(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】台車の牽引装置
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20230602BHJP
B60D 1/00 20060101ALI20230602BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20230602BHJP
B62B 3/04 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B62B5/00 C
B60D1/00 Z
B61B13/00 A
B62B3/04 B
(21)【出願番号】P 2022019775
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514154813
【氏名又は名称】フィブイントラロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-328008(JP,A)
【文献】特開平11-278253(JP,A)
【文献】特開平3-38440(JP,A)
【文献】特開平7-267091(JP,A)
【文献】特開2020-50001(JP,A)
【文献】国際公開第2022/191040(WO,A1)
【文献】特許第7251004(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
B60D 1/00
B61B 13/00
B62B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車の後部に接続配置されて台車を牽引するための牽引装置であって、牽引装置は、牽引車との接続本体部と、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーとを含み、台車包囲バーは、接続本体部を支点として、そこから略上方向に延びる台車解放位置と、後方向に水平に延びる台車包囲位置との間で移動可能であるように構成され、台車を牽引しないときには、台車包囲バーが台車解放位置へと移動することにより台車を解放することができ、台車を牽引するときには、台車包囲バーが台車包囲位置へと移動することにより接続本体部の後部に配置された台車の側部と後部角部に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができることを特徴とする牽引装置。
【請求項2】
接続本体部の幅方向に軸回転可能な支持棒が設けられ、支持棒に台車包囲バーの二つの側部バーの端部がそれぞれ取り付けられ、支持棒の軸回転により台車包囲バーが台車解放位置と台車包囲位置との間で移動することができることを特徴とする請求項1に記載の牽引装置。
【請求項3】
支持棒への二つの側部バーの端部の取り付け位置が台車の幅方向に変動可能であり、これにより二つの側部バー間の距離が、包囲する台車の幅に合わせて調整できることを特徴とする請求項2に記載の牽引装置。
【請求項4】
牽引車の後部に接続配置されて台車を牽引するための牽引装置であって、牽引装置は、牽引車との接続本体部と、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーとを含み、接続本体部の幅方向に支持棒が設けられ、支持棒の長手方向の略中心の両側に略対称的に二つの側部バーの端部がそれぞれ取り付けられ、支持棒に沿って二つの側部バーが互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であり、台車を牽引しないときには、二つの側部バーの各々が台車の両側部から離れるように移動することにより台車を解放することができ、台車を牽引するときには、二つの側部バーの各々が台車の両側部に近づくように又は接触するように移動することにより接続本体部の後部に配置された台車の側部と後部角部に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができることを特徴とする牽引装置。
【請求項5】
支持棒を二つの側部バーの各々の端部が包囲する形で支持棒の外側表面と二つの側部バーの各々の端部の包囲内側表面とが螺合され、支持棒の長手方向の略中心を境に両側の支持棒の外側表面の螺子切り方向が互いに逆方向であり、それに合わせて二つの側部バーの各々の端部の包囲内側表面の螺子切り方向が互いに逆方向であり、支持棒の軸回転により二つの側部バーが互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であることを特徴とする請求項4に記載の牽引装置。
【請求項6】
鉛直方向に軸方向を有する回転軸とそれを回転できるハンドルとが接続本体部に設けられ、ハンドルの回転により回転軸が回転し、回転軸の回転方向を変換するスパイラルギアを介して支持棒を軸回転させることができることを特徴とする請求項5に記載の牽引装置。
【請求項7】
台車包囲バーが、接続本体部を支点として、そこから略上方向に延びる位置と、後方向に水平に延びる位置との間で移動可能であるように構成されていることを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の牽引装置。
