(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】リング鋸
(51)【国際特許分類】
B23D 47/12 20060101AFI20230602BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B23D47/12
B23D45/16
(21)【出願番号】P 2021573891
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020067612
(87)【国際公開番号】W WO2021001225
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】コズロフスキー, オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ブレーム, ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ターク トラクラネン, ジョン ヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ゴルボヴィッチ, ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】シッテル, ジョセフ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-156123(JP,A)
【文献】米国特許第03930310(US,A)
【文献】特開昭63-111001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/00 - 65/04
B27B 5/00 - 9/00
B24B 27/06
B28D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング鋸(2)であって、
リング鋸刃(1)を切断平面(E)内でガイドするための工具ホルダー(5)と、
モーター(30)と、
前記リング鋸刃(1)を前記切断平面(E)内で駆動するように構成され前記モーター(30)に連結されている駆動輪(6)と、
前記切断平面(E)の一方の側に構成されて、前記リング鋸刃(1)を前記一方の側からガイドするための少なくとも1つのガイドローラ(41)と、
前記切断平面(E)の反対側に構成されて、前記リング鋸刃(1)を前記反対側からガイドするための少なくとも1つのガイドロール(43)と、を有し、
前記ガイドロール(43)は、前記切断平面(E)に対して枢動できるフード(34)内に構成されて
おり、
前記駆動輪(6)は前記切断平面(E)内で移動可能であり、前記フード(34)の移動と前記駆動輪(6)の移動とは機構(71)によって同期されることを特徴とする、リング鋸(2)。
【請求項2】
前記工具ホルダー(5)は、前記リング鋸刃(1)を収容するための収容空間(33)を有し、前記フード(34)は、前記収容空間(33)を覆っていることを特徴とする、請求項1に記載のリング鋸(2)。
【請求項3】
前記駆動輪(6)、前記ガイドローラ(41)、及び前記ガイドロール(43)は、前記収容空間(33)内に構成されていることを特徴とする、
請求項2に記載のリング鋸(2)。
【請求項4】
前記切断平面(E)に面する、前記ガイドロール(43)の外側面(49)の区画が、前記切断平面(E)に平行に延びていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のリング鋸(2)。
【請求項5】
前記フード(34)は、マシンハウジング(31)上にロックされることができることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のリング鋸(2)。
【請求項6】
前記フード(34)は、作動レバー(35)によって開放可能及び閉鎖可能であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のリング鋸(2)。
【請求項7】
作動レバー(35)は、開位置及び閉位置を有し、前記フード(34)及び前記駆動輪(6)は、前記閉位置では、前記フード(34)が閉じられ前記駆動輪(6)が前記リング鋸刃(1)に対して押圧されるように、及び前記開位置では、前記フード(34)が開けられ前記駆動輪(6)が前記リング鋸刃(1)からある距離を置くように、前記作動レバー(35)に連結されていることを特徴とする、
請求項6に記載のリング鋸(2)。
【請求項8】
前記閉位置から前記開位置へと進む場合、まず第一に、前記作動レバー(35)は前記駆動輪(6)を移動させ、次いで前記フード(34)を開けることを特徴とする、
請求項7に記載のリング鋸(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリング鋸に関する。
【背景技術】
【0002】
リング鋸は、リング鋸刃を駆動輪を用いて偏心的に駆動する。偏心駆動は、リング鋸刃用のガイドを必要とし、このガイドはロール及び車輪を用いて実現される。この場合、ロールとリング鋸刃との間に大きな摩擦損失が生じる可能性がある。その上、リング鋸刃を換えることは、特にガイドを良好にするために駆動輪及びロールを再調整しなければならないので面倒である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様によれば、リング鋸は、リング鋸刃を切断平面内でガイドするための工具ホルダーと、モーターと、リング鋸刃を駆動するために切断平面内に構成されモーターに連結された駆動輪とを有する。ガイドローラは、切断平面の一方の側に構成されて、リング鋸刃をこの一方の側からガイドする。ガイドロールは、切断平面の反対側に構成されて、リング鋸刃をこの反対側からガイドする。ガイドロールは、切断平面に対して枢動できるフード内に構成されている。フードを開くことにより、ユーザは工具ホルダーにアクセスする。同時に、ガイドロールはリング鋸刃から持ち上げられ、リング鋸刃のロックは解除される。ユーザは、工具を使用することなく、リング鋸刃を交換できる。
