IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧 ▶ 株式会社翔エンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許-レクテナ装置 図1
  • 特許-レクテナ装置 図2
  • 特許-レクテナ装置 図3
  • 特許-レクテナ装置 図4
  • 特許-レクテナ装置 図5
  • 特許-レクテナ装置 図6
  • 特許-レクテナ装置 図7
  • 特許-レクテナ装置 図8
  • 特許-レクテナ装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】レクテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/27 20160101AFI20230605BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20230605BHJP
   H01P 5/08 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
H02J50/27
H01Q13/22
H01P5/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019174233
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021052515
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】518195771
【氏名又は名称】株式会社翔エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸村 崇
(72)【発明者】
【氏名】広川 二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 暉雄
(72)【発明者】
【氏名】古川 実
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-033243(JP,A)
【文献】特開2018-107562(JP,A)
【文献】特開2018-032968(JP,A)
【文献】特開2004-304611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H01Q 13/22
H01P 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットペアが設けられた円形状の第1平面導体と、前記第1平面導体に対向するように設けられた円形状の第2平面導体と、前記第1平面導体と前記第2平面導体との間に電磁波を導波するラジアル導波路と、前記第2平面導体を平面視して前記第2平面導体の中心部で前記ラジアル導波路を短絡する短絡導体と、を有するラジアルラインスロットアンテナと、
前記ラジアルラインスロットアンテナの前記第2平面導体側に設けられた複数の伝送路と、
前記ラジアルラインスロットアンテナの前記第2平面導体側に設けられ、前記伝送路に接続された複数の整流回路と、を備え、
前記第2平面導体には、前記第2平面導体を平面視して前記短絡導体を囲むように、前記ラジアル導波路と前記伝送路とを電磁的に結合する複数の結合スロットが設けられる、レクテナ装置。
【請求項2】
前記結合スロットは前記整流回路と同数設けられる、請求項1に記載のレクテナ装置。
【請求項3】
前記結合スロットは、それぞれ前記第2平面導体の周方向に沿うように、前記第2平面導体を平面視して前記短絡導体から等距離の位置に設けられる、請求項1又は2に記載のレクテナ装置。
【請求項4】
前記第2平面導体上に設けられる平板状の誘電体基材をさらに備え、
前記整流回路は前記誘電体基材に設けられ、
前記伝送路は、前記誘電体基材上に設けられる線状導体が前記誘電体基材を介して前記第2平面導体と対向することで形成されるマイクロストリップ線路である、請求項1から3の何れかに記載のレクテナ装置。
【請求項5】
前記伝送路は前記第2平面導体を平面視して前記結合スロットと交差する、請求項1から4の何れかに記載のレクテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス電力伝送に使用されるレクテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤレス電力伝送において、送電アンテナから放射された電磁波を受け、当該電磁波を直流電流に変換するレクテナ装置が使用されている。
【0003】
図7(A)は従来のレクテナアレイの構成例を示すブロック図である。図7(B)は従来のレクテナアレイの構成例を示す平面図である。レクテナアレイ50は複数のレクテナ素子51及びDCバスライン54を備える。各レクテナ素子51は、1つのマイクロストリップアンテナ52毎に1つの整流回路53が接続されて構成される。マイクロストリップアンテナ52はレクテナアレイ50の上面に配列されてレクテナアレイ50の受電面を構成する。整流回路53はレクテナアレイ50の背面に設けられる。
【0004】
