位置決めされているため、対のツイストワイヤ6は十字形に位置決めされ、互いに離間して、ワイヤ6の誤った位置決めの可能性を低減させる。言い換えると、対のツイストワイヤは、八角形の1つおきの辺22に配置されているため、周囲に沿った隣接する対のツイストワイヤ6は互いに略垂直である。
【0038】
ワイヤの正確な位置決めを容易にすることに加えて、コネクタハウジング10の環状形状、特に八角形20により、コネクタハウジング10の張力を均一化する機能を高めることができる。環状形状および/または多角形により、受入開口部12へのワイヤマネージャ2の挿入中に均一な力の流れが得られる。環状形状および/または多角形により、受入開口部12へのワイヤマネージャ2の挿入中に、切刃14の偏向を防止するおよび/または最小限にすることができる。
【0039】
本発明によるワイヤマネージャ2の斜視図である図3および図4を参照しながら、ワイヤマネージャ2についてより詳細に説明する。図4では、ワイヤマネージャ2はケーブル8の複数のワイヤ6を保持している。
【0040】
ワイヤマネージャ2は、端面4から前面(図示せず)へ挿入方向Iに略平行に延びる長手方向本体24を備える。少なくとも1本のワイヤ6を有するケーブル8を挿入するためのケーブルトンネル26が、貫通孔28の形で端面4から前面へ延びる。ケーブル8をケーブルトンネル26に挿入することができ、これにより、ケーブル8の絶縁体が、前記ケーブル8の挿入前に除去される。ケーブル8は、複数の異なるワイヤ6、好ましくは対のツイストワイヤ6を備えることができる。ワイヤ6の自由端30が端面4においてケーブルトンネル26から突出し、略垂直に曲がるため、ワイヤ6の自由端30はワイヤマネージャ2の端面4に略平行に延びる。ワイヤ6の余分な長さは、端面4の外周を越えて延びており、コネクタハウジング10へのワイヤマネージャ2の挿入中にこれを切断する必要がある。
【0041】
略U字形のワイヤホルダ32が、ワイヤ6を所定位置に保持するために、ワイヤマネージャ2の端面4に設けられる。ワイヤ6ごとに対応するワイヤホルダ32が設けられる。2つのワイヤホルダ32が、多角形、この例示的な実施形態においては八角形20の周囲に沿った一辺22において互いに隣接して配置される。4対のワイヤホルダ32が矩形配置に配置され、すなわち八角形の1つおきの辺22に対のワイヤホルダ32が設けられる。したがって、対のワイヤを八角形20の一辺22に位置決めすることができ、これにより、対の各ワイヤ6が異なるワイヤホルダ32によって保持される。
【0042】
ワイヤホルダ32は、ワイヤ6を着座させることのできるスロット34を備えることができる。ワイヤ6を所定位置に保持する保持力をさらに高めるために、ワイヤホルダ32が保持刃36を特徴として備えていてもよい。保持刃36は、ワイヤ6の絶縁体に少なくとも部分的に切り込んで、ワイヤマネージャ2に対するワイヤ6の締結をさらに確実にするように構成されている。保持刃36は、スロット34の各側部に配置されることが好ましい。したがって、ワイヤホルダ32を圧接コンタクトと同様に形成することができる。保持刃36は電気接続を形成するためのものではないため、保持刃36は、必ずしもワイヤ6の導電性コアに接触するようにワイヤ6の絶縁体を切り開く必要はない。それどころか、保持刃36とワイヤ6との電気接続は望ましくない。したがって、ガラス繊維強化樹脂材料などの絶縁材料が保持刃36を形成し、かつ/または保持刃36が部分的にのみワイヤ6の絶縁体に切り込むことが好ましい。
【0043】
ワイヤホルダ32は、互いに半径方向に離間した2つのU字形座部33を備えて、間隙35が2つの座部33の間に形成されるようになっている。間隙35は、コネクタハウジング10に配置されたコンタクト端子(図示せず)をワイヤ6に電気的に接触すべく受け入れるように構成されていてよい。コンタクト端子は、例えば、ワイヤ6の絶縁体を切り開いて導電性コアに電気的に接触する導電性刃を有する圧接コンタクトとして形成されていてよい。
【0044】
ワイヤホルダ32を越えて挿入方向Iに延びる分離柱状部37が、同一の辺22に配置された隣接するワイヤホルダ32を分離することができる。分離柱状部37は、テーパ先端39を備えることができ、ツイストワイヤを分離するために使用されてよい。これにより、通常はワイヤ対を完全に撚り戻す必要があるときに、より良好かつ迅速な処理をもたらす。分離柱状部37により、半ターンのみの後にワイヤ6を分離柱状部37上に置くことにより、対を接合することが可能になる。
【0045】
異なるワイヤを保持する必要のある位置を判定するために、カラースキームおよび/またはシンボルなどのコード化機構38を設けることができる。コード化機構38は、ワイヤホルダ32を備える八角形20の各辺22に設けることができる。コード化機構38は、異なるワイヤ6の正確な位置決めを確実にすることができ、さらにケーブル終端アセンブリ1を誰でも使用できるようにする機能を果たすことができる。
【0046】