【0004】
一実施形態では、工具ホルダーは、リング鋸刃を収容するための収容空間を有することができ、フードは収容空間を覆っている。駆動輪、ガイドローラ、及びガイドロールは収容空間内に構成され得る。
【0005】
一実施形態では、切断平面に面する、ガイドロールの外側面の区画が、切断平面に平行に延びていることが想定される。
【0006】
好ましい実施形態では、フードは、マシンハウジング上にロックされ得る。フードは、作動レバーによって開放可能及び閉鎖可能であり得る。
【0007】
別の好ましい実施形態では、駆動輪は切断平面内で移動可能であり、フードの移動と駆動輪の移動とは機構によって同期される。作動レバーは、開位置及び閉位置を有し得る。フード及び駆動輪は、閉位置では、フードが閉じられ駆動輪がリング鋸刃に対して押圧されるように、そして開位置では、フードが開けられ駆動輪がリング鋸刃からある距離を置くように、作動レバーに連結されている。ユーザは、リング鋸刃を換えるのに面倒な調節又は位置合わせを必要としない。
【0008】
一実施形態では、閉位置から開位置へと進む場合、まず第一に、作動レバーは駆動輪を移動させ、次いでフードを開けると想定している。
【0009】
本発明によるリング鋸刃は、側面と外周とを有する平坦な環状支持体を有する。1つ以上の切断要素が、支持体の外周に沿って構成されている。少なくとも1つの環状溝が、側面に埋め込まれている。溝は、半径方向内側側面と、半径方向外側側面とを有する。半径方向内側側面は円錐の設計を有し、円錐側面を表す円錐は10度~30度の半開角を有する。リング鋸刃は、傾斜した側面により、低摩擦でのガイドを可能にする。ガイドローラは、リング鋸刃の回転軸にほぼ平行に回転でき、このプロセスの間、溝に載置され得る。その上、ガイドローラは、溝の幅よりも大きい直径を有し得る。ガイドローラの方向及びその予想される直径が、低摩擦損失に対する決定的な寄与要因となる。
【0010】
半径方向外側側面は、好ましくは、内側側面と直角をなすこの円錐エンベロープの下方を、すなわち支持体に向いた面上を連続的に延び、そして側面から最も遠い内側側面の点を、すなわちこの側面の最下位点を通って延びている。円筒状のガイドローラは、傾斜した内側側面に載置され得る。
【0011】
リング鋸刃のプロファイルは非対称であり得る。外側側面は、好ましくは円錐状である。円錐側面を表す円錐は、50度~80度の半開角を有する。非対称の形状により、溝の断面積が最小であることに起因して、支持体が弱体化することが殆どないことが確実になる。
【0012】
本発明の一態様によれば、リング鋸は、リング鋸刃を切断平面E内でガイドするための工具ホルダーと、モーターと、駆動輪と、少なくとも1つのガイドローラと、少なくとも1つのガイドロールとを有する。リング鋸刃を駆動するために、駆動輪は、切断平面内に構成されモーターに連結されている。少なくとも1つのガイドローラは、切断平面の一方の側に構成される。少なくとも1つのガイドロールは、切断平面の反対側に構成される。ガイドローラは、回転の軸を中心として自由に回転可能なように取り付けられている。回転の軸は、切断平面に対して50度~80度で傾斜している。ガイドローラの傾斜は、リング鋸刃の回転軸にほぼ平行であるが、それでもやはり、リング鋸刃のガイド溝内に載置され得る。その上、ガイドローラは、ガイド溝の幅よりも大きい直径を有し得る。ガイドローラの方向及びその予想される直径が、低摩擦損失に対する決定的な寄与要因となる。
【0013】
一実施形態によれば、ガイドローラは、回転対称の外側面を有する少なくとも1つの転動要素を有し得る。好ましい実施形態では、ガイドローラは、2つ以上の同心の転動要素(46)を有する。転動要素のうちの第1の転動要素は、転動要素のうちの第2の転動要素よりも小さい半径を有し得る。第1の転動要素は、第2の転動要素よりも、回転の軸に沿って切断平面のより近くに構成されている。切断平面Eに最も近い第1の転動要素の部分と、切断平面Eに最も近い第2の転動要素の部分とは、好ましくは同じ平面内に存在する。2つの最も近い部分は、好ましくは、リング鋸刃のガイド溝内に係合する。
【0014】
一実施形態では、第1の転動要素は、第2の転動要素上に取り付けられている。必要な軸受は、より大きい転動要素に対する、より小さい転動要素の回転速度だけに曝され、マシンハウジングに対する、遥かに高い絶対回転速度には曝されない。
【0015】
より小さい転動要素はマシンハウジングに対して高い絶対回転速度で回転し、その結果、軸受に対する応力が大きくなる。より大きい回転転動要素上への取り付けにより、より小さい転動要素の軸受に作用する相対的な回転速度が低減される。
【0016】
一実施形態では、ガイドロールの回転の軸とガイドローラの回転の軸とが、切断平面と直角をなす平面内にあると想定している。
【0017】
好ましい実施形態では、ガイドロールの回転の軸は切断平面に対して傾斜している。ガイドロールは円錐状であり得る。ガイドロールの回転外側面の周辺部速度は、回転軸に最も近い端部から回転軸から離れた端部に向かって増加する。この増加は、好ましくは、外側に向かってより遠いリング鋸刃の領域の周辺部速度が、回転軸により近い領域と比較して、より速いことにほぼ対応する。したがって、リング鋸刃上でのガイドロールの摩擦を低減させることが可能である。
【0018】