図9は従来のレクテナ装置の構成例を示すブロック図である。レクテナ装置60は、アレイアンテナ61、電力分配器62、複数の整流回路63、及びDCバスライン64を備える。アレイアンテナ61は、複数のアンテナ素子及び電力合成器(共に図示せず)を有し、各アンテナ素子の受電電力を電力合成器で1つの出力端子に集約する。電力分配器62は、アレイアンテナ61の後段に接続され、電力合成器で集約された受電電力を整流回路63に均等に分配する。アレイアンテナ61の電力合成器及び電力分配器62はマイクロストリップ線路で構成される。
【0005】
特許文献1には、図9に示すレクテナ装置60と類似の構成を有するレクテナ装置が開示されている。
【0006】
非特許文献1には、レクテナ素子の接続法が出力電力に与える影響について開示されている。
【0007】
特許文献2には、凹型盆形状のスロット板を備えるラジアルラインスロットアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-278887号公報
【文献】特開平2-48806号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】三浦、篠原、松本、「マイクロ波電力伝送用レクテナ素子の接続法に関する実験的研究」、電子情報通信学会論文誌 B、電子情報通信学会、1999年7月、Vol. J82-B、No. 7、pp.1374-1383
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ワイヤレス電力伝送にレクテナアレイを使用する場合、送電アンテナから放射された高周波電力をレクテナアレイで多く受電するために、送電アンテナのビーム幅よりもレクテナアレイのサイズを大きく設計する。このため、レクテナアレイの受電面には送電アンテナの指向性に応じた受電電力の分布が生じる。
【0011】
図8(A)は、図7(A)及び7(B)に示すレクテナアレイ50の受電面のx軸上の受電電力の分布の一例を示すグラフである。この例において、位置x0に配置されたレクテナアレイ50の中心素子の受電電力はa0となり、位置x1に配置されたレクテナアレイ50の端部素子の受電電力はa1(a1<a0)となる。即ち、中心素子の受電電力と端部素子の受電電力との間に差が生じる。
【0012】
一方、レクテナアレイを構成するレクテナ素子の変換効率はその受電電力に依存する。換言すると、レクテナ素子の整流回路の変換効率はその入力電力に依存する。
【0013】
図8(B)は、図7(A)及び7(B)に示すレクテナアレイ50のレクテナ素子51おける受電電力と変換効率との関係の一例を示すグラフである。この例において、レクテナアレイ50は、図8(A)に示す受電電力の分布が生じる場合に、レクテナアレイ50の中心付近で変換効率が高くなるように設計されている。図8(A)に示す受電電力の分布が生じる場合、位置x0に配置された中心素子の変換効率はb0となり、位置x1に配置された端部素子の変換効率はb1(b1<b0)となる。即ち、端部素子の変換効率は中心素子の変換効率より低下する。
【0014】
このように、レクテナアレイ50では、全てのレクテナ素子51の変換効率を高く設定できるわけではないので、全体的な変換効率が低下する。
【0015】
図9に示すレクテナ装置60では、受電電力が整流回路63に均等に分配されるので、不均一な受電電力の分布による変換効率の低下は生じない。しかし、レクテナ装置60では、マイクロストリップ線路で構成された電力合成器及び電力分配器62で大きな線路損失が生じることで、変換効率が低下する。
【0016】
本発明の目的は、変換効率が高いレクテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のレクテナ装置は、ラジアルラインスロットアンテナ、複数の伝送路、及び複数の整流回路を備える。前記ラジアルラインスロットアンテナは、複数のスロットペアが設けられた円形状の第1平面導体と、前記第1平面導体に対向するように設けられた円形状の第2平面導体と、前記第1平面導体と前記第2平面導体との間に電磁波を導波するラジアル導波路と、前記第2平面導体を平面視して前記第2平面導体の中心部で前記ラジアル導波路を短絡する短絡導体と、を有する。前記伝送路は前記ラジアルラインスロットアンテナの前記第2平面導体側に設けられる。前記整流回路は、前記ラジアルラインスロットアンテナの前記第2平面導体側に設けられ、前記伝送路に接続される。前記第2平面導体には、前記第2平面導体を平面視して前記短絡導体を囲むように、前記ラジアル導波路と前記伝送路とを電磁的に結合する複数の結合スロットが設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、変換効率が高いレクテナ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(A)は本発明の実施形態に係るレクテナ装置10の平面図である。図1(B)はレクテナ装置10の底面図である。図1(C)はレクテナ装置10のA-A断面図である。
図2図2はレクテナ装置10の拡大底面図である。
図3図3は整流回路13のブロック図である。
