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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】布帛
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/533 20210101AFI20230605BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20230605BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20230605BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20230605BHJP
   D03D 15/37 20210101ALI20230605BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20230605BHJP
   D04H 3/04 20120101ALI20230605BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
D03D15/533
D02G3/12
D02G3/36
D03D1/00 Z
D03D15/37
D03D15/47
D04H3/04
G01N27/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018244195
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105651
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 佳成
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-133196(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182968(JP,U)
【文献】特開2018-087392(JP,A)
【文献】特開2016-123549(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002274(WO,A1)
【文献】特開2004-100121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/00-31/32
A47C7/00-7/74
A47G9/00-11/00
B60N2/00-2/90
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
D05B1/00-97/12
D05C1/00-17/02
G01N27/00-27/10
27/14-27/24
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいてそれぞれが第1の方向に延びる複数の第1検知糸と、
互いに間隔をおいてそれぞれが前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数の第2検知糸と、
複数の前記第1検知糸同士を接続するように前記第2の方向に延びる導電性の第1電極糸と、
複数の前記第2検知糸同士を接続するように前記第1の方向に延び、前記第1電極糸と交差しない導電性の第2電極糸とを備え、
前記第1検知糸及び前記第2検知糸は、導電性の芯糸と、前記芯糸を被覆する水分を保持することにより導電性を示す鞘部とを有し、
前記第1電極糸は、前記第1検知糸の前記芯糸と接し、
前記第2電極糸は、前記第2検知糸の前記芯糸と接している、布帛。
【請求項2】
前記鞘部は、前記芯糸を被覆する非導電性の材料からなり且つ吸水性を有する吸水糸である、請求項に記載の布帛。
【請求項3】
前記吸水糸は、異形断面を有するポリエステル糸である、請求項に記載の布帛。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の布帛を備えている、座席。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の布帛を備えている、寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、布帛に関し、特に湿度を検出可能な布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
