(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】飛行ルート設定システム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20230605BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20230605BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64F1/36
(21)【出願番号】P 2019081386
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】520265871
【氏名又は名称】スカイリンクテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】森本 高広
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180534(WO,A1)
【文献】特開2019-52865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/00- 5/06
B64F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の位置に関する位置情報およびその位置情報に関連付けられ、且つ、飛行機と基地局との間の無線の通信速度に関する通信速度情報を備えると共に、予め登録された飛行マップデータと、
その飛行マップデータ、飛行機の出発地および目的地に関する情報と、出発時間または到着時間に関する情報とからなる初期情報および予め登録された条件に基づいて、飛行ルートを設定する設定手段とからなり、
前記通信速度情報が、複数の局種からなる無線の通信速度に関するものである、飛行ルート設定システム。
【請求項2】
前記通信速度情報に、さらに電界強度が含まれている請求項1記載の飛行ルート設定システム。
【請求項3】
前記設定手段が、位置および時間に関連付けられた気象情報
に基づいて
、飛行に影響を及ぼす気象を避けるように前記飛行ルートを設
定する、請求項2記載の飛行ルート設定システム。
【請求項4】
前記設定手段が、前記位置情報に関連付けられ、且つ、着陸可能な場所に関する着陸情報
に基づいて
、前記着陸可能な場所の近くを前記飛行ルート
として設
定する、請求項3記載の飛行ルート設定システム。
【請求項5】
前記飛行機が、周囲の状況を画像情報として取得するための撮像部と、
前記画像情報を
、地上コントロール局に伝えるために、前記基地局に送信するための送信部とを備えており、
前記条件が、飛行ルートにおける通信速度が、送信された画像情報に基づいて
前記地上コントロール局で前記飛行機を遠隔操縦するのに足りる通信速度である、請求項4記載の飛行ルート設定システム。
【請求項6】
前記飛行機が、周囲の状況を画像情報として取得するための撮像部と、
前記画像情報を、地上コントロール局に伝えるために、前記基地局に送信するための送信部とを備えており、
前記通信速度が遅い場合に、前記画像情報の画像データの品質を落としたり又は前記画像データの量を小さくしたりして送信するものである、請求項4記載の飛行ルート設定システム。
【請求項7】
前記条件の1つが、前記通信速度および前記電界強度のそれぞれの値が大きくなると高くなる得点が設定されており、合計される得点が高くなるように前記飛行ルートを設定するものである、請求項2、3、4、5若しくは6のいずれかに記載の飛行ルート設定システム。
【請求項8】
前記基地局には、通信すべき飛行機の上限機数が設定されており、
その上限機数以内になるように前記飛行ルートが設定されており、
前記基地局が通信している機数に関する機数情報を取得する機数取得手段をさらに備えており、
その機数情報に基づいて前記設定手段により飛行ルートが設定されており、
前記飛行ルートが設定されると、飛行ルート上の基地局に対応する前記機数情報が更新される、請求項7記載の飛行ルート設定システム。
ルート設定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機の飛行ルートを設定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飛行機をごく普通の移動手段にするために必要な検証の準備などが進められている。例えば、垂直離着陸できる飛行機(VTOL)などをビルの屋上に離発着させるなどである。さらに例えば、前記VTOLは、搭乗者により目的地が指示されると、飛行ルートの設定を自動的に行うなどである。
【0003】
特許文献1には、複数の小型飛行体のために用いるルート管理制御サーバが開示されている。そのルート管理制御サーバは、地図情報、地形情報又は建造物情報の少なくともいずれかを含むロケーションデータと三次元座標に基づくルートデータとを格納している。その格納されたロケーションデータおよびルートデータは、複数の小型飛行体のそれぞれに送信される。
特許文献2には、電波状況マップ作成システムが開示されている。その電波状況マップ作成システムは、例えば、管理装置と、情報処理装置とを備えている。管理装置は、携帯電話から受け取った電強度情報等を記録する。情報処理装置は、管理装置から電界強度情報などを取得し、電波状況マップの作成に必要なマップ作成データを生成し、携帯端末に返信する。
特許文献3には、飛行制御方法が開示されている。この制御方法では、操縦装置から制御情報を受信できない場合、通信品質情報に基づいて、飛行機は制御情報を受信できる位置まで移動する。これにより、飛行装置を操縦するユーザは、操縦装置と飛行装置との通信が途切れても、飛行装置が携帯電話網の電波を受信できる位置に飛行した後に、飛行装置を操縦することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-163664号公報
【文献】特開2017-90171号公報