ワイヤホルダ32が設けられていない八角形20の2つの対向する辺22に、ガイドスロット40を形成することができる。ガイドスロット40は、挿入方向Iに沿って延びることができ、相補的に形成されたガイド機構41、例えばガイドポスト42(図1および図5参照)を受け入れるように端面4に開いていてよい。これにより、ワイヤマネージャ2を受入開口部12に挿入することのできる回転位置が予め定められ、ワイヤ6が正しい位置で終端することを確実にすることができる。
【0047】
ワイヤマネージャ2は、一体構造部品44、例えば成形、特に射出成形部品として形成され得ることが好ましい。約16000の高弾性率を有するナノメートル繊維強化材料および/またはガラス繊維強化材料から一体構造部品44を形成することが好ましい。
【0048】
以下で、図5を参照しながら、例示的な実施形態によるコネクタハウジング10について詳細に説明する。図5は、本発明のコネクタハウジング10の斜視図である。
【0049】
コネクタハウジング10は、ワイヤマネージャ2を少なくとも部分的に挿入方向Iに受け入れるための受入開口部12を囲む、環状形状、特に八角形のスリーブ50を備える。
【0050】
この受入開口部12に、ワイヤ6に電気的に接触するためのコンタクト端子(図示せず)を設けることができる。コンタクト端子を、圧接コンタクトとして形成し、ワイヤマネージャ2の端面4における間隙35に対向して配置することができる。
【0051】
受入開口部12をワイヤマネージャ2の端面4と相補的に形成して、ワイヤマネージャ2の端面4を受入開口部12にぴったりと挿入できるようにしてもよい。
【0052】
切刃14が、挿入方向Iにおけるワイヤ6の所定位置に対向して、スリーブ50の前面52に形成される。切刃14の数および配置は、ワイヤホルダ32の数および配置に対応することが好ましい。
【0053】
ガイドポスト42が、ワイヤマネージャ2のガイドスロット40に対応して前面52から挿入方向Iとは逆に延びる。これにより、コネクタハウジング10およびワイヤマネージャ2の互いに対する回転位置を決定することができる。ワイヤマネージャ2を2つの異なる回転位置に挿入することができ、一方の位置では、ワイヤマネージャ2は他方の位置に対して180度回転している。
【0054】
対の切刃14が八角形20の同一の辺22に配置される。切断力のピークを低減させるために、この対のうちの第1の切刃54が挿入方向Iに略垂直な第1の平面56に配置され、この対のうちの第2の切刃58が第1の平面56から挿入方向Iに離間した第2の平面60に配置される。
【0055】
第1の切刃54および第2の切刃58は、スリーブ50の周囲に沿って互いに隣接して配置されていてよい。したがって、ワイヤマネージャ2の挿入中に、隣接するワイヤ6の切断に適切な時間的ずれがもたらされる。したがって、挿入力のピークを低減させることができる。
【0056】
コネクタハウジング10を一体構造部品62として形成することができる。コネクタハウジング10、特に切刃14を約16000の高弾性率を有するガラス繊維強化樹脂材料から形成することができる。高弾性率により、切刃14の変形を防止して、耐摩耗性を高め、可能な嵌合サイクルの数を増加させることができる。環状形状は張力の均一化を促し、さらに切刃14の偏向を防止するので、環状形状により耐摩耗性をさらに高めることができる。
【0057】
図1に見られるように、コネクタハウジング10を第2の外側ハウジング64、例えばダイカスト部品に少なくとも部分的に入れて、コネクタハウジング10をさらに安定化させることができる。
【0058】
図6は、本発明のケーブル終端アセンブリ1の概略切断図である。
【0059】
切刃14は、ワイヤマネージャ2の端面4を向くスリーブ50の前面52に形成された刃先18を備える。刃先18は、端面4の外縁部16を滑るように越える(glide past)。刃先18と外縁部16との相互作用により、ワイヤ6の余分な部分を切断する。
【0060】
ケーブル終端アセンブリ1、特にコネクタハウジング10の耐摩耗性をさらに高めるために、刃先18は約90°のベベル角度66を含むことができる。
【0061】
切刃14を電気絶縁材料から形成することにより、切刃はワイヤ6を所定の長さに切断すると共に、ワイヤ6を電気的に絶縁する。この例示的な実施形態において、8本のワイヤ6を切断するのに必要なのは、ワイヤマネージャ2とコネクタハウジング10との2つの部品のみである。
【符号の説明】
【0062】
1 ケーブル終端アセンブリ
2 ワイヤマネージャ
4 ワイヤマネージャの端面
6 ワイヤ
8 ケーブル
10 コネクタハウジング
12 受入開口部
14 切刃
16 外縁部
18 刃先
19 切断アセンブリ
20 八角形
22 八角形の辺
24 長手方向本体
26 ケーブルトンネル
28 貫通孔
30 自由端
32 ワイヤホルダ
33 U字形座部
34 スロット
35 間隙
36 保持刃
37 分離柱状部
38 コード化機構
39 分離柱状部の先端
40 ガイドスロット
41 ガイド機構
42 ガイドポスト
44 一体構造部品
50 スリーブ
52 前面
54 第1の切刃
56 第1の平面
58 第2の切刃
60 第2の平面
62 一体構造部品
64 外側ハウジング
66 ベベル角度
I 挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6