(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】コンクリートスラリー処理装置
(51)【国際特許分類】
B28C 7/16 20060101AFI20230605BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20230605BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20230605BHJP
【FI】
B28C7/16
C02F11/00 Z
B09B3/38
(21)【出願番号】P 2022021838
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】396000514
【氏名又は名称】モリ技巧株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森 照雄
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-221537(JP,A)
【文献】特開2000-237714(JP,A)
【文献】特開2008-087468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
C02F 11/00
B09B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラリーが入る水槽の底面部を略水平に形成し、該水槽に該底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、無端状に形成したコンベヤチェーンに複数のレーキを適宜間隔で取着し、該レーキが前記水槽の底面部から傾斜面部に亘って移動するように該コンベヤチェーンを巡回動させることで、該水槽の底面部に沈降した砂利,砂,セメントからなる固形物を該傾斜面部に掻き揚げるとともに、該水槽に設けられた水切ゲートから該水槽の上澄水を排出させるようにしたコンクリートスラリー処理装置であって、
前記固形物を流入させるため上面が開放された横断面U字形の容器を長手方向が該傾斜面部の傾斜方向に対し直交するように略水平に配設し、該容器内に螺旋状の攪拌羽根を該容器のU字形底面に沿うように設け、該攪拌羽根を回転駆動し前記固形物を攪拌することにより砂利と砂とセメントを混合させた後、該固形物を該容器から排出させ固化させるようにしたことを特徴とするコンクリートスラリー処理装置。
【請求項2】
前記攪拌羽根は前記容器の中心に横架された回転軸に捩り方向が異なる一対の螺旋状の羽根部材を左右対称に設けてなり、その両羽根部材の中間に相当する前記容器の底面部位に開口を形成し、該開口に開閉シャッターを設けてなることを特徴とする請求項1に記載したコンクリートスラリー処理装置。
【請求項3】
前記容器に新たなセメントを添加するためのセメント投入用ホッパーを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載したコンクリートスラリー処理装置。
【請求項4】
前記容器の開放上面の両端部と相対するようにセメント投入用ホッパーをそれぞれ設けるとともに、前記攪拌羽根は前記容器の中心に横架された回転軸に捩り方向が異なる一対の螺旋状の羽根部材を左右対称に設けてなり、その両羽根部材の中間に相当する前記容器の底面部位に開口を形成し、該開口に開閉シャッターを設けてなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載したコンクリートスラリー処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートミキサー車のドラムから排出された、砂利、砂、セメントを含む廃水(コンクリートスラリーまたはセメントスラッジともいう)を処理するためのコンクリートスラリー処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に生コン工場では、生コンを配送して帰ってきたコンクリートミキサー車をそのドラム内に水を注入して洗浄する必要があり、その際にドラム内に残っていた生コン(戻りコンという)がドラムから多量に排出される。
