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特許7289367化合物、それを含むリチウム二次電池用電解質およびリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】化合物、それを含むリチウム二次電池用電解質およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6578 20060101AFI20230602BHJP
   C07F 9/6596 20060101ALI20230602BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230602BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20230602BHJP
   C07F 5/02 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
C07F9/6578 CSP
C07F9/6596
H01M10/052
H01M10/0567
C07F5/02 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021557055
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2019016725
(87)【国際公開番号】W WO2020197035
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0036233
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0110984
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, キョン ムン
(72)【発明者】
【氏名】リ, サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ソン チュル
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002774(WO,A1)
【文献】特開2016-184463(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
H01M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物。
【化1】
(前記化学式1中、
X1及びX2は、互いに独立して-O-、-S-または-NR’-であり、
R’は、ヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
X3及びX4互いに独立して炭素またはリンである場合、a及びa’は、互いに独立して0~2の整数であり
X3が硫黄である場合、X4は炭素またはリンであり、aは2であり、a’は0であり、
X4が硫黄である場合、X3は炭素またはリンであり、a’は2であり、aは0であり、
但し、X3及びX4の少なくとも一つは、リンまたは硫黄であり、
Aは、ホウ素またはリンであり、
Rは、互いに独立して、水素;ハロゲン原子;ハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基;OR’;またはOSiR’;であり、
Lは、ハロゲン原子で置換または非置換のC1の炭化水素基;または酸素;であり、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム(NR”)であり、
R”は、互いに独立して、水素;若しくはヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
b及びb’は、互いに独立して0~2の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
dは、0~3の整数であり、
eは、1~3の整数であり、
但し、b-a及びb’-a’は、0以上である。)
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物は、前記化学式1中、
X3及びX4が互いに独立して炭素またはリンである場合、aは0または1であり、a’は0または1であり、bは1または2であり、b’は1または2であり、
Aがホウ素である場合、cは0または2であり、
Aがリンである場合、cは0、2または4であり、
Lが炭素である場合、dは0~3の整数であり、
Lが酸素である場合、dは0または1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式2~8及び下記化学式11~13のいずれかで表されるものである、請求項2に記載の化合物。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化11】
【化12】
【化13】
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含むリチウム二次電池用電解質。
【請求項5】
前記化合物は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部に対して0.01~10重量部含まれる、請求項4に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項6】
前記化合物は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部に対して0.1~5.0重量部含まれる、請求項5に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項7】
リチウム塩と有機溶媒とからなる群より選択される1以上をさらに含む、請求項4に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項8】
請求項4に記載のリチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月28日付けの韓国特許出願第10-2019-0036233号および2019年9月6日付けの韓国特許出願第10-2019-0110984号に基づく優先権の利益を主張し、これらの韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規な化合物、それを含むリチウム二次電池用電解質およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