座席や寝具は、クッション性を有する材料の表面をシート状の布帛等で覆うことにより形成されている。着座や仰臥の際には、人体が座席や寝具等の表面を覆う布帛と接触し、これを押圧する。着座又は仰臥の姿勢を長時間続けると、人体から放出される水分及び熱により、人体と布帛との接触部位にいわゆる蒸れが発生する。接触部位における蒸れは、使用者に大きな不快感を及ぼす。また、四肢の自由が効かない場合には、蒸れた状態を自身で解消することができず、皮膚に重篤な炎症を引き起こすおそれもある。
【0003】
このため、座席や寝具の表面に凹凸等を設け、通気路を確保して蒸れを発生しにくくすることが検討されている。しかし、体重がかかる座席や寝具において、このような方法により蒸れの発生を抑えることは困難である。
【0004】
座席や寝具の内側に湿度センサを配置し、湿度を監視することにより、蒸れの発生を検知し、蒸れが発生した場合には強制的に排気等を行って蒸れを解消することも検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-4688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法では、人体との接触部位ではなく、内側のクッション性を有する材料に湿度センサが配置されるため、蒸れの発生を正確に調べることは困難である。湿度センサを表面に設けることも考えられるが、人体がセンサと直接接触するため、不快感が発生したり、センサが破損しやすくなったりする。また、センサを埋め込むことにより、製造コストが大きく上昇する。
【0007】
本開示の課題は、座席や寝具の表面を覆う布帛自体により湿度を検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の布帛の一態様は、互いに間隔をおいてそれぞれが第1の方向に延びる複数の第1検知糸と、互いに間隔をおいてそれぞれが第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数の第2検知糸と、複数の第1検知糸同士を接続するように第2の方向に延びる導電性の第1電極糸と、複数の第2検知糸同士を接続するように第1の方向に延びる導電性の第2電極糸とを備え、第1検知糸及び第2検知糸は、導電性の芯糸と、芯糸を被覆する水分を保持することにより導電性を示す鞘部とを有し、第1電極糸は、第1検知糸の芯糸と接し、第2電極糸は、第2検知糸の芯糸と接している。
【0009】
布帛の一態様において、鞘部は、芯糸を被覆する非導電性からなり且つ吸水性を有する吸水糸とすることができる。
【0010】
布帛の一態様において、吸水糸は、異形断面を有するポリエステル糸とすることができる。
【0011】
本開示の座席又は寝具は、本開示の布帛を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本開示の布帛によれば、座席や寝具等に半導体センサ等を埋め込むことなく湿度を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る布帛を示す平面図である。
図2】第1検知糸と第2検知糸との交点を示す断面図である。
図3】検知糸の一例を示す斜視図である。
図4】検知糸の一例を示す斜視図である。
図5】布帛の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本実施形態の布帛100は、通常の経糸111と緯糸112と共に、複数の第1検知糸121及び第2検知糸122と、第1電極糸131及び第2電極糸132とを有している。第1電極糸131及び第2電極糸132との間に流れる電流の大きさ又は第1電極糸131及び第2電極糸132との間の抵抗値等を測定することにより、布帛100がおかれている雰囲気の湿度の高低を検知し、これにより蒸れの発生を検知することができる。
【0015】
第1検知糸121及び第2検知糸122(以下、両方を合わせて検知糸という。)は、図2に示すように、導電性の芯糸151と、芯糸151を被覆する、水分を保持することにより導電性を示す鞘部152とを有する鞘芯構造の糸である。第1検知糸121は、互いに間隔をおいて経糸と同じ第1の方向に延びており、第2検知糸122は、互いに間隔をおいて緯糸と同じ第2の方向に延びている。このため、第1検知糸121と第2検知糸122とは、複数の交点を形成している。
【0016】