本発明の一態様によれば、リング鋸は、リング鋸刃を切断平面E内でガイドするための工具ホルダーと、モーターと、駆動輪と、少なくとも1つのガイドローラと、少なくとも1つのガイドロールとを有する。リング鋸刃を駆動するために、駆動輪は、切断平面内に構成されモーターに連結されている。少なくとも1つのガイドローラは切断平面の一方の側に構成され、少なくとも1つのガイドロールは切断平面の反対側に構成される。リング鋸は軸受ブロックを有し、駆動輪は、切断平面と直角をなす駆動軸を中心として回転可能なように軸受ブロックに取り付けられている。軸受ブロックは、切断平面に平行に移動できる。移動可能な駆動輪を有する構造により、工具を使用せずにリング鋸刃の取り外し及び挿入が可能になる。
【0019】
好ましい実施形態は、駆動輪をモーターに連結する傘歯車機構を有する。傘歯車機構は、駆動輪に接続された冠歯車を有する。冠歯車は、軸受ブロック内に取り付けられている。駆動輪と冠歯車は、一緒に可動ユニットを形成する。冠歯車を伴う傘歯車機構は、冠歯車の不正確な位置決めに対して非常に鈍感である。その結果、僅かに異なる幅を有するリング鋸刃の挿入に対して良好な許容度が存在する。
【0020】
本発明の一態様によれば、リング鋸は、リング鋸刃をガイドするための工具ホルダーを有する。工具ホルダーは、収容空間内に構成される。駆動輪は、リング鋸刃を駆動する役割を担い、切断平面内に構成され、モーターに連結されている。ガイドローラは、切断平面の一方の側に構成されて、リング鋸刃を一方の側からガイドする。水ガイドが出口を有し、出口はガイドローラに導かれている。ガイドローラは水により洗浄され、水は次いでリング鋸刃を冷却する。
【0021】
好ましい一実施形態では、ガイドローラは、水フラッシングシステムの流れ方向において、収容空間の上流に構成されていると想定している。ガイドローラは、リング鋸刃のガイド溝内での係合のため円筒状転動要素を有し得る。出口は、転動要素の外側面に、又は、切断平面から離れる方向に向いた表面に向けられている。水が埃まみれの又は泥だらけのリング鋸刃に到達する前に、水はまず第一に外側面と接触する。
【0022】
一実施形態では、転動要素はポット内に構成され、ポットはマシンハウジングから封止され、収容空間に面する開口部を有すると想定している。転動要素の一部分が収容空間内に構成されることができ、転動要素の一部分がポット内に構成されることができる。その開口部は、好ましくは転動要素の断面よりも小さい。
【0023】
一実施形態では、出口はポット内に構成される。出口に接続しているチャネルは、ガイドローラの回転の軸の周りに延びる螺旋部分を有し得る。水は、ガイドローラ上へ、ガイドの回転方向に導かれ得る。
【0024】
以下の説明では、例示的な実施形態及び図面を参照して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】リング鋸刃のIII-III断面での溝のプロファイルを示す。
【
図4】リング鋸刃の代替の溝のプロファイルを示す。
【
図5】ガイドローラ及びガイドロールを通るV-V平面における断面を示す。
【
図6】フードが開いている、V-V平面における断面を示す。
【
図8】閉位置にある、リング鋸刃の取り外し及びロックのための機構を示す。
【
図9】中間位置にある、リング鋸刃の取り外し及びロックのための機構を示す。
【
図10】開位置にある、リング鋸刃の取り外し及びロックのための機構を示す。
【
図11】水ガイドのV-V平面における断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
他の記載がない限り、同一の又は機能的に同一の要素は、同じ参照符号によって示される。
【0027】
リング鋸刃1及びリング鋸2の概略図が、
図1の平面図、及びII-II平面における縦断面で示される。リング鋸刃1は、半径方向外側に位置する切断要素3を有する平坦な環状ディスクの形状を有する。この形状は、使用中にリング鋸刃1が回転する回転軸4を定めている。リング鋸2は工具ホルダー5を有し、リング鋸刃1は、この回転軸4を中心として回転可能なように工具ホルダー内に取り付けられている。中空のリング鋸刃1の環状内周部に載置された駆動輪6によって、回転軸4に対して偏心した駆動が実施される。
【0028】
使用目的とリング鋸刃1の円筒対称性とに基づき、リング鋸刃1に関する説明から、回転軸4と、回転軸4に対して直角に向いた切断平面Eとが導かれる。回転軸4と切断平面Eとの交点は、リング鋸刃1の幾何中心又は重心と一致する。切断平面Eは、リング鋸刃1がワークピース、基板などを切断する際に入る平面に対応する。以下の説明では、軸方向及び半径方向に関する指示は、明示的に別途指示がない限り回転軸4に関する。半径方向内側要素は、半径方向外側要素よりも回転軸4の近くに構成され、逆に、半径方向外側要素は、リング鋸刃1の外周部により近くに構成されている。
【0029】
リング鋸刃1は、窪んだ円の形の平坦な支持体7を有する。窪んだ円の形の支持体7は、外周部8及び内周部9によって、半径方向に境界が定められている。外周部8及び内周部9は同心であり、回転軸4に対して対称である。内周部9は円形であり、一方で外周部8は好ましくは円形である又はほぼ円形である。外周部8は、回転軸4から、外半径10に対応する距離にある。同様に、内周部9は、回転軸4に対する内半径11により表される。支持体7の幅は、外半径10と内半径11との差を指す。内半径11と外半径10との比は、好ましくは50%を超える、例えば66%を超える。窪んだ円の形の前方側14及び窪んだ円の形の後方側15が、回転軸4に沿って支持体7の範囲を決めている。後方側15は、好ましくは平坦であり構造を有していない。後方側15は、切断平面Eに平行であり得る。前方側14は、好ましくは実質的に平坦であり、好ましくは切断平面Eに平行である。平坦な支持体7の高さ16、すなわち回転軸4に沿った支持体の寸法は、半径よりも著しく小さい。
【0030】
