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特許7289398吸収散乱比導出装置、方法、プログラム、記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】吸収散乱比導出装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/46 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
G01J3/46 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022169115
(22)【出願日】2022-10-21
【審査請求日】2023-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】藤山 英子
(72)【発明者】
【氏名】小林 淳夫
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-096751(JP,B2)
【文献】特開昭60-174932(JP,A)
【文献】特公平06-090089(JP,B2)
【文献】特開平07-260576(JP,A)
【文献】特開2006-030210(JP,A)
【文献】特開平11-326054(JP,A)
【文献】Junfeng Li et al.,”Optimal Learning Samples for Two-Constant Kubelka-Munk Theory to Match the Color of Pre-colored Fiber Blends”,Frontiers in Neuroscience,2022年07月01日,Vol. 16,Article 945454,<DOI: 10.3389/fnins.2022.945454>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
D06P 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録部と、
無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録部と、
前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録部と、
前記第一吸収散乱比記録部の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録部の記録内容と、前記着色剤配合比記録部の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出部と、
を備え、
前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比である吸収散乱比導出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収散乱比導出装置であって、
前記第一吸収散乱比導出部が、複数種類の前記着色された繊維の吸収散乱比を受け、
前記第二吸収散乱比記録部の記録内容と、前記第一吸収散乱比導出部の導出結果とに基づき、複数種類の前記着色された繊維の原材料を任意の配合比である混合色配合比で混合して得られる混合繊維の吸収散乱比を導出する第二吸収散乱比導出部を備えた吸収散乱比導出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸収散乱比導出装置であって、
前記無色透明材料が樹脂である吸収散乱比導出装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の吸収散乱比導出装置であって、
前記着色剤が、染料および顔料のいずれかまたは双方である吸収散乱比導出装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の吸収散乱比導出装置であって、
前記繊維が、原着糸である吸収散乱比導出装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の吸収散乱比導出装置であって、
前記第一吸収散乱比導出部が、
前記着色剤配合比を、重量100の前記無色透明材料を配合したときの前記着色剤の重量としたときに、
((100+前記着色剤配合比)×(前記第一吸収散乱比記録部の記録内容)-100×(前記第二吸収散乱比記録部の記録内容))/(前記着色剤配合比)として、前記着色剤の吸収散乱比を導出する、
吸収散乱比導出装置。
【請求項7】
着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録工程と、
無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録工程と、
前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録工程と、
前記第一吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記着色剤配合比記録工程の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出工程と、
を備え、
前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比である吸収散乱比導出方法。
【請求項8】