【請求項8】
台車が、平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の牽引装置。
【請求項9】
牽引車が、無人搬送車であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の牽引装置。
【請求項10】
二つの側部バーの長さが変動可能であり、これにより二つの側部バーの進行方向の長さが、包囲する台車の側部の長さに合わせて調整できることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の牽引装置。
【請求項11】
接続本体部の床面側に車輪が存在することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の牽引装置。
【請求項12】
台車包囲バーの二つの側部バーの各々の後端の床面側に車輪が存在することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業施設や物流施設などで用いられる、牽引車の後部に接続配置されて台車を牽引するために好適な牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設や物流施設などでは、商品や荷物の搬送のために様々な台車が用いられている。これらの台車は、人手によって押されて搬送されることが多いが、近年、人手不足の解消のため、無人の自動搬送車(AGV)などの牽引車を利用して、これらの台車を牽引し、目的の場所に搬送することが試みられている。
【0003】
このような牽引手段や牽引方法については、近年多数提案されている(特許文献1~9参照)。しかしながら、これらの従来提案されている牽引対象の台車と自動搬送車などの牽引車との連結手段は、ピン連結やクランプ連結等の特別な連結方法を使用しており、牽引対象の台車の形態によっては連結部の形状を変更しなければならず、あらゆる種類の台車を牽引対象とすることが困難であり、汎用性が低かった。特に、牽引対象の台車が平台車のような形態の場合、引っ掛ける部分やクランプする部分が実質的に存在しないため、簡単で安全な連結を作ることが困難であった。
【0004】
また、従来提案されている台車の牽引手段は、台車と牽引車の連結を前提としたものであるため、台車を牽引車から解放するときには、特別な連結状態を解除する必要があり、その作業は極めて煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-70420号公報
【文献】特開2019-131046号公報
【文献】特開2017-100575号公報
【文献】特開2016-150692号公報
【文献】特開2016-150691号公報
【文献】特開2015-131591号公報
【文献】特開2014-210528号公報
【文献】特開2011-102076号公報
【文献】特開2009-113650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、牽引対象の台車がどのような形態であっても容易に牽引車の後部に台車を安全に連結することができ、かつ台車の牽引時の拘束及び台車の牽引からの解放が容易である牽引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、牽引車の後部に接続配置される牽引装置を設け、この牽引装置から後方に延びる台車包囲バーで台車の少なくとも側部と後部の各角部とを特定の手段で解除可能に包囲することによって、牽引車と台車を直接連結せずに、しかも台車の形態に依存せずに容易にかつ安全に台車を牽引でき、かつ台車の解放及び拘束も容易に行なうことができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、以下の(1)~(12)の構成を有するものである。
(1)牽引車の後部に接続配置されて台車を牽引するための牽引装置であって、牽引装置は、牽引車との接続本体部と、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーとを含み、台車包囲バーは、接続本体部を支点として、そこから略上方向に延びる台車解放位置と、後方向に水平に延びる台車包囲位置との間で移動可能であるように構成され、台車を牽引しないときには、台車包囲バーが台車解放位置へと移動することにより台車を解放することができ、台車を牽引するときには、台車包囲バーが台車包囲位置へと移動することにより接続本体部の後部に配置された台車の側部と後部角部に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができることを特徴とする牽引装置。
(2)接続本体部の幅方向に軸回転可能な支持棒が設けられ、支持棒に台車包囲バーの二つの側部バーの端部がそれぞれ取り付けられ、支持棒の軸回転により台車包囲バーが台車解放位置と台車包囲位置との間で移動することができることを特徴とする(1)に記載の牽引装置。
(3)支持棒への二つの側部バーの端部の取り付け位置が台車の幅方向に変動可能であり、これにより二つの側部バー間の距離が、包囲する台車の幅に合わせて調整できることを特徴とする(2)に記載の牽引装置。
