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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-01
(45)【発行日】2023-06-09
(54)【発明の名称】電気コネクタ用ハウジング
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20230602BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALN20230602BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R13/6592
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022518749
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2020076599
(87)【国際公開番号】W WO2021058585
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】19200239.2
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】503168201
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ネーデルランド ビーヴイ
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Nederland BV
【住所又は居所原語表記】Rietveldenweg 32,NL-5222 AR’s-Hertogenbosch,The NETHERLANDS,
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】スツェーラク,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィボルク,オーレ
(72)【発明者】
【氏名】デ・ブラーン,イェルン ヨーゼフ マリア
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522549(JP,A)
【文献】特開平10-162900(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116239(WO,A1)
【文献】特開2019-145209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56
H01R 13/6592
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入方向(I)において電気ケーブル(10)を受けるように構成されている開口部(8)を有するハウジング本体(6)と、
ケーブルカバー対(12)のそれぞれのケーブルカバー(16)の1つの近位端(14)において前記ハウジング本体(6)にヒンジ接続されており、前記開口部(8)から離れるように延びるケーブルカバー対(12)と
を備え、
ケーブル装着位置(2)において、前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、前記ケーブルカバー対(12)の他方のケーブルカバー(16)から離れるように回動されており、
動作位置(64)において、前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、他方のケーブルカバーに向かって回動されており、前記ケーブル(10)を支持するように構成されているケーブル支持スリーブ(66)を形成するとともに、

前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)には、前記ケーブル(10)のケーブル編組線(20)に接触するための少なくとも1つの接地ばね(42)が設けられている、
電気コネクタ(4)用ハウジング(1)。
【請求項2】
前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、前記挿入方向(I)に垂直な向きのそれぞれの回転軸(32)を中心として回動するように適合されている、
請求項1に記載のハウジング(1)。
【請求項3】
挿入方向(I)において電気ケーブル(10)を受けるように構成されている開口部(8)を有するハウジング本体(6)と、
ケーブルカバー対(12)のそれぞれのケーブルカバー(16)の1つの近位端(14)において前記ハウジング本体(6)にヒンジ接続されており、前記開口部(8)から離れるように延びるケーブルカバー対(12)と
を備え、
ケーブル装着位置(2)において、前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、前記ケーブルカバー対(12)の他方のケーブルカバー(16)から離れるように回動されており、
動作位置(64)において、前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、他方のケーブルカバーに向かって回動されており、前記ケーブル(10)を支持するように構成されているケーブル支持スリーブ(66)を形成するとともに、

前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、前記ハウジング本体(6)から離れている先細り形状の遠位端(55)を備える、
電気コネクタ(4)用ハウジング(1)。
【請求項4】
前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)には、前記動作位置(64)において前記ケーブル(10)を前記開口部(8)にロックするための少なくとも1つの固定ラッチ(44)が設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のハウジング(1)。
【請求項5】
前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)には、前記動作位置(64)において前記ケーブルカバー対(12)の対向するケーブルカバー(16)に向かって付勢されている少なくとも1つの歪み緩和ばね(46)が設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のハウジング(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの接地ばね(42)、前記少なくとも1つの固定ラッチ(44)および前記少なくとも1つの歪み緩和ばね(46)のうちの少なくとも2つは、一体的な構成要素(50)として互いに一体に形成されている、