吸収散乱比導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記吸収散乱比導出処理が、
着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録工程と、
無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録工程と、
前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録工程と、
前記第一吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記着色剤配合比記録工程の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出工程と、
を備え、
前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比であるプログラム。
【請求項9】
吸収散乱比導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記吸収散乱比導出処理が、
着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録工程と、
無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録工程と、
前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録工程と、
前記第一吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記着色剤配合比記録工程の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出工程と、
を備え、
前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比である記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原着糸の色のCCM(コンピュータカラーマッチング)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CCM(コンピュータカラーマッチング)が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4を参照)。
【0003】
また、糸の原材料を溶かす時点で、染料または顔料を糸の原材料に混合して着色を行った原着糸も知られている。
【0004】
ここで、CCMにより、複数種類の色の染料または顔料を混合した原着糸の色を計算する場合がある。この場合、複数種類の色の各々により着色された原着糸の反射率の値(予め測定しておく)から、加成性が成立する吸収係数Kおよび散乱係数Sの比(K/S)を求める。これらのK/Sを合計すれば、複数種類の色の染料または顔料を混合した原着糸のK/Sが分かるので、色を計算することができる。
【0005】
ここで、複数種類の色の各々により着色された原着糸の色をベースカラーという。さらに、CCMによる計算の結果、ベースカラー1の原着糸の原材料と、ベースカラー2の原着糸の原材料と、ベースカラー3の原着糸の原材料とを用意し、これらを混合すれば、所望の色の原着糸を得ることができることが分かったと仮定する。
【0006】
また、各ベースカラーの原着糸の原材料が、マスターバッチおよび無色透明の樹脂であるとする。なお、マスターバッチとは、染料または顔料を分散剤と共に高濃度で樹脂に練り込んだものである。すると、CCMを行うためには、各ベースカラーについて、色々な濃度のマスターバッチのK/Sを測定し記録しておかなければならない。なお、色々な濃度とは、例えば、1%、5%、10%、20%および50%であるが、各ベースカラーについて、異なる濃度のマスターバッチのK/Sを記録することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-174932号公報
【文献】特開2002-090222号公報
【文献】特開2003-294530号公報
【文献】特開2019-184346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、各ベースカラーについて、色々な濃度のマスターバッチのK/Sを測定し記録しておくことは多大な労力を要する。
【0009】
そこで、本発明は、CCMのために、各ベースカラーについて、より少ない種類のK/Sを導出しておけばすむようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる吸収散乱比導出装置は、着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録部と、無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録部と、前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録部と、前記第一吸収散乱比記録部の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録部の記録内容と、前記着色剤配合比記録部の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出部とを備え、前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比であるように構成される。