電子機器の小型化及び軽量化が実現され、携帯用電子機器の使用が一般化するにつれて、それらの電力源として高エネルギー密度を有する二次電池の研究が活発に行われている。
【0004】
前記二次電池としては、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-メタルハイドライド電池、ニッケル-水素電池、リチウム二次電池などが挙げられる。中でも、従来のアルカリ水溶液を用いる電池よりも2倍以上高い放電電圧を示すだけでなく、単位重量当たりのエネルギー密度が高く、急速充電が可能なリチウム二次電池の研究が台頭している。
【0005】
一般的に、リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を陽極及び陰極として使用し、陽極と陰極との間に非水電解質を充填させて製造し、リチウムイオンが陽極及び陰極において挿入及び脱離するときの酸化反応および還元反応によって電気エネルギーを生成する。
【0006】
リチウム二次電池の容量を向上させるためには、内部抵抗を小さくしなければならないが、電池の安全性の面では内部抵抗が大きいほど有利である。リチウム二次電池の容量および安全性は、電解質塩などの溶質と非水系有機溶媒との組み合わせからなる前記非水電解質の性質と密接に関連している。
【0007】
韓国公開特許第2018-0036340号は、リチウム二次電池用電解質及びそれを含むリチウム二次電池に関するものであり、非水性有機溶媒と、リチウム塩と、化学式1で表される化合物を含む添加剤とを含むリチウム二次電池用電解質を開示している。
【0008】
韓国公開特許第2013-0003649号は、リチウム二次電池用電解液添加剤、それを含む非水性電解液リチウム二次電池に関するものであり、化学式1で表される二座配位アルコキシホスフィン化合物を含むリチウム二次電池用の非水性電解液添加剤を開示している。
【0009】
しかし、従来のリチウム二次電池電解質用化合物では、合成時に低分子物質が気化して取り扱いが難しく、収率が低く高価な問題、又は酸化安定性が落ちて電池内信頼性が低下し電池の出力が低下する問題が発生している。
【0010】
韓国公開特許第2018-0038038号は、非水系電解液およびそれを用いた非水系電解液電池に関するものであり、具体的には、非水系溶媒と、当該非水系溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液において、(I)一般式(1-Cis)で表されるシス型の立体配座を取るジフルオロイオン性錯体(1-Cis)と、(II)環状スルホン酸エステル、不飽和結合を有する環状スルホン酸エステル、環状硫酸エステル、環状ジスルホン酸エステル、鎖状ジスルホン酸エステル、環状ジスルホン酸無水物、ニトリル基含有化合物、リン酸シリルエステル誘導体およびホウ酸シリルエステル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する非水系電解液を開示している。
【0011】
しかし、従来文献の場合には、Li塩の溶解性に限界があり、LUMO(lowest unoccupied molecular orbital)レベルがやや低く、陰極で分解される副反応が存在する問題が発生することがある。また、有機系リガンドを使用するため、COガスが発生する問題がしばしば発生する。
【0012】
そこで、電池の高出力特性の発揮を可能にするリチウム二次電池用電解質の開発が求められているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】韓国公開特許第2018-0036340号(2018.04.09)
【文献】韓国公開特許第2013-0003649号(2013.01.09)
【文献】韓国公開特許第2018-0038038号(2018.04.13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、リチウム二次電池用電解質に適用された場合、電池の高出力特性の発揮を可能にし、高温で貯蔵された後も十分な性能の発揮が可能であり、揮発性物質の生成が抑制されて電池の厚さの増加を抑制できる新規な化合物、及びそれを含むリチウム二次電池用電解質を提供しようとする。
【0015】
また、本発明は、高出力特性を有し、常温の高C-レート(high C-rate)においても大きな充放電容量を示し、高温で貯蔵された後も十分な性能の発揮が可能なリチウム二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【0017】
【化1】
前記化学式1中、
X1及びX2は、互いに独立して-O-、-S-または-NR’-であり、
R’は、ヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
X3及びX4は、互いに独立して炭素、リンまたは硫黄であり、
但し、X3及びX4の少なくとも一つは、リンまたは硫黄であり、
Aは、ホウ素またはリンであり、
Rは、互いに独立して、水素;ハロゲン原子;ハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基;OR’;またはOSiR’;であり、
Lは、ハロゲン原子で置換または非置換のC1の炭化水素基;または酸素;であり、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム(NR”)であり、
R”は、互いに独立して、水素;若しくはヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
a及びa’は、互いに独立して0~2の整数であり、
b及びb’は、互いに独立して0~2の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
dは、0~3の整数であり、
eは、1~3の整数であり、
但し、b-a及びb’-a’は、0以上である。
【0018】
また、本発明は、前述した化合物を含むリチウム二次電池用電解質を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、前述したリチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による化合物は、溶解性に優れており、リチウム二次電池用電解質に適用された場合、優れた信頼性を付与できる利点がある。