支持体7の前方側14は実質的に平坦な主表面17を有し、その主表面は、典型的には、切断平面E及び少なくとも1つの環状(ガイド)溝18に平行に延びている。ガイド溝18は支持体7の内周部9と同心である。すなわち、回転軸4を中心として一定距離で延びている。ガイド溝18は、実質的に回転対称に設計されている。ガイド溝18のプロファイルは、回転軸の周りで一定である。プロファイルは、
図3におけるような、回転軸4を含む平面、例えばIII-III平面での断面を示す。図示するガイド溝18のプロファイルは、半径方向内側ガイド側面19、半径方向外側側面20、及びガイド側面19と外側側面20との間に構成された溝ベース21を有する。溝ベース21はガイド溝18の最も深い領域を形成する。すなわち、溝ベース21は後方側15に最も近い溝18の領域である。ガイド溝23の深さ22は、溝ベース21と前方側1の主表面17との間の距離を示す。例示的な溝ベース21は、平坦であり切断平面Eに平行である。他の実施形態では、溝ベース21は、ガイド側面19と外側側面20とが互いに接触する拡張部が存在しない円形のラインを有し得る。ガイド側面19及び外側側面20はそれぞれが、主表面17から溝ベース21まで延びている。
【0031】
ガイド側面19は、半径方向に沿って回転軸4に向かって、溝ベース21から主表面17まで軸方向に上昇している。ガイド側面19は円錐状である。この円錐24は回転軸4に対して対称であり、円錐の先端は、切断平面Eの、前方側14及びガイド溝18と同じ側にある。円錐24の半開角25は、30度未満、好ましくは25度未満であり、且つ10度を超え、好ましくは15度を超える。しかしながら、ガイド側面19は、切断平面Eに対して勾配が急であり直角ではない。
【0032】
外側側面20は、半径方向に沿って回転軸4に向かって、前方側14の主表面17から溝ベース21まで軸方向に下降している。側面20は、ガイド側面19とガイド溝18の深さ22により画定される円錐26の下方を又はその円錐上を連続的に延びている。境界を定めるこの円錐26は、円錐ガイド側面19と直角をなし、ガイド側面19の最下位点を通過する。この文脈では、「下方」は、側面20が、後方側15と同じ側の、円錐26の側にあることを示す。したがって、円錐26は、ガイド側面19においてのみ、回転軸4の方向にガイド溝18の空洞を通過して支持体7に入る。ガイド側面19は、円錐エンベロープよりも連続的に上方にある。対向する側面20は、様々な形で具体化できる。側面20は、好ましくは単調に下降する。好ましい実施形態では、対向する側面20は円錐形を有する。この円錐は、回転軸4に対して対称であり、円錐の先端は、前方側14から見て支持体7の反対側にある。円錐の半開角27は、50度を超え、好ましくは60度を超え、且つ好ましくは75度未満、例えば70度未満である。したがって、外側側面20はガイド側面19よりも著しく長い。
【0033】
ガイド溝18、23は、高い非対称性を有するプロファイルを有する。ガイド側面19及び対向する側面20を表す円錐の半開角25、27の合計は、好ましくは90度を超えるが、好ましくは120度未満である。ガイド側面19は、ガイド溝18の幅28、すなわちその半径方向寸法に、僅かに、例えば20%未満だけ寄与する。幅28の大部分は、他の側面19及び溝ベース21によって占められる。幅28は、ガイド溝18の深さ22、すなわち回転軸4に沿ったその寸法、の少なくとも3倍、例えば少なくとも4倍である。この窪んだプロファイルは比較的小さい断面図を有するので、細長い対向する側面20を有する実施形態は好ましい。したがって、支持体7はより安定である。特に2つ以上のガイド溝が提供される場合、これが当てはまる。別の実施形態では、溝ベースは、溝幅の少なくとも4分の3を占める。他の側面は、ガイド側面に対して同程度の開角を有する円錐によって表すことができ、
図4を参照されたい。前方側14は2つのガイド溝18、23を有し得る。2つのガイド溝18、23は、互いに同心である。図示する実施形態では、ガイド溝18、23は両方とも同じプロファイルを有する。ガイド溝18、23は、その半径が異なるだけである。
【0034】
支持体7の内周部9は、滑走面29としての役割を担う。滑走面29は、鈍角であるか湾曲していることができる、又は好ましくは台形断面を有することができる。滑走面29は回転体の形状を有し、その対称軸は回転軸4と一致する。
【0035】
基板をリング鋸刃1で切断する場合、リング鋸刃1は切断平面E内で基板内へと入り込む。切断要素3は、支持体7の外周部8に沿って切断平面E内に構成されている。切断要素3は、支持体7から半径方向に突出している。更には、切断要素3はまた、支持体7から両軸方向にも突き出ている。したがって、切断要素3は支持体7よりも厚い。すなわち、切断要素は回転軸4に沿ってより大きい寸法を有する。切断要素3によって切断されるスロットは、支持体7がスロット内へと挿入されることを可能にするために十分に広い。切断要素3は、研磨性を有し得る又は削りくずを生成し得る。例えば、切断要素はマトリクスに埋め込まれたダイヤモンド粒子又は同様に硬い粒を含む。支持体7は好ましくは鋼鉄から製造される。
【0036】
リング鋸2は、好ましくは手持ち式の動力工具又は携帯型動力工具である。リング鋸2は、リング鋸刃1をガイドするための工具ホルダー5を有する。リング鋸刃1を駆動するためにモーター30が使用され、モーターは工具ホルダー5内へとガイドされる。モーター30は、マシンハウジング31内に構成される。ソーイング中にリング鋸2を保持しガイドするためのハンドル32が、マシンハウジング31上に構成されている。リング鋸2は、好ましくは、両手で握持できる2つのハンドル又は1つのハンドルを有する。例示的なハンドルは輪として設計される。ハンドル32は、リング鋸2のマシンハウジング31上に構成される。
【0037】