下記特許文献1~3は、こうして排出されたコンクリートスラリーを処理するための装置を示すもので、これらのコンクリートスラリー処理装置は、コンクリートスラリーを投入する水槽の底面部を略水平に形成し、該水槽に該底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、無端状に形成したコンベヤチェーンに複数のレーキを適宜間隔で取着し、該レーキが前記水槽の底面部から傾斜面部に亘って移動するように該コンベヤチェーンを低速度で巡回動させることで、該水槽の底面部に沈降した砂利,砂,セメントからなる固形物を該傾斜面部に掻き揚げて該傾斜面部の上端縁より外部に落下排出させるとともに、該水槽の側壁に設けられた水切ゲートから該水槽の上澄水を排出させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4277057号公報
【文献】特許第6456870号公報
【文献】特許第6643447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のコンクリートスラリー処理装置は、水槽内でセメントが水和反応により固結するのを防ぐために、上記コンベヤチェーンを昼夜を問わず巡回駆動させておく必要がある。このため、水槽内底部に沈降しやすい砂利や砂が真っ先に傾斜面部に掻き揚げられて該傾斜面部の上端縁より外部に落下排出され、その後にセメント成分が掻き揚げられる。このため、砂利,砂とセメントとが分離した状態で排出され、このように分離していると、セメントの水和反応でこれらが固結し難くなり、たとえ固結しても強度の弱いものとなるおそれがあった。このように、固結強度が弱い状態であると、コンクリート製品に成形したり路盤材として再利用することができず、廃棄物として処理するのも容易でないので、廃棄コストも高くなるといった問題があった。
本発明はこのような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明は、コンクリートスラリーが入る水槽の底面部を略水平に形成し、該水槽に該底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、無端状に形成したコンベヤチェーンに複数のレーキを適宜間隔で取着し、該レーキが前記水槽の底面部から傾斜面部に亘って移動するように該コンベヤチェーンを巡回動させることで、該水槽の底面部に沈降した砂利,砂,セメントからなる固形物を該傾斜面部に掻き揚げるとともに、該水槽に設けられた水切ゲートから該水槽の上澄水を排出させるようにしたコンクリートスラリー処理装置であって、
前記固形物を流入させるため上面が開放された横断面U字形の容器を長手方向が該傾斜面部の傾斜方向に対し直交するように略水平に配設し、該容器内に螺旋状の攪拌羽根を該容器のU字形底面に沿うように設け、該攪拌羽根を回転駆動し前記固形物を攪拌することにより砂利と砂とセメントを混合させた後、該固形物を該容器から排出させ固化させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
また本発明は上記コンクリートスラリー処理装置において、前記攪拌羽根は前記容器の中心に横架された回転軸に捩り方向が異なる一対の螺旋状の羽根部材を左右対称に設けてなり、その両羽根部材の中間に相当する前記容器の底面部位に開口を形成し、該開口に開閉シャッターを設けてなることを特徴とする。
【0007】
また本発明は上記コンクリートスラリー処理装置において、前記容器に新たなセメントを添加するためのセメント投入用ホッパーを設けたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は上記コンクリートスラリー処理装置において、前記容器の開放上面の両端部と相対するようにセメント投入用ホッパーをそれぞれ設けるとともに、前記攪拌羽根は前記容器の中心に横架された回転軸に捩り方向が異なる一対の螺旋状の羽根部材を左右対称に設けてなり、その両羽根部材の中間に相当する前記容器の底面部位に開口を形成し、該開口に開閉シャッターを設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
水槽から掻き揚げた砂、砂利、セメントからなる固形物を攪拌羽根によって攪拌するので、固形物が固結し易くなり、固結強度も上昇する。このため廃棄物としての処理コストを軽減できる。
また、新たにセメントを添加することによっては、さらに必要な強度を確保することができ、コンクリート製品としての再利用を可能にし、処理コストをさらに軽減させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態を示すコンクリートスラリー処理装置の外観側面図。
【