図4図4(A)は本実施形態に係るシミュレーションモデルの概念図である。図4(B)は比較例に係るシミュレーションモデルの概念図である。
図5図5(A)は、本実施形態に係るシミュレーションモデルにおけるポート1からポート2~9への伝送量を示すグラフである。図5(B)は、本実施形態に係るシミュレーションモデルにおけるポート1からポート2~9への伝送量の合計値TR1を示すグラフである。
図6図6(A)は、本実施形態の変形例に係る短絡ポスト75を示す平面図である。図6(B)は、本実施形態の変形例に係る短絡ポスト75を示すB-B断面図である。
図7図7(A)は従来のレクテナアレイの構成例を示すブロック図である。図7(B)は従来のレクテナアレイの構成例を示す平面図である。
図8図8(A)は、図7(A)及び7(B)に示すレクテナアレイ50の受電面のx軸上の受電電力の分布の一例を示すグラフである。図8(B)は、図7(A)及び7(B)に示すレクテナアレイ50のレクテナ素子51おける受電電力と変換効率との関係の一例を示すグラフである。
図9図9は従来のレクテナ装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(A)は本発明の実施形態に係るレクテナ装置10の平面図である。図1(B)はレクテナ装置10の底面図である。図1(C)はレクテナ装置10のA-A断面図である。図1(B)及び1(C)では、整流回路13をブロックで表している。図1(C)では、スロットペア31の図示を省略している。
【0021】
レクテナ装置10は、伝送距離が例えば数十cm以上である空間型ワイヤレス電力伝送システムに使用される。レクテナ装置10は、送電アンテナから放射された電磁波を受け、当該電磁波を直流電流に変換して直流電力を取り出す。送電アンテナから放射される電磁波は、例えば、マイクロ波であり、300MHz~300GHzの周波数を有する。レクテナ装置10は、例えば、ドローン等の飛翔体へのワイヤレス給電、又はドローン等の飛翔体からのワイヤレス給電に使用される。
【0022】
レクテナ装置10は、ラジアルラインスロットアンテナ11(以下、「RLSA」と言う)、複数のマイクロストリップ線路12、複数の整流回路13、及びDCバスライン14を備える。マイクロストリップ線路12は本発明の「伝送路」の一例である。RLSA11は、円形状の第1平面導体21、円形状の第2平面導体22、円環状の側壁23、ラジアル導波路24、及び短絡ポスト25を有する。短絡ポスト25は本発明の「短絡導体」の一例である。
【0023】
レクテナ装置10は、受電面S1、ラジアル導波路24、結合スロット面S2、及び整流回路13が層をなす層構造を有する。
【0024】
第1平面導体21は、同心円状に設けられた複数のスロットペア31を有する。スロットペア31は、互いに直角をなし、1/4管内波長離れた2つのスロットで構成される。第2平面導体22は間隔を置いて第1平面導体21に対向するように設けられる。第2平面導体22には複数の結合スロット32が設けられる。第1平面導体21の一方面は、電力を運ぶ電磁波を受ける受電面S1となり、第1平面導体21の他方面は第2平面導体22の一方面と対向する。第2平面導体22の他方面は、結合スロット32が設けられた結合スロット面S2となる。第1平面導体21及び第2平面導体22は、金属板、金属箔等で形成される。
【0025】
側壁23は、第1平面導体21及び第2平面導体22の外縁に沿うように第1平面導体21と第2平面導体22との間に設けられる。側壁23は、金属等で形成された円環状の導体である。第1平面導体21、第2平面導体22、及び側壁23は中空導体を構成する。中空導体内の空間には誘電体材料が充填されてもよい。中空導体内の空間は空洞のままでもよい。また、中空導体内の空間にはペーパーハニカムコアが充填されてもよい。
【0026】
ラジアル導波路24は、第1平面導体21、第2平面導体22、及び側壁23で構成される。ラジアル導波路24は、第1平面導体21と第2平面導体22との間に電磁波を導波する。ラジアル導波路24は、スロットペア31から入力された電磁波を導波して結合スロット32から出力する。
【0027】
短絡ポスト25は、第2平面導体22を平面視して(以下、単に「平面視して」と言う)、第2平面導体22の中心部でラジアル導波路24を短絡する。短絡ポスト25は、金属等で形成された円柱状の導体である。短絡ポスト25は第1平面導体21と第2平面導体22との間に配置される。短絡ポスト25は平面視して第2平面導体22の中心部に配置される。短絡ポスト25は、第1平面導体21と第2平面導体22との間を接続し、第1平面導体21と第2平面導体22とを短絡する。
【0028】
なお、短絡ポスト25は、円柱状の導体に限定されず、例えば角柱状の導体でもよい。
【0029】
結合スロット32は線状又は長方形状の貫通孔である。結合スロット32は整流回路13と同数設けられる。結合スロット32は、平面視して短絡ポスト25を囲むように設けられる。結合スロット32は、それぞれ、第2平面導体22の周方向に沿うように設けられる。換言すると、各結合スロット32の長手方向は、平面視して、短絡ポスト25から当該結合スロット32に向かう方向と直角をなす。結合スロット32は、平面視して短絡ポスト25から等距離の位置に配置される。結合スロット32は、第2平面導体22の周方向において互いに等間隔に配置される。結合スロット32はラジアル導波路24とマイクロストリップ線路12とを電磁的に結合する。当該結合によって、結合スロット32から出力された電磁波はマイクロストリップ線路12に入力される。換言すると、当該結合によって、マイクロストリップ線路12に高周波が励起される。