工具ホルダー5は、リング鋸刃1を挿入する又は取り外すために、ユーザにより工具なしでロック及びロック解除できる。工具ホルダー5は、リング鋸刃1の両側面14、15に載置される複数のローラに基づいている。工具ホルダー5は、リング鋸刃1のための収容空間33を有し、この空間は、好ましくはフード34により覆われている。ユーザは、マシンハウジング31からフード34を取り外すこと、マシンハウジング31に対して回転させて開けること、フードを枢動させること、ができる。フード34の開放及び閉鎖、並びに工具ホルダー5のロック解除及びロックは、例えば作動レバー35により実現できる。
【0038】
工具ホルダー5に関する以下の説明は、リング鋸2が操作されている間の、すなわち操作中の、工具ホルダーのロック位置に関する(
図5)。
【0039】
工具ホルダー5は、リング鋸刃1のための収容空間33を有する。収容空間33は好ましくは、底部36及び上部37によって回転軸4に沿って、そして側壁38によって半径方向に取り囲まれている。底部36は切断平面Eの一方の側に、上部37は反対側に構成されている。底部36及び上部37は、実質的に切断平面Eに沿って延びている。側壁38は、円周方向に回転軸4の周りに延び、円筒状の設計であり得る。収容空間33は入口開口部39及び出口開口部を有し、ここを通してリング鋸刃1が収容空間33に入ること及び出ることができる。底部36は、マシンハウジング31の外面により形成され得る。上部37は、フード34の内面により形成され得る。収容空間33は、リング鋸刃1によって導入されるおが屑又は水から、リング鋸2の電気モーター30、トランスミッション40などを保護するために、好ましくはマシンハウジング31に対して塵密且つ水密に設計されている。
【0040】
リング鋸2の工具ホルダー5は、収容空間33内に構成されている。工具ホルダー5は、ガイドローラ41、42、及びガイドロール43、44に基づく。ガイドローラ41、42は切断平面Eの一方の側に構成され、ガイドロール43、44は切断平面Eの反対側に構成されている。例示的なガイドローラ41、42は、底部36に対して収容空間33内へと突出している。例示的なガイドロール43、44は、上部37を起点として収容空間33内へと突出している。ガイドローラ41、42は、リング鋸刃1のガイド溝18、23内で係合している。ガイドロール43、44は、リング鋸刃1の好ましくは滑らかな後方側15に載置される。例示的なリング鋸2は2つのガイドローラ41、42を有し、ガイドローラは円周方向45に沿って回転軸4の周りにオフセットして構成されている。他の実施形態は、ちょうど1つのガイドローラ又は最多で4つのガイドローラを有する。ガイドロール43、44は、好ましくはガイドローラ41、42の反対側に、すなわち回転軸4の周りの同じ角度位置に構成される。ガイドローラ41と、対向するガイドロール43とを備える対が、それらの間にリング鋸刃1をクランプする。ガイドローラ41とガイドロール43との間の軸方向距離が、提供される又は挿入されるリング鋸刃1の厚さ16に対応する。
【0041】
ガイドローラ41は少なくとも1つの転動要素46、47を有し、この転動要素は、回転の軸48の周りを回転可能なように取り付けられている。回転の軸48及び転動要素46は、回転軸4に面する転動要素46の区画がガイド溝18内で係合するように、切断平面Eに対して傾斜している。それに応じて、回転軸4から離れる方向に面する転動要素46の区画は、軸方向に沿ってリング鋸刃1から間隔を空けている。転動要素46は、回転対称の外側面49を有する。例示的な外側面49は円筒形状を有する。外側面49は、リング鋸刃1のガイド溝18内に載置されている。駆動されたリング鋸刃1は、転動要素46を、そして同様にガイドローラ41を移動させる。ガイドローラ41の傾斜した位置決めにより、ガイドローラ41が、摩擦なく又は摩擦が殆どなくリング鋸刃1に追随することが可能になる。低摩擦は、リング鋸2の効率とガイドローラ41の寿命を増加させる。
【0042】
ガイドローラ41又はガイドローラ41の転動要素46、47は、力を受けず且つ低摩擦の形で、回転の軸48の周りを回転可能なように取り付けられている。明らかに、ガイドローラ41は、モーター30によって直接駆動されてはいない。しかしながら、ガイドローラ41は、リング鋸刃1に追随することにより移動する。リング鋸刃1の直径と転動要素46の直径との比率が高いことにより、転動要素46の高い回転速度が必要となる。したがって、急速に回転するガイドローラ41に起因する摩擦損失を回避するために、転動要素46は、好ましくは低摩擦軸受50に、例えば玉軸受に取り付けられている。例えば、転動要素46は、玉軸受に取り付けられている。
【0043】
言及したように、回転の軸48は切断平面Eに対して傾斜している。回転の軸48は、回転軸4と同じ平面内に存在し得る。例示的な実施形態では、回転軸4と回転の軸48とは捻れた方向に(skewed manner)構成されている。回転軸4と回転の軸48は互いに交差せず、平行ではない。回転軸4に最も近い回転の軸48の点は、ガイドローラ41と同じ側の、切断平面Eの側にある。回転の軸48は、ガイドローラ41から始まって半径方向に回転軸4に向かって延びており、同時に、切断平面E及びリング鋸刃1の前方側14から離れる方向に延びている。切断平面Eに対する回転の軸48の傾斜は、転動要素46の傾斜に変換され、回転軸4からの距離が増加するにつれて、転動要素と切断平面Eとの距離が大きくなる。切断平面Eと直角をなすラインに対する回転の軸48の傾斜角度51は、30度未満、好ましくは25度未満であり、且つ10度を超え、好ましくは15度を超える。例示的な円筒状の転動要素46の場合、傾斜角度51は、リング鋸2のために提供されるリング鋸刃1のガイド側面19の傾斜に等しい。
【0044】