請求項、4および5に記載のハウジング(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの歪み緩和ばね(46)は、前記ケーブルカバー対(12)の前記それぞれのケーブルカバー(16)の切抜き部(58)に配置されているアーチ(60)を備える、
請求項5または6に記載のハウジング(1)。
【請求項8】
前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、前記ハウジング本体(6)から離れている先細り形状の遠位端(55)を備える、
請求項1または2に記載のハウジング(1)。
【請求項9】
前記ケーブルカバー対(12)の少なくとも1つのケーブルカバー(16)は、前記動作位置(64)において前記ケーブルカバー対(12)の他方のケーブルカバー(16)に形成されている受けノッチ(70)へと案内されるように適合されている案内突出部(68)を備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載のハウジング(1)。
【請求項10】
前記動作位置(64)において前記ケーブルカバー対(12)をロックするように適合されているロックナット(72)が設けられている、
請求項1から9のいずれか一項に記載のハウジング(1)。
【請求項11】
前記動作位置(64)において前記ロックナット(72)および前記ケーブルカバー対(12)をロックするための差し込み式ロックアセンブリ(74)が設けられている、
請求項10に記載のハウジング(1)。
【請求項12】
前記ロックナット(72)の前記ケーブルカバー対(12)に対するロック係合を安定させるためのロックリブ(82)が設けられている、
請求項10または11に記載のハウジング(1)。
【請求項13】
前記ロックナット(72)は、前記ケーブル(10)が前記ロックナット(72)の位置において延びる方向と平行な方向に延びるように適合されている、
請求項9から12のいずれか一項に記載のハウジング(1)。
【請求項14】
前記ロックナット(72)は、前記動作位置(64)において前記ケーブルカバー対(12)を少なくとも部分的に受けるように適合されている、
請求項9から13のいずれか一項に記載のハウジング(1)。
【請求項15】
挿入方向(I)において電気ケーブル(10)を受けるように構成されている開口部(8)を有するハウジング本体(6)と、
ケーブルカバー対(12)のそれぞれのケーブルカバー(16)の1つの近位端(14)において前記ハウジング本体(6)にヒンジ接続されており、前記開口部(8)から離れるように延びるケーブルカバー対(12)と
を備え、
ケーブル装着位置(2)において、前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、前記ケーブルカバー対(12)の他方のケーブルカバー(16)から離れるように回動されており、
動作位置(64)において、前記ケーブルカバー対(12)の各ケーブルカバー(16)は、他方のケーブルカバーに向かって回動されており、前記ケーブル(10)を支持するように構成されているケーブル支持スリーブ(66)を形成するとともに、

前記ケーブルカバー対(12)の少なくとも1つのケーブルカバー(16)は、前記動作位置(64)において前記ケーブルカバー対(12)の他方のケーブルカバー(16)に形成されている受けノッチ(70)へと案内されるように適合されている案内突出部(68)を備える、
電気コネクタ(4)用ハウジング(1)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の少なくとも2つの前記ハウジング(1)を備えるセットであって、
少なくとも2つの前記ハウジング(1)は、同一構造のハウジング本体(6)および異なる対のケーブルカバー(12)を備え、前記ケーブルカバー(12)は、前記開口部(8)の反対側の遠位端(55)においてケーブル引出口(67)を形成し、前記異なる対のケーブルカバー(12)の前記ケーブル引出口は、前記挿入方向(I)に対して異なる向きに配されている、
セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタ用ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークコネクタなどの電気コネクタは通常、電気コネクタの背面に配置されたケーブル引出口を備える。物理的かつ電気的な保護のために、電気コネクタを受けるためのハウジングが設けられる。ケーブルがケーブル引出口から出るため、ケーブルの設置には十分なスペースが必要であるが、十分なスペースがあることは様々な適用例において稀である。したがって、設置時に占有するスペースが最小限になるようにケーブルの方向を変える、省スペースなハウジングが求められている。しかしながら、適用例によっては、様々な方向にケーブルの方向を変える必要があり、その結果、様々なハウジングを大量にストックすることになり、製造コストおよび保管コストが大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、様々な適用要求事項に容易に適合させることができ、占有するスペースがより小さいハウジングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、電気コネクタ用ハウジングを提供することにより、上記の課題を解決する。ハウジングは、挿入方向において電気ケーブルを受けるように構成されている開口部を有するハウジング本体を備える。ハウジングは、開口部から離れるように延びるケーブルカバーの1つの近位端においてハウジング本体にヒンジ接続されているケーブルカバー対を備え、ケーブル装着位置において、ケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、ケーブルカバー対の他方のケーブルカバーから離れるように回動されており、動作位置において、ケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、互いに向かって回動されており、ケーブルを支持するように構成されているケーブル支持スリーブを形成する。
【0005】