【0021】
また、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、高出力特性の発揮を可能にし、高温で貯蔵された後も十分な性能の発揮が可能であり、揮発性物質の生成を抑制して電池の厚さの増加を抑制できる利点がある。
【0022】
さらに、本発明によるリチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池は、高出力特性を有し、常温の高C-レートでも大きな充放電容量を示し、高温で貯蔵された後も十分な性能の発揮が可能であり、電池の厚さの増加が抑制される利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明において、ある部材が他の部材「上に」位置しているというのは、ある部材が他の部材に直接接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が介在される場合も含む。
【0025】
本発明において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くことを意味するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0026】
化合物
本発明の一態様は、下記化学式1で表される化合物に関するものである。
【0027】
【化2】
前記化学式1中、
X1及びX2は、互いに独立して-O-、-S-または-NR’-であり、
R’は、ヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
X3及びX4は、互いに独立して炭素、リンまたは硫黄であり、
但し、X3及びX4の少なくとも一つは、リンまたは硫黄であり、
Aは、ホウ素またはリンであり、
Rは、互いに独立して、水素;ハロゲン原子;ハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基;OR’;またはOSiR’;であり、
Lは、ハロゲン原子で置換または非置換のC1の炭化水素基;または酸素;であり、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム(NR”)であり、
R”は、互いに独立して、水素;若しくはヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
a及びa’は、互いに独立して0~2の整数であり、
b及びb’は、互いに独立して0~2の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
dは、0~3の整数であり、
eは、1~3の整数であり、
但し、b-a及びb’-a’は、0以上である。
【0028】
本発明で前記「ヘテロ原子」は、異種元素であり、O、NまたはSを指す。
【0029】
本発明で前記「ハロゲン原子」は、F、Cl、BrまたはIを指す。
【0030】
本発明で前記「炭化水素基」は、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基および環鎖の脂肪族炭化水素基を意味し得る。
【0031】
前記直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖状脂肪族炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐鎖状脂肪族炭化水素基などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~4である。
【0032】
前記環鎖状(環状)の脂肪族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよい。前記環鎖状の脂肪族炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。前記環鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは3~8であり、より好ましくは3~6である。
【0033】
本発明に係る化合物は、溶解性に優れた利点がある。
【0034】
本発明に係る化学式1で表される、極性度の高い無機リガンド含有リチウム塩化合物をリチウム二次電池用電解質の添加剤として活用した場合には、酸化反応によって電極表面に容易に吸着して安定した被膜を形成できるので、低抵抗・高出力が可能であり、有機物揮発の問題が少ない利点がある。これにより、優れた常温寿命特性、高温安定性を示すことができる利点がある。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、前記化学式1中、
X3又はX4が炭素である場合、aは0または1であり、a’は0または1であり、bは1または2であり、b’は1または2であり、
X3又はX4がリンである場合、aは0または1であり、a’は0または1であり、bは1または2であり、b’は1または2であり、
X3又はX4が硫黄である場合、aは0~2の整数であり、a’は0~2の整数であり、bは0~2の整数であり、b’は0~2の整数であり、
Aがホウ素である場合、cは0または2であり、
Aがリンである場合、cは0、2または4であり、
Lが炭素である場合、dは0~3の整数であり、
Lが酸素である場合、dは0または1であってもよい。
【0036】
例えば、前記化学式1で表される化合物は、前記X3またはX4、前記A、前記L間の組み合わせとして示すことができる。
【0037】
本発明の他の実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式2~13のいずれかで示すことができる。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
本発明による化合物が、前記化学式2~13で表される化合物のいずれかである場合には、より優れた溶解性を示す利点があるので好ましい。
【0051】
特に、前記化学式2~13で表される化合物のいずれかをリチウム二次電池用電解質として活用する場合には、電池の出力が改善され、揮発性気体の発生を抑制する利点がある。
【0052】
前記化学式1で表される化合物は、例えば、カーボネート系溶剤にLiPFやLiBFを溶解した後、トリメチルシリルを導入したリガンドを必要当量だけゆっくり添加した後、温度を40~80℃まで上げて12時間~24時間反応させることにより合成することができる。
【0053】