【文献】特開2018-112871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛行機を、例えば車のような、ごく普通の移動手段とするなら、飛行ルート上の通信速度の状態を予め把握することは、飛行機の運航を支援するのに重要である。
例えば、設定された飛行ルートが、地上と所定の通信速度を維持できない空域を含む場合、重大な疾患によりパイロットが操縦できない、さらには何らかの原因で飛行機を緊急に着陸させなければならない、といった緊急時において、飛行機の操縦を直ちに地上からの遠隔操縦に切り替えることができない、というリスクがある。
例えば、そのような緊急時に、飛行機に乗っている乗員とスムーズなやり取りができないことから生じるであろう、会話が途切れたり、動画で地上と通信できなかったりして、乗員に安心感を与えられない、さらに適切な対応を促すことができない、といったリスクがある。
また例えば、離島などに向かったり、ルート設定の関係上どうしても必要に迫られたりして、山間部や洋上を飛行する際には、通信速度が都市部や地上に比べて遅い、というリスクがある。
【0006】
そこで、本発明は、上述したような通信速度などに起因するリスクを事前に把握して、飛行ルートを設定するシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の飛行ルート設定システムは、特定の位置に関する位置情報およびその位置情報に関連付けられ、且つ、前記飛行機と基地局との間の無線の通信速度に関する通信速度情報を備えると共に、予め登録された飛行マップデータと、その飛行マップデータ、飛行機の出発地および目的地に関する情報と、出発時間または到着時間に関する情報とからなる初期情報および予め登録された条件に基づいて、飛行ルートを設定する設定手段とからなり、前記通信速度情報が、複数の局種からなる無線の通信速度に関するものである、ことを特徴としている。
【0008】
・「位置情報」とは、飛行機が飛行するべき位置、さらには離陸位置、着陸位置を含む特定の位置を示す情報である。例えば、複数の二次元空域で区分したり、複数の3次元空間で区分したり、緯度、経度で特定したり、さらには高度を加えて特定したりする情報であり、それらに換算できる量を含む概念である。
・「通信速度情報」とは、特定の位置における飛行機と地上との通信速度を少なくとも含むものであり、それらに換算できる量を含む概念である。
・「設定手段」は、実施形態ではS6が対応する。
【0009】
(2)このような飛行マップデータは、前記通信速度情報に、さらに電界強度が含まれているのが好ましい。
【0010】
(3)また前記設定手段が、位置および時間に関連付けられた気象情報にさらに基づいて飛行ルートを設置するのが好ましい。
・「気象情報」とは、特定の位置における現在または将来の気象に関する情報であり、それらに換算できる量を含む概念である。
【0011】
(4)さらに前記設定手段が、前記位置情報に関連付けられ、且つ、着陸可能な場所に関する着陸情報にさらに基づいて飛行ルートを設置するものが好ましい。
・「着陸情報」とは、空港、ヘリポート、公園、校庭など着陸可能な位置およびその施設名や規模に関する情報であり、それらに換算できる量を含む概念である。
【0012】
(5)さらに前記飛行機の周囲の状況を画像情報として取得するための撮像部と、その撮像部で取得した画像情報を前記基地局に送信するための送信部とをさらに備えており、前記条件が、飛行ルートにおける通信速度が、送信された画像情報に基づいて地上コントロール局で前記飛行機を遠隔操縦するのに足りる通信速度であるものが好ましい。
・「画像情報」とは、静止画像および動画像に関する情報であり、それらに換算できる量を含む概念である。
【0013】
(6)さらに前記基地局には、通信すべき飛行機の上限機数が設定されており、その上限機数以内になるように前記飛行ルートが設定されるのが好ましい。
【0014】
(7)さらに前記基地局が通信している機数に関する機数情報を取得する機数取得手段をさらに備えており、その機数情報に基づいて前記設定手段により飛行ルートが設定されるものが好ましい。
【0015】
(8)さらに前記飛行ルートが設定されると、飛行ルート上の基地局に対応する前記機数情報が更新されるものが好ましい。
【0016】
(9)本発明の飛行ルート設定システムの第2の態様は、複数の基地局と通信可能な飛行機の飛行ルート設定システムであって、前記基地局には、通信すべき飛行機の上限機数が設定されており、その上限機数以内になるように前記飛行ルートを設定する設定手段を備えている、ことを特徴にしている。
【0017】
(10)このような飛行ルート設定システムは、前記基地局が通信している機数に関する機数情報を取得する機数取得手段をさらに備えており、前記機数情報に基づいて前記設定手段により飛行ルートが設定されるのが好ましい。
【0018】
(11)また前記飛行ルートが設定されると、飛行ルート上の基地局に対応する前記機数情報が更新されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の飛行ルート設定システムは、複数の局種からなる無線通信環境において、通信速度の良好な飛行ルートを設定できる。
また、通信容量を超えた飛行ルートの設定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は本発明の飛行ルート設定システムに用いる飛行マップデータを模式的に表した地形図である。
【
図2】
図2は飛行ルート設定システムを用いたシステム全体を示す概略図である。
【
図3】
図3Aは飛行マップデータのデータ構造の一例を示す概略図、
図3Bは通信速度および電界情報の値の大きさに対応した得点を示すデータテーブルである。
【
図4】
図4Aはサーバのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5Aは端末のハードウェア構成の一例を示す概略図、