第1電極糸131及び第2電極糸132(以下、両方を合わせて電極糸という。)は、導電性の糸である。第1電極糸131は、緯糸と同じ第2の方向に延び、複数の第1検知糸121の芯糸151と接続されている。このため、第1電極糸131と各第1検知糸121の芯糸151とが導通している。第2電極糸132は、経糸と同じ第1の方向に延び、複数の第2検知糸122の芯糸151と接続されている。このため、第2電極糸132と各第2検知糸122の芯糸151とが導通している。第1電極糸131と第2電極糸132とは交差しておらず、第1電極糸131は、第2検知糸122と交差しておらず、第2電極糸132は、第1検知糸121と交差していない。
【0017】
鞘部152が水分を保持していない場合は、鞘部152は十分に絶縁された非導電性である。このため、第1検知糸121と第2検知糸122との交点において電流は流れず、第1電極糸131と第2電極糸132との間にも電流は流れない。湿度が高くなり、鞘部152が十分な水分を保持すると、鞘部152の電気抵抗が小さくなる。このため、第1検知糸121と第2検知糸122との交点において電流が流れ、第1電極糸131と第2電極糸132との間に電流が流れる。
【0018】
第1電極糸131と第2電極糸132との間に流れる電流の大きさは、鞘部152の吸水度合いによって変化する。また、鞘部152の吸水度合いは、布帛100がおかれている雰囲気の湿度によって変化する。このため、第1電極糸131と第2電極糸132との間に流れる電流の大きさを比較することにより、布帛100がおかれている雰囲気の湿度の高低を検出することが可能になる。また、電流値の変化を連続的にモニターすれば、湿度の変化を連続的に捕らえることもできる。
【0019】
第1電極糸131と第2電極糸132との間に流れる電流の大きさは、第1検知糸121と第2検知糸122との交点の数にも依存する。このため、布帛100に含まれる第1検知糸121及び第2検知糸122の本数を増やし、交点の密度を高くすることにより、検出感度を高くすることができる。逆に、交点の密度をある程度抑え、検出する電流値に閾値を設けることにより、鞘部152が局所的に水分を吸収した場合には、電流値の変化を検出せず、布帛100の広い面積において鞘部152が水分を吸収した場合にのみ、電流値の変化を検出するようにもできる。
【0020】
なお、第1電極糸131と第2電極糸132との間に流れる電流の大きさは、第1電極糸131と第2電極糸132との間の抵抗値として捉えることもできる。
【0021】
検知糸の芯糸151は、導電性を有する糸であればどのようなものであってもよく、銅、ステンレス若しくは銀等からなる金属繊維又は炭素繊維等とすることができる。また、非導電性の天然繊維又は人工繊維の表面に銅、銀又はニッケル等の金属をコーティングしたコーティング糸を用いることもできる。金属のコーティングは、めっき又は蒸着等により行うことができる。さらに、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルフォン酸との複合物(PEDOT/PSS)、及びポリアセチレン等の導電性高分子からなる糸を用いることもできる。
【0022】
検知糸の鞘部152は、材料自体は非導電性であるが、水分を保持することができる多数の空隙を有し、空隙に保持した水分により導電性を示す材料により形成することができる。具体的には、図3に示すように芯糸151の廻りに複数の吸水糸152Aを組紐状に巻き付けることにより形成することができる。また、組紐状ではなく、図4に示すような、芯糸151の廻りに吸水糸152Aを一方向に巻き付けた、いわゆるカバーリング糸の構成とすることもできる。カバーリング糸とする場合、シングルカバーリングに限らずダブルカバーリング等とすることもできる。
【0023】
吸水糸152Aは、非導電性の材料からなり且つ吸水性を有する糸であれば特に限定されず、異形断面糸及びマイクロファイバー糸等とすることができる。また、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又はポリエチレンオキサイト等の親水性ポリマーをブレンドしたポリアミド、アクリル又はポリエステル等を用いた糸とすることもできる。湿度の変化を迅速に検出する観点から、吸水糸152Aは、吸水性を有するだけでなく速乾性を有していることが好ましい。ポリエステルからなる異形断面糸及びマイクロファイバーは、吸水性が高い上に速乾性であり好ましく、中でもポリエステルからなる異形断面糸が好ましい。このような吸水性を有するポリエステルかなる異形断面糸は市販のものを用いることができる。
【0024】