本発明による化合物は、無機系リガンドであるため、リチウム二次電池用電解質として適用した場合、従来の有機系リガンドが酸化過程でCOガスを発生する現象を抑制できるとともに、電池の出力を最大化できる利点がある。
【0054】
リチウム二次電池用電解質
本発明の他の態様は、前述した化合物を含むリチウム二次電池用電解質に関するものである。
【0055】
具体的には、本発明の他の態様は、下記化学式1で表される化合物を含むリチウム二次電池用電解質に関するものである。
【0056】
【化15】
前記化学式1中、
X1及びX2は、互いに独立して-O-、-S-または-NR’-であり、
R’は、ヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
X3及びX4は、互いに独立して炭素、リンまたは硫黄であり、
但し、X3及びX4の少なくとも一つは、リンまたは硫黄であり、
Aは、ホウ素またはリンであり、
Rは、互いに独立して、水素;ハロゲン原子;ハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基;OR’;またはOSiR’;であり、
Lは、ハロゲン原子で置換または非置換のC1の炭化水素基;または酸素;であり、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム(NR”)であり、
R”は、互いに独立して、水素;若しくはヘテロ原子またはハロゲン原子を含有できる直鎖、分岐鎖又は環鎖のC1~C10の炭化水素基であり、
a及びa’は、互いに独立して0~2の整数であり、
b及びb’は、互いに独立して0~2の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
dは、0~3の整数であり、
eは、1~3の整数であり、
但し、b-a及びb’-a’は、0以上である。
【0057】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、前述の化合物を含むことにより、前記化合物が酸化反応によって電極表面に容易に吸着して安定した被膜を形成できるので、低抵抗・高出力の付与が可能であり、有機物揮発の問題が少ない利点がある。
【0058】
本発明のまた他の実施形態において、前記化合物は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部に対して0.01~10重量部含むことができる。
【0059】
本発明のまた他の実施形態において、前記化合物は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部に対して0.1~5.0重量部含むことができ、より具体的には0.2~5重量部含むことができる。
【0060】
前記化合物が前記範囲内で含まれると、低抵抗・高出力の効果が最大化するので好ましい。
【0061】
本発明のまた他の実施形態において、前記リチウム二次電池用電解質は、リチウム塩と有機溶媒とからなる群より選択される1以上をさらに含むことができる。
【0062】
前記リチウム塩は、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、基本的なリチウム電池の作動を可能にする。前記リチウム塩の濃度は0.5~1.5Mであってもよいが、これに限定されるものではない。但し、前記リチウム塩の濃度が前記範囲内であると、電解質の伝導度が低くなって電解質の性能が低下する現象を抑制できるとともに、電解質の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少する現象を抑制できるので好ましい。つまり、前記リチウム塩の濃度が前記範囲内であると、伝導度に優れて電解質の性能が優秀であり、電解質の粘度が適当でリチウムイオンの移動性が優秀な利点がある。しかし、前記リチウム塩の濃度は前記範囲内に限定されるものではなく、必要に応じて適宜加減して用いることができる。
【0063】
前記リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiN(SOCF、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiCl、およびLiIからなる群より選択される1種または2種以上を混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。但し、この場合にはリチウムイオンの移動性が非常に優秀であり、伝導度が優秀で電解質の性能に優れたものになる利点があるので好ましい。
【0064】
前記有機溶媒は、高誘電率溶媒および低沸点溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒を含むことができる。
【0065】
具体的には、前記高誘電率溶媒は、当業界で通常用いられるものであれば特に制限されず、例えば、フッ化エチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1-フッ化エチレンカーボネートのような環状カーボネート、ガンマ-ブチロラクトン及び/又はこれらの混合物などを用いることができる。
【0066】
前記低沸点溶媒は、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートのような鎖状カーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、脂肪酸エステル誘導体、及び/又はこれらの混合物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記有機溶媒は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部を満たすように残部として含むことができる。この場合には、前述したリチウム塩および化合物の目的とする効果が優れたものになるので好ましい。
【0068】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、その他の添加剤をさらに含むことができる。具体的には、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、前記化学式1で表される化合物以外の添加剤をさらに含むことができる。
【0069】
つまり、本発明による前記化学式1で表される化合物は、リチウム二次電池用電解質の陽極に被膜を形成する添加剤として活用可能である。
【0070】