図5Bは飛行機のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は飛行ルート設定システムで用いられるプログラムの処理の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は飛行ルート設定システムで用いられるプログラムの処理の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図8】
図8Aは
図1の飛行マップデータのデータ構造の他の例を示す概略図、
図8Bは
図1の飛行マップデータのデータ構造のさらに他の例を示す概略図である。
【
図9】
図9は
図2の飛行ルート設定システムの他の実施形態を示す概略図である。
【
図10】
図10は
図9の飛行ルート設定システムで用いられるプログラムの処理の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図11】
図11Aは基地局データテーブルのデータ構造の一例を示す概略図、
図11Bは
図3Aの飛行マップデータのデータ構造のさらに他の例、
図11Cは予約データテーブルのデータ構造の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[1.概略説明]
<第1実施形態>
図1は本発明の飛行マップデータ(
図2参照)を模式的に表した地形図である。図では、都市部(出発地S)から沿岸を含む郊外(目的地G)までの地形図に、無線通信の速度分布を重ねて表示している。
図には無線通信の種類として、例えば、矢印で指している3つの空域が示されている。携帯電話回線の第1基地局24を介して通信する第1空域21と、VHF/UHFの第2基地局25を介して通信する第2空域22と、通信衛星26を介して通信する第3空域23である。第1基地局24および第2基地局25は基地局である。なお通信衛星26を基地局として捉えてもよい。
【0022】
第1空域21および第2空域22は、例えば、それぞれが電界強度に応じて3つに区分されている。電界強度は内側から外側に向けて強くなる。図では、例えば、第1空域21および第2空域22の電界強度には、それぞれ電界強度が強い順に符号A、B、Cおよび符号A´、B´、C´が付されている。
そして、第1空域21、第2空域22および第3空域23からなる空域全体では、通信速度に応じて6つに区分されており、速い順にそれぞれ添え字a、b、c、d、e、fで表されている。例えば、図では色が濃くなるほど通信速度が速い。
なお図では、説明を簡便にするために、電界強度の区分の境界と通信速度の区分の境界が一致させているが、一致していなくてもよい。
【0023】
飛行機10(
図2参照)は、1つ以上の局種からなる無線通信を介して、地上との通信を維持した上で運行される。そして飛行ルート設定システム15(
図2参照)は、通信速度が良好、例えば高速な通信速度が維持されるように飛行ルートRを設定する。その設定された飛行ルートRは、飛行を支援する地上の機関などに伝えられる。
【0024】
[2.詳細説明]
(全体システム20)
図2は全体システムを表す概略図である。図に示す全体システム20は、本発明の飛行ルート設定システム15を備えている。全体システム20において、飛行機10に搭乗する乗客28は、例えば自分の端末11に出発地Sおよび目的地G(
図1参照)、さらには出発または到着の時間・日時など(以下、初期情報28aという)を入力する。なお乗客が出発地を入力した日時を出発日時としてもよい。
それらの情報は、通信ネットワークNを介してサーバ18に送信される。サーバ18には飛行ルート設定システム15を動作させるためのプログラム37(
図4参照)が設けられている。その飛行ルート設定システム15は、飛行ルートR(
図1参照)を設定する。
また飛行機10には、GPS装置などの複数の計器12が設けられている。その計器12が取得した計器情報12aは、前述の第1基地局24、第2基地局25および/または通信衛星26(以下、基地局24等という)を経由して、地上コントロール局29または管制29dなどに送信される。
【0025】
(飛行マップデータ1)
図3Aは飛行マップデータのデータ構造を示す概略図である。その飛行マップデータ1は、特定の空間位置を表す位置情報2と、その位置情報2に関連付けられ、且つ、第1基地局24、第2基地局25との通信速度4および電界強度5を含む通信速度情報3とからなる。
【0026】
(飛行ルート設定システム15)
図2に戻って、飛行ルート設定システム15は、初期情報28aを取得する取得手段14と、飛行マップデータ1、初期情報28aおよび予め登録された条件38に基づいて飛行ルートRを設定する設定手段16とからなる。
また設定された飛行ルートRは、送信手段17により、端末11や遠隔操縦・監視などをすべく、例えば、遠隔操縦を行う地上コントロール局29や管制29dに送信される。なお、飛行ルータRは地上コントロール局29および管制29dのどちらか一方に送信し、必要に応じて一方から他方に送信するようにしてもよい。
【0027】
(飛行機10)
飛行機10は、乗客28(あるいは動物)を乗せて、さらには荷物を載せて運航できる構造を有している。本実施形態では、飛行機10には、操縦者が乗っていない。しかし無操縦者航空機のように、地上から操縦者による遠隔操作を常に受けているのではなく、平時においては自律して航行することができ、緊急時あるいは必要な時に、地上コントロール局29から操縦者による遠隔操縦を受けるものである。具体的には、飛行機10は、地上コントロール局29から送信される遠隔操縦の指示10cを受信する。
【0028】
また本実施形態では、例えば、飛行機10は、機体の外部の状況を画像情報13aとして取得するための撮像部13を備えている。その撮像部13で取得した画像情報13aは、送受信部10aにより地上コントロール局29に送信される。
【0029】
(端末11)
端末11は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどの端末である。端末11は、飛行機10と基地局24等と送受信するための送受信手段19を備えている。送受信手段19で受信した情報は、端末に設けられた表示部11aに表示される。