芯糸151の廻りに吸水糸152Aを巻き付けて組紐状にする場合、特に限定されず丸打紐、角打紐及び平打紐等どのような構成としてもよいが、丸打紐とすることが好ましい。また、芯糸151を確実に被覆すると共に適度な太さを保つ観点から、吸水糸152Aの本数は4本~16本程度とすることが好ましく、8本~12本であることがより好ましい。また、鞘部152を構成する糸の一部を吸水糸152Aとし、残りを通常の糸とすることもできる。この場合、鞘部152を構成する糸の3分の2以上が吸水糸であることが好ましい。具体的に、鞘部152を構成する糸のうち糸吸水糸152Aの本数は4本~16本程度とすることが好ましく、8本~12本であることがより好ましい。
【0025】
鞘部152を吸水糸により形成するのではなく、吸水性を有する非導電性の材料を芯糸151の外表面にコーティングすることにより形成することもできる。例えば、高吸水性の無機又は有機材料により芯糸151の表面をコーティングして鞘部152を形成することができる。例えば、ポリアクリル酸ナトリウムを主成分とするポリマーにより、導電性の芯糸151をコーティングして鞘部152を形成することができる。この場合、芯糸151は、特に限定されないが、PEDOT/PSSからなる糸とすることができる。
【0026】
検知糸の太さは特に限定されないが、強度と風合いとの観点から500デシテックス程度~10000デシテックス程度とすることが好ましい。
【0027】
第1電極糸131及び第2電極糸132は、導電性の糸であればよい。例えば、検知糸の芯糸151と同じものを電極糸として用いることができる。電極糸は検知糸の芯糸151との導通を確保するために、鞘部152を貫通させて、芯糸151と直接接するようにすることが好ましい。
【0028】
布帛100に含まれる第1検知糸121と第2検知糸122との交点の数は、特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。少なくとも、第1検知糸121と第2検知糸122とを2本ずつとし、4つの交点を設ければ、布帛100がおかれている雰囲気の湿度変化を検出可能である。布帛100を座席のシートとして用い、人体との接触面における蒸れを検出するような場合には、接触面全体に亘って、5mm~100mm程度の間隔で交点が形成されるように、第1検知糸121及び第2検知糸122を配置することが好ましい。なお、全ての交点の間隔が同じである必要はなく、交点の間隔が広い部分と狭い部分とを形成することもできる。また、第1検知糸121と第2検知糸122とが正方格子を形成している必要はなく、長方格子となっていたり、歪んだ格子となっていたりしてもよい。
【0029】
布帛100の、検知糸及び電極糸以外の部分は、通常の非導電性の糸で織られた通常の布帛とすることができる。布帛の織り方は特に限定されず、平織、綾織及び朱子織等とすることができる。本実施形態において、第1検知糸121が通常の経糸111と同じ方向に延び、第2検知糸122が通常の緯糸112と同じ方向に延びている例を示した。このようにすれば、通常の経糸111及び緯糸112と検知糸とを組み合わせて一度に布帛を織り上げることができる。但し、通常の経糸111及び緯糸112を用いて形成した布帛に、検知糸を縫い込むことも可能である。この場合、検知糸が延びる方向と、通常の糸が延びる方向とは一致していなくてもよい。
【0030】
検知糸を縫い込む場合、検知糸は直線状に延びていなくてもよい。例えば、第1検知糸121を同心円状に複数配置し、第2検知糸122を放射状に配置することもできる。この場合、第1電極糸131は、各第1検知糸121を横切るように配置することができる。また、第2電極糸132は、第1検知糸121と同心円状に配置することができる。各第2検知糸122の芯糸151を中心において接続しておけば、別途第2電極糸131を設けなくても、第2検知糸122の芯糸151を第2電極糸としても機能させることができる。この場合、第1電極糸131といずれかの第2検知糸122の芯糸151との間に流れる電流値を測定すればよい。
【0031】
図5に示すように、第1の検知糸131及び第2の検知糸132の少なくとも一方を、複数の部分に分割することにより、布帛100を複数の領域に分割し、領域ごとに湿度の変化を検出することが可能となる。
【0032】
本実施形態の布帛100は、湿度の高低の検出が求められるあらゆる用途に用いることができる。例えば、自動車等の長時間座り続けるような座席の表面シート又は座席を覆うカバー等として用いることができる。また、通常の又は介護用のベッドマットの表面シート又はベッドシーツ等として用いることもできる。これらの場合、例えば、第1電極糸131と第2電極糸132との間の抵抗値が所定の値を下回った場合に、蒸れの発生を知らせるようにできる。また、エアコンを作動させたり、座席やベッド等に取り付けたファンを作動させたりして蒸れの解消を行うようにすることもできる。さらに、本実施形態の布帛から得られる情報に、温度情報等を組み合わせて利用することもできる。