(4)牽引車の後部に接続配置されて台車を牽引するための牽引装置であって、牽引装置は、牽引車との接続本体部と、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーとを含み、接続本体部の幅方向に支持棒が設けられ、支持棒の長手方向の略中心の両側に略対称的に二つの側部バーの端部がそれぞれ取り付けられ、支持棒に沿って二つの側部バーが互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であり、台車を牽引しないときには、二つの側部バーの各々が台車の両側部から離れるように移動することにより台車を解放することができ、台車を牽引するときには、二つの側部バーの各々が台車の両側部に近づくように又は接触するように移動することにより接続本体部の後部に配置された台車の側部と後部角部に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができることを特徴とする牽引装置。
(5)支持棒を二つの側部バーの各々の端部が包囲する形で支持棒の外側表面と二つの側部バーの各々の端部の包囲内側表面とが螺合され、支持棒の長手方向の略中心を境に両側の支持棒の外側表面の螺子切り方向が互いに逆方向であり、それに合わせて二つの側部バーの各々の端部の包囲内側表面の螺子切り方向が互いに逆方向であり、支持棒の軸回転により二つの側部バーが互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であることを特徴とする(4)に記載の牽引装置。
(6)鉛直方向に軸方向を有する回転軸とそれを回転できるハンドルとが接続本体部に設けられ、ハンドルの回転により回転軸が回転し、回転軸の回転方向を変換するスパイラルギアを介して支持棒を軸回転させることができることを特徴とする(5)に記載の牽引装置。
(7)台車包囲バーが、接続本体部を支点として、そこから略上方向に延びる位置と、後方向に水平に延びる位置との間で移動可能であるように構成されていることを特徴とする(4)~(6)のいずれかに記載の牽引装置。
(8)台車が、平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の牽引装置。
(9)牽引車が、無人搬送車であることを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の牽引装置。
(10)二つの側部バーの長さが変動可能であり、これにより二つの側部バーの進行方向の長さが、包囲する台車の側部の長さに合わせて調整できることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の牽引装置。
(11)接続本体部の床面側に車輪が存在することを特徴とする(1)~(10)のいずれかに記載の牽引装置。
(12)台車包囲バーの二つの側部バーの各々の後端の床面側に車輪が存在することを特徴とする(1)~(11)のいずれかに記載の牽引装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の牽引装置は、牽引車と牽引対象の台車の間に設けられて台車を台車包囲バーによって解放可能に包囲して牽引するようになっているため、牽引車と台車を直接連結するための連結部を設ける必要がなく、従って、従来のように連結部の形状を台車の形態に合わせて変更する必要がなく、あらゆる形態の台車を簡単にかつ安全に牽引することができる。また、台車包囲バーを上昇・下降することにより、又は台車包囲バーの二つの側部バーを互いに離したり、近づけたりすることにより台車の解放・拘束を行なうようにしているので、台車の牽引時の拘束及び台車の牽引からの解放が極めて簡単である。さらに、台車包囲バーのうち二つの側部バーの取付位置間の距離及び/又は側部バーの長さを変更することにより、異なる幅及び/又は長さのサイズの台車への適応を簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】牽引車と連結した本発明の第一実施形態の牽引装置の概略平面図を示す。
【
図2】牽引車と連結した本発明の第一実施形態の牽引装置の概略側面図を示し、台車包囲バーが台車包囲位置と台車解放位置の間で動く様子を示す。
【
図3】台車を台車包囲バーで包囲した状態の本発明の第一実施形態の牽引装置の要部の概略平面図と概略側面図を示す。なお、(a)~(c)では、それぞれ異なる種類の台車を包囲している。
【
図4】本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示す。
【
図5】本発明の第二実施形態の牽引装置の概略側面図を示す。
【
図6】二つの側部バーを
図4より互いに近づけた状態の本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示す。
【
図7】(a)は台車を包囲した状態、(b)は台車を解放した状態の本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示し、(c)はそれらの概略側面図を示す。
【
図8】(a),(b)は