端末11と飛行機10との間の通信は、例えば、インターネットを介して接続される無線通信ネットワークである。その無線通信ネットワークは、例えば、携帯電話網や、Wi-Fi(登録商標)規格の無線LANなどといった端末11とインターネットとを接続する種々のネットワークを含む。
端末11は、乗客28の操作により、飛行機10を呼んだり、飛行機10に出発地・目的地などの指示を出したりする。一方で端末11は、飛行機10から飛行ルートRや飛行時間などを受信し、表示部11aに表示する。
【0030】
表示部11aは、本実施系形態では、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)が用いられている。なお、表示部29bとして、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)、有機EL(EL:Electroluminescence)などの画像を表示する装置を用いてもよい。
なお端末11のような表示部を飛行機10に設けて、端末11と同様な入力ができるようにしてもよい。
【0031】
例えば、本実施形態では、端末11の表示部11aに
図1の地形図が表示画面として表示される。なお
図1では、色の濃淡を変化させたが、例えば、表示部11aの表示画面では、通信速度が速くなるほど青から赤へなど色を変化させてもよい。
【0032】
(計器12)
計器12は、例えば、GPSや、航空機の姿勢、高度、位置および針路などの測定を行うものである。計器12からの計器情報12aは、飛行機の送信部(送受信部)10aにより地上に送信され。一方で、その送受信部10aは、地上コントロール局29からの遠隔操縦の指示10cを受信する。
ここで計器飛行とは、例えば、飛行機10の姿勢、高度、位置および針路の測定を、航空機上の計器12に依存して行われる飛行手法である。
【0033】
(第1基地局24、第2基地局25、通信衛星26)
第1基地局24は、例えば、携帯電話回線の無線通信の基地局である。通常、第1基地局24は地上に複数設けられている。既存の第1基地局24を利用する場合、アンテナを上方に向けたり、飛行機10の空路を通信範囲とする新たなアンテナを設置したりする。第1基地局24を利用した無線通信可能なエリアは、複数の第1基地局24の通信可能エリアを3次元空間で重ねるようにして連続させたエリアである。
第2基地局25は、例えば、VHF/UHFの基地局である。第1基地局24に比べて、電界強度が大きく通信エリアが大きいが、通信速度は低い。
通常、第1基地局24、第2基地局25は地上に複数設けられている。通常は、第1基地局24並びに第1基地局24および第2基地局25の連続している通信エリア内において、なるべく飛行ルートRを設定する。なお、飛行機10と第1基地局24、第2基地局25との間の通信に光無線通信を用いてもよい。さらにはレーザー通信と呼ばれる、レーザー光を用いた通信を用いてもよい。
また通信衛星26は、例えば、イリジウム衛星通信である。通信エリアは広いが、通信速度は遅い。
【0034】
飛行機10は、例えば、都市部では第1基地局24を介して通信し、郊外ではUHFの第2基地局25を介して通信し、さらに山奥ではVHFの第2基地局25を介して通信し、洋上では通信衛星26を介して通信する。電界強度および通信速度の異なる複数種の無線通信を用いることで、予め想定された通信品質で都市間や離島への飛行ルートRを設定することができる。
【0035】
(地上コントロール局29)
地上コントロール局29は、飛行機10を遠隔操縦するための操縦部29aと、飛行機10から送信された計器情報12aおよび/または画像情報13aを表示する表示部29bと、飛行機10と情報を送受信する送受信手段29cとを備えている。地上コントロール局29には、遠隔操縦したり、飛行機10を監視したりするための人員が配置されている。
【0036】
[3.ハードウェア構成]
次に、
図4を用いてサーバ18のハードウェア構成を説明する。
【0037】
(ハードウェア構成)
図4に示すように、この実施形態のサーバ18にはコンピュータが用いられている。そのコンピュータはCPU30を備えており、そのCPU30には、不揮発性メモリ31、揮発性メモリ32、光を用いた記録デバイス(例えば、DVD)、あるいは磁気を用いた記録デバイス、さらにはUSBやSDカードなど書き換え可能なデバイス33を読み込むドライブ34および外部とネットワークを介して通信するための通信回路35がバスライン36を介して接続されている。不揮発性メモリ31、揮発性メモリ32(以下メモリ31等という。)は記録部である。
さらに記録部には、飛行マップデータ1、サーバ18に用いるプログラム37、飛行ルートを設定するための条件38、さらにはOS39(オペレーティングシステム)、ブラウザプログラム39aが記録されている。
【0038】
プログラム37は、飛行ルートR(
図2参照)の設定に関するプログラムであり、サーバ18にインストールされている。そのプログラム37は、ブラウザプログラム39aおよびOS39の機能を利用して、協働して動作するものである。なおプログラム37は、ブラウザプログラム39aおよびOS39と異なる別個のプログラムと協働して動作してもよい。プログラム37は、端末11からの出発地・目的地と、出発または到着日時とからなる初期情報28a(
図2参照)を取得する。さらに、端末11に飛行ルートR、出発地S(
図1参照)および目的地Gなどが表示された画面を送信する。
飛行マップデータ1、プログラム37、条件38、ブラウザプログラム39aおよびOS39は、例えばDVD、さらにはUSBやSDカードなど書き換え可能なデバイス33に記録されており、ドライブ34を介して、記録部にインストールされる。
なお、後述する建造物情報6、気象情報7は、記録部に記録されている。
さらになお、飛行マップデータ1、建造物情報6、気象情報7は、その全てをサーバ18に記録するのではなく、一部をサーバに記録し、その他を外部のサーバに記録してもよい。例えば、飛行マップデータ1のうち位置情報2をサーバ18に記録させ、他の情報は外部のサーバに記録させるなどである。
なおカッコ内の符号37a、40、40a、40bは、後述する他の実施形態に対応している。
【0039】