【実施例
【0033】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0034】
<布帛の形成>
第1検知糸及び第2検知糸は、芯糸に8本の吸水糸を巻き付けて形成したものを用いた。芯糸には、銀めっき糸(大阪電気工業株式会社製、odex、70d×3)を用い、吸水糸には、ポリエステル異形断面糸(帝人フロンティア株式会社製、カルキュロ167T48)を用いた。第1電極糸及び第2電極糸は、銀めっき糸(大阪電気工業株式会社製、odex、70d×3)を用いた。検知糸以外の経糸及び緯糸には、200デニールのポリエステル糸を用いた。
【0035】
経方向に延びる第1検知糸を緯方向に20mm間隔で1本、緯方向に延びる第2検知糸を経方向10mm中に9本織り込んで、30cm角の布帛を形成した。第1電極糸及び第2電極糸は、それぞれ、端部から1cmの位置に埋め込んだ。
【0036】
<実験1>
形成した布帛を、所定の温度及び湿度の恒温槽内に拡げて放置し、第1電極糸と第2位電極糸との間の抵抗値を測定した。なお、恒温槽に入れる前の抵抗値は、いずれも検出範囲外(OL)であった。
【0037】
温度が20℃の場合、湿度が40%、60%及び80%において、恒温槽内に入れた直後の抵抗値は、それぞれOL、11MΩ、1.5MΩであり、60分間放置した後の抵抗値は、それぞれOL、11MΩ、0.35MΩであった。
【0038】
温度が40℃の場合、湿度が40%、60%及び80%において、恒温槽内に入れた直後の抵抗値は、それぞれOL、38MΩ、0.3MΩであり、60分間放置した後の抵抗値は、それぞれOL、33MΩ、0.01MΩであった。
【0039】
表1に実験1の結果をまとめて示す。布帛がおかれた雰囲気の湿度及び温度により、抵抗値が変化し、湿度の指標が得られることが確認された。また、高温多湿の環境においては経時変化も大きく、単なる湿度指標ではなく、より体感的な快不快を検出することができる。
【0040】
【表1】
【0041】
<実験2>
室温において、手のひらの水分率をモイスチャーチェッカー(スカラ株式会社製、MY-808S)により測定した後、手のひらを布帛に当て、3秒後に第1電極糸と第2位電極糸との間の抵抗値を測定した。手のひらを当てる前の抵抗値は、いずれも測定範囲外(OL)であった。また、手のひらを離して5秒後の抵抗値は、いずれもOLであった。
【0042】
水分率21,5%の場合には39MΩ、水分率23.2%の場合にはOL、28.1%場合には3MΩ、水分率32.5%の場合には0.16MΩ、水分率35.8%の場合には1MΩであった。なお、手のひらに代えて10cm角のプラスチック板及び銅板を布帛に当てた場合には、抵抗値はOLのまま変化しなかった。
【0043】
表2に実験2の結果をまとめて示す。布帛に水分率が高い人体が接することにより、抵抗値が低下することが確認された。
【0044】
【表2】
【0045】
<実験3>
第1検知糸を横方向に10mm間隔で1本、第2検知糸を縦方向10mm間隔で1本織り込んだ20cm角の布帛を使用した。第1電極糸及び第2電極糸の埋め込み位置は、それぞれ、端部から1cmとした。
【0046】
所定の数の交点が指又は手のひらにより覆われるようにして、10秒後に第1電極糸と第2位電極糸との間の抵抗値を測定した。指又は手のひらを当てる前の抵抗値は、いずれもOLであった。また、指又は手のひらを離して5秒後の抵抗値は、いずれもOLであった。
【0047】
覆われる交点数が1及び2の場合には抵抗値はOLであった。覆われる交点数が3の場合は20MΩ、4の場合は18MΩ、6の場合は8.4MΩ、12の場合は10MΩ、20の場合は8.0MΩ、32の場合は2.0MΩであった。
【0048】
表3に実験3の結果をまとめて示す。人体と接する交点数が多いほど、抵抗値が速やかに低下することが確認された。なお、第1検知糸及び第2検知糸の鞘部を4本の吸水糸と4本の通常のポリエステル糸とした布帛の場合には、交点をどのように覆っても第1電極糸と第2位電極糸との間の抵抗値はOLのままであった。
【0049】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の布帛は、布帛自体により湿度を検知でき、座席や寝具等の表面を覆うシート等として有用である。
【符号の説明】
【0051】
100 布帛
111 経糸
112 緯糸
121 第1検知糸
122 第2検知糸
131 第1電極糸
132 第2電極糸
151 芯糸
152 鞘部
152A 吸水糸
図1
図2
図3
図4
図5