ケーブルカバー対は、ケーブルの方向を所望の通りに変えることができるように、適用要求事項に適合させることができる。ケーブルの設置性は、利用可能なスペースに応じて異なる場合がある。よって、ハウジング本体にヒンジ接続され得るケーブルカバー対を有することにより、ケーブルカバーの向きを適用環境に適合させることができる。さらに、ケーブルカバー対は、動作位置においてケーブルを特に直接的に支持するように構成されたケーブル支持スリーブを形成する。ゆえに、ケーブルカバー対は、ケーブルのための歪みの緩和をさらにもたらし、電気コネクタの電気的および機械的な完全性および全体的な性能を確保する。ケーブルカバーは、ケーブルの外部に印加される機械的な力が電気コネクタ内のケーブルの電気的終端部に伝達されることを直接的に防止する。本発明のハウジングは、開口部に対して様々な方向に向けられるように容易に適合することができる、歪みの緩和のための二部分構成のケーブル支持スリーブを提供する。
【0006】
本発明は、それぞれの技術的効果に関して互いに独立であり、任意に組み合わせることが可能な以下の特徴によってさらに改善することができる。
【0007】
本発明の第1の実施形態によれば、ケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、挿入方向に垂直な向きのそれぞれの回転軸を中心として回動するように適合されてよい。それぞれの回転軸は、開口部の対向し合う側において互いに平行に配置されてよい。したがって、ケーブルカバー対の各ケーブルカバーがケーブルカバー対の他方のケーブルカバーから離れるように回動されている装着位置において、ケーブルカバーは、開口部から離れるように回動されていてもよく、ゆえに、電気ケーブルの装着が容易になる。
【0008】
電気ケーブルは、装着位置において開口部に挿入され得る電気コネクタに設置されてよい。電気コネクタは、所定の位置においてケーブルの単線が挿入され得るワイヤオーガナイザを備えてよい。電気コネクタは、ケーブルのワイヤが終端され得る終端装置であってよい。終端装置は、ハウジング本体の開口部に挿入されてよく、プラグ端子などのさらなるコネクタ要素に接続されてよい。
【0009】
ハウジング本体は、好ましくは電気絶縁性材料から形成されてよい。ハウジング本体は、射出成形によって形成されてよく、それにより、コスト効率の高い製造、特に大量製造が可能となる。ハウジング本体は、空洞を有していてよく、空洞は、電気ケーブルおよび/または電気コネクタを受けるために、挿入方向においてハウジング本体の開口端に向かって開口する。
【0010】
ケーブルカバー対は、ハウジング本体の開口端においてハウジング本体に取り付けられてよい。したがって、ケーブルカバーは、ハウジング本体の長さにわたって延びている必要がなく、よってケーブルカバーの製造に要する材料がより少なくなる。
【0011】
さらなる有利な態様において、ケーブルカバー対の少なくとも1つのケーブルカバー、好ましくはケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、動作位置においてケーブルのケーブル編組線に接触し、ケーブルのケーブル編組線を接地するように構成された少なくとも1つの接地ばねを備えてよい。少なくとも1つの接地ばねは、ケーブルカバー対の他方のケーブルカバーに面するケーブルカバー対のそれぞれのケーブルカバーの内面に装着されてよい。
【0012】
動作位置においてケーブル編組線の均一な接触が実現されるように、複数の接地ばねがそれぞれのケーブルカバーの内周にわたって配置されてよい。
【0013】
ケーブルカバー対の少なくとも1つのケーブルカバー、好ましくはケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、動作位置においてケーブルおよび/または電気コネクタを開口部にロックするための少なくとも1つの固定ラッチを備えてよい。固定ラッチは、振動を補償するように適合された、動作位置において少なくとも部分的に開口部内へと延び得る固定ばねとして形成されてよい。固定ラッチは、動作位置にあるときに、挿入方向に垂直な開口部の断面と少なくとも部分的に重なっていてよく、それにより、ケーブルおよび/または電気コネクタが挿入方向と平行に移動することを阻止する。好ましくは、固定ラッチは、装着位置において開口部から離れるように回動されていてよく、それにより、電気コネクタおよび/またはケーブルを開口部に容易に挿入することが可能となる。
【0014】
少なくとも1つの固定ラッチは、動作位置において電気コネクタに押し当たるように適合されてよく、それにより、電気コネクタが開口部を通してハウジング本体へとさらに案内される。法線力(normal force)が、電気コネクタに押し当たるように固定ラッチに働いていてよい。法線力は、それぞれのケーブルカバーを介して、ケーブルカバーがコネクタ本体にヒンジ接続されているそれぞれのベアリングに伝達され得る。ベアリングは、コネクタ本体の開口部に面する側に導電要素を備えてよい。よって、導電要素は、前記法線力によって電気コネクタに押し当てられてよく、それにより、さらなるシールド作用をコネクタにもたらす。少なくとも1つの固定ラッチおよび少なくとも1つの接地ばねは、一体的な構成要素(monolithic component)として互いに一体に形成されてよい。少なくとも1つの固定ラッチおよび少なくとも1つの接地ばねは、例えば、ケーブルカバー対のそれぞれのケーブルカバーに固定的に留め付けられたばね本体から突出していてよい。ハウジングにおける別個の部品の量をさらに低減する。
【0015】
ケーブルカバーは、所定のケーブル直径に適合されてよい。これは、動作位置において、形成されたケーブル支持スリーブが、実質的に精密に嵌合してケーブルを受けるように適合されることを意味する。
【0016】
しかしながら、約3.8mm~約8.0mmなどのより広範なケーブル直径にケーブルカバー対を適用可能とするために、ケーブルカバー対の少なくとも1つのケーブルカバー、好ましくはケーブルカバー対の各ケーブルカバーには、動作位置においてケーブルカバー対の対向するケーブルカバーに向かって付勢されている少なくとも1つの歪み緩和ばねが設けられてよい。少なくとも1つの歪み緩和ばねは、ケーブル直径に適応する弾性的な有効断面を動作位置において画定することにより、様々なケーブル直径を補償するように適合されてよい。
【0017】
少なくとも1つの歪み緩和ばねおよび少なくとも1つの接地ばねは、一体的な構成要素(monolithic component)として互いに一体に形成されてよい。少なくとも1つの歪み緩和ばねおよび少なくとも1つの接地ばねは、折り曲げて成形された打ち抜き金属薄板として形成されてよい。少なくとも1つの歪み緩和ばねおよび少なくとも1つの接地ばねは、それぞれのケーブルカバーに留め付けられ得るばね本体から折り曲げられたラッチとして形成されてよい。