(端末11のハードウェア構成)
図5Aには端末11のハードウェア構成が記載されている。そのハードウェア構成は、前述のサーバ18のハードウェア構成とほぼ同じであるので、同じ部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
また端末11の記録部には、飛行ルートの設定に関するプログラム37(二点鎖線参照)をインストールしてもよい。そして全体システム20(
図2参照)にログインしたり、表示部11aに飛行ルートR(
図2参照)を表示したりするためのプログラムをインストールしてもよい。
さらにメモリ31等には、飛行マップデータ1(二点鎖線参照)や、飛行ルートを設定するための条件38(二点鎖線参照)を記録してもよい。
【0040】
(飛行機10のハードウェア構成)
図5Bには飛行機10のハードウェア構成が記載されている。そのハードウェア構成は、前述のサーバ18のハードウェア構成とほぼ同じであるので、同じ部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
バスライン36には計器12および撮像部13が接続されている。
また飛行機10のメモリ31等には、飛行ルートの設定に関するプログラム37(二点鎖線参照)をインストールしてもよい。そして全体システム20(
図2参照)にログインするプログラムや、端末の表示部11a(
図2参照)に飛行ルートRを表示させるためのプログラムをインストールしてもよい。
さらにメモリ31等には、飛行マップデータ1(二点鎖線参照)や、飛行ルートを設定するための条件38(二点鎖線参照)を記録していてもよい。
【0041】
(ハードウェア構成のその他の例)
上述した
図4、
図5A、
図5Bに示したハードウェア構成では、
図2に示す機能をCPU30とプログラム37用いて実現するようにしているが、その一部あるいは全部をマイコンなどの論理回路またはPLC(プログラマブルロジックコントローラ)を用いてシーケンス制御してもよい。
さらに、飛行マップデータ1および条件38の一部または全部を外部のサーバに記録させてもよい。さらに、プログラム37、ブラウザプログラム37aの一部または全部を外部のサーバで実行するようにしてもよい。
なお外部サーバのハードウェア構成は、前述のサーバ18のハードウェア構成とほぼ同じであるので、その説明を省略する。
さらになお、本実施形態において、メモリ31等に記録されているデータテーブルは、コンマ区切り値形式などを含む公知の方法で記録されている。
【0042】
[4.飛行ルートを設定する方法]
図6、
図7は、サーバ18で用いられるプログラム37の処理の一実施形態を示すフローチャートである。このフローチャートを用いてサーバ18が飛行ルートR(
図1参照)を設定する方法を説明する。
【0043】
(ログイン処理)
図6に示すフローチャートは、ログイン処理の概略を示している。
(T1)乗客28は、端末11によりインターネットを介して、全体システム20のWEBページにアクセスする。端末11のCPUはサーバ18にWEBページのダウンロード要請をする。
(T2)サーバ18のCPUは、端末11に全体システム20(
図2参照)のログイン画面を送信する。
(T3)乗客28の操作により、表示部11aに表示されたログイン画面からログイン情報28bを取得する。送信手段19(
図2参照)は入力されたログイン情報28bをサーバ18に送信する。ログイン情報28bとは、例えば、乗客28が予め登録しておいたパスワードなどの情報である。
(T4)ログイン情報28bが予め登録された情報と一致すると、初期情報28aの入力画面を端末11に送信する。一方で、ログイン情報28bが予め登録された情報と不一致の場合は、工程T3に戻る。なおログイン画面と目的地等の入力画面とが1つの画面であってもよい。
【0044】
(飛行ルート設定処理)
図7に示すフローチャートは、飛行ルート設定処理の概略を示している。
(S1)乗客28の操作により、端末11は入力画面を介して、初期情報28aを取得する。なお、端末11のGPS機能により取得した現在地を出発地としてもよい。さらに入力時を出発日時としてもよい。
【0045】
(S2)端末11の送受信手段19は、初期情報28aをサーバ18に送信する。
(S3)サーバ18は、初期情報28aを取得する。
(S4)サーバ18は、飛行機10を選択する。例えば、出発地およびその日時に、出発地の近くにいる飛行機を選択する。ここで、飛行機10には、例えば、識別IDが付されている。なお表示画面11aを介して乗客28に選択可能な飛行機を提示し、選択させてもよい。
(S5)識別ID(以下に説明する)に対応する飛行マップデータ1、条件38を選択し、取得する。
【0046】
(飛行マップデータ1データ構造)
再び
図3Aを用いて、飛行マップデータ1のデータ構造を説明する。飛行機の送受信部10a(
図2参照)の性能は、各々の飛行機の通信速度などに影響する。このため、本実施形態では、例えば識別ID10b毎に飛行マップデータ1が用意されている。
なお同一の企画の通信機器を搭載すれば、飛行データマップを複数設けなくてもよい。
さらになお識別ID10bの代わりに、送受信の性能が同等なものを示すように性能に基づいて性能識別IDを設けてもよい。
【0047】
図7に戻って、
(S6)飛行マップデータ1、初期情報28a、さらに条件38に基づき、設定手段16は飛行ルートRを設定する。
【0048】
再び
図3Aに示すように、本実施形態では、通信速度4は、飛行機10から基地局24等の通信速度4a(以後、上り通信速度という)と、基地局24等から飛行機10への通信速度4b(以後、下り速度という)とからなる。また電界強度5は基地局24等から発する電波の電界強度である。
本実施系形態では、異なる基地局が重なっている位置では、通信速度が速い基地局の値(通信速度および電界強度)を採用している。
【0049】
(条件38)
ルート設定のための条件38は、例えば、出発地と目的地を結ぶ飛行ルートRにおいて、距離が短いこと、通信速度4が速いこと、電界強度5が高いこと、である。
図3Bは通信速度4(