【0011】
上記のように構成された吸収散乱比導出装置によれば、第一吸収散乱比記録部が、着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する。第二吸収散乱比記録部が、無色透明材料の吸収散乱比を記録する。着色剤配合比記録部が、前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する。第一吸収散乱比導出部が、前記第一吸収散乱比記録部の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録部の記録内容と、前記着色剤配合比記録部の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する。前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比である。
【0012】
なお、本発明にかかる吸収散乱比導出装置は、前記第一吸収散乱比導出部が、複数種類の前記着色された繊維の吸収散乱比を受け、前記第二吸収散乱比記録部の記録内容と、前記第一吸収散乱比導出部の導出結果とに基づき、複数種類の前記着色された繊維の原材料を任意の配合比である混合色配合比で混合して得られる混合繊維の吸収散乱比を導出する第二吸収散乱比導出部を備えるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる吸収散乱比導出装置は、前記無色透明材料が樹脂であるようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる吸収散乱比導出装置は、前記着色剤が、染料および顔料のいずれかまたは双方であるようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる吸収散乱比導出装置は、前記繊維が、原着糸であるようにしてもよい。
【0016】
本発明は、着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録工程と、無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録工程と、前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録工程と、前記第一吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記着色剤配合比記録工程の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出工程とを備え、前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比である吸収散乱比導出方法である。
【0017】
本発明は、吸収散乱比導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記吸収散乱比導出処理が、着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録工程と、無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録工程と、前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録工程と、前記第一吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記着色剤配合比記録工程の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出工程とを備え、前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比であるプログラムである。
【0018】
本発明は、吸収散乱比導出処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記吸収散乱比導出処理が、着色剤により着色された繊維の吸収散乱比を記録する第一吸収散乱比記録工程と、無色透明材料の吸収散乱比を記録する第二吸収散乱比記録工程と、前記着色された繊維を生成するための前記着色剤と前記無色透明材料との配合比である着色剤配合比を記録する着色剤配合比記録工程と、前記第一吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記第二吸収散乱比記録工程の記録内容と、前記着色剤配合比記録工程の記録内容とに基づき、前記着色剤の吸収散乱比を導出する第一吸収散乱比導出工程とを備え、前記吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比である記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態にかかる吸収散乱比導出装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図2】ベースカラー吸収散乱比記録部12の記録内容の一例を示す図である。
図3】顔料配合比記録部13の記録内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態にかかる吸収散乱比導出装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【0022】