【0018】
少なくとも1つの歪み緩和ばねおよび少なくとも1つの固定ラッチは、一体的な構成要素(monolithic component)として互いに一体に形成されてよい。少なくとも1つの歪み緩和ばねおよび少なくとも1つの固定ラッチは、折り曲げて成形された打ち抜き金属薄板として形成されてよい。少なくとも1つの歪み緩和ばねおよび少なくとも1つの固定ラッチは、ばね本体から折り曲げられたラッチとして形成されてよい。少なくとも1つの歪み緩和ばねおよび少なくとも1つの固定ラッチは、ばね本体の対向し合う端部に形成されてよく、それにより、少なくとも1つの固定ラッチは、それぞれのケーブルカバーの近位端に配置されてよい。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つの接地ばね、少なくとも1つの固定ラッチおよび少なくとも1つの歪み緩和ばねは、一体的な構成要素(monolithic component)として互いに一体に形成されてよい。これら3つの各々は、動作位置において、ケーブルカバーに固定され得るばね本体から、ケーブルカバー対の対向するケーブルカバーに向かって突出していてよい。少なくとも1つの接地ばねは、ばね本体の側方から突出する羽として形成されてよく、一方で少なくとも1つの固定ラッチは、好ましくはそれぞれのケーブルカバーの近位端に配置されてよい。少なくとも1つの歪み緩和ばねは、好ましくはそれぞれのケーブルカバーの遠位端に位置していてよい。この有利な実施形態では、固定、接地、および歪みの緩和の全てが一体的な構成要素(monolithic component)によって提供され、それによりハウジングにおける別個の部品の量が低減する。
【0020】
少なくとも1つの歪み緩和ばねは、少なくとも1つの歪み緩和ばねを折り曲げることにより形成されるアーチを備えてよい。アーチは、ケーブル直径に適応するために、少なくとも1つの歪み緩和ばねが、動作位置においてケーブルカバー対の対向するケーブルカバーから離れるように屈曲する屈曲部を形成してよい。アーチは、好ましくはそれぞれのケーブルカバーの凹部に配置されてよく、それにより、アーチが屈曲するためのスペースがもたらされる。凹部は、例えば、ケーブルカバーの内面に形成されてもよく、あるいは代わりにケーブルカバーの切抜き部として形成されてもよい。この配置により、ハウジングの寸法、特にケーブルカバー対の寸法を増大させる必要なく、少なくとも1つの歪み緩和ばねが屈曲することが可能となる。その結果、ケーブル直径が大きいほど、凹部、特に切抜き部を通してケーブルカバーから外側に歪み緩和ばねが大きく屈曲し得る。
それにより、ケーブルカバーに受けられ得るケーブル直径の多様性がさらに増大する。ケーブルカバー対のうちの少なくとも1つのケーブルカバーは、ケーブルカバーの内面から突出し、ケーブルカバーの頂部と底部との間の有効幅を低減する少なくとも1つの位置決めリブを備えてよい。好ましくは、各ケーブルカバーには、前記ケーブルカバーの頂部および底部に位置決めリブが設けられ、それにより中央開口部が形成される。位置決めリブは、ハウジング本体の開口部の反対を向く、ケーブルの絶縁体が当接し得る当接面を提供してよい。したがって、ケーブルの挿入深さを制限することができる。少なくとも1つの位置決めリブは、ケーブルカバー対の内部におけるケーブル編組線の精密性をさらに増大させることができ、それにより、少なくとも1つの接地ばねとケーブル編組線との間の接触を確実にする。
【0021】
ハウジング本体には、コネクタに形成された突出部を受けるように適合された案内ノッチまたは案内レールなどの極性付け要素(polarisation element:誤挿入防止用要素)が設けられてよい。少なくとも1つの案内ノッチまたは案内レールは、ハウジング本体の開口部に面していてよく、挿入方向に垂直なハウジング本体の中央軸から離れていてよい。したがって、開口部は、挿入方向に垂直な平面において非対称な断面を有していてよい。
【0022】
さらなる有利な態様によれば、ケーブルカバー対のうちの少なくとも1つのケーブルカバー、好ましくはケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、動作位置においてケーブルカバー対の他方のケーブルカバーにおける受けノッチへと案内されるように適合されている案内突出部を備えてよい。案内突出部は、動作位置においてケーブルカバー対の他方のケーブルカバーに向かって周方向に突出していてよい。受けノッチは、好ましくはそれぞれの案内突出部と相補的に形成されてよい。案内突出部および受けノッチは、ケーブルカバー間での、特に装着位置から動作位置への移動を案内するための案内アセンブリを形成してよく、それによりケーブルカバー対の位置ずれを防止する。
【0023】
動作位置においてケーブルカバー対をロックするように適合されているロックナットが設けられてよい。ケーブルカバー対は、少なくともケーブルカバー対が動作位置にあるときに、ロックナットに受けられるように適合されてよい。ロックナットは、ロック位置において少なくとも部分的にケーブルカバー対の周囲に外装されてよく、それにより、ケーブルカバー対が互いから離れるように回動することを防止する。
【0024】
ケーブルカバーの遠位端は、ケーブルカバーが完全には動作位置にない場合であっても、ロックナットへの容易な挿入を可能とするように先細り形状であってよい。よって、片手でケーブルカバーを互いに押し付ける必要なく、ロックナットをケーブルカバーの上に押し込むことができる。ケーブルカバーをロックナットに挿入することにより、ロックナットがケーブルカバーを互いに向かって自動的に押し付け、それらを動作位置へと導く。その結果、片手での容易な設置が可能となり、それにより設置のためのスペース要求がさらに小さくなる。
【0025】
ロックナットおよびケーブルカバーは、ロックナットをケーブルカバーに対してロックするためのロックアセンブリを形成してよい。例えば、ケーブルカバーは、ロックナットがねじ込まれ得るねじ切り部を備えてよい。
【0026】
しかしながら、差し込み式ロックアセンブリ(バヨネット式ロックアセンブリ)により、容易かつ省スペースなロックアセンブリが形成されてもよい。差し込み式ロックアセンブリにより、単純にひねる動作による容易なロックが可能となり、既存の適用例において提供されているスペースを越えないことが確実になる。ねじ込み式の構成要素と対比して、ケーブルカバーを互いに押し付けるときに厳密に向きを合わせる必要がない。
【0027】