前記その他の添加剤は、例えば、フルオロカーボネート、ビニレンカーボネート、オキサリルテトラフルオロホスフェートリチウム塩、ビス(オキサリル)ジフルオロホスフェートリチウム塩、トリスオキサリルホスフェートリチウム塩およびLiPOからなる群より選択される1以上であってもよい。
【0071】
前記その他の添加剤をさらに含む場合には、前記化学式1で表される化合物の効果がさらに最大化される利点がある。
【0072】
前記その他の添加剤は、前記リチウム二次電池用電解質添加剤全体100重量部に対して0.5~10重量部、具体的には1~3重量部含むことができる。この場合には、リチウム二次電池の常温寿命特性、高温安定性のような信頼性をより高める利点があるので好ましい。
【0073】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、具体的には非水用電解質であってもよく、本発明の化合物は、具体的には非水系電解質用添加剤として活用できる。
【0074】
具体的には、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、電池が高出力特性を発揮できるようにし、常温の高レート(高C-rate)でも大きな充放電容量を持つようにし、また高温で貯蔵された後も十分な性能を発揮できるようにし、揮発性物質の生成を抑制してリチウム二次電池の厚さの増加を抑制できる利点がある。
【0075】
リチウム二次電池
本発明のまた他の態様は、前述したリチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池に関するものである。
【0076】
本発明に係るリチウム二次電池用電解質は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に介在するセパレータとからなる電極構造体に注入して、リチウム二次電池に製造される。電極構造体をなす陽極、陰極およびセパレータは、リチウム二次電池の製造に通常用いられるもののいずれも用いることができる。
【0077】
前記陽極及び陰極は、陽極活物質スラリーと陰極活物質スラリーを各電極集電体に塗布して製造される。
【0078】
前記陽極活物質としては、当分野で知られているリチウムイオンを挿入及び脱離することができる陽極活物質を特に制限なく用いることができ、例えば、コバルト、マンガン、ニッケルから選択される少なくとも1種、およびリチウムの複合酸化物のうちの1種以上のものが好ましい。その代表的な例としては、下記に示すリチウム含有化合物を好適に用いることができる。
【0079】
LiMn1-y(1)
LiMn1-y2-z(2)
LiMn4-z(3)
LiMn2-yM’(4)
LiCo1-y(5)
LiCo1-y2-z(6)
LiNi1-y(7)
LiNi1-y2-z(8)
LiNi1-yCo2-z(9)
LiNi1-y-zCoα(10)
LiNi1-y-zCo2-αα(11)
LiNi1-y-zMnα(12)
LiNi1-y-zMn2-αα(13)
【0080】
式中、0.9≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MとM’は同一または異なり、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、Vおよび希土類元素からなる群より選択され、AはO、F、SおよびPからなる群より選択され、XはF、SおよびPからなる群より選択される。
【0081】
前記陰極活物質としては、当分野で知られているリチウムイオンを挿入及び脱離することができる陰極活物質を特に制限なく用いることができる。前記陰極活物質としては、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素繊維などの炭素材物質、リチウム金属、リチウム合金などを用いることができる。例えば、非晶質炭素としては、ハードカーボン、コークス、1500℃以下で焼成したメソカーボンマイクロビーズ(mesocarbonmicrobead:MCMB)、メソフェースピッチ系炭素繊維(mesophase pitch-basedcarbon fiber:MPCF)などがある。結晶質炭素としては黒鉛系材料があり、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化コークス、黒鉛化MCMB、黒鉛化MPCFなどがある。
【0082】
前記炭素材物質は、d002層間距離(interplanar distance)が3.35-3.38ÅX線回折(X-ray diffraction)によるLc(crystallite size)が少なくとも20nm以上の物質が好ましい。リチウム合金としては、リチウムと、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、カドミウム、アンチモン、シリコン、鉛、スズ、ガリウム又はインジウムとの合金を用いることができる。
【0083】
前記陽極活物質および前記陰極活物質は、それぞれバインダーおよび溶媒と混合され、陽極活物質スラリーおよび陰極活物質スラリーに製造することができる。
【0084】
前記バインダーは、活物質のペースト化、活物質の相互接着、集電体との接着、活物質の膨張及び収縮に対する緩衝などの役割を果たす物質であり、例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン-ポリビニリデンフルオライドの共重合体(P(VdF/HFP))、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムなどがある。前記バインダーの含有量は、電極活物質全体100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは1~10重量部である。前記バインダーの含有量が少なすぎると、電極活物質と集電体との接着力が不十分であり、バインダーの含有量が多すぎると、接着力は良くなるが、電極活物質の含有量がそれだけ減少して電池容量の高容量化に不利である。
【0085】
前記活物質スラリーの溶媒としては、通常、非水系溶媒または水系溶媒を用いることができる。非水系溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。水系溶媒としては、水、イソプロピルアルコールなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
前記電極活物質スラリーは、必要に応じて、導電材、増粘剤などをさらに含むことができる。
【0087】