図3A参照)および電界強度5の値の大きさに対応した得点データテーブルである。得点データテーブルは条件38(
図2参照)に含まれる。前述の速度区分8aのa~fについて、それぞれの得点8bとして6~1点が設定されている。さらに強度区分9aA~Cについて、それぞれの得点9bとして3~1点が設定されている。例えば、これらの合計得点が高くなるように飛行ルートRを設定する。
また例えば、距離が短いほどスコアを高くしてもよい。さらに例えば、ルート全体で通信速度4および電界強度5が良好な結果(総得点が高い)であっても、部分的に通信状態が著しく低下することがないように、通信速度4および電界強度5について、特定の位置において、例えば2点以上であることを設定してもよい。
また例えば、出発の時刻が日没に近い場合や、到着の時刻が日没になりそうなら、画像情報13a(
図2参照)に基づいて緊急時に目視による遠隔操縦ができない。このため、例えば、条件38として、日中であることや、到着の時刻が日没前であることが挙げられる。
なおスコア方式以外の他の公知の手法を用いてもよい。
【0050】
図7に戻って、
(S7)基地局24等(
図2参照)を介して、送信手段17により、設定された飛行ルートRを飛行機10、管制29dや地上コントロール局29に送信する。なお端末11に送信してもよい。
条件38を満たすルートが設定できないことや、推奨しない場合は、その旨を表示部11a(
図2参照)を介して乗客28に伝える。
【0051】
(緊急時)
飛行機から送信される計器情報12a(
図2参照)を地上コントロール局29で確認して、遠隔操縦が必要であると判断された場合、または乗客28による無線通信による通話や、乗客28による非常ボタンの操作により、遠隔操縦が必要になると、地上コントロール局29の操縦部29aを介して飛行機10が遠隔操縦される。
通信速度4aが高速である場合、例えば飛行機10の外部の状況がリアルタイムで把握できる程度の画像情報13a(動画)を地上コントロール局29の操縦者が表示部29bを介して視認できる場合、操縦者による遠隔操縦で、飛行機10を緊急着陸などさせることができる。
【0052】
(演算方式)
飛行マップデータ1や、得点データテーブルなどの条件38のようなデータテーブルを用いる方式で参照される値について、データテーブルを用いる方式に代えて、関数ないし数式を用いる方式としてもよい。それらの関数ないし数式を用いて演算することにより、前記参照される値が出力される。その数式等はメモリ31等に記録しておく。なお、演算方式とデータテーブル方式を組み合わせてもよい。例えば一部の出力を演算し、残りをデータテーブルから取得してもよい。
【0053】
(飛行マップデータ1の通信速度、電界強度)
飛行マップデータ1の通信速度4および電界強度5は、例えば、ベストエフォート値が採用される。
また、例えば、品質が保証された速度、強度の値を採用してもよい。
さらに例えば、飛行マップデータ1の通信速度4をトラフィック状況から推定して算出してもよい。1つの基地局で扱える通信容量は有限であり、その基地局にアクセスしているノード数で分け合う形になっている。このため、定期的に接続しているノード数で割った数字を通信速度4の推定値として用いてもよい。これらのベストエフォート値、品質が保証された値および推定値を初期設定値として用いてもよい
【0054】
(飛行マップデータ1の更新)
飛行機10は、飛行中に、位置情報に対応した上下の通信速度4a、4bおよび電界強度5を取得する。その取得したデータは、識別ID10bと共に、サーバ18またはデータ更新用のサーバに送信される。それらのデータの蓄積が所定量または所定時間になると、それらの蓄積されたデータに基づいて飛行マップデータ1は更新される。例えば、上述した初期設定値を更新するようにしてもよい。
【0055】
(変形例)
飛行ルート設定システム15が、飛行マップデータ1の電界強度5を含まなくてもよい。その場合には、設定手段16は通信速度4の速度区分の得点を用いて飛行ルートRを設定する。
【0056】
[5.他の実施形態]
以下に、本発明の飛行ルート設定システム15の他の実施形態を説明する。第2、第3、第4実施形態は、前述した第1実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
【0057】
<第2実施形態>
飛行ルート設定システム15の他の実施形態を示す。この第2実施形態の飛行ルート設定システム15a(
図2参照)は、上述した飛行ルート設定システム15に対し、着陸情報を備えた飛行マップデータを設けている点で異なる。
第2実施形態では、飛行マップデータ1に加え、
図8Aに示す飛行マップデータを備えている。
図8Aに示す飛行マップデータ40は、位置情報2に関連付けられ、且つ、着陸可能な場所に関する着陸情報41を備えている。符号41aは、飛行場の周囲の位置、すなわち着陸可能な場所に近いことに対して与えられる得点を示している。
また第2実施形態では、飛行規制空域を含む空域情報42さらに備えている。例えば空港などへの進入経路などが相当する。
なお飛行マップデータ1と飛行マップデータ40はまとめて1つの飛行マップデータとしてもよい。
【0058】
<第3実施形態>
飛行ルート設定システム15の他の実施形態を示す。この第3実施形態の飛行ルート設定システム15b(
図2参照)は、上述した飛行ルート設定システム15に対し、気象情報を備えた飛行マップデータを設けている点で異なる。
第3実施形態では、飛行マップデータ1に加え、
図8Bに示す飛行マップデータを備えている。
図8Bに示す飛行マップデータ40aは、位置情報2および日時に関連付けられた気象情報43を備えている。
第3実施形態では、気象情報43は時系列の複数のデータテーブル群からなる。本実施形態では、雨、風速、雷の項目が設けられている。例えば、雨なら雨量mm、風なら風速m、雷なら注意報か警報であるかなどである。なお、晴れ、曇り、霧などの項目を適宜に設けてよい。
第3実施形態では、例えば、雨、風速、雷、霧などの飛行に影響を及ぼす気象が確認される場合に、それらを避けるように飛行ルートを設定する。
【0059】
<第4実施形態>
(システム概略)