【0030】
結合スロット32が短絡ポスト25を囲むように配置されることで、マイクロストリップ線路12とラジアル導波路24との結合が強くなるとともに、マイクロストリップ線路12間の結合が抑制される。
【0031】
マイクロストリップ線路12はRLSA11の第2平面導体22側に設けられる。マイクロストリップ線路12は第2平面導体22の径方向に延在する。マイクロストリップ線路12の第1端33は、開放端であり、平面視して短絡ポスト25の周囲に配置される。マイクロストリップ線路12の第2端34はDCバスライン14に接続される。マイクロストリップ線路12は、平面視して、マイクロストリップ線路12の延伸方向が結合スロット32の長手方向と直角をなすように、結合スロット32と交差する。
【0032】
なお、マイクロストリップ線路12に代えて、ストリップ線路等の他の伝送路が使用されてもよい。
【0033】
整流回路13は、RLSA11の第2平面導体22側に設けられ、マイクロストリップ線路12に挿入(接続)される。整流回路13は、平面視して短絡ポスト25及び結合スロット32を囲むように配置される。整流回路13は、平面視して短絡ポスト25から等距離の位置に配置される。整流回路13は、第2平面導体22の周方向において等間隔に配置される。整流回路13は、第2平面導体22の周方向において結合スロット32と同じ位置に配置される。整流回路13は、入力された電磁波を直流電流に変換して出力する。
【0034】
なお、結合スロット32、マイクロストリップ線路12、及び整流回路13の個数は、それぞれ、本実施形態のように8つでもよいが、8つより少なくても多くてもよい。
【0035】
また、結合スロット32、マイクロストリップ線路12、及び整流回路13は、必ずしも平面視して回転対称性を有するように配置される必要はない。
【0036】
DCバスライン14は、平面視して第2平面導体22の外縁に沿って延在する。DCバスライン14は出力端子T1,T2に接続される。整流回路13から出力された直流電流は、DCバスライン14によって集約され、出力端子T1,T2に接続された後段の回路又は負荷(共に図示せず)に供給される。
【0037】
レクテナ装置10は平板状の誘電体基材26をさらに備える。誘電体基材26は第2平面導体22の結合スロット面S2に設けられる。マイクロストリップ線路12は、誘電体基材26上に設けられた線状導体27が誘電体基材26を介して第2平面導体22と対向することで形成される。整流回路13は誘電体基材26に設けられる。第2平面導体22は整流回路13のグランドとして使用される。DCバスライン14は、誘電体基材26上に設けられた円環状導体が誘電体基材26を介して第2平面導体22と対向することで形成される。出力端子T1は当該円環状導体に接続される。出力端子T2は第2平面導体22に接続される。
【0038】
図2はレクテナ装置10の拡大底面図である。短絡ポスト25の直径Dは1波長(自由空間波長)以下であることが好ましい。短絡ポスト25の側面(短絡面)から結合スロット32までの距離Rは極力短いことが好ましい。結合スロット32の長さLは、短絡ポスト25の円周/分配数以下であることが好ましい。分配数は、受電電力が整流回路13に分配される数であり、結合スロット32及び整流回路13の個数に等しい。平面視して、マイクロストリップ線路12の第1端33から結合スロット32までの距離Qは約1/4管内波長であることが好ましい。
【0039】
図3は整流回路13のブロック図である。整流回路13は、縦続接続された、入力フィルタ35、整流ダイオード36、出力フィルタ37、及び保護回路38を有する。整流ダイオード36は、整流回路13に入力された高周波を直流に変換する。入力フィルタ35は、整流ダイオード36による整流時に発生する高調波が結合スロット32側に反射されてスロットペア31から再放射されることを抑止する。入力フィルタ35は、低域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、帯域阻止フィルタ等で構成される。出力フィルタ37は、整流ダイオード36による整流時に発生する高調波がDCバスライン14側に流入することを抑止する。出力フィルタ37は、低域通過フィルタ、帯域阻止フィルタ等で構成される。保護回路38は、出力フィルタ37の後段に配置され、過電圧による破損から整流ダイオード36を保護する。保護回路38は、例えば、過電圧防止用ツェナーダイオード及び逆流防止用ダイオードで構成される。
【0040】
なお、入力フィルタ35及び出力フィルタ37は、チップ部品で実現されてもよいし、誘電体基材26上の導体パターンを用いて実現されてもよい。
【0041】
次に、送電アンテナから本実施形態に係るレクテナ装置への伝送量のシミュレーション結果を示す。
【0042】