図2】本発明の実施形態を示すコンクリートスラリー処理装置の縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
コンクリートスラリーが投入される水槽1は、
図1、
図2に示したように鋼板製の両側板2,3と、後側板4と、水平な底面部5とからなる平面視長方形に形成され、上面が開放されている。そして、該水槽1の前縁に該底面部5から斜め上方に連なる傾斜面部6が形成され、該傾斜面部6は柱6a,6bによって水平面に対して約30度傾斜するように支持されている。なお、該傾斜面部6の両側縁には側壁板7,8が形成され、該傾斜面部6の上端縁には排出口9が形成される。
【0012】
また、水槽1の後部の両側板2,3間に支軸10を水平に横架し、該支軸10に所定間隔を離して一対のガイドホイール11を支持している。該水槽1の底面部5と傾斜面部6との境は緩やかに連なるように円弧面状に形成され、該円弧面状底面が位置する両側板2,3間に支軸12を水平に横架し、該支軸12に所定間隔を離して一対のガイドホイール13を支持している。また、
図3にも示すように、前記傾斜面部6の側壁板7,8の上端部付近に回転軸15を回転自在に軸支し、該回転軸15に所定間隔を離して一対のスプロケット16を固設するとともに、該回転軸15をモータと減速機とからなる駆動機構(図示せず)の回転出力軸に連携し、該駆動機構を作動させることで回転軸15が回転駆動され、スプロケット16が矢印の方向に低速で回転動されるようにしている。
【0013】
そして、一対の前記ガイドホイール11、ガイドホイール13、およびスプロケット16に、多数のリンクをそれぞれローラーを間に介して連鎖することにより無端状(環状)に形成してなるコンベヤチェーン17a,17bをそれぞれ巻掛している。なお、水槽1の上部両側板2,3間に該コンベヤチェーン17a,17bをスライド可能に支持する水平なガイド板18を設けている。そして、該コンベヤチェーン17a,17bの外周に適宜間隔で複数のレーキ19が取着され、前記スプロケット16を回転駆動すると、該コンベヤチェーン17a,17bが矢印の方向に巡回動し、該レーキ19が水槽1の底面部5と傾斜面部6に亘って矢印に示した方向に移動する。このため、水槽1の底面部に沈降した砂利,砂,セメント等の固形物は、該レーキ19によって順に該傾斜面部6に掻き揚げられて該傾斜面部6の上端縁の排出口9より外部に落下排出される。なお、wは水槽1に投入されたコンクリートスラリーの水面、sはレーキ19によって掻き揚げられる固形物を示す。
【0014】
また、
図2に示したように、水槽1を構成する一方の側板3の一部に該水槽1の上澄水を排出させるための水切ゲート20が設けられる。該水切ゲート20は、例えば上記特許文献1~3に記載されたように複数本の直管状のパイプ(円筒状部材)を横架状に段積してなるもので、該パイプの隙間から上澄水を水槽外に流出させる。
【0015】
21は前記排出口9の下方の地上部に平面視コ字上に形成されたコンクリート製のピット、22は該ピット内に配置された可搬性容器である。なお、該可搬性容器22は、フォークリフト(図示せず)等を使用することで移送し易いように、底部にフォーク差し込み用の空隙が形成されている。そして、該ピット21上に鉄骨によって矢倉23を構築し、前記排出口9から落下排出された固形物sを受けるための容器24を該矢倉23により支持している。該容器24は上面が開放された横断面U字形のもので、長手方向が前記傾斜面部6の傾斜方向に対し直交するように水平に配設される。なお
図4に示されるように、該容器24は両端部24a,24bが前記傾斜面部6の側壁板7,8よりも外方に突出するように該容器24の全長が設定される。また、該容器24の両端壁に設けられた軸受25a,25bにより回転軸25を該容器24の中心に回転自在に横架し、該回転軸25に螺旋状の攪拌羽根26を該容器のU字形底面に沿うように配設している。さらに詳しくは、該攪拌羽根26は、一定幅のリボン状の板部材を螺旋状に形成して羽根部材26a,26bを形成し、該羽根部材26a,26bをスポーク部26′とハブ部25′により支持してなるのもので、
図4に示したように、左側の羽根部材26aと右側の羽根部材26bとでは互いに捩り方向が異なるものとしている。
そして、該回転軸25の一端の該容器24外突出部分にスプロケット27を固設し、該スプロケット27をチェーン等によりモータ28に連繋し、該モータ28によって該攪拌羽根26が