図9に飛行ルート設定システム15のさらに他の実施形態を示す。
図9に示す飛行ルート設定システム44において、複数の飛行機10(
図2参照)が基地局24等と通信可能とされている。そして、基地局24等に通信すべき飛行機10の上限機数が設定されている。1つの基地局で扱える通信容量は有限であり、その通信容量を基地局にアクセスしている機数で分け合う形になっている。このため、接続できる機数を予め定めておき、所定の速度の通信速度4を維持する。
【0060】
設定手段16は、その上限機数以内になるように飛行ルートRを設定する。
サーバ18は、特定の基地局24等が通信している機数に関する機数情報45aを取得する機数取得手段45を備えている。設定手段16は、機数情報45aに基づいて飛行ルートRを設定する。
【0061】
図10に、第4実施形態で用いるプログラム37bの処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートを用いてサーバ18が基地局24等の機数情報45aを取得し、飛行ルートRを設定する方法を説明する。
【0062】
(基地局の選択処理)
S6において(
図7参照)、
(U1)サーバ18のCPUは、基地局データテーブルから機数情報45aが上限に達している基地局24等の情報を取得する。
(U2)飛行マップデータから機数上限に達している基地局24等に対応する空間を機数上限のための飛行が規制されている空域に設定する。
(U3)設定手段16は、上限数に達した飛行規制空域を迂回するように飛行ルートを設定する。
【0063】
(基地局データテーブル47)
図11Aに第4実施形態で用いる基地局データテーブルを示す。基地局データテーブル47は、基地局24等の識別ID46と、機数情報45aと、基地局24等に予め登録された飛行機の上限数45bとからなる。なお、例えば、上限数45bは基地局24等の通信能力に基づいて設定される。
【0064】
(予約処理)
(U4)基地局データテーブル47(
図11A参照)の機数情報45aを更新する。具体的には、飛行ルートR上の位置情報に対応する基地局24等について、機数を1つ増やす。そして、基地局毎に設けられた予約データテーブルに飛行機の識別ID10bを記録する。
【0065】
(飛行マップデータ40b)
図11Bに本実施形態で用いる飛行マップデータを示す。図に示す飛行マップデータ40bは、第1実施形態の飛行マップデータに対し、位置情報2に対応する基地局24a等を識別するための基地局識別ID46をさらに備えたものである。
【0066】
(予約データテーブル48)
図11Cに第4実施形態で用いる予約データテーブルを示す。その予約データテーブル48は、基地局24等の識別ID46と、飛行機の識別ID10bとからなる。
【0067】
(基地局の機数情報を減じる処理)
(U5)飛行機の送受信部10aから自機の位置に関する情報(計器情報)12aを取得する。
(U6)計器情報12aから予約した基地局から次の基地局が対応する空域へ飛行機10が移動したら、予約データテーブル48に記録された飛行機の識別ID10bを削除する。さらに基地局データテーブル47の対応する基地局24等の識別ID46に登録された機数情報45aを1つ減じる。
【0068】
(その他)
飛行機10のメモリ31等に基地局データテーブル47、予約データテーブル48およびプログラム37bを記録してもよい。
基地局24等側に予約データテーブル48を設けてもよい。
前述の実施形態では、飛行ルートの設定において、その設定時を基準にし、機数情報45a等を取得したり、予約をしたりしている。しかし、飛行ルートRが長距離の場合は、飛行機10が通過するまでの間、多数の基地局が予約したままの状態になり、通信容量が無駄になる。このため、例えば、基地局データテーブル47を所定の時間毎に設け、例えば、1時間毎に24個の基地局データテーブルを設ける。そして空いている時間帯に相当する基地局データテーブル47に予約登録をしてもよい。そして、予約データテーブル48には、飛行機の識別IDと共に、通過日時を記録する。例えば、通過日時として12月25日の20時から20時30分などである。
【0069】
[6.小括]
図1に示すように、例えば、飛行機10は、飛行ルート設定システム15で設定された飛行ルートRを以下のように飛行する。
出発地Sの都心から目的地Gの郊外まで飛行する場合を説明する。出発地S付近は住宅密集地であり、第1空域21である。この空域では自機の周囲の様子の動画をほぼリアルタイムで地上に送信できるほどの通信速度が得られる。さらに機体に設けられた複数のカメラで周囲の安全を確認することができる。このため、飛行機10から送信された画像データに基づいて、地上コントロール局29(
図2参照)では表示部29bで機体の外部の様子を確認しながら遠隔操縦ができる。
なお飛行機に自律運転をさせ、地上コントロール局29から周囲の様子を動画で確認するようにしてもよい。自律運転をさせる場合には、緊急時に目視により遠隔操縦するようにしてもよい。
【0070】
次いで、第1空域21から遠ざかると、次第に電界強度が弱くなり、さらに通信速度が遅くなる。このため、地上コントロール局29に送信する画像データの品質を落としていく。または、地上コントロール局29に画像を送信するカメラ数を少なくして、例えば前方のカメラだけONにして、送信するデータ量を小さくしてもよい。さらに例えば、通信速度が遅い場合は、数秒送りの画像を送信するようにしてよい。
最後に、再び第1空域21に入り、目的地Gに近づくにつれて、通信速度が速くなるので、送信すべき画像情報のデータ量を多くする。ビルの屋上のヘリポートのような着陸地点付近では、自機の周囲の状況を多くのカメラで確認しながら、遠隔操縦で着陸する。
【0071】
また、例えば、離島27などが目的地である場合(飛行ルートR1)、洋上などの第3空域23では通信速度が低速になることが多い。このため目視による飛行ではなく、計器飛行が行われる。その計器飛行が行われることをルート設定時に予め把握でき、それを管制29dや地上コントロール局29などの飛行を支援する機関に伝えることができる。
【0072】
[7.その他]