本発明の実施形態にかかる吸収散乱比導出装置1は、ベースカラー吸収散乱比記録部(第一吸収散乱比記録部)12、顔料配合比記録部(着色剤配合比記録部)13、樹脂吸収散乱比記録部(第二吸収散乱比記録部)14、顔料吸収散乱比導出部(第一吸収散乱比導出部)16、混合色吸収散乱比導出部(第二吸収散乱比導出部)18を備える。
【0023】
ベースカラー吸収散乱比記録部(第一吸収散乱比記録部)12が、着色剤により着色された繊維の吸収散乱比K/Sを記録する。ただし、吸収散乱比K/Sとは、吸収係数Kおよび散乱係数Sの比である。なお、吸収散乱比K/Sは、入射光の波長λの関数である。
【0024】
なお、本発明の実施形態においては、着色剤が顔料である一例を説明している。ただし、着色剤は、染料であってもよいし、染料および顔料であってもよい。
【0025】
繊維は、例えば、原着糸である。繊維の形態は、例えば、毛束である。繊維はベースカラーa、bまたはcにより着色されている。なお、ベースカラーa、bまたはcは、糸の原材料を溶かす時点で、それらの色a、bまたはcの着色剤を糸の原材料に混合して着色するものである。
【0026】
なお、着色剤により着色された繊維の吸収散乱比K/Sは、この繊維の反射率を測定した上で、この繊維の反射率を周知のPineoの式に代入することにより求めることができる。
【0027】
図2は、ベースカラー吸収散乱比記録部12の記録内容の一例を示す図である。ベースカラー吸収散乱比記録部12は、ベースカラーごとに吸収散乱比K/Sを記録する。例えば、図2を参照して、ベースカラーaにより着色された繊維の吸収散乱比は(K/S)ベース1であり、ベースカラーbにより着色された繊維の吸収散乱比は(K/S)ベース2であり、ベースカラーcにより着色された繊維の吸収散乱比は(K/S)ベース3である。
【0028】
樹脂吸収散乱比記録部(第二吸収散乱比記録部)14は、無色透明材料の吸収散乱比K/Sを記録する。なお、本発明の実施形態においては、無色透明材料が樹脂である一例を説明している。樹脂の吸収散乱比K/Sは、例えば、(K/S)樹脂である。樹脂の吸収散乱比K/Sは、この樹脂の反射率を測定した上で、この樹脂の反射率を周知のPineoの式に代入することにより求めることができる。
【0029】
顔料配合比記録部(着色剤配合比記録部)13は、着色された繊維を生成するための着色剤と無色透明材料との配合比である着色剤配合比(顔料配合比)を記録する。
【0030】
図3は、顔料配合比記録部13の記録内容の一例を示す図である。図3においては、着色剤として顔料を想定している。図3を参照して、ベースカラーaの繊維の顔料配合比はYであり、ベースカラーbの繊維の顔料配合比はYでありであり、ベースカラーcの繊維の顔料配合比はYである。ただし、顔料配合比Y(Y、YまたはY)は、重量100の無色透明材料(樹脂)に対して、重量Yの着色剤(顔料)を配合することを意味する。
【0031】
なお、Y、YおよびYは、全て同じ値(例えば、0.1であるが、これに限定されない)であってもよいが、そうでなくてもよい。例えば、Y=Yであるが、YとYは異なる値でもよい。
【0032】
顔料吸収散乱比導出部(第一吸収散乱比導出部)16は、ベースカラー吸収散乱比記録部(第一吸収散乱比記録部)12の記録内容と、樹脂吸収散乱比記録部(第二吸収散乱比記録部)14の記録内容と、顔料配合比記録部(着色剤配合比記録部)13とに基づき、顔料(着色剤)の吸収散乱比を導出する。
【0033】
なお、顔料吸収散乱比導出部16は、複数種類の着色された繊維の吸収散乱比を受ける。例えば、ベースカラー配合比導出部16は、ベースカラーaで着色された繊維の吸収散乱比(K/S)ベース1と、ベースカラーbで着色された繊維の吸収散乱比(K/S)ベース2と、ベースカラーcで着色された繊維の吸収散乱比(K/S)ベース3とを受ける。
【0034】
顔料吸収散乱比導出部16は、さらに顔料(着色剤)の吸収散乱比を導出する。
【0035】
【数1】
顔料吸収散乱比導出部16が、ベースカラーaにより着色された繊維の吸収散乱比(K/S)ベース1をベースカラー吸収散乱比記録部12から読み出して式(1)の(K/S)ベースに代入し、ベースカラーaの繊維の顔料配合比Yを顔料配合比記録部13から読み出して式(1)のYに代入し、樹脂の吸収散乱比K/Sを樹脂吸収散乱比記録部14から読み出して式(1)の(K/S)樹脂に代入してから、式(1)の(K/S)顔料を求める。このようして求められた(K/S)顔料を(K/S)顔料1という。
【0036】
顔料吸収散乱比導出部16が、ベースカラーbにより着色された繊維の吸収散乱比(K/S)ベース2をベースカラー吸収散乱比記録部12から読み出して式(1)の(K/S)ベースに代入し、ベースカラーbの繊維の顔料配合比Yを顔料配合比記録部13から読み出して式(1)のYに代入し、樹脂の吸収散乱比K/Sを樹脂吸収散乱比記録部14から読み出して式(1)の(K/S)樹脂に代入してから、式(1)の(K/S)顔料を求める。このようして求められた(K/S)顔料を(K/S)顔料2という。
【0037】
顔料吸収散乱比導出部16が、ベースカラーcにより着色された繊維の吸収散乱比(K/S)ベース3をベースカラー吸収散乱比記録部12から読み出して式(1)の(K/S)ベースに代入し、ベースカラーcの繊維の顔料配合比Yを顔料配合比記録部13から読み出して式(1)のYに代入し、樹脂の吸収散乱比K/Sを樹脂吸収散乱比記録部14から読み出して式(1)の(K/S)樹脂に代入してから、式(1)の(K/S)顔料を求める。このようして求められた(K/S)顔料を(K/S)顔料3という。
【0038】