ケーブルカバー対の少なくとも1つのケーブルカバーに対するナットのロック係合を安定させるための少なくとも1つのロック突出部が設けられてよい。好ましくは、少なくとも1つのロック突出部は、ロックナットの内面に形成されてよい。ロック突出部は、ケーブルカバーにおける相補的に形成されたロック凹部と係合してよく、それにより、ロックナットをケーブルカバーに対してロックする。
【0028】
さらなる有利な実施形態において、ロックナットには、ロックナットの内面から径方向に突出する少なくとも2つのロック突出部が設けられてよい。少なくとも2つのロック突出部は、好ましくは互いに正反対に配置されてよい。各ロック突出部は、ケーブルカバー対の異なるケーブルカバーと係合するように適合されてよい。したがって、ロックナットを各ケーブルカバーに対してロックすることができ、それにより、ケーブルカバーがロックナットを介して動作位置において互いに対してさらに固定的にロックされる。
【0029】
ケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、少なくとも動作位置において互いに反対を向くそれぞれの外面に案内溝を備えてよい。案内溝は、それぞれのケーブルカバーの遠位端から近位端に向かって延びていてよく、近位端に向かって先細りになっていてよい。したがって、案内溝は、それぞれのロック突出部をキャッチするための口を遠位端に形成してよく、それにより、それぞれのケーブルカバーおよびロックナットが完全に位置合わせされていない場合であっても、それぞれのケーブルカバーをロックナットに容易に挿入することが可能となる。ロックナットをそれぞれのケーブルカバーの上に押し込むことにより、ロック突出部が先細りの案内溝に沿って摺動し、その結果、ロックナットがケーブルカバーに対して自動的に再位置合わせされる。
【0030】
案内溝およびロック凹部は、実質的にL字形状を形成するように少なくとも1つのケーブルカバーの周囲に沿って互いに隣接して配置されてよく、それにより、L字形状の縦棒がロック凹部により形成され、L字形状の横棒が案内溝により形成される。ロック突出部がロック凹部に挿入されると、形状篏合(ポジティブフィット)が形成され、それにより、挿入方向と平行な方向におけるそれぞれのケーブルカバーおよびロックナットの相対移動が阻止される。
【0031】
それぞれのケーブルカバーから径方向に突出するロックリブが、案内溝とロック凹部との間に設けられてよい。ロックリブは、ロック突出部が振動などの動きによってロック凹部から意図せず抜け出ることを防止し得る。よって、ロックリブは、ロックナットのそれぞれのケーブルカバーへのロック係合をさらに安定させ得る。
【0032】
ロックリブは、案内溝に向かって傾斜していてよく、それにより、ロック突出部が案内溝からロックリブの上でロック凹部へと容易に移動することを可能とする傾斜面を形成する。ロックリブは、ロック凹部に面する、ケーブルカバーから径方向に延びる、すなわちロック凹部に実質的に垂直に延びる当接面を備えてよい。したがって、ロック突出部は、ロック凹部から案内溝に向かって移動するときに当接面に当接し、それにより、それ以上の移動が制限される。
【0033】
ハウジングの保持耐力(retention-withstanding force)をさらに高めるために、ロックナットは、好ましくはケーブルと平行に延びるように適合されてよい。これは、ロックナットの位置においてロックナットがケーブルを折り曲げないことを意味する。
【0034】
ロックナットは、好ましくは六角形または八角形などの多角形の断面を有していてよく、それにより、レンチなどの相補形の器具によって操作されるように適合される。これにより、ロックナットに手が届かないような狭いスペースであっても、ロックナットを操作することが可能となる。
【0035】
ロックナットは、少なくとも1つのロック突出部の位置を決定するための信号を有していてよい。信号は、例えば、ロックナットの内面に形成されたロック突出部に対応する、ロックナットの外面における視覚的マークであってよい。よって、マークを見ることにより、ロックナットおよびケーブルカバー対の相対的な回転方向位置を決定することができ、それにより、より容易な設置が可能となる。
【0036】
ケーブルカバー対および/またはロックナットは、好ましくは、例えば射出成形プロセスにより、絶縁性材料から形成されてよく、それにより、ケーブルカバー対および/またはロックナットのコスト効率の高い製造、特に大量製造が可能となる。
【0037】
ケーブルカバー対は、ハウジングの挿入方向に垂直ないずれの側にもヒンジ接続されるように適合されてよい。その結果、構造的に同一なケーブルカバー対がハウジングに装着されてよく、それにより、挿入方向に対して反対方向に向くケーブル支持スリーブが形成される。
【0038】
ケーブルカバー対は、挿入方向に開口するケーブル支持スリーブを形成するように適合されてよく、それにより、ケーブルカバー対の各ケーブルカバーは、好ましくは構造的に同一に形成されてよい。したがって、ケーブルカバー対の製造に必要な型が1つのみになり、それにより、製造プロセスがさらに容易になり、製造効率が増大する。
【0039】
代替的に、ケーブルカバー対は、挿入方向に対して、例えば90°の角度、45°の角度、または45°~90°の間のいずれかなどの角度を付けた向きのケーブル引出口を有するケーブル支持スリーブを形成するように適合されてもよい。挿入方向に対するケーブル支持スリーブのケーブル引出口の方向は、ケーブルカバー対の構造によって決定されてよい。よって、ケーブルカバー対の各ケーブルカバーがハウジングにヒンジ接続され得るケーブルカバー対を提供することにより、ハウジングを適用環境に適合させるための複数の自由度が提供される。単に特定のケーブルカバー対を選定することにより、挿入方向に対するケーブル支持スリーブのケーブル引出口の方向および/または角度方向を決定することができる。
【0040】
さらなる有利な実施形態によれば、本発明に係る少なくとも2つのハウジングを備えるセットが提供されてよい。少なくとも2つのハウジングは、同一構造のハウジング本体および異なる対のケーブルカバーを備えてよく、ケーブルカバーは、開口部の反対側の遠位端においてケーブル引出口を有するケーブル支持スリーブを動作位置において形成する。異なる対のケーブルカバーのケーブル引出口は、挿入方向に対して異なる向きであってよい。
【0041】
以下、本発明に係るハウジングについて、例示的実施形態を示す添付の図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0042】
図面において、機能および/または構造に関して互いに対応する要素には、同じ参照符号が用いられている。
【0043】