上述した実施形態は、それぞれを適宜に組み合わせて用いることができる。
飛行機10は、操縦者が乗っていてもよいし、地上コントロール局29や管制29dから遠隔操縦されていてもよい。
前述した空域として、携帯電話回線による通信、VHF/UHFによる通信および通信衛星の3種以外の通信種を用いた空域を利用してもよい。
上述した実施形態では、通信速度に応じて6つに区分されていたが、区分の数を、2区分や、4区または7区分以上にしてもよい。
飛行マップデータ1に、通信速度4および電界強度5に換算できる値を採用してもよい。例えば、換算できる値としては、速度区分8aおよび強度区分9aや、得点8bおよび得点9b等である。
飛行機10を気象情報の収集、地表の撮像などの何らかの調査や小型の荷物を載せる目的で使用してもよい。その場合、乗客などを乗せるほどの構造を有していなくてもよい。
飛行ルートRの一部に通信速度が著しく低下するスポットがあっても、移動速度から考えて、通信が途切れても無視できる微小な時間であるなら、飛行ルートに含めてもよい。
飛行ルート15は、所定の期間毎に再設定してもよい。
【0073】
[8.まとめ]
飛行ルート設定システム15は、位置情報2に関連付けられた通信速度を含む通信速度情報3を備えているから、通信速度4を考慮して飛行ルートRを設定でき、さらに設定された飛行ルート上の通信速度の状況を確認することができる。
例えば、設定される飛行ルートRは最短距離とは限らない。仮に遠回りになったとしても、通信速度が高速であるルートを設定し、飛行の安全を確保することができる。
また例えば、通信速度が高速である場合は、自機の周囲の様子を動画で地上に送信でき、地上から表示部29bを通じて目視による遠隔操縦ができる。
さらに例えば、離島27などが目的地である場合、洋上などでは通信速度が低速になることが多い。このため目視による飛行ではなく、計器飛行が行われる。その計器飛行が行われることをルート設定時に予め把握でき、それを管制29dや地上の飛行に関わる機関に伝えることができる。
【0074】
このような飛行マップデータ1が、通信速度情報3に、さらに電界強度5が含まれている場合は、飛行ルートRにおける通信の状態を予め多く知ることができる。
【0075】
設定手段16が、位置および日時に関連付けられた気象情報43にさらに基づいて飛行ルートRを設定する場合は、悪天候を予め考慮した上で、通信速度の状態が良好なルートを設定することができる。
【0076】
また設定手段16が、位置情報4に関連付けられ、且つ、着陸可能な場所に関する着陸情報41にさらに基づいて飛行ルートRを設置する場合は、緊急着陸可能な場合として、空港や、ヘリポートのある高層ビルの近くを設定することができる。
【0077】
また、飛行機10の周囲の状況を画像情報13aとして取得するための撮像部13と、その撮像部で取得した画像情報を基地局に送信するための送信部10aとをさらに備えており、条件38が、飛行ルートRにおける通信速度4が、送信された画像情報13aに基づいて地上コントロール局29で飛行機10を遠隔操縦するのに足りる通信速度であるから、緊急時に地上から画像情報13aを見ながら飛行機10を遠隔操縦できる。
【0078】
第1基地局24、第2基地局25および第3基地局26には、通信すべき飛行機10の上限機数が設定されており、その上限機数以内になるように飛行ルートRが設定される。このため、1つの基地局で扱える有限な通信容量を超えた飛行ルートRの設定を防止することができる。
【0079】
第1基地局24、第2基地局25および第3基地局26が通信している機数に関する機数情報を取得する機数取得手段45をさらに備えており、その機数情報45aに基づいて設定手段16により飛行ルートRが設定されるので、飛行ルート上における第1基地局24、第2基地局25、第3基地局26において、所定の品質の通信速度を維持することができる。
【0080】
飛行ルートRが設定されると、飛行ルート上の第1基地局24、第2基地局25および第3基地局26に対応する機数情報45aが更新されるので飛行ルート上における第1基地局24、第2基地局25および第3基地局26において、所定の品質の通信速度を、維持することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 飛行マップデータ
2 位置情報
3 通信速度情報
4 通信速度
4a 上り速度(飛行機から基地局)
4b 下り速度(基地局から飛行機)
5 電界強度
5a 基地局の電界強度
6 着陸情報
7 飛行回避情報
8a 速度区分
8b 得点
9a 強度区分
9b 得点
10 飛行機
10a 送受信部(飛行機)
10b 飛行機の識別ID
10c 遠隔操縦の指示
11 端末
11a 表示部
12 計器
12a 計器情報
13 撮像部
13a 画像情報
14 取得手段
15 飛行ルート設定システム(第1実施形態)
15a 飛行ルート設定システム(第2実施形態)
15b 飛行ルート設定システム(第3実施形態)
16 設定手段
17 送信手段(サーバ)
18 サーバ
19 送受信手段(端末)
20 全体システム
21 第1空域
22 第2空域
23 第3空域
24 第1基地局
25 第2基地局
26 通信衛星
27 離島
28 乗客
28a 初期情報
28b ログイン情報
29 地上コントロール局
29a 操縦部
29b 表示部
29c 送受信手段(地上コントロール局)
29d 管制
30 CPU
31 不揮発性メモリ
32 揮発性メモリ
33 デバイス
34 ドライブ
35 通信回路
36 バスライン
37 プログラム
37b プログラム
38 条件
39 OS
39a ブラウザプログラム
40 飛行データマップ(第2実施形態)
40a 飛行マップデータ(第3実施形態)
40b 飛行マップデータ(第4実施形態)
41 着陸情報
41a 得点
42 空域情報
43 気象情報
44 飛行ルート設定システム(第4実施形態)
45 機数取得手段
45a 機数情報
45b 上限数
46 基地局の識別ID
47 基地局データテーブル
48 予約データテーブル
S 出発地
G 目的地
R 飛行ルート
N 通信ネットワーク