図3に示した矢印の方向に回転駆動されるようにしている。また、両羽根部材26a,26bの中間に相当する容器24の底面部位に開口29を形成し、該開口29の外側に開閉シャッター30を流体圧シリンダ31の作動により開閉するように設けている。なお該開口29の直下には前記可搬性容器22が位置する。
【0016】
また、人が安全に乗り降りできる程度の足場板32を前記容器24の上方に位置するように前記矢倉23に支持するとともに、該足場板32のさらに上方に水平にレール33を支持し、ブロックチェーン34を該レール33に沿って摺動可能なるように吊下する。そして該ブロックチェーン34のフック35にセメント袋(図示せず)を吊り下げることで、新たなセメントを該足場板32上に運搬できるようにする。また、一対のセメント投入用ホッパー36a,36bを該足場板32に設けられた開口から垂下するように固設し、該セメント投入用ホッパー36a,36bの下端を前記容器24の両端部24a,24b内に対向させている。
【0017】
このように構成したコンクリートスラリー処理装置では、前記開口29を
図4に示したように常態では開閉シャッタ-30によって閉状態とし、前記コンベヤチェーン17a,17bを巡回動させることにより掻き揚げられ開口29より排出された固形物sを前記容器24中に落として該容器24内に一時的に貯留する。そして適時に前記モータ28により前記攪拌羽根26を回転駆動することにより該固形物sを攪拌し、該固形物sの砂利と砂とセメントを混合させる。なおこのとき、該攪拌羽根26の羽根部材26a,26bは前記のように回転軸25に近い中心部寄りはスポーク部26があるのみで空に形成されているので、該容器24の底部に位置する固形物は該羽根部材26a,26bによって該羽根部材26a,26bの中間に相当する開口29の方向に移動するがその移動後は該スポーク部26間の空隙を通って帰戻することから、固形物sは容器24内を左右に往復動し繰り返し攪拌が行われ、砂利と砂とセメントとを十分に混合させる。しかも、捩り方向が異なる一対の螺旋状の羽根部材26a,26bを回転軸25の長手方向に左右対称に設けてなるので、こうした攪拌が一層促進される。そしてこの攪拌継続中に、必要に応じて新たなセメントを前記セメント投入用ホッパー36a,36bより該容器24の両端部24a,24bに投入することにより、新たなセメントをもこの固形物sに混合させる。そうして十分な混合ができたところで、前記開閉シャッタ-30によって開いて前記開口29からこの混合物を前記可搬性容器22に排出させる。そしてフォークリフト(図示せず)によって該可搬性容器22を例えば成形型等のある部位に運んで該混合物を固化させ所望のコンクリ-ト製品に成形する。
【0018】
このように、本発明では、水槽1から掻き揚げた固形物sを容器24に一時貯留し攪拌羽根26によって攪拌するので、該固形物sが固結し易くなり、固結強度も上昇する。このため廃棄物としての処理コストを軽減できる。また、新たにセメントを添加することによっては、さらに必要な強度を確保することができ、コンクリート製品としての再利用を可能にし、処理コストをさらに軽減させる。
【0019】
なお、この実施形態では容器24の直下に可搬性容器22を配置したが、成形型等を配置して容器24から排出された混合物を直に成形型等に流入させるようにしてもよい。
また、この実施形態では水切ゲート20として直管状のパイプを段積したものを示したが、水槽1内の上澄水を流出させるものであれば、他の構造の水切ゲートを設けることもできる。また、水槽1やコンベヤチェーン17a,17bの配設構造についても、その用途や設置箇所に応じ適切に変更することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 水槽
6 傾斜面部
17a,17b コンベヤチェーン
19 レーキ
20 水切ゲート
24 容器
24a,24b 端部
25 回転軸
26 攪拌羽根
26a,26b 羽根部材
29 開口
30 開閉シャッター
36a,36b セメント投入用ホッパー
s 固形物
【要約】
【課題】コンクリートスラリー処理装置において、水槽から掻き揚げた砂、砂利、セメントからなる固形物を固結し易くするとともに固結強度を上昇させ、廃棄物としての処理コストを軽減させる。
【解決手段】水槽1の底面部に沈降した砂利,砂,セメントからなる固形物sを傾斜面部6に掻き揚げるようにしたコンクリートスラリー処理装置であって、掻き揚げられた固形物sを一時貯留させるための容器24を配設し、該容器24内に螺旋状の攪拌羽根26を設け、該攪拌羽根26を回転駆動し攪拌することにより砂利と砂とセメントを混合させた後、該固形物sを該容器24から排出させ固化させる。
【選択図】
図2