様々な態様および実施形態の説明によれば、図面に示す要素は、その要素の技術的効果が特定の適用例に必要ない場合には省略することができ、逆もまた然りである。すなわち、図示されていないまたは図面に関して説明されていないが上記で説明している要素は、その特定の要素の技術的効果が具体的な適用例において有利である場合には追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明に係るハウジングの模式的な分解図を示す。
図2】装着位置における本発明に係るハウジングの模式的な斜視図を示す。
図3】異なる対のケーブルカバーを有する動作位置における本発明に係るハウジングの模式的な斜視図を示す。
図4】本発明に係るハウジングからの、ケーブルカバーの例示的実施形態の模式的な斜視図を示す。
図5】本発明に係るハウジングからの、ロックナットの例示的実施形態の模式的な斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
まず、本発明のハウジング1について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明に係るハウジング1の例示的実施形態の模式的な分解図を示し、図2は、装着位置2におけるハウジング1の模式的な斜視図を示す。
【0046】
ハウジング1は、電気コネクタ4に適合され、ハウジング本体6と、挿入方向Iにおいて電気ケーブル10を受けるように構成された開口部8とを有する。ケーブルカバー対12が、開口部8から離れるように延びるケーブルカバー対12のそれぞれのケーブルカバー16の近位端14においてハウジング本体6にヒンジ接続されている。図2に示すケーブル装着位置2において、ケーブルカバー対12の各ケーブルカバー16は、ケーブルカバー対12の他方のケーブルカバー16から離れるように回動されており、それにより、挿入方向Iにおいて電気ケーブル10を開口部8に挿入することが可能となる。
【0047】
ハウジング本体6には、極性付け要素9が設けられていてよい。この例示的実施形態において、極性付け要素9は、開口部8の入口から挿入方向Iに延びる2つの案内ノッチ11によって形成されている。電気コネクタ4は、それぞれのノッチ11に受けられるように適合された突出部を備えてよい。したがって、突出部が案内ノッチ11と位置合わせされているときにのみ、電気コネクタ4を挿入方向Iにおいて開口部8に挿入することができる。案内ノッチ11は、開口部8が挿入方向Iに実質的に垂直な平面において非対称な断面を有するように、互いに対向して配置され、挿入方向Iに実質的に垂直な中間軸から離隔されることが好ましい。断面が非対称であることにより、開口部8に挿入可能な電気コネクタ4の向きが予め決定される。これにより、接続システムをさらにフールプルーフ化(fool-proof)することができる。もちろん、案内レールまたはリブなど、極性付け要素9の異なる実施形態が構想されてもよい。
【0048】
ケーブル10は、絶縁体18と、絶縁体18の下に同軸で配置されたケーブル編組線20とを備えてよい。ケーブル10は、ハウジング本体6の開口部8に挿入されたワイヤオーガナイザ24において終端している複数のワイヤ22をさらに備えてよい。
【0049】
ケーブル10は、ケーブルカバー対12が動作位置(図3参照)における歪みの緩和をもたらし得るように、所定のケーブル直径26を有することが好ましい。
【0050】
ハウジング本体6は、開口部8の対向し合う側に配置された2つの孔30の形態であるベアリング28を備える。それにより、孔30は、互いに同軸で配置され、挿入方向Iに実質的に垂直な回動軸32を形成する。開口部8の他方の側には、第2のベアリング28が設けられ、第1の回動軸32と実質的に平行に延びる第2の回動軸32を形成する。
【0051】
ケーブルカバー対12の各ケーブルカバー16は、対向し合うラッチ36に形成された、それぞれの孔30に嵌合して挿入されるように適合されたピン34を備える。したがって、ケーブルカバー対12の一方のケーブルカバー16は、ベアリング28の一方にヒンジ接続されてよく、ケーブルカバー対12の他方のケーブルカバー16は、他方のベアリング28にヒンジ接続されてよい。
【0052】
孔30は、開口部8に向かって閉じていてよい。開口部8に面する側における閉じた孔30において、導電要素37が設けられてよい。導電要素37は、膨出部を形成しており、コネクタ4が挿入されたときに電気コネクタ4に接触するように適合されている。よって、導電要素37は、コネクタ4のためのさらなるシールドとして機能してよい。導電要素は、閉じた孔30に形成されてもよく、またはそれ自体が孔30を閉じていてもよい。
【0053】
ベアリング28は、ケーブルカバー16が回動して他方のケーブルカバー16から離れ過ぎることを阻止し得るブロック面40を形成する、ハウジング本体6の窪み38に形成される。好ましくは、ヒンジ接続されたケーブルカバー16は、図2に示す装着位置2から図3に示す動作位置まで約90°の角度で回動可能であってよい。よって、装着位置2において、ケーブルカバー対16は、ケーブル10の開口部8への挿入を妨げない。
【0054】
図2において分かるように、ケーブルカバー対12の各ケーブルカバー16は、動作位置において他方のケーブルカバー16に面する内面48に装着された接地ばね42、固定ラッチ44および歪み緩和ばね46を備えてよい。接地ばね42、固定ラッチ44および歪み緩和ばね46は各々、一体的な構成要素(monolithic component)50として、例えば板ばねとして、互いに一体に形成されている。
【0055】
一体的な構成要素(monolithic component)50は、それぞれのケーブルカバー16の内面48に堅固に装着されたばね本体52を備える。ばね本体52は、ケーブルカバー対12のそれぞれのケーブルカバー16の近位端14からそれぞれのケーブルカバー16の遠位端55まで延びていてよい。近位端14において、ばね本体52には固定ラッチ44が設けられていてよく、これはばね本体52から約90°に折り曲げられていてよい。固定ラッチ44は、固定ラッチ44が挿入方向Iに垂直な平面における開口部8の断面54と重なるように、開口部8内に延びるように適合される。したがって、動作中に電気コネクタ4、例えばケーブルオーガナイザ56を固定ラッチ44によって開口部8に固定することで、振動等によって電気コネクタ4およびハウジング1が外れることを阻止することができる。
【0056】