前記導電材は、電子伝導性を向上させる物質であり、黒鉛系の導電材、カーボンブラック系の導電材、金属または金属化合物系の導電材からなる群より選択される少なくとも一つを用いることができる。前記黒鉛系の導電材の例としては、人造黒鉛、天然黒鉛などがある。カーボンブラック系の導電材の例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(ketjen black)、デンカブラック(denka black)、サーマルブラック(thermal black)、チャンネルブラック(channel black)などがある。金属系または金属化合物系の導電材の例としては、スズ、酸化スズ、リン酸スズ(SnPO)、酸化チタン、チタン酸カリウム、LaSrCoO、LaSrMnOのようなペロブスカイト(perovskite)物質がある。しかし、これらの導電材に限定されるものではない。
【0088】
前記導電材の含有量は、電極活物質全体100重量部に対して0.1~10重量部であることが好ましい。導電材の含有量が0.1重量部よりも少ないと、電気化学的特性が低下することがあり、10重量部を超えると、重量当たりのエネルギー密度が低下することがある。
【0089】
前記増粘剤は、活物質スラリーの粘度調節の役割ができるものであれば特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどを用いることができる。
【0090】
このようにして製造された陽極及び陰極活物質スラリーは、電極集電体に塗布されて陽極及び陰極に作製される。陽極集電体としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金などを用いることができる。陰極集電体としては、銅または銅合金などを用いることができる。前記陽極集電体及び陰極集電体の形態としては、箔、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡体などが挙げられる。
【0091】
作製された陽極と陰極は、その間にセパレータを介在した電極構造体に製造された後、電池ケースに収納され、ここに電解質を注入してリチウム二次電池として製造される。セパレータとしては、従来、セパレータとして用いられた通常の多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを、単独であるいは積層して用いることができる。または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであってもよい。
【0093】
本発明によるリチウム二次電池は、前記化学式1で表される化合物を含むリチウム二次電池用電解質を含むことにより、高出力特性の発揮が可能であり、高温で貯蔵された後も十分な性能を発揮することができ、揮発性物質の生成が抑制されて電池の厚さの増加が抑制される利点がある。
【0094】
以下、実施例を挙げて本明細書を具体的に説明する。しかし、本明細書の実施例は、様々な形態に変形することができ、本明細書の範囲は以下で詳述する実施例に限定されるものではない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。なお、以下で含有量を示す「%」及び「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0095】
合成例1
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、ジメチルビス(トリメチルシリル)ハイパージホスフェート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式2で表される化合物を合成した。
【0096】
【化16】
【0097】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ3.8ppm、P-NMR DMSO δ-20.4ppm、δ-145.7ppm、F-NMR DMSO δ71ppm、ICP-MS Li:Pの比率が1:4.8(計算値1:5)を示した。
【0098】
合成例2
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、ビス(テトラメチルシリル)ピロホスフェート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式3で表される化合物を合成した。
【0099】
【化17】
【0100】
合成された化合物は、H NMR アセトン(Acetone) δ0.8ppm、P-NMR Acetone δ-30.4ppm、δ-144.3ppm、F-NMR Acetone δ72ppm、ICP-MS Li:P:Siの比率が1:4.7:4.6(計算値1:5:5)を示した。
【0101】
合成例3
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、ジフルオロ(トリメチルシリル)ピロホスフェート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式4で表される化合物を合成した。
【0102】
【化18】
【0103】
合成された化合物は、P-NMR DMSO δ-35.5ppm、δ-14.7ppm、F-NMR DMSO δ-71ppm、ICP-MS Li:Pの比率が1:4.6(計算値1:5)を示した。
【0104】
合成例4
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、トリメチルシリルエトキシトリメチルシリルオキシホスフィンホルメート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式5で表される化合物を合成した。
【0105】
【化19】
【0106】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ3.1 δ1.4ppm、P-NMR DMSO δ-30.1ppm、δ-149.2ppm、F-NMR DMSO δ-72ppm、ICP-MS Li:Pの比率が1:1.9(計算値1:2)を示した。
【0107】
合成例5
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムテトラフルオロボレート(LiBF)1当量を溶解した後、ジメチルビス(トリメチルシリル)ハイパージホスフェート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式6で表される化合物を合成した。