図7とは異なる台車をそれぞれ包囲、解放した状態の本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示し、(c)はそれらの概略側面図を示す。
【
図9】(a),(b)は
図7,8とは異なる台車をそれぞれ包囲、解放した状態の本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示し、(c)はそれらの概略側面図を示す。
【
図10】(a),(b)は
図7~9とは異なる台車をそれぞれ包囲、解放した状態の本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示し、(c)はそれらの概略側面図を示す。
【
図11】(a),(b)は
図7~10とは異なる台車をそれぞれ包囲、解放した状態の本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示し、(c)はそれらの概略側面図を示す。
【
図12】本発明の第二実施形態の牽引装置の二つの側部バーをハンドル操作によって互いに離したり近づけたりするための機構の概略斜視図を示す。
【
図13】本発明の第二実施形態の牽引装置の支持棒とそれを包囲する二つの側部バーの端部との螺合状態の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の牽引装置の典型的な実施形態を図面に基づいて以下説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明の牽引装置は、一般に物品の仕分けや配送を取り扱う業界において、牽引車の後部に接続配置されて台車を牽引するために使用されるものである。牽引車は、台車を自力で牽引できれば特に限定されないが、例えば無人搬送車(AGV)が好ましく使用される。台車は、物品を積むことができ、底部に走行車輪を有すれば特に限定されないが、物品を載せる底部が全体として矩形の平面形状を有するものが好ましく、例えば平台車、六輪台車、又はカゴ台車が好ましく使用される。以下、台車の牽引時の拘束及び台車の牽引からの解放に関して、主に台車包囲バーの上昇・下降で行なう第一実施形態と、主に台車包囲バーの二つの側部バー間の距離の増減で行なう第二実施形態を挙げて説明する。
【0013】
(第一実施形態)
図1,
図2は、牽引車と接続されかつ台車を牽引していない状態の本発明の第一実施形態の牽引装置の概略平面図、概略側面図をそれぞれ示す。
図3は、台車を牽引した状態の本発明の第一実施形態の牽引装置の要部概略平面図、概略側面図を示し、(a)~(c)はそれぞれ異なる種類の台車を牽引した状態を示す。図中、1は、本発明の牽引装置、2は、無人搬送車(AGV)のような牽引車であり、牽引車2の後部に牽引装置1が接続配置され、牽引装置1が必要により台車10を包囲・拘束して牽引する。牽引装置1は、牽引車2との接続本体部3と、台車10を包囲可能な台車包囲バー4とを含む。接続本体部3は、接続本体部3の進行方向の端部と牽引車2の後部の間で特定の接続手段を設けることにより、牽引装置1を牽引車2の後部に接続する。接続手段は、ピン連結やクランプ連結などの従来公知の手段を適宜採用することができる。接続本体部3は、その床面側に車輪が存在することが好ましい。この方法では、牽引車2と台車10を直接連結しないため、異なる形態の台車でも容易に牽引することができ、また、台車自体に牽引車に合わせた連結手段を設けたりする必要がない。
【0014】
台車包囲バー4は、
図3に示すように台車10の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー5と、それらの側部バー5に各々連続して形成されかつ台車10の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バー6とを含む。二つの側部バー5は、台車10の各側部の全体にそれぞれ沿うことができるのに十分な長さを進行方向に延ばしたものであることが好ましい。また、二つの側部バー5の進行方向側には、台車10の前部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの前部バーを有することが好ましい。二つの側部バー5は、各々の後端の床面側にそれぞれ車輪が存在することが好ましい。また、二つの後部バー6の各々は、台車10を後方から押して支持することができるのに十分な長さで内側に延びていることが好ましい。
図1~3では、二つの後部バー6は、互いに離れているが、二つの後部バー6は、内側にそれぞれ延ばされた先端が互いに接触又は連結されてもよい。
【0015】
台車包囲バー4は、
図2に示すように、接続本体部3を支点として、そこから略上方に延びる台車解放位置8と、後方向に水平に延びる台車包囲位置9との間で矢印のように移動可能であるように構成されている。具体的には、接続本体部3の幅方向に軸回転可能な支持棒7が設けられ、この支持棒7に台車包囲バー4の二つの側部バー5の端部がそれぞれ取り付けられ、この支持棒7の軸回転により支持棒7に端部を取り付けられた台車包囲バー4が台車解放位置8と台車包囲位置9との間で移動することができる。
【0016】