転動要素46、47の数は、提供されるリング鋸刃1のガイド溝18、23の数と一致する。図示する好ましい実施形態は、2つの転動要素46、47を有する。他の実施形態は、1つの転動要素46又は最大で4つの転動要素を有する。転動要素46、47は、同じ回転の軸48の周りを回転可能なように、同軸状に構成されて取り付けられている。転動要素46、47の半径、又はその外側面49の半径は異なる。内側ガイド溝18は、挿入されるリング鋸刃1の外側ガイド溝23よりも、回転の軸48から離れている。それに応じて、内側ガイド溝18に関連付けられた転動要素46は、外側ガイド溝23に関連付けられた転動要素47よりも大きい半径を有する。より小さい転動要素47、又は内側ガイド溝18に関連付けられた少なくともその外側面は、外側ガイド溝18に関連付けられたより大きい転動要素46に対して、回転の軸48に沿って切断平面Eの方向にオフセットして構成されている。より小さい転動要素47と、より大きい転動要素46との間のオフセットは、回転軸4に面する転動要素の区画が、切断平面Eから同じ距離となるようなオフセットになっている。オフセットは、半径の違いと傾斜角度51とにより三角法で定められる。2つの転動要素46、47は、好ましくは、同じ深さで又はほぼ同じ深さでガイド溝18、23内で係合する。
【0045】
より小さい転動要素47のより小さい半径ゆえに、加えて外側ガイド溝23のより大きい半径ゆえに、より小さい転動要素47は、大きい転動要素46よりも著しくより急速に回転する。したがって、より小さい転動要素47は、好ましくはマシンハウジング31内に直接取り付けられることはない。好ましい実施形態では、より小さい転動要素47は、より大きい転動要素46上に取り付けられている。軸受、例えば玉軸受は、2つの転動要素の速度差に関してだけ応力を受ける。より大きい転動要素46は、マシンハウジング31に固定された軸受50内に取り付けられている。ソーイング中、リング鋸刃1はそのガイド溝18を介して、半径方向68に、すなわち切断平面E内で、ガイドローラ41上で支持される。ガイドローラ41は、力を直接的にマシンハウジング31に伝達する。
【0046】
例示的なガイドローラ41は、マシンハウジング31内に取り付けられている。転動要素46、47は、収容空間33内へと突出している。転動要素46、47は塵埃及び水に曝露される。塵埃及び水がマシンハウジング31内へと入り込まないことを確実にするために、ガイドローラ41の少なくとも転動要素46、47はマシンハウジング31から分離されている。転動要素46はポット53内に構成され、ポットはマシンハウジング31から封止され、収容空間33に向かって開いている。ポット53又はポット53の内部は、例えば円筒状の設計になっており、転動要素46の回転の軸48と同軸状に形成されている。ポット53は、収容空間33に面する開口部54を有し、その開口部を通して転動要素46、47が収容空間33に入る。開口部54は、底部36と同じ平面内に存在する。好ましくは切断平面E及び底部36に対して傾斜している転動要素46、47は、収容空間33内に完全に又は部分的に構成され得る。例えば、切断平面Eにより近い転動要素46の部分だけが、開口部54を通って収容空間33内へと突出している。この部分は、リング鋸刃1と接触する。残りの部分は、底部36によって収容空間33から遮蔽され得る。ポット53における関連する開口部54は、傾斜した転動要素46と底部36の平面とが交差するプロファイルに整合するように、例えば、スロット状又は弓形である。ポット53の容積は、塵埃、汚水などが内部に蓄積しないことを確実にするために、できるだけ小さく設計されている。ポット53の容積は、例えば、ガイドローラ41の転動要素46、47の体積の3倍以下、例えば2倍以下、例えば1.5倍以下である。ポットの直径は、より大きい転動要素46の直径にほぼ等しく、例えばその直径を30%超えない大きさである。
【0047】
ガイドロール43は、回転の軸56(
図5)を中心として回転可能なように取り付けられた転動要素55を有する。転動要素55は円筒状の、好ましくは円錐状の外側面57を有する。外側面57は、少なくとも動作中に又は工具ホルダー5がロックされているときに、切断平面Eに平行に構成される。リング鋸刃1は、切断平面Eに平行な外側面57上に載置される、又は外側面49によって支持される。回転の軸57は、回転軸4に対して概ね半径方向に方向付けられる形で構成される。その結果、転動要素55は、摩擦を殆ど有することなく、回転するリング鋸刃1上で転がることができる。ガイドローラのように、ガイドロール43は、低摩擦且つ力を受けない形で取り付けられている。好適な転動要素55は、円錐状の外側面55を有する。転動要素55の半径は、回転軸4からの距離の減少と共に減少する。転動要素55の半径と、回転の軸56に沿った回転軸4からの距離との比率は、好ましくは定数又はほぼ定数である。この比率の平均値からの偏差は2%未満である。外側面57は円錐により表され、その半開角は、例えば2度~5度である。切断平面Eに対する回転の軸57の傾斜角度58は、半開角に等しい。ガイドロール43の回転の軸57は、好ましくは、対向するガイドローラ41の回転の軸48と同じ平面内に存在する。この平面は、更に、切断平面Eと直角をなすか又は回転軸4に平行である。ガイドローラ41の外側面とガイドロール43の外側面とが互いに対して傾斜している場合であっても、回転の軸の向きが同一であるという事実ゆえに、ガイド側面19と後方側15との間には、たとえ存在したとしても、僅かな剪断力が存在するだけである。
【0048】
図示する好ましい実施形態では、工具ホルダー5は、2対のガイドローラ41及びガイドロール43を有する。各対における、ガイドローラ41の回転の軸48とガイドロール43の回転の軸57とは、同じ平面内に存在する。2つの平面は、回転軸4に平行なラインKにおいて交差する。ラインKは、回転軸4上に存在することができる、又は回転軸4に対してオフセットすることができる。これは、異なる直径のリング鋸刃1を受け入れるこのリング鋸2の能力を反映している。回転軸4の位置は、リング鋸刃1のガイド溝18により定められるので、リング鋸2に対する回転軸4の位置は、提供されるリング鋸刃1との関連においてのみ特定される。これにも関わらず、回転軸4は方向を示すための十分に定められた参照である。