【0108】
【化20】
【0109】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ1.8ppm、P-NMR DMSO δ-28.8ppm、B-NMR DMSO δ2.8ppm、F-NMR DMSO δ-61ppm、ICP-MS Li:P:Bの比率が1:1.8:0.92(計算値1:2:1)を示した。
【0110】
合成例6
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、ヒドロキシメタンスルホン酸2当量を投入した後、0℃まで下げた。テトラクロロシラン3当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式7で表される化合物を合成した。
【0111】
【化21】
【0112】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ2.2ppm、P-NMR DMSO δ-149.6ppm、F-NMR DMSO δ-74ppm、ICP-MS Li:P:Sの比率が1:0.98:2.96(計算値1:1:2)を示した。
【0113】
合成例7
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、ジメチルジホスホリック酸2当量を投入した後、0℃まで下げた。テトラクロロシラン3当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式8で表される化合物を合成した。
【0114】
【化22】
【0115】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ2.8ppm、P-NMR DMSO δ-28.2ppm、δ-148.8ppm、F-NMR DMSO δ-72ppm、ICP-MS Li:Pの比率が1:4.7(計算値1:5)を示した。
【0116】
合成例8
メチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、ビス(トリメチルシリル)メタンジスルホネート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式9で表される化合物を合成した。
【0117】
【化23】
【0118】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ5.3ppm、P-NMR DMSO δ-33.4ppm、δ-150.2ppm、F-NMR DMSO δ-60ppm、ICP-MS Li:P:Sの比率が1:0.9:3.9(計算値1:1:4)を示した。
【0119】
合成例9
ジメチルカーボネート溶剤にトリフルオロ化ホウ酸(BF)1当量を溶解した後、メチレンジスルホン酸塩酸リチウム1当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。減圧濾過で固体を回収し、EMC(エチルメチルカーボネート)20gで洗浄し、さらに40℃、3時間の減圧乾燥後に反応後蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式10で表される化合物を合成した。
【0120】
【化24】
【0121】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ0.8ppm、B-NMR DMSO δ1.6ppm、F-NMR DMSO δ-62ppm、ICP-MS Li:B:Sの比率が1:0.9:1.9(計算値1:1:2)を示した。
【0122】
合成例10
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)1当量を溶解した後、ビス(トリメチルシリル)ジフルオロジホスフェート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式11で表される化合物を合成した。
【0123】
【化25】
【0124】
合成された化合物は、P-NMR DMSO δ-33.4ppm、δ-149.2ppm、F-NMR DMSO δ-72ppm、ICP-MS Li:P:Siの比率が1:2.8(計算値1:3)を示した。
【0125】
合成例11
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムテトラフルオロボレート(LiBF)1当量を溶解した後、テトラキス(トリメチルシリル)ジホスフェート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式12で表される化合物を合成した。
【0126】
【化26】
【0127】
合成された化合物は、H NMR DMSO δ0.8ppm、P-NMR DMSO δ-25.6ppm、B-NMR DMSO δ2.7ppm、ICP-MS Li:B:P:Siの比率が1:0.9:3.8:3.6(計算値1:1:4:4)を示した。
【0128】
合成例12
ジメチルカーボネート溶剤にリチウムテトラフルオロボレート(LiBF)1当量を溶解した後、ビス(トリメチルシリル)ジフルオロジホスフェート2当量をゆっくり滴下し、45℃の条件下で24時間反応を行った。反応後、蒸留装置で溶剤を除去し、真空乾燥によって残存する揮発性物質を除去し、化学式13で表される化合物を合成した。
【0129】
【化27】
【0130】
合成された化合物は、P-NMR DMSO δ-33.4ppm、F-NMR DMSO δ-72ppm、B-NMR DMSO δ3.2ppm、ICP-MS Li:B:Pの比率が1:0.96:3.8(計算値1:1:4)を示した。
【0131】
実施例1
(1)陽極及び陰極の製造
陽極活物質としてのLiCoOを97.3重量部、バインダーとしてのポリビニリデンフルオライドを1.4重量部、導電材としてのケッチェンブラックを1.3重量部混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて陽極活物質スラリーを製造した。前記陽極活物質スラリーをアルミ箔に塗布して乾燥した後、それを圧延して陽極を製造した。
【0132】
また、陰極活物質としてのグラファイトを98重量部、バインダーとしてのポリビニリデンフルオライドを1重量部、導電材としてのケッチェンブラックを1重量部混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて陰極活物質層組成物を製造した。前記組成物を銅箔に塗布して乾燥した後、それを圧延して陰極を製造した。