図4(A)は本実施形態に係るシミュレーションモデルの概念図である。送電アンテナ40は、RLSA11の受電面S1(図1(A)及び1(C)参照)と同様に形成された放射面を有するRLSAである。送電アンテナ40及びレクテナ装置10は、送電アンテナ40の放射面と受電面S1とが互いに対向するように配置される。送電アンテナ40は同軸線路41を用いて給電される。
【0043】
図4(B)は比較例に係るシミュレーションモデルの概念図である。受電アンテナ42は送電アンテナ40と同様に構成される。送電アンテナ40及び受電アンテナ42は、送電アンテナ40の放射面と受電アンテナ42の受電面とが互いに対向するように配置される。受電アンテナ42の受電電力は同軸線路43を介して出力される。
【0044】
図5(A)は、本実施形態に係るシミュレーションモデルにおけるポート1からポート2~9への伝送量(Sパラメータの絶対値の2乗|S21|2~|S91|2)を示すグラフである。図5(B)は、本実施形態に係るシミュレーションモデルにおけるポート1からポート2~9への伝送量の合計値TR1を示すグラフである。ポート1は同軸線路41の端子T3(図4(A)参照)に対応する。ポート2~9は、それぞれ、整流回路13の入力側に接続されたマイクロストリップ線路12の接続端39(図1(B)参照)に対応する。図5(B)には、比較例に係るシミュレーションモデルにおける同軸線路41の端子T3から同軸線路43の端子T4への伝送量TR2も示される。距離TRDは、図4(A)及び4(B)に示すように、送電アンテナの放射面と受電アンテナの受電面との間の距離である。
【0045】
図5(A)に示すように、距離TRDにかかわらず、ポート1からポート2~9への伝送量は互いに略等しく、受電電力が各整流回路13に略均等に伝送されたことがわかる。図5(B)に示すように、伝送量の合計値TR1は、約50~65%の範囲内の値となり、距離TRDが287mmの場合に63.6%となった。伝送量の合計値TR1は、結合スロット32及びマイクロストリップ線路12で生じる損失のため、伝送量TR2より低下する。この低下は、距離TRDが287mmの場合に約7%に抑えられた。
【0046】
なお、レクテナ装置10に送電するための送電アンテナ40は、RLSAに限定されず、アレイアンテナ等の他のアンテナでもよい。
【0047】
本実施形態では、RLSA11のラジアル導波路24が電磁波を導波する。短絡ポスト25が平面視して第2平面導体22の中心部でラジアル導波路24を短絡する。さらに、複数の結合スロット32が、平面視して短絡ポスト25を囲むように第2平面導体22に形成され、ラジアル導波路24とマイクロストリップ線路12とを電磁的に結合する。これにより、レクテナ装置10の受電電力は、マイクロストリップ線路で構成された電力合成器及び電力分配器を介することなく、直接に、各整流回路13に均等に分配及び伝送される。このため、電力合成器及び電力分配器で生じる線路損失が削減される。また、各整流回路13に等しい電力が入力されるので、高効率な整流が可能となる。結果として、レクテナ装置10の変換効率が向上する。
【0048】
なお、本実施形態に係る短絡ポスト25に代えて、短絡ポスト25より細い複数の短絡ポスト75が使用されてもよい。
【0049】
図6(A)は、本実施形態の変形例に係る短絡ポスト75を示す平面図である。図6(B)は、本実施形態の変形例に係る短絡ポスト75を示すB-B断面図である。短絡ポスト75は第2平面導体22の周方向に沿って等間隔に配置される。短絡ポスト75は、平面視して、中心O、直径Dの円の円周上に配置される。円の中心Oは第2平面導体22を平面視したときの第2平面導体22の中心である。隣り合う短絡ポスト75の間隙gは短絡ポスト75の直径dより短い。短絡ポスト75は他の点で短絡ポスト25と同様に構成される。
【0050】
上記のように、隣り合う短絡ポスト75の間隙gが短絡ポスト75の直径dより短いことで、隣り合う短絡ポスト75の隙間からの電磁波の漏れが防止される。このため、複数の短絡ポスト75は短絡ポスト25と同様に作用する。
【0051】
最後に、上記の実施形態の説明は、すべての点で例示であり、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
S1…受電面
S2…結合スロット面
T1,T2…出力端子
T3,T4…端子
10…レクテナ装置
11…ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)
12…マイクロストリップ線路
13…整流回路
14…DCバスライン
21…第1平面導体
22…第2平面導体
23…側壁
24…ラジアル導波路
25,75…短絡ポスト
26…誘電体基材
27…線状導体
31…スロットペア
32…結合スロット
33…第1端
34…第2端
35…入力フィルタ
36…整流ダイオード
37…出力フィルタ
38…保護回路
39…接続端
40…送電アンテナ
41,43…同軸線路
42…受電アンテナ
50…レクテナアレイ
51…レクテナ素子
52…マイクロストリップアンテナ
53…整流回路
54…DCバスライン
60…レクテナ装置
61…アレイアンテナ
62…電力分配器
63…整流回路
64…DCバスライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9