台車解放位置8では、台車包囲バー4は、接続本体部3(特に支持棒7)を支点としてそこから略上方に位置されているため、台車10を牽引しないときには、接続本体部3の後方に位置される台車10を解放することができる。また、台車解放位置8では台車包囲バー4が後方に延びていないため、牽引装置1が占める床面積を小さくすることができる。一方、台車包囲位置9では、台車包囲バー4は、接続本体部3(特に支持棒7)を支点としてそこから後方向に水平に延びているため、接続本体部3の後方に配置された台車10を両側面から拘束することができる。この場合、台車包囲バー4の二つの側部バー5と二つの後部バー6がそれぞれ台車10の両側部と両後部角部に沿って台車10を包囲しており、この台車の包囲状態で牽引車2が進行すると台車包囲バー4の後部バー6が台車10を後部から進行方向に押すことで台車10を進行方向に牽引することができる。
【0017】
支持棒7への二つの側部バー5の端部の取り付け位置は、
図3(a)~(c)のように台車の幅方向に変動可能であることが好ましい。これにより、二つの側部バー5間の距離が調整可能になり、二つの側部バー5が様々な幅の台車の両側部にぴったりと沿うことができる。具体的には、例えば二つの側部バー5の進行方向側の端部が支持棒7の周囲を包囲し、二つの側部バー5が支持棒7に沿って台車の幅方向に自由に移動できるように構成し、台車の幅に合うように二つの側部バー5間の距離を調整した後に、二つの側部バー5の端部と支持棒7の両者をピン止めや拘束具などで固定することにより台車10の幅に合わせた二つの側部バー5間の距離の調整が可能である。
【0018】
さらに、二つの側部バー5の各々の長さも変動可能であることが好ましい。これにより、台車の側部に沿う側部バー5の長さが調整可能になり、二つの側部バー5を様々な長さの台車の両側部に合わせて適切に沿わせることができる。具体的には、例えば側部バー5を筒状の入れ子式の複数の部材で構成し、その伸縮により側部バー5の長さを調整した後に、入れ子式の部材をピン止めや拘束具で固定することにより台車10の側部の長さに合わせた二つの側部バーの各々の長さの調整が可能である。
【0019】
(第二実施形態)
図4,5は、台車を牽引していない本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図、概略側面図を示し、
図6は、二つの側部バー間の距離を
図4より近づけた本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図を示す。
図7~11は、それぞれ台車の種類を変更して、(a)台車を包囲した状態、(b)台車を解放した状態の本発明の第二実施形態の牽引装置の概略平面図、(c)それらの概略側面図を示す。
図12,13は、本発明の第二実施形態の牽引装置の二つの側部バー間の距離の調整のためのハンドル操作機構の説明図を示す。
【0020】
図中、1は、本発明の牽引装置であり、無人搬送車(AGV)のような牽引車の後部に牽引装置1が接続配置され、牽引装置1がその後部で必要により台車10を包囲・拘束して牽引する。3は、牽引車との接続本体部3であり、接続本体部3は、その進行方向の端部と牽引車の後部の間で特定の接続手段を設けることにより牽引装置1を牽引車の後部に接続する。接続手段は、ピン連結やクランプ連結などの従来公知の手段を適宜採用することができる。接続本体部3は、その床面側に車輪が存在することが好ましい。この方法では、牽引車と台車を直接連結しないため、異なる形態の台車でも容易に牽引することができ、また、台車自体に牽引車に合わせた連結手段を設ける必要がない。
【0021】
4は、台車を包囲可能な台車包囲バーであり、台車包囲バー4は、各図に示すように台車10の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー5と、それらの側部バー5に各々連続して形成されかつ台車10の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バー6とを含む。二つの側部バー5は、台車10の各側部の全体にそれぞれ沿うことができるのに十分な長さを進行方向に延ばしたものであることが好ましい。また、二つの側部バー5の進行方向側には、台車10の前部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの前部バーを有することが好ましい。二つの側部バー5は、各々の後端の床面側にそれぞれ車輪が存在することが好ましい。また、二つの後部バー6の各々は、台車10を後方から押して支持することができるのに十分な長さで内側に延びていることが好ましい。
図4~11では、二つの後部バー6は、互いに離れているが、二つの後部バー6は、内側にそれぞれ延ばされた先端が互いに接触又は連結されてもよい。
【0022】
7は、接続本体部3の幅方向に設けられる支持棒7であり、支持棒7は、
図4に示すように、その長手方向の略中心の両側に略対称的に二つの側部バー5の進行方向側の端部がそれぞれ取り付けられ、
図4と
図6に示すように支持棒7に沿って二つの側部バー5が互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能である。具体的には、
図4に示すように、支持棒7を二つの側部バー5の各々の進行方向の端部が包囲する形で、