【0133】
(2)リチウム二次電池用電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):エチルプロピオネート(EP)の体積比が40:40:20である混合溶液に0.95MのLiPFを添加し、非水性混合溶液を製造した。
【0134】
前記非水性混合溶液全体100重量部を基準として、下記化学式2で表される化合物3.0重量部を添加し、リチウム二次電池用電解質を製造した。
【0135】
【化28】
【0136】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)に基づいて製造された陽極及び陰極、(2)に基づいて製造された電解質を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0137】
実施例2~12
化学式2で表される化合物の代わりに、それぞれ化学式3~13で表される化合物を添加した以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0138】
【化29】
【0139】
【化30】
【0140】
【化31】
【0141】
【化32】
【0142】
【化33】
【0143】
【化34】
【0144】
【化35】
【0145】
【化36】
【0146】
【化37】
【0147】
【化38】
【0148】
【化39】
【0149】
比較例1
(1)陽極及び陰極の製造
実施例1と同様の方法で陽極及び陰極を製造した。
【0150】
(2)電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):エチルプロピオネート(EP)の体積比が40:40:20である混合溶液に0.95MのLiPFを添加し、非水性混合溶液を製造した。
【0151】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)に基づいて製造された陽極及び陰極、(2)に基づいて製造された電解質を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0152】
比較例2
化学式2で表される化合物の代わりに、リチウムトリオキサリルホスフェートを用いた以外は実施例1と同様の方法で製造した。
【0153】
比較例3
化学式2で表される化合物の代わりに、ビス(オキサリル)ジフルオロホスフェートリチウム塩(LiFOB(LiB(C))を用いた以外は実施例1と同様の方法で製造した。
【0154】
実験例
実施例及び比較例で製造された二次電池を25℃で0.2Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流で充電し、次いで、電圧が2.5Vに達するまで0.2Cの定電流で放電した。続いて、0.5Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら、電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時には電圧が2.5Vに達するまで0.5Cの定電流で放電した(化成工程)。
【0155】
(1)常温寿命特性
前記化成工程を経た二次電池を25℃で1.0Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら、電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを300回繰り返した。
それぞれの二次電池の300回目のサイクルにおける容量保持率(capacity retention ratio、%)を下記数学式1で計算した。その結果を下記表1に示す。
【0156】
[数学式1]
容量保持率[%]=[300回目のサイクルにおける放電容量/1回目のサイクルにおける放電容量]×100
【0157】
(2)高温安定性
前記化成工程を経た二次電池を25℃で1.0Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら、電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、充電された二次電池を60℃で保管しながら、24時間ごとにマルチ-メーター(multi-meter)を用いて電圧を測定して充電状態のセルの高温での残留電圧を測定し、高温電圧保存安定性を測定した。
【0158】
それぞれの二次電池の15日目の測定時の電圧保持率(Voltage retention ratio、%)を下記数学式2で計算した。その結果を下記表1に示す。
【0159】
[数学式2]
電圧保持率[%]=[15日目の開放電圧/初期の開放電圧]×100
【0160】
(3)厚さの増加率
実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池を1Cの電流密度で電圧が4.45Vに達するまで定電流充電した。充電後の厚さを測定し、それを60℃で28日間保存しながら厚さの変化率(%)を測定した。それぞれの二次電池の28日目の測定時の厚さの変化率を下記数学式3で計算した。その結果を下記表1に示す。
【0161】
[数学式3]
厚さの増加率[%]=[28日目の二次電池の厚さ/初期の二次電池の厚さ]×100
【0162】
(4)内部抵抗増加率
実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池の内部抵抗を測定した。内部抵抗の測定は、電池容量の50%(SOC=50%)に調整した後、0.5A、1A、2A、3A、5Aの電流を流し、10秒後の電池電圧を測定した。測定した電流と電圧を直線近似して、その傾きから内部抵抗を求めた。前記方法で繰り返した充放電において、内部抵抗が増加した割合を示す抵抗増加率を評価した。
【0163】
抵抗増加率は、充放電サイクル試験において1サイクル目の内部抵抗を初期内部抵抗R1(Ω)とし、300サイクル目の内部抵抗をサイクル後の内部抵抗R300(Ω)として、下記数学式4を用いて算出した。その結果を下記表1に示す。
【0164】
[数学式4]
抵抗増加率Rma(%)=(R300-R1)/R1×100
【0165】













【表1】
【0166】
表1から、本発明による化合物を添加剤として含むリチウム二次電池用電解質を注入した実施例の場合には、常温寿命特性、高温安定性に優れながらも厚さの増加率および抵抗増加率が少ないことが分かる。