【0049】
工具ホルダー5は、リング鋸刃1を取り外すために、工具なしでロック解除できる。一実施形態によれば、ガイドロール43は、回転軸4に沿った固定を解除するために、切断平面Eから、そして適用可能な場合には挿入されたリング鋸刃1から、離れる方向に移動できると想定される。
図6に概略的に示すように、ガイドロール43は、例えば、フード34の内側で懸架されている。回転軸56を中心として回転可能なようにガイドロール44が内部に取り付けられている回転軸受59が、フード34上に固定され得る。フード34が閉じている場合、上述したように、ガイドロール43はリング鋸刃1に載置され、工具ホルダー5はロックされる。フード34が開いている場合、ガイドロール43は、切断平面Eから、そして適用可能な場合には挿入されたリング鋸刃1から、離れる方向に移動する。例示的な実施形態では、ガイドロール44はフード34と共に切断平面Eに対して枢動する。工具ホルダー5はロック解除され、リング鋸刃1は取り外され得る。フード34の偶発的な開放と、それに関連する工具のロック解除とを防止する解放可能ロックが好ましくは提供される。
【0050】
リング鋸2の駆動部は、駆動輪6と、例示的な電気モーター30と、電気モーター30を駆動輪6に連結するトランスミッション40とを含む(
図7)。他のモーター、例えば内燃機関が、電気モーター30の代わりに使用され得る。駆動輪6は、切断平面E内で回転軸4に対して偏心して構成されている。駆動輪6の駆動軸60は、回転軸4に対してオフセットしている。駆動軸60及び回転軸4は、好ましくは平行である。駆動輪6は、リング鋸刃1の滑走面29上で、すなわち支持体7の内周部9上で転がる。それに対応して、駆動輪6の直径は、リング鋸2のために提供されるリング鋸刃1の内半径11よりも小さい。トランスミッション40は、回転速度又はトルク、安全クラッチなどを適合させるための様々な要素を含み得る。
【0051】
駆動輪6は、好ましくは、工具ホルダー5からリング鋸刃1を取り外すことをより容易にするために、切断平面E内で移動可能である。この移動は、入力側ピニオン61及び出力側冠歯車62(
図7)を有する傘歯車機構40によって可能になる。冠歯車62は、駆動軸60に沿ってベースプレート64から突出する歯63によって特徴付けられる。歯63は、駆動軸60に対して回転対称な、例えば円筒状の、空洞の周りに構成されている。歯63は、形状が円筒状若しくはプリズム状であり得る、又は何らかの他の形状であり得る。好ましい実施形態では、歯63はプリズム形状を有し、その三角形のプリズム状のベース表面は、冠歯車62の円周に対して、又は駆動軸60の周りの何らかの他の円に対して、接線方向に向いている。駆動輪6及び冠歯車62は、駆動軸60を中心として回転可能なように軸受65内に取り付けられている。軸受ブロック66はスライド67上に取り付けられ、スライドは、切断平面Eに平行に半径方向68に沿って移動できる。スライド67は、入力側ピニオン61の軸69に平行に移動可能である。スライド67は、例えば、連結機構70によって作動レバー35に連結でき、ユーザは作動レバーを用いてスライド67を移動できる。好ましくは解放可能ロックが提供され、このロックは、スライド67を工具ホルダー5のロック位置に固定する。
【0052】
ユーザは、好ましくは作動レバー35を用いて、工具ホルダー5をロック(
図8)及びロック解除(
図10)できる。作動レバー35は、工具ホルダー5がロックされる閉位置(
図8)と、工具ホルダー5がロック解除される開位置(
図10)とを有する。作動レバー35の開位置では、ガイドロール43とリング鋸刃1との間の接触は解除される。更に好ましくは、駆動輪6とリング鋸刃1との間の接触は解除される。リング鋸刃1は、ガイドローラ41上に緩く載置されており、そこからユーザはリング鋸刃を持ち上げて取り外すことができる。新しいリング鋸刃1を挿入する場合、ユーザはガイド溝18を用いてガイドローラ41上にブレードを置く。ガイド溝18により、リング鋸刃1を切断平面E内に正しく位置合わせすることが既に確実になっている。作動レバー35が閉位置にあることに応じて、ガイドロール43はリング鋸刃1と接触するようになり、したがって工具ホルダー5はロックされる。閉位置では、駆動輪6は、好ましくはリング鋸刃1と接触している。
【0053】
フード34は、好ましくは工具ホルダー5及び駆動輪6を覆っている。フード34が開いている場合、ユーザは、ガイドローラ41、ガイドロール43、及び駆動輪6にアクセス可能であり、したがって、ユーザがリング鋸刃1を取り外すこと又は挿入することが可能になる。フード34は、好ましくは、開位置及び閉位置に応じて、作動レバー35によって開けられる及び閉じられる。作動レバー35は、フード34及び工具ホルダー5を同時に作動できる。
【0054】
例示的な作動レバー35と、工具ホルダー5及びフード34を作動させる機構71とについて、
図8~
図10に関連付けて説明する。作動レバー35は、閉位置においてラッチする。工具ホルダー5又はフード34から作用する力が、好ましくは作動レバー35を閉位置へと押し込む。他の実施形態では、作動レバー35は、ユーザによってピンなどを用いて閉位置に固定され得る。
【0055】