固定ラッチ44は、好ましくは、装着位置2において開口部8から離れるように回動されるように適合されてよく、それにより、ケーブル10および/または電気コネクタ4が開口部8に自由に通過することが可能となる。ケーブルカバー対12が互いに向かって回動されている動作位置64において、固定ラッチ44は、電気コネクタ4に当接し、電気コネクタ4を挿入方向Iに沿ってさらに開口部8に押し込んでいてよい。その結果、固定ラッチ44は、法線力によって電気コネクタ4に押し付けられ、この法線力は、ケーブルカバー16を介して、ベアリング28に押し込むようにピン34に伝達され得る。したがって、導電要素37は、前記法線力によって電気コネクタ4に向かって押圧され、コネクタ4のためのさらなるシールド機能を提供する。
【0057】
電気ケーブル10を接地するために、接地ばね42がケーブルカバー対12の各ケーブルカバー16に設けられる。接地ばね42は、それぞれのケーブルカバー16の近位端14におけるばね本体52の側方から、ばね本体52から羽として延びていてよい。この例示的実施形態においては、各ケーブルカバー16に、接地のために各接地ばね42をケーブル10のケーブル編組線20の下に押し込むことができるように周囲に沿って配置された2つの接地ばね42が設けられている。接地ばね42は、近位端14から遠位端55に向かって延び、挿入された場合のケーブル10に向かって接地ばね42が付勢されるように、少なくとも動作位置においてケーブルカバー対12の他方のケーブルカバー16に向かって斜めに突き出ていてよい。その結果、接地ばね42は、ケーブル10によって弾性的に屈曲してよく、それによりケーブル直径26に適応する。これにより、約3.8mm~約8.0mmなど、より広範なケーブル直径26の接地が可能となる。
【0058】
遠位端55において、ばね本体52は、近位端14に向かってアーチ状に戻り、歪み緩和ばね46を形成していてよい。ばね本体52は、歪み緩和ばね46が、ケーブルカバー対12の対向するケーブルカバー16に向かって斜めに延びるばね舌部として形成され得るように、約120°のアーチ状になっていてよい。よって、歪み緩和ばね46は、ケーブル10に向かって付勢されるように適合され、約3.8mm~約8.0mmなどのより広範なケーブル直径について歪みの緩和をもたらしてよい。それぞれのケーブルカバー16に切抜き部58を設け、歪み緩和ばね46の屈曲部(deflection section:偏向部)62を形成するアーチ60が切抜き部58に配置されるようにすることにより、コンパクトな設計が実現されてよい。この配置では、ハウジング1、特にケーブルカバー対12の全体的な寸法を増大させることなく、歪み緩和ばね46が屈曲するためのスペースがもたらされる。その結果、ケーブル直径が大きいほど、歪み緩和ばね46が切抜き部58を通して径方向外方にさらに屈曲する。
【0059】
歪み緩和ばね46は、より広範なケーブル10に歪みの緩和をもたらすように適合されることで、ハウジング1の適用性を高め、ケーブル10の外部に印加される機械的な力がハウジング1内の電気的終端部に伝達されて故障を生じさせ得ることを防止する。
【0060】
ハウジング1内で電気ケーブル10が適正な位置にあることを確実にするために、ケーブルカバー16は、ケーブルカバー16の内面48から突出する少なくとも1つの位置決めリブ63を備えてよい。好ましくは、ケーブルカバー対12の各ケーブルカバー16が、互いに対向して配置された2つの位置決めリブ63を備え、それにより、それらの位置決めリブ63は、少なくともケーブルカバー対16が互いに向かって回動されたときに、ケーブルカバー対16の光直径を低減する。したがって、少なくとも1つの位置決めリブ63は、電気ケーブル10の絶縁体18が当接し得る、開口部8の反対を向く当接面65を提供してよい。ケーブル10の挿入深さを制限し、接地ばね42が動作位置64においてケーブル編組線20に接触することを確実にする。図3では、本発明に係るハウジング1の2つの例示的実施形態を動作位置64において示す。
実線で示した第1の実施形態において、ケーブルカバー対12は、挿入方向Iおよび開口部8と平行に開口するケーブル引出口67を有するケーブル支持スリーブ66を形成する。ケーブルカバー16の互いに向かっての移動を案内するために、ケーブルカバー対12の一方のケーブルカバー16から周方向に延びる案内突出部68が設けられる。案内突出部68は、ケーブルカバー対12の他方のケーブルカバー16における、好ましくは相補的に形成された受けノッチ70へと案内されるように適合されてよい。
【0061】
点線で図示した第2の実施形態は、ケーブルカバー対12が、挿入方向Iおよび開口部8に実質的に垂直に向けられたケーブル引出口67を有する、約90°の角度が付いたケーブル支持スリーブ66を形成する。ケーブル10がケーブル支持スリーブ66に入るべき挿入方向Iに対する向きに応じて、それぞれのケーブルカバー対12が設けられてよい。ハウジング本体6は、各実施形態において構造的に同一のままであってよく、それにより、ハウジング1の容易かつコスト効率の高い大量製造が可能となる。同一構造のヒンジ、すなわちハウジング本体6のベアリング28およびそれぞれのケーブルカバー16のピン34を有することにより、角度が付いたケーブルカバー対16の向きを変えて各ケーブルカバー16をハウジング本体6のいずれの側にも取り付けることできる。
その結果、図3に示す第2の実施形態の各ケーブルカバー16の位置を入れ替えることにより、ケーブル支持スリーブ66を、図3に示す第2の実施形態に対して反対方向に向けることができる。
【0062】
ケーブルカバー対12を動作位置64に保持するために、ロックナット72が設けられてよい。ロックナット72は、動作位置64においてケーブルカバー対12を少なくとも部分的に受けるように適合されてよく、それにより、ケーブルカバー16が互いから離れるように回動することを阻止する。
【0063】
ハウジング1の保持耐力をさらに高めるために、ロックナット72は、好ましくはケーブル10と平行に延びるように適合されてよい。これは、ロックナット72がケーブル10を折り曲げないことを意味する。換言すると、ロックナット72は、ロックナット72の位置におけるケーブル10と同軸で延びていてよい。
【0064】
好ましくは、ロックナット72およびケーブルカバー対12は、ロックナット72をケーブルカバー対12に対してロックするための差し込み式ロックアセンブリ(バヨネット式ロックアセンブリ)74を備える。
【0065】
差し込み式ロックアセンブリ74は、単純にひねり、ロックナット72の最終位置の向きを厳密に定めることにより、容易なロックを確実にし得る。これにより、既存の適用例において提供されているスペースを越えないことが確実になる。特に、ねじ込み式のロックアセンブリと比較して、差し込み式ロックアセンブリ74は、特に狭いスペースにおいて、より容易なロックを可能とする。ねじ込み式のロックアセンブリ74においては、ケーブルカバー対12をケーブルカバー12のねじ山に係合可能なようにロックナット72に対して完全に位置合わせする必要がある。よって、ケーブルカバー対12を、ロックナット72にねじ込みながら、片手で互いに押し付けて厳密に位置合わせされた状態に保持する必要がある。