混合色吸収散乱比導出部(第二吸収散乱比導出部)18は、樹脂吸収散乱比記録部(第二吸収散乱比記録部)14の記録内容と、顔料吸収散乱比導出部(第一吸収散乱比導出部)16の導出結果に基づき、複数種類の着色された繊維の原材料を任意の配合比である混合色配合比で混合して得られる混合繊維の吸収散乱比を導出する。
【0039】
例えば、混合色吸収散乱導出部18は、ベースカラーa、bおよびcについての顔料吸収散乱比導出部(第一吸収散乱比導出部)16の導出結果(K/S)顔料1、(K/S)顔料2、(K/S)顔料3に基づき、複数種類の着色された繊維(ベースカラーaで着色された繊維、ベースカラーbで着色された繊維およびベースカラーcで着色された繊維)の原材料を混合色配合比で混合して得られる混合繊維の吸収散乱比を導出する。
【0040】
ただし、混合色配合比は、例えば、ベースカラーaに対応する顔料1をZ1重量%、ベースカラーbに対応する顔料2をZ2重量%、ベースカラーcに対応する顔料3をZ3重量%、樹脂をZ4重量%(ただし、Z1+Z2+Z3+Z4=100)配合することを意味する。
【0041】
混合色吸収散乱導出部18は、混合繊維の吸収散乱比(K/S)混合を、以下の式(2)のようにして求める。ただし、(K/S)顔料1、(K/S)顔料2および(K/S)顔料3は顔料吸収散乱比導出部16から受け、(K/S)樹脂は樹脂吸収散乱比記録部14から読み出して、以下の式(2)に代入する。
【0042】
【数2】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0043】
まず、ベースカラーa、bおよびcで着色された繊維の反射率を測定し、吸収散乱比(K/S)ベース1、(K/S)ベース2および(K/S)ベース3を求めてベースカラー吸収散乱比記録部12に記録しておく。さらに、樹脂の反射率を測定し、吸収散乱比(K/S)樹脂を求めて樹脂吸収散乱比記録部14に記録しておく。
【0044】
顔料吸収散乱比導出部16は、樹脂吸収散乱比記録部14から樹脂の吸収散乱比(K/S)樹脂を読み出す。顔料吸収散乱比導出部16は、さらに、ベースカラー吸収散乱比記録12から、(K/S)ベース1、(K/S)ベース2または(K/S)ベース3を読み出す(図2参照)。顔料吸収散乱比導出部16は、さらに、顔料配合比記録部13から、顔料配合比Y(Y、YおよびY)を読み出す(図3参照)。
【0045】
顔料吸収散乱比導出部16は、式(1)に上記の吸収散乱比および顔料配合比を代入して(K/S)顔料1、(K/S)顔料2および(K/S)顔料3を求める。
【0046】
顔料吸収散乱比導出部16は、ベースカラーaについては、式(1)の(K/S)ベースに(K/S)ベース1を代入し、式(1)のYに顔料配合比Yを代入し、式(1)の(K/S)樹脂に(K/S)樹脂を代入して、(K/S)顔料(=(K/S)顔料1)求める。
【0047】
顔料吸収散乱比導出部16は、ベースカラーbについては、式(1)の(K/S)ベースに(K/S)ベース2を代入し、式(1)のYに顔料配合比Yを代入し、式(1)の(K/S)樹脂に(K/S)樹脂を代入して、(K/S)顔料(=(K/S)顔料2)求める。
【0048】
顔料吸収散乱比導出部16は、ベースカラーcについては、式(1)の(K/S)ベースに(K/S)ベース3を代入し、式(1)のYに顔料配合比Yを代入し、式(1)の(K/S)樹脂に(K/S)樹脂を代入して、(K/S)顔料(=(K/S)顔料3)求める。
【0049】
さらに、混合色吸収散乱導出部18に混合色配合比Z1、Z2、Z3およびZ4が与えられる。しかも、混合色吸収散乱導出部18は、顔料吸収散乱比導出部16から、(K/S)顔料1、(K/S)顔料2および(K/S)顔料3を受け、樹脂吸収散乱比記録部14から樹脂の吸収散乱比(K/S)樹脂を読み出す。混合色吸収散乱導出部18は、これらを、式(2)に代入し、混合繊維の吸収散乱比(K/S)混合を求める。
【0050】
本発明の実施形態によれば、ベースカラーa、bおよびcの各々について、1種類のK/S((K/S)顔料1、(K/S)顔料2または(K/S)顔料3)を導出しておけば、混合色吸収散乱導出部18によるCCMを行える。
【0051】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば、ベースカラー吸収散乱比記録部12、顔料配合比記録部13、樹脂吸収散乱比記録部14、顔料吸収散乱比導出部16および混合色吸収散乱比導出部18を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0052】
1 吸収散乱比導出装置
12 ベースカラー吸収散乱比記録部(第一吸収散乱比記録部)
13 顔料配合比記録部(着色剤配合比記録部)
14 樹脂吸収散乱比記録部(第二吸収散乱比記録部)
16 顔料吸収散乱比導出部(第一吸収散乱比導出部)
18 混合色吸収散乱比導出部(第二吸収散乱比導出部)
【要約】
【課題】CCMのために、各ベースカラーについて、より少ない種類のK/Sを導出しておけばすむようにする。
【解決手段】吸収散乱比導出装置1は、顔料により着色された繊維の吸収散乱比を記録するベースカラー吸収散乱比記録部12と、樹脂の吸収散乱比を記録する樹脂吸収散乱比記録部14と、着色された繊維を生成するための顔料と樹脂との配合比である顔料配合比を記録する顔料配合比記録部13と、ベースカラー吸収散乱比記録部12の記録内容と、樹脂吸収散乱比記録部14の記録内容と、顔料配合比記録部13の記録内容とに基づき、顔料の吸収散乱比を導出する顔料吸収散乱比導出部16とを備える。ただし、吸収散乱比とは、吸収係数および散乱係数の比である。
【選択図】図1
図1
図2
図3