作動レバー35の閉位置では、フード34は閉じている。フード34は、マシンハウジング31に対して、枢動関節72の周りに枢動可能となるような形で懸架されている。枢動関節72は、マシンハウジング31内で固定位置に構成されている。フード34は、好ましくは、フード34の偶発的な開放を防止する留め金を有する。留め金は、作動レバー35によって解放されなければならない。閉位置では、留め金は作動レバー35によりロックされている。例示的な留め金は、マシンハウジング31内のポケット74内に係合するラッチ73に基づく。ラッチ73は、例えば、フード34上で半径方向68に突出するノーズとして形成される。マシンハウジング31における関連するポケット74は凹部を有する。この凹部は、半径方向68に後退しており、好ましくはノーズと噛み合うように設計されている。ラッチ73は、枢動関節72の周りで円周方向にポケット74に載置されている。これにより、この枢動関節72を中心とする枢動運動は阻止される。ラッチ73は、半径方向68に沿ってポケット74から離れる方向に移動できる。ラッチ73とポケット74は、枢動関節72の周りで円周方向に沿ってオーバーラップすることはもはやなく、枢動動作の阻止は解除される。この目的のため、フード34を、例えばマシンハウジング31内で半径方向68に沿って移動できる。フード34は、スロット状穴75を介して枢動関節72に取り付けられている。スロット状穴75は、好ましくは半径方向68に対して傾斜している。したがって、フード34は、枢動関節72を中心として枢動し、半径方向68に沿って短い距離を移動できる。枢動関節72が、留め金に近いスロット状穴75の端部に載置されている場合、留め金は閉じており、枢動関節72が、留め金から離れたスロット状穴75の端部に載置されている場合、留め金は開いている。フード34の閉位置において留め金が閉じられるように、作動レバー35はフード34を枢動関節72に対して移動させる。閉位置から中間位置(
図9)へと進む場合、作動レバー35はフード34を半径方向68とは逆に引張り、ラッチ73をポケット74から引き抜く。中間位置から開位置へと進む場合、フード34は枢動関節72を中心として枢動する。フード34と共にガイドロール43は切断平面Eに対して、適用可能な場合にはリング鋸刃1に対して枢動する。
【0056】
作動レバー35は、駆動輪6を移動させるための連結機構70に連結されている。移動可能な駆動輪6は、ばね76によって事前に負荷を与えて、ロック解除位置にすることができる。例えば、ばね76は、半径方向68に回転軸4に向かって連結機構70を押圧する。その開位置では、作動レバー35は連結機構70を解放し、連結機構は、ばね76によって駆動されてロック解除位置(
図9)へと移動する。作動レバー35によるロック中に、作動レバー35の補助アーム77は、連結機構70を半径方向68とは逆に押す。補助アーム77は、好ましくは、ガイドロール43がリング鋸刃1に接触しなくなるまで、連結機構70から連結解除される。したがって、ガイド溝18は、ガイドローラ41上に載置され、半径方向に作用する力からの干渉なく、リング鋸刃1を整列させることができる。ガイドロール43が、ガイドロール43に対してガイド溝18を押圧して、それらを固定すると直ぐに、駆動輪6を介して半径方向の力が導入される。例えば、補助アーム77は、枢動関節78を介してマシンハウジング31に取り付けられ得る。その位置に応じて、作動レバー35は補助アーム77を異なる位置に枢動させる。
【0057】
例示的な機構71は、作動レバー35をフード34及びマシンハウジング31に連結する4つのバー連結機構を含む。フード34及び補助アーム77は、例えば、固定位置関節72、78に取り付けられている。作動レバー35は、フード34と並んで関節79に、そして補助アーム77と並んで関節80に連結している。
【0058】
動作時、リング鋸刃1は、水フラッシングシステム81により水で洗い流される。水は切断要素3を冷却する。冷却は、特に感熱性ダイヤモンド含有切断要素3の場合に必要である。冷却のための水を使用することに関する不都合な点は、ソーイング中に形成される塵埃と水が混ざって汚泥が形成されることである。汚泥は、部分的にリング鋸刃1によって取り込まれてリング鋸2へと運ばれる。研磨性を有して作用する汚泥は、摩耗、特に可動要素の摩耗の一因となる。
【0059】
リング鋸2の一実施形態では、摩耗を水によって低減させる。水は、ガイドローラ41に隣接する、工具ホルダー5の収容空間33内へと供給される。まだきれいな水が、ガイドローラ41の転動要素46、47の周りに流れる。機械的に高い応力を受けている接触領域には汚泥が存在しないように保つことができる、又は接触領域において少なくとも汚泥の浸入が低減される。好ましい実施形態では、転動要素46、47は、水流の方向において収容空間33の上流に位置する。水が収容空間33内の塵埃、汚泥などと接触する前に、水は転動要素46の少なくとも1つの区画の周りを流れる。
【0060】
水は、外部給水機82により提供される。給水機82は、とりわけ、充満されたタンク、又は公的若しくは私的な給水ネットワークからの流水を含むことができる。給水機82は、使用した水を収集、濾過、及び再循環させることができる。水は、好ましく、例えばタンクの上昇位置によって又は昇圧ポンプによって圧力下にある。リング鋸2は、給水機82との接続のための水接続部83を有する。リング鋸2内のチャネル84が、水接続部83から工具ホルダー5の収容空間33内へと水を運ぶ。水は、好ましくはガイドローラ41において又はその近くで収容空間33に入る。例えば、水は、転動要素46、47が内部に構成されているポット53を介して供給される。水は、転動要素46、47を越えて収容空間33内へと流れる。したがって、転動要素46は、流入する水の流れの方向において収容空間33の上流に位置する。特に、水は高い応力を受けている外側面49を越えて収容空間33内へと流れる。チャネル84の出口85は、例えば、収容空間33から離れる方向に面する外側面49に又は転動要素46の表面86に向けられている。チャネル84は、螺旋部分87を有し得る。螺旋部分87は、ガイドローラ41の回転の軸48の周りに構成されている。この部分87は、例えば、外側転動要素46用の軸受ブロック88とポット53の壁との間に構成され得る。