【0066】
差し込み式ロックアセンブリ74について、図3図4および図5を参照して、さらに詳細に説明する。図4は、ケーブルカバー対12のケーブルカバー16の斜視図を示し、図5は、本発明に係るロックナット72の斜視図を示す。
【0067】
図3および図4において分かるように、ケーブルカバー16は、好ましくは、ケーブルカバー対12のケーブルカバー16が互いに完全に押し付けられていない場合であっても、ロックナット72を遠位端55の上で摺動させることが可能な先細り形状の遠位端55を備えてよい。ロックナット72をケーブルカバー対12の上に押し込むことにより、ケーブルカバー対16のケーブルカバー16は、自動的に互いに押し付けられてよく、それにより、動作位置64においてハウジング1をロックすることがさらに容易になる。
【0068】
ケーブルカバー対12の各ケーブルカバー16は、少なくとも動作位置64において互いに反対を向くそれぞれの外面に案内溝76を備えてよい。案内溝76は、それぞれのケーブルカバー16の遠位端55から近位端14に向かって延びていてよく、近位端14に向かって周方向に先細りになっていてよい。したがって、案内溝76は、それぞれのロック突出部78をキャッチするための口を遠位端に形成してよく、それにより、それぞれのケーブルカバー16およびロックナット72が完全に回転方向に位置合わせされていない場合であっても、それぞれのケーブルカバー16をロックナット72に容易に挿入することが可能となる。ロックナット72をそれぞれのケーブルカバーの上に押し込むことにより、ロック突出部78が先細りの案内溝76に沿って摺動し、その結果、ケーブルカバー16がロックナット72に対して自動的に再位置合わせされる。
【0069】
ケーブルカバー16は、ケーブルカバー16の近位端14に近い方の端部において案内溝76と周方向に隣接するように配置されたロック凹部80をさらに備えてよい。したがって、ロックナット72のロック突出部78は、当接するまで案内溝76に沿って押し込まれ、次いで単純にひねり動かすことによりロック凹部80に入れられてよい。ロック突出部78およびロック凹部80は、挿入方向Iと平行な方向における形状篏合(ポジティブフィット)によるロック動作を形成してよい。
【0070】
それぞれのケーブルカバー16から径方向に突出するロックリブ82が、案内溝76とロック凹部80との間に設けられてよい。ロックリブ82は、ロック突出部78が振動などの動きによってロック凹部80から意図せず抜け出ることを防止し得る。よって、ロックリブ82は、ロックナット72のそれぞれのケーブルカバー16へのロック係合をさらに安定させ得る。
【0071】
ロックリブ82は、案内溝76に向かって傾斜していてよく、それにより、ロック突出部78が案内溝76からロックリブ82の上でロック凹部80へと容易に移動することを可能とする傾斜面を形成する。ロックリブ82は、ロック凹部80に面する、ケーブルカバー16から径方向に延びる、すなわちロック凹部80に実質的に垂直に延びる当接面84を備えてよい。したがって、ロック突出部78は、ロック凹部80から案内溝76に向かって移動するときに当接面84に当接し、それにより、それ以上の移動が制限される。
【0072】
ロックナット72は、ロックナット72の内面から径方向内方に突出する2つのロック突出部78を備えることが好ましい。ロック突出部78およびロックナット72は、互いに一体に形成されてよい。よって、ロック突出部78およびロックナット72は、射出成形などの単一の製造工程でコスト効率高く製造することができる。
【0073】
2つのロック突出部78は、互いに正反対に配置され、各ロック突出部78は、ケーブルカバー対12の異なるケーブルカバー16のロック凹部80に挿入されるように適合されてよい。換言すると、ケーブルカバー対12の各ケーブルカバー16は、2つのロック突出部78の一方を受けるように適合されてよい。よって、ケーブルカバー対12の両方のケーブルカバー16が、ロックナット72に対してロックされてよい。
【0074】
ロックナット72は、図3および図5に示すような八角形、または六角形など、多角形の外形を有していてよい。代替的にまたは追加的に、ロックナット72は、ロックナット72をより容易に操作するための把持機能を有する、ロックナット72の外面から突出するハンドルバー、すなわちリブを備えてよい。多角形の外形により、例えば相補形のレンチなどの器具を用いて、ロックナット72を容易に操作することが可能である。よって、例えばスペースの制約によってロックナット72に手が届かない場合に、ロックナット72をロックおよび/またはロック解除することを可能とする。
【0075】
ケーブルカバー対12に対するロックナット72の相対的な回転方向位置を決定するために、ロックナット72は、ロックナット72の外面にマーク86を備えてよい。ゆえに、ロックナット72およびケーブルカバー対12の状態、すなわちロック状態またはロック解除状態を、容易に決定することができる。さらに、ロック突出部78が案内溝76に沿って摺動するように、ロックナット72をケーブルカバー対12に対して適正な回転方向位置に配置することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 ハウジング
2 装着位置
4 電気コネクタ
6 ハウジング本体
8 開口部
9 極性付け要素
10 電気ケーブル
11 案内ノッチ
12 ケーブルカバー対
14 近位端
16 ケーブルカバー
18 絶縁体
20 ケーブル編組線
22 ワイヤ
24 ワイヤオーガナイザ
26 ケーブル直径
28 ベアリング
30 孔
32 回動軸
34 ピン
36 ラッチ
37 導電要素
38 窪み
40 ブロック面
42 接地ばね
44 固定ラッチ
46 歪み緩和ばね
48 内面
50 一体的な構成要素
52 ばね本体
54 断面
55 遠位端
56 ケーブルオーガナイザ
58 切抜き部
60 アーチ
62 屈曲部
63 位置決めリブ
64 動作位置
65 当接面
66 ケーブル支持スリーブ
67 ケーブル引出口
68 案内突出部
70 受けノッチ
72 ロックナット
74 差し込み式ロックアセンブリ
76 案内溝
78 ロック突出部
80 ロック凹部
82 ロックリブ
84 当接面
86 マーク
I 挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5