図13に示すように支持棒7の外側表面と二つの側部バー5の各々の端部の包囲内側表面とが螺合され、支持棒7の長手方向の略中心を境に両側の支持棒7の外側表面の螺子切り方向が互いに逆方向であり、それに合わせて二つの側部バー5の各々の端部の包囲内側表面の螺子切り方向が互いに逆方向であるように構成され、支持棒7の軸回転により二つの側部バー5が
図4と6のように互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能である。
【0023】
支持棒7の軸回転は、支持棒7の両端のいずれかを回転することにより達成することができるが、
図4に示すハンドル11の回転により間接的に支持棒7の端を回転することにより達成することが好ましい。具体的には、
図12に示すように鉛直方向に軸方向を有する回転軸12と、回転軸12を回転できるハンドル11とを接続本体部3の幅方向の端部に設け、ハンドル11の回転により回転軸12が回転し、次いで回転軸12の回転方向を例えば90°変換するスパイラルギア13により支持棒7の軸回転が可能である。これにより二つの側部バー間の距離の調整を作業者が立ったままで軽い力のハンドル回転だけで行なうことができる。
【0024】
二つの側部バー5の支持棒7に沿った移動に関しては、台車を牽引しないときには、
図7~11の(b)に示すように、二つの側部バー5の各々が台車10の両側部から外側に離れるように移動することにより台車10を解放することができ、台車を牽引するときには、
図7~11の(a)に示すように、二つの側部バー5の各々が台車10の両側部に近づくように又は接触するように移動することにより台車10の両側部を拘束することができる。この場合、台車包囲バー4の二つの側部バー5と二つの後部バー6がそれぞれ台車10の両側部と両後部角部に沿って台車10を包囲しており、この台車の包囲状態で牽引車が進行すると台車包囲バーの後部バー6が台車10を後部から進行方向に押すことで台車10を進行方向に牽引することができる。
【0025】
台車包囲バー4は、第一実施形態と同様に、接続本体部3(特に支持棒7)を支点として、そこから略上方に延びる位置と、後方向に水平に延びる位置との間で移動可能であるように構成されることが好ましい。これにより、台車を牽引しないときには、台車包囲バー4を略上方に上昇させることができ、台車を牽引しないときの牽引装置1が占める床面積を小さくすることができる。また、台車の解放も容易にすることができる。
【0026】
さらに、二つの側部バー5の各々の長さも変動可能であることが好ましい。これにより、台車の側部に沿う側部バー5の長さが調整可能になり、二つの側部バー5を様々な長さの台車の両側部に合わせて適切に沿わせることができる。具体的には、例えば側部バー5を筒状の入れ子式の複数の部材で構成し、その伸縮により側部バー5の長さを調整した後に、入れ子式の部材をピン止めや拘束具で固定することにより台車10の側部の長さに合わせた二つの側部バーの各々の長さの調整が可能である。
【0027】
以上、本発明の牽引装置について二つの実施形態に基づいて説明したが、本発明の特許請求の範囲の要件を逸脱しない限り、細部の技術の変更や修正、従来技術の追加を適宜行なうことができる。例えば、台車包囲バーの二つの側部バーと二つの後部バー以外の構造については、台車を容易に包囲又は解放でき、台車を安全かつ簡単に牽引するという本発明の目的を満たす限り、当業者が従来採用している機能や手段を適宜採用することができる。また、牽引装置の接続本体部やそこに設けられる支持棒も同じ目的を達成できる限り、異なる形態のものに変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の牽引装置によれば、牽引車と台車を直接連結しないため、連結部の形状を台車の形態に合わせて変更する必要がなく、あらゆる形態の台車を簡単に安全に牽引することができる。また、台車の解放・拘束が台車包囲バーの上昇・下降、又は台車包囲バーの二つの側部バー間の距離の増減で行なわれるため、台車の牽引及び解放の作業が極めて簡単である。従って、本発明の牽引装置は、多量の物品の仕分けや配送を扱う業界において極めて有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 牽引装置
2 牽引車
3 接続本体部
4 台車包囲バー
5 側部バー
6 後部バー
7 支持棒
8 台車解放位置
9 台車包囲位置
10 台車
11 ハンドル
12 回転軸
13 スパイラルギア
14 物品
【要約】
【課題】台車がどのような形態であっても容易に牽引車に台車を連結でき、台車の牽引時の拘束及び牽引からの解放が容易である牽引装置を提供する。
【解決手段】牽引車の後部に接続配置されて台車を牽引する牽引装置であって、牽引装置は、牽引車との接続本体部と、台車の各側部に沿う二つの側部バー及びそれらに連続する台車の後部の各角部に沿う二つの後部バーを含む台車包囲バーとを含み、台車包囲バーは、接続本体部を支点として、略上方向に延びる台車を牽引しない時の位置と、後方向に水平に延びる台車牽引時の位置との間で移動可能である。また、二つの側部バー間の距離の調整により台車の解放・拘束が可能である。台車包囲バーが台車の側部と後部角部に沿って台車を包囲した状態で牽引車が進行すると後部バーが台車を後部から押して台車を進行方向に牽引する。
